8/25日経電子版<中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併相次ぐ
中国で国有企業の合併が相次いでいる。仕掛ける共産党が掲げるスローガンは「より強く、より優れ、より大きく」。世界で戦える巨大な国有企業をつくる構想は、権力集中を進める習近平総書記(国家主席)の政権戦略と密接に絡む。
石炭大手の神華集団と、発電大手の中国国電集団が合併へ――。2日、国有企業の大型再編を伝えるニュースに、業界関係者は色めき立った。
北京で開かれた公開のフォーラムで、国電幹部が明らかにしたのを受けた報道だった。ところが主催者は翌日、奇妙な対応を取った。「上の指示で、国電の幹部が発言した部分だけ会議録を渡せなくなった」。合併を表明した発言を事実上なかったことにしたのだ。
関係者は「発言は事実だ」と認めたうえでこう解説した。「国電幹部は党の許可を取らずに話してしまったのだろう」
中国には国務院(政府)が所管する「中央企業」と呼ばれる大型の国有企業が現在、99社ある。神華と国電はいずれも中央企業だ。当局はいま、猛烈な勢いでその統合を進めている。
当局の背中を押すのが、共産党中央と国務院の連名で2015年8月にまとめた「国有企業改革の深化に関する指導意見」だ。「世界一流の多国籍企業を育てる」との目標を掲げ「20年までに決定的な成果を上げる」とぶち上げた。「より強く……」のスローガンもこの中に出てくる。
数値目標は設けなかったが、当時110社あった中央企業を40社程度に集約する案を念頭に置いていた。期限まであと3年。自動車大手の中国第一汽車集団と東風汽車公司などをはじめ、ここにきて多くの統合構想が浮上してきた背景には当局の焦りがのぞく。
15年の指導意見は、共産党が国有企業改革で前面に出る根拠にもなっている。「習総書記のたび重なる指示を受け、改革の方向性と基本ルールを明記した」。国務院の担当幹部は当時の記者会見で、意見が「習氏の意向」であると強調した。
習氏の狙いを理解するには、06年末に胡錦濤前政権がまとめた国有企業改革の指導意見を振り返る必要がある。
中央企業を再編し、グローバルな競争を勝ち抜く巨大な企業集団をつくる発想自体は変わらない。しかし、あくまで主役は国務院で、党は余計な口を挟まないという姿勢をにじませていた点が15年と大きく異なる。
それが裏目に出た。国有企業は既得権を守るために統合を渋り、再編は遅々として進まなかった。党高官や引退した長老らの利害が複雑にからみ合い、胡指導部はひどくなる一方の汚職に手をつけられなかった。
12年に最高指導者の地位に就いた習氏は、党が国有企業をコントロールできていない状況に危機感を抱いたはずだ。
反腐敗闘争を通じて国有企業の幹部を次々に摘発し、党の指示を忠実に守る人物を新たに送り込んだ。経営上の重要な決定にあたって党の意見を事前に聞かなければならないとする規定を定款に書き込ませ、党の意のままに動く企業グループを次々につくり出した。
1990年代後半に当時の朱鎔基首相が取り組んだ国有企業改革とはだいぶ違う。朱氏は非効率な国有部門を小さくし、民間部門を育てて競争を喚起しようとした。80年代に実現した日本の国鉄や電電公社の分割民営化を研究し、参考にした。
習氏は逆だ。国有企業を集約してさらに大きくし、国内である程度の独占を認める。中国勢どうしの消耗戦を避け、世界に出ていく発想だ。
習政権下で合併してできた鉄道車両の中国中車や、海運業の中国遠洋海運の存在感は世界で無視できない。低価格を武器にますますシェアを高め、他国の企業との競争を有利に進めている。
だが、国や党の思い通りになる巨大な紅(あか)い企業が世界の市場でわがままに振る舞えば、自由で健全な競争をゆがめかねない。必ずしも経済合理性だけで動かないとされる中国企業の巨大化に警戒感が強まる。(中国総局長 高橋哲史)>(以上)
習近平の狙いとするのは、「共産主義」の革命の世界輸出ではなく、中国が軍事的・経済的に世界を制覇することでしょう。富を全部彼らが奪いたいと思っているだけです。そもそも今の中国に「共産主義」の理念とする「結果の平等」なんてありません。勿論ソ連にもありませんでしたが。三権分立していないため、ノーメンクラツラーが好き勝手できる社会です。ただ、今の中国は世界と貿易して富んでいる分だけ余計に質が悪いと言えます。
中国は貿易で稼いだ富を人民に分配するのでなく、高官の蓄財と軍拡に使っています。それでGDPに占める消費の割合が37,8%にとどまっている訳です。
毛沢東時代には左派の陳雲が「鳥籠経済」を唱え、閉じた経済で中国国内にしか影響を与えませんでした。歴史的転換は①1971年のキッシンジャー訪中で中国共産党をソ連共産党から引き剥がし米国側につけたこと。(キッシンジャーは中国人の底意が読み切れていなかったのでしょう。利用するつもりで利用された訳です。中国お得意のハニーやら賄賂に動かされたのでは)②2001年12月の中国のWTO加盟(日米とも後押しをしてモンスターを造ってしまったわけです。製造物責任が両国にはあります。「中国が富めば民主化する」何て幻想を抱くのは中国人を余りに知らな過ぎです。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国ですから)です。中国人は利用できるものは何でも利用します。民主主義の弱点に付け込むこともして来ます。
8/25日経記事にありますように、朱鎔基は1998年総理となり、鉄飯碗と言われた国営企業改革に命を懸けて取り組みました。鄧小平の下で企業に経済的自由度を与えようとした訳です。習近平は正しくそれと逆方向のことをしようとしています。米国に亡命した何清漣が1年前に習の経済政策について解説したものがあります。ご参考まで。
http://heqinglian.net/2016/08/06/soe-reform-2/
習の国営企業合併策は、経済音痴で力の信奉者の為せる業です。第二の毛沢東を目指すというよりは、毛沢東越えを目指していると言った方が適切です。毛は「大躍進」や「文化大革命」で2000万~1 億人もの中国人を殺したと言われています。今度の習は毛を越えるというのであれば何億人殺すのでしょう?今度は自国民だけでなく、外国人も含めた殺戮を楽しむ核戦争を始めるつもりでは?福島氏が「習近平独裁の中国は、北朝鮮よりもさらに巨大で横暴な大国として日本の脅威になりそうな予感である。」と述べているのは杞憂ではありません。現実化しつつあります。
馬渕睦夫氏の『アメリカ大統領を操る黒幕 トランプ失脚の条件』から中国について述べた部分を紹介します。中国ほど危険な国はありません。日本国民、日本企業には自覚が求められます。
(P.150~151) 習近平は反腐敗キャンペーンを行ない、汚職に手を染める党幹部や官僚を摘発していますが汚職に関与していない党幹部などいるはずがなく、誰でも摘発できるわけで、政敵 の掃討に利用しているだけです。
中国では「上に政策あれば、下に対策あり」とよく言われますが、そういう社会に生きてきた一般の民衆が、上の人間たちの腐敗を目にして社会や国家への帰属意識をもたなくなり、「自分の身は自分で守る」と考え、それがエスカレートして極めて自分本位な考え方になるのは当然です。
私は別に中国人が嫌いでも何でもなく、むしろ非常に気の毒だと思います。しかし、こういう自己中心的な人々が何億人集まろうと、「国家」にはなりません。韓国もよく似た面がありますが.後述するように中国は「国家」ではないので、いくら条約を結ぼうと、 合意をしようと守らなくても平気です。
南京大虐殺問題でも、中国が嘘を平気でつくのは、それが“中国の性”だからだと言えます。戦前に中国に渡ったアメリカの外交官、ラルフ•タウンゼントが著わした『暗黒大陸中国の真実』(田中秀雄・先田賢紀智訳•芙蓉書房出版)には、誰もが平然と嘘をつき、それを恥じない中国人が詳細に描かれています。タウンゼントは同書で、「他人を信用する中国人はいない。なぜなら自分が他人の立場に立ったら、自分を信用できないからだ」と述べています。
支配者が搾り取れるだけ搾り取ろうとし、そこから逃げなければ生きていけないという 世界に生きていれば、そうなるのも当然だと思います
中国は「国家」ではない
中国が自力で発展できなかったのは、愛国者がおらず、「国家」になれなかったからです。 では、あの地には何があるのかというと、「安い労働力」と「13億人の市場」があるたけです。アメリカやEU、日本や台湾、韓国などが資本や技術などを支援しなければ、自力で発展することができなかった国なのです。
(P,152~153)一方の中国には大した天然資源がなく、安い労働力があっただけでした。だから、工場 を移転させて、安い労働力を利用して、世界の工場にしたのです。
その際に役に立ったのが中国共産党政府です。民主国家であれば、土地の強制収用には 面倒な手続きが必要で、反対運動でも起きれば頓挫してしまぅこともあります。しかし、 共産党政府であれば強権的!に有無を言わさず、強制収用ができます。労働者を劣悪な労働環境で働かせたり、排気ガスや廃水で環境を汚染したりしても、住民を黙らせてくれます。 だから、共産党政府を温存したのです。
アメリカは中国を民主化しようなどとは微塵も考えてきませんでした。共産党の体制下で、甘い汁を吸ってきただけです。それが限界に来て、酸っぱい汁しか出なくなったので、 いよいよ中国からの撤退を始めたというところです。 実際,中国の経済成長はすでに:終わりつつあります。
中国が発表する統計数字はデタラメばかりで、明らかに経済は失速しているにもかかわらず、経済成長率が7%前後なんてあり得ません。そこには理由があります。2013年 の全国人民代表大会(全人代、国会に相当する)で習近平政権が誕生したときに、中国の実質GDPを10年で「2倍にする」という公約を打ってしまっているのです。実質GDPを 10年で2倍にするためには、年間の経済成長率を7%前後に維持しなければ達成できません。
しかし、7%から大きく乖離した数字を発表すれば、習近平政権が公約違反をしたという話になってしまいます。中国共産党の権威は、経済を成長させ、中闰人民を豊かにするということで支えられています。だから「年7%前後の経済成長」が守れないとすると、習近平、いや中国共産党の威信が失われてしまいます。実態はそれこそマイナス成長だったとしても、絶対に発表するわけにはいかないのです。
「世界の工場」として経済発展したおかげで労働者の賃金が上昇し、すでに中国は「安い労働力の国」ではなくなりつつあります。レイバーコスト(人件費)が上がって、かつ品質の悪い製品しか製造できないのであれば、外国企業が撤退していくのは当然です。
(P.158~159) 本物の海洋国家であるアメリカの海軍に挑戦し、衝突すれば、ひとたまりもなく粉砕さ れるでしょう。そんなことは中国側もよくわかっていますから、常識的に考えれば中国が本気でアメリカに対峙することはないと言って構わないでしょう。しかし、中国の対米関係は習近平の権力闘争の一環でもあることを考えれば、習近平がアメリカを挑発し続ける可能性は排除できないでしょう。もし、アメリカの海洋覇権という.虎の尾を踏めば、アメリ力は中国を軍事的に叩くと考えられます。
そもそも、人民解放軍が本当に共産党政権を守るかどうかも怪しいと言わざるを得ません。人民解放軍は自給自足型の軍隊で、不動産開発から医療事業、農業、工業に、ホテルやレストラン、カラオケ店の経営まで、非常に幅広く営利事業を展開し、共産党政府からの予算だけに縛られていません。
中国の国家主席は、人民解放軍を実際に動かせる力があるかどうかで決まるといわれ、逆に人民解放軍からすれば、共産党政府が倒れたところで昔の軍閥に戻ればいいだけで、大した影響はありません。国家に対するロイヤリティがなく、目先の利益にしか興味がないのは、人民解放軍とて同じです。
フランスの経済学者で、ミッテラン仏大統領の補佐官や復興開発銀行の初代総裁を務めたジャック•アタリは.著書『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界』(林昌宏訳、作品社)のなかで、「2025年には、いずれにせよ中国共産党の76年間にわたる権カに終止符が打たれるであろう」と述べています。アタリの予想通りならば8年先ということになりますが、私はそれより早く崩壊.が訪れるだろうと予測しています。
注目すべきことは、そもそもアタリは何故こんな予測ができるのかということです。アタリは、世界統一を目指す国際金融勢力の仲間だから、彼らの計画を述べることが可能なのです。
一般に言われているように経済成長が望めなくなれば、今まで民衆の間に吹き溜まってきた不満がいよいよ爆発します。経済が伸びて潤っていたから我慢していただけで、「金の切れ目が縁の切れ目」となります。経済成長が止.まれば、国際金融資本も共産党一党支配を支える必要がなくなります。彼らが作った中国共産党政権に引導を渡すことになるのです。
記事
「習近平独裁」への道は広がったのか(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
このコラムでも注目してきた今年の北戴河会議(河北省のリゾート地・北戴河で行われる共産党幹部・長老の秘密会議、秋の党大会の根回しが行われる)がどうやら8月16日までには終わっていたようである。政治局常務委員の一人、張徳江(全人代常務委員長)が湖南に全人代執法検査のために訪れた様子を、16日夜のCCTVテレビが報じていたからだ。17日には習近平もメディアで動静を報じられるようになった。北戴河会議はいつ始まって終わったと広報されることはないので、政治局常務委メンバーの動静が報じられなくなった段階で始まったな、と判断し、その動静が再び報じられて、あ、終わったな、と気づく、そういうものである。そうすると8月3日ごろから15日ごろまで開かれたのだろうと判断できる。
ただ、この北戴河会議で、人事における激しい攻防があったとか、そういう話は今のところ、流れてこない。むしろ習近平の思惑どおりの人事が進んだ、習近平の勝利で終わった、という分析の方が香港メディアを中心に多くでているのではないか。5月ごろまでは、北戴河会議では壮絶な権力闘争、駆け引き、特に反習近平派の反撃が展開されると思われていた。だが蓋をあけてみれば、異様なほど静かな北戴河会議であったようだ。
長老たちの静かな夏休み
北戴河会議直前に、孫政才を完全失脚させるなどの荒技で、長老らアンチ習近平派が会議での反撃の意欲を失ったということなのだろうか。8月18日付けのサウスチャイナ・モーニングポストのように、例年のような秋の党大会の水面下交渉といった意義のある北戴河会議自体が今年は開かれなかったのだ、と報じる香港メディアもあった。つまり、長老たちの影響力自体がすでになく、彼らの北戴河入りは、単なる“夏休み”に過ぎなかった、というわけだ。
サウスチャイナ・モーニングポストは習近平寄りの政商・馬雲率いるアリババが資本を握るメディアなので、これは習近平サイドのプロパガンダの可能性もあるが実際、江沢民は連続三年、北戴河会議を欠席しており、兪正声、孫春蘭、劉延東ら現役政治局員を含む幹部がこの時期、内モンゴルに視察に行って北戴河会議には出席していなかった。
江沢民派、上海閥には特に若手の後継もなく、習近平の対上海閥との権力闘争という点では、習近平に軍配が上がる形でほぼ決着がついているので、兪声正らが会議をさぼるのはわかるのだが、孫春蘭や劉延東ら共青団派の重鎮たちが会議に参加しなかったら、孫政才が失脚後、ほぼ唯一の希望の星といっていい共青団ホープの胡春華の政治局常務委員会入りは危ないのではないか。しかも、胡春華自身もどうやら北戴河会議に参加していない。また同じく政治局常務委員入りの可能性があるといわれている汪洋(副首相)も、韓正(上海市書記)も、北戴河会議の期間、海外に行ったり、地元の視察に行ったりしていた。つまり出席していない。
となると、北戴河会議は政治局常務委員会入り人事に絡む重要人物や長老たちの多くが欠席したか、あるいは開催したとしても、ろくな話し合いをしなかった可能性がある。
これを、習近平がすでに独裁的な権力を掌握しており、今年の北戴河会議は習近平による習近平のための会議であったので、多くの長老や現役政治局委員たちが出席する意欲すら起きなかった、ととらえる人も多い。しかも習近平寄りのネタ筋は、盛んに党規党章に「習近平思想」が書き込まれることが北戴河会議で決定したという情報も流している。
とすると、本当に習近平が毛沢東、鄧小平に続く中国共産党第三の強人独裁政治を打ち立てるのだろうか。ならば、もし習近平強人独裁政権が確立したら、中国はどんな国になるのだろうか。それを今回、想像してみたい。
中華民族が偉大であった時代とは
習近平思想は具体的に何を指すのかというと、「中華民族の偉大な中国の復興の夢」「中国の特色ある社会主義の堅持と発展」「四つの全面(全面的小康社会、全面的法治、全面的改革の深化、全面的に厳格に党を治める)の実現」「五位一体(政治・経済・社会・文化・エコ)の全体的レイアウト」「平和発展の道」「国防と軍隊の現代化」「人民を主体とした党の一切の指導」などが挙げられている。
特に重要なのは「中華民族の偉大な中国の復興の夢」。では習近平が目指す中華民族が偉大であった時代とは、いつのことかといわれると、最大版図を築いた清朝なのか。あるいは外国まで侵略した元王朝なのか、いや両方とも外来民族が築いた王朝ではなかったか。それなら一応漢族の王朝であった明朝を目指しているのか、といった話になる。要するに、かつてあった世界の中心として周辺国を朝貢国として従えていた帝国を再現したい、という風にとらえられている。必ずしも、現代世界の責任ある近代国家の大国を目指しているわけではないのがミソだ。
これを実現するために必要なのが「国防と軍隊の現代化」「人民を主体とした党の一切の指導」ということになる。「四つの全面」などのスローガンをみると、習近平思想も法治や改革を目指しているのだろうと言う人もいるかもしれないが、四つの全面に挙げられている全面的な法治国家の実現とは「共産党による法を使った支配」を指しており、西側民主主義国家の法治概念「法の支配」と全く別ものということは、すでに現役の人民最高法院長らが言明している。さらに「党の一切の指導」は強化され、下部組織は上部組織に従うという共産党独裁の原則が徹底される。もちろん今までも共産党独裁であったが、党内のシステムをいえば、最終的な決定は政治局常務委員による多数決で決まる合議制であり、寡頭独裁、あるいは党内寡頭民主といわれる多数派政治であった。総書記の発言には否決権も議決もなく、奇数人数の政治局常務委員会メンバーが持つ一票分の権力に制限されていた。
強軍化へ軸足を移す
習近平は、これを自分自身が「唯一無二の党の核心である」と位置付けるキャンペーン、「メディアの姓は党」(メディアは党に忠誠を誓う)キャンペーンでメディアを通じた世論コントロールを強化。今度の党大会では党規党章に「習近平思想」を盛り込み、できれば党主席制度の復活も狙っている。党主席とは毛沢東独裁の象徴のような職位。否決権も議決権も持ち、定年制も関係ない特別の唯一無二の地位、ということになる。習近平が党主席となって党の指導思想を「習近平思想」と呼び「党の一切の指導」という独裁体制を徹底し、清朝だか明朝だか元朝だかの版図と国際影響力と取り戻す。それが習近平の目指す長期独裁体制である。
そのための国防と軍の近代化は、決して国軍化ではなく、党の私軍という解放軍の基本に立ち返ることであり、共産党の執政党としての権威維持の根拠は鄧小平、江沢民、胡錦涛時代まで続いていた経済発展から、中国の夢の実現をかなえる強軍化へと軸足を移すということである。
この「党の一切の指導」の徹底というのが、今顕著に表れているのは経済分野である。たとえば今、注目を集めている「企業の姓は党」(企業は共産党に忠誠を誓う)キャンペーン。企業は、共産党の指導に従うことを徹底する、ということであり習近平政権は、現在約3200社の大企業に、党の指導に企業が従うことを条文に盛り込んだ定款に変更するよう通達を出している。これには香港上場企業も外資との合弁企業も含まれており、また民営企業も追随する方向で動いている。すでに200前後の企業が定款変更届を出しており、うち香港上場企業も30社以上含まれるようだ。
リコノミクスは雲散霧消
中国における企業はすべて自社利益よりも党の利益を優先すべきであり、投資案件も株の売買も人事も党の利益を最優先して決定される、ということだ。すでに万達集団や復星国際などの民営大手が、勝手な外資購入を行ったとして銀行融資を止められる懲罰を受けているが、今後、民営、国有、合弁、上場企業問わず、外国投資は党が「戦略的」と判断したものしか許されなくなるという。この「戦略的」という判断は、企業にとっての経営戦略の意味ではなく、国家戦略、包み隠さずいえば対外拡張戦略、軍事国防戦略を指す。なぜなら習近平思想の骨子は、「中華民族の偉大なる復興の中国の夢」、清朝あたりの版図および国際影響力の復興だからだ。すでに何度かこのコラム欄でも指摘していると思うが、習近平のぶち上げる経済構想「新シルクロード構想・一帯一路」も軍民融合戦略も、企業や消費者に利益をもたらすように設計されていない。これは中国の長期軍事戦略の視点から打ちたてられたものである。
習近平のいう「改革の深化」とは当然、同じ方向性で、党の統制強化のための改革である。「国有企業改革」とは、ゾンビ企業を淘汰して民営化して、外資なども入れて香港市場に上場して経営を立て直すなどといった真っ当な国有企業改革ではなく、有力国有企業の合併を進め、大規模化し、その経営から人事に至るまで党がコントロールし、その大規模国有企業を通じて市場を党がコントロールするという方向に変わった。2013年秋の三中全会にリコノミクス(李克強が主導する経済政策)として打ち出された経済政策は、「簡政方権(行政手続き簡素化と権限委譲)」といったキーワードで説明されていたが、今やリコノミクスは雲散霧消し、習近平が目指すのは企業の党への忠誠と市場の支配である。
これはわかりやすくいえば、鄧小平路線の終焉である。共産党寡頭独裁(あるいは党内寡頭民主)も、改革開放路線も鄧小平が打ち立てた共産党秩序と方向性である。鄧小平は党員が資本家になり、資本家が党員になる道を開き、共産党こそが人民を豊かにしてくれるという幻想を共産党の執政党としての権威根拠に利用した。その結果、権貴政治と呼ばれる政治家と資本家が癒着した腐敗構造が起き、富める党員・中産階級と改革開放の恩恵を受けられず搾取される農民・労働者という二元構造が中国共産党政治の大いなる矛盾として持ち上がり、ついには経済発展の頭打ちという現象が胡錦涛政権末期に表れるのである。西側民主主義的発想ならば、ここで天安門事件以降棚上げされていた政治改革に取り組め、ということになるのだが、この矛盾を抱えたまま政権を禅譲された習近平は鄧小平路線そのものを捨てる方へ舵を切った。共産党の権威の根拠を持続的な経済発展に求めるのではなく、党の指導強化と強軍化に求め、清朝並みの国際社会における版図、影響力を取り戻すという野望を人民と共有することで、求心力を維持しようと考えたわけだ。
巨大で横暴な、最後の王朝か
習近平独裁の中国イメージがおのずと湧いてくるのではないか。中国が段階的にロシア方式で変貌していくという一部西側の学者たちの期待は裏切られつつあり、中国は、むしろ北朝鮮の先軍政治に近い方向に向かっている。いかに、習近平が有能な経営能力を持っていたとしても、企業活動に党が深く介入すれば経済の活力は大きく低下し矛盾は増大する。国際社会が最後のフロンティアと期待した中国市場は閉ざされていく。もちろん、AIやITなど共産党が戦略意義を認める分野には集中的に資金投入され、中国がAI、IT技術で世界を凌駕するかもしれないが、そのAI、IT技術がジョージ・オーウェルの小説「1984」に出てくる「ビッグブラザー」を創り、周辺国を支配するために利用される。人類を幸福にするイノベーションとは程遠そうだ。
習近平が目指す長期独裁政権に対する私のイメージはこんな感じだ。全く見当違いだと批判する人もいるだろうし、私自身、見当違いであってほしい。権力を握った習近平が、いきなりゴルバチョフのようにペレストロイカやグラスノチを打ち出すといった大転換があればよいのに、とも思う。だが、この5年間の習近平政権の言動を総合すると、習近平独裁の中国は、北朝鮮よりもさらに巨大で横暴な大国として日本の脅威になりそうな予感である。
まだ党大会までには時間もあり、また党大会前には七中全会(第七回中央員会全体会議)もあるはずで、人事も習近平思想も党主席制度もどうなるかはわからない。私自身はそのような独裁体制がたとえ誕生しても、長期の安定を維持できるとはとうてい思えないので、習近平王朝が最後の王朝で、多くの人が思うよりも短命ではないかという希望的観測はまだ保留しておきたい。
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