『辜寬敏:北京派人來,說要重新檢討對台政策』(6/14民報=Taiwan People News)、『米国で大統領訪台も可能な「台湾旅行法案」が下院外交委員会アジア太平洋小委員会で可決』(6/17日台共栄メルマガ)について

6/19日経で安倍内閣の支持率が載っていました。支持率:不支持率=49%:42%と支持率は7%ダウン、不支持率は6%アップとのこと。6/18TV報道2001の中で、10%のダウン以内であれば織り込み済みというか許容範囲内と誰かが言っていました。しかし、この結果を見て、まだまだTVや新聞の言うことに左右される人が多い気がします。これは民主主義の根底を揺るがすものと思っています。いろんな情報を収集し、その中から自分の頭で考えて判断していかないと、プロパガンダにしてやられます。

また、同番組内で足立康史・維新衆議院議員は「玉木・福山民進党議員は獣医師会から金を貰っている」と発言したら、江田憲司・民進党議員は慌てて「ちょっと黙って下さい」と言って、直ぐCMへ移行しました。「忖度」よりはこちらの方が余程ひどいでしょう。1989年のリクルート事件で、リクルートに有利になるよう国会質問した公明党の池田克也衆議院銀は受託収賄容疑で起訴、懲役3年、執行猶予4年の有罪になっています。これと同じ構図でしょう。玉木と福山は金を貰って獣医師会に有利になるような発言をしてきたのですから。まあ、もう加計学園は既に認可が下りているので不可罰でしょうけど。テロ等準備罪は通過が見込まれていましたので、民共は足立議員の言うように憲法改正の邪魔をするためでしょう。しかし、メデイアは偏向しています。玉木・福山の日本獣医師政治連盟からの100万円献金に対し「報道しない自由」を行使して知らん振りです。自民党だったら大騒ぎでしょう。http://blog.goo.ne.jp/moja_gd/e/a23c1a9b2ce3ea53dea5c0cb2ed065d2

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E5%85%8B%E4%B9%9F

http://deliciousicecoffee.blog28.fc2.com/blog-entry-6698.html

6/19の日経には5Gの記事もありました。スマホの普及率は70%とのこと。老人がガラケーの利用が多いのは、小生の周りを見ていますと分かります。ネットを利用すると便利というのが、体で分かっていないためです。PCは使えたとしてもメールだけで、ネットで調べることはできていません。情報弱者になる所以です。スマホこそPCよりユビキタスなのに。

記事は、5Gは4Gの1000倍の速さという事です。考えましたのは、衛星からの誘導電波のスピードが上がるという風に受け止めました。(正しいかどうかは不明です)。攻撃ミサイルと迎撃ミサイルとも同じような効果がでるのか?迎撃に有利にはならない?しかし、光速より早いものはこの世にはないのでレーザーが一番迎撃に向くのでは。ただ、抑止力の観点から言って防御だけでは効果が薄いので、攻撃用武器も装備しなければ。核も必要で、差当りはニュークリアシエアリングの話を詰めて行かないと。ただ、反日左翼メデイアに洗脳された国民の理解を得るのは難しいでしょう。また、自国民の殺戮を厭わない共産主義国にMAD(相互確証破壊)が存立できるかどうかという問題もあります。

6/19宮崎正弘氏のメルマガに依れば、中国は海外の軍事拠点の拡大を図ってきています。日米の愚かさが招いたものですが。トランプもキッシンジャーの言う通りに動いたらダメでしょう。中国から金を貰って動いている工作員ですから。ルトワックの言う周辺国の合従連衡が起こり、封じ込めできるようにしませんと。日本はG7+NATOで新しい国際組織を作り、中国を国際貿易から締め出すようにした方が良いでしょう。「一帯一路」もAIIBも中国の軍事的野心に使われます。在庫処分、人口侵略、文化侵略が待っています。ゆめ警戒を怠りませんように。

http://melma.com/backnumber_45206_6544728/

民報の記事は、辜寬敏(息子はリチャード・クー)が北京要人と対中関係について話したとのこと。6/19日経には「兪正声(政協会議主席・序列4位)がアモイ(台中交流イベント「海峡フォーラム」の開幕式)で「台湾独立は台湾海峡の平和と安定に対する最大の脅威だ」と述べたとのこと。こんなことは何時も言っていることで、目新しいものはありません。ただ場所がアモイなので、要人は兪正声の可能性もあります。ただ、兪正声は上海派で習近平とは敵対グループですが。まあ、裏切りが当り前の中国ですから、寝返るのも簡単でしょうけど。でも、台湾は騙されないように。でっち上げた「92共識」も、認めるように迫ってくるのでは。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%9C%E5%AF%9B%E6%95%8F

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AA%E6%AD%A3%E5%A3%B0

日台共栄記事で、早く日本も「台湾関係法」を作らなければという思いです。辜寬敏が言うように台湾は自由で民主主義、且つ価値観が共有できる国家です。中国の侵略の脅威に晒されているのは共通です。合従連衡しなければ。中国が民主化することは、共産党が統治している限り無いでしょう。ベルリンの壁のようなことが起きるかと言うと絶望的です。血を見ないで共産党打倒は出来ないでしょう。その時に世界が手を貸して、打倒に味方するかどうかです。その前に、拝金教に汚染されている中国人が本当に民主化を望んでいるかですが。

民報記事

總統府資政辜寬敏今(14)日召開記者會評論巴拿馬斷交,會中提及台灣對中國的關係。辜寬敏在會中透露,北京有派人來,提及內部已有檢討對台灣政策的聲音。圖/唐詩

此外,在答覆媒體詢問時,辜寬敏也提及台灣與日本的關係。他曾當面告訴日相安倍,台灣對日本安全的重要性,若台灣變成中國的一部分,日本將成為二等國家,不然就要再軍備,對抗中國,這二個都是日本不能接受的。安倍則向他表示「百分之百贊成你的意見」。

辜寬敏在記者會中提到,「最近我有一點消息,我在這裏跟大家公開。北京有派人來,他們高階的人,跟他們國家研究跟台灣關係的人,已經有一點聲音:如果我們繼續以前對台灣的態度的話,對台灣文化也好,歷史上也好,經濟上也好,我們的關係這麼惡劣,惡劣的原因就是對台灣的政策,如果要改變關係的話,他們有人要開始重新檢討對台灣的政策」,「我有這個消息」。

「中國人不會那麼笨啦」,辜寬敏說,幾十年對台灣的政治的失敗,怎麼搞得台灣的民調我們最痛恨、最不喜歡的是中國人呢?所以他們開始要檢討,不曉得這個檢討有沒有結果,但是現在已經有這樣的氣氛、動向」。

此外,辜寬敏在答復外媒提問時也提到,「台灣是一個民主國家,也許有一些過頭的民主,有一點反對的聲音,政府就不敢動」,他拿出地圖解釋,中國是這樣,亞洲是這樣。以日本的立場,如果台灣變成中國一部分,北朝鮮可能會去打南韓,日本最重要的生命線(sealane)要受中國的影響」。

他告訴日媒說,「我當面跟你們總理(首相)安倍晉三和副總理麻生太郎講,對外若受中國影響的話,「日本可能會變成二等國家」,不然的話日本要再軍備,對抗中國。

他說,「現在我是覺得,以前攸關台灣問題,日本基本上的態度就是我們已放棄台灣,對台問題沒發言資格,但我們的關係在地理上、人的來往、文化也好,關係是這麼密切,但那個時代日本是全部交給美國,但最近日本社會也慢慢了解台灣的存在,對日本的安全、發展非常重要」。

辜寬敏以華語和日語對媒體說,「我一向想,台灣沒有日本不行,但你們日本沒有台灣也不行」,我們跟日本的關係就是這樣,「如果台灣變成中國一部分,日本會變成二等國家,不然就要再軍備,這二個都是日本不能接受的」,日本要重新認識台灣這個自由民主國家,對日本是多重要的存在!

他說,他當面跟安倍講,安倍握著他的手說,「辜先生,我百分之百贊成你的意見」。

総統府顧問の辜寬敏は本日(14日)記者会見して、パナマ断交について論評した。その中で台中関係についても言及した。辜寬敏は「北京から人を送り込み、内部で台湾政策を検討した」とも明らかにした。図/唐詩より

この他、メディアに答えて、辜寬敏は台湾と日本の関係についても言及する。彼はかつて安倍首相に会い、「台湾は日本にとって安全保障上重要である。もし台湾が中国の一部分になったなら、日本は2流の国家になるだろう。そうでなければ再軍備して中国に対抗しなければならなくなる。これは日本が受け入れることはできない」と伝えた。安倍はすぐに「100パーセントあなたの意見に賛成します」と答えた。

辜寬敏は記者会見で、「最近のニュースをここでみんなに公開する。北京から人が送り込まれたが、台湾を研究している国の高いレベルの人である。「もし我々が以前のような台湾への態度を採り続ければ、台湾文化も、歴史上も、経済も良いのに、我々の関係はこんなにも劣悪で、その原因は台湾への政策にある」。もし関係を変えるのであれば、彼らは改めて台湾政策を検討し始めるとのこと。私はこれを伝えたい」と。

辜寬敏は「中国人はそんなに馬鹿ではない。この数十年の台湾政策は失敗だった。どんなに頑張っても台湾人の世論は好転せず、最も嫌いなのは中国人である。それで彼らは再検討し始めた。この検討の結果が出せるかは明らかではない。しかし今はその気分なり動きが出てきている」。

この他、辜寬敏は海外メディアに対し、「台湾は民主主義国で、民主の程度が行き過ぎているかもしれない、反対意見があっても、政府はすぐには動かない」と答えた。彼は地図を出して説明した。「中国はここ、アジアはここ。日本の立場にすれば、もし台湾が中国一部分になれば、北朝鮮はおそらく南進するだろう。日本の生命線であるシーレーンも中国の影響を受けることになる」。

彼は日本のメデイアに、『私は安倍総理と麻生副総理に、「対外的に中国の影響を受けるのであれば日本はおそらく2流の国家になる。そうでなければ、日本は再軍備して、中国に対抗する必要がある。」と話した』と伝えた。

「今感じているのは、以前台湾に関わる問題では、日本の基本的態度として「我々はすでに台湾を放棄したのだから、台湾問題に発言する資格はない」と。ただ我々の関係は地理的にも、人の往来にしても、文化的にも良く、関係は密接である。その当時、日本はアメリカにすべてを渡していた。ただ最近の日本社会はゆっくりと台湾の存在を理解し、日本の安全にとって非常に重要である」と彼は話した。

辜寬敏は中国語と日本語でメディアに「私はずっと、台湾にとって日本がなければ駄目になり、日本も台湾がなければ駄目になる。我々と日本の関係はこうである。もし台湾が中国の一部分になれば、日本は2流の国家になってしまう。さもなくば、日本は再軍備が必要となる。日本はどちらも受け入れられない。日本は台湾が自由民主主義国ということを再認識しなければいけない。日本にとって死活的な存在である」と言った。

彼が安倍首相と話した時に、安倍首相は彼の手を握って、「辜さん、私は100パーセントはあなたの意見に同意する」と言った。

日台共栄記事

やせても枯れてもアメリカはアメリカ─。アメリカという国は、日本にはとても真似のできない懐の深さを見せることがある。

今年の1月半ば、共和党のスティーブ・シャボット下院議員、民主党のブラッド・シャーマン下院議員、下院外交委員会のエド・ロイス委員長が共同で「台湾旅行法」(Taiwan Travel Act)という法案を提出した。

これはどういう法案かというと、米国と台湾のすべての政府関係者の相互訪問を可能にするという法案だ。3条からなるこの法案の第1条に「米国の全てのレベルの政府関係者による台湾訪問、および対等な行政レベルにある台湾の政府関係者への訪問を許可する」とある。

なんと、大統領をはじめとする全てのレベルの政府関係者の台湾訪問をできるようにするというのだ。日本では、日本版・台湾関係法(Taiwan Relations Act)の制定さえままならないというのに、大統領の訪台まで可能にしようというのだ。こういう法案が出てくるのがアメリカという国だ。

さらに驚かされたのは、6月15日、下院の外交委員会アジア太平洋小委員会において全会一致で可決されたことだ。下記に台湾の台湾国際放送の記事をご紹介するとともに、併せて原案(英文)をご紹介したい。

アメリカではすでに、昨年12月23日、「2017国防授権法案」(NDAA: National Defense Authorization Act)がオバマ大統領の署名をもって法案が成立している。米台の軍の高官の交流が盛り込まれたのは初めてだ。

この国防授権法について、小笠原欣幸・東京外大准教授は「『国防長官は、米国と台湾の間の軍と軍の関係を向上させるため米台間の高級将官と国防にかかわる高官の交流プログラムを実行すべきである』というセクションがあり、交流内容として、『脅威分析,軍事理論,軍隊計画,後方支援,情報収集と分析,作戦の戦術・技術・手順,人道援助・災難救助』が挙げられている。『高級将官』とは現役の軍の将官を指し、『国防にかかわる高官』とは国防総省の次官級以上を指すとの定義も規定されている」(蔡英文政権論 2 膠着状態の中台関係とトランプ政権の登場)と指摘している。

「台湾旅行法」は今後、米国連邦議会において、下院・外交委員会→下院→上院・外交委員会→上院のそれぞれの可決を経、トランプ大統領の署名をもって法律として成立する。今後の行方を注意深く見守りたい。

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Introduced in House (01/13/2017)

Taiwan Travel Act

This bill expresses the sense of Congress that the U.S. government should encourage visits between U.S and Taiwanese officials at all levels.

The bill states that it should be U.S. policy to :(1)allow officials at all levels of the U.S. government to travel to Taiwan to meet their Taiwanese counterparts;(2)permit high-level Taiwanese officials to enter the United States under respectful conditions and to meet with U.S. officials, including officials from the Department of State and the Department of Defense; and (3) encourage the Taipei Economic and Cultural Representative Office, and any other instrumentality established by Taiwan, to conduct business in the United States.

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台米政府関係者の相互訪問が実現の見通し

【台湾国際放送:2017年6月16日】

台湾と米国の全ての政府関係者の相互訪問を可能にする法案、「台湾旅行法(Taiwan Travel Act)」が15日、米下院外交委員会アジア太平洋小委員会で全会一致で可決された。この法案が米上

下院で可決されれば、台湾と米国の全ての政府関係者の相互訪問が実現できる見通し。

この法案の内容は次の通り。

一、米国の全てのレベルの政府関係者による台湾訪問、および対等な行政レベルにある台湾の政府 関係者への訪問を解禁する。

二、台湾の政府関係者の尊厳を守る原則の下、台湾の政府高官の訪米、および国務省や国防総省を 含む米政府高官との対面を解禁する。

三、米駐在の台湾の代表機関、駐米台北経済文化代表処、および台湾が設置した全ての機関による 米での正式な活動を奨励する。

この法案は今年1月、共和党のスティーブ・シャボット下院議員、民主党のブラッド・シャーマン下院議員、下院外交委員会のエド・ロイス委員長が共同で提出したもの。外交委員会アジア太平洋小委員会で可決後、外交委員会で可決されれば、下院に提出される。この法案が上下院を共に通過した場合、トランプ大統領によって署名すれば正式な法律になる。この法案は米連邦議会の今会期内に全ての立法手続きを完了する必要がある。

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『「アジア最大の大学合格工場」毛坦廠中学の正体 中国・安徽省の山村で地元経済を支える「予備校ビジネス」』(6/16日経ビジネスオンライン 北村豊)について

毛坦廠という地名も毛坦廠中学(高級中学=日本の高校、初級中学=日本の中学でここでは高校の意)も聞いたことがありませんでした。観光名所でなく大学予備校として名を馳せて来たのですから当然と言えば当然かも。

中国は人口の多さのメリットもあれば、デメリットもあります。人口の多さのメリットは商売が当たれば浸透度のスピードが上がり、成功する確率が高くなること、デメリットは逆に多くの人間を養うのにコストがかかることです。特に鄧小平が白猫黒猫論で経済発展に舵を切ってから経済格差が広がりました。中国人の長い歴史で培ってきた腐敗体質を無視して進めたからです。林語堂、何清漣が語っている通りです。

中国の高齢化のスピードは凄まじく、医療保険も養老年金制度も充実していません。他国の制度を利用しようと考えるのが彼らです。日本で500万円投資して会社を起こせば、国民健保に入り、中国から家族を呼び、高額医療(例:癌手術)を受けさせることをやっています。規制緩和も考えてやらないと、専制国家・中国に利用されるだけ。民泊も中国人が日本で不動産を購入し、中国人を相手に貸し、汚く使おうが関係ないまま。悪くすれば、テロの武器の保管庫になりかねません。日本の官僚・経済人は経済のことしか見てません。軍事を知らないエリートというのは欠陥持ちです。互恵主義(reciprocity)で、中国が不動産の所有権の売買やら、株式会社の100%購入の自由やらを認めないのであれば、日本で自由に不動産売買させるのは認めないようにしないと。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170524-00129137-diamond-bus_all&p=1

中国には人権が無いと断言できるのは、制度上からも言えます。一つは戸籍制度。農村戸籍と都市戸籍の区別があり、都会で生活するときに農村戸籍では医療や教育等受給時に大きな差があります。ですから、本記事のように大学に入り、都市戸籍を取得するのに躍起になる訳です。ただ、省毎、優良大学かどうかで転籍できる人数が変わってきますが。二つ目は档案です。共産党に敵対した行動を取った家族がいないか3代まで遡って記録されている共産党の内申書です。

http://toyokeizai.net/articles/-/70555

http://www.nippon.com/ja/in-depth/a01404/

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%A3%E6%A1%88

この他にも、人権侵害としては一人っ子政策の時には党による強制堕胎や少数民族の断種や漢族との強制結婚とかあります。最終的に人口過多を解決するために、共産党は海外への棄民や戦争による人口減を考えるのではと思っています。

日本人は中国人や朝鮮半島人に対する見方がかなり甘いのではと感じます。体験しないと分からないのかもしれませんが。彼らは日本の敵と考えた方が良いでしょう。日本を利用できるところは利用し、世界に日本を貶めるキャンペーンを展開しているのですから。問題なのは日本国内にそれに手を貸す連中が多くいるという事です。分かっていてやっているとすればスパイですし、分かっていないとすればempty-headedでしょう。学会、法曹界、マスメデイア、官僚がその典型です。

記事

中国・全国統一大学入試「高考」 受験に出発する毛坦廠中学の学生たちを、家族や地元民が“熱烈応援”とともに送り出す(写真:Imaginechina/アフロ)

中国における2017年の全国統一大学入試“普通高等学校招生全国統一考試(略称:“高考”)”は、6月7日、8日の両日に全国各地の試験場で行われた。2017年の志願者数は940万人だった。高考は文化大革命(1966~1976年)で停止されていたが、1977年に再開された。今年はその再開から40周年目に当たる。1977年の高考に参加した志願者は570万人(合格者数:27万人)に過ぎなかったが、その後の志願者数は年々増大を続け、2008年には1050万人(同:599万人)まで増大して頂点を極めた。そして、2009年からは減少に転じて、2013年に912万人(同:694万人)となって底を打ち、2014年:938万人(同:694万人)、2015年:945万人(同:700万人)、2016年:940万人(同:772万人)と大きな変動はなく、4年間横ばい状態になっている。

大学増加、合格率8割超に

上述したカッコ内の合格者数を見れば分かるように、1977年の高考ではわずか5%であった合格率は、2008年には57%へ上昇した。それが、2016年には82.2%まで上昇し、大学のレベルにさえこだわらなければ、志願者10人中の8人以上が大学に合格できるようになった。これは大学の数および各大学の合格者数が大幅に増大したからに他ならない<注>が、“985工程”や“211工程”と呼ばれる大学育成プロジェクトに含まれる名の有る大学(985工程は39校、211工程は112校)に合格することは依然として至難であり、厳しい受験競争を勝ち抜かねばならないのである。

<注>中国における“高等学校(大学)”の総数は2879校。

さて、高考の時期になると、中国メディアが必ず取り上げて報道する“高級中学(高校)”がある。それは“亜洲最大高考工廠(アジア最大の大学合格工場)”と形容される“毛坦廠中学”である。毛坦廠中学が所在する“毛坦廠鎮”は、安徽省の西部に位置する“六安市”にある。“六安市”は、東が安徽省の省都“合肥市”に隣接し、西は湖北省“黄崗市”及び河南省“信陽市”、南は“安慶市”、北は“淮南市”及び“阜陽市”とそれぞれ境を接する位置にあり、人口は581万人の中都市である。“毛坦廠鎮”はその六安市の“金安区”に属し、湖北省、河南省、安徽省の3省にまたがる“大別山(標高1777m)の東北麓に連なる山並みに囲まれた山村である。

“毛坦廠鎮人民政府”のウェブサイトには2017年2月14日付の「“毛坦廠鎮簡介(毛坦廠鎮案内)”」が掲載されているが、その要点は以下の通り。

名を知らしめる、かけがえのない存在

1. 毛坦廠鎮は中国の歴史・文化上で名高い鎮であり、大別山の東北麓に連なる山並みに位置し、六安市に属する“舒城県”と“霍山県”、“金安区”の境目に所在し、金安区で最南端の山村である。総面積は59.6km2、常住人口は4.5万人で、その内3.2万人が3.5km2の町部に住んでいる。また、耕地面積は9979ムー(約6.7km2)に過ぎない。国道105号線と県道「六毛路」が鎮内を通っている。毛坦廠鎮の歴史は古く、文化は奥深く、自然の風景は美しい。鎮内にある“東石笋風景区(風致地区)”は国家AAAA級の風致地区であり、“大別山国家地質公園”の11カ所ある目玉の1つである。

2.毛坦廠鎮内にある“毛坦廠中学”は安徽省のモデル“高級中学(高校)”で、在校生は1.5万人、2011年の“高考本科(大学入試)”で合格ラインに達した者が6912人で、合格ライン到達率は80%以上であった。長さ1321mの明・清時代の古い町並みは保存が良好で、省政府認定の省重要文化財である。鎮内には1947年に“劉伯承”と“鄧小平”率いる“中原野戦軍”が大別山へ千里の行軍を行って勝利した“張家店戦役”の記念館があり、省の共産党軍歴史遺跡となっている。2012年、毛坦廠鎮は、域内総生産7.5億元(約120億円)、財政収入1237万元(約2億円)、農民1人当たりの平均純収入8200元(約13万1200円)を実現し、2009年以来連続4年、六安市の経済発展総合実力ランキングで20位以内を維持した。ここ数年、毛坦廠鎮は、明・清時代の古い町並み、有名高校、風致地区という特色ある優位性に立脚し、「旅行で鎮を興し、教育で鎮を強め、商売で鎮を活性化させ、工業で鎮を富ませる」方針を堅持している。

上記の毛坦廠鎮案内から分かるように、毛坦廠中学は毛坦廠鎮にとってかけがえのない存在であり、毛坦廠中学が中国全土に毛坦廠鎮の名を知らしめているのである。上述したように毛坦廠鎮の常住人口は4.5万人だが、地元民の人口は1万人程度で、残りの3.5万人は外来人口である。この3.5万人のうちの2.5万人が学生とその付き添いの家族で、残りの1万人は周辺各地からやって来た学生や付き添い家族にサービスを提供する商売人である。

毎年6月5日は毛坦廠中学が1年に1度迎える“送考節(大学入試へ受験生を送る祭典)”の日で、28台のバスが受験生を乗せて試験場のある六安市の中心部へ向かうのを多数の人々が見送るのである。毛坦廠中学は「“高圧苦読、厳苛管理(情け容赦ない厳しい管理の下で、苦しみに耐えて勉学に励む)”」で知られ、「アジア最大の大学合格工場」と呼ばれている。毎年の“高考本科(4年制大学入試)”の合格率は90%以上を超えることから、「成績の悪い学生は、毛坦廠中学へ送り込めば大学合格の夢がかなう」と言われている。

学生と家族の消費がGDPに貢献

毎年の繰り返しによって、毛坦廠鎮の経済は藤のつるの様に、毛坦廠中学にすがりついて大きく発展した。毛坦廠鎮政府は毛坦廠中学の学生たちが心静かに学習できるように、鎮内のネットカフェ、ゲームセンターやビリヤード場などの遊戯施設の営業を禁止し、露天の飲食店や洋服店などの営業は存続させた。ある毛坦廠鎮の指導者が計算してみたところでは、毛坦廠中学の学生や付き添い家族の2.5万人が、少なめに見積もって毎日1人当たり10元(約160円)を鎮内で消費したとすれば、毛坦廠鎮の第三次産業が稼ぐ1日の営業額は少なくとも25万元(約400万円)になり、年間では9000万元(約14億4000万円)になり、鎮のGDPに大きく貢献する。

毛坦廠鎮の主要道路である“元亨路”沿いには鎮政府の役所が立ち並ぶが、毛坦廠中学の正門付近の路地には間口3m程の露店が軒を連ねている。それらは外地から来た人々が開いた“小吃店(軽食屋)”、洋服屋、電器屋などである。メディアに対し毛坦廠鎮政府の役人は、「もし毛坦廠中学が大学合格率を上げて有名にならなかったら、我々の鎮は今なお山間部にある貧困な小さな鎮に過ぎなかった」と述べ、地元の住民はメディアに対して「毛坦廠鎮は金安区の中で唯一財政が赤字ではない」と誇らしげに語っている。

それというのも、毛坦廠鎮住民1人当たりの平均可処分所得は、2008年に6300元(約11万3400円)だったものが、2010年には1万7000元(約27万2000円)まで上昇した。毛坦廠鎮住民1人当たり平均可処分所得が2016年にいくらだったかを示すデータは公表されていないが、毛坦廠鎮が所在する金安区の住民1人当たりの平均可処分所得が2016年にようやく1万9000元(約34万2000円)になったことを考えれば、山間の小さな鎮に過ぎない毛坦廠鎮がいかに健闘しているかが分かる。

私立学校を合併、補習センターを合体

【1】1999年の高考で毛坦廠中学から大学に合格した学生は98人しかいなかった。こうした状況が変化したのは2005年からだった。2005年当時、毛坦廠中学の校長だった“朱志明”(現金安区教育局長)が主導する形で、毛坦廠中学と地元の私立学校を合併して株式制の“金安中学”を設立し、同一校区内にある両校で共同して外部から受け入れる卒業年次の3年生と“復読生(浪人生)”とを教育することにした。要するに、表面上は毛坦廠中学と呼ばれているが、実態は毛坦廠中学と外部から来た卒業年次の3年生と浪人生に高考受験のための補習授業を行う“補習中心(補習センター)”を合体させたものと言うことができる。この結果、2005年の毛坦廠中学の大学合格者は1000人を突破し、その後は毎年約1000人ずつ増え続け、大学合格者は2016年には3年連続で1万人を超えて、合格率は90%以上になった。

【2】2014年を例に取ると、毛坦廠中学の卒業年次である3年生は5000人以上、“補習中心”の浪人生は8000人以上で、その総数は1.3万人以上であった。補習中心の授業料は一律ではなく、高考の文科系で500点以上の点数を取った浪人生の場合は、1学期(半年)の学費は4500元(約8万1000円)だが、点数が低ければ低いほど学費は高くなり、その最高は1学期で4万8000元(約76万8000円)になる。従い、補習中心の浪人生が1人当たり平均で年間に1万元(約16万円)の学費を支払うとすれば、その収入は8000万元(約12億8000万円)になる。

【3】毛坦廠中学では卒業年次の3年生は、早朝5時30分に起床し、1日の学習は、6時20分からの自習に始まり、夜10時50分までの自習で終わる。この間に昼食と夕食の時間が40分ずつあるだけである。但し、自らに厳しさを課す学生たちの多くが、実際に休息を取るのは深夜になることもしばしばであり、学生たちの学習時間は毎日16時間以上になる。このため、教師向け週刊紙「中国教師報」は、「ここでは、学習と点数以外の要素は最大限取り除かれ、試験の点数を上げるのに不利な娯楽からは最大限隔離され、趣味や個性的な物は最大限抑制される」と報じた。また、米国のニューヨークタイムズ紙は「最寄りの都市から2時間以上の距離があり、現代生活の妨害から遮蔽され、学生たちは携帯電話やノートパソコンも使用を禁止されている。学生たちの半数は宿舎に住み、部屋には電源すらもない。また、残りの半数は鎮内に借りた小さな部屋で母親と生活している」と報じている。

【4】毎年1万人を超える学生と付き添い家族が毛坦廠中学で学ぶために毛坦廠鎮へ流入してくるが、上述にように彼らの半数は鎮内に部屋を借りて付き添いの母親と生活する。毛坦廠鎮の借家は、最も安い部屋で年間の家賃は4000~5000元(約6万4000~8万円)であり、最も高いものは2万元(約32万円)である。このため、毛坦廠中学の学生に母親が付き添って毛坦廠鎮内に部屋を借りて生活するとなれば、学費と家賃に生活費を加えれば、年間に少なくとも4~5万元(約64万~80万円)程度が必要になる。2016年における中国の都市部住民1人当たりの平均可処分所得は2万3821元(約38万1000円)であるから、4~5万元は大金である。なお、家賃は毎年500~1000元(約8000~1万6000円)の幅で上昇を続けている。

【5】毛坦廠中学の学生は、農村から来ている者が大部分である。彼ら農村出身者にとって、高考で大学に合格することは、個人や家庭の運命を変え、彼らが属する“農民”という階級から脱却して“城市居民(都市住民)”に転身する機会を得ることを意味する。2016年6月時点で、毛坦廠中学には間も無く卒業する3年生のクラスが55組、浪人生のクラスが61組あり、高考の受験生は約1.3万人であった。これは安徽省全体の高考志願者数50.99万人の約2.5%に相当した。これに1年生と2年生を加えた毛坦廠中学の在校生は約2万人であった。

【6】毛坦廠中学の敷地面積は400ムー(約26万6667m2)で、東京ドームの5.7個分に相当する広さを持つが、そこには、毛坦廠中学、金安中学、“金安補習中心(補習センター)”の3校が存在する。毛坦廠中学の北の校門には「毛坦廠中学」の扁額が、東と西の校門には「金安中学」の扁額が掲げられている。2004年に中国政府は公立学校が有償で補習授業を行うことを禁じたことから、上述したように、毛坦廠中学は2005年に地元の私立学校を合併して株式制の金安中学を設立し、外部から来た高校3年生と浪人生に有償で高考受験のための補習授業を行うことにしたのである。従い、3校で異なるのは卒業証書だけで、校舎、教員、食道などは全て共通で、3校まとめて毛坦廠中学なのである。

中国には毛坦廠中学と並んで高考受験で有名な高校に河北省“衡水市”の“桃城区”に所在する“衡水第二中学”がある。同校は河北省のモデル“高級中学(高校)”に認定されているが、「地獄」とあだ名される程の厳しい教育方針で知られている。同校のウェブサイトには、“一本”と呼ばれる高考において高得点が必要な“清華大学”や“北京大学”などの有名大学に合格した学生の名簿が掲載されているが、2016年の合格者名簿には約3500人の名前とクラス番号、合格した大学名が記載されている。同校では地獄の教育方針に耐えられず、校舎から飛び降り自殺する学生が後を絶たない。このため、同校では校舎の通路に鉄柵を設置して自殺防止を図ったこともあったが、後に消防の観点から鉄柵は撤去された。

大学は出たけれど…の現実の中で

衡水第二中学は“一本”レベル大学への合格者が多く、その合格率が70~80%と高いことで知られている。これに対して、毛坦廠中学は“一本”レベル大学への合格率が20~30%に過ぎず、大多数の学生が合格しているのは“三本”レベルの、いわゆる「三流大学」である。しかし、毛坦廠中学の学生たちの大多数は教育環境が低劣な農村から来た学生であることを考えれば、本来なら大学合格が難しい学力しかない学生を合格レベルまで引き上げ、多数の合格者を出していることは、毛坦廠中学の輝かしい業績と言えるのである。

文化大革命によって中断されていた高考が1977年に再開されてから、2017年の今年は40周年となる。かつて大学卒業生の数が少なかった時代には、大学卒業生は金の卵で庶民から尊敬されていた。しかし、今では700万人以上の人々が大学へ入学する時代となり、大学卒業生の価値は大きく低下している。大学卒業にさらに箔を付けようとして海外の大学へ留学する人も増大したが、これも海外留学からの帰国者が増えすぎて価値は低下しているのが中国の実情である。

そうした状況を知ってか知らずか、毛坦廠中学では農村出身の高校生たちが高考受験で大学合格を勝ち取ろうと眠る時間を削って猛勉強に励んでいる。そして、毛坦廠中学は多数の大学合格者を産み出すことで全国にその名を轟かせると同時に、大学予備校ビジネスで収益を上げて毛坦廠鎮のGDPに貢献し、鎮財政を潤しているのである。今後も高考が実施される6月初旬には、メディアによる毛坦廠中学の高考受験に関する報道は続けられることだろう。

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『米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」 ソウルにおけるメガシティ戦闘で泥沼化の恐れ』(6/16JBプレス 部谷直亮)、『試射と侮ってはいられない北朝鮮の地対艦ミサイル 国産「巡航ミサイル」の開発に成功か』(6/15JBプレス北村淳)について

6/17渡部亮次郎氏メルマガの記事で、櫻井よしこ氏が週刊新潮6/15号に寄稿したもの。

世界の安定剤、マティス長官の安全観

毎年シンガポールで開催される「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダ イアローグ)」は、世界の安全保障戦略で何が一番の問題になっているかを知り、大国の思惑がどのように交錯しているかを知る、極めて有意義な場である。今年は米国防長官、ジェームズ・マティス氏が演説を行った。

トランプ大統領が、ロシア問題で追及され、身内のジャレッド・クシュ ナー大統領上級顧問までもが疑惑を取り沙汰されている。そうした中、軍人として培った揺るぎない安全保障観を披露したマティス国防長官は、国際社会の安定装置として機能しているかのようだ。

6月3日に行われた氏の演説の内容は予想を超える率直さだった。敢えてポイントを2つに絞れば①アジアの同盟諸国への固い絆の再確認、②中国には断固たる姿勢を取る、ということになるだろう。

まず、アジアの安全保障についてマティス氏は、アメリカが如何に国際法順守を重視しているかを強調した。

アジアの安全保障が国際法に基づいて担保されるべきだとの考えは、世界恐慌とそれに続く第二次世界大戦の凄まじい体験から学びとった教訓だと、マティス氏は強調する。氏は演説で人類の戦いの歴史にさり気なく触れたが、蔵書6000冊を有し、その大半が戦史に関する著作だといわれる氏の、国家と国家の摩擦としての戦いや、その対処の原理についての、奥深い理解を感じさせる。

氏は語っている。国の大小、その貧富に拘らず、国際法は公平に適用されるべし、と。海の交通路は全ての国々に常に開かれ、航行及び飛行の自由が保たれるべきだという価値観は、時代を通して守られてきたとマティス氏は語る。その自由で開かれた世界を、アメリカはこれからも担保するのだと。

同じ趣旨を、表現を変えながら、マティス氏は繰り返した。講演録を読むと、国際法の重要性を説いた段落が幾つも続いている。

「航行の自由」作戦

それらの発言が中国に向けられているのは明らかである。マティス氏がこれ程、或る意味で執拗に、国際法や航行の自由について語ったのは、アメ リカは北朝鮮問題で中国に協力を求めても、南シナ海、東シナ海、台湾などの他の重要な地域問題で従来の基本的立場を譲るつもりは全くないと示しているのである。マティス氏は、中国について前向きに丁寧に言及しながらも、要所要所で釘をさしている。

「トランプ政権は、朝鮮半島の非核化に向けての国際社会の努力に中国が コミットメントを再確認したことに安堵している」「(4月の米中首脳会 談で)習近平主席は、全ての関係国が各々の責任を果たせば、朝鮮半島の核の問題は解決されるはずだと語った」と、紹介したうえで、マティス氏は述べた。

「自分は習近平主席に全く同意する。大事なのは、そうした言葉は行動によって本物であることが確認されなくてはならないということだ」

中国に強い口調で迫っているのである。中国よ、言葉はもういい。実行によって証明せよ、制裁を強化せよと要求しているのである。

約30分の演説の中で、マティス氏は南シナ海の問題についても、中国の建設した人工島を批判しながら言及した。主旨は、①中国の行動は国際社会の利益を侵し、ルールに基づく秩序を揺るがすもので、受け入れることはできない。②人工島の建設とその軍事化は地域の安定を損ねる。

氏の一連の発言に、質疑応答で、多くの質問者が率直な謝意を表した。 国防長官の発言は「希望をもたらす」とまでコメントした人がいた。膨張する中国が恐れられ、嫌われているのとは対照的に、強いアメリカが望まれているということだ。

トランプ政権発足以来約4か月が過ぎた5月下旬、ようやく南シナ海で「航行の自由」作戦を行った。北朝鮮問題で中国に配慮して南シナ海とバーターするのではないかという懸念の声さえささやかれていたときに行われた「航行の自由」作戦は、オバマ政権のときには見られなかったアメリカの断固たる意志を示すものだった。

スプラトリー諸島のミスチーフ礁に建設された人工島の近く、中国が自国の領海だと主張している12カイリ内の海で、「航行の自由」作戦は、中国 への「事前通告」なしに行われた。オバマ政権時代に4回行われた「航行の自由」作戦と、今回のそれには全く異なる意味があった。今回は、通常は公海で行う海難救助訓練を行ったのだ。

「米中接近」はない

中国の主張など全く認めないという姿勢を示したのだが、この訓練には中国も反対しづらい。なぜなら、それは「人道的な」海難救助だったからだ。

非常に慎重に考え抜かれた緻密な作戦を決行したことでアメリカは、人工島を建設しても中国は領海を拡大することはできないと示したのだ。アメリカの考えは、まさに常設仲裁裁判所がフィリピン政府の訴えに対して出した答えと同じものだった。

もうひとつ、非常に大きな意味を持っているのが、マティス氏がパートナー国との関係を継続していくとする中で、インド、ベトナムなどに続いて台湾に触れたことだ。

「国防総省は台湾及びその民主的な政府との揺るぎない協力を継続し、台湾関係法の義務に基づいて、台湾に必要な防衛装備を提供する」と、マ ティス氏は語った。

トランプ大統領が北朝鮮の核及びミサイル問題で中国に配慮する余り、南シナ海や台湾への配慮が薄れて、台湾も事実上見捨てられるのではないかという懸念さえ、生れていた。そのような疑念をマティス氏の発言はさっ と拭い去った。

米国防長官としては異例のこの発言と、それを支える戦略的思考が、トランプ政権の主軸である限り、台湾や日本にとっての悪夢、「米中接近」 はないと見てよいだろう。

会場の中国軍人が直ちに質問した。「中国はひとつ」という米中間の合意を覆すのかと。マティス氏は「ひとつの中国」政策に変更はないと答えたが、蔡英文総統は独立志向が高いと見て、台湾に軍事的圧力を強めるようなことは、アメリカが許さないという強いメッセージを送ったということだ。

アメリカの政策は読み取りにくい。マティス発言に喜び、トランプ発言に 不安を抱く。トランプ氏は基本的にマティス氏らの進言を受け入れているかに見えるが、究極のところはわからない。だが、マティス氏ら手練れの兵(つわもの)が政権中枢にいる間に、わが国は急いで憲法改正などを通して、国の在り方を変えなければならないと、心から思う。>(以上)

Facebookからの記事。蔡英文台湾総統(日本語と英語で表記されていました。中国人が漢語を使えと文句を言っていましたが)

台湾はアメリカ、日本とほかの国からの相変わらずの支持に対して、誠に感謝しています。これからも引続き地域の平和と安定のために、各国と一緒に頑張りたいと思います。

23:01 – 2017年6月15日

それに対し西村幸祐‏ 氏のリツイート

台湾の蔡英文総統の非常に重要なツイートだ。台湾が自由と民主主義と独立の危機に瀕している事。ヒタヒタと中国共産党の覇権主義の侵略意思が台湾に忍び寄っている事を、世界中の人々に気づいて欲しい、注視して欲しいという心からの叫びである。日本は台湾と軍事も含めた関係強化に直ちに取り組むべき。>(以上)

台湾に対して日本政府は口先、形だけの支援に止まっているようにしか思えません。中国が外交・経済で台湾の締め上げを図っている時ですので、台湾と一緒にASEAN諸国へのインフラ投資ができるように手を差し伸べる等やってほしいし、2020年東京オリンピックも台湾名義での参加もできるようにしてほしいです。中国が東京オリンピックをボイコットするなら、それもOKです。国連に代わる新たな組織、G7+NATOを中心とした組織を作るように動いていけば良いのでは。国連は第二次大戦国の戦勝国の組織で、産み落とされた瞬間から不純なものがあり、敵国条項がその最たるものでしょう。今やP5の拒否権で機能不全に陥っています。そんな組織を有難がって崇拝するほど愚かなことはありません。

米軍の北朝鮮攻撃はいろんな人がいろんな意見を言っています。鈴置高史氏や青山繁晴氏、山口敬之氏は「あるかも知れない」派で、「何時攻撃するかは分からない」と(6月~8月、秋以降とかあります)。これに対し部谷氏は「ない」と言いきっています。確かに民間人の犠牲が多ければ多くなるほど攻撃は躊躇せざるを得ないでしょう。でも、日本だって300万人の犠牲を第二次大戦で払っています。犠牲者数だけで戦争が起きないとの論理展開は出来ないのでは。況してや自国への脅威が増大するとなれば、他国への犠牲には目を瞑り、「今の内に」と考えるのはおかしくないでしょう。善悪の問題ではありません。戦争が悪とすれば、世界で戦争が起きる筈もない。日本や韓国にとっては堪ったものではありませんが。

6/13のNHKニュースに依れば、米国議会の公聴会でダンフォード統合参謀本部議長は「(朝鮮で)戦争になればわれわれが勝利することは疑いがないが、この6、70年間では見たこともない犠牲者が出る」と述べました。ただ、戦争はしないとは言っていません。可能性はあるという事です。日本はその備えがキチンとできているのかを問うべきです。「ない」と言って切り捨てるのでもなければ、「あるある」と言って不安を煽るのではなく、起きた時の対処を万全にするようにすべきと考えます。官邸・自衛隊・警察・消防・海保・市町村・民間がどう動くべきかを予行演習しなければ咄嗟には動けません。そうしなければ、起きたときに犠牲者が増えることが予想されます。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170613/k10011016181000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001

やはり、日本の防衛体制は、今までの延長線で考えることはできないという事です。中国が陰に日向に北朝鮮を支援してきたのは事実なので、日本も米国に核保有(できなければニュークリアシエアリング)やレールガンやレーザー研究を一緒にやるくらいの話を持ち掛けませんと。そのためには、江崎道朗氏が言いますように、防衛費をGDPの2%まで上げませんと、トランプは相手にしてくれないでしょう。

部谷記事

韓国・ソウル。米軍が北朝鮮を攻撃すると北朝鮮軍が一気にソウルに侵入してくる可能性がある(資料写真)

今年の春、米軍の北朝鮮への先制攻撃の可能性を報じたメディアやジャーナリストは今やすっかり口を閉ざしてしまった。中にはいまだにそうした見解を述べる論者も散見されるが、現実的にはその可能性はきわめて薄い。

5月21日、米軍の準機関紙「military times」は、北朝鮮への先制攻撃はリスクが高く、トランプ政権は攻撃を考えていないとする記事を掲載した。記事の概要は以下のとおりである。

*  *  *

トランプ政権は、北朝鮮への軍事的選択肢はないと考えている。

確かに北朝鮮の現政権によるミサイル実験は頻繁さを増し、金正恩は米西海岸への核攻撃能力獲得に近づいている。だが、米国の軍高官は、先制攻撃が大惨事を招き、最悪の場合、10万人の民間人を含む大量の死者を生み出すと懸念している。

まず、国境地帯の花崗岩の山岳地帯に秘匿された北朝鮮の砲兵部隊は、砲撃から数分で山中に秘匿できる。また、韓国のソウルは非武装地帯から約56キロメートルにある人口2500万人の大都市である。シンクタンクの分析では、170ミリ自走砲、240ミリおよび300ミリの多連装ロケットシステムがソウルを攻撃できる。特に300ミリロケットがソウルに向けられた場合、都市火災が発生する。数百万人の民間人がソウルから南下して鉄道・航空・道路における大混乱をもたらし、大規模な人道危機を引き起こす。

元航空戦闘軍団司令官のハーバート・カーライル元空軍大将は、「米韓連合軍が北朝鮮を倒すのは間違いないが、韓国の民間人犠牲者を減らすのに十分な迅速さで北朝鮮軍を機能停止に追い込めるかが最大の問題だ」と警鐘を鳴らす。専門家たちも、ひとたび通常戦争が始まれば戦いは数カ月以上続くとみている

米軍が特に懸念しているのが、ソウルの一角に北朝鮮軍が侵入する事態である。北朝鮮軍は非武装地帯に多数掘削した秘密トンネルから1時間に2万人を侵入させることができる。これは「恐るべきメガシティ戦闘」を引き起こす可能性がある。カーライル元空軍大将は「ソウルのどこかに北朝鮮軍が侵入すれば、航空戦力の優位性は相対化される。メガシティ戦闘では航空戦力は極めて限定的な役割しか発揮できない」と指摘する。

米海兵隊の活動も困難である。第1の理由は、海兵隊は朝鮮戦争以来、大規模な強襲揚陸作戦を行っていないこと。第2は、現在西太平洋に展開中の5~6隻の水陸両用艦艇では、上陸作戦に必要な1~1.7万人の戦力を運べないこと。第3は、北朝鮮の沿岸防衛能力は1950年とは比較にならないほど向上し、何百マイル先の艦艇や舟艇を破壊できることだ。

しかも、開戦となれば、米軍の地上基地が打撃を受ける可能性があるため、利用可能なすべての米空母がこの地域に吸引されることになる。陸空軍なども同様で、全世界における米軍の即応能力を低下させるリスクがある。また、ヘリテージ財団研究員のトム・スポウラー元陸軍中将は「戦争が始まると米陸軍は旅団戦闘団を新たに編成しなければならない。だが、イラクにおける経験で言えば2年間は必要だ」と指摘する。

*  *  *

考えれば考えるほどリスクが高い先制攻撃

以上の記事から分かるのは、元軍人たちは我々が考える以上にリスクを重く見ているということだ。

元米軍人たちの指摘は、(1)海兵隊の脆弱性に伴う上陸作戦の困難性、(2)頑丈な花崗岩と複雑な地形を利用した砲兵陣地の強靭さと威力、(3)メガシティ戦闘、(4)戦力の枯渇、に集約できる。

海兵隊の脆弱性は言うまでもないが、(2)(3)(4)については改めて説明が必要だろう。まず(2)についてだが、地形・地質の有効な活用は沖縄戦における日本軍の粘り強さを振り返れば、その効果がよく分かる。沖縄戦闘時の日本軍は、沖縄の硬い珊瑚岩と起伏の激しい地形を利用して砲兵陣地(いわゆる反斜面陣地)を形成して、航空・火砲の圧倒的な劣勢下でも米軍を苦しめた。

(3)の「メガシティ戦闘」は、2014年頃から米陸軍が強調している概念である。米陸軍は、2030年には全世界人口の6割がメガシティ(人口1000万以上の大都市圏で、世界に27か所存在)に居住する時代になるとして、メガシティ戦闘に必要な将来の米陸軍の戦力構成やドクトリンの検討を続けている。

米陸軍は、メガシティでは民間人への配慮や戦力の分散が余儀なくされるため、作戦が極めて複雑になる他、敵戦力が建物や住民に紛れ込むことで航空戦力が活用できず、相手の情報も手に入らないため、大苦戦が予想されるとしている。イラク戦争時のファルージャ攻防戦や近年のイスラム国との各都市における死闘を思えば、元軍人たちがソウルに北朝鮮軍の部隊が侵入すればやっかいなことになると考えるのも当然だろう。

(4)については、要するに北朝鮮問題以外にも米国の抱える脅威はたくさんあるということだ。米国は既にイスラム国との戦い、アフガンでの戦い、テロとの戦い、サウジアラビアとイランの覇権争いに巻き込まれている。米国としては、すでに炎上しているそちらの「戦線」にこそ、まず戦力を割く必要がある。特にイスラム国打倒はトランプ政権の主要公約であり、これを成し遂げねば北朝鮮どころではない。

実際、トランプ政権のシリアへの肩入れはさらに深まっている。6月13日、米軍はついに「南シリア」に初めて長距離砲兵部隊を展開させた。しかも、国防総省のスポークスマンたるライアン・ディロン大佐は、記者たちに対して「これは親アサド勢力の脅威に備えるためである。今後もそのために米軍の現地におけるプレゼンスを拡大していく」と述べた。親アサド勢力とは、イランが支援する武装勢力のことであり、これは単にシリアへの深入りだけではなく、イランの代理勢力と米軍の戦闘すら秒読みに入ったことを意味する。要するに、米イラン関係の悪化の第一歩になりかねないということだ。

このように、考えれば考えるほど、北朝鮮への先制攻撃は軍事的リスクが高く、それは外交的・政治的リスクに直結しているのである。もちろん、政治的に「詰み」に近づきつつあるトランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するといった可能性もあるが、その場合でも、現時点では中東でさらなる軍事行動の方がはるかに安易かつ安全なのは言うまでもない。やはり、北朝鮮への先制攻撃の可能性は「現時点」では低いだろう。

北村記事

北朝鮮軍の新型ミサイルを搭載した装軌TEL(地上移動式発射装置)

韓国軍合同参謀本部によると、6月8日早朝、北朝鮮軍が元山付近から地対艦ミサイルと思われる飛翔体を数発発射した。ミサイルは日本海上空を200キロメートルほど飛翔し公海上に落下したとのことである。

今回のミサイル連射に対してアメリカ政府はさしたる反応は示しておらず、国連安全保障理事会も新たな制裁などに関する動きは見せていない。日本政府も「我が国の安全保障に直ちに影響を与える事態ではない」との声明を発し、「アメリカ、韓国と連携しながら・・・」といったお決まりの対処策を述べたにとどまった。

国産巡航ミサイルの開発に成功か

今回の地対艦ミサイル発射試験に関して、北朝鮮の国営メディア(KCNA)は「新型の巡航ロケットは海上の目標を精確に探知し命中した」と伝えており、「(北朝鮮)攻撃のために接近を企てる敵の軍艦を、地上から攻撃する強力な手段である」と豪語している。

韓国軍や米軍関係ミサイル専門家たちの分析のように、北朝鮮メディアが「巡航ロケット」と発表した今回の飛翔体は沿岸防備用巡航ミサイル(CDCM:いわゆる地対艦ミサイル)であることは間違いない。今年に入って北朝鮮は弾道ミサイルの試射を10回繰り返してきたが、今回は初めて巡航ミサイルの試射を行ったことになる。

これまでも、北朝鮮軍がソ連や中国から手に入れた「シルクワーム」(北朝鮮バージョンはKumsong-1、Kumsong-2)と呼ばれる地対艦ミサイルを装備していたことは知られていた。ただし、それらの最大飛翔距離は、長くとも、せいぜい120~130キロメートル程度と考えられていた。

それらに加えて北朝鮮はロシアからKH-35U地対艦ミサイルを手に入れたことも確認されていた。このKH-35Uは最大射程距離が300キロメートルに達すると言われている極めて強力な対艦巡航ミサイルである。そして、KH-35Uをベースに北朝鮮が改良を加えてKumsong-3という新型地対艦ミサイルを造り出しているといわれていた。

今回試射された地対艦ミサイルは、飛翔距離が200キロメートル程度であったことから、KH-35UあるいはKumsong-3である可能性が高い。とすると、北朝鮮軍は国産の巡航ミサイルの開発にも成功し、その配備も開始したと考えることができる。すなわち、これまでは北朝鮮のミサイル戦力イコール弾道ミサイルという図式で考えられてきたが、それに巡航ミサイルも加えなければならないことになったのだ。

中国と類似するミサイル戦力強化の過程

北朝鮮のこのようなミサイル戦力強化の流れは、中国と類似している。

中国人民解放軍も当初は、アメリカに到達する核弾道ミサイル(ICBM)の開発に全力を投入していた。それが達成されると、ICBMだけでなく中距離や短距離の弾道ミサイルの高性能化を目指した。そして弾道ミサイル戦力がある程度強化されると、それまでも地道に研究開発を続けていた巡航ミサイルの開発生産に本腰を入れ始め、アメリカのトマホークミサイルを凌駕する長距離巡航ミサイルの開発を目指した。

現在は、「中国だけが開発に成功した」と豪語する対艦弾道ミサイルをはじめ多種多様の弾道ミサイル、それに地上・空中・海上・海中の様々なプラットフォーム(地上移動式発射装置、駆逐艦、潜水艦、航空機など)から発射される多種多様の長距離巡航ミサイルを合わせて2000発以上保有する長射程ミサイル大国になっている。

もちろん、北朝鮮と中国では国力が圧倒的に違うため、北朝鮮軍が中国軍のような超強力な長射程ミサイル戦力を手に入れるには至らないであろう。しかし、丸腰に近い状態の日本を脅かす程度のミサイル戦力を手にすることは可能である。

既に北朝鮮軍は日本各地を射程圏に納めた弾道ミサイル(ノドン、スカッドER)を、おそらくは100程度は手にしている。中国ミサイル戦力の進化過程を当てはめると、北朝鮮軍の次のステップは弾道ミサイルの性能アップと長距離巡航ミサイルの開発ということになる。

そして、最近連続して実施された弾道ミサイル試射によって、北朝鮮の弾道ミサイル技術が目に見えてレベルを上げていることが明らかとなった。そして、今回の地対艦ミサイルの試射により、北朝鮮製が国産巡航ミサイルの開発に本腰を入れ始めたことも明らかになった。

ミサイル技術者たちによると、巡航ミサイルの場合、射程距離を伸ばすだけならば、技術的に困難ではないという。つまり、今回北朝鮮が試射した巡航ミサイルは200キロメートルほど飛翔したが、これを400キロメートル飛ばすということ自体はそれほど困難ではないというのだ。

もちろん、ただ長距離を飛ばせれば長射程巡航ミサイルが出来上がりということにはならない。400キロメートル、そして1000キロメートル、さらには2000キロメートルと攻撃目標が長射程になれば、そのようなはるか彼方の攻撃目標を的確に捕捉する技術や、長距離にわたって海面すれすれを飛翔させる技術、攻撃コース(注)の制御技術など、さまざまな最先端技術が必要になる(注:巡航ミサイルは弾道ミサイルのように一直線に飛翔するのではなく飛行機のように転針を繰り返して目標に接近する)。そのため、北朝鮮技術陣にどれだけの力量があるのかによって北朝鮮軍の巡航ミサイルの開発速度は左右される。だが、そう遠くない将来には、北朝鮮から直接日本を攻撃することができる長距離巡航ミサイルが誕生することになるであろう。

進化しているミサイル発射装置

ミサイルそのものに加えて、アメリカ軍関係ミサイル専門家が注目しているのは、試射に使われているミサイル発射装置である。

ここのところ北朝鮮がミサイル試射を行う際に、これ見よがしに公表しているのが「TEL」と呼ばれる地上移動式発射装置である。かつては、中国から輸入したTELしか確認できなかったが、今回の地対艦ミサイルだけでなく最近発射した「北極星2号」中距離弾道ミサイルや「新型スカッド」短距離弾道ミサイルなども装軌式(戦車のようなキャタピラーで動き回る方式)のTELが用いられた。

中国から北朝鮮が手に入れたTELはすべて装輪車両であったため、装軌TELは北朝鮮国産ということになる。北朝鮮の道路の大半(97%)は未舗装道路であるため、装軌TELのほうが使い勝手が良いと思われる。その上、装軌TELの場合、海岸や荒れ地それに山岳地帯など、移動発射地域が大幅に広がるという利点もある。

このように、発射装置に関しても、北朝鮮のミサイル戦力の強化には警戒を払わねばならない。

北朝鮮軍の弾道ミサイルを搭載した装軌TEL

北朝鮮軍の地対艦ミサイルと装軌TEL

北朝鮮軍長距離巡航ミサイルへの備えも必要

菅官房長官や稲田防衛大臣が述べたように、射程距離200キロメートル程度の地対艦ミサイルを北朝鮮軍が手にしても「日本の国防が直接脅威を受けるような問題ではない」ことは確かである。

しかしながら、北朝鮮が“ミニ中国”のようなミサイル戦力強化の途を歩んでいることは間違いない。そして戦力強化は中国同様に一定レベルに達すると加速度的になされる可能性が高いため、対日攻撃用弾道ミサイルの性能が強化され、対日攻撃用の長距離巡航ミサイルが誕生することも否定できない。

日本国防当局は、中国人民解放軍の対日攻撃用ミサイル戦力に対して完全に後手に回っている。少なくとも北朝鮮軍の対日攻撃用ミサイル戦力の脅威からは、国民を守り抜く対抗戦略を構築し、防御態勢を固めなければならない。

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『四面楚歌のトランプ、弾劾は時間の問題か 全米で次々提訴され、ロシアゲート捜査は核心に迫る』(6/16JBプレス 堀田佳男)、『目の前に迫ったトランプ退任、ペンス大統領就任 予算教書で明らかになった”まさか”の無知無能ぶり』(6/15JBプレス伊藤乾)について

6/16渡部亮次郎氏メルマガから杉浦正章氏のブログで、トランプの今後の行方について書かれたものがありました。トランプ対マスコミの対立は長丁場に FBIとCIAを敵に回して低空飛行 一時は特別検察官解任へと動く

CNNから初閣議を「まるで北朝鮮の閣議だ」と酷評されては、トランプも形無しだ。どうもトランプの打つ手は田舎芝居じみており、稚拙だ。

その原因を探れば、政権が素人集団だからだろう。ワシントンで昔から言 われている政権維持の要諦は3つある。「連邦捜査局(FBI)を敵に回すな」 「敵になりそうなものは抱え込め」「ばれるような隠ぺいはするな」である。

1つでも守らないと政権は危機に瀕するといわれ、歴代政権が重視してきたポイントだが、トランプは3つとも破っている。まさにハチャメチャ大統領による五里霧中の低空飛行だ。

政権発足以来5か月たってやっと23人の閣僚がそろって12日に開いた閣議がなぜ「北朝鮮の閣議」かといえば、見え透いたお追従強要閣議であった からだ。冒頭20分間をテレビに公開したが、まずトランプが「我々は驚異的なチームで、才気にあふれている」と自画自賛。次いで閣僚に発言を求めたが、根回し済みとみえて、ごますり発言が相次いだ。

史上初のゴマすり閣議だ。メディアが「賞賛の嵐」と形容したほどだ。 CNNが「賞賛度第1位」に挙げたのが副大統領ペンス。何と言ったかという と「大統領を支持するという国民への約束を守る。大統領に奉仕できるの は人生最高の特権です」と大ゴマをすった。

そして次から次へと歯の浮く ようなお追従を閣僚が繰り返した。まさに世界最強の民主主義国の閣僚 が、皇帝トランプにひれ伏すの図であった。

司法長官セッションズの議会証言もトランプの意向が強く働いたもので あった。もともとセッションズとトランプは不仲と言われており、一時は辞任説も流れた。ところが14日の議会証言では打って変わった“忠節”ぶり を示した。どのような忠節ぶりかと言えば、トランプが窮地に落ちいった ロシアゲートの全面否定である。

ロシアとの共謀を強く否定し、そのよう な主張は「おぞましく忌まわしい嘘」だと述べたのだ。

さらにトランプは身内を使ってすぐにばれるような芝居を続けた。親しい友人であるクリストファー・ラディに「大統領は特別検察官の解任を検討している」と発言させたのだ。ニューヨーク・タイムズは13日、トランプが実際にモラー解任に動き、夫人メラニアが止めたと報じている。

先月 特別検察官に任命されたモラーはワシントンで与野党を問わず信頼を集め ている人物だ。ニクソン政権のウォーターゲート事件やエネル ギー大手エンロンの粉飾決算事件を扱った経験者らを集め、強力なチームを編成して ロシアゲートの捜査任務に着手している。ラディ発言には反発が大きく、 ロシア介入疑惑を調べている下院情報特別委員会の民主党メンバーのトッ プ、シフ議員はツイッターで、「大統領がモラー氏を解任した場合は議会が直ちに独立検察官を設置し、そのポストにモラー氏を任命することにな る」と述べたほどだ。

慌てて報道官スパイサーに否定させたが、トランプ はマッチポンプでモ ラーとFBIをけん制したつもりなのであろう。

こうしてトランプは身内を固めようとしているが、最大の問題は敵に回 してはいけないFBIを敵に回していることだ。前長官のコミーは8日の証言 で「トランプからロシアゲートの捜査中止を求められた」と述べると共に、トランプとの会談のメモを明らかにした。捜査中止命令は大統領による司法妨害であり、ウオーターゲート事件の核心でもあったほどだ。

FBIだけではない中央情報局(CIA)まで敵に回した。前長官ブレナンは23 日に議会で「ロシアが昨年の大統領選挙にあからさまに介入し、非常に強引に米国の選挙に入ってきた」とロシアゲートの実態を明らかにしている。

議会証言はFBIとCIAの前長官が疑惑の存在を明らかにして、“忠犬”に戻ったような司法長官セッションズだけが否定するという構図である。

誰が見ても信用出来るのはFBIとCIAであって、司法長官ではあるまい。こう した捜査当局の資料を基に特別検察官が捜査するのだから、その結果は火を見るより明らかなものとなろう。

今後の展開としては①準レームダック化して来年の中間選挙までは続く②弾劾が早期に成立する③副大統領が大統領の執行不能を宣言する④いつかは不明だがモラーが政権直撃の捜査結果を公表してトランプが窮地に陥るー などが考えられる。

①についてはトランプの支持率が38.6、不支持率が 56.0であることが物語るように、下院が中間選挙で民主党優位に逆転する可能性が高い。従って過半数で弾劾を発議出来る可能性があるが、上院の3分の2の壁があり、共和党が弾劾に回らなければ困難だ。ニクソンの場合は民主・共和両党の合意で弾劾が可能となり、弾劾を待たずにニクソンは辞任している。そうした事態に発展するかどうかで決まる。従って②の弾劾早期成立は困難だろう。③の副大統領による解任も、トランプが精神的な異常を来すなどよほどのことがないと難しい。 アメリカ合衆国憲法修正第25条は副大統領が大統領の執行不能を宣言できるとしているが、まだ発動されたことはない。従ってトランプの低空飛行は継続するが、ホワイトハウスの記者団を中心とするマスコミとトランプの対立は衰えることなく 長丁場化して継続する方向だ。>(以上)

堀田氏の記事にありますように、利益相反問題が起きているならば、トランプは直ぐにでも解消すべきと思っています。日本には「李下に冠を正さず」、「瓜田に履を納れず」という諺もあります。トランプに誰か教えてやった方が良いでしょう。「強いアメリカの復活」を目指して大統領にまで上り詰めたのですから、こんなことで大統領を棒に振ることはないと思います。既に財は為したのだから、当初の目標実現に邁進して貰いたい。

大統領の免責特権の話を読むと、ビル・クリントンの女好きが浮き彫りになります。名前が出ているモニカ・ルインスキーやポーラ・ジョーンズは氷山の一角で、手を出したのはあまた居ると思われます。ケネデイも似たり寄ったり、FDRも、です。全部民主党です。まあ、日本の買春事務次官よりはスマートですが。金か権力の違いはあります。

FBIやCIAの言っていることが正しいかどうか分かりません。FBIのフーバー長官時代やCIAのダーテイ工作を思い浮かべればすぐに理解できるでしょう。彼らの発言を与件として考えるのではなく、証拠による事実の積み重ねで判断すべきでは。日本の森友・加計問題と同じく印象操作でマスメデイアが政権を貶める構図に似ています。日米共にメデイアは左翼かリベラルだから、でっち上げを恥じずにできるのでしょう。米国はそれに、国際金融資本が重なりますので、一層大変です。FBIやCIAにはオバマ民主党の残党が巣食っており、彼らがいろいろリークして、トランプを倒そうとしているのでしょうけど。そもそも大統領選にロシア介入疑惑があったとするならば、オバマは大統領として防御もできたはずです。ヒラリーが勝つことを疑っていなかったから、油断したのでしょう。負けてから蒸し返すのは卑怯者のやることです。

ただ予算教書の中で、中国に対抗するため軍事力強化には大賛成ですが、研究開発投資を減らすと全世界の研究者に対し米国の魅力を半減させるのではと危惧します。強いアメリカの復活は出来なくなるのでは。

伊藤氏の国連信仰は多数の日本人と同じです。リベラルな人間としか付き合ってないから、見えないのでしょう。国連で今まで何が起きて来たかを良く見た方が良い。P5の仕組みがうまく行っているのか?戦争のない世界が実現できているのか?国連の役人の腐敗ぶりを知っているのか?人権理事会の構成国を知っているのか?(一番人権弾圧している中国が理事国に入っています。ブラックジョークとしか言いようがない。だから中国は人権理事会を利用して、日本を貶めるプロパガンダを続ける訳です)。昨日の小生のブログに書きましたように、長谷川慶太郎氏の意見、「日本はG7メンバ-+NATOメンバーになる。機能不全の国連ではなく、新たな国際的な枠組みとしてそれを活用していけば良い」と考えます。NATOに入れば、当然相互扶助で、加盟国が侵攻されれば、当然出動義務は発生します。ただ、中国の日本侵攻にとって大きな抑止力となります。リスクよりメリットの方が大きいでしょう。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/12/index3.html

http://www.sankei.com/world/news/151007/wor1510070035-n1.html

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_003868.html

堀田記事

ドナルド・トランプ米大統領。ホワイトハウスで(2017年6月6日撮影)〔AFPBB News

過去1週間でドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)が立て続けに提訴されている。

大統領を有罪にすることは可能なのか。今後の見通しと、5月15日に当欄で論じた弾劾の可能性(「トランプ大統領が弾劾される可能性は50%」)についても改めて述べていきたい。

まず提訴について記したい。

1つ目は米首都ワシントンとメリーランド州の両司法長官が12日に起こしたものだ。

すべての事業を息子に引き継いだと言うが・・・

トランプは昨年9月、ホワイトハウス近くに「トランプ・インターナショナル・ホテル」を開業。もともとはオールドポスト・オフィスという商業施設で、トランプがホテルに改装した建物である。1泊5万円超の高級ホテルだ。

大統領就任前、トランプは数百に及ぶ事業のすべてを息子2人に引き継ぎ、同ホテルの利益は国庫に納めると述べた。

だが両長官は、トランプがホテル事業などで依然として報酬を得ているばかりか、外国政府から多額の利益を上げていると指摘。サウジアラビア政府などはすでに同ホテルで数十万ドルを使途したという。

提訴の柱になっているのは「報酬条項(第1章第9条第8項)」という憲法のくだりである。大統領に限らず、連邦職員は連邦議会の同意なしに外国から「贈与、支払い、利益」を受けてはいけないというルールがある。

ただ1回20ドル(約2200円)までであれば許可される。手土産の範疇である。トランプは息子に任せたと言ったが、ホテル事業などで、いまだに利益を得ているというのだ。

もう1つの訴訟も「報酬条項」の違反である。ただ原告は連邦上下両院の約200議員で、民主党が議員団を結成して連名でトランプに反旗を翻した。

トランプが憲法違反を犯しているという主張は、状況を冷静に考察する限り、トランプを政権の座から引きずり下ろしたいという野党の願望の具現化である。筆者としては、トランプを政権の座から引きずり下ろすことに異論はないが、現実はそう簡単ではない。

メディアはあまり論じていないが、米大統領には免責特権がある。大統領が持つ広範な特権で、民間の訴訟から免れられるのだ。

理由は、大統領は日々の職責の遂行を最優先にすべきであり、個人の訴訟に時間と労力を割くべきではないとの判断である。そのため、今回のような司法長官や連邦議員による提訴であっても、裁判所(ここでは地方裁判所)は訴訟を却下できる。

訴訟となれば膨大な時間が取られる。トランプの顧問弁護士が実務をするとはいえ、トランプも証言をしたり、出廷したりする必要が生じてくる。仮に裁判所が提訴を受理したとしても、トランプの大統領任期中は審理を止め、任期を終えてから裁判に入ることも考えられる。

裁判で負けたビル・クリントン元大統領

ただ例外もある。ビル・クリントン元大統領のセクハラ訴訟である。

クリントン氏と言えばモニカ・ルインスキーさんとの情事が思い起こされるが、実はポーラ・ジョーンズさんというアーカンソー州職員からセクハラ訴訟を起こされていた。

訴えが起こされたのは、クリントン氏が大統領に就任した翌1994年。懲罰的損害賠償として85万ドル(約9350万円)の支払いを求められた。

だがアーカンソー州地裁は大統領特権を重視し、ジョーンズさんの訴えを却下。しかし、ジョーンズさんはすぐに控訴する。

連邦控訴裁では、大統領であっても法の下では平等であるとの理念から、審理が継続されることになった。つまり大統領特権はすべての訴訟で有効ではないということだ。

クリントン氏は最高裁に上訴申請をし、裁判は長引く。最終的には1998年になってクリントン氏側が折れて、ジョーンズさんに和解金として85万ドルを支払うことになった。結果的には大統領の負けである。

トランプ訴訟の今後の流れとしては、弁護団が裁判所に訴訟の却下を求めてくるはずだ。その時に裁判所がどう判断するか。却下するのか、審理を継続させるか、判事の判断に委ねられている。

それよりも、今後トランプがより大きな危機に見舞われると思われるのが、ロシア政府による昨年の大統領選へのサイバー攻撃とトランプ陣営の関係である。いわゆるロシアゲートだ。

6月8日の連邦上院情報特別委員会の公聴会で、実はジェームズ・コミー前FBI(連邦捜査局)長官が、今後のトランプ政権を揺るがしかねない発言をしている。ロシア政府による選挙介入があったと断言したのである。その場面の質疑応答を抜粋したい。

上院情報特別委員会での証言

リチャード・バー上院議員「(ロシアからの)サイバー攻撃に最初に気づいたのはいつですか」

コミー氏「最初のサイバー攻撃・・・、ロシア政府が主導した最初のサイバー攻撃は、覚えている限りでは2015年夏の終わりでした」

バー議員「民主党全国委員会(DNC)と民主党議会選挙対策委員会(DCCC)が標的でしたか」

コミー氏「その通りです。政府関係組織だけでなく、政府以外の団体も標的にされていました」

バー議員「どれくらいの個人・組織・団体が標的にされていたのですか」

コミー氏「たぶん数百です。1000以上かもしれません」

(中略)

バー議員「ロシア政府が州政府の有権者登録ファイルにサイバー攻撃をしかけたことに、疑いはありますか」

コミー氏「ないです」

バー議員「ロシア政府高官がサイバー攻撃を熟知していたことに疑いはありますか」

コミー氏「ないです」

この証言から分かることは、ロシア政府が昨年の大統領選に大々的に関与していたという事実だ。コミー氏は疑いようがないと明言した。

ただ、同氏はロシア政府とトランプ陣営がどう関わっていたかについての言及は避けた。それはロバート・モラー元FBIが特別検察官として現在捜査を進めている最中だからである。

ロシア政府が大統領選に介入していた件については、前CIA(中央情報局)長官のジョン・ブレナン氏も5月23日、連邦下院の公聴会で次のように証言している。

諜報機関のトップがロシアによる関与を断言

「ロシア政府は大統領選にあからさまに介入していました。さらにトランプ陣営に関わる複数の米国人との間にやりとりがありました。その証拠に遭遇しています」

すでに辞めた2人の諜報機関のトップがロシア政府による大統領選関与を断言したのだ。しかもウソをつけば偽証罪に問われる公聴会という場においてである。

しかし、現職のジェフ・セッションズ司法長官は13日の公聴会で、言葉を濁している。トランプはコミー長官の証言の直後、「我々は包囲された」と発言したが、顔には余裕の表情を浮かべていたところが不吉でさえある。

それでは前出の「報酬条項」違反によって、トランプは大統領職を追われるだろうか。可能性は低い。それよりも、ムラー氏によって少しずつロシア政府による選挙介入の実態が明らかにされ、トランプ陣営の不正な動きが立証されれば、弾劾裁判に進む可能性はある。

都議会と同じで、トランプの支持率がさらに低下して求心力を失い、共和党議員が来年11月の中間選挙で敗北が予想されるような政局になれば、「トランプ離れ」が始まるはずだ。ましてや米国には党議拘束がないため、投票時に党の決定に従う必要はない。

1か月前に弾劾の可能性を50%と述べたが、筆者の見立ては現在も変わっていない。

伊藤記事

ドナルド・トランプ大統領(2017年5月10日撮影)〔AFPBB News

愚かさとは何か、考えて見ましょう。

例えば、家を新築して災害保険に加入したとしましょう。そして1年経った。特段何事もなく、翌年の家計を家族会議で相談しているとします。

「いろいろ出物もあったから、がま口を引き締めて考えたい。ついては、火事とかは火の元を気をつけたりすれば起きないダロウから、保険加入はやめることにしよう。意味がない」

そこで無保険の状態になったと思ったら、突然地震が襲ってきて、せっかくの新居がガタガタに。もちろん保険はなく・・・。

実は、こんな状態を引き起こそうとしているのが、2018年米国予算教書(Budget Message of the President 2017.10-2018.9)で、5月末にその概要が発表されてから様々な波紋を投げかけているのは周知のとおりでしょう。

一言で言えば、末期的な企業経営における赤字削減のような性格が強い。

10年で3兆6000億ドルの歳出削減に取り組み、貧困層保護や開発援助、環境対策、基礎科学研究などの予算が大幅に削られる一方、軍事費などは大幅増額を提示しています。

例えばODA(政府開発援助)。国際開発庁を含む国務省予算は28%の大幅減、約375億ドルに対して、国防予算は約10%、540億ドル増額して6030億ドル、日本円にして約68兆円規模。

国防、治安維持、交通、退役軍人対策費などが各々10%程度増額される以外は、軒並み大幅の減額が提案されています。

具体的に項目を列挙してみると、教育研究開発(Education)、通商産業(Commerce)、労働対策(Labor)、都市住環境(Uran Development)、ヘルスケア(Health and Human Service)、農業(Agriculture)、環境(Environment Protection)・・・といった項目は軒並み10~30%近く削減。

当然ながら民主・共和両党から、大きな反発が出ており、個別の項目については議会をそのとおりに通過するとは限りませんが、大枠、このような方向性にあることは間違いないでしょう。

ここで3歩下がって改めて考えて見たいのです。この「損切り予算案」、トランプ“恐書”は何がいけないのか?

「かもしれない」運転から「だろう」運転へ

簡単に言えば、米国という国が長続きしなさそうである、国を滅ぼすリスク、つまり亡国の現実的な可能性が低くない。持続的(Sustainable)でないというのが、国際社会が現在の米国を憂慮する、端的なポイントと言っていいと私は思います。

軍事・警察・退役者の厚遇はしっかり守る。これをもって「強い米国を取り戻す」という、見るからにシンプルなセールスポイントが増額されますが、以下やや誇張して列挙すると、

教育・・・ 最低限の読み書きができればよい → 未知のリスク対処力低下 研究・・・ いまある程度の基礎で十分    → 未踏のイノベーション不可能 通商・・・ そこそこ回っていればいいでしょ → 流通・経済のリスク野放し

労働・・・ そんなものは経営の埒外     → ブラック企業ならぬ黒色国家化 健康・・・ ほっといてもどうにかなるよ   → 中流層以下で生命に影響 農業・・・ 適当に生えてくりゃいいでしょ  → 国際バランスの視野など全欠如

環境・・・ 湯も水も酸素も森も海も使い放題 → 高度成長期並みの環境破壊も平気

という、およそ人類が地球環境の中で長期持続的に発展存続しそうな重要ポイントを軒並み軽視、ないし無視、もっと言えば愚弄~侮辱するレベルのものだと憤る人も少なくありません。

よく分からないけど、素人目でちょっと見て、大丈夫そうだ、というところは、軒並みケアを外して「無駄を省いていい経営だ・・・」などと悦に入っている、二世三世のバカ社長、もとい、若社長のような了見を見るのは、決して少数ではないでしょう。

車の免許の書き換えなどで「だろう」運転から「かもしれない」運転へ、という標語を目や耳にされた方は少なくないと思います。

「見通しの悪い交差点に進入するけれど、どうせ誰もいないだろう」

ではなく

「見通しの悪い交差点の四角では、その先に高齢者が立っているかもしれないし、子供がボール遊びをしているかもしれない」

という、見えないリスクの可能性を予測し、未然に安全を確保しながらハンドルを握りましょう、というのがその意味で。「だろう」型のリスク軽視では、とてもではありませんが「想定の範囲外」のハザードが襲ってきたとき、対処のしようがありません。

泥棒がやって来てから縄を綯っていたのでは遅いのです。未然に、危機がある「かもしれない」と慎重果敢に事前の対策を打ちながら、5年10年とできる限りリスクを回避して、もし危ない兆候があれば早期に発見、対策を打って、長くサステイナブルな国際社会を作っていきましょう。

そのような機運が高まっていた最中、悪い冗談のように誕生してしまったのがドナルド・トランプ政権、いや、トラップ政権と呼ぶのがふさわしいかもしれません。

先日のパリ協定離脱は、

「地球温暖化なんて本当に起きるか分からないし(実際起きていますが)環境科学なんて都合の悪いデータが出てくるようなら、もみ消してしまえばよい(ポスト・トゥルース)。中国を筆頭に各国は何の責任も取っていないじゃないか。米国だけに負担を求めるなんて不平等だ(米国は1人当たりの環境負荷が世界ダントツ1位ですが)」

という、幼稚園児並みのやりたい放題、結局、大人の賢慮を持った各国が、現実的な対策を協議しているわけです。

「もしかしたら、本当にバカなのかもしれない」 各国の静かなどよめき

日本では国際社会のルールや国際機関の位置づけがまともに理解されていないようです。例えば、国連の特別報告者(special rapporteur)とは国際連合人権理事会から任命され、特定の国の人権問題状況について調査や報告、場合により監視や勧告を行う無給の専門家で「独立専門家(independent expert)」とも呼ばれ、人権委員会はもとより国連事務総長とも各国の思惑にも左右されず、また利害による偏向、お友達への利益供与などがないよう。職務に関して金銭的報酬を受けません。

この1週間ほどだけでも、デイビッド・ケイ(David Kaye)カリフォルニア大学アーバイン校教授(国際人権法、国際人道法)、ジョセフ・キャナタッチ(Joseph Cannataci)マルタ大学教授(IT法)など特別報告者の名前が、基本的な国際常識とかけ離れた形の日本語で取り沙汰されるのを目にしましたので、一応念のため記しておきます。

例えば、国連から委嘱を受けて、東京大学のI先生が何らかのアクションを取ったとしましょう。例えば講演を委嘱されるとして、交通費や宿泊、日当相当の費用は用意、負担があります。しかし講演そのものは無報酬で行います。

「なんでそんなこと、タダでやるの?」

と理解されないことも少なくありませんが、それが国際知識人のオブリージュ、道義的責任ということで、この20年来、私が国内外で手がけてきた学術外交のすべては無報酬ないし自腹を切って行う場合も少なくありません。

利害関係がないから公正とみなされ、信頼が確かなものとなりパートナーシップが永続します。給料や基本的な諸費用は国際機関や大学が持ちますが、動き自体は「公務」に編入され、エキストラの報酬は発生しません。

学会の会長や役員、大会の主催、論文誌の査読や指導添削・・・少なくとも私が関わるこうしたものについてはすべて手弁当で基本、俸給は出ません。

もし利害で手がけるなら、それで査読結果が左右されたりするリスクを免れないでしょう。そういう善意の公正性で成立している社会、何でも銭勘定というものの見方からは、決して理解され得ないと思います。しかし、そういう高い志があって、成立している水準があります。

これは、今まさに問題になっている、米国のロシアゲート調査を考えると分かりやすいでしょう。

2017年5月17日、米国司法省はジェームズ・コミー氏の罷免とロシア・ゲート疑惑についてロバート・モラー(Robert Swan Mueller II )(1944-) 前FBI長官(2001-2013)を特別捜査官(special counsel)に任命しました。

特別捜査官は別名特別検察官(special prosecutor)あるいは独立法曹捜査官(independent counsel)とも呼ばれ、とりわけ在職中の大統領(sitting President)ないし司法長官(Attorney general)を被疑者とする不正、犯罪、疑惑などの捜査の必要が生じた場合、第三者性を持って公正に検察活動が進むよう、大統領や司法長官と指揮系統的に完全に独立していなければ意味がありません。

私が在職している大学の中で、ある不祥事がありました。その調査の必要が出たとき、ルールでは第三者委員会を立ち上げねばならないのですが、目配せの利く身近なメンバーだけで特別委員会を作り、抹消しようとする試みがありました。

しかし、その試みはあえなく費え、責任を問われる方向に流れていきました。世の中はそのように動いて当然です。独立性のない調査や操作に、公正を期待することなどありません。

寡聞にして、大統領を捜査対象とするモラー特別検察官の俸給がどのように独立性を保障されているのか、詳細を認識していません。

しかし、一国の根幹に関わることで、俸給の多寡がどうこうという話ではなく、ノブレス・オブリージュ、つまり前FBI長官として、FBIの独立性が危機にさらされたという「長官への大統領忠誠の強要疑惑」などを徹底して調査せねばならない、道義的倫理的義務を、社会全体に対してモラー氏は追っていることになります。

ちなみに、国連の「独立調査官」を「あれは国連事務総長とも、加盟国の総意とも無関係に<個人が勝手にやっていること>と、あろうことか政府の極めて責任ある立場にある人がメディアで口走り、国際的な関係者の多くがまず「?」となり、次に「本当に、バカなのではないか」という静かな疑念とどよめきが生まれました。この旬日の動きです。

国連とSDGs・・・團藤思想の今日的展開

国連は2016年1月1日から「SDGs(Sustainable Development GoalS」という持続的発展目標を掲げており、私は故・團藤重光教授の思想と行動を大切に、大学教員としての公務ではこれに関わる問題を扱っています。

次回は東京大学のスタッフとして伊東研のSDGs展開にも触れたいと思いますが。一言で言うとトランプ2018年予算恐書は SDGsを軒並み踏みにじるような予算方針を打ち出しており、国連加盟国全体を敵に回すようなパフォーマンスが断続、パリ協定離脱もその1つとして。皆からあきれられ諦められているというのが実情と思います。

「もしかしたら、本当にバカなのかもしれない」

ちなみに、全くの私信ですが、トランプ大統領が「特別検察官の解任検討か?」という報道をめぐって、海外のある友人から先ほどメールを受け取りました。

申すまでもないことですが、モラー特別検察官の解任を、被疑者であるトランプ大統領が決定することはできません。

ルパンⅢ世が銭形警部を更迭できるわけがない。あまりに当たり前のことです。それがもし分かっていないとしたら、相当に頭のねじが緩んでいる。とてもではないが超大国を統治運営していく判断力があるなどと見なすことはできない。

モラー特別検察官を任命したのはロッド・ローゼンシュタイン司法副長官で、ローゼンシュタイン自身がそうそうにコメントを出しています。

セッションズ司法長官はトランプ大統領から任命されているので、トランプ大統領の捜査には関与しません。長官の自己忌避によって、ロシア・ゲートとFBI独立性疑惑の捜査指揮はローゼンシュタイン副司法長官に一任され、政治任用の埒外に置かれます。

要するに、事務次官が内閣の「政治主導」の不正疑惑と独立して、政権そのものの不正を正すというもので、どこかの国にも制度が必要だった可能性を冷静に思います。

そして、前回詳しく記したとおり、ほかならぬジェームズ・コミー氏自身が、ジョージ・W・ブッシュ政権下で大量破壊兵器情報操作のプレイム・ゲート事件で、ジョン・アシュクロフト司法長官が自己忌避した状態で捜査の総指揮を採った事務次官=副司法長官その人です。

当時のコミー次官は盟友のパトリック・フィッツジェラルド現連邦イリノイ州検事を独立検察官に任命、ブッシュ元大統領もチェイニー元副大統領もさすがにこれを罷免などと口にすることはなく、捜査は粛々と進められました。

「独立検察官」を「解任」検討・・・。

一瞬でもそんなことが脳裏をよぎったとすれば、それは緩み切ったCEO(最高経営責任者)体質でそんな思考しかできない人物が、間違って票を得てしまった不幸としか言いようがありません。

万が一そんな低見識を周囲に漏らすようなことがあれば、その時点で国事の判断能力がないと断定される水準と見切っています。

弁護士のマイク・ペンス政権では、いま大量空席の連邦公職が少しは埋まるだろうか・・・。

通常2月に出る予算教書を、素人が升目だけ埋めるのに余計に3か月かかった、あの枠組みで、本当に国を壊してしまうのだろうか・・・。

国際機関のプロフェッショナルは本気で心配し、持続的な対策を取り始めているのが2017年6月の裏表ない現実と思います。

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『中国「第十九回党大会」は無事に開催できるのか 暗殺を恐れる習近平、開催されてもなお混乱は不可避』(6/14日経ビジネスオンライン 福島香織)について

6/13facebookの記事で面白い写真を見つけました。

日本は数十年かけて中国と言う悪い木を育て、生育すればするほど日本の首にかかっているロープが締め上げ、終いには死に至らしめるというものです。まさしく正鵠を射た図でしょう。レーニンの言った「資本家は自分の首をくくるロープを喜んで売る」というのを彷彿とさせます。悪意を見抜けずに中国に支援の手を伸べて来た愚かな日本。いい加減目を覚まさないと。

中国は三戦(世論戦、心理戦、法律戦)と歴史戦で、世界の中で日本の孤立化を図っています。そのお先棒を担いでいるのが朝日新聞を筆頭とする日本の左翼メデイアです。中国は勝手に国内法を定めて尖閣を領土にしてみたり、スパイの疑いで日本人を逮捕し、国際法との調和も何のそのです。中韓は日本の偏向メデイアの偏向記事を引用し、自国民に日本政府のしていることはおかしいと刷り込む世論戦を展開しています。今の日本人は段々日本メデイアの言うことを信じて来なくなっていますが、敵国の国民を信じさせる道具として使われています。歴史戦でも南京は世界遺産に登録され、日本の官僚の無能さを見せつけてくれました。まあ、買春次官がいるような組織ですから、下も推して知るべしでしょう。恥を知らない連中が、学力だけで官僚になるからです。「愛国心」を何らかの方法で調べ、日本国家に忠誠を誓わせる選抜方法にしないと。また日本はNATOに加盟すれば良い。長谷川慶太郎氏の『世界が再び日本を見倣う日』の中に(P.102)、「G7の中で日本を除く国はすべてNATOに加盟している・・・・欧州と日本は地理的に離れているが、カナダやアメリカも地理的には離れている訳だから、日本がNATOに加盟しても何の問題もない。国連に代わる新しい国際秩序の枠組みは、G7とNATOを中心とした体制になっていく可能性がある。安倍首相のサミット改革は、その流れに沿った非常に戦略的なものだった」とありました。

中国の工作員と思しき富坂聰氏が6/14ZAKZAKに記事を書いています。「中国でうつ病での自殺が増えたのは習の反腐敗のせい」というものです。最後に書いてあります通り、中国人がそんなに簡単に自殺することはありません。それだけ追い込まれていたのでしょう。まあ、自殺の他に殺された人もたくさんいそうですが。ただ富坂氏もこんな陳腐な記事を書くより、福島氏のような、共産党内部で起きている権力闘争を掬い取るような記事を書いてほしいと願っています。まあ、無理でしょうけど。

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170614/soc1706140012-n1.html?ownedref=not%20set_main_newsTop

6/15宮崎正弘氏メルマガに福島香織氏の新刊『米中の危険なゲームが始まった』(ビジネス社)の書評が載りました。参考までに紹介したいと思います。

< あまたある中国関連書物のなかで、群を抜く面白さ、そして卓越した分析力。この本を読まずして現代中国は語れない。それほどに中国の現在の権力状況が手に取るようにわかる内容である。

副題が「赤い帝国 中国崩壊の方程式」とあって、しかしながら中国が大国として生き延びるシナリオのひとつが、トランプという何をしでかすかわからない米国大統領によって、もし、『米中蜜月』がもたらされるとすれば、それこそ日本にとっては恐怖のシナリオになるだろう、という。

 表紙のデザインもまた卓抜である。『ゲーム』というタイトルが示唆するように、これを列強のパワーゲームとたとえ、麻雀の卓を囲む四人はトランプ、習近平、プーチン、そして安倍晋三。トランプはにんまり、プーチンは横目、なぜなら習近平が見せつけるカードが『金正恩』牌だからだ。

安倍首相が脂汗をかく構図となっていて、この漫画は日本で活躍し、米国へ亡命した辣椒がみごとに描いた。

 さて習近平の権力の在りようだが、実態は日本のメディアが分析することとは、まったく異なっている。

 既に『朋友』とされた王岐山は、習近平との共闘関係から大きく距離を置いているため「仲良しクラブ」は事実上、空中分解しているという。曾慶紅はいうまでもなく江沢民の懐刀、国家副主席だった。

 習近平に裏切られた曾慶紅が、静かに、そして陰湿に、だが着実に党内の根回しに動いている。裏切られた怨念が次の復讐への執念を生むわけだ。

 そもそも曾慶紅が党内および長老を根回しをして習近平を総書記に押し上げたのに、いまや恩人を敵視し、曾や江沢民人脈を汚職追放と称して、次々と失脚させたことを忘恩の行為ととらえているわけである。

 しかし、特別驚くに値しない。それが中国の伝統ではないか。

 曾慶紅の復讐戦は任志強事件、郭文貴事件、そして令完成事件に飛び火し、防御策を講じる習近平は江沢民派の金庫番だった肖健華を香港から拉致拘束した。

そういえば、胡錦濤も江沢民も、ときどき公衆の面前に姿を現し、政治的パフォーマンスを演じているという動静が伝わってくる。習への牽制と露骨な嫌がらせである。

 ▲習近平は「ひとりぼっち」。友人も同士も去った

 評者(宮崎)は、本書を通読したあと、なぜか連想したのは小林秀雄の石原慎太郎への助言だった。

 古い話かもしれないが、な昭和四十三年(1968)、石原が参議院全国区から立候補して政治家になるというと「君の周囲に君のために死ねる人は何人いるかね? 君のために死ぬ人間がたくさんいれば、君は政治家として成功するだろう」と予言的な言葉だった。

 三島由紀夫にはともに死ぬ同士があまたいた。しかし石原にはおらず、晩節を汚すことになった。

 習近平には、かれのために死ぬ同士が不在である。

 第十九回大会を無事に乗り切るには、強引な指導力で派閥を糾合する必要があるが、すでに習には、その求心力がない。暴力装置を党内に持たず、したがって習には強い味方がおらず、友達も同士もいない。裸の王様でしかなく、独りぼっちである。王琥寧も栗戦書も劉鶴も、習から距離を置き始めている。

 さらには太子党の、強い兄貴分だった劉源が去り、軍部は習の茶坊主たちの異様出世状況を見て、不満が爆発している。これを抑える政治力は、すでに習近平にはない。

 すると今後の中国はいったいどうなるのか。

 福島さんは、いくつかの蓋然性を提示しているが、なかにはフルシチョフ的失脚。あるいは全党融和を図らざるを得なくなり、李源潮、王洋、胡春華、孫政才ら共青団を大量に政治局常務委員に登用せざるを得なくなると見立てる。

あるいは党の核心なる幻像を自ら誤見しているとするなら、戦争に打って出るしか残るシナリオはないと指摘する。

 フットワークの強さと中国内の情報網を通じて得たフレッシュな情報とに裏打ちされて福島さんの力作、群書圧倒のパワーを醸し出している。>

記事

中国の秋の党大会を前に、中国国内がざわざわし始めている。まず、北京市や広東省の中枢および各省の政法委書記更迭などに代表される習近平人事の動き。そして軍内部に絶えない習近平暗殺およびクーデターの噂。社会で頻発する集団抗議の動き。以前にこのコラムでも紹介したことがある、米国に逃亡した“闇の政商”郭文貴の投じた“王岐山スキャンダル”の余波。権力闘争の行方は夏の北戴河会議(河北省の避暑地で行われる非公式会議)が終わるまで、何とも言えないが、何が注目点であるか、少し早めに大まかに整理しておこうと思う。

指導部人事の変数は三つ

 ニューヨークタイムズ華字版が先日、「第十九回党大会が直面する四大挑戦」と題する興味深い記事を掲載していた。筆者は中国共産党中央党校機関紙「学習時報」の元副編集・審査員で、今はフリーランス学者の鄧聿文。少し紹介したい。

 「今年秋の党大会(十九大)は、権力闘争(人事)、イデオロギー、改革、経済における四つの挑戦に直面する。核心部分は権力領域の挑戦であり、習近平が本当に党の指導者としての権威を備えることができるか否か、それが十九大で決定される新指導部人事で判明する。

 この指導部人事を決定する変数は、三つある。

 まず、習近平の反腐敗キャンペーンが人事をかき回す可能性がある。この反腐敗キャンペーンを評価するか否かは別にして、およそ誰もが腐敗の嫌疑をかけられ得る体制において、党内各派閥は、政敵を引きずり下ろすためにこの反腐敗キャンペーンの口実を利用する。党大会までの今後数カ月の間に党ハイレベルでどのような腐敗事件が暴露されたとしても、決して不思議ではない。

 二つ目の変数として王岐山が留任するか否か。これは一つの核心問題だ。7月で69歳の誕生日を迎える王岐山が、十九大で引退せず指導部に留任することは、すなわち従来の共産党秩序である政治局常務委員の年齢制限の慣例を破ることになる(この慣例破りが前例となって、習近平三期目続投の理由になる可能性がある)。

 三つ目の変数は、胡春華と孫政才という63年生まれの若き二人の政治ホープが政治局常務委員会(指導部)入りするか否か。二人は胡錦涛時代に育て上げられた第五世代指導者であり、もし彼らが指導部入りすれば、習近平の権力を牽制することになる。表面上、十九大が円満に成功し、党内の団結が喧伝され、勝利が宣言されても、人事がどうなるかによって、意味は全く変わってくる、というわけだ」

指導思想と社会の整合性が問われる

 「イデオロギーに関していえば、十九大で、指導思想およびイデオロギーと中国社会の整合性が問われることになる。中国共産党の執政が大衆の支持を得るかどうか、党と社会が共通の価値観を持ち得るかどうか。目下の中国は、右と左に分裂しており、今後その亀裂が拡大するのか、縮小するのか、十九大の指導思想によって決まってくる。

 習近平の“指導思想”を簡単に言えば、“中国の夢”と“四つの全面(ややゆとりある社会の全面的構築、経済などの改革の全面的な深化、法による国家管理の全面的な進展、厳格な党規に沿った党内の全面的な管理)”だ。これが指導思想として党章党規に書き入れられることになると見られているが、江沢民の“三つの代表”、胡錦涛の“科学的発展観”はいずれも彼らが二期目を終える直前の党章党規に書き込まれ、鄧小平理論に至っては鄧小平引退後に、江沢民によって書き込まれたものだ。つまり、習近平は一期総書記を務めただけで自分の思想を党章党規に書き入れようとしている。

 これは習近平の権力がそれだけ強いことを反映しているとも言えるが、問題は党章党規に自分の指導思想を書き入れたとして、大衆がそれに服するか、社会の支持を得られるか、である。

 共産党がいかに己の路線に自信を持ち、制度に自信を持ち、理論に自信を持ち、文化に自信を持っていたとしても、どれほどの説得力があるのか。習近平の指導思想が、中国共産党の硬直した政治観を維持したままであれば、大衆から支持されることはなく、社会の亀裂は深まる一方、ということになる。

 さらに全面的改革の問題。三中全会コミュニケで提示された全面的改革は実際のところ全く実施されていない。十九大以降、改革は再始動するのか。この場合、改革は経済だけではだめだ。社会改革、司法改革、行政改革、政治改革の全面改革が必要で、これが遅れれば遅れるほど、大衆の改革に対する期待は薄れ、それは革命の圧力を大きくする」

低成長で“革命圧力”が増大

 「最後に経済成長の問題。

 この数年、経済成長は失速しており、高度経済成長から中低度成長に転換している。税金圧力、政府の干渉、国有企業の拡張、不動産高と金融イノベーションが引き起こす経済の空洞化は実業を弱らせ、実体経済に打撃を与え、民営企業の大量倒産を招いている。中国政府は創新(イノベーション)と創業の二つの創を喧伝し、企業税を減免したり、サプライサイドの改革を行うとしたりしているが、今のところ、効果は見えず、その根本原因は真の改革が行われていない、という点だ。

 共産党統治の正当性、合法性はこれまで経済成長によって裏付けられてきた。経済成長が下降し、長期のL字型成長が続けば、大衆は経済成長から発展の利益を受けることができず、政府の財力も制限を受け、大衆に福利をもたらすこともできず、不平等現象は激化する。

 政府に対する不満は増大していく。とすると、十九大後、経済成長が重要な位置を占める。中国共産党が政治改革によって大衆の民主化訴求を恐れるならば、政治改革の代わりに経済改革に力を尽くさねばならない。だが、確かに経済改革にはまだ一定の余地があるが、大衆の政治参与や司法の独立がなければ、党と政府の権力は本当の意味で約束されるものではないし、利益集団が奪った改革や発展の利益のフレームを本当の意味で打破もできないし、経済改革によって現状を突破できるものでもない。

 つまり、経済低成長がもたらす大衆の不満と、全面改革がもたらす民主化訴求とのバランスと選択こそが、十九大の一つの挑戦なのだ」…

 この論文のニュアンスから言えば、習近平政権がこの十九大で人事面を自分の思惑通りに運ぶことはできないし、習近平のイデオロギーは、中国社会の支持を得らえず社会の分裂は深まり、改革も進まず、経済も見込みなし、その結果、中国の“革命”圧力は増大、と言いたいようだ。そして、私もおおむねこの見立てについて同意見だ。

まず、人事の予想はまだ何とも言えないが、少なくとも胡春華を今から失脚させるのは難しいと見られている。胡春華は政治局常務委員会入りし、ポスト習近平の位置に就くだろう。ほかに、汪洋、李源潮が政治局常務委入りする確率が高い。

小粒とイエスマンでは…

 李克強は引退する可能性があるが、年齢的には留任できる。李克強が留任し、孫政才が政治局常務委入りすれば、7人の常務委員のうち5人が胡錦涛が育てた共青団派の官僚政治家、ということになる。習近平派として常務委員入りする可能性が言われているのが、王滬寧、栗戦書だが、2人とも決して習近平に信頼されているわけではない。その逆もしかり。王滬寧は江沢民派出身だし、栗戦書は共青団出身だ。

 王岐山の留任も厳しくなっている。郭文貴の暴露騒ぎは、確実に王岐山と彼が陣頭指揮をとる反腐敗キャンペーンに対する党内および中国社会の世論の逆風となった。そして王岐山自身もかねてから指摘されているように、習近平と信頼関係にはない。

 政治局には“之江新軍”と呼ばれる習近平の浙江省時代の部下らを中心に習近平派閥メンバーが5~9人ほど入るのではないか、と言われているが、うち習近平の経済ブレーンと呼ばれる切れ者の劉鶴は年齢的に一期のみ。最近、習近平が北京市長にねじ込んだ蔡奇や貴州省書記の陳敏爾は、政治家としても官僚としても小粒でとても国家指導者の右腕として期待される能力を次の任期で発揮できるようには見えない。習近平のスピーチライターとして頭角を現す丁薛祥は優秀であるが、政治家としての腹芸はいまいちで、イエスマンと聞く。人事面から見ると、次の任期内に習近平が権力固めをできる状態とは言いがたい。

 しかも三中全会で打ち出された改革の主導権を習近平が李克強から奪ったことで、国有企業改革などは迷走。習近平が声高に打ち出すサプライサイドの構造改革は頓挫している。そもそも、経済の構造改革は党の干渉を減らすことが前提であり、習近平の打ち出す指導イデオロギーは、実質的には共産党による指導・管理強化であり逆行している。つまり、経済や社会が現実に必要としている処方箋と、習近平が打ち出す指導イデオロギーは矛盾している。習近平が指導イデオロギーを変更するか、別のイデオロギーの違う指導者に替わるかしない限り、中国社会の分裂、矛盾が是正されることはない。

かつて趙紫陽の秘書だった鮑彤が最近、面白いことを言っている。十九大の意義とは何か?という質問に対し「目下、十九大の一切を圧倒する中心任務とは、十九大が中国における一切の特殊権利を指導することを維持することだ。このために、目下、十九大が準備されている。十九大が順当に開会すれば、これは一大奇跡であろう。もし順当に開会できなければ、非常の多くのもめごとに見舞われるだろう」という。

 引退したとはいえ党中央の実力者であった鮑彤が十九大の無事開会が一大奇跡だろうと予見する理由は何なのか。彼は他に三つばかりの質問に答えていて、“習近平思想”が党章党規に書き込まれることについては、「自分の名前を党章党規則に書き込むことは、党の伝統であり、疑いのない一種の“造神運動”だ。もし、十九大でこの伝統を放棄することができれば、それは進歩であり、蒙昧との決別であるが、もしこの点を改善することができなければ、“造神”の初心を継続して堅持するということである」と批判的に答え、改革については「改革というのは不満不足があって、ようやく取り掛かれる。しかし、実際は、至るところで現行制度を称賛し、全世界に向けて現行制度をひけらかし、むしろ理想のモデルとして世界に広めて席巻していこうとしている…」としている。

 そして、習近平政権一期目の成果と欠陥は何か、という質問に対しては成果については答えず、「欠陥について言えば、(習近平の父親である習仲勲が提議した)“異なる意見保護法”が未だ実現されていないこと」と答えた。王岐山スキャンダルを暴いた郭文貴を支持する発言もあり、アンチ習近平派である元党中央の知識人・鮑彤が言わんとしていることは、この党内と社会にくすぶる不満が、十九大の開会前にひょっとすると爆発するかもしれない、という懸念ではないか。

暗殺を恐れるあまり、専用機に乗れず

 6月10日夜、上海の繁華街・南京路で久々に1万人を超える抗議集会が開かれ、警察によって強制排除された。表向きの理由は政府による再開発への反対だが、あまりに唐突に起きたデモであったので、背後には十九大に向け政局を見越した扇動者がいるのではないか、という見方もある。この手の大規模な“集団事件”は党大会が近づくにつれ、各地で連続的に起きそうな気配がくすぶっている。

 一方で習近平は自らの暗殺を恐れるあまり、新しい専用機“空軍一号”に搭乗できていない、そうだ。香港メディアなどが習近平カザフスタン訪問代表団に近い消息筋からの情報として報じているところによると、「暗殺とテロの心配があるので、新しく導入した空軍一号の正式利用を見合わせている」という。習近平が総書記になって以来、暗殺未遂に遭遇したのは少なくとも6回、全部党内部によって雇われた人間の犯行だったと言われている。中国共産党保衛部が事前に予見、防止した暗殺計画は16回に上るとも。

 こうしてみると、十九大が「順当に開催されれば一大奇跡」と言われるのは、決して一部のアンチ習近平派の、思い込みやはったり予告と言い切れるものではなさそうである。十九大は無事に開催されるのか。まず、そこが注目点だったりする。そして仮に無事に開催されてもなお、中国内政が安定する見込みも薄いとすれば、本当の山場は十九大後に来る、とも言えるだろう。

【新刊】『米中の危険なゲームが始まった

 トランプと習近平のしくじり合戦が始まり世界は大混乱へ…。秋に党大会を控えた中国が国内外に対してどう動くか。なぜ中国人はトランプを応援していたのか。軍制改革の背景とその結果は? 北朝鮮の暴発と米中の対立、東南アジアへの進出の可能性など、様々な懸念材料が散らばっている、かの国を徹底分析する。  ビジネス社 2017年6月9日刊

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『国会は加計学園問題ばかりでいいのか 国の安全を論戦しようとしない野党』(6/13JBプレス 森清勇)について

本記事を読んで感じますのは、“safety first”というのは企業内で徹底していますが、国の安全の部分では殆ど顧みられなかったのではと思います。企業もBCPは有っても戦争対応のプランは作っていないと思います。企業が音頭を取ってやるべきです。人材優先というのでしたら。国民は他国に安全を任せ、それでずっと事足れりとしてきました。米国が同盟打切りを申し入れて来たらどうするのでしょう?左翼メデイアは大喜びで中国の軍門に下ることを勧めるのでしょうか?チベット、ウイグル、モンゴル族のように粛清、大虐殺されるのに。

学会やメデイアに巣食う左翼は中国や北朝鮮、韓国のような非法治国家の工作機関となり果てています。現実を見ず、空理空論で、真っ当な議論ができない連中です。戦後、憲法改正のチャンスはあったとしても、政権与党の自民党の政治家が手を触れずに来ました。「国民は、自分達と同程度の政府しか持てない」とはよく言われますが、その通りです。国民が太平楽に耽り、一番大事な国の安全を疎かにして来たのですから。“better late than never”です。トランプの要求通りにせめてGDPの2%くらいまで防衛費を上げて、自衛隊の装備と隊員の待遇アップを図らなければ。

国民の念仏平和の呪縛を早く解きませんと。年寄りがGHQの刷り込みにそのまま洗脳されています。若者は新聞やTVの既存媒体から離れ、いろんな情報が取れる手段を有しています。自分の頭で考えています。だから、安倍内閣の支持率も他の年代と比べ、高くなります。5/29朝日新聞デジタルのデータを見て見ますと、若者の指示が一番高いです。

6/11のTBS「サンデーモーニング」によれば、20代の安倍内閣支持率は68%と突出しています。未来を考えない老人は批判するだけで、真剣に物事を考えない反日民進党と同じレベルです。

若者の負託に応え、彼らを守れる国作りを安倍内閣は着々と進めて行ってほしい。憲法改正もその一つです。

記事

北朝鮮国内の非公表の場所で行われた新型地対艦巡航ミサイルの発射実験を撮影したものとして朝鮮中央通信(KCNA)が配信した写真(撮影日不明、2017年6月9日配信)〔AFPBB News

国会は会期末に近づき、街頭では野党に連動した市民グループが喧噪を増している。安保法制を戦争法と喧伝したと同様、テロ等準備罪を共謀罪と詐称して国民に悪い印象を植えつける作戦だ。

その間にも北朝鮮は核実験準備や弾道ミサイルの発射を続けている。日本への脅威は20年も前から顕在化しているのに、国会では日本の安全状況を確認する質疑はほとんどなく、愚にもつかない論戦ばかりだ。

北朝鮮は1993年に国際原子力機関(IAEA)の査察要求を拒否し、核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言する。翌94年に核開発プログラムの凍結を盛り込んだ米朝枠組み合意が成立。

しかし、北朝鮮は合意を無視し、年間50万トンの石油などの支援を受けながら核開発を続け、2005年には核保有を宣言し、2006年には第1回の核実験を強行した。これらに先んじて、1993年にはノドン、98年にテポドンを発射している。

テポドンの第1弾は日本海に、第2弾は日本上空を通過して太平洋に着弾する。日本に与えた影響は大きく、北朝鮮の「脅威」と認識された。閣議は情報収集衛星の装備を決定し、2003年に第1号が打ち上げられた。

国民に見えない段階から「脅威」に対処

そもそも、安全保障や防衛は脅威をもたらしそうな事態を想定し、先行した対策が求められる。特に兵器では10年先20年先の状況を予測し、研究開発を進めることになる。

「危機」が顕在化してから研究・開発に取り組むようでは遅すぎる。ましてや「脅威」が目の前に存在する場合は、即刻対処しなければならない。

政治家の条件に情熱・責任感、そして判断力を上げたのはマックス・ヴェーバー(『職業としての政治』)である。国会の論戦を聞いていて、幾人がこれらの条件を備えているか疑問である。

自衛隊は、近隣国が化学兵器を保有する限りは自ら「使用」する考えはなくても、防護の視点から研究は不可欠であるとした。多くの政党は問題視したが、研究の成果は地下鉄サリン事件で証明された。

情報収集衛星でも同様な状況が再現された。1969年に衆議院は「宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」を行い、全会一致で「宇宙に打ち上げられる物体及びその打上げ用ロケットの開発及び利用は、平和の目的に限る」とした。

この結果、衛星の開発と利用はもっぱら非軍事目的に限られ、偵察衛星は必要性が認識されながらも研究開発すらできなかった。

ただ、1985年に出された「一般的に利用されている機能と同等の衛星であれば(軍事的に)利用することは可能」との政府統一見解を基に陸上幕僚監部では情報収集衛星を研究テーマに挙げ、民間のシンクタンクと企業の協力を得て研究に着手した。

筆者は1986年3月に所掌部に着任して任務を引き継いだ。民間企業などは通信・放送衛星は打ち上げていたが、情報収集衛星の知見は乏しく調査研究に注力する姿勢が見られた。

政府が大規模災害への対応もできる「情報収集衛星」の保有を閣議決定した5年後に、「多目的情報収集衛星」を打ち上げることができたのは、企業などが積み上げてきた調査研究が有効に機能したものと言えよう。

20年前のつけ

1987年にココム違反の東芝機械事件が起きた。冷戦期は共産主義諸国への軍事技術・戦略物資の輸出が規制されていたが、東芝機械はソ連に潜水艦のスクリュー音を小さくする羽根を作る機械を輸出した違反事件である。

ところがソ連の潜水艦だけではなく、「北朝鮮の核とミサイル生産に必要な資材」が、日本から輸出されていたという(安部南牛「核ミサイル開発を助けたのは日本だった…」『正論』2017年6月号所収)。

「国連は北朝鮮への経済制裁に踏み切るかどうか、具体的な検討にまで入っていた。ところが日本政府の動きには、日本の安全保障のため、是が非でも北の核武装を止めるぞ、という主体的な態度が感じられなかった」

「(中略)止めれば、北の政府や朝鮮総連と摩擦を生ずる。それをおそれて政治家も官僚も、事実上黙認してきたのだ。極論すれば、北朝鮮のミサイルや核兵器は、日本政府のこのような無責任な態度、事勿れ主義によって生産されたといってもよい」

これは、1996年4月発刊の長谷川慶太郎氏と佐藤勝巳氏の対談集『北朝鮮崩壊と日本―アジア激変を読む』での佐藤氏の発言である。

北朝鮮が1993年のIAEA査察要求拒否やNPT脱退した時点で、日本が「自国の安全問題」として、米国に任せるのではなく、行動しておれば今日の状況と違ったかもしれない。

言うまでもなく政治家(特に政権党)は、「国家の安全」を念頭に行動しなければならない。国民には政官の動きが分からないが、「日本の安全」を国会の場で追及し、国民が関心を持つように「見える化」を図るのは、質問に立つ政党・議員たち(中でも馴れ合い質問を許さない野党)ではないだろうか。

20年前のことを今とやかく言っても取り返しがつかない。しかし、その後の20年間、そして現在も見紛うことなく「日本の安全」が等閑視、いや無視されていると言った方がいいかもしれない。

優先順位を考えない民進党

学園問題は重要であるが、同時に北朝鮮の核・ミサイル問題が起きている。ことの重要性と優先順位においては「日本の安全」が先ではないだろうか。

今日のアジア、そして日本を取り巻く情勢を見ながら、こんな国会でいいのか、こんなマスコミでいいのかとつくづく思う。6月5日の午前中は衆院決算行政監視委員会、午後は参院の決算委員会であった。

日本の存亡にかかわるといっても大げさでない北朝鮮問題の質疑はわずかで、民進党をはじめとした野党は、相も変わらず大部の時間を加計学園関係に費やしていた。

国際社会は北朝鮮問題で頭を抱えているが、米国の要請を隠れ蓑に、南シナ海や東シナ海で一層の地歩を固めているのが中国である。

米国防総省が6月6日に発表した「中国の軍事情勢に関する年次報告書」では、中国が「尖閣諸島への急襲作戦も念頭に部隊の育成を進めている」との見解を示した。

中国問題は北朝鮮問題の比でないといっても過言ではないが、委員会では中国関係など一言も出ない異常さである。

はっきり言おう。今は国家存亡の危機である。何をやるか分からないと言われる北朝鮮の情勢、そしてその陰で、南シナ海や東シナ海などで着々と地歩を固めている中国には最大限の関心を払わなければならない。

北朝鮮に関しても弾道ミサイル対処だけではない。拉致被害者家族には残された時間があまりない。拉致被害者を取り戻す自主的な算段もそろそろ考慮に入れなければならない段階であろう。

すべてを米国頼りにしていると、「アメリカ・ファースト」で米国では対ICBM対策が進み、米人拉致被害者も取り戻されたが、日本を覆う脅威も拉致被害者も取り残されたままという無残な結果にならないとも限らない。

優先順位を考え、いまやるべきこと、手を打つべきことをやらなければ、悔いを子や孫の代に残すことになる。その点から、5日の衆参両院決算委における論戦は、聞くに堪えないものであった。

蓮舫代表は国民の信を得られない

蓮舫民進党代表は5月25日の記者会見で、台湾籍と日本国籍の二重国籍から日本国籍を選択したとする戸籍謄本を公開する考えがないと改めて強調した。

アナリストの深田萌絵氏は「蓮舫さん、あなたはいったい何者なの!?」(『WiLL』2017年3月号所収)の副タイトルを、「二重国籍どころか、あなたも、あなたの家系も謎だらけです」としており、国籍の疑義を祖母(陳杏村)や父(謝哲信)から問い糾している。

祖母は台湾バナナの輸入割当増大に絡み、フィクサーとして重要な役割を担ったとされる。また、日本軍との癒着も疑われ、漢民族への裏切りとして「漢奸罪」で起訴される。漢奸罪はほとんど死刑になるが、陳杏村氏は無罪放免となる。

無罪になった手立ては1つしかなく、それは「台湾・国民党を実質支配したと言われる秘密結社的な経済互助組合『菁幇(チンパン)』に加盟」していることだと深田氏は言う。

国会図書館で『台湾人士鑑』の原本を確認するが、「不気味にも陳杏村氏の資料(247~250頁)だけが消えてしまっていた」と述べ、「彼女自身が菁幇の諜報員だったと推測しても不思議ではありません」と言う。

父親について、蓮舫氏はインタビューなどで「中国人の父と日本人の母との間に生まれた」「自分の国籍は台湾なんですが、父のいた大陸という…」と語るところからは、「父は中国人」のニュアンスが強い。父の享年も39歳から64歳まで4説があるとされる。

深田氏は「いずれをとっても、ファミリーヒストリーに矛盾」が生じてしまうと言い、「二重国籍どころではありませんでした。調べれば調べるほど、あなた(蓮舫)が『どこの誰なのか』わからなくなる」と語る。

歴とした公人で野党第一党の代表であり、戸籍謄本を開示すべきであろう。開示しないならば、その理由が聞きたい。さもなければ、本人が信を得られないばかりでなく、民進党の支持も伸びず、日本の政治を停滞させるだけである。

おわりに

蓮舫代表は2016年9月11日の記者会見で、「『一つの中国』原則に基づき、台湾は国家ではないので二重国籍ではない」と発言している。

意味をとりかねるが、台湾国籍はなくても、台湾籍(中華民国籍)は持っていたわけで、放棄の手続きはしたが手続きが終了したかどうかは明確でない。

党首討論で安倍晋三首相に「答えない力、逃げる力、ごまかす力はまさに『神ってる』」と迫ったが、政治家(まして民進党代表)として最も明確にすべき国籍問題を明確にしない「神ってる」は、自分自身にこそふさわしいようだ。

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『前FBI長官証言で「嘘つきトランプ」の印象定着 「司法妨害」立証の「決定的な証拠」とはならず』(6/12日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

6/13日経朝刊には米大統領弾劾あり得ぬ 元政権移行チーム幹部に聞く 通商交渉は2国間が軸

トランプ米大統領の政権移行チームの幹部だったアド・マチダ氏は、日本経済新聞の取材に応じ「共和党が上下両院の多数を占めるなかで、大統領の弾劾は到底考えられない」と述べた。通商政策では、2国間交渉を基軸にすると明言。米抜きの環太平洋経済連携協定(TPP)発効は容認するが、米国の復帰はあり得ないと強調した。

アド・マチダ氏

発足からもうすぐ半年になるトランプ政権について「医療保険制度(オバマケア)見直しが遅れているが、他の政策に問題があるとは思えない」と述べた。政権移行チームでは事前に200本の大統領令を用意していたが「そのうち40本が実現した」と評価した。

マチダ氏はトランプ政権1年目の優先課題として、オバマケア見直し、税制改革、インフラ投資の3つに言及。「医療保険改革は早ければ今夏、税制改革は当初より遅れるが年内、インフラ投資は来春には法案が成立するだろう」との見通しを示した。

税制改革については「政権移行チームでは、法人税率の引き下げは、税収中立にこだわらずに当初は財政赤字を出してもやるべきだと考えていた」と指摘。輸入に課税し輸出を優遇する国境調整税については「減税で米国の中低所得層に恩恵を与えたいのに、彼らが買い物をするウォルマートなどの日用品の値段が上がってしまう」と慎重な見方を示した。

日米関係では首脳間の信頼の重要性を強調、現在の安倍晋三首相とトランプ大統領の関係は「中曽根・レーガン、小泉・ブッシュ時代よりも緊密だ」と指摘した。

日米の通商交渉について「米国としては最終的には日米自由貿易協定(FTA)が良いが、日本にとって可能かどうかはわからない」と述べた。

TPPについては「これまでの交渉を無駄にせずに米国抜きで発効してもらって構わない」と米抜きの発効を容認。一方で「米国がTPPに戻るという期待は間違い。米国のスタート地点は2国間だ」と強調した。

先の米中首脳会談については「中国を通貨操作国に認定しない代わりに、中国には北朝鮮に圧力をかけてくれという一つの取引があった」との見方を示した。そのうえで「米中関係が全体のディールでまとまったわけではない。その関係はその成果によって変わり得る」と述べた。

北朝鮮政策については「(シリア空爆が)結果的には北朝鮮への警告になったかもしれない」と指摘した。そのうえで「(オバマ政権のように)レッドライン(越えてはならない一線)を引いて、それを越えた時の対応の覚悟なしに言っても意味がない」と語った。

(聞き手は編集委員 藤井彰夫)>(以上)とありました。議会共和党は大統領弾劾に協力せず、そういう展開にはならないという事です。

アンデイチャン氏のメルマガには、6/9<国家機密を守る義務>、6/3<自由と人権にも節度が必要>という記事を載せています。

http://melma.com/backnumber_53999_6540425/

http://melma.com/backnumber_53999_6537610/

ここに出てきますキャシー・グリフィンによるトランプの生首映像はこれです。趣味が悪いとしか言いようがありません。民主主義社会の中で、意見を異にする人を攻撃するときにこういう方法で貶めるのは下品というか、人間性そのものを疑います。米国人はインデイアン虐殺の時代から進歩していないと思われるでしょう。

米国の左翼リベラルはトランプ叩きに熱中していますが、本来ならクリントン財団を経由して蓄財に励んだヒラリーこそ指弾されるべきでは。国の機密を外国に売り渡していたわけですから。また彼女の取り巻きも不審死しています。調べればおかしいことが必ず出て来るのに。オバマ時代のスカリア判事の不審死、薄熙来の妻・谷開来の愛人の英国人の毒殺とかに近いものが出て来るのでは。

https://www.cnn.co.jp/usa/35078005.html

FBIが正義の見方かというと、エリオット・ネス捜査官時代はそうだったかもしれませんが、昨年の大統領選時、ビルクリントンとFBIを指揮する司法長官リンチ氏が密会をして、ヒラリーのベンガジ事件やメールサーバー事件の調査取りやめの圧力をかけた疑惑があります。政治的圧力に無関係の存在ではないという事です。米国メデイアはこの件を糾弾しましたか?民主党支持のマスメデイアは偏向しています。

http://fanblogs.jp/sweptbutalivewell/archive/300/0

本来、ヒラリーはスノーデンと同じ売国奴です。また、民主党支持者の官僚が簡単に国家機密をリークするのでは、強いアメリカは出来ません。アンデイチャン氏の言うように法律を守ってこその正義ではないかという気がします。日本も朝日新聞の反日左翼が森友や加計問題で、日共や反日民進党と手を組み、政権打倒の為、空想を膨らまして、国会審議を実りのあるものにしないよう頑張っています。左翼はどこの国でも同じ、平気で嘘がつけるという事です。本記事にありますようにliarとして非難されるべきは、日米のマスメデイアではないかという気がします。嘘つきの最たるものは中共、日本では慰安婦や南京をでっち上げた朝日新聞でしょう。読む価値はないし、時間の無駄です。

記事

米上院公聴会での証言に臨み、宣誓するコミー氏(写真:AP/アフロ)

—ジェームズ・コミー米連邦捜査局(FBI)前長官が8日、上院情報特別委員会(リチャード・バー委員長)で行った証言をどうみますか。

高濱:コミー氏がFBI長官を解任されてから初めての議会証言とあって、米国内は朝から騒然としていました。主要テレビ局はみな生中継しました。朝から視聴率はうなぎ上りとなり、さながら「アメフトのスーパーボウル並み」(ロイター通信)になったそうです。

公聴会が開かれた上院オフィス・ビルには傍聴希望者が早朝から詰めかけ、長い列ができました。議事堂近くのパブは公聴会のテレビ中継を観る客でごった返していたそうです。

なぜか。理由は「単純明快」です。

「ロシアゲート」疑惑を捜査中のFBI長官(当時)がドナルド・トランプ大統領によって突然解雇されたのですから、米国民がその長官(しかも人望も実績もある人物)から事情を聴きたくなるのは当然です。

トランプ氏は大統領に就任する前からコミー氏を解任するまでに、面談で3回、電話では6回話をしています。その内容はメディアが断片的に報じていますが、解雇後、コミー氏本人が公けの場で証言するのは初めてです。しかも宣誓証言です。虚偽の証言をすれば起訴されます。

全米に衝撃が走ったのは、そのコミー氏が冒頭で、吐き捨てるようにひと言、言った瞬間でした。「大統領は、私を解雇した理由を『FBIを統率するリーダーシップが欠如しているからだ』と言っている。大統領は嘘をついている。それは単純明快だ(Lies, plain and simple)」

「You lie」(嘘をつく)という表現は米国社会では禁句中の禁句。ことと次第によっては、言われた相手はとびかかってきます(笑)

筆者と一緒にテレビ中継を観ていた米国人ジャーナリストはこう「解説」してくれました。「ののしり合いをしていても相手に向かってLiarとはなかなか言わない。それを1か月前にはFBI長官だった人物が、こともあろうに大統領に向かって言ってのけたんですから」

「トランプ大統領は何事につけ大言壮語する。信ぴょう性のない発言をすることが多々ある。米国民はそういった先入観を抱いている。そうした素地がある中で、天下の前FBI長官から嘘つき呼ばわりされた。ひとつ嘘をつけば、すべてが疑われる。ロシアゲート疑惑の個々の事案の是非はともかくとして、『嘘つきトランプ』のイメージがこれで完全に定着してしまった」

—コミー氏は、トランプ大統領が何について「嘘をついた」と言ったんですか。

高濱:トランプ大統領はコミー氏を解任した理由として「FBIを統率できておらず、同僚や部下たちの信頼を失っている。FBIは混乱状態にある」と発言していました。コミー氏は「それは嘘だ」と反論したのです。そして「私を解任した理由は『ロシアゲート』捜査と無関係ではないと思う」とまで言い切ったのです。

—コミー氏は証言の前日の7日、大統領との面談や電話の内容について克明に記したステートメントを、情報特別委員会を通して公表しました。それに続けて、8日には「嘘つき」発言。トランプ大統領は窮地に立たされたと見ていいのでしょうか。

前FBI長官議会証言の3つのポイント

高濱:現時点で言えることは、大統領の「司法妨害」容疑は深まったものの、この証言だけでは「スモーキングガン」(決定的な証拠のようなもの)とはいえない、ということです。バトンは、上院情報特別委員会から、捜査を続ける特別検察官の手に渡ったと言えそうです。

コミー証言で注目されていたポイントは3つありました。一つ目は、捜査対象になっているマイケル・フリン大統領国家安全保障担当補佐官(当時)に対する捜査を中止するよう、トランプ大統領がコミー長官(当時)に指示あるいは命令したか否か。命じたとすれば「司法妨害(Obstruction of Justice)」の疑いが出てきます。

二つ目は、コミー長官に対し、「自分に対する忠誠」を誓うように強要したか、否か。「忠誠を誓えばFBI長官を続投させる」という意味の発言をすれば、大統領がFBIの独立性を侵害したことになります。

そして三つ目は、FBIによる「ロシアゲート」事件全般についての捜査を中止するよう、トランプ大統領が指示したり、命じたりしたのかどうか。命じたとすれば、明らかな「司法妨害」となります。

捜査中止は「単なる願望」か、あるいは「大統領指示」か

—コミー氏は、3つのポイントについてはどう証言したんですか。

高濱:まず、マイケル・フリン前大統領補佐官に対する捜査について、トランプ大統領が中止命令・指示をしたかしなかったか、です。

コミー氏によると、トランプ大統領は2月12日、大統領執務室に同氏を呼びつけて面談した際に、「フリンはいい奴だ。奴を放っておいて欲しいんだが」(He is a good guy, I hope you can let this go)と言ったといいます。人払いをして、大統領とコミー氏二人だけの面談でした。

トランプ大統領はコミー氏を解任した直後、「コミーは、大統領執務室に録音装置が設置されていないなどと思わんほうがいい」とツィッターに書き込んでいました。つまりすべての会談内容は盗聴されている、と仄めかし、脅したとも受け取られていました。

大統領がコミー氏に本当にそう言ったかどうか。<録音テープを再録すればいい>だけのことです。

コミー氏も証言でこう言っています。「(私の言っていることが真実だということを立証するために)神様!(会話を録音した)テープが存在してほしい」(Lordy*, I hope there are tapes) (*:コミー氏はニューヨーク州ウエストチェスター郡ヨンカー市出身の56歳。Lordyという感嘆詞は東部の白人中産階級特有のもの。「Oh、my God」などのほうが一般的)

もう一つ、問題は「I hope」という表現です。委員会の共和党議員の中には「これは願望であり、指示とか命令ではない」とコミー氏にしつこく食い下がるものもいました。

コミー氏はこれには「指示だと受け止めた」と述べています。

相手は大統領です。密室で大統領から願望を言われれば、『指示』なり『命令』と受け止めても不自然ではありません。『指示』と判断されれば、これは「司法妨害」の可能性が出てきます。

コミー氏は「指示」だと受け止めました。しかし「司法妨害」に当たるか否かについては、「ロバート・モラー特別検察官の判断に任せる以外にない」と明言を避けています。

FBIの独立性を脅かす「忠誠心」強要?

二番目の点、トランプ大統領がFBI長官に「俺に忠誠を誓え」といったかどうかです。

英文法の話みたいになって恐縮ですが、ここでは「I need loyalty」「I expect loyalty」という発言を法的、政治的にどう解釈するかです。「単なる願望」だったのか、あるいは「忠誠を強いた」のか。

この発言は、大統領とコミー氏が1月27日の夜、政界用語でいう「さしの会談」(one-on-one conversation)をした際に大統領の口をついて出ました。

その前段として、大統領はコミー氏のFBI長官続投についての話を持ち出しています。コミー氏によると、同氏は大統領に対して「続投したい」との強い意志をすでに表明しており、大統領もそれを了承することを示唆していました。

それなのに、なぜ、大統領は「忠誠心」を持ち出したのか。

コミー氏はステートメントの中で「恩着せがましさ」(some sort of patronage relationship)を感じたと書いています。つまり、「俺に忠誠を誓えば、続投させてもいいぞ」と謎かけをしたと受け取ったのです。

まさにパワハラです。相手は生殺与奪の権限を持つ大統領です。

しかしコミー氏は少しもひるむことなく、FBIの独立性についてトランプ大統領にレクしたそうです。「FBIや司法省はホワイトハウスとは完全に独立した機関であることが重要なのです。もし、司法省が不利な『問題』が持ち込んだからといって、歴代大統領が司法省をシャットダウンすると決定していたらどうなっていたでしょう。国民の信頼を失い、『問題』はより悪くなるでしょう」

聞く耳は持たぬかのように、トランプ大統領は「I need loyalty. I expect loyalty」と繰り返したそうです。

コミー氏は、「仕えた大統領からこんなことを言われたことは一度もなかった」と証言しています。

大統領とコミー氏との一連のやりとりが果たして「司法妨害」に当たるのかどうか。法曹界でも意見が分かれています。その判断を下すのは、まさに大岡越前守、モラー特別検察官ということになります。

—メディアの反応はどうですか。

高濱:筆者が尊敬している2人のジャーナリストの意見を紹介しておきます。

一人は「ジ・アトランティック」のディビッド・フラム編集長。「コミー証言は、トランプ大統領が捜査を妨害したことを示す『スモーキングガン』(決定的な証拠となるもの)とはならなかった。床には薬きょうが飛び散り、壁には銃弾痕、部屋中に火薬のにおいがプンプンしている。だが、これだけで下院司法委が弾劾手続きをとるとは思えない」

もう一人は「ザ・ニューヨーカー」のジェフリー・トゥービン記者です。「コミーFBI元長官の証言に先立って公表されたステートメントを読んで私が出した結論は一つしかない。トランプ大統領は『司法妨害』を行った。疑いの余地はない。就任以後、次から次へとスキャンダルを撒き散らしてきたトランプ大統領の行動に困惑していたわれわれにとって、コミー証言は吉報と言わざるを得ない」

「新参者トランプ」はワシントンの仕来りに無知だった?

—トランプ大統領を弁護する声はないのですか。

高濱:弁護はしていませんが、同情する声は聞かれます。ホワイトハウス詰め記者として長年健筆を振るってきた、ある米主要メディアのジャーナリストは筆者にこうつぶやきました。

「トランプという男は、大卒の平均的アメリカ人としての常識や知識がないんだ。大学では授業はサボり、勉強なんかしていない。まともな本なんか読んでいない。米憲法、三権分立、司法省やFBIの独立性などまったく知らないんだ」

「不動産を売ったり買ったりのファミリービジネスしか知らない。トップの自分が命じればなんでもできると思っているのだろう。そんな男が突然大統領になってしまった。一連のスキャンダルの根源はそこにあるんだな」

米共和党議会指導部からも同情する声が出ています。共和党ナンバーツーのポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州選出)はこう述べました。「トランプ大統領はワシントン政界では新参者。ワシントンで長年培われてきた司法省、FBIとホワイトハウスとの関係やプロトコル(儀礼、習わし)に疎いのだ。しかし無知ということは(ロシアゲート疑惑での)言い訳にはならない」

大統領副報道官は「嘘つき」発言に猛反発

—今回のコミー証言の、三番目のポイントは16年の大統領選挙に対してロシアが介入したかどうか、ですね。この点についてコミー氏はどう証言したのでしょう。

高濱:コミー氏はロシアの政府、政府関係機関、民間機関によるサイバー攻撃は数年前から始まり、16年には史上最も激しくなったと述べています。しかし、大統領選への介入の詳細については国家機密保護を理由に公開の場での証言を拒否しています。

委員会は、午後に非公開聴聞会を開き、コミー氏はそこで再び証言しました。そこでの証言内容は今後、メディアにリークされるでしょう(笑)

—トランプ大統領はどんな反応を示していますか。

高濱:大統領は8日、ワシントン市内で開いた集会で「われわれは戦い方を熟知しており、決してあきらめない。真実がいずれ打ち勝つ」とげきを飛ばしていました。

コミー証言に対するトランプ陣営の評価はバラバラです。それだけショックを受けているのではないでしょうか。

トランプ大統領の弁護士を務めるマーク・カソウィッツ氏はこう言っています。「コミー氏は、ロシアゲート疑惑に対するFBIの捜査において、大統領は捜査対象になっていないと公けの場で言ってくれた。大統領に対する嫌疑が完全に晴れた」

とは言いつつも、トランプ大統領との会話を記録したメモをコミー氏が第三者と共有した点を問題視して、上院司法委員会や司法省監察総監に申し立てを行う方針だ、といいます。

一方、ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース副報道官(ハッカビー元共和党大統領候補の娘)は、コミー氏がトランプ大統領を「嘘つき呼ばわり」したことについてホワイトハウス詰め記者団から問い詰められ、激しい口調でこう反論しました。「大統領が嘘つきでないことは明々白々だ。はっきり言って、(コミー発言について私にコメントを求めること自体が)侮辱以外のなにものでもない」

またトランプ大統領が執務室に設置したことを仄めかした録音テープの存在について聞かれると、副報道官は「 わたしには考えが及びません」( I have no idea)とぽつりと答えています。

トランプ大統領は9日、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領との首脳会談を終えた後の記者会見でテープの有無を問われ、「将来、いつか話す」と回答を拒否しました。食い下がる記者団に「(ロシアゲート疑惑では)共謀もなければ、(司法)妨害もない。奴(コミー氏)は漏洩犯だ。(トランプ政権は)仕事に戻ってこの偉大な国を動かしたいのだ」ともコメントしています。

バノン首席戦略官、「作戦司令部」司令官に就任

—トランプ陣営はこれからどんな手を打つのでしょう。

高濱:保守系フォックス・ニュースによると、ホワイトハウスは「ロシアゲート」疑惑解明の動きに対処するために弁護士、代理人、調査官で構成する作戦司令部「T-team」を設置しました。そのトップには、「ホワイトハウスのクロムエル」と評されるスティーブ・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問がつくそうです。まさに背水の陣といったところですね。

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『中国卓球女子代表監督、カジノ賭博で職務停止 孔子の子孫で世界三冠、平野美宇への借りは返したが…』(6/9日経ビジネスオンライン 北村豊)について

6/9facebook 『大紀元』より中国の教育の問題点を論述した記事がありました。中国は教育以外にもというか、総ての面で共産党の下位に属さないといけないシステムであり、それが中国国民を不幸にしている面が大いにあります。芸術も司法も、です。自由な思考を妨げる国に未来があるとは思えません。それを唯々諾々受け入れている国民も真剣に考えるべきと思います。他国のことですが、侵略の野心を持っていますので、少しは真面になってほしいとの思いからです。

高考作文表政治忠誠 正常教育未來在哪裡?=大学入学統一試験(大学振り分け)の作文の問題は政治忠誠を問う、正常な教育の将来はどこにある

中國大陸高考(大學入學考試)7日開始,這次共有940萬名考生參加考試。

6月7日,大陸高考拉開帷幕,其中北京高考的作文題硬把人拉回到恢復高考的那一年。英國《金融時報》中文網專欄作家老愚說:“北京今年出此作文題,不過是為了表達自己的政治忠誠。”

今年北京卷的作文題(二選一):請以“說紐帶”為題,寫一篇議論文;以2049年中共建政100年的背景,以“共和國,我為你拍照”為題,寫一篇記敘文。而1977年高考作文的試題是“我在這戰鬥的一年裡”,老愚認為儘管從恢復高考至今已四十年過去了,但是作文充當政治輔導員的角色一直未變。

前媒體人朱欣欣認為,這是中共洗腦的心理暗示,好像中共的統治能延伸到100年,“把假定當作潛在事實,逼迫讓考生接受。這種用政治權力壟斷教育的後果只能是培養聽中共話的奴才,而不是創新型人才”。

旅德著名學者仲維光則提醒大陸的每一個中國人不可小看此題目,因為該作文題背後隱藏着中共歷次政治運動(三反、五反、反右、文革、1989大屠殺、1999年迫害法輪功)的基礎——一切以一黨利益為最高訴求,因為這預示著中共在未來十年,仍舊會採用對抗人類普世價值的統治方法。

老愚介紹,他在1980年和1981年兩次參加高考時,碰到的作文題目還相當中性,“似乎還能考察出一個人相對真實的邏輯和語言水準,它們分別是:‘讀《畫蛋》有感’,‘毀樹容易種樹難’。”

仲維光告訴大紀元記者,這種中性標題披露,80年代中共被迫鬆軟下來,主要是它感到政權被威脅了,做了稍微的退步;但是如今中共仍在加強宣傳,那些曾經的退步全變成假好話,“中共的每一次退或者是進,都是為了鞏固其政權統治”。

再有,網友把同是華人的香港、台灣的作文題做對比。

香港2011年的一道作文題是:“假如大學已錄取了你,並給予一年休學年,你會如何善用?試談談你的構思。”2016年的試題是:試以“熱鬧過後,我卻感到失落。”為首句,續寫這篇文章。台灣2010年的作文考題為:請想像自己是一株躺在海邊的漂流木,以“漂流木的獨白”為題,述說你的遭遇與感想。2013年的題目:每個人心中都有着對遠方的憧憬,也許是個神秘的國度,或是一個人生的目標,請以“遠方”為題,寫一篇文章。

如此,中國正常教育的未來究竟在哪裡?

現在業餘時間教小朋友如何寫作的朱欣欣表示需要從根本上改變教育體制,而改變此體制就需要結束一黨專制,教育乃至社會各行業方可正常發展。他現在教小朋友寫作要以講真話為前提,“但是只能在校外輔導班婉轉地、有限地講。這讓我感到很苦悶”。

另外,朱欣欣認為,要想正常發展教育,還需要恢復社會獨立辦學的權力,國家加大對教育的投資,而不是像現在的中共“壟斷教育行業,又以民間教育促進法裝門面,暗地裡打壓老師的自由教學”。#

【大紀元2017年06月08日訊】(大紀元記者蕭律生採訪報導)

中国大陸での大学入試(大学入学試験)は7日から実施、今回は940万人の受験者が試験に参加。

6月7日、中国の大学入試が始まった。そのうちの北京の大学入試の作文の問題は堅い問題で、人々に大学入試が復活したことを思い出させる一年になる。イギリスの《フィナンシャルタイムズ》の中国語ネットのコラムニスト老愚は「北京の今年の作文の題は、自分の政治への忠誠を表すには」であったと。

今年の北京の作文の題(2問から1問を選択):「“絆”という題で論文を書け」or「2049年の中国共産党の政治100年を背景として、“共和国よ、私はあなたのために写真を撮ります”(=2049年の中共政治がどうなっているかを論述)”と題して、叙述文を書け」というもの。1977年の大学入試での作文の試験問題は“私が戦ってきたこの1年”で、老愚は「大学入試復活してから今年ですでに40年が過ぎたけれども、作文は政治の補導員の役割を担って来ていて変わらない」と考えている。

前にメディアにいた朱欣欣は「これは中国共産党の洗脳の心を暗示し、恰も中国共産党の統治が100年続くことを前提とし、“仮定の話を事実のようにみなすことを受験生が受け入れるように迫るものである。このように政治権力が教育を壟断した結果、中国共産党の話を聴くことしかできない茶坊主を造るだけで、革新型人材を造ることはできない”」と思っている。

ドイツにいる著名な学者の仲維光は「中国大陸にいる中国人はこの作文の問題を小さな問題と看做すのはいけない。というのは、この作文の問題の背後には、中国共産党の時々の政治運動(三反、五反、反右、文革、1989年の大屠殺、1999年の法輪功への迫害)の基礎――党の利益を最高のものとして訴求するため、試験を中国共産党の未来の十年を示すために利用している。依然として人類の普遍的な価値の統治方法に対抗する方法を採っている」と注意した。

老愚は「自分が1980年と1981年に2度大学入試を受けたとき、出た作文の題はまだ政治的に中立なもので、“受験者の真理に迫る論理と表現能力をテストするもので、二問の題が出た。‘《卵を描く》を読んだ感想’、‘樹木を損ねるのは易しいが、樹木を植えるのは難しい’”」と紹介した。

仲維光は大紀元の記者に「この中立的な題を出したのは、80年代の中国共産党は柔軟な対応を迫られ、それが政権に脅威を感じさせ、やや譲歩したため。;でも今の中国共産党は宣伝を強化し、当時譲歩したことも見せかけだけの話となり、“中国共産党の譲歩や前進は、全て政権の統治を強固にするためである”」と教えた。

ネット上では香港と、台湾の作文の題を対比したものがあった。

香港の2011年の作文の題は::“もし大学があなたを入学させ、1年間の休学の猶予を与えたら、あなたはどのようにそれを活用できるか?あなたの構想を話してください。”2016年の試験問題は::“宴の後、却って喪失感がある。”この句の後に、文章を継ぎ足して完成させる。台湾の2010年の作文の試験問題は::自分が海辺に漂う流木になったことを想像し、“流木の独白”と題して、あなたのストーリーと感想を話してください。2013年の題は:人の心の中には遠くに憧れがあり、それは神秘的な国であるかもしれないし、あるいは個人の人生の目標であるかもしれない、“遠方”と題して文章を書いてください。

このように、中国の正常な教育の未来は一体どこにあるのか?

今、余った時間に朱欣欣は子供達に作文を教えているが、基本から教育体制の変革の必要性を示し、これが一党独裁を終らせ、それにより教育や社会において順調な発展ができると。彼は現在子供達に作文を教え、本当の話をするという前提であるが、“校外での補習は婉曲に、制限をもって話すことしかできない。これは私にとって苦しいことである”と。

この他、朱欣欣は「正常に教育が行われていくことを思うと、社会を復活させ、学校経営の権力を独立させる必要がある。国家は教育に対する投資に力を入れ、いまの中国共産党のような “教育業を独占し、また民間教育促進法を隠れ蓑とし、ひそかに先生の教育の自由を圧迫する”ことはしないようにする」と考えている。#【大紀元2017年06月08日】 (大紀元記者の蕭律生のインタビュー記事)>(以上)

本記事は中国卓球女子監督の不祥事ですが、これは中国人が海外へ行けば殆どすることではないかと思います。バクチ好きと言われる国民性ですので。ただ、敗けて払わないのは許されないでしょう。中国国内でそうすれば、ヤクザに殺されると思います。外国だから踏み倒せると思ったのでは。マリーナベイサンズの経営は米国人なので、中国で訴訟を起こしても門前払いになるのを知って香港で提起したと思われます。

http://casino-navi.net/I0000306/&page=1

孔令輝が孔子の末裔というのも怪しいです。何せ偽物大国ですので、家系図だって偽物かも知れません。外貨流出規制が厳しい中国で、債務支払いが可能となったのは、国家の面子を考えたのか、はたまた実力者のコネを使ったのかどちらかでしょう。キチンと前に払っておけば失職することもなかったでしょうに。バクチには寛容ですので。金さえ払っていれば、日本のバドミントンの桃田賢斗選手と田児賢一選手のような厳しい処分は中国ではないでしょう。

記事

中国卓球女子代表監督の職務を停止された孔令輝。写真は2017年アジア選手権のもの(写真:ロイター/アフロ)

4月に中国江蘇省の“無錫市”で開催された「2017年アジア卓球選手権(Asian Table Tennis Championships)無錫大会」で、17歳になったばかりの平野美宇選手は女子シングルスで優勝を果たし、世界を驚かせた。日本の平野美宇(当時世界ランク11位)は17歳の誕生日であった4月14日に行われた女子シングルス準々決勝で、世界ランク1位の“丁寧”を3-2で撃ち破った。これに勢いを得た平野美宇は、4月15日に行われた準決勝で世界ランク2位の“朱雨玲”を3-0で撃破し、4月16日に行われた決勝では世界ランク5位の“陳夢”を11-9、11-8、11-7のスコアで圧勝して優勝を勝ち取ったのだった。

日本選手がアジア卓球選手権で優勝したのは、1996年の小山ちれ<注1>以来21年ぶりの快挙であり、卓球王国を自認する中国にとっては正に屈辱の敗戦だった。中国が誇る世界ランク1位、2位、5位の3選手が弱冠17歳の日本人選手に完敗を喫したのだ。中国人でない第三国の選手がアジア卓球選手権大会で優勝したことを、国際卓球連盟(International Table Tennis Federation, 略称:ITTF)はそのホームページに「平野美宇は中国の独占を打破し、世界を驚かせた」と述べて褒めたたえた。

<注1>中国上海市出身の卓球選手で、中国名:何智麗、1987年世界卓球選手権ニューデリー大会女子シングルス優勝、1989年来日し、1992年に日本国籍取得。

卓球王国を率いる監督が…

試合後のインタビューに答えた中国・卓球女子チーム監督の“孔令輝”は、「平野美宇は試合を支配し、彼女の技術は我々よりも先を行っていた。平野美宇が我々のトップ選手3人を打ち破って3連勝したのは彼女の能力の証明であり、我々は今後彼女の強いところをよく研究しなければならない」と述べて完敗を認めると同時に、「平野美宇は中国卓球界にとって最大の脅威である。以前の福原愛は脅威ではなかったが、“平野是中国最大敵人(平野は中国にとって最大の敵である)”」と言明したのだった。

その中国が宿敵である平野美宇を打ち破ってアジア卓球選手権の意趣返しを行う機会はすぐに到来した。それは5月29日(月)から6月5日(月)まで、ドイツのデュッセルドルフで開催された「2017年世界卓球選手権(2017 World Table Tennis Championships)デュッセルドルフ大会」であった。卓球王国・中国の名誉にかけて平野美宇打倒を標榜して意気揚々とデュッセルドルフへ乗り込んだ中国・卓球女子チームであったが、そこには想像だにしなかった障壁が待ち構えていたのである。

2017年世界卓球選手権デュッセルドルフ大会の開幕日、5月29日付の香港メディアは次のように報じた。

“中国国家乒乓球隊(中国国家卓球チーム)”女子チーム監督の孔令輝は先頃、貸付金の返済を求めるシンガポールの高級ホテル「“濱海湾金沙酒店(Marina Bay Sands)”」(以下「金沙酒店」)により“香港高等法院(高等裁判所)”へ訴えられた。金沙酒店の告訴状によれば、被告の孔令輝は金沙酒店傘下にあるカジノの顧客であり、双方は2015年2月19日付で融資契約を締結し、同日に孔令輝は100万シンガポールドル(SGD)(約8000万円)を借り受けた。そのうちの90万SGDはチップで受け取り、残りの10万SGDは“頂級玩家(Top Player)”<注2>の資格を獲得するための費用であった。ところが、現在に至るまでに孔令輝が返済したのは54.5万SGD(約4360万円)だけで、45.5万SGD(約3640万円)が返済されていない。このため、金沙酒店は孔令輝を香港高等法院へ告訴した。

<注2>“頂級玩家”は金沙酒店のカジノにおけるVIP資格で、10万SGD相当の現金、チップ、小切手などを預託することで獲得できる。

なぜ香港で?

なお、後に判明したところでは、本件の原告は金沙酒店ではなく、金沙酒店の娯楽場を経営するMarina Bay Sands Pte. Ltd.(以下「Marina」)であるという。ところで、ここで疑問なのは、Marinaが本件の訴訟を中国国内の裁判所ではなく、香港の裁判所に提起したのはどうしてかということである。この点について、中国の某弁護士は、「中国の法律では“賭債(ばくちの借金)”を認めておらず、たとえ中国国内で賭博場が訴訟を提起しても、受理されず、融資契約は無効と判断される。このため、金沙酒店は孔令輝が香港に財産を持っていることを知っているか、あるいは、香港で訴訟を起こせば、その影響により孔令輝が残金を返済せざるを得なくなると考えた可能性が高い」と述べている。恐らく、この見解は正しいものと思われるが、とにかく訴訟が提起されたのは香港の裁判所であった。

さて、Marinaが香港高等法院へ孔令輝に対する訴訟を提起したとの情報は、その日のうちにデュッセルドルフにいる孔令輝の許へ届いた。これに肝を冷やしたのは孔令輝だった。同日の夜10時26分、孔令輝は4年間も使っていなかった中国版ツイッターの“微博(Weibo)”を通じて声明を発表した。その内容は以下の通り。

ネットで弁明も、帰国命令

声明:本日、メディアが次々と私がシンガポールのカジノに借金があるとのニュースを報じていますが、ここに関連状況について以下の通り表明します。

(1)2015年2月、私は関連組織部門の同意を得て、“春節放假(旧正月休暇)”の4日間を利用して、父母および親戚・友人を帯同してシンガポールへ旅行に行きました。宿泊したホテルの階下にはカジノがあり、親類・友人が遊びに行ったので、私も傍らで見ていました。この間に私は彼らがチップを賭けるのを手伝って、私の個人情報を残したのです。

(2)本日、メディアがこの事を報じた後、私はまず最初に当時現場にいた親戚・友人に電話を掛けて、あの時何があったかを問いただしたところ、当時誰かとカジノの間に発生した債務のもめ事が未だに終わっておらず、それが私を訴訟に巻き込んだことが判明しました。私はすぐにもカネが足りなかった人に名乗り出てもらい、事実を明らかにさせると同時に、法律の助けを借りて自分を守る権利を保留します。

(3)現在は正に世界卓球選手権の期間中であり、この事件の発生がチームにマイナスの影響を与えるのではないかと不安に思いますが、どうか皆さん信じてください。私と私のチームは力を合わせて一切の妨害を排除し、今回の世界卓球選手権に全力を尽くし、祖国の栄誉を勝ち取るために引き続き努力します。

孔令輝の懸命な弁明にもかかわらず、翌日の5月30日に“中国乒乓球協会(中国卓球協会)”は同協会の公式ホームページに「孔令輝監督の職務一時停止」に関する通知を発表した。その内容は以下の通り。

中国卓球協会はメディアから孔令輝の訴訟に関する状況を知った後、直ちに孔令輝に連絡を取って状況を把握した。本人がメディアの関連報道は事実であると述べていることに基づき、孔令輝の関連行為はすでに国家公務員の管理関連規定と規律要求に甚だしく違反していると考えられる。中国卓球協会は、孔令輝に対して中国卓球女子チーム監督の業務を一時停止し、深く反省して、直ちに帰国の上、さらなる調査と処分を受け入れるよう求める決定を行った。

中国卓球協会は運動員、コーチおよび職員による社会道徳規範に違反するいかなる行為に断固反対する。孔令輝の行為に対してはさらに詳細な調査を行い、関連規定に基づいて厳粛に処分する。また、本件を深刻な警告と教訓として、運動員やコーチに対する教育管理、養成、チームの良好な思想方法と道徳イメージの確立を強化するものである。

中国卓球協会    2017年5月30日

ところで、孔令輝とはいかなる人物なのか。その経歴は以下の通り。

世界三冠、孔子の子孫、問題児

【1】孔令輝は1975年10月に黒龍江省“哈爾濱市(ハルビン市)”で生まれた、今年41歳。6歳で卓球を始めた孔令輝は、1986年に11歳で黒龍江省卓球チームに選出され、1988年に13歳で国家卓球青年チームに選出された。1991年に16歳で国家卓球チームのメンバーに選出された孔令輝は、同年に行われた全国卓球選手権大会で優勝し、国家代表として華々しくデビューした。その後は、1995年の世界卓球選手権で男子シングルス:優勝、同年の卓球ワールドカップで男子シングルス:優勝、2000年のシドニーオリンピックで男子シングルス:優勝を果たし、世界卓球選手権、卓球ワールドカップ、オリンピックの男子シングルスで優勝し、三冠を達成した。こうして中国卓球界に輝かしい記録を残した孔令輝は、2006年に20年間の選手生活から引退した。引退後、孔令輝は中国卓球女子チームのコーチに就任し、2013年からは中国卓球女子チームの監督に就任して現在に至っている。

【2】孔令輝はその姓からも分かるように“孔子”の子孫である。現在生きている孔子の子孫は世界中に300万人以上おり、中国国内には250万人以上いるというが、孔令輝はそのうちの1人である。孔子の家系図である『“孔子世家譜”』は孔子生誕2560周年の2009年に改訂版が完成したが、卓球で世界にその名を轟かせた孔令輝はすでに『孔子世家譜』に掲載されているという。『孔子世家譜』に名前が載っている最も新しい世代は、孔子から見て第83代目であるが、孔子の一族は世代毎に名前の先頭に来る文字が決められていて、第75代目は「祥」、第76代目は「令」、第77代目は「徳」となっている。従い、孔令輝は孔子の第76代目の子孫ということになる。

【3】孔子は「八徳(仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌)」を重んじたが、孔子の第76代目の子孫である孔令輝は、八徳には無関心だったようである。2006年には所有する高級車ポルシェで酒酔い運転してタクシーと衝突したが、国家代表を理由に不問にしてもらった過去を持つし、2011年には酔っぱらってガードマンともめ事を引き起こして裁判沙汰になっている。また、2014年には真夜中に若い女性との“車振(車中の性行為)”をメディアにスクープされている。2016年10月には独断で世界ランク2位の“劉詩雯”を試合出場停止処分にしたことが大きな問題となり、その管理能力に疑問符が打たれた。言ってみれば、孔令輝は中国卓球界における問題児として知られていたのである。

さて、現在、孔令輝が所有する車はポルシェ・ボクスター(Porsche Boxster S)で、その価格は110万元(約1800万円)であるという。社会主義市場経済を建前とする中国で卓球の国家女子チームの監督が、どうしてこのような高級車を所有できるのか疑問だが、孔令輝が裕福であることは間違いのない事実である。今回のMarinaによる香港高等法院への訴訟提起に対して、孔令輝はカジノでは親戚・友人が賭けるのを見ていただけで、手助けはしたものの自身は賭博を行っていないと弁明している。しかし、Marinaとの間で交わした融資契約には孔令輝の名前が明記され、恐らくサインもあるだろうから、孔令輝自身が賭博を行ったことは間違いのない事実だろう。

それならなぜ、孔令輝はMarinaから融資を受けた100万SGDの残金45.5万SGD(約3640万円)を返済しないまま放置したのか。45.5万SGDは人民元では約224万元であるが、孔令輝にとっては返済できない金額ではない。この理由について、中国のネットユーザーは、中国の外貨準備高は2017年5月末時点で3.19兆ドルと2011年12月以来の低水準にあり、2016年末に中国の中央銀行である“中国人民銀行”が個人の年間外貨購入枠を5万米ドルに制限したことが原因ではないかと述べている。但し、真相は分からない。

残金返済も、復帰の道は険し

なお、6月2日付の香港紙「星島日報」によれば、6月1日までに孔令輝は一緒にシンガポールへ旅行した友人と交渉した後、別の友人を通じてMarinaに対して残金に利子と弁護士費用を加えた約50万SGD(約4000万円)を支払ったという。上述した外貨規制をどのようにくぐりぬけて50万SGDもの大金を工面できたのか。とにかく、返済を受けたMarinaは、弁護士を通じて香港高等法院への訴訟を取り下げた模様である。

Marinaは孔令輝に対する訴訟を取り下げたが、だからと言って、孔令輝が中国卓球女子チームの監督に復帰できる可能性は極めて小さいとメディアは報じている。2017年世界卓球選手権ドイツ大会から孔令輝が急きょ帰国したことにより中国卓球女子チームの臨時監督には、ベテランコーチの“李隼”(53歳)が就任した。当初は突然の監督交代に女子チームの選手たちに動揺はあったものの、それが選手たちに危機感と責任感を呼び起こし、宿敵の平野美宇を打ち破ってリベンジを果たし、シングルス、ダブルス共に優勝を獲得したのだった。

最終競技結果は以下の通り。

【女子シングルス】優勝:丁寧、2位:朱雨玲、3位:平野美宇 【女子ダブルス】優勝:丁寧・劉詩雯、2位:“陳夢”・朱雨玲、3位:伊藤美誠・早田ひな

中国のスポーツを統括する“中国国家体育総局”は今回の事件に激怒しているとのことで、今後、孔令輝に対してどのような処罰が下されるか、中国国民はその動向を注視している。

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『プーチン再選に死角? アパート解体に猛反発 次期大統領選で再選を確実にするための政策だったが…』(6/9日経ビジネスオンライン 池田元博)について

昨日に続きロシアに関する記事です。モスクワの旧式アパートの建替えですが、建物の下の土地は、国家が持っているのでしょうか?日本を始め、自由主義国では、8000棟のアパートの土地を国が持っているというのは考えにくいです。共産主義時代の名残でしょうか?等価交換といっても、当然新しくなれば遠隔地の住居になるか、差額を払い込むことになると思います。市か国が財政負担して造るのかも分かりません。

プーチンの人気は凄いです。北朝鮮の金正恩に続く支持率(笑)なのでは。民主主義国家の中ではダントツでしょう。ウクライナのクリミアへのロシアの侵攻は地中海へ出るための軍港としての価値の為と言われています。ブログ「世界史の窓」によれば、ロシアより先にキエフ=ルーシ(キエフ公国)ができ、ロシアはその地方政権だったの見方もあるそうです。

http://www.y-history.net/appendix/wh0601-125.html

プーチンが大統領選に出るのは間違いないでしょう。80数%の支持率を誇っていますので。その後もメドベージェフのような傀儡大統領を立て自分は首相となり、その後また大統領として復帰することを考えているのでは。世界の統治者の中では一番長い任期となります。6年×4期=24年、メド時代も入れれば30年です。翻ってみて、日本は短すぎでは。反日左翼の民進・共産、朝日新聞が籠池・森友という文科省の不祥事をネタに倒閣運動していますが、国民の目は冷めたものです。安倍内閣の支持率は安定していてそれ程の上下動はありません。来年の12月には衆院の4年の任期となります。多分その前に解散、総選挙と同時に憲法改正の国民投票があるのでは。(その前に国会での発議が必要。それで自民党は議論を急がせているのでは。先が読めない石破や船田は反対していますが。石破は総理候補から大きく外れたことになるでしょう)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170610-00000021-pseven-soci

記事

ロシアは来年3月に大統領選を控える。プーチン大統領は依然、自らの去就を明らかにしていないが、国内では出馬し再選されるとの見方が支配的だ。政権も再選戦略を着々と練っているようだが、ここにきて思わぬ死角が出てきた。

モスクワの老朽アパート解体計画の中止を訴える抗議デモが5月、モスクワで開かれた。(写真:AP/アフロ)

国内支持率80%を超えるプーチン大統領

ロシア下院はこのほど、大統領選の投票日に関する修正法案を可決した。当初予定されていた来年3月11日の投票日を1週間遅らせ、3月18日の実施を可能にするものだ。

今のロシアにとって、3月18日は特別な日だ。プーチン大統領が2014年、ウクライナ領クリミア半島のロシア編入を高らかに宣言した日だからだ。当時、ロシア国民の大多数がこの決定に熱狂し大統領の支持率も跳ね上がった。この記念すべき日を大統領選の投票日にすることで、プーチン氏の当選をより確実にしようという狙いだ。

当のプーチン氏はいまだ、次期大統領選に出馬するかしないかの明言を避けているものの、大統領府には「投票率70%、得票率70%」の達成を求めているとされる。仮に次の選挙に出馬し当選すれば、首相時代も含めて実質24年もロシアを率いることになる。長期政権の正統性を内外に誇示するためにも、大統領選での大勝が不可欠なのだろう。

プーチン大統領・モスクワ市長会談が事の発端

プーチン大統領の国内支持率は80%を超え、有力な対抗馬もいない。とはいえ、得票率を高めるにはあの手この手の再選戦略が政権側に不可欠になる。投票日の変更もこうした戦略の一環とみて間違いない。

ところが、ここにきて再選戦略を狂わせかねない社会問題が意外なところから浮上してきた。首都モスクワの老朽アパート解体計画だ。

事の発端は今年2月後半。プーチン大統領がモスクワ市のソビャーニン市長と会談した時のことだ。ソビャーニン氏はかつて大統領府長官を務め、今でも大統領の側近の1人とされている。

市長はモスクワ市が進める様々な計画を大統領に説明するなかで、「モスクワには使い勝手が悪く、老朽化した住居がまだ多く残っている」と指摘。大規模な老朽アパートの解体を進める方針を表明した。

大統領も「モスクワ市民の気持ちと期待は私も分かっている。彼らの期待はこうした(古い)住宅が取り払われ、その場に新しい住居が建設されることだ」と言明。老朽アパートの解体は「極めて正しい決断だ」と称賛したのだ。

「フルシチョフ」と呼ばれる老朽化アパート

かつてのソ連では1950~60年代、第2次世界大戦後の荒廃から初期の工業化に向かう過程で、都市部を中心に安普請の低層アパートの建設ラッシュが続いた。国家財政に窮するなか、住民の生活を安定させるとともに、より多くの労働者を確保するための住居が必要だったからだ。

当時のアパートは総じて5階建てで、エレベーターはない。安普請とあって天井も低く、壁も薄い。使い勝手は悪く、隣人の話し声も筒抜けで、スターリン時代に建てられた荘厳で頑丈なアパートとの質的な差異は大きい。

こうしたアパートの建設を主導したのが、当時の指導者のフルシチョフだった。このため、ロシアでは「フルシチョフ」あるいは「5階建て」と呼ばれている。その数はモスクワだけでおよそ1万棟に上る。フルシチョフ自身、こうしたアパートの寿命はせいぜい25年間だと語っていたという。

しかし、実際はソ連崩壊後も存続し、1999年になってようやく、当時のルシコフ・モスクワ市長が一部アパートの解体を始めた。その際に解体の対象としたアパートは1722棟、総面積で630万平方メートル。11年間で解体を終える予定だった。ただ、いまだに75棟が残っており、ソビャーニン市長は「2018年までに完了したい」としている。

解体対象は最大で約8000棟、約160万人もの住民が対象に

今回、ソビャーニン市長が打ち出した新たな構想は、前事業を大幅に上回るものだ。解体対象は最大で約8000棟、総面積にして2500万平方メートル前後に及ぶ。約160万人の住民が対象になるという。モスクワに建つアパートのおよそ10分の1を改築する壮大な計画で、すべて完了するには20~30年かかると専門家は予測する。

老朽アパートの中にはもはや改修不能で、建物の一部が損壊していたり、漏水や漏電の危険があったりする所も少なくない。とくに「フルシチョフ」アパートに対してはもともと、国民の評判も極めて悪い。

老朽アパート群を行政府が主導して大規模刷新すると発表すれば国民の多くは歓迎し、次期大統領選に向けたプーチン氏への追い風にもなるはずだ――。プーチン政権とソビャーニン市長がそう考えたとしても不思議ではない。

市長がわざわざプーチン大統領との会談の場で老朽アパートの解体構想を表明し、大統領が積極的に支持したことは、こうした思惑を裏付けるなによりの証左だろう。実際、この会談を受けてロシア下院もさっそく、「リノベーション(更新)」法案の立案に着手した。

批判の矛先は市長のみならず、大統領にも

ところが事態は政権の思惑とは裏腹に、意外な方向に展開した。解体の対象となる可能性の高いアパートの住民の一部が街頭に出て毎週末、この計画に反対するデモや集会を始めるようになったのだ。批判の矛先は市長のみならず、大統領にも向いている。

反対する理由は様々だ。まずは生活環境の変化への不安。いくら老朽化したとはいえ、自分の住居は自分のお金で改修を重ねている場合がほとんどだ。しかも立地的には中心部で地下鉄駅から近いところが多く、通勤や通学の利便性を考えれば、長年住み慣れた住居を明け渡したくない。

不動産取引への懸念もある。モスクワ市は「同一地域での等価交換」を原則に、別の地域への移転や金銭取引など様々な案も打ち出しているが、結果的に中心部から遠い郊外の住居を押しつけられたり、不当に安い価格で売却を迫られたりして損を被るのではないかとの疑心が広がっている。

とくに下院が検討中のリノベーション法案には、解体地域の住民の所有権を一時的に制限するような内容が含まれたため、これが住民の不安や反発を増幅させている面もある。

予想外の抗議デモに慌てたプーチン政権

さらに、プーチン政権とその取り巻きが自らの利権獲得に利用しようとしているのではないかとの疑念もある。モスクワ市は解体した場所に近代的な高層アパートを新築する予定だが、全体の計画の青写真はみえていない。このため最終的に政権に近い実業家が解体・建設事業を受注し、そこから生じる巨額の不動産利権を自らと政権幹部に還流させるとの見立てだ。

予想外の抗議デモに、プーチン政権は慌てた。大統領は4月末の政府会議で自らこの問題を取り上げ、「住民の権利、とくに所有権を侵害しないように進めなければならない」と強調。政府に下院との調整を求めるとともに、リノベーション法案に市民の権利を侵害するような条項があれば「私は決して署名しない」と断言した。

この大統領発言を受け、下院は法案の修正に動きだした。モスクワ市も移転先のモデルとなる最新アパートの概観や内装などの写真集を新たにネットで公開。快適な住まい、公園や街路樹が豊かな街づくり、地下駐車場の整備などをアピールするととともに、リビングや浴室等で使用する部材まで詳細に紹介し、住民の説得に躍起となっている。

一歩間違えれば、政権批判の大規模デモに発展するかも

政府系の世論調査会社「全ロシア世論調査センター」が4月末に実施した調査では、解体対象となる住民の75%が解体計画に賛成している。毎週末にモスクワで開かれる反対デモの参加者も、多くて数万人程度だ。

それにもかかわらず政権側が深刻に受け止めているのは、老朽アパートの解体問題が対象住民のみならずモスクワ市民全体の大きな関心事になっており、下手に対処すれば、政権批判の大規模デモに発展しかねない危うさがあるからだろう。

実際、政権に批判的な政治指導者らも住民の抗議デモに加わり、政権の汚職や腐敗を非難するようになっている。大統領選への負の影響を危惧する大統領府内では「あくまでもモスクワ市の計画として、プーチン大統領はこの問題から距離を置いたほうが良い」との意見も出ているという。

独立系の世論調査会社レバダ・センターは5月下旬、大統領選に関する世論調査を実施した。直近の日曜日に大統領選があれば投票すると回答した人に「誰に投票するか」と聞いたところ、実に82%がプーチン大統領だった。

■ロシア大統領選挙で誰に投票するか?  (出所:レバダ・センター)

* 調査は2017年5月下旬。直近の日曜日に選挙があれば「投票する」とした回答者を対象にした調査結果。

プーチン人気の高さをみれば、老朽アパートの解体問題も選挙戦にさしたる打撃は与えないのかもしれない。とはいえ政権の政策が国民の個々の生活に直接、損害を与えるようなことがあれば、長期政権への鬱積した不平や不満が国民の間で一気に噴出しかねないことは覚悟すべきなのだろう。

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『フランスとロシア、歴史解釈巡り激しい応酬 300年、1000年前の出来事でマクロン、プーチン両大統領が火花』(6/8JBプレス 杉浦史和)について

6/1産経ニュースプーチン氏、北方領土は米軍に対抗する「便利な場所」 日米安保を口実に日本牽制

【モスクワ=黒川信雄】ロシアのプーチン大統領は1日、露西部サンクトペテルブルクで行われた各国の通信社代表らとの会見で北方領土問題について言及し、島を日本に引き渡した場合、現地に米軍が展開する可能性があると述べ、事実上困難との見方を示した。日米安保体制を理由に、領土問題をめぐる日本側の要求を強く牽制した格好だ。

プーチン氏は北方領土で露側が進める軍備拡張の動きについて「同地域で起きていることへの対応」だとし、韓国への最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備など、北東アジアでの米国のミサイル防衛(MD)網拡大への対抗措置との考えを示した。また、北方四島はそのような「脅威」に対抗するのに「極めて便利な場所」だとも述べ、ロシアにとっての北方領土の軍事的重要性を強調した。

プーチン氏は、米国がイランの脅威を理由に欧州でMD網を拡大してきたが、イランとの核合意がなされてもMD配備を継続していると主張。同様に、仮に北朝鮮が核開発をやめても米国はMD配備をやめないと述べ、朝鮮半島情勢にかかわらず、極東での米国の軍事プレゼンスは拡大するとの見方を示した。

プーチン氏は北方四島の非軍事化は「可能だ」とも述べたが、そのためには地域全体の緊張緩和が不可欠だと発言。将来的にそのような合意が結ばれる可能性も示唆したが、具体的な話には至らなかった。>(以上)

この話は昨年11月初旬に谷内正太郎国家安全保障局長とパトルシェフ安全保障会議書記と会談時、谷内氏が引き渡し後の北方領土に米軍基地を設置する可能性を否定しなかったことを念頭に発言したものと思われます。プーチンのことですから、日本は「北方領土に米軍基地は置かせない」と明言できないことを読んでのことと思われます。北方領土を米軍の防衛範囲の適用除外とすれば、北方領土は日本の領土でないのを認めることになるので難しいでしょう。そこを突いて、北方領土を返還しないように論理構成したと考えます。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016121400936&g=pol

韓国へのTHAAD配備は北方領土返還にはあまり関係ないと思われます。昨年11月にロシアは「北方領土の択捉島と国後島に新型の地対艦ミサイルを配備した」と発表しました。射程距離が300Kmというので到達できるのは北海道内くらいで、配慮を示したのかもしれませんが。でも日本国内では余り騒がれませんでした。平和ボケの極みです。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H5H_S6A121C1PP8000/

本記事を読みますと、マクロンよりプーチンの方が遙かに格上という気がします。歴史には歴史で勝負、先生が自分は頭が良いと思っている生徒を窘めた構図です。プーチンはなかなか手強いです。安倍首相も彼が相手では骨が折れるでしょう。経済協力も民間が儲かるのであればという判断で良いと思います。先日の「一帯一路」はそれに(1)インフラ整備は万人が利用でき、透明で公正な調達が行われる(2)プロジェクトに経済性がある等の条件を付けました。遠藤誉氏は「日中首脳会談を開きたいために、そこまで中国に媚びなくても」との思いのようですが、以前本ブログで記載しましたように、日本企業が喜び勇んで「一帯一路」に乗るとは思えません。Newsweekの遠藤誉氏の記事を読むと、中国人は流石共産国の人達で、日本も国と企業が一体と勘違いしているとしか思えません。所詮自由のない国の国民の発想です。ただ遠藤氏がその中で、『「中華民族の偉大なる復興」を政権スローガンに掲げる習近平政権のもくろみ通り、中国のネットは、やがて世界一になるであろう中国への自負心に満ち満ちている。その手段は、アメリカを凋落させてから、対米追随の日本を落すことである。』と述べているのは、要注意です。日米豪印で中国の封じ込めを完成させねば。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06/post-7761_1.php

http://dwellerinkashiwa.net/?p=6455

記事

フランスのエマニュエル・マクロン大統領(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)。仏首都パリ郊外のベルサイユ宮殿の庭園で(2017年5月29日撮影)〔AFPBB News

ウラジーミル・プーチン大統領がフランスを訪問した。ベルサイユ宮殿で開かれている300年前に訪仏したピョートル大帝を記念する展覧会で序幕式に出席するためであった。

エマニュエル・マクロン新大統領は、ホストとしてベルサイユの豪華絢爛な空間を活用し、文化的にも大国であるフランスが、長期政権を担っている大先輩のプーチン大統領を恭しく迎えたといった図であった。

しかし両者の会談終了後、開催された記者会見は、マクロン大統領が、ただの新米大統領ではないことを見せつけたという意味で衝撃的だった。

「ロシアの通信社はプロパガンダ機関」

プーチン大統領の面前で、ロシアの通信社、RTとスプートニクという2つの機関は報道機関ではなく、フランスや他の国々に影響を与えるためのプロパガンダ機関であると明言し、これを非難したからである。

フランスとロシアの関係は、歴史的に見ればおおむね良好な関係が続いてきていた。しかしながら、マクロン大統領の強烈なプーチン大統領への一撃は、近年の両国の緊張関係の表れである。

昨年12月、プーチン大統領はフランスへの訪問を突如取りやめた。

セーヌ川左岸にオープンが予定されていたロシア精神・文化センターの序幕式に参加する予定だった。しかし、シリア問題をめぐるフランソワ・オランド前大統領との意見対立から、これに抗議した形で訪問を取りやめたのだった。

1期目でありながら国民の支持を急速に失ったオランド前大統領は、2期目の大統領選に出馬することができず、大統領選は混迷を極めた。

まず、右派の代表予備戦で、アラン・ジュッペ前首相や二コラ・サルコジ前大統領を抑えて、フィヨン前首相が大統領候補となった。

フランソワ・フィヨン候補とプーチン大統領は、大統領が首相を務めていた時代に外交関係上のパートナーであったことから仲が良く、フィヨン氏はロシアに対する経済制裁解除を公然と主張していたこともあって、この予備選にロシアの介入があったのではないかと、早くも噂された。

しかしその後、フィヨン氏は身内の不正雇用疑惑で逆風に晒され、結局大統領選では決選投票まで残れなかった。

一方で、高まる移民排斥の機運と歩を合わせて人気を高めたのがマリーヌ・ル・ペン候補だった。

ル・ペン候補の率いる国民戦線は、ロシアの金融機関から党運営のために資金融資を受けていたり、ロシアも支援する欧州の反体制勢力を糾合する会合に出席したりと、親ロシア、親プーチンの傾向は最初から明らかだった。

選挙戦中にモスクワで会談

決定的だったのは、選挙戦の最中、プーチン大統領自身がル・ペン候補にモスクワで会見したことだった。

一般的に言って、選挙中の候補者と国の大統領が会見すれば、それが政治的な意味を持たないはずはなく、また万一、その候補者が敗れれば当選者との間で軋轢を生むから非常なリスクを冒すことになる。

プーチン大統領がそれを知らないはずはなく、この会見を通じて、フランスはもちろんロシアの意図を正確に受け取ったと考えられる。つまり、ロシアはル・ペンを応援すると見なしたのである。

さらに大統領選挙が行われる1日前に、マクロン陣営の私的な文書がウィキリークスで公表されるという事件が起こった。

フランスの大統領選挙は、マスメディアの情報で選挙結果が変わることを恐れ、選挙前の1日は候補者は選挙活動をしてはいけないとされる。これでは情報漏洩の中身について弁明することもできない。このタイミングでの情報漏洩はマクロン側の反論を封じるという意味で、大変巧妙だった。

フランスの大統領選挙に、ロシアが介入する恐れがあるという点は、米国からも発信されており、ある意味では予想通りに、ロシアが悪者になる形でフランス大統領選挙は進行した。そして、新大統領にはまだ30歳代の若いマクロン氏が就任したのだった。

こうした背景の下、仏露首脳の会談が、大変に緊張をはらんだものになったであろうことは想像に難くない。

マクロン大統領は就任後、重要で多様な外交日程をこなしてきたが、外国首脳をフランスに招くのはこれが初めてだったのである。その意味で、ベルサイユ宮殿へのプーチン大統領受け入れは、フランス当局として十分に練られた外交政策だったと言っていい。

そのメッセージの肝は、ピョートル大帝にある。

ロシアのピョートル大帝は、後進国ロシアを目覚めさせ、ほぼ1代で、ヨーロッパ大国の1国にロシアを仕立て上げた人物だった。

サンクト・ペテルブルクとして知られるロシアの西の都をほぼゼロから築き上げたことはもちろんだが、その精力溢れる行動力は、欧州各国への視察旅行としても記録されている。偽名を使い、オランダの船大工とともにかんなを握ったとの伝聞もある。

毀誉褒貶のピョートル大帝

ピョートル大帝は、西側の先進文明から学び、先進文明を凌駕するまでに国を導いた強力な指導者だった。サンクト・ペテルブルク生まれのプーチン大統領も、ピョートル大帝を尊敬しているという。かつて執務室には、大帝の肖像画が掲げられていたとの情報もある。

しかしながら、ピョートル大帝はその並外れた行動力ゆえに、ロシアの一部の人々の間では、理解できない人、ロシアの旧来の伝統を壊す人と見られていたのも事実である。実際、彼の事業を受け継ぐべき息子は父の方針を受け入れられず、父により獄につながれ、そこで死んだ。

こうした歴史的背景を勘案すれば、マクロン大統領のメッセージは次のようなものだ。

「ピョートル大帝が目指したように、ロシアを再び西ヨーロッパの価値観の中に戻してほしい!」

ロシアとEUの間では、多くの懸案がある。ウクライナにおける紛争継続と、それに端を発した経済制裁の応酬。シリアの体制をめぐる支援のあり方。最近明らかになったロシアのチェチェン共和国における性的マイノリティーに対する弾圧への対処。ロシアが展開する「プロパガンダ戦争」。

これらの問題を解決するには、ロシアが西側と同じ価値観を持つだけでよい。「さあ、あなた自身も尊敬しているピョートル大帝に倣おう!」というわけである。

プーチン大統領は、マクロン大統領のメッセージにどう反応したか。彼は歴史には歴史で切り返した。それもフランスとロシアの歴史的関係をただの300年ではなく、1000年も遡ったのである。

曰く「フランスとロシアの歴史的関係は、キエフ・ルーシのヤロスラブリ賢帝の娘が西フランク王国カペー朝アンリ1世に嫁いだところから始まる」と述べ、ロシアとフランスの関係が対等だった時代を思い起こさせ、フランスが先生、ロシアが生徒という関係を復活させるつもりはないとの意思表示を行った。

史実に照らせば、カペー朝の嫁探しは、権威を求めていたと言われる。東ローマ(ビザンツ)帝国の皇帝の血を引くキエフ大公の娘アンヌは、アンジュー伯、ノルマンディ公、フランドル伯など力のある領主を押さえ込むことができなかった王家カペー家にとって、王家の権威づけに不可欠だったのである。

ロシアの方が権威が髙かった

もともと予定していたドイツの皇帝コンラッド2世の娘は結婚する前に亡くなってもいたからだ。つまり、ロシアの方が高い権威を持ち、それをフランス側が欲したという構図を見せて、どちらが先生、どちらが生徒などと言うことはないと切り捨てたのだ。

アンリ1世はアンヌとの結婚を経て、その子フィリップ1世を共同統治者として戴冠させ、その後の王国の統治体制の基礎を築く。

プーチン大統領は、アンヌが高い教養を持ち、幼いフィリップ1世の事実上の摂政の役割を果たしたことにも触れて、その役割を高く評価した。ロシアがフランスの発展に貢献したのですとマクロン大統領に教え諭したのである。

実は、この話はここで終わらない。

プーチン大統領が提起したキエフ・ルーシは、ロシアなのか、ウクライナなのかという問題があるからだ。

ウクライナ側はキエフ公国はロシアではない。我々がロシアの先輩だという感覚がある。ロシアがフランスに貢献したのではなく、ウクライナの人物こそがフランスに貢献したのだというのだ。

ヨーロッパは長い歴史を持ち、東西の交流を幾重にも積み重ねているので、歴史問題は掘り返せばきりがない。そんな中、プーチン大統領の今回の対応は、ロシアの国益を守るべく歴史の知識を振りかざしながらの奮闘が続いていることを示している。

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