『日本は中国から「アフリカの支持」を奪えるか 中国式「新植民地主義」を「善意の日本」が揺らす』(9/7日経ビジネスオンライン 福島香織)、『G20、習近平氏の挫折 対米“大国外交”は幻に』(9/7日経 中沢克二)について

中国人は世界中どこへ行っても彼らの流儀を押し通します。チャイナタウンを作り、自分達で金が回るようにし、地元にはカネが落ちない仕組みを作ります。当然雇用も中国人を使うので、現地の人達にはメリットがありません。それに賄賂文化の悪習も持込み、中国国内同様、為政者のみ潤うことになります。国内同様、自分たちがやった悪事は全部他人のせいに転嫁しますし。日本は黙っているからイジメ易いと思われ、何でも日本のせいにします。戦後の日本人のだらしなさとしか言いようがありません。悪の帝国・中国の支配を世界に広げるつもりかどうか、日本を含めた自由諸国の覚悟が問われているのだと思います。

中国が嫌がることをするのが倫理的にも道徳的にも正しい道です。中国は詭道・詐道・覇道の国ですので。その意味で安倍首相がTICADを利用し、アフリカと着実に交流を深め、信頼を勝ち得ていくことは正しいことです。中国は相当嫌がるでしょう。当然です。自分たちは大きな投資をしてリスクを負っているのに、日本は少ない投資で現地の人の信頼を得る訳ですので。民族性の違いです。利他精神と中華思想の違いです。

G20での中国の米国への取り扱いは、昨年9月の習近平訪米時の冷遇の意趣返しでしょう。ローマ法王の訪米とぶつけ、シアトルでの歓迎晩さん会でワインも安物、日本料理を出したりと。でも誰にも分かるようなやり方でリベンジするのは未熟な証拠。外交プロトコルを守らない野蛮な国のイメージが出来上がるのに。中国は歴史的に見てもそうでした。満州族政権だった大清帝国の西太后も義和団を利用して攘夷を決行しようとしたりしましたし。中華思想の為せる業です。ですから彼らは平気で人種差別することができます。

http://netgeek.biz/archives/54238

スーザン・ライスは中国の金塗れのキッシンジャーの意を受けて、2013年後半には米中G2容認の論陣を張りました。それがこのような扱いを受けて悔しかったのでは。パンダハガーがドラゴンスレイヤーに変わるかどうか。少なくとも、抱きしめようとしたのはパンダではなく、シベリアトラ(東北虎)だったのに気が付いたかどうか。何せ東北虎はパンダ以上の絶滅危惧種だそうですので。まあ、彼女もクリントン同様、中国からの鼻薬が効いていて、このくらいは許容範囲かもしれませんが。

http://www.recordchina.co.jp/a32003.html

しかし、やはり杭州でG20を開いたのは失敗だったでしょう。ライスが如何に中国の言いなりになって動いてきたかをこの係官は知らなかったのでしょうけど、お粗末の一言。

「天有天堂、地有蘇杭(天には天国があり、地上には蘇州と杭州がある)」と言われるほど杭州・西湖は蘇州と並び風景の美しい地と評価されています。小生は蘇州の方が好きだったですが。龍井茶について、朱鎔基が「中国が持つ国際的ブランドは2つしかない。龍井茶と青島ビール」と言った記憶があります。でもお茶は日本の茶道が奥ゆかしいし、宋代の抹茶がまだ日本に継承されて、定式化されているのを考えますと、中国と言う国は易姓革命の国で、前の政権の良きところを引き継がなかったことが分かります。こんな国に生まれなくて良かったとつくづく思います。

福島記事

abe-ticad

日本のアフリカ支援が中国を苛立たせる(写真:AP/アフロ)

中国では杭州でG20が行われているのだが、残念ながらこの原稿の締め切り前に、そのサミットの中身について知ることはできない。とりあえず、習近平は笑顔で安倍晋三と握手を交わしたそうだ。その一方で、米大統領・オバマにだけレッドカーペットを敷いたタラップを用意しなかったり、大統領側近に空港での移動が警備当局から厳しく制限されて怒声が飛び交うような押し問答があったりした。

メンツにうるさい中国のことだから、タラップを用意しなかったのは、絶対わざとの嫌がらせだと、思われている。波乱含みの開幕のG20については、サミット後の結果をみて改めて報告するとして、今回はアフリカをめぐる日中のつばぜり合いについて考えてみたい。

「日本は中国・アフリカ関係を挑発」

とにかく、中国は先のTICAD6(第6回アフリカ開発会議)で日本が2018年までに官民300億ドル規模の対アフリカ投資を表明したことについて、非常に反感というか危機感を持っている。昨年12月にヨハネスブルクで開かれた中国・アフリカ協力フォーラムで中国は3年間で総額約600億ドルの支援を表明したから、それと比べると半分にすぎない少額であるにもかかわらず、その反応の激しさに驚く。

中国外交部は定例記者会見上で次のように発言した。

「遺憾なことは、TICADにおいて、日本は自分の意志をアフリカに押し付け、私利私欲を図り、中国・アフリカ関係を挑発しようとしている」

「日本は会議議題と成果文章に安保理改革と海上安全を盛り込もうと懸命だが、それはアフリカの発展という会議の主題とかけ離れており、アフリカ諸国の代表らの強い不満を引き起こしている。アフリカの国家はTICADの政治化に強く反対しており、アジアの問題をアフリカに持ってくること、日本が自分の意志をアフリカに押し付けることに強く反対している。日本は最終的にアフリカ国家の意見を受け入れざるを得ない。海洋に関する内容、安保理改革問題は前回のTICAD横浜宣言の原則を維持しているのであって、日本の共同通信の報道は客観的な事実を反映していない。これはアフリカ国家を尊重していないことでもある」

中国メディアも日本の対アフリカ援助を一斉に批判。

新京報(8月31日)は「日本は金をばらまいてアフリカを中国との競争の第二の戦場にしている」として、「(アフリカ支援の)目標は国連安保理常任理事会入りと、中国に対するけん制」という日本の学者の意見を引用しながら、そういう皮算用では、日本とアフリカの協力関係はおそらく順調ではないだろう、と言う。

中国メディア「日本は大損する」

また、環球時報に寄稿した社会科学院西アジア・アフリカ研究所の専門家・賀文萍は、アフリカにとって中国は重量級国家、日本は中量級国家だといい、これも日本の専門家の意見を引用し、日本の300億ドル程度の投資などおそるるにたらず、といった論調だ。

「経済が停滞に陥っている日本は経済貿易協力におけるハードパワーにおいて、中国に追いつき超えることはありえないことをよく知っている。このため、人材育成や就業、食糧危機問題解決など、日本が優勢さをもつソフトパワー領域に力を発揮するという言い方をする。…しかし、ソフトパワーで中国の優勢さに対抗するなんて聡明なやり方ではない。日本は楽勝と思っているのだが、最終的に大損をするのだ」…。

さらには、日本とケニアの共同宣言の内容が、ケニア側の外務省サイトにアップされていないうえ、改めて南シナ海については中国の立場を支持する内容をアップしたことについて「共同声明は双方で合意した文章ではなく、日本側の一方的な声明発表にすぎないことは、ケニア政府がすでに表明している。ケニアの安保理改革と海洋問題に関する立場は明確で、一貫している。すなわちアフリカ連合の立場を支持し、南シナ海においては中国を支持する立場なのだ」(中国外交部報道官)と強調した。

環球時報(9月1日)は「日本は大枚をはたいたのに、アフリカから冷遇されている」と報じ、「アフリカの友人たちから聞いたところでは、今回のTICADで日本は全くメンツを失ったそうだ。54のアフリカ諸国のうち総理、首相が出席したのはわずか25か国。…昨年末の中国アフリカフォーラム・ヨハネスブルクサミットに出席したアフリカ国家元首・首脳は42か国。日本は永遠に、これほどの人気、人の縁は得られない。…日本が安保理改革やアジアの海について中国をネガティブに宣伝することには、どの国も強烈に反対し、会議では一国として日本の立場を支持する国はなかった、という。むしろ日本のTICADの政治化についてはみな内心不快であった。今回の現実は、安倍首相にとって良い勉強になっただろう。アフリカで中国に挑戦するなんて力不足なのだ。中国のようにアフリカに対し平等に対応し、効果的にウィンウィンの方針を貫くなど、日本には永遠にできないマネである…」とこき下ろしている。

実際のところ、アフリカにおける中国の影響力は圧倒的である。アフリカ諸国も、当然、中国、日本の双方を競わせて金をひっぱってきたい思惑があろう。中国には中国にとって聞こえの良いことを言い、日本には日本の喜びそうなことを言う。日本ケニアの共同声明をケニア側が否定していることは、確かに日本にとって外交メンツを失わせたことになるので、この件については日本の外務省もきちんとプロセスを説明する責任がある。

ただ、中国がかくも、余裕のない様子で、敏感に日本の対アフリカ外交に対して反感を持ち、警戒感を示しているのは、やはり何かあると考えるのが普通である。実は中国の対アフリカ戦略が、思い描いていたほどの効果を上げなくなってきたことへの焦りがあると思われている。

難しさ5点、中国の焦り

8月下旬に出された中国社会科学院の西アジア・アフリカ研究所の「アフリカ発展報告書2015-2016」では、中国がアフリカのパートナーであり続けることの難しさをかなり具体的に指摘している。

①局部戦争、テロの脅威、政権更迭リスク、行政効率の低下、法律環境が人の意のままにならず、為替管理リスクも大きく、租税レベルが高くていい加減、マンパワーコストも必ずしも低くない。

②中国企業側に投資対象国への理解が欠如し、現地企業との間に悪性競争や現地の法律を無視した状況が起きる。

③アフリカ経済にネガティブな影響を与える。商品の価格下落、アフリカ基礎インフラ建設の遅れ、アフリカ国家市場の需要下落などが、我が国のエネルギー、基礎インフラ建設、製造企業のアフリカにおける発展に不利益をもたらしている。

④西側国家企業との競争が激化し、製造の障害となっている。エネルギー鉱物資源開発の領域において中国企業の権益取得を阻止しようと動いていることが一つ。また「中国脅威論」や「新植民地主義」といった批判でもって、中国企業の発展にネガティブな影響を与えている。

⑤中国アフリカ経済貿易協力において困難が存在する。アフリカ国家政府の政策支持が不足していること、基礎インフラ建設投資の割り当てが不十分なこと、企業への融資メカニズム、プラットフォームが欠乏していること。この結果、企業開発区の発展速度や企業の投資意欲にマイナス影響を与えている。

こうしたアフリカのリスクは実は中国だけでなく、アフリカに進出しているどの国も直面するものなのだが、あの中国ですら実はアフリカ進出は苦戦しているというのは興味深い。テロ・紛争リスク、法律の不備や無視、汚職の蔓延、労働者のモチベーション不足、金融や為替のメカニズムの不備などは、中国が国内で抱える問題にもあり、中国企業も当然、耐性があると思われているのだが、アフリカはその中国企業ですら音を上げるほどの環境のようだ。

特に、西側企業との国際競争が激しくなってきたことが、中国投資の苦戦の大きな理由に浮上してきた。西側大国と新興の大国が中国をターゲットに連動して動いている、という。「アフリカを食い物にしている中国の新植民地主義」という「宣伝」は、思った以上に中国のアフリカでの経済活動を苦しめているようだ。

もっとも、この指摘は、投資を受ける現場の住民の間では、反中意識が高まっていることの証左だといえる。『進撃の華人』(講談社)の著者の一人の元北京駐在スペイン人記者、ファン・パブロ・カルデナルから直接聞いた話だが、アフリカの多くの中国企業投資の現場では、環境破壊や住民の生活破壊、労働者への賃金未払い、搾取などの問題が必ずと言っていいほど発生し、政府や汚職官僚は中国マネーを歓迎するとしても、そこに暮らす人々の間ではむしろ反中意識が芽生えているという。詳しくは同書を読めばわかるのだが、そういった現地にはびこる反中感情のものすごさは、しばしばおきるザンビアの現地労働者と中国人マネージャーとの武装衝突事件やガーナの中国人違法金鉱採掘者の大量逮捕事件などにも表れている。

課題3点、アフリカの批判

在米華人学者の何清漣がボイス・オブ・アメリカに寄稿した「中国海外鉱山投資が資源ナショナリズムに遭遇」という記事を少し参考にして述べると、アフリカの知識人やNGOは、ここ数年一貫して、次の3つの点について中国を激しく批判している。

①中国の「新植民地主義」「経済帝国主義」がアフリカのエネルギー資源をかすめ取るだけでなく、環境生態を破壊している。

②中国のアフリカ経済開発は(中国移民を増やすばかりで)アフリカ人の就業機会増に貢献していない。

③人権を無視し、独裁政府を支持している。

一部地域で中国投資の油田や鉱山が現地武装勢力に襲われるのは、中国の投資自身が現地の政治衝突に干渉しているからだ、という。根本にはアフリカの資源ナショナリズムの台頭がある。

9・11事件以降の世界の変化として、中国の中華民族の復興、中東のイスラム原理主義の台頭、アフリカ・ラテンアメリカの資源ナショナリズムの台頭がある。いずれも行き過ぎたグローバリズムの逆流としてのナショナリズムの台頭といえるが、西側の普遍的価値観は中華民族の復興とイスラム原理主義の台頭については批判で一致し、アフリカ・ラテンアメリカの資源ナショナリズムは同情と支持を表明している。

一方、中国はこの資源ナショナリズムと普遍的価値観とは対立の姿勢を示している。中国のナショナリズム、つまり中華民族の復興を実現するには、資源の対外依存度が今以上に高くなっていくということであり、アフリカの資源ナショナリズムと対立する形にならざるをえない。投資と占有開発でアフリカの資源を奪う従来のやり方を変更することは難しい。

アフリカ諸国の政府自身は、今のところ中国との外交と援助姿勢を重視しており、中国にかなりの気の使いようだが、まがりなりにも選挙で大統領を選ぶ国家では、最終的には民意がものをいう。中国のやり方を新植民地主義と感じて抵抗感をもつ知識人や市民は増えていくだろうし、中国がやり方を変えないかぎり、対アフリカ投資はますます前途多難に陥るという見立てはだいたい間違いないのだ。

「善意の日本」が中国への有効打に

この事実を中国側は十分に認識しているのだが、発言上は、中国は「西側のライバル企業が中国脅威論や新植民地主義を喧伝して、中国企業の邪魔をしている」と言う。中国にすれば、かつてアフリカをさんざん食い物にした欧米諸国には言われたくない、という思いもあるだろう。

だがアフリカに植民地を持ったこともない「善意の日本」が、アフリカの資源ナショナリズムを尊重しつつ、きめ細かい開発や投資に乗り出せば、額は少なくとも、これは確かに現地市民の対中感情を相対的にさらに悪化させることになるだろう。中国にしてみれば脅威を感じて当然だ。経済リターンを得るという点では、かなり難しいが、日本の目的は中国への牽制であり、国連におけるアフリカ諸国の支持を得ることだとすれば、それは多少なりとも効果があるはずである。少なくとも、中国がここまで警戒心をむき出すということは、日本のこの一手に効果があるとみているということである。

アフリカは中国の一帯一路(陸のシルクロードと海のシルクロードの外交・経済一体化構想)戦略の海のシルクロードの終着点という意味で、中華秩序圏拡大(中華民族の復興)戦略の鍵となる土地。日本はこの中国の思惑に対し、インド洋から太平洋にかけて海洋安全保障にアフリカを組み込むことで中国を牽制、南シナ海からインド洋にかけての開放性を守りたい。それは尖閣諸島を含む東シナ海を中国の覇権から守ることにもつながる。

日本にしては珍しく、明確な戦略と視野をもった外交ではないか。困難はあろうが、うまくいくことを願っている。

中沢記事

20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれた9月4、5日両日、そして閉幕後の6日。900万人の大人口を抱える中国の杭州市は薄曇り、にわか雨だった。

国家主席、習近平の晴れの舞台であるG20の成功を演出するため、周辺の工場は8月下旬から最大16日間もの全面操業停止を地元政府から言い渡されていた。それでも効果は限られていた。

■習・オバマの微妙な西湖散歩

そしてもう一つ。中国側が、G20の成功を演出するため目玉の一つにしたいイベントがあった。米大統領、オバマの大統領任期中の最後の訪中である。

習近平とオバマは9月3日夜、「人間の楽園」と称される杭州の名勝、西湖のほとりを2人で散歩した。特別待遇である。その途中で腰を下ろし、龍井茶で喉を潤した。とはいえ両人の表情は今ひとつさえない。

obama-%ef%bc%86-xi-at-the-west-lake

西湖のほとりで龍井茶を飲む習近平国家主席とオバマ大統領(中国国営テレビの映像から)

それもそのはず。これに先立つ、中国での最後の米中首脳会談と習近平・オバマの夕食会は愉快なものではなかった。

習近平にとって対米関係での最大の課題は、実は南シナ海問題ではない。2013年6月の訪米時に華々しく打ち出した米国との「新しい形の大国関係」を米国に受け入れさせるメドをつけることだった。米中両国が互いに“核心的な利益”を尊重し、事実上、世界を仕切るという野心的な試みだ。

もし、これを半分でも達成できれば、南シナ海問題などは大筋、解決したも同然である。しかし、ついにオバマの時代には実現しないことがはっきりした。習近平にとっては大きな挫折だった。

中国の国営メディアの報道は、さも米中の新しい形の大国関係の構築が進んでいるかのように報じている。だが、オバマはこれに一切、触れていない。会談では、南シナ海問題について国際法に基づく解決に言及した。先の仲裁裁判所による判決の受け入れを中国に迫っていた。

この「大国関係」という課題は、中国の内政上も大きな問題をはらむ。習近平は、来年の共産党大会の最高指導部人事を主導したい。そのためには外交上の実績も重要だ。だが、米国との関係を中心にした対外戦略は思うように動かない。これでは、自ら掲げた「中国の夢」の実現も危うい。

うかうかしていると、うるさい長老らに習近平の失点として突かれる恐れさえある。習近平としては、気候変動問題以外、目立った成果もないのに、オバマとにこやかに歓談するわけにはいかなかった。

オバマも似ていた。南シナ海問題を巡っては、スカボロー礁で中国のしゅんせつ船が動き出したとの情報をフィリピン側が明らかにしていた。笑顔で習近平と会談していれば、「アジア回帰」を宣言した米国の沽券(こけん)に関わる。

obama%e3%80%80walk-down-from-airforce-one

3日、中国・杭州の空港に到着後、赤じゅうたんの敷かれていない大統領専用機備え付けのタラップを下りるオバマ米大統領=AP

■杭州空港での米中のケンカ

この微妙な米中関係を象徴する事件があった。舞台は、9月3日、オバマが大統領専用機、「エアフォースワン」で到着した杭州空港である。

米側の随行職員らが中国側の警備担当者からいわれのない制止を受けた経緯が大きな話題になった。特に問題化したのは、国家安全保障担当の大統領補佐官、ライスが専用機から降りてきたオバマに近付いた際、中国の警備担当の公安要員が強く遮ったことだ。

「ここは我々の国だ! 我々の空港だ!」。さらに中国側の男性警備担当者は、ホワイトハウスの女性担当職員に声を荒らげた。大統領の外遊時、同行の記者団は、専用機のタラップの下で大統領を見守るのが慣例である。だが、中国側は記者らの移動を許さず、退去を求めた。米側担当者が強く抗議すると、中国の要員は怒鳴り返した。

今回、オバマが「エアフォースワン」で到着した際、中国側は赤じゅうたんを敷いたタラップを用意していなかった。オバマは専用機に付属するタラップを降ろし、そこから登場した。異例である。

出迎えの方式、警備を巡って米中双方が事前にやり取りしたが、その際に摩擦が起きたとされる。結果として中国側がタラップを用意しなかったため、多くの人々が「中国側の嫌がらせ」と受け止めた。中国側は、中国系紙などを使って「米側の要請だった」と反論している。

オバマ自身は4日の記者会見で、この問題について「深読みしなくてよいのではないか」「初めてではないし、中国だけでもない」と語り、受け流した。米国は他より航空機、ヘリ、車、警備員が多いためホスト国からすれば多過ぎるように思えるのだろう、という説明である。

真相はなお不明である。いずれにせよ、この後味の悪い一連の経緯は、今の米中の微妙な関係を表しているのは確かだ。

後話がある。ライスの制止問題である。「(中国側の)公安の現地担当者が、オバマ側近であるライスを知らなかったようだ。こんなつまらない話題にG20が乗っ取られてしまったのは残念だ。大きな失態だ」。中国側は頭を抱えている。

北京や上海といった国際都市なら、公安担当者ももう少し洗練されている。杭州だからこそ発生した問題だったかもしれない。

国際会議に慣れていない地域ならではの問題は、先に紹介した工場閉鎖も同じだ。「明日から工場を停止せよ」。ある工場への通告は、なんと操業停止日の前日だった。G20が終わるまで合計16日間も操業を止めろという命令なのに、何の補償措置もない。「中央の命令だから」。その一言だった。G20成功の演出には必要という判断だった。

休業による経済的損失は計り知れない。もしも、民主主義国家だったなら、政府を相手取った訴訟が起きるのは必至だ。

■閉幕に合わせた北朝鮮のミサイル発射

G20の期間中、風光明媚(めいび)な西湖のほとりはほぼ全てが封鎖され、一般人の立ち入りが禁止となった。ここは世界遺産に登録されており、その景観は中国の一般人民ばかりか、世界の人々も価値を認める共通の文化遺産である。

西湖の湖上を利用した大仕掛けのイルミネーションを一般市民は見ることができなかった=AP

しかし、西湖の湖上を利用した大仕掛けの舞台、花火も一般市民は見ることができなかった。巨額の資金を投入しているのに、である。そればかりか、市民は一週間の休みを言い渡されて、外地に行くように勧められた。

「全ては最高指導者のため。これはかつての中国皇帝の発想だ」。こんな恨み節も杭州市民から聞かれた。

強権姿勢はG20の会議の運営自体もそうだった。日本政府が現地のホテルに設置したプレスセンターでは日中首脳会談などの記者ブリーフなどが行われた。しかし、わざわざ世界各国から集まった記者らが入れない。

中国政府が警備上の理由を盾に、このホテルに入ることができる人数を一方的に制限したのだ。杭州空港での米中のトラブルと同種の問題だった。

この姿勢は、今回、習近平が、首相の安倍晋三との日中首脳会談に踏み切った理由とも重なる。安倍を真の意味で歓待はしない。だが、G20の成功の演出には、近隣の大国と2国間会談は必要だった。これが日中首脳会談で余り多くの成果がなかった理由の一つでもある。

習近平による、習近平のためのG20――。一大イベントは5日、「大成功」という自画自賛の中で閉幕した。

その日、習近平にとってもう一つ、いまいましい事件があった。関係改善を進めたはずの北朝鮮によるミサイル発射である。G20の閉幕日に合わせた中国への嫌がらせ。習近平はそう受け止めたに違いない。中国を取り巻く国際情勢はかくも厳しい。(敬称略)

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。