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11/16ZAKZAK 『日本企業が中国から続々撤退し始めた! チャイナリスクに嫌気か パナソニック、サントリー、カルビー…』について

中国の詐術について日本企業もやっと気づいたところでしょうか。中国は金と技術を持ってくるのは「大歓迎」しますが、技術・ノウハウを盗めば後は用無しとなります。撤退するにしても合弁会社は「董事(=director)全員一致の原則」があり、一人(中国人)でも反対すれば清算することすらできません。況してや、発展委員会の承認、財務局の税務審査、工商局の審査等幾重にもパスしないといけないので、少なくとも2年くらいはかかると見て良いです。

撤退に当たり、カルビーのやり方が一番のお勧めです。1元(≒20円)で持ち株全部を合弁の相手方に売却すれば、スンナリ認められると思います。ただ譲渡契約は「今後起きる問題(含む税問題等)について、過去に原因があっても日本側は負担しない」とか詳細に不利益を蒙らないように記載しておかないと、後々訴えられます。日本の常識では考えられないことですが、それをするのが中国人です。相手の弱みを突いてきますので、事前に気が付くかどうかがポイントです。中国の法律は隙間があり、落とし穴となります。また裁判官も必ず賄賂を取りますし、立派な法律があってもその通り運用されることもありません。今までの投資をムダにすると思うのではなく、中国進出の授業料(如何に中国人と言うのは狡猾かを理解しないとまたやられます)、エネルギーを新しい分野に注げるという風に思うのが正解だと思います。そもそも中国事業で利益を出している企業は少ないと思いますので。

今後、中国に進出している日系企業は、円安でもあり、日本に回帰し、雇用と新技術創出に金を出すべきです。間違っても敵国に金を出すべきではありません。企業経営者は、子子孫孫が戦争or隷従の危機にあると言う自覚が必要と思うのですが。中国には拠点を置かず、輸出(キャッシュオンデリバリー)で対応すべきです。

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 中国リスクに翻弄され、工場撤退や合弁解消などに踏み切る日本企業が相次いでいる。ここにきて中国経済の減速も相まり、日本から中国への直接投資実行額は1~9月で前年同期比25%減と、数字上でも日本企業の対中進出の衰えが見え始めた。中国市場の巨大さや、安価な人件費にひかれて中国に進出した企業は多いが、突然の規制変更やコスト増など中国リスクに直面し、拠点を他国に移すなど戦略を見直す動きが広がっている。

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 中国政府の規制変更によって、上海でのデータセンターの事業計画が頓挫の憂き目にあったのは、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)。米エクイニクスやKDDIなどの競合に先駆け、世界で初めて独自資本で中国(上海)にデータセンターを開設する予定だったが、中国政府が今年1月、突然、データセンター事業の運営には免許が必要だと方針を変更し、独自での事業展開を撤回せざるをえなくなったのだ。

 NTTコムは上海のデータセンターを自社で運営するにあたって、共産党関係者や現地の法律事務所関係者とも折衝を重ね、「グレーゾーンだが問題はない」という感触を得ていた。

 データセンター事業に詳しい関係者からは「中国では現地ビジネスに明るいパートナーと組まないと無理だろうなと思っていた」と冷めた声も聞かれる。

 突然の方針変更に、NTTコム関係者は「自国企業を守るため、当社のデータセンター事業を意識したのは間違いない」と苦虫をかみつぶす。

 中国の通信事業に詳しい関係者も「法制度の解釈権は中国側にある。あるときには何も言われなくても、急に『ここはこうだ』といわれることも多い」と、中国ではこうした朝令暮改は日常茶飯事だ指摘する。

一方、浙江省杭州市にあるスナック菓子の製造・販売合弁会社を設立わずか3年で売却することを決めたのはカルビー。合弁会社の51%の持ち株全てを、合弁相手の康師傅方便食品投資にたった1元(約19円)で譲渡する。

 売却の背景には、売り上げが伸びず赤字が続いたことにある。5年で500億円を見込んでいた売上高が100分の1のわずか5億円程度にとどまった。発表資料によると、これに伴い、最終赤字は進出した2012年12月期が500万元、13年12月期が4900万元、14年12月期が7100万元と年を追うごとに拡大。早期に改善が見込めないと判断、12年8月の設立からわずか3年での撤退となった。

 合弁会社には、カルビーが51%、中国の食品大手・康師傅グループが45%、伊藤忠商事が4%をそれぞれ出資。「じゃがビー」や「かっぱえびせん」を販売している。中国での「じゃがビー」の価格が一般的なスナック菓子の約1.5倍と高価なことから苦戦が強いられた。また、「かっぱえびせん」は、中国でエビを使った競合商品が多く、差別化を打ち出せなかったことも響いたようだ。康師傅側とはこうした商品戦略で意見の違いが目立ち、最後まで折り合えなかったという。

 わずか1元で持ち株を手放すのは、「早く中国戦略を仕切り直しをして、再挑戦するため」(市場関係者)とみられている。カルビーは青島や香港にも製造や販売の拠点があり、スナック菓子の販売は今後も継続する。

今年に入り、中国から撤退する企業が目立って増えている。2月にパナソニックが液晶テレビ生産、エスビー食品がカレールウなどの生産を打ち切ることをそれぞれ発表。サントリーホールディングスは中国ビール2位の青島ビールとの合弁を解消、合弁相手の青島に製造販売をまかせ、ライセンス料を得る形に移行する。また、ホンダも湖北省武漢に新工場を建設する構想があったが、中国経済の減速を受け、当面見送る。

 日本企業が中国の生産拠点を撤退、縮小の方向に舵を切っているのは、経済失速のほか、人件費の高騰や政策変更などリスクがつきまとい、中国での事業が「割に合わない」状況になっているためだ。

 東京商工リサーチまとめた調査によると、中国リスクによる日本企業の関連倒産は今年1~10月累計で63件に上り、前年同期の43件に比べ5割増加した。倒産に集計されない事業停止や破産準備中など実質破綻を含めると、この数はさらに膨れあがる。

 日本企業が中国への直接投資を拡大したのは、「安い人件費」や「巨大な市場」に魅力を感じたのに過ぎず、事前に政治を含む中国リスクを詳細に分析した企業は多くないとの指摘もある。

 一方で、ネット上には中国から撤退や事業縮小した企業に対し、「英断」といった肯定的な意見も寄せられている。中国リスクと付き合って、これ以上損失を広げない意味から、撤退を正しい判断と評価しているようだ。

 中国にどうコミットしていくか、日本企業の間でも今後判断が分かれていきそうだ。(大坪玲央、松元洋平)

11/15神楽坂散策について

11/15に義父母の13回忌・7回忌が牛込柳町の寺院で開かれ、親戚が集まりました。神楽坂近くの蕎麦屋で会食。その後神楽坂を散策。夜になり、家族で神楽坂・結喜菜(ユキナ)で世界のクラフトビール、珍しい日本酒・ワインを楽しみました。

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結喜菜

 

 

 

 

 

11/12日経ビジネスオンライン The Economist『人民元のSDR採用をにらむ、IMFの隠れた狙い』について

本記事は中国の実態を知らずに書いているのではと感じました。中国の金融改革を促進何て西側の期待するように中国が動く訳がありません。利用できるものは利用するという発想があるだけです。日本が後押しして2001年にはWTOに加盟させ、貿易で経済的利益を得たにも拘わらず、2010年には尖閣で自国の主張を通すために、平気でレアアースの輸出を止めた国です。TPPもアメリカが中国のルール破りに業を煮やし、日本を誘って中国はずしを狙ったものと理解しています。国営企業の多い中国は入れないようにしています。同じ共産国のベトナムが国営企業の割合をどうするのかも問題でしょうけど。

中国人民銀行総裁の格はそれ程高くはありません。戴相龍元総裁はその後天津市長になるくらいのポストです。経済政策は共産党の政治局常務委員が決め、その通り執行するだけの役目です。なお戴相龍本人は、今年には下の記事のように調査を受けたとあります。奥様が6/25肝臓癌で亡くなったが、本人は身辺調査のため葬儀に出席できなかったとのこと。

「7/3世界日報 「妻喪禮缺席 戴相龍盛傳被査」

Dai Xianglong

前中國人民銀行行長、天津市長戴相龍之妻柯用珍因患肝癌病逝,但於上月29日為她舉辦的喪禮上未見戴相龍本人出席。早有傳聞指出,戴相龍涉嫌在職期間為親屬謀取利益,已被查處。如今戴相龍不尋常地缺席妻子喪禮,更加劇了這一傳聞。

網易路標特刊近日獨家披露,戴妻柯用珍因患肝癌病逝,6月29日早上在北京八寶山出殯,儀式盛大但低調。據香港「蘋果日報」報導,戴相龍沒有出席喪禮,而戴的女婿車峰則因為回北京欲看岳母最後一眼,而被當局拘查。

據消息人士披露,柯用珍6月25日去世,從確診到去世僅半年;遺體告別前一天,她的家人已在八寶山守靈。送別會在八寶山殯儀館竹廳,場面盛大而低調。靈堂前停滿各式豪車,吊唁者一個小時内絡繹不絶,有些甚至帶著隨從人員;敬輓花圈從靈堂四周延伸至門外數公尺。連殯儀館工作人員也有些驚訝,稱「規模太大了,死者應該很有身分」。

報導未透露戴相龍是否現身告別儀式。不過「蘋果日報」引述消息指出,「戴前行長沒有出現」,有「民生銀行一位大佬出席」;但不能確認這位民生銀行大佬是前董事長董文標抑或現任行長洪崎。據報導,沒有現任中共高官出席喪禮。若此説屬實,無疑大大加重盛傳已久「戴相龍出事」傳聞的可能性。

今年4月,包括彭博社、「商業周刊」等多家國際媒體披露戴相龍被中紀委調査的消息,但戴隨後接受央行内部刊物專訪談「退休後的家庭生活」,似有對外闢謠之意。消息人士指當局對戴展開調査主要針對其在任人行行長、天津市長及全國社會保障基金理事會理事長期間,涉嫌利用其影響力或掌握的内部消息為親屬謀取利益。

據報導,調査戴相龍家族的決定,是根據對前國安部副部長馬建的調査作出的,馬建則因涉嫌「嚴重違紀違法」,於今年1月被中紀委宣布立案調査。70歳的戴相龍一直被視為前總理溫家寶内閣的重要閣員之一。」

IMFの2つの基準には「自由な資本取引」の項目が入っていないとのこと。それはIMF設立時に当然共産主義国は入って来ないのを前提にしていたからではないのか。法律の不備と同じです。中国的社会主義市場経済=政治は一党独裁、経済は強欲資本主義の意味です。自由を認めない国に信用と言うアドバンテッジを与えるというのは如何なものか。民主主義とかキリスト教とか言っても世界に植民地を作って搾取してきた歴史があるので、もろ手を上げて良いものだと言う訳には行きませんが、科学技術の進歩により、世界の出来事がそこそこ見えるようになり、国民も判断できる素材が容易に手に入るようになりました。民主主義・自由主義>共産主義だと思います。人民元をSDR通貨にすれば、過剰債務・過剰在庫に悩む中国のやり方が世界に混乱や不景気を招く気がしてなりません。

記事

 1969年夏は、様々な出来事が起きたため人々に強く記憶されている。人類が初めて月面に降り立った。野外ロックコンサート「ウッドストック」が開かれた。そして、米軍がベトナムから撤退を始めた。国際通貨基金(IMF)が「特別引き出し権」(SDR)を創設したのも1969年夏のことだ。このことは、同じ時期に起きた出来事の中でもとりわけ注目すべき事象というわけではない。SDRは人工的な準備通貨であり、世界の金融システムにおいて脇役にすぎない。だが今後数週間にわたって、中国がSDRにスポットライトを当てることとなろう。

高まる人民元の重要性

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出所:The Economist/Society for Worlwide Interbank Financial Telecommunication/IMF

 問題となっているのは、SDRを構成する通貨バスケットにIMFが人民元を含めるかどうかだ。IMFは結論を11月末に下すと見られている。通貨バスケットは5年ごとに見直しが行なわれ、その一環として人民元の問題が検討されている。1990年代末以降、SDRは4つの通貨――ドル、ユーロ、ポンド、円――で構成されてきた。IMFはSDRの一部を出資金に応じて加盟国に配分している。加盟国は国際収支が悪化した時などに、SDRを外貨に交換して対外支払いに充てることができる。

象徴的意味は極めて重い

 SDRバスケットに人民元が採用されることは、人民元が準備通貨――容易に取引ができ、資産の優れた保存手段となる――としてIMFからお墨付きを得ることを意味する。だからといって、すぐにも人民元がドルのライバルとなるわけではない。SDRの発行残高は3000億ドル(約37兆円)をやや上回る程度、世界の外貨準備高の2.5%を占めるにすぎない。人民元の構成比率はごく小さいうえ、通常、対外支払いをSDRで行なう国は稀だ。

 とはいえ、仮に人民元がSDRバスケットに採用されれば、その象徴的な意味合いは極めて大きい。各国の中央銀行は人民元を保有することへの抵抗感を弱めるだろう。機関投資家も同様だ。英スタンダードチャータード銀行は、もしIMFが人民元をSDRバスケットに加えれば、今後5年間にさらに1兆ドル(約123兆円)が中国の資産に振り向けられると試算している。

利用度合いも急速に高まる

 こうした検討が行なわれるだけでも、驚くべきことかもしれない。人民元は、その価値を決定するのに中国人民銀行が重要な影響力を及ぼしているし、自由に交換可能な通貨でもないからだ。中国は、国民が海外へ送金する額にも、外国人が中国へ持ち込む額にも規制を課している。だが交換可能かどうかは、SDRバスケットの構成通貨となるための必須の要件ではない。IMFのスタッフが8月のレポートで説明していたように、満たすべき基準は2つだけだ。その通貨を発行する国が主要輸出国であることと、その通貨が幅広く利用されていることである。

 中国は2009年以降、世界最大の輸出国としての地位を保ってきた。したがって1つ目の基準は文句なく満たしている。だが、2つ目の基準については、話はそれほど簡単ではない。人民元は他のSDR構成通貨ほど広範に使用されてはいない。

 人民元は2014年、各国の公式外貨準備高における構成比率で第7位にランクされた。国際債券市場における起債額では第8位、世界の為替取引額では第11位だ。だがここに至るまでの軌跡には目覚しいものがある。外国送金などにおいて利用される銀行間の国際的な決済ネットワークであるSWIFT(国際銀行間通信協会) の推計によれば、国際的な資金決済で最も使用される通貨として5位に位置する。2012年初めの20位から大きく順位を上げた。

SDRの見直しを利用して中国の金融改革を支援

 IMFが人民元の地位を向上させることには2つの暗黙裡の目的がある。第1は、人民元がSDRの構成通貨になれば、中国人民銀行の権威が強化され、同行が進める金融改革を後押しすることになるからだ。中国人民銀行はこれまで中国の金融改革において最も積極的な旗振り役を努めてきた。

 この3カ月、人民元がSDRバスケットに採用されるよう、中国人民銀行は様々な対策を講じてきた――中国国債市場を諸外国の中央銀行に開放したり、人民元の管理方法を変更したりして、市場の役割を高めた。これらは資本の自由化に向けた重要な一歩である。IMFが人民元を拒否すれば、中国の金融改革に水を差すことになりかねない。とりわけ、独占状態をほしいままにしている国営企業の改革努力が遅々として進まない今、そうしたリスクは小さくない。

 第2に、人民元がSDR通貨バスケットの一角を占めることは、中国にとってのみならずIMFにとっても重要な意味を持つ。新興国に今以上に大きな発言権を与える取り組みは、機能不全に陥っている米議会が反対しているため、何年にもわたって停滞したままだ。少なくとも十分な進展は見られていない。SDRは世界最大の新興国、中国にとって残念賞のようなものかもしれない。米コーネル大学のエスワー・プラサド教授は「IMFはその存在を正当化するためにも、これ(人民元をSDRの構成通貨に加えること)を推し進める必要がある」と語る。

11/12・13日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「北朝鮮並み」の日本、「ロシア並み」の韓国 「ねずみ男

ねずみ男」で思い出すのは国連事務総長の潘基文氏です。いかにも小狡るそうな容貌で、人物の内面性を良く表していると思います。韓国人の典型とでも言うべきでしょうか。「息を吐くように嘘をつく」民族ですから。小中華ですので、中国と同じ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」と思っているでしょうし、賄賂社会もその通りでしょう。

そもそも日本が甘やかしてきたのが、彼らを増長させた原因です。やはり、日本人は真のグローバル人材がいなかったという事でしょう。言葉ができるだけでなく、民族性も理解して付き合わないと。福沢の「脱亜論」を守っていれば、大東亜戦争も起こらなかったかもしれません。明治の人達の方が、今の軽薄な語学ができる猿のような人たちと比べると遙かにグローバルな見方をしていたと思います。メデイアの海外駐在なんて、外国の新聞やTV報道を日本に対して伝えるだけで、日本の立場を伝えようとしません。民間外交の最先端にいる人達でしょうに。逆に「従軍慰安婦」など喜んで海外で煽る始末です。語学の効用は否定しません。小生も今「英語」「中国語」を習っています。日本人の立場を英語・中国語で主張するためです。

日米共に韓国は歴史的に見て「裏切り者」体質があると思って付き合った方が良い。そういう意味で、中国元のSDR入りは韓国に有利に働くことになりますので反対ですが。元のスワップがありますので。アメリカのやっていることもチグハグです。金融面だけでなく、軍事面でも、11/9発記事では米中海軍が大西洋で合同演習したとのこと。まあ、米海軍の圧倒的強さを中国海軍に見せつけるにはいいでしょうけど。日本はいろんな意味で自立していかないとダメです。

記事

(前回から読む)

 米国の引力圏を脱し、中国を周回し始めた韓国。では、その韓国と日本はどう向き合うのか。神戸大学大学院の木村幹教授と考える(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

Cold Peace

木村:「日韓関係はべったりとした昔には戻らない」。こう言い続けてきましたが、ようやく政治家や官僚の方々――日本の政策を決める人々に理解してもらえるようになりました。

 日韓は米国を媒介とした準・同盟国でなければ友好国でもない――。この現実を前提に新たな関係を考える必要があるのです。

鈴置:そう言えば、ジョン・ホプキンス大学のケント・カルダー(Kent Calder)教授が最近、木村先生と似た議論をしています。

 日韓関係をロシアと隣国との関係に見立てる意見です。朝鮮日報がインタビューし「韓日が不信を克服したいのなら、首脳の政治的な勇気が要る」(10月31日、韓国語版)という記事で紹介していました。

木村:ケント・カルダー教授は日韓関係の1つの落とし所を「Cold Peace」と表現しています。「信頼関係は存在しないものの、紛争にも至らない平和的な状態」という意味だと思います。

 「信頼関係の構築」などという高いハードルは諦めて、とりあえずは「紛争のない状態」を目指し努力すべきだ――とのアドバイスです。

 逆に言えば、米国のアジア専門家からそんな忠告をされるほどに、日韓は微妙な関係になったのです。

日韓戦争を予防する

鈴置:上手に管理すれば軍事的な衝突は避けられる――つまり、下手したら戦争になるぞ、ということですからね。ついに第3者から見ても、日本にとって韓国は「ロシア並み」の国になったわけです。

日本でも「中国の使い走りとなった韓国は信用できない。放っておけ」という空気が定着しています。韓国を完全に無視した安倍談話に、支持が集まったのもそのためです。

—安倍談話を分析した「『韓国外し』に乗り出した安倍政権」という見出しの記事は非常によく読まれました。

木村:日本人の心情としてそうなるのは分からないでもありません。でも「信頼関係がなくなった」からこそ、不必要な対立を避けるための対話やメカニズム――軍事的なものを含め、本格的な紛争に至らないようにする予防措置が必要となるのです。「むかつくから何の対処もしない」というなら外交なんて要りません。

鈴置:木村先生やカルダー教授のような議論の立て方をすると「戦争を望むのか」と言う人が必ず出てきます。

 でも、これだけ日韓が疎遠になると、現実を直視し「紛争を防ぐ」姿勢でモノを考えておかないと、かえって衝突を起こしかねないのですけれどね。

防衛費は日本の8割

—韓国は軍事的に日本の敵になり得るのでしょうか。

木村:韓国の防衛費は増え続け、現段階ですでに日本のそれの8割に達しています(グラフ「日韓・防衛費の推移」参照)。

グラフ●日韓・防衛費の推移

defence cost in Japan and Korea

注)縦軸の単位は100万USドル。SIPRI Military Expenditure Database(c)SIPRI 2015 のデータを基に木村幹教授が作成

念のために付け加えれば、韓国が意図的に防衛費を拡大させた結果ではありません。韓国のGDPに対する防衛費の割合は3%弱で固定されています。

 韓国のGDP、つまり経済規模が大きくなったからです。経済規模が大きくなれば、当然それにつれて防衛費も大きくなります。

 日本ではこのデータはあまり知られていませんが、昔の「貧しく弱い韓国」は軍事面でも、もう存在しないのです。

—韓国の防衛費が日本に追いついたとしても、その海軍力は極めて脆弱との評価が多いようですが……。

木村:それはそうです。でもこの先、東シナ海や南シナ海で中国海軍と一層厳しく向き合わねばならぬ日本とすれば、韓国との摩擦は避けた方が得策でしょう。余分な兵力をとられて、中国の脅威に専念することができなくなりますから。

薄気味悪いほどの丁重さ

鈴置:その思い――軍事的な摩擦や衝突を避けたいとの思いは、韓国側の方が強いのかもしれません。以下は最近、日本の安全保障専門家から聞いた話です。

  • 毎年、韓国でのシンポジウムに参加する。今年はなぜか異例の接遇を受けた。米国から参加したカウンターパートよりもはるかに良い待遇で、招待者側はしきりに日本との防衛協力を訴えてきた。

 韓国側の丁重さは、薄気味悪いほどだったそうです。衝突の防止に加え、日本の軍事的な能力や意図を探る目的もあるのでしょう。敵であるほど、その情報は必要になりますから。

 自衛官OBの中には日本の運用技術を取りたいのだろう、と見る人が多い。韓国はF15の整備や潜水艦救難艦の運用など、結構重要な技術を自衛隊から学んできました。

 「中国側に回った韓国」に対し、今後は米国が「教え渋る」可能性が高いので、日本とのパイプをなくしたくないのだ、との読みです。

木村:「韓国の丁重さ」には驚きません。10月20日には中谷元・防衛相が訪韓し韓民求(ハン・ミング)国防相と会談しました。

 4年振りの大臣同士の防衛対話です。安全保障関連法に理解を求めるのが訪韓の目的でしたが、防衛問題での交流強化でも合意しました。

「経済」ではなく「軍事」選ぶ

鈴置:10月18日の自衛隊の観艦式には韓国海軍の駆逐艦も参加しました。2002年の東京湾での国際観艦式に韓国海軍は艦船を送りましたが、自衛隊の観艦式に加わったのは初めてです。

木村:米国による「日韓関係の改善圧力」を受けた韓国は、その糸口に「軍事」を選んだのです。これまで日韓両国が関係改善に動く時には必ず「経済」を使いました。

 あえて「軍事」から入ったのは極めて興味深い現象です。日本との軍事的対立を避けたいとの思いが強い証拠だと思います。

 韓国から見ても、日本は危険な存在となっています。歴史認識問題や領土問題で両国の関係がどんどん悪化しているからです。

 もし、国民感情をさらに煽って領土問題などで強硬な政策を主張する政治家が現れれば、思いもかけない状況に陥る可能性もゼロではない。

 もちろん、今のところは日韓両国が戦争になる可能性はほとんどないと思いますし、両国の政治家もそれほど愚かではないでしょう。

 でも、北東アジアの情勢が不安定化していくなかで、長期的には敵対的な関係に移行しても不思議ではないと思います。

独島を日本から守れ

鈴置:同感です。韓国紙の記事を読んでも、書き込みを読んでも「昔のように簡単には謝らない日本」への苛立ちで溢れています。日韓関係が「べったりした昔」には戻らないことに、韓国人も気がつく過程にあるのです。

木村:領有権を争う竹島も、少し前までは日本が武力で奪い返しにくるとは――口ではともかく心の奥底では――韓国の人々は考えていなかったと思います。

 でも、今やそれもあり得る話と一部の韓国人は考えるようになりました。なぜなら、日本人が韓国を信じられなくなっているように、韓国人もまた日本を信じられなくなっているからです。

 つい最近も「竹島の隣の鬱陵島に、海兵隊の実戦兵力を配置する計画」との報道がありました。北朝鮮対策だとの説明が表向きは付いていますが、日本を意識したのは間違いありません。

笑いながら「日本は仮想敵」

鈴置:聯合ニュースの「韓国軍 鬱陵島に海兵隊配置を推進=独島防衛と対北圧迫」(11月6日、日本語版)ですね。「日本」とは名指ししていませんが「外部勢力の独島(竹島)侵攻に対する強力なメッセージ」と書いているところを見ると、対日防衛用です。

 そもそも見出しで「独島防衛」が「対北圧迫」より前に置いてあります。韓国人の本音が垣間見えます。

 1990年代初め――冷戦末期に、韓国国防部が白書で日本を仮想敵扱いしたことがあります。関係者に「ひどいじゃないか」と言ったら、にこにこ笑いながら「我慢してくれ」。

 北朝鮮は本当の敵だから、今更、白書で敵と強調しても予算は増えない。中国やソ連とはこれから国交を結ばなければならないから、余計なことは書けない。ここはひとつ日本に協力してもらい、敵ということになってもらわねば困る――というのです。

 当時は予算獲得用に「日本は仮想敵」と言っていた。誰もそうは思わないから、安心してそう言っていたのです。この頃は実に深い“信頼関係”があったのです。

米軍は助けてくれない

—「日本が攻めてくる」と考える韓国人が結構いるのですね。

鈴置:朴槿恵(パク・クンヘ)政権は中国と一緒になって、日本の集団的自衛権の行使容認や安全保障関連法案に否定的な姿勢を打ち出しました。

 それを支持した韓国メディアが「日本は戦争できる国になる。真っ先に襲われるのは韓国だ」と煽ったことが効いたと思います。

木村:韓国の人々が日本を本格的に仮想敵の1つと考えるようになった理由はいくつかあります。まず、彼らが今の日本社会の変化を「軍国主義への回帰」だと考えていることです。その証拠に日本は韓国に対し何やら強気になってきた――ように彼らには見える。

 さらに加え米韓同盟が揺れていることも、韓国人の対日警戒感を加速しています(「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」参照)。

 米韓同盟が強固なら、日本とも同盟を結ぶ米国が日本の軍事的な挑発にはブレーキをかけてくれることが期待できた。

 でも米韓同盟がこれ以上、悪化すれば米国はいざという時に、韓国の側に立って動いてはくれないかもしれない。現実はともかく米韓同盟への不安は、日韓関係に対する不安にも繋がっています。

対馬を占領すればよい

鈴置:韓国の保守系サイトで面白い記事を見たことがあります。「独島に日本が攻めてくるかもしれない」と反日を煽り、日本の安保法制に反対する人に対し「そんなことはあり得ない。落ち着け」と諭した記事でした。

 筆者は「日韓関係は重要だ。つまらぬ反日をやめよ」との意図から記事を書いていました。しかし「日本の侵攻はあり得ない」理由の1つに「仮に独島を取られたら対馬を占領し、島民を人質に独島返還を交渉すればよいから」を挙げていました。

 これを日本人が読んだら日韓関係はさらに悪化するだろうな、と思ったものです。対馬攻撃論の背景には、韓国で最近高まる「対馬・韓国領土論」が背景にあります。日韓の領土紛争のタネは竹島に留まらないのです(「『対馬は韓国のものだ』と言い出した韓国人」参照)。

木村:先ほど鈴置さんは「日本にとって韓国はロシア並みの国になったか」との感慨を漏らしました。一方、韓国は日本を「北朝鮮並み」に扱うようになっています。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の進歩派政権は、危険な北朝鮮を対決ではなく、融和政策で抑え込もうとしました。

 「厳しい北風ではマントを脱がせることはできないが暖かい太陽なら……」というわけです。今度は日本に対し「太陽政策」を始めたように思われます。ただし、本当にいい関係を作れるとは考えておらず、あくまで計算づくの戦略として、です。

日本の頭を撫でる

—「日本は北朝鮮並み」ですか?!

鈴置:「日本人は野蛮で強大な軍事力を持つ。だから常に侵攻意図がないか調べ、頭を撫でておく必要がある」というのが韓国の伝統的な日本観です。昔から本音ベースで「日本は乱暴者」なのです。

 柳成竜(ユ・ソンヨン、1542-1607年)という文禄・慶長の役(1592―1593年、1597―1598年)当時の朝鮮の宰相がいます。この戦争――朝鮮の呼び方で言えば、壬辰倭乱を詳細に記録した『懲毖録』(ちょうひろく)を書きました。

 柳成竜は敗戦の原因を、日本を軽んじてその動向を見極めようともせず、軍備も怠っていた当時の朝鮮王朝に見出します。

 そしてこの本の冒頭には、彼よりも130年ほど前の宰相、申叔舟(シン・スクチュ、1417―1475年)が死の間際に、王に言い残した言葉を記しています。以下です。

  • 願わくば、わが国が日本との平和関係を失うことのありませんように(東洋文庫『懲毖録』7ページ、朴鐘鳴=パク=・チョンミョン訳)。

 1443年、若き申叔舟は朝鮮通信使の一員として室町時代の日本を訪れた経験がありました。1471年に刊行した『海東諸国紀』では日本の軍事力の強力なことと、上手になだめすかす重要性を説きました。

朴政権は壬辰倭乱を招く

—日本人は野蛮だから、乱暴してこないよう頭を撫でておくわけですね。

鈴置:その通りです。いまだに韓国の新聞では「何をしてくるか分からない日本」への警戒を呼び掛ける際『懲毖録』か『海東諸国紀』を引用することが多い。「そろそろ……」と思っていたらやはり、2冊とも引用する記事が登場しました。

 尹平重(ユン・ピョンジュン)韓神大教授が朝鮮日報に寄せた「日本、その永遠の烙印」(11月6日、韓国語版)です。以下がポイントです。

  • 『海東諸国紀』の序文で申叔舟は「外敵と向き合う方法は、外征ではなく内治にある」と強調した。日本を「力が非常に強い」国と規定した上で、将来の安全保障の危機に対処するためにも朝廷の綱紀を正すことが最優先課題だと力説したのだ。
  • およそ100年後に壬辰倭乱を招くことになった朝鮮王朝の国政の乱れを予見した記述であり、2015年現在の朴槿恵政権における、外交・安全保障チームの総てに渡る乱脈への警告としても読める。
  • 壬辰倭乱を省察した柳成竜は「日本と近しく」という申叔舟の遺言を『懲毖録』の冒頭に載せた。血と涙の遺言は、21世紀の今も有効だ。

 なお、尹平重教授は引用部分で日本を「外敵」と上品に表現していますが、朝鮮総督府が昭和8年に出版した『海東諸国記』を国立国会図書館のデジタルライブラリーで見ると、原文は「夷狄」(コマ番号6、2行目)です。岩波文庫版(田中健夫訳注)でも「夷狄」(14ページ)です。

 日本をなだめるどころか怒らせた朴槿恵政権への批判です。反日から卑日へ、そして警日へと韓国人はなかなか忙しいのです。

日中が衝突したら……

木村:日本との軍事対話により「軍国主義化する日本」の脅威が自らに向かないようにしたい――と今、韓国人が願っているのは間違いありません。

 韓国人のもう1つの懸念は中国です。日本と中国が尖閣諸島を巡って軍事衝突する可能性が生まれた。それには米国も何らかの形で関与する可能性がある。韓国には、日米VS中の争いにどうしたら巻き込まれずに済むか、という大きな課題が突きつけられています。

—やはり、日韓関係には中国の影が大きく差すのですね。

(次回に続く)

前回から読む)

 日中が衝突したら韓国は中国側に付くのか――。神戸大学大学院の木村幹教授と展開を読む(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

半妖怪の韓国

前回は日韓関係が悪化し、信頼関係も消えた今こそ、紛争の予防を真剣に考える必要があるとの話でした。

鈴置:日韓関係が良くなることは――日本人が韓国に気を許すことは今後、まずないと思います。「韓国はねずみ男」との認識が広まったからです。

—「早読み 深読み 朝鮮半島」の書籍化第1弾である『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』で使った「ゲゲゲの鬼太郎」モデルですね。以下、プロローグの「中国の空母が済州島に寄港する日」から引用します。

  • 読んでくれた知り合いの1人は「韓国って『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる『ねずみ男』のような国なのですね」と言った。確かに、米国たる目玉親父や、日本たる鬼太郎の側にいるようで、肝心な時は妖怪側――中国につくのが「ねずみ男」だ。
  • 日本は今、韓国を注視する必要がある。中国を極度に恐れ、敏感に動く韓国を通じてこそ中国やアジアの先行き、あるいは「新グレートゲーム」の帰趨を見通すことができるからだ。
  • 鬼太郎はねずみ男の言動が怪しくなった時、妖怪がこっそりと近寄ってくるのを感得する。韓国を観察するのはそれと似ている(7ページ)。

尖閣で衝突したら……

鈴置:2013年2月に出版した本です。たった3年弱前の日本には「韓国はこちら側の国」と信じていた人が多かった。

 そのため「韓国は半妖怪」と書いたこの本は驚きを持って読まれました。それが今や「『半』も取れて完全に『妖怪』ですね」と言ってくる人が相次ぎます。

 韓国は中国による南シナ海の軍事基地化に関しても、米国を明確に支持しない。様々の米中対立案件でほぼ、中国側に立つようになったからです(「米中星取表」参照)。まだ、米韓同盟は存在するけれど、韓国の言動は中国の衛星国そのものです。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年11月12日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の 南シナ海埋め立て 米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝 70周年記念式典 米国の反対にも関わらず韓国は参加

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

木村:「妖怪」という表現はどうかと思いますが、かつてとは状況が変わってしまった。だからこそ、新たな関係をどう作るかを考えなくてはなりません。

 万が一、日本と中国が尖閣諸島を巡って軍事衝突する事態になれば、米国も何らかの形で関与する可能性も出てきました。韓国には「日米 VS 中の争いにどうしたら巻き込まれずに済むか」との死活的な課題が突きつけられた形です。

中国と一緒に日本を叩く夢

鈴置:韓国人の相当数が「中国側に立って日本をやっつけよう」という心情にあると思います。2015年2月、わざわざ私に「日中が戦争したら我が国は中国側に付くぞ」と言いに来た韓国人がいます。

 この人は近未来小説『朝鮮半島201Z年』を読んで、2012年2月に「離米従中などあり得ない」と“抗議”に来たことがありました。

 その3年後には「米中間では中立」とがらりと立場を変え、日本人に対しては「俺の後ろには中国がいるからな」と肩をいからせるようになったのです。

木村:日中両国が本当に軍事衝突した際には中国側に立ちたいと思う韓国人が、ある程度いるのは事実です。でも、実際にそれをやったら韓国は、米国を自動的に敵に回してしまいます。

 日中間で軍事的衝突が起きれば、一定の確率で日米同盟が発動されます。その時、韓国が中国に加担すれば、米韓同盟は基盤から崩壊してしまいます。

 TPP(環太平洋経済連携協定)に参加しなかったことで、すでに韓国は経済面では「中国側」と疑われています。

 軍事面でも「中国側」を完全に選択してしまうと、かろうじて握っている米国とのロープが切れてしまいます。

中立を宣言して洞ヶ峠

—「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」で先生が使った例えですね。韓国はルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いたがまだ、米国側につながる長いロープ――米韓同盟だけは握りしめているという……。

鈴置:韓国人に米韓同盟を打ち切るハラは今のところ、ないでしょう。

木村:だから韓国は、日中間で軍事衝突が起きた際に中立を宣言できる根拠を作っておきたい。中国が日本と衝突する時には韓国に対し、直接的な軍事的支援ではないにせよ、何らかの形で「支持」を要求するのはほぼ確実ですから。

 その場合、中国に対し言い訳するためにも韓国は、米国はもちろん、日本との軍事的なつながりを残しておく方が得策です。

 少なくとも最低限、日米の軍事的脅威が自らに向けられるのは絶対に避けたいところ。韓国が最近、歴史認識問題で対立する一方で、「軍事」で日本との交渉を急ぐ傾向にあるのは、そのための下準備でもあると思います。

—洞ヶ峠を決め込むわけですね、韓国は。

中国の談話をコピペ?

鈴置:でも、中国がそんな言い訳を認めるとも思えません。すでに「日本の再軍国主義化反対キャンペーン」には韓国も参加させています。

 2014年7月3、4日の中韓首脳会談で朴槿恵大統領は習近平主席とともに「日本の集団的自衛権の行使容認」に関し、「日本に対する憂慮」を表明しました。

 韓国政府筋は「中国に抵抗したが押し切られた」と弁解しています。しかし、そんな弁解をするほどに「中国にNOと言えない韓国」を告白することになってしまうのです。

 安全保障関連法案が2015年9月19日未明に成立すると、中国外交部は直ちに以下の談話を発表しました。

  • 戦後日本の安保政策でかつてなかった行動だ。平和路線を維持し安保面で慎重に行動し、地域の平和と安定に尽くすよう強く求める。

 韓国外交部は少し遅れ、同日朝になって以下のような報道官論評を発表しています。

  • 日本は戦後一貫して維持してきた平和憲法の精神を堅持し、地域の平和と安全に寄与するよう透明な形で推進すべきだ。

 よく似ています。韓国の論評は中国の談話をコピペしたかに見えます。対日批判する時も、中国に「右へならえ」するのです。韓国はヘビに睨まれたカエル状態になっています。

日本にスワップを要求

木村:鈴置さんの言うように、日中有事の際に韓国が中国に「NO」と言うのは次第に難しくなっていくでしょう。

 でも、そうした大状況を変えられないからこそ韓国は、何とか中国の言いなりにならないための材料を作りたいのです。そして材料は多ければ多いほど良いのです。

—11月2日の日韓首脳会談では話題にならなかったようですが、通貨スワップを日韓は結び直すことになるのですか?

鈴置:10月26日、経団連との会合で韓国の全国経済人連合会が「スワップ再開」を求めました。韓国紙にも必要性を訴える意見が2015年夏頃から載るようになりました。

 米金利の引き上げとともに資本逃避が起きて、また通貨危機に陥るとの危機感が高まったからです。

 でも、下手に大声で頼むと「やはり韓国は外貨不足なのだな」と市場に見なされ、本当に危機に陥ってしまう可能性があります。

—日本がスワップに応じれば、問題は起きないのでは?

非礼を覚えている日本

鈴置:日本が応じるかは不透明です。2008年にスワップが決まった後に、日経のインタビューを受けた韓国の企画財務相が「日本は決断が遅い。それでは大国に見なされない」と日本政府を叱りつけました。

 1997年の通貨危機の際は、米銀が逃げ出す中も邦銀が最後までドルをつないだのに、今や韓国紙は「日本のために通貨危機に陥った」と書くようになっています(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。

 財務省や金融界はこうした「非礼」を覚えています。政界にも韓国を助けてやろうとする有力者はほとんどいなくなった。

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領の竹島上陸や天皇への謝罪要求、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の言いつけ外交に反発する支持者から「日韓議員連盟を脱退しろ」と議員に電話がかかってくる時代です。

 近未来小説『朝鮮半島201Z年』で、韓国に対し日本が「ドルが欲しければ中国から借りたら?」と突き放すくだりを入れました(129ページ)。2010年に出版した本ですが、その頃から日本、ことに金融界の空気は変化していたのです。

通貨は中国と同盟

—米国に「貸してくれ」と頼む手はありませんか?

鈴置:米国は日本以上に韓国に怒っている。米国に守ってもらっているのに、中国の要求ばかりきくからです。

 米国はスワップに応じないばかりか、1997年の通貨危機の時のように日本に「韓国とのスワップは拒否しろ」と指示するのではないか、と見る関係者が多いのです。

 「ねずみ男」に甘い顔をしていると「自分は妖怪の仲間とは見破られていない」と勘違いし、ますますつけあがるからです。

—米国も拒否するとなると、ますます『朝鮮半島201Z年』の展開ですね。

鈴置:そもそも通貨の世界で、韓国はドル陣営から人民元陣営に鞍替え済みです。韓国はスワップの7割を人民元に頼るようになりました(「韓国の通貨スワップ」参照)。

韓国の通貨スワップ(2015年11月12日現在)

相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年 10月11日 2017年 10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年 10月13日 2016年 10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年 10月20日 2016年 10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年 2月23日 2017年 2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年 3月6日 2017年 3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年 7月17日  

 

<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)はIMF融資とリンクしない場合は30%まで。

資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

 1997年の通貨危機の際、韓国はIMF(国債通貨基金)の救済を受け、その直後に日本からドルを借りました(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。当時は中国から外貨を借りるなどとは想像もできなかったのです。

 2008年の危機の際には米、日、中の3カ国にスワップを結んでもらい、実際は米国だけからドルを借りました。

 それが今や全面的な中国頼みになったのです。韓国は貿易、通貨戦線で陣営を替えたうえ「そろそろ安全保障でも」といった状況にあるのです。

対越輸出が対日超える

 ちなみに、2015年1―10月の韓国の輸出額の国・地域別順位は1位が中国で2位が米国。2001年以降、長らく3位だった日本は5位に落ち、代わりに香港が3位に、ベトナムが4位に上がりました。

 サムスン電子の大規模スマホ工場があるため、ベトナムへは韓国からの電子部品の輸出が増えているのです。それにしても、韓国の対日輸出が対越輸出に抜かれる日が来るとは、ほんの数年前まで想像もできませんでした。

木村:聯合ニュースが「中国で人民元建て韓国債発行 早ければ年内にも」(11月9日、日本語版)を打っていました。

鈴置: 10月31日の中韓首脳会談での合意を受けたものです。本来は需給調整用の外貨を調達するのが目的の国債です。中韓間の貿易決済で人民元建てが増えているのでそれへの備えだ――と、韓国政府は説明しています。

 でも、本当は中国への援護射撃が狙いでしょう。中国は今、人民元をIMFのSDR(特別引き出し権)の準備通貨に採用してもらおうと動いています。

 韓国が人民元建て国債を発行すれば「国際通貨」とのイメージが増すので、採用を後押しできるとの計算です。米国や日本にとっては「妖怪の通貨」が世界に広がるのは嬉しくないのですが。

脆くなった米韓関係

—米韓関係はそこまで脆くなっているのですね。

鈴置:オバマ(Barack Obama)大統領が朴槿恵大統領を横に置いて「米中どちらの味方なのだ」と追い詰めたのを見て、世界がそれを実感しました(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

—両国はそれを取り繕うことができるのでしょうか?

木村:米国とすれば、韓国が何か具体的な対米協力の意思を示してくれると嬉しいでしょう。例えば、現在建設中の済州島の海軍基地の、有事の際の使用許可です。

鈴置:韓国と北朝鮮が軍事的な衝突を起こした際、韓国はもちろん米海軍の済州島への寄港を大歓迎するでしょう。問題は日中の紛争時です。

 仮に米空母が済州島に寄港しようとすれば、中国は黄海封鎖が目的と見なし、韓国に「受け入れるな」と命じるのは確実です。

 これを見越して韓国は、米艦船が無制限に済州島に寄港しないよう、何らかの歯止めをかけておきたいでしょうね。

反日国家の苦境

木村:となると、韓国が米国に誠意を見せるのは、在韓米軍の駐留経費をこれまで以上に分厚くする――あたりが関の山かもしれません。

 見返りに、北朝鮮有事への警戒を強める韓国も米陸軍を呼び戻す――とまではいかなくても、その削減スピードを落とすことを期待できます。これなら中国の直接的脅威とはならないので、韓国が米中板挟みに陥る可能性も低い。

 米韓の綻びを取り繕う動きを日本は注視すべきです。例えばこの仮説のように、韓国が米軍への待遇を向上させれば、米国は当然日本にもそれを要求するでしょう。米韓同盟が揺らぐからこそ、日米同盟もまた、その内容が問われていくことになります。

 日本の一部に、韓国の状況を「反日国家が苦境に陥っている」と冷笑する向きがあります。しかし変化する国際情勢の中で、立ち位置が問われているのは日本も同じなのです。

2人の釣り師と2匹の魚

鈴置:同感です。韓国はいざとなれば米韓同盟を打ち切って、中立を宣言すればいい。それは実質的に中国の属国に戻る道ですが、だからと言って米国から軍事攻撃を受けはしません。

 一方、日本は中国に立ち向かうことを決めました。「南シナ海はすべて中国のものだ」などというめちゃくちゃな主張を認めるわけにはいかないからです。

 日本は中国から、軍事を含めますます圧迫を受けることになります。それは今後、ずっと続くのです。韓国よりも日本の方が大変なのです。

木村:米中両国が力任せに自国の国益を実現しようとする中、日本も何が最も重要な国益であり、それを守るためには何をすべきかをきちんと考えておくべきでしょう。

 日清戦争のころの新聞漫画に「朝鮮という魚を釣り上げようとして釣り糸を垂れる日清両国と、その魚を横取りしようと狙っているロシア」という有名なものがあります。

 今の国際情勢も似た状況になっています。うかうかしていると、米中という2人の「釣り師」の間で、韓国も日本も「釣り上げられていく魚」になるかもしれません

11/11 ダイヤモンドオンライン 北野幸伯『米国超大物スパイが明かす、中国「世界制覇」の野望』について

何故アメリカは中国に甘く、ロシアに厳しいのだろうか?単なるオリエンタリズムとも思えません。中国は賄賂社会ですが、ロシアだって陸上競技のドーピング問題では組織的に関与していた疑いが濃厚です。両国とも似た者同士に見えるのですが。ロシアはキリスト教(正教)、中国は拝金教(道教、仏教とか言われますが、「中国冥民銀行」発行の「紙銭」という偽札を燃やしたり、紙のダッチワイフを燃やしたり、物欲一辺倒です)で違いますが。勿論、キッシンジャーを筆頭に中国は合法的かどうかは知りませんが要人に金を配って歩いていると思います。周永康の収賄額1兆6000億円を考えると、米要人にも、法外な金が流れていると見るのが正しいでしょう。結局、人間は「金」に転びやすいということです。中国を豊かにすれば、軍拡だけでなく、世界に悪徳を蔓延らせるから、一旦崩壊させ、もっと透明度の上がる仕組みに移行させないと。

アメリカの世界戦略は往々にして間違えます。日本と太平洋を挟んで戦争したのがその最たるもの。結局、中国大陸を赤化してしまって、「中国の門戸開放」を要求していたのにパーになってしまったわけです。馬渕睦夫氏によればそれも英国のユダヤ人の陰謀でそうしたのだという解釈ですが。

百年マラソン(中華人民共和国創立の1949年~2049年)とピルズベリーは捉えていますが、アメリカに対する復讐と言うか、西洋に対する復讐はもっと前から考えていたでしょう。1840年からのアヘン戦争でイギリスに敗れた辺りからではないか。ただ当時の大清帝国は満州族による統治ですが、漢民族の文化に取り込まれていました。今のアメリカもイギリスに取って代わった西洋の代表選手と思っているに違いありません。

中国は世界制覇の野望を隠そうとはしなくなっています。米国の外交・軍事頼みだけでは限界があります。多国間の同盟と、日本の核武装化(憲法問題にはならない)、軍事予算の拡大が求められます。

記事

米中の対立が激化している。現在起こっている米中の対立は、一過性のものなのだろうか?それとも、「米ソ冷戦」のように長期的なものなのだろうか?この疑問に答えを与えてくれる「衝撃の書」がある。

米中関係改善に貢献した米国の超大物スパイが暴露本を出版!

 米国は9月、訪米した習近平国家主席を「冷遇」し、両国関係の悪化が全世界に知れわたった。翌10月末、米海軍は、「航行の自由」作戦を実施。米中の軍事衝突を懸念する声が、聞かれるようになった。

米国はいよいよ、本格的に中国を倒す決意を固めた。米中対立は一過性のものではなく、戦いは長期化するだろう 

 現在起こっている米中の対立は、一過性のものなのか、それとも「米ソ冷戦」のように長期的なものなのか?この疑問に答えを与えてくれる「衝撃の書」がある。米国を代表する超大物「パンダ・ハガー」(パンダを抱く人=親中派)だったマイケル・ピルズベリーの最新作「China2049 秘密裏に遂行される『世界覇権100年戦略』だ。今回は、この本から、米中関係の変遷を読み解いて行く。

 ピルズベリーは現在、ハドソン研究所中国戦略センターの所長であり、米国防総省の顧問も務めている。また、米国の政策に大きな影響力を持つ、「外交問題評議会」「国際戦略研究所」のメンバーでもある。

 そうした「表の顔」の他に「裏の顔」も存在する。本に書いてしまっているので、「裏の顔」ともいえないが、ピルズベリーは24歳の時から、米国のスパイとして働いてきたのだ(40p)。米国の「対中政策」に40年以上深く関わってきたピルズベリーは、この本の中で、「米中関係」の驚くべき「裏話」をたくさん披露してくれている。

 よく知られていることだが、米中関係が劇的に改善されたのは、1970年代はじめだった。米国は、冷戦のライバル・ソ連に対抗するために、「中国と組む」ことにした。主導したのは、ニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官といわれる。特にキッシンジャーは、「米中関係を劇的に改善させた功績」により、「リアリズム外交の神様」と評価されている。

 ピルズベリーは当時20代半ばだったが、「米中和解」に大きく貢献した。ニクソンとキッシンジャーは1969年、「中国と和解した時、ソ連との関係が過度に悪化するのではないか」と恐れていた。ピルズベリーは、ソ連人から情報を入手し、「米中が和解しても、ソ連は米ソ緊張緩和の動きを止めない」ことを伝えた人物だったのだ。

 <ほかならぬわたしがソビエト人から得ていた情報に後押しされて、ニクソンとキッシンジャーはついにその気になったのだ。

 わたしが得た情報とは、「米中が接近しても、モスクワは緊張緩和への動きを中断しないだろうし、中国のあてにならない申し入れをアメリカが受け入れることを大方予測している」というものだ。

 アルカディ・シェフチェンコとクトボイは、まさにその通りのことをわたしに語っていた。>(88p)

「キッシンジャーは毛沢東の計略にはまった」  鄧小平時代には米中「蜜月」に

 しかし、この本にはもっと重要なことが書かれている。「米中和解」を「真」に主導したのは、ニクソンでもキッシンジャーでもなく、中国だったのだ。

 <この交渉を始めたのは、ニクソンでもなければキッシンジャーでもなかった。(中略)

 ニクソンが中国を訪れたのではなく、中国がニクソンのところへやってきたのだ。>(82p)(太線筆者。以下同じ)

 キッシンジャーは71年7月、極秘で中国を訪問。そして、72年2月、ニクソンは歴史的訪中を実現させた。キッシンジャーはすっかり毛沢東に魅了され、中国に取り込まれてしまう。

 <キッシンジャーは毛の計略にまんまとはまり、ニクソンに、「中国は英国に次いで、世界観がアメリカに近い国かもしれない」と告げた。

 中国の戦略を疑う気持ちはみじんもなかったようだ。>(96p)

 当時49歳だったキッシンジャーの「中国愛」は、以後40年以上つづくことになる。こうして、米中関係は劇的に改善された。

「ソ連と対抗するために、中国と組む」−−。これは、論理的に非常にわかりやすいし、米国の立場からすれば「戦略的に間違っていた」とはいえないだろう。両国関係は、毛沢東が76年に亡くなり、鄧小平がリーダーになった後、さらに深まっていく。

 <西洋人にとって鄧は、理想的な中国の指導者だった。

 物腰が穏やかなおじいさんのようでありながら、改革精神に富むバランスのとれた指導者。

 要するに、西洋人が会いたいと思う人物だったのだ。>(101~102p)

 そして、米国は、この「理想的な指導者」を、惜しみなく支援することにした。

 <カーター(註、大統領)と鄧は、領事館、貿易、科学、技術についての協定にも署名したが、それは、アメリカが中国の科学者にあらゆる種類の科学的・技術的知識を提供することを約束するもので、結果的にアメリカの科学的・技術的専門知識の史上最大の流出を招いた。>(111p)

 こうして「理想的な指導者」鄧小平は、米国(と日本)から、ほとんど無料で、奪えるものを奪いつくし、中国に「奇跡の成長」ともたらすことに成功する。まさに、中国にとって「偉大な指導者だった」といえるだろう。

天安門事件と冷戦終結で関係にヒビ 驚きの「クリントン・クーデター」が勃発

 80年代末から90年代初めにかけて、米中関係に大きな危機が訪れる。理由は2つあった。1つは、89年6月の「天安門事件」。人民解放軍は、「民主化」を求める天安門のデモを武力で鎮圧し、数千人の死者が出た。もう1つは、「冷戦の終結」である。

 「ソ連に対抗するために中国と組む」というのが米国側の論理だった。では、「ソ連が崩壊した後、中国と組みつづける理由は何か?」という疑問が当然出てくる。そして、この2つの大事件は、確かに米中関係を悪化させた。時の大統領は、クリントンだった。私たちが抱くイメージとは違い、「クリントンはどの大統領より強硬な対中路線を敷いた」と、ピルズベリーは断言する。

 <大統領選のさなかには、「ブッシュ大統領は、北京の肉屋を甘やかしている」と攻撃した。

 クリントンが大統領に就任するとすぐ、国務長官のウォーレン・クリストファーは、上院外交関係委員会でこう宣言した。

 「わたしたちの政策は、経済力の強化と政治の自由化を後押しして、中国における共産主義から民主主義への広範で平和的な移行を手助けすることだ」>(140~141p)

 米国が反中に転じることを恐れた中国は、なんと米国政府内に「強力な親中派グループ」を組織し、クリントンの「反中政策」を転換させることにした。ピルズベリーによると、「親中派グループ」には、国家安全保障担当補佐官トニー・レイク、副補佐官サンディ・バーガー、国家経済会議議長ロバート・ルービン、財務次官ローレンス・サマーズなどが含まれていた。

 ルービンは、元ゴールドマンサックスの会長で、後に財務長官になっている。サマーズは、ハーバード大学の経済学者で、ルービンの後に財務長官になった。確かに「強力」だ。「親中派グループ」は、政治家の味方を増やしていった。そして、何が起こったのか?

 <ついに1993年末、中国が現在、「クリントン・クーデター」と呼ぶものが起きた。

 中国に同調する面々が大統領に反中姿勢の緩和を認めさせたのだ。

 クリントンがかつて約束したダライ・ラマとの新たな会談は実現しなかった。

 対中制裁は緩和され、後に解除された。>(143p)

 驚くべき事実である。中国はなんと、米国の外交政策を180度転換させることに成功したのだ。

米国から覇権を奪い復讐する! 驚きの中国「100年マラソン」計画

 このように、米中は、「想像以上に深い関係」であることが、この本によって明らかにされている。そして、60年代末からつい最近まで、ピルズベリーは「米中関係を良好にするために」尽力してきた。

 しかし、ここからが、最も重要な話である。ピルズベリーは「中国にだまされていたことに気づいた」というのだ。きっかけは、クリントン政権時代の90年代後半までさかのぼる。ピルズベリーは、国防総省とCIAから、中国の「米国を欺く能力を調べるよう」依頼された。彼は、諜報機関の資料を含むあらゆる情報にアクセスし、研究を行った結果、驚くべきシナリオが見えてきた。

 <これらのタカ派は、毛沢東以降の指導者の耳に、ある計画を吹き込んだ。

 それは、「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものだ。

 この計画は「100年マラソン」と呼ばれるようになった。

 共産党の指導者は、アメリカとの関係が始まった時から、この計画を推し進めてきたのだ。

 そのゴールは復讐>(22p)

 しかし、当時はピルズベリーのこの見解を、ほとんど誰も信じてくれなかった。その後、「中国が世界制覇を狙っている」という彼の確信はゆっくりと強まっていく。

 2006年、国防総省の顧問になっていたピルズベリーは、ウォール・ストリート・ジャーナルで、「私の使命は、国防総省が『パンダ・ハガー』(=親中)にならないようにすることだ」と主張。 そして、「中国政府はアメリカを避けられない敵と見なし、相応の計画を練っている。だから、わたしたちは警戒を怠ってはならない」と警告した。

   中国は、大物パンダ・ハガーの裏切りに激怒した。以後、今まで交流のあった中国人政治家、学者、軍人などとの交流は断ち切られ、中国行きのビザも、なかなか出なくなった。しかし、ピルズベリーはその後も揺れ続けていたらしい。こんな記述もある。

 <2009年になっても、同僚とわたしは、中国人はアメリカ人と同じような考え方をすると思い込んでいた。>(316~317p)

 そして、彼が決定的に反中に「転向」したのは、13年だという。

 <2013年の秋に北京を訪れて初めて、わたしは自分たちが間違っていたこと、そして、アメリカの衰退に乗じて、中国が早々とのしあがりつつあることに気づいた。>(318p)

「China2049」が示す米中関係の未来

ここまで「China2049」の内容に触れてきた。ここで書いたことだけでもかなり驚きだが、他にも驚愕の事実が山盛りなので、是非ご一読いただきたい。

 次に、「この本の位置づけ」について考えてみよう。15年3月、親米諸国が米国を裏切り中国側についた「AIIB事件」が起こった時、筆者は「米国は必ず逆襲する」と書き、その方法についても予測した。(詳細はこちらの記事を参照)あれから半年が過ぎ、予想通り米中関係は、急速に悪化している。

 問題は、最初に触れたように両国の対立が「一過性のもの」なのか、「長期化する」のか、である。

 ところで、この本の冒頭には、「機密情報が漏えいしないよう、CIA、FBI、国防長官府、国防総省の代理によって査読を受けた」とある。つまり、この本には、CIA、FBI、国防総省もかかわっているのだ。巻末には、「謝辞」があるが、その中に、こんな一文がある。

 <ヘンリー・キッシンジャーは中国人の考えを深く理解しており、その知識に基づいて直接的にも間接的にも支援してくれた。>(360p)

 かつて米国ナンバーワン「パンダ・ハガー」だったキッシンジャーが、全面的に協力している。これは、「キッシンジャーが親中派をやめた証拠」といってよいだろう。大物親中派ピルズベリーとキッシンジャーの転向により、今後米国で「パンダ・ハガー」でいることは困難になるだろう。無理に親中派をつづければ、中国との「黒い関係」を疑われるようになる。

   そして、冒頭にある「推薦の言葉」は「決定的」だ。ウールジー元CIA長官は、中国について、こう書いている。

 <本書が明かす中国の真の姿は、孫子の教えを守って如才なく野心を隠し、アメリカのアキレス腱を射抜く最善の方法を探しつづける極めて聡明な敵だ。

 我々は早急に強い行動を取らなければならない。>

 元CIA長官が、ある国について「敵」と名指しするのは、よほどのことだ。そして、ピルズベリー自身は、「アメリカはこのマラソンの敗者になろうとしている」と警告している。さらに、「中国が覇権をとった暗黒の世界」を描き、そうならないために「米国が中国に勝利する方法」まできっちり解説している。

   これらすべての事実からわかることは、「中国の世界覇権の野心を知った米国支配層が、中国打倒の決意を固めている」ということだ。つまり、現在の「米中対立」は、「米中覇権戦争」の一環であり、戦いは「長期化」し、決着がつくまでつづく」可能性が高いのだ。私たち日本国民も、日本政府も、「今は1930年代のように、変化の激しい切実な時代なのだ」ということを、はっきり自覚しておく必要がある。