『G20の勝者プーチン「習にアイス、安倍に刀」 精彩欠くオバマ、「南シナ海追及」抑えた王毅は出世か』(9/14日経ビジネスオンライン 福島香織)、『中ロが反米で接近、結束強化も(社説)』(9/15日経FT)について

オバマは口先だけの人間ですから、足元をすぐに見られます。別に任期切れのレームダック現象が起きているとは思えません。でなければ、プーチンのウクライナ侵攻も中国の南シナ海や東シナ海の侵略を許すはずがありません。理想を実現するには武力が必要となることをオバマは理解できていません。相手はならず者国家です。真面に付き合ったら騙されるだけです。

FT記事にありますように、中ロで同盟を結ばれたら、日本の安全保障は危殆に瀕します。プーチンは中国と日本を天秤に掛けようとするでしょう。「日ロ平和条約」はスタートラインです。何せ日ソ中立条約を反故にした前例がありますので、如何に裏切らせない平和条約にするかです。出来れば中国を意識して、日中間で戦争状態になった時に、中国を利することがないような文言を入れられれば良いでしょう。北方領土は二島返還+二島継続強で良いのかと。日本の真の敵は中国ですので。

中国も習近平の権力が定まっていません。習派と看做されていた、天津市の党トップの黄興国に代わり、江派に近い李鴻忠が選ばれました。李克強が裏で動いたとのこと。黄興国は天津市で起きた大爆発の責任を取らされた形です。でも李克強がトップを務めた遼寧省の全人代委員45人は習によって選挙無効にされたとのこと。権力闘争は益々激しくなっています。暴発が外部に向けて行われれば、戦争になる可能性もありますし、意図的に難民(=スパイ)を送り出すことも考えられます。やはり、内閣でキチンと予防策を考え、目に見える形で国民を安心させてほしい。

http://www.sankei.com/world/news/160914/wor1609140038-n1.html

なお、杭州のシェラトンホテルに残した感謝のメモの写真は次の通り。

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福島記事

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(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

遅まきながら、9月4、5日に中国浙江省の杭州で行われたG20を振り返りたい。大騒ぎしたわりには今一つ、世界経済のジリ貧を解決するための具体策は打ち出されず、サミットとしてのパッとした成果があるように見えないG20だが、やはり参加国それぞれの個別外交によって、「勝敗」の明暗はついたように思う。いったい一番の勝者は誰なのか。

中国にはケンカ売らないドゥテルテ

まずホスト国・中国。国家主席・習近平の威信をかけた今年最大の国際政治における晴れ舞台であった。全体的にみて、習近平としてはかなりうまくやったとは言える。

まず、一番の懸念であった、サミットで「南シナ海の仲裁裁判に従わないことでやり玉に挙げられる」という事態は起きなかった。G20に続くラオス・ビェンチャンのASEAN首脳会議で採択された議長声明も、南シナ海仲裁裁判に触れることはなかった。

これは外相・王毅がASEAN諸国を中心に丁寧な根回し外交を行った成果といえよう。G20前の日中韓外相会談でも、尖閣諸島海域への漁船来襲事件の圧力と微笑みをうまく使い分けて、サミットで南シナ海問題について日本が声を上げるのを抑え込んだ。南シナ海仲裁裁判後の王毅外交は目を見張るものがあり、この功労によってひょっとすると来年の党大会では国務委員に出世するかもしれない。

その一方で、中国はスカボロー礁に浚渫船を派遣して埋め立てにかかっている。年内に軍事拠点化を実現する可能性はすでに高い。

ビェンチャンでは首相の李克強とフィリピン大統領のロドリゴ・ドゥテルテが会談し、中比関係の積極的な改善姿勢を双方が打ち出した一方、米大統領オバマは、ドゥテルテから「売春婦の息子」呼ばわりされて予定されていた会談をドタキャン。これに対し、ドゥテルテはビェンチャンでの米・ASEAN首脳会談を頭痛で起きられない、という仰天の理由で欠席したが、これはおそらくは仮病だ。

オバマの顔を見るのもいやだったのか。あるいは出席すれば、浚渫船を派遣している中国に対して直接文句を言わざるをえず、これを避けたかったのではないかと邪推してしまう。彼は麻薬犯をぶち殺すことはできても、中国にケンカを売ることはできないかもしれない。

ドゥテルテの本心はまだ測りかねるところだが、中国側の理解では、フィリピン大統領特使で元大統領のラモスとの水面下交渉を経て「南シナ海問題の氷は解けた」(呉士存・中国南海研究院長、環球時報インタビュー)ということのようだ。

5日に北朝鮮がノドン3発を発射したのは明らかに中国とG20への嫌がらせで、習近平のメンツを損ねたことは確かだが、韓国が導入を決めたTHAADミサイル配備に起因した中韓の外交摩擦は、G20の場で行われた習近平・朴槿恵会談で「求同化異」(共同の利益を追求しながら異見のある部分まで共感を拡大する)の共通認識に至ったという点で、ひとまず緩和するとの見通しが出ている。予断は許さないが、この会談では、習近平は「中韓には抗日の友誼がある」と訴え、どうやら11月の日中韓首脳会談では、やはり中韓で日本に対抗する構図に戻ろうと考えているフシがある。

人民元の10月1日からのSDR(特別引出権)構成通貨入りについて、首脳宣言(コミュニケ)で「各国が支持する」と歓迎が示されたという点でも、中国は勝利者と言えるだろう。一向に通貨取引の自由化は進んでいるようには見えないが、中国の悲願・人民元の国際通貨への道の大きな一歩であり、習近平政権時代の「手柄」ということになる。人民元SDR構成通貨入りによって、人民元の信用が上がれば、事実上とん挫していたAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、一帯一路構想も、息を吹き返すという期待が少し上がるかもしれない。

「非礼」に甘んじたオバマ

習近平・オバマ会談について言えば、やはり習近平に分があった。いや、あえて言えば、G20およびASEAN首脳会議においてのオバマには全般的に精彩がなく、もはや大統領任期ロスタイムに入ってやる気のなさが滲んでいた。G20でオバマに関する最大の話題は、専用機での杭州到着時に他の首脳に用意されているようなレッドカーペットのタラップが用意されておらず、また警備当局と随行記者や補佐官らがもめてあわや、殴り合いのけんかになるかというようなトラブルがあったということだろう。タラップは米国側が断ったと中国側は説明するが、外からみれば中国がずいぶん米国に非礼を働いたように見えた。

そういう「非礼な扱い」にもかかわらず、習近平・オバマ会談は3時間半に及び、会談後は二人で西湖のほとりを散歩しながら、人権や宗教・信仰の問題も含めて語り合ったとか。会談後の記者会見もなく、大した成果はなかったようだ。習近平は毎度のことながら「新しい大国関係」を言い、オバマはいつものようにそれを受け流していた。

会談そのものよりもG20前に、2020年以降の地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定を米中そろって批准し、国連事務総長で来年の韓国大統領選には出馬するだろう潘基文を交えて杭州で共同発表までしてみせたのは驚きだった。中国の責任ある大国演出にオバマがここまで協力するとは。未来の韓国大統領?と米中首脳のスリーショットが中国のおぜん立てで演出されたのに、まんまと乗っていた。一部日本人の中には、日本の疎外を感じる人もいたかもしれない。

このように見ると、G20の勝ち組は中国であり、従来絶対勝者の地位を保ってきた米国はむしろレームダックを印象づけた。ただ、中国が当初息巻いて目指していたように、G7以上の国際政治パワーを持つG20であったか、というと決してそうは言えなかろう。習近平が南シナ海問題で非難の集中砲火を受けるのを嫌がって、政治問題の議題に封印してしまったのだから致し方あるまい。

今回、習近平最大の失敗といえば、G20関連会議のビジネスサミットでの演説で、スピーチライターが書いた春秋時代の古典の引用「通商寛農」(通商をよくし農政にゆとりを持たせるの意)の寛農を「寛衣」(衣服を脱ぐ)と読み間違ったことだろう。演説稿を理解せず読んでおり、古典に対する無知もさらしたのは、相当恥ずかしかったことだろう。

「ぞんざいな扱い」で存在感を示した安倍

ところで我が国、日本の存在感はどうであったか。G20が始まる前、習近平は笑顔で安倍晋三を迎え、ひょっとすると日中関係が好転するのではないか、と期待した向きもあったのではないだろうか。

日本はホスト国・中国のメンツを立て、サミットで南シナ海問題を持ち出すことはなかった。だがG20後の日中首脳会談のときの習近平は、G20が終わったのだから日本に媚びを売る必要はない、と言わんばかりに、もともと2時間と約束していた会談を後ろに押して、同時通訳を入れて35分に縮めてしまった。ずいぶんな仕打ちである。

会談で交わされる言葉も殺伐としており、南シナ海裁定問題をいう安倍に、習近平は「慎重な言動を求める」と牽制した。会談自体が目的という感じで、評価に値する中身はなかったように見えた。日本メディアは、「海空連絡メカニズム」の早期運用に向け協議加速で一致といった点などを成果として伝えているが、香港メディアなどは、両国の国旗や生花や緑を飾るわけでもないテーブルでの会談で、安倍がずいぶんぞんざいな扱いをされているというふうに報じている。

しかしながら、あからさまにぞんざいに扱われているのは、それだけ意識されていることの証とも言える。習近平には安倍を厭う理由はいくつかある。安倍はきっちり中国の嫌がる外交をしている。最近のものでは、ロシア大統領・プーチンへの急接近である。

習近平がプーチンを大好きであることは結構知られているが、プーチンも習近平にはそれなりに気配りをしている。プーチンはG20に参加するうえで、習近平に土産を携えていた。習近平の好物のロシアブランドのアイスクリーム。これはプーチンが、G20直前にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムに参加していたある中国企業家から仕入れた情報で、この特別な土産は習近平をことのほか喜ばせたという。

日露接近が気になる習

だがこの東方経済フォーラムに合わせた日露首脳会談では、安倍がプーチンに日本の鎧甲を送り、プーチンが日本の名刀を贈るという、プレゼント交換があった。この刀はロシア所蔵で1928年の昭和天皇「即位の礼」の際に作られた12口のうちの1口で、戦後、米国、オランダを経てロシアに所蔵されていた。

習近平には溶けてなくなるアイスクリームで、安倍には昭和天皇の名刀というわけだから、中国人としてはこの差は何? と思う。しかも中国人というのは、プレゼントになにがしかの意味を考える。昭和天皇の名刀を日本の首相に「返す」ことの意味、憶測が中国のブロガーたちの間で話題になった。

もし、彼らの憶測が的中すれば、日露関係及び北東アジアのパワーバランスが劇的に変わりかねないわけで、中露蜜月を演出しようとしている習近平にしてみれば心穏やかではない。しかも12月には安倍の故郷の山口で日露首脳会談が行われることが決まっている。一応、中国メディアは、プーチンに領土取引を拒絶されて安倍は手の打ちようがない、と報じているが、それだけこの問題は中国にとっても気になって仕方がないようだ。

習近平に歓迎された様子はあまりない安倍だが、中国のネット民からの評価は悪くなかった。一つは、ホテルを去るときに、ホテルに残した「感謝」の言葉を書いたメモの写真がSNSの微博を通じて拡散されたことから、「安倍って教養あるよね。字もうまい」といった評価が出た。もう一つは、日中首脳会談後の記者会見で蘇軾の詩を引用して杭州の美しさを褒め讃えたことが、中国でも好意的に報じられた。そう考えると、日本もG20においては決して敗者ではない。勝ち組に入っているのではないだろうか。

それより、やはりプーチンの立ち居振る舞いは大したものかもしれない。杭州のG20の主役はプーチンだったと言っても過言ではない。“プーチンスキー”の習近平は、プーチンを一番良いホテルの部屋に案内した。そのお礼というわけではないが、南シナ海問題では、プーチンは「どちらの立場にもくみしない」と中立を訴えながらも、当事国同士で問題解決したいという中国の立場を支持。G20など一連の国際会議終了後、中露は南シナ海で合同軍事演習を行うことも決めている。

無法者からVIPに“変身”したプーチン

だが中国を喜ばせつつ、日本との距離感もうまくとっている。プーチンは米露関係の改善に日本の役割は大きい、と日本を立てるのを忘れなかった。

注目のオバマ・プーチン会談ではシリア問題が話し合われた。このとき停戦合意には至らなかったが、プーチンの方が押していたような印象だ。9月12日にようやくシリア停戦合意が発効されたが、これはトルコ大統領のエルドアンとの関係を修復したプーチンの外交勝利ではないか。国際社会の安定にロシアが欠かせないことをオバマは認めた。プーチンはオバマ、習近平のほか、ドイツ首相のメルケル、インド首相のモディ、英国首相のメイ、フランス大統領のオランドらおよそ10か国の首脳と会談。クリミア危機直後の2014年のブリスベンG20で冷遇されたのが嘘のようにプーチンは人気者だった。

「ボイスオブアメリカ」の表現を借りれば、この2年で「無法者扱いからVIP」に昇格。ロシアの通信社スプートニクがこのロシアの国際社会の立場の変化を「プーチンのメタモルフォーゼ」と表現したが、G20の最大の勝利者はプーチンでほぼ間違いなく、杭州G20の最大の成果は、ロシアと国際社会の関係をウクライナ危機以前に戻したということになろう。

南シナ海仲裁裁定を無視したことで孤立化しかけている習近平にすれば、さぞプーチンにあやかりたいと思ったことだろう。

FT記事

1950年代から60年代初頭にかけ、中国と当時のソ連の対立を西側が読み誤ったことは、冷戦期における情報活動の大きな失敗の一つだった。米国が中ソの敵対意識がいかに強いかに気付いていれば、足並みの乱れに乗じる方法をもっと早く見つけていたかもしれない。

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南シナ海において、フィリピンの船舶から見える中国の公船=AP

今日、米国と西側同盟国には逆の誤りを犯す危険がある。西側諸国の大半のアナリストは、ロシアと中国が同盟を結ぶ可能性を考慮に入れていない。両国それぞれの専門家の間でも、中ロは互いに歴史的・文化的不信感が強すぎ、結束を深められないだろうとの見方が多い。

だが、中ロ関係はすでに大方の予想を大きく超える速さで緊密化している。米国が支配する世界秩序への敵意で結びつく本格的な同盟関係は、まだ現実のものではないにせよ、実現する可能性があるだろう。

両国の海軍は今週12日から、過去最大規模の合同軍事演習を行っている。緊張下の南シナ海で実弾を使用する8日間の島しょ上陸訓練だ。両国は6月、中国と日本が領有権をめぐり激しく対立する東シナ海の島々の周辺で、一見、連携行動ととれるような艦船の航行を行った。

南シナ海を巡っては、中国がその大部分の歴史的領有権を主張して周辺5カ国と対立する。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は7月、中国の主張は認められないとする判決を下した。今回の軍事演習はそれから2カ月後のことだ。判決は無効であるとして受け入れを拒否した中国に対し、ロシアのプーチン大統領は最大の後ろ盾になっている。

中国はこれまでどの国とも正式に同盟を結んでこなかった。近年において緊密な関係にあるのはパキスタンと北朝鮮だけだ。しかし、習近平国家主席は過去40年のどの中国指導者よりも積極的に外交政策を展開しており、中国が同盟にかなり前向きになっていることがうかがえる。習氏とプーチン氏は2013年初頭以降、17回会談している。実務者レベルの2国間協議も急増した。

中国とロシアは、自国の裏庭に「干渉」してくる米国への敵対心に加え、独裁的な政治体制や国家資本主義への傾斜など多くの点で共通点がある。習氏とプーチン氏は強い国の「復活」を約束し、ポピュリスト(大衆迎合主義者)の愛国主義に訴えて排外主義をあおり立て、厳格な統制下に置く国営メディアを通じて力強い指導者のイメージを入念に作り上げてきた。

■冷戦時の過ちを繰り返すな

中国との同盟は、特にロシアにとってリスクをはらむ。ロシア政府は地域内の他の潜在的な同盟国が離反するのではないかと警戒している。極東ではロシア領の広大な未開地に、人口密度の高い中国の省が隣接する。ロシア政府にとって、この人口分布上の不均衡は依然、懸念材料だ。プーチン氏は中国と同盟を結んでも、ロシアが従属的な立場になるのではないかという見方にも憤っている。

これに対し中国側は、60年代の東北部での旧ソ連との国境紛争や、ロシアが旧ソ連時代、同志である共産主義諸国に父親風を吹かせて介入・干渉したことへの恨みが今も消えていない。

しかし、双方とも相違点を受け流し、互いを結びつけるものに焦点を合わせようとしているように見える。その焦点とは、両国が衰退の末期を迎えたと思っている超大国への敵意だ。

米国とその同盟国は中ロ関係が変わらないと決めつけ、両国が同盟を結ぶリスクを過小評価すれば、冷戦期と同様の間違いを繰り返すことになる。中ロ関係を注視したからといって、米国がシリア情勢や気候変動などの問題で両国と必要な協力ができないことにはならないはずだ。

だが、そのためには当然、警戒も求められ、東欧とアジアの西側同盟国を安心させることが一層重要になる。

(2016年9月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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