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『北方領土「2島先行返還」は日本にとって損か得か?』(10/3ダイヤモンドオンライン 北野幸伯)について
10/4Facebook 吉田康一郎氏投稿は産経新聞の記事を引き合いに出してコメントしています。<露極東管区の人口は630万人。満洲東三省の人口は約1億人。人口が減少する露極東は、中国に呑み込まれる惧れ。中国は、清から露西亜に割譲された外満洲を「奪われた」と見做すが、満洲人の領土であり、漢人の領土ではない。
私はかつて日ロ関係のシンポジウムで、ロシア側有識者と対話し、「極東を全て中国に呑み込まれて失うくらいなら、千島・樺太を全て日本に返還して日本と同盟を結び、極東開発を進めてはどうか」と提案し、意外にもロシア側と大いに盛り上がりました。
《「奪われた領土」極東ロシアに流れ込む中国人…“スーツケースで侵略”は危険な火ダネ》2016.10.04 産経新聞
人口が希薄なロシア極東に中国人が流入し、ロシア人を心理的に圧迫している。ロシアの調査機関は今世紀半ばを待たず、中国人がロシア人を抜いて極東地域で最大の民族になると予測する。中国人には19世紀の不平等条約でウラジオストクなど極東の一部を奪われたとの思いがあり、ロシア人には不気味だ。欧米に対抗して蜜月ぶりを演出する両国首脳の足元で、紛争の火だねが広がっている。 (坂本英彰)
■ 中国人150万人が違法流入
「中国人がロシアを侵略する-戦車ではなくスーツケースで」
米ABCニュースは7月、ロシア専門家による分析記事を電子版に掲載した。露メディアによると、国境管理を担当する政府高官の話として、過去1年半で150万人の中国人が極東に違法流入したという。数字は誇張ぎみだとしつつも、「国境を越える大きな流れがあることは確かだ」と記す。
カーネギー財団モスクワ・センターによると在ロシアの中国人は1977年には25万人にすぎなかったが、いまでは巨大都市に匹敵する200万人に増加した。移民担当の政府機関は、極東では20~30年で中国人がロシア人を抜いて最大の民族グループになるとしている。
インドの2倍近い広さがある極東連邦管区の人口は、兵庫県を少し上回る630万人ほど。これに対し、国境の南側に接する中国東北部の遼寧、吉林、黒竜江省はあわせて約1億人を抱える。
国境を流れるアムール川(黒竜江)をはさんだブラゴベシチェンスクと黒竜江省黒河は、両地域の発展の差を象徴するような光景だ。人口約20万人の地方都市の対岸には、近代的な高層ビルが立ち並ぶ人口約200万人の大都市が向き合う。
ABCの記事は「メキシコが過剰な人口を米国にはき出すように、ロシア極東は中国の人口安全弁のようになってきている」と指摘した。ただし流入を防ぐために「壁」を築くと米大統領選の候補が宣言するような米・メキシコ関係と中露関係は逆だ。中露間では人を送り出す中国の方が、ロシアに対して優位に立つ。
■ 20年後の知事は中国人!?
ソ連崩壊後に過疎化が進行した極東で、労働力不足は深刻だ。耕作放棄地が増え、地元住民だけでは到底、維持しきれない。
米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿したロヨラ大シカゴ校のコダルコフスキー教授によると、過去10年で日本の面積の2倍超の約80万平方キロの農地が中国人に安価にリースされた。そこでは大豆やトウモロコシ、養豚など大規模な農業ビジネスが展開されている。
中国と接する極東のザバイカル地方は今年、東京都の半分にあたる1150平方キロの土地を中国企業に49年間長期リースすることで基本合意した。1ヘクタールあたり年500円余という格安だ。これに対しては「20年後には知事が中国人になりかねない」などと、ロシア国内で猛反発も起きた。
ロシア政府はロシア人の移住や定着を促すため土地を無償貸与する法律を制定したが、ソ連崩壊後の二の舞になる可能性も指摘されている。1990年代、分配された国有企業の株は瞬く間に買収され、政府とつながる一部特権層が私腹を肥やす結果となった。
極東は中国なしでは立ちゆかず、結果として中国人の流入を招く。コダルコフスキー教授は「中国はアムール川沿いのロシア領を事実上の植民地にしてしまった」と指摘した。
■ 「未回復の領土」
中国人が大量流入する状況で「領土回復運動」に火がつくと、ロシアにとっては取り返しのつかない結果となりかねない。
欧米列強のひとつだったロシア帝国は1858年と1860年、弱体著しい清帝国との間で愛琿条約、北京条約をそれぞれ締結し極東地域を獲得した。沿海州などを含む日本の数倍に匹敵する広大な領域で、これにより清帝国は北東部で海への開口部を失った。アヘン戦争後に英国領になった香港同様、清にとって屈辱的な不平等条約だ。
中国と旧ソ連は1960年代の国境紛争で武力衝突まで起こしたが、冷戦終結後に国境画定交渉を加速し、2008年に最終確定した。現在、公式には両国に領土問題は存在しない。
にもかかわらず中国のインターネット上には「ロシアに奪われた未回復の領土」といったコメントが頻出する。
ニューヨーク・タイムズは7月、近年、中国人観光客が急増しているウラジオストクをリポートした。海辺の荒れ地を極東の拠点として開発し、「東方を支配する」と命名した欧風の町だ。吉林省から来た男性は「ここは明らかにわれわれの領土だった。急いで取り戻そうと思っているわけではないが」と話す。同市にある歴史研究機関の幹部は「学者や官僚がウラジオストクの領有権について持ち出すことはないが、不平等条約について教えられてきた多くの一般中国人はいつか取り返すべきだと信じている」と話した。
■ アイスで“蜜月”演出も
台湾やチベット、尖閣諸島や南シナ海などをめぐって歴代政権があおってきた領土ナショナリズムは、政権の思惑を超えロシアにも矛先が向かう。極東も「奪われた領土」だとの認識を多くの中国人が共有する。
9月に中国・杭州で行われた首脳会談でプーチン大統領は、習近平国家主席が好物というロシア製アイスクリームを贈ってまさに蜜月を演出した。中露はそれぞれクリミア半島や南シナ海などをめぐって欧米と対立し、対抗軸として連携を強める。
しかし極東の領土問題というパンドラの箱は何とか封印されている状況だ。ナショナリズムに火がつけば、アイスクリームなどいとも簡単に溶かしてしまうだろう。
http://www.sankei.com/west/news/161004/wst1610040001-n1.html>(以上)
吉田氏のコメントにありますように、旧満州(現東北3省)は満州族の土地であって、漢族の土地ではありません。英語でもManchuria(満州)、 Manchu (満州人)となっています。ソ連のフルシチョフもこのことは良く分かっていました。「古来中国の国境は、万里の長城を越えたことがない。もし神話を持ってきて理不尽な主張をするならば、それは宣戦布告である。」と言ったそうです。
http://blog.goo.ne.jp/minsuto2008/e/f24e6410325160389d6df922b9158207
デンゼルワシントン、メリルストリープの映画に“Manchurian Candidate”(日本名:クライシスオブ・アメリカ)というのがありましたが、「洗脳された人」という意味があるそうです。大清帝国を治めていた満州族は、当時の白人から見ると、簡単に洗脳されたのかも。
中国のマンパワーを利用した侵略は長野朗が力説しています。西尾幹二著『GHQ焚書図書開封7-戦前の日本人が見抜いた中国の本質-』のアマゾン書評欄のスワン氏記事に「アメリカの侵略は資本を押し立てて行われる「資本による侵略」であり、ロシアの侵略は「武力による領土侵略」であり、シナの展開は「民族移住的な侵略」である》(228ページ)」とあります。
また、英語のChinese Mandarin (中国語の標準語の意)は 満大人”man da ren”から来たという説もあります。
北野氏記事にありますように「ロシア人の発想は、領土は戦争によって変わるもの」というのは正しいでしょう。勿論、他には金で買うしかありませんが。日本人だけでしょう、余りに平和ボケしていて、要求すれば土地を返還してもらえると考えているのは。領土返還は、戦争か金かしかありません。勿論、香港返還の例もありますが、あれは租借契約を履行しただけのことです。
ルトワックのいう「北方領土」を脇に置きというのは出来ないでしょうが、戦略的に中国封じ込めが優先事項であることは言を俟ちません。やはり、二島返還+継続交渉ができれば良いかと。安倍首相は1月解散するとの新聞記事が賑わっていますが、ロシアと一気に平和条約までは行かないでしょう。ただ民進・蓮舫の二重国籍問題がありますから叩き潰すには早く解散した方が良いと思います。
記事
プーチンが12月に訪日することが決まり、日ロ関係が動いている。日本政府もロシア政府も、訪日時に成果を出すべく、活発に交渉していることだろう。日本側最大のテーマは「北方領土」だ。一方、経済危機まっただ中のロシアは、「経済協力」の大きな進展を期待する。今回は、北方領土問題の展望と、日ロ関係の現状と未来について考えてみよう。
「2島先行返還」か、「4島一括返還」か 悩ましい北方領土問題
9月23日付読売新聞に、「北方領土、2島返還が最低限…対露交渉で条件」と題した、とても興味深い記事が載った。引用してみよう(太線筆者、以下同じ)。
<政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。 平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。安倍首相は11月にペルー、12月には地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談する。こうした方針でトップ交渉に臨み、領土問題を含む平和条約締結に道筋をつけたい考えだ。 複数の政府関係者が明らかにした。択捉、国後については日本に帰属するとの立場を堅持する。その上で、平和条約締結後の継続協議とし、自由訪問や共同経済活動などを行いながら、最終的な返還につなげる案などが浮上している。>
整理してみると、
1.歯舞群島、色丹島を引き渡してもらう。 2.平和条約を締結する。 3.択捉、国後については平和条約締結後に継続協議し、最終的返還を目指す。

「2島先行返還論」が浮上するなど、動きが出てきた北方領土問題。北方領土問題が日本にとって非常に重要な課題であることは間違いない。しかし、安倍総理は領土問題以上に、対中戦略に重きを置いた舵取りをすべきだ Photo:Kremlin/Sputnik/Reuters/AFLO
つまり、「まず歯舞、色丹を返してもらい、平和条約を締結」(あるいは、平和条約を締結し、歯舞、色丹を返してもらう)、「択捉、国後については、継続協議」。これは、鈴木宗男氏が主張している、「2島先行返還論」と同じだろう。
ちなみに菅官房長官は、この記事について「そうした事実はまったくない」と明確に否定している。しかし、読売新聞が、「複数の政府関係者が明らかにした」と書いているように、「日本が大きく譲歩する可能性がある」という話は、いろいろな方面から流れてきている。総理も「今までとは違うアプローチで解決を目指す」と言っている。「今まで」とは、「4島一括返還論」のことだろうから、「違うアプローチ」が、「2島先行返還論」だったとしても不思議ではない。
ところで、「4島一括返還」は、なぜ実現が難しいのだろうか?これを知るために、ロシア側が北方領土問題をどう捉えているか考えてみよう。
日本外務省のホームページには、以下のように説明されている。
・ソ連は、日ソ中立条約を破って対日参戦した。 ・ポツダム宣言受諾後の、1945年8月28日から9月5日までに、北方4島を占領した。
それで、日本側は「不法占拠だ!」と捉えているのだが、ロシア側の意識は、日本とまったく異なっている。ロシア人と話していて感じるのは、彼らには、「固有の領土」という言葉の意味がわからないということだ。
ロシア人が「北方領土は自国の土地」と単純に信じているのはなぜか?
なぜだろうか?ロシア人は、「領土というのは、戦争のたびに変わるもの」という意識なのだ。これは、おそらくロシアの歴史と深く関わっている。ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国だ。首都はキエフだったが、現在はウクライナの首都になっている。ロシアの起源である都市が、外国にあることに注目だ。
キエフ大公国は1240年、モンゴルによって滅ぼされた。その後、モスクワ大公国(1263年~1547年)→ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展した。このように、ロシアは東西南北を征服して領土をひろげ、ついに極東にまで到達した。
つまり、ロシア領のほとんどは、歴史的に繰り返された領土争いによって獲得した「征服した土地」で、いわゆる「固有の領土」は、比率的にとても小さい。
こういう歴史を持つロシアに、「固有の領土だから返してくれ!」と言っても、「固有の領土とは何ですか?」と逆に質問されてしまう。だから、北方領土について、「ロシア(ソ連)は日本に戦争で勝った。結果、北方4島はロシア(ソ連)の領土になった」という意識なのだ。
インテリになると、もっと論理が緻密になる。
「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められた。ところが日ロ戦争の後、勝った日本は南樺太を奪った。ロシアが、南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれただろうか?」と質問をされることがある。
筆者は、「返さなかっただろう」と正直に答える。
さらに、「日本は、日清戦争で勝って台湾を奪ったが、清が返せと主張し続けたら、返しただろうか?」と続ける。筆者は、「返さなかっただろう」とまた答える。
すると、ロシアのインテリは「日本は戦争に勝って奪った領土を、話し合いでは返さない。しかし、自分が負けた時は、『固有の領土だから返せ!』という。フェアじゃないよね」と言う。
日ソ中立条約を破った件や、ポツダム宣言受諾後に北方4島を占領した件については、「1945年2月のヤルタ会談で決められたこと。米英も承認している」とかわされる。つまり、ロシアは「米英がソ連の参戦を要求した。その見返りとして、南樺太、千島はソ連領になることを認めた」ということで、まったく「悪いことをした」という意識がないのだ(ちなみに日本は、北方4島は千島ではないという立場を取っている)。
「2島返還」実現のハードルは低いがその後の方向性が難問に
こういう歴史的国民意識がある中で、いくら親日プーチンでも、「4島一括返還」は厳しいといわざるを得ない。
しかもロシアは現在、「経済制裁」「原油価格暴落」「ルーブル暴落」の三重苦で苦しんでいる。プーチンの支持率は、依然として高い。与党「統一ロシア」は、9月18日の下院選挙で大勝した。しかし、経済危機が長期になれば、プーチンも安心していられない。このような状況下で、「4島返還」を発表すれば、プーチン人気が急落し、政権の安定が崩れるかもしれない。
政治的にも4島返還は、簡単ではないのだ。
では、「2島先行返還論」は、実現可能なのだろうか?実をいうと、「2島返還」は、「法的基盤」があるので、両首脳が決断すれば実現は可能だ。
「法的基盤」とはなんだろうか?1956年の「日ソ共同宣言」のことだ。
日ソ共同宣言の内容を簡単に書くと、「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」である。この宣言は、日ソ両国の国会で批准されており、「法的拘束力」をもっている。そして、日ソ共同宣言については、ロシアでも広く知られている。
つまり、プーチンがこれを根拠に2島を返還しても、大きな反対運動は起こらない。しかし、「2島返還」には、問題もある。2島返還後のことだ。
日本は、返還対象外の残り2島について、「継続協議」としている。これが、「先行返還」(=先に2島を返してもらい、後で残りの2島を返してもらう)の意味だ。ところが、ロシアは、「2島返還」で「画定」したい。つまり、歯舞、色丹は日本領、択捉、国後はロシア領で最終決着し、後々話を蒸し返さないつもりだ。
ロシア側は、ここ数十年間「北方領土の話しかしない」日本に正直うんざりしている。4島返すにしても2島返すにしても、現状からすると、ロシアに「大損」だからだ。
日本の主張する「2島先行返還論」を認めると、これからも永遠に、「択捉、国後をいつ返してくれますか?と言われ続ける」と考えている。ところが、日本側は2島で終わりにすることができない。
ロシアとの平和条約締結は、「歴史的」だが、それが善か悪かは、わからない。
「2島先行返還」なら、2島取り戻したことで、安倍総理は「歴史的偉業」を成し遂げたと賞賛される可能性がある。しかし、2島返還で「終わり」であれば、残り2島を切り捨てたことで、逆に、「国賊」と批判されるリスクもある。この辺をどう調整するのだろうか?
ロシアは国民に、「最終決着しました」と説明し、日本政府は国民に、「2島は取り戻しました。残り2島は継続協議です」と言うのだろうか?
このように2島返還は、「日ソ共同宣言」という「法的根拠」があるので、実現は可能だ。しかし、大きな問題を残したままとなる手法なのだ。
日本がロシアと和解する最大の理由は「対中国」であることを忘れるな
これまで何度も書いてきたが、日本がロシアと和解しなければならないのは、「安全保障上の理由」があるからである。「安全保障上の理由」とは、はっきりいえば、「対中国」だ。
筆者は、2008年から「尖閣諸島から対立が起こり、日中が戦争になる可能性がある」と書いてきた。日中関係はその後、「尖閣中国漁船衝突事件」(10年9月)、「尖閣国有化」(12年9月)などで「戦後最悪」になってしまった。
12年11月、中国はモスクワで、「反日統一共同戦線」戦略を、ロシアと韓国に提案した。いつも書いているが、戦略の骨子は、
1.中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる。 2.中ロ韓で、日本の領土要求を断念させる。日本には、尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない。 3.米国を「反日統一共同戦線」に引き入れる。 (詳細はこちらの記事を参照)
中国は以後、全世界で大々的に反日プロパガンダを続けている(それで、安倍総理が13年12月に靖国参拝した際、中韓だけでなく、米欧ロ豪、台湾、までがこれを非難した)。さらに軍事的挑発を徐々にエスカレートさせ、領海、領空侵犯を常態化させている。今年8月、中国公船15隻と漁船400隻が尖閣周辺の海域に集結したことは、日本国民に衝撃を与えた。
筆者が08年に「日中戦争」の可能性を書いたとき、「妄想」だと言われたが、今では普通に「あるかもしれないですね」と言われる。そして、日本の領土をあからさまに狙う中国は、すでにGDPで日本の2.5倍、軍事費で8倍の大国である(世界銀行のデータによると、日本の防衛費は15年470億ドル、中国は3858億ドル)。
つまり、日本一国で中国に勝つのは、非常に難しい。では、同盟国の米国はどうなのか?トランプは、「日本がもっと金を出さなければ、米軍を日本から撤退させる」と宣言している。ヒラリーは、長年中国から金をもらっていたことが明らかになっている(詳細はこちら)。 一方、ロシアは「クリミア併合」時、「唯一味方になってくれた」ということで、中国とは事実上の同盟関係になっている。
北方領土問題の最善策は「棚上げ」である理由
つまり、現状は以下のように整理される。
1.中国は、はっきりと尖閣・沖縄を狙っている。 2.米国は、トランプ、ヒラリーどちらも親日ではない。 3.ロシアは、中国と事実上の同盟関係にある。
このような状況がさらに悪化すれば、日本vs中国・ロシアの戦争に発展しかねない。その場合、米国は中ロを非難する声明を出すが、事実上は不干渉を貫くかもしれない。そうなれば尖閣は中国領になり、沖縄も危険な状態になってくる。
こういう緊迫した現状で、北方領土問題の解決は、(重要ではあるが)「最優先課題」ではありえない。
では何が「最優先課題」なのか?まず第1に、米国との関係をますます強固にすることだ。これは、ヒラリー、トランプ、どちらが大統領になってもやらなければならない。
第2に、ロシアとの関係を強化し、結果的に中ロを分裂させることだ。そのためには、ロシアの望むもの(=経済協力)を与えなければならない。しかし、ロシアに対し「慈善事業をしろ」といっているわけではない。「長期的に良好な関係を築こう」とすれば、「WIN-WIN」になれる案件を発展させる必要がある。
ちなみに世界一の戦略家エドワード・ルトワックは、北方領土問題について、著書「自滅する中国」の中で、こう書いている。
<日本政府が戦略的に必要な事態を本気で受け入れるつもりがあるならば、北方領土問題を脇に置き、無益な抗議を行わず、ロシア極東地域での日本の活動をこれ以上制限するのをやめるべきだ。 このこと自体が、同地域での中国人の活動を防ぐことになるし、ロシアが反中同盟に参加するための強力なインセンティブにもなるからだ。>(192p)
このように、ルトワックは、北方領土問題の「棚上げ」を勧めている。
もちろん、「2島先行返還論」をロシアが受け入れれば、それでもよいだろう。しかしロシア側が妥協するしないにかかわらず、ロシアが望む経済協力は推進していくべきだ。総理は、「日ロ関係深化は、対中国」という「大戦略観」を常に忘れないでいただきたい。
「北方領土返還実現」は確かに「歴史的」だが、「戦わずして、中国の戦略を無効化させる」ことは、真の意味で「歴史的」である。
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『極右政党党首が初の女性仏大統領になる確率は?「反欧州」「反移民」を掲げるマリーヌ・ルペン』(10/3JBプレス 山口昌子)について
「士気の集い」主催の山口氏の講演を昨年1月に聞きました。マリーヌ・ルペンをもはっきり人種差別主義者だと言っていました。父親と違い、党を華麗なる変身させたけれども、中身は変わっていないという思いだったのでしょうか。でもヨーロッパで極右政党と呼ばれているのは「反移民・反EU」なだけなのではと感じています。メデイアの人間が偏っていて、上から目線で国民を領導すると思っているだけなのでは。国民感情から遊離しています。
要はグローバリズムとナショナリズムの戦いでしょう。確かに国民国家ができた歴史は長くはありませんが、近年世界を覆ってきたグローバリズムの限界が見えてきたと思います。カネ・モノ・情報の自由な移動は国際分業の観点から言っても、奨励されるところでしょうけど、ヒトは感情があり、言語や環境によって違った受け止め方をすると気があります。同じ日本人同士でもそうなんですから、外国人であれば猶更です。
トランプの大統領選での躍進、英国のEUの離脱、独国の地方選でのAfDの第二党躍進、ハンガリーの国民投票で投票率50%以上の規定に及びませんでしたが98%も難民受入反対という結果になりました。多文化共生といって宗教や言語、発想法の違う人々を安易に受け入れれば必ずや摩擦は起きます。敵はそれを狙って来る訳です。チャインタウンやコリアタウンなどは治外法権になってしまいます。世界の潮流はグローバリズムでなく、「国民自決主義」と言えるのでは。
日本も在日問題を抱え、かつ中国人が日本にドンドン入り込んできています。中国韓国とも日本の敵国です。世界遺産に南京虐殺やら従軍慰安婦を登録しようとしている国です。丹東の歴史博物館には「北朝鮮に攻め込んだのは南鮮と米国」と嘘のプロパガンダを臆面もなく飾れる国です。日本の役人の馬鹿な所は、農業にも外国人を受け入れしようとしている所です。来るのは敵国の中韓人になるでしょう。スパイや工作員も当然紛れ込むでしょう。今でも大学等で反日活動に勤しんでいる中韓人がいるというのに。農業法人を積極的に認めていけば良いだけのこと。農民を守るのでなく、農業を守ればよいだけでしょう。今や有事を前提に政策を考えて行かなければならないのに、この緊張感のなさは何でしょう。
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国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(2015年12月13日撮影)。(c)AFP/DENIS CHARLET 〔AFPBB News〕
米国の大統領選は最終コーナーを回って最後の直線コースに入り、米国初の女性大統領が誕生する可能性が高まってきた。では、2017年春のフランスの大統領選で女性大統領が誕生する可能性はあるだろうか。
最新の各種世論調査によると、極右政党「国民戦線」(FN)の女性党首、マリーヌ・ルペン氏が決戦投票に進出する可能性が高い。大統領の椅子は決戦投票に進出した上位2人によって争われる。
右派政党「共和党」(LR)では、11月20日、27日に予備選を実施して、7人の大統領選立候補者の中から公認候補を選出する。各種世論調査によるとアラン・ジュペ元首相が目下のところ優勢だが、LRの党員だけを対象にした調査では党首のニコラ・サルコジ前大統領が優勢である。
複数の世論調査では、ルペン氏、ジュペ氏、サルコジ氏の中で今のところジュペ氏の支持率が最も高い。次いでルペン氏、サルコジ氏と続く。ルペン氏は決戦投票の相手として、サルコジ氏が相手なら「十分に勝ち目がある」(FN幹部)と見ている。
党の本質は相変わらず排外主義的
FNは、マリーヌ・ルペン氏の父親であるジャンマリ・ルペン氏が1972年に立ち上げた政党である。ジャンマリ氏が党首だった時代は、ナチスによるユダヤ人大虐殺を「歴史の些細な事件」と言い放つなど、徹底的な反ユダヤ主義、外人排斥、人種差別を標榜していた。
ところが、三女のマリーヌ氏が2011年に党首に就任してから、FNは路線を変更する。テロや難民の増大を背景に、「シェンゲン協定」(ヨーロッパの国家間を国境検査なしで行き来することを許可する協定)や単一通貨「ユーロ」圏からの脱退を主張するなど、「反欧州」や「反移民」を全面的に打ち出すことで、人種差別的な“危険な政党”“悪魔の政党”のイメージから脱却した。
ただし、排外主義的な党の本質は変わっていない。
FNはバカンス明けの8月半ばに南仏フレジュス市で党のセミナー(一種の親睦大会)を開催した。ルペン氏は約5000人の支持者を前に、大統領選に向けての実質的なキャンペーン第一声を発した。
その演説の中でルペン氏は、「フランス人」とは「フランス国への愛、フランス語やフランス文化への愛着によって一致団結している何百万もの男女」であると定義。フランス国民でありながらフランス語の習得を嫌い、イスラム教徒の風俗習慣に固執するイスラム(アラブ)系フランス人を暗に非難した。
ちなみに、このセミナーでルペン氏は、大統領選の選挙キャンペーン隊長に弱冠28歳のダヴィット・ラクリーヌ氏を任命している。
ラクリーヌ氏の祖父は、ウクライナからのユダヤ系移民である。だがルペン氏はラクリーヌ氏を「若くて働き者で、才覚があり、忠実」と絶賛し、信頼を寄せている。
ラクリーヌ氏は15歳の時にFNに入党し、2014年に26歳の若さでフレジュス市長に選出された。第5共和制下で史上最年少の市長である。次いで、南仏ヴァル地方選出の上院議員にも当選した(フランスは公職を2つまで兼任できる)。
この夏、ラクリーヌ氏はフレジュス市長としてイスラム教徒の女性の水着「ブルキニ」の着用を真っ先に禁止し、フランス中の注目を浴びた。禁止を無効とする裁判所の決定が出たが、他の3人の市長とともに、現在係争中である。
決選投票でルペン氏が勝つ見込みは?
FNが大統領選の決戦投票に進出するのは、今回が初めてではない。2002年の大統領選では父親のジャンマリ氏が大方の予想を裏切って、1回目の投票で社会党のリオネル・ジョスパン首相(当時)を破り、シラク大統領(当時)とともに2回投票に進出した。
治安悪化、高失業率を背景に「諸悪の根源は移民や移民2世、3世にある」と強調し、当時の政権の寛容な政策を糾弾したのが勝因だった(ただし、決戦投票では、「自由、平等、博愛」を謳うフランス共和国の旗の下、社会党から共産党、緑の党
までがシラク氏に投票。約82%の投票率でシラク氏が圧勝した)。
今回、ルペン氏が決戦投票に進出した場合、勝利の見込みはあるのか。
各種世論調査の結果では、LRのジュペ氏が勝利するだろうとの予測が出ている。また、サルコジ氏が予備選で選出された場合はサルコジ氏が微差で勝利するとの予測が多い。だが、サルコジ氏は大統領時代の係争事件などのマイナス要素を抱えているため、予断を許さない。
来年、アメリカとフランスの大統領が2人とも女性になることはあり得るのか。世界の注目が集まっている。
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『トランプに票を入れる衆愚たちのデモクラシー 米若手学者の衝撃の一冊、「賢人統治主義の勧め」』(10/3JBプレス 高濱賛)、『今まで全勝の米大統領選予測、今回は異変が・・・
デモクラシーの胡散臭さは常々感じていました。本記事にありますように、民主主義は衆愚政治に陥りやすいという事です。日本もGHQの洗脳から未だに解放されずにいる人が大半を占めています。でなければ朝日新聞などはとっくに潰れていて当り前です。それでもじわりじわり販売部数を落としてきました。ピーク時には800万部を超えていました販売部数は昨年末で662万部とのこと。押紙があるので8割が実売部数とすれば、500万部が相当でしょう。図書館等で取るのも止めた方が良いでしょう。しんぶん赤旗も販売部数低迷で日曜刊以外は休止するかもしれないとのこと。慶賀の至りです。いい加減呪縛から解き放されてほしいと思っています。近隣諸国は裏金を使い、日本の名誉を貶め、世界で日本を孤立させ、日本を乗っ取ろうとしています。それが見えない人は空めくらでしょう。
http://diamond.jp/articles/-/85459
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/10040557/?all=1
米国の若手学者は、エピストクラシーが良いとのことですが、誰が選ぶのでしょうか?君主制、共和制(独裁官を含む)であっても統治の正統性が問題になります。蓮舫の二重国籍問題の他に、自民党の小野田紀美もそうとのこと。統治の正統性から言って両者とも議員辞職に値すると思います。でも日本維新の会の足立康史氏によれば小野田は昨年10月に国籍選択して(参議院議員になる前)、指摘を受けて直ぐに戸籍謄本を開示したとのことで、こちらは免罪すべきでしょう。
話を戻しますが、賢者の定義は難しいでしょう。神ならぬ身なので。謀略が跋扈する世界になるかもしれません。元々近代資本主義は人間の欲望の極大化を認めて発展してきました。資本家・経営者にとって選挙は邪魔なものであっても、資本主義は一党独裁の共産主義よりは民主主義の方が遙かに親和性を持ちます。賢者の政治はモーセの時代ならともかく、独裁に道を繋げるのを危惧します。今でも学者等は顧問と言う形で、どの国でも政権にアドバイスしているでしょう。それでもうまく行かないのは、政権に学者の意見を聞く気がないからか、学者が間違っているかです。イタリアの学者首相のマリオ・モンテイもうまく行きませんでした。
結局は衆愚になるかもしれませんが、民主主義を選ばざるを得ません。国家はその国民に合った政府しか持てないという事でしょう。ドウテルテ暴言大統領を選んだのはフィリピン国民です。米国無しでどうやって中国と対峙するのでしょうか。
堀田氏の記事は11/8以降に再読したいです。やはり、ヒラリー有利とするのが多いという事ですが。
高濱記事

米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏〔AFPBB News〕
「歴史の終わり」以後、激動し始めた世界と米国
フランシス・フクヤマ博士の「歴史の終わり」(The End of History and the Last Man)が世に出てから24年、その仮説は完全に突き崩された。同博士はこう予言していた。
「国際社会においてリベラル・デモクラシー(Liberal Democracy)が他のすべての政治形態を打ち破り、最終的勝利を収め、社会制度の発展は終わりを告げる。そして世界は平和と自由と安定を未来永劫、享受できる。リベラル・デモクラシーという政治形態を破壊するような戦争やクーデターはもはや生じない、まさに『歴史の終わり』だ」
ところがあれから24年、世界はどうなったか。イスラム教過激派集団IS(イスラム国)はリビア、イラクの既成体制を脅かし、過激派思想の影響を受けた「ホームグローン・テロリスト」は欧米社会で顕在化している。
内政面でもリベラル・デモクラシーは破綻し始めている。
なまじ国家の一大事をレフォレンダム(国民投票)に託したために欧州連合(EU)から離脱せざるを得なくなった英国。党エリートが手をこまぬいていたために「ナルシスト的アジテーター」(独シュピーゲル誌)に党を乗っ取られてしまった米共和党。
「一般大衆の声を尊重しすぎ、地方自治体が外交安保問題に至るまで中央政府と対等関係にあるかのような錯覚を起こした日本の某県知事」(米主要シンクタンクの日米防衛問題研究者)・・・。まさに大衆迎合主義万々歳である。
「デモクラシーが生んだトランプ現象」

Against Democracy(反デモクラシー論) By Jason Brennan Princeton University Press, 2016
米国内を吹き荒れた不動産王のドナルド・トランプ氏は、自らの選挙運動についてこう叫んでいる。
「俺の選挙は単なるキャンペーンではない。これはムーブメント(運動)なのだ」
トランプ現象を「デモクラティック・トランパリズム」(Democratic Trumpalism=トランプ的愚民主義)と命名した新進気鋭の米若手政治学者がいる。
今回紹介する本の著者、ジョージタウン大学ビジネススクールのジェイソン・F・ブレナン准教授(政治哲学、政治倫理、公共政策=37)だ。
「Against Democracy」(反デモクラシー論)の著者である。
同氏は、ニューハンプシャー大学を卒業、アリゾナ大学で博士号を取得し、ブラウン大学助教を経て現在ジョージワシントン大学准教授。2011年に著した「投票の倫理」(The Ethics of Voting)で脚光を浴びた。
社会正義と経済的自由・市民的自由を結合させる政治哲学、「Bleeding Heart Libertarian」(熱狂的なリベタリアン)という概念を打ち立てている。
ワシントン・ポストの著名なコラムニスト、イリヤ・ソミン氏はブレナン准教授を「投票動向の分析では世界をリードする学者の1人」と高く評価している。
Democracyの訳語は「民主主義」、それとも「衆愚主義」?
政治学概論的に言えば、デモクラシーとは「人民が権力を所有し、それを行使するという政治原理」「国家の権力者・指導者がその国家を構成するすべての人民の合意を得て行う政体」である。
日本語では「民主主義」という訳語が定着している。
が、評者が本文で「民主主義」とはせず、あえてカタカナで「デモクラシー」と書いてきたのにはわけがある。
英語のDemocracyを「民主主義」と素直に和訳すると、ブレナン氏が本書で論じている論考の基軸と相いれない可能性があるからだ。
平たく言えば、同氏は「Democracy」を日本語の「民主主義」のニュアンスではとらえていない。
日本人にとって、「民主主義」という単語には特別な響き、概念がある。米大学で教鞭をとる日本人政治学者の1人は、匿名でこう指摘している。
「戦後、GHQ(連合軍総司令部)によって行われた『洗脳』によって日本人のマインドに沁み込んだ『デモクラシー=民主主義』という概念は、『絶対的な正当性』があるとの認識だった。『民主主義』には神聖にして侵すことのできない、これ以外にはすべての国民にとって正しい政治形態はないと信じ込まされてしまった面がある」
ところがブレナン氏の「Democracy」に対する概念は、日本人(少なくとも評者)が日本語で見聞きする「民主主義」という概念とは程遠い。むしろ日本語に訳せば「衆愚主義」に近いのだ。
Democracy(デモクラシー)の語源は、古代ギリシャ語の「デーモクラティア―」である。「デーモ」とは「人民・民衆」。「クラッティア―」は「権力・支配」の意味だ。「民主主義」という訳語が定着する以前には「衆愚政治」「民衆支配」といった訳語もあったようだ。
野口忠彦・拓殖大学元教授は、「Democracy」の訳語に言及した「『民主主義』は適訳か」と題する論文(政治・経済・法律研究、拓殖大学論集)を著している。学界にも論議があったことを示す証左だ。
「国家の構成員全員が政治参加する必要はない」
ブレナン氏によれば、米国の衆愚が「トランプ」に熱狂しているのは、次の3点について「そう思い込んだ」からだと分析している。
(A)衆愚がトランプ現象で「デモクラシーとは、国家の構成員すべてが政治的パワーを平等かつ根源的に分かちあえる基本的権利を享受できる政治形態だ」と思い込んだこと。
(B)衆愚がトランプ現象で「デモクラシーとは、国家の構成員すべてが政治参加することこそ善(Good)であり、人民にはその権限が授けられている」と思い込んだこと。
(C)衆愚がトランプ現象で「デモクラシーとは、人民が欲するものをすべて享受でき、それによって人民はより善良な市民になれる素晴らしい政治形態だ」と思い込んだこと。
だが、ブレナン氏はこう反論する。
「デモクラシーとは、少なくとも最初の2つ、AとBを享受できる政治原理ではない。最後の1つ、Cすら受け入れるに足るものとは言えない。
理由はこうだ。
第1に、政治参加はほとんどの構成員にとっては価値あるものではない。構成員のほとんどは政治的決定にはあまり役に立たないどころか、政治への参加は多くの構成員を卑劣で粗野にさせてしまうからだ。
さらに言えば、国家の構成員であるすべてのものに選挙権、被選挙権が基本的権利として与えられているわけではない。
選挙権とは、個々の構成員に与えられる『言論・表現の自由』のような権利とは異なる。選挙権とは立候補している第三者に自らの権限を貸与することを意味する。
デモクラシーとは、それ自体が目的ではない。それは、ちょうどハンマーの価値に似ている。ハンマーは釘を打つから価値がある。それ自体には何ら価値はない。
デモクラシーとは、公正かつ効率的な政策を作り出すための有効なインスツルメンツ(道具、手段)にすぎない。もしデモクラシーより性能のいいハンマーを見つけたらそれを使うべきだ。デモクラシーよりも優れたハンマーはエピストクラシー(Epistocracy=賢者統治主義)*1かもしれない。
自由共和的賢者統治主義(Liberal Republican Epistocracy)の方が自由共和的愚民主義(Liberal Republican Democracy)よりも勝っているかもしれない。それを試してみてどちらがいいかを探り当てる時期に来ている」
*1=新語だけにまだ定訳はない。中国語では「由智者統治」と訳されている。
「デモクラシー=民主主義」の呪縛からの解放
デモクラシーからエピストクラシーへの転換を訴える学者はブレナン氏だけではない。ジョージメイソン大学のギャレット・ジョーンズ准教授もその1人だ。ジョーンズ氏はエピストクラシーのメリットについてこう述べている。
「デモクラシーの下で選ばれた政治家は、国家のために良しとする長期戦略を立てても選挙民の目先の要求に応じることを優先せざるを得ない」
「選挙の洗礼を受けずに、つまり一般大衆の声よりも国家の利益を優先して考えることができる政治家による政策立案、立法化には大きなメリットがある。むろんそうした政治家には抜きん出た知性と徹底したモラルが必須であることは言うまでもない」
注意すべきは、ジョーンズ氏が指摘している「エピストクラシー」における政治家の質の問題だ。いくら賢人であろうとも社会正義感覚やモラル感覚に欠けているものは最初からご遠慮願うことは言うまでもない。
卑近な例で言えば、いくら東京都政に精通した地方政治家だろうとも金銭感覚とモラル感覚に欠けている実力者らが暗躍すると、豊洲市場移転をめぐるスキャンダルめいたことが起こる。
もっともこうした輩を選んだのはデモクラシーの名のもとに行われた選挙となると、これは政治形態の問題ではなくなってくるが・・・。
「デモクラティック・トランパリズム」が吹き荒れる中で、トランプ氏が大統領になるにしろ、ならないにしろ、大衆迎合主義に危機感を抱く米国の若手学者は黙ってはいない。
彼らによる「衆愚主義」に代わる選択肢の模索は今後、強まることはあっても弱まることはなさそうだ。
堀田記事

米大統領選の第1回テレビ討論会を終えて握手する民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官(右)と共和党候補ドナルド・トランプ氏(2016年9月26日撮影)〔AFPBB News〕
米大統領選の投開票日(11月8日)まで1か月あまり。民主党ヒラリー・クリントン候補(以下ヒラリー)と共和党ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)のいったいどちらが勝つのか。
第1回テレビ討論会が終わり、両候補はいまレース最後の直線に入ったところだ。毎日のように発表される世論調査結果を眺めると、両候補の数字は拮抗している。ヒラリーが数ポイント差でトランプをリードしている調査結果もあれば、逆の結果もある。
勝者を予測することは危険であるが、米国では当選予測モデルがいくつもあり、大統領選の専門家が予測を公表している。
当欄では単なる「直感的な予想」ではなく、少しマニアックであるが「学究的な予測」を中心に、数字とともに示していきたい。
米大学の政治学者が公表する9つのモデル
米国で最初の当選予測モデルが紹介されたのは1912年のことである。当時は、近年のような学究的なアプローチを駆使したものではなく、予備選の結果を考慮したモデルだった。
政治学者が学会の場で予測モデルを公表したのは1996年のことだ。全米政治学会(APSA)で勝者を分析する予測モデル(Forecasting Models)が発表されている。
1996年というのは、ビル・クリントン元大統領と共和党ボブ・ドール候補が戦った年で、同年の予測だけでなく、過去をさかのぼって大統領選の勝者を割り出すモデルが紹介された。
近年になると、主な予測モデルだけで9つも登場している。すべて米大学に在籍する政治学者が公表しているものだ。いくつか紹介したい。
ニューヨーク州立大学バッファロー校のジェームズ・キャンベル教授のモデルは、過去にさかのぼっても「ハズレ」のない予測を出している。
今年の予測は「ヒラリー勝利」である。同教授が使う指標は、民主・共和両党の全国大会前後の支持率の推移、第2四半期のGDP(国内総生産)実質成長率、政権を担う政党が何年継続しているかを測っている。
8月26日時点でのヒラリーとトランプの勝率は51.2%対48.6%。ヒラリーに軍配が上がっている。同教授の予測モデルだけでなく、他のモデルも数式化されて小数点まで割り出されている。
ジョージア州にあるエモリー大学のアラン・アブラモウィッツ教授のモデルも「勝率」は100%。なにしろ1948年からデータを取り始めて、これまで1度も外していない。
今年の同教授の予測はなんと「トランプ勝利」である。筆者は10年以上前から両教授の予測を見ているが、これまでは予測が一致していた。だが今年初めて予測が割れている。
同教授が使う指標は、現職大統領の6月末時点でのギャラップ調査の支持率、第2四半期GDPの実質成長率、現職大統領が1期目か2期目かの3点である。前出のキャンベル教授との差異は、現職大統領の支持率か候補の支持率かの違いだけだ。
入手可能な情報をすべて使うアームストロング教授
ブラモウィッツ教授の予測数値は51.4%対 48.6%で、キャンベル教授と真逆の結果である。ただ前出の2教授が使う指標が3点だけということが多少、気になる。
予測モデルの発案者の1人として忘れるべきではないのが、ペニンシルバニア大学ウォートンスクールのJ・スコット・アームストロング教授である。
同教授は政治学者ではなくマーケティングの研究者で、ビジネススクールの教授らしく入手可能なあらゆる情報を使い、数値化してエラーが生じない予測を試みている。しかも1日1回のペースで数値を更新している。
支持率や経済指標だけでなく、民間の予測やアイオワ電子市場の勝率予測まで考慮する点に特徴がある。
アームストロング教授の最新の数字(9月29日)は、ヒラリーの52.3%に対しトランプが47.7%。今年の選挙は「ヒラリー勝利」と予測している。この数字は今年2月1日にアイオワ州で党員集会が始まった時からほとんどぶれていない。
当欄では3教授の予測結果を紹介したが、前述した主要9教授(3教授含む)の予測モデルでは7教授が「ヒラリー勝利」を、アブラモウィッツ教授を含む2教授だけが「トランプ勝利」と予測している。
ただ投票日までは1カ月以上ある。多くの方はあと2回残っている討論会での両候補のパフォーマンスや、不測の事態によって予測が外れる可能性があると考えるかもしれない。
けれども過去10年以上、インターネットによる情報量の増加などにより、約9割の有権者は現段階でどちらの候補に一票を投じるか決めている。
最新のウォールストリート・ジャーナルとNBCテレビの共同世論調査によると、討論会を観て心が動かされ、支持候補を替える可能性のある有権者は11%に過ぎなかった。
つまり、討論会は自身の支持する候補がどういった討論をするのかを確認する場になっているのだ。1960年のジョン・F・ケネディ対リチャード・ニクソンのテレビ討論の時代とは討論会の意味合いが違う。
堀田モデルの内容と結果
筆者は一応、大統領選をライフワークと公言しており、1992年の予備選からずっと取材を続けている。そうした経験も踏まえ、おこがましいが「堀田モデル」を作っている。
指標にしているのは以下の6つである。
(1)過去1年の世論調査5社(ロイター、ニューヨーク・タイムズ、ギャラップ、キニアピッグ、エコノミスト)の支持率の中央値 (2)集金額 (3)選挙対策本部の組織力 (4)候補の資質 (5)経済指標(最新の1人あたりの経済成長率、失業率、インフレ率) (6)ガソリン価格
以上の指標を元に一般投票の獲得率を計算している。
自身のブログでは今年6月にヒラリー勝利を予測し、得票率を51%とした。ただ第3政党の候補として、リバタリアン党のギャリー・ジョンソン候補と緑の党のジル・ステイン候補が出馬している。
ジョンソンは全米50州で、ステインは最低45州で投票用紙に名前が刻まれる。米大統領の歴史の中で第3政党の候補が勝ったことはなく、今年も両者が勝つ可能性はほとんどゼロに等しい。
ここまで紹介した政治学者の予測モデルには両候補が加味されておらず、紹介した数値はヒラリー・トランプ両候補がとり分ける値が示されている。しかしジョンソン・ステイン両候補はほぼ間違いなく計1000万票超を獲得するので、ヒラリーとトランプの票数は自ずと減る。
いずれにしても、実際に4人が票をとり分けることになり、「堀田モデル」ではヒラリーが47%、トランプが43%、ジョンソンが7%、ステインが3%で、「ヒラリー勝利」と予測する。
もちろん予測に過ぎないが、かなり近いものになると考えている。
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『G20開催礼賛で読み解くゴジラのいない中国 中国映画の黄金時代は規制とのせめぎ合いで生まれた』(9/29日経ビジネスオンライン 山田泰司)、『差別、格差、汚職生む「中国戸籍」…改革なるか 身元隠しから汚職に走った官僚の半生が映す、課題山積』(9/30日経ビジネスオンライン 北村豊)について
中国は気が狂ったとしか思えません。今度はインドに侵攻しました。米国ですら二方面が難しく、アジアピボット政策に転換したというのに。オバマのことですから口先だけというのはばれていますが。中国には三方面(東シナ海、南シナ海、インド)でバトルはできないし、敵国を多く作り、結束を強めるだけとしか思えませんが。軍部が習近平に嫌がらせしている可能性もあります。日本にとっては味方が増えるし、軍事力を他にも分散して貰えて有難いことです。日本のマスコミに洗脳された人はこういう現実を見てもまだ中国は平和愛好国家と思うのでしょうか?単なるゴロツキ国家でしょう。
http://news.livedoor.com/article/detail/12072087/
山田氏の記事について、天安門事件の見直しは毛沢東の額が天安門に飾られている間は難しいし、紙幣に毛沢東の顔が刷られている間は難しいという事です。毛沢東統治時代は毛だけが良い思いをし、残りは皆、恐怖政治の真っただ中にいました。No.2の周恩来もそう、国家主席だった劉少奇、党副主席だった林彪、朝鮮戦争の英雄だった彭徳懐など皆、毛の犠牲者です。
政府・社会・道徳・宗教を批判できる自由が無ければ良い作品はできませんし、科学技術の発展もあり得ません。今はノーベル賞の発表時期ですが、日本の20年後を危ぶむ人もいますけれど、自由でない国を恐れる必要はありません。ただ、盗まれないように細心の注意を払わないと駄目です。中韓は苦労するより、人がやったことを横取りする方が賢いと思っている民族ですから。中国人は拝金教ですので自由は二の次です。金が儲かればどんなことをしても許されるというのが彼らの発想です。今の中国人に体制批判を期待しても無理。それより、体制とくっついて金儲けした方が良いと思っている人が大半です。
北村氏の記事について、何時も言っていますように中国では賄賂は上から下に至るまで行っており、社会にビルトインされているという事です。「清官三代」の言葉どおりです。北村氏も認めているように、「張緒鵬」が農業戸籍でなかったら汚職に手を染めなかったかというと、全くそんなことはなかったでしょう。周りが汚職に励んでいるのに超然としていたら仲間はずれにされます。
興味がありますのは、どうして腐敗が発覚したかです。多分、敵の不動産会社がもっと上に取り入り、司法部門を動かしたのでしょう。勿論、そのためには金が必要です。いつも言っていますように賄賂が発覚するのは①(政)敵を倒すためか②配分先を間違えたか配分量を間違えたかのいずれかです。習近平がやっているのは正しく①です。中国人だったら皆分かっています。
農村戸籍と非農村戸籍の区別がなくなることは基本的人権の擁護の面で好ましいことです。今までがおかしかったわけです。結果の平等を目指す共産主義が現実面で大いに矛盾していたということですが、権力を監視する術を持たないシステムでは期待する方が野暮でしょう。まあ、一歩前進という所でしょうか。でももっと大きな問題があります。「档案」です。3代前の家族に遡り、共産党に反対したか、不満分子でないか等、素行の内申書で、地方の共産党幹部が書いて本人も見れないようになっていると聞きました。人権蹂躙も甚だしいですが、共産党が続く限り止めることはないでしょう。本当に共産党と言うのはどこの国でも腐っています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%A3%E6%A1%88
山田記事

中国・杭州で開催されたG20首脳会議(写真:ロイター/アフロ)
原発事故や戦争を暗喩したと言われる「シン・ゴジラ」を観て、現代の中国で化身としてゴジラに成るとしたら何だろうか、ということについては前回書いた。同時にもう1つ頭に浮かんだことがある。それは、中国の映画人がもしいま、何かを暗喩して映画を撮るとすれば何だろうかということ。
文化大革命(文革)、官僚の腐敗、人権問題、政権批判などいくつも頭に浮かぶ。ただこれをもし、「何かを暗喩して撮る」ではなく、「暗喩でしか描けないものを撮る」と言い換えると、対象はぐっと絞られてくる。習近平国家主席に対する批判もできなさそうではあるが、政権が交代すれば可能性はなくはない。そこで、指導者が替わっても当面難しそうなテーマということで考えれば、私はその筆頭はダントツで1989年6月4日の天安門事件だと思う。
最大のタブーと暗黙の了解
民主化に理解のあった胡耀邦元総書記の死去に端を発した学生の民主化要求運動を当局が最終的に武力で弾圧した、というのが天安門事件についての日本や欧米での一般的な認識だ。ただ、中国政府は確か、「政治的波風に端を発した反革命暴乱」という具合に、いわゆる西側諸国とは異なる見解を示している。
ここで、「確か」「している」と曖昧に書いたのは、天安門事件は中国において検索のNGワードになっているため、中国でこれを書いている私は確かめることができないし、あえて調べようともしていないためだ。ともあれ、事件から27年が経過した今日に至るまで、死者の数などを含めいまだに真相は分からないし、中国ではいまだに最大のタブーだと言っていい。
事件当時、私は中国に留学していて、その秋から入る予定だった北京大学で入学の最終手続きをするため、事件前日の6月3日には北京にいた。手続きを終え、在籍していた山西省の大学に戻るため予定通り3日の夜行列車に乗り、翌4日の朝、山西省の太原に着き大学に戻ってみると、中国人の先生から「よく無事で戻ってきた」と迎えられた。ネットもない時代で情報は限られていたが、事件当日の4日朝の時点で、北京で起きたことのあらましを知らない中国人は誰ひとりいなかった。先に、天安門事件は中国にとって最大のタブーだと言ったが、最大の暗黙の了解でもある。もっとも、事件後に生まれた20代以下の若者の中には、事件の存在自体知らない人も大勢いるというのが現状である。
中国映画の黄金時代
さて、情報の統制が厳しく、映画に対する検閲もあり、表現に対する制約も多いとの印象がある中国だが、中国のタブーという話が出ると天安門事件と並んでよく名前の挙がる文革については、意外なほど批判的に扱ってる映画は多い。陳凱歌(チェン・カイコー)監督の「さらば、わが愛~覇王別姫」(1993年)はその代表で、日中戦争や文革など時代に翻弄された当時の京劇役者たちの人生を描いたこの作品は、同年のカンヌ映画祭でグランプリに当たるパルムドールを受賞している。
2008年北京オリンピックの開会式と閉会式の総合演出を手がけた張芸謀(チャン・イーモウ)監督が、その存在を世界に知らしめることになった代表作「紅いコーリャン」(1987年)は、人権問題を陰のテーマにしている。中国の農民が日本軍に虐殺されるシーンが有名なこともあり、抗日映画の印象がどうしても強くなりがちだ。ただ、監督の張芸謀は文革で農村に下放され農民として3年間労働、2012年にノーベル文学賞を受賞する原作者の莫言は農村出身という背景を持つこの2人が、人間扱いされているとは言いがたかった当時の中国の農民の苦しさ、言い換えればこの映画が撮られた当時もなお続いていた中国における人権の扱いに対する批判を込めて創った作品でもある。
ただ、例えば文革を映画のテーマとして取りあげることは許されても、制約が全くないわけではなかった。世の中を文革に至らしめた中国共産党を名指しで批判することは、当時も今もできないのだ。そこで、陳監督は文革、張監督は人権問題を、抗日戦争というテーマと1本の映画のなかに同時に盛り込むことで、当局の許可を得やすいようバランスを取る。もっとも、日本の侵略に対する怒りがあったのはもちろんのことである。
制約・規制に抗うことで生まれた表現
ただそれでも、直接的な当局への批判はできない。そこでわが愛~覇王別姫で陳監督は「音」、紅いコーリャンで張監督は「色」を、自らの思いや感情を表現すると同時に、見る者の想像力をかき立てる手段として効果的に使った。
例えばわが愛~覇王別姫のラスト。主人公の1人が自害するのだが、陳監督は直接、刃物を体に突き立てるようなシーンを描くことはしない。まず、盟友の死を目の当たりにしたもう1人の主人公が、相手の名前を絶叫する声。続けて、共に京劇役者である主人公2人を戯画的に描いた静止画に、京劇の舞台音楽としておなじみの「シャンシャンシャンシャン」という拍子木、シンバルを乱打し笛を吹き鳴らす音をかぶせた。悲しく重苦しい死の場面に続くにはおよそ似つかわしくない甲高く騒々しい音楽だが、観ている私たちに蝉時雨のように降り注いでくるその音は、戦争や文革という理不尽な時代に生きた京劇役者のやるせなさや、そのような時代を招いた政権を名指しで批判することはできない監督自身の憤りを私たちに体感させ、体と心を激しく揺さぶるには十分な効果を生んでいる。
「このような映画を撮れる国」として集めた敬意
一方、紅いコーリャンのラストシーンで陳監督は、大地一面に広がるコーリャン、その大地を踏みしめ仁王立ちする主人公と幼い息子、主人公の足下に転がる殺された妻、その3人を覆う空と、画面に映る何もかもを、夕日と血で燃えるような深紅に染め上げた。怒りと血を意味する赤で包み込むことで、農民がたどり着いた人生を表現してみせたのである。
この時代、中国映画はベネチア、カンヌ、ベルリンなど海外の映画祭で賞を総なめにした。紅いコーリャンも1988年、ベルリン国際映画祭で最優秀賞の金熊賞を受賞している。「竹のカーテン」で閉ざされた国という印象が強かった中国で、映画という表現が盛り上がり始めたことに世界が注目しだしたという時代的な背景もあったのは間違いない。
ただ、当時の中国で映画の撮影に制約がなく、言葉で名指しで批判するような単純な表現が多かったならば、言語も文化も違う他国でここまでの高い評価は得られなかったのではないか。表現が制限される中、人間の五感に訴える色と音で激情や思いを伝えようとした工夫が、国境を越えての共感につながった大きな理由であろう。そしてこの当時、いろいろ問題はあるようだが、でも、このような映画を撮れるのだからという理由で中国や中国人に敬意を抱いた人も、少なくなかったのである。
話題になるのは「カネ」と「市場」ばかりの現状
翻って現在。中国と映画ということで話題になることと言えば、巨大市場に成長した中国の観衆を意識して、舞台に中国が登場するハリウッドの大作が増えたということや、中国の不動産王、王達林氏率いる万達集団が、米国の映画館チェーンAMCエンターテインメントや、「ジュラシック・ワールド」の製作で知られる米レジェンダリー・エンターテインメントを買収した等々、市場やカネにまつわる話ばかり。これらの話題を凌ぐほど評判になる作品は、中国映画の中から久しく出ていない。
共に60代半ばになり申し分のない実績を誇る張芸謀、陳凱歌の両監督が映画界の大御所になったのは当然だとして、張氏は一人っ子政策に違反して億を超す罰金を科されたこと、一方の陳氏は昨年から上海電影学院のトップに就任したことなど、話題になるのは作品以外のことばかり。特に張監督は、五輪の演出をして悦に入っている姿を見ると、体制の側に行ってしまったという感が否めない。
ただ一方で、中国の映画界がいまもなお、何でも自由に描け、批判できるという状況にないことは、陳、張両監督の全盛期であり、中国映画の黄金時代と呼ばれた1980~90年代前半のころと変わるところがない。規制の中でのギリギリのせめぎ合いで表現を工夫しタブーに迫ったからからこそ、陳、張監督の時代の中国映画が強烈なインパクトを残すことに成功したのだということを肯定するならば、タブーや社会問題を暗喩することで名作が生まれる環境面での条件はいまも揃っていることになる。
「G20で締め出し」を市民は本当に怒ったのか
ではなぜ、印象に残るような中国映画が生まれなくなっているのか。9月上旬、日本でシン・ゴジラを観た私はそんなことに思いを巡らせたのだが、ちょうど同時期に中国浙江省杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議と、それに対する友人・知人らの反応に、インパクトのある中国映画が出なくなった一因を垣間見た気がした。
G20の開催に合わせ、開催地の杭州では9月1~7日まで、企業や学校が休みになった。大きな通りに面した商店も多くはシャッターが閉じられ、市民を閉め出した町はまるでゴーストタウンのようだったという。首脳らの安全確保に加え、各国のリーダーやメディアが集結する中、中国政府に不満を持つ市民が杭州で陳情などを強行するのを防ぐ目的があったと言われる。
このことについて、日本のメディアが報じているのをいくつか読んだが、おしなべて、閉め出された市民らが当局の強引な措置に不満を漏らしていた、という一点張りで伝えていたように思う。
もちろん、不満を覚える杭州市民も少なくなかったことだろう。ただ、杭州でG20を開催したことを喜び、誇りに思い、強制的な休業や排除を受け入れている市民が、不満を漏らす市民と同じか、私の印象ではそれ以上いたという事実については、伝えておく必要があると思う。
「安定・豊かさ」優先で「批判・評価」は先送り
私がこのことを知ったのは、中国最大のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「WeChat」でのこと。「朋友圏」すなわち友達・知り合いとして登録している人たちに向かってつぶやきや写真を載せる「モーメンツ」というスペースがあるのだが、ここに、G20用にライトアップされたビルなど町の様子の写真を多数載せ「世界の杭州!」「国際化を象徴するようなライトアップだ!」「世界に届け!HANG ZHOU(杭州)の誉!」「私の誇り、杭州!」と、読んでいるこちらが気恥ずかしくなるような文言と共に掲載している知人・友人が、1人や2人ではなかったのである。
中国ではこのWeChatでも検閲が行われていて、友人・知人らがこのモーメンツの欄に自分で書き込んだり、転載したりしている記事が、後になって「不適切なので削除しました」の通知と共に削除されていることもままある。こうした状況なので、中国人が、WeChatのモーメンツでつぶやいていることが、本音ばかりであるというわけでは当然ない。ただ、検閲しているといっても、庶民が中国当局を礼賛する書き込みをしたからといって、それを当局が目ざとく見つけ、「お、こいつは体制の支持派か。留意しておこう」などとなり、それを機に当局の覚えがめでたくなる、というほどでもない。
杭州のG20を礼賛していた友人・知人らの中には1度しか会ったことがない人もいるが、それでも直接会ったことがある人ばかりだ。だから、多少なりとも彼らの人となりは分かる。それから判断する限り、強制的な休業など不便、不利益を被ったことを差し引いても、杭州でのG20開催を心から誇りに思っている人が相当数に上るというのが実態ではないかと、私は思っている。つまり、世界に誇りたくなるような杭州を作り上げた中国当局を、少なくとも大筋では支持している人が、日本の報道、特にネットで流れている報道から受ける印象とは裏腹に、多数派だということである。
名作映画を連発してはいたものの、豊かさという点では今よりも劣っていた80年代。それから30年かけてG20が開催できるまでに築き上げたいまの世の豊かさを、崩したくないという思いも意識的、無意識的にかかわらず、中国人の中には働いているだろう。こうした状況で、安定を危うくする危険をはらむ、社会問題や歴史的事件を暗喩する映画は生まれにくいに違いない。規制という環境は1980~90年代と同じでありながら、いまの中国に強烈な印象を残す映画が出てこないのは、規制に抗ってまで主張したいことが少ない、あるいはあっても評価は先送りにしておきたいという、いまの中国人の意思の現れでもある。
北村記事
9月19日、北京市は正式に『戸籍制度改革をさらに推進する実施意見』を公表し、北京地区の“農業戸口(農業戸籍)”と“非農業戸口(非農業戸籍)”の区分を取り消し、登録する戸籍を“居民戸口(住民戸籍)”に統一すると宣言した。北京市の統計によれば、2012年末における北京市の常住人口は2069.3万人、そのうち農村人口は285.6万人で、2010年末の275.5万人に比べて10万人増加していた。
「差別の温床」戸籍制度の改革計画を公布
これは2014年7月24日付で中国政府“国務院”が公布した『戸籍制度改革をさらに推進することに関する意見』で提起された「“城(都市)”と“郷(農村)”の戸籍登録制度の統一による農業戸籍と非農業戸籍の区別の取り消し」に基づく措置である。9月20日の時点で、北京市を含む30の一級行政区(省・自治区・直轄市)<注1>が農業戸籍と非農業戸籍を取り消すことにより、これまで差別や偏見をもたらしてきた戸籍制度の改革計画が公布されている。
<注1>中国の一級行政区は31か所あり、30か所に含まれていないのはチベット自治区の1か所のみ。
中国では、1958年1月9日に公布された最初の戸籍法規である『中華人民共和国戸籍登録条例』によって、常住、暫住、出生、死亡、転出、転入、変更の7項目の登録制度を含む厳格な戸籍管理制度が確立され、全ての個人は農業戸籍と非農業戸籍に分類された。農業戸籍と非農業戸籍という分類は、計画経済下で“商品糧(商品化食糧)”を基準として区分けしたもので、農業戸籍とは「自分が生産した食糧に頼って生活する農村の農業従事者の戸籍」を指し、非農業戸籍とは「国家が分配する食糧に頼って生活する都市居住者の戸籍」を指す。
当初は農村部に居住する農業戸籍者には宅地と農地が保証されていたから、都市部に住む非農業戸籍者に比べて優遇されているように思われたが、工業が発展するに従い都市部と農村部の収入格差は拡大の一途をたどり、都市部の非農業戸籍者と農村部の農業戸籍者の間には収入、生活、文化、教育などのあらゆる面で大きな格差が厳然と存在するようになった。また、農民の都市部への移動は厳しく制限されたこともあり、都市部の住民は総体的に自分たちより貧しい農村部の住民を一段低い存在と位置づけた。それが、貧しい、汚い、礼儀知らず、無教養などといった農業戸籍者に対する差別と偏見に発展し、今日に至っている。
今まで農業戸籍者が非農業戸籍に転換して都市部住民になるには、非農業戸籍者との結婚や養子縁組、大学卒業、優秀人材、突出した貢献などの厳しい条件と審査があり、承認される人数には大きな制約があった。しかし、一級行政区の各地方政府が戸籍制度の統一に本腰を入れると宣言したことにより、今後数年以内に中国の戸籍は住民戸籍に一本化されるものと思われる。
さて、9月22日付の日刊紙「検察日報」<注2>は、安徽省“寿県”の元“県党委員会書記”(以下「元書記」)が生をうけてから汚職で摘発されて失脚するまでの経緯を詳細に報じた。元書記が汚職に手を染める引き金となったのは、貧しい農民である実家を援助するためであり、実家が貧しい農民であることで妻に見下されたくなかったからだという。本来の農業戸籍から非農業戸籍へ転換していた元書記は、貧しい農民出身であることを妻に隠し通すために汚職に走ったのだった。その概要は以下の通り。
<注2>「検察日報」は“最高人民検察院”の機関紙。最高検察院は日本の最高検察庁に相当する。
「戸籍」から始まった汚職への道
【1】1963年2月18日、“張緒鵬”は安徽省の省都“合肥市”の西隣に位置する“六安市”の管轄下にある“霍山(かくざん)県”の貧困な山村に居住する張家の三男として生まれた。しかし、貧しい張家には彼の出生を喜ぶ者は誰もおらず、家族は彼をどう養って行くのかと眉をひそめるばかりで、最終的に張緒鵬は他家へ養子に出された。養父母の家には2人の姉がいたが、男の子は張緒鵬だけであったことから、幸いにも張緒鵬は教育を受ける機会に恵まれた。1979年、張緒鵬は安徽省東南部の“宣城市”にある“皖南(かんなん)農学院”に16歳で合格して大学生となり、辺鄙な山里から抜け出るチャンスを得た。貧しい山村の学生が都会の大学で学ぶのは非常に困難な事であり、中国の常として、張緒鵬も一族の人々から経済的支援を受けたことは想像に難くない。
【2】1983年に皖南農学院の農学部を卒業した張緒鵬は、生まれ故郷の霍山県にある「符橋農業技術センター」に配属され、技術員、副センター長、センター長と順調に出世の階段を上って行った。2008年、張緒鵬は六安市の北部に位置する“寿県”へ転任となり、“寿県共産党委員会”副書記兼“寿県人民政府”副県長に任命された。寿県着任後の張緒鵬は地元の発展への貢献に目覚ましいものがあり、その実務能力が高いことは広く人々に認められた。
【3】結婚後の張緒鵬は家計管理の実権を妻に委ね、毎月の給与を全て妻に手渡していた。張緒鵬自身は家の中で唯一貧困な山村から抜け出て来た人間であり、生みの親と育ての親の兄弟姉妹は全員が農業に携わっていて貧しかったから、少しでも経済的な援助を提供したかった。しかし、親族が山村で貧困な生活をしていることで妻に見下されることを恐れた張緒鵬は、経済的援助の提供を妻に言い出せず、自分の学生時代に経済的に支援してくれた親族に対して強い負い目を感じていた。それが張緒鵬を腐敗の道に走らせることになった。
【4】2008年5月に張緒鵬が寿県に着任した後、従弟の“張緒剛”が寿県へやって来た。張緒鵬と張緒剛の2人は対外的に兄弟だと言っていたので、人々は2人が実の兄弟だと思っていた。張緒剛が寿県に来て間もなく、張緒鵬は隣接する“淮南市”で「生コンプラント」を経営する“李孟”を張緒剛に紹介した。張緒剛は寿県における生コンの販売で李孟に協力して仲良くなり、李孟を通じて“中景潤置業集団”(以下「中景潤」)<注3>の経営者である“陳中”と知り合った。
<注3>“置業”は「不動産購入」の意味。
5】2010年、張緒剛は寿県“寿蔡路”の南側で都市改造計画があることを知って、張緒鵬に自分が参入することはできないかと尋ねた。張緒鵬が実力のある会社でないと受注できないと答えると、張緒剛はそれならと中景潤を推薦した。早速、張緒鵬は中景潤の陳中と面談したところ、陳中は自社の規模や経営状況を紹介すると同時に、張緒剛は有能だとお世辞を言った。これに対して張緒鵬は、「あいつはそこそこの教育程度だが、事業をやるには経験が乏しく、経済的にも難しいから、できる限りあんたが面倒を見て欲しい」と述べ、別れ際に陳中と李孟で協力して中景潤の関係資料を準備して改めて打ち合わせようと言った。
賄賂攻勢から癒着の泥沼へ
【6】陳中は李孟経由で張緒剛に、都市改造計画が受注できたら、利益の10%を与えると伝えた。当該計画は大型の建設事業で、利益は数億元(約50億~60億円)に上るから10%は数千万元(約5億~6億円)となる。その後、張緒剛は幾度も張緒鵬に分け前が10%になると提起したところ、これに動かされた張緒鵬は具体的な金額はいくらになるかと聞いた。これに対して張緒剛が、少なくとも3000万元(約4.5億円)になると答えると、張緒鵬はその場で態度を表明し、「俺が必ず上手く行くようにするから、彼らに遠慮せずに県政府と話をさせ、何か問題があったら言って来い」と胸を叩いた。その後、中継潤と県政府の商談は急速に進展し、その後の難関である土地の競売、住民の立ち退きや建物の取り壊しも極めて順調に推移した。これは張緒鵬が自ら全てを取り仕切ったことによるものだった。2012年に張緒鵬が合肥市にある“安徽省立医院”で手術を受けた際には、陳中と李孟の2人から5万元(約75万円)の見舞金を受け取った。
【7】2007年、不動産開発企業である“安徽永順房地産開発集団”の経営者である“銭慶”は宴会の席で、将来寿県の県長になると噂されていた張緒鵬と知り合った。2008年に張緒鵬が寿県の県長に就任した後、同集団は寿県の一大開発事業である“泰州時代広場”建設計画を受注し、銭慶は張緒鵬と何回か面談した。2009年の“春節(旧正月)”期間中に、銭慶は張緒鵬へ連絡を入れて、高級酒“五糧液”を2箱(6瓶/箱)、高級たばこ“熊猫煙(パンダたばこ)”4カートン(10箱/カートン)と商品券1万元(約15万円)を張緒鵬に贈った。
【8】2009年10月、銭慶は張緒鵬が“安徽省党校(党学校)”で研修を受けているのを知った。研修期間の終了後は張緒鵬が寿県のNo1である“県党委員会書記”に就任することは明らかだった。抜け目のない銭慶は、すぐに研修中の張緒鵬に電話を入れてスーツを作ろうと誘い、党学校の宿舎の部屋に張緒鵬を訪ねた。銭慶は張緒鵬に気付かれないように20万元(約300万円)の札束を入れた袋を寝台の上に置いて掛布団で隠してから、張緒鵬を連れて紳士服店へ行き、オーダーメイドでスーツ1着とワイシャツ3枚を注文して、1.8万元(約27万円)を支払った。「自分が20万元を贈った後は、張緒鵬の自分に対する呼称が明らかに変わった」と銭慶は後に語った。銭慶の予想通り、2009年12月に張緒鵬は寿県の党委員会書記に昇進し、銭慶は張緒鵬という後ろ盾を得て、寿県で多数の建設案件を受注した。
【9】上述したのは、張緒鵬が行った汚職の代表的な例に過ぎない。「奢れるものは久しからず」の言葉通り、寿県の行政を意のままに動かし、我が物顔で寿県の財政を食い物にしていた寿県党委員会書記の張緒鵬は、2014年5月に“淮北市検察院”によって収賄の容疑で立件され取り調べを受けた。2014年7月21日、“安徽省検察院”の指示を受けた淮北市検察院は、張緒鵬を立件して取り調べ、張緒鵬とその従弟の張緒剛が“兄弟斉心, 共同撈金(兄弟心を一つにして、共同でカネを手に入れる)”という形で犯罪を行った事実を確認した。8月11日、検察機関は初歩的調査の結果として、張緒鵬が寿県党委員会書記ならびに寿県県長の在職期間中に、職務を利用して他人のために土地開発や建設工事の便宜を図り、見返りとして不法に他人の財物を受け取ったが、その額は巨大であり、収賄の嫌疑がかかっていると発表した。
行きつく先は一家全員の腐敗
【10】それから2年後の2016年7月19日、“淮北市中級法院(地方裁判所)”は同事件に対し以下のような一審判決を下した。
張緒鵬は職務を利用して他人の金品・物品を総額645万元(約9675万円)<内訳:単独収賄145万元、共同収賄500万元>受け取ったことにより、収賄罪で懲役11年および罰金210万元(約3150万円)、職権濫用罪で懲役3年とし、最終的に懲役12年、罰金210万元に処す。張緒剛は他人の金品・物品を500万元(約7500万円)受け取ったことにより、収賄罪で懲役10年および罰金175万元(約2625万円)に処す。
【11】7月29日、張緒剛は一審判決を不服として控訴し、二審を待つ状況にある。この事件について「検察日報」記者からコメントを求められた淮北市検察院“反貪局(汚職取締局)”副局長の“余権”は次のように語った。
事件の審議を取り進める中で、多くの人々が張緒鵬を業務能力が高いだけでなく、論理の水準も高く、非常に優れた人材であると評価していた。但し、この人材は「才」に溺れる形で、最終的には汚職の道に迷い込んでしまった。張緒鵬は自らほしいままに賄賂を受け取っただけでなく、その兄弟、娘、姪、妻などの親族までが彼の影響力を利用して“権銭交易(権力とカネの癒着)”を繰り広げ、“不義之財(道義に反して作ったカネ)”で大儲けした。張緒鵬は、“全家福(一家全員の幸福)”を求めて、最後には“全家腐(一家全員の腐敗)”に陥った。
上述したように、張緒鵬が汚職の道に足を踏み入れたのは、自分が出世する糸口を作ってくれた実家の人々に恩返しの援助をしたいという人の道としてまっとうな気持ちからだった。地方官僚として十分な俸給を受けているなら、その中から援助金を捻出すれば済む話だが、俸給全てを妻に上納していた張緒鵬は、貧しい農民である実家を援助すると言えば、妻に実家が見下されるばかりか、自分までもが出自が卑しいと軽蔑されると考えたのだった。
厳然とした格差、克服への道は…
地方官僚とはいえ、寿県党委員会書記は寿県の最高指導者であり、県民約140万人の頂点立つ役職である。その地位にまで上ってもなお、自身の出自が貧しい山村の農民であり、実家の人々は依然として貧しい農民であることは、張緒鵬にとっては一生背負って行かねばならない重荷だったに違いない。張緒鵬が都市に生まれた非農業戸籍者であったなら、汚職を行わなかったかと問われれば、汚職をしないという保証はなく、中国の役人の常として恐らく汚職をしただろう。しかし、張緒鵬の場合は農業戸籍であった出自を恥じる気持ちが汚職に手を染める契機となったことは否定できない事実である。
中国全土が早期に戸籍の統一作業を完了させ、戸籍による身分差別が払拭される日が近いことを祈りたい。但し、戸籍が住民戸籍に一本化されたとしても、都市と農村の格差が縮小される訳ではなく、所得、社会福祉、教育、医療など多岐にわたる格差は厳然として存在する。それでも、戸籍の統一は格差縮小の一歩と言えよう。
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『「死刑判決」を受けたドイツ銀行。1.4兆円では済まない絶望の訴訟リスト』(9/27MONEY VOICE)、『ドイツ銀に報酬返上圧力 不正行為の穴埋め 信頼回復に不可欠』(10/2日経朝刊 FT)、『ドイツ発金融不安に「日本化」の亡霊』(10/2日経電子版滝田洋一)について
リーマン以上の欧州金融危機について、9/23に開放されたリアルインサイトの藤井厳喜氏の解説VIDEOが一番分かり易いでしょう。そのときのパネルを掲示します。













堅いと思われていたドイツの産業資本と金融資本の両方が不正に手を染めていたのですから。コンプライアンスが全然できていないという事でしょう。日本も三菱自動車とかありましたが、世界にインパクトを与えることはありませんでした。VWの排ガス数値捏造は米国の一般原告団、および44の州との間で、約150億ドルの賠償に合意しました。VWは世界売上の1/3を中国で稼いでいます(上海のサンタナが有名)。中国は実質マイナス成長と言われていますので、泣き面に蜂の状況です。またVWの大株主は当然ドイツ銀行です。ドイツ銀行は、その他にも、米国でのサブプライム層に対する不動産担保証券の汚い売り方や、LIBORの出鱈目な数字の報告とか、いい加減さが半端でありません。監査役会が機能していなかったという事でしょう。またドイツ政府は民間企業救済する前に、既存株主や債権者に痛みを感じて貰う必要があるとのこと、理論上は確かにその通りなのですが、システミックリスクを全然考慮に入れていません。日本のバブルも宮澤蔵相が銀行等への税金投入による救済を唱えた所、日共・マスコミの反対に遭い、実現できず、バブル崩壊後の経済低迷を齎し、長い期間と多くの金を投入することになりました、日本の例を研究すれば、税金投入しかないというのが分かりますが、今のメルケルは難民問題でミソを付けているので、ここで税金投入の話をすれば確実に次の選挙では勝てないでしょう。結局、経済崩壊するまで手が打てないのでは。
http://jp.techcrunch.com/2016/07/01/20160630how-the-vw-diesel-settlement-breaks-down-in-dollars/
英国のEU離脱は賢明だったのかもしれません。ただメイ首相は明年3月までに離脱通知をするとのことで、それまでにドイツ経済が破綻したら、連鎖して痛手を蒙る所が沢山出るのでは。勿論、日本もです。ドイツと多く取引している会社の株価は軒並み下がり、円高が進むでしょうし、ユーロの価値は暴落、$の信認が上がり、滝田記事にあるように$の調達が難しくなるかもしれません。中国経済も悪いことから、お互いに足の引っ張り合いが循環して、奈落へと突き進むような気がします。中国は人民元を増刷して逃れようとするでしょうが、実体経済が悪すぎます。電力消費量、銀行融資、鉄道貨物輸送量、純輸出、マイナスかマイナス付近です。2015年通年から貿易量以外のデータ公表はなくなりました。発表数字がGDPの数字と大幅に乖離するためです。貿易量は相手国があるため発表しています。本年7月の輸出は前年同月比4.4%減少、輸入は12.5%減少と両方ともにマイナスです。
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20160301/Searchina_20160301113.html
http://jp.reuters.com/article/china-july-tradedata-idJPKCN10J0FP?sp=true
頼りになるのは米国と日本だけになりかねません。後は日本の支援が期待できるロシアくらいかと。
MONEY VOICE記事

米司法省がドイツ銀行に対して14B$(1.4兆円)の和解金支払いを要求。これに対しドイツ銀行は絶対に飲めないと拒否していますが、いよいよ、本当に危険水域のようです。現在ドイツ銀行が抱える訴訟や調査は、数え切れないほどの件数に膨れあがっているのです。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)
※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2016年9月27日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
集団訴訟、巨額デリバティブ…ドイツ銀行が抱える爆弾の中身
まずはUSA TODAYの報道から、ポイントを見てみましょう。
報道のポイント
消息筋によると、2008年の金融危機の際、ドイツ銀行がサブプライムローン市場で人為的に金融過熱を煽ったという理由で、米国司法省は14B$(1.4兆円)の罰金支払いを要求していることが分かった。
同行が、不透明で分かり難い金融商品であるMBS(不動産担保証券)を、投資家に売りまくったからである。
米司法省の要求する罰金が14B$にのぼると発表された時点で、NY市場のドイツ銀行の株価は8.4%急落し13.50ドルまで下落した。
【関連】ヒラリー余命1年説~匿名を条件に「専門家」が投稿した動画の中身とは
ドイツ銀行側は、この巨額の和解金支払い要求に対して絶対拒否の姿勢を見せており、「我々にとって、この規模の和解金は巨額すぎる。この数字のレベルでは応じる意志は全くない。現在、調停は始まったばかりだ。もっと少ない金額で妥結した類似の銀行と同様の扱いを期待している」と回答した。
今回の米司法省の和解金支払い要求は、ドイツ銀行が2005~2007年にかけて販売したサブプライム層に対する不動産担保証券のあざといやり口に対するものである。
ドイツのMagazin誌は、米司法省が、ドイツ銀行の違法行為、それを行った従業員氏名、罰金支払い要求額等を記載した100ページにわたる文書を、同行宛に9月中旬に送付したと報道していた。
現在進行中の集団訴訟
2016年第2四半期決算書のデータから、ポイントだけ抜き書きします。114~124ページにかけて、現在進行している集団訴訟や金融監視当局との調停の詳細が記述されています。項目だけでも非常に多いことに驚きます。
数え切れない訴訟を抱えるドイツ銀行
合計でいったい何件の集団訴訟や調査が入っているのか分からないほど、非常に多い状況です。これは長期負債を抱えているのと同じです。
- Esch Funds Litigation
- FX Investigations(外貨不正取引訴訟。米国だけでなくカナダ等多数の集団訴訟)
- High Frequency Trading/Dark Pool Trading(超高速・高頻度取引での不正行為訴訟)
- Interbank Offered Rates Matter(インターバンクレート不正訴訟。米国、欧州各国だけでなくアジア等の金融監視当局による調査、この分野だけで47件の民間訴訟)
- 米ドルLIBOR 不正操作に関する複数の訴訟
- 日本円LIBOR ユーロ円TIBOR不正操作
- SIBOR及びSOR
- 韓国株価KOSPI(指数操作疑惑で複数の訴訟)
- サブプライム住宅ローン、不動産担保証券の不正発行
- Trustee Civil Litigation(8件の集団訴訟)
- 貴金属不正操作疑惑(金価格不正操作で早々に妥協、他行の手口を教えることで和解金額を下げた例の訴訟)
- Referral Hiring 不正疑惑
- ロシア・英国株式不正取引疑惑
- 国債、機関債不正疑惑
- 米国禁輸関連疑惑(スーダン、北朝鮮、キューバ、シリアの銀行との取引疑惑)
- 米国債不正疑惑
長期負債なら金額が分かりますが、この訴訟や不正行為調査では、和解金額がどれほどになるのか分かりません。非常に恐ろしい事態です。
資金はまったく足りず
これらの集団訴訟や金融監視当局との争いに備えて、ドイツ銀行は予備の資金を準備していますが――


(ア)黒枠が集団訴訟の和解準備金です。2016年6月30日時点で1.488Bユーロを準備しています。赤枠が金融監視当局の罰金準備金4.050Bユーロ。合計しても準備できたのは5.5Bユーロ(6.158B$)だけです。
今回、これに対して14B$の罰金を要求されているのです。思い出して下さい。先に示した訴訟や調査の長いリストを。
(イ)和解準備金の四半期の変化です。
これは「ドイツ銀行 対 米国金融当局」の問題から、「ドイツ政府 対 米国政府」の外交問題になるでしょう。もちろん、水面下での交渉となるでしょうが。
巨額デリバティブというアキレス腱
イタリアのマッテオ・レンツィ首相が、ドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁に対し、ドイツの銀行問題を解決するべきだと発言。こちらは2016年9月19日のロイター電です。
報道のポイント
ドイツ連邦銀行のイェンス・ヴァイトマン総裁が、イタリアの巨額公的債務問題を取り上げ、債務を減らすべきだと述べたことに対し、イタリアのマッテオ・レンツィ首相は、「ドイツは自らの足元、ドイツの複数の銀行の問題を片付けるのに集中すべきだろう」と応酬した。
イタリアの首相はニューヨークでの記者会見で、ドイツの銀行は「100Bユーロの数万倍ものデリバティブを抱えているではないか。他国のことをとやかく言う前に、まず自分の身の回りを片付けるべきだ」と述べた。
イタリアはこの秋に国民投票を行うが、それに彼の政治生命は掛かっており、ここ数日間はEU首脳陣が経済問題や移民問題に不適切な対応をしていると批判している。
危険水域
イタリアのトップが、ドイツ銀行こそがドイツにとって一番痛いアキレス腱だと、すなわち破産の崖っぷちだと認識していることを吐露したのです。ドイツ銀行は、本当に危険水域のようです。誰も言いませんが。
昨年から言い続けていますが、EU圏は分裂せざるを得ません。経済統一ができても、それは利益を得ている間だけです。落ちこぼれ国家をどうするか?について、政治統一ができていなければ、総論賛成の各論反対で結局は分裂します。
EUの理想を語る政治家は、もういません。もしいても、その政治家は一般大衆多数派の支持を得られないでしょう。
FT記事
不正が発覚した場合、過去に払った報酬を返上させる――。金融業界における「クローバック」というこの概念は、これまで規制当局者の頭の中か、政治家が怒って発する言葉にしか存在しないかに思えた。だが、もはやそうではない。

不正営業問題に関し9月29日、米議会で証言するウェルズ・ファーゴのスタンフCEO=AP
■米銀のCEO、41億円を返上
米大手銀行ウェルズ・ファーゴは9月、顧客に無断で200万件もの口座を不正に開設したと認め、金融界に衝撃が走った。これは驚くべきことだが、同じくらい注目すべきは、取締役会がジョン・スタンフ最高経営責任者(CEO)に支給された4100万ドル(約41億4000万円)の株式報酬の返上を決めたことだ。リテール銀行部門のトップだったキャリー・トルステッド氏にも、年金と合わせ、権利未確定の株式報酬1900万ドルを返上させる。
見方によってはこの対応は不十分だし、タイミングも遅すぎるように思える。取締役会がこの措置を決めたのは、米民主党の上院議員5人が同行に不正を問題視する書簡を送った後のことであり、スタンフ氏は米議会ではあきれた内容の証言をした。取締役会が圧力の高まる前に自ら動いていたなら、もっと称賛されていただろう。
■株主からの要求増える可能性
だが、対応が遅すぎたとしても、この措置は後に歴史の大きな転換点になるかもしれない。スタンフ氏は極めて裕福なので、報酬を返上しても、それほどひどい痛手にはならないだろう。ただ、いかに米国の金持ちの基準が度肝を抜くものであるとはいえ、4100万ドルは決して少額などではない。しかも、企業の取締役会がこれほど多額の報酬返上を、しかもCEOに対して求めるのは初めてだ。
今回の措置は重要な意味を持つ。不正を働いた銀行員やその幹部が報酬を返上するというのは新しい考え方ではない。だが、2008年の金融危機以前は、取締役会がこの措置を実行するための法的な規定はほとんど存在しなかった。彼らの懐を突く唯一の方法は、一時金を削減する(あるいは解雇する)だけだった。
08年以降、大半の大手銀行は、報酬を3年分遡って返上することを要求できるクローバック条項を導入した。まだ広く適用されていないが、規制当局は圧力を強めている。米証券取引委員会(SEC)は15年、「誤って支給された成果連動型報酬の返還を経営幹部に義務付ける規定を導入する」ことを上場企業に求めた。この改革は2~3年内に実行に移されることになっており、7年分の報酬が対象になる。これとは別に、英国の規制当局は、10年分の報酬の返上が可能になるよう銀行に求めている。
このため、今やほかの銀行も不祥事に見舞われた場合には、ウェルズ・ファーゴの対策をまねる可能性が高い。実際、株主が次第にこの種の措置を要求するようになるだろう。
だが実に興味深く、今、最も注目すべきは欧州、特にドイツで何が起きるかだ。ドイツ銀行は金融危機発生前に、米国内で住宅ローン担保証券(MBS)を不正に販売していた件で、米司法省から140億ドルの罰金支払いを求められていることが9月15日に明らかになった。これを受け、同行の株価は9月下旬、30年ぶりの安値に落ち込んだ。ドイツ銀の経営幹部は、最終的な支払額を30億ドル近くに圧縮してもらおうと当局と交渉中だ。だが、たとえ交渉に成功したとしても、同行のバランスシートには穴が開くことになる。ドイツ銀の株式時価総額は160億ドルしかないからだ。
ドイツ銀は株式を使ったり資産を売却したりして、この穴を埋めることができるが、もう一つ、この穴を小さくできる選択肢がある。それは過去に与えた報酬の没収だ。

金融商品を不正販売したことに対して米司法省から巨額の罰金を要求されているドイツ銀行=ロイター
■1700億円以上没収可能か
例えば、調査会社オートノマス・リサーチのアナリスト、スチュアート・グレアム氏は、社員や幹部にすでに与えると約束した報酬のうち現時点でまだ権利が行使されていない株式に連動した報酬分を取り消し、さらに16年のボーナスも払わないことにすれば、15億ユーロ(約1700億円)ほど調達できると試算する。
元従業員の間には、ドイツ銀が徹底して強気に出れば、はるかに大きな金額を回収できるとみる向きもある。同行は06年と07年に総額40億ユーロ、08年に同20億ユーロに上るボーナスを従業員に払ったと彼らは言う。
驚くまでもなく、こうした話はドイツ銀の幹部らを内心、震え上がらせている。もちろん欧州の他の銀行の幹部も同じ気持ちだろう。欧州では銀行業界はすでに「投資に値しない」とのレッテルが貼られているだけに、彼らは過去の報酬をこれほど大規模に返上させるクローバックは、ますます人材の引き留めを難しくし、銀行業というビジネスモデルと、その価値をさらに損ねることになると主張する。極めて厳しい報酬没収については法廷闘争に持ち込まれることになるだろう。というのも、ドイツ銀には確かにクローバック条項が存在するものの、それは主に権利未確定の株式に連動した報酬を対象にしたものだからだ。
しかし、ウェルズ・ファーゴの取締役会の今回の動きと、ドイツで高まる金融機関への政治的な怒りから、ドイツ銀が行動を迫られる可能性は高まっている。当然だ。銀行員が高額報酬を含め、自分たちの稼ぐ手腕をあくまでも正当化するのであれば、彼らは株主や納税者とリスクをどう分けるかを真剣に考える必要がある。
金融機関やそこで働く人々が本当に再び信頼を勝ち取るには、そうした対策が不可欠だ。これらの改革が効力を発揮するのに、これほど時間がかかったのは極めて残念なことだ。報酬返上という取り決めが10年前に整備されていたら、ドイツ銀やウェルズ・ファーゴなどの不祥事はそもそも発生していなかったかもしれない。クローバックには、文字通り、クロー(かぎ爪)が必要だ。
By Gillian Tett
(2016年9月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
滝田記事
ドイツ発の金融不安が世界を駆け巡っている。ドイツ銀行やコメルツ銀行など大手行の経営問題が、金融・株式市場で警戒感を増幅させている。バブル崩壊後の日本を想起させる出来事。悩ましいのは当時よりもグローバルな連鎖の度合いが格段に大きいことだ。

ドイツ銀行の株価が急落するなど欧州銀行部門の財務健全性への懸念が高まっている=ロイター
「経営再建は順調に進んでおり、経営不安説には根拠がない」。9月7日、都内でインタビューした際、ドイツ銀のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)は、そう語っていた。
英国の金融界出身のクライアン氏は、ドイツ銀の再建を託されて2015年7月にCEOに就任した。過去のしがらみを断ち切って「複雑すぎる業務内容の簡素化」を掲げるクライアン氏が、隠し立てをしているとは思えなかった。
だが、悪いときには悪いことが重なる。今度は米国で05~07年に販売した住宅ローン担保証券(RMBS)の不正販売を巡って、米司法省から巨額の和解金を吹っかけられる。
その金額は最大140億ドルで、円換算すると1.4兆円である。和解金の要求規模が明らかになる前のドイツ銀の時価総額が180億ドルだったから、いくら何でも払いきれない。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが「金融システムをリスクにさらす米当局」という社説を掲げたのもうなずける。
和解金問題については、54億ドルに減額されるという関係者の話を、AFPが伝えた。この金額だとドイツ銀は何とか対処できようが、増資をしてもなお自己資本が不足するようなら公的資金(税金)を投入するほかあるまい。ところが欧州連合(EU)の決まりでは、その前に銀行の債券保有者などが身銭を切ることを求められる。

そもそもリーマン・ショック後の欧州で、公的資金投入を強く批判してきたのはメルケル首相の率いるドイツだった。地方選挙で敗北を重ねるメルケル政権は、この問題をとても切り出せない。ドイツ銀の経営陣も自力再建を繰り返す。
潜在的な自己資本不足というソルベンシー(支払い能力)の問題は、経営破綻した際の保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料にはね返る。加えてヘッジファンドの一部が、保有する上場デリバティブの一部を引き揚げ始めた。
カウンターパーティーリスク(取引相手としての危険性)が強く意識されだしたのだ。こうした動きが資金取引にも広がるようだと、銀行経営の命綱であるリクイディティー(流動性)が枯渇しかねない。
問題はドイツ銀だけにとどまらない。コメルツ銀も従業員の5分の1に当たる大規模なリストラと配当停止を打ち出さざるを得なくなった。日本でも大手行が軒並み崖っ縁に追い詰められた、1990年代末から2000年代初をほうふつとさせる事態だ。
当時の日本と違いドイツ経済は欧州主要国では最も好調で、ドイツ企業の国際競争力も高い。財政も健全である。経常黒字が国内総生産(GDP)の8%にのぼることもあって、いざ金融危機が起きても国内の資金だけで対処できる。
ただし日本と同様に、ドイツは銀行融資を主体とした間接金融が優位の経済である。大手行の屋台骨が揺らぐと借り手である企業の打撃は大きい。欧州経済の覇者であるドイツに依存する、ユーロ圏諸国の景気にも下押し圧力がかかる。

さらに悩ましいのは、かつての邦銀と異なり、ドイツ銀が国際的な金融システムの中心に位置することだ。国際通貨基金(IMF)が6月に発表した、ドイツに対する金融安定審査報告でも、このシステミックリスクを重視した。
グローバルな金融システムに及ぼす影響の度合いは、世界の主要金融機関のなかで、ドイツ銀が最も大きい。その銀行に万が一のことがあれば、火の粉は思わぬ所に飛んでくる。
日本にとってさしずめ懸念されるのは円の急騰だ。海外での投融資を積み増してきた邦銀もドル資金調達に火が付きかねない。米当局には法外な和解金を自制し、ドイツ当局には金融危機を未然に防止するという、当たり前の対応を望むばかりである。
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