アメリカも5/14上院でTPAが審議再開しました。 オバマの手柄にすると言う意見もありますが、もっと大きく見た方が良いでしょう。真の敵は中国、しかも共産主義国でバブル崩壊すると言われて久しいですが、崩壊しないのは中西輝政氏によれば「自由主義国と違い、不動産(使用権)の供給を抑えれば、不動産価格は下がらない。そんなに簡単にバブル崩壊しないだろう」とのこと。軍事的に対決するのを避ける(左翼が良く言う平和的な解決)には中国の経済をまず崩壊させないと軍事拡張するだけです。敵はRCEP等でTPPをなきものにしようとしていると思います。ADBに対するAIIBみたいなもの。保守派はTPP反対派が多いように見受けられますが、もっと大きな目で見てほしいと思います。対米従属が進むだけと言っても一国で平和は確保できない現状で経済的にも軍事的にも連携を進めるしかないのではと思っています。中国を経済的に多国間で封じ込めないと。
しかし、習は鄧小平にはなれませんね。「韜光養晦」から「有所作為」は中国にとっては大きな戦術的誤りだったと思います。鄧は100年でも200年でも待って中国が覇権を取れば良いと考えていたと思います。だから78年8月に園田直外相が鄧に尖閣について聞いたときに「数年、数十年、100年でも脇に置いておけばいい」と答えたのです。アメリカに中国系アメリカ人の大統領を出すまで待とうと考えていたかもしれません。100年待つことができない習は転ぶ気がします。 アメリカも中国の野望に気付き出したという事でしょう。いいことです。小生が2005年日本に帰国以降、中国の野望に警鐘を鳴らしたら「国粋主義者」「人種差別主義者」と言われた時代からすれば隔世の感があります。これも習のお蔭です。
記事
日本が抱える安全保障面での問題を解消するという目的から見ると、安倍演説は大成功だった。ほんの1年ほど前まで、中国の反日プロパガンダは成功しつつあり、日米分断が進んでいたが、AIIB参加見送りと安倍演説によって関係は修復された。中国の脅威にさらされる日本にとって、日米関係修復は「安全確保」に欠かせない最重要戦略である。
米国を褒めまくっただけの演説だが極めて戦略的に練られている
「すばらしかった!」「全然ダメだった!」安倍総理の米議会演説について、「賛否両論」が山のように出ている。言論の自由がある日本で、ある演説について、「いい」「悪い」と意見がわかれるのは当然だ。
そして「絶対的な正解」を求めるのは間違っている。そんなものは、あるはずがないのだから。「安倍演説をどう評価するか」は、その人の立場によって異なる。
たとえば、「親米なのか反米なのか?」「親中なのか反中なのか?」「リベラルなのか、保守なのか?」などだ。
筆者がこれから書くのは、「親米」でも「反米」でも、「親中」でも「反中」でもない、そして、「保守」でも「リベラル」でもない見方である。筆者の視点は「戦略的に見て、安倍演説は成功だったのか?失敗だったのか?」という一点にある。
最初に断わっておくが、筆者はいわゆる「安倍信者」ではない。「消費税増税」「残業代ゼロ」「移民受け入れ毎年20万人」など、安倍政権の政策に賛成できないことはたくさんある。しかし「安倍憎し」で、総理のすることは「なんでもかんでも反対」というわけでもない。悪いことは「悪い」というが、「成果」は「きちんと評価すべき」という立場である。そういう前提で、続きをお読みいただきたい。
最初に、安倍演説の内容を見てみよう。この演説は、はっきりいえば「米国を褒めて、褒めて、褒めまくっただけ」といえる。実際の演説から引用してみよう。
<「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。>
<私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。>(エイブとは、リンカーンの愛称)
<日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。>
<親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。とこしえの、哀悼をささげます。>(中韓には謝罪しなかったが、米国にはきっちり謝った。)
<私たちは、アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の「リバランス」(再均衡)を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。>
<日米同盟は、米国史全体の、4分の1以上に及ぶ期間続いた堅牢(けんろう)さを備え、深い信頼と、友情に結ばれた同盟です。
自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。>
<米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。>
一見「米国をヨイショするだけの、属国演説」とも思える。しかし裏を知ってみれば、この演説は、きわめて戦略的に練られていたことがわかる。どういうことか、これから説明していこう。
中国の凶暴化に怯える日本 安倍演説の真の目的とは?
さて、どんな演説にも「目的」がある。つまり「なんのために演説をするのか?」。これが明確であれば、演説はわかりやすくなる。ここが曖昧だと、わけのわからないスピーチになってしまう。
安倍総理が「米国を褒めて、褒めて、褒めまくった」目的はなんだったのか?それは、「国益」(国の利益)を確保することである。では、「国益」とはなにか?いろいろあるが、もっとも重要なのは、「経済的利益」と「安全の確保」である。「経済的利益」について、今回は触れない。日本は今、「安全保障面」で「深刻な問題」を抱えているのだから。
背景をおさらいしよう。2008年のリーマンショックから、米国発の「100年に1度の大不況」が起こった。09年、世界の大国は軒並み大幅なマイナス成長になったが、中国は9.2%の成長を果たして「ひとり勝ち状態」になった(より正確にいうとインドも勝ち組)。
中国は、翌10年には10.4%、11年には9.3%の経済成長をした。そして、この国は、いまやGDPでも軍事費でも世界2位。「G2(=米中)時代」という言葉が流行するのは当然だった。
「米国は没落した」
「中国はひとり勝ちだ」
この認識が中国を増長させる。10年9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。事件直後、中国は「尖閣はわが国『固有の領土』であり『核心的利益』である!」と世界に宣言する。領土要求は1970年代はじめからあったが、ここまで大騒ぎしたのは初めてだった。
しかも中国は、「レアアース輸出禁止」など過酷な制裁を日本に課し、世界を驚かせた。日中関係は、日本政府が12年9月に尖閣を「国有化」すると、戦後最悪になってしまう。中国政府も国民も、これ(尖閣国有化)に激怒し、大規模な「反日デモ」が起こった。そればかりでなく、中国政府は「日本を破滅させるための戦略」を構築した。
「尖閣国有化」から2ヵ月後の12年11月、中国の代表団が、事実上の同盟国・ロシアの首都モスクワを訪問。そして、中国代表団は、驚愕の「対日戦略」を明らかにした。この戦略については、ロシア国営放送「ロシアの声」HPの記事を熟読していただきたい。
過去にも触れたことがあるので、ここでは詳述しないが、中国の意図と戦略の重要ポイントは、以下のようになる。
・中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」を組むことを呼びかけた。
・日本には、尖閣ばかりか沖縄の領有権もない。
・「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。
どれもショッキングな内容だ。「平和ボケ」している日本人には、ある国が日本に対し「反日統一共同戦線」を組むなど、想像もできないことだ。そして、中国が「日本には沖縄の領有権もない!」と、ロシアや韓国に公言しているのも驚きだ。しかし、一番の重要ポイントは、「米国を反日統一共同戦線に引き入れる」と宣言していることだろう。
日米分断を狙う中国の戦略は昨年途中までは成功していた
実際、「日米分断」が、中国の戦略の最重要ポイントである。なぜか?尖閣有事の際、「日米安保」に沿って米軍が日本を助ければ、中国に勝ち目はない。逆に、日米関係が破壊されて「日米同盟」が「無力化」していればどうなるだろう。米軍は日本を助けないだろう。そうなれば、中国は尖閣を容易に奪うことができる。ひょっとしたら、沖縄も強奪できるかもしれない(そういう意味で、沖縄の反米軍基地運動は、中国の国益にはプラスである)。
そして、「日米分断」には、もっと大きな意義もある。そう、経済力世界1位と3位の同盟を破壊すれば、中国が「覇権国家」になる道が見えてくる。だから、中国にとって、「日米分断」は戦略の「要」なのだ。
さて、この戦略は、その後どうなったのか?
戦略を実現するために中国は、「日本は右傾化している」「再び軍国主義化している」「歴史の修正を目指している」と全世界で大プロパガンダを行った(今も行っている)。そして、日本を憎む韓国は、嬉々として中国の先陣をつとめている。
なぜここ2~3年、「慰安婦問題」が再度クローズアップされるようになったのか?中国の戦略に乗っかった韓国が、米国、カナダ、オーストラリアなどで、「慰安婦像建立運動」を精力的に進めているからである(最近では、「従軍慰安婦」をユネスコの「世界記憶遺産」にする運動もはじまっている)。
ロシアはどうか?幸い、プーチンが日本との関係改善を望んでいることから、「反日統一共同戦線」には参加していない。
肝心の米国はどうか?実をいうと、驚くべき勢いで、中国の反日プロパガンダは浸透していった。そもそも、リベラルな米民主党には親中派が多い。また、米財務省は、バリバリの親中である。そしてなによりも「日本が米国の書いた歴史を書き直そうとしている」というのは、米国にとってリアルな脅威なのだ。
なぜか?「安倍総理は、『日本は悪、米国は善』というこれまでの米国史観をひっくりかえし、『日本は善、米国は悪』にしようとしている」。そんな風に、米国からは見えるからだ。
「中国のプロパガンダは、米国と世界に浸透している」。このことがはっきりわかったのは、安倍総理の「靖国参拝」(13年12月26日)直後だった。中韓だけでなく、米国、英国、EU、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが参拝を非難した。
ちなみに、小泉総理は在任中6回靖国を参拝したが、中韓以外の国は、ほとんどノーリアクションだった。ところが、今回はあまりにも多くの国が「安倍参拝」を批判した(「大げさだ!そんなに批判されてなかったぞ!」という方は、こちらをご一読いただきたい)。日本は世界で孤立し、中国の戦略は成功しつつあったのだ。
クリミア併合に救われた日本 AIIBがさらなる追い風に
しかし、予期せぬ大事件が起こる。ロシアによる「クリミア併合」(14年3月)である。これで、ロシアは米国の敵ナンバーワンになった。米国は「対ロシア制裁」を効果的に行うために、日本を巻き込まざるをえない。それで、「安倍問題」はひとまず棚上げされたのだ。
しかし、中国の「反日統一共同戦線」戦略は、今も継続されている。そして、「終戦70年目」にあたる今年、中国は「安倍談話」と「憲法改正」問題で、再び「反安倍プロパガンダ」を強化していた。今回の総理訪米前、米国政府は、日本政府に「中韓への謝罪を演説に入れるよう」圧力をかけていた。
そして演説後、「安倍は中韓に謝罪しなかった」と批判する米議員がいた。常識で考えると、これはとてもおかしなことである。なぜ、日本の総理が米国で中国、韓国に謝罪しないといけないのか?これは、たとえば「米国大統領は、中国にいったら日本への原爆投下を謝罪せよ」というようなものである。
どう考えても、「日本の総理が米国議会で中韓に謝罪しなければならない理由」は見当たらない。しかし、それが米議員の一部で「常識」になるほど、中国のプロパガンダは成功していたのだ。
ここまでで、「中国の戦略の要は、日米関係の破壊」であることを、ご理解いただけただろう。では、日本の最重要戦略は、なんなのか?当然、「日米関係を強化すること」となるだろう(プラスで、米中関係を破壊すればさらによい)。
だから、日本の今の国益も、演説の目的も、「日米関係を強化すること」である。この結論、裏事情を知らない人が聞けば、「結局、日本は米国の属国でありつづけろということか!?」と思える。しかし、背景を詳しく知れば、「日米関係強化」は「戦略的に絶対必要なこと」なのだ。
これは、あくまで日本の「戦略的選択」である。
さて、今年3月、安倍総理にさらなる「神風」が吹いた。それが「AIIB事件」である。同盟国であるはずの、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国、イスラエルなどが、米国の制止を無視して、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加した。
米国は、世界的に孤立。「覇権国家」の権威は、失墜した。そんな中、日本は大国で唯一、米国を裏切らず、AIIB参加を見送った。これは「属国だから」と見る人が多く、実際そうかもしれない。しかし、戦略的にも正しい判断であった。
「米国に逆らう右翼」から一気に「米国の大親友」に
結果、安倍総理は、中国の反日プロパガンダを見事粉砕し、米国を日本の味方につけることに成功した。つい最近まで「右翼」「軍国主義」「歴史修正主義者」だったはずの安倍総理は、いまや「米国の大親友」になったのだ。
「AIIB事件」で大恥をかかされ、孤立し、意気消沈していたオバマ大統領は、安倍総理の訪問と演説で元気を取り戻した。オバマの反応について、読売新聞5月4日付は、以下のように報じている。
<オバマ氏も同日、これに応じ、ホワイトハウスのツイッターに「歴史的な訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固であったことはない」と英語で記した上で、ローマ字の日本語で「また近いうちに」と書き込み、再会に期待を示した。>
いったい、いつ「日米関係が強固になった」のか?「AIIB事件」と「安倍演説」以外に答えは見当たらない。安倍演説によって、日米関係は一気に改善された。
これで、中国は、尖閣や沖縄を奪うことが難しくなった。そして日本は、米国から抵抗されることなく、軍事力を増強し、「軍事的自立」に向かっていける。だから、安倍総理の演説は、「大成功だった」といえるのである。