『習近平がどうしても「核心」の座が欲しかった理由 中国はどこへ向かうのか?ますます強まる党内統治』(11/1JBプレス 阿部純一)、『「六中全会」は習近平の勝利なのか コミュニケに残る、激しい権力闘争の跡』(11/2日経ビジネスオンライン 福島香織)について

阿部氏と福島氏の記事を並べて見ました。どちらかと言いますと、福島氏の見立ての方が合っているかと。習近平の権力奪取は未だしではないか?いくら「核心」の地位を得たとしても、「政権は銃口から生まれる」中国では①軍の経験(毛沢東、鄧小平にはあった)があるか、②金儲けを容認するか(多額の賄賂や兵器の横流しを含む、江沢民のやり方)が支持の前提となります。習近平には両方ともありません。況してや反腐敗運動に血道をあげ、パナマ文書で親族の儲け話が暴露されるのに及び、庶民や共産党幹部・軍の支持を得られるとは思えません。中国人だったら誰でも賄賂を取るのは当り前と思っています。政敵を倒すための手段として反腐敗運動を使っていることは誰でも理解しています。「反腐敗運動」は①、②ともに逆の方向を向いています。これでは支持はおろか、暗殺やクーデターの危険は増すだけでしょう。

毛沢東は根っからの人殺しで、自分のスパイをあらゆるところに根を張らしていたと思います。別に証拠がある訳でもなく、本を読んでの感想でもありません。ただ、今よりもっと権力闘争が激しかった時代に勝ち抜いたのには、理由があると思います。「自分は何時殺されても良い」という覚悟と、「いつでもどこでも簡単に人が殺せる」という姿を見せ、かつ「自分には草をいっぱい張り巡らせていて、裏切ればすぐ分かる」というのを、中国人全体に体の隅々まで沁み渡らせたから権力が取れたのでは。周恩来、劉少奇、鄧小平、林彪には唯々諾々か、放逐、クーデター失敗と恐怖政治が成功しました。大躍進や文化大革命は情報が今と比べ簡単にコントロールできる時代でした。今でも中共は情報をコントロールしていますが、完全に外界の情報を遮断は出来ません。その点でも習近平は毛沢東と比べて、権力集中は出来にくいです。

今後の問題として、常務委員の人事、定年年齢、習の後継者についてが、今後の中国を判断するに当たり、ポイントとなるのは間違いありません。ただ、「反腐敗運動」の「新たな情勢下における党内政治生活の若干の準則」と「中国共産党党内監督条例」が採択されたことは、習にとって両刃の剣となるのでは。党主席を降りた瞬間に、韓国同様弾劾される恐れがあります。今、韓国では朴槿恵大統領が、在任中ですが、その危機にあります。習がそれを防ぐには自らがずっと主席を務めるしかありません。内規を変えるのでは。息のかかった人間を後任にするとしても、自らは江沢民から指名を受けたにも拘わらず、かつ江沢民は団派を押えて習を指名した恩義があるにも拘らず、裏切りました。自らの行動を振り返ってみると、後任を選ぶことは怖くてできないのでは。「刑不上常委」という潜規則も打ち破ったのだから、江藤新平のように自ら定めた法によって裁かれる運命となりかねません。

阿部氏記事にありますように、軍事冒険に走る危険性もあります。日本人も惰弱な平和主義に染まっている時期は過ぎました。覚醒せよと言いたい。

阿部記事

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天安門広場で行われた抗日70年行事の軍事パレードで閲兵する習近平国家主席(2015年9月3日撮影、資料写真)。(c)AFP/GREG BAKER 〔AFPBB News

10月24日から27日にかけて、北京の京西賓館で「中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議」(6中全会)が開催された。来年秋の第19回中国共産党大会を控えた事実上の最後の中央委員会全体会議である。

今次の6中全会の最大の注目点は、次期党大会に向けて習近平主席がどこまで権力を固めるか、であった。次期党大会の直前に7中全会が開かれるが、これは党大会に向けた最終調整の場となる。6中全会が注目される所以である。

「反腐敗」キャンペーンを今後も継続

6中全会の主な議題は、「新たな情勢下における党内政治生活の若干の準則」と「中国共産党党内監督条例」であり、この2つの文件はともに審議され採択された。これらに通底するテーマは、「全面的な厳しい党内統治」である。

習近平主席は、政権の座について以来、「トラもハエも一緒に叩く」という「反腐敗」キャンペーンを持続させてきた。その過程で、これまで暗黙の了解事項(「潜規則」)とされてきた「党中央政治局常務委員とその経験者は罪を問われない」を打破し、前常務委員の周永康を「落馬(紀律検査委による立件)」させた。さらに、徐才厚、郭伯雄といった中央軍事委副主席経験者をも「落馬」させ、人民解放軍内部の腐敗状況を白日のもとにさらした。

習近平主席は、この「反腐敗」キャンペーンを今後も継続させることを強調している。その意味において、6中全会で検討された2つの文件に共通するのが党中央の権威を高めることであったのは当然のことであった。

そして、まさにその帰結として、習近平主席は「核心」に位置づけられたのである。

6中全会閉幕後の10月27日に発表されたコミュニケ(「公報」)ではこう書かれている。「第18回党大会以来、習近平同志を核心とする党中央が身をもって実行し、率先垂範し、全面的に厳格な党統治を断固として推進し、思想による党建設と制度による党統治の厳密な結合を堅持し、腐敗を厳しく取り締まり、党内の政治生態を浄化し、党の政治生活に新たな状況が出現させ、党心、民心を勝ち取り、党と国の事業の新たな局面を切り開く上で重要な保証を提供した」

江沢民を「核心」に位置付けた鄧小平の仕掛け

これまで中国共産党で「核心」に位置づけられたのは毛沢東、鄧小平、そして江沢民の3人だけである。

江沢民が核心に位置付けられたのは、鄧小平による「仕掛け」だった。1989年6月の天安門事件の後、失脚した趙紫陽に代わってヒラの政治局委員から党総書記に抜擢された江沢民(当時、上海市党委書記)を権威付けるためである。このとき鄧小平は「いかなる指導者集団にも1人の核心が必要である。第1世代の指導者集団の核心は毛沢東同志であり、第2世代では実質上私が核心だろう。第3世代となった指導者集団にも核心が必要であり、それが江沢民同志なのである」と語ることで、党中央に何の権力基盤を持たない江沢民をバックアップしたのである。

しかし、「核心」に位置づけられた江沢民は、第2世代の「核心」である鄧小平がまだ政治的に多大な影響力を持っている間はおとなしくしているしかなかった。実際、1989年5月に訪中したソ連のゴルバチョフ書記長と会談した趙紫陽が明らかにしたように、1987年秋の第13回党大会直後の1中全会で、「以後も重大な問題は鄧小平同志の舵取りに委ねる」という秘密決議が行われ、鄧小平が「最終決定権」を持っていたからである。

鄧小平が90歳になり「完全引退」した1994年、9月に開催された党14期4中全会でようやく「江沢民を核心とする中央指導集団」が明記され、第3世代への権力継承の完了が確認された。それ以後、江沢民は権力強化に励み、翌1995年秋の5中全会では「江沢民指導部が自主的に政策を決定する」との秘密決議が採択され、これによって江沢民が鄧小平に代わり、「最終決定権」が付与されたのであった。

「核心」の座を自分の力で手に入れた習近平

では、6中全会で「核心」に位置づけられた習近平主席も、同様に秘密決議によって「最終決定権」を付与されたのだろうか。現在のところ、それを証明する情報はない。しかし、実際はそれと同等の権限が習近平主席に与えられたと見るべきだろう。その理由は2つ考えられる。

第1に、習近平主席が「核心」に位置づけられたことによって、江沢民を「核心」とする時代が事実上終わったと考えることができるからである。

「第3世代の核心」とされた江沢民はまだ存命であり、「完全引退」を自ら表明しているわけではない。しかし、習近平主席の反腐敗キャンペーンによって、江沢民に近い周永康、徐才厚、郭伯雄等が追い落とされる中で、江沢民が徐々に追い詰められてきたという文脈から導き出せる事実は、習近平が江沢民との勝負に勝ったということであり、その結果が習近平主席の「核心」という位置づけなのである。そうだとすれば、習近平主席が江沢民に代わり、「最終決定権」を事実上保持していると見なすことができるだろう。ちなみに、今年8月、江沢民は90歳になった。鄧小平の「完全引退」の年齢とも平仄が合うのは偶然だろうか。

第2に、江沢民は「核心」の座を鄧小平に用意してもらったのに対し、習近平は「核心」の座を自分の力で手に入れたからである。同じ「核心」でも習近平主席のほうが実力の裏付けがあることになる。

今年1月、地方指導者を中心に、習近平を中国政治における「核心」と位置づける発言が相次いだ。習近平の意思が働いた動きであることは間違いない。その後、習近平主席を「核心」と呼ぶ動きは下火になったが、6月末には、習近平主席の側近である栗戦書・党中央弁公庁主任が党直属機関の幹部表彰式で習近平主席が「核心」であることを強調した。また、年初の習近平「核心」キャンペーンの先頭に立っていた天津市の党委代理書記の黄興国が9月に突然「落馬」したものの、後任の李鴻忠・天津市党委書記が、繰り返し習近平主席が「党中央の指導核心」であることを強調したことで、6中全会直前には再び習近平主席を党中央の「核心」に位置づける機運が高まっていた。こうして、周囲から声を上げさせることによって、習近平は「核心」の座を手中に収めたのである。

習近平が「核心」の位置づけを欲した理由

習近平主席は、なぜ党の機関決定による「核心」の位置づけを欲したのだろうか。言葉を変えれば、重要な政策決定における「最終決定権」になぜこだわったのだろうか。考え得る理由は3つある。

第1に、習近平主席自身が持つ中国共産党体制維持への危機感がある。経済的には、世界第2位の経済規模にまで上り詰めたものの、高度成長期が終わり、国内産業構造の変革期にあって、貧富の格差拡大や環境問題を含め、これまでの経済成長がもたらした「負の遺産」をうまく処理するために強力な権限とリーダーシップが必要だという認識である。

第2に、全国の政治指導層から官僚組織、国有企業、さらに人民解放軍にまで蔓延した腐敗状況を是正するために、習近平主席が抵抗勢力を無力化できるだけの絶対的権威付けを求めたことである。執政開始から4年にわたる反腐敗キャンペーンで、組織的な抵抗や不作為(サボタージュ)に直面するなかで、党の体制を維持し求心力を持たせる必要性を痛感してきたはずであり、そのために「核心」の位置づけを望んだのだろう。

第3に、軍事改革の関連である。昨年末から今年前半にかけて、習近平主席は、組織を改編しすべてを中央軍事委員会が仕切ることになる人民解放軍の抜本的な機構改革を実施した(参考記事「海軍重視にシフト、人民解放軍が進める再編の中身」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43910)。中央軍事委員会のトップは主席を務める習近平自身である。いわば、米国大統領が米軍の総司令官であるように、習近平主席が人民解放軍の総司令官になったわけであり、そのためにも自らの権威付けが必要とされたのである。

功をあせって軍事強硬策に走る可能性も

最後に、「核心」に位置づけられた習近平主席の今後について考察する。あくまでも考察であるから、可能性を論じるにとどめたい。

第1に、次期(第19回)党大会に向けた人事である。

人事に関する問題は2つある。1つは政治局常務委員会における「七上八下」という定年制の問題だ。67歳以下なら継続可能だが68歳以上であれば引退という「潜規則」で、この規定に従えば2017年に69歳になる中央紀律委書記の王岐山に再任の目はない。しかし、「余人を持って代えがたい」ことを理由に定年の潜規則を打破して習近平主席が再任を求めれば、それが実現する可能性はありうる。これは、2022年の第20回党大会への布石ともなる。というのも、その時点で李克強総理はまだ67歳で再任の資格があるが、68歳になった習近平主席は退任を余儀なくされる。「七上八下」の潜規則を打破しておけば、習近平主席の「続投」も可能になる。

もう1つは後継者の問題である。江沢民、胡錦濤時代の慣例を踏襲するなら、次期党大会で後継者を政治局常務委員に入れなければならない。胡錦濤も習近平も、「国家副主席」「中央党校校長」のポストで常務委員会入りした。習近平主席は「核心」に位置づけられたことによって、後継者指名権も手に入れたと見なすことができるが、もし習近平主席が自らの「続投」を意識するなら、そうした後継者を置かないという選択肢もあるだろう。

第2に、穿った見方として、「核心」に位置づけられたものの、習近平主席には反腐敗以外にこれと言った政治実績がないがゆえに、「功をあせる」恐れがある。

問題は、どこで「功をあげる」かだが、反腐敗取り締まりをこれ以上強化すれば「恐怖政治」になりかねないし、強い反発もありうる。国内経済に関しては、習近平主席は社会主義経済への「未練」が強く、国有企業優先の罠にはまって経済改革には後ろ向きであるから、実績のあげようがない。外交では近代以降の屈辱的歴史からの復興を強調する「中国の夢」を語ることで国内のナショナリズムに火を付けてしまい、「国家の主権・国益を守る」強硬路線をいまさら軟化させるのは難しい。

となると、自ら大胆な改革を実行した人民解放軍に手柄を立てさせ、国民の喝采を得る軍事強硬策に走る可能性は否定できない。その場所が南シナ海なのか、東シナ海の尖閣諸島になるのかはわからないが、日本としては用心しておくことに越したことはないだろう。

もちろん、習近平主席にとって、軍事作戦の失敗は政権の命取りにもなりかねない危険をはらむから、慎重に判断するだろうが、その成功のメリットが失敗のリスクよりも大きいと判断すれば、習近平主席は迅速に行動に出るだろう。

福島記事

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六中全会は習近平主席を“核心”として閉幕した(写真:新華社/アフロ)

共産党の秋の政治イベント、六中全会が10月24日から27日にかけて行われ、最終日にはコミュニケが発表された。六中全会コミュニケのポイントはおよそ五点。①「習近平同志を核心とする党中央」という表現が盛り込まれたこと②党内監督条例と党内政治生活準則という党内規律厳格化に関する二つの法律について審議、可決されたこと③集団指導体制の維持と党内民主の堅持が言明されたこと④遼寧省元書記の王珉、北京市元副書記の呂錫文、解放軍蘭州軍区副政治委員の范長秘、武装警察部隊元副司令員の牛志忠の解任、除籍の確認⑤いかなる党幹部の私有財産形成、派閥形成(人身依附関係=不正常な上下関係)を許さず、これについてはいかなる例外もない、としたこと。後、付け加えるまでもないが、第19回党大会を2017年下半期に北京で開催することも決定された。

ではこのコミュニケをどのように評価すればよいのだろうか。中国国内外の論評を見ながら解説を試みたい。

「習近平同志を核心とする」

まず、「習近平同志を核心とする」という文言を中央委員会全体会議のコミュニケに盛り込んだ点をどのように考えればよいだろうか。六中全会前に関心が寄せられていた点は、この「領導核心」を習近平とする表現が盛り込まれるか、68歳定年制や政治局常務委員会制度の変更に言及されるかという点だ。結果からいえば、「習近平同志を核心とする」という言葉は明確に盛り込まれた。だが、定年制については触れられず、また集団指導体制、党内民主の堅持という文言で政治局常務委員会制度も維持されることになった。

コミュニケではこう言っている。

「全会では、党中央の権威を維持することを固く決定し、全党において法令が厳しく執行されることを保障することは、党と国家の前途の運命がかかわることであり、全国各民族の根本利益のあるところであり、また、党内政治生活を規範化し強化するための重要目的でもある。党の指導を堅持するにはまず、党中央の集中統一指導を堅持することである。一つの国家、一つの政党、指導核心が、非常に重要であることは必至である。全党は思想上政治行動上、党中央の行動に一致した自覚を持たねばならない。党の各級組織全体の党員、特に高級幹部はすべて党中央に倣い(看斉)、党の理論と路線方針政策に倣い、党中央の政策配置に倣い、党中央が提唱する決定に呼応し、党中央の決定を執行し、党中央の禁止事項は決してしてはならない」

そしてコミュニケの結びでは「全会は次のように宣言する。全党は習近平同志を核心とする党中央を囲むように緊密に団結し、全面的に今回の全会の精神を深く貫徹し、政治意識、大局意識、核心意識、中央に倣えという意識を堅牢に打ち立て、党中央の権威と党中央の集中統一指導を動かぬよう定め、全面的に厳格な党の統治を継続して推進し、共同で政治生態の清らかで正しい風紀を作り、中国の特色ある社会主義事業の新局面を切り開くべく人民を指導するため党としての団結を確保しよう」

この表現を見る限り、習近平の権力集中が六中全会でさらに進められた、というふうに見てとれる。「核心」という言葉は、習近平が昨年暮れから周到に党内で浸透させようと画策していた権力集中の象徴的ワードだ。共産党の歴史において、この「核心」という形容詞を使われたのは毛沢東、鄧小平、江沢民だが、江沢民に関しては、鄧小平が江沢民を「核心」と位置付けたのであって、江沢民が自らそれを名乗ったのとは少し違う。自らを「党中央の核心」と呼ばせ、しかも全党が自分を核心とする党中央に「看斉」(右へ倣え)するよう求める「集中統一指導」を打ち出している。そういう意味では、習近平は自らを毛沢東、鄧小平に次ぐ三人目の核心、と言いたいようだ。

「安寧の日を望めなくなった」

中国共産党中央文献研究室出身の在米共産党史研究家・高文謙がVOA(ボイスオブアメリカ、米国営華人向けラジオ)の対談番組でこうコメントしている。

「六中全会の最大の注目点は、習近平の核心としての地位が確立されたことだ。年初からあらゆる手段を使ってこの核心ブームを創ろうとしてきた。習近平がなぜ核心にここまでこだわるのか? 核心地位は“最後の決定権”を意味するからだ。鄧小平の言葉を引用すれば、“鶴の一声”というやつだ。かつて延安整風(1940年代の毛沢東による反対派粛清運動)を通じて、『主席は最終決定権を有する』という決議が明文化された。今(の集団指導体制)では、国家主席は大きな権力を有するが最終決定権はない。党内の駆け引きの中で、一票の権利はあっても否決権はなく、最終的には多数決で決定する。このままでは、習近平は第19回党大会で自分に有利な人事布石が打てないのだ。…現在、“核心”地位を得て、また手の内に『党内政治生活準則』や『党内監督条例』をもって、政治局常務委員に自分の意見を押し付けることが可能になった。反対者はこの準則・条例をもって処罰すればいいわけだから。『核心』の冠を得て、正真正銘の核心に一歩近づいたと言える。習近平のやり方が、人心を納得させることができるかは今後見ていく必要があるが」

ちなみに高文謙は引き続き、毛沢東が最終決定権を掌握した後、文革路線にひた走った歴史に触れて、毛沢東と似た性格の習近平が核心になったことで「党も国も民も安寧の日を望めなくなった」と不穏なことを言っている。

一方、このコミュニケのもう一つのポイントは「党内民主」「権力集中」の堅持を強く打ち出していることだ。これは「習近平の核心地位確立=否決権獲得」とはいかにも相反する内容ではないか。これについて、同じくVOAの同じ番組で、在米中国政治評論家の陳破空が次のようなコメントをしている。

「滑稽であり悲劇である」

「習近平は“核心”の称号を得て勝利したといえるが、完全な大勝利とはいいがたい。半分の勝利というべきだ。あるいは辛勝というべきか。なぜなら相当な妥協をせざるを得なかったからだ。つまり他の派閥と妥協した結果、“集団指導体制の堅持”を強調し続けなければならなかった。…これは、習近平の権力が相当の抵抗を受けた証拠といえるだろう。この種の抵抗勢力は、中・下層の党員、地方党員にはなくとも、ハイレベルの幹部、特に政治局常務員、政治局員、中央委員会の中には存在している。これら最高権力機構の中に親習近平派は依然少数なのだ。だから第19回党大会の人事こそが、最大の鍵となる。

習近平は“核心”地位を求めて、まるまる四年、苦しい権力闘争を経て、なんとか願いを叶えた。これは中国一党専制制度の疲弊が深刻であるということの証でもある。もし、民主国家ならば、指導者は選挙によって選ばれ、人民から権力を授与され、すぐに核心になって大きな権力を掌握できる。同僚との権力闘争によって“核心”の地位を勝ち取る必要も、政治老人(長老ら)の顔色をうかがう必要もないのだ。…まるまる任期一期分を、中国では狭い政治世界の権力闘争の中で喘がねばならないとは。これは一党専制が日ごと、袋小路に迷い込んでいるということだ。中国共産党が米国の大統領選を嘲笑する一方で、自分たちの共産党専制下の内部闘争を笑えないとは、滑稽であり悲劇である」

この二人のコメントは、私が感じた印象と近い。このコミュニケの一番の見出しは「習近平“核心”的地位を明文化」だが、現実にはかなり妥協を強いられ、集団指導体制の堅持に言及せざるをえなかった。習近平は一歩、権力集中、独裁体制に近づいたが、その道のりには相当の抵抗勢力が存在する。

ここで興味深いのは、党内の風紀粛清に関する法律、党内監督条例と党内生活準則を制定する狙いについてだ。この二つの法律を制定することは、鄧小平時代から不文律として続いていた「刑不上常委(政治局常務委員経験者は司法の刑罰に問われない)」を、はっきりと否定し、反腐敗キャンペーンに聖域を設けないという意味である。香港紙・明報が指摘していたが、2015年4月、王岐山(党中央規律検査委員会書記)が米国の政治学者フランシス・フクヤマらと対談した時、「私が捕まえた中に紅二代(親が革命戦争参加者や建国の功労者である二世官僚・政治家・企業家)はいない」とため息をつき、党内に完全な自浄作用を求めることが難しいと嘆いたという。

この条例・準則の施行によって紅二代や太子党、政治局常務委員など従来、聖域とされていた党中央幹部に対しても汚職摘発できるというならば、これは習近平が江沢民や曾慶紅を反腐敗で追い詰めるつもりかもしれない。だが「いかなる例外も認めない」ということは、現役の党総書記、国家主席も例外ではないともいえる。習近平とて脛に傷がないわけではないのだ。文革ばりの聖域なき権力闘争を仕掛けるというなら、習近平自身も返り討ちにあう可能性はあるだろう。

「またやっているのか」

もう一つ、党内幹部の私有財産権を許さないと言明したことも、習近平にとっては諸刃の剣だ。党幹部の私有財産は90年代の改革開放による経済環境の激変にともなって出現し、今の権貴政治(産官結合、権力と富の結合)の温床となっている。この時代、最も私有財産を蓄えたのはいうまでもなく上海閥、江沢民派だが、習近平とて元・上海閥。彼の一族の不正蓄財疑惑はブルームバーグも報じている。

毛沢東が政敵に返り討ちにあうことなく、延安整風や文化大革命を通じて権力集中を発揮できたのは、そのカリスマ性による大衆動員力だった。では習近平には、その大衆動員力があるのだろうか。六中全会直前、CCTVが習近平の反腐敗キャンペーンの成果をまとめるドキュメンタリー番組「永遠在路上」(全8回)をゴールデンタイムに放送した。これは習近平政権下で汚職で捕まえられた党や政府の高官が出演して涙ながらに懺悔し、庶民に習近平を礼賛するコメントを語らせる、あからさまな習近平礼賛番組だった。

共産党の執政党としての地位の正当性を危うくしているのは党内の腐敗であるとし、習近平こそがその腐敗をただす英雄として描きつつ、合間に整風運動時代の毛沢東の映像などを差しはさみ、「毛沢東時代のようにクリーンな共産党に戻る」といったメッセージを発している。

だが、こうした宣伝番組は、農村の老人たちならばいざしらず、スマホ時代の若者に対して絶大な感染力があるかというとそうではなく、むしろ、またやっているのか、といった冷めた反応の方が強い。というのも4年間、反腐敗キャンペーンを行っても、若者の貧困問題も解決できず庶民の暮らしは改善されていない。その一向に改善されない生活苦の不満の矛先は、むしろ政権の方に向き始めている。

在米華字メディア明鏡集団総裁で、党中央にもディープスロートを持つ何頻がVOAにこんなコメントをしていた。

「多くの人が、習近平は(革命)戦争を経験しておらず、真の“核心”にはなれないと言っている。ただ、今の官僚は、ほとんどまともな功績を持っておらず、習近平は地位上の優勢がある。ただ情勢が変動する要素も非常に豊富にある。さらに言えば、彼はあえて責任ある地位を引き受け、多くの組織・機関の組長も務めている。権力を振り回すだけでなく、責任を担う勇気も必要なのである」

さらに何頻は別のVOAの番組のコメントでこう語っている。

「習近平がこのように早く核心地位を獲得できたということは、勇敢にも中国政治の一切の責任を自ら担うということである。だから中国問題をうまく処理できれば、習近平の功績であるが、問題が起きれば習近平の責任である」

しかしながら、何頻は政権に変数が出現する可能性が大きくなっていることも認識しており、「習近平の権力集中は中国共産党の新しい政権モデルになる可能性もあるし、中国共産党が習近平で終わる可能性もある」とも語った。

野望と孤立と攻防と

こうした論評を総じてみると、一つはっきり言えるのは、六中全会コミュニケの中に、習近平のあくなき権力集中の野望とその孤立、それを阻む強い反対派勢力との激しい攻防の跡があり、この激しい権力闘争は今後も一層、血なまぐさく、ひょっとすると習近平自身が返り傷を負いかねない激しさを見せるかもしれない、ということである。

本来、為政者が本当に権力を掌握していれば、わざわざ“核心”という言葉を持ち出す必要はない。“核心”に意味があるかどうか、習近平が勝利者であるかどうかは、政治局常務委員会の人事と今後の反腐敗キャンペーンの行方を見てからでないと何とも言えない。

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『朴槿恵の下野か、戒厳令か 「国政壟断事件」で崖っ縁に立つ韓国』(10/31日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『韓国大統領周辺の醜聞、発火点は名門・梨花女子大 疑惑の女性の娘の入試疑惑で設立以来総長も辞任』(11/1JBプレス 玉置直司)について

韓国は民度の低い社会と言うのが分かります。崔順実に抗議するため、検察庁で犬の糞を投げつけたり、クレーン車を突入させたりと。中国の趙薇が旭日旗に似たワンピースを着て舞台に上がったら糞をかけられた事件を思い出します。

http://j.people.com.cn/2002/06/06/jp20020606_17818.html

こういうことが発想として出て来るのは、中華と小中華と言われる人達です。日本でもそういう行動を取ったり、人種差別とかヘイトスピーチとかわめく輩は在日中国人か在日朝鮮半島人と見て間違いないでしょう。日本人にはそういう文化はありませんので。

沖縄・高江で、ヘリパッド建設阻止で動いている中にも左翼の他にそれと思しき人がいるのがネットで流されています。マスメデイアは大阪府警の「土人」発言しか報道しませんが、反対派の罵詈雑言ほど聞きにくいものはありません。結局、左翼と在日に牛耳られているから報道しないというのが分かり、やがて信用を失って、経営破綻するのは間違いありません。真実の報道、公正な報道から如何に遠いのかということです。使命を忘れた報道機関は共産党のプロパガンダ機関と一緒でしょう。メデイアを牛耳る老経営者には見えていないのでしょう。

韓国にも大統領弾劾制度があります。盧武鉉が訴追されましたが、棄却されました。朴槿恵は野党から首相を選んで逃げ切ろうとしていますが、野党が反発し、逃げ切れないのでは。韓国社会はトップが我先に逃亡、潘基文のようにネポテイズムが当たり前です。腐った社会と言えます。中国の賄賂同様、皆やっていることではないですか?韓国政治は地域で分断した政治を行うと言いますが、それもまた国としてのまとまりに欠け、国の力を落とすことになるのが分かっていません。良いように北の謀略にしてやられるのもそのためでしょう。今回の事件の発覚は裏で、北かTHAAD配備を許した朴槿恵追い落としの謀略があるのでは。

鈴置記事

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朴槿恵大統領の「国政壟断事件」への大規模な抗議デモが起きた。29日、ソウル中心部ではデモ隊が機動隊の阻止線を突破(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

朴槿恵政権が「国政壟断事件」で国民の支持を失った。北朝鮮の核武装が目前に迫り、国の死生を決めるという時に、韓国は司令塔が「死に体」となったのだ。

10月
24日 JTBC、大統領演説の草稿など機密資料が崔順実氏に漏えいと報道
25日 朴大統領が資料提供を認めて国民に謝罪
   
26日 検察が崔氏自宅など家宅捜索。外交資料なども漏洩とメディアが報道
28日 朴大統領は首席秘書官全員に辞表を出させる。秘書室長が辞表提出
29日 青瓦台、検察の家宅捜索を拒否。ソウルで2万人デモ
30日 青瓦台、検察に資料提供。朴大統領は一部首席秘書官らを辞任させる。与党、挙国一致内閣を提案するも野党は真相究明が先と拒否。崔氏帰国
「国政壟断事件」の動き(2016年)

警察の鎮圧も不可能に

鈴置:保守運動の指導者の趙甲済(チョ・カプチェ)氏が、自身が主宰するネットメディアに「『下野か戒厳令か』に行く前に」(10月28日、韓国語)を載せました。

—戒厳令!?ですか。

鈴置:このままなら、そうなりかねない、との主張です。その部分を要約しつつ訳します。箇条書きで書かれていまして、文頭の数字は項目の順番です。

  • 12.朴槿恵大統領の取り得る手段は多くない。第1に(事件の核心である)崔順実(チェ・スンシル)母子を一刻も早く帰国させ、捜査に協力せねばならない。2つ目は「自分も調べを受ける」と宣言すべきだ。3番目。青瓦台秘書室の人事を一新せねばならない。4番目。与党、セヌリ党を脱党すること。5番目。後は国務総理に日常的な業務を任せ、自身は経済再生と北朝鮮の核問題への対処と(2017年12月の)大統領選挙の公正な管理に専念すると宣言する。6番目。下野はしないことを明らかにする。
  • 13.このような措置が行われるのか? 行われたとしても(国民から)受け入れられるのか? 今は問題が民主的な制度の場内に留まっている。メディアと国会が状況を主導している。もし、場外(街頭)集会が始まれば問題はさらに複雑になる。狂牛病暴動のようなことが再演されれば、今度は警察力による鎮圧が不可能になるかもしれない。国民の支持がなければ警察も踏ん張れない。デモ隊が青瓦台を包囲し、警察が無力化すれば、大統領は「下野か戒厳令か」の選択の岐路に立つかもしれない。

阻止線を突破したデモ隊

—朴槿恵政権の命運はデモ隊が握っているということですね。

鈴置:その通りです。韓国では直接行動が威力を発揮します。歴代政権が最も神経を使ってきたのは、青瓦台をデモ隊に取り囲まれないかということでした。

1960年、初代の李承晩(イ・スンマン)政権はデモで倒れました。この政権は「戒厳令」で大衆運動を抑え込もうとしましたが、最後は米国の圧力で「下野」したのです。

1987年には数十万人ものデモ隊が連日、ソウル市内で大集会を開き、軍出身の全斗煥(チョン・ドファン)政権は民主化を受け入れざるを得ませんでした。この時の政権は任期を全うしました。が、全斗煥大統領は退任後、刑務所に送られました。

—10月29日の夜、ソウルでは2万人のデモが行われたそうですが。

鈴置:ええ、趙甲済氏がこの「警告」を載せた翌29日に、韓国では「朴槿恵退陣」と「真相究明」を要求するデモが各地で起きました。

参加者は1980年代の民主化運動と比べれば、1ケタ少なかったのですが注目すべきは、ソウルでデモ隊が機動隊の阻止線を突破したことです。

デモ隊は一番の大通り、世宗路の青瓦台のそばまで進出しました。1980年代の激しいデモでも、そんなことはまず、ありませんでした。

「退陣要求」に共感した警官

—李承晩政権も最後は激しいデモに見舞われました。

鈴置:李承晩政権を倒すことになったデモは警察の阻止線を突破、警官隊が発砲して多数の死者を出しました。

「阻止線を超えたら政権が倒れた」という記憶の下に「それを防ぐために警察は銃器を使用する」という暗黙の了解と言いますか、ガイドラインが韓国社会にあったのです。

今回のデモに関し、左派系紙のハンギョレは「警察と対峙しながら市民ら『明日も来る』」(10月29―30日、韓国語版)で「機動隊が弱腰だった」と報じています。以下です。

  • 「警察官(機動隊員)のこんな言動は初めて」という話がデモ現場で交わされた。一部の警察官は微笑みを浮かべ、デモ隊と共に行進するような動きを見せた。ある警察官は「私たちも人間だのに、それ(訳注・デモ)もできない」と語った。デモ隊からは「警官も加われ」とのシュプレヒコールも上がった。

趙甲済氏が「国民の支持がないと警察も踏ん張れない」と恐れていたことが起き始めたのかもしれません。政権側がきちんと対処しないと「下野か戒厳令か」に至る可能性が出てきました。

大統領の長年の腐れ縁

—趙甲済氏の「アドバイス」通り、朴槿恵政権は10月30日に崔順実氏を帰国させたうえ、青瓦台の人事も一新しました。

鈴置:デモが効いたのでしょう。青瓦台は検察の捜査に対しても、29日にはろくな資料を出さなかった。それが翌30日には資料請求にそれなりに応じたようです。

ただ、「宿題」は残っています。国民が納得するほどの真相究明をしない限り、デモは収まらないでしょう。もっとも、その真相究明の結果が国民の怒りに油を注ぎかねません。

今回の「国政壟断事件」は、朴槿恵大統領の古くからの知り合いである「崔一家」が、大統領との深い関係を元手に特権や利権を漁ったという構図です。

この腐れ縁を国民も薄々とは知っていました。が、改めて「真相」を突きつけられれば、朴槿恵氏の大統領の資質に疑問を抱き「退陣しろ」と叫ぶ人も出てくるはずです。そうなれば韓国の混迷は一層深まります。

挙国内閣を拒否した野党

—ことに今、北朝鮮が核武装する寸前です。

鈴置:そこです。今は、米国が先制攻撃して北の核を潰すか、あるいは北と手打ちして韓国を事実上、見捨てるかという際どい状況にあります(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

趙甲済氏は、こんな時に韓国から司令塔が失われたらおしまいだと憂慮し、大統領に「下野はしないと宣言すべきだ」と意見具申したのでしょう。もちろん国民の不満を抑えるために「自身も調査を受けよ」と書いたのだと思います。

与党のセヌリ党も「挙国中立内閣を作れ」と言い出しました。野党の重鎮も取り込んで事態の鎮静化を図る作戦です。

でも、野党第1党の「共に民主党」はその手に乗るつもりはなさそうです。「まず、真相究明が先だ」と挙国内閣を拒否しました。

船長のいない船に

—展開は?

鈴置:全く読めません。1つだけ言えることがあります。韓国が船長のいない船になることです。

仮に挙国中立内閣を作ったとします。この際、大統領の権限は大幅に縮小される見込みです。でも、憲法で定められた責任内閣制というわけではない。大統領との住み分けは極めて難しい。

その内閣も与野党の呉越同舟になりそうです。「北朝鮮の核」や「北への先制攻撃」といった微妙な案件で、容易に結論は出せないでしょう。

一方、朴槿恵大統領が従来の職責を維持した場合です。法的にはそのままの権限を与えられても、国民からこれだけ不信感を買った以上、お飾りの大統領になるのは確実です。「壟断事件」以前から、レームダックと言われていたのですから。

(次回に続く)

玉置記事

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韓国ソウルで行われた朴槿恵大統領の機密漏えい問題に対する抗議デモで、朴大統領(右)と崔順実氏のマスクをかぶってポーズを取る参加者たち〔AFPBB News

韓国の朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領の周辺で起きている女性実業家を巡る数々の疑惑で韓国の国政は大混乱に陥っている。問題の女性は2016年10月31日、ソウル中央地方検察に出頭し、本格的な捜査が始まった。

今回の問題で世論の怒りを買ったきっかけとなったのは、名門・梨花女子大への「特別入学疑惑」だった。梨花女子大は、設立以来の騒動で総長が辞任するなど大揺れだ。

2016年10月31日午後3時、疑惑の渦中にある崔順実(チェ・スンシル=1956年生)氏がソウル中央地検に出頭した。韓国では検察に出頭する際、取材陣が入り口前に「フォトライン」を作り、召喚された人物がここでカメラのフラッシュを浴びる。

山ほどある崔順実氏への疑惑

崔順実氏の場合、韓国内での関心がきわめて大きかったため、100人以上の取材陣や「崔順実拘束!朴槿恵下野!」と叫ぶ市民団体関係者が詰め掛け、「フォトライン」周辺は大混乱した。崔順実氏はもみくちゃにされて地検の建物に入って行った。

崔順実氏に対しては、山ほど疑惑が出ている。

国家機密を含む青瓦台(大統領府)の文書が大量に「民間人」である崔順実氏に流出してのか。崔順実氏が青瓦台や政府高官の人事に介入していたのか。大企業から巨額の資金を集めて文化、スポーツ関連の財団を設立させ、これらの財団を通して崔順実氏が経営する会社を支援していたのか・・・。

疑惑は次々と出てきて、韓国社会全体が騒然としている。

日本のメディアでも詳しく報じられている通り、崔順実氏と朴槿恵大統領の関係は、崔氏の父親の時代からのことで、もう40年以上になる。この間、何度も、「異常な関係」との指摘を受けてきたが、大統領は強く否定してきた。

一般の国民から見れば、「崔氏にかかわる疑惑」には半信半疑で、「前にも何度も聞いたことではないのか?」という雰囲気もあった。

梨花女子大の熱い夏

こんな反応を一変させ、世論の怒りに火をつけたのが、「梨花女子大問題」だった。

梨花女子大は、2016年夏、創立以来の混乱に陥っていた。

2016年7月15日、韓国の教育部は、社会人学生などを対象とした「生涯学生過程」を新設する大学として梨花女子大などを選定した。さまざまな理由で大学に進学しなかった社会人を受け入れる新学部の認可だった。

梨花女子大は、「未来ライフ学部」新設を申請していた。この構想が、学生や卒業生の強い反発を招いた。

梨花女子大と言えば、韓国で最も伝統がある女子大だ。最近でこそ、女子大人気のかげりで「難易度」は以前ほどではないが、学生や父兄、卒業生の愛校心とプライドは高い。

厳しい大学入試を勝ち抜いて梨花女子大学に入学したのに、社会人が比較的簡単に入学できる学部を新設することに対して強く反発したのだ。

学生有志は7月28日から学内ろう城に入った。名目は、「政府の補助金や社会人からの学費をあてにした安易な新学部の設置は、教育の場を金儲けの場に変える暴挙で断じて許せない」ということだった。

学生の言い分にも一理はある。新学部を推進した総長は、決定を急ぎ、学内や卒業生への説明が足りなかった面もある。

それでも学生のろう城に対しては、「結局、梨花女子大の卒業証書の価値が下がることを恐れた既得権者のわがまま」という批判もあった。

ともあれ、ろう城は延々と続き、大学は結局、新学部の設置計画を取り下げた。それでも学生は、総長の退陣を要求してろう城を続けた。

総長も一歩も引かず、事態は泥沼化していた。

こう着状態にメガトン級疑惑

そんな中で、突然、メガトン級のスキャンダルが飛び出した。崔順実氏の娘の「入学疑惑」だった。

崔順実氏の娘は、乗馬選手だ。高校生だった2014年の仁川アジア大会では団体競技で金メダルを獲得している。

この娘は2015年春、梨花女子大に入学した。優秀なスポーツ選手を対象とした特別入学枠での入学だった。

ところが、梨花女子大学は従来、乗馬を該当競技としていなかった。急に「乗馬選手」も選抜の対象になり、合格者になった。

それだけではない。この娘は、入学後も、「競技出場」などを理由に、ほとんど大学に姿を見せていない。それにもかかわらず、単位を取得しているのだ。

「大統領周辺からの圧力があって入学基準が変わり、単位取得でも便宜を与えているのではないか」

豊富な補助金がつく新学部の設置許可と入学疑惑を結びつける声もある。ろう城していた学生は一気に勢いづいた。それだけではない。

「入試」と「兵役」は韓国最大の関心事

韓国では、「入試」と「兵役逃れ」にかかわる不正は、国民の圧倒的な関心事だ。崔順実氏の娘の問題は、梨花女子大のろう城問題を超えて、全国民的な関心事となった。

10月19日、梨花女子大の総長は辞任した。130年の歴史で、総長が辞任するのは初めてのことだった。

学内での混乱の責任を取ったが、決定打は、崔順実氏の娘の入学疑惑で学内外から強い疑惑提起と批判を受けたことだ。

梨花女子大にとっても、創立以来の重大危機になってしまった。同時に、この「入学疑惑」が「崔順実疑惑」への国民の怒りに火をつけてしまった。

「入試」はそれだけ敏感な問題なのだ。

国民の怒りが高まる中で、メディアも野党も新しい疑惑を次々と暴き立てる。出るは出るは・・・。

崔順実疑惑はこうして、大スキャンダルに発展してしまった。

10月29日、ソウル市内では疑惑に抗議する集会が開かれた。参加者は1万人を超えたという。参加者の中には、制服を着た高校生や大学生、一般市民が大勢詰め掛けた。一部の反政府市民団体による「政権打倒集会」とは全く違う様相になった。

「不正入試疑惑」がその引き金になったのだ。

10月31日、崔順実氏が検察に出頭した日、韓国の教育部は、梨花女子大に対する「特別監査」に着手した。

崔順実氏の娘は、高校時代にも出席日数不足が問題になった。これを注意した教師がいたが、崔順実氏が学校に出向いてこの教師を罵倒したとの報道もある。さらに複数の教師に現金の入った封筒を渡そうとした。

相当な「モンスター」ぶりだが、高校時代の疑惑についてはソウル教育庁がすでに調査に入っている。

梨花女子大学はこれまで、学内規則にしたがって処理してきたという立場だ。

これに対して教育部は、崔順実氏の娘が入学した過程と入学後の単位取得について徹底的に調査する。韓国メディアは「場合によっては、入学取り消しもある」と報じている。

今回のスキャンダルの発火点は、梨花女子大だったとも言えるのだ。

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『ウソまみれの中国。6.9%成長の裏で進行する「第2のアジア通貨危機」』(10/27MONEYVOICE北野幸伯)、『地球・月系の支配を狙う中国の野望』(10/27週刊新潮 櫻井よしこ)について

10/29産経ニュース<【田村秀男のお金は知っている】中国、日本国債爆買いの狙い 円に対する人民元安政策か

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今年2月、証券業界筋から「中国が日本国債を爆買いしている」との情報を耳にした。財務省の国際収支統計で国別の対日証券投資の動向が明らかになるのは2カ月後で、4月に2月のデータを見ると購入額がかなり減っていた。つい先日、最近のデータをみると、中国による対日債券投資は4月に再び活発化し、6月まで大きな規模で行われたことがわかった(グラフ参照)。(夕刊フジ)

中国の対日投資の大半は国債であり、そのうち主に短期債である。短期債は価格の変動リスクが小さく、外国為替市場での通貨投機の手段となる。現在の円高基調は昨年12月に始まり今年1月から6月にかけて加速した。円高トレンドと中国の短期債投資動向は一致している。円高の背後に中国あり、である。

円投機は中国勢に限らない。米欧のヘッジファンドはもっと強力だし、やみくもに円を買うわけではない。円高に賭けるだけの合理的な根拠がある。それは日米間の実質金利差の縮小・逆転だと、本欄では以前から指摘してきた。2014年4月の消費税増税後のデフレ圧力のために、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は昨年12月、米国よりも高くなってしまった。この2月には日銀がマイナス金利政策に踏み切ったが、実質金利は逆に上昇を続ける始末だ。中国の対日短期債投資はその線にも沿っている。

中国のどこが日本国債の爆買いを行ってきたのか。大手の国有電力会社だとする見方が有力だ。電力会社は現金収入が豊富で、手元資金を日本の証券会社に委託して臨機応変に売買し、円高投機で大いに利益を稼ぐ。日本の財務省は米オバマ政権の反発を恐れて円売り市場介入に動かないので、投機家にとってはやり放題だ。

円債投機は国有電力会社の独断であって、習近平政権は無関係なのだろうか。

中国の日本国債買いは米国債売りと対になっている。昨年12月から今年8月までの9カ月間累計で、中国は米国債を日本円換算で約14兆円売却した。この間の日本国債買いは10・7兆円に上る。米国債売りと日本国債買いはいわばセットであり、北京の政策的意図が底流にあるはずだ。

この意図とは、円に対する人民元安政策だとみる。中国は対円、対ドルとも人民元を安く誘導している。昨年11月に比べ、この8月時点で、元は対ドルで4・5%安、対円で21%安である。中国人民銀行はドルに対する基準レートを人為的に設定し、基準レートに対して上下2%の変動幅に収まるように管理する。対ドルでなだらかな元安とする一方、東京市場では円債を買って円高を助長する。

中国製品は今や鉄鋼、自動車、家電、情報技術(IT)関連を含め、広範囲の分野で日本製と競合する。円高・元安で日本企業の対中投資継続を促す効果もあるだろう。対日債券投資は今、縮小気味だが、北京はもう一段の円高・元安の機会を待っているに違いない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)>(以上)

利に敏い中国人だから、あらゆる手(汚い手でも)を使ってでも儲けようとするでしょう。騙すのはお家芸です。対$、円で人民元を安くして中国の輸出活性化(輸入相手国が相対比較で$高と円高となり競争上有利)と日本国債購入での円高誘導策で日本に投資を促す狙いとのこと。中国の企業を買っても良いことはありません。自由主義諸国における相互主義はありませんから。

①企業の土地の所有権はなく、使用権だけ。勿論、個人の不動産は言わずもがな。

②有力企業の株式の過半数は押えられない。

③株の過半数を押えたとしても、「董事全員一致の原則」がある。1%の株主(中国側)でも言うことを聞かないと経営の決定ができない。

④Due Diligence が信用できない。日本の法律事務所、監査法人に中国企業の落とし穴を見つけるスキルはない。

⑤契約も隠れた瑕疵ある契約の場合が多い。基本的に中国人に有利になる場合は、契約の条文を挙げて主張するが、相手側に有利になる場合は無視するのが常。後は泣き落とし。甘い日本人は手玉に取られる。

IMFが人民元をSDRに組み込んだのは、時期尚早だったのでは。資本取引の自由化に逆行する行動を採っているではないですか。そんなものは分かり切った話です。彼らは騙すのが得意ですから。ラガルドも鼻薬が効き過ぎたのでは。

宇宙への野心を顕わにしてきたという櫻井氏の記事を読むと、米ロは如何に愚かな行動を採ってきたかというのが分かります。米ロが争うのを漁夫の利として中共は活かしてきました。ソ連についたり、米国についたりと。日本と中国国民党を戦わせたのも彼ら一流の戦術でしょう。

彼らの行動を見ていると偽書の「田中上奏文」其の儘の行動を採っているではないですか。先ず、南シナ海、西太平洋、一帯一路と地球制覇の野望だけでは飽き足らず、宇宙にまで手を出そうとしている強欲集団です。世界はこの悪逆な中共の野望を押しとどめないと。経済を崩壊させるのが一番良いでしょう。自由主義諸国は目先のことだけしか考えないのではなく、世界の平和のために行動を起こさなければ。

北野記事

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中国経済の「負の連鎖」がいよいよ本格化か。2015年度のGDPを「6.9%の成長」と発表している中国ですが、「現状とはかけ離れている」とするのは無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さん。では実際、中国経済はどのくらい危険な状態にあるのでしょうか。北野さんがさまざまなメディアの記事を引きつつ、わかりやすく解説して下さいました。

中国の現状はサブプライム危機やアジア通貨危機前より厳しい

攻撃性を増す中国

中国の挑発が、ますますエスカレートしています。

防衛省統合幕僚監部は14日、7~9月の航空自衛隊戦闘機による中国機への緊急発進(スクランブル)が208回で、前期より9回増えたと発表した。四半期ベースで3期続けて過去最多を記録した。

中国軍の戦闘機とみられる2機が9月25日、戦闘機としては初めて沖縄本島と宮古島の間を通り、東シナ海と太平洋を往復するなど、中国軍機の行動範囲は拡大が続いている。

引用:中国機へのスクランブル、最多208回 7~9月 – 朝日新聞デジタル10月14日(金)22時57分配信

対中国機スクランブル、7~9月で208回(!)。毎日平均2回以上じゃないですか!心配です。なぜ中国は、ますます攻撃的になっているのでしょうか?どうも、経済が本当にやばいことと無関係ではなさそうです。

【関連】「北方領土断固奪還」で最後に泣く国、笑う国、ほくそ笑む中国=北野幸伯

中国経済、唯一信用できる指標は?

中国のGDP、2015年度は6.9%の成長だそうです。しかし、この数字を信用している人は誰もいない。「ホントは、4%だ!」とか、「いや、3%だ!」など、いろいろいわれています。要は、誰も正確な数字がわからない。

「中国のGDP発表は、あてにならない!」。なんと李克強首相も断言している。同首相によると、あてになるのは、

  • 電力消費量
  • 鉄道貨物輸送量
  • 銀行融資額

この三つは、「克強指数」として、世界的に知られています。小泉総理や安倍総理のブレーンをされた高橋洋一先生は、『中国GDPの大嘘』の中で、こんなことを書いておられます。

中国が発表する統計のうち、数少ない、というか、唯一信用できるのが、この貿易統計。貿易統計は外国との関係もあって捏造しにくい。相手国の「正しい」対中国貿易量を集計すれば正確な数値が求められるからだ。

そのとおりでしょう。日本の対中輸出額と、中国の対日輸入額は、同じ数字でなければならない。GDPやその他の指標と違い、ウソをつけば、即座にばれます。唯一信用できる貿易統計で見ると、高橋先生は、「2015年のGDPは、6.9%なんてとんでもない。おそらく、マイナス3%だ」(!)と断言されています。

ちなみに2015年の中国貿易。貿易総額は、前年比8%減の3兆9,586億ドル。輸出は2.8%減の2兆2,765億ドル。輸入は、14.1%減の1兆6,820億ドル。確かにこれで、「GDPは6.9%増です」って、「怪しい」を通り過ぎて「不可能」ですね。

輸出激減でついに始まった、中国経済「負のスパイラル」

では、2016年9月時点の中国貿易はどうなのでしょうか?

中国の税関総署が13日発表した9月の貿易統計によると、輸出が前年同月比10.0%減の1,845億ドル(約19.1兆円)と大きく減った。輸出の前年割れは6カ月連続で、減少幅が10%以上になるのは7カ月ぶり。世界的な貿易の低迷が、中国経済に重くのしかかっている。

引用:中国の輸出、急ブレーキ 9月は1割減、7カ月ぶり水準 – 朝日新聞デジタル10月13日(木)13時27分配信

輸出は9月、前年同期比で10%減少(!)。

9月は最大の貿易相手の欧州連合(EU)向けが約10%減るなど、米国や日本、東南アジア諸国連合(ASEAN)など主要な貿易相手向けの輸出が軒並み5%を超える大きな落ち込みを示した。

一方、9月の輸入は同1.9%減の1,425億ドル(約14.8兆円)で、2カ月ぶりの前年割れとなった。輸出が落ちこんだことで今後、中国の輸入にも影響が出る可能性がある。

引用:(同上)

輸入は1.9%減。2015年は、14.1%減でしたので、よくなっています。しかし、輸出は、昨年通期の2.8%減が、9月は10%減になっている。また、輸出が10%減ったということは、世界市場で中国製品の消費が10%減ったことを示しています。

そうなると、中国企業もそれにあわせて生産を減らすことでしょう。消費が減り、生産が減れば、企業の売上と利益が減り、所得も減ります。所得が減れば、中国企業、中国人は、投資も消費も控えることになるでしょう。そうなると、当然輸入も減っていくことでしょう。

図にすると、 世界における中国製品需要の減少 → 中国輸出減 → 中国生産減 → 中国所得減 → 中国消費減(輸入減)→ 中国生産減 → 中国所得減 → 中国消費減 → 以下同じプロセスの繰り返し。

止まらない人民元安。中国経済は崩壊間近なのか?

このように、中国経済に暗雲が漂っています。夕刊フジ10月15日付は、人民元安と資本流失が深刻であることを指摘していました。

中国の通貨、人民元の下落が止まらない。10月から国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に正式採用されたが、約6年ぶりの安値水準まで売り込まれた。

そんな中、中国からの資本流出は見掛けよりも深刻かもしれないと米投資銀行のゴールドマン・サックスが警告している。

人民元は「国慶節」の連休明けの10日から続落し、11日には一時1ドル=6.7148元と、2010年9月以来の元安水準になった。米国の利上げ観測やドル高も元売りに拍車をかけた。

ブルームバーグによると、8月の公式統計では、人民元決済を通じ277億ドル(約2兆8,700億円)が中国から流出した。

2014年までの5年間の月平均では44億ドル(約4,560億円)にとどまっている。

引用:中国、止まらぬ人民元安 見掛けより深刻な資本流出 ゴールドマンが警鐘 – 夕刊フジ10月15日(土)16時56分配信

人民元安、資本流出について、週刊東洋経済元編集長の勝又先生は、こう解説します。

人民元安と資本流出の背景について、週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏はこう解説する。

「SDR採用を決めた当のIMFが、中国の債務水準に警告を発しているうえ、国際決済銀行(BIS)は3年以内に中国で金融危機が起こる危険性があり、米国のサブプライムローン危機やアジア通貨危機の前より厳しい状況だと警告している。元売りや資本流出は避けられない」

引用:(同上)

「米国のサブプライムローン危機やアジア通貨危機の前より厳しい状況」だそうです。「中国、あるいは欧州(特にドイツ)から次の危機が起こる」というのは、世界的コンセンサスになりつつあります。パニくる必要はありませんが、心の準備と、できる対策はしておきましょう。

櫻井記事

いま、世界のどの国よりも必死に21世紀の地球の覇者たらんと努力しているのが中国だ。彼らは習近平国家主席の唱える中国の夢の実現に向かって 走り続ける。そのひとつが、宇宙制圧である。

21世紀の人類に残された未踏の領域が宇宙であり、宇宙経済を支配できれば、地球経済も支配可能となる。宇宙で軍事的優位を打ち立てれば、地球も支配できる。

10月17日、中国が2人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船「神舟11号」を打ち上げた背景には、こうした野望が読みとれる。内モンゴル自治区の酒泉衛星 発射センターから飛び立った中国の6度目の有人宇宙船打ち上げは、無人宇宙実験室「天宮2号」に48時間後にもドッキングし、2人の飛行士は30日 間宇宙に滞在する。

打ち上げは完全な成功で、計画から実行まで全て中国人が行ったと、総責 任者の張又侠氏は胸を張った。中国は独自の宇宙ステーションを2022年までに完成させ、30年までに月に基地を作り、中国人の月移住も始めたいと する。

いま宇宙には、日本をはじめアメリカやロシアなど15か国が共同で運営維持する国際宇宙ステーション(ISS)が存在する。ここに参加しない唯 一の大国が中国である。

中国はアメリカとロシアの技術をさまざまな方法で入手し、独自の開発を 続けてきた。また彼らは世界で初めて「宇宙軍」も創設した。その狙いは何か。少なからぬ専門家が中国の軍事的意図を懸念する。

アメリカのシンクタンク「国際評価戦略センター」主任研究員のリチャー ド・フィッシャー氏もその一人だ。氏が中国の宇宙開発に関して最初の警告を発したのは、85年だった。

「詳細な分析と報告を国防総省をはじめ、主要シンクタンクに提出しましたが、誰も私の危惧を理解しませんでした。中国が宇宙に軍事的野心を抱 いているということ自体、誰も信じなかった。私は変人扱いされ、中国の脅威を大袈裟に言い立てているだけだと思われたのです」

宇宙戦闘部隊

だが、中国の宇宙進出は、氏の指摘どおりの道を辿ってきた。いまや多くの人の目に宇宙における中国の軍事的野心は明らかだ。そうした中、氏は、中国政府の姿勢に興味深い変化が見られると、シンクタンク「国家基 本問題研究所」で語った。

「彼らは自分たちの宇宙活動について、以前よりずっと積極的に語り始めています。無論、国家機密は口外しませんが、イーロン・マスクが目論むような宇宙開発が実現されるとき、中国はそれを支配(dominate)しよう と考えていると思います」

マスク氏は南アフリカ生まれの起業家で、アメリカのシリコン・バレーの寵児にして宇宙企業「スペースX」の創業者だ。今年9月末、氏は新たな ロケットと宇宙船の開発計画を発表、地球滅亡に備えて火星への人類移住 を進めるという。

フィッシャー氏が続ける。

「中国はマスクの考えるようなビジネスから、宇宙資源の活用までひっくるめて宇宙経済を支配したいのです。その前に地球・月系の宇宙圏を自らの支配圏として確定させようとしています。それこそが中国の軍事・政治 戦略の基本です」

その第一歩がアジア地域での覇権確立だと、氏は語る。

「アジアにおいて軍事力、経済力、政治力で圧倒し、それを地球全体に広げていく。そのための能力を、現在、磨いています」

海や陸を制するには空を制しなければならない。空を制するには宇宙を制しなければならない。

その意味で中国は着々とアジア制圧の構えを築き、支配圏を広げているとして、あと10年もすれば、中国の覇権は現在よりはるかに目に見える明らかな形で出現すると、警告する。地球の覇者となるのと同時進行で、宇宙での支配力を強めているというのだ。

「想像して下さい。高高度の宇宙を制すれば、地球上のどの国もどの地域も制圧できます。中国の宇宙開発が濃い軍事的色彩を帯びているのは、宇宙開発の全てを人民解放軍(PLA)が担っていることからも明らかです。習主席は今年、軍の大改革を断行しました。そのときに新設された戦略支援部隊が、中国の宇宙戦略を支えています」

近い将来、PLA空軍に創設されると見られているのが宇宙戦闘部隊である。その長に、リ・シャンフー将軍の名が挙がっているという。

「リ将軍は2007年に中国が地上発射のミサイルで800キロ上空の軌道上にあった中国の衛星を撃ち落としたときの指揮官です」とフィッシャー氏。

中国の衛星破壊は当時世界を震撼させた。なぜなら、中国はアメリカの衛星も破壊できる能力を見せつけたからだ。アメリカ軍は高度のハイテクに依拠しており軍事衛星はアメリカ軍の生命線だと言ってよいだろう。

その意味で衛星破壊行為は宇宙戦争に踏み込んだ行為だと解釈されたのだ。それを指揮した人物が宇宙戦闘部隊の長になるということは宇宙戦争の体験者が長になるのと同じ意味だというのだ。

地球規模で衛星監視

アメリカの専門家たちを真に憂慮させる次元に至るまでの中国の努力は凄まじい。今年6月、彼らは南シナ海の海南島東部の文昌市から新世代ロケット「長征7号」を打ち上げた。

2030年までに米露と並ぶ宇宙強国になると決意している中国の宙開発の鍵を握るロケットである。

「今年から運用を開始した文昌衛星発射センターは今後、非常に重要な地球・月系支配の拠点となると思います。中国が南シナ海の支配に拘る大きな理由のひとつが、この衛星発射センターにあると、私は見ています」 と、フィッシャー氏。

中国は地球・月系支配のために、地球規模で衛星を追跡、コントロールす る監視基地網を築いてきた。

中国を中心に、パキスタンのカラチ、アフリカ大陸のケニアのマリンディ、ナミビアのスワコプムンド、南米チリのサンティアゴ、豪州西部のドンガラに、各々衛星追跡及びコントロールのための基地を築き上げた。 アルゼンチンにも、新しい衛星監視基地が間もなく完成する。

フィッシャー氏が、そうした衛星監視基地の意味を解説した。

「アルゼンチンは中国に基地を提供する見返りに、中国の衛星情報を貰う取り決めを結んでいます。もう一度、フォークランド紛争が起きたら、アルゼンチンは中国提供の情報を活用して、大西洋の真ん中で英国の艦船を 待ち伏せできるのです」

このような中国の宇宙進出を前に、オバマ政権はブッシュ前大統領が月開発計画を再開しようとしたのを、全て止めた。日本も参加するISSは2024年にも運用を終えるかもしれない。

日本はここで宇宙開発における国際協力体制を推進する強い力とならなければならない。

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『横暴な権力者を殺害した男の死刑は止められるか 追い込まれての報復に同情、広がる執行停止署名運動』(10/28日経ビジネスオンライン 北村豊)について

中国社会は如何に悪が蔓延っているかという記事です。法治国家を装っているだけで、その実、人治国家だというのが本記事からも窺えます。習近平が法治国家を目指すというのは「法に依り政敵を倒す」意味しかありません。それはそうです。賄賂で如何様にでもなるし、ネポテイズムの社会ですから、正義の実現には程遠い世界です。

多くの中国人には絶望しかない世界でしょう。一部の人間が権力と富を握り、恣に人民を抑圧するのですから。絶望から、自救行為に走ったとしても、相手が横暴な権力者であれば仕方がないように見えます。法が個人の権利を守ってくれない以上、「報復」ではなくて「正当防衛」になるのでは。

そもそもで言えば、生産手段の個人所有を認めない共産主義が本事件を引き起こしたと見るべきです。共産党幹部が土地を勝手に召し上げ、自分の懐を潤すことしか考えなければ、庶民の怒りに触れるでしょう。毛沢東は小作農を騙して、地主や知識階級を虐殺するよう仕向けました。今その咎めが出ているという事です。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という価値観で言えば毛沢東は天才としか言いようがないでしょう。偉大な「腹黒王」を天安門に掲げているのですから、中国人の本性が分かるというものです。

まあ、少しは中国社会も変わりつつあるのかと思います。以前は、死刑が確定すれば即日執行だったのですが。しかも、新聞報道やネットで助命嘆願されるというのは時代の変化を表しています。ただ、個人の権利より、共産党支配の秩序を重んじる為政者は、死刑確定判決・最高人民法院の死刑執行許可を出した以上、覆すことはしないでしょう。せいぜい、執行を無期延期するのができるくらいのことで、ほとぼりが冷めた頃、死刑執行して、家族には執行後に通知するだけで終わるのでは。

日本と言う国に生まれて良かった幸せを噛みしめないと。暴虐国家・中国が日本を侵略しようと狙っています。日本共産党や社民党、極左暴力集団の中核派や革マル派、蓮舫に代表される反日民進党の一部はその手先と見て良いのでは。日本国民がしっかりしないと中国の侵略を許すことになります。民主主義国家は中国のような独裁国家と違い、国民の代表を選挙で選ぶシステムです。選挙の時に、政党や個人の信念を吟味して選ばないと国民に不幸を齎すことになります。我々ができるのは、偏向新聞は購読しない、偏向TV番組は見ない、ネットで多面的な情報を取る、選挙で日本を愛する政治家を選ぶことです。くれぐれも「甘い言葉」に騙されないように。彼らの価値観は中国人と一緒ですので。

記事

2008年7月1日の午前9時40分頃、北京市出身の失業者“楊佳”(当時28歳)が上海市公安局の“閘北(こうほく)分局”を単独で襲撃して、警官6人を殺害、警官5人と保安係1人に重軽傷を負わせるという大事件が発生した。この後に“楊佳襲警案(楊佳警察襲撃事件)”と呼ばれた事件は、閘北分局傘下の“芷江西路(しこうせいろ)派出所”の警官が登録証の貼っていない自転車に乗っていた楊佳を職務質問したところ、楊佳が身分証の提示を拒み、自転車の出所に関する質問に答えなかったことから、芷江西路派出所へ連行したことに端を発する。

警官殺傷に喝采も

芷江西路派出所に連行された楊佳は、取り調べの警官に協力しようとせず、警官と言い争いになった。このため、警官は楊佳に対して過酷な取調べを行ったようだが、最後には楊佳の身元が判明し、自転車は借り物であることが証明されたことで、楊佳は釈放された。その後、北京市へ戻った楊佳は閘北分局へ訴状を送り、芷江西路派出所の警官に不当な取調べを受けたとして、当該警官の解雇と精神的慰謝料の支払いを要求したが、閘北分局は取調べに違法性はないとして、これを拒否した。

この対応を不満として楊佳は6月12日に上海市入りし、閘北分局近くの旅館に宿泊して下見を行い、出刃包丁や催涙ガスなどを買いそろえて準備を整え、7月1日に閘北分局襲撃を決行したのだった。午前9時40分頃、防毒マスクをかぶった楊佳は、閘北分局の正門に7本の火炎瓶を投げ込んで混乱を巻き起こした隙に、出刃包丁を手にして分局内に侵入し、警官を手あたり次第に切りつけて殺傷した後に、指導幹部を殺傷しようと分局ビルの21階まで上ったところで逮捕された。

“故意殺人罪”で立件された楊佳に対する裁判は、9月1日に“上海市第二中級人民法院(地方裁判所)”で開廷された一審で死刑判決が下されたが、これを不服とする楊佳は控訴した。9月12日に“上海市高級人民法院(高等裁判所)”で開廷された二審は、10月20日に控訴棄却の判決が下されて、楊佳の死刑が確定した。その後、“最高人民法院(最高裁判所)”から上海市高級人民法院の死刑判決に対する承認が下り、11月26日午前中に楊佳に対し薬物注射による死刑が執行された。

日頃から警察官の横暴さに憤りを感じている庶民たちの中には、楊佳による警察襲撃事件の発生に喝采を叫ぶ者も多数いた。彼らは楊佳をあたかも英雄であるかの如く祭り上げ、北京市“石景山区”に所在する“福田公墓(共同墓地)”にある楊佳の墓には密かに花を手向ける人が後を絶たないと言われている。

さて、前書きが長くなったが、本題に入る。第二の楊佳と呼ばれる“賈敬龍”という人物がいる。その賈敬龍に対して、2016年8月31日に二審の“河北省高級人民法院”は死刑判決を下し、10月18日に最高人民法院が死刑判決を承認したが、多数の知識人がこれに異議を唱え、最高人民法院に対して死刑の撤回を求めて署名活動を展開している。その詳細は以下の通り。

新婚新居を襲撃、取り壊し

【1】賈敬龍は河北省“石家荘市”の“長安区”に属する“北高営村”の農家の若者である。2013年の年初に相思相愛で4年間付き合った恋人が賈敬龍の求婚を受け入れてくれ、2人は5月25日に結婚することを決めた。喜び勇んだ賈敬龍は、自宅を新婚住宅に改装しようと、自力で工事を始め、あちこちに建築材料を買いに走り、連日のように夜遅くまで働いた。そうして新婚住宅への改装が完成すると、賈敬龍はコツコツ貯め込んだ1元硬貨を使って「“我愛我家(私は我が家を愛する)”」という文字を書き、それを額に入れて部屋の壁に掲げた。賈敬龍はそれほどに新婚住宅の出来栄えに満足し、恋人との結婚の日を待ち望んでいた。

【2】1979年、賈敬龍の父親は北高営村から宅地の配分を受けて自宅を建設したが、2007年に自宅を3階建てに改築した。ところが、それから5年後の2012年1月に父親は村の集合住宅の中にある3DKの部屋を購入し、そこへ賈敬龍の両親と姉が移り住んだ。その後、祖母がその部屋に同居することになり、両親、姉、祖母が各々1部屋を使うことになった。一方、賈敬龍は3階建ての家に残留していたから、彼が新婚住宅に改装したのは3階建ての家だった。

【3】2013年2月27日、中国共産党北高営村支部書記で村民委員会主任の“何建華”が組織した取り壊し部隊が賈敬龍の住む3階建ての家に突然押しかけ、家を取り壊そうとした。これに驚いた賈敬龍は警察に通報し、取り壊しには断固応じない姿勢を示したので、彼らは諦めて帰って行った。ところが、5月6日の早朝、何台のも黒色の乗用車に分乗した一団が賈敬龍の家を取り囲むと、家に向けて一斉にレンガを投げつけて去っていた。何かが起こりそうな気配に賈敬龍が家の周辺を監視していると、翌7日の午後5時頃に、何建華の指示を受けた取り壊し部隊20人以上が敬龍の家に再び押しかけて来た。この日は結婚式まで18日、賈敬龍の27歳の誕生日まで6日に迫っていた。

【4】彼らは家の前にクローラー式油圧ショベル1台を持ち込むと、問答無用とばかりに賈敬龍が改装した新婚住宅を強引に取り壊しにかかった。賈敬龍が制止しようとしても、彼らは一切聞く耳を持たず、手あたり次第に破壊するだけで、それは正に暴徒による乱暴狼藉としか言いようがなかった。賈敬龍は2階で暴徒が上ってくるのを懸命に阻止していたが、父親が彼らに取り押さえられ、親戚の人々が殴打されるのを見ると、2階から下りざるを得なかった。すると、暴徒たちは賈敬龍を地面に押し倒して殴る蹴るの暴行を加えたから、賈敬龍は頭部に打撃を受けて流血した。そうこうするうちに、賈敬龍の姉が警察に通報し、警官が現場へ急行したが、なぜか賈敬龍は“高営派出所”へ連行され、8日の午前3時過ぎまで取調べを受けて調書を取られた。ようやく帰宅を許された時には、家はすでに全て取り壊さて廃墟と化し、汗水たらして改装した新婚住宅も、準備した新婚の調度品も全て廃墟の下に埋もれていた。

【5】家が取り壊された2か月後、恋人は彼女の両親から諭されて賈敬龍と別れた。家を取り壊された上に、恋人との結婚もダメになり、賈敬龍は失意のどん底に陥った。絶望の中で、賈敬龍は北高営村を管轄する長安区の“検察院”と“信報局(陳情局)”に告発状を何度も送付したが、なしのつぶてだった。家取り壊しの黒幕である何建華を訪ねて立ち退き補償を要求したが、無視された。家を破壊され、補償もなく、恋人も失い、結婚の夢も消失した。全ての夢と希望を打ち壊された賈敬龍に考えられるのは、北高営村で思いのままに権力を振るう何建華に対する報復しかなかった。

くぎ打ち機で報復

【6】賈敬龍の家が取り壊されたのは、2009年11月に北高営村の村民委員会で決議された「旧村改造計画」によるものだった。賈敬龍の父親は2010年11月に祖母が受けている社会保険を停止すると脅されて、家の立ち退き協議書に署名させられていた。この協議書は村民委員会の意向に沿って書かれた違法な内容で、立ち退き側である父親を利するところが何もない代物であったが、そこには村の共同住宅の1室を売り渡す代わりに、2013年2月20日までに旧宅(3階建ての家)を引き渡す旨の項目が含まれていた。賈敬龍がこの協議書の存在を知っていたかどうかは定かではないが、たとえ知っていたとしても彼は協議書を無視したと思われる。一方、村党支部書記で村民委員会主任として北高営村を牛耳る何建華は、賈敬龍の父親からサインを取り付けた協議書を盾に、合法と称して賈敬龍の家を強制的に取り壊したのであり、引き渡し期限を過ぎた2013年2月27日に旧宅の取り壊し作業を行おうとしたのだった。

【7】賈敬龍は何建華に報復する機会を探った。家が取り壊されてから1年半以上の月日が経過した2015年の“春節(旧正月)”に機会は巡って来た。北高営村では春節には毎年恒例の春節祝賀会を開催するが、何建華は北高営村の最高権力者として必ず出席する。2015年の春節祝賀会の当日、賈敬龍は村民たちに紛れて祝賀会の会場に入った。彼は密かに何建華の後ろに近付くと、隠し持っていた改造したくぎ打ち機で何建華の後頭部を撃って死亡させた。報復を果たした賈敬龍は自首しようと、自分の車で会場に近い“長豊派出所”への道を急いだが、追い掛けて来た何建華の親族に捕まり、殴る蹴るの暴行を受けた後に、長豊派出所の警官に引き渡されて逮捕された。

【8】賈敬龍は“故意殺人罪”で起訴された。賈敬龍の裁判は、2015年11月24日に“石家荘市中級人民法院”で一審判決が下され、賈敬龍に対し故意殺人罪により死刑、政治的権利の終身剥奪が言い渡された。これを不服とした賈敬龍は“河北省高級人民法院”へ控訴したが、2016年5月17日に河北省高級人民法院が下した二審判決は、「控訴棄却、原判決維持」であった。こうして、賈敬龍の死刑判決は確定した。河北省高級人民法院は8月31日付で最高人民法院宛てに賈敬龍に対する死刑判決の承認を求める文書を提出した。これを受けた最高人民法院は、10月18日付で賈敬龍に対する死刑判決を承認した。この結果、賈敬龍の死刑執行はいつでも可能となった。死刑は最高人民法院の承認が出てから数日中に執行されるのが通例である。

死刑執行の停止を求める

【9】一審、二審を通じて賈敬龍の弁護団は、種々の論点から刑の軽減を求めたが、石家荘中級人民法院も河北省高級人民法院も弁護団が提起した意見を一顧だにせず、検察側の意見を全面的に採用して死刑判決を下したのだった。論点の概要は以下の通り。

(1)殺害された何建華は2度の刑罰を受けた前科者であり、服役後に北高営村党支部書記、村民委員会主任になった人物である。権力を笠に着て、男を騙し、女に手を出すなどして村民たちを苦しめており、かつて人妻にちょっかいを出して、その夫に十数カ所も切られたこともあった。そんな人物だから、ならず者を組織して賈敬龍の家の違法な取り壊しを命じたのは何建華と考えられる。

(2)賈敬龍の父親が脅迫されて署名した「家の立ち退き協議書」は内容から判断して違法であり、それを根拠に家を強制的に取り壊したことは犯罪行為である。その結果として、家を失い、恋人を失い、結婚を逃した賈敬龍は、精神的に追い詰められて犯行に及んだものである。その境遇には同情すべきものがあると判断するので、情状を酌量し、法の公平の観点から刑の軽減を要請する。

(3)何建華の襲撃後、賈敬龍は自首するために車で長豊派出所へ向かっていた。ところが、何建華の親族に捕まったため、自首することができなかった。彼が逃亡する積りだったならば、別の方向へ車を走らせたはずで、自首する意向であったことは明白である。

【10】10月21日、賈敬龍の姉の“賈敬媛”は、最高人民法院ならびに河北省高級人民法院に宛てて「賈敬龍故意殺人事件死刑執行停止申請書」を提出し、改めて賈敬龍の弁護団が裁判で述べた意見を提起して賈敬龍に対する死刑執行の停止を求めたのだった。

事件の経緯が長くなったが、10月18日に最高人民法院が賈敬龍に対する死刑判決を承認したことは、賈敬龍の弁護団からメディアに伝えられた。賈敬龍に同情的なメディアが賈敬龍の死刑執行が近いことを報じると、世論は賈敬龍に対する死刑判決の是非を巡って大きな盛り上がりを見せ、多数の法学者や弁護士がネット上で賈敬龍の死刑執行停止を求める嘆願書の署名運動を展開した。嘆願書の内容は以下の通り。

賈敬龍は罪がないのに大きく傷つけられたことにより殺人に及んだものであり、自首する積りであったし、罪のない者を傷つけてはいません。社会の矛盾がますます激しくなっている今日、賈敬龍の一命を留め、怒れる者たちに罪のない者を傷つけないことを覚えさせ、我慢できない者たちには自首する道を残すべきです。  我々は最高人民法院に賈敬龍に対する死刑判決の承認を撤回するよう強く要求します。  添付は友人ならびにネットで賛同した人々の署名です。

「殺すべきではない」89%

本稿を執筆している10月24日の時点では、賈敬龍の死刑が執行された形跡はないが、最高人民法院が一度は承認した死刑判決を覆すことはあるのだろうか。中国のニュースサイトが実施した「賈敬龍の死刑執行」に関する三択アンケート調査の結果は、(A)の「殺せ。さもないと、さらに多くの役人の殺害が誘発されるし、誰も立ち退きの仕事をやらなくなる」を選択したのはわずか3%に過ぎなかった。(B)の「殺すべきでない。さもないと、さらに多くの法律を信じず、武器を信じる人々が類似の犯行に走る可能性がある」を選択したのは89%、(C)の「判断が難しく、分からない」は6%で、圧倒的多数が(B)を選択した。

以上から分かるように、賈敬龍を第二の楊佳と呼ぶのは、賈敬龍に対して気の毒だと思うが、両者に共通するのは職権を笠に着て横暴を極める権力者に報復したことだろう。楊佳は警官6人を殺害したから死刑は当然だと思うが、賈敬龍は前科2犯の悪質な村役人を1人殺害したに過ぎない。内蒙古自治区“公安庁長(警察庁長官)”の“趙黎平”は、2015年3月に37歳も歳下の情婦を拳銃で射殺した故意殺人罪、銃器不法所持罪などで起訴されたが、2016年6月に行われた秘密裁判で下された判決は“死緩(死刑執行猶予)”であったと言われている。中国ではこの類の「官僚に甘く、庶民に厳しい」判決が下される例は枚挙にいとまがないが、中国共産党中央委員会総書記の“習近平”が標榜する法治国家を目指すのであれば、少なくとも法は万民に平等かつ公平でなければならないはずである。

殺害された何建華のように村党委員会書記兼村民委員会主任として村を私物化し、私腹を肥やす村役人は、全国各地にはびこっている。それにしても前科2犯の人間がどうやって村役人のトップになれたのだろうか。それはともかく、賈敬龍の死刑執行が停止され、死刑判決が見直されることを期待するものである。

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『ロシア、奥の手「大民営化政策」に漂うきな臭さ 背に腹はかえられない――プーチン大統領の苦しい“二枚舌”』(10/28日経ビジネスオンライン 池田 元博)について

10/30日経朝刊には<ロシアを熊に例えれば… 日欧の危機感に溝(風見鶏) 

暴れている熊がいるとしよう。正面に立たされる人は、牙が迫り、命の危険を感じる。ところが後方から見れば、お尻しか見えず、さほど怖くはない。ロシアを熊にたとえれば、前者の視線が欧州、後者がアジアといえるだろう。

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一方、中国を龍に見立てると、日欧の立場は入れ替わる。日本は龍の牙と向き合っているが、欧州は尻尾しか見ていないため、危機感が乏しい。欧州のベテラン外交官は打ち明ける。

「我々は中国から遠く離れており、物理的な脅威は及ばない。日米ほどには東・南シナ海問題を深刻には受け止めていない」

見える光景が違うのだから認識に大きな差が生じるのも当然だ。それにしてもロシアをめぐる日欧の脅威観の溝は、日本が思っている以上にずっと深いようだ。いま滞在しているロンドンで外交や安全保障専門家と話して痛感するのは、冷戦再来を思わせるほどのロシアへの警戒感だ。

「彼らは今や戦略敵対国になった。しかも対立は長年にわたり続く」。対ロ強硬派と呼ばれる識者だけでなく中道派もこう話す。大きな原因はロシアが軍事挑発を強めていることにある。

テムズ川にたたずむ大きな石造りの英国防省。10月21日朝、省内の空気が張りつめた。シリア沖に向かうとみられるロシアの空母機動部隊が最短で幅約34キロメートルしかない英仏のドーバー海峡に現れたからだ。「冷戦中にソ連の空母は出没したが近年はなかった。挑発的だ」。英国防省に近い安保専門家は語る。

これは氷山の一角にすぎない。10月上旬、ロシアは東欧にある飛び地の自国領カリーニングラードに、核弾頭を搭載できるミサイルを配備した。欧州各国へのサイバースパイやデモをあおる情報工作も激しいらしい。

英国のロシア専門家によると、英外務省と国防省は最近、ロシアのスパイ活動やサイバー工作に対処する専門部局をひそかに立ち上げたという。

それだけに、12月にプーチン大統領を招き、経済協力を大盤振る舞いしようとする日本をみる英国の視線は冷ややかだ。「ドイツ政府内でも同様の空気が漂っている」(欧州外交筋)

対中戦略上、日ロ関係を強めたいという安倍晋三首相の発想は、欧州でもそれなりに理解されてはいる。それでも日ロ接近に批判がくすぶるのは、シリア・アレッポへの空爆問題などが重なり、プーチン政権への不信感が臨界点に達しつつあるからだ。

英国王立防衛安全保障研究所のジョナサン・アイル国際戦略部長はこう指摘する。「安倍氏が中国に対抗するため対ロ関係を強めようとしているのはわかる。だが日本は動くのが遅すぎた。10年前ならよかったが、ロシアがここまで強硬になってしまった以上、タイミングが悪い」

ロシアへの米国のまなざしは、欧州よりも険しい。米大統領選のかく乱を狙ったロシアのサイバー攻撃が指摘されるなか、ワシントンの警戒感は一段と強まっている。

「来年1月に『クリントン政権』が生まれれば、米国の対ロ政策はもっと強硬になる」。米民主党関係者からはこんな観測が流れる。

ロシアと交渉し、領土問題を解決しようとする安倍氏の姿勢自体がいけないというわけではない。

ただ、米欧との不協和音が広がれば、プーチン氏から足元を見透かされやすくなる危険があることも念頭に、外交を進めるべきだ。立地条件の違いから生まれる対ロ観の溝を、決して侮るべきではない。(ロンドンで、編集委員 秋田浩之)>(以上)とありました。

欧米も手前勝手です。自分たちの安全がロシアに脅かされているから日本にも同じ行動をと要求するなら、彼らも中国に対して経済制裁すべきです。南シナ海は国際仲裁裁判所の判決が出たではないですか。ロシアのウクライナ問題は国際司法の場で争ってはいません。それなのにロシアにだけ経済制裁を課し、中国に課さないというのはどう考えてもおかしいのでは。領土と領海の違いはあったにせよ。要求する場合は相互主義が原則でしょう。

プーチンは12月の訪日で領土返還・平和条約に対する日本人の期待が高まらないよう予防線を張っています。

10/28時事通信は<対日交渉に期限設けず=「中国は40年」-プーチン・ロシア大統領

【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領は27日、北方領土問題を含む日本との平和条約交渉について「(合意までの)期限を設けるのは不可能であり、むしろ有害だ」と語った。タス通信が伝えた。南部ソチで開かれた内外のロシア専門家の会議で「今後2~4年間で平和条約締結は可能か」と問われたのに対し、否定的に回答した。  プーチン大統領は、強い信頼関係にある中国との国境画定交渉ですら40年を要したと指摘。「残念ながら、日本とはその水準に達していない」と主張した。  ただ、平和条約締結は不可能でなく、「全ての問題の最終解決は日ロの国益にかなう」と述べた。また、「解決したいし、努力しているが、いつ解決できるか現時点で答えることはできない」として、今後の交渉次第だという認識を示した。  12月にプーチン大統領の公式訪日を控え、懸案の平和条約交渉が大きく進展するのではないかと日本側で期待が高まっている。今回の発言は、自身の訪日時に領土問題で思い切った決断をする可能性を事実上排除して、日本側の期待値を下げる狙いもありそうだ。 【時事通信社】

>(以上)

やはり、一筋縄では行きません。プーチンもロシアの国益をかけてやってくるわけですから。中国包囲網を築く為とはいえ、中途半端な妥協は駄目です。現実的に考えれば、領土がゼロ回答でシベリアの経済開発を先行するのであれば、欧米にも疑いの目を向けられかねません。そこが難しい所でしょう。しかし、交渉に40年もかけていたのであれば環境が変わってしまいます。特に技術の進歩が速い現代にあっては、軍事も経済も大きく変わってしまいますので。

記事

ロシア政府は今月、国内最大の国営石油会社「ロスネフチ」に中堅国営石油会社の株式を売却した。財政赤字の穴埋めに充当する狙いだが、本来は「民営化」を掲げていた。なぜ民間企業でなく、国営企業に売ることになったのか。

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ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」が所有するクラスノヤルスクの油田(写真:ロイター/アフロ)

今月10日、唐突に公表されたロシア政府の指令書が、国内のエネルギー関係者を驚かせた。メドベージェフ首相が署名したもので、ロシアの国営中堅石油会社「バシネフチ」の政府保有株を、国内最大の国営石油会社「ロスネフチ」に売却するという内容だった。

日本ではほとんど報道されなかったが、このバシネフチの株式売却はロシアではエネルギー関係者だけでなく、政界ウォッチャーからも高い注目を集めていた。政権の中枢を巻き込み、侃々諤々(かんかんがくがく)の論争が繰り広げられた、いわく付きの案件だったからだ。

国内経済低迷で打ち出された「大民営化」政策

話を少し戻そう。ロシアは近年、主要輸出商品である原油・天然ガスなどエネルギー価格の急落と、ウクライナ危機を受けた欧米の経済制裁の影響で、厳しい経済環境が続いている。昨年の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス3.7%に落ち込み、今年もマイナス成長が避けられない情勢だ。

こうした中、政府が苦肉の策として打ち出したのが「大民営化」政策だ。有力国営企業の民営化や政府保有株の売却を進め、それによって調達する資金を今年の財政赤字の穴埋めに利用しようという計画である。同時に、経済の国家依存を下げることで、国内産業の構造改革につなげる狙いも込められていた。

政府はその対象企業として、ダイヤモンド採掘大手の「アルロサ」、海運大手の「ソブコンフロート」のほか、アエロフロート、ロシア鉄道、VTB銀行、バシネフチ、ロスネフチを選定した。財務省は一連の政府保有株の売却により、総額でおよそ1兆ルーブル(1ルーブル=約1.67円、約1兆6700億円)の歳入増が見込めると試算した。

突然延期された民営化入札

実際、政府は第1弾として今年7月、アルロサの10.9%分の株式を複数の投資家に売却した。続いて着手したのが石油会社のバシネフチだ。ただ、原油市況が低迷しているだけに、バシネフチについては発行済み株式の「50%+1株」を公開による民営化入札で一括売却することにした。過半の議決権を握れるというプレミアをつけることで、売却価格の上乗せを狙ったわけだ。

同社の民営化入札は当初、今夏中に実施する予定だった。事前の各社への打診では、国内の石油会社や投資ファンドなど9つの企業・組織が入札参加の意思を示したという。中でも当初から最有力視されたのが、ロシアの民間石油会社で最大手の「ルクオイル」だ。同社自身、買収に強い意欲を示していた。

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ところが入札は突然、延期された。国営企業のロスネフチにも入札資格を与えるべきだとの意見が浮上したためだ。かねてバシネフチの買収に関心を示していたロスネフチのイーゴリ・セチン社長が土壇場で、政権に強い圧力をかけたともいわれている。

これには政府や大統領府からも、反発が相次いだ。急先鋒は政府内で燃料エネルギー複合体を統括するドボルコビッチ副首相で、「ロスネフチは国営企業なので、バシネフチの民営化に参加できるわけがない」と切り捨てた。大統領府内でも「ばかげた発想だ」と批判の声が出た。

ただ、政府内ではシュワロフ第一副首相のように参加を支持する意見も多く、結局、バシネフチの民営化計画は明確な指針もタイムテーブルもないまま先送りされてしまった。実質的な棚上げの背景には、ロスネフチに買収資金を確保する時間的な余裕を与える狙いがあったとの説もある。

プーチン大統領の消極的な容認

事態が再び動きだしたのは9月になってからだ。きっかけになったとみられるのが9月初め、プーチン大統領の米ブルームバーグとのインタビューだ。

ロスネフチのセチン社長がバシネフチの民営化に高値で入札する意向を示しているが、「大統領は常に、巨大な国営企業が民営化される別の企業を買収するようなことは望んでいないと語っています。つまり、あなたは(ロスネフチの参加を)認めないということですね」。こんな質問に対して、大統領は以下のように答えたのだ。

「国営企業というが、ロスネフチは厳密にいえば国営企業ではない。英国企業のBPが株主に名を連ねていることを忘れてはならない」

ロスネフチは、政府が100%出資する国営企業の「ロスネフテガス」が69.5%、英石油大手のBPが19.75%の株式を保有している。国家の管理下にはあるものの、外国資本が入っている以上、ロスネフチをバシネフチの民営化入札から完全に除外するわけにはいかないという理屈だった。

大統領は続いて「政府の管理下にある企業が他の国営企業を買うのは良い選択肢とはいえない」と述べる一方で、「最終的には財政が重要だ」と表明。民営化入札ではより多くの資金を調達する必要があるとして、ロスネフチの入札参加を消極的ながらも容認する姿勢を示唆したのだ。

これを機に、ロスネフチへのバシネフチ株売却の流れが水面下で一気に進んだ模様で、冒頭の政府指令書の公布につながった。

政府の指令書は、財務省の同意を得た経済発展省の提案を受け入れ、バシネフチの50.0755%の株式を総額3296億9000万ルーブル(約5500億円)で売却すると表明。10月14日までの支払いを求めた。ロスネフチは指令書に基づいて期限内に振り込みを完了したため、バシネフチのディールはつつがなく終了したという。

ロスネフチによる自社株買いも

ロシア政府が国際会計事務所に試算を依頼し、それをもとに事前に想定していたバシネフチ株の売却価格は2970億~3150億ルーブル。ロスネフチが提示した価格はそれを上回ったが、不可思議なのは公開入札という当初の触れ込みと違い、ほぼ秘密裏に契約が結ばれたことだ。

ウリュカエフ経済発展相は入札に2社が参加し、ロスネフチだけが想定価格を上回る額を提示したと説明する。しかし、有力経済紙のベドモスチは、当初有力とされたルクオイルを含めて入札に関心を示した各社には正式な応札要請がなく、民営化の条件や入札日の公表を待っている間にロスネフチへの売却が発表されたと報じている。

「大民営化」という当初の掛け声とはかけ離れた入札騒動となったわけだが、これを巡ってはさらに続きがある。政府の指令書が公布された2日後の10月12日。プーチン大統領は政府会議で、バシネフチ株の購入代金を支払ったロスネフチの潤沢な資金力に注目し、今度はロスネフチによる自社株買いを「暫定的な措置」として認める可能性に言及したのだ。

政府はロスネフチも“民営化”の対象としている。同社については国家管理を維持しながら、全体の19.5%の株式だけを売却する計画だが、大統領発言の趣旨はこれをロスネフチによる自社株買いの形で代替し、得られる資金を財政赤字の穴埋めに充てるというものだった。

背に腹はかえられない

「本当の民営化とはいえないのではないか」――。後日、記者団に厳しく問われたプーチン大統領は「あくまでも中間的な措置であり、外国資本を含む戦略的投資家への売却を想定した本格的な民営化への一歩だ」と弁明。「これまで何度も言ってきたように、国家資本主義をつくるつもりはない」と強調した。

大統領は別の場でも「本格的な民営化の準備だ」と表明。ロスネフチの将来の民営化を想定すれば、バシネフチとの統合も相乗効果が見込めると主張している。一方で、こうした発想は「政府内の財政・経済派の立場だ」と指摘し、自らの本意ではないことも随所にほのめかせている。昨今の財政状況を踏まえれば、背に腹はかえられないということのようだ。

バシネフチ株の売却では、政府が入札企業に国営銀行からの融資による資金調達を禁じた。このためロスネフチは東シベリア有数のバンコール油田の権益の一部をインド企業に売却するなどして、短期間に資金を確保したとされる。辣腕タイプのセチン社長が率いるからこそ可能だったともいえる。

だが、こうしたいびつな“民営化”が長期的視点からみて、ロシアの国益につながるのか疑問視する声もある。財政赤字の穴埋めに苦慮する政府にとって、ロスネフチ頼みの状況が当面続くとみられるものの、政財界で特異な存在感をみせるセチン社長には政敵も少なくない。

セチン社長をめぐっては蓄財疑惑もしばしばとりざたされ、かつて「側近中の側近」といわれたプーチン大統領との関係も、さほど親密ではなくなっているとの噂も流れる。ロスネフチの肥大化が一段と進むなか、バシネフチの“民営化”騒動のしこりが政権内の経済路線対立や、石油利権をめぐる抗争を助長する可能性は否定できない。

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『米民主党は上院奪還へ、下院でも大躍進の兆し 共和党候補は「疫病神トランプ」のため次々と討ち死』(10/27 日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

米国大統領選はヒラリーの圧勝との予測が出て、つまらないものになりました。本記事によればヒラリーの勝利の確率が93%というのですから。トランプの「猥褻発言」が大きなダメージになったとのこと。日本の大臣候補者のように共和党は身体検査はしないのでしょうか?出たいという人を止めることはできない?日本人から見ると、あれだけ当たり前のように不倫をして、離婚をする米国人が「猥褻発言」で非難するのかが分かりません。道徳的なモノの見方が違っているのかもしれませんが。片一方でパートナーを裏切り、個人の欲望を追求していくことは非難されずに、「猥褻発言」が非難されるのは違和感があります。罪で言えば、背徳の方が重いのでは。

でも、トランプの発言は「猥褻」が問題ではなく、「女性蔑視」=「性差別」の所にあるのでバッシングを受けたのでしょう。「人種差別」を平気でする人間ですから、「性差別」も当たり前なのでしょう。

ただ、ヒラリーが国家機密を自分のメールサーバーから外国に売り渡していた方が「猥褻発言」よりずっと罪は重いと思いますが。彼女は完全に売国奴と言えるでしょう。それがメデイアのバッシング対象にならないし、FBIも無罪放免するのですから、米国社会も相当おかしいと感じますし、大きな力が働いているような気がします。火病を起こす韓国民は案の定、朴槿恵大統領の一民間人への国家機密流出でバッシングをして、大統領の支持率も10%台に下落したケースとヒラリーとは違い過ぎます。しかし、日本だって民間人の有識者に外交問題でアドバイスを受けることはあると思います。ただ、朴槿恵大統領が添削を受けていた?のが証拠として出てくる方が、行政府の管理のまずさを表していると思います。

10/29日経電子版には<クリントン氏メール問題、FBIが捜査再開 現地報道、投票日まで11日

【ワシントン=共同】米大統領選の民主党候補クリントン氏が国務長官時代に私用メールを公務に使っていた問題で、米メディアは28日、連邦捜査局(FBI)がメール問題の捜査を再開する方針を決めたと一斉に報じた。

投票日が11日後に迫る中、クリントン氏には痛手となりそうだ。選挙情勢で劣勢の共和党候補トランプ氏はメール問題を徹底的に取り上げ、反撃に出る構えだ。

FBIのコミー長官が議会に宛てた書簡で、クリントン氏の私用サーバー利用に関して追加のメールが見つかり、機密情報を含むかどうかなどを「捜査することが適切と判断した」と明らかにした。捜査に必要な時間は「予測できない」という。

トランプ氏は28日、ニューハンプシャー州で演説し、捜査再開に「敬意を払いたい」と述べ、歓迎した。国務省のトナー副報道官は記者会見で「(FBIの)要請があれば協力する」と述べた。

FBIは7月、クリントン氏が私用メールを使って「意図的に違法行為をした証拠は見つからなかった」として、訴追を求めない方針を決定。クリントン氏は刑事責任の追及を免れ、メール問題を巡る捜査はいったん終結していた。フォームの始まり

>(以上)とあり、

FBIも副長官が買収されたイメージを払拭しようとしてのことと思います。ただ、如何せん遅すぎの感は否めません。単なるFBIのアリバイ作りかも。

TPP推進議員は落選するとの予想ですが、米国の内向き姿勢は相当のものがあるようです。日本は今次臨時国会でTPPを批准するようですが、米国抜きでは、中国経済包囲網としての意味合いが薄れるのでは。世界は警察官としての地位を降りようとしている米国の姿を見て、野心を顕わにする国が増えて来るでしょう。既存の秩序が守れず、弱肉強食の世界に戻る可能性もあります。今の中国の姿を見ていると、露骨に「力は正義なり」を押し通しています。賄賂とハニーが横行する悪徳が栄える国が世界の中心となったら、人類にとって不幸としか言えません。日本人はもっと世界で何が起きているかを事実や真実を追求した上で判断していく必要があります。

記事

—共和党議会のトップ、ポール・ライアン下院議長がトランプ大統領候補を見限って、同時に行われる上下両院選で議席を死守することに集中していますね。上下両院の議席について現在の予想はどうなっていますか。

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米下院議長を務める米共和党のポール・ライアン議長。トランプ現象が議会選に与える影響に危機感を募らせている(写真:AP/アフロ)

高濱:ライアン氏の危機感は大変なものです。大統領選は最終段階で米民主党のヒラリー・クリントン候補が米共和党のトランプ氏に大きく水をあけています。クリントン氏が勝利する確率を93%と予測する世論調査まで出ています。 (“Who will win the presidency?” 2016 Election Forecast, FiveThirtyEight, 10/24/2016)

「女性蔑視発言」から露骨な人種差別発言まで様々な暴言が積もり積もって、「大統領としての資格なし」といった「査定」が下されたようです。こうした見方は民主党支持者や無党派層ばかりでなく、共和党支持者の一部にも浸透しています。

その火の粉は、2014年以降、上下両院で過半数を占めてきた共和党にも広がっています。共和党としては、たとえホワイトハウスを奪還できなくても、議会の「城明け渡し」だけは阻止したいところ。しかし「共和党が上院での過半数を堅持するにはもはや手遅れ」(米主要紙の政治記者)といった声すら聞こえてきます。

最新の予想では、民主党が上院で過半数を得る確率は74.1%、共和党は25.9%。どうやら「城明け渡し」となる可能性が出てきました。 (“Chance of winning control,” 2016 Election Forecast, FiveThirtyEight, 10/26/2016)

共和党カリフォルニア州支部の幹部の一人は、筆者にこうホンネをぶちまけています。「トランプ以外のある程度まともな大統領候補を立てていれば、共和党勢力が強い下院はもちろん、上院だって過半数を守れた。『疫病神トランプ』のお陰でひどい目に遭っている共和党現職候補がそこら中にいる。トランプの『セクハラ』のイメージが共和党候補に乗り移っているのだ」。

「女性を敵に回して選挙には勝てない」

—トランプ氏の「わいせつ発言」のインパクトは「女性を尊重する国・米国」の国民にとっては想像以上に大きいのですね。それで、上院はどうなりそうですか。

高濱:上院は任期6年で、2年ごとに3分の1の議席を改選します。今回の改選数は共和党24議席、民主党10議席の合計34議席です。

選挙前の両党の勢力は以下の通りです。

  民主党 共和党 独立系
現議席数 44 54 2(民主党寄り)
改選数 10 24  

選挙予想・分析の分野で全米屈指の存在である、バージニア大学政治センターのラリー・サバト教授の予想を紹介しましょう。

同教授が、上院での勝敗を決める決め手と見ているのは、オハイオ州など共和党現職議員を選出している9州(オハイオ、アイオワ、アリゾナ、フロリダ、ニューハンプシャー、ペンシルベニア、ノースカロライナ、イリノイ、ウィスコンシン)です。

共和党は現在のところ、これらの州で4議席を“確保”しています。オハイオ、アイオワ2州はロブ・ポートマン(オハイオ)、チャック・グラスリー(アイオワ)両候補が「当選確実」。ジョン・マケイン候補(アリゾナ)も「ほぼ当確」、マルコ・ルビオ候補(フロリダ)も「有力」です。

一方、ケリー・アヨット(ニューハンプシャー、)、パット・トゥーミー(ペンシルベニア)、リチャード・バー(ノースカロライナ)が民主党候補と激しく競り合っており、当落は最後の最後まで分かりません。 (“With 19 Days to Go, Clinton’s Lead Is Bigger Than Ever,” Sabato’s Crystal Ball, Larry J. Sabato, www.centerforpolitics.org., 10/20/2016)

共和党のTPP推進派も次々と落選か

トゥーミー、バー両候補はこれまで上院財政委員会のメンバーでした。同委員会はTPP(環太平洋経済連携協定)など通商法案を扱う委員会です。二人ともTPP支持派でした。アヨット氏らの落選はTPPの推進に大きな痛手になりそうです。

他の共和党現職に目を移すと、マーク・カーク(イリノイ)、ロン・ジョンソン(ウィスコンシンの両候補も、世論調査の支持率で民主党の候補に10%前後リードされています。どちらもTPP推進派です。党関係者は二人とも落選する可能性が大と見ているようです。

TPP反対を唱えてきた“クリントン大統領”と民主党が過半数を握る上院が誕生すればTPP批准はどうなるのか。米国によるTPP批准が大幅に遅れるのは間違いないでしょう。再交渉の話も出てくるでしょう。

サバト教授の読みはこうです。「民主党はこの9議席のうち4議席を取るだけで、非改選議席と合わせて51議席(共和党49議席)を得られる。3議席取るだけでも50議席。対決法案の採決で50:50となっても副大統領が1票持っているから法案を可決できる」。

特に、重要なのは最高裁判事をめぐる上院の承認です。リベラル派を推す民主党が過半数を取れば、最高裁のリベラル色を一気に強めることになります。

トランプの「わいせつ発言」、下院にも影響

—下院はどうなると予想していますか。

高濱:共和党は第112議会(2011~2013年)以降、下院で230~40議席(総議席数は435)を堅持してきました。下院は予算に関する法案を先議する権限を有しています。オバマ政権は2013年以降、経済財政政策をめぐって、共和党が支配する下院に何度も煮え湯を飲まされてきました。民主党議員が増えれば、法人税減税や海外法人の売上高・資産への課税などで、どのような論議が繰り広げられるか、注目されるところです。

選挙前の民主、共和両党の議席数は以下の通りです。11月8日には435の全議席(過半数218議席)が改選されます。

民主党 186議席
共和党 246議席
欠員 3議席

民主党としては、クリントン圧勝のムードに便乗することで、共和党との議席差を縮めたい考えです。

トランプ氏の「わいせつ発言」が露呈するまで各種世論調査は、共和党は下院ではかなり議席を減らすだろうが、引き続き過半数を制するとの予測で一致していました。ところが「わいせつ発言」以降、情勢は激変しました。

世界の投資家が注目を集める予想会社「プリディクトワイズ」によれば、共和党が231~240議席を取る確率は、「わいせつ発言」以前は46%(10月4日)でしたが、同発言後には31%(10月13日)に急降下しています。共和党は辛うじて過半数を維持することはできても、民主党との議席差が大きく縮まる可能性が出てきました。 (“Overall House Control After 2016 Election,” predictwise.com., 10/13/2016)

共和党、下院でも20議席前後失う可能性

—現段階で民主党は下院で何議席ぐらい取れそうですか。

高濱:前述のサバト教授はこう予想しています。共和党で「当選確実」の議席は204議席、「優勢」が11議席、「有力」が10議席で、合わせて225議席。一方の民主党は、「当選確実」が182議席、「優勢」が1議席、「有力」が10議席で、合わせて193議席。現時点で激戦を続けている「接戦区」は17議席です。

ということは、共和党が「接戦区」すべてを落としても共和225議席、民主210議席で過半数は維持できます。民主党が下院を奪還するには、「接戦区」を全て取り、なおかつ共和党が「有力」としている10議席のうち8議席を取らなければなりません。ということは、共和党は惨敗したとしても、下院での過半数はなんとか維持できそうです。

止まらない主婦や若い女性の「共和党離れ」

—トランプ氏は下院において、どの程度、共和党候補者たちの足を引っ張っているのでしょうか。

高濱:9月末の段階で共和党は「当選確実・優勢」議席が231議席と予想されていました。それが10月20日段階では225議席に減っています。

例えば、筆者の住んでいるカリフォルニア州第10区の共和党候補のジェフ・デンハム氏(現職)、第49区のドレル・エイサ氏、第25区のスチーブ・ナイト氏らは9月末には「有力」でしたが、現在では民主党の対立候補と大接戦を演じています。

デンハム陣営の運動員の一人は筆者にこう話しました。「『トランプと同じ党の候補は嫌だ』という共和党支持の中年主婦が増えている。若い女性は最初から振り向いてもくれない。民主党候補は『女性蔑視のトランプ=デンハム』という政治コマーシャルを連日流している。(トランプ氏の言動の)影響は州議会選の共和党候補にまで及んでいるらしいね」。

大統領選、上下両院議員選、州知事選の投票日まで2週間を切りました。「トランプ現象」のあおりを受けて、2016年の選挙は議会の力学をも大きく変えそうです。

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『「ソウルは火の海になる」のデジャブ 米海軍が「ムスダン」を撃ち落としたのか』(10/27日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

GSOMIAを日韓間で締結しようとしていますが、韓国側が非礼にも、2012年6月末締結直前にドタキャンしたものです。日本に締結のメリットは感じられません。通貨スワップと同じです。本記事にありますように、偵察衛星を持たない韓国側にだけメリットがあるだけ。困った時だけ、泣きついてきて駄々をこねる未熟な国、ゆすりタカリのうまいヤクザ国家です。朝日新聞が慰安婦について誤報で謝罪したのを知っているにも拘わらず、世界に慰安婦像を建てて日本人の名誉を貶める活動をしています。中国上海には像が建てられましたし、ドイツでも建てる動きがありました。こういう国を支援するとしたら、日本人は馬鹿としか言えないでしょう。多くの日本人は「自分には関係ない」と思っているのでしょうが、子々孫々に悪い影響を与えることは間違いありません。敵は日本民族は道徳的に劣った民族と世界に刷り込み、日本侵略時に味方をなくそうと考えて行動しています。韓国はその手先として動いている訳です。日本は民主主義国家なので、国民が中韓の歴史の捏造に怒らなければ政府も力が入りません。衆愚政治の典型となります。果たして今の日本人にその自覚があるかどうかです。以前にもふれましたが、”Manchurian candidate”そのものでしょう。

10/28日経電子版には<対北朝鮮、韓国の背中押す 日韓軍事情報協定の交渉再開へ 

【ソウル=峯岸博】韓国政府は27日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結に向けた交渉再開を決めた。日韓は米国を介して安全保障情報をやり取りしてきた。GSOMIAで直接の情報交換が可能となれば、より広い安保情報を迅速に共有できる。現実的な脅威となりつつある北朝鮮の核・ミサイルへの危機感や米国の意向が複雑な対日感情を抱える韓国の背中を押した。

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ソウル南方の米空軍烏山基地に着陸した米軍のB1戦略爆撃機=21日(聯合=共同)

「北朝鮮への対応のためにも日韓の協力は極めて重要だ。早期締結を目指し韓国側と相談のうえ交渉に入る」。菅義偉官房長官は同日の記者会見で語った。日韓GSOMIAは2012年にいったん署名直前まで準備が整っており、両政府は今年中の締結をめざす。

日米韓には北朝鮮の核・ミサイル情報に限って情報を共有する防衛当局間の取り決めがある。それでもGSOMIAのメリットは大きい。

米国が介在しない分、情報伝達のスピードが速まる。ミサイル発射の場合、日本は発射地点や軌道を素早く把握できる。韓国は日本海などの着弾地点の情報を日本から得やすくなる。発射から日本周辺に落下するまでは数分。情報の把握・分析がわずかでも遅れれば致命的だ。日韓で直接伝達できれば、日本のミサイル迎撃システムの精度を上げることができる。

GSOMIAの対象は核・ミサイル情報だけではない。韓国が人的に収集した秘密情報に加え、南北軍事境界線付近の北朝鮮の動向や特殊部隊の情報も日本には魅力だ。

韓国も自国の弱みを補える。日本の偵察衛星情報に加え、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を開発するなかで自衛隊の哨戒機による対潜水艦の探知能力への期待がとりわけ強い。

韓国政府には、署名直前までこぎ着けながら「密室処理」などと世論の反発を受け日本に延期を伝えざるを得なかった4年前のトラウマがある。植民地支配を経験した韓国には日本との安保協力への抵抗感が強い。

昨年末の従軍慰安婦合意や地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍配備問題も重なり、韓国政府は再交渉の時機を慎重に探ってきた。北朝鮮が今年に入り2回の核実験と20発超の弾道ミサイル発射を強行するなど、韓国政府は対日感情に拘泥できない状況になった。危機感を強める米もGSOMIA締結を促していた。

交渉再開は「あらゆる手段を総動員し北朝鮮に圧力をかける」と繰り返す朴槿恵(パク・クネ)大統領の意向が強い。国防省は「国民の支持を基盤に透明な形で手続きを進める」と強調する。

ただ朴氏は自身に関する内部文書流出問題で窮地に立っている。日本政府内には「署名できるまで韓国の世論を楽観視できない」(防衛省幹部)との不安の声も漏れる。>(以上)

とあります。韓国のヒューミントを期待してのことと思いますが、日本には朝鮮総連ルートがあります。裏で北に流れている金で言えば、圧倒的に日本からの方が多いと思います。韓国情報何て当てになりません。韓国は自力で北の脅威に直面した方が良い。

10/26ZAKZAK記事<正恩氏、身辺不安で“毒物探知機”輸入か 「毎週酒に溺れ自制できない」証言も 

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が身辺に不安を感じ、爆発物や毒物を探知する装備を輸入したと伝えられている。酒におぼれているという情報もある。今月には正恩氏の「斬首作戦」を行うとしている米韓両軍が合同演習を行ったばかり。正恩氏はいま、不安におののいているのか。  韓国の情報機関、国家情報院の国会報告で分かった。韓国紙、中央日報(電子版)によると、報告では正恩氏が「身辺の不安から最近、よく日程を変更し、爆発物・毒劇物探知装備を輸入した」といい、「斬首作戦」の具体的な内容の収集も命じたという。  報告はさらに正恩氏の健康についても言及した。「過飲・過食など無節制な食習慣で心臓病高リスク群と診断される」とし、正恩氏が毎週3、4日ほど夜通しでパーティーを開き、酒を飲むと自制できないという証言があることも紹介した。  正恩氏が不安を覚えるのも仕方がないのかもしれない。米韓両軍が10月10~15日、韓国西方の黄海などで合同軍事演習を行ったばかりだからだ。  演習には、米海軍が誇る原子力空母「ロナルド・レーガン」も参加した。その目的には、有事の際に北朝鮮指揮部を攻撃する訓練があるとされていた。指揮部の攻撃とは、正恩氏を「斬首する」という意味にほかならない。

北朝鮮情勢に詳しい関西大の李英和(リ・ヨンファ)教授は、「米韓軍の軍事演習や斬首作戦に対し、金正恩氏本人が警戒するというのもあるし、正恩氏の周囲が得点稼ぎのため過剰な警備をしていることも考えられる」と分析する。  一方、北朝鮮の国営メディアは連日、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を非難し続けている。朝鮮中央通信によると、18日付の労働新聞はこう朴氏を批判した。  「朴槿恵一味は、民族の和合と北南関係の改善を願う各階層の熱望を踏みにじって反共和国対決策動にいっそう狂奔している。現実は、朴槿恵逆賊の群れの同族対決の腹黒い下心は絶対に変わらないということを示している」  前出の李教授はこうした北朝鮮の動きについて、来年の韓国大統領選に向けて「親北左翼政権を誕生させようとしている」と見るが、仮にそうなっても金正恩政権の未来は明るくないとして、こう指摘する。  「左翼政権ができれば、金を援助してくれるATMができてうれしいが、逆に韓国を攻撃するわけにはいかなくなる。北朝鮮にとって頼みの綱は左翼政権の誕生だが、かえって災いの元になるかもしれない」  どう事態が動いても、正恩氏の首筋が寒いことに変わりはないようだ。>(以上)

米軍の斬首作戦に怯える金正恩の姿が浮かび上がります。虚勢を張ってきましたが、米中に抗って、味方はロシアと瀋陽軍だけになりました。ロシアと瀋陽軍は米軍の攻撃があっても助けることは出来ないでしょう。まあ、北と南が争うのは「勝手にやって」という所ですが、「日本を巻き込むな」と言いたい。

記事

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10月15日、北朝鮮のミサイル発射失敗を米軍が韓国より先に発表。米軍による撃墜か、と憶測を呼んだ(写真=AP/アフロ)

前回から読む)

米国と北朝鮮が「先制攻撃するぞ」と脅し合う。米軍による北朝鮮空爆の寸前まで行った1993-1994年の核危機が再燃したのだ。

ムスダン、相次ぎ失敗

—10月15日と20日、北朝鮮が相次いでミサイルを発射しました。

鈴置:いずれも、米軍のコードネームで「ムスダン」と呼ばれる中距離弾道ミサイルと見られています。

射程は3000キロ以上で、米領グアムを攻撃できるとされています。なお、両日とも「ムスダン」は1発ずつ。ともに発射直後に爆発した模様です。

—まさか、米軍が撃ち落としたのではないでしょうね。

鈴置:そう思った人もいました。北朝鮮は核弾頭と米本土まで届くミサイルのエンジン開発に成功したと9月に発表したばかりです(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

北はかねてから「米韓を核攻撃する」とも宣言していました(「朴槿恵(パク・クンヘ)は『北爆』を決意できるのか」参照)。

もう、試射であろうと北朝鮮がミサイルを撃ったら、米軍がそれを撃ち落としても、何の不思議もないのです。

なぜか米国が先に発表

それに10月10日から15日まで、黄海など韓国周辺海域で米韓海軍が合同軍事演習「Invincible Spirit(不屈の意志)」を展開中でした。

10月10日の朝鮮労働党創建記念日に、北朝鮮が核実験やミサイル実験を実施するのを見込んで牽制するのが目的だったのです。

米艦隊にはSM3(海上配備型迎撃ミサイル)を装備したイージス艦も加わっていました。北の弾道ミサイルを撃ち落とそうと思えば落とせた可能性が高いのです。

もう1つ疑いをかき立てた理由がありました。15日の「ムスダン発射」をまず米軍が発表したからです。それも発射の約16時間後でした。

UPI通信は米軍の発表を受けて「U.S. detects failed North Korean midrange missile test」を配信しましたが、配信時刻は日本・韓国時間で16日7時27分。一方、発射は15日12時33分でした。

北のミサイルに関してはこれまで、発射して数時間以内に韓国軍が発表するのが通例でした。しかし、この時の韓国軍の発表は、米軍と比べても2時間も遅かったのです。

韓国メディアも首傾げる

—確かに変ですね。

鈴置:「米国が先に発表したのは、米軍がSM3で落としたからではないか」「発表が半日以上も経ってからだったのは、発表するかどうかを米上層部が協議していたからではないのか」と疑うコリア・ウォッチャーもいました。

聯合ニュースもこの遅れに首を傾げる記事を配信しました。「『米国の情報をすべて見てから』…軍、北のミサイル発射を1日遅れて公開し論議の的に」(10月16日、韓国語版)です。ポイントを訳します。

  • 韓国の合同参謀本部関係者は「韓米が情報を共有し分析するのに時間が必要だった」としたうえで「失敗に終わったため、一刻を争って公表する状況ではなかった」と述べた。
  • しかし、合同参謀本部は従来、ミサイルの種類の判別の可否や実験の成否にかかわらず、直ちに公表してきた。この説明はやや受け入れがたいところがある。

聯合ニュースはこの記事の結論部分で「韓米の情報共有がしっくりいっていないのではないか」と指摘しただけで「米国が落としたのではないか」とまでは書きませんでしたが。

北を叩くなら一気に

—では、実際にはどうだったのでしょうか。

鈴置:この問題に詳しい日本の専門家は、以下のように語りました。

  • 米海軍が撃ち落としたのではなく、本当に失敗したのだろう。北朝鮮は10月15日以前に6回、ムスダンを撃って5回失敗している。韓国軍の発表が遅れたのは自力で探知できなかったためと思う。
  • 今回の発射場所は中朝国境に近い黄海側の平安北道・亀城(クソン)。韓国からかなり離れた場所だ(地図参照)。しかも北朝鮮はトレーラー――移動式のミサイル発射台から撃ったので、発射場所を予め特定できなかっただろう。
  • こうした状況下で、偵察衛星を持たない韓国が弾道ミサイル、ことに発射直後に爆発したミサイルを探知するのはまず無理だ。
  • map-of-japan-korea

—なるほど「米軍犯人説」はガセだったのですね。

鈴置:でも、この専門家は不気味な話もしました。以下です。

  • ムスダンの試射などは「大事の前の小事」。米軍は真剣に先制攻撃を検討している。そんな時に、ミサイル1発だけを狙いはしない。

米軍が北朝鮮を叩く時は、一気に叩く――というわけです。確かに北に警告を発するために、テストで発射された北の弾道ミサイルだけを攻撃する手もあります。

しかしこの専門家は、米軍はそんな中途半端なやり方はしない。ミサイルを撃ち落とせば北が反撃して来る可能性が大。どうせやるなら核・ミサイル施設すべてを同時に破壊する、と言うのです。

金正恩は即座に死ぬ

—「大事」つまり、先制攻撃を米国が本気で考えているからこそ、小手先の策は使わない、との指摘ですね。

鈴置:実際、北朝鮮の5回目の核実験(9月9日)の後、米国の外交・安保関係者は繰り返し先制攻撃に言及するようになりました。

9月16日にはマレン(Mike Mullen)元・統合参謀本部議長が「北朝鮮が核で米国を攻撃できる能力を持ったら、先制攻撃も辞さない」と述べました(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

9月23日にはホワイトハウスのアーネスト(Josh Earnest)報道官が質問に答える形で「一般論だが、先制的な軍事行動に関しては事前に論議しないものだ」と思わせぶりな発言をしました(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

10月12日にはラッセル(Daniel Russel)国務次官補が「金正恩(キム・ジョンウン)が核攻撃を企て得る能力を持ったら、即座に死ぬことになる」と語りました。

発言の原文はAP通信によると以下です。U.S. Newsの「US reserves right to punish China firms working with NKorea」で読めます。

  • Perhaps he’s got an enhanced capacity to conduct a nuclear attack and then immediately die.

その前日の10月11日にはシャーマン(Wendy Sherman)前国務次官がソウルで「北朝鮮の核兵器を完全に終わらせるためには経済制裁措置だけではなく、すべての可能なオプションを用いるべきだ」と語っています。

聯合ニュースが「シャーマン前国務次官『北核問題解決に全オプション動員を』」(10月24日、日本語版)で報じました。シャーマン氏はヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補が大統領就任の際は、外交関係の要職に就くと見られています。

北朝鮮側は「核で先制攻撃」

—「先制攻撃」の大合唱ですね。

鈴置:北朝鮮も負けていません。これまでも「米韓を先制核攻撃する」と威嚇してきました(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

米国で「先制攻撃論」が盛り上がると、北朝鮮もガンガン言い返しています。労働新聞は10月5日、論評で「米国の核の脅威に対抗、我々は先制攻撃方式に転換した。核はいつでも米国に使える」と宣言しました。

労働新聞は10月19日にも「先制攻撃は米国と南朝鮮の特権ではない。南全域は火の海、米本土も修羅場になる」との論評を載せました。

米朝の間で「先制攻撃するぞ」との威嚇合戦が始まったのです(「『先制攻撃』を巡る動き」参照)。ただ、北朝鮮と異なって米国は「核による先制攻撃」とまでは言っていませんが。

先制攻撃」を巡る動き(2016年)
9月
5日 北朝鮮、高速道路から3発の弾道ミサイル連射、1000キロ飛び日本のEEZに落下
9日 北朝鮮が5回目の核実験を実施し「戦略ミサイルの核弾頭の生産が可能になった」
   
10日 稲田朋美防衛相、韓民求国防相に電話会談で、GSOMIA締結を呼び掛ける
12日 韓国国防相報道官「日本とのGSOMIAは必要な雰囲気。ただ、国民の理解必要」
16日 マレン元米統合参謀本部議長「北の核の能力が米国を脅かすものなら先制攻撃し得る」
19日 カーター国防長官、在韓米軍のスローガン「fight tonight」を引用「その準備はできた」
20日 北朝鮮「推力重量80トンの静止衛星運搬用ロケットの新型エンジン燃焼試験に成功」
20日 ハイテン米戦略軍次期司令官「北朝鮮はいずれICBMを持つ。すぐに備えるべきだ」
22日 米大統領報道官、対北攻撃を聞かれ「一般に先制的軍事行動に関し事前に論議しない」
24日 ヴィクター・チャ教授、中央日報に「北朝鮮のICBMの破壊も検討」と寄稿
26日 米韓海軍、日本海で合同訓練。韓国軍「北朝鮮の核・ミサイル施設や平壌が攻撃目標」
10月
1日 米韓海兵隊、白翎島で合同軍事演習
5日 労働新聞「米国の核の脅威に対抗、我々は先制攻撃方式に転換。核はいつでも米国に使える」
6日 国連軍縮委員会で北朝鮮代表「自主権が侵害されない限り先に核は使わない」(朝鮮通信、8日報道)
10日 北朝鮮、労働党創建71周年記念式典を開催
10日 米韓海軍、黄海含む朝鮮半島周辺海域で「陸上精密打撃訓練」(10月15日まで)
11日 シャーマン前米国務次官「北の核には経済制裁に加え全ての選択肢を使うべきだ」
11日 朝鮮中央通信「来年1月の金正恩委員長の誕生日は盛大に祝う」
12日 ラッセル米国務次官補、記者団に「金正恩が核攻撃する能力を持てば直ちに死ぬ」
15日 北朝鮮、中距離弾道弾を平安北道・亀城から発射。米軍は「直後に爆発」と発表
19日 労働新聞「先制攻撃は米国と南朝鮮の特権ではない。南全域は火の海、米本土も修羅場になる」
20日 北朝鮮、亀城から長距離弾道ミサイル発射。米韓は「直後に失敗」と発表
21日、22日 北朝鮮の韓成烈外務次官と米国のガルーチ元国務次官補らがクアラルンプールで接触

悲惨な「第2次朝鮮戦争」

—軍事衝突が起こるのでしょうか。

鈴置:予測は極めて難しい。米朝双方の今後の出方にかかっていますが、それが読めません。状況は1994年の「第1次核危機」と似てきました。

北朝鮮は1993年3月にNPT(核拡散防止条約)からの脱退を宣言するなど、露骨に核開発を進めました。これに対し国連は経済制裁を決議し圧力をかけました。それと並行し、米国も北朝鮮との対話で活路を見いだそうとしました。

しかし、北朝鮮の核武装にかける意思は固く、対話はこう着。米国では北の核施設への空爆論が公然と語られるようになったのです。ビル・クリントン(Bill Clinton)政権は「第2次朝鮮戦争」も覚悟しました。

現在、国防長官を務めるカーター(Ashton Carter)氏は1994年当時、ペリー(William Perry)国防長官の下で国防次官補を務めていました。2人は1999年に共著『Preventive Defense』を出版しましたが、以下のように回顧しています(218ページ)

  • もし戦争が起きれば朝鮮半島を恐ろしいまでに破壊し尽くしただろう。ソウルは軍事境界線に近く、ダレス国際空港とワシントンDCの距離ほどもない。人口が密集したこの都市には砲弾の雨が降り注いだはずだ。数10万人の市民が殺され、100万人単位の難民が南北朝鮮で発生したに違いない。
  • 韓国には3万7000人の米軍兵士が駐留しており、それ以外にも多くの政府職員や10万人を超える米国市民が住み、働いていた。彼らにもまた、被害が及んだであろう。
  • 非戦闘員を非難させる計画もあった。だが砲弾の雨の下、多くの米国人もソウル市民と同じ運命をたどることが容易に想像できた。

緊張の1年間だった

—戦争の瀬戸際だったのですね。

鈴置:そう言ってよいと思います。私は当時、北朝鮮の核問題の担当デスクでした。いつ衝突が起きるか分からず、緊張の1年間強を過ごしました。ワシントン、平壌、ソウル、それにIAEA(国際原子力機関)のあるウィーンから目まぐるしくニュースが飛び込んで来るので、不眠不休の毎日でした。

多くの日本人は「瀬戸際」だったことをすっかり忘れていますが。南北対話の席で北朝鮮の代表が「ソウルは火の海になる」と発言したのもこの緊張の中での話です。1994年3月19日のことでした。

—「ソウルは火の海」。思い出しました。

鈴置:結局、1994年6月にカーター(Jimmy Carter)元大統領が訪朝し、半ば引退していた金日成(キム・イルソン)主席と会談。

両者の間で妥協が成立し、辛うじて戦争は回避されました。この妥協を基に同年10月、米朝は「枠組み合意」に至りました。北の核開発は阻止できたかに見えました。

しかし、同じ年の7月に金日成主席が死亡。後を継いだ金正日(キム・ジョンイル)総書記は密かに核開発を続けました。孫の金正恩委員長が核武装にメドを付け、米国への先制核攻撃を唱えるようになったのです。

核を失えば権力も失う

—12年前と同様に対話で一応は解決できるのでしょうか。

鈴置:解決というより、問題を先送りして悪化させただけだったのですけれどね、今から振り返れば。

「対話による解決」は12年前と比べはるかに難しくなっています。金日成主席は米国や日本と国交正常化できるのなら、核開発を放棄してもよいと本気で考えていたフシがあります。

しかし3代目の金正恩委員長が核を手放すことはまず、ないでしょう。核を放棄したら権力の座から転げ落ちる可能性が大きい。「核武装を実現した」ことだけが国民に誇れる実績だからです。

それに1994年当時、北朝鮮は核弾頭も中・長距離の弾道ミサイルも開発を始めたばかりでした。米国には腰を据えて北朝鮮と交渉する時間的な余裕がありました。

しかしもう、先送りはできません。北朝鮮はあと1、2年でミサイルに搭載可能な小型の核弾頭や、米国まで届く長距離弾道ミサイルを完成すると見られるのです。

仮に今回、米朝対話を実施したとしても、北朝鮮が時間稼ぎの素振りを見せた瞬間、米国では「時間がない。先制攻撃に踏み切ろう」との声が一気に高まるでしょう。

米朝対話、再び?

—マレーシアで米朝が会談したと報じられました。

鈴置:10月21日、22日の両日、クアラルンプールで北朝鮮の韓成烈(ハン・ソニョル)外務次官らと、米国のガルーチ(Robert Gallucci)元・国務次官補らが非公式に話し合いました。

テーマはもちろん北朝鮮の核とミサイルです。北朝鮮は自身を核保有国と認めたうえ、在韓米軍の撤収につながる米朝平和協定の締結を求めた模様です。一方、米国は朝鮮半島の非核化を要求したようです。

双方ともにこれまでの要求を繰り返しただけです。対話がすぐさま始まるとは思えません。オバマ(Barack Obama)政権の任期は2017年1月までで、新たな行動には出にくいのです。

なお、ガルーチ氏はビル・クリントン政権下で北朝鮮との交渉役を務め、1994年の米朝「枠組み合意」をまとめた人です。

東亜日報は社説「対北圧迫の中での米朝接触、北朝鮮に誤ったシグナルを与える時ではない」(10月24日、日本語版)で以下のように分析しました。

  • 米国側出席者は民主党候補のヒラリー・クリントン氏が11月の大統領選で勝利する場合、次期政府の北朝鮮政策に影響力を行使する可能性が少なくない。
  • 今回の接触は、クリントン氏が当選する場合を想定して、米民主党に近い韓半島専門家と北朝鮮側が互いの考えを探るためのものとみえる。
  • オバマ政府が直ちに強硬な対北スタンスを変える可能性はないが、次期政権ではどのように変化するか分からないため、韓国政府は綿密な備えが必要だ。

先を読める人はいない

—韓国紙も予想が付かないのですね。

鈴置:金正恩委員長とオバマ大統領、あるいは米国の次期大統領を含め、先を読める人は世界のどこにもいないでしょう。日本も予断を持たず、あらゆる可能性を考えて準備することが肝要です。

(次回に続く)

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『実は日本が学ぶべき点の多いドゥテルテ氏の言動 国連の僕ではなく、活用して国家の威厳を高めよ』(10/19JBプレス 森清勇)、『華人系は嘘っぱち、ドゥテルテに騙されるな! 田中角栄元首相に重なる面が多いフィリピンの新大統領』(10/27JBプレス 末永恵)、『戦略と倫理~日本はドゥテルテ大統領を大切にするべきか?』(10/27北野幸伯)について

以前Facebookで見た記事です。どなたの記事だったかコピペしなかったので、忘れましたが。

<フィリピンに最も寛大なのは、連合国(国連)でなく、日本だ。 ドゥテルテ大統領が発言。

今月末に公式訪問で来日するフィリピンのドゥテルテ大統領。今日、連合国(国連)、EU、米国への懐疑と非難を再び表明した。 ドゥテルテ大統領は我々へ最大の支援を長期間にわたってしてくれたのは「連合国(国連)でなく日本だ」と言い、さらに「連合国(国連)でなく、日本が最も寛大だ」と述べた。 また「人権など知らない。アメリカにも、オバマにも、連合国にも、EUにも、私を理解してほしいとは思わない」と発言。麻薬シンジケート撲滅のために、就任以来2500人以上を超法規的に殺害し、フィリピン中の刑務所が検挙された麻薬犯罪者で足の踏み場もないほど溢れかえっていることへの欧米からの強い非難に反発した。 欧米から非難され、米国との軍事協定を含める二国間協定を解消する、と息巻くドゥテルテ大統領だが、強い影響力と信頼を集めるアキノ前政権のデル・ロサリオ外相が、現政権の後ろ楯になっている限り、大統領の発言とは裏腹に、フィリピンが糸の切れた凧として万里の長城の方向に飛ばされることはないと思っている。 問題はデル・ロサリオ氏とドゥテルテ大統領の現時点の関係である。

Bernraf Concepcion Orpiano‎  Defense of the Republic of the Philippines

20時間前 ·

“Contrary to the belief of other Filipinos, it is not the United Nations. Maliit lang iyon, pati ang military. It’s the Japanese government ang pinakamalaking tulong.” — President Rody Duterte

Japan most generous to PHL, not UN – Duterte

Published October 11, 2016 7:00pm

By TRISHA MACAS, GMA News

President Rodrigo Duterte on Tuesday refuted some of the alleged claims of his countrymen that the United Nations (UN) is the most generous to the Philippines.

In a speech delivered in Malacañang after the oath taking of his new appointees and the officers of the League of Municipalities of the Philippines (LMP), Duterte said that Japan had been the country’s biggest donor.

“Contrary to the belief of other Filipinos, it is not the United Nations. Maliit lang iyon, pati ang military. It’s the Japanese government ang pinakamalaking tulong,” the President pointed out.

Duterte, however, did not elaborate.

The President in a speech in Butuan City on October 6 dared the UN, the European Union (EU), and the United States (US) to withdraw their aid to the Philippines after they criticized the Duterte administration’s war on drugs.

“I do not expect human rights, I do not expect Obama, I do not expect the EU to understand me. Do not understand me. And if you think it’s high time for you to withdraw assistance, go ahead. We will not beg for it,” Duterte said.

The statement was made after Vice President Leni Robredo said that Duterte’s rhetoric might affect foreign aid for anti-poverty programs of the government.

But Duterte added that he would not compromise the dignity of the Filipinos just because of international aid.

“Ano’ng paningin n’yo sa amin? How do you look at us? Mendicants? Na magsige lang sunod-sunod kami? We will survive. We will survive as a nation,” the President retorted in the same speech.

Despite Duterte’s dare, the US, the EU, and the UN all committed to pour aid to the Philippines.

However, US Senator Patrick Leahy even before the dare reminded Duterte that the law he authored, Leahy Law, ensured that countries receiving assistance from the United States do not use the aid on programs that violate international laws. — Trisha Macas/RSJ, GMA News>(以上)

そもそも米国に人権尊重をフィリピンに要求すること自体、間違っているとしか言えません。世界最大の人権抑圧国家・中国に人権尊重を口先だけでなく、経済制裁を課すくらいのことをしたらどうかと思います。北野氏記事にありますように今まで独裁国家のサウジに人権尊重を要求してきたかという事です。ペトロダラーで$基軸体制を堅固にするために見て見ぬ振りをしてきたではないですか。二重基準です。過去には共産主義のスターリンや毛沢東と手を結んだことは北野氏の記事にある通りです。

米国の西漸運動は白人のインデイアン虐殺とも関係しています。誇り高きインデイアンは白人の言うことを聞かないと見るや黒人奴隷を米大陸にヒトではなく、家畜扱いで連れてきます。こういう非人間的なことをしてきた連中に人権何て言われたくないでしょう。米国の過去のことではありますが、米国の今の姿が理想という事で現在の価値基準を押し付けるのではなく、国の発展段階によって判断すべきでしょう。米国だって”wanted”のチラシで民間人が賞金首を取りに行ったではないですか。米国が植民地統治したので、ドウテルテはその文化を移植しただけでは。「自分の手は汚れていない」とオバマが思うとしたら浅はかの一語です。もっと米国史を勉強しろと言いたい。西漸運動後、太平洋に繰り出してきて、日本を亡き者にしようとしたのもキチンと知るべきです。

そもそもオバマは体を張って国政をしてきたのか疑います。ドウテルテは暗殺の危険を知りながら、麻薬犯罪撲滅に取り組んできました。華人(如何に中国人が悪逆か、国が違ってもやることは同じ)の麻薬王を脅すことなどオバマにはできないでしょう。南シナ海で中国に強い行動すら採れない男にあれこれ言われたくないでしょう。況してや米軍は米比戦争で20~150万人もフィリピン民間人を虐殺しました。中国の南京事件のようなでっち上げではありません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E6%AF%94%E6%88%A6%E4%BA%89

末永氏の言うようにドウテルテは華人ではないのでしょう。麻薬取締上そう言っておいた方が安全という思惑が働いているのでは。今度の中国訪問では華人とアピールも出来たようで、中国とは狐と狸の化かし合いを演じたようです。ドウテルテはインテリで庶民に近いことをアピールしていますが、大衆の心を掴むには演出も必要です。トランプもインテリですが、今の選挙情勢を見ますと、やはりドウテルテより下の人物と言う風に評価します。

森氏の記事で、国連を日本人が有難がるのはおかしいと言っていますが、その通りだと思います。所詮第二次大戦の戦勝国クラブではないですか。UNを国際連合と訳すのは間違いで、連合国と訳すのが正しいです。而も人類が生存する限り、戦争はなくならないでしょう。それがたった1回の戦争で利権を戦勝国が固定するのはおかしいでしょう。UNが南京や慰安婦で日本を糾弾するのは、国際連盟がリットン調査団を派遣して、極東の事情を知らない人間が判決を下したのと同じことです。事実調査やその背景、経緯について考慮せず、ハナから日本を貶めようと動いているのですから。戦前・戦中・戦後とも支那の賄賂にしてやられている気がします。

でも中国と対抗するには、現実的に判断せざるを得ません。米国とフィリピン、ベトナムと手を携えて中国の横暴に対抗しなければなりません。

10/19記事

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「治安の改善」を選挙公約の1つに掲げて当選したロドリゴ・ドゥテルテ氏のフィリピン大統領就任は、超法規的殺人を問題視する米欧、国連、人権団体から批判を浴びることになった。

そうした中で、米国のバラク・オバマ大統領を名指しで愚弄し悪態をついたこともあり、首脳会談が流れ、米比関係が著しく悪化している。南シナ海などで航行の自由を掲げて米国と共同歩調をとってきた日本としても他人事では済まされない。

ドゥテルテ氏はミンダナオ島のダバオ市長として麻薬と犯罪撲滅に尽力し、22年間在任した。そうした手腕が高く国民に評価され、国家の再生を担って6月末に大統領に就任した。

「ドゥテルテの超法規的な犯罪取り締まり政策は、法律的に間違っているかもしれないが、人々に支持され『民主的』であり、政治的には正しい」(「田中宇の国際ニュース」2016年10月5日)

国際社会はフィリピンの人権無視のみを強調するが、治安維持は国家の存続に関わることであり、二者択一といったように簡単ではない。特に開発途上国などでは、人権よりも治安が優先されることもしばしばである。

国連は人権を天下の宝刀のように振りかざし、慰安婦問題や南京事件などでは日本政府の意見を聞くこともなく、反日的立場の「人権無視」という提言のみを取り上げて糾弾するが、不公平さだけが目立つ。

国家主権を問いかける大統領

ドゥテルテ氏が市長であったときはほとんど国際問題化することもなかったが、大統領となって以降は「人権」問題が正面に押し出され、批判の対象になってきた。

特にオバマ大統領が表立って批判してきたが、ドゥテルテ大統領は、米国が比国を占領していた時には人権無視も甚だしく、虐殺をやってきたではないかと反論する。

欧州列強の植民地経営時代は、植民地の人権が蔑ろにされたわけで、先進国の勝手な、今日的基準ばかりでの人権批判は通用しないということでもあろう。今日でも人権軽視の常任理事国がある。

フィリピンでは麻薬犯罪が横行し、また麻薬を資金源とした反政府系組織による暴動も起き、国を建て直そうにも、生ぬるい手法では上手くいかなかった。

ドゥテルテ氏はダバオ市長時代に麻薬撲滅と真剣に向き合ったから、住民から信頼され長く市長を続けられたという自負がある。そして、その麻薬撲滅の手法も超法規的ではあるが、国内では信任されて大統領にも選ばれたのだ。

フィリピンをかつて統治し、今日も治安等で一部関わっている米国であるならば、もっとフィリピンの実情を理解してもいいのではないかという思いもドゥテルテ大統領にはあるのであろう。

だからこそ、理解しようとせず、表向きの人権尊重のみを主張することに対し苛立ちも覚え、過激にもなっているのであろう。

もう1つは、米国一極から多極化への対応という視点もあるようだ。従来は米国が超大国として君臨し、一極構造と言われてきた。米国は世界の警察官そのものであり、米国に依存しておれば安全は保障されたが、一方ではフィリピンの主権が侵害されても我慢せざるを得なかった。

しかし、今日では相対的に米国の力が落ち、米国に頼りっきりでは必ずしも安全とは言えない状況になりつつある。そこで、侵害されてきた主権の奪還を目指すには、中国(やロシア)に近寄るぞと見せかける必要もある。米中(露)を天秤にかけた、一種の高等戦術ではないかという見方もできよう。

ただ、国際裁判所の仲裁裁定を「紙屑」と言って無視し、覇権の拡大に我武者羅な中国である。そうした点からは、中国への接近で主権が保障されるか大いに疑問である。

むしろ、米国以上に主権が侵害され、ついには自治区として取り込まれる危険性すらある。ベトナムがことあるごとに中国に抵抗するのは、そうした歴史が刻印されているからである。

現大統領の後ろ盾とも言うべき存在であるフィデル・ラモス元大統領は、米国の軍学校を卒業し、安全保障上は米国との関係を重視したこともあり、オバマ大統領への暴言などを嗜め、苦言を呈したようだ。

そうしたことから、軌道修正があるかどうか注目されるところである。

日本が学ぶべき点もある

主権と人権の観点から、日本はドゥテルテ大統領に学ぶべき点がある。ただし、相手は米国ではなく国連である。従来、日本は国連に対して幻想を抱き、国連神話とも言うべき意識を持っていた。

しかし、外相時代から反日言動をしていた藩基文が国連総長となってからは、中立・公平でない言動が目立った。また、ユネスコ(国連教育科学文化機関)などまでが韓国や中国の反日的なロビー活動に影響され、弊害をもたらすようになってきた。

象徴的で目に見える形をとったのが、昨年9月、中国が「抗日戦争勝利70年記念行事」と銘打って行った反日宣伝の式典に、日米欧の首脳らが欠席する中、あえて参加し、天安門前広場の軍事パレードにも立ち会ったことである。

国連加盟は安保理の専決事項であるにもかからず、2007年に台湾が加盟申請した時は事務総長が「支那は1つ」と申請を却下した。2014年に香港で2か月にわたった民主化運動の大規模デモが続いた時は、「(中国の)内政問題」と片づけた。このように、越権行為と中国政府におもねる姿勢が目立った。

藩事務総長は次期韓国大統領の有力候補とも言われ、そのことを意識してか韓国向けの姿勢も顕著である。国連総会開催時の朴槿恵大統領の優遇や、国連への韓国人重用(約30%も増大)は縁故主義として顰蹙を買った。

前ソウル支局長の名誉棄損裁判では海外の人権団体やメディアが韓国の司法システムを批判し、国連本部でも疑問の声が上がったが「無言」を通した。

一方で、韓国人元慰安婦を国連に招き「被害者の声に耳を傾けることが重要」と発言するなど、ことごとく韓国よりの言動に終始した。

また、(女性の)人権に関しては、国連特別報告者が揃って反日的報告をまとめて、日本を糾弾する状況が続いてきた。

内容が正しければ致しかたないし、反論のしようもない。ところが、日本語も分からない人物が、長くて1週間程度の滞在調査で、「日本の人権状況はこうだ」と言い募る。日本を犯罪国家にしたい、自虐史観に染め抜かれた日本人シンパからもらった資料を鵜呑みにするのはあまりにも軽率であり、無責任である。

調査と言うからには、逆の立場の者からも聴取して、資料の確かさを確認するのが筋というものだ。(出鱈目な)資料で造り上げた、日本批判の文章を日本の然るべき省庁などに見せて確認することもなく、いかにも承認された公式文書であるかのように弄んで平然としている。

国連の横暴は主権の侵害

河野談話は確かに日本の外務大臣が発出した文書である。日本の迂闊、外務大臣の失態以外の何物でもないことを認めるのに吝かではない。それを認めたうえで、韓国が牽強付会の解釈をしており、日本国家や軍人を貶める材料として使っている。

韓国どころか、反日的朝日新聞などは進んで拡大解釈して韓国に迎合してきた。日本政府をはじめ、多くの国民は韓国流の解釈に不満の声を上げてきた。しかし、異議申し立てを忖度しない横暴さだけが国連人権委などには顕著であった。

反対者の意見にも耳を傾けるのが現地調査であろう。しかし、最初から日本を犯罪国家に仕立てる意識で来日しているとしか思えないため、調査した振りをして、頑なに日本政府の言い分には耳を傾けようとしない。慰安婦の性奴隷化はこうした状況下で造り上げられた。

「人権擁護」には目もくれないが、「人権無視」と言えば、具体的に事象を精査することもなく「そこのけそこのけ、お馬が通る」式に、登録する杜撰さである。

また、日本では女性の社会進出が少ないとして、いかにも女性蔑視であり差別であるかのような報告書を書き勧告してくる。ざっくり言って「日本において、女性に対する差別はほとんどない」(杉田水脈氏)し、「日本はもう(差別で)勧告を受ける必要はない」(山本優美子氏)(いずれも「国連女子差別撤廃委員会レポート」『WiLL』2015.10号所収)というのが実情である。

その最たるものが、男系継承は女性差別で、女系継承も可能とする皇室典範に改正すべきだと勧告しようとしたと報じられたことである。幸い政府の抗議で削除されたが、日本の歴史を理解せずに、平然と内政干渉に等しい言辞を弄する。厚顔無礼とはこのようなことを言うのではないだろうか。

日本は国連分担金もユネスコへの分担・拠出金も滞納したことがない。ただ昨年、中国が行った「南京大虐殺」の記憶遺産登録に対して、不快感表明と登録手続きの透明性を要求して今年の支払いは留保している。

政府の反対を押し切って不十分な資料で一方的に登録し、あるいは皇位継承などについて越権的な勧告を行うような組織に対しては、国際社会では分担金留保のように目に見える然るべき対処も必要であろう。

そもそも、日本ほど差別をしないで、人権や人道を重視している国はないと思えるが、国連の人権委員会や女子差別撤廃委員会などはそうは見ない。

日本のNGOなどの「告げ口」で、ありもしない差別を作り出している感じもあるが、委員会はもう少し意見聴取の仕方などを工夫して、実情を反映させるようにする必要がある。

日本は「人権」「人道」の先導国

日清戦争、日露戦争を勝ち抜いた日本は5大国の一国となった。国際連盟創設に当たっては、規約に「人種平等」案を提案する。当時の議決は多数決が原則であり、賛意を示す国が多かったので日本の提案は議決されると見られた。

ところが、米国は黒人を奴隷のように酷使していたし、人種平等となれば黒人の解放が必要になり、米国社会の生活スタイルを全く変更する必要に迫られ、社会的混乱も予測された。そこで、当時の議長であったウッドロー・ウイルソン大統領は、特に重要な案件については全会一致が必要であると主張して日本の提案を葬った。

日本の人権重視、人種平等には歴史がある。明治国家ができて間もなく、ペルー船のマリア・ルス号が修理のため横浜港に寄港した。その時、積荷の苦力(クーリー)1人が逃げ出し、英国艦に助けを求めた。英国は奴隷運搬船と判断し、彼を日本政府に引き渡し清国人救助を要請する。

時の外務卿は副島種臣である。明治天皇の名代で訪清したとき、三拝九拝の跪坐礼式にこだわる中国の官衙によって、英国使節などの拝謁が半年間も叶わずにいた。副島は中国古典を引用して官衙を説得、最初に拝謁の栄誉に浴する。外国使節は大いに感謝し、中国は帰国時に礼砲で送り出している。

日本とペルー間には条約が締結されていなかったので、日本政府内では国際関係上不利との意見もあったが、副島は人道主義と日本の主権独立を主張し、神奈川県権令にペルー船の船長を拘留させ、苦力231人を解放させる。

苦力は米国のラッセル商会の商品で、ペルーを通して日本政府に賠償請求訴訟を起こす。そこで、ロシア皇帝アレクサンドル2世を裁判長とする国際仲裁裁判が開かれることになる。米国は苦力を奴隷ではなく契約労働者と主張するが、日本は榎本武揚を送り込んで苦力貿易の非道を批判する。

デラノ(フランクリン・ルーズベルトの義父)が仕切るラッセル商会はアヘンと奴隷貿易で稼いでいる悪徳商会であることを知っていたロシア皇帝は、「日本側の措置は一般国際法にも条約にも違反せず妥当なものである」との判決を出し、ペルー側の訴えを退け、日本の勝ちを認める。

日清戦争で日本が勝利したことで、満州族の漢民族支配にとどめを刺し、ラスト・エンペラーの愛新覚羅溥儀は清朝を追われ、満州に帰り満州国皇帝となる。

ところがその後のリットン調査団は、「旧植民地の支那に宗主国・清の版図の継承権を認め、さらには宗主国の領土満州も支那のものだと公式に認めた」。

これは「英国の植民地インドが独立して『人口の多さでインドこそ大英帝国の正統な後継者だ。宗主国英国もマレーもビルマも俺のものだ』というのと同じこと」(高山正之著『オバマ大統領は黒人か』)である。

この延長線上に、清の版図に入っていたチベット、ウイグル、モンゴルを中国は、「歴史的に我が固有の領土」として取り込んだ。その不条理が人権抑圧となり、今日のテロや暴動につながっている。

ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相の「大西洋憲章」は、ドイツに主権を奪われた東欧白人国家の解放を謳ったが、アジア・アフリカの植民地解放には適用しないとした。それに対して「大東亜共同宣言」は、「米英の桎梏より解放して、自存自衛を全うする」とした。

目的を達する前に日本は敗戦したが、米英仏蘭などがもっていた植民地は解放された。これこそは自国を犠牲にして日本が成し遂げた偉業であり、人種平等、人道主義の率先・体現であった。

おわりに

国連常任理事国の中国がチベットやウイグルなどで行っている人権弾圧は、フィリピンに勝るとも劣らないであろう。ただ、中国はすべて内政問題として、また報道統制も厳しく外国の監視が届かないため、表面化することが少ない。

西アフリカのナイジェリアに拠点を置くボコハラムに拉致された多数の女性たちはいまだに行方不明である。

日本政府の異議申し立てにも関わらず、国連の特別報告者たちは中韓のロビー活動に動かされているのであろうが、80年余も前の第2次世界大戦前の日本の事象に焦点を当てたがる。

しかし、現在進行形の中国やボコハラムの問題、さらには韓国内における韓国軍や米軍慰安婦問題などには頬かむりである。また、近年明らかになってきたベトナム戦争時の韓国軍の慰安所経営などにこそ焦点を当てるべきであろう。しかし、国連が積極的に動いているという情報は聞こえてこない。

なお、相模原の障害者施設で起きた事件は、人命軽視の殺傷事件であることは確かだ。ただ、当人が衆院議長や首相あての手紙などを認めた行動からは、少子高齢化時代における人権と国家の存続という、重い問題意識を提示している。

現在は立件のための捜査や犯罪防止に重点が置かれて検討されており、また識者たちは多くを語ろうとしないが、少子高齢化時代に生産性を低下させないでいかに共生社会を築いていくかという視点から、日本の将来を危惧した相克のようにも思えるが、いかがであろうか。

10/27JBプレス記事

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在日フィリピン人との会見を終え、会場となった都内のホテルを出発するフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(中央、2016年10月25日撮影)〔AFPBB News

「暴言」「失言」「放言」――。その毒舌でフィリピンの名を世界的に知らしめた「フィリピンのドナルド・トランプ」こと、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が国賓として日本を初訪問中だ。

親日家と言われるが、素顔のドゥテルテ氏はあまり知られていない。

南沙諸島問題を棚上げし、警戒する日本を横目に、中国から巨額の経済援助を引き出し、米国との決別をも表明。今年限りの米比合同軍事演習中止も発表している中、その親中度が高まる一方だが、日本訪問後にはロシア訪問も予定。

その手法はあたかも、小国ながらも大国を手玉にとり、自国の利益を優位に得るベトナムの外交戦術を手本にしているかのようだ。

親日家、それとも親中派か。「裸のドゥテルテ」を暴いてみたい。

庶民派は演技、実はインテリ

ドゥテルテ氏は、現在71歳。フィリピン航空の客室乗務員だったドイツ系(祖父がドイツ人)のエリザベス・ジムマーマンさん(68歳)と約30年間の結婚生活後、3人の子供に恵まれたが2000年に離婚。

現在、正妻はいないが、かつてミス・ダバオ医科大学に選ばれ、米国で看護士をしていたハニレット・アヴァンセナさん(46歳)というパートナーと暮らしており、2人の間には12歳の女の子がいる。

ドゥテルテ氏は庶民派を“演出”しているが、もともと「父が元州知事で弁護士」「母は教師」というインテリ出身。しかし、最近になって、両親からというよりか、「自分の人間的(価値観)形成や政治への考え方は、子供の頃、カトリック教会の司祭に、とてもショッキングな性的虐待を受けたことが大きく影響している」とカミングアウトしている。

そして、10年ほどダバオ地検検事を歴任した後、父の後を継ぐ形で政界入り。7期当選で22年間、ダバオ市長に君臨。その間、下院議員選挙に立候補し当選、中央政界での経験もある。地方、国政と行ったり来たりする内情はこうだ。

実はフィリピンでは、「3期9年以上」連続し市長職に就任できないという法律があり、自分の身内に4期目に席を渡す一方、当人は下院議員など他の公職に立候補。3年後に3年腰かけて元職に返り咲く“常套手段”がまかり通っている。

これこそがフィリピンの「地方独裁腐敗政治の温床」「政治屋一族による私物化」にもなっているが、全く改められる気配はない。ドゥテルテ氏もうまくこの手法を使い、実娘に市長の座を渡すことで、一時期、副市長も務めてきた。

暴言、放言から海外からは単細胞に見えるが、なかなかのしたたか者である。今回の大統領選でも、エリート層であることをあえて表舞台に出さず、「犯罪者は死ね。皆殺しだ」と暴力的過激発言を繰り返すことで、アキノ政権で不満を爆発させた庶民の支持を吸い上げた。

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ドゥテルテ大統領の前妻、エリザベス・ジムマーマンさん(サンスターから引用)

一方、貧困層だけでなく、犯罪撲滅で治安回復や海外からの投資を目論む知的ビジネス階級からも、自分の生い立ちやイメージ作りを巧みに演出することで、満遍なく票をかき集め、下馬評を覆し、あっさり大統領に当選した。

最たるものが、彼のその「生い立ち」作りだ。民主党の蓮舫代表ではないが、この出生秘密は、今回、日本訪問前に初訪問した中国でも最大の武器として大いに“その役目”を発揮した。

これまで、ドゥテルテ氏は母方の祖父が華人で、本人も「中国人はフィリピン社会に昔から根を張ってきた。私はフィリピン国籍だが、中国の血筋を誇りに思う」と語り、日本でも“親中”である背景とされてきた。

しかし、フィリピンには華人系政治家が多く、南シナ海領土問題で国際仲裁裁判所に中国を訴えたべ二グノ・アキノ3世前大統領も、実は華人系だ。

一方、中国ではすでにドゥテルテ氏が、「本当に華人系か」「中国人なら公式な場で中国語を話せ」などネットでバッシングを受けている。果たして本当に華人の血が流れているのか――。答えはどうやら、「NO」のようだ。

「華人の血が入っている」は真っ赤な嘘

最近、筆者は彼の息子の親友である人物と接触する機会に恵まれた。

「あれは嘘だよ。息子が言っている。華人の血は入っていない」。当然、日本で一部報道されているような「中国語が堪能」も嘘っぱちのようだ。ドゥテルテ氏が嘘をついているのは、筆者の知人のフィリピンの有力紙ベテラン記者からも聞いていたので「やはりね」と納得だ。

そう言えば、大統領選挙中に初めて「華人の血が混ざっている」という情報が流れたが、その出所は当然、ドゥテルテ氏本人。前述の人物が、「おじさんはいつも冗談ばかりで、知らない間に真実のように語られることはこれに限らず多いんだ」とニンマリ笑う。

フィリピンの華人は、人口約1億人のうちの約120万人と少数派。しかし、戦後、西側とともに反共体制を敷いたフィリピンでは同じく反共だった台湾からの商業移民がフィリピン経済の土台を築き、今でも「コファンコ財閥」などが、国内ビール最大手の「サン・ミゲル」(キリンビールが約50%の株式保有)やフィリピン航空など国内の基幹産業を牛耳っている。

当然、こうした華人の経済力を味方にしたいドゥテルテ氏の思惑があったが、大統領が華人系とし自ら「嘘」を拡散させた最大の理由は、どうもフィリピンで今、渦中の「麻薬撲滅戦争」と関連するようだ。

ドゥテルテ氏は7月、マラカニアン宮殿で記者会見を開き、フィリピン国内の違法薬物密売を取り仕切る「麻薬王」3人の名前を公表、いずれも中国系フィリピン人で、実業家でもあるピーター・リムとは面会も行った。

そこでいきなり「殺してやる」と自ら脅した経緯がある。華人系は経済だけでなく、フィリピンを蝕む麻薬にも深く関係しているからだ。

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ドウテルテ大統領の現在のパートナーと娘(ウキペディアから)

ドゥテルテ氏の大学時代の恩師は フィリピン共産党(CPP)の最高指導者ジョマ・シソン氏と言われ、ドゥテルテ氏が危険だが大胆な発想で国を動かし、麻薬犯罪から救い出そうとしているのは確かだ。

今でも麻薬戦争で逮捕、殺害が繰り返されているのも、麻薬密売人やそのボスの多くが華人系だからだ。ダボス市長時代から「殺すか、殺されるかだ」と宣戦布告する一方、自身はいつも暗殺される危険に晒されてきた。

そのため大統領に就任後、「自分には華人系の血が混ざっている」と公言することで、命の安全を確保し、さらには「嘘」でガチガチの中共をさらに「嘘」で騙し打つ・・・。

暴言、放言の裏で、そんなしたかかな戦略的戦いを展開する本当は頭の切れる人物のようだ。

日本の政治家ではなかなか太刀打ちできそうにない。そういった意味では、日本の歴代首相の中で絶大な人気だった田中角栄元総理とカリスマ性も含め重なるところが多いようにみえる。

そう言えば、田中角栄氏、また米国のドナルド・トランプ氏にも強力な秘密兵器の「実娘」がいるが、ドゥテルテ氏の場合は「じゃじゃ馬娘」がいる。

父親譲りの現ダバオ市長、そのやんちゃぶり

父親に負けず劣らずのやんちゃぶりで、フィリピンでは有名な現ダバオ市長、サラ・ドゥテルテ氏だ(38歳)。

別れた妻のジムマーマンさんとの子供で、「彼の秘蔵っ子で最も優秀」(ジムマーマンさん)と言うだけあり、ドゥテルテ氏が溺愛している。

父親と同じ弁護士という経歴を持つ。2010年、前述のように法律で3期以上務められない父親に代わって2010年の改選で最年少、女性初のダバオ市長に就任した。

選挙戦では、対立候補で前下院議長という政界の大物が立候補したが、絶対君主的な強力な政治権力を持つドゥテルテ氏一族が圧勝、副市長には兄のパオロが当選した。

何の実績もなかった彼女が当選したのは紛れもなく、ドゥテルテ氏の七光りだ。このサラ市長が一躍、全国区で名を馳せることになったのが、裁判所の執行官に食らわせた「顔面4発パンチ」だった。https://www.youtube.com/watch?v=kqTFB9vC8L0

ダバオ市内の不法占拠地域の立ち退きを巡り、住民側と立ち退きを執行する裁判所の執行官側とで投石騒ぎが発生。ここにサラ市長が乗り込み、「立ち退きを2時間待ってくれ」と要請したものの聞き入れられなかったことに激怒し、執行官を手招き、呼び込んだところで胸ぐらをヒョイと掴み、顔面に「バン!」「バン!」「バン!」「バン!」4発のパンチを浴びせたのだ。

この一部始終が全国放送のニュースで何回も流された。批判がある一方、フィリピンでは日常茶飯事のことで擁護する声も多かった。フィリピンらしい。

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大統領就任式の日。前妻のエリザベス・ジムマーマンさん、長女のサラさん、二人の息子と(チューバネスから引用)

日本では考えられないほど「役所イジメは庶民の味方」とする考えが横行するフィリピンでは、停職するわけではなく、一方のサラも全く悪ぶれた様子もなく、父親譲りの強烈パンチでフィリピン全土に名を馳せることとなった。

ドゥテルテ氏がかつて市長を務めたフィリピン南部のミンダナオ島ダバオ市は、「世界一広い面積」を持つ市として知られ、人口(約150万人)はセブに次ぎ、同島で最大だ。

極めて親日的で知られる。なぜなら、ダバオの経済発展の裏には20世紀初め、兵庫県から移住してきた太田恭三郎が始めた「マニラ麻」と「ココナッツ農園」があるからだ。

マニラ麻は船舶用ロープとして重宝された。第1次世界大戦の特需景気で販売が急拡大。ダボスは「マニラ麻の大産地」に急成長し、当時、約3万人の邦人が居住。当時としては、東南アジア有数の日本人の入植地と知られていた。

っている。日本に輸出されるバナナのほとんどがダバオ産だ。

日本人に対する敬意は本物

日系人会には約6000人の会員が所属。2011年の東日本大震災では早々に、無償での日本からの避難民受け入れを表明。2013年10月には、ドゥテルテ大統領(当時市長)が日本人慰霊碑建立に自費で援助し、建立式典スピーチを買って出た。

父親から日本人の勤勉さや技術力の高さを聞かされ、ドゥテルテ氏は地元の日本人に対しても敬意と信頼を置いてきたという。

彼が日本の歴代首相の中でダントツ人気だった田中角栄元首相を見本としているか分からないが、「麻薬や汚職を撲滅できるのは俺だけ。ほかのみんなは、言うだけだった」とかつてフィリピンの大統領が誰もなし得なかった麻薬撲滅戦争に命をかけている姿は、日本の復興・成長を引っ張った角栄氏と重なるところも少なくない。

例えば、「資源調達を米国から断たれたことが第2次世界大戦の要因」と公言する一方、米国との摩擦を恐れ誰も挑戦しなかった「独自の資源エネルギー獲得」へ動いた角栄氏の鋭い嗅覚と先見性が挙げられる。

角栄氏は当時、米国が供給体制を寡占していた濃縮ウランと石油獲得に奔走。同盟国・米国との事前調整を行わず、フランスと直接交渉。濃縮ウラン年間輸入契約を締結させた。

「米国は自国の利益のみ考えている。米国との決裂は問題ない」と中国訪問時に中国側から経済、安全保障などで譲歩を引き出すため、ドゥテルテ氏は得意の「嘘」で固めた演出を行ったが、中国は嘘と分かっていながら微笑み、巨額の経済援助を約束した。

スペイン、米国の支配を受けたため、フィリピン人は「ラテン的で近寄りやすい一方、自国の要求や権利を過度に要求する米国的価値観を“共有”する」と言われる。手のひらで物事をコロコロ転がすのがお好きな国民性でもある。

「嘘で固めた親中」だけでなく「嘘で固めた親日」かどうか。経済支援だけちゃっかりもらって、「アッカンべー」とされないように、日本の外交にはフィリピンの新リーダーに警戒心を持ちつつも、柔らかく時に強硬に臨む角栄氏のようなしたたかさが必要だろう。

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ドゥテルテ大統領の長女、父親譲りの筋金入り”じゃじゃ馬娘”のサラ・ドゥテルテ・ダボス市長(サンスターから引用)

10/27北野記事

フィリピンのドゥテルテ大統領、訪日しているのですね。

この方、「麻薬撲滅戦争」で、すでに3700人を殺したといわれています。オバマさんは、彼を嫌悪しているそうで、アメリカとフィリピンの関係は、非常に悪化しています。これをもって、「さすがアメリカは人権を重視する国だ!やはり日本は、人権軽視でダメだ!」という意見もあるそうです。

日本は、麻薬売買に絡んでいたとはいえ、裁判せずにいきなり殺してしまうような大統領を大切にすべきなのでしょうか?

▼「アメリカ=人権重視」は、幻想

オバマさんは、ドゥテルテさんと仲が悪い。これをもって「アメリカは、人権重視の国だ!」。この結論は、少々ナイーブすぎます。振り返ってみましょう。

アメリカは第2次大戦中、日本、ドイツを倒すために、自国民を大量虐殺した男スターリンのソ連と組みました。戦争が終わると、今度はソ連に対抗するために、かつての敵日本、ドイツ(西ドイツ)を自陣営に引き入れた。それでもソ連に押され気味だったので、1970年代初め、今度は毛沢東の中国と組んだ。毛沢東は、スターリン同様、自国民を大量虐殺したことで知られています。

アメリカは、スターリン、毛沢東という、人類史に残る大量虐殺者と組んだ過去がある。

▼アメリカは、反独裁???

「アメリカは自由と民主主義を重んじる国で、反独裁だ!」といわれます。確かに、アメリカは、イラクの独裁者フセイン、リビアの独裁者カダフィを殺しました。今も、シリアの独裁者アサド政権を崩壊させるために、「反アサド派」への支援をつづけている。しかし、アメリカがいつも「反独裁」かというとそんなことはありません。既述のように、アメリカは、超独裁者であるスターリンや毛沢東

と結託していた。今も、アメリカの「ダブルスタンダード」は変わっていません。

例えばアメリカは、「イランは独裁だからダメだ!」といいます。一方で、絶対君主制の独裁国家サウジアラビアを保護している。結局アメリカにとっては、「独裁か?民主主義か?」より、「親米か?反米か?」のほうが重要なのです。

さらに「アメリカの戦略に合致するか、しないか?」も大事。そういう意味で、「戦略的重要国家」フィリピンのドゥテルテ大統領を遠ざけるオバマさんの「潔癖」な言動は、「アメリカの国益を損なっている」といえるでしょう。(もちろん、「オバマは売春婦の子」というドゥテルテさんに問題があることは、いうまでもありませんが。)

(ちなみに、先日来日し安倍総理に会った大戦略家ルトワックさんは、BSフジの番組で、オバマのフィリピン政策を批判していました。)

▼国民は、「内に厳しく、外に優しく」で

日本は、政治家のモラルについて、非常に厳しい国です。不倫や金銭問題で失脚する人が後を絶ちません。それは、とてもよいことだろうと思います。しかし、国内と同じ基準で外国と接すれば、つきあえる国がなくなってしまいます。日本国民から見ると、・いまやセクハラ大王になってしまったトランプさん・中国や諸外国から大金を受け取っていたヒラリーさんは、倫理的に「どっちもダメでしょ!」と思います。

しかし、アメリカとの関係が切れれば、中国が尖閣を奪いにくる。ドゥテルテさんのフィリピンも、対中国で大事。そう考えると、相手国の倫理面より、戦略面を優先して、つきあい方を決める必要があることに気がつきます。悲しいことではありますが、日本を守るために仕方ないですね。

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『ロシアから電力を輸入し、東京電力は送電会社に、「もんじゅ」廃炉後は原子力の「地産地消」へ 笹川平和財団・田中伸男理事長に聞く(前編)(後編)』(10/25・26日経ビジネスオンライン 大竹 剛)について

ジョージ・ブロンソン・レー(米国人)著『「満洲国建国」は正当である 米国人ジャーナリストが見た、歴史の真実』(1935年)を読み終えました。ハルノート以前から、特に1922年のワシントン会議から米国と支那政府(当時は中国を統一して統べていた訳ではない。擬制国家です。米国が蒋介石を支援していただけ。小生考えるにこの当時から蒋介石や張学良は米国人に賄賂を沢山贈っていたのでは。今、ヒラリーやキッシンジャーに贈っているように)が共謀して日本の生存を危うくする試みを企てていました。その裏にソビエト共産党の暗躍がありました。九か国条約で日本に中国大陸の門戸開放の遵守を求めながら、条約締結国の支那政府には好き勝手やらせ、かつ締結国でないソ連にも革命の輸出を、中共を通じてやらせていた状況でした。日本は米中ソによって包囲網を敷かれてしまっていたわけです。支那政府は露清密約(日清戦争後すぐの軍事同盟)を結び、日本を亡き者にしようとしていました。今の中国の横暴さは昔からだったという事です。歴史的に見て滿洲国は日本の傀儡国家ではありません。満洲族の国家樹立を手助けしただけです。米国と同じことをしていただけなのに日本だけを九か国条約違反で糾弾するのは米国の二重基準です。日本は侵略国家と言うのは濡れ衣です。断固拒否しましょう。

ソ連はユダヤ人が造った人工国家(マルクス、レーニンはユダヤ人)と見る見方もあります。今のプーチンはエリツイン時代からの強欲ユダヤ人の新興財閥から経済をロシア人の手に戻しました。だから人気が衰えないでいる訳です。この本が書かれた1935年の米国大統領はFDRですので周りを共産主義者で固めていました。日本がどんな抗弁をしようとも米国は聞く耳を持たなかったでしょう。1924年には排日移民法案(人種差別法案です)も成立していました。日本は戦争を避けることができないくらいに追い込まれました。ABCD包囲網の前で、です。今のグローバリストである国際金融資本(≒ユダヤ金融資本)が蠢いていたような感じを持ちました。グローバリズムとコミュニズムは親和性があるのではと。この本の中で田中上奏文は明確に否定されていました。シオン議定書と同じくソ連が作成したものと。日本人や中国人にそんな発想はできないとありました。歴史の見方が変わる一冊です。GHQのWGIPの洗脳を解くために、現代日本人は一読することを勧めます。

本記事でロシアから電力を買うのには反対です。莫大な設備投資をしても供給カット(ロシア自国での電力消費増大や経済制裁等で)される恐れがあります。同じ意味でパイプライン敷設にも反対です。やはり、石油・ガスを船で運搬するのが良いのでは。50年先を見据えたエネルギーミックスを考えないと。メタンハドレートや核融合が実現されているかもしれません。エネルギー調達先を固定化するのは安全保障上問題です。相手の言うことを聞かざるを得なくなります。

核分裂の発電方法は確かに危険と隣り合わせですし、使用済み核燃料のゴミが出るのも問題です。でも人類の叡智でカバーできるようにすべきです。少なくともCO2は排出しませんので。日本は核保有国に囲まれているし、いざとなればすぐにでも開発できるところを見せておかなければ抑止力になりません。原子力発電は田中氏の言うように必要と思っています。

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12月に予定されているロシアのプーチン大統領の来日に向けて、北方領土返還交渉や日露の経済協力に向けた動きが活発になっている。そうした中、エネルギー分野での経済協力として、ロシアから送電線を日本に引いて電力を輸入することなどを想定した「エネルギーブリッジ」という構想が浮上している。

こうしたアイデアを早くから提唱していたのが、国際エネルギー機関(IEA)の元事務局長で、現在は笹川平和財団の理事長を務める田中伸男氏だ。

なぜ、日本がロシアから電力を輸入することが必要なのか。折しも、石油輸出国機構(OPEC)の加盟国が減産で合意して以降、原油価格は上昇傾向にあるほか、国内では原発の再稼働問題や高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉方針決定など、エネルギー情勢が国内外で目まぐるしく動いている。

田中氏に、昨今のエネルギー情勢と日本が進むべき方向について、話を聞いた。

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田中伸男(たなか のぶお) 1950年生まれ。73年通商産業省(現・経済産業省)入省。通商政策局通商機構部長、経済協力開発機構(OECD)科学技術産業局長などを経て、2007〜11年に国際エネルギー機関(IEA)事務局長、2011〜15年に日本エネルギー経済研究所特別顧問。2015年4月から笹川平和財団理事長(写真:陶山 勉)。

—9月に石油輸出国機構(OPEC)の加盟国が減産で合意して以降、石油価格は上昇傾向にあります。非加盟国のロシアのプーチン大統領も減産する用意があると発言したと報じられ、11月に開かれるOPEC総会の行方に注目が集まっています。石油価格は、今後も上昇していくのでしょうか。

田中伸男(以下、田中):確かに、アルジェリアでのOPEC会合の後、石油価格は少し上向いてきました。ロシアが減産に賛成するという話もあるし、サウジアラビアとイランが減産で合意できたという説もあって、石油価格は上昇機運ではあります。

しかし、本当にロシアが減産に応じるのか不透明です。また、OPECの加盟国が減産するかについても、具体的に各国の割り当てが決まらないと、実効力はありません。11月のOPEC総会の結果を見ないと、どうなるのか分かりません。ただし、これだけ上がってきて、もし、期待を裏切るようなことがあれば暴落してしまうので、なんらかの対応策が出てくる可能性が大きいと思います。

今、石油の産出量が一番多いのはサウジアラビアで次が米国、そしてロシアです。

石油価格が今後も上がり続けると、米国でシェールオイルの生産が増えてくるでしょうから、実際には石油の総量は減らないかもしれないという問題もあります。米国は、シェールオイルの生産量をコントロールする気はさらさらありませんから。

—むしろ、OPECやロシアの減産は、シェールオイル業者を利するだけになってしまいかねないというわけですね。

田中:はい。そのため、本気でOPEC加盟国やロシアが減産するかということ、それはなかなか考えにくい。今、口先だけで介入すれば価格は上がり気味になるのでしょうが、本当にずっと上昇していくかというと、必ずしもそうはならないと思います。

9月に国際エネルギー機関(IEA)がエネルギー投資に関するレポートを発表しました。そのレポートでは、石油やガスの上流への投資は2015年から3年連続で減ると予測しています。3年連続で減るというのは前例のないことだと。減るのは基本的にシェールをはじめとする非在来型資源への投資です。そのため、コストが安い在来型の中東産の石油がガスへの依存度は、ますます高まる傾向が出てくるでしょう。

一方、価格の低迷が続けば、中東諸国の財政を圧迫し、治安を維持するための様々な投資が十分にできなくなり、社会は不安定になります。つまり、不安定な中東にさらに依存せざるを得ないという状況に陥ってしまう。

特に、中国やインド、他のアジア諸国にとって、これは大きなリスクになります。そうなると、やはり中東依存度を下げる必要があり、原発の再稼動がままならない日本は、大変、危ない橋を渡っているという気がしています。

プーチン大統領来日で日露エネルギー協力が進展?

田中:確かに石油もガスも値段が安くなったことは、エネルギーの多くを輸入に頼る日本にとって悪いことではありません。それによってアベノミクスも助かっているわけですね。ですから、原発があまり稼働しなくても何とかなっているわけですけれども、この状況が長続きするのか疑問です。万が一の場合を考えておくべきでしょう。

そのためのキープレーヤーになり得るのが、ロシアです。米国やカナダなどからシェールオイルやガスを輸入するもの大切ですが、在来型の資源が豊富にあるロシアとの関係強化は今後、大変可能性があるでしょう。

現在、ガスの総輸入量のうちロシア産が占める割合は約10%、石油は約4%ですが、それを増やす余地はある。今、日本はウクライナ問題で欧米諸国と一緒にロシアへの制裁に協力していますが、すべての活動が禁止されているわけではありません。制裁のルールを守りながら、ロシアとの間で様々な関係を強化し、エネルギーを確保していくというのは十分あり得るだろうと思います。

特に安倍政権になって、プーチン大統領と非常にいい関係を築き、北方領土の問題も解決に向けていろいろな動きがあります。12月にプーチン大統領が来日するので、エネルギー関係で何か動きがあるかもしれません。

その1つが、ロシアが以前から言っている、電力線を日本とつないで、日本がロシアから電気を買うという話です。

—「エネルギーブリッジ」という構想ですね。

田中:この構想には、いくつか話があります。1つは、サハリンで石炭やガスを燃やして作った電力を、サハリンから北海道に送電線を引いて日本に持ってこようという構想です。北海道には、風力がたくさんありますよね。その風力で発電した電力と一緒に、本州まで持ってこようというものです。

風力発電を増やしていくと、風が吹かなかった場合のバックアップとして、石炭やガスを使った発電所が必要になります。そのバックアップの部分を、サハリンに作るというのは、面白いコンビネーションだと思います。

そしてもう1つが、ソフトバンクの孫正義さんが、中国の国家電網公司、韓国電力公社、そしてロシアのロセッティと覚書を結んで進めている「アジア・スーパー・グリッド」構想です。もともと孫さんは、モンゴルで風力や太陽光を使って発電した電力を、中国、韓国を経由して日本を持ってこようという「ゴビテック」という構想を持っていましたが、ロシアを経由してサハリンから日本に持ってくるルートも作れば、大きなリングのようなグリッド(送電網)を作ることができる。これに、プーチン大統領も関心を示していて、「面白いので是非サポートしたい」といったことを、ウラジオストクで9月に開かれた東方経済フォーラムで発言しています。

日露間の「エネルギーブリッジ」に複数シナリオ

—すいぶんと壮大な構想ですね。

田中:韓国の朴槿惠大統領も支持するようなことを発言しています。日本では、決して賛成する人たちばかりではありません。安定供給はできるのか、ロシアや中国は信用できるのかという議論があり、必ずしもどんどん進むということではないでしょうが、隣国は日本がエネルギーを必要とするときは、私たちは協力できるよと言っているように見えます。お互い、電力網をつなぐことで、電力消費量がピークになるタイミングをずらすとか、再生エネルギーを使いやすくするとか、そういう可能性が出てくるでしょう。

また、電力ではなく、ガスをパイプラインでサハリンから引いてこようという構想もあります。また、北極海航路でヤマル地方から液化天然ガス(LNG)を持ってくるという構想もあります。地球温暖化によって北極海の氷が溶けて、少なくとも夏の間はタンカーが北極海を通れるようになる可能性が開けてきた。そこを通れば、南回りで持ってくるより、はるかに近くて安上がりです。

それだけではなくて、シベリアの水力発電で余った電力を水素に変えて、日本に持ってくるという構想もあります。有機ハイドライド法というもので、トルエンに水素原子を3つくっつけると、メチルシクロヘキサンという液体になり、普通の石油タンクに貯蔵できる。むしろ、長大な送電網を作るよりも安上がりではないかという議論はあり得ると思います。

今回、世耕経済産業相がロシア経済分野協力担当相を兼務し、経済協力を進める姿勢を強く打ち出しています。東方経済フォーラムではロシア側も非常に熱心でした。12月のプーチン大統領の来日の際に何が起きるか予断を許しませんが、日露の経済協力はいよいよ本格的に進む可能性があるという印象を強く持ちました。

もちろん、これらの構想がすべて実現するわけではありませんし、乗り越えなければならない課題はたくさんあります。ですが、メリット、デメリットを今からいろいろ議論すべきではないでしょうか。

ロシアが困っている今がチャンス

—なぜ、ロシアはこれほど積極的なのでしょうか。

田中:エネルギー価格、特にガスの価格が低迷しているからです。ロシアにとってガスの主要な売り先は欧州ですが、ウクライナを経由するパイプラインでヨーロッパに送らなければならないという地政学的なリスクに加えて、欧州の景気が悪いうえにロシアに制裁をしているので需要が伸びない。

となると、アジアにも売りたいとなるわけですが、中国は安く買い叩こうとしている。一方、ロシアはできるだけ高く売りたいので、価格はなかなか折り合いがつかない。中国しか売り先がないと買い叩かれるので、ロシアは日本や韓国とも取引をすることで、中国をけん制する狙いもあるでしょう。

中国とロシアは関係が悪いわけではありませんが、互いに信用しているわけでもありません。安倍政権がロシアに接近しているので、ロシア側はいろいろなディールをするチャンスだと見ていることは間違いないでしょう。

日本側もロシアに一方的に利用されないように、したたかに対応すべきです。むしろ、ロシア側は困っているわけですから、安く買うチャンスです。リスクはありますが、今買わないでどうするんだとも思います。

もし、民間だけで資金を出すことが難しいのなら、国が何らかの形でお金を出して利権を押さえていくことも必要ではないでしょうか。今回、国際協力銀行(JBIC)が随分とお金をつけようとしています。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の出方はわかりませんが、いずれにしても、国が一定のリスクを肩代わりすることは、特に資源関連では自然な流れだと思います。

ロシアからの電力輸入は発送電分離とセットで

—ロシアから電力を輸入する話については、国内の電力会社は否定的なのではないでしょうか。競争が増えますし、電力供給の安定性が揺らぐかもしれない。

田中:地域独占で長らくやってきた電力各社にとっては、競争が増えるという意味で、海外からの電力輸入は当然、嫌でしょう。いつ、供給がカットされるかわからないようなリスクを抱えている電源には頼れないとも考えるに違いありません。しかし、日本の電力市場改革の行方によっては、あり得る話だと思います。

つまり、発電と送電を担う会社を分離する発送電分離が完全に進み、小売りも完全に自由化されれば、外国から電力を買うのはそれほど難しくないと思います。ロシアからの電力輸入は、発送電分離の議論とセットで考える必要があります。

東京電力は送電専門の会社として生き残るべき

例えば私は、東京電力が生き残るには、日本で唯一の送電会社になるしかないと思います。つまり、福島の復興は別にして、原発も含め発電部門は他の会社に全部売り払う。すでに、火力発電部門は中部電力とJERAという会社を作っています。次は、原子力でしょう。現在、柏崎刈羽原発のように原発再稼働に世論の反発が大きいのは、原発の運営主体が東京電力だからという面も少なくないでしょう。

原子力事業の買い手としては、関西電力がいいと思います。関西電力はもともと、発電量に占める原子力の割合がもともと半分くらいありましたから、関西電力が原子力の会社となり、安全に十分に留意しながら発電をしていくのが良いのではないでしょうか。一方、関西電力は送電部門を東電に譲る。

東京電力は送電会社として電力価格について政府の規制を受けることになります。それでも、東京電力は送電に関して非常に大きな知見を持っていますから、それを生かすことが東京電力を再生する唯一の方法だと思います。そして、東北電力や北海道電力は、風力や太陽光など再生エネルギー専門の発電会社になるというくらい、大胆な改革をしてもいいと思います。

その上で、送電会社が発電各社から電力を買って、原子力と上手くバランスを取りながら、電力のコストを総合的に下げていくという絵が描けると思うのです。そこに、外国から電力を買うというオプションも組み合わせればいい。

東京電力にも役所にも、そうした考えを持つ人はいるとは思います。ただ、ほかの電力会社の考えもあるし、福島の事故の反省もあるし、東電がこれからどうすべきかというのは、さまざまな議論をしていくべきでしょう。しかし、国から得た資金を返済するには、会社として持続的に経営を成り立たせなければなりません。「GOOD東電」になるには、送電会社として生き残るしか道がないでしょう。

ほかの電力会社も、それぞれが独自に原発を維持するのは、リスクも大きいと思います。技術やノウハウが分散してしまうのは効率が悪いですし、将来の廃炉の資金負担も重くのしかかる。送電を東京電力に、原発を関西電力に集約するのは、理にかなっているはずです。(後編に続く)

新潟県知事選で原発再稼働慎重派の米山隆一氏が当選する一方、核燃料サイクルの中核を担うはずだった高速増殖炉「もんじゅ」について、廃炉を含めた抜本的な見直しが決まるなど、国内の原子力政策に不透明感が漂っている。特に「もんじゅ」の廃炉に向けた方針は、日本が進めてきた核燃料サイクルが大きな転換点にさしかかっていることを示唆している。 国際エネルギー機関(IEA)の元事務局長で、現在は笹川平和財団の理事長を務める田中伸男氏のインタビュー前編では、ロシアから送電線を日本に引いて電力を輸入する構想や東京電力の生き残り策などについて聞いたが、後編では核燃料サイクルの今後について話を聞く。

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田中伸男(たなか のぶお) 1950年生まれ。73年通商産業省(現・経済産業省)入省。通商政策局通商機構部長、経済協力開発機構(OECD)科学技術産業局長などを経て、2007〜11年に国際エネルギー機関(IEA)事務局長、2011〜15年に日本エネルギー経済研究所特別顧問。2015年4月から笹川平和財団理事長(写真:陶山 勉)

—原発については再稼働の問題だけではなく、核燃料サイクルも岐路に立たされています。高速増殖炉「もんじゅ」も廃炉の方針が決まりました。

田中:日本にとって、原子力はエネルギーの安全保障上、必要だと思います。ただし、原子力が必要な理由はそれだけではありません。地球温暖化の問題で、二酸化炭素の排出削減には絶対に欠かせない。

ただし、福島の事故以降、これまでのような体制で原子力政策を進めても、国民の納得は得られません。重要なのが、原子力のサステナビリティーです。

1つ目は、安全上の問題です。「絶対」という安全はないにしても、できる限りの受動的安全性(事故が発生した際に電力など人工的な動力を用いず、自然の力で事態を収束させる仕組み)を備えなければなりません。2つ目は、高レベル放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理の問題。これがきちっとできないと、国民は納得しません。そして3つ目が、核兵器の製造に活用されないという点です。

これら3つを満たす原子力の技術、あるいはシステムを国民に提示しなければなりません。それなくして、国民は原発の再稼働には納得しないでしょう。日本には、高速増殖炉「もんじゅ」や六ヶ所村(青森県)の再処理施設があるわけですが、なかなかうまく稼働して来なかった。

使用済み核燃料を再処理してMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物 燃料:使用済み核燃料を再処理して分離したプルトニウムとウランを混ぜて作った燃料)にしても、それを燃やすための原子炉がなかなか再稼働しない。しかも、本来、MOX燃料というのはコストが高い。日本の核燃料サイクルは、もんじゅを動かすことが前提でしたが、もんじゅが動かないので、とりあえずMOX燃料を作り、既存の原子炉(軽水炉)で燃やそうとしたわけです。それがいわゆる、「プルサーマル」と呼ばれるものです。

ところが、福島の事故以来、MOX燃料を燃やすための原子炉が再稼働しない。それから、MOX燃料を作っても、結局、高レベル放射性廃棄物はゴミとして出る。そのゴミは10万年もの期間、地下に埋める必要がありますが、その場所も決まらない。

ようするに、核燃料サイクルのそれぞれのパーツが、国民を納得させるレベルまで達していないのです。したがって、今のまま「大丈夫です」といくら説明しても、「わかりました」と国民は納得しないでしょう。

核燃サイクルを維持に「統合型高速炉」の活用を

—こうした状況を解決する技術があると、主張していますね。

田中:私は、「統合型高速炉」という技術に注目しています。米国のアルゴンヌ国立研究所の技術で、高速炉に乾式再処理技術を組み合わせた、プルトニウムが外に出ない形の核燃料サイクルを実現するものです。核不拡散の観点から優れていると同時に、安全性も高い。1986年に全電源を喪失させる実験をしているのですが、無事に原子炉が停止しました。さらに、この統合型高速炉から出てくる核のゴミは、天然ウラン並みに毒性が落ちる期間が300年程度と、これまで30万年から10万年と言われていた状況から大幅に短くなる。

私は、こういう原子炉と再処理を一体にした小型の施設を各地方に配置し、地方分散型、地産地消型で原子力を活用する方が良いのではないかと考えています。六ヶ所村だけに作るという発想は、限界だと思います。高レベル放射性廃棄物を捨てる場所が見つかればよいですが、なかなか難しい。むしろ、原子炉で出たゴミは、その地域で処分するという発想に転換した方がいいでしょう。

300年で天然ウラン並みに毒性が落ちるゴミなら、地上でも地下でも、管理するのはそれほど難しくない。統合型高速炉を各地に作れば、これまでたまっている軽水炉の使用済み核燃料をそこで処理していけるオプションができる。地産地消型の原子力は、将来の1つのビジョンになりうるのではないでしょうか。

また、福島第一原子力発電所から、溶け落ちて固まった燃料デブリを取り出した際、それを処理する技術が今後、必要になります。それにも、統合型高速炉は活用できるでしょう。

—もんじゅの時のように、莫大な資金を投じてもうまくいかなかったということになる恐れはありませんか。

田中:それはおっしゃる通りですが、やってみないと分かりませんよね。アルゴンヌではある程度の実証がなされていますので、実験してみる価値はあるという気がしています

原子力を将来も活用するのであれば、今の軽水炉の技術のままでよいのでしょうか。安全性や核のゴミの問題を考えれば、早いうちに新しい技術に切り替えていく必要があるでしょう。2018年には日米原子力協定の改定期を迎えます。日本の核燃料サイクルを日米原子力協定の枠組みの中で続けていくには、きちっとしたモデルがないとダメです。

日本が核燃料サイクル路線を続けるのならば、具体的にどういうやり方で何をやっていくのかというビジョンを示さないと、協定の改定や延長は今後、難しくなっていくのでないかと心配しています。

米国にも、日本がプルトニウムを持つのはおかしいから再処理なんてやめろという人がたくさんいますよ。米国が気にしているのは、プルトニウムが蓄積することによる核不拡散上のリスクです。統合型高速炉でプルトニウムをゴミとして燃やしてしまうことに、米国が異を唱えるとは思えません。

プルサーマルで出る「核のゴミ」に課題も

—もんじゅの失敗は核燃料サイクルの破綻を意味し、再処理もやめるべきだという意見もあります。電力会社はMOX燃料を使ったプルサーマルの維持を主張していますが。

田中:そうですね。プルサーマルはやったらいいんですよ。それをやらないと、せっかく作った施設が無駄になりますから。コストは高いですけどね。

ただ、問題は、プルサーマルをやると、使用済みのMOX燃料が出てきますよね。これは、六ヶ所村の施設では処分できず、直接処分するか、または別の再処理工場を作らなくてはなりません。使用済みのMOX燃料を直接処分するならば、最初から使用済み核燃料を再処理してMOX燃料など作らずに、直接処分しておけばよかったわけです。もし、プルサーマルを続けるのなら、使用済みMOX燃料を再処理する新たな施設を作ってプルトニウムを使っていくというプロセスを繰り返すことになる。つまり、第2再処理工場、第3再処理工場が必要になってくる。

ですので、そうならないためにも、統合型高速炉を作って、使用済みMOX燃料も燃やしてしまえばいい。

もんじゅについて言えば、「もんじゅは危ないから潰してしまえ」というのは、正直もったいないと思っています。例えば、統合型高速炉は金属燃料を燃やすのですが、もんじゅで金属燃料を燃やす実験ができるのではないでしょうか。従来通り発電を続けますというのでは国民の理解は得られないでしょうが、次の核燃料サイクルのための技術開発に生かすという方向性も、議論してもよいでしょう。

—仮に統合型高速炉を今から実験し始めたとして、いつ頃から作り始められるのでしょうか。

田中:どう考えても2030年代でしょうね。軽水炉の寿命は40年、延長しても60年という中で、2030年代には次々と廃炉が始まっていきます。その時までに、次に何をするのか考えておかなければなりません。

もちろん、再生エネルギーは技術革新が進み、コストは下がっていくでしょう。バッテリーの技術も進む。核融合も実現するかもしれない。しかし、それでも原子力なしでいけるのかというと、苦しいのではないでしょうか。

そういう意味で、持続可能な原子力のオプションも持っていた方がいい。原油もガスも、再生エネルギーも、うまくいかないという事態が出てくるかもしれない。そういう時のために、原子力というオプションは残しておいた方がいいと思います。    エネルギー問題に関する議論は、石油の価格の話から、最終的には原子力の是非まで総合的にしないと、完結しない。中東やロシア、原子力など、すべてのピースは関連しているのです。それをぜひ、皆さんに理解してもらい、幅広い議論につなげていただきたいと思います。

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『ソフトバンク孫氏とサウジ副皇太子の「電撃結婚」 1000億ドルの巨大ファンド、2つの世界を塗り替えられるか』(10/25JBプレス 10/20付FTより)、『ギャラクシー発火問題の裏にあるサムスンの重荷』(10/25日経ビジネスオンライン 田村賢司)について

朝鮮半島系日本人と韓国人の経営の仕方の特徴を見てみます。彼らの民族的特質を表すものにケンチャナヨ精神とかパリパリ精神とかがあります。ケンチャナヨ精神は中国語の“没問題”に近く、“没問題”は「問題ない・平気・大丈夫」という意味ですが、中国人がこう言うと必ず“有問題”(=問題がある)であるときが多いですから、ケンチャナヨ精神も同じ使われ方と想像します。パリパリ精神は「早く早く」という意味で、人をせかす場合とか、何事もスピードが大事という意味で使われるようです。

孫正義氏とイ・ジェヨン氏にも同じような民族的特質が窺えるのでは。孫氏のサウジアラビアからの融資は米国でどのように理解されるかです。911の主犯が多かったサウジ人に対する遺族の「サウジアラビア提訴法」がオバマの拒否権を覆し、9/30に成立したばかりです。米沙関係がおかしくなっている時に、投資の手助けをするような動きを米国は歓迎するかどうか。下手をするとテロ支援企業の烙印を押されかねません。シエールオイル産出で米国における中東の地位は下がっていることに加え、イランとも国交回復の動きでサウジに米国に対する不信感を植え付けました。米国は孫氏のスプリントによるTモバイルの買収に反対したのは中国や北朝鮮に近いからではないかと思います。アリババ株で儲けた話もありますし、弟の孫泰蔵氏は拉致や核ミサイルで日本を恫喝し続けている北朝鮮に資金援助していたのを10数年前の「フライデー」か、その類の雑誌で読んだ記憶があります。今でもネットで調べると北との深い関係を示す記事が出てきます。フジテレビもグルのようです。知らぬは日本人ばかりなりで、彼らの存在を許すのは衆愚政治の典型では。

http://nippon-end.jugem.jp/?eid=3904

イ・ジェヨン氏も普通の日本企業であれば問題発覚時点で関係工場or関係生産ラインを止めて徹底的に原因究明しますが、パリパリ・ケンチャナヨ精神で、生産を止めず原因究明に当たったというのですから、普通に考えますと、不良品の山を築くだけではと思いますが。

ソフトバンクにしろサムスンにしろ、大きくバクチ(投資)を張って伸びてきた会社です。うまく行けば大きくなるのも早いですが、逆回転をすればこけるのも早いでしょう。”too big to fail”となるかどうか。サムスンは韓国にとって必要かどうか?LGが肩代わりすれば良いだけ。日本でもNTTやKDDIがあります。ソフトバンクの海外子会社は危なくなれば銀行管理で売却させられるのでは。

JBプレス記事

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英ロンドンでの会見を終えた、ソフトバンクの孫正義CEO(左)とARMホールディングスのスチュアート・チェンバース会長(2016年7月18日撮影)。(c)AFP/NIKLAS HALLE’N〔AFPBB News

日本有数の富豪でテクノロジー投資家の孫正義氏が、軍資金不足のために野望の実現に待ったをかけられたことは、これが初めてではなかった。

今のところは、ソフトバンクの子会社をロンドンに設立するという法的拘束力のない合意だけが文書になっているが、今後5年間でサウジは最大450億ドルを拠出するとしており、ソフトバンクは少なくとも250億ドル出資すると約束している。さらに計300億ドルの投資を「少数の大型グローバル投資家」から募るという。

「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」と名付けられたこのファンドには、とりあえず、畏怖と懐疑という異なる反応が寄せられている。

「畏怖」の念が生じているのは、このファンドの規模が、米国のベンチャーキャピタル業界が過去30カ月間に集めた資金の総額に等しいからである。「懐疑」が示されているのは、サウジとソフトバンクがこの前例のないプロジェクトへの出資と支援を本当に実行するつもりでいるのか疑問に思えるからだ。

だが、疑問を少しほのめかすだけでも、この計画に近い筋からは疑問を打ち消す言葉が飛んでくる。ある人物は「2人の男が金をばらまくという話ではない」と言い切った。別の人物は次のように付け加えた。「2人は意気投合した。サウジ側は国内に技術を持ち込みたいと思っており、マサ(孫正義氏のこと)は世界最大のテクノロジープレーヤーになりたいと考えている」

普通では考えにくいこの「結婚」は、ムハンマド副皇太子が9月初めに日本を公式訪問したときの出会いから始まった。孫氏はその何カ月も前から画期的な資金調達方法を検討していた。自分の野望の規模が大きいこと、そして公開市場の投資家にいらだちを覚えていたこと――自分の巨大かつ「クレイジーなアイデア」を彼らが理解するのにはかなり長い時間が必要だと孫氏は感じている――がその理由だった。

実際、ソフトバンクがアームの買収を決めたときも、資産の一部を売却して買収資金を調達する必要があり、その分、手続きが遅くなっていた。またこの取引により、ソフトバンクの純債務は1050億ドルという驚異的な額に膨れ上がっていた。

この問題を解決すべく、孫氏はソフトバンクの幹部、ラジーブ・ミスラ氏に新たな資金提供者を探すよう協力を求めた。ミスラ氏は元債券トレーダーで、2006年にはソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収という複雑な取引を手伝った経歴の持ち主だ。新ファンドを率いることになる同氏は、ドイツ銀行時代に同僚だったニザール・アルバサム氏とダリンチ・アリバーヌ氏に声をかけ、パートナーになる可能性のある投資家に打診してくれないかと頼んだ。

アルバサム氏とアリバーヌ氏は、サウジ政府の高官にも接触した。早速、サウジの一行の訪日中にソフトバンクとの会合が立て続けに行われることになった。

孫氏が経営するソフトバンクは先日、英国の半導体設計会社アーム・ホールディングスを320億ドルで買収するために多額の借り入れを行い、バランスシートを拡大させた。だが、未来を見通す自分の能力を信じて次々に企業を買収している孫氏は、もっと投資をしたいと思っていた。

では、人間と機械、そしてインターネットがもっと密につながった世界にするというビジョンを描いている孫氏は、その実現に必要な大金をどこから調達するつもりだったのか。

その答えは先月、13機の飛行機とともにやってきた。乗り込んでいたのはサウジアラビアからの派遣団500人あまり。その筆頭は改革派のムハンマド・ビン・サルマン・アル・サウド副皇太子、「MBS」というイニシャルで知られる人物である。

孫氏にとって幸いなことに、副皇太子はサウジの包括的な近代化を目指す「ビジョン2030」という自らの肝いりプロジェクトの実行を急いでいた。

その6週間後、2人はサウジの首都リヤドで会うことになった。総額1000億ドルという、この種のものとしては史上最大のプライベート・ファンドの設立計画をスタートさせるためだ。計画が実現すれば、孫氏はテクノロジーの未来に投資できるようになり、サウジはその果実を得られる可能性が出てくる。

孫氏は副皇太子に会う前にまず側近たちと話をし、プレゼンテーションに磨きをかけた。相手はサウジの公共投資ファンド(PIF)事務局長のヤシル・アル・ルマイヤーン氏、国営石油会社サウジアラムコの会長で影響力のあるエネルギー相でもあるハリド・アル・ファリハ氏、商業・投資相のマジド・ビン・アブドラ・アル・カサビー氏の3人だ。

それぞれが投資の戦略について、そしてそれがサウジ経済の徹底改革と石油への依存度低下という政府の試みにどう適合するかについて、孫氏に詳しい説明を求めた。

これに対して孫氏は、ソフトバンクはサウジの変身をこんな風に手伝えるという例をいくつか挙げただけでなく、自分自身の投資の実績と勝ち組――中国の電子商取引最大手のアリババ、モバイルゲーム開発会社のスーパーセル、ヤフージャパンなど――を選び抜く能力を売り込んだ。

日本文化に強い関心を持つ副皇太子は、日本の天皇を表敬訪問し、日立製作所の会長や大手銀行のトップたちとの会談をこなした後、側近たちを伴って孫氏のプレゼンテーションを聞いた。場所は東京の都心にある迎賓館だ。

2人の会談は大成功だった。副皇太子は孫氏に対し、サウジを訪問し、この国をよく理解できるようしばらく滞在することを要請して席を立った。サウジの高官や側近たちは、ソフトバンクやその傘下の企業のデューディリジェンス(資産査定)を秘密裏に行うべく都内に散った。

ある日本政府当局者によれば、孫氏はこの31歳の、合意形成によるゆっくりした統治に慣れた王国で若者らしい目的意識を持っているイメージのある副皇太子について、自分に似ている部分があると感じたようだ。副皇太子の方も、「意志決定においてはスピードが非常に重要だと考えている」という。

またこの政府当局者は、サウジは原油安による経済的変化にもかかわらず向こう数年間で投資を実行したいと考えており、孫氏が有するテクノロジー関連の起業家の人脈は、それとうまくかみ合うだろうと付け加えた。

中東問題の専門家である畑中美樹・国際開発センター顧問は次のように話している。「サウジアラビアは将来的に投資を誘致していくために、決断力があって国際的にも名の通った誰かと、人目を引く大型の投資契約を締結する必要があった。日本でそれができるのは、ソフトバンクぐらいだ」

孫氏は10月半ば、サウジアラビアの地に降り立った。あちこちの油田を見学してからサウジアラムコを訪問し、同社のエンジニアリングやロボット工学の技術について説明を受けた。ここでは特に、ソーラーパネルを清掃できるロボットにいたく感心していたとある人物は述べている。また、ソフトバンクとサウジとの間ではこれ以外にも、複数のパートナーシップが進行中だとも付け加えている。

孫氏はサウジの政府系ファンドであるPIFも訪問し、その経営陣とも会見した。サウジ側の資金の出所はまだ明らかにされていないが、恐らくPIFの資金と、アラムコ株の上場で得られる資金とが投じられることになるだろう。2018年に上場されれば史上最大の新規株式公開(IPO)となり、数百億ドルの資金が手に入ると予想されている。

これは議論を呼ぶことになる話だが、サウジ通貨庁(SAMA)が現在管理している流動性のある証券や債券、外貨などの一部もこのプロジェクトに投じられることになるだろう。サウジ政府に近いある銀行幹部によれば、PIFはSAMAの準備資産5620億ドルの大部分を取り込みつつある。そのため、ソフトバンクのテクノロジー・ファンドなどに資金を提供するPIFの能力は一段と高まることになるだろう。

この訪問が終わる前に、それぞれに世界を作り替えようと急いでいる孫氏と副皇太子は取引を成立させ、強い絆を培った。もっとも、両者のビジネス上の関係と投資の今後の方向性は謎のままだ。

「マサは、買える資産はまだ十分残っていると考えている」。孫氏の近くでずっと働いてきたスタッフの1人はこう語る。「このファンドは、従来型のバイアウト・ファンドやベンチャー投資ファンドにはならない。チャンスを見抜く孫氏独特の投資になるだろう」

By Arash Massoudi in London, Kana Inagaki in Tokyo and Simeon Kerr in Dubai

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日経ビジネスオンライン記事

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韓国・サムスン電子、イ・ゴンヒ会長の長男で、副会長のイ・ジェヨン氏(写真=ロイター/アフロ)

グループ企業の株主間の利害調整が難しく、誰が本当の支配者なのか明確になりにくいこの構造は、近代経営とは言えない。「イ・ジェヨン副会長はサムスン物産の株式を約17%保有し、同社がサムスン生命株を約19%、サムスン電子株を約4%持っている。サムスン生命もサムスン電子株を約7%保有するといった形で一族の支配は成り立っている」(石田・国士舘大講師)。

株式市場では、サムスン物産とサムスン電子を合併させ、これを事業持ち株会社にするのではとの見方が広がっている。資本構成上はすっきりするが、テーマパークから商社まで営む「物産」と、スマホ、半導体が主要事業の「電子」に事業上のシナジーがあるはずはない。実行されるとすれば、これもまたオーナー家の都合でしかないと言わざるを得ない。

停滞から脱した日本企業の研究も

そもそも、イ・ジェヨン副会長がサムスン物産の主要株主になったのは、「イ・ゴンヒ会長が1996年に、当時、グループの持ち株会社的存在だったエバーランドの転換社債を不当に安い価格でイ・ジェヨン氏に売却したのがきっかけ」(あるサムスンウォッチャー)。イ・ジェヨン副会長は、それをエバーランド株に替え、さらにエバーランドは後に別のグループ企業である第一毛織と合併。上場したことで巨額の利益を上げたとされる。その上、この新・第一毛織(合併後、エバーランドに社名変更)が、サムスン物産と合併するという変遷を経て、同社の大株主となっている。

そのサムスン物産とサムスン電子が合併するとなると、事業承継のためなら何でもありだと言わざるを得ないだろう。イ・ジェヨン副会長は、ソウル大学、慶応大学大学院、米ハーバード大学でも学んだ秀才である。先端経営の理論は当然身に付けている。ビッグディールに見られる選択と集中など、大胆な経営改革にはそれを感じさせるものがある。

サムスンは毎週水曜日、グループの社長たちを集めて、社長団協議会と呼ばれる勉強と協議の会を開いている。10月半ばの協議会の議題は、「日本企業は低迷からどのように脱したか」だった。発火事件に伴う、サムスンの「迷走」は古い経営体質を身の内に残したまま世界で戦わざるをえない韓国財閥の宿阿だとすれば、その苦闘はまだ続かざるを得ないのかもしれない。

分かりにくい話だが、イ・ジェヨン氏は2009年以降、COO(最高執行責任者)であり、イ・ゴンヒ会長が倒れた2012年には副会長に就任している。それでいて、これまでは役員ですらなかったのである。

狙いは不明だ。「経営の失敗や、何かの問題が起きた時に責任を問われないようにしてきたのかもしれない」。サムスンウォッチャーの中には、こうした意見も少なくないが、実態として意味は持っていない。今回の発火問題でもイ・ジェヨン副会長は表に出て対応に当たっている。

陰に回るどころか、イ・ジェヨン副会長は就任以来、むしろサムスン経営を大胆に変えようとしてきた。2014年11月には、グループのサムスン総合化学やサムスンテックウィンなど、グループの化学・防衛事業を、ハンファ財閥に売却することを決定。世紀のビッグディールと市場の話題をさらった。翌2015年秋には、残る化学部門をロッテグループに譲渡し、この分野から撤退している。狙いは、化学・防衛事業を外し、中核の電子事業に傾斜する選択と集中だった。

リストラにも着手している。公式には明らかにしていないが、複数の韓国メディアは「(2015年秋以降)サムスン電子は本社間接部門の人員を10%減らし、2016年には一般経費50%削減を打ち出した」「2015年だけで5000人あまりがグループを去った」などと伝えている。最近グループの主要企業を退職したある幹部も「グループ全体でリストラは進めている」と打ち明ける。これらを主導したのがイ・ジェヨン副会長だったと言われる。

米ファンドから強まる経営改革圧力

むしろ、「統治構造としては極めていびつな形態を正常化しようとする過程で起きたのが発火事故だった」(石田賢・国士舘大講師)のだろう。だが、そこにこそ問題が潜んでいるのではないか。

現地メディアによると、サムスンは発火事故の後、減産こそしたものの生産は止めずに原因究明をしたという。これだけの問題が起きれば、生産を止めて原因を解明するのが、本来のリスク管理。売り上げ目標の達成を重視したと見られても仕方ないだろう。

韓国の財閥において、「オーナー家は皇帝のような存在」(ソウル大学国際大学院のキム・ヒョンチョル教授)。イ・ジェヨン副会長の取締役就任という重要なタイミングでの事故は、社内に衝撃だけでなく、どう対応すべきかへの「戸惑い」も生んだのではないか。性急な対応にはその影がうかがえないか。

携帯電話事業の営業利益は低下してきた 半導体と携帯電話部門の営業利益の推移

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出所:石田賢・国士舘大講師の資料を基に本誌作成

今、サムスン電子に対して、米国のエリオット・マネジメントが持ち株会社化を迫っている。もの言う株主として知られるファンドである。韓国の財閥の多くがそうであるように、サムスンはオーナー家の持ち株比率が高い企業を起点に、他のグループ企業の株式を循環的に持つ仕組みになっている。低い持ち株比率でもグループを支配できる循環出資と呼ばれるものだ。

グループ企業の株主間の利害調整が難しく、誰が本当の支配者なのか明確になりにくいこの構造は、近代経営とは言えない。「イ・ジェヨン副会長はサムスン物産の株式を約17%保有し、同社がサムスン生命株を約19%、サムスン電子株を約4%持っている。サムスン生命もサムスン電子株を約7%保有するといった形で一族の支配は成り立っている」(石田・国士舘大講師)。

株式市場では、サムスン物産とサムスン電子を合併させ、これを事業持ち株会社にするのではとの見方が広がっている。資本構成上はすっきりするが、テーマパークから商社まで営む「物産」と、スマホ、半導体が主要事業の「電子」に事業上のシナジーがあるはずはない。実行されるとすれば、これもまたオーナー家の都合でしかないと言わざるを得ない。

停滞から脱した日本企業の研究も

そもそも、イ・ジェヨン副会長がサムスン物産の主要株主になったのは、「イ・ゴンヒ会長が1996年に、当時、グループの持ち株会社的存在だったエバーランドの転換社債を不当に安い価格でイ・ジェヨン氏に売却したのがきっかけ」(あるサムスンウォッチャー)。イ・ジェヨン副会長は、それをエバーランド株に替え、さらにエバーランドは後に別のグループ企業である第一毛織と合併。上場したことで巨額の利益を上げたとされる。その上、この新・第一毛織(合併後、エバーランドに社名変更)が、サムスン物産と合併するという変遷を経て、同社の大株主となっている。

そのサムスン物産とサムスン電子が合併するとなると、事業承継のためなら何でもありだと言わざるを得ないだろう。イ・ジェヨン副会長は、ソウル大学、慶応大学大学院、米ハーバード大学でも学んだ秀才である。先端経営の理論は当然身に付けている。ビッグディールに見られる選択と集中など、大胆な経営改革にはそれを感じさせるものがある。

サムスンは毎週水曜日、グループの社長たちを集めて、社長団協議会と呼ばれる勉強と協議の会を開いている。10月半ばの協議会の議題は、「日本企業は低迷からどのように脱したか」だった。発火事件に伴う、サムスンの「迷走」は古い経営体質を身の内に残したまま世界で戦わざるをえない韓国財閥の宿阿だとすれば、その苦闘はまだ続かざるを得ないのかもしれない。

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