『「トランプ暗殺」を想起させた乱射事件 さすがのNRAも連射可能な「バンプストック」販売禁止を提案』(10/11日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

映画『ニューオーリンズ・トライアル』(2003年公開)は、銃規制させないように動く銃製造会社とその下で働く陪審コンサルVS以前陪審操作で敗訴した被害者の友人の対決を描いた物でした。Wikiによれば、「ニューオーリンズで銃乱射事件が起き、犯人は11人を殺害したのち自殺する。この事件で夫を亡くしたセレステはベテラン弁護士・ローアを雇い、犯行に使われた銃器の製造と販売責任を求めて、銃を製造したヴィックスバーグ社を訴える。ここに全米が注目する銃規制裁判が始まる。」と。でも原作はJグリシャムの“The runaway jury”『陪審評決』です。原作は銃会社でなく、タバコ会社です。『インサイダー』(1999年公開)がタバコ会社を訴える内容であったため、銃会社に置き換えたとのこと。

今回の銃乱射事件での被害者の内、58人が死亡したとの発表です。日本人だったらすぐに「銃規制すれば問題解決するのに」と思います。米国人は独立戦争、インデイアンの土地強奪のためには、銃は手放せなかったのと思います。それが憲法修正第二条になって現れているのかと。秀吉の時代に「刀狩」して来た我々の歴史とは違います。銃規制は米国人のDNAレベルで拒否されるのかもしれません。「自衛の権利」の放棄と感じるのかも。日本国憲法第9条は素直に読めば、自然法に反すると解釈されます。2項を修正するのが理想でしょう。ただ、国民がメデイアの反戦(=中国、朝鮮半島とのみ)洗脳を受けているので、3項を加えて「自衛隊の存在を明記」するのもやむを得ないかと。ただ、自衛隊の活動を制約しないよう法律はネガテイブリストにし、戦死者の補償と靖国に祀られることも併せて約束せねば。今までの殉職自衛官をどうするかの問題はありますが。

今度の銃撃事件はテロ対策の難しさを浮き彫りにしました。人の集まる場所での銃撃を防ぐには周りの建物全部をチエックしなければなりません。コストと手間がかかります。オリンピックのような国際イベントでしたら客も我慢するでしょうが、小さなイベントではそれもできません。米国は大統領のケネデイやレーガンの銃撃事件もありました。完全に防ぐのは難しいでしょう。被害者数を減らす規制しかできません。

記事

米ラスベガス銃乱射事件の被害者を追悼するため多くの人がろうそくを持ち集まった(写真:ロイター/アフロ)

—ラスベガスで、米国史上最悪の銃乱射事件が起きました。米国民は今度こそショックを受けているのではないですか。

高濱:米主要紙のベテラン記者は筆者にこうコメントしています。実に意味深です。今の米国民のホンネを吐露しているからです。

「事件発生の瞬間、編集局にいた。『オー、ノー』との声が響き渡ったが、雰囲気的には、<またか>といった感じだったね。銃乱射事件には、もう慣れっこになっていて」

「ところが犠牲者が50人を超えたころからシーンと静まりかえった。<射撃犯は誰か>と固唾を飲んでいるうちに、<白人の男だ>と判明すると、誰かが『イスラム教徒によるテロじゃなかったのか』と反射的に叫んだ。これがイスラム教徒だったら号外が出たな」

—確かに、これがイスラム教過激派分子の仕業だったら、トランプ大統領だって、(まだ犯人の動機すら分かっていない段階で)「純粋な悪の所業だ」などとコメントはしなかったでしょうね。

高濱:そうだと思います。トランプ氏は、16年6月にフロリダ州オーランドでイスラム系「ホームグローン・テロリスト」が乱射事件を起こした時には「すべてのイスラム系移民は米国の安全を脅かす潜在的脅威である」と声を荒げていました。今回だって乱射犯がイスラム教徒だったら、「それ見たことか」とイスラム教を激しくなじったと思います。 (”Blaming Muslims After Attack, Donald Trump Tosses Pluralism Aside,” Jonathan Martin, New York Times, 6/1/2017

犯人は退職した会計士。ギャンブル好きで秘かに大量の銃火器を集め、ボストンなどでの乱射も計画したようです。それ以上のことはまだ謎のままです。

「乱射犯はテロリスト」と報じたメディアは皆無

リベラル派の作家で公民権運動の活動家でもあるシャーン・キング氏は、ニュースサイトにこう書いています。「私の知人のあるイスラム教徒は、乱射事件の第一報を知り、『どうか、イスラム教過激派ではありませんように』と祈ったと言っている。黒人の友達も『犯人が黒人でないように』と祈っていた」

「もし乱射犯の犯人がイスラム教徒だったら、トランプ大統領はどんな大統領令を出しただろう。メディアはこぞって『犯人はテロリスト』と大々的に報じただろう。おそらく米国は大混乱に陥ったに違いない」

「ところが、犯人が68歳の白人と判明するや、主要紙は『犯人は一匹オオカミだった』と競って報じている。テロリストだと報じた新聞は一紙もなかった」 (”The White Privilege of the ‘Lone Wolf’ Shooter,” Shaun King, theintercept.com., 10/2/2017

――トランプ大統領は今回の事件を受けて、銃規制を強化すべく動きますか。

高濱:実は、トランプ氏は大統領選に出る前、銃規制に前向きだった時期があります。2000年に出版した著書*で「共和党議員たちは全米ライフル協会(NRA)の人質になっている」と激しく批判しています。また12年、コネチカット州ニュータウンで小学生26人が犠牲になった際には、バラク・オバマ大統領(当時)の銃規制強化を評価していました。

*:「The America We Deserve」。当時トランプ氏は「改革党」(Reform Party)から大統領選に立候補することを模索していた。

しかし16年の大統領選に立候補すると、銃規制に猛反対するNRAから「カネ」と「票」を提供されて「宗旨替え」。それ以後はNRAとの間に「しがらみ」ができてしまいました。

今年4月にはNRAの年次総会に出席して「私はNRAの真の友。擁護者だ」とぶち上げています。現職大統領がNRA総会に出席するのは、ロナルド・レーガン第40代大統領以来、30年ぶりのことです。

—なぜNRAはそれほど大きな力を持っているのですか。

高濱:銃は、米国人が建国以来、信じて疑わない「自らの身は自分で守る」という精神の象徴。それを保持する権利が憲法修正第2条に明記されており、合憲だからです。

NRAは合憲であることを金科玉条にし、上下両院の共和党議員たちに銃規制に反対するよう働きかけてきたのです。その見返りとして政治資金と「組織票」を提供してきました。

今回の事件が起きる4か月前、ワシントン近郊のアレキサンドリア市(バージニア州)で野球の練習をしていた共和党議員数人が銃撃される事件がありました。そのうち院内幹事を務めるスティーブ・スカリス下院議員(ルイジアナ州選出)が重傷を負った。ですが、銃規制に向けて共和党はなんの動きも見せていません。共和党下院の大物議員が九死に一生を得たにもかかわらず、ですよ。 (”Congressman among several people shot at congressional baseball practice,” Peter Jacob, Business Insider, 6/14/2017

銃規制反対がまかり通る「非多数代表制民主主義」体制

議会がなぜ銃規制強化に踏み切れないのか。それについて著名なジャーナリスト、E・J・ディオン氏はこう解説しています。「いま米国を席巻しているのは『非多数代表制民主主義』(non-majoritarian democracy)*なのだ。つまり、現在の選挙制度で選ばれる議会では、非都市圏、人口の少ない州の利益を代弁する議員の影響力が強い。都市圏や人口の多い州の影響力が人口の割に弱いのだ。その良い例が銃規制をめぐる議会の決定だ。都市圏で選出された議員*が規制強化を提案しても、最後には、規制強化に反対する非都市圏出身の議員に押し切られてしまう。

*:majoritarianとは、単一の政党が決定した政策や方針を体現する候補者を有権者が選出する選挙制度のこと。

*:南部や中西部では「God, Gay, and Guns」(神、反同性愛、銃)が選挙のスローガンになるくらい、銃規制を阻止することが選挙に勝つための必須条件になっている。

民主、共和両党の都市圏選出議員の多くは、銃を購入する者の身元確認・身辺調査、殺傷性の高い銃販売の禁止、監視対象リストに載っている精神障害者への銃販売禁止などに賛成している。にもかかわらず採決になると非都市圏選出議員たちの反対で退けられてきた。真の意味で人口比を反映する多数代表制民主主義がこの国には存在しないのだ」 (”Why the majority doesn’t rule on guns,” E.J.Dionne, www.realclearpolitics.com., 10/4/2017

—ところで今回の事件を受けて、これまで鉄壁だったNRAも銃規制で動きを見せていますね。

高濱:NRAは10月5日、ラスベガス乱射事件の容疑者が所持していた、銃の連射を可能にする部品について「追加制限を課すべきだ」と言い出しました。これに対してトランプ大統領も「短期間の間に(この追加制限について)検討する」と語っています。

容疑者は、銃撃の反動を利用して毎分400~800発の連射を可能にする「バンプストック」(bump stock)*を所持していたと言われています。NRAはこれを規制すべきだというわけです。

*:米国は「フルオートガン」の販売を禁じている。だが、フルオートに改造するキットは入手できる。それが「バンプストック」。「バンプファイア」「スライドファィア」とも呼ばれる。

—NRAが柔軟な姿勢を示した背景には何があるのですか。

高濱:さすがにこれだけ多くの死傷者を出せば、大統領も議会も銃規制に動かざるを得なくなると見たのでしょうね。トランプ大統領に「助け舟」を出した。

それに今回の乱射事件で度肝を抜かれたのはトランプ大統領その人でしょう。コンサート会場に集まったこれだけの人たちを400メートル以上も離れたところから一瞬にして撃ち殺せるとすれば、支持者を大勢集めてしばしば集会を開いているトランプ大統領の命を狙うのは朝飯前です。まさに「ジャッカルの日」*の再現ですよ。

*:フレデリック・フォーサイスが71年に出版したサスペンス小説。ドゴール仏大統領の暗殺をもくろむ「ジャッカル」が主人公。

まあ、それを防ぐために巨額のカネ*を使って、シークレットサービスが24時間体制で大統領を守っているのでしょうが。それでもリンカーン第16代、ジョン・F・ケネディ第35代大統領が暗殺された歴史を持つ米国のこと。何が起こるか分かりません。

*:トランプ氏が大統領に当選して以降、シークレットサービスが大統領および家族に費やした護衛費(5月段階で)は1億2000万ドルとされる。

(”Congress Allocates $120 Million for Trump Family’s Security Costs,” Nicholas Fandos, New York Times, 5/1/2017

ということは、今回のような野外コンサート会場での乱射事件が、メジャーリーグの球場でも、大統領が野外で行う大集会でも起こる可能性があります。大統領一人を標的に「暗殺」するのではなく、そこに集まった人たちに対して無差別に乱射する中で大統領も射殺する犯罪が起こりうるのです。

今回のような乱射事件を再発させないために、従来のテロが生んだ銃規制とは次元の異なる規制につながりそうな雲行きになってきました。「精神障害の一匹オオカミ」が400メールも離れたところから大量虐殺乱射するのをどう防ぐか。そのための規制です。

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