5/13日経ビジネスオンライン 福島香織『米国を巻き込む習近平の権力闘争 政商もカネも極秘情報も握る米国、どう使う?』記事について

以前も野中広務の朋友である曽慶紅について本ブログで取り上げて来ました。

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いよいよ習VS曽の戦いの最終戦となるようです。しかし自分を主席まで押し上げてくれた恩人を政治的に抹殺しようとするのですから、中国人と言うのは凄いものです。日本では企業のトップが禅譲した後、後任に刺されるケースは稀にありますが。多くないと言うのは、そんな気骨のある人を殆ど選んでいないという事なのかも知れません。習の暗殺の危険性は高まっているでしょう。味方は殆どいません。彼の権力の源泉は「党主席」と「国家主席」です。国家主席は打倒された例がありますが党主席はありません。どちらが勝とうが反日は止むことはないでしょうから、高みの見物です。

北朝鮮の金正恩の命令で、4月30日ごろに玄永哲人民武力(国防)部長を無慈悲にも数百人の高官が見守る中、対空砲で処刑したとのこと。軍の反発は物凄いものがあるでしょう。若気の至りでしょうが、政権基盤を揺るがします。金正恩も暗殺されそうな気がします。後は中国の後ろ盾がある金正男に任せるしかないのでは。米中共同で始末するかも知れません。

日本もいい加減引退した政治家(野中、古賀)がしゃしゃり出て来て碌でもない話はしないでほしい。北朝鮮が崩壊或は朝鮮総連の文書の中から金で転んだ政治家の名前が出てくれば面白い。過去のことであろうと売国政治家として名前が残ります。

記事

 少し前だが、中国メディアの財経が、闇の政商こと郭文貴を総力を挙げて批判し、郭文貴が香港メディアのインタビューに答えて反論するという、興味深い出来事があった。この背景には、今年に入って進めた国家安全部の「虎退治」、すなわち馬建副部長が汚職容疑で失脚させられた事件がある。

 習近平の反腐敗キャンペーンが実のところ、権力闘争であることはたびたびこのコラムでも指摘してきたが、国家安全部の情報収集能力が実は党中央の政敵にも向けられ、この馬建が、習近平を含む党中央指導者のスキャンダルを相当握っていたらしい。その情報が、たとえば香港メディアを含む海外メディアに流されて、権力闘争に利用されていたという構造があるらしい。らしい、らしいで申し訳ないが、これは香港のゴシップ誌にしか書けない「裏の取れない話」なのだ。複雑でややこしい話だが、中国の権力闘争の形を見極める上で、このゴシップ情報をちょっと分かりやすく整理してみよう。

馬建は指導者層を盗聴→政商に漏洩→逮捕

 1月初旬、国家安全部の副部長(次官)の馬建が重大な規律違反で身柄を拘束された。中国の報道によれば、彼は6つの別荘と6人の情婦と2人の私生児をもち、しかも諜報機関幹部の立場を利用して、指導者たちの会話を盗聴するなど非合法な活動もしていたとか。

 馬建はかつて安全部第十局(対外保防偵察、海外の中国人駐在員や留学生の監視)の任務なども負っていたが、2006年に副部長に昇進、当時は次期部長候補とも目されていた。その昇進を推したのが元国家副主席の曾慶紅という。この馬建は、先に失脚した元統一戦線部長の令計画の事件にも連座していると話もある。令計画の妻・谷麗萍の国外逃亡(失敗)に協力するよう、元北大方正集団CEO李友から3000万元の賄賂を受け取ったらしい。李友は令計画やその妻の腐敗の温床と化していた西山会(山西省出身官僚利権グループ)に資金提供していた政商で、谷麗萍への贈賄などの疑いがある。

 しかし、馬建が「狩られた」本当の理由は、習近平含む国家指導者たちの秘密を盗聴などの非合法行為を通じて握っていたからだと見られている。その秘密情報を闇の政商の呼び名もある郭文貴が受け取り、現在、米国に高飛びしているという。

 郭文貴は1967年生まれ、山東省出身。河南で起業後、著名俳優・朱時茂との共同出資で北京に投資会社を創った。この会社が、後に摩根投資、北京盤古投資会社と名を変える。また、郭は2002年、新たに政泉不動産(後に政泉ホールディングス)を起業、北京五輪公園の開発計画で摩根、政泉は暗躍した。今、反腐敗キャンペーンで辣腕を振るっている規律検査委トップの王岐山は五輪準備時代の当時、北京市長で、副市長は劉志華(2009年失脚済)だ。郭文貴は馬建と組んで劉志華から便宜を図ってもらい、巨額の利益を得た。五輪公園を見下ろす七つ星ホテル・盤古大観は、盤古投資のものだ。ここの最上階のレストランは、国家安全部幹部たちの御用達でもあった。

馬建と郭文貴は相互利益供与の同盟関係

 国家安全部は諜報・防諜活動のためという建前で巨額の「特費」と呼ばれる予算を自由に使える身分であり腐敗しやすい背景がある。その職務の特殊性から政商と結びつき、情報と金、保護と金という利権関係に陥りやすかった。馬建と郭文貴はまさに、そういう相互利益供与による同盟関係にあったという。ちなみに、郭文貴は李友とも、また王岐山とも相互利益供与の関係にあり、3人が仲良く映っている写真が中国ネットで出回っている。つまり、このころの北京五輪利権には王岐山自身も加担している可能性があり、郭文貴はその証拠を握っている可能性もあるわけだ。

 さて、馬建が失脚した後の3月下旬、中国メディア・財新グループが徹底した郭文貴批判を展開した。財新は中国メディア界の女傑と呼ばれる胡舒立が立ち上げたメディアグループ。その報道では、郭文貴が失脚した馬建の盟友であること、郭文貴と結託していた河南省の官僚が巨額の汚職で死刑になっても郭文貴が無事でおられたこと、李友とのビジネス上のトラブルや確執、劉志華の乱交を盗撮ビデオに収めて、党中央上層部に刺したのは郭文貴の自衛のためであったこと、その他もろもろの悪行を事細かに暴露している。1月中旬に李友ら方正集団幹部が取り調べにあったと見られており、これらのネタは李友サイドが「捜査協力」として当局に提供した可能性がある。

ところがこれに対して、半年前から米国に滞在している郭文貴サイドが3月29日、ネットを通じて、反論を発表した。いわく、財新の報道は事実無根であり、郭文貴本人と盤古大観の名誉を大いに棄損した。胡舒立はメディア人の立場を利用して、悪意をもってニセの情報で世論を操作し、これは報道倫理にもとる。郭文貴サイドはオフィシャルな場で、胡舒立との公開討論を望む、という。

「妻一筋30年、私生児はいない」

 しかも、胡舒立について、「自由の闘士、人権闘士、法律の防衛者と外部に喧伝しているが、巨大な政治人物をバックにつけている。正義の士として、どんな強大な政治的人物にケツモチさせているか公開してはいかが?」と王岐山の庇護をうけていることをにおわせたうえで、「私は妻一筋30年、あなたと李友、その仲間たちのように私生児はいない」と、胡舒立が李友の愛人で、子供までいるといった発言も飛び出た。

 さらに、香港メディアの取材を受けて「自分の手のうちには一部の人たちの致命的な情報がある」「北京五輪期間中、私と王岐山との関係は非常によかった」「米国に来てから、わたしは米国政府やいくつかの国ともずっとやり取りを続けている。米国が私の行動を支持し、未だ公開していない情報も把握している」などと語り、いざとなれば米国政府が自分を守ってくれるといったニュアンスもにおわせている。この郭文貴の反論に対しては、財新側は「胡舒立女史の人格を棄損した。法的手段に訴える」との声明を発表している。

 実は王岐山が7月にも訪米するとの観測がある。その目的が、指導者たちのスキャンダルを握って米国に逃げ込んでいる郭文貴ら政商の身柄を中国に引き渡してもらう交渉のためだと言われている。

 ちなみに郭文貴のほかに、もう一人、爆弾情報を握ったまま米国に逃げ込んでいる人物がいる。王誠こと令完成、つまり令計画の弟だ。このコラムで、米国に逃亡した令完成が、米国政府に追い出されてシンガポールですでに中国当局により身柄拘束されたという情報を紹介したが、実はそれは令計画一味を動揺させるためのガセネタで、令完成はまだ米国内に残留しているという。しかも、令計画の弟にして、元新華社幹部であった令完成の握る情報は、郭文貴の情報レベルではない。

香港ゴシップによれば、令完成が握るのは馬建から預かった現指導者たちの乱交ビデオ、幹部らの不正蓄財、隠し資産情報、そして中国の政治、軍事、経済などに関する国家機密文書約2700件。「令完成の持ち出した情報は、核爆弾級」という報道もあり、その情報価値もあって、米国政府サイドは令完成を中国側に引き渡すことはないのではという観測もある。

 令完成は元新華社を退社した後、王誠の偽名でプライベートエクィティファンドを立ち上げ、香港メディアや中国のネットメディアに積極的に投資、メディアを通じた世論操作を担ってきた。妻はCCTVの美人キャスター・李萍。だが、身の安全のために李萍とは離婚、米国女性と結婚して、すでに米国のグリーンカードを取得しているという話もある。

 ちなみに郭文貴は早くから香港パスポートに切り替えており、香港メディア上では、自分が中国パスポート保持者でないから、いくら中国が米国に対して引き渡しを要求しても、米国政府がそれに応じることはないとも言っている。

「大虎退治」の最終ゴールは恩人・曾慶紅の首か

 郭文貴、馬建を中心とする政商グループを盤古会、令計画、令完成、李友らの政商グループを西山会といい、両グループとも周永康との関係が深いと言われている。だが、本当の黒幕は、曾慶紅だとまことしやかにささやかれている。少なくとも、李友、郭文貴両氏と親密な間柄にあった馬建の背後には、常に曾慶紅の影があった。

 曾慶紅は、ご存知のように江沢民の懐刀と呼ばれた辣腕家であり、今なお太子党でもっとも幅広い人脈を築く実力者である。胡錦濤政権時代は国家副主席まで上り詰めたが、習近平を後継として国家副主席に就けた後、完全引退し、その後、その名前はほとんど表舞台に出ていない。習近平の総書記・国家主席への出世ルートに乗せたのは曾慶紅だとも言われている。こういったことから、習近平の「大虎退治」の最終的ゴールは、自らの最大の恩人である曾慶紅の首を取ることではないか、という観測もでている。

 どこまでが本当かどうかはわからない。だが、中国の国家安全部というインテリジェンスの中枢とビジネスマンたちと政治家が、利権と情報、政治的立場の庇護といった相互利益供与で強く結ばれて、この国の権力と富をほしいままにしていた状況は垣間見える。そして、メディアもまた、この利権構造に加担していたとも見える。興味深いのが、彼らのため込んだ金も、自衛のためにかき集めた情報も最終的に米国に逃げ込んだ。この情報を米国政府がどのように料理するのか。中国の権力闘争の最後の鍵を握るのは、米国だと考えると、中国の権力闘争とは外交や国際情勢にも影響するものだともいえる。