『元海将が明かす、核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌(上)』(11/21ダイヤモンドオンライン)について

11/22中国観察<金正恩打破慣例“招待”特使後 習近平使出一狠招 希望之聲電台=金正恩は慣例を破り特使を招待した後、習は今できる凄い制裁を打ち出した 希望の声TV>中国国際航空は朝鮮への飛行を止め、高麗航空のみの運航となった。これが今できる中国の北に対する制裁としての凄いやり方である。(皮肉か?)

<北京時評家華頗日前接受希望之聲採訪時表示,習近平在與川普會面後,通過宋濤向金正恩亮出了底牌,宋濤此行的背後可能是中美朝之間激烈的博弈:=北京の時事評論家の華頗は先日の「希望の声」のインタビュー時、「習とトランプが会見した後、宋濤を通じ金正恩に手の内を見せた。宋濤のこの行為の裏には米中間の激しい駆け引きがあっただろう」と述べた。

“金正恩面臨一個重大抉擇:棄核還是不棄核。=金正恩は重大な選択を迫られる:核を廃棄するか廃棄しないか”

“宋濤最重要的目的是和朝鮮做最後的攤牌…中方提出的條件是非常重大的,可能令金正恩難以接受,這次是雙方在做激烈的討價還價。金正恩很不爽。但他的選擇也不太多。=宋濤の最も重要な目的は朝鮮に最後通牒をすることである。中国側が出した条件は非常に重大で金正恩は多分受け入れがたいと思われる。両国とも激しい値切り交渉したはず。金正恩は不愉快だったと思う。但し、彼の選択肢は多くはない”

“朝鮮問題發展至今,國際上的壓力很大,外界盛傳中方是假制裁,弄得中方非常被動,所以中方能給朝鮮提供的幫助很少了。北京希望朝鮮問題至少能降溫,即使不能完全解決,也不能作為一個熱點問題了,因為十九大以後,習近平要解決的問題重點在國內,他不希望國際有什麼事情分散了注意力。”=朝鮮問題がここまで大きくなったので、国際社会の圧力は大きくなり、他国から中国は制裁している振りをしているだけと伝わってきているため、中国も動かざるを得なくなり、朝鮮への支援は少なくなった。北京は朝鮮問題に熱くならないことを望むが、たとえ完全に解決できなくとも、この問題に焦点を当てることはできない。19回大会以降、習は国内問題に重点を置いて解決しようと考えており、国際関係でどんな事情があろうとも注意力散漫になりたくないと思っている>(以上)

金正恩が宋濤と会わないのは当然で、政治局常務委でないため、カウンターパート足り得ません。それを分かっていて習は宋濤を朝鮮に送ったのだと思います。米中合作で、金正恩に妥協させないようにしたのでは。習にとって、旧瀋陽軍区と金一族、江派の柵を断つには良いチャンス。しかも米軍がそれをやってくれるのですから。クリスマス休暇で非戦闘員を戻さないようにして、来年年明けが攻撃となるのでは。本記事の伊藤氏によれば、在韓邦人は韓国には核ミサイルが届くとありますので、日本に帰国して戻らない方が良いでしょう。ここまで来れば、自己責任です。

http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/trend/2017/11/22/380784.htm%E9%87%91%E6%AD%A3%E6%81%A9%E6%89%93%E7%A0%B4%E6%85%A3%E4%BE%8B%E6%8B%9B%E5%BE%85%E7%89%B9%E4%BD%BF%E5%BE%8C-%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3%E4%BD%BF%E5%87%BA%E4%B8%80%E7%8B%A0%E6%8B%9B.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook

11/24日経朝刊米国が早める「偉大な中国」 本社コメンテーター 秋田浩之

米国を再び、偉大にしてみせる。トランプ米大統領はこう豪語する。だが、このままいけば、彼は米国ではなく、中国が「偉大な国家」になるのを助けることになってしまう危険がある。

そんな予兆を漂わせたのが、11月5~14日のアジアへの旅だ。北朝鮮問題では日米韓の連携を締め直し、中国から改めて協力を取りつけることに成功した。

この旅にはさらに大切な目標があった。アジア太平洋地域で中国主導の秩序が生まれないよう、米国の影響力を立て直すことだ。

残念ながら、こちらでは成果どころか、トランプ氏の限界があらわになった。最大の注目点だったアジア戦略に関する演説が、不成功に終わってしまったからだ。

なぜそうなったのか。米政権の舞台裏に光を当てながら、今後、トランプ氏に世界はどう向き合えばよいのか、考えてみたい。

アジア歴訪を控えた10月半ば、米ホワイトハウスで極めて重要な出来事があった。どんな包括戦略でアジア太平洋に関与するのか。このテーマに特化した初の閣僚級の国家安全保障会議(NSC)がひそかに開かれたのだという。

マクマスター大統領補佐官やマティス国防長官、ティラーソン国務長官らも交えた議論の末、「自由で開かれたインド太平洋」戦略をアジア外交の中核とし、推し進めていくことを申し合わせた。

その後、詳しい説明を受けたトランプ氏も、これを米政権の看板戦略にすると決定。11月10日にベトナム・ダナンで演説し、大々的に発表することにした。

この戦略は太平洋からインド洋にまたがる地域に「法の支配」と市場経済を根づかせるため、賛同する国々と経済、安全保障の両面で協力を深めようというものだ。昨年8月に安倍政権が提唱した構想にトランプ政権が乗った。

この地域では中国もインフラを整え、独自の経済圏「一帯一路」を築こうとしている。これに対し、日米豪印などが主導して自由な秩序をつくろうというわけだ。

トランプ政権は1月の発足後、アジア政策の全体像を示せないままでいた。ダナン演説はこうした局面をがらりと転換し、インド太平洋戦略を世界に打ち上げる跳躍台になるはずだった。

しかし、ふたを開けてみると、演説は各国を拍子抜けさせた。「自由で開かれたインド太平洋の夢を、皆さんと共有したい」。前半でこう呼びかけたまでは良かったが、後半は米国第一主義のオンパレードになったからだ。

米国を縛る多国間協定には加わらない。そう宣言したうえで「私はいつも、米国を第一に考える」と断言。公正で互恵的な通商に応じる国に限って、2国間の貿易協定を結んでいくと強調した。

トランプ氏は14日、日中ロや東南アジア諸国連合(ASEAN)など18カ国が集う東アジア首脳会議も欠席し、帰国した。開始が2時間近く遅れたためだ。

「トランプ氏はやはり、アジア外交でも国内最優先を押し通すつもりなのだ」。東南アジアの当局者からは、米国は頼りにならないという声が漏れた。

こうしたなか、11月16日、21日にそれぞれ公表されたASEAN首脳会議と東アジア首脳会議の議長声明も、中国に半ば、屈した内容になった。中国が南シナ海で軍事拠点を築いている問題について、ASEANは昨年より批判の表現を和らげてしまったのだ。

この流れが続けば、米国主導のアジア秩序が退き、中国による秩序がこの地域を染めかねない。

なぜトランプ氏の歴訪はこんな結末になったのか。2つの仮説が考えられる。第1は彼がインド太平洋戦略にさほど関心がないか、あったとしても、中国に遠慮して演説の歯切れが悪くなってしまったという説だ。第2は、国内のトランプ支持者を喜ばせるため、あえて米国最優先の通商方針を強調したという説である。

このうち、前者の要素はゼロではないにしても、決定的ではないように思える。トランプ氏は安倍晋三首相からもインド太平洋戦略の説明を受けており、その意義は十分、頭に入っていたらしい。

対中配慮はあったとしても、重要演説を弱めてまで、機嫌をとるほどではないと思う。トランプ氏は習近平(シー・ジンピン)国家主席を「偉大なリーダー」と称賛してやまないが、中国観は険しくなっている。「彼は大したやつだが、中国という国家は問題が多い」。トランプ氏はしばしば、周辺にこう漏らすという。

こう考えると、第2の仮説が正しいとみるべきだろう。つまり、外遊先でも彼の頭の多くが内政で占められているということだ。

アジア歴訪中、米国内ではトランプ氏を悩ます事態が続いた。米大手紙の世論調査で支持率が最低の37%に下落。バージニア州知事選は共和党候補が大敗した。目玉公約の減税法案も正念場だ。

共和党支持者の約8割がなおトランプ氏を支持しているとはいえ、この岩盤を崩さないためにも、トランプ氏は外遊先で「米国最優先」を唱えざるを得ないのだ。

来年秋の米中間選挙に向け、その傾向は強まるだろう。「米国第一」の公約は果たせるだろうが、同時に「偉大な中国」の実現を早めることにもなりかねない。

トランプ政権が国内に引きこもらないよう、アジア各国は働きかけを強めるしかない。トランプ氏の「親友」であり、インド太平洋戦略を発案した安倍氏の役割は、さらに重くなる。>(以上)

秋田氏の読みはあっていると思います。支持層に向けて、「アメリカファースト」を言い続けなければ、来年の中間選挙、次の大統領選の勝利はおぼつかなくなります。再選戦略上も北を攻撃するでしょう。中国への経済制裁も北絡みでかけやすくなっていますので。

これに引換え、日本の経済人は駄目だと思いました。11/24日経朝刊には<「特色ある社会主義とはそういうものだ」。日本商工会議所の三村明夫会頭は中国の通商ルールや商慣習が国際基準から一部逸脱するのはやむを得ないとの見方を示した>とのこと。コンプライアンスのセンスは全然ありません。出身の新日鉄がそうだからでしょう。小生が会社で総会屋担当をしていた時に、鉄鋼業界はその筋の雑誌に全部広告を出していました。「鉄は国家なり」の意識があり、何をしても許されるという驕りが垣間見えます。神戸製鋼の不祥事も起きるべくして起こっただけ。中国駐在員に聞けば、中国との関係を深めることに反対すると思います。闇が深すぎます。

また本記事にあります、6者協議は北の時間稼ぎに使われるだけですので、トランプは認めないと思います。安倍総理も反対するでしょう。北の船が日本に漂流してきているのは、亡命だけでなく、テロ(体内に菌を潜ませたバイオテロ)の可能性もあるので要注意です。人道的処遇が仇になる場合もあります。自分の家族がテロに遭うことを想像して見て下さい。「差別」の問題ではなく、「安全」の問題です。中国と朝鮮半島は日本を貶めるためにサンフランシスコにも慰安婦像を建てることにしました。平気で嘘がつける連中です。反撃しなければ。

記事

Photo:AFP/AFLO

トランプ大統領のアジア歴訪で注目された対北朝鮮問題での習近平・中国国家主席との会談は、進捗がないまま終わった。今後、米国は軍事介入に踏み切るのか、次に打つ手は何なのか。駐米武官や防衛省情報本部情報官などを歴任し、米国の国防関係者らとパイプを持つ伊藤俊幸・元海将(金沢工業大学教授)に聞いた。(聞き手/ダイヤモンドオンライン特任編集委員 西井泰之)

米国にとっての北朝鮮問題は対中国戦略の一つに過ぎない

――米中首脳会談では、企業間での“巨額商談”が結ばれるなど、成果が演出された一方で、北朝鮮問題では大きな進捗は見られませんでした。

もともと今回のアジア歴訪は、中国と安定的な関係を作るため、先の共産党大会で権限を一手に掌握した習氏と、どういうやりとりをするかに主眼が置かれていたと思います。

米国の国益を考えても、またアジアにおいて今最も重要なことは適切な対中国戦略を構築することです。米国と並ぶ世界の二大強国になりつつあり、南シナ海への海洋進出など軍事的にも存在感を強める中国を封じ込めるために、日韓やアセアン諸国と連携を強化するかも含めて、対中国問題が、大統領の頭の中の中心にあったことは確実です。

日本に事前に来て日米連携を誇示したのも対中国をにらんでのことでしょう。北朝鮮問題は、安倍首相がトランプ大統領に話をして関心を持たせた面がありますが、米国にとっては、数ある対中国戦略の中の一つと位置付けられていることを押さえておく必要があります。

中国側もそのことはわかっていますから、成果が見えやすい「ディール(取引)」でトランプ大統領に花を持たせ、一方で、対北朝鮮への圧力強化や、突っ込まれたくない南シナ海での中国軍基地建設問題の議論を巧みにかわしたということだと思います。

中国に対抗するための軍拡が目的 北朝鮮問題はそのための“カード”

――日本と米国でも北朝鮮問題では温度差があるということですか。

駐在武官時代、多くの米国人と付き合った経験から言えば、米国人には皮膚感覚として北朝鮮という国への興味はほとんどありません。地球の裏側のこととしてとらえている感じで、トランプ大統領も極東のことは基本的には何も知らなかったと思います。

実際、2月初めの安倍首相との首脳会談時に北朝鮮がミサイルを発射、また金正男氏が暗殺されたにもかかわらず、同月末に行われた初の一般教書演説では、トランプ大統領は北朝鮮について何も言及しませんでした。

ただその後トランプ大統領も、北朝鮮のミサイルが米国本土を狙う、といった露骨な挑戦をし続けたため応戦するようになりましたが、北朝鮮問題は対中国政策を考慮する上でのカードの一枚と考えている、ということだと思います。

――それはどういうことですか。

一つは北朝鮮問題に対応する、という理由で軍拡を進めることができるからでしょう。軍事力整備は最低でも5年から10年かけて完成するものです。したがって早い段階から構想や計画を明確にして、国民や議会の説得、支持を得た上でないと予算がつきません。その意味では米国まで届くかもしれない北朝鮮の核とミサイルの脅威はわかりやすい理由の一つになります。

本丸は、軍拡を続ける中国に対抗することですが、中国との外交・経済上のデメリットを考えるとそれは大きな声で言えない。それで北朝鮮を代わりに使いたい人たちが出てくるわけです。これは日本も同じだと思います。

軍事技術的に見ても、核付ミサイルが完成レベルにあるのは、南(韓国)を攻撃するまでのものだと思います。2013年3月の3回目の核実験で、1トン~1.5トンまで核弾頭小型化に成功したと見積もられますが、その重さの弾頭をミサイルで運べるのは300kmがせいぜいです。1万km以上離れた米本土まで運ぶには、その半分以下まで小型軽量化することが必要です。

米軍の情報サイドは、当面は核ミサイルが米本土には飛んで来ない、と見積もっているでしょうが、中国に対抗するため軍事力整備を進めるのに、北朝鮮問題は使えるのです。

――トランプ大統領の頭の中には対北への軍事力行使の考えはどこまであるのでしょうか。

軍事については素人でしょうから、何をやろうとするかわかりません。北のミサイルが北海道上空を通過した時にも、「どうして日本は撃ち落とさないのか?」と発言したと報じられました。ミサイルが飛んだのは成層圏(宇宙空間)であって、日本の領空ではありません。ただ、軍事素人の大統領の考えがそのまま戦略や政策にならいないようにしているのが、いまの大統領補佐官、国防長官及び国務長官です。

トランプの暴走を止めるバランス取る スリーゼネラルとワンボーイスカウト

最近も国防省の元高官と話す機会がありましたが、政権内では、「スリー ジェネラルズ(three Generals)&ワン ボーイスカウト(One Boy Scout)」といって、元海兵隊大将のマティス国防長官とケリー大統領補佐官そして現役陸軍中将のマクマスター大統領補佐官(安全保障担当)らの「3人の将軍(Generals)」と、ボーイスカウトにいたことのあるティラーソン国務長官の4人が常に連絡を取り合って、過激になりがちな大統領の言動を抑えてバランスをとっている、と言っていました。

4人が知らない間に大統領がツイッターで過激なことを書く、ということがしばしばあるようですが、その時も4人でフォローし、波風を最小限に抑えていると言っていました。

マティス長官の古今東西の戦史についての博識ぶりは有名ですし、マクマスター補佐官には、ベトナム戦争の失敗を分析した著書もあります。軍事素人の大統領を軍事の専門家がいわば、教育している最中ということでしょうか。

ティラーソン長官がトランプ大統領を「能なし」と言ったなど二人が「不仲」という話も、国務省などの高官の政治任用が遅れている、といわれているのも一定の理由があるようです。

それはポストの削減です。そもそも国務省高官ポストは、国防省の3倍以上あるそうです。減税政策を進めようとするトランプ政権においてティラーソン長官は、国務省の高官ポストそのものを大幅に削減しようとしている、と聞きました。そして当然それに不満を抱く国務省役人サイドから「長官更迭」を狙って、色々な話を流しているというのです。

そういう話を聞いても、大統領と「3人の将軍とボーイスカウト」との関係はそんなにぶれていない気がします。ティラーソン長官が「北との交渉を打診」と発言した矢先に、大統領が「交渉は無駄だ」と言ったのも、二人で役割分担し、押したり引いたりして、北を交渉に乗せるための手段の一つ、と見ることができます。

軍事カードのベースになる 核戦争前提の「5015作戦」

――仮に軍事介入ということになれば、どういうシナリオが考えられていますか。

すでに北の2013年の3回目の核実験を機に、2015年に「韓国に対する核戦争」を前提にした「5015作戦」が作られました。

本来、こうした作戦計画は極秘ですが、韓国では報道で多数リークされますから、韓国の報道をまとめると次のようなことになるのだと思います。

通常兵器での戦争を前提にした従来の作戦は、北が攻撃してきたら、当初は韓国側が後退を余儀なくされるが、その後米韓の地上部隊を中心にして押し戻すシナリオでした。ところが北が核ミサイルを撃つとなれば、それだけで韓国は壊滅的状況になりますから、悠長なことはいっていられません。

「5015作戦」の考え方は先制攻撃です。北の南に対する核ミサイル攻撃の「兆候」を「探知」したら、まず「攪乱」するのです。核兵器を韓国に撃ち込むことは、さすがにトップである金正恩氏の命令がないとできません。

ですからトップが命令を出すために必要な現場からの情報や、トップが現場に下ろす情報のコミュニケーションラインをサイバー攻撃などで攪乱するのです。実はこれはイラク戦争でも米国はやっています。

「斬首作戦」は、トップを暗殺することだと思われていますが、それは誤解です。コミュニケーションラインを攪乱し、頭(トップ)と胴体(ミサイル部隊などの実行部隊)を切り離すことです。核ミサイルは持っているけれど撃っていいのかよくわからない状態にして、その間に、先制攻撃で北のミサイル基地や司令部などを「破壊」する。

これが「5015作戦」の一番の肝だと言われています。その副次作戦として特殊部隊による頭(金正恩)の拿捕、殺害があるのです。

「兆候探知」→「攪乱」→「破壊」と、鎖のようにつながっていく一連の作戦は、「キルチェーン(kill chain)」と言われています。韓国は「5015作戦」に対応する対北用の軍事体制を「3軸系」と呼称していますが、キルチェーンが第一軸で、そのために衛星購入などの予算要求が出されています。

第二軸が、イージス艦などによるミサイル防衛システム、第三軸が、「玄武2号」「玄武4号」などの北朝鮮攻撃用ミサイルによる大量報復戦略です。韓国は核を持っていませんが、このミサイルに1トン爆弾を搭載して、平壌に撃ち込むと言っています。北の1トン~1.5トン級の核弾頭を意識して、同じぐらいの破壊力を持つ通常爆弾の弾頭を搭載し、北が撃ったら、直ちに撃ち返すぞ、というわけです。

文在寅・韓国大統領は対北融和路線だと言われていますが、それを目指すとしても、一方では「5015作戦」に応じた軍事力整備も着々と進めているのです。

第二次朝鮮戦争では日本は「第三者」だが、それではすまない

――仮に米韓軍が「5015作戦」に踏み切った時には、日本はどういう役割を担うのですか。

仮に朝鮮半島で戦争になったら、米韓連合軍は一塊の軍隊(Combined force)として動きますが、日本は、日米同盟(米軍は日本防衛)との関係上、「第三者」と位置づけられます。

日米韓の軍事連携強化がいわれますが、それは情報共有などをいうことであって、第二次朝鮮戦争となれば、実際の戦争では、米韓連合軍に国連軍が加わる形で、北朝鮮軍と戦闘が行われます。

第二次朝鮮戦争が起きた場合を想定して、自衛隊が米軍の後方支援をできるように、ということで、1999年に「周辺事態法」が作られました。

しかし国連軍が加われば米軍以外の他国軍も在日米軍基地(国連軍基地を兼任)に来援することになりますから、今回の安保法制で、「重要影響事態法」と名前を変えて、米国以外の軍隊にも後方支援できるようにしたのです。

つまり、第二次朝鮮戦争が生起すると、まず日本政府は「重要影響事態」と認定し、米軍や国連軍に対して後方支援や後方地域支援という形で関与することになります。

戦争勃発後、当然、北朝鮮は後方支援基地である在日米軍基地を叩くため、日本にミサイル攻撃する可能性が出てきます。

そうなった場合、多数の米国のイージス艦がミサイル防衛のため日本海に配備され、当然海上自衛隊のイージス艦も出動することになります。

この状態は、日本にとっては、まだミサイルは飛んで来ていない「平時」ですが、日本防衛のために出動した米艦を北が攻撃しようとしたら、日本は同盟を結んでいる「仲間」を守る必要があります。

そこで安保法制で「存立危機事態(他国軍隊を守るために武力行使可能)」という新たな事態認定を作ったのです。

つまり、第二次朝鮮戦争が生起したら、日本政府は最初に「重要影響事態」を認定し、引き続き「存立危機事態」を認定することにより、後方支援だけではなく、米軍を含む国連軍を守るため自衛隊は武力行使が可能となります。

そしていよいよミサイルが飛んできたとなれば、日本「有事」ですから、「武力攻撃事態」が認定され、日本は自国を守るため「敵を排除する武力行使」が可能となる、という流れになるのです。

ミサイルが飛んで来るのは先制攻撃後中枢部がやられる可能性は少ない

――北のミサイル攻撃から日本を守れるのですか。

現状のミサイル迎撃システムは、まずイージス艦搭載の「SM3」ミサイルが飛行中の敵弾道ミサイルを宇中空間で撃ち落とす。そして撃ち漏らした場合、地上に配備した「PAC3」ミサイルが待ち構えて迎撃する二段構えです。

日本にミサイルが飛んで来るといっても、米国が「5015作戦」で、北の核施設やミサイル基地など約700ヵ所を一斉攻撃した後、生き残った車載型ミサイル発射装置(Transporter Erector Launcher;TEL)から日本に発射されることになりますが、飛んでくるミサイルの数を考えれば、約15隻は配備される日米のイージス艦により、迎撃は可能だと思います。

同時に「緊急対処事態」と認定され、国民保護法により各自治体や警察、消防が国民を守るための行動をとることになります。

また「武力攻撃事態」と認定されれば、「PAC3」も首都圏や原発などの重要施設への重点配備に変更し、日本の中枢部を防護し被害極小化を図ることになります。

ただ日本の場合は、憲法上自衛のための「必要最小限度」の武力行使しかできませんので、米軍と一緒になって北を攻撃することはしませんし、兵器体系からも他国の領土を攻撃できません。ただ日本に対して危害をなすものは全て排除するということです。

――今後の展開をどう予想しますか。

「5015作戦」は今でも大統領が命令すればいつでも実施できる状況です。

米韓合同演習が、2015年夏以降、年2回ずつ既に5回行われています。部隊だけでなく、司令部要員が、敵の戦力動向や展開状況に応じて作戦を修正し現場部隊を指揮する「指揮所演習」も行っています。

この作戦にGOをかけるには、米大統領による「自衛権」の発動か、国連の「武力制裁」決議が必要です。現時点では、どちらの条件も整っていません。

また特に米国共和党政権は、元来「国益」でしか戦争はしません。米国軍人の基本的な考え方も同じです。

私は、トランプ大統領にとって朝鮮半島は、中東と異なり、軍事介入するほどの国益があると考えていないのではないか、と見ています。

ですから経済制裁を強化し、北を孤立させて締めあげる戦略になるのだと思います。

これまで国連の「経済制裁決議」が何度もされてきましたが、抜け穴があり、制裁しているように見えてほとんど何もしていない国があった、といっても過言ではありません。

11月にようやく中国やロシアも賛成して原油取引を制限するなど、実効が期待できそうな「経済制裁」をすることになりました。その効果が出るのは12月以降です。

だからいまは北の反応も含めて状況を見てみようというスタンスだと思います。制裁の効果が本当に出るかどうかのキーは、中国がきちんとやるかどうかですから、今回の米中首脳会談でもトランプ大統領は、習主席にこの点を確認したのでしょう。

「4つのNO」を“餌”にして北朝鮮を話し合いの場に

――しかし制裁決議の「厳格な実行」では合意しましたが、北への圧力強化を求めた米国に対し、中国は「対話と協議」を基本にするということで平行線でした。

私が注目しているのは、ティラーソン国務長官がいう「4つのNO」です。

その4つというのは、(1)米国は北の政権交代は求めないし、(2)北の体制崩壊も求めない。また(3)軍事境界線を軍隊は超えない、つまり先制攻撃はしない、そして(4)朝鮮半島の統一を急がない、というものです。

これは北の核全面放棄を促すいわゆる「飴玉」です。つまり北が核放棄をするのなら、この4つを約束するから、交渉に乗って来い、ということです。

「4つのNO」は、4月の最初の日中首脳会談の時に、中国が、米国と北朝鮮を仲介するにあたって、「手ぶらじゃ、北は乗ってこないから」というので、米国に求めた条件だったと思います。

習主席は今度の首脳会談でも改めて「4つのNO」が変わっていないことを確認したのだと思います。

中国としてはトランプ大統領に軍事行動のGOの号令をかけられたら困る。北が崩壊すれば、中国は、米国の影響下の韓国と直接、国境を接することになり緩衝地帯を失います。しかし制裁をやり過ぎたり、中国が北との貿易を完全に絶つだけでも北は崩壊する可能性がある。

だからふわふわとした形で軟着陸させたいというのが本音でしょう。

つまり「4つのNO」を前提に、北を話し合いの場に載せるしかないと思っているのだと思います。

中国と北朝鮮は関係最悪 「6者協議」の再開が落としどころ?

――となると、今後は中国が対北朝鮮説得により力を入れるということですか。

問題は中朝関係が良好とはいえず、中国側に金正恩氏とのパイプがなくなっていたことです。

特に北朝鮮側には中国への不信感が強いのです。「4つのNO」の中に、わざわざ「北の政権交代を求めない」というのが一つの項目として入っているのは、中国が過去に、政権交代、つまり金正恩氏を降ろそうという考えを持っていたと、米国も認識していることの証左です。

金正恩氏が、ナンバー2で中国との窓口だった張成沢・国防委員会副委員長を粛清したのも、張氏が中国と連携して金正恩を排除しようとしたから、ともいわれています。

金正恩氏は中国が自分を抹殺するのではないか、との疑いを抱いていますから、絶対に中国に行かないわけです。中国が行うことは、まず金正恩氏を説得するための人的パイプ作りをすることなのでしょう。

――米中で握っても北のミサイル開発は止められないということですか。

11月17日、中国対外連絡部のトップ、宋部長は先月の共産党大会の結果を説明するため、習近平国家主席の特使として平壌を訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長の信頼がとりわけ厚いとされる側近の崔龍海(チェ・リョンへ)副委員長と会談しました。

トランプ大統領の訪中を受け、ついに中国が北朝鮮との人的パイプ再構築を始めたと見ることもできます。また、ロシアが北朝鮮と急接近していますから、中国はこのあたりも視野に入っているのでしょう。

結局は、かつての「6者(米韓日中露と北朝鮮の)協議」のような枠組みで、交渉再開といったことが落とし所にならざるを得ないのかもしれませんが、トランプ大統領は、少なくともそこまで持っていくのに、北に圧力をかけられるのはやはり中国しかない、ということを伝えたのだと思います。

ただ北も簡単には中国の言うことを聞かないこともわかっていますから、米中首脳会談ではそれほど厳しくやりあうことはなかったのでしょう。

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