保護貿易は国の経済を貧しくすることは間違いないでしょう。北朝鮮、ミャンマー、キューバ等国を閉ざしor閉ざされていた国が貧しいのは現状見れば分かります。旧ソ連も、改革開放前の中国もそうでした。小生がいました1997年~2005年の内、97年の北京では広い道路が銀輪部隊で埋まっていました。やはり2001年中国のWTO加盟から経済が大きく伸びたと思います。加盟に寄与したのは日米ですし、中国への投資を積極的にすることで、経済成長の離陸を確実なものにしました。結果は、軍事膨張を続けるモンスターを作ってしまいました。日米ともに中国人の民族的特質を理解していないと言えます。人口の多さに目を眩ませ、誑かされて来たという所でしょう。米国は戦前からそうでした。
国際分業は国を豊かにするというのは経済学では定理のようなものになっています。況してや基軸通貨国で$を印刷すれば世界各国からモノが何でも入ってきます。この特典を活かさない手はないと思います。要は米国人の雇用と生活水準の向上を目的とすれば良い訳で、それを関税ブロック化で成し遂げようというのは方向が間違っています。小生が言わなくても、賢いトランプは分かっているでしょうけど。トランプは大統領選で役者を演じただけでしょう。ただ、その発言をどう軌道修正して豊かで強い米国の姿を作っていくかがポイントです。
そのためには、米国内での投資を歓迎、法人税減税もその一つでしょうし(財政赤字は膨らみますが)、軍事支出増大(日本の兵器近代化も要請される、防衛費のGDP1%の枠は、外部環境変化に併せ撤廃)、インフラ整備、多国籍企業への米国での一定の投資義務化、自由主義国からの投資の特典化等考えられることは何でもやれば良いと思います。
トランプもTPPは中国への経済的封じ込めというのが分かれば、大統領就任初日にTPP撤退宣言をしても、別な形で残そうとするのでは。二国間協議にするとしても、米国以外は受けないでしょうけど。ロス氏を商務長官にしたのはそういう狙いがあるからと思います。トランプはオバマが大嫌いなので、やってきたことを全部否定したいと考えているでしょうけど、中国に経済のルール作りの主導権は握らせたくないと見ています。WTOに入れても中国ほど国際ルールを守らない国はなかったし、国際仲裁裁判の南シナ海判決を「紙屑」とまで言う国ですから。仲間はずれにするのが、一番良いでしょう。米国企業が中国から撤退しやすいよう情報戦を展開し、中国経済を崩壊させるのが近道ですが。世界平和の一番の特効薬です。
記事
習近平はエクアドルを初訪問。ペルー、チリも歴訪し、米国の裏庭・中南米の取り込みを狙う(写真:AP/アフロ)
米国のトランプは政権発足後すぐさまTPPを離脱すると言明した。本当にそうなるのか、実際のところわからない。たしか副大統領に指名されているマイク・ペンスはTPP推進派だ。TPPは経済的な意味以上に、米国にとって中国経済覇権の拡大封じ込めという外交的意味が大きかった。
米国はこれまで中国経済のグローバル化を後押ししてきた。中国が米国と国際秩序に挑戦しない国だと思っていたからだ。経済がグローバル化すれば、中国のような国も市場経済国となり、政治も民主化していくと考えたのだ。だが習近平政権になって、その本心が米国に成り代わって国際・経済秩序のルールメーカーになりたいのだ、という野心であることに気付き始めた。中国は、民主化するつもりもなく、米国とは全く違う価値基準や秩序をもって、国際社会を米国と二分していこうというG2時代を夢見ている。そう認識したオバマ政権はそれまでの親中路線を転換し、中国包囲戦略に切り替えた。
それがアジアリバランス政策であり、TPPは単なる自由貿易の枠組みから、政治的な意味を持つようになった。少なくとも、中国の官僚、知識人たちはそう考えていたので、トランプのTPP離脱宣言は、中国にとって朗報である。
ペルー・リマで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、習近平は、早速中国が世界貿易をリードしていく強い姿勢を訴え、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期妥結、RCEPを土台にAPEC全体の自由貿易圏となるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構築に意欲を見せた。これを、米国中心の経済・貿易秩序を中国主導の経済貿易秩序に変えていく好機とらえたのだ。
だが、いまだ市場経済国認定もされていない中国が、グローバル経済を米国に代わって主導する国家になりうるのだろうか。中国が目指す、中国式グローバル経済の青写真を考えてみたい。
米中の立場が逆転してきたかのような錯覚
トランプは、選挙運動中から保護貿易政策を打ち出しており、中国に対しては最高45%の懲罰関税をかけるとも言ってきた。これに対して中国側は、そうなれば米国をWTO(世界貿易機関)に提訴する、と言っている。トランプサイドは、もし中国に対する懲罰関税がWTO違反になるならばWTO離脱もありうるとまで、言っていた。これまで、中国が不当廉売などのWTO違反を米国サイドに訴えられるケースが多かったことを考えれば、まるで米中の立場が逆転してきたかのような錯覚を覚える。
トランプはさらに北米自由貿易協定(NAFTA)離脱にも言及している。メキシコ製品に対する関税を35%に引き上げるとか、メキシコ国境に移民流入の壁を建設するとか、かなりの暴言も吐いた。
米国の雇用を奪っているのは安価な中国とメキシコの製品の大量流入であるというのがトランプの主張だ。重ねていうが、本当にトランプが有言実行するのかはまだわからない。冷静に考えれば無茶だと思うが、グローバル経済が米国内の貧富の格差を増大させ、米国民のほとんどがグロバール経済に反対だとすれば、民主主義の国のリーダーは保護貿易主義にならざるを得ない。この傾向はEUなどでも拡大している。
一方、中国は米国主導のグローバル経済の波にうまく乗ることで大国化を果たしたが、実際のところ、鄧小平が自国の人民を安い労働力として多国籍企業に捧げて、外国の投資を国内に呼び込んだことが成長の鍵であり、中国経済のグローバル化は中国人労働者の搾取であり、また中国の山河や大地の汚染も引き起こした。貧富の格差は猛烈に拡大し、汚職がはびこり、本当に利益を得たのは多国籍企業と汚職官僚と中国政府で、人民全体がハッピーであるかというと異見もある。
庶民の不満を無視できないトランプと、無視する中国
ただし、中国の場合は民衆が指導者や執政政党を選ぶわけでもなく、また言論の自由も報道も西側諸国よりよほど厳しく統制されているので、庶民の不満を軽く無視して、国家は国家としての戦略性でのみ政策を決めていく。そう考えると、今国際社会で一番経済のグローバル化に積極的なのは中国である、ともいえる。
今更ながら、簡単に説明しておくと、TPPは日米主導でアジア太平洋地域の貿易・投資のルールを統一化し、包括的な自由化を目指すもの。今のところ12か国が参加している。だが、域内GDPの9割以上を日米2国が占めるわけだから、ある意味、日米の自由貿易協定といっても過言ではないだろう。特に日本にしてみれば、米国による米国のための枠組みにも見え、医療や食品安全など洗練された日本のサービス基準をグローバル基準に規制緩和することが果たして国民の暮らしや日本的農業、中小企業にプラスになるのかと疑問視し反対する声も強い。そこを、中国封じ込めという外交的意義の兼ね合いの中でどこまで妥協するか、というのが日本にとってのTPPの議論の焦点だった。
なので、米国がこれを抜けるとなると、TPP自体の成立意義を失うし、トランプの宣言が本当に実行されるのならば、TPPは頓挫する、ということになる。ちなみにトランプのTPP反対理由は日本の反対派とほぼ同じである。
知財権や環境保護基準、薬価上限など国家主権として設けられている基準が、TPPの取り決めに違反して企業の収益を損なっているとされれば、企業が国家に賠償金を求めて提訴することができるというISDS条項は国家主権の侵害であり、TPPは米国国家国民の利益にはならず、得をするのは多国籍企業、大企業のみだということである。
そもそもトランプ的な保護貿易主義政策を実行するなら、TPPに参加していては米国が提訴されまくりの日々となる。米国内の1パーセントの富裕層が残りの庶民の富に勝る金融資産を独占している激しい貧富の格差は経済のグローバル化のせい、というのがトランプを支持するプア・ホワイトと呼ばれる人たちの意見なのだから、TPPに反対しなければ支持者有権者に対する裏切りである。
米主導のTPPに対して、RCEPは最初に中国が言い出し、中国が主導してきた。ASEANが日中韓印豪NZら周辺諸国と個別に結んできた自由貿易協定をまとめるという考えで、目下16か国が参加している。中国にしてみれば、中国包囲網形成という目的のTPPに対抗するという政治的意味合いもある。RCEPはTPPほど関税の撤廃を要求しておらず、また環境規制なども特に設けていないことから、日本の中ではTPPよりRCEPの方を支持する人も少なくなかった。ただ中国の脅威を認識しはじめた日本、オーストラリアをはじめ、RCEPとTPP両方に参加する7か国はTPPを優先させており、2016年内発効予定だったのが延期されている。
FTAAPはRCEPとTPPの両方を包括するAPEC地域の自由貿易圏構想だ。これは貿易摩擦が最も激しく対立している米中をともに含むことになる。実現は簡単ではないが、米中ともにこの貿易圏で自らが主導権をとることを目標にしており、日米はTPPをベースにしてFTAAPを実現したいと考え、中国はRCEPをベースにしてFTAAPを考えていた。2014年の北京APECでそのロードマップが採択された。
ペルー、チリ、エクアドル…米国の裏庭を刈る
こういう状況で、トランプ政権の米国がTPPを降りるとなると、RCEPがFTAAPのベースになる展望が開けてくる。つまりアジア太平洋貿易圏の経済秩序が中国主導で形成される可能性がでてくる。
習近平はAPEC首脳会議に先立って行われたAPEC工商関連サミットで「アジア太平洋地域は規定路線を歩み続け、グローバル経済により多くの活力をもたらさねばならない」「中国は世界に対し門戸を開放している、この門はさらに大きく開かれる」と強調し、FTAAP構築こそ、アジア太平洋地域の悠久の繁栄をもたらすために戦略的に重要な意義を持つと強調し、FTAAP推進を呼びかけた。
TPP参加国のペルー、チリはさっそく、中国との自由貿易促進で一致。チリのバチェレ大統領は早期にアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟したいとも表明している。TPP参加国でもAPEC加盟国でもないが、習近平は23日までの南米歴訪でエクアドルにも初訪問。両国関係を全面的戦略的パートナシップ関係と位置付け、金融、インフラ面での20の協定に調印している。トランプの保護貿易主義的政策に乗じて、中国式グローバル経済圏は米国の裏庭・中南米の取り込みを加速していこうとしている。
習近平がリマでアピールしたことは、中国が大幅に外資参入制限を緩和し、APECメンバーの間でハイレベルな準自由貿易圏を設立し、中国が国際標準にあった商業環境を確保し、一つのフェアな市場を形成するのだという点だ。では、中国はどういった貿易経済秩序を打ち立てようとしているのか。
中国は目下、投資戦略を転換していこうとしている。かつては経済発展計画にそってエネルギーや基礎インフラ分野への投資を、国家の基金を通じて実施するというスタイルだった。これをサービス、高付加価値産業分野へ、民間資本で行っていく方向にもっていきたい。このためにはプライベートエイクイティファンド(PE)や機関投資家の役割を増強していきたい考えがあり、自由貿易協定や多極主義の拡大が中国の投資戦略のこうした転換に利すると考えている。
もう一つの狙いは人民元の国際化だ。無事、特別引出権(SDR)入りを果たした人民元だが、実際のところ人民元に対する信頼が向上したわけではない。中国の投資・貿易政策と人民元国際化プロセスは不可分であり、中国としては南米国家との貿易協定拡大や、FTAAPへの推進を人民元国際化に利用していきたい考えがある。
市場経済国ではない国に市場を主導できるか
要するに人民元による決済、人民元による投資が可能な経済貿易圏の形成だ。米国の国際社会の影響力は軍事と通貨・金融が担保している。米ドル一極の基軸通貨体制を覆すことが、中国の覇権を実現するためには欠かせない。AIIBの設立も人民元のSDR入りもその目標に向かっての布石である。通貨を制するものが世界を制する、グローバリズムの頂点に立ち、国際社会のルールメーカーになるには、海洋覇権などと並んで通貨覇権を実現することであると考えているわけだ。
だが、中国の野心は野心として、中国自身がグローバル経済の秩序の中心となる条件を備えていると言えるだろうか。
中国は、いまだ市場経済国ではない。そして実際の経済政策は自由主義経済とは違う方向に動いている。中国が目指すのは国家資本主義、つまり国家、共産党政府が完全に指導・コントロールできる資本主義だ。小国ならいざ知らず、あの規模の市場を抱える中国に、そんなことが可能なのか。企業の利益よりも、共産党の政治的判断が優先され、政府は市場ルールの頭越しに行政指導を入れてくる。しかも、そういう共産党指導の資本主義を周辺国に拡大しようという考えで、国家資本輸出主義、などという言い方もある。
一般に自由貿易を主導するなら自由市場経済と民主的政治体制が必要だと思われてきた。だが、中国式グローバリズムはそうではなく、共産党がコントロールできる市場経済と、一党独裁体制のままで自由貿易の主導者となろうというわけだ。
それがどういう世界なのか。フェアな市場といいながら、共産党が牛耳るグローバル経済。ダライ・ラマ14世の訪問を受け入れるだけで経済制裁をほのめかす国が世界貿易のルールメーカーになるとしたら、なかなか恐ろしくはないか。
日本の不幸は自らルールを決める発想がなかったこと
さて、今考えるべきは日本の身の振り方である。日本はまだTPP発効に望みを持っているようでトランプを説得中らしい。だが、TPPがダメならRCEPというムードが既に広がっている。オーストラリアもRCEPに軸足を移しはじめた。日本もRCEPの中で、中国の主導権を牽制できるというならRCEP推進に切り替えるという考えもありかもしれない。
しかし、日本にとって一番不幸なのは、トランプ政権がTTPを反故にしようとしたことではなくて、今後の世界貿易秩序をだれが主導するか、どんな青写真を描くのか、というテーマに対して、米国に頼るのか、中国主導につくのかという選択肢だけで考えて、日本が新たなルールメーカーになるという発想をいままで持てなかったという点にあると思う。
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