5/17北野伯幸メルマガ『AIIBショックで、アメリカはロシアとの和解に動く』記事について

昨日ブログのアップ時にトラブルがあり、午前中は開けませんでした。原因はファイル名かと思いましたが、ウイルスバスターを活かしたまま「サイトの公開」をしたためとのこと。今まで充分注意してきたのですが一昨日飲みすぎて頭が注意力散漫になったためです。でも次回同じことが起きても、対応策を聞きましたので一安心です。

一昨日の練習艦出国式に米国駐在武官も来ていました。マッカーサーに似た感じでしたのですぐにアメリカ人だと分かりました。軍関係者は民主党支持者であっても、オバマの優柔不断、反軍、軍事忌避、黒人逆差別の対応は嫌うでしょう。2017年1月20日までの任期ですから、それまで忍の一字なのかもしれませんが。その間に盗める物、取れる者は取ろうと中露は考えていると思います。南沙諸島の中国軍事基地造営に対し、米国防総省は「次の段階は12海里進入」と報道がありました。防空識別圏を設定した時にB52を飛ばしたように、口先だけでなくキチンとやる事が大事。宥和政策はチエンバレンの例を持ち出さなくても戦争に繋がります。抑止力行使を相手に伝えないと。

やっとアメリカも中国の意図を理解し出したという所でしょう。中国はスマートに賄賂を贈る国です。オピニオンリーダーに法外な金を贈っているという話を聞いたこともあります。でもやっとその危険性に目覚めたのでしょう。習近平様様でしょう。韜光養晦を演じていれば日本もアメリカも油断していたと思いますが、習のあからさまな野心を目の当たりにして気づき出しました。新冷戦で終わるかどうかです。戦争をさせないという意味で習の権力は剥奪される(暗殺も含め)可能性が高くなってきていると感じます。ルトワックが言うように、ロシアを味方に付ければ包囲網ができますので完璧です。

記事

中国主導でつくられた「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)。これは、やはり「歴史的大事件」だったようです。57か国が参加を表明。その中には、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などなど、「親米諸国」も山ほどいる。しかもこれらの国々は、アメリカの「入るなよ命令」を無視して参加した。

「誰も俺のいうことを聞いてくれない・・・」(オバマ)

「覇権国家」の面目丸つぶれであります。

しかし、我が国日本だけは、アメリカを裏切りませんでした。

それで、RPEは4月13日号で、「AIIBは、安倍政権にとって第3の【神風】である!」と書きました。

(●詳細はこちら http://archive.mag2.com/0000012950/20150413000000001.html )

そして、安倍総理の、すばらしい米議会演説。

これで、アメリカにとって日本は、イギリス、イスラエル以上に緊密な国になった。

ちょっと前まで、「右翼」「軍国主義者」「歴史修正主義者」だったはずの安倍総理は、「アメリカ最大の親友」に格上げされたのです。

(●安倍演説の戦略的意義、詳細はこちら。http://diamond.jp/articles/-/71510  )

さて、「AIIB」でアメリカの面目はつぶされた。

しかし、それで素直に覇権を中国にゆずるほど、アメリカは落ちぶれていません。必ず「リベンジに動くだろう」。

私は、アメリカの「リベンジ戦略」の詳細を予想し、ダイヤモンド・オンラインに記事を書きました。

http://diamond.jp/articles/-/70786

その一つが、「アメリカはロシアと和解に動く可能性がある」でした。

一部引用してみましょう。

【転載ここから▼】

<最後に、米国が中国に勝つために「ロシアと和解する可能性」について触れておこう。

「そんなバカな!」「モスクワ在住筆者の妄想だ!」──。

恐らくそんな反応が返ってくるだろう。

しかし、歴史は、「米国は勝利するためなら敵とも組む」ことを教えている。

たとえば第2次大戦時、米国は、「資本主義打倒」「米帝打倒」を国是とするソ連と組み、ナチス・ドイツ、日本と戦った。

そして、冷戦がはじまると、米国はかつて敵だった日本、ドイツ(西ドイツ)と組んだ。

さらに、米国は70年代、ソ連に勝つために中国と和解している。

こう見ると、米国が現在の敵・ロシアと組んでも、まったくおかしくはない。

ニクソンは、ソ連に勝つために、中国と組んだ。

今度は、中国に勝つために、ロシアと組む。

実をいうと、これを主張しているのは、筆者ではない。

日本ではあまり報じられていないが、大物リアリストたち、たとえばヘンリー・キッシンジャー、ジョン・ミアシャイマー(シカゴ大学)、スティーブン・ウォルト(ハーバード大学)などが、「米国はロシアと和解すべき」と主張している

(親中派として知られたキッシンジャーやズビグニュー・ブレジンスキーは、中国の本性を知り、親中派を「卒業」したという)。

理由は簡単で、「米国とロシアが戦えば、得をするのは中国だから」だ。

そして、「AIIB事件」で明らかになったように、中国は今、世界でもっとも(正確にいえば米国に次いで)「覇権」に近いところにいる。

米ロが戦って、「中国に覇権をプレゼントするのは愚かだ」というわけだ。

さらに、米国一の「戦略家」エドワード・ルトワックは、その著書「自滅する中国」の中で、「ロシアを中国包囲網に入れる重要性」を繰り返し説いている。

また、ルトワックは、日本が独立を維持できるか、それとも中国の属国になるかどうかについて、以下のように述べている。

<もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。(188p)>

ルトワックが主張するように、ロシアを米国側に引き入れることができれば、米国の勝利は確実だろう。【転載ここまで▲】

で、実際何が起こったか?

▼ケリーがロシアにやってきた

アメリカのケリー国務長官が5月12日、ソチにやってきました。

<露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」

AFP=時事 5月13日(水)7時13分配信

【AFP=時事】米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は12日、ロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相とそれぞれ4時間、合わせて8時間に及ぶ会談を行った。

その後ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>

引用部分は短いですが、とても重要な内容を含んでいます。

まず、ケリーさんがロシアに来るのは、「クリミア併合後」はじめてである。

日韓のことを考えればわかりますが、両国関係が悪いと、なかなか訪問になりません。

「ケリーさんがやってきた」

それだけでも、まず大事件です。

次に、ケリーさんは、プーチンと4時間会談。

ラブロフ外相と4時間会談。

テーマは、シリア、イラン、ウクライナだったとか。

それにして、プーチンと4時間。

「悪魔」「ヒトラーの生まれ変わり」と批判していた男と、何をそんなに話したのでしょうね?

これ、個人でもそうですが、仲良くしたくない相手とは、長く話さないものです。

仕事でもそうでしょう?

取引したくない相手には、あまりご馳走もせず、「すいません次の予定が入っておりますので」などといって、かえってもらうでしょう。

つまり、アメリカ側もロシア側も、「仲直りしたい」という意思がある。

3番目、ケリーさんは決定的なことをいいます。

<ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>

「制裁解除もあり得る!!!」

「AIIB」前と後で、アメリカの対ロシア姿勢は明らかに変化しています。

つまり、「軟化」しているのです。

4番目、この記事では触れられていませんが、ロシアのニュースでいっていました。

「ケリーは、『クリミア』について一度も触れなかった」

これは、要するに、「クリミアはロシア領と認めないけど、黙認ということで『手打ち』にしたい」ということではないでしょうか?いずれにしても、「AIIB事件」でアメリカは、「主敵は中国だ!」ということを、ようやく認識したのだと思います。

アメリカはこれまで、三つの地域で問題を抱えていました。

つまり、

・中東

・ウクライナーロシア

・東シナ海、南シナ海ー中国

中東に関して、アメリカはイランとの和解に動き、イスラエルが怒っている。

そして、ウクライナを見捨ててロシアとの和解に動き始めた。

これは、三つの戦線のうち二つをしめて、「中国との戦いに集中する」という意志の現れでしょう。

これは、私たちが12年前に描いた「日本必勝スキーム」への第1歩なのでしょうか?

まだ流動的ではありますが、期待したいと思います