昨日も書きましたようにマテイス国防長官の影が薄くなっていると思ったら、アフガン派兵問題で、トランプ大統領がマテイス長官の全権を取り上げ、最終判断は国家安全保障会議(NSC)に移されたとのこと。自分の好みで人事を動かしていては山積する課題に向き合えません。すぐに結果を求めても、長く堆積してきた問題を一気に片づけることはできません。
トランプは、本来は真の敵・中国とその手先である北朝鮮を如何に料理するかに力を注がなければならないのに。米国社会も二分化して纏まりに欠ける印象です。黄金時代と言われた1950~60年代にはアメリカンドリームという言葉がぴったりくるような、米国人であれば誰もが経済的な豊かさを享受できていました。それがグローバリズムの展開と共に生産拠点を海外に移し、豊かさを実感できなくなった中流層が多く出て、昨年の大統領選でのトランプ勝利となった訳です。
確かに議会対策がうまく行っていません。でもそれを他人のせいにするのではオバマと一緒では。自分が票獲得の為に電話なり会ったりして協力を要請しないと。ドンドン中国のやりたいようにやられてしまう場面が増えていくでしょう。
北との遣り取りでは、チキンレースの観を呈してきました。北は日本上空を通ってグアム近くへ4発ミサイルを落とすとのこと。8/11TV朝日「ワイドスクランブル」で小川和久氏は「日本上空と言っても宇宙空間なので領空ではない」と言っていました。存立危機事態かどうかの法律適用の話よりも米軍と連絡を密にして、日本側がミサイル防衛で撃ち落とすかどうかを事前に詰めておかないと。今、日米同盟が崩壊すれば、北の核ミサイルで焦土となるか中国の属国になるかだけです。
8/10増田俊男氏記事<変動する世界情勢の真実>には北朝鮮の建国記日9月9日に米軍の対北先制攻撃があるかもしれないとのこと。話が飛び過ぎていて俄かに信じることはできませんが。
http://www.chokugen.com/opinion/backnumber/h29/jiji170810_1183.html
また8/11facebookの記事から<鍛冶俊樹の軍事ジャーナル第292号(8月10日) *北朝鮮、広島を威嚇
トランプが北朝鮮に「炎と怒り」を込めて警告し、北朝鮮がそれに反発した声明を出す。こうして口でやり合っている間は、戦争にならないから誠に平和な光景だと言う見方も出来ない訳ではない だが7月5日号で指摘した通り「世界大戦」は既に始まっている。現代の戦争は情報戦争が中心になっており、情報戦争は別名「見えない戦争」と呼ばれる。つまり米朝のこのやり取りも世界大戦の一コマなのである。
今日の北朝鮮の声明では、広島県等の上空を通過しグアム島近くに着弾させる作戦計画を検討中だという。北朝鮮の弾道弾には中国のGPSが組み込まれているから、この軌道は中国の承認を得ていることになる。 もっと言えば他ならぬ中国がこの作戦計画の概要の発表を北朝鮮に命じたのであろう。なぜ命じたかと言えば、上旬にフィリピンの首都マニラで開かれたアセアン地域フォーラムで中国の目論見が外れたからだ。 この会合では、中国は北朝鮮問題だけを議題にし、中国の海洋進出問題を隠蔽する狙いがあった。もともと中国は米国に北朝鮮問題で影響力を行使する見返りに、中国の海洋進出を大目に見るように働きかけていた。 それでいて北朝鮮を蔭では支援したのは、北朝鮮問題が大きくなればなるほど、米国は中国に頼らざるを得なくなり、最終的には中国の海洋進出を黙認せざるを得なくなるという読みからである。
ところが、河野外相は外交デビューにもかかわらず、この問題を公然と持ち出し、世界中に問題の所在を明確にアピールした。これでは夜中にコソ泥に入ったところを撮影されて公表された泥棒の様なもので、「あなたには失望した」との王毅外相の言葉は、勲章と言っていい。 赤っ恥を掻かされた中国の返礼が、まさに今回の北朝鮮の声明である。被爆地である広島の上空を通過し、米軍の南太平洋最大の拠点グアム島を狙う弾道は、核兵器禁止条約を日本が批准すれば、世界中から核兵器がなくなると思い込んでいる日本のお花畑に除草剤を撒いて見せた。
前号で指摘した通り、中東のISの首都ラッカが陥落しない限り、米国は朝鮮半島に空母3隻を展開できない。2隻でも攻撃可能だが、湾岸戦争の様な完全試合を望むのであれば空母3隻は欠かせない。 見えない戦争(情報戦争)はやがて、見える戦争(正規戦)に転化する。その時期は早くて年末、遅くとも来年前半であろう。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)>(以上)
まあ、いろんな人がいろんなことを言っていますが、時期の問題は別にして、戦争は起こると見ています。いつ起きても大丈夫なように、覚悟と機敏な行動が取れるよう準備をしておきたいものです。
記事
新たに大統領首席補佐官に就任したジョン・ケリー氏(写真:AP/アフロ)
—ドナルド・トランプ米大統領は、課題山積の中で17日間の夏休みに入りました。7月のホワイトハウスはまさにハリケーンが襲ったような感じでしたね。
高濱:8月に入ってもハリケーンの余波はホワイトハウスをすっぽりと包んでいます。まだまだ不安定な天候が続くと見る「政界天気予報」もあります(笑)
トランプ大統領は、ロシアとの不透明な関係をめぐる「ロシアゲート」疑惑に対して積極的な動きをとらないと見なしているジェフ・セッションズ司法長官を更迭する可能性すらほのめかしているのですから。
7月28日にはラインス・プリーバス大統領首席補佐官(*1)を、同31日には10日前に起用したばかりのアンソニー・スカラムチ広報部長(*1)をそれぞれ更迭しました。同26日には、ショーン・スパイサー報道官(*1)が辞任しています。 *1:プリ―バス氏の後任には7月31日、ジョン・ケリー国土安全保障長官が就任。スパイサー氏の後任はサラ・ハッカビー・サンダース副報道官が7月21日に昇格。スカラムチ氏の後任は8月6日現在未決定。
政権発足から6カ月の間に首席補佐官、国家安全保障担当補佐官、報道官が全員交代するという異例の事態です。それでも「裸の王様」と化したトランプ大統領は、得意の「You’re fired!」(*2)(お前は首だ!)の連発でした(笑) *2:トランプ氏はかつてテレビ番組「アプレンティス」(見習い)に出演。「You’re fired!」を決まり文句として使ったため、この表現は同氏のトレードマークになった。
—ホワイトハウスの内紛はこれまでにも噂されてきましたね。
高濱:トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー上級顧問に連なる中道派と、スティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問らの保守強硬派との確執が注目されてきました。
その中で両派の間に立って蝶つがいの役割を果たしてきたのが、プリーバス首席補佐官でした。共和党全国委員長だった経験からトランプ大統領と共和党保守本流の連絡役でもありました。そのプリ―バス氏の首を斬ったのですからワシントン政界は開いた口が塞がりません。
—プリーバス氏を更迭した理由はなんですか。
高濱:プリーバス氏が「ウエストウィング」(ホワイトハウス行政府)を取り仕切ることができていたのは、一にも二にも大統領との信頼関係でした。
首席補佐官は閣僚外の役職ですが、日本で言えば、内閣官房長官です。首席補佐官のオフィスは大統領執務室に一番近いところにあり、大統領に会おうと思えばいつでも会えます。
トランプ大統領はそのフリーバス氏を7月に入って遠ざけ始めたんですね。理由は、ロシアゲート疑惑への対応にしても医療保険制度改革(オバマケア)を撤廃・代替する法案にしてもうまくいかないのは「お前が悪いんだ」と、責任をプリーバス氏になすりつけたのです。
加えてプリーバス氏は、クシュナー上級顧問やバノン首席戦略官とは異なり、大統領選を一緒に戦った「譜代」ではありません。政権発足と同時に陣営に入った「外様」です。本人はそう思わなくても、トランプ大統領に対する「忠誠心」に差がありました。
もっとも山積する課題が解決しないのは、プリーバス氏だけの責任ではありません。最大の理由は、トランプ大統領自身が思いつきで政策を決定することと、ツイッターによる暴言・放言です。
保守系新聞のウォール・ストリート・ジャーナルは7月30日付の社説でこう指摘しました。「ホワイトハウスが混乱する原因はプリーバス氏ではなく大統領自身にあることを認識しない限り、いくらスタッフを刷新しても問題解決にはならない」 (“WSJ says ‘Trump is the problem, not Priebus, ” Brian Freeman, www.newsmax.com.,7/30/2017)
ケリー新首席補佐官は軍隊式秩序を持ち込めるか
—プリ―バス首席補佐官を追い出したのは、「ホワイトハウスのラスプーチン」とも呼ばれているバノン首席戦略官と言われていますが……
高濱:そう言われています。トランプ大統領はバノン氏を怒鳴りつけたり、批判したりしているのですが、同氏は同大統領の「アルターエゴ」(alter ego=分身)的存在です。トランプ大統領の思考を理路整然と整理する知的同志なのですね。
それにロシアゲート疑惑の追及はひたひたとウエストウィングに押し寄せています。トランプ大統領の最側近であるクシュナー氏は疑惑を晴らそうと議会証言に臨みました。当面はなんとか切り抜けたものの、疑惑から完全に抜け出せたとはいえない状態です。
バノン氏は側近グループでは唯一、ロシアゲート疑惑と無関係とされています。そのためウエストウィングで最近特に影響力を強めています。
—プリーバス氏に代わって急きょ、首席補佐官に起用されたのは軍人出身のジョン・ケリー国土安全保障長官ですね。
高濱:中南米を担当する南方軍司令官でした。トランプ大統領はケリー氏に、情報管理を含め軍隊式の規律と秩序をホワイトハウスにもたらして欲しいようです。
ジェームズ・マティス国防長官(元中央軍司令官)、H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当、元陸軍中将)に続き、首席補佐官までが軍人出身者になったわけです。
—退役将軍が政権の中枢に座を占めてもあまり批判が出ないのはなぜでしょう。
高濱:米国ではシビリアン・コントロールがそれだけ定着しているからかもしれません。それにこの3人の将軍は、輝かしい軍歴もさることながら、ワシントン政界や言論界でも人品骨柄申し分ないと太鼓判を押されている人たちですから。むしろトランプ政権を立て直すのはこのマティス長官、マクマスター補佐官、それにケリー補佐官の3人と言われているくらいです。 (“100 days, Trump’s Generals seen as a moderating force,” Tom Bowman, NPR, 4.28.2017 )
「ノーナンセンス・アプローチ」だが、安定化には火種残る
—これで“ハリケーン一過”、トランプ政権は仕切り直しで順風満帆となりますか。
高濱:それが、そうもいかないようです。暗雲は依然として立ち込めています。
タイム誌でホワイトハウスを担当しているゼーキ・J・ミラー記者はこう指摘しています。「ケリー氏を首席補佐官に起用したことを評価する声が大方だ。だがノー・ナンセンス・アプローチ(現実的でしっかりしたアプローチ)ではあるものの、混乱しているホワイトハウスを安定させることができるかどうかはまだ分からない」
「ホワイトハウス高官の一人は、『トランプ大統領はケリー首席補佐官に強力なリーダーシップを期待している』と言っている。だが、トランプ大統領自身が唯我独尊、勝手な言動と決定を続けている。大統領がそれをやめない限り、ケリー補佐官が本当にリーダーシップを発揮できるかどうか。不安定要素は残ったままだ」 (“What the White House Staffing Changes Mean.” Zeke J. Miller, Time.7/31/2017)
アフガニスタン派兵規模をめぐって対立
—バノン氏とマクマスター補佐官が対立していると言われます。直近の案件はなんですか。
高濱:アフガニスタン情勢をめぐっての案件です。具体的には、トランプ政権としてどのようなアフガニスタン戦略を策定するか。「オバマ政権のアフガニスタン戦略は間違っていた」(トランプ大統領)のであれば、それに代わる新しい戦略を打ち出さなければなりません。ところが政権発足から6カ月たってもはっきりした戦略を出せずにいるのです。
アフガニスタンには依然として8400人の米軍兵士が駐屯しています。治安状況は厳しいまま。主要な反政府武力勢力であるタリバンのほか、「ISILホラサーン州」を称する勢力などが各地でアフガニスタン政府軍への攻撃を繰り返しています。テロなどによる民間人の死者は17年上半期だけで1662人と、前年同期比で2%も増加しているのです。8月3日にはカンダハル州でタリバンが自爆テロを起こし、米軍兵士2人が死亡しています。 (“Iran Gains Ground in Afghanistan as U.S. Presence Wane,” Carlotta Gall, New York Times, 8/5/2017)
トランプ大統領の考えは「米兵はアフガニスタンから1日も早く引き揚げるべきだ」と単純明快です。しかし、情勢が悪化する中で直ちに撤退はできません。好転させるには増派せざるを得ない。マティス国防長官は少なくとも3000人の増派が必要だと見ています。
全権移譲されていたマティス長官が増派を決めれば実地に移されるはずだったのですが、最近になってトランプ大統領がその全権を取り上げてしまいました。最終決定は国家安全保障会議(NSC)の判断にゆだねることになりました。
マクマスター補佐官は、マティス長官の意見に賛同しています。しかし、バノン氏がこれに横やりを入れている。バノン氏は「われわれは勝っている。だから引き揚げろ」という考えです。トランプ大統領はバノン氏の考えに賛同しているふしがあります。
—バノン氏が大統領の耳元でなにやら囁いているのが目に浮かぶようですね。ケリー首席補佐官としては、バノン対マクマスターの確執を和らげ、ウエストウィングに秩序を取り戻すことが最初の腕の見せ所ですね。
高濱:悪いことに、バノン氏の主張を超保守系メディアがリングの外で支援しています。バノン氏の古巣であるブライトバード・ニュースはじめ、FOXニュースでホストを務めるショーン・ハニティ氏たちです。同氏はトランプ支持のハードコアです。
こうしたメディアは8月に入って「マクマスターはオバマ政権からの生き残りに追従している」「マクマスターは本当にトランプ支持者なのか」などと批判し始めています。集中砲火を浴びせているのです。 (”The War Against H. R. McMaster,” Rosie Gray, The Atlantic, 8/4/2017)
大統領がほのめかす「マクマスター・アフガン駐留米軍司令官」説
—トランプ大統領はどちらの肩を持っているのですか。
高濱:心情的にはむろん、バノン氏を信頼しています。ただマイケル・フリン氏が大統領補佐官(国家安全保障担当)を辞任したあと、マクマスター将軍を三顧の礼で迎え入れたのですから、そう簡単に更迭するわけにはいきません。それにマクマスター氏は軍事問題の権威、文武両道兼ね備えた学者将軍です。
トランプ大統領は最近になって、「アフガニスタンの戦局が好転しないのは、ジョン・ニコルソン司令官の責任だ。奴を更迭して別の将軍を送れ」といい出しました。これもバノン氏の入れ知恵でしょうね。
直接の上司であるマティス長官や国防総省(ペンタゴン)の制服組最高幹部はニコルソン司令官の続投を主張して反発しています。
こうした状況の中でトランプ大統領は、ニコルソン司令官を更迭し、その後釜になんとマクマスター補佐官を送ることを考え始めたといわれています。
—となると、マクマスター氏の後任は誰になるのですか。
高濱:マクマスター補佐官の後任には、マイク・ポンペオ米中央情報局(CIA)長官(*3)を横滑りさせるというのです。米メディアは「ホワイトハウスのドミノ現象」と呼んでいます。 *3:ポンペオ氏は下院議員。米陸軍士官学校卒の退役陸軍大尉、ハーバード大法科大学院卒の弁護士。マクマスター氏の後任になれば、引き続き軍人出身者が大統領補佐官(国家安全保障担当)になる。
—マクマスター補佐官の反応はどうですか。
高濱:マクマスター補佐官は、NSCの人事刷新を終えたばかりです。ロシアゲート疑惑で事実上解任されたフリン前補佐官が引き連れてきた人材を一掃しました。
7月末までに、上級部長のエズラ・コーエン・ワトニック氏、情報担当首席補佐官のテラ・ダール氏、中東政策補佐官のデレク・ハービィ氏、戦略担当部長のリッチ・ヒギンズ氏を更迭しました。 (“White House purging Michael Flynn Allies From National Security Council,” Glenn Thrush and Peter Baker, New York Times, 8/2/2017)
マクマスター補佐官としては、自前のスタッフを集めて、さて仕事を始めようとしていた矢先に、“戦場送り”になる可能性が浮上したわけです。相当、頭にきているのではないでしょうか。戦場送りにされるようなら辞表を叩きつけるかもしれません。
—なるほど、ホワイトハウスが混乱している最大の要因が大統領自身であることが手に取るようにわかります(笑)。それでこれからどうなるのですか。
高濱:「神のみぞ知る」ですね。
しかし、トランプ大統領にとっては、お膝元の内紛どころじゃない状況が続いているのです。内政・外交もさることながらロシアゲート疑惑に対する捜査が新たな段階に入りました。
ホワイトハウスの「ドミノ現象」が続く中で、ロバート・モラー特別検察官がロシアゲート疑惑をめぐって大陪審を招集したことが3日に明らかになっています。捜査は当面、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏とロシア人弁護士の面会(16年6月9日)などロシア側との接触が焦点になっているようです。
トランプ大統領はモラー特別検察官を捜査から外す可能性を否定していません。同特別検察官を解任するのではないのかといった憶測も消えていません。
内憂外患、17日間もゴルフなぞしている余裕はないはずです……。打つ手なしだからゴルフ三昧しかない、のかもしれませんが。注目はこれからの17日間、トランプ大統領がツイッターで何を発信するかですね。
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