4/22渡部亮次郎氏ブログの中の記事<杉浦正章氏 米、北へのサイバー攻撃実施の可能生
16日のミサイル発射失敗が怪しい:NYTやCNNが報道
サイバー攻撃などは宇宙戦艦ヤマトの専売特許かと思っていたが、なかなかどうして米軍では実戦に配備されているかのようだ。とりわけ16日の湿った花火のような北朝鮮のミサイル発射実験失敗は怪しい。
発射後数秒で爆発している。ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙によるとやはりその可能性が高いようだ。もともと米軍にはオバマ時代から「Left of Launch作戦」(発射寸前作戦)があり、時々北のミサイルにサイバー攻撃やレーザー攻撃を仕掛けているようだ。
もちろんトップシークレットである。サイバー兵器問題を漏らした米軍幹部が処分されている。サイバー攻撃が米軍によって採用されているとすれば、すでに北との“暗闘”が宣戦布告なしに展開されていることになる。この重大な事態を日本の全国紙が掌握していないのか、ほとんど報道しないのにはあきれた。
NYTは米軍から最近までサイバー攻撃について書かないように要請されていたが、15日付の同紙は「北朝鮮と米国の間では、過去3年にわたり、ミサイル計画をめぐる隠密の戦争が行われてきた」と暴露した。
確かに16日の実験の失敗はアメリカによるサイバー攻撃が原因である可能生がある。NYTはこの種の攻撃は少なくとも過去3年にわたって展開されてきた「Left of Launch作戦」だという。
北朝鮮は今年2月から3月にかけて北極星2型およびスカッドERの発射に成功したが、3月以降、ミサイル発射は3回連続で失敗した。今月5日には、新浦から弾道ミサイルを発射したものの、飛行距離は60キロにとどまっている。16日に新浦から発射した弾道ミサイルは、発射後わずか4-5秒で墜落した。
さらにNYTは、北朝鮮が使用しているロシア製ミサイルの発射成功率が低いのは、アメリカが北朝鮮のミサイル関連ソフトを操作したり、北のネットワークを妨害しているからだという。
同紙によると、北朝鮮の失敗が多いのは、ミサイル関連インフラがロシアのそれには及ばないという事情はあるものの、北朝鮮のミサイルがベースとしている旧ソビエト時代のミサイルの発射失敗率が13%だったのに対し、北朝鮮のミサイルは88%もの確率で失敗していると指摘している。
この失敗の確率の高さは、米国が部品の輸入段階でのサプライチェーンを使って欠陥を生じさせている可能性もあるようだ。
16日の実験失敗の経緯について米CNNは来日した副大統領ペンスに空母ロナルド・レーガン上でインタビューしている。サイバー技術などを使った可能性について質問されたペンスは、「我が軍の電子およびIT能力についてはコメントできない」と発言。
「私に言えるのは、(北朝鮮のミサイル発射が)失敗したということだ。あれはさらなる挑発だった。そしてそれは終わらせなければならない」と強調した。「ノーコメント」として否定も肯定もしなかったのだ。
サイバー攻撃は人工衛星や、U2やグローバルホークなど有人無人偵察機、ドローン、スパイ情報、通信情報などを通じて得た情報をクロスチェックしたうえで実施されるようであり、戦時には針の落ちる音すら見逃さない精度があるという。従って新浦での動きは掌握されているのであろう。
新浦に接近しているイージス艦などが攻撃の役割を果たすものとみられる。ひょっとしたら16年には実戦配備されているはずのレーザー兵器を使っている可能生も否定出来ない。
レーザー兵器は、2010年にイギリス国際航空ショーで軍艦に設置された米レイセオン社製レーザー兵器が、約3.2キロ先を時速480キロで飛行する無人飛行機4機を破壊している。
最新の技術情報によれば、ポーランドで遠距離到達も可能な極めて高出力のレーザー衝撃波を生成する技術的なブレークスルーがあり、小型艦船・迫撃砲弾・ロケット弾などへの攻撃・迎撃にも使用可能となっているといわれる。
従って今後北朝鮮の核実験にもサイバー攻撃やレーザー攻撃が行われる可能生も否定出来ない。既に核施設へのサイバー攻撃はイランに対して行われている。2009年にイランの核燃料施設を破壊したサイバー攻撃プログラムは、NSA(米国家安全保障局)のサイバー集団がイスラエル軍と共に作り上げたものだ。
このサイバー攻撃作戦は、大統領ジョージ・W・ブッシュの下で立案され、オバマに引き継がれて決行され、成功している。北は衛星写真向けに、核実験場前の広場で職員にバレーボールをやらせて、「実験はまだしない」と訴えているかのようだが、する兆候が察知されれば攻撃されると覚悟した方がよい。>(以上)
米軍のEMP(電磁パルス)やサイバーアタックで北朝鮮からの核・毒ガスミサイルを防いでほしいと願っています。イージス艦のSM3や地上のPAC3はミサイルの飽和攻撃には脆弱で、撃ち洩らしが必ず出るとのことですから。
4/21時事通信は<北欧訪問、一転取りやめ=安倍首相、北朝鮮情勢受け
安倍晋三首相は、北朝鮮情勢が緊迫化していることを受け、今月下旬からの外遊日程を短縮することを決めた。政府関係者が21日、明らかにした。ロシア、英国訪問は予定通りだが、北欧4カ国への訪問は取りやめる。27日に出発し、30日に帰国する予定。>(以上)
首相が4/30に帰国するという事は、5月連休に米軍の北朝鮮攻撃があるかもしれないという事です。青山繁晴氏によれば4月末には打撃群の態勢が整うという事ですから。4/15本ブログで山村明義氏は5月7日~9日が一番危ないと言っていましたのを紹介しました。連休中の韓国への旅行中止は勿論のこと、在韓邦人の日本帰国を企業は、政府の退避勧告がなくとも、促さないと。米軍と自衛隊の活動の足手まといになります。早めに帰さないと、一遍に帰国は出来ないと思います。もし、北朝鮮の韓国攻撃で在留邦人の犠牲が出たら、遺族は会社を安全配慮義務違反で民事訴訟すべきです。分かっていて行動に移さないのですから。そもそも反日国家に投資することが間違っています。
http://dwellerinkashiwa.net/?p=6114
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017042100468&g=prk
重村氏と部谷氏両方とも、米軍の北朝鮮攻撃は、今すぐは無いというだけです。ただ、重村氏の予測は外れることで有名ですが。日本と北朝鮮を対話させたいような話の持って行き方です。朝鮮半島に関与した人間は、朝鮮人の肩を持ちやすい。これは、欧州、米国に長く住むと、日本人であることを忘れる人間が多いのと同じです。それなら、先方の国籍を取って日本人であることを止めれば良いのに。
部谷氏の見方は打撃群が揃い踏みしてからとのこと。織田邦男氏はこれにNEO(noncombatant evacuation operations)が実行されてからと読んでいます。ただNEOが実行されれば、北も気づくでしょうから、北が先制攻撃に打って出る可能性があります。在韓邦人はやはり早めの退避が良いかと思います。また、北と南の難民は済州島に留め置くべきです。テロリストが必ず混じっていますので。
中国はこのところ、米国のシナリオ通りに動いているように見えます。習近平がトランプの言い付け通り動いているのは、首脳会談時にトランプが「令完成の機密資料の中に、習近平のスキャンダル(女性、金)があり、それをニュースで流しても良い」と脅されたのでは。45%の関税という脅しだけで、今まで動かなかった中国が動くのは考えにくいです。
4/22にマンション総会があり、その最後に、内閣官房制作の「武力攻撃やテロから身を守るために」のガイドラインを紹介しました。既に知っている人もいたのかもしれませんが、無関心な人が殆どです。これで戦争が起き、ミサイル飛来やテロが起きれば、物的損害だけでなく、人的損害も大きくなります。少子化どころでなく、人口が大きく減り、GDPも大きく減るでしょう。昨年は「シンゴジラ」が人気を博しました。今回、米朝間が平和的終結を迎えるか、北のミサイルが無力化されたとしても、「X国の先制攻撃(核ミサイルや毒ガスミサイル)を受け、逃げ惑う人や、保護のガイドラインを守って助かった人を描き、再興していく」映画を、どなたか製作してみてはどうでしょうか。内閣官房にも本件で意見を送付しました。
重村氏記事
金日成生誕記念の軍事パレードを閲兵する金正恩委員長(写真:ロイター/アフロ)
米国のドナルド・トランプ大統領は4月6日の米中首脳会談で「中国が、北朝鮮を抑えないのなら、米国単独で行う」と述べた。米国が単独でシリアにミサイル攻撃をした直後のこの発言は、米国は北朝鮮を限定攻撃する意向だと受け止められた。攻撃については、4月15日説や25日説が、まことしやかに流されていた。
しかし、朝鮮半島で軍事衝突や戦争が年内に起きる可能性は極めて低い。トランプ大統領は「中国が北朝鮮の核開発を抑えなければ」と条件をつけており、6回目の核実験をしても米国が直ちに単独攻撃をするわけではない。一方、中国の習近平国家主席は、対北朝鮮向けの石油輸出を禁止すると米国に約束した。北朝鮮の側から仕掛けることも考えづらい。北朝鮮は全面戦争できない国である。
歴史的な石油禁輸の約束
米ニューヨーク・タイムズ紙は4月13日に「習近平国家主席は、北朝鮮が核実験をすれば石油禁輸に踏み切る、とトランプ大統領に伝えた」と報じた。同紙は、国務省当局者にこの事実を確認した。これは中国の歴史的な決断だ。中国政府系の環球時報も同じ内容を報じている。
中国が、対北石油禁輸を約束したのは、これが初めてのこと。安倍晋三首相による働きかけの成果といってよいだろう。同首相は2月11日のゴルフ会談で、有効な対北制裁策をトランプ大統領に説いた。
安倍首相は、北朝鮮向け石油輸出を禁止すれば、同国の軍隊は崩壊し体制を揺さぶることができると説明した。同首相は、米中首脳会談直前にトランプ大統領と電話会談した際にも、対北石油禁輸を習氏に求めるよう改めてアドバイスした。
トランプ大統領は、4月6日の米中首脳会談で石油禁輸を強く求め、習主席がこれに応じた。トランプ大統領は「金正恩体制の崩壊は目標でない」と明言したと報じられている。
米中首脳による合意は、米国が「単独限定攻撃」するにはかなり時間がかかる事実を示している。北朝鮮が、核実験かICBM(大陸間弾道ミサイル)に進めば、中国は北朝鮮への石油供給をストップする。それでも、核開発が止まられなければ、米国は核施設への「限定攻撃」を検討する。トランプ大統領は、「中国に感謝している。習近平国家主席を信じている」と発言した。
わずか年50万トンの石油
北朝鮮は、なぜ全面戦争できないのか。同国は「石油最貧国」で、軍隊の石油消費量は世界最低だ。年間の石油輸入量は、中ロの貿易統計やオイル・タンカーの航行記録を確認しても、最大で年間70万トン程度。過去数年は、50万トン前後にとどまる。戦争をしない自衛隊でも、年間150万トンの石油を使用している。全面戦争は、中国とロシアが無制限に石油を供給しない限り不可能なのだ。
加えて、北朝鮮が使用する兵器は、1960~70年代に装備された旧式だ。米韓の近代兵器には、太刀打ちできない。
だから、北朝鮮は核兵器開発に踏み切ったのだ。米韓両国が「北は戦争できない」とわかれば、攻撃してくると信じている。それを抑えるために核開発を進めたのだから、北朝鮮軍部には核兵器の開発で譲歩する気はない。
国連総会で演説か?
「単独攻撃」にかけるトランプ大統領の気をそぐために、北朝鮮に残された選択肢は多くはない。南北対話か米朝対話、日朝交渉の再開、日朝首脳会談の実現しかない。
北朝鮮は、5月9日に実施される韓国大統領選挙に期待している。革新系の文在寅候補が勝利すれば、直ちに南北首脳会談を呼びかける。投票前に核実験をすれば同候補が落選してしまうから、それまで核実験はしない。
米国は北朝鮮に対抗し、文在寅候補を落選させるための作戦を展開している。5月9日に向けて緊張を高める意向だ。韓国の内政には一切関与しないふりをする一方で、4月25日頃に空母カールビンソンを朝鮮半島近海に到着させる予定。中国の了解を得て、黄海深くまで航行させると見られる。米朝の軍事緊張を一挙に高め、文在寅候補を落選に導く。
このような状況において、金正恩委員長が「今年の国連総会で演説してもいい」と述べ、側近たちを慌てさせたという。中国外交関係者が情報源だから、にわかには信じがたい。それでも、金正恩委員長が限定攻撃を回避し、各国首脳の認知を得る打開策を模索している様子はよくわかる。
習氏は、金委員長の度重なる「訪朝招待」と北京への訪問要請を拒否しており、「それなら国連に行く」と中国に聞こえるように、情報を流したのだろうか。
日朝首脳会談の可能性
故金日成主席の生誕記念行事が行われた4月15日、粛清されたと報じられていた金元弘国家保衛相が、金正恩委員長と同じひな壇に姿を見せた。彼が、なお国家保衛省を担当し、対日政策を担当している様子がうかがえた。
宋日昊・朝日国交正常化担当大使は17日、平壌で取材に当たっている日本人記者団を呼び集め、日本に日朝交渉再開を呼びかけた。宋大使は、①拉致再調査を約束したストックホルム合意はすでに消えた②要望があれば残留日本人問題には応じる③戦争が起きれば日本に一番被害が及ぶ――など高飛車な態度を示した。その言葉からは、話し合いを望む北朝鮮の痛々しい思いが伝わった。
宋大使の発言には、ウソがある。戦争になれば、被害が大きいのは韓国と北朝鮮だ。日本にはほとんどない。日本がお願いすれば「交渉を再開する用意がある」という発言は、こう表現しないと北朝鮮の高官たちが納得しないからだ。
日朝は14年、ストックホルムで「行動対行動原則」に合意した。これは日本外交の失敗だった。この言葉は、北朝鮮外交が昔から駆使する「得意用語」。拉致問題への取り組みを遅延させる一方で、残留日本人の帰国や日本兵の遺骨捜索に協力し資金を手に入れることを意味していた。
外務省は、それに気がつかなかったようだ。安倍首相はこのトリックを知り、「拉致問題解決を最優先にしないと、交渉に応じない」と条件を変更した。北朝鮮は、外交作戦をひっくり返された。
北朝鮮では、秘密警察である国家保衛部が日本への工作と秘密交渉を担当してきた。ところが、2002年に日朝首脳会談が失敗に終わり、日本部局は廃止。ここ数年、担当者は一人しかいなかった。最近の情報では、金委員長の指示で今年初めに日本部局が復活し、20近い人員が働いているという。金委員長は、明らかに「日朝交渉」を目指し、「日朝首脳会談」を視野に置いている。
JBプレス記事
北朝鮮との軍事境界線沿いの非武装地帯(DMZ)の警戒所を訪れ、在韓米軍のビンセント・ブルックス司令官(右)と会話を交わすマイク・ペンス米副大統領(中央、2017年4月17日撮影)。(c)AFP/JUNG Yeon-Je〔AFPBB News〕
普段、安全保障とは縁遠いテレビのワイドショーまでもが北朝鮮情勢を取り上げ、米国政府による北朝鮮攻撃まで秒読みだと論じている。米国はすでに準備が完了していると述べるコメンテーターも少なくない。しかし、本当にそうだろうか。
筆者は“現時点”では、その見解には反対である。米国の先制攻撃の蓋然性はなく、可能性も低いとみている(ツイッター等でも一貫して主張してきた)。以下ではその根拠と、今後どのような場合に蓋然性が高まるのかを述べてみたい。
空母1隻では戦力不足
第1の根拠は、空母打撃群の展開状況である。
現状で西太平洋に展開する空母は、カール・ビンソンただ1隻だ。空母ロナルド・レーガンも横須賀にいるが、これは5月まで整備予定であり、その上、さらに訓練を行わなければ実戦投入は不可能だ。リビア空爆(1986)は空母3隻、湾岸戦争は空母6隻、ユーゴ空爆は空母1隻+同盟国軽空母2隻、アフガン攻撃は空母4隻程度、イラク戦争は空母6隻で攻撃を実行している。ブッシュ政権末期にイラン攻撃がささやかれた際は空母3隻がペルシャ湾に集結した。だが、現状はたかだか空母1隻でしかない。これではいかにも戦力不足である。
というのは、北朝鮮の対空ミサイルを中心とする防衛網は相当強力だからである。航空戦力は無きに等しいが、イラン製の新型フェイズドアレイレーダーを装備しているほか、ロシア製S-300のコピーとされるKN-06対空ミサイルを複数装備している。また、低空攻撃であれば、携帯式対空ミサイルや対空砲が数千門を超える数を展開している。
それに対して空母打撃群1個では、明らかに戦力が不足しているし、撃墜された時のパイロット救助もままならない。しかも、北朝鮮の軍事力は山岳地帯をくり抜いた防空壕やトンネルに守られており、トマホークミサイルでは打撃を与えられない。
古い事例だが、1969年にニクソン大統領が北朝鮮への懲罰的攻撃を検討した際は、空母4隻が投入される予定だった。やはり最低でも3個の空母打撃群を展開しなければ、話にならないだろう。
ゆっくり移動している米空母部隊
第2の根拠は、カール・ビンソン空母打撃群の動きである。その動き―特に速度―を見ると、先制攻撃の意図があるとは思えない。
カール・ビンソン空母打撃群は4月8日にシンガポール沖で豪州行きを中止し、朝鮮半島近海(公式声明では北上)への移動を開始した。シンガポール沖から朝鮮半島近海までの距離は、ざっと計算して4800キロメートルである。この距離は巡航速度20ノットであれば5.4日、最大速度30ノットであれば3.5日、駆け足25ノットであれば4.3日で到着する。しかし16日に至るも、カール・ビンソン空母打撃群は到着した気配はない。しかも、17日の声明ではまだインドネシア沖に展開していたという。
これこそが、米政府の意図を明瞭に語っている。つまり、意図的に空母打撃群の展開を遅らせているのである。
歴史を振り返ってみると、1996年の中台危機の際も同様のことがあった。当時、台湾海峡を目指したニミッツ空母打撃群は、「第7艦隊司令部より、ゆっくり移動するように」という事実上の命令を受け、あえて巡航速度よりもかなりの低速で台湾海峡へと向かった。しかも、移動命令は命令の5日後に移動を開始せよというものだった(この経緯の詳細は秋元千明著『アジア震撼―中台危機・黄書記亡命の真実』を参照していただきたい)。
なぜなら、空母打撃群の性能をフルに発揮してアッという間に到着してしまうと、中国政府を焦らせ、冷静な判断力を失わせることになってしまうからだ。米国としてはじわじわと中国を威圧して台湾への威嚇をやめさせることを狙っていたのだという。
今回のカール・ビンソン空母打撃群も、やはり非常にゆっくりとした動きを見せている。また、ちょうど4月11日に錬成訓練が終了し、実戦投入が可能となったニミッツ空母打撃群もカリフォルニア沖から動く気配がない。
これは現在の状況が、あくまでも軍事力による威嚇によって、相手の妥協を迫る「強制外交」(coercive diplomacy)のフェーズでしかないことを意味している。要するに、先制攻撃はまだ先であるということだ。
いまだ整わない報復攻撃への防衛態勢
第3の根拠は、在韓米軍の防衛体制が整っていないことだ。
北朝鮮への先制攻撃の形としては、B-2ステルス爆撃機で高高度から核施設等の一部を叩くという選択肢もあり得る。しかし、それでは北朝鮮の弾道ミサイル等による報復を招き、韓国に居住する多くの米兵とその家族が犠牲になるおそれがある。だが、在韓米軍は自国民保護の対策を取れていない。
実は、迎撃に使用する在韓米軍のパトリオットミサイル2個大隊(96台)は、先月末から更新に入ったばかりである。在韓米軍の説明によれば、3月25日より、韓国に展開する米軍のパトリオットミサイルは、レーダーや指揮システムを含む全てのハードウエアとソフトウエアを最新式に交換する作業を実施しており、製造元のレイセオン等の技術者が長期間滞在して実施するという。報道によれば、在韓米軍の関係者は「海外の米軍の防空部隊を対象にこれだけ大々的な性能改良作業が行われるのは初」としている。今までにない規模のこの改良作業がすぐに完了することはないだろう。
しかも、韓国への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備もいまだ途上段階であり、使用可能な状況に至っていない。加えてトランプ政権はTHAAD配備の先送りすら示唆するありさまである。
これでは北朝鮮からの反撃に対して、万全の体制とは言い難い。また、現在、北朝鮮からの報復として懸念されているのは、砲兵部隊によるソウル攻撃だけでなく、小型ドローンにサリンなどの化学兵器を積載してソウルに飛ばしてくることである。その対策として在韓米軍の増強がなされているかも疑わしい。
ちなみに、米軍が北朝鮮に攻め入る際はどれくらいの兵力が必要だろうか。2013年に米陸軍は北朝鮮崩壊時の核兵器等の差し押さえを想定したウォーゲームを実施した。その際の結論は、最終的に2個師団の投入に56日間かかり、9万人の米軍の兵力が必要、というものであった。現在、米韓軍事合同演習が実施されている最中だが、とても数が足りない。
また、この演習での結論としては、(1)オスプレイによる敵中深くへの戦力投射は、すぐに膨大な北朝鮮軍に包囲されてしまい失敗の連続となる、(2)人的情報がとても足りず、偵察衛星や盗聴による技術情報ではとても埋め合わせができず攻撃等に難儀した、というものであった。これも一部のメディアが「近いうちに行われる」とする特殊部隊やトマホーク等による斬首作戦の困難性を示唆している。
北朝鮮攻撃の蓋然性が高まるのはいつか
では、どのような状況になると北朝鮮攻撃の蓋然性が高まったと見なせるのか。
それは、ニミッツ空母打撃群が西太平洋に展開し、ロナルド・レーガン空母打撃群も合わせて3個体制に移行し、パトリオットミサイル部隊の更新とTHAADの配備が終了し、在韓・在日米軍の増強が開始されたときだろう。
無論、現時点でも限定的な攻撃は、米本土からB-2爆撃機を飛ばせば可能である。意外性を好むトランプ大統領の「ギャンブラー」としての性格を考えれば、あり得ない選択肢ではない。
しかし、トランプ氏自身が繰り返し述べてきたように、現政権は首尾一貫して中東重視である。実際にシリアに地上兵力を投入しており、これを15万人に増やすべきという議論も政権内で行われている。
そして、トランプ政権の安保政策の主導権を握っているとされるマティス国防長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官は、イラク戦争で苦労した経験を持つ軍人である。後先を考えない楽観主義に基づく戦争の尻拭いを10年以上やってきた彼らが、そのような攻撃の計画をトランプに提案する可能性は低い。
そう考えれば、やはり、米軍による先制攻撃は、少なくとも上記のような態勢への移行がほぼ完了した時点と考えるのが妥当だろう。
良ければ下にあります
を応援クリックよろしくお願いします。