指導者選びが大切という事でしょう。日本でも民主党政権は無能・売国でした。今回の安保法案反対もどこの国民を守ろうとしているのか分かろうと言うもの。民主党の岡田・野田に至っては、以前は集団的自衛権を支持していたと佐藤正久参院議員に暴露されてしまう始末。それでシレッとして、反対を唱えられるのだから、平気で嘘がつける中国人・韓国人と同じ連中です。安倍政権で本当に良かったと思っています。
朴槿恵大統領は全部他国のせいにしますというか、彼の国の民族性でしょう。悪いことが起これば総て日本のせいにする。だから半島統一ができないのは日本のせいとかいって他責にします。李氏朝鮮時代は中国の属国、日本が第二次大戦後も米国に統治され、然る後米国から独立を許された、自分たちで国の運命を決めることができなかった哀れな民族です。密約は「中国に騙されている」という意見もあるようですが、狐と狸、どちらの国も化かし合いが得意なのでやりあって貰えば良いと思います。
韓国の保守派メデイアがいくら叫ぼうとも、韓国に対する日本人の心は大衆レベルで冷え切っています。これこそポイントオブノーリターンだと思います。「北の侵攻を防ぐのが南の役目、日本も反共なら南の支援を」というのは20年前の話。今、南そのものが共産中国にべったりなのでその論理は使えません。中国と一緒にグルになり、世界に歴史改竄の慰安婦像を建て日本を貶めようとするのに普通の日本人だったら耐えられません。日本国内でもそれを支援しようとしているのは、なりすまし日本人、在日かその関係者、共産主義シンパ位でしょう。マスメデイアの言う(数の少ない)民意とは彼らの意見のことを言います。ですから自民党の支持率が39%、民主党が9%(8/30日経)くらいしかないのです。朝日・毎日・東京等の新聞を読んでいる人は高齢者が多いですから読者はどんどん減っていくことでしょう。いい傾向です。
記事
(前回から読む)
北京での抗日式典に参加し、国民から大きな支持を得た朴槿恵(パク・クンヘ)大統領。帰国の機中で「中国と協力し統一を目指す」と宣言した。この予想外の急速な中国傾斜に、保守派も米中二股派も「韓米同盟が消滅する」と悲鳴をあげた。
支持率が20%も急騰
–訪中で朴槿恵大統領の支持率が急上昇したと聞きました。
鈴置:韓国ギャラップの9月第1週(1-3日)調査(9月4日、韓国語)では「大統領はよくやっている」が54%と、前週比5%ポイント上昇しました。韓国ギャラップは「訪中の影響」と分析しています。
朴槿恵政権の支持率
質問=「大統領の職務遂行ぶりを評価するか」
調査期間=2015年9月1-3日/調査主体=韓国ギャラップ
2014年4月のセウォル号事件以降、初めて50%台に乗りました。なお「よくやっていない」は6%ポイント下がって38%でした。
その1週間前の8月第4週(25―27日)調査(8月28日、韓国語)でも、支持率は34%から49%へと急上昇しています。半面、不支持率は56%から44%に12%ポイントも落ちました。
この時点で支持率が不支持率を上回ったのですが、2014年11月第1週以来のことでした。「地雷事件」による南北間の緊張を一気に解いた、8月25日の南北合意のためです。
地雷事件は中国の北朝鮮への圧力もあって解決できた、と韓国では報じられています。結局、8月末から9月初めにかけての2週間で支持率が20%ポイントも回復したのは、中国のおかげでした。
天安門の外で待たされた朝貢使
—朴槿恵大統領にとっては「中国さまさま」ですね。
鈴置:韓国の大統領が天安門の上に立ち中国のトップと肩を並べて軍事パレードを参観する光景は、韓国人にとって感無量の出来事でした。
清に朝貢した朝鮮の使節は、皇帝の都合によっては天安門の外でずうっと待たされました。くぐるのは、もちろん正門ではなく脇の門。楼に上がるなんて許されなかったでしょう。
韓国メディアは抗日式典――抗日戦勝70周年記念式典の前から、楼上での朴槿恵大統領の席順予想に力を入れました。
式典の前日には「訪中した約30カ国の首脳の中で唯一、習近平主席主催の晩さん会を開いてもらったのだから、主席のすぐ横だろう」と期待を盛り上げました。
結局、プーチン大統領に次ぐ「来賓No.2」の席だったのですが、それでも韓国人は大いに満足しました。ことに北朝鮮から参加した崔竜海(チェ・リョンヘ)労働党書記の席が、習近平主席とは遠く離れていたので溜飲を下げました。
韓国の報道チャンネル、YTNが式典をすべて中継しました。1時間半に渡る中継の間に、何度も画面に「朴槿恵大統領は2番目、崔竜海は一番端の席」とテロップを入れました。よほどうれしかったのでしょう。
楼上の“怪しい指導者”たち
—西側では、非民主国家の指導者に取り囲まれた韓国の大統領の姿を見て、ぎょっとした人も多かったと思います。
鈴置:習近平主席が演壇に上がった際、座ったままのプーチン大統領とカザフスタンのナザルバエフ大統領が三角形を形造りました。強権で名を馳せる3人です。
その三角形のど真ん中に、黄色のスーツを着た朴槿恵大統領が座ったのです。この映像は印象に残りましたし、象徴的でもありました。
式典には集団虐殺に関与したとして国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状の出ているスーダンのバシル大統領、彼の逮捕に協力しなかったと西側の一部から疑いの眼差しで見られている南アフリカのズマ大統領も参加しました。
ICCは国連を背景に生まれた組織ですが、韓国外相から国連事務総長に転じた潘基文(バン・キムン)氏はバシル大統領らと天安門で並びました。異様な集まりだったのです。式典に参加した朴槿恵大統領を企業社会に例えれば、こんな感じです。
J社はC社の招待を断った
- 大手自動車メーカーU社の系列企業、K社の社長。最近、部品を大量に買ってくれるようになったC社の社長から「ウチの創業70周年式典に是非、来てくれ」と言われた。C社はU社のライバル。おいそれとは行きにくい。
- でも、C社への納入実績は増える一方。それにU社は地理的には離れているのに対し、C社はすぐ隣。そもそも祖父の代までK社はC社の系列だった。うまくとりいればK社のライバルのN社を、C社は系列から切り捨ててくれるかもしれない。
- そこでU社の購買担当者には「少し顔を出すだけだから」と誤魔化してC社の式典に参加。でも、壇上で挨拶するのは警視庁のリストに載っている怪しげな企業のトップばかり。そして彼らに囲まれ談笑する光景を、取材に来たカメラマンに撮られてしまった……。
—まずいですね。
鈴置:U社のもう1つの系列企業、J社の社長はC社の招待を断りました。「工場が忙しい」などと、取って付けた理由で。このため、K社社長の参加がより目立ちました。
「国の行く末が心配」
—それに、業界団体の専務理事をやっているK社の元・海外担当役員まで、この怪しい式典に参加してしまっています。
鈴置:韓国メディアはこの式典が「怖い人の集まり」だった点は報じませんでした。報道は「我が国の大統領は中国で異例の好待遇を受けた」の一点張りだったのです。
だから、国際情勢に詳しい韓国人はともかくも、普通の人にとって大統領の抗日式典参加は「極めて誇らしい出来事」でした。支持率が急上昇したのも当然です。
ただ、それに危うさを感じた韓国人もいました。例えば日本語で「シンシアリーのブログ」を書く匿名の歯医者さん。政治的な色の濃い主張はしない人です。
そのシンシアリー氏が支持率の急上昇に関し「朴槿恵大統領の支持率、54%に上昇」(9月4日、日本語)で、以下のように書いたのです。なお、助詞などを少し手直ししています。
- 一部で親中政策を憂いている人もいるのは事実ですが、朴槿恵大統領の親中政策は「国民的」支持を得ていると見ていいでしょう。
- 反日+親中ですね。
- まさか、私が本気で「国の行く末」を心配する世代になろうとは、考えもしませんでした。いつからこうなったんだろう……。
「統一のために中国と協力」
韓国人がすっかり親中に染まってしまった、との驚きの表明です。支持率アップで自信を得た朴槿恵大統領が、さらに中国に傾くとも懸念したのでしょう。
韓国人の従中振りをシンシアリー氏が茶化したことはありました。でも「国の行く末を心配」とまで書いたのは初めてです。
彼の憂鬱な予想は、直ちに現実のものになりました。このブログが載ったのとまさに同じ頃、9月4日午後に朴槿恵大統領は中国から戻る飛行機の中で記者団に対し、以下のように語っていたのです。
- 朝鮮半島の平和統一のために今後、中国と協力することを決めた。可能な限り速やかに、どのように平和統一をなすのか議論が始まるだろう。
中国のおもちゃになる
韓国では猛反発が起きました。中国と組んで統一を図れば、米韓同盟の消滅に直結する可能性が極めて高い。中立化した韓国が、自由と民主主義を維持できるのか――との悲鳴でした。
親米保守の趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムにしばしば論説を載せる「証人」という筆名の識者がいます。その「『朝鮮半島平和統一』その同床異夢」(9月5日、韓国語)の一部が以下です。
- 我々が考える統一と中国のそれは完全に異なる。中国には十中八九、朝鮮半島を米国の影響力から遠ざけ中国が管理するという下心がある。我々の統一は当然、朝鮮半島が米国の作戦区域に残るとの前提がある。しかし、これを中国が認めはしないだろう。
- (朴槿恵大統領は)統一のためには米国との決別も辞さないというのか? 果たしてそんなことは可能か? 決別は統一の前なのか、後なのか? 中国と平和統一を論じるのは、中国のおもちゃにされる公算が大だ。
- 朴大統領が中国へ行き習近平、プーチンと並んで立つ姿によって支持率が急騰するという現象こそが、すでに中国の管理下に組み込まれたことを示す危険信号に映る。
米軍撤収も中国と話し合うのか
同じ日に東亜日報も社説で、大統領が突然に唱えた「中国とスクラムを組んだ平和統一」に疑念を表しました。
保守系大手3紙の中では、政権に最も距離を置く新聞です。今回の訪中に対しても3紙の中で唯一、明確に反対していました(「“恩知らず”の韓国」参照)。
東亜日報の社説「「中国と協力する『平和統一』は自由民主体制が確かなのか」(9月5日、韓国語版)の骨子が以下です。
- 大韓民国憲法に明示された「自由と民主主義を基本とした秩序に立脚した統一」と、中国の朝鮮半島戦略をどう一致させるのか、明確にする必要がある。
- 中国メディアは韓中首脳会談で「習主席は『自主的統一』の実現を望むと語った」と報じている。それが外部勢力の介入を排除するとの意味なら、駐韓米軍の撤収を語っているわけであり、北朝鮮の主張する統一と変わらない。
- 昨年2月、中国の軍部は統一に関し、領土・領海紛争の徹底的な解決に加え、外国軍隊撤収のタイムテーブルの提示など6項目を先決条件として挙げた。朴大統領は大韓民国の安危に直結する在韓米軍撤収まで中国と論議するというのか。
- 韓国は統一の具体的方法に関し、同盟国の米国とさえ緊密に対話する段階に至っていない。朴大統領がいくら統一のビジョンを強調しても、現実には越えねばならない山が多いからだ。
- 習主席は北朝鮮を戦略的資産と見なしている。朝鮮半島全域をその資産とするために朴大統領に「魅力攻勢」をかけているとの分析も出ている。
「統一」で騙された大統領の暴走
—「魅力攻勢」ですか。
鈴置:東亜日報は上品な表現に留めていますが、はっきり言えば「朴槿恵大統領は中国の力に魅せられ、習近平主席に騙されかけている」ということでしょう。
背景には「中国は北朝鮮を放棄する意思など一切ない。むしろ韓国を『統一』という甘い言葉で釣って米国から引きはがし、半島全体を我がものにするつもりだ」との認識があります。
週明けの9月7日からは、朝鮮日報や中央日報など訪中に賛成していた保守系紙も、社説やシニア記者のコラムを動員し連日のように「中国に傾き過ぎだ」と叫び始めたのです。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムでは「対中依存の暴走」との表現も使われました。
でも、朴槿恵大統領は馬耳東風。9月9日に開催されたソウル安保対話では、世界各国の国防関係者を前に「統一は北朝鮮の核問題や人権問題の根本的解決策になるだろう。世界史から見れば20世紀の冷戦の歴史を終息させることになるだろう」と演説しました。統一に集中する姿勢をさらに鮮明にしたのです。
青瓦台(大統領府)も最高級の政府高官による中国との戦略対話の早期開催に動いています。世論の危惧をよそに、朴槿恵大統領は「中国とスクラムを組んだ統一」に邁進し始めたのです。
俺の後ろには中国がいるぞ
2015年以降、平均的な韓国人の自画像は「米中間では等距離に位置する国」となりました。保守紙も少しずつ軸足を中国に移しており、その文言を使わないにしろ、朴槿恵政権の「等距離」つまり「二股外交」を支持するに至っています。
米国の要請を無視し中国の言いなりになったのは、抗日式典参加だけではありません。終末高高度防衛ミサイル(THAAD)や、中国の南シナ海の軍事拠点化の問題でもそうです。
2014年までは多くの韓国人が「『等距離』だの『離米従中』だの言い募るのは日本人だけ。韓米離間を図る日本の陰謀だ」などと言い張っていました。
しかしこれだけ「離米従中」が誰の目にも明らかになると、今度は「米中等距離のどこが悪い」と居直り始めたのです。日本人に対し「俺の後ろには中国がいるぞ」と肩をそびやかす韓国人がさらに増えました。
もう、米国側に戻れない
ただ、そうした空気を体現する保守系紙さえも、大統領の「中国とのスクラム宣言」は大いにショックを受けました。等距離どころか、完全に中国側の国となり始めたからです。
米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年9月16日現在) |
案件 |
米国 |
中国 |
状況 |
日本の集団的自衛権 の行使容認 |
● |
○ |
2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致 |
米国主導の MDへの参加 |
● |
○ |
中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ |
在韓米軍への THAAD配備 |
▼ |
△ |
青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否 |
日韓軍事情報保護協定 |
▼ |
△ |
中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ |
米韓合同軍事演習 の中断 |
○ |
● |
中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施 |
CICAへの 正式参加(注1) |
● |
○ |
正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」 |
CICAでの 反米宣言支持 |
○ |
● |
2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か |
AIIBへの 加盟 (注2) |
● |
○ |
米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明 |
FTAAP (注3) |
● |
○ |
2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」 |
中国の 南シナ海埋め立て |
● |
○ |
米国の対中批判要請を韓国は無視 |
抗日戦勝 70周年記念式典 |
● |
○ |
米国の反対にも関わらず韓国は参加 |
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
「韓国は米中の勢力争いに決着がつくまで二股外交を続けるだろう」と語っていた韓国人がいます。この人からも、こう言われました。
(次回に続く)
(前回から読む)
中国とスクラムを組んで朝鮮半島を統一すると宣言した朴槿恵(パク・クンヘ)大統領。保守系メディアは必死で引き止める。だが、大統領に動じる風はない。その真意はどこにあるのだろうか。
米国と決別するのか
—前回は朴槿恵大統領が「中国と協力し統一を目指す」と宣言。韓国の保守派が大慌て、という話で終わりました。
鈴置:大統領の発言は9月4日の、中国からの帰りの機中の出来事でした。翌日の9月5日から保守メディアが一斉に大統領に翻意を促しました。
「中国頼みの統一は米国との決別を意味する」「米韓同盟を失い中立化したら、自由と民主主義を維持できない」などと、大統領に真っ向から反対したのです。
9月5日、東亜日報はいち早く、そんな趣旨の社説を載せました。同紙はもともと軍事パレード――抗日戦勝70周年記念式典の目玉行事です――に大統領が参観することに反対していました(「統一は中国とスクラム組んで」参照)。
浮かれる時ではない
同紙は9月10日にも社説で「大統領は急がず、長い目で統一外交を進めるべきだ」(日本語版)と訴えました。正確を期すために原文「幕が上がった統一外交、息長く推進を」(9月10日、韓国語版)からポイントを翻訳し、引用します。
- 中国が血盟の北朝鮮を捨て韓国を選ぶ、という戦略的転換をしたと判断するのは難しい。韓国国内では具体的な統一方法に関し、共感が形成されていない。当事者である北朝鮮とも議論がない状況だ。
- 北は「統一は我が民族の力だけで実現すべき、民族の一大事だ」と朴大統領の発言を批判し始めた。大統領の「東北アジア外交の主導」は息切れしている。
- 朴大統領が任期内に目に見える形で統一の成果を出そうと、無理筋の手を打つのは望ましくない。
中国から戻って来た大統領は突然、「統一だ」と叫び始めた。この国をどこへ連れて行くのか分からない――。こんな恐怖心を抱いたに違いありません。東亜日報は「そんなに焦らず、統一はゆっくり考えましょう」と大統領を諌めたのです。
他の保守系メディアも大統領を抑え込みに入りました。軍事パレード参観に賛成していた朝鮮日報も9月7日、社説「韓中の『統一論議』、浮かれる時ではない」(韓国語版)を載せました。
中国が北朝鮮を捨てる判断をしたわけでもないのに「中国と統一論議」などと浮かれるのは現実を見誤っている、との主張です。
外相は自画自賛
同紙は9月9日には社説「尹外相の『対中外交の自画自賛』、後始末に自信はあるのか」(韓国語版)で尹炳世(ユン・ビョンセ)外相を厳しく批判しました。今回の大統領訪中を「歴史的ターニングポイント」であり「外交的な幅を広げた」と自賛したからです。
ただでさえ米国や日本から「中国傾斜」と疑いの目で見られているのに、それを加速して責任はとれるのか――との訴えです。外相批判の形をとっていますが、実際は「朴槿恵批判」そのものです。
中央日報も9月7日に社説「統一論議の火種、小さな失敗で消してはならない」(韓国語版)を載せました。中国と統一を議論するのはいいけれど、米国や日本との関係を損なうべきではないと指摘しました。
瓢箪から駒の「スクラム」
—確かに「大慌て」といった感じですね。
鈴置:「中国とスクラム」路線は、ほとんどの韓国人にとって予想外だったのです。「瓢箪から駒」にメディアが慌てるのも当然です。
朴槿恵大統領の訪中前、韓国政府は「統一問題を抱える以上、軍事パレード参観を拒否できない。中国は統一に大きな影響力を持つからだ」との理由を掲げました。
でも普通の韓国人は「本音は米国への言い訳だ」と理解していました。太平洋の向こうから米国が苦い顔をして、訪中準備を進める韓国を見ていた。
ことに1カ月半後の10月16日には、ワシントンで米韓首脳会談が開かれます。米国が引き止める中、強引に抗日式典に出るのですから、朴槿恵大統領としてはオバマ(Barack Obama)大統領に何らかの言い訳を用意する必要がある。
そこで「統一」なら韓国人の“聖域”であるため米国人から口出しされにくいと考え、これを理屈に持ち出したのでしょう。
北東アジアを韓国が主導
青瓦台(大統領府)も米国を相当に意識していました。訪中直前には「大統領が中国から帰ったら、米国との関係強化や日本との関係改善にも力を入れる」としきりに強調しました。
朝鮮日報の「朴大統領、中国とは『統一外交の種まき』…米日とも対北朝鮮で協調」(9月1日、韓国語版)からもそれがよく分かります。
この記事は冒頭で、朱鉄基(チュ・チョルギ)外交安保首席が8月31日に、以下のように韓国の外交姿勢を説明したと報じました。
- 訪中以降に予定される外交日程により、我々の国益を伸長する主導的外交として、北東アジア情勢の好循環的な発展に寄与する。
種をまかずに刈り取り
どの新聞も「東北アジアを主導する朴槿恵外交の一環としての訪中」との表現を使いました。訪中は韓国外交の一部に過ぎない、との意味です。
「主導的外交」という言葉も目を引きました。青瓦台がレクチャーで使ったようです。訪中は「従中」の結果ではないと言いたかったのでしょう。普通の韓国人も薄々「大統領は中国に脅されてやむなく行くのだ」と感じていたからです。
要は韓国の指導層は、言葉は悪いけれど「統一は米国に怒られずに訪中するための方便」くらいに考えていたのです。少なくともすぐに動き出す話とは考えていなかった。
先に引用した朝鮮日報の見出しが示唆的です。訪中は統一への「種まき」なのです。ところが朴槿恵大統領は「種まき」どころか、帰国の途につくやいなや「中国とスクラムを組んだ早急な統一」に動き始めた。これでは「刈り取り」です、まだ種もまいていないというのに。
多くの韓国人は「あれっ。話が違うじゃないか」と思ったでしょう。大統領の暴走と考えた人も少なくなかったのです。
中国を背景に北を叩く
—朴槿恵大統領はなぜ「暴走」し始めたのでしょうか。
鈴置:側近にも本音を語らない大統領なので、それは謎です。韓国人も首をひねっていますが、敢えて答えてもらうと「支持率」を指摘する人が多いのです。
前回の「統一は中国とスクラム組んで」で話題にしたように、8月末からの2週間で大統領への支持率が20%ポイントも上がりました。
「地雷事件の上手な処理」と「天安門の栄光」が原因ですが、共通するのは「中国を背景に北朝鮮を叩く」ことに成功した点です。
長らく支持率の低迷に苦しんだ朴槿恵政権は、この急上昇を見て、本来は方便だった「統一」の旗を高く掲げることにした――との見方です。つまり「中国を背景に北を叩く」ことにしたのです。
政権スタート時から使ってきた、「慰安婦」を掲げ「米国を背景に日本を叩く」作戦はすでに頓挫しました。安倍晋三首相は韓国を無視し続けるし、普通の日本人も反韓感情を高める一方だからです。そもそも、思ったほどに米国が助けてくれないのです。
韓国人も反日・卑日には飽きが来ています。だったら今度は「地雷事件」で盛り上がった反北感情を生かそう――と政権が考えて不思議はないのです。
朴槿恵政権は8月25日で任期の半分を折り返しました。これから急速にレームダックに陥るのが普通です。来年の総選挙では、与党が朴槿恵派と反・朴槿恵派に分裂する可能性さえ出てきた。
経済も悪くなる材料はあっても良くなる材料は皆無です。内政で支持率を維持するのは難しい。外交で支持率を稼ぐしかないのだ、と見る人が多いのです。
成功の呪い
—「支持率説」に立てば、中国と綿密に打ち合わせたわけでもない――つまり「中国とのスクラム」はさほど実態のある話ではないということですね。
鈴置:そうなります。
—でも、朴槿恵大統領は本気で「中国とのスクラム」を実行するつもりのようですが。
鈴置:そこで語られ始めたのが「勘違い説」です。大統領なり政権中枢が以下のような認識を持つに至った、と解説する人もいます。
- 北朝鮮の内部は揺れており、体制維持が困難になっている。「地雷事件」後の動きを見ても、北は予想外に弱腰だった。一方、我が国は抗日式典では中国から大事にされた。中国も我が国主導の統一を受け入れる可能性が増した。中国と組めば、北の動揺に付け込んで一気の統一も可能だ――。
中央日報の金永煕・国際問題担当大記者は「朴大統領のユートピア的思考」(9月11日、日本語版)で「勘違い説」を唱えています。
- どのように平和統一をするということなのか。ビジョンも戦略も提示されないまま統一の言葉ばかり広がっている。
- 朴大統領は最近、参謀に対して統一に備えるべきだという言葉をよく述べているという。最近の統一準備委員会会議では、朴大統領が統一への対応を強調し、「来年にも」という表現まで使ったと、会議出席者は伝えた。
- 朴大統領は北朝鮮の地雷挑発後に開いた南北当局者接触の8・25合意を我々の勝利と理解し、北朝鮮に対する自信が高まったという印象を与える。小さな成就が自慢を招く。成功の呪いを警戒しなければいけない。
軍事力に圧倒された?
—現実に向き合うべき国の指導者に対し「ユートピア的」とは厳しいですね。
鈴置:金永煕大記者はよほどショックを受けたのでしょう。大統領訪中までは、それを手放しで褒めたたえていたのですから。
『どうせ、中国の属国だったのだから……』で引用した通り、以下のように「朴槿恵外交」を謳いあげていたのです。
- 韓国は堅実な中堅国家として周辺強大国パワーゲームのバランスウエイトだ。今後は広い北東アジアを視野に置いて、この地域唯一の中堅国家として「バランスウエイトの力」を使って北東アジアの平和を牽引しながら南北問題に接近することができる。
—それにしても、国家の浮沈を左右する案件で「勘違い」するものでしょうか。
鈴置:それを補強するのが「圧倒説」です。中国の強力な軍事力を天安門の楼上から眺めるうちに、朴槿恵大統領はすっかり中国の強さに圧倒され、判断力を失った――との見方です。
東亜日報の社説「中国と協力する『平和統一』は自由民主体制が確かなのか」(9月5日、韓国語版)は、それをさりげなく指摘しています。
- 中国の軍事力の台頭を天安門の上から目撃しながら朴大統領が、何を考えていたかを気にする国民が多い。
流される「密約説」
—なるほど。「勘違い説」の説得力が増しますね。
鈴置:ええ。ただ、この“勘違い”は韓国にとって相当な危うさをはらみます。北朝鮮が崩壊寸前かは外からは断言できません。韓国の希望的観測に終わるかもしれないのです。
そして中国が韓国主導の統一を認める保証はありません。崩壊の危機に陥った北を、中国がテコ入れしてしまうかもしれません。
以上2つの障害をクリアして韓国主導で統一したとしても、中国の助けを借りれば、それは「中国が望む形での統一」になる可能性が大きい。
—自由民主主義体制を維持できるか、と東亜日報などが疑うのも当然なのですね。
鈴置:もっとも、こうした疑いを打ち消すために作られたと思われる噂も出回っています。北朝鮮の崩壊に関しては「実は、朴槿恵政権は崩壊が近いとの極秘情報を握っている」。
中国とのスクラムについては「統一後も現在の韓国の体制を維持していいとの密約を中国から得ている」――です。これらを「密約説」と呼んでおきます。
大阪の陣
—崩壊や密約は本当ですか?
鈴置:判断できません。こうした情報は「怪しいな」とは思っても、容易には否定できないところがミソなのです。なお、日本にもこの「密約説」が流れて来ています。
こうした怪情報に対抗する目的もあるのでしょう、親米保守の趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの金泌材(キム・ピルジェ)記者は、大阪城外堀のロジックを使って「騙されるな」と訴えています。
「敵の約束を信じた指導者の運命」(9月9日)という記事です。韓国語の記事ですがサイトを開くと、大阪城本丸の大きな写真が目に飛び込んで来るのでびっくりします。
記事は「徳川方の和睦条件をのんで、難攻不落の秘訣だった大阪城の外堀を埋めることを認めたあげく滅ぼされた豊臣方の無能さ」を紹介します。そして以下のように結論づけます。
- 大阪の陣は敵の約束を信じた指導者と国民が「偽りの平和」と「対話勢力(中立化勢力)」を選択すると、どんな結果をもたらすかを克明に示す、歴史的な事件だった。
北朝鮮に近い人々が「統一の可能性が出てきた。まず、障害になる韓米同盟を破棄しよう。最低でも在韓米軍は撤収させよう」と言い出す可能性が増しました。
韓国はそもそも「中立化志向」が根強い(「『フィンランドになりたい』と言い出した韓国」参照)。現政権にそのつもりがなくとも左派が「統一論議」を「米韓同盟破棄」に利用するかもしれない。金泌材記者ら保守派はそれを猛烈に警戒し始めたのです。
文化的帰巣本能による従中
—親米保守の趙甲済ドットコムは大忙しでしょうね。
鈴置:連日「中国に騙されるな」「自由民主主義を守れ」という記事が大量に載ります。「識者」氏ら常連の筆者に加え、李長春(イ・チャンチュン)元シンガポール大使も久しぶりに筆をとりました。外交政策企画室長を歴任した外交界の理論派です。親米保守としての深い危機感からと思います。
「『平和統一を急ぐ』なら自由民主主義を放棄するのか」(9月9日、韓国語)がそれです。「統一幻想曲」「対中依存の暴走」「文化的帰巣本能による従中」などの強い単語を使い、中国との統一論議に反対しました。
趙甲済氏自身も9月4日から9月15日までの12日間に30本も記事を載せています。ほとんどが「中国とのスクラム」に反対する記事です。
なかでも日本人には印象深い記事が「ドイツを過大評価し道を誤ったあげくに滅びた日本」(9月7日、韓国語)です。
趙甲済氏は、大本営・陸軍参謀で戦後は伊藤忠商事で活躍した瀬島龍三氏の回想録『幾山河』の第二章を大量に引用します。
希望的判断で滅びた大日本帝国
- 1940年9月、日本は独伊と三国同盟を締結する。これで日本は英米を敵に回した。常勝するドイツの国力と戦力を日本の軍部は過大評価する一方、米英のそれは過小評価した、と瀬島は回想録で記している。
- 瀬島は情報の判断ミスも指摘している。「陸海軍ともに軍事情報の収拾に重点を置き、政治、経済を含む総合的な国力の判断をおろそかにした。我が民族の性情からして冷厳なる合理的、客観的判断力に欠けやすく、心情的、希望的な判断に流れた」というのだ。
- 半面、スペインのフランコは英国の能力を正確に把握し、ヒトラーの参戦要求を拒絶して国体を維持した。
大日本帝国の滅亡の原因を諄々(じゅんじゅん)と説いた後、趙甲済氏は韓国人に向かってこう呼び掛けたのです。
- 今、韓国には「米国の時代は終わり、中国が浮上する。中国と協力し統一に進まねばならない」という人が多い。中国が総合的な国力で米国を凌駕することは200年以内には不可能だ。中国に対する過大評価を警戒すべきだ。
- 国際情勢を見抜く指導者の眼力が、民族と国家の興亡を左右する。
朴槿恵政権に対する強烈な諫言です。
どこかピントが……
—中国経済は大きく揺れ始めました。単なる景気悪化ではなく、構造的な問題を抱えていることが誰の目にもはっきりしました。なぜ韓国だけが、中国を命とばかりに頼んで突っ走るのでしょうか。
鈴置:そこなのです、韓国がユニークな点は。米中の間をずる賢く立ち回っているようで、どこかピントがずれている――。その話はじっくりいたします。
(次回に続く)