与那国だけでなく奄美や宮古、石垣等南西諸島に陸自の配備予定とのこと。予算・人員・装備をしっかり配分しなければ中国への抑止力になりません。
http://matome.naver.jp/odai/2140088706815504401
http://www.sankei.com/politics/news/160530/plt1605300006-n1.html
本記事は、長いのでコメントは短めにします。自衛隊員の生命を守るためには、法律をポジテイブリストからネガテイブリストに変える必要があります。国民にキチンと脅威と危機について説明しなければ防衛予算増額も覚束なくなります。政治配慮は必要ありません。「人殺し予算」とか抜かした日本共産党はバッシングを受けました。裏で誰が操っているかすぐ分かるでしょう。南スーダンは中国が利権を持っていますので、彼らに任せ、尖閣の防衛or南シナ海に戦力を回した方が良いでしょう。米軍との共同作戦を展開しなくては。防衛白書が、奥歯に物が挟まった言い方なのは、背広組が自主規制しているのでは。
政府は危機感が足りない気がします。メデイアの横暴を止められないのであれば、新規参入しやすくしたり、課税強化したりすれば良いでしょう。パチンコも営業禁止にできなければ売上税を課すようにしたらどうか。敵の弱体化を図らないと。
記事
静岡県御殿場市にある東富士演習場で実施された陸上自衛隊「富士総合火力演習」の予行で、ヘリコプター「UH-60ブラックホーク」から懸垂下降する隊員(2016年8月25日撮影)〔AFPBB News〕
今年も例年通り、『平成28年版日本の防衛 防衛白書(以下28年版『防衛白書』と略称)』が公刊された。他方では、中国の漁船200隻以上が公船などとともに尖閣諸島周辺に押し寄せ、北朝鮮は今年に入り、核実験、各種ミサイルの発射試験のテンポを上げている。
日本を取り巻く安全保障環境は、これまでになく厳しさを増している。
『防衛白書』には、国民世論に対して防衛政策への理解を深めてもらうという目的がある。現在の日本の危機的な情勢の実相と、その中で日本として採るべき対応策について、今年の白書は、何を伝えようとしているのだろうか。
また、現在の緊迫した情勢のもとで真に国民に伝えるべきことが伝えられているのだろうか。このような観点から、昨年27年阪の『防衛白書』と比較しつつ、検証する。
1 目次構成
昨年同様の全3部構成である。
第Ⅰ部「我が国を取り巻く安全保障環境」の目次は変わっていない。
第Ⅱ部「わが国の安全保障・防衛政策と日米関係」では、「平和安保法制などの整備」が節から第3章に独立し、経緯と概要が詳述されている。
昨年は第Ⅱ部第2章にあった「防衛装備移転三原則」は、今年は第Ⅲ部の第3章「防衛装備・技術に関する諸施策」にまとめられた。
昨年は第Ⅱ部第4章にあった「防衛省改革」は、第Ⅲ部「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」第1章第1節「防衛省・自衛隊の組織」に簡略に記述されている。
第Ⅲ部第2章「安全保障協力の積極的な推進」について、昨年は第2節「国際社会の課題への取組」としまとめて記述されていた、「海洋安全保障の確保」、「国際平和協力活動の取組」、「軍備管理・軍縮・不拡散への取組」は、今年は第2節、第3節、第4節に独立して詳述されている。
第Ⅲ部第3章「防衛装備・技術に関する諸施策」には、「研究開発に関する取組」、「民生技術の積極的な活用」、「ライフサイクルを通じたプロジェクト管理」などの項目が新設され、「防衛装備移転三原則」が含まれるなど、防衛装備・技術に関する事項がまとめて記述されている。
以上からは、28年版では、昨年可決成立した「平和安保法制」と、それに基づき進められている国際的な「安全保障協力の積極的な推進」、「防衛装備・技術に関する諸施策」の推進の実態について、詳述しようとする意図が伺われる。
2 「巻頭特集」
28年版で新たに設けられた「巻頭特集 日本の防衛この一年」では、以下の項目が列挙されている。
①平和安全法制の成立・施行 ②防衛装備庁の新設 ③北朝鮮による核実験、弾道ミサイルの発射 ④各地で発生した自然災害 ⑤海外で活躍する自衛隊 ⑥自衛隊観艦式『海を守り、明日を繋ぐ』
これらの項目は、平和安保法制の成立を軸に、脅威認識、防衛省改革、安全保障協力活動、国民との一体化をテーマとしており、巻頭言や目次構成の狙い、重点事項と符合している。
3 第Ⅰ部「我が国を取り巻く安全保障環境」
(1)概説
・昨年は「わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している」としていたが、今年は「わが国周辺を含むアジア太平洋地域における安全保障上の課題や不安定要因は、より深刻化している」と要約している。
・「概説」の中で、北朝鮮と中国の脅威を特に列挙し、北朝鮮による「核兵器・弾道ミサイルのさらなる進展を「重大かつ差し迫った脅威」、中国の現状変更の試みは「わが国を含む地域・国際社会の安全保障上の懸念」と指摘、中朝の脅威増大に警戒感を高めている。
・グローバルな安全保障環境の中では特に、ロシアのウクライナで行った現状変更の結果は「固定化の様相を呈し」、中国の南シナ海での献上変更の「既成事実化がより一層進展する中、国際社会の対応に課題を残している」としている。中国のみならずロシアが新たな脅威として認識されている。
・グレーゾーンの事態の増加・長期化、テロの世界的拡散、サイバー空間へのリスク、領土問題の指摘は昨年と同じである。
・「関連事象」の図の中では、北朝鮮の「度重なる挑発的言動」、中国の「透明性の欠如」、東シナ海での「現状変更の試み」、南シナ海での「現状変更とその既成事実化」、太平洋進出の「高い頻度での維持」も指摘している。特に中国の活動活発化が重点的に採り上げられている。
(2)米国
・今年は、①中国の軍事的台頭をはじめとする、グローバルなバランス・オブ・パワーの変化、②ウクライナや南シナ海を巡る力を背景とした現状変更の試み、③ISILなど国際テロ組織による活動の活発化などの「新たな安全保障環境」のもと、米国の世界へのかかわり方が「大きく変化しつつある」としている。昨年の白書では単に「変化しつつある」とされていた。
2013年5月、バラク・オバマ大統領は大統領として初めて、米国が「世界の警察官」の地位を降りたことを表明したが、その後の世界では、中露朝など秩序挑戦国の台頭により世界的な情勢不安定が進んでいる。
今年の白書はそのことに対する率直な懸念を示している。特に、ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補となってから、その懸念は強まっていると言えよう。
・米国は、「短期的には過激派組織、中長期的には既存の国際秩序や米国及び同盟国の利益を脅かすことを試みる国家」を脅威と認識していると述べている。対応策として、同盟国との関係強化とリバランシングが継続されるとみている。
昨年は中東およびウクライナを巡る情勢が与える影響に注目が必要と指摘していたが、今年はそのような指摘はない。オバマ政権はリバランシングの維持を追求しているが、2015年7月に統合参謀本部議長から公表された『国家軍事戦略』では、ロシアを第一の脅威とみとおり、新大統領のもとリバランシングが維持されるかは微妙になっている。
・米国の軍事的優位性が徐々に浸食されているとの認識の下、米軍の優位性の維持・拡大のため、新たな分野の軍事技術の開発を企図して「第3のオフセット(相殺)戦略」を推進しているとしている。
「第3のオフセット戦略」については、「大国に対する通常戦力による抑止を強化するため、技術・組織・運用面において優位性を維持することを狙いとしており、人間と機械の協働及び戦闘チームへの投資を重視するとしている」と明確に狙いと重点について述べている。
この戦略は今後の米軍の基本戦略として、装備、訓練、運用などの教義の基本となるとみられ、同盟国に対してもこの戦略に基づき、共同の計画、運用、訓練、研究開発などでの協力要請を投げかけてくるものと思われる。
日米共同においても、人間と機械との協働、特に自律分散型の人工知能を搭載したロボットシステムの開発と運用がキーになると思われる。
・米軍の最近の動向として、新たに、日本へのイージス艦の追加配備と配備予定、比への巡視船、調査船各1隻の供与とA-10の配備、シンガポールへの沿海域戦闘艦の4隻配備、P-5のローテーション配備および米星防衛協力強化協定の署名などが追加された。リバランシングの具体的進展を強調している。
(2)北朝鮮
・脅威度について、昨年の「重大な不安定要因」との表現から「重大かつ差し迫った脅威」と、より強い表現になっている。
・大量破壊兵器・ミサイルの開発については、4回目の核実験について触れ、「一般的な水爆実験を行ったとは考えにくい」との評価をしている。半面、「既に核兵器の小型化・弾頭化に至っている可能性も考えられる」とみており、「技術的な信頼性は前進」したとみている。
このように、試験を重ねるごとに北朝鮮の核とミサイルの能力が向上していることを認め、警戒感を強めている。
・SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の開発、KN14の登場など、新たな動きにも触れている。なお、軍事挑発の可能性、奇襲攻撃能力の向上については昨年同様に強調している。
・ムスダンが一定の機能を持つことが示され、固体燃料エンジンの燃焼試験など、新たな中・長距離弾道ミサイルの実用化に向けた技術の獲得とその高度化を追求する姿勢を示しており、さらなる技術の向上の兆候があるとしている。
このような多様な核ミサイルの配備が今後進めば、北朝鮮の核戦力は、米本土を攻撃する能力を持つだけではなく、米側の先制攻撃や報復攻撃から残存して、日韓などの米同盟国やグアムを報復攻撃する能力も持つようになり、対米最小限抑止段階に近づくことになるであろう。
・内政面では、金正恩の独裁が強化され、第7回党大会を2016年5月に開催、「核保有国」と自称し、並進路線を継続し、核とミサイルの開発を続けることを表明したことを指摘している。粛清が相次ぐなか、挑発や不確実性の増大に警戒感を示している。
・南北関係は地雷爆発を契機に「極度に緊張」した。半面、北朝鮮が4度目の核実験を強行したことにより中朝関係が冷却化している可能性があるとしている。
ただし、中朝関係は、その後、韓国へのTHAAD配備などを契機に米中関係、中韓関係が冷却化したのに伴い、関係が改善している可能性もある。
(3)中国
・「全般」の冒頭の表現は昨年とほぼ同じで、中国が「より協調的な形で積極的な役割を果たす」ことへの期待と、中国の「高圧的ともいえる対応」や「危険な行為」などへの懸念を示している。
昨年同様に反腐敗闘争の継続、A2/AD能力の強化も指摘している。「全般」の記述は抑制的であり、「中国」の記述順序も下げられており、対中配慮がにじみ出ている。
ただし昨年は単に「懸念を抱かせる」としていたものが、今年は「強い懸念を抱かせる」と、より警戒感を高めた表現になっている。
・「軍事」や「活動状況」では、昨年よりも具体的かつ詳細に中国の軍事力増強、軍改革や活動活発化の実態について述べており、説得力に富んだ内容となっている。中でも周辺海域での活動は詳細に図示されている。
特に「軍事」では、軍事費の28年間で44倍への急増、軍改革、空母建造を公式に認めたこと、次世代戦闘機の開発について記述された。
「活動状況」では、「外洋への展開能力の向上を図っている」とし、2016年のフリゲート艦、情報収集艦の活動など、活動範囲を「一層拡大するなど、わが国周辺海域の行動を一方的にエスカレートさせており、強く懸念される」としている。
さらに中国公船の領海侵入のルーチン化、公船への機関砲とみられる武器の搭載、中国機に対する緊急発進数の急激な増加、中国軍用機の南下、海洋プラットホームの増設などの事例を列挙して、強い警戒感を示している。
・「南シナ海及び「遠海」における活動の状況」についても、南沙諸島の埋め立て、西沙諸島の軍事基地化などの事例を挙げ、「自らの海上戦力を「近海防御・遠海護衛」型へとシフト」させ、「インド洋などのより遠方の海域での作戦を実行する能力を着々と向上させている」としている。
この「近海防御・遠海護衛」へのシフトは、昨年公表された中国の『国防白書』にも明記された新たな海洋戦略の方向であり、今後より具体化してくるとみられる。尖閣周辺での活動もますます活発化すると予想され、わが国としても不測の事態への備えが欠かせない。
(4)ロシア
・昨年版に続き、厳しい経済状況の中、軍の活動領域が拡大していると指摘している。今年は、シリアへの軍事介入と北方領土での活動に触れている。
・ウクライナ情勢について、「現状変更の結果は固定化の様相を示しており、特に欧米を中心にロシアに対する脅威認識が増大している」とし、欧米は中国よりもロシアを脅威視していることを指摘している。リバランシング戦略が継続されるか否かへの影響が注目される。
・改定されたロシアの『国家安全保障戦略』の内容について、「多極化する世界の中でロシアの役割がますます増大」し、「軍事力の果たす役割を重視し、十分な水準の核抑止力やロシア軍等により戦略抑止と軍事紛争の阻止を実施する」とまとめている。
米国の力が相対的に弱まり多極化する中、ロシアの軍事力、特に核抑止力が重要とのロシアの姿勢を明示している。
(5)東南アジア、国際テロなど
・東南アジアでは、中国による「一方的な現状変更及びその既成事実化に対する国際社会による深刻な懸念が急速に広まりつつある」とし、改めて中国への懸念の拡大を強調している。比中仲裁手続きなど「国際法に基づく問題解決に向けた努力」やスビ礁の埋め立ての実態なども紹介している。
・テロについては、「ホーム・グロウン型」・「ローン・ウルフ型」のテロ活動の事例が増大しており、わが国自身の問題として捉えるべきとしている。東京オリンピックを控え、日本でもテロ対策に本腰を入れるべき時点に来ているが、特に国際テロ組織と北朝鮮などの特殊部隊との連携には注意を要する。
(6)海洋、宇宙、サイバー
・海洋では米国の「航行の自由作戦」、中国のアデン湾ジブチでの施設建設、インド洋諸国での港湾建設、ロシア、中国などの北極海での活動について紹介している。特に中国の「遠洋」での活動拡大を裏づける内容になっている。
・宇宙での主要国の活動の指摘は昨年と同様であるが、中国と並びロシアの宇宙での対衛星兵器の開発、デブリの飛散がもたらす脅威を強調している。
・サイバーについては、直接攻撃よりも「より容易」との認識が広まり、昨年同様に、「中国、ロシア、北朝鮮などの政府機関などの関与」が指摘されている。国家意思を背景とするサイバー空間での脅威が、今後さらに深刻化することは明らかである。
・新たに「軍事科学技術と防衛生産・技術基盤」の項目が設けられ、「第3のオフセット戦略」について紹介されている。また、米国防省関連機関によるファンディングや欧米諸国での防衛産業の統合、装備技術協力推進の実態を記述している。
日本国内での同様の施策推進の必要性を説得するためとみられるが、軍事科学技術の優位性維持が日本にとっても重要な課題となっている。
4 第Ⅱ部「わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟」
(1)「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」「平成28年度の防衛力整備」、「防衛関係費」
・昨年とほぼ同様の内容に経年変化を加えたものが記述されている。すでに一般に公表されている内容であり目新しいものはない。
中期防の「別表」で整備規模を示し、期間内の予測しがたい国内外情勢の急変に関わりなく、中期的な予算の総枠と整備目標を事前に決めつけるという、柔軟性を欠いた不合理な整備計画策定手法という問題点は残されたままである。
・平成28年度は、「防衛大綱及び中期防に基づき、その3年目として、統合機動防衛力構築に向け、防衛力整備を着実に実施する」としている。防衛関係費は4兆8607億円、前年度比386億円、0.8%増であった。
現中期防の整備目標、わが国の防衛関係費の増額ぶりは、中露朝のみならず韓国、米国、東南アジア諸国、豪州、インドなどと比べても不十分である。
アジア太平洋を含む世界的なバランス・オブ・パワーが日本にとり不利な方向に傾いているなか、この程度の防衛予算増額では、バランスの悪化は食い止められず、同盟国、友好国などの信頼も得られないのではないかと危惧される。
統合機動防衛力構想も、情報の適時の入手、残存性、戦略機動の可能性、戦力の維持、予備力の確保などに問題点を抱えており、人と予算を大幅に増大させ、基盤を与えなければ、絵に描いた餅になりかねない。
予算の増額幅は、これまでの年率数パーセントという漸進的なものでは不十分になっている。予算を倍増する程度の本格的増額をしなければ、バランスの維持は困難であろう。
なぜなら、第Ⅰ部でも述べられているように、中国は「1988年から28年間で約44倍」に急増させている。習近平政権は「強軍」を重視しており、今後低成長になっても、経済成長以上の速度で軍事費を増額させるとみられる。
他方の米国は、連邦予算の赤字削減のため、2018年度以降大幅な国防費減額を余儀なくされるとみられている。このままでは、2020年代前半に米中の軍事費は逆転する可能性もある。
このような米中の中長期の国防予算の趨勢の下で、日米と中国のバランス・オブ・パワーを維持するには、日本も防衛予算を大幅に増額する必要がある。韓国も2000年以降国防費を17年連続で増加させており、2011年度以降は、毎年年率5パーセント前後で増額している。
(2)「防衛力を支える人的基盤」
・女性自衛官への職域開放について付言されている。女性労働力の活用という、全般政策の一環として推進されている。世界的にも兵員確保のため、女性職域の拡大が行われている。
しかし本来は、その特性上、男性隊員の増加が望ましい点も多い。正面から男性隊員確保の施策を取る努力を回避し、安易に女性隊員増員に依存すれば、その問題は現場にしわ寄せが来ることになる。
(3)「平和安全法制」
・法案は可決成立し2016年3月から施行されたため、改正法案の概要が列記されている。その意義として、「抑止力の向上と国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献することを通じて、わが国の平和と安全を一層確かなものにする、歴史的重要性を持つものであり、世界の多くの国や機関から高く評価・支持されている」としている。
「戦争法」とする国内の一部野党の非難をかわす狙いもあり、「平和と安全を確かなものとする」法制であり、国際社会からも広く支持されていることを強調している。
・半面、「歯止め」がかけられていることも強調している。「自衛隊法、重要影響事態安全確保法、国際平和協力法、事態対処法制、国家安全保障会議設置法の改正、国際平和支援法の制定」について概要を列記する際、「他国の武力行使との一体化回避」および「国会承認」の必要性を、各法を通じ明記している。
「主要事項の関係」の図でも、昨年はなかった、「他国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められない」ことをバツ印で強調している。
・しかし平和安保法制には、まだ以下のような問題点も残されている。
①存立危機事態、武力攻撃事態での「他に適当な手段がない」ことの閣議での理由説明など「対処基本方針」了承の必要性 ②国際平和協力法の「国際連携平和安全活動」の安全確保業務、および国際平和支援法の「国際平和共同対処事態」における国会の事前承認の必要性
③領域警備法などグレーゾーン事態対処の根拠法の未整備 ④戦闘地域と「現に戦闘が行われていない現場」の区分、武力行使と武器使用の区分のあいまいさなど、「武力行使との一体化論」の制約 ⑤PKO参加五原則の制約
「歯止め」を強調するよりも、防衛法制のあるべき姿を目指すならば、むしろ、残された問題点についての言及があるべきであろう。
(4)「日米安全保障体制」、「新ガイドラインの概要」
・「日米安全保障体制」については、従来通り、「わが国自身の努力とあいまってわが国の安全保障の基軸」であることを冒頭に明示している。その他の記述は昨年と大きく変わりはなく、日米同盟強化の重要性を強調している。
・「新ガイドラインの概要」の列挙項目に変化はない。日米安保体制強化のため最も重要な施策と言える「日本の平和及び安全の切れ目のない確保」等について、本文中に詳述されている。
(5)「同盟強化の基盤となる取組」
・2016年6月の日米防衛首脳会談での以下の確認事項について、強調されている。
①日米地位協定の見直し ②東シナ海、南シナ海における現状変更の試みに反対 ③北朝鮮の動向を踏まえ、緊密に連携 ④新ガイドラインの実効性確保 ⑤日米装備・技術協力を更に深化 ⑥沖縄の負担軽減に努力。
昨年の日米防衛相会談に比べ、今年は①と⑥が新たに確認された。特に、⑥の確認は、「第3のオフセット戦略」を実効あるものにするうえで、欠かせない要素である。これを受けて、今年の『防衛白書』では、「防衛装備・技術に関する諸施策」が、極めて重視されている。
・「同盟強化の主な取組」では、「同盟調整メカニズム」、「共同計画策定メカニズム」の設置が、同盟強化策の要点であることから、「概要」に付言された。
・中国の力を背景とする現状変更の試みや北朝鮮の核・ミサイル開発などの脅威の高まりに対し、日米間で同盟を再度強化して抑止するとの意向が強く反映された内容になっている。
(6)「在日米軍の駐留」
・「在日米軍駐留の意義」、「在日米軍駐留経費負担」、「在日米軍の再編」の狙いと実態が強調されている。
日米同盟が抑止力として十分に機能するためには、「在日米軍のプレゼンスの確保や、緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢の確保などが必要」との認識に立ち、在日米軍は、「日米安保体制の中核的要素となっている」としている。
・「在日米軍駐留費負担」では「わが国の厳しい財政事情にも配慮しつつ」との文言が入った。米国と同様に日本側の財政事象も厳しいことを、米側に理解してもらいたいとの意向が表れている。
・「在日米軍の再編」では、「地元の理解と協力を得る努力を続けつつ、米軍再編事業などを進めていく」と、米軍再編事業推進に重点を置いた表現になっている。地元の理解を得ることの限界と周辺情勢の変化により米軍再編事業の早急な実現が必要になっているという判断があると思われる。
・「沖縄における在日米軍の駐留」では、普天飛行場の移設は、沖縄の負担軽減のみならず、その発展にも資する点を強調している。
また、牧港補給地区の一部早期返還の合意、北部訓練場の返還、嘉手納飛行場以南の土地の返還、沖縄所在兵力の削減、グアム移転、オスプレイの訓練移転など、沖縄の負担軽減に取り組んでいる実績も強調している。
これらは、在沖縄駐留米軍のローテーション配備への移行と符合した動きであり、中国のミサイル網などA2/AD戦略の脅威のもとに置かれた在沖縄米軍をより安全なグアムなどへ後退配備するという戦略的狙いもある。
他方で、沖縄のみならず南西諸島全般の安全保障という観点から、在沖縄米軍が後退配備されたことによる抑止力の低下をどう補完するかが、日本自らの責任となる。
・現中期防で採られている南西諸島防衛強化のための施策は、「島嶼防衛」に列挙されている。南西諸島正面の抑止力を維持するためには、計画された日本側の南西諸島防衛態勢強化策を実行に移し、在沖縄米軍後退で生じた抑止力の低下を補完しなければならない。
しかし、沖縄では反基地闘争が活発化している。反基地闘争には、日米の防衛態勢転換を阻害することを狙いとした意図的な政治戦、心理戦の面もあり、対応を誤れば抑止力の低下を招きかねない。
沖縄県民にも、日米防衛態勢の転換、特に日本政府の南西諸島防衛態勢強化への努力に協力しなければ、自らの安全が保てなくなる恐れがあることを説得すべきであろう。
5 第Ⅲ部「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」
(1)「防衛力を担う組織」
・部隊運用関連業務の統合幕僚監部への一元化、防衛装備庁の新設、内部部局の改編などについて、概要を示している。昨年より地味な扱いだが、運用と装備関連業務それぞれの一元化という、画期的な防衛省改革事業が実現された。
(2)「周辺海空域における安全確保」
・中国公船の領海侵犯、南西地域の通過を伴う中国海軍艦艇の活動の活発化、ロシア空軍機の根室半島周辺での領空侵犯など、具体的な事例を挙げて、周辺海空域の安全が危機にさらされている実態を明示している。
・空自機による中国軍機に対するスクランブルが571回(昨年は464回)と過去最多となったことを強調している。中国のわが国周辺での活動の急増が顕著で、力を背景とする現状変更の試みが日本の領域にも向けられていることは明らかである。これも中国のA2/AD戦略、遠洋への進出意図の表れと言える。
(3)「島嶼防衛」
・「安全保障環境に即して部隊などを配置する」との文言が冒頭に入った。状況が悪化し、尖閣上陸が切迫していると判断されるような場合は、先手を打ち部隊を上陸させることがあることを示しており、対応がより積極的になった。
・平素からの情報収集・警戒監視の重要性と、事前に兆候が得られた場合は、「統合運用により部隊を機動的に展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する」としている点は昨年と同じである。ISRと統合運用の重視は一貫している。
・ただし、今年は、兆候が察知された場合は、海上・航空優勢の獲得・維持が重要とする文言が入り、展開・集中地域は「侵攻が予想される地域」であることが示されている。
海空優勢の獲得・維持は、それができなければ島嶼侵攻は補給が続かず困難になることから、抑止策としても重要である。「侵攻予想地域」への展開・集中をいかに早く行うかも島嶼作戦成功の要件である。
・昨年は、「事前に兆候が得られず万一島嶼を占領された場合」に発動するとされていた、対地射撃による制圧後の陸自部隊の着上陸が、「島嶼への侵攻があった場合」に発動することにされている。
今回の修正は、事前の兆候把握ができていても侵攻阻止ができない場合もあることを考慮した、より現実的な表現になっている。また、島嶼の「占領」よりも「侵攻」の幅は広く、陸自の着上陸侵攻など島嶼奪回作戦の発動が、兆候把握の可否や占領の有無とは別に、主動的に行われることを示唆している。
・那覇基地の第9航空団の新編、与那国沿岸監視隊の配備に続き、警備部隊の配置、水陸機動団(仮称)の新編、哨戒機の取得など、南西地域の防衛態勢強化のための具体的な施策が、中期防に基づき列記されている。
・全般に「島嶼防衛」の内容は、より積極主動的になり、戦理的にも合理的になっていると評価できる。裏づけとなる南西諸島防衛態勢の強化が急がれる。
(4)「弾道ミサイル防衛」「ゲリラや特殊部隊などによる攻撃への対応」「海洋安全保障の確保に向けた取組」「宇宙空間における対応」「サイバー空間における対応」「大規模災害などへの対応」
・これら項目の説明内容については、経年変化以外はほぼ昨年と同様である。
・2016年の新規事項として、16年2月の北朝鮮の弾道ミサイル発射への破壊措置命令による対応、「開かれ安定した海洋」の秩序維持と中国との海空連絡メカニズム再開についての協議、熊本地震での活動などが付言された。
・「サイバー空間における対応」では、自衛隊指揮通信システム隊の監視、侵入防止、システム・規則・基盤の整備、情報共有、技術研究などの活動内容について、具体的に言及している。
・いずれの項目も、実行動に直結した内容であり、着上陸侵攻に連携して取られうる行動でもある。宇宙、特殊作戦、サイバー戦は非対称戦の重点分野とも言え、今後ますます重要になるが、自衛隊独力では限界があり、国際協力と国内の関係機関、民間との協力が欠かせない。
「宇宙基本計画」では、宇宙安全保障の確保が謳われている。サイバーの分野では、「内閣官房情報セキュリティセンター」「日米サイバー防衛政策ワーキンググループ」などが活動しており、これらとの連携が重視されている。
(5)「在外邦人等の輸送への対応」
・統合訓練の実施、コブラ・ゴールドへの参加などについて言及している。
・「平和安保法制」では「駆け付け警護」が可能になった。ただし、「現に戦闘が行われている現場」での活動はできない。また「安全確保業務」での人に危害を与える武器使用は、正当防衛、緊急避難に該当する場合のみとされており、過激派に拉致監禁された邦人を直接自衛隊が救出することはできない。
(6)「安全保障協力の積極的な推進」
・「軍事力の担う役割の多様化」「わが国やアジア太平洋地域、国際社会全体の平和と安定、繁栄に積極的に寄与」するという表現が入り、自衛隊がアジア太平洋地域において多様な役割を果たすことへの責任を明示している。
・「戦略的な国際防衛協力に向けて」という項目が起こされ、多国間と各国との防衛協力の枠組み、対話について、2016年の内容を中心に紹介されている。
「多国間安全保障枠組み」では、拡大ASEAN(東南アジア諸国連合)国防相会議が採り上げられている。
「各国との防衛協力・交流」では、昨年あったロシアとフランスが抜け、カナダが加わった。昨年は東南アジア諸国としてまとめて記述されていたが、今年はインドネシアとフィリピンが挙げられている。
防衛相会談が韓国と4年9か月ぶり、中国とは4年5か月ぶりに再開された。両国との関係は悪化していたが、対話は再開された。豪、インド、英とは着実に防衛協力が進んでいる。インドネシア、カナダとは初の外務・防衛閣僚会合が開かれた。比とは防衛装備品・技術移転協定が署名された。
ロシアとの対話はウクライナ問題で進展せず、フランスとは対露武器輸出の問題があり対話が進まなかったのかもしれない。全般に、アジア太平洋諸国、英語圏を中心に防衛協力と対話が進んでいる。
・「海洋安全保障の確保」では、ソマリア・アデン湾沖でのCTF151参加などの海賊対処、シーレーン沿岸国の能力構築支援について言及されている。
・「国際平和協力活動への取組」では、国連スーダン共和国ミッション(UNMISS)での活動とPKOでの人材育成面の協力について言及されている。教官の派遣、国連との共催で教官養成訓練が実施された。
・「軍備管理・軍縮・不拡散への取組」では、わが国が「拡散に関する安全保障構想(PSI)」に参加するなど積極的役割を果たしていることを強調している。
しかし「核兵器なき世界」を目指すオバマ大統領の主張がそのまま実現されれば、現『防衛大綱』でも「米国の拡大抑止は不可欠」とし、米国の拡大核抑止(核の傘)に核抑止力を全面的に依存しているわが国の安全保障の根幹が揺らぐことになる。単なる核軍縮推進ではこの問題は解決しないが、この点についての問題の指摘はない。
(7)「防衛装備・技術に関する諸施策」
・「技術的優位確保のための研究開発の推進」では、研究開発に先進技術及びデュアル・ユース技術を取り込んでいること、その成果として先進技術実証機(X-2)の初飛行を挙げている。
また、民生技術の積極的な活用のため、防衛省独自のファンディング制度を昨年度から開始し、109件の中から9件の研究課題を採択したことを紹介している。一部の大学等には、「平和利用」へのこだわりから防衛省のファンディング利用に抵抗があるとみられる。
・「プロジェクト管理などへの取組」のため、防衛装備庁にプロジェクト管理部を設置し、プロジェクト管理の重点対象装備品を選定するとともに、長期契約を可能にし、効率化、まとめ買いによりコスト削減と安定的調達を図っているとしている。
・「防衛装備・技術協力」では、防衛装備移転三原則に基づき、2016年に挙がった成果を列挙している。
①米国とは、日米共通装備品の整備基盤を確保するため、F-35Aの国内企業の製造参加、整備拠点設置、木更津でのオスプレイ整備などの取組を実施。
②豪とは、将来潜水艦プログラムの検討成果を豪政府に提出したが、採用には至らなかった。
③インドとは移転協定に署名し、救難飛行艇(U-2)を含むブロジェクトを探求、④比とは、移転協定に署名し、海自練習機の移転で合意した。
・「防衛生産・技術基盤戦略」については、厳しい財政事情、欧米企業の再編、国際共同開発の進展などを踏まえ、14年に防衛生産・技術基盤戦略を策定し、防衛生産・技術基盤の維持・強化のための諸施策、各防衛装備品分野の現状と今後の方向性が示された。
・米軍の基本戦略である「第3のオフセット戦略」の1つの狙いとして、同盟国の防衛生産・技術基盤の活用という面がある。特にアジア太平洋地域で随一の民生技術力と潜在的な防衛生産力、技術力を有するわが国への欧米、豪、インド、東南アジア諸国などの期待は大きい。
近年、中国の武器輸出は2006年から2010年の間に輸出額が88%増と、急拡大しており世界第3位になり、兵器生産基盤も拡大している。ロシア、南北朝鮮も同様に武器輸出に力を入れている。バランス・オブ・パワーの変化の1つの要因が、このような各国における武器の生産基盤と輸出拡大がある。
アジア太平洋域内のバランス・オブ・パワーの維持・回復のためには、米国および域内の友好国に対するわが国の装備移転の推進と、それに応じうる日本国内の生産基盤の拡大が必要である。
その意味で、防衛装備庁の一元的な管理体制のもと、現在推進されている防衛装備・技術に関する諸施策が、確実に実行されねばならない。
(8)「地域社会・国民との関わり」
・自衛隊は、不発弾処理、駐屯地開放、緊急患者輸送などの民生支援活動を通じて、地域コミュニティーの維持・活性化に貢献している。
また防衛施設と周辺地域の調和を図るため行っている、騒音対策、騒音以外の障害防止、生活・事業上の障害緩和、周辺地域への影響緩和などの施策を紹介している。
・自衛隊記念日記念行事などに関連し、様々の広報活動を行うとともに、情報発信や情報公開にも努めていることを紹介している。
・防衛省、自衛隊は、従来から地域社会や国民の理解を得るために重点的に施策を行ってきている。
他方では、沖縄を中心に、今でも激しい基地反対闘争が展開されている。政治性の強い基地反対闘争は、従来のような対策では終息しないとみられる。在来型の基地反対運動と区別し、対情報・保全の観点からも対策をとる必要があるであろう。
全般要約
『28年版防衛白書』は、「防衛大綱」に沿い、全編を通じて、バランス・オブ・パワーを維持・回復し紛争を抑止するための、一貫した基本戦略を描き出している。すなわち、第Ⅰ部の国際情勢認識では、中露の非対称脅威の高まりと、その対抗戦略としての米国の技術を重視した「第3のオフセット戦略」に言及している。
それに呼応し、第Ⅱ・Ⅲ部では、わが国の「統合機動防衛力の構築」、「防衛装備・技術に関する諸施策」等の対応策を紹介している。米国の戦略と整合した日本の防衛政策の具体的な方向と重点施策については、一貫して説明されている。
しかし、統合機動防衛力の限界、「平和安保法制」の残された課題、政治戦としての沖縄の反基地闘争への対応、米国の拡大核抑止力の信頼性など、政治的には記述困難だが、より本質的な問題点への回答は記述されていない。
政治的制約があることは、白書としての性格上止むを得ないであろう。しかし、現在の厳しい安全保障環境の中、国民に真に訴えるべき点をもっと明確に強く打ち出すべきであろう。
尖閣への中国の領域侵犯も北朝鮮の核ミサイルの脅威も、国家の主権、国民の生命、国土の統一という安全保障の根幹にかかわる問題である。それがいま脅かされようとしているにもかかわらず、これまで通りの政治的配慮が先に立った、生ぬるい表現で国民にいま抱える政策課題や問題点が伝わるのであろうか。
むしろ、予算や人員、法的権限といった基盤も欠けているのに、あたかもこれで防衛は万全なような幻想が、国民の間に拡散するおそれがある。
「戦争法」などという根拠のない、国際情勢を無視した政治的プロパガンダに怯えるよりも、心ある国民に真実を訴え、真に必要な国を挙げた防衛努力への協力を訴えねばならない。『防衛白書』はそのための貴重な媒体である。
日本は厳しい財政事情を抱えているとはいえ、国際標準から見て、あまりにも防衛に投入する国家資源が少なすぎる。このことは、防衛費の対GDP比率、国民人口に対する兵員比率などでも明らかである。
予備の人員、弾薬・装備品の備蓄なども無きに等しい(なお、今年の『防衛白書』の資料3では、州兵、民兵、準軍隊などが計上されておらず、総兵員数の全体像は分からない)。
このままでは米国の国力が相対的に弱まり、中朝の軍事的脅威が増大する中、日本周辺のバランス・オブ・パワーを維持することはできない。
力のバランスが崩れれば紛争が誘発される。そうなれば、日本の国土国民に直接危害が及ぶことになる。このような事態を未然に防ぐために、せめて世界標準並みに、いま少しの我慢と協力を国民に求めるという、責任ある政治を反映した『防衛白書』の公刊を期待したい。
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