7/29日経ビジネスオンライン 福島香織『次のターゲットは江沢民ファミリーか 牙城の「電信」にメス、狙うは完全失脚』について

島女史の『本当は日本が大好きな中国人』を読みました。8/1には「士気の集い」で出版記念講演をする予定です。読後感は「日本人の嫌中が進みすぎたので、軌道修正しようと思ったのかなあと」。確かに日本への旅行も転売が多いのでしょうけど、爆買いしてくれています。これは日本のメーカーが中国で作ったものであっても信用できない=自国民が作った物を信用できないという事です。それは中国人が管理する工程(日本人は少ないので)だからです。日本が嫌いであっても、日本文化(ソフトパワー)が好きな人は結構いるとのこと。ノーベル賞作家の莫言(意味は言う莫れ。文革時代、子供が無邪気にうっかり話したことで、親が反革命的とのレッテルを貼られ、批判や暴力にさらされる悲劇がしばしばあり、それを心配)はペンネームですが、子供時代おしゃべりだったので、母親が口うるさく言った戒めの言葉とのこと。彼は「川端、夏目、三島、谷崎、井上靖、水上勉」の影響を受けたとのこと。閻連科(2014年フランツ・カフカ賞受賞、次に中国がネーベル文学賞を受けるとしたら彼との下馬評あり)についての記述あり。『その後、閻連科とは何度も会い雑談も含めて、いろいろな話を聞いているのだが、好きな作家、影響力を受けた作家という話に及んだときに、やはり川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、遠藤周作といった名前が出て来た。この時代の中国人作家はやはり日本近代文学に相当傾倒していたのだなと思う。今、文壇の主流にいる作家の少なからずの人たちが、 「宣伝工作」としての「政治小説」「革命小説」を書くことを目的に解放軍文学部や国家機関の所属作家からスタートしている。そういう彼らが、いわば軍属や国家機関所属の特権で、初めて情緒や耽美や性愛や宗教の表現が満載の日本文学に触れて、驚き心を揺さぶられた記憶は相当深いのだと思う。閻連科も、三島の『潮騒.』について「文学とは女の肌のことをこんな風に描写していいんだ、と衝撃だった」と話していた。 川端康成や三島由紀夫というのは、今の文学系の大学生なども好きな作家の上位に挙げる日本人作家である。川端康成はノーベル賞作家であり中国人受けするのはまだ分かるのだが、三島由紀夫は中国人が嫌いそうな右翼、「軍国主義者」である。だが、私の狭い交友関係の中ではあるが、文学に関わる中国人、あるいは読書家を自任する中国人で、相当若い人も含めて三島由紀夫を読んでいないという人は知らないし、嫌いという人も知らない。フォークナーやガルシア・マルケスを読んでいない人も、三島の『金閣寺』は読んでいる。大江健三郎よりも面白い、という人も多い。莫言、余華、梁文道といった中国の大物作家がみな三島由紀夫に関するエッセイを書いている。莫言は「三島は徹頭徹尾、文人であり、文学のために生き、文学のために死んだ。彼の政治活動の骨子も文学であり文学のためである。非文学的な方法で彼を曲解しては、いけない。傑出した作家というのはたくさんいるが、自らの腹に刃をたて死んだ作家は彼だけだ」と論評。余華は「三島は美と醜、善と悪、生と死を混淆し、ついには著作と生活の境界線まで混淆してしまった」と、梁文道は「三島は非常に典型的なリアリズム小説家」と、 それぞれ三島考を披露している。』。やはり、いいものはいいと言ったところでしょうか。大江が評価されず三島が評価されているのは分かる人が読めば分かるという所でしょう。

中国は共産党の専制にあり、下手すると命まで奪われかねない社会です。人権派弁護士が249人も拘束される社会です。作家と言えど、風向きが変われば拘禁される可能性があります。記事は習VS江となっていますが、江を潰しても次に胡がいます。確かに北戴河会議が7月末から8月初にかけて行われますが、この結果が漏れ伝わってくるでしょうからそれを待ちたいと思います。江沢民は迂闊に出席すると拘束される可能性もあり、危険ですが、ここで習に反撃しないと江派は壊滅の恐れがあり、難しい所です。

「日本が好きな中国人」はいるでしょうが、共産党の持つ野心を軽視してはならないと思います。そこは区別して考えないと。①中国の経済崩壊②中国への軍事的封じ込め③日本の集団的安全保障(日米豪印、台湾、ASEAN、南洋諸島)が必要と思います。

記事

中国共産党中央幹部たちにとって命運を左右する夏の北戴河会議(非公式会議)を前に、前国家主席・胡錦濤の側近、令計画の党籍剥奪が決まり、逮捕、起訴されることになった。容疑に「国家の大量の核心的機密を違法に取得した」とあるので、やはり周永康と同じく裁判は非公開となることだろう。薄熙来、周永康らの”政変計画”に関与していたとの噂はあるものの、公式報道では”政変”のセの字も出ていないので、このあたりの疑惑が明らかにされることも当分なさそうだ。これで”新四人組”と呼ばれた習近平の権力の座を脅かす獅子身中の虫はすべて完全排除されたことになるのだが、では習近平の反腐敗キャンペーンという名の権力闘争は終わるのか、というとそうではなく、早くも次の「大虎」が浮上している。いよいよ江沢民ファミリーに着手されるのではないか、というもっぱらの”噂”である。

なぜ「遠方より花輪」なのか

 7月15日、鄧小平の片腕であった中国共産党元老の万里(元全人代常務委員長)が死去したが、その時、江沢民は欠席して花輪だけ送った。6月19日にやはり中共元老の喬石の葬儀が行われたが、この時も江沢民は欠席して花輪だけを送った。公式メディアは「江沢民は遠方より花輪を送った」とわざわざ報じた。喬石も万里も、ことあるごとに江沢民と対立しており、仲が悪かったから葬儀を欠席するという非礼を犯した、ともいえるが、長老の葬儀に、職務の都合で現役・引退指導者が欠席することはままあることなので、「遠方より花輪を送った」と報道されることに、なにやら意味を感じる向きがある。

 つまり江沢民はなにやら事情があって、北京に来られない、あるいは北京にいられないのではないか。だが、花輪を送って健全ぶりをアピール必要があるのではないか、と。

 つまり、江沢民の立場はいろいろと政治的に危うくなっているという推測が前提にあるのだ。

習近平の次なる「大虎狩り」の獲物が江沢民ファミリーであるという観測は昨年11月あたりから急速に濃くなっていた。まず、中国電信大手の中国聯通を含む13中央企業・機関に中央規律検査委員会の別働部隊・中央巡視組の立ち入り捜査が入った。

 その結果、不正があった企業として詳細が報じられたのはやはり中国聯通を含む6企業だった。中国聯通の名に国内外のチャイナ・ウォッチャー、読者たちが反応したのは、それが江沢民の長男、江綿恒の利権の温床となっている電信産業の中心企業であるからだ。

江沢民の長男「電信王子」にメス

 聯通は江沢民が1994年に、中国電信一社が独占していた電信業界に「健全な市場競争を起こす」ために設立した国有企業。江沢民は権力掌握期の93年から2004年にかけて電信情報産業界の大再編成を実行するが、そのキーマンに、米国留学後に米ヒューレットパッカードに勤めていた江綿恒を呼び戻した。

 江綿恒は中国科学院に所属し冶金研究所所長の肩書きが与えられるが、99年に、やはり江沢民が94年に創業させた国有独資の投資会社・上海聯和投資公司のトップに就く。この上海聯和が次々と国家の基幹産業に投資してゆく。主な投資先企業としては、中国網通、上海汽車、上海空港集団、宏力半導体、上海マイクロソフト、香港フェニックステレビなど、有名どころが挙げられ、江綿恒はそれら大企業の取締役に名を連ねると同時に、中国株式市場の戦略投資家の地位を得て、上海市場を左右する力も持つようになった。この資金の由来が国庫であったと言う説もある。総書記にして国家主席、中央軍事主席をバックにしているので、外国企業もこぞって中国進出のパートナーに上海聯和を選んだ。

 上海聯和の投資分野は電信情報産業、生物医薬、新エネルギー、環境、金融サービスと幅広いが、中でも電信情報産業界への投資は、江沢民の電信情報産業再編計画と連動して大規模なものだった。例えば、旧中国電信は2000年に中国電信と中国移動に固定通信と移動通信分野に二分割され、さらに2002年には中国電信が南北に分割され、北部の市場はそのまま網通に吸収される。さらに中国網通は08年に中国聯通に吸収され、三つの通信メガグループ、中国電信、中国聯通、中国移動に集約されていく。この再々編成は江沢民の庇護を受けた江綿恒をキーマンにして進められ、江綿恒は「電信王子」のあだ名が付けられた。

江沢民としては最も信頼する長男に、サイバー攻撃など国防・防諜諜報の要でもあり、言論報道統制およびネット世論コントロールのキモでもある電信産業を把握させることが、業界再編成の動機であったともとられている。

 だが、習近平政権はこの江沢民ファミリー利権の牙城ともいえる電信情報産業界に反腐敗のメスを入れたわけだ。

 昨年12月、聯通の張智江(聯通聯絡分公司副総経理)と宗新華(聯通情報化電子ビジネス事業部総経理)が相次いで取り調べを受けた。二人とも江綿恒の腹心だということは周知の事実。さらにいえば、2009年から聯通の会長を務める陸益民は、江沢民の腹心で国家副主席を務めたこともある曾慶紅の元秘書である。

中央メディアを通じた宣戦布告

 ここで興味深いのは、新華社はじめ中央メディアの報道ぶりだ。

「中国聯通には、軽視できない問題がいくつか存在する。ある指導者とキーパーソンが、職権を利用し、請負企業やサプライヤーと結託して、権力と金、権力と性の取り引きをしていたのだ」(2月6日 新華社)。

「中央巡視組が指摘するところによれば、中国聯通には職権を利用し、請負会社やサプライヤーと結託して権力と金、権力と色の取引を行うトップやキーパーソンがいた」(2月6日、人民網)

「聯通の余震は止まらない。泥の中のダイコンを引き出せば、捜査はより深く発展していき、ますます問題が水面に浮上してくるだろう」(IT時代週刊)

 聯通汚職問題の背後には、ある指導者とキーパーソンがいた、という言い方が誰をさしているのかは、少なくとも中国の政治経済事情に通じている人なら分かる。こういう、報道の仕方は、習近平の江沢民ファミリーに対する宣戦布告だと受け取られている。

さらに今年の旧正月明けには、中国移動、中国電信にも中央巡視組の進駐がはじまったので、やはりターゲットは江綿恒ではないかという観測が強まった。

 中国「財経」誌が7月23日に報じたところによると、4月23日に中国移動集団の湖南有限公司の元書記・王建根ほか局長級9人以上の取り調べが始まった。

駆け引きの猶予与えず、完全失脚狙う

 また中国移動北京公司の副総経理・李大川も規律検査当局に連行された。彼が湖南移動時代に関わった汚職が関係あるらしい。中国移動広東公司の副総経理・温乃粘、福建公司の副総経理・林柏江も、重大な規律違反で取り調べ中。山西公司の董事長兼総経理の苗倹中も取り調べを受けている。中国移動全体で23件が汚職で立件され、司法機関に移送されたのは8人、処分を受けたのは40人、うち5件は重大案件として中央規律検査委が直接捜査にあたっているとか。この中国移動大規模汚職事件も、江沢民ファミリーをターゲットにした権力闘争であると言う見方が主流だ。

 今年1月、江綿恒が中国科学院上海分院の院長職を1年4か月の任期を残して、突如「年齢」を理由に辞任したのも、習近平の「巻狩り」がいよいよ江綿恒を追い詰めているのだ、という憶測を呼んだ。

 中国移動の汚職事件については、2009年に江綿恒の腹心で元書記の張春江が失脚している。当時、これは胡錦濤ら共青団派と江沢民派上海閥の権力闘争の文脈で語られていた。胡錦濤は、江綿恒が上海富豪の汚職事件・周正毅事件(2003年)に関与していることをカードに江沢民派と激しい権力闘争を展開してきたが、結局のところは、江綿恒汚職カードで江沢民を脅して、ある程度の妥協を引き出す駆け引きに使ったにすぎない。だが、習近平政権の「虎狩り」は、そうした駆け引きの猶予も与えずに、完全失脚をめざしているような勢いでもある。

そういう憶測が出てくるのは7月の習近平政権の上海に対する攻め方のものすごさである。

 7月22日、上海最大の乳業企業・光明乳業の元総裁・郭本恒が重大な規律違反で拘束されたことが明らかになった。光明乳業は6月に郭本恒の辞任を発表していた。光明乳業はかつて江沢民が副工場長を務めていた益民食品工場が前身の、江沢民利権企業という。また7月に習近平政権は公安副部長の孟慶豊を上海に派遣して、いくつかの貿易会社が株価・先物市場操作にかかわったとの疑いで捜査を始めているという。具体的な企業名は発表されていないが、株価操作ができるほどの資金力がある貿易会社ならば、極めて強い政治的背景があることは間違いないだろう。証券監督管理委員会はEコマースの雄、アリババの会長・馬雲(ジャック・マー)が大株主でもある恒生電子の調査を開始しているという報道もあった。馬雲が江綿恒の息子・江志成や劉雲山の息子の劉楽飛と懇意にしていることは、かなり知られた話である。

焦点は北戴河会議、江沢民は出席するか

 江志成は米ゴールドマンサックスで経験を積んだ後、2010年、香港でプライベートエクイティファンド・博裕投資顧問を立ち上げた。2012年、馬雲がアリペイをアリババ集団の連結子会社から外して、ヤフーやソフトバンクから非難を受けた件は、江志成らの介入があったと言われている。この時、馬雲がヤフーの保有するアリババ株を買い戻さねばならなかったが、江志成の博裕投資顧問が5000万ドルをアリババに導入し、何%かのアリババ株を譲渡されたともわれている。ちなみに、紀律検査委当局と公安当局は、インサイダー情報漏えいの疑いで方正証券の取り調べも開始しているが、こちらは令計画事件に連座しかかった北京大学出身の実業家・李友をCEOとする方正集団の子会社だ。

 また復旦大学の副校長3人が一気に更迭されたのも、中国科学院上海分院のトップであった江綿恒の関係が取りざたされている。

 中国の電信、金融業界にメスを入れれば、必ず江沢民ファミリーにぶち当たるという意味では、それだけ江沢民ファミリーの利権構造が圧倒的に広く深いからである。しかも、上海という国際都市が中心舞台であったその利権構造には少なからぬ外資系企業も関わっている。果たして、この広く深く絡み合う利権を解体すれば、公平でフェアな市場に生まれ変わるのか、というのはまた別の問題である。

 これは、やはり純然たる権力闘争とみるべきだろう。そして本当に江沢民を完全失脚させることができるのかどうかは、ひとまず北戴河会議に、江沢民が出席するのかどうかを見てから考えていきたい。

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