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『日本の「被害者なりすまし」を許すな 「ヒロシマ」で大騒ぎの韓国(1)』、『昔は「弱さ」を恥じる韓国人もいた 「ヒロシマ」で大騒ぎの韓国(2)』、『韓国は「尊敬される国」になるのか 「ヒロシマ」で大騒ぎの韓国(3)』(5/25・26・27日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について
オバマ大統領の広島訪問について、5/27BS「プライムニュース」でメア元沖縄総領事は「日米の強固な絆が確認できてよかった。米国内でも批判はない。段階を踏んでやってきたから。真珠湾訪問は必要ない。昨年の米議会での首相演説で首相は”repentance”と言う表現を使って気持ちを表した。それで充分」、5/28TV「ウェイクアップ! ぷらす」で同じくメア氏は「日米が歴史を乗り越え、固い絆で結ばれたことを中国に分からしめ、大いなる抑止になるだろう」と言っていました。成熟した日米関係になると思います。歴史を振り返ってみれば、ペリー来航から日本は米国に翻弄されて来ました。それがやっと真に対等な大人の関係に一歩近づけたのではと思っています。小生は自主防衛論者ですが単独防衛論者ではありません。単独防衛となると近隣に邪悪な帝国があり、それに対抗するには核保有の他、通常兵器を増やし、防衛軍人の数も増やさねばなりません。あるTV局が言ってました1.7兆円増などの数字で収まる訳がありません。それこそ崩壊したソ連のように高いGDP比の軍事予算に注ぎこむことになります。戦前の悪夢の復元になります。ABCD包囲網を敷かれた逆を考えれば、中国包囲網を敷くことこそが勝利の秘訣です。中国・韓国は日本に歴史戦を挑んできましたが、オバマ大統領の広島訪問は歴史カードを無効にする転換点となるかもしれません。
5/25日経朝刊には<オバマ氏、新たな米越関係訴え 枯れ葉剤にも言及
フォームの終わり
【ハノイ=富山篤】ベトナムを訪問中のオバマ米大統領は24日、主な政治日程を終えた。同日の首都ハノイでの演説で「ベトナム戦争は両国に苦痛と悲劇をもたらした」とし、米軍が大量に散布した枯れ葉剤に異例の言及をした。対越武器輸出を41年ぶりに全面解禁するとも表明した。今回の訪越は戦争の惨禍を経た両国が新たな戦略関係に入ることを印象づけた。
「シンチャオ(こんにちは)、ベトナム」。24日正午、登場したオバマ氏はハノイ郊外の国立会議センターを埋め尽くす約2000人にベトナム語であいさつした。話はベトナムの歴史から始まり、自然にベトナム戦争へと移った。
「冷戦と共産主義への恐怖が我々を戦争へと引きずり込んだ」。1975年4月のベトナム戦争終結以降、ベトナムで直接、同戦争に言及した米大統領はオバマ氏が初めてとみられる。オバマ氏は「300万人のベトナムの兵士と市民、5万8315人の米国民が命を失った」と続け「両国は痛みと尊い犠牲をいつまでも忘れてはならない」とした。
米軍が戦争中に大量に散布した枯れ葉剤にも言及した。「エージェントオレンジ(枯れ葉剤の通称、ダイオキシン類)を除去し、ベトナムの土地が元の姿に戻るように引き続き努力を続ける」。森林に逃げ込んだ北ベトナム兵に業を煮やし、米軍は最低でも4400万リットルの枯れ葉剤をまいたとされる。この事実は米国ではタブーに近い。オバマ氏は謝罪こそしなかったが、大統領が言及した意味は大きい。演説の最後は、ベトナムの国民的文学作品「キエウ伝」の一説を引用し「100年の旅へ共に乗りだそう」と締めくくった。
演説のほかにも、オバマ氏は米越関係が新時代に入ることを印象づけた。23日、米大統領として初めてハノイにあるベトナム建国の父、ホー・チ・ミン氏の家を訪問した。ベトナム戦争前の1958年から死亡する69年まで同氏が住んだ家で、米軍の北爆の標的にもなったとされる場所だ。
米国にとってはかつての敵であり、共産主義の象徴でもある同氏の家を訪問することはためらわれるようだった。オバマ氏はグエン・ティ・キム・ガン国会議長と共に訪れ、ホー・チ・ミン氏がお気に入りだった池で魚に餌をやるなど和やかに過ごした。
オバマ氏は25日、越財界人らと懇談した後、日本に向かう。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が終わった後の27日には被爆地、広島を現職米大統領として初めて訪問する。オバマ氏にとっては、かつて米国が激戦を繰り広げたベトナムと、第2次世界大戦末期に原爆を投下した広島を「慰霊」する旅でもある。>とありました。
米越の和解は対立した歴史の清算であり、もっと大きくみれば中国封じ込めの一環です。枯葉剤の使用について謝罪したわけでなく、未来志向で除去することを約束しました。それで良いと思います。起きてしまった事は原状回復できません。それですぐ謝罪=金で解決となる訳ですが、見苦しく感じます。日本人は民族的に「水に流す」性格です。「武士道」の国が乞食まがいのことをしては沽券に関わります。
これに対して成熟していないのは、中韓です。早速、王毅は「被害者の立場の広島だけでなく、加害者の立場の南京も」とか言って歴史カードを手放さないぞと日本を脅しています。北朝鮮と同じように包囲網が敷かれつつあることに対し、虚勢を張ってるようにも見えますが。謝罪=金を要求し、事実に目を塞ぐ韓国人も成熟していません。福沢諭吉が悪友謝絶と言ったのも宜なるかな。どう考えても年齢が合わないでっち上げ慰安婦の問題や日本人と一緒に連合国と戦ったのに戦勝国を僭称するのは、ムッソリーニを吊るしたイタリア人が戦勝国と自称しても認められないと同じでしょう。フランスはドゴールの政治力が勝っただけ。敗戦国になってもおかしくはありませんでした。
韓国は本当にストーカー国家です。地下アイドルの女性を刺傷した犯人と同じというかレベルで言えばもっと悪質です。日本人はもっと怒らねば。いつまでも偏向メデイアの思想刷り込みに浸っているのは愚の骨頂です。
朱に交われば赤くなる、悪貨は良貨を駆逐する、です。「非韓3原則」を貫きましょう。在日特権の逆差別も止めさせましょう。
記事

原爆で廃墟と化した広島。71年後のオバマ大統領の訪問は、「パンドラの箱」を開けることになるかもしれない(写真:AP/アフロ)
韓国メディアがざわめく。「米国と日本がますます仲良くなる」と勘違いしたからだ。
韓国は大損
—オバマ(Barack Obama)大統領が広島を訪問するというので、韓国紙が大騒ぎしています。
鈴置:5月26日から開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に出席した後、翌27日に現職の米大統領として初めて広島平和記念公園を訪れます。
オバマ大統領はそこでスピーチしますが、米国が核兵器を使ったことに関する「道義的責任」にも触れると見られます。
韓国メディアはこの計画が正式に発表される前から一斉に反発し、大統領の広島訪問に強い懸念を表明してきました。
—なぜ反発するのでしょうか。韓国は今、北朝鮮の核の脅威に直面しています。そんな中、オバマ大統領が「核なき世界」を呼び掛けるため広島を訪問するというのに……。
鈴置:日本が外交的得点を稼ぐ一方、自分が大損とすると考えたからです。
つけ上がる日本
—なぜ「日本が得して韓国が損する」のでしょうか。
鈴置:韓国人の目にはそう映るのです。彼らは独特の外交観を持っています。それを基に日本に奇妙な外交戦を仕掛け、しばしば自滅します。
2015年に安倍晋三首相の米上下両院演説を阻止しようと国を挙げて取り組んだのがいい例です。この時も日本が得をし、韓国が損をすると彼らは危機感を深めたのです(「『アベの議会演説阻止』で自爆した韓国」参照)。
結局、阻止できなかったばかりか、米国との関係も悪化しました。米国が日本との同盟を強化しようとしている時に、日米離間を必死で図る韓国は異様な目で見られたのです。米外交関係者は「韓国疲れ」(Korea Fatigue)などと上品な言い方で表現していましたが。
被害者に化ける
—今回も勘違いしているのですか?
鈴置:その通りです。オバマ広島訪問に関する韓国メディアの論調を紹介します。保守、左派にかかわらず「大統領の広島訪問により、米国は加害者たる日本を被害者に認定することになる。日本をつけあがらせるな」という主張で共通しています。
正式発表が5月10日深夜(日本時間)。朝鮮日報の社説(5月12日、韓国語版)は見出しからして韓国の空気を率直に語りました。「広島に行く米大統領、日本の『被害者なりすまし』と一線を画せ」です。ポイントは以下です。
- 原爆の悲劇は日本の帝国主義が起こした戦争と蛮行の結果だ。しかし日本は自分たちが起こした戦争について継続的かつ誠意ある謝罪を避けている。
- 日本は「広島」を全面に押し出して被害者になりすましている。米大統領の広島訪問で、なりすましが成功しているかのような光景を見ながらオバマが、本当の被害者であるアジアの様々の民族に対しどんな考えを持っているのか、気にかかるのだ。
中央日報の社説「オバマ大統領の性急な広島訪問は遺憾=韓国」(5月12日、日本語版)も「日本を被害者にするな」でした。以下です。
- 帝国主義的な侵略戦争を起こした日本は原爆の被害者である以前に加害者だ。にもかかわらず日本は過去の過ちに対する真の反省と謝罪なしに、軍事大国化の動きを加速化している。
- オバマ大統領の広島訪問は日本の被害者のイメージばかり浮き彫りにするおそれがあり、本当の被害者である韓国・中国など周辺国に誤ったメッセージを送りかねないという点で、広島訪問の決定は性急であり遺憾だ。
- 日本の世論はオバマ大統領の広島訪問自体を謝罪として受け止める可能性が高い。すでに日本メディアはオバマ大統領の広島訪問を「歴史的事件」として特筆大書している。戦犯国が被害者に化けるという、あきれるような事態が生じないよう、日本政府・メディアは我田引水式の解釈や過度な意味付けを自制しなければいけない。
歴史カードを取り上げられた
—日本のメディアは書き方まで注文を付けられてしまいましたね。
鈴置:「オバマ訪問で『勝った、勝った』といい気になるなよ」ということでしょう。どの社説にも、韓国が駆使してきた「歴史カード」を米国から取り上げられるのではないか、との恐怖がにじみ出ています。
韓国人は苦い思いをしたばかりです。2015年12月28日の「日韓慰安婦合意」で「韓国はこの問題を二度と蒸し返さない」と約束させられました。
多くの韓国人が「歴史カード」の1枚を放棄させられたこの合意の背後に米国の存在を感じ取っています(「掌返しで『朴槿恵の親中』を批判する韓国紙」参照)。
—「歴史カード」に関わる戦いで、韓国の2連敗、ということですか?
鈴置:勝ち負けで言うなら「3連敗」に思えるのでしょう。2015年4月に安倍首相は米上下両院で演説しました。同年初めから韓国は国を挙げてその阻止に取り組みました(「『安倍演説阻止』に向けた韓国の動き」参照)。
「安倍演説阻止」に向けた韓国の動き(2015年)
| 2月14日 | 聯合ニュース「在米韓国人、安倍首相の議会演説阻止に動く」と報道 |
| 3月4日 | 訪米した韓国国会の鄭義和議長、安倍首相の米議会演説に関し米下院議長に「日本の真の謝罪と行動が必要」 |
| 3月19日 | 聯合ニュース「米議会、安倍総理の上下院合同演説を許可する方向」と報道 |
| 3月20日 | 韓国外交部「安倍首相は米議会演説で歴史への省察を示すべきだ」 |
| 3月29日 | 韓国の尹炳世外相「安倍首相の米議会演説と70年談話が日本の歴史認識の試金石になる」 |
| 4月2日 | 鄭議長、訪韓した民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務に「日本の首相は米議会演説で過去を認め謝罪すべきだ」 |
| 4月2日 | 尹外相、ペロシ総務に「安倍演説は侵略、植民地支配、慰安婦に関しすでに認めた立場を具体的な表現で触れねばならない」 |
| 4月2日 | 朴槿恵大統領、ペロシ総務に「慰安婦問題の解決は急務」 |
| 4月16日 | 日米韓外務次官協議で韓国の趙太庸第1次官「安倍演説は正しい歴史認識を基に」と注文 |
| 4月21日 | 韓国国会の羅卿瑗・外交統一委員長、リッパート駐韓米大使に安倍首相の歴史認識について懸念表明 |
| 4月21日 | WSJ「韓国政府が安倍首相の米議会演説に韓国の主張を反映させるべく米広報会社と契約」 |
| 4月22日 | 韓国の柳興洙駐日大使、戦後70年談話で「(侵略、植民地支配、反省の)3つの言葉を使うよう期待」 |
| 4月22日 | 韓国外交部、バンドン会議での安倍演説に関し「植民地支配と侵略への謝罪と反省がなかったことが遺憾」 |
| 4月23日 | 米下院議員25人「安倍首相が訪米中に歴史問題に言及し、村山・河野両談話を再確認する」ことを促す書簡送る |
| 4月23日 | 韓国系と中国系の団体、元慰安婦とともに米議会内で会見し「安倍首相は演説で謝罪を」と要求 |
| 4月24日 | 韓国外交部「尹外相とケリー米国務長官が電話、歴史対立を癒す努力で一致」と発表 |
| 4月24日 | ブラジル訪問中の朴大統領「日本に、正しい歴史認識を基にした誠意ある行動を期待」 |
| 4月24日 | ローズ米大統領副補佐官「安倍首相に対し、過去の談話と合致し、地域の緊張を和らげるよう働きかけている」 |
| 4月24日 | メディロス米NSCアジア部長「歴史問題は最終解決に達するよう取り組むことが重要」 |
| 4月28日 | 安倍首相、ワシントンでオバマ大統領と会談 |
| 4月29日 | 安倍首相、米上下両院で議会演説。日米同盟の強化を訴え万雷の拍手受ける |
阻止運動のスローガンは「米国がもし安倍の議会演説を許せば、日本は戦犯国家の烙印を消せる。米国は免罪符を与えるな」でした。韓国人とすれば、この歴史戦でも負けたことになります。
「戦犯国家」はひれ伏せ
—「戦犯国家」とはあまり聞きなれない言葉ですが。
鈴置:「日本は戦争を起こした国だ。韓国の前で永遠にひれ伏さなければならない」という主張を具現化した単語です。2010年頃から韓国人が使い始めました。私が初めに見たのは朝鮮日報だったかと思います。
国際社会で日本より優位に立つため、官民挙げて「歴史カード」を磨くのが韓国の基本戦略でありまして「戦犯国家」はその一環です。しかし今、韓国人はそのカードが、相次ぐ「外交敗戦」で磨滅しかけたのではないかと不安にかられています。
だから、各紙とも「歴史カード」を維持すべく「まだ日本は韓国に謝罪していない。だからオバマ大統領も謝罪すべきではない」と叫んでいるのです。オバマ大統領が謝罪したら完全に「日本に免罪符を与える」ことになると理解しているからです。
韓国紙の「オバマ謝罪」へのこだわり方は異様です。東亜日報の社説「米大統領の初の広島訪問を見る韓国人の目」(5月12日、日本語版)をご覧下さい。
- ホワイトハウスは「『核兵器のない世界』の平和と安全を追求するオバマ大統領の約束を強調するため」とし、「原爆投下に対する謝罪と解釈されるのは誤り」と明らかにした。しかし、米紙USAトゥデイが指摘したように、日本人はオバマ大統領の訪問そのものを謝罪と解釈するムードだ。
米政府が「謝罪ではない」と言っているのに「でも、日本は謝罪を得たとして威張り出すに違いない」と心配したのです。
先ほど引用した中央日報の社説「オバマ大統領の性急な広島訪問は遺憾=韓国」の「我田引水式の解釈や過度な意味付けを自制しなければいけない」とのくだり。
日本の政府とメディアに対し「謝罪と認識したら許さないからな」と威嚇したわけで、韓国人がいかに気にしているかを示しています。
嫉妬と事大主義
—普通の韓国人が「歴史カードの磨滅」を恐れるものでしょうか。
鈴置:そこまで深くは考えない人もいるでしょう。ある韓国の識者は、普通の人の不満はもっと単純で「日本がうまいことやった。不愉快だ」「オバマは日本ばかり可愛がる」といった感じと解説します。
趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに、韓国紙の広島報道を批判した「『100年前の気分』にとらわれる韓国」(5月14日、韓国語)という記事が載りました。ここでも、韓国メディアを冷ややかに見る読者が、以下を書き込みました。
- 最近、韓国メディアの記者らは米国と日本が蜜月関係になれば韓国が危機に陥ると焦燥感を募らせているようです。日本への嫉妬と米国への事大主義が合わさった心理でしょう。
事大主義とは「米国の大統領が免罪符を発行する」という韓国紙の発想を厳しく批判したものです。
広島訪問は手土産
—それと、日本への嫉妬ということですね。
鈴置:同じ新聞でも、社説ほど裃(かみしも)を着ない雑報や解説記事は、より露骨に「日本に負けた」と報じて、読者の嫉妬心をかき立てています。
朝鮮日報の「オバマ、日本の宿願かなえる」(5月11日、韓国語版)も「安倍外交の勝利」と書きました。
- オバマの広島訪問を粘り強く進めてきた安倍晋三総理としては「第2次世界大戦の敗戦後、初めて戦勝国である米国の広島訪問を成し遂げた総理」との業績を上げることになる。
左派系紙、ハンギョレの解説記事「『非核化』強調するオバマ大統領、『原爆被害』知らせたい安倍首相」(5月11日、日本語版)はサブ見出しに「日本は外交的勝利」を取り、前文でも以下のように書きました。
- 日本にとっては、今年自国で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議の日程を活用した日本外交の勝利ともいえる。
—こんな記事を読む韓国人は面白くないでしょうね。
鈴置:だから「確かに韓国は外交戦でまた負けた。だが、それはオバマにゴマをするという、せこい手を安倍が使ったからだ」との趣旨の説明もくっついています。そこでは広島訪問は日本への「報奨」や「贈り物」と表現されています。
- アジア戦略で米国と手を握って対中牽制に積極的に協力した安倍晋三首相に対する「報奨」の性格もある(東亜日報の「米大統領の初の広島訪問を見る韓国人の目」)
- 日米同盟にすべてを賭けてきた安倍総理に対する米国の贈り物との分析も出ている(朝鮮日報の「オバマ、日本の宿願かなえる」)
ウィキリークスの暴露
—日本外交が勝利した、あるいは安倍政権は宿願を達成した、という韓国紙の報道は本当ですか?
鈴置:一連の記事は、事実とは全くかけ離れています。そもそも、安倍政権がオバマ広島訪問を望んだわけではなかった。
核廃絶を訴えるために、日本が各国首脳の広島訪問を進めてきたのは事実です。しかし、米国の大統領は例外でした。
広島と長崎への原爆投下に関し、米国では否定論よりも肯定論の方が多い。もし、大統領が広島を訪問すれば日本への不必要な謝罪として反発する声が米国内で起きる可能性が大きいのです。
一方、全くの謝罪なしでも日本国内から反発を招く可能性があります。いずれも日米関係を悪化させますから、日本の歴代政権は広島訪問に極めて慎重でした。
オバマ大統領は2009年11月の初訪日にあたり、広島訪問を検討しました。同年4月、プラハで「核なき世界」を訴え、10月にはそのためにノーベル平和賞を受賞しました。そんな流れの中で被爆地訪問を望んだのです。
しかし、同年8月、薮中三十二外務次官(当時)はルース(John Roos)駐米大使(同)と会って「オバマ大統領が謝罪しない以上、訪問は成功の見込みがない」と、広島訪問に否定的な見方を伝えました。これは後に、内部告発サイト「ウィキリークス」が暴露した米外交公電によって判明しました。
日経新聞の吉野直也ワシントン特派員は「日米史を変えた7年 検証・オバマ氏広島訪問」(5月13日、電子版)で、その後に米国務省が安倍首相の真珠湾訪問を打診したと書いています。
米国内の反発を少しでも抑え、オバマ大統領の広島訪問を実現するのが目的でした。しかし同記事によると、日本政府はこの提案も以下のように断ったのです。
- 「過去の戦争の延長線上で、交換条件のようにオバマ氏が被爆地を訪れるのは望まない」
「真珠湾」とは交換しない
—どういう意味でしょうか。
鈴置:ある日本の外交専門家は「交換」すれば「真珠湾と広島は等価なのか」と、日米双方で反発が出る可能性を懸念したのだろうと言います。
安っぽい「和解劇」を演じるべきではないとの考えもあったのでしょう。そんな見え透いた「交換」をしたら、日米関係は却って底が浅いものに見えてしまいます。
米国の外交当局も苦労したと思います。自分の大統領が望むから広島訪問を推進したに過ぎません。大きな外交成果が上がるわけでもないのに、リスクだけは大きいのです。
いずれにせよ、今回の広島訪問は日米双方が知恵を絞った結実です。それから推察するに「真珠湾訪問」が近い将来、「広島訪問」とは関係ないとの建前で実現することになります。
—要は、オバマ大統領が広島訪問にこだわった。しかるに関係悪化を恐れた日米両国の外交当局が、いかに副作用を減らすか苦心してきた、ということですね。
鈴置:その通りです。
—では、韓国紙はなぜ「日本の小陰謀に米国が騙された」式に書くのでしょうか。
鈴置:韓国人は「外交とは細工を弄して大国を動かすこと」と信じているからです。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の告げ口外交はその典型です。前回、紹介した全斗煥(チョン・ドファン)大統領の「へ理屈外交」も全く同じです。
韓国紙は日本も同じ行動原理で動いていると信じ込み、アベが小細工してオバマを広島に呼び込むのに成功した、と書いたのです。
中国共産党を喜ばせるな
—でも、少し調べれば事実と異なることが分かるはずです。
鈴置:確かにそうです。日本が広島訪問を事実上断っていたことは、ウィキリークスの暴露により公知の事実となっています。日本のメディアは2011年9月に一斉にそれを大きく報じています。
でも、韓国メディアにとって事実はさほど重要ではありません。読者に喜怒哀楽の材料を提供することが彼らの仕事なのです。
今回で言えば「あの小ずるい日本にまたやられた。我が国の政府は何をやっているのだ」という読者の怒りをかき立てればいいのです。
実は、韓国人が大喜びしそうなネタがあります。オバマ大統領の広島訪問で日本――ことに韓国紙が蛇笏のごとく憎む日本の保守勢力が懸念を深めていることです。
保守の論客、島田洋一・福井県立大学教授が興味深い記事を『月刊Hanada 2016年7月号』に書いています。見出しは「謝罪を迫るより考えるべきこと」です。要約します。
- オバマ大統領は今年3月30日付ワシントン・ポストに寄稿し「核兵器を使用した唯一の国としてアメリカは、その廃絶への道をリードし続ける道徳的義務(moral obligation)を有する」と書いた。これに対し原爆投下への謝罪に等しいとの批判が米国の一部で起こった。
- 非戦闘員居住地域への核爆弾投下は紛れもない戦争犯罪だ。オバマ「道徳」発言は現職大統領としてぎりぎりの線だろう。日本がそれ以上の謝罪を求めると、無用の日米歴史戦を誘発しかねない。
- 米大統領の広島訪問時に歴史戦を仕掛けても、日米分断を狙う中国共産党を喜ばせるに終わる。
苦笑する「日本の右翼」
—なるほど、日本の保守は「謝罪による日米分断」を警戒し続けているのですね。
鈴置:もちろん安倍政権も同様です。日経新聞の大石格編集委員が書いた「風見鶏・広島訪問はパンドラの箱」(5月15日)も、その点を突いています。
- 日本政府がオバマ大統領の謝罪に神経質なのはなぜか。「日本は本当に戦争責任を反省したのか」と、安倍首相が昨年夏の戦後70年談話でケリをつけたはずの難題を蒸し返されるのを懸念してのことだ。
- 一部の米退役軍人団体は、オバマ氏に広島行きを控えるよう求める書簡を送った。似た動きは中国や韓国にもある。広島訪問は新たなパンドラの箱を開けかねない。
オバマ大統領の広島行き直前に「バターン死の行進」で生き残った元米軍人の捕虜が同行することが決まったのも「パンドラの箱」を開けないための努力です。
もっとも、せっかく日本が困っているというのに、韓国紙はそれを書かないどころか嫉妬しているのです。ハンギョレの社説「オバマ大統領の広島訪問が成果を収めるために」(5月12日、日本語版)は「日本の右翼が大喜び」と書いています。
- 安倍晋三政権に代表される日本の右翼勢力が今回の訪問を機に、「被害者日本」を浮き上がらせ、歴史に対する責任を回避しようとする動きがはっきりしている。彼らは今回の訪問自体を日本外交の勝利と考えている。
「日本の右翼」がこれを読んだら苦笑することでしょう。「被害者日本」とのイメージが日米関係を悪化させると一番、懸念している人たちですから。
彼らの中には、米大統領の広島訪問は「ありがた迷惑」と言い切る人もいます。日本の保守にとって、オバマ大統領の広島訪問は「報奨」でも「贈り物」でもなく「時限爆弾」なのです。
南京に来い
—中国は動きますか?
鈴置:もちろんこの機会を逃さず「パンドラの箱」に手を突っ込んで騒ぐでしょう。中国は9月に20カ国・地域(G20)首脳会議を浙江省・杭州で開きます。この際、オバマ大統領や安倍首相を含むG20首脳に南京訪問を求める作戦を練っている模様です。
もし、安倍首相が南京を訪問しなければ「日本はまだ反省していない」と大声で叫べばいい。日本を孤立に追い込み、日米離間も図る狙いです。
—韓国紙もこの動きに注目していますか。
鈴置:チラリと書いてはいます。ハンギョレの「『安倍首相も南京虐殺の現場に訪問を』 オバマ大統領広島訪問に中国で不満」(5月13日、日本語版)がそうです。ただ、今現在は「オバマは日本に謝罪するな」と叫ぶのに忙しい。
今度こそ中国と共闘
—韓国政府はどう出るのでしょうか。
鈴置:オバマ広島訪問に関し、韓国政府は表立って反対しませんでした。「安倍議会演説阻止」で大失敗したのに懲りたからでしょう。
でも「米議会演説の戦い」は韓国が単独で日本と戦う形でした。一方、「南京での歴史戦」は当然、中国が主戦投手。韓国は陰で手助けし、あとで勝ち組に入れてもらう手があります。うまくすれば、今度は米国も味方に引き込めるかもしれません。
広島訪問を機に韓国メディアが「日本は謝罪していない」と声を揃えています。今のところ謝罪阻止が目的です。が、次第に「安倍は南京に来い」との、中国の要求への声援に変化していくと思われます。
「慰安婦」でも中韓は政府間でスクラムを組みました(「中韓の『慰安婦共闘』」参照)。「南京」で組むのは当然のことなのです。
中韓の「慰安婦共闘」
| 2014年7月3日 |
| 中韓首脳会談で「慰安婦の共同研究」に合意。共同声明の付属文書に盛り込む(聯合ニュース・韓国語版) |
| 2014年12月15日 |
| 韓国政府系の東北アジア歴史財団と、中国吉林省の機関、档案局(記録保管所)が慰安婦問題関連資料共同研究のための了解覚書(MOU)を締結(聯合ニュース・日本語版) |
| 2015年8月15日 |
| 中国国家公文書局が『「慰安婦」–日本軍の性奴隷』第1回文献テレフィルムを公式サイトで公表(人民網日本語版) |
| 2015年9月22日 |
| サンフランシスコ市議会が「慰安婦碑または像の設置を支持する決議案」を全会一致で採択。運動の中心となったのは中国系団体(産経新聞) |
| 2015年10月12日 |
| 中国外交部の華春瑩副報道局長、旧日本軍の慰安婦に関する資料について「ユネスコ世界記憶遺産への登録申請を他の被害国と共同で進める方針」(聯合ニュース・日本語版) |
| 2015年10月13日 |
| 韓国外交部の魯光鎰報道官、慰安婦資料のユネスコ世界記憶遺産に中韓が共同で登録申請することに関し「推進中の民間団体が判断すべきだ」。推進中の民間団体とは女性家族部傘下の財団法人、韓国女性人権振興院(聯合ニュース・日本語版) |
| 2015年10月28日 |
| 「中韓の慰安婦像2体」をソウル城北区に設置、除幕式。中韓の彫刻家が製作し、両国市民団体が支援(産経新聞) |
(次回に続く)=5月26日に掲載予定

日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳事務局長は、被爆地・広島を訪問するオバマ大統領に向け「核兵器廃絶の先頭に立ってほしい」と感情を抑えて語る(写真:ロイター/アフロ)
(前回から読む)
気骨を失った国に独立はあるのだろうか――。
いつもの独り相撲が始まった
—前回は、韓国メディアが日米関係を完全に読み違えた、との話でした。
鈴置:オバマ(Barack Obama)大統領の広島訪問は安倍晋三政権が上手に立ち回って実現した――と韓国メディアほぼすべてが、勘違いして報じました。
そして、日本はオバマに何らかの形で謝罪させるだろう。それにより韓国の持つ「歴史カード」が無効化されてしまう――と焦り、韓国紙は一斉に「オバマは謝罪するな。日本はまだ我々に謝っていない」と叫んだのです。
韓国人は日本はもちろん、米国に対してもフラストレーションを高めています。また、いつもの独り相撲です。
—なぜ簡単明瞭な事実を誤認するのか、今ひとつ分かりません。いくら思い込みが激しい人たちと言っても……。
鈴置:オバマ大統領の広島訪問は日本政府が意図したわけではない。ことに謝罪を求めるつもりはなかった――。しかし、韓国人は「謝罪を求めない日本人」というものが理解できないのです。
韓国では「謝罪を要求できるチャンス」があったら最大限、活用するのが常道だからです。謝罪させることで倫理的に上位に立ち、相手を支配する――という発想です。
「下」の日本には何をしてもいい
—「上」なら相手を支配できるのですか?
鈴置:ええ、韓国社会には「上」なら「下」に何をしてもいいという空気が色濃い。
—そう言えば「ナッツ・リターン」事件というものがありました。
鈴置:2014年のことでした。大韓航空のオーナーの娘が乗っていた航空機を搭乗ゲートに引き返させたうえ、気にいらないパーサーを降ろさせました。
このケースでは、珍しくもパーサーが泣き寝入りしなかったので表沙汰になりました。が、普通は「オーナーの家族はわがままなもの。仕方ない」で終わりです。
日本との関係も同様です。日本人は1993年の河野談話を通じ、韓国との和解の道を開いたつもりだった。でも韓国人はそうは思わない。これで韓国が「上」になったのだから、日本には何をしてもいい、と考えるようになりました。
日本の助けが要らないと自信を深めた2010年を過ぎる頃に、その思いが一気に噴出しました。「卑日」が日常化したのです(「韓国の主な『卑日』」参照)。
韓国の主な「卑日」
| 「従軍慰安婦」像設置 |
| 2011年12月14日、韓国挺身隊問題対策協議会がソウルの日本大使館前に「従軍慰安婦」像を設置。日本政府が抗議したが、ソウル市と韓国政府は無視。その後、韓国と米国の各地に相次ぎ設置された。「像」以外に「碑」も世界中で立てられている。2014年1月には仏アングレームの国際漫画祭で、韓国政府主導の慰安婦をテーマにした企画展が開催。 |
| 大統領の竹島上陸 |
| 2012年8月10日、李明博大統領が竹島に上陸。日本政府は抗議し駐韓日本大使を一時帰国させた。同月13日これに関連、李大統領は「日本の影響力も昔ほどではない」と発言。同月17日、野田佳彦首相がこの問題に関し親書を李大統領に送るが、同月23日に韓国政府は郵便で送り返した。 |
| 天皇謝罪要求 |
| 2012年8月14日、李大統領が天皇訪韓について「独立運動をした人に心から謝罪をするのならともかく(昭和天皇が使った)『痛惜の念』だとか、こんな言葉1つなら、来る必要はない」と発言。 |
| 対馬の仏像窃盗 |
| 2012年10月8日、韓国人が対馬の仏像と教典を盗んだ。2013年1月に韓国の警察が犯人の一部を逮捕、仏像2体を回収。しかし韓国・大田地裁は「韓国から盗まれた可能性がある」と日本に返さず。2015年7月18日に1体だけ日本に返還。 |
| 中国人放火犯の本国送還 |
| 2013年1月3日、ソウル高裁が靖国神社放火犯の中国人を政治犯と認定、日本に引き渡さない決定を下した。日本政府は日韓犯罪人引渡条約をたてに抗議。犯人は2011年12月26日の靖国放火の後、2012年1月8日にソウルの日本大使館に火炎瓶4本を投げ、逮捕されていた。 |
| 朴大統領の「告げ口外交」 |
| 2013年2月の就任似来、朴槿恵大統領は世界の首脳やメディアに会うたびに、安倍晋三首相の「歴史認識」など日本を批判。 |
| 産経元支局長起訴 |
| 2014年10月8日、ソウル中央地検が産経新聞の加藤達也元ソウル支局長を在宅起訴。容疑は「大統領に関し虚偽の事実を報じ、名誉を棄損した」。報道の元となった朝鮮日報の記事に関してはおとがめなし。同年8月7日からの加藤元支局長への出国禁止措置は2015年4月14日に解除。12月17日、1審で無罪判決、5日後に確定。 |
| 安倍首相の米議会演説阻止 |
| 2015年2月に聯合ニュースが「在米韓国人、演説阻止へ」と報道以降、韓国は大統領、外相、国会議長、学者らが世界の要人を対象に、同年4月の安倍首相の米議会演説を阻止する運動を展開した。阻止できないと判明後は、演説に慰安婦への謝罪を盛り込ませるよう米国に要求した。メディアも連日、阻止キャペーンを張った。韓国の国を挙げての筋違いで執拗な要求に、米政界では「韓国疲れ」という言葉が使われた。 |
今回の「広島事件」は韓国人の目には「下」の連中がじたばたして――「謝罪」を勝ち取って秩序をひっくり返そうと画策する図に映るのです。
日本人は「下」に見られているという認識を持たないと、韓国や日韓関係を正確に理解できません。
謝罪を求めない日本の被爆者
—「韓国よりも下の国」という自覚、ですね。
鈴置:その通りです。
—日本の政府が米大統領の広島訪問に消極的であり、謝罪も求めなかったのは、日米関係の悪化を懸念したから――ということでした(前回参照)。では、肝心の被爆者はどうだったのですか?
鈴置:実は、被爆者団体も今回は謝罪を求めていません。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は1984年に「原爆被害者の基本要求」を作りました。
その中で「アメリカ政府への要求」の一番先頭に「広島・長崎への原爆投下が人道に反し、国際法に違反することを認め、被爆者に謝罪すること。その証として、まず自国の核兵器をすて、核兵器廃絶への主導的な役割を果たすこと」を掲げました。
しかし、2016年5月18日に発表した「オバマ大統領の広島訪問にあたっての要望書」に「謝罪」は入っていません。
ちなみに要望は4項目で「核兵器のない世界への努力」「核兵器のない世界へ一緒に立ち上がる」「包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准」「被爆の実相にふれ、被爆者の話を聞く」です。
「感情をぐっと抑えて」
—日本被団協は今回、なぜ謝罪を要求しなかったのでしょうか。
鈴置:田中煕巳事務局長が5月19日、日本記者クラブで会見し、謝罪に触れました。ポイントを書き起こします。この会見はYouTubeの『田中煕巳被団協事務局長「オバマ広島訪問」①』で見ることができます。
- (原爆で)子を失った親の世代はほとんど生きておられません。その人たちの悔しさに私は接してきたので、個人的には「謝罪しなくていい」と口が割れても言えません。ただ今の(生きている)被爆者全体の「核兵器をなくすためにオバマさんに先頭に立ってほしい」「(CTBTを直ちに批准するなどの)プラハでの約束を本当に実行してほしい」との思いがにじみ出る要請になりました。広島に来られたら、オバマさん個人の原爆に対する体験が質的に変わるだろうと期待しています(開始後19分48秒から)
- (松井一美広島市長の4月21日の「謝罪を求めない」との発言に関し意見を聞かれて)その言葉が独り歩きしています。謝罪をしてくれと言うなら、空襲とか艦砲射撃とか沖縄とか(市民を)殺された問題がある。そういうこと皆含めて謝罪しろとアメリカが受け止めるなら、簡単にウンとは言わないでしょう。日本政府はアジアへの心からの謝罪をしていないので、謝罪一般に関しては今のような形で議論されるのはいいこととは思っていません。被爆者に対しては謝罪をしてほしいという気持ちはあります。が、それを強く求めることが核兵器をなくすことの障害になるのなら、ぐっと抑えて(オバマ大統領に)核兵器廃絶の先頭に立ってほしいという願いがあるのでしょう(27分10秒から)
「被害者コスプレ」と罵倒する韓国
—核兵器をなくしたい、との思いがひしひしと伝わってきますね。
鈴置:謝罪を求めるとオバマ大統領の広島訪問は実現しない。すると核廃絶を進めることはできない。それなら謝罪は求めない――との判断です。心情はもっと複雑に決まっていますが。
被爆者の意向も反映してのことでしょう、日経電子版の意識調査では「オバマ大統領に最も期待するのは?」との問いに対し「平和記念公園や原爆資料館への訪問」が65.1%と圧倒的多数でした。
「原爆投下への謝罪」は2番目で6.9%。6.8%の「被爆者との面会」がそれに続きました。「クイックVote」(第271回)「オバマ大統領広島訪問『歓迎』95%」(5月19日)で読めます。
韓国人には「ぐっと抑えて」が分からないのです。被害者は大声で泣き叫ぶもの――が韓国の常識だからです。
「目的のためなら感情を殺す」という行動を理解できないので「日本は謝罪させ被害者になりすまそうとしている」と思い込み、韓国メディアは口を揃えて「被害者コスプレ」と日本を罵倒するのです。
なお、聯合ニュースの「韓国人原爆被害者が広島訪問へ」(5月12日、日本語版)は「韓国人被爆者はオバマ大統領の訪日に合わせ広島を訪問し、米日両国政府に謝罪と補償を求める」と報じています。
「自分の弱さ」見つめた韓国人
—韓国人は国際社会でも自分が「被害者」であることを強調しますね。
鈴置:それを外交資源にしているからです。2002年に北朝鮮による日本人拉致が明らかになった直後、韓国メディアは一斉に「これで日本が被害者になりすます。我々の被害者の立場を奪うつもりだ」と書きました。
もっとも昔は、自分の国の弱さを恥じる韓国人もいました。私の韓国学のお師匠さんの1人は「悔しかったら強くなるしかないのです」といつも語っていました。もう、四半世紀も前の話ですがね。
植民地支配に関しても、不平がましいことは一切言わない韓国人がいました。それを日本人に対して言った瞬間、自分の国の弱さから目を背けることになる、との信念があったのです。
1980年代までは韓国社会の要所、要所を、そんな気骨ある人が固めていました。亡国を身をもって体験しただけに、繰り返さないためにはどうすればよいか、韓国の指導層は全身全霊で考えていたのです。
1979年に暗殺された朴正煕(パク・チョンヒ)大統領がその最たる人でした。一方、韓国人に過去を謝らない日本人もいました。
ぺらぺらと謝らない日本人
—気骨ある韓国人の誇りを傷つけるからですか。
鈴置:そうです。気骨ある韓国人にとって日本人の謝罪は、韓国の弱点を言い立てられることと等しいからです。
「謝らない」もう1つの理由は「ではあの帝国主義の時代に、韓国を併合する以外に日本にどんな道があったのか」との煩悶です。それに対する真摯な答えが出せない限り、謝罪は偽善だと考える骨のある日本人がいたのです。
田中明(1926―2010年)という研究者が、以下の1文を書いています。岩波現代文庫に収録された『韓国の民族意識と伝統』の2ページで読めます。底本は1984年に出版された『朝鮮断想』です。
- とはいっても、そうした自分の思いを、いわゆる「日帝三六年に対する反省」といった美しい言葉に近づけていこうという気持ちには全くならなかった。そんなことをすれば、自分が「いい日本人」に化けてしまい、こんどは“良心的怠惰”に安住するであろうことは目に見えていたからだ(ぺらぺらと心地よく朝鮮に対する贖罪の言葉を連ねる、といった類の人を私はよく見てきた)。
日本にも気骨ある人がいたのです。今は「ぺらぺら」の人か、あるいは「ぺらぺら」をやっても韓国に謝罪を要求され続けるので、反韓になった人がほとんどですが。
気骨のある韓国人と気骨のある日本人の間には、暗黙の合意のようなものがありました。不幸な関係を繰り返さないためには「強い韓国」を造るしかない、との思いです。
1970年代までの日韓協力は、そうした共通認識に裏打ちされていました。日本の贖罪のためとか、反共の防波堤を造るためとか、そんな表面的な目的だけではなかったのです。
中国に立ち向かう気骨
—日韓関係は深いのですね。
鈴置:「深かった」のです。日韓の気骨ある人々の個人的な関係が、両国の「大人の関係」を支えていたのです。今では「謝罪」を巡る外交ゲームに堕していますけれど。
—「気骨」ですか。
鈴置:「気骨」は外交を分析する時、欠かせないと思います。経済力や軍事力だけが国力ではありません。韓国にとって日本との関係以上に、中国との関係で「気骨」の有無が重要になります。
今、中国が巨大な軍事力と経済力を持って周辺国家を勢力圏に取り込もうとしています。その中国にどう対していくのか――。私はこの点に関心を持って韓国を見つめてきたのです。
21世紀に入って韓国の指導層の中に「中国には従うしかない」との発想が芽生え――復活してきました。
日本と比べ韓国は大きなハンデキャップを持っています。中国のすぐ隣にあるという地理的条件。中国の歴代王朝に朝貢してきたという歴史。これら地政学的な悪条件のために、中国に立ち向かうには日本人とは比べものにならない程の「気骨」が要るのです。
しかし、2006年の段階で「もう日本も、中国には逆らってはいけません」と日本人にはっきりと語るリーダーまで出てきました。韓国は中国に逆らわない――。それは昔の「上」と「下」の関係に戻ることを意味します。
「二度と植民地や属国にはならない」という韓国人の決意は、いったいどこへ行ったのだろうと私は衝撃を受けました。
そこで、韓国が中国の懐に戻るというあらすじの近未来小説『朝鮮半島201Z年』を書いたのです。この発言については、同書のあとがきにも記しています。
日本人に気概はあるのか
—韓国は強くなったのになぜ、気骨がなくなったのでしょうか。
鈴置:様々の理由が考えられますが、最も大きいのは国防面での米国への依存でしょう。他人に国を守ってもらっているうちに、国民は緊張感を失い、自分の手で運命を切り拓いていく気概をなくすのです。
—……。
鈴置:そうです。日本もまた、そうなのです。
(次回に続く)=5月27日に掲載予定

5月24日、オバマ大統領は広島訪問に先立ち、ベトナム・ホーチミンで演説。対中包囲網の構築に向け、旧敵と新たな一歩を踏み出した。韓国が「過去」に拘泥する間に、アジア情勢は急速に変化している(写真=ロイター/アフロ)
(前回から読む)
韓国は「尊敬される国」になるのだろうか――。
メディア批判記事は1本
—韓国メディアがオバマ(Barack Obama)大統領の広島訪問に不満の声を上げ続けています。
鈴置:私が見た限り1本だけですが、大手メディアにこうした報道を批判する記事が載りました。「広島での米日の平和ショーを見守る韓国人慰霊碑」(5月13日、韓国語版)です。紙の新聞では5月14日付です。
書いたのは朝鮮日報の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問。東京特派員、政治部長、編集局長、論説主幹、主筆を歴任した有名な記者です。四半世紀前には韓国メディアはエース中のエースを東京に送っていたのです。
この記事の主張は「我々はオバマ広島訪問の本質を見落として『韓国人も謝罪の対象になるのか』という点ばかりにこだわっている。こんなことではまた、国を滅ぼす」です。「メディアが」と書いてはいませんが、文脈から見て明確な韓国メディア批判です。
亡国の100年前が再現
—「韓国人もオバマの謝罪の対象になるのか」とは?
鈴置:オバマ大統領が平和記念公園への訪問を検討中と米国や日本で報じられた時、韓国メディアはそれを阻止すべく、一斉に訪問反対の論陣を張りました。
5月10日に訪問が正式に発表された後は、もう反対しても仕方がないと思ったのでしょう、「日本に謝罪するな。それは免罪符を与えることになる」という合唱に変わりました。
さらに「行くこと自体が謝罪だ。少なくとも日本人はそう受け止めるだろう」と米国紙が書くと、韓国紙は「謝罪の対象には韓国人被爆者も含まれるか」に焦点を当てるようになりました。
ホワイトハウスの記者会見で韓国メディアがそれを執拗に問いただしました。明確な回答がなかったため、韓国紙はこれまた一斉に「謝罪の対象から韓国人が外れたら承知しないぞ」と声を荒げたのです。
一連の報道ぶりを見た姜天錫論説顧問はいかがなものか、と首を傾げたのです。ポイントを翻訳します。
- 日本は1996年に広島の「平和記念館」をユネスコの世界文化遺産に申請した。当時、これに反対したのは米国と中国だった。今回、オバマ大統領と安倍総理はこの建物の前に立つ。
- 米国はかつてのような余裕はない。中国は爪を隠して時を待つ戦略を捨てた。日本は中国侵略の過去から、その脅威を深刻に感じている。
- 大国に囲まれる朝鮮半島の地政学的な位置は、亡国の悲劇に苦しんだ100年前と変わっていない。だが、地政学的な見方は古臭いものとされ、大韓民国が置かれた状況を読み取る目は完全に退化してしまった。
- 広島訪問は米日の政治ショーだ。だが韓国は「追悼の対象に韓国人は含まれるのか」と尋ねるばかりだ。世界情勢の変化に追いついていないのだ。100年前にも、世界の動きを読み違えて国を失ったというのに。
馬鹿にされる地政学
—「地政学」という言葉が出てきましたね。
鈴置:姜天錫論説顧問は「現実を見ろ」くらいの意味で使っているのだと思います。でも、この単語の使い方はピンと来ます。
2009年、韓国の保守系紙の政治記者に「結局、韓国は海洋勢力側に残るのですか、それとも大陸側に行くのですか」と聞いたことがあります。「米中どちら側の国になるのですか」と露骨な質問をするのを避けたつもりでした。
すると「そんな地政学的な見方をまだしているのですか」と聞き返されました。この回答が意味することは2つあります。
まず、米中双方とうまくやっていけると韓国人が固く信じていること。もう1つは、地政学に代表される現実主義的な――観念的な理想論を排する考え方は古臭く危険である、と韓国人が思うようになったことです。
ソウル五輪(1988年)頃までは、日本人の平和ボケを韓国人は苦笑して眺めていたものです。北朝鮮と厳しく対峙していた当時の韓国にとって「後背地・日本」の平和ボケは危険なものでもありました。
それが、韓国人に地政学的な言葉を使って質問をするだけで「軍国主義者扱い」されるに至ったのです。「平和ボケすることが先進国の証(あかし)」と彼らは思い始めたようでもあります。
日本の後ろには海洋大国がいた
—「100年前にも読み違えた」とは?
鈴置:姜天錫論説顧問は具体的には書いていません。勝手に忖度すべきではありませんが、常識的にはこういうことかと思います。
日清戦争でも日露戦争でも、朝鮮は建前は中立を維持した。が、心情的には大陸の大国である清やロシアの味方だった。日本は野蛮な小国との意識からである。
しかし、日本の後ろには英国や米国など海洋勢力が付いていた。それを見落とした朝鮮は勝ち馬に乗れず、植民地に転落した。
でももう一度言いますと、姜天錫論説顧問はここまで踏み込んで書いているわけではありません。
記事の趣旨はあくまで「韓国人も謝罪や追悼の対象か」といった狭い視野で外交を語るな、大局を見ろ――との警告です。
日米同盟強化に危機感
—広島訪問は「日米の政治ショー」なのでしょうか。
鈴置:日本で見ていると、政治効果を狙ったショーとはとても思えません。なぜなら、日米同盟を強化すべきだと考えている保守派には、こんな「ショー」は不要です。
それどころか「オバマの任期終了直前の実績作りのため、日米同盟が危険に晒される」と考える人が多い。米国の軽率さに対する失望を語る人もいます(「日本の『被害者なりすまし』を許すな」参照)。
一方、安倍晋三政権の日米同盟強化に反対する人は「広島訪問によって日本はますます危険な状況に引き込まれる」と反発を強めています。両者を合わせ見ると「日米同盟強化」に逆効果か、せいぜい「意味がない」程度なのです。
ただ、韓国人から見れば「注目すべき政治ショー」なのでしょう。これにより、旧敵の日米が和解し同盟を強化するように見える。もちろん中国を包囲するのが目的ですから「海洋側か、大陸側か」の踏み絵をますます迫られると韓国人は危機感を高めるわけです。
日本を訪問する直前、オバマ大統領はベトナムを訪問し、中国を念頭に軍事協力強化を約束しました。これこそ劇的な変化です。米国はベトナムとは血みどろの戦いを続け、1995年まで国交がなかったのですから。
韓国の立ち位置が問われる材料が、また増えたのです。声を大にして「韓国人よ、目を覚ませ」と叫びたくなるのも分かります。
韓国に謝らないと承知しないぞ
—警告の効果はありましたか?
鈴置:全くないようです。依然としてどのメディアも「韓国人も対象になるのか」と米国に迫り続けています。
同じ朝鮮日報でさえ、3日後に金秀恵(キム・スヘ)東京特派員の「広島に行くオバマ大統領へ」(5月16日、韓国語版)を載せました。
2015年7月に外国人記者のツアーで広島を訪れ、被爆者と会った体験を基に書いています。結論は以下です。
- オバマ大統領が行く時も(自分が体験した朝鮮人被爆者への無視と)同じような状況が繰り返されるなら、笑って見過ごすことはできません。
- 朝鮮の人々は植民地支配と原爆で2回、苦痛を受けました。その苦痛に何とおっしゃるのか、広島で見守りたいと思います。
要は「韓国人も謝罪や追悼の対象にならなかったら承知しないぞ」ということです。姜天錫論説顧問の警告は後輩にも届かなかったようです。
二股を推奨の朝鮮日報
—韓国メディアに批判的なヴァンダービルド氏は「広島訪問」について書きましたか?
鈴置:何本も書きました。ただし、いつものことですが、大手紙と比べ桁違いに読者の少ないネットメディアの趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムが舞台です。
何と、うち1本は姜天錫論説顧問のこの記事への批判でした。「『100年前の気分』にとらわれる韓国」(5月14日、韓国語)です。
批判のポイントはいくつかあります。まず「米日政治ショー」と書いたことに関してです。
- 韓国の同盟国と友邦である米国と日本の首脳外交に、韓国を代表する新聞が「米日政治ショー」との見出しを付けた。
- まだ100年前の気分を一歩も抜け出せず、同盟国や友邦国の首脳外交に対し不平不満(「平和ショー」など)をこぼす状態だ。全く成熟しきれていない。
親米保守のヴァンダービルド氏としては「もっと立ち位置を明確にしろ」と言いたかったのでしょう。朝鮮日報の主張は「米中の間では二股をかけろ」式のものが多い。
2015年10月に朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が訪米した際、共同会見の場でオバマ大統領から「中国の不法な振る舞いに批判の声を上げろ」と迫られたことがあります。
米国の叱責への対応で、保守系紙の意見は割れました。東亜日報は米国側に立とうと言い、中央日報は中国に傾きました。朝鮮日報の社説は歯切れが悪く、どちらつかずのものでした(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。
姜天錫論説顧問は今回の記事で米中の厳しい対立が始まったことを見過ごしてはならないと主張しましたが「海洋勢力側に立つべきだ」とまでは書かなかったのです。
韓国人の精神を堕落させる
—ヴァンダービルド氏のもう1つの批判のポイントは?
鈴置:「いつまで弱者のつもりか」です。要所を訳します。
- こうした記事は、今日の韓国人をして引き続き国を失った気分(悲しみ)にひたって生きていくことと、周辺からの終わりのない慰めと同情を渇望させ、もしそれらが望んだほどに与えられなければ、際限のない不平と不満をこぼすように誘導する(韓国人の精神を堕落させる)、望ましくないものである。
—姜天錫論説顧問の記事に、そんな部分はありましたか?
鈴置:先ほどは訳しませんでしたが、最後の2段落に韓国人被爆者の慰霊碑の話が出てきます。見出しも、そこから取っています。以下です。
- 広島の原爆被害者16万人のうち3万人は当時の朝鮮人だった。長崎では7万人のうち1万人がそうだ。安倍総理はこの事実を知っている。オバマ大統領も知らないはずがない。
- 平和公園の片隅に立つ韓国人慰霊碑は2人の姿を見守ると同時に、祖国に対しても恨みに満ちた叱責の言葉を投げかけるだろう。「100年前に世界の動きを読み違えて国を失ったのに、今もこのざまか」と。
弱さを売りにするのはやめろ
—姜天錫論説顧問も朝鮮人被爆者に言及してはいるのですね。
鈴置:もし、それに一切触れずに「韓国人が追悼の対象かどうかばかりを気にするな」と書いたとします。読者から「我々の苦しみを無視するのか」と抗議が殺到するでしょう。
そこで韓国人の犠牲者に言及した後、彼らがいまだに狭い視野の韓国人を嘆くであろうと説く――論理構成にしたと思われます。回りくどくなりますが、これなら読者から怒られずに言いたいことも言えるのです。
韓国のメディアは「日本の悪行」に少しでも関連する記事には、どこかに必ず日本糾弾の言葉を入れるのが約束事です。ヴァンダービルド氏もそれは分かっているでしょう。
でも、敢えて「反日記事の約束事」に寄りかかる大記者を厳しく批判したのです。ヴァンダービルド氏は記事の最後でこう、記しています。
「100年前と変わらない」との嘆きはこの記事に向けられなければならない。
人間が成長するにつれ、望ましくない習慣は時期が来れば自然になくなる。大の大人になっても周囲から慰めを得ることにだけこだわり、得られなければ不満(嫉妬)を漏らすという未成熟な態度が続けば、韓国を尊敬する国は出てこないだろう。
「いつまでも弱者であったことを売り物にするな」との怒りです。さらにメディアが、どこかでそんな習慣を断ち切らねば国の格は上がらない、と訴えたのです。
得意技は捨てられない
—韓国にも気骨ある人がいるではありませんか。
鈴置:ええ。でも、昔と比べれば数はぐんと減りました。ほぼ、絶滅状態です。慌てて付け加えれば、日本も他人のことは言えませんが。
—結局、韓国は「尊敬される国」になるのでしょうか。
鈴置:その質問は「弱者であることを卒業するか」つまり「歴史カードを捨てるか」という質問になるわけですが、簡単ではないと思います。
「歴史カード」の活用は対日外交の基本ツールとして定着したからです。柔道などで、得意技を容易には捨てられないのと同じです。楽ですからね。
—でも、「弱者を売り物にする韓国」を日本は突き離しそうです。
鈴置:その時はまた、米国や中国を頼みにしていくでしょう。今回の韓国メディアの「ヒロシマ騒動」を見てもそれは明らかです。日韓が大人の関係になることはまず、ないでしょう。
『ヒラリー大統領誕生で日米関係はかつてない危機も ニューヨーク・タイムズ紙の辣腕記者が明かすヒラリーの本音』(5/24JBプレス 高濱賛)について
米国の世論調査のやり方は日本の世論調査と同じで固定電話でしているとのこと。これでは暇な老人しか対象にならず、結果に偏りが出ます。日本の左翼マスコミは誘導尋問に近い質問や、あまつさえ結果をいじったりします。心情的に中・韓と同じものを日本のメデイアは持っています。共産主義にシンパシーを持つ人は「目的は手段に優先する」と考え、「嘘も方便」とするのでしょう。邪悪な考えです。
ヒラリーは強欲、嘘つき、自己顕示欲の強い人間で好きになれません。ましてや民主党は中国に近い議員がおり、多分金で懐柔されているのだろうと思います。民主党の支持基盤である全米自動車労組もマフィアとの繋がりも噂され、ジャック・ニコルソン主演の映画『ホッファ』にもなりました。まあ、大統領がマフィアと繋がりがあり、暗殺されるケースがある国ですから。
共和党はRepublican Party =Grand Old Party=GOPと呼ばれ、リンカーンが奴隷解放宣言を出した偉大な政党です。ところが、リンカーンの意に反した人種差別を広言するトランプが共和党の大統領候補となりました。歴史の皮肉でしょうか。いくら、厳しい選挙レースがあるからと言って禁じ手のような気がします。ただトランプに言わせれば「こうでもしなければ、メデイアは取り上げず、選挙に生き延びれなかった」との弁解がありました。
オバマは力の行使を極端に嫌がります。戦争嫌いとも言われますが、戦争が好きな人はそんなに多くないでしょう。日本人であれば100%に近いと思います。ただ、力の行使を躊躇すれば悪が蔓延ります。警察や軍の存在はそれを防ぐためにあります。中国やロシアの侵略は、オバマでは反撃してこないと読んだからです。理念だけでは平和は守れませんし、9条を守る会のように念仏を唱えるだけで平和が守られる筈がありません。抑止力があって初めて戦争が回避できるのです。そうしなければ奴隷の平和が待つのみです。オバマは口先だけで行動がないと言われてきて、ここにきてレガシー作りに勤しんでいます。広島訪問は日本人として喜ぶべきことと思っています。謝罪は不要ですが、「死の行進」の生き残りの兵士を連れて来なくとも良かったのでは。連れて来る意味が良く分かりません。原爆の悲惨さを彼らに見せ仇を討ってやったと思わせるのか、戦争は非人間的行為を誘発するという事を悟らせるのか?オバマのことですから後者だと思いますが。
記事

オバマには「レガシー作り」しか頭にない
米民主党大統領候補指名争い終盤戦をよそにバラク・オバマ大統領は、あと6か月の任期をレガシー(遺産)作りに懸命だ。
とにかく大統領として歴史に名を残したくて仕方がないのだろう。
その手段は、ノーベル平和賞に輝いた「核廃絶」宣言の上塗りであり、旧敵対国との和解だ。歴代大統領がやろうとしてできなかったことを6か月の間に成し遂げようというのだ。
こう見ると、キューバ訪問にしてもベトナムや被爆地・広島訪問にしてもその狙いが手に取るように分かってくる。後世の史家は「ベトナムを訪問した最初の現職米大統領」「広島を訪れた最初の現職米大統領」としてオバマ氏の名前を未来永劫記録することだろう。
国内政策では、全米の公立学校区と大学に対し、心と体の性が異なる「トランスジェンダー」の生徒・学生が自身の認識する性のトイレを使用できるよう義務づけるガイドラインを通達。LGBT(性的少数者)の権利を保護するのが狙いだ。

南部中西部の保守的な州では反発が起こっているが、オバマ大統領は意に介さない。
大統領の3選はないのでオバマ氏が再選されることはない。従って選挙民の動向を心配する必要もない。米議会共和党とは完全な絶縁状態にある。
「やりたい放題のレイムダック大統領(任期切れ間近の大統領)」と皮肉る共和党幹部もいるくらいだ。
「オバマ大統領の民主党」の次期大統領候補を決める代議員獲得競争ではヒラリー・クリントン前国務長官が大きくリードしている。
しかし各州ごとの最高得票数争いでは伏兵バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)が19勝23敗2分(5月19日現在)で善戦している。同上院議員は最後まで撤退しないと明言している。
世論調査は必ずしも選挙結果を見通せず
サンダース善戦の背景についてこんな指摘がある。
「ヒラリーはもともとオバマ政権の国務長官だった人間。民主党系労組や大企業から巨額の政治資金を得ている。ヒラリーが大統領になっても政治が抜本的に変わるとは思えない。民主党の一般党員や支持者がヒラリーに反発しているのはそのためだ」(米大手紙政治記者)
「ヒラリーが一部でなぜ嫌われているかだって?そりゃ、あの高慢ちきな人間性だよ」(ロスアンゼルスのレストラン経営者、白人中年男性)
が、クリントン指名に向けた流れは変わりそうにない。指名決定まであと、90人の代議員数を獲得すればいい。サンダース氏はあと850人必要だ(5月19日現在)。
当然のことながら米国民の関心は、そのヒラリー氏と共和党大統領候補が確実視されてきた不動産王、ドナルド・トランプ氏との一騎打ちに注がれている。
ここ1~2週間、トランプ氏が僅差でヒラリー氏をリードしているといった世論調査結果も出ている。予備選を振り回してきた世論調査が果たして本当に民意を反映しているのか。疑問視するものも少ない。
「現在実施されている世論調査はすべて電話で行われている。が、米国内では固定電話所有者数は年々減っている。電話をかけてもなかなか受話器を取らない人が増えている。電話回答する層は暇なリタイア組、白人中高年層が多い。世論調査機関の老舗、ギャラップなどは大統領選の世論調査を一切やめているのはそのためだ」(カリフォルニア大学バークレイ校ジャーナリズム大学院教授)
理想主義者オバマと現実主義者のヒラリー
本選挙までまだ6か月ある。何が起こるか分からない。
少し先走りすぎかもしれないが、「ヒラリー大統領」ってどんな大統領になるのか。オバマ大統領とはどこかどう違うのか。政治理念、政治手法の違いはなにか。いずれ論じられる興味深い命題だ。
本書「Alter Egos: Hillary Clinton, Barack Obama, and The Twilight Struggle over American Power」はそれを予測するうえで貴重な材料を提供している。
著者は、ニューヨーク・タイムズのマーク・ランドラー記者。外交、内政なんでもござれのベテラン・ジャーナリストだ。クリントン国務長官(当時)の国務省を担当、外遊には常に同行、外交の第一線から鋭い記事を送ってきた。その後オバマ大統領のホワイトハウス詰めとして現在に至っている。
本のタイトルは難解だ。著者がこの本で書きたかったすべてがこのタイトルに凝縮されている。
Alter Egoは日本語でも「アルター・エゴ」つまり「分身」だ。リベラリズムを標榜する2人はその意味では「一心同体の友」だ。
「2人ともリベラルな国際主義者だ。ルールに基づく秩序を重んじ、第2次世界大戦後、ハリー・トルーマン第33代大統領とディーン・アチソン国務長官とが築き上げた戦後体制を堅持することでは完全に一致している」(著者)
ところが危機に直面した際の2人の対応は異なる。米国という国家が持つパワーを国際社会でどう行使するか、という外交理念で2人は大きく異なるからだ。
ムバラクを見捨てたオバマに反発したヒラリー
チュニジアで長期政権を倒したジャスミン革命に触発されて2011年1月から2月にかけてエジプトで起こったエジプト革命。約30年にわたり大統領の座に座り続けてきたホスニー・ムバラク大統領の退陣を迫った大規模なデモは、まさに騒乱だった。
少なくとも850人が死亡、約5500人が負傷した。
オバマ大統領は直ちにデモを支持し、ムバラク退陣に賛同した。しかしヒラリー国務長官は違った。
長年にわたり米国との同盟関係を堅持してきたムバラク大統領の退陣には慎重な姿勢を見せていた。オバマ大統領はこうしたヒラリー氏のスタンスに激怒したと著者は書いている。
「しかしながらオバマとヒラリーの間に生じた意見対立は、それがイラン問題にしろ、シリア、中国問題にしろ、中身に関するものではなく、むしろ戦術面でのものだった。つまり2人ともリベラル派国際主義者という点では同じだった。だからイスラム国(ISIS)を巡る意見対立も実は戦略面というよりも戦術面でのものだった。言い換えると、方向性というより程度の問題に関してだった」
外交理念の違いは2人の出自にあり
その違いはその出自と育った環境にある、と著者は指摘している。
「オバマは幼児・少年期にシングルマザーとともにインドネシア、ハワイで過ごす。米本土に住む米国人の子供に負けないだけの学力をオバマにつけさせようと母親は孤軍奮闘する。そのために絶えず本を読ませた。オバマはアフリカ人の父と白人の母との間に生まれた混血児だ。人種的偏見や差別を痛いほど経験してきた」
「一方のヒラリーは、中西部シカゴ近郊の保守的な町で育った。父親はゴリゴリの反共主義者だった。熱烈な共和党支持者だった。だからヒラリーは学生時代にはボランティアで共和党候補を応援した」
「ヒラリー自身、かって『私の政治信条は生まれ育った保守主義に根づいている』とまで述べていた。その後民主党に転向、リベラル派弁護士として社会の不正義、女性差別、人種差別に立ち向かう。だがヒラリーのプログレッシブな言動はあくまで保守的な基盤に根差していたと言える」
「オバマは自制的であり、内向的であり、痛いほど自らをがんじがらめにしている制約に敏感だった。一方のヒラリーは、鋭角的であり、プラグチックであり、厚かましくて、オールドファッション(古風な)なところがあった」
「オバマは理想主義者だった。米国が他の国は異なる国家だという考え方には組みしなかった。国家安全保障についてはナイーブなところがあった。一方のヒラリーはリベラル派干渉主義者だった。米国には神から与えられた不正義と戦う任務があると信じていた」
イラン核合意にいちゃもんつけたヒラリー
2人の考え方の違いは、2008年の大統領選予備選でも露呈した。
公開討論会で司会者から「大統領就任1年目に無条件でイラン、シリア、ベネズエラ、キューバ、北朝鮮の指導者に個別に会うか」と聞かれたオバマ氏はまごうことなくこう答えている。
「私は会う。一定の国の指導者と会って、話をしないという考え方は馬鹿げている」
一方のヒラリー氏は「イランの指導者はイスラエルと米国を完膚なきまでに打ちのめし、抹殺すると言っていることを忘れてはならない」とイラン指導者と無条件で会うことには難色を示した。
おかしなことだが、あれから8年後、当時のオバマ氏と同じようなことを言っているのは今を時めくドナルド・トランプ氏だ。無条件で金正恩委員長と会うと言っている。
国務長官辞任後、ヒラリー氏はオバマ大統領の外交政策について批判がましいことは一切口にしなかった。
ただ大統領選立候補を表明して以降は、そうしたスタンスが微妙に変わってきている。
2015年7月、オバマ大統領はイランとの「包括的共同行動計画」(JCPOA)で合意した。イランは今後10年、核開発が大幅に制限された。オバマ大統領はこの合意を「最強の核拡散防止合意だ」と自画自賛した。
ところがヒラリー氏は「私の外交交渉上の出発点は常に相手の出方を疑うところから始まる」と慎重な言い回しで、この合意にいちゃもんをつけている。
ヒラリー氏は、オバマ大統領が金科玉条にしてきたTPP(環太平洋経済連携協定)についても微妙な言い回しになってきている。むろん、民主党の強力な支援団体の労組の顔色を窺ったポーズだ。
票目当ての選挙時の発言だということを差し引いても「オバマ離れ」が見え隠れしている。
「ヒラリー大統領」がオバマ外交路線をそのまま踏襲すると見るのは甘いかもしれない。「ヒラリーのアメリカ」はリベラル派の看板を掲げながら、その実、「オールドファッションな保守路線」に舵を切るかもしれない。
訪日のたびに元ファーストレディの「特権」を生かして「旧知の皇后陛下」とハグし合う「ヒラリー大統領」は知日派ではあっても「親日派」とは限らない。
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5/25日経朝刊によれば<トランプ氏支持率が逆転、クリントン氏を僅差で 米サイト
【ワシントン=川合智之】米大統領選の共和党候補指名を確実にした不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は支持率で民主党のヒラリー・クリントン前米国務長官(68)を初めて逆転した。これまで本選はクリントン氏の勝利予想が多かった。対日政策にも大きな影響を与える米大統領選は混戦模様になってきた。

米政治専門サイト、リアル・クリア・ポリティクスが集計した主要世論調査の平均(13~19日)によるとトランプ氏の支持率は43.4%で、クリントン氏の43.2%を僅差で上回った。直近の調査でトランプ氏に軍配が上がる結果が相次いだためで、米紙ワシントン・ポストなどの調査で2ポイント、FOXニュースは3ポイント差でトランプ氏が優位だった。
両氏の支持率は人種や性別で大きく異なる。男性の支持率はトランプ氏が上回るが、逆に女性の多くはクリントン氏を支持する。白人の多くはトランプ氏支持、黒人やヒスパニック(中南米系)はクリントン氏支持だ。
4月にはクリントン氏が10ポイント前後の差を付けていた。ただ、民主党のバーニー・サンダース上院議員(74)が「最後まで戦い続ける」と大統領予備選の撤退を拒否し、クリントン氏を攻撃。5月以降の予備選はサンダース氏が優勢だ。
本選では選挙結果が年ごとに揺れ動く激戦州での勝敗が鍵を握る。このため、全米の平均支持率はあてにならないとの見方もある。ただ、激戦州であるフロリダ州やオハイオ州などの直近の調査では、クリントン氏とトランプ氏は数ポイント以内の接戦になるとの予測があり、トランプ氏の勢いは止まらない。
支持率が逆転した原因はクリントン氏への不信だ。トランプ氏の暴言に注目が集まりがちだが、クリントン氏への反感も根強い。トランプ氏とサンダース氏の原動力は有権者の政治不信。大統領夫人や国務長官など政界の中心に長くいたクリントン氏は既存政治の象徴とみなされている。
両候補ともに党内からの反発を抱えているため、党内の亀裂を補えるような信頼が厚い副大統領候補を選ぶのではとの観測が出ている。トランプ氏は副大統領候補の条件として、政治経験があり選挙で選ばれた人物だと語った。女性州知事や撤退した大統領候補らの名が取り沙汰されている。
一方、クリントン氏が本選で勝つには、熱心なサンダース氏支持者の取り込みが必須となる。サンダース氏の一部支持者が「クリントン氏に投票するならトランプ氏に入れる」と反発。民主党は本選の対応で分裂する懸念も出ている。
クリントン氏は米CNNテレビのインタビューで、サンダース氏の副大統領起用の可能性を問われ「それは今後考えることだ」と否定しなかった。環太平洋経済連携協定(TPP)への反対や金融機関の規制強化といったリベラル色が強い政策に、クリントン氏が影響される可能性もある。>(以上)
リアルクリア・ポリテックス、ワシントンポスト、FOXの3社の支持率の世論調査でトランプがヒラリーを上回りました。
また、ヒラリーの元選対が中国人からの違法献金の疑いでFBIの捜査を受けているとのこと。
http://www.sankei.com/world/news/160524/wor1605240036-n1.html
FBIはベンガジ事件や職務上のメールの遣り取りを自分のサーバーでしていたことなどの法的証拠が掴めないため別件から追い落としを図っているのかも。或は、元選対のモコーリフ・バージニア州知事と司法取引するつもりかもしれません。ホワイトウオーター事件が蒸し返される可能性もあります。法的には時効になったとしても政治的なダメージは大きいでしょう。
今度のサミットの隠れた主役はトランプという見方もあります。英国のEU離脱はロシアが裏工作しているとの話もありますが、離脱の可能性は少ないと思います。離脱は益々中国依存が強まるだけで、経済崩壊が言われている中国と心中する判断はしないと思うからです。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48695
トランプの交渉術は中国と一緒です。10倍くらいの値段を吹っかけ、そこから値段を下げて行く。自分に都合悪い話は、話をすり替える。相手を驚かして自分の土俵に持ち込む。日本人は誠実さを旨としているので、こうやられると胆を潰してすぐ相手の言いなりになります。だから事実でない南京虐殺や慰安婦で苦汁を舐めさせられているのです。国際化社会で生きていこうとすると強かさを身につけないと。イカサマ麻雀をすることはありませんが、相手のイカサマを見抜く目を持たないと損します。ヒラリーが脱落してトランプが大統領になる可能性は高くなってきました。日本政府も入念に準備してほしい。外務省だけでなく民間の声も聴いた方が良いと思います。
記事
ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領選挙に向けて共和党の候補者指名を確実にした。昨年、共和党の予備選挙への立候補を語り始めたときは、誰もが冗談にしか思っていなかったのだが…。
立候補を正式に表明したのは昨年6月。その数週間前の世論調査では、共和党候補者としてのトランプ氏の支持率はわずか3%。10人以上いた共和党の候補者の中では、泡沫候補だった。それなのに立候補表明後、次々とほかの候補者を撃破し、11カ月後の2016年5月には共和党の大統領候補となることを確実にしたのだから、驚くほかない。
トランプ氏は、長年にわたり世界一の大都市であるニューヨークにおいて不動産ビジネスを行い、成功を収めた人物である。不動産ビジネスに不可欠なのは交渉力やPR力。トランプ氏がこれらの手法に長けた「達人」であろうことは間違いない。そしてその手法を今回の予備選挙でも駆使している。
トランプ氏はどのようにして共和党の予備選を勝ち抜いたのか、そして、われわれ日本人がトランプ氏の手法から学べることはあるだろうか──。今回は、トランプ氏の「悪の交渉術」「悪のPR術」について考察する。

過激な発言をすればするほどマスコミが大きく取り上げることを熟知したドナルド・トランプ氏。マスコミもトランプ氏の老獪な戦略にはめられたか? (写真:The New York Times/アフロ)
攻撃をしかけてくる「プチ・トランプ」氏は海外では珍しくない
まず最初に前もってお断りしておく。言うまでもなく、トランプ氏の手法は必ずしもほめられたものではない。アメリカ国内においても多くの非難を受けている。ましてや、われわれ日本人にとっては思わず顔をしかめるような、品のない手法も数多い。
しかし、私がアメリカで弁護士として長く仕事をした経験から言うと、時折、われわれ日本人の常識では考えられないほど、品のない攻撃をしてくる弁護士が出てくることがある。プチ・トランプ氏とも言えるようなタイプである。トランプ氏を見ていると、私は以前に対峙したことのあるそういった弁護士たちをつい思い出してしまう。
日本社会も国際化が進んでいる以上、こうした攻撃的な人物に背を向けているだけでは、やられてしまうだけだ。トランプ氏から学ぶべき手法もあるかもしれない。あるいはトランプ氏のような戦略を取るのは控えるにしても、交渉の場に同じような交渉相手が出てきたとき、動揺せずにその狙いを探り、冷静に対応する心の準備はできるようにしておきたい。
ここでは共和党予備選挙戦中に見られたトランプ氏の交渉術やPR術について分析してみたい。私が思うに、トランプ氏の手法には以下の3つの特徴があるように思う。
「トランプ氏の手法の特徴」
① 「高い(無茶な)要求」から始める ② 相手を攻撃する ③ 非常識な発言でとにかく注目を集める
①から順に説明していこう。
① 「高い(無茶な)要求」から始める
交渉術のセオリーの1つとして挙げられるのが、「高い要求からはじめる(“Start high”)」というものだ。アメリカ国民もこのセオリーについてよく知っている。トランプ氏は、この“Start high”を以下の2つの観点から駆使している。
(1)自分の交渉力のアピール
トランプ氏は、「不動産ビジネスを通じて培った自分の交渉術は、アメリカ大統領としての職務を行うにあたり大いに役立つはずだ」と繰り返し主張している。
・「イスラム教徒の外国人の一時入国禁止」 ・「1100万人の不法移民の国外への強制送還」 ・「メキシコ国境への壁の建設」
上記のような無茶な政策はいずれも、移民国家であるアメリカの政治家が本来、主張するはずもない荒唐無稽なものだ。だからこそ、マスコミがこぞって大きく報道する。
トランプ氏はビジネスにおける豊富な経験から、「すべては交渉だ」と考えているふしがある。そしてアメリカ人はたいてい、交渉における強者が好きで、交渉の達人を称賛する。もし大統領になったとすれば、交渉技術を駆使してとてつもなく「高い(無茶な)次元」から交渉を始めるであろうトランプ氏を、アメリカ人は頼もしく思う。実際にはそこまで強硬にできないかもしれないし、譲歩もするはずだが、最初に浴びせるパンチの強烈さゆえに大きな見返りを得るかもしれない。そういう期待感がある。
(2)有権者そのものを交渉相手とみなしている
トランプ氏は、有権者そのものを交渉相手とみなし、無茶な要求や発言を繰り返してきた。例えば、「イスラム教徒の外国人は一時入国禁止」「メキシコ人はレイプ犯」といった発言である。これらの発言はあり得ない発言としてアメリカ中で強く非難された。アメリカにはイスラム教徒やメキシコ系(ヒスパニック)がたくさんいる。彼らは、怒り、恐れている。しかし、それも計算の範囲内かもしれない。大統領選挙の本選が進むにつれて、徐々に軌道修正してくるのではないか。
今後、トランプ氏がイスラム教徒やヒスパニックに「やさしい」メッセージを送れば、最初がひど過ぎた分、改心した良い人に見えるかもしれない。無茶な発言から始めることにより、軌道修正した後の自分をよく見せようとしているのかもしれない。
② 相手を攻撃する
トランプ氏は自らの行動において、相手を攻撃することに重きを置いている。トランプ氏の著書「Trump: Art of Deal」(邦題:『トランプ自伝――アメリカを変える男)に以下のようなフレーズがある。
”…when people treat me badly or unfairly or try to take advantage of me, my general attitude, all my life, has been to fight back very hard.” =「人が私を悪くあるいはアンフェアに扱ったり、あるいは足元を見たりした場合、私の通常の態度は、私の人生を通して、極めて激しくやり返すというものだ」。
しかし実際には、やられたらやり返す、というよりは、やられる前に攻撃をしかけているように見える。まず共和党の候補者が攻撃を受けた。トランプ氏は予備選の間、対立候補者を次々とこき下ろし続けている。
驚いたのは、女性のルックスさえも攻撃の対象にしたことだ。攻撃されたのは、最後までトランプ氏と競合を続けたテキサス州選出の上院議員のテッド・クルーズ氏の妻。トランプ氏は、自らのツイッター上で、自らの妻である元モデルの美しい顔写真とクルーズ氏の妻の写りの悪い顔写真を並べ、「写真は何千もの言葉より価値がある」などと対立候補の妻のルックスをこき下ろした。クルーズ氏は、はらわたが煮えくり返ったに違いない。
唯一の女性候補者であった、元ヒューレット・パッカードCEOのカーリー・フィオリーナ氏に対しても同様だった。「あの顔を見ろ! 誰が投票するんだ? あの顔が我々の次の大統領だと想像できるか? 女性だから悪いことは言いたくないが…しかし本当に、本気か?」などと、やはりルックスを対象とした攻撃をし続けた。特に女性の権利に敏感なアメリカではありえない下品な攻撃だ。
対立候補をバカにするようなあだ名をつけるのも特徴である。フロリダ州選出の上院議員であるマルコ・ルビオ氏に対しては“Little Marco”(「ちっちゃなマルコ」)と呼び続け、からかっていた。また序盤戦は共和党のトップを走っていた元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏に対しては“a very low-energy kind of guy”(「全く精気のないやつ」)、“Spoiled Child”(「甘やかされた子供」)などと馬鹿にした発言を繰り返した。クルーズ氏には、予備選中、ずっと“Lyin’ Ted”(「うそつきテッド」)と呼び続けていた。
さらには、クルーズ氏に対しては「実は父親がケネディ大統領の暗殺にかかわっていた」とか、まったく根拠のない無茶苦茶なコメントを出したりもしていた。ほかにも沢山あるが、これ以上は控える。
こういった言葉による攻撃は、米国の大統領選挙に出るような、世の中の道理がよくわかった69歳の大人が、対立候補に言うはずのないような品のないものばかり。ほかの候補者は、いじめっ子の悪口のような下品な攻撃を受け続けて、だんだん嫌になってきた、という影響もあっただろう。有権者の目にはそういった候補者が弱者に見えてくる。そうなれば支持率が落ちる。選挙戦からの撤退につながる。トランプ氏は、こうやって対立候補の戦意を喪失させ、支持率を下げて撤退させていったのだ。
これからの大統領選挙の本選の相手となるだろう民主党のヒラリー・クリントン元国務長官。さっそく“crooked Hilary”(「不正なヒラリー」)などと呼ばれている。今のところクリントン氏は「トランプ氏の攻撃による挑発には乗らない」と言っている。挑発を無視し続けることができるのか、それで有権者の支持が得られるのか、あるいはどこかで反撃に転じるのか、これからが見ものだ。
あからさまな争いを好まないわれわれ日本人からすると、トランプ氏の公の場での対立候補への手ひどい攻撃にはびっくりさせられる。しかし、前述したが、敵対的な国際交渉の場には、時に相手方にこういった攻撃をしかけてくることを何とも思わないような人物がいる。相手が嫌な思いをしようが、相手が傷つこうが、下品なやつと思われようが、自分の目的のためには関係ない。交渉相手が戦意を喪失して、交渉を続けたくなくなって、しぶしぶ多額の支払いに応じてくれば、それでよい。こうした人物が交渉相手の場合は、対抗意識を高く維持し、戦意を喪失しないようにこらえないといけない。
③ 非常識な発言でとにかく注目を集める
トランプ氏は、アメリカの4大ネットワークの一つであるフォックス・ニュースのインタビューで、メキシコとの国境に壁を建設することについて、“Not negotiable”(「交渉の余地なし」)と強調している。つまり自分が大統領になればメキシコとの国境に必ず壁を建設する。交渉の余地はない、と言い切っているのだ。
トランプ氏によれば、この壁の建設コストはざっと100億ドル(約1兆900億円)。しかもこれにかかる費用を全てメキシコに負担させると言っている。アメリカのメキシコに対する貿易赤字は580億ドル(約6兆3220億円)。しかしトランプ氏は涼しい顔で「メキシコにとっては(対アメリカ)580億ドルの黒字なんだから、100億ドル程度の負担は悪くはないだろう」と言っている。途方もない主張だ。
「イスラム教徒の入国禁止」も常識はずれの主張だし、いじめっ子の悪口のような対立候補への攻撃もアメリカ大統領選挙の予備選のものとは思えない非常識なものばかりだ。
この狙いは何だろう。マスコミに取り上げさせるためである。マスコミはトランプ氏の要求の途方のなさ、品のなさに驚きながらも、だからこそ、対象となったヒスパニック、イスラム教徒、共和党の候補者たちにコメントを求める。彼らは反論したり、攻撃し返したりする。それに対してトランプ氏は「倍返し」で応える。
有権者にとっては、報道が過熱するほど、面白いショータイムとなる。トランプ氏とすれば、相手を傷つけたり怒らせたりしても、有権者に下品だと思われても、とにかく自分中心のショーを見せることができる。自分に注目が集まる。それを狙っていたのだ。
トランプ氏は著書『Trump: Art of Deal』の中でこうも述べている。
”One thing I’ve learned about the press is that they’re always hungry for a good story, and the more sensational the better… The point is that if you are a little different, a little outrageous, or if you do things that are bold or controversial, the press is going to write about you.” =「私がマスコミについて分かったことの1つは、彼らはよい(面白い)話にいつも飢えていて、そしてそれはよりセンセーショナルなほうがよいということ。もしあなたが(他人と)少し違っていたら、あるいは少し常軌を逸していたら、あるいは大胆あるいは物議を醸すようなことをしたら、マスコミはあなたについて書いてくれるということだ」
ちなみにこの本は1987年に出版された。それから30年近くたった後の大統領選挙においてトランプ氏は自著に書いたことを実行している。そして今までのところは功を奏しているようだ。
マスコミは、トランプ氏の術中にはまった?
もっともアメリカ人の多くもその手法について気づき始めている。つまりマスコミがトランプ氏の術中にまんまとはまったことにより、トランプ氏が成功したということだ。オバマ大統領も任期中最後となった毎年恒例のホワイトハウス記者会ディナーにおいて、皮肉を込めて記者たちに次のように述べている。
”I hope you all are proud of yourselves.” =「あなた方皆が(トランプ氏の快進撃をもたらしたことについて)誇りに思っているといいのだが」
つまりマスコミによるトランプ氏についての過熱報道がトランプ氏を作り上げたとジョークを通じて示唆したのだ。
ちなみに日本もトランプ氏の攻撃の対象である。「駐日米軍の経費を全額負担させる」などと発言している。日本の政治家は、真に受けて心配し始めているかもしれない。しかしトランプ氏は、交渉で勝つために、日本に対しても「高い要求」から始めている。そのために攻撃をしかけているのだし、またあえて常識からかけ離れた主張を繰り返しているのだ。真に受けて対応しなくてよいのではないかと私は思う。日本の有力政治家が反論すれば、それはアメリカでもニュースになる。それこそトランプ氏の思うつぼである。
日本人ビジネスマンとして、トランプ氏から学べる教訓について考えてみよう。例えば、交渉相手や競合相手から自社への手ひどい攻撃がニュースになったようなときである。それは相手が「仕掛けた」ことかもしれないので要注意だ。下手に同じ土俵で対抗すると、火に油を注ぎ、エスカレートさせてしまう恐れがある。地雷を踏めば、状況はさらに不利な状況になるかもしれない。そうならないよう、相手の真の狙いを見極めて冷静に対応することが大切だ。
以上、トランプ氏の交渉術やPR術について考察してきたが、必ずしも日本のビジネスマンに真似をしてほしいものではない。しかしこうした手法を知っておけば、少なくとも、トランプ氏のような人物が交渉相手となったときに冷静な対処ができるかもしれない。
ここまで書いてきて、ふと気づいた。私もこういう記事を書いたということはトランプ氏の戦略にはまってしまったということではないのか──。やはりトランプ氏、恐るべしである。
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『蔡英文・台湾新総統「妥協的就任演説」の裏側 「玉虫色」に秘めた、改革への強い意志』(5/25日経ビジネスオンライン 福島香織)について
5/25日経朝刊のアジア便りの記事の中で「蔡英文総統のことを(飾らない人柄に)親しみを込めて小英と呼ぶが、企業関係者は空心蔡(空芯菜と同じで具体的中身がない)と揶揄する」とありました。企業関係者とは外省人のことでしょう。企業関係者で本省人が蔡英文総統をそのように呼ぶ人はいないと思います。本省人は中国に籍を移し、台湾とは無関係になったらどうでしょう。抜けた穴は日本企業が埋めれば良いでしょう。それこそ昨年10/6に蔡英文氏が東京で講演しました「産業同盟」になると思います。でも日本の企業経営者も中国の顔色を窺う人間が多くいますから・・・・・。『武士道』を忘れた日本人です。
どの国にも自分勝手な人間はおります。台湾では本省人、日本では左翼とリベラルと言われる軽薄な人達です。我が身を安全な場所に置き、好き勝手政府を批判しますが、困ると政府に助けを求めたり、政府から金を出させようとします。自衛隊の存在を否定するピースボート主催者がアデン湾通過の為に、海自の護衛艦に守って貰うというのは神経を疑います。普通の民間旅行会社であればそういう危険な航路は避けます。国民の税金を利用して儲けるという二重にも悪辣な団体です。同和も然り。左翼は国(我々の税金で成り立つ)から金を搾り取ることしか考えません。中共と同じで国民から収奪することしか考えません。美辞麗句で誤魔化し、反腐敗運動とか、日本のヘイトスピーチとか、クズのやる事です。リベラルと言われる人達も政府を批判すれば受けると思いこむ短絡的・軽薄な人達です。自分で政治に乗り出してやれば良いと思うのですが。民主主義で選ばれた政府に批判するだけで提言することもない(考えていないから)、ロビー活動することもないというのは無責任な人間のすることです。茶飲み話と一緒。まあ、マスコミに受けるためには擦り寄る必要(=金になる)があるからなのでしょう。
小原凡司氏の本によれば「中国が南シナ海を内海にしたいと思っているのは、潜水艦のSLBMの射程距離が8000kmしかなく、敵国アメリカに核を打ち込むには太平洋まで出なければならない。東シナ海は米軍と海自があるのですぐ捕捉されてしまう。一旦太平洋に出られてしまえば米軍と言えど捕捉は難しい」とありました。台湾が中国の手に落ちれば南シナ海経由で太平洋に出なくとも簡単に出航できるようになるでしょう。その意味でも、日米台は運命共同体です。本記事で総統就任式に米国・日本は質量ともに歓迎の代表団を送りました。中国のネット社会もいろんな意見があるようです。
http://www.recordchina.co.jp/a133476.html
記事

就任式で手を振る蔡英文・台湾新総統。「妥協的就任演説」に秘めた改革への強い意志の先には、中国との「別れ」を見据えるか(写真:AP/アフロ)
台湾の新総統・蔡英文の就任式が5月20日に行われたのに合わせて、台北に出かけた。一時は馬英九前総統のどのような妨害があるかと心配されたが、日本の沖ノ鳥島を岩と宣言してみたり、公邸の引っ越しをぎりぎりまで遅らせる程度の嫌がらせぐらいで、就任式はつつがなく終わった。
台北の雰囲気は、さほど盛り上がっておらず、祝賀ムードというほどのものではない。去年と比べると中国人観光客を見かける頻度もぐっと減り、例年の5月より気温が低めであったせいもあるかもしれないが、なんとはなく活気が落ちたような印象も受けた。民進党界隈は確かに非常に盛り上がっているのだが、街ゆく普通の人に、新総統への期待を尋ねれば、「期待もしていないが、馬英九よりはましだろう」といったあっさりした反応が多い。
就任演説は「92共識(92年コンセンサス)」や「一つの中国」という言葉をうまく避けながらも、中国にも配慮した形でまとめられ、リアリストの蔡英文のバランス感覚がうかがえるものだったおかげか、当日の台北市場の株価は、「株価は下がる」という大方の予想を裏切り、ご祝儀相場というほどではないにしても、若干あがった。蔡英文政権としては、あまり気負う必要もなく、よい感じで就任1日目がスタートしたのではないだろうか。
だが、中国の方は、心穏やかではないようでもある。就任式の注目点をまとめながら、今後の台湾と台湾をめぐる中国、米国情勢を少し予想してみたい。
「滅私奉公型の官僚政治家」を前面に
まず、全体の式の印象を述べれば、従来のものと比べて、悪く言えば荘厳さに欠け、よく言うと庶民的、フレンドリーな演出であった。だが、カメラワークなどに凝っており、ライブが動画サイトで配信されている点からも、非常に大衆の目、特に若者の目を意識した就任式であることははっきりしている。
蔡英文は、黒のスラックスに白のカットソーと白のジャケット、一切の貴金属宝石類のアクセサリーを身に着けず、腕にロンジンの使い慣れた12万円程度のシンプルな時計をはめているだけだ。化粧もほとんどしていないようで、少なくともファッションにおいては、就任式という晴れの舞台に臨む気負いが一切なかった。
テレビでは、朴槿恵・韓国大統領やミャンマーの国家顧問、アウンサン・スーチー、タイの元首相・インラック・シナワトラなどと比べて、そのファッションの色気のなさを論評していたが、それは国民党の「無駄遣い」政治のアンチテーゼとして、むしろ有権者にとっては好ましいものであったと思う。
陳水扁政権は夫人の物欲が政敵に付け込まれる隙を与えて失脚させられたが、蔡英文は結婚もせず、家庭ももっていないので、その心配もない。本人はおすすめの飲食店を尋ねられたらB級屋台グルメをあげ、着るものも無頓着で、一切の私欲物欲を感じさせない。日本などではすでに絶滅した滅私奉公型の官僚政治家のイメージを打ち出すことに成功していた。
就任式では国歌を歌うのだが、蔡英文は声を出して、これを全部歌っていた。中華民国国歌はもとは国民党歌である。歌のフレーズに「三民主義、吾党所宗」(三民主義をわが党の宗とする)とあり、この党とは国民党のことなので、民進党員はこの部分を歌わないという慣習があった。彼女も今年の元旦の桃園市の国旗掲揚式のときに、この部分は歌っていなかった。だが、就任式では、おそらく初めて全部これを声に出して歌っており、中華民国総統という立場で、現実的な妥協をしていく姿勢を見せたといえるだろう。
就任宣誓式が終わったあと、総統府前では2万人以上の来客の前で、就任祝いの歴史劇「台湾之光」が上演された。これは台湾400年の歴史を約40分でたどり、今の台湾アイデンティティに至る道筋を整理したのものだが、そこで二・二八事件の惨劇を再演したのは極めて斬新で挑戦的な試みだったといえる。もちろん日本統治時代に日本の軍人が民衆を高圧的に徴兵していく様子なども演じられているのだが、その後に演じられている二・二八事件の虐殺の様子がすさまじく、国民党政府がどのように台湾を接収したかをあからさまに見せ、台湾人が植民地支配した日本から被った圧力がずいぶん甘いものに見える演出となった。こうした国家行事で二・二八事件を真正面から取り上げるのもこれが初めてだ。
中国に妥協した「玉虫色」にも見えるが…
注目の就任演説自体は中国にも配慮しつつ、よく言えばバランス感覚のとれた、悪くいえば玉虫色のものとなった。
演説のほとんどは内政問題の解決にむけた約束である。年金制度改革、若者の境遇改善、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)・東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を含む多国間および二国間の経済協力・自由貿易交渉への積極参加、セーフティネット強化、歴史問題の和解に向けた処理、先住民族の尊重、司法改革への前向きで熱意ある姿勢を打ち出した。国際社会が注目する中国との関係については次のような表現を使った。
「私は中華民国憲法に基づいて総統に当選したのであり、中華民国の主権と領土を守る責任があります。東シナ海、南シナ海での問題に対し、我々は争いの棚上げと資源の共同開発を主張します。
台湾海峡両岸の対話と意思疎通では、既存のメカニズムの維持に努めます。1992年に両岸の交渉窓口機関が、相互理解、並びに“求同存異”(合意点を求め違いは棚上げする)という政治的な考え方を堅持して話し合い、若干の共通の認識と理解に達しました。
私はこの歴史的事実を尊重します。1992年以降20年あまりの交流と協議の積み重ねで形成された現状と成果を、両岸は共に大切にして守っていかねばなりません。そして今後も、この既存の事実と政治的基礎の下で、両岸関係の平和で安定した発展を引き続き推進していくべきなのです。新政権は、中華民国憲法、両岸人民関係条例、並びに関連の法律に基づいて両岸業務を進めていきます。…」
「92共識」(1992年に両岸の交渉窓口機関が非公式に合意したコンセンサス。中国は一つであり、その“一つの中国”の解釈権は双方にある)という言葉を出さず、「一つの中国」という言葉も出さなかった点は、92共識を認めないという民進党の立場をぎりぎり守ったものの、1992年に「求同存異」の政治的考え方で話し合われた会談を歴史的事実ととらえ、中華民国憲法、両岸人民関係条例に基づいて中台関係を推進していくとした。
中華民国憲法はいわゆる「一中憲法」。領土についていまだ「中華民国の領土はその固有の疆域による」の一文があり、それがチベットやモンゴルを含むいまの中国の領土以上を示す36年憲法第四条を踏襲していることになる。この憲法の延長にある両岸人民関係条例(台湾地区および大陸地区人民関係条例)を基礎にするということは、李登輝の「二国論」「一辺一国」(台湾と中国は特殊な国と国の関係)は放棄したというふうに受け取られる。「一中」を否定せず「二国論」を放棄したという意味では、かなり中国に妥協した内容だ。
問題を棚上げしつつ、改革への意志を示す
だが、字数にして6000字30分以上の演説の中に中華民国という言葉はわずか5回しか使っておらず、一方、台湾という言葉は41回も出している。演説の締めくくりに、就任式のパフォーマンスで歌われた台湾語の歌「島嶼天光」のワンフレーズ「今がその日だ、勇敢な台湾人よ」という言葉を掲げて、「国民同胞、2300万人の台湾人民よ、待つのは終わった。今がその日だ。今日、明日、将来の一日一日、われわれは民主を守り、自由を守り、この国を守る台湾人になろう」と呼びかけた意味を含めると、いまの段階は「一中憲法」を容認しつつ中国を刺激しないように問題の棚上げを図るも、将来に向けての改革への強い意志は秘めている、というメッセージは伝わっている。
反中国共産党的な論調で知られる台湾蘋果日報紙の世論調査では、聴衆の76パーセントがこの演説に満足だといい、92年の会談に触れつつ92共識に言及しなかったことについては63.75パーセントの聴衆が肯定的だったという。
国際社会からみても、この就任演説はおおむね好評であったように思う。
こうした一見、妥協した就任演説に対して、だが中国はむしろ警戒感を高めている。
中国国務院台湾事務弁公室は就任演説後、即座に「両岸同胞の最も関心を寄せている両岸関係についての根本問題で曖昧な態度をとり、92共識を明確に承認せず、その核心の意義を認めず、両岸関係の平和安定発展に対する具体的方法に言及しなかった。これでは答えになっていない」と強く非難した。
さらに「一中原則を共同の政治起訴とするのか、それとも両国論、一辺一国的な台湾独立分裂の主張を維持するのか、両岸関係の平和発展の道を継続するのか、台湾海峡の緊張と波乱を再び挑発するのか、両岸同胞の感情と福祉を増進するのか、それとも同胞の精神的絆を分裂させて根本利益を損なうのか?」と問いかけ、「この重大な問題においては、台湾当局はすぐさま実際的行動で明確な回答を出し、歴史と人民の審査を受けよ」と主張した。一部メディアは少なくとも2014年2月以来続いてきた閣僚対話は停止になる見通しを報じている。
「南シナ海」見据えた米台接近に苛立つ中国
中国がこのように警戒心をむき出したのは、蔡英文の就任演説そのものより、おそらく国際社会の台湾に対する反応の変化にある。
蔡英文の総統就任式は、外国からの来賓出席数が破格であった。台湾と国交を結んでいる22か国を含む59か国から約700人が出席。これは過去最多である。
中でも、米国は前米通商代表部代表のロン・カーク、初代国家情報長官のジョン・ネグロポンテ、米国在台協会(AIT)理事長のレイモンド・バッカード、AIT台北事務所長のキン・モイ、東アジア専門の元外交官アラン・ロンバーグらを派遣する手厚さだった。米国は蔡英文の総統就任式4日前に「一つの中国の原則を堅持する」とケリー国務長官が中国の王毅外相との電話会談で話しており、いかにも米政府が蔡英文政権に中国との関係を悪化させないように釘をさしたふうに報じられているが、特使団5人、しかも安全保障問題、東アジア問題の専門家2人が含まれているということは、南シナ海問題においての米中対立の先鋭化を受けての米台接近のサインの文脈で読むのが正しいだろう。
さらに興味深いのは就任式前日の5月19日のワシントンポストで「米国は“一つの中国”原則を放棄して、台湾との関係を正常化するときだ」というタイトルのゲイリー・シュミット(共和党系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所専任研究員 兼マリリン・ウェア安全保障研究センター共同ディレクター)の論文が寄稿されたことだ。
米「ディプロマット」誌では「2049計画研究所」研究員のイアン・イーストンの寄稿を掲載し「米国にとって台湾の新総統就任は危機ではなくチャンスである。戦略的角度から“中国が嫌いな新リーダー”とは“米国が愛すべき人物”である」と提言している。
同誌はさらに「蔡英文は台湾と米、日、オーストラリア、インドなど民主国家との関係強化を希望している。これは米国にとって、逸してはならない絶好のチャンス。蔡は冷静で、中間路線をとっている。彼女の最大のリスクは独立に傾いていることではなく、おそらくは慎重、後手になりすぎて、大陸との抗争で先手を打たれてしまうことだろう。米国は、アジア太平洋地域に強力なパートナーを必要とする以上、蔡英文に“米国は中国と対抗する気骨がある”ということを信じさせ、台湾が米国サイドにいると知らしめねばならない。つまり、台湾の政権交代は北京を除く、各国にとってすべからくチャンスであって、リスクではないのである」と解説している。こうした論評はやはり米国内のある種の空気を反映しており、あるいは国際世論への観測気球を上げているのではないかと思う。
中国の恫喝や懐柔策に動じず、関係強化を
日本も交流協会理事長の今井正、衆院議員の古屋圭司が率いる日華議員懇談会の12議員を含む252人の大型祝賀団を就任式に参加させた。安倍政権が蔡英文政権に比較的好意的なのは周知の事実で、台湾側も台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使に相当)に知日派の謝長廷を送り込む。また蔡英文政権の外交ブレーンに日米外交ともに精通し、老獪な対外工作でも知られる邱義仁がついている。
総統就任後、外国の賓客との面談では、蔡英文は必ず「台湾的政府」(通訳はTaiwan Government)という言葉を使っており、「中華民国政府」という言葉はあえて使わなかったということも、中国から見れば就任演説を素直に台湾側の妥協とは受け取れなかった要因だろう。
少なくとも中国側は、日米同盟に台湾が参与し、中国の南シナ海軍事拠点化計画を妨害する計画が水面下で進められるのではないか、という予測をもっており、蔡英文政権および日本に対してはなんらかの揺さぶりを仕掛けてくると予想される。おりしも2017年秋には第19回党大会が開かれ、中国国内の権力闘争も激化するタイミングである。民族主義的傾向の強い習近平政権にとっては台湾への圧力をかけることも、内政的パフォーマンスとして必要になってくるだろう。
こうした状況下で、日本が考えるべきことは、中国の恫喝や懐柔策に揺さぶられることなく、台湾との関係を固めていくことが、東シナ海、南シナ海の平和と安定の鍵になると見定めることだろう。そろそろ日本でも「一中政策放棄論」を問いかけるメディアが出てきてもよい頃合いではないだろうか。
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『現代の毛沢東 個人崇拝の偶像を作り上げようとする習近平』(5/20JBプレス 馬建)について
文革時代にはカニバリズム(食人)が行われていたと「ぼやきくっくり」ブログにありました。
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid1885.html
特段驚くことではありません。凌遅刑で皮を剥いで長く苦しみを与え乍ら殺し、その肉を漢方薬として売っていました。何せ医食同源の意味は悪い部位があればその部位を食べるのが良いとされ、人間に近づけば近づくほど良いとされています。また、孔子の弟子子路が反乱で落命し体を切り刻まれ、塩漬けにされる刑罰を受けたという記述が『史記』「孔子世家」にあるとのこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%8C%E9%81%85%E5%88%91
宮城谷昌光の小説でも親孝行の為に自分の腿を削って塩漬けにしたものを与えるという記述があったような気がします。紀元前の中国の話ですが。
自分の子を食すのも宮城谷昌光の『太公望』の中に出て来たと思います。代わりに次の記事を。
http://marco-germany.at.webry.info/200709/article_27.html
今でも広東人は嬰児を食すと言われています。
大躍進、廬山会議、文革とどれをとっても権力闘争、華国鋒から鄧小平に実権が移ったのも権力闘争の結果です。今も行われていると思えば良いでしょう。選挙と言う時間のかかる手段でなく、如何に民衆から収奪するための頂点に立つかの醜い争いをしている訳です。
習と李の争いが本格化してきたようです。共産党内部の争いが外に漏れてきているというのは、箍が緩んできた証拠です。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160523/frn1605231312007-n1.htm
記事

天安門広場に掲げられている毛沢東の肖像画(資料写真)
(ロンドンより)
50年前の今月は、毛沢東が文化大革命を始めた月だ。それは、政治イデオロギーの名のもと、毛沢東個人の権力を拡大するために実行された混乱と迫害、暴力の10年であった。
しかし、中国政府はこの破滅的な負の遺産を反省するのではなく、文化大革命に関するすべての議論を禁止している。そして中国市民は、30年にわたる市場志向の改革によってもたらされた富に目を向けて、甘んじて政府の方針に従っている。
しかし、習近平主席が冷酷な粛清を実行し、個人崇拝の偶像を作り上げている現代のような時代において、過去を闇に葬る代償は高くつく。
* * *
1966年8月、毛沢東は、「司令部を砲撃せよ―─ 私の大字報」という文書を出した。これは中国共産党の中で資本主義に寄っていた実権派だった第二主席の劉少奇を粛清しやすくすることが目的だった。この「大字報」の中で毛沢東は、中国の若者層に「皇帝を馬上から引きずりおろせ」、そして反乱を起こせと呼びかけた。
若者たちは迅速に反応した。すぐさま「紅衛兵」となった学生民兵組織が全国に現れて、毛沢東の意志を掲げた。100日も経たないうちに、毛沢東は、劉少奇や鄧小平をはじめとする共産党の主力を幅広く粛清することに成功した。
しかし、毛沢東の政敵への攻撃はこれだけではなかった。その年の8月、9月だけで紅衛兵は1700人以上を撲殺または自殺を強要して殺し、10万人もの北京市民の家や所持品を焼き払って彼らを北京から追い出した。教育者たちは特に攻撃の対象となった。紅衛兵が小中高等学校や大学に現れるたびに、教師や管理者たちは消されていった。
しかし、毛沢東が「紅衛兵の構成員は実権派の“傘下にある”」といって紅衛兵を次なる攻撃の対象にするようになるのには長くはかからなかった。中国に軍事政権を敷いた後、毛沢東はしばしば紅衛兵の当初からの構成員を「再教育」と称して遠方の村へ飛ばして、紅衛兵の一団を新しい労働者反政府運動に入れ替えた。
文化大革命は習近平の家族も直撃した。彼の実父・習仲勲は共産党の高官であったが、権力から追放されて投獄され、最終的にはトラクター工場に左遷された。習の家族は国中に散り散りばらばらになった。
しかしそれでも、家族や故郷をばらばらにしたイデオロギーや組織に委縮するのではなく、習近平は、文化大革命の信条や手法を我がものとした。
習近平はどうやら今でも彼の内部に、青年時代の文化大革命の好戦性をとどめているようだ。権力とは彼の道しるべであり、権力を守るためなら彼はどのようなことでもするのではないかと思われる。権力を守るために努力して、習近平は「毛沢東の遺産」という大きな強みを得た。
* * *
何十年もの間、毛沢東は、市民がお互いに告発し合う階級闘争を促してきた。親友や隣人、家族であっても彼らは密告し合った。安全な場所はなく、誰もが(党員でない者でさえも)共産党員のしもべとなった。この恐怖政治の下においては、個人のアイデンティティなどというものは、こっそりと、しかし効率よく国家に組み込まれていった。
人民に対する絶対権力を主張するために政治権力が残虐になるということは、文化大革命の1つの教訓である。だが、習近平はその教訓には関心を示さない。彼の関心はただ、「絶対権力」の一点のみにある。
そして絶対権力を手中にするために、文化大革命の生き残りたち(つまり怖気づいて個人のアイデンティティではなく政治を選ぶということが何を意味するかを、分かっている者たち)は、習近平の頼れる政争の具になっている。
習近平は、共産党の権威を強め、指導者としての彼の地位を再強化することでのみ成功できるということを分かっている。そのため、彼は中国内部から(つまり腐敗した裏切り者の指導者たちから)の深刻な脅威がある、というフィクションを持ち出した。そして、共産党への忠誠が最大の重要性を持つということを宣言した。
* * *
中国には、今やもう2種類の人間しかいない。共産党を支持する者と、支持しない者である。
1966年の毛沢東のように習近平は、自分の権力は、あらゆる手段を使って全中国人民(政府官僚も一般人も等しく)を忠実にし、彼に従わせることができるかにかかっていると信じ込んでいる。例えばノーベル平和賞受賞者の劉曉波やそのほか何万人もの投獄された作家や研究者たちといった政敵を弾圧することで、彼の権力は築かれる。
しかし、習近平は、統治を恐怖政治のみに頼っているわけではない。彼はまた、新しい1つのイデオロギーによって大衆の支持を受けようとしている。それは、「チャイナドリーム」と呼ばれる「中国国家の偉大な再生」によってもたらされるとされている社会主義の価値や目標である。
これは「世界、ことにアメリカ合衆国が、正当な権利を有するはずの中国を国際秩序の頂上に座らせまいとしている」と見立てるナショナリズムとともに主張されているが、こういったナショナリズムはメッキをかぶせたナショナリズムだ。そして彼は、毛沢東以来の個人崇拝を仕込んでいる。
文化大革命から50年、その罪や業はいまだなくなることはない。逆に、これらは中国のさらなる政治的・経済的弾圧を正当化する理由として使われている。しかし、毛沢東スタイルの権威を守ろうとする習近平の試みは、毛沢東とは違ってむなしく終わることだろう。習近平の経済支配や政治粛清の不適格さは少しずつ、水面下で、彼に反対する幹部たちを生み出していくことだろう。
経済政策の失敗が政治不安の事態に発展するにつれ、旧・紅衛兵たちは、歴史に無知な若者世代に支持されて、再び文化大革命の時の中心的役割を繰り返すかもしれない。そのときこそ、彼らが馬上から引きずりおろす「皇帝」とは、習近平なのだ。
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