3/30日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「AIIB」で中国陣営に飛び込んだ韓国 中国の挑戦に揺らぐ国際秩序を真田幸光教授に聞く』と3/30宮崎正弘『中国のアジアインフラ投資銀行への大いなる疑問 本当の中国の狙いを誤解していないか』記事について

ロシア・台湾も参加を表明しました。日本は菅官房長官が「現時点ではない」と明言しました。正しい選択と思います。中国人の基本的価値観はいつも言ってますように「騙す人が賢く、騙される人はバカ」です。宮崎氏の言うように本当に中国に出資できる金($)があるのかどうか。かなり怪しいのでは。「三重帳簿」が当たり前の国、李克強がいみじくも言ったように中国のデータは殆ど信用できません。各国から出資金を集めて使い込み、監査で蓋を開けてみたら何も残っていなかったという風になるのでは。孔子学院も欧米では閉鎖の動きになっているのは、学院とは名ばかりで中国共産党の政治宣伝、思想刷り込みの道具として使われているからです。

でもヨーロッパの大国が軒並み参加表明したのは、確かに米国の傲慢さに対する不満表明でしょう。それと、オバマであれば怖くないと思われたところに米国の威信の凋落を見ます。英国が情報を中から取るのはどの程度期待できるかどうか。エリザベス女王が国家元首でない李首相と会わされたくらいですから。ただ、ロスチャイルド家は損をさせられるのを嫌うはずですから中国がそう動けば反撃に出るでしょう。ユダヤVS中・露になるかも。

韓国はTHAADも断るかもしれません。オバマには止められる力がないと。韓国産MDなんて当てになりません。そんな技術があるとは思えません。国防総省もそうなれば在韓米軍撤退の動きとなるでしょう。北の侵攻は中国様が抑えてくれると思っているかもしれません。でもロシアが囁くかもしれません。「今がチャンスだ」と。「油も供給するぞ」とも。日本は何が起こっても大丈夫なように準備をしておかないと。

日経記事

雪崩打った米の同盟国

—3月26日、韓国政府がAIIB参加を正式に発表しました。中国は直ちに歓迎の意を表しました。29日現在、40カ国以上が参加を決めています。

真田:中国は「してやったり」と考えているでしょう。2014年10月に北京で設立の覚書に調印した時、参加を表明した21カ国の中に米国の主要な同盟国はありませんでした。米国がAIIBを警戒していたからです。

 ただ今年3月12日に英国が手を挙げると、独、仏、イタリアといった欧州の同盟国も相次ぎ参加を宣言。そして「締め切り」の3月末を目前に、防衛を大きく米国に依存する韓国までが加わったのです。

英国のおかげで滑り込みセーフ

鈴置:2014年5月に中国から勧誘された時、韓国は何の疑いもなく参加するつもりでした。経済面では米国以上に中国との関係が深くなったからです。しかし直後の同年6月に米国が強く制止したので、米中間で板挟みに陥っていました。

 韓国紙によると米国は「友邦としての信認度に影響する」とまで韓国を脅したようです(「ルビコン河で溺れる韓国」参照)。

 ただ、米国の欧州の主要同盟国が雪崩を打ってAIIBになびいたので「もう、参加しても米国から睨まれない」と韓国は判断したのです。

 韓国政府の発表文では「AIIB運営に関する不透明性への疑念が薄れたから」としています(聯合ニュース・日本語版=3月26日=「韓国政府 中国主導投資銀行への参加決定」参照)。が、それは言い訳に過ぎません。

—予想もしなかった英国の参加のおかげで、韓国は米国の怒りを買わずにAIIBに滑り込めた、というわけですね。

「ADB潰し」どころか……

鈴置:韓国各紙の記事からは「思いがけない方向から助け舟が来た!」との、ほっとした空気が伝わってきます。米中どちらの言うことを聞くべきか判断がつかず、韓国政府も先送りしてきましたから。

 さて、真田先生に質問です。そもそもAIIBの本当の狙いは何なのでしょうか。中国はアジアのインフラ開発に資金を提供するのが目的と説明しています。

 でも本音は、米国と日本が主導するアジア開発銀行(ADB)を抑えて、金融面からもアジアを支配することにあると疑う向きが多いのです。

真田:中国の狙いは「ADB潰し」どころか、もっと大きいと思います。私は既存の、米国を中軸とする国際金融体制への挑戦と見ます。

 戦後の国際金融秩序を司ってきたのは3つの国際機関です。復興、開発を担当してきた世界銀行グループ、為替の監督管理、ルール作りを担当する国際通貨基金(IMF)、そして貿易と投資の管理監督を担当する世界貿易機関(WTO=旧GATT)です。

 AIIBはこの3つと当たってくる――競合しそうなのです。インフラ開発も消費も伸びる余地が大きいアジアで、まず自身が主軸となって投融資する形を作る。

 それをテコに自らに都合のいい、為替なり貿易・投資を仕切る国際秩序を作っていく――というのが中国の大戦略と思います。ADBは世銀グループの地域金融機関に過ぎません。

 もちろん米国が主導する秩序はすぐには崩れません。が、それを揺るがす可能性を秘めた、新たな組織が生まれようとしているのです。既存の体制を守る側としては、懸念を持つのが当然です。

ドル支配体制を崩す

—人民元の国際化が狙い、という人もいます。

真田:もちろん人民元の国際化は、米国に対する挑戦の一部です。

鈴置:「AIIBはドル建てで出資し、融資すると中国は言っている。人民元の国際化にはつながらない」と主張する人もいます。

真田:それは国際金融の実務を知らない人の見方です。ドル建てにするかではなく、ドルの決済機能――Reimbursmentと呼びますが、――をどこに置くかがポイントなのです。

 もし中国が決済機能をドルの発券国である米国に置くのなら、人民元のデビューは当面はないと見ていいでしょう。一方、中国に置くのなら、人民元を国際通貨にする布石だな、と読むべきです。

 決済機能を米国に置くということは、日常の取引をすべて米国にモニタリングされる――情報を吸い上げられることを覚悟せねばなりません。さらに、いざという時に米国による資金凍結のリスクを冒すことを意味します。

 反対に中国に決済機能を置いておけば、米国から覗かれないし、資本を“人質”にとられないで済む。中国はAIIBの決済通貨を人民元に切り替えるチャンスを探っている、と考えるべきでしょう。

米国も中国に踏み絵

真田:貿易など実態経済では、人民元が日ごとに使われるようになっています。AIIBの借り手からも「ドルより使い勝手がいい人民元で貸してくれ」と言われる日が来るかもしれません。となれば当然、人民元で預かります――ということになる。

 今は「ドル建てで調達、融資をする」なんて言っても、いつまでもそうとは限らないのです。

鈴置:中国の言うことをそのまま信じるのはあまりにお人好し、ということですね。では米国は、中国に対し「決済機能を米国に置け」と要求するのでしょうか。

真田:そう思います。もちろん裏で、でしょうけれど。この踏み絵を突きつけて中国の真意を探ると思います。

 中国もまだ米国が怖いのかもしれない。それなら米国の要求を受け入れるでしょう。この辺はどちらに転ぶのか、分かりません。

英国の参加は驚き

—話を少し戻します。大方の予想に反し、英国はなぜ参加を決めたのでしょうか。

真田:英国の参加は私にとっても驚きでした。先ほど申し上げた、戦後の国際金融秩序の仕組み――ブレトン・ウッズ(Bretton Woods)体制――は米英が作り、協力して維持してきたからです。

 英国の参加の理由は2つ考えられます。まず、中国の実態経済の拡大に裏打ちされたAIIBはもう、止められない――と判断して「それなら中に入ってチェックしよう」「英国と同様に中国の意図を疑う国と一緒に、必要なら内側からブレーキをかけよう」と考えたと思われます。

 もう1つは、国際金融の分野で米英両国の間に溝ができていて、英国が米国の身勝手な行動に警告を発した、との分析です。

「横暴な米国」への不満

鈴置:米国がそんな無茶をするでしょうか。

真田:もちろん理由なしにはしません。でも現実にはこの人質が結構、モノをいうのです。

 例えば最近、米政府が「マネーロンダリングのチェックが不十分だった」として、欧州や日本の銀行に巨額の罰金を払わせています。これだって人質があってこそ、皆がいやいやでも支払うのです。

 もちろん、英国をはじめとする欧州各国からは「米国の横暴」への批判が高まっていました。現実には完全にマネーロンダリングを防ぐのは難しいからです。

 国際政治の面でもそう言われますが、国際金融でも米欧間に亀裂が広がりつつあると私は見ています。

—その2つの理由、米国との協調と米国に対する牽制、全く方向が反対ですね。

日本の叩頭を待つ中国

真田:ええ、でも現実はこの2つが相まったのではないかと思います。いずれにせよ、英国の決断は米国にとっては寝耳に水だったようです。米国は慌てています。

 3月22日、シーツ(Nathan Sheets)米財務次官が「既存の国際機関とAIIBの協調融資」に言及しました。中国との妥協策を模索し始めた、ということでしょう。

 日本はさらに大慌てです。AIIBに否定的だった米国についていってハシゴを外されかけているからです。麻生太郎財務相が3月20日に「(条件付きで)協議の可能性はある」と言ったのは、その動揺を映しています。

 中国は韓国には参加を積極的に呼び掛けてきました。半面、日本に対しては大声で誘ったりしませんでした。理由は2つと思います。まずは、呼び掛けてもどうせ参加しないだろう、との判断。

 もう1つは日本が困って入りたい、と頼んでくるのを待つ作戦です。その時、中国は「入りたいなら頭を下げて来い」と言えるのです。

 すると、日本国内に「頼りない米国一辺倒の外交政策でいいのか」との声を起こせるわけです。

鈴置:反・安倍勢力からは、もうそうした声が出始めています。

 世界中の民間銀行がドルの決済機能を米国に集中させています。具体的には米銀の口座にドルを預け、他行との取引はこれを通じて行うのです。この方法が一番効率的だからです。

 しかしこのドルは、いざという時は米国から人質に使われる可能性があります。米国政府から国内法を使って口座を凍結されたら終わりなのです。どんな金融機関も、ほぼ間違いなく倒産します。

中印に次ぐ3位目指す

—もともと参加したかった韓国は大喜びのようですね。

鈴置:正式に参加表明する前から、韓国の政府関係者は「中国、インドに次ぐ出資比率を目指す」とメディアに漏らしています。AIIB内での重みを増す作戦です(韓国経済新聞・日本語版=3月24日=「韓国、AIIB持分6%得てこそ実益確保」参照)。

真田:中国は陸路と海路で欧州と連結する「一帯一路」構想を打ち出しています。その資金を提供するのもAIIBの大きな役目です。

 海外建設が得意な韓国は、AIIB加盟で「一帯一路」プロジェクトの受注につなげたいのでしょう。プロジェクトの情報もいち早くとれるようになりますし、AIIBが融資するのなら工事代金も取りはぐれの危険性が大きく低下します。

韓国はAIIB参加に加え、米中双方からもう1つ「踏み絵」を突きつけられていました。終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)です。これにはどう影響しますか(「米中星取表」参照)。

 

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年3月29日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 韓国国防相は一度は賛成したが、中国の反対で後退
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

鈴置:「AIIBでは中国の言うことを聞くことになりそうだから、THAADは米国の言うことを聞こう」――との声が韓国では高まっていました(「『こちらに来るなら3月中』と韓国を急かす中国」参照)。

 「経済は中国頼み、防衛は米国頼み」というわけです。韓国が日本とのスワップを続けなかったのも、まさにその意図からでした(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。

「もっと中国側に来ても大丈夫」

鈴置:でも「AIIBで米国が中国に完敗した」という認識が深まると「経済も防衛も中国」になりかねないと思います。実際、AIIBに参加を宣言しても、韓国は米国から怒られなかった。

 「米国はもう怖くない」との空気がソウルに広がれば、THAADを在韓米軍に配備したいとの米国の希望を、韓国はもっと露骨に無視するようになるかもしれません。

 つまり、防衛も「弱い米国」から「強い中国」に鞍替えするわけです。地政学的に脆弱な場所にある韓国という国は、世界の覇権交代に極めて敏感なのです。

 そんな韓国人の心情を見透かしたように、中国が揺さぶりをかけています。3月27日の環球時報・社説「韓国はバランスをとって良い決断を下した」(中国語)は以下のように主張しました。

  • 英国から韓国までが相次いで米国の主張する国際金融秩序から離れるということは、米国と同盟国の間で義務の範囲が再検討されることを意味する。

 要は「米国の同盟体制にひびを入れることに成功した」という中国の勝利宣言です。そして「もっと中国側に来ても問題はない」と韓国を誘っているわけです。

 韓国のメディアもこの「離米」を呼び掛ける社説を引用しています。朝鮮日報の「中国『韓国は難しいバランスを選択』」(韓国語、3月28日)がそれです。これを読んで心を動かした韓国人もいたことでしょう。

トルコが中国製MD導入

真田:同感です。下手すると、AIIBで米国は日本を道連れに孤立します。それ以前から米国の指導力は落ちていました。例えば、ロシアによるクリミア併合でも弱みを見せた。

 それなのに米国は依然、ロシアにも中国にも強気で対して、AIIBで返り撃ちにあった。欧州との間も政治、金融両面で溝ができている。米国の弱さが明らかになりつつある今、韓国は立ち位置を変える可能性があります。

 こうした情勢の中で3月19日、中国メディアが「トルコが中国のミサイル防衛(MD)システムを購入する」と報じたのが、気になっています。

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国であり、米国の中東における戦略拠点です。そのトルコが中国のMDを導入する可能性が出てきたのです。韓国が「そのうちに中国は我が国にもMDを売り込みに来る」と考えても不思議ではありません。

鈴置:仮の話ですが、そうなったら韓国はTHAADでの決断を避けるための材料に利用できますね。

 中国製MDと米国のTHAADが、韓国という土俵の上でがっぷり四つになる。するとTHAAD配備問題も米中間の交渉のテーマになるから、自分は板挟みから逃れられる――と多くの韓国人が考えるでしょう。

 韓国には「THAADの配備問題で、米中双方から責め立てられる我々は被害者だ」との意識が根強い。「米中で話し合って決めてほしい」との声がもともとあるのです(「中国の掌の上で踊り出した韓国」参照)。

奇手で「離米従中」を加速

—中国と交渉する前に、米国は韓国に対し疑いを持ちませんか? 裏で中韓が結託しているように見えますから。

鈴置:第3者はそう思います。ただ、韓国は追い詰められています。AIIBの問題は英国のおかげでなんとか切り抜けられた。が、THAADではそうもいかない。わらにもすがる心境です。

 米国から疑われようが中国から苛められなければいい、と韓国人は思うでしょう。「習近平主席がTHAAD配備に反対しているのだぞ」と韓国は言い渡されているのです。

 配備をのんだら、中国から何をされるか分かりません。米国が中国と直接取引してくれれば、中国の怒りは避けることができます。

 そのうちに反米色の濃い左派は「中国に頼もう」と言い出すでしょう。普通の人もそれに乗るかもしれない。

 北朝鮮の核ミサイルを防げるなら、米国製のTHAADでも中国製MDでも同じ、との考え方だってできるからです。そうすれば、経済と防衛の腸ねん転を解消してすっきりできるわけですし。

 要は北京が「中国製MDの韓国配備」という奇手を繰り出せば、AIIBに続きTHAADの問題でも、韓国の「離米従中」を一気に加速させ得るのです。

「混乱がチャンス」の韓国

—韓国は大変ですね。

真田:ええ。でも、日本人が考えるほどではないかもしれません。日本人は「安定」が好きで「混乱」を嫌います。でも、韓国にとっては混乱こそチャンスなのです。

 米中の力関係がシーソーのように揺れれば、その間隙を縫って生存空間を増せる、と韓国人は思うのです。韓国の指導層の中には「もっと荒れろ!」と願っている向きもあると思います。

—混乱が苦手な日本人は、この混乱をどう生き抜けばいいのでしょうか。

真田:以下、唐突に聞こえるでしょうが私の持論です。英国との関係を十二分に深めるのです。英国を通じて欧州との連携も強化できます。

 英国は地力のある国です。日本が及びもつかない情報力と金融力を持っています。AIIBに関してもゲームを動かしました。日本人は英国の力を過小評価しています。

 ありがたいことに英国は王様のいる国で、皇室をいだく日本には親近感を持ってくれている。「新・日英同盟」を組むのです。

「新・日英同盟」のススメ

鈴置:「新・日英同盟」を結ぼう、とは真田先生が『世界の富の99%はハプスブルク家と英国王室が握っている』などで展開されてこられた主張ですね。

真田:米国一辺倒が危ない、といっても日本は中国とは組めない。接近するのさえ難しい。中国の日本敵視策は容易に変わらないからです。そこが韓国とは大きく異なります。

 でも日本だって、今始まった世界秩序の混乱を、変化と飛躍のチャンスと考えればいいのです。いや、そう考えないと生き残っていけないのです。

宮崎記事

 日本の国際情勢分析や論調はいつもおかしいが、今回の中国共産党主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加表明しない日本は選択を間違えているという、恐ろしくも正反対の議論が突出しており、ばかばかしいにも程があるという感想を抱く。そのまとめとして本稿を書く。

 第一に、中国が目ざす「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)なるものは「国際金融機関」ではなく中国共産党の世界戦略にもとづく「政治工作機関」であるという本質をまったく見ようともしない不思議である。

 第二に、あわよくば米国主導のブレトンウッズ体制(つまり世界銀行・IMF体制)に変わる中国主導の金融秩序構築を模索するものであること。すなわちドル基軸体制に真っ向から挑戦し、人民元基軸体制をアジアに構築しようという壮大な野心から生まれた、きわめて大風呂敷の構想であることである。

 第三に、この銀行を設立することは中国経済のひずみを解決するための出口でもあることだ。

すなわち余剰生産の鉄鋼、セメント、建材、石油副産物などの国内在庫を一斉するための吐き出し機関ともなりうるし、失業対策になやむ中国が諸外国にプロジェクトを持ちかけ、それをファイナンスすることによって大量の中国人失業者を海外へ送り出せるメリットがある。

 この点を吟味する分析が日本ではあまりにも少ない。

 ▼外貨準備世界一のトリック

世界中が幻惑されたのは、中国の外貨準備が世界一という数字のトリックだった。

中国の外貨準備は3兆4830億ドル(14年末)とされるが、ちょっと待った。CIA系シンクタンクの調査ではすでに「不正に外国へ持ち出された外貨」が3兆7800億ドルである。

つまり表向き、あることになっている「外貨準備」、じつは底をついているのである。その証拠に中国は米国債の保有額を減らしている。日本がまもなく世界一の座を復活させるだろう(15年一月末で日中間の差は50億ドルしかない)。

また中国の国家ファンドが保有した筈の日本株式はすでに売り払っているうえ、じつは中国は猛烈に海外から外貨を借りまくっている。外貨準備増加額より外国金融機関からの借り入れ額が上回っている。

こうして不都合なデータを中国は巧妙に伏せていることに特大の注意が必要である。

 ところが、日欧のメディアはアジアインフラ投資銀行に対して過剰な評価をし始めた。

IMFのラガルデ専務理事もADBの中尾武彦相殺も「協力できる可能性はあるかもしれない」などと発言のニュアンスが対立型から様変わり、日本の麻生財務相は「入らないと言っているわけではない」と融資条件や運用方法の透明性を問題視した。

 そう、「透明性」が最大の問題で、理事会に日欧が入り込む隙間のない独裁となるだろうから、融資条件の開示させない段階で加盟するなどというのは政治的発言か何か別の思惑があり、日欧の発言をよくよく吟味すれば「加盟しない」と発言しているのである。

 中国経済分析で世界的に有名なエリザベス・エコノミー女史は「はじめからお手並み拝見で、AIIBはAIIBと割り切って放置すれば良かった。米国の反対声明がかえって、中国の銀行設置に力を与えた」と皮肉る。

 もとより「アジアインフラ投資銀行」に英独仏伊が参加表明したため、豪、デンマークなど合計41ヶ国が参加することとなった(3月30日現在)。

英紙「フィナンシャルタイムズ」は、米国オバマ政権に「失望」が広がっていると報道し(3月19日)、対照的に中国語の媒体は「英国の決断」などとし、同行に加わらない日米に冷淡な分析をしている。中国としては政治的得点になる。

だから日本のマスコミはますますおかしな論調となる。

たとえば日本のイエローパーパー『日刊ゲンダイ』が、日本の立場を徹底的に批判し、中国主導のアジアインフラ投資銀行に参加表明したドイツ、フランス、イタリア、そして英国に先を越され、日本政府が無能ぶりを天下に曝したと報じたことが、中国メディアは嬉しくて仕方がないらしい。同紙が『日本の完敗』と書いたことがよほど気に召したらしいのだ。

▼英国のホントの参加理由はシティ・ルールが守られるのか、どうかだ

もうすこし状況を把握してみよう。

英国の思惑は次の三点に集中している。

第一はMI6をいう情報機関をほこる英国にはそれなりのインテリジェンス戦略から発想される政治的計算がある。

英国にとってAIIBに加盟を表明しないことには情報が得られない。その高度の情報を同盟国である米国に提供できる。

そもそも世界金融を差配しているのはウォール街である。そのウォール街の論理はグローバリズムであり、そのルールを決めているのは英国のシティである。

英米がシティ・ルールを破壊するような行為に中国がでれば、いつまでも協力的態度をつづけるか、どうか。

第二に加盟国となれば、AIIBの規則や条件に英国が(独仏伊豪も)注文や条件を付けられる。つまりシティのルールを尊重してくれるのか、どうか。欧米が警戒するニカラグア運河への投資なども、中国の猪突猛進的融資には激しく反対することになるだろう。

第三が「ウィンブルトン方式」である。

英国はすでに二年前からシティにおける人民元取引をみとめ、同時に中国国債も取引されている。おなじくフランクフルト市場でも。これは「ウィンブルトン方式」と言われ、市場関係者からみれば「貸し会場ビジネス」である。つまり有名なテニスの世界大会を開催し、たとえイギリス選手の活躍がなくとも、集まってくる人々(外国籍の)が落とすカネが魅力であるという意味である。

こうした文脈からいえば英国のアジアインフラ投資銀行に参加表明も、そこにシティとしてのビジネス拡大の可能性を見たからであり、対米非協力への傾斜という政治的思惑は薄い。

ならば独仏など「ユーロ」加盟国の反応はどうか。

ユーロを主導するドイツは、これが人民元市場ではないことを見抜いた。

イタリアとフランスの参加表明はユーロが米ドルよりも強くなれば良いという斜に構えた動機であり、また加盟すれば幾ばくかの情報が取れるという打算に基づく政治的行動だろう。

▼アジアの資金渇望を中国は巧みに衝いた

さて米国は嘗て宮沢政権のおりに、日本が設立を目指したAMF(アジア通貨基金)を構想の段階で横合いから強引に潰したように、中国主導のドル基軸に挑戦するような国際機関の動きには警戒している。

基本的動機は戦後の世界経済を牛耳るブレトンウッズ体制(つまり世界銀行・IMF体制)に中国が挑戦してきたと認識が強かったからである。しかし米国は中国の動きを牽制したが、潰そうとはしなかった。それだけ日本は押さえ込める自信があっても、中国を制御する政治力は、もはや米国にはないということでもある。

繰り返すが中国がアジアインフラ投資銀行を設立する思惑は(1)人民元の拡大と(2)アジアにおける人民元の覇権、(3)中国主導のアジア経済訂正の確立という、金融帝国主義であり、南シナ海での侵略行為によって四面楚歌となった政治状況を、カネを武器に主導権の回復を狙うものである。

インフラ整備の資金調達になやむアセアン諸国ならびにインド経済圏は喉から手が出るほど欲しい資金を中国が供与してくれるのなら政治的行動は抑える。露骨なのはカンボジア、ラオス、タイ、インドネシアなどだ。つまり反中国でまとまりつつあったアセアンの団結への動きを、中国はみごとに攪乱しているのだ。

だが裏側はどうか。

この新銀行は貸し付け条件も金利の策定方法も、審査方法もまったく白紙の状態であり、基本的に銀行のガバナンスを知らない国が国際銀行業務をスムースに展開できるのか、どうかが疑問視されている。

つまり日本が経済制裁をしている北朝鮮への融資を中国が勝手に決めた場合などが早くも想定され、強く懸念される。

アジア諸国の港湾浚渫など整備プロジェクトや鉄道輸送に力点をおいた融資を行うだろうが、それはアジアにおける中国の軍事戦略「真珠の首飾り」を実行するための経済面からの補完手段である。港湾を中国は将来の原潜や空母寄港地として利用する魂胆も見え透いていないか。

▼アジアインフラ投資銀行に参加表明しないのが得策だ

AIIBにはいくつかの致命的欠陥がある。

第一に人民元の拡大を狙う同行の資本金が米ドル建てという不条理に対して納得できる説明はない。

くわえて同行の本店ビルは北京で建設が始まったばかりで、どう最速に見積もっても2017年度ごろに完成である。

第二に資本金振り込みにも至っておらず、拙速の開業があっても2016年、そのころに中国の外貨準備が潤沢のママであろうか?

第三に中国の外貨準備が激しい勢いで減速しており、いずれ資本金振り込みさえ怪しい雲行きとなりそうなことに誰も懸念を表明しないことは面妖というほかはない。

いずれアジアインフラ投資銀行は空中分解か、最初の貸し付けが焦げ付き、増資を繰り返しながらの低空飛行となるだろう。日本は歯牙にもかける必要がないのである。

そして設立まではやくも不協和音が鳴っている。

ロシアは参加表明をしない方向で検討していた事実が浮かんだのである(多維新聞網、3月26日)。

ロシアのセルゲイ・ストルチャク財務副大臣は「ロシアは過去一貫して米国の金融支配に反対し、新しい国際機関の設立を呼びかけてきたので、AIIBの主旨には賛同する。しかしながら、この新組織にロシアが加盟するかどうかは未定である」と記者会見した。

第一に中国主導の度合いは拒否権に象徴されるが、ロシアが中国の風下に立つ積もりはない。

第二に英独仏など西側が加盟すると、ウクライナ問題でロシア制裁中のかれらが、ロシアの要望する融資案件には反対にまわるに違いない。ロシアは原油価格暴落以後、多くのプロジェクトが足踏み状態にあり、資金重要が強いが、逆に英独仏が対ロ融資に反対すれば、ロシアが加盟する意味がない。

第三に大国の政治力は単に金融力でははかれず、ロシアは軍事大国であり、その矜持がある。ロシアと中国の絆は軍事、政治的結びつきが強く、金融面での協力関係はそれほど重要とは言えない。

とはいうもののロシアは現在14の飛行場を建設中のほか、160キロの地下鉄、ハイウェイなど160件のプロジェクトを推進もしくは計画中で、2000億米ドルが必要と見つもられている。

さらにややこしい問題はロシアが一方で期待する「BRICS銀行」にしてもブラジル、インドより、ロシアのGDP成長は遅れており、そもそもロシアとブラジルは原資負担にも追いつけない状況となってしまった。

BRICS行も設立そのものが危ぶまれ始めている。

空手の稽古

新宿コズミックセンターにて。
久し振りに全員揃いました。
五十代後半から六十代前半です!

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     ナイフアンチ

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     クーシャンクー

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     セイシャン

靖国の桜

靖国神社へ行って来ました。満開の桜でした。白人のおばあさんが祈りの場所で写真を撮ろうとしたので、no photoと言うとforbidden?と言ったのでforbiddenと返したら止めました。

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3/30  Andy Chang 『傍若無人なヒラリー前国務長官』と日経FT『歴史問題を超えて 』記事について

メデイアとは世界各国で腐っている業界と言わざるを得ません。本両記事を読むと記者の傲慢さが窺えます。ヒラリーについては「報道しない自由」をメデイアが発揮していて、日本の報道機関が度々行使するものです。真実の追究、正義の実現から程遠い世界です。「金」が総てで動いているか(他国から金を貰っているのか)、左のイデオロギーで動いているのか、出世のためなのか動機は分かりませんが、複合的なものかも知れません。日米ともに民主党は本当にダメな政党なのに、両国ともメデイアは追及しません。共和党のニクソンの場合、ウオーターゲートであれだけ叩かれ、ボブ・ウッドワードやバーンスタインが持て囃されたのに、今回のヒラリーがメデイアから何も追及されず、無罪放免に成るのはおかしい。米国史上初の女性大統領を作ろうとしているのかもしれませんが。でも女性大統領・首相なんて世界には既に何人も出ています。司法長官が動かない場合は日本で言えば法務大臣の指揮権発動と同じ。その場合日本では大騒ぎになるような気がします。三権分立の侵害とか言って。米国は民主主義の先進国とは言えません。金で動く国です。日米戦争もそうでしたし、ヒラリーは中国人からの違法献金を受けていました。

FT記者は自国の歴史をどう認識しているのか聞いてみたい。植民地をあれだけ持っていて、第二次大戦というキッカケがなければ、植民地の経営を手放すことはなかったのでは。インドが独立したのは1947年8月15日です。2回の大戦によりイギリス経済が衰退し、力で抑えることができなくなったためです。仏・蘭は戦後越・印尼と戦争してやっと独立を認めただけで、道徳的に反省して手放したわけではありません。そんな彼らは歴史において説教できる立場ではないのに、平気でやるわけで厚かましいとしか言いようがありません。基本的には白人優位思想、人種差別があると見て良い。まあ英国も中国に擦り寄るようなご時世ですから(AIIBや女王の元首でない李首相との面談とか)。基本は金で動いている(Follow the money)のでしょう。

Andy記事

どうしてアメリカの大新聞、三大テレビはこんなにもヒラリーに寛容で、ヒラリーの違法行為を報道しないのだろう。ヒラリーのスキャンダルは共和党系とレッテルを貼られたFoxnewsしか報道しない。メディアは知らないのではない、報道しないのである。

ヒラリーの態度を見ればふてぶてしい、数々のスキャンダルは違法を承知でやった、報道されても平気。メディアはなぜか彼女の違法を隠蔽、またはヒラリーを畏怖しているとしか思えない。

過去30年、アメリカはクリントン夫妻の度重なるスキャンダルを断罪できなかった。メディアはヒラリーのスキャンダルを報道せず、彼女が次の大統領になるだろうと報道している。こんなに悪い奴がなぜアメリカでまかり通るのかと不思議に思う。アメリカの政治に正義はなく、メディアも加担しているとしか言えない。

何人も法の上に立つことはできない(Nobody is above the law)と言う。ところがオバマ政権になったらオバマ大統領、ホールダー司法長官、クリントン国務長官、みんな揃って平然と法を犯し、お互いにカバーし合っている。こんな奴らはまさに「外道」である。

この数週間にFoxnewsが報道した違法行為は大まかに分けて三つある。メール送信の違法と隠蔽、ベンガジ事件の隠蔽と調査拒否、そして外国の献金問題である。

  • メールの違法送信問題

ヒラリードットコムと呼ばれる違法行為は、(1)公務に政府規定の公用メールを使わず私用メールを使った。(2)引退後、規定に従わず私用メールの提出をしなかった。(3)印刷したメールの提出と不都合メールの消去の疑惑。(4)個人サーバーを使い、サーバーの提出を拒否。

アメリカ政府の規定では、公務引退後、OF109と呼ぶ公式宣誓書を提出しなければならない。OF109とは政府の役人が引退する際に、公務関係の資料一切を提出し、私有していないと誓った証書である。

国務院のジェン・サキ報道官は3回もこの問題を追及されて、知らない、まだ調査中などとしどろもどろの返答を続けていた。4回目になって遂にヒラリーはOF109宣誓書を提出しなかったと発表した。国務長官が犯した明白な違法行為である。

また、政府側にもOF109に対応するDF1904と呼ぶ証明書があり、引退した公務員が公務関係資料を全部提出したと証明する文書である。

サキ報道官はこの文書が国務院側に存在しないと白状した。つまり国務院側もヒラリーの違法を放縦したのだ。なぜだ?ヒラリーの責任はもちろん、国務院側もヒラリーの違法を放縦した責任を追及されるべきである。オバマ政権は何を隠そうとしているのか。

サキ報道官は、数週間も記者会見でヒラリーの疑惑を追及されていたが、昨25日、国務省からホワイトハウス報道官に転出すると発表した。サキ報道官は事実を知っているからもう我慢できなくなったのだろう。記者会見に加わった記者達も知っているけど報道しない。

  • ベンガジ事件の調査

ベンガジ事件とはリビアのベンガジでアメリカ大使ほか3人がテロ攻撃に逢って死亡した事件である。攻撃が始まってから死亡するまで約8時間、ヒラリーとオバマはホワイトハウスで状況を聞きながら救援隊を派遣しなかった、しかも死亡した後でこれはテロ攻撃でないとウソを言い、テロ攻撃とわかっても「ハリウッドのビデオテープが抗議の原因」と隠蔽工作を続けたのである。

国会のベンガジ事件調査委員会のトレイ・ガウディ(Trey Gaudy)委員長は事件の資料蒐集がなかなか進展せず、オバマ政権の隠蔽工作と不協力に悩んでいるが、ヒラリーの提出した個人メールにはベンガジトリビア関連のメールが空白であるとわかって、ヒラリーに資料の提出を要請したが返答がない。数日前、委員会はヒラリーのサーバーの提出を要請したがこれにも返事はなかった。

ヒラリーがサーバーの提出を拒めば、法的召喚状(Subpoena)で強制提出を求める。召喚状を出してもホールダー司法長官が抑えてしまうと言われている。委員会がこの次に取れる手段はヒラリーの違法嫌疑について特別検察官を要請するが、これもまたホールダー長官に抑えられるだろうと言う。ガウディ委員長はいくら時間がかかっても真相追及は続けるとしている。この事件だけでもヒラリーの大統領立候補は難しいとも言うが平気である。

  • クリントン基金の外国献金問題

クリントン基金はクリントン夫妻と娘チェルシーの3人の名義で設置した基金だが、外国要人の献金がたくさんあり、全部で250億ドル以上、実際には350億以上あるという。

2009年にヒラリーが国務長官になった後、外国人の献金を受けるのは公務員として不可だから、2009年から辞任した2012年までは外国人の献金を受け付けなかったと発表していた。そして2012年の12月に国務長官を辞任した後で再び献金を受けると諸外国要人にメールを出したと説明していた。

ところがそれは事実でなかったのだ。最近になって基金会が白状したところでは、ヒラリーが長官に就任した後も続けて外国献金を受けていたが、献金国と人の名前を消去したと報道された。

報道によると2009年から2012年までの間に受けた外国の献金だけでも3.5億ドル以上と言われる。献金者、献金国の名前を消去したので真相の追及は難しい。国務長官の任期中に外国の献金を受けたら明らかな収賄である。クリントン一家はみんな極悪人だ。慈善基金とは笑止の沙汰である。

国務長官の在任中に外国から献金を受けただけでも違法だが、これに隠蔽工作があったらビル・クリントンを含めみんな有罪である。これでもヒラリーは大統領になれるのか。

  • サーバーの提出とメールの消去

ヒラリーが提出したメール55000通は紙にプリントしたもの、コピーだから本物ではない。しかも彼女は「勝手に」32000通を消去したと白状している。この3万通のメールに公務関係のメールがなかったとどうやって証明するのか。結局は彼女のサーバーを提出するほかはないのだ。

公務関係のメールを消去したら即有罪である。彼女は記者会見で「私有スマホでメール送信しても、受け取った方は公務メールとして政府が保管しているからOK」と言ったが、他人が政府に提出したのと彼女が提出しなかったのは別問題である。しかもヒラリーは受信者の私有スマホに公文書を送信したこともあったとわかった。両側とも違法行為である。

いつまでサーバーの提出を拒むことが出来るか、提出したサーバーも一部消去した証拠があったら大事である。この場合はバックアップ・サーバーを探し出して内容を突き合わせることになる。

何人も法の上に立つことはできない。ヒラリー・クリントンだけが「法外な待遇」を受けている。こんな外道が大統領になれるのか?

◎クリントン前米国務長官、私用サーバーから全メールを削除

AFP=時事 3月28日(土)12時10分配信

【AFP=時事】ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前米国務長官が在任中の公務に私的な電子メールアカウントを使っていたとして追及されている問題で、前長官の私用サーバーから電子メールのデータが全て削除されていたことが分かった。

メールと携帯、公私で「使い分けるべきだった」 クリントン氏

2012年9月11日にリビア・ベンガジ(Benghazi)で発生し、米国人4人が死亡した米領事館襲撃事件を調査している下院ベンガジ特別委員会(HouseBenghazi Committee)のトレイ・ゴウディ(Trey Gowdy)委員長が27日に発表した声明で明らかにした。

声明は「クリントン前国務長官が自身の電子メールサーバーに保存されていた電子メールを全て、復旧できないような形で消去することを一方的に決めていたことを、前長官の弁護士からわれわれは今日伝えられた」としている。提出済みのメール以外に追加提出できる記録がないことを説明するクリントン氏の弁護士からの書簡で明らかになったという。

ゴウディ委員長はベンガジの米領事館襲撃事件に関するやりとりをはじめ、リビアに関連した内容を含む前長官のメールを全て提出するよう命じ、クリントン氏に対して、メールサーバーを中立な立場の第三者に引き渡すよう正式に要請していた。

クリントン氏がサーバーに保存されていた全てのメールの削除を決めた正確な時期については明らかになっていないが、委員長によると、米国務省がクリントン氏に最初に記録の提出を求めた昨年10月28日以降とみられている。【翻訳編集】 AFPBB News

日経FT記事

1970年、西ドイツのブラント首相はポーランドのワルシャワ・ゲットー(ユダヤ人隔離居住区)蜂起の英雄記念碑の前でひざまずいた。この姿はドイツの懺悔(ざんげ)を示す象徴だった。84年にはミッテラン仏大統領とコール西独首相が70万人以上の兵士が死傷した仏ヴェルダンの追悼式典で手を握り合った。だが、アジアでは第2次世界大戦の終結から70年を経ても、「歴史戦争」を告げるラッパの音はかつてなくけたたましい。

 日本と米国は終戦以来、緊密な同盟国になった。それでも歴史認識は一致できない。安倍晋三首相が真珠湾を訪れオバマ米大統領がお返しに広島を訪れる案が浮上したこともあったが、実現はしなかった。両首脳にとって被害者と加害者のどちらも傷つけずに有意義な発言をするのは不可能だ。

 日米にとって難題ならば他の国にとっては不可能に近い。確かに、フィリピン、オーストラリアなどは日本から被害を受けた歴史を棚上げしている。だが中国と韓国では、怨恨は根深い。

 日中韓3カ国の首脳が過去の敵意を解決しないままにする方が得策だとの屈折した考えを抱いている。中国共産党は旧日本軍を追い出した実績を自らの正統性の根拠にする。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は反日感情で有権者を味方につけている。安倍氏にとっても軍備増強や憲法解釈の変更に取り組む上で中国が強大で過去を許さないという認識が重要となっている。

 日本には「謝罪疲れ」の兆しがある。歴代首相は何度も謝罪してきたが、日本は戦時中の行為を正しく認めていないという声はまだ多い。歴史を思うままに抹消している中国共産党が、日本に過去の清算を説くという皮肉な構図は相変わらずだ。

 小泉純一郎首相(当時)は2001年に「誤った国策にもとづく植民地支配と侵略を行い計り知れぬ惨害と苦痛を強いたのです。私はわが国の悔恨の歴史を虚心に受け止め、深い反省とともに、謹んで哀悼の意を捧(ささ)げたいと思います」と述べた。

 この談話に誠意があるかどうかを判断するのはもちろん受け手の自由だが、これが謝罪であることは間違いない。だが、戦時中の慰安所の提供にどれほど強制の度合いがあったかなど、日本による歴史の細部へのあら探しや、日本の戦没者を慰霊する靖国神社への首相参拝によって、ことごとく水を差されている。

 緊張を緩和できるのだろうか。テンプル大学日本校のジェフリー・キングストン教授は「日本が一方的に歴史のページをめくることはできない。日本には率直な清算が必要だが、近隣国にも和解の申し出を拒むのではなく受け入れる責務がある」と言う。

 欧州に再び目を転じたい。09年の第1次世界大戦休戦記念日にサルコジ仏大統領は同大戦が「双方に同等の被害をもたらした」と述べ、家族の死に涙を流した悲劇は独仏いずれも変わらないと語った。現在の風潮では中韓政府がこうした心情を表すとは思えない。

 歴史問題を解決できなくても、折り合いをつけることはできる。この点では、安倍氏が過去の謝罪の文言を再検討する意向を示唆していることが助けにならない。安倍首相が1930~40年代の日本の名誉を挽回することにとらわれるのは間違いだ。

 日本の国民に誇りを持たせようとする安倍氏の念願をかなえるのはごく簡単だ。侵略の時代よりもはるかに優れた歴史の折々の時期があるからだ。

 平安時代であろうと江戸時代であろうと、日本は常に文化的にも社会的にも創造力に満ちていた。1950~70年代の日本は、豊かで近代的な社会を築くことでアジアが欧州に少しも引けを取らないと証明した驚くべき時期だ。日本史において、アジアの国や人々に貢献を果たした時期である。これについては実際誰にも異論はないはずだ。

(フィナンシャル・タイムズアジア編集長 David Pilling)

 

3/29東博 特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」を見る

昨日六本木の帰りに東京国立博物館に行き、表題の展覧会を見てきました。5月にインド旅行を企画していましたが、イスラムのテロが相次ぎ断念しましたので、代わりにと思い行ったものです。岡倉天心とタゴールの付き合いもあり、インド美術を見て見たいと思っていましたので。下の写真は、ハガキを買ったのをデジカメで撮ったものです。

http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1701

サールナートのダメークストーパ

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菩薩頭部

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六本木の桜です。

昨日六本木に行き雲南料理を楽しむ前にミッドタウンに寄り桜を楽しみました。一昨日は墨田公園で花見をしましたが隅田が満開だったのに対しこちらは七分咲きでした。中華も雲南料理というよりは四川料理に変わり、オーナーチェンジした感じでした。

帰りに駅の階段でスマホを落とし、傷つけてしまいました。非常に見にくくなりましたが機能は大丈夫なようです。これもスマホで撮った写真です。

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戸部良一著『外務省革新派』について

一読して如何に理念外交が国を危うくするかという事と、人事で遇されない私怨が世界情勢を見る目を曇らせたと感じました。しかし、白人の植民地主義を非難するのであれば、「日本は当時どうだったのか」と聞かれたときにキチンと答えられるようにしておかないとダメだと思います。確かに天皇の開戦の詔勅、政府声明を読みますと格調高いですが、やってきたことは外形上欧米列強と同じように見えてしまいます。勿論、日本は欧米の定義するような搾取もせず、投資して持出になり、識字率も上げる努力をしたことなど欧米流の植民地とは違うと言えなくもありません。しかし「植民地の福利厚生を図るのは(白人宗主国の)神聖な使命」というのとどう違うのかをキチンと説明できないと反論されるでしょう。

石原莞爾は満州事変を起こしましたが、満州は元々満州族の土地で漢族とは関係ないとはいえ、後に武藤章の「大本営の不拡大方針」に反して支那まで戦線を拡大した原因を作りました。先が読めなかったというべきか。欧米の植民地主義と同じことをしたのでは道義的に見たら同じように浅ましく見えてしまいます。また、辻政信のようにシンガポールやフィリピンで市民の虐殺を命じた軍人もいます。明治維新から時代を経ておかしな軍人も出てきました。

京都学派の近代の超克も日本のやり方を批判的にとらえることはできませんでした。神風が吹くことを期待していたとしか思えません。霊的な存在も大事にしないといけませんが、科学的な物の見方をすることも同じように大切です。

戸部氏の言う無通告開戦は軍の要請でと言うのは真実ではないでしょうか。外務省が軍の要請に乗ってわざと遅らせと思います。でないと遅らせた岡崎、井口、寺崎が次官にまで昇進できるのかという事ではないかと。「宣戦布告」は必要がないと思っていたのでしょう。

白鳥敏夫の考えは今の馬渕睦夫氏に受け継がれているのでは。ユダヤ人陰謀論は今に始まったことではないという事です。

【天皇の開戦の詔勅】

天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國天皇ハ昭ニ忠誠勇武ナル汝有衆ニ示ス

朕茲ニ米國及英國ニ対シテ戰ヲ宣ス朕カ陸海將兵ハ全力ヲ奮テ交戰ニ從事シ朕カ百僚有司ハ

勵精職務ヲ奉行シ朕カ衆庶ハ各々其ノ本分ヲ盡シ億兆一心國家ノ總力ヲ擧ケテ征戰ノ目的ヲ

達成スルニ遺算ナカラムコトヲ期セヨ抑々東亞ノ安定ヲ確保シ以テ世界ノ平和ニ寄與スルハ丕顕ナル

皇祖考丕承ナル皇考ノ作述セル遠猷ニシテ朕カ拳々措カサル所而シテ列國トノ交誼ヲ篤クシ萬邦共榮ノ

樂ヲ偕ニスルハ之亦帝國カ常ニ國交ノ要義ト爲ス所ナリ今ヤ不幸ニシテ米英両國ト釁端ヲ開クニ至ル

洵ニ已ムヲ得サルモノアリ豈朕カ志ナラムヤ中華民國政府曩ニ帝國ノ眞意ヲ解セス濫ニ事ヲ構ヘテ

東亞ノ平和ヲ攪亂シ遂ニ帝國ヲシテ干戈ヲ執ルニ至ラシメ茲ニ四年有餘ヲ經タリ幸ニ國民政府更新スルアリ

帝國ハ之ト善隣ノ誼ヲ結ヒ相提携スルニ至レルモ重慶ニ殘存スル政權ハ米英ノ庇蔭ヲ恃ミテ兄弟尚未タ牆ニ

相鬩クヲ悛メス米英両國ハ殘存政權ヲ支援シテ東亞ノ禍亂ヲ助長シ平和ノ美名ニ匿レテ東洋制覇ノ非望ヲ

逞ウセムトス剰ヘ與國ヲ誘ヒ帝國ノ周邊ニ於テ武備ヲ增強シテ我ニ挑戰シ更ニ帝國ノ平和的通商ニ有ラユル

妨害ヲ與ヘ遂ニ經濟斷交ヲ敢テシ帝國ノ生存ニ重大ナル脅威ヲ加フ朕ハ政府ヲシテ事態ヲ平和ノ裡ニ囘復

セシメムトシ隠忍久シキニ彌リタルモ彼ハ毫モ交讓ノ精神ナク徒ニ時局ノ解決ヲ遷延セシメテ此ノ間却ツテ

益々經濟上軍事上ノ脅威ヲ增大シ以テ我ヲ屈從セシメムトス斯ノ如クニシテ推移セムカ東亞安定ニ關スル

帝國積年ノ努力ハ悉ク水泡ニ帰シ帝國ノ存立亦正ニ危殆ニ瀕セリ事既ニ此ニ至ル帝國ハ今ヤ自存自衞ノ爲

蹶然起ツテ一切ノ障礙ヲ破碎スルノ外ナキナリ皇祖皇宗ノ神靈上ニ在リ朕ハ汝有衆ノ忠誠勇武ニ信倚シ祖宗ノ

遺業ヲ恢弘シ速ニ禍根ヲ芟除シテ東亞永遠ノ平和ヲ確立シ以テ帝國ノ光榮ヲ保全セムコトヲ期ス

  御 名 御 璽

【帝國政府聲明】

恭しく宣戦の大勅を奉載し、茲に中外に宣明す。

抑々東亜の安定を確保し、世界平和に貢献するは、帝国不動の国是にして、列国との友誼を敦くし此の国是の完遂を図るは、帝国が以て国交の要義と為す所なり。

然るに殊に中華民国は、我が真意を解せず、徒に外力を恃んで、帝国に挑戦し来たり、支那事変の発生をみるに至りたるが、御稜威(みいつ)の下、皇軍の向ふ所敵なく、既に支那は、重要地点悉く我が手に帰し、同憂具眼の十国民政府を更新して帝国はこれと善隣の諠を結び、友好列国の国民政府を承認するもの已に十一カ国の多きに及び、今や重慶政権は、奥地に残存して無益の交戦を続くるにすぎず。

然れども米英両国は東亜を永久に隷属的地位に置かんとする頑迷なる態度を改むるを欲せず、百方支那事変の終結を妨害し、更に蘭印を使嗾(しそう)し、佛印を脅威し、帝国と泰国との親交を裂かむがため、策動いたらざるなし。乃ち帝国と之等南方諸邦との間に共栄の関係を増進せむとする自然的要求を阻害するに寧日(ねいじつ)なし。その状恰も帝国を敵視し帝国に対する計画的攻撃を実施しつつあるものの如く、ついに無道にも、経済断交の挙に出づるに至れり。

凡そ交戦関係に在らざる国家間における経済断交は、武力に依る挑戦に比すべき敵対行為にして、それ自体黙過し得ざる所とす。然も両国は更に余国誘因して帝国の四辺に武力を増強し、帝国の存立に重大なる脅威を加ふるに至れり。

帝国政府は、太平洋の平和を維持し、以て全人類に戦禍の波及するを防止せんことを顧念し、叙上の如く帝国の存立と東亜の安定とに対する脅威の激甚なるものあるに拘らず、堪忍自重八ヶ月の久しきに亘り、米国との間に外交交渉を重ね、米国とその背後に在る英国並びに此等両国に附和する諸邦の反省を求め、帝国の生存と権威の許す限り、互譲の精神を以て事態の平和的解決に努め、盡(つく)す可きを盡し、為す可きを為したり。然るに米国は、徒に架空の原則を弄して東亜の明々白々たる現実を認めず、その物的勢力を恃みて帝国の真の国力を悟らず、余国とともに露はに武力の脅威を増大し、もって帝国を屈従し得べしとなす。

かくて平和的手段により、米国ならびにその余国に対する関係を調整し、相携へて太平洋の平和を維持せむとする希望と方途とは全く失はれ、東亜の安定と帝国の存立とは、方に危殆に瀕せり、事茲に至る、遂に米国及び英国に対し宣戦の大詔は渙発せられたり。聖旨を奉体して洵(まこと)に恐懼感激に堪へず、我等臣民一億鉄石の団結を以て蹶起勇躍し、国家の総力を挙げて征戦の事に従ひ、以て東亜の禍根を永久に排除し、聖旨に応へ奉るべきの秋なり。

惟ふに世界万邦をして各々その處を得しむるの大詔は、炳(へい)として日星の如し。帝国が日満華三国の提携に依り、共栄の実を挙げ、進んで東亜興隆の基礎を築かむとするの方針は、固より渝(かわ)る所なく、又帝国と志向を同じうする独伊両国と盟約して、世界平和の基調を糾し、新秩序の建設に邁進するの決意は、愈々牢固たるものあり。

而して、今次帝国が南方諸地域に対し、新たに行動を起こすのやむを得ざるに至る。何等その住民に対し敵意を有するものにあらず、只米英の暴政を排除して東亜を明朗本然の姿に復し、相携へて共栄の楽を分たんと祈念するに外ならず、帝国は之等住民が、我が真意を諒解し、帝国と共に、東亜の新天地に新たなる発足を期すべきを信じて疑わざるものなり。

今や皇国の隆替、東亜の興廃は此の一挙に懸かれり。全国民は今次征戦の淵源と使命とに深く思を致し、苟(かりそめに)も驕ることなく、又怠る事なく、克く竭(つく)し、克く耐へ、以て我等祖先の遺風を顕彰し、難儀に逢ふや必ず国家興隆の基を啓きし我等祖先の赫々たる史積を仰ぎ、雄渾深遠なる皇謨(こうぼ)の翼賛に萬遺憾なきを誓ひ、進んで征戦の目的を完遂し、以て聖慮を永遠に安んじ奉らむことを期せざるべからず。

内容

P.67人事の停滞

革新派と呼ばれるようになる外交官たちは、白鳥と同じく、あるいは白鳥の影響を受けて、満洲事変による日本外交の転換の意義を強調し、その転換を推進するために人事の刷新と機構の改革を主張した。機構改革の手始めとされたのが考査部設置の要求であり、人事刷新としては白鳥あるいは彼らの主張に同調的であると見られた外務省幹部(例えば斎藤博) を省の指導的地位(外相あるいは次官)に就けることが目標とされた。

ところで、こうした革新派の要求の背後には、外務省の沈滞した人事への潜在的な不満もあったとされる。特に、一九二〇年代前半に大量採用された外務官僚たちが人事停滞への不満を鬱積させており、それが革新運動に伏在していたと言われる。

P.99人事への不満

重光派閥の支那に対する政策は、その人事行政に於いて分明する所である。対支人事は、しばらく以前より刷新の叫びにつつまれてゐたにも拘らず、その配置は統制本位で形成せられてゐる。無能なる者を上海、南京、北京等の重要ポストに配し、有能を辺境夷撩の郷に閉ぢ込めてゐる。〔前掲「霞ヶ関に於ける重光派閥の役割」〕

川村も、ニ・ニ六事件後に成立した廣田内閣の外相に有田八郎が就任したとき、新外相に期待を表明しつつ、外務省人事の現状を以下のように批判していた。

現在外務全機能を大観するに、徒らに老朽無能、尸位素餐の禄盗人を以つて充満し、大使と云ひ公使と云ふも、只只栄職に齧りつくのみで女郎外交に其の日を過し、老後の為の文化住宅建築費や、鼻たれ小僧、あばずれ娘のぜいたく三昧費の稼ぎ高を数へてヤニ下るサラリーマンの古手ばかりではないか。こんな手合に外交刷新を望むことはまことに百年河清を待つに似たり。〔於曾四郎「有田外交の本質」『南北』一九三六年十一月号〕

P.116

有田は外務省革新派に属したわけではない。ただし、過去に「白鳥騒動」での諍いがありながら、白鳥が有田への敬意を失わなかったのは、有田が往年の革新同志会のリーダーであったことに加え、彼の政策論の中に革新派に近い部分があったからだろう。のちに有田が外相となったとき、川村が彼に対する期待を表明したのも、同じ理由からであったと思

われる。

有田が白鳥の所見に対して異議を唱えたのは、ソ連に関する観察である。アジア大陸においてスラヴ民族と大和民族とが雌雄を争うべき運命にあるとか、ソ連が大国と戦争すれば、内部崩壊を来すことは明瞭であるとか、いま手を打たなければ軍事力を強化したソ連が「赤化の禍害か然らずんば鉄火の侵略か」攻撃に出てくることが必然である、といった見 方に有田は反論を加えた。ソ連の脅威を切迫したものと捉え、性急かつ理不尽にソ連と衝突することは、どの国の支持も得られず、とるべき策ではない、と有田は主張した。

有田は返書の最後で皮肉っている。自分は対ソ開戦の立場をとらないが、もし日本の国内情勢がきわめて険悪で、これを転換する方法として「外征」以外に方法がないとの見地から対ソ方針を決定すべきものとするならば、それはおのずから別問題である、と。有田が白鳥を皮肉ったのは、白鳥が、本国の陸軍部内ではソ連との一戦を不可避とする空気が日を逐って濃厚となりつつあると観察して、自らの対ソ強硬論を陸軍の動向と関連づけていたからである。

P.121~123 支那事変

事変の「本質」

一九三六(昭和十一)年末、白鳥は正式の帰朝命令によりスウエ―デンから帰国した。帰国後、次のポストが決まるまで、彼は活潑な言論活動を展開する。特に翌一九三七年七月に支那事変が勃発すると、事変の「本質」を論じる彼の論考が雑誌等に掲載される機会が増えてゆく。現役の外交官でありながら、政府の外交に対して白鳥は歯に衣着せぬ批判を加える。 そうした彼の言説を肯定的に受け入れる素地が、当時の日本にはあったということになろう (白鳥の著述目録については、表5〔一ニ五~一ニ七頁〕を参照)。

盧溝橋事件直後、白鳥は次のように述べている。「日本の大陸政策は、消極的には西力の不法侵入を防ぐ事であり、積極的には支那四億の人民と共に東洋の倫理道徳に基き、所謂王者の政治を実現して共にその恵沢に浴し人類の文明に貢献する事,」なのだが、中国は「日本を西洋並に侵略者と見、日本の真意を解しないで、夷を以て夷を制し、ロシア、英米の力を借りて対日解決を図らんとする」するから、衝突が起こるのである〔「切迫せる国際危機」『経済マガジン』一九三七年八月号〕。

それからニ力月後、支那事変の「本質」は、白鳥によって以下のように把握されている。

満洲事変と殆ど時を同じうして、日本国内に一つの精神運動、思想運動が台頭したことは、世人周知の通りである。この所謂日本主義運動或は国体明徴の叫びと、満洲事変とは決して関係のない二つの事象ではないのである。表裏密接の関繫を持った不可分の現象であつて、日本民族が漸く自己の真の姿を発見したと云ふことを物語るものである。今回の 日支事変も、この日本民族の思想的覚醒の対外的表現として見なければならない。〔中略〕日本国民が欧米追随の長夜の夢から醒めて、本来の我を見出した時に、内に在っては日本主義運動となり外に向っては大陸政策となり、内外合して「亜細亜に還れ」の絶叫となり、大亜細亜建設の運動となるのである。この一大思想運動が未だ国内戦線の統一をか ち得ないのが今日最大の憂であって、他の半面たる大陸政策のみ.が跛行的に着々と進捗しつつあるのが曩の満州事変であり、今回の日支事変である

元来日支間今日の不和を来したのは根本に於ては思想の衝突である。我は欧米追随の旧套を脱ぎ捨てて、亜細亜に還り、東洋の倫理道徳に基いて東亜の諸民族と新しき理想郷を造らんとして居り、彼は依然として欧米依存の迷夢より醒めず、遠交近攻の誤った政策を弄し、抗日排日の極は容共連蘇の邪道にまで踏み迷って、遂に亜細亜の反逆者となり畢ったのである。之が日支事変の真相ではないか。〔「支那事変の本質」『大亜細亜主義』一九三七年十月号〕

中国が日本の「真意」を誤解し、「以夷制夷」策を弄して欧米列国に追随したがゆえに、事変が勃発し拡大したのだ、と考えるのは当時の一般的理解であったと言ってよい。白鳥の場合は、これに加えて、大陸の軍事行動と国内の思想運動あるいは革新運動との連動が強調された。そこで用いられた「亜細亜に還れ」は、かつて森格とともに白鳥も使ったレトリックであった。白鳥は日本の大陸政策の道義性を主張する。「我が大陸政策はその本質に於ては文化史的使命を持っもので、人類社会改造の企図であり、現代文明の行詰りを打開せんが 為の一念発起」である、と〔「大陸政策の世界史的意義」『改造』一九三七年十月「支那事変臨時増刊号」〕。

P.128~130「支那から軍備を無くせ」

白鳥の支那事変に関する議論が独善的であったことは否めない。だが、その中に見るべきものがなかったわけでもない。例えば、彼は事変の原因が中国側の誤解と抗日政策にあると述べながら、同時に日本の態度をも批判し反省を迫っていた。

従来我々の為し来った所にも過誤はなかったか、支那人をして帝国の公正なる意図を理解せしむる事に何程の努力がなされたか、この点国民として猛省する必要があると考へる。〔中略〕日本としては、亜細亜民族を救ふの天業を自覚し只管この使命の遂行に精進し苟も、西洋流の物質的侵略的臭みがあってはならぬ。〔中略〕今回の北支事変に方って我 朝野の言説は甚だ調子が低い様に思ふ。依然として自衛権だの特殊権益だの、と覇道的ジヤルゴン〔ジャーゴン(専門家の特殊用語)〕を耳にするのは遺憾である。〔前掲「切迫せる国際危機」〕

日本は「領土的物質的の自己本位の解決を求めてはならぬ」。重要なのは日中の精神的提携あり、中国の民生の安定化と向上であるから、中国の「資源や経済提携の問題は重要で はあるが、畢竟枝葉末節である」「日支事変善後策」『大亜細亜主義』一九三八年二月号〕中国の資源の「開発」という言葉は、イギリスがインドを搾取するために設立した「東印度会社を造るやうに聞える」と白鳥は批判する〔座談会「支那事変の将来」『文藝春秋』一九三七年十一月号〕。

もう一つ、支那事変に関する白鳥の議論の中で注目に値するのは、中国から軍備を撤廃せよ、という主張である。白鳥は事変の「抜本的解決」策として、これをかなり早くから提起していた。彼によれば、「生なか支那が近代式軍隊を持つが故に〔中略〕自己の力を過信し、抗日侮日の誤つた政策を採り〔中略〕軍隊あるが故に打たれるのである」。もし中国が軍備を撤廃すれば、「兵力なき国を犯すが如きは日本の武士道が許さぬ」し、他国が中国侵略の暴挙に出るような場合には、日本が自らの意志と必要に基づいてその侵略を排撃するだろう。〔白鳥「歴史的大業を完成せよ」一九三七年七月、『国際日本の地位』所収〕。

さらに、「支那の国民も多年軍閥私兵の横暴に苦しみ抜いたゝめ」、軍備撤廃は「支那国民大多数の歓迎するところであり」、「支那国民の安寧福祉のためにも絶対必要」である。 軍備撤廃によって国民生活の向上、購買力の上昇、国内の安定が実現すれば、市場としての中国の価値が上がり、列国としてもこれを歓迎するに至るだろう、と彼は言う〔「事変も 外交関係」『報知新聞』一九三八年一月一日付、

こうした主張に対して、軍備撤廃は国家の主権独立の尊重と矛盾するのではないか、との当然の反論があり得る。これに対する白鳥の回答は、「日支の関係を従来西洋において発達した国際法の観念並に原則のみを以て律することは不可である」というものであった〔前掲 「日支事変善後策」〕。ここにも仁宮の『綱領』と同種の論理を見ることができるだろう。 日本による権益の拡張を否定し、中国の軍備撤廃を提起する白鳥の主張は、一見したところ道義的であり、また理想主義的であった。現役外交官でありながら政府の方針に拘束されない外交評論家としての白鳥が、一部の日本人に受けた理由はそこにあったのだろう。白鳥にはその名も「支那から軍備を無くせ」〔『経済マガジン』一九三八年二月号〕という論文がある。このタイトルを彼が付けたのか、それとも掲載雑誌の編集部が付けたのかはわからないが、いずれにせよ、この種の主張が何らかの注目を浴びていたことを示すものであったと考られよう。

たが、武力衝突が拡大し激化するなかで、精神的提携を追求し、「領土的物質的の自己本位」を抑制することは甚だ困難であった。軍備撤廃も、実際には日本による中国の軍事的管理に等しいものであったと言ってよい。白鳥自身も、「これがため期せずして日本の支那に対する発言権といふものは殆ど絶大になる」と本音を漏らしている〔「戦争と国民生活座談会」『国民評論』一九三七年十二月号〕。ただし、白鳥がこのとき軍備撤廃論を述べていたことは、以後の歴史の展開を考える上で、暫く記憶にとどめておく必要があろう。

P.258~260日米戦争

南進を媒介にした日中提携

一九四一年の年頭に、『朝日新聞』は数回にわたって「輝く廿七聖紀」と題する識者のインタヴューを掲載した。神武紀元によれば前年がニ六〇〇年であったから、この年、日本は新しい世紀に入ったことになる。インタヴュー特集のトップを飾ったのは白鳥である。記者は「日本は二十六聖紀で世界の水準に達し二十七聖紀で世界の王座を目指して進まねばな らぬ」と前置きし、白鳥のことを次のように描写している。

「僕の意見はいつも半年位先走るやうだ」外務省顧問の白鳥敏夫氏は斯う呟く、低いが信念の籠つた不敵な音声である、過去に於て目まぐるしい国際政局の変動が、時に白鳥さんを革新児にしたり異端者にしたりした、昨秋枢軸の盟ひ成って帝国外交の大本が確立したとき、白鳥さんは今度は時代の予言者と持囃されたものである、霞ヶ関の水先案内として 白鳥さんには半年どころか百年も先をヂッと睨んで貰ひたいのだ〔『朝日』一九四一年一月一日付朝刊〕

外交の実権は松岡の手に握られていたが、ジャーナリズムでは白鳥は時代の寵児であったと言ってよい。「当局からも余り喋つて呉れるなといふ註文を受けて居る」と言いつつ〔「三国同盟と日本」『日本評論』一九四○年十一月号〕、また自分の述べるところは政府の方針や意向ではなく、全くの個人的見解だとしながら、白鳥は言わば縦横無尽に持論を述べまくった。 彼はまず、東亜新秩序を拡大した大東亜新秩序、大東亜共栄圏を論じた。

吾々は目前先づアジア十億の民を解放せよ、生気を与へよといふ。今まで白人の一部がこれを侵して居つた、彼等はひどい搾取をして居つた、これを救はうといふのが吾々の目標である、信念である。〔前掲「三国同盟と日本」〕

日本当面の問題は、最早や支那から白人の勢力を駆逐するといふことだけではなし今 や更に南方へと進んで、従来白人の領土として壟断され、搾取されてゐたこの地方力ら その不当な勢力を駆逐せねばならぬ。〔中略〕いまこそ、これらの地方に於けるアジア伊 族を解放し、土地と人民とをアジアの手に取戻す、絶好の機会でなければならない 〔「三 国同盟と日本の前途」『現代』一九四〇年十二月号〕

日本当面の問題は、最早や支那から白人の勢力を駆逐するといふことだけではない。今や更に南方へと進んで、従来白人の領土として壟断され、搾取されてゐたこの地方から、その不当な勢力を駆逐せねばならぬ。〔中略〕いまこそ、これらの地方に於けるアジア民族を解放し、土地と人民とをアジアの手に取戻す、絶好の機会でなければならない〔「三国同盟と日本の前途」『現代』一九四〇年十二月号〕

白鳥のアジア民族解放論は明快であったが、それが日本盟主論とセットになっていたことにも言及しておくべきだろう。アジアにおいては「他の民族に比して最も優れたる日本民族がその盟主」でなければならず〔前掲「日独伊世界再建の原理」〕、しかも「アジアの独立、アジア諸民族の解放といふ聖業に従事して現に大きな犠牲を払ひ、絶大の努力をしてゐる」日本民族が、「アジア諸民族のうちの最も恵まれたる民族、富裕なる民族となることは極めて至当」であり、「絶大の犠牲に対する当然の報酬である」とされた〔「生産力拡充第一主義」『偕行社記事』ー九四ー年二月号〕。                           

P.264~268

革新派は対米決戦を唱えたわけではない。彼らは、アメリカの強硬姿勢に直面して、またしても妥協を排し、アメリカ以上の強硬態度で対抗することを主張したのである。ただし、ここでも革新派の主張が外務省の方針をリードしたのではなかった。松岡外相は、彼らの発言を封じ込めつつあった。だが、白鳥だけは、おそらくは彼の独断で、「攻撃的なる言論戦 を展開」し続けた。一九四一年、年頭のインタヴューで彼は次のように述べている。

大東亜共栄圏をアメリカは認めることが出来ない、搾取が出来なくなるからだ、欧洲にも新秩序が出来、アジアにも新秩序が出来たのではアメリカの資本主義は没落の外はない〔前掲「輝く廿七聖紀」〕

白鳥にとって、アメリカは新秩序の敵であった。そして三国同盟の対米抑止効果も疑わしくなっていた。

ユダヤ的金融寡頭政治

むろん白鳥もすぐさま日米戦争が不可避になったと見なしたわけではない。一九四一年ニ月段階ではまだ、「私は今日のアメリ力はどうしても戦争に入らぬだらうと考へざるを得ない」と述べている。アメリカは軍備が不足しているし、人種の寄せ集めという弱点を抱え大恐慌の傷も完全には癒えていない。日独伊の同盟に対抗することは不可能で、「日本が敢然起つたならば何も仕切らぬだらうと思ふ」〔「南進に於ける日本の地位」一九四一年二月十三日講演、『戦ひの時代』所収〕。

ただし、白鳥によれば、イギリスがヨーロッパの戦争を始めたとき、それはイギリス国民が望んだからではなく、政治を壟断している少数のユダヤ財閥とそれに連なる支配階級が戟争を欲したからにほかならない。そして、その「本家」はアメリカにある。したがって、アメリ力でも「大多数の国民は勿論反対であるが、ユダヤ的な金権寡頭政治の血迷うた判断か ら国民を引摺つて戦争をやらぬとも限らない」と白烏は憂慮を募らせた〔前掲「南進に於ける日本の地位〕。さらに彼は、「アメリカこそ戦争の煽動者、戦争業者ではあるまいか」と 述べ、「アメリカの支配階級に民衆を引摺るべき好箇の口実を与へぬやう細心の注意を要する」と警告した〔前掲「戦ひの時代」〕。

翌三月、白鳥はその判断と主張をひっくり返し、ついにアメリカの戦争参加は必至であると断定するに至る。「〔アメリカ〕輿論の反戦的傾向を過大に評価してはならない。イギリスにおいては勿論のことアメリ力においても、民主政治•か興論政治であつた時代は過去に属する」。金権寡頭政治に堕してしまったアメリカの支配階級は英仏のそれと一つであり、その意味で「アメリカは初めから戦争に参加してゐると言つても過言ではない」〔「アジアの役割」『読売新聞』一九四一年三月十日付〕。白鳥がアメリカ参戦必至に判断を転換させたキーポイントはナチスドイツの受け売りのように「国際的ユダヤ金融資本主義」を諸悪の根源と したことにあった。

アメリカのヨー口ッパ戦争への参戦が必ずしも日米戦争になるとは限らなかったが、ヨーロッパの戦争とアジアの戦争との結合を論じてきた白鳥からすれば、「アメリカの参戦は、当然日米戦争となる」「「世界戦争と新世界」『イタリア』一九四一年四月創刊号〕ことは論理的必然であった。白鳥はまた次のようにも述べている。

実際に於ては今は寧ろアメリ力が中心となつてこの戦争をやつて居るのであります。〔中略〕アメリカが戦争に入らなければ世界新秩序といふものは出来ない。〔中略〕私から見れば、アメリカこそこの戦争の張本人である。〔中略」もともとこの戦争はヒットラーとユダヤの戦争であります。〔中略」あれ〔日独伊三国同盟〕はアメリカを戦争に入らせるための条約だ。アメリカがどうしても入るだらう。又入らなければ世界の新秩序が出来ない。これはむしろ不可避であり、必然であり、必要であるといふ風に私は見るのであります。〔前掲「枢軸外交の勝利」〕

このように、三国同盟の狙いも逆転した。「日独伊同盟は、アメリカの参戦を阻止する為に結ばれたと云はれる」が、「実際に於ては〔中略〕却ってその参戦を不可避ならしめたとも云へる」とされたのである〔前掲「世界戦争と新世界」〕。 白鳥は、日米衝突を不可避とするに至った経緯を「天意」であるとし、来るべき国難、日米戦争を「天照大神が天の岩戸にお隠れになり天下が真暗になった時」になぞらえた(「興亜奉公日に際し内外時局を語る」一九四一年三月一日ラジオ講演、『戦ひの時代』所収〕。その国難たる戦争はどのようにして決着がつくのか。究極的には、アメリカに「一大社会革命」が起 こる。つまり、「旧秩序の牙城アメリカそのものに、内部から新秩序が盛り上ることによつて、ここに初めて歴史の大転換が完成されるであらう」と白鳥は「予言」した〔前掲「世界戦争と新世界」〕。

はたして、この時点での白鳥の日米戦争不可避論は、どのくらいまともに受け止められたのだろうか。

P.275~276無通告開戦

よく知られているように、一九四一年十二月八日、日本の対米通告は真珠湾攻撃から一時間以上も遅れてしまった。ただし、そのとき日本がアメリカに通告したのは開戦ではない。 交渉打切りである。また、マレー半島では、対米通告が予定されていた時刻より前に、イギリスに対する軍事行動が始まっていた。こうした意味で日本は無通告開戦に踏み切った。それは陸海軍が望んでいたことであった。東郷外相は、自らの所信に反するかたちで陸海軍の要請を受け容れざるを得なかった。だが、それは省内革新派の圧力に屈したものではなかっただろう。東郷は革新派の主張を採用したというよりも、軍事的必要性を掲げる陸海軍の要求を吞まざるを得なかったのである。

革新派は、政策を直接左右するほどの影響力は振るわなかった。けれども、彼らが陸海軍の要求を外交的見地から補強し正当化しようとしたことも軽視すべきではないだろう。一般に革新派の影響が過大に見られるのは、このように無通告開戟手続きや防共協定強化問題などをめぐって、軍と密接に協力したからである。そしてまた、彼らの主張が、旧秩序を否定し新秩序の建設と到来を声高に叫ぶ人々、社会の多数派ではないが声の大きな政治勢力と響き合っていたからであった。

P.280~283「世界維新」

大東亜戦争の後半、白鳥の言論活動は『盟邦評論』を中心として展開される。だが、彼の言説にはもはや見るべきものはなかったと言ってよい。白鳥自身は、誇大妄想狂や神懸かりと言われたり、まだ病気が治らないようだと嘲笑されていることを知りつつ、意に介さない素振りを示した〔「世界維新」対談『国民評論』一九四ニ年六月号〕。

一九四ニ年段階で白鳥は、戦争を「人類最終戦であり、今後永久に地球上から戦争を絶滅するための戦争」、「世界恒久平和、人類共存共栄の地上岩戸開き」、「神を戴くものと、神に反くもの」との戦いであると描写した〔「人類最終戦のために「世界戦争の前途」『現代』一九 四ニ年六月号〕。その戦争の中で「ユダヤ米英の代表する旧秩序の崩壊は世界史の必然として約束されて居る」。建設さるべき新佚序は「神秩序」でなければならず、日本こそ「邪悪暗黒なるユダヤ勢力」から全人類を解放する世界雄新の中心であると白鳥は論じた〔「媾和なき戦争」『イタリア』一九四ニ年十月号〕

彼の議論はもはや外交論ではなかった。摩訶不思議な霊論とも言うべきものであった。 敗色濃厚になった一九四四年には、戦争は、「暗黒と光明、神と悪魔、日本と猶太の決戦」 とされ〔「日本神観の確立」『公論』一九四四年四月号〕、英米金融資本主義だけでなく、ソ連共産主義もユダヤの陰謀によるものと論じられた。白鳥にあっては戦争はあたかも宗教戦争であった。

今度の戦争は本質に於ては日本の八紘一宇の御皇謨とユダヤの金権世界制覇の野望との正面衝突であり、それは邪神エホバの天照大神に対する叛逆であると共に、エホバを戴くユダヤ及びフリーメーソン一味のすめらみことの地上修理固成の天業に対する叛逆行為である。〔「東西戰局の大観」『盟邦評諭』一九四四年七月号〕         

白鳥の日本中心主義は荒唐無稽と言うほかなかった。彼はムー大陸の実在を引き合いに出し、「アメリカの先住民族も中南米のそれも皆日本民族であつたのみならず〔中略〕多くの白色民族なども、本来は日本神族の分れであることがやがて了解されるであらう」と論じ 〔「ニ十世紀の神話」『盟邦評論』一九四四年十一月号〕、「世界最古の文明は日本にあつた。〔中略〕キリストであらうと、釈迦であらうと、何れも彼等の説の根本は日本から出てゐる」と主張した〔「世界の現実とその修理」『盟邦評論』一九四四年二月号〕。

白鳥と波長を合わせた議論を展開していたのは、藤村と同時に外務省を追われた仁宮武夫である。仁宮にとって、戦争は双方が相手の無条件降伏を追求する絶対戦争であった。彼は以下のように論じている。

この戦争は米英からすれば、「相手民族の本質的な強さを破壊しなければ収まらない戦争である。〔中略〕彼等の戦ふ対象は独逸の血でも民族でも無く、ナチス的な強さそのものでありファショ的な抵抗力である。それ故戦争は益々悪虐凄惨!の度を加へる当然性が明瞭であり、同時に彼等の講和は常に政体変革を前提条件とするに至る」。日本の強さは世界無比の国体にあり、したがって米英は日本の国体破壊を狙い、中途半端な妥協による戦争終結に甘んじるはずがない。「かうして大東亜戦争は米英猶太の国体破壊戦争を征伐する戦争であり、世界幕府討滅戦争であり、誠に明々白々たる世界維新戦争である。「自存自衛」とは国民が安穏に生き伸びることではない。日本のいのち世界のいのちをなす国体そのもの、自存自衛であり、大東亜戦争は国体護持の戦争である」〔「聖戦完遂と維新体制の確立」『公論.一九四 年一月号〕。

白鳥と同じく仁宮の議論は「惟神の道」を説き神道的概念と用語をちりばめていたが、連合国側が妥協による講和を求めず、世界の平和と秩序を再び脅かさないよう枢軸諸国の無力化を企図しているとの観察は正確であったと言えるかもしれない。

3/26 日経ビジネスオンライン エコノミスト『ナチスの歴史を巡るドイツとギリシャの確執 賠償問題は日中韓だけではない』記事について

戦後賠償については何回も蒸し返されるのは、譲歩すれば「もっともっと」と脅せば金を出すと相手が思うからです。毅然とした対応が必要です。ドイツもメルケルが日本に来て注文をつけたと報道されましたが(ドイツ政府は否定)、自分の頭の上の蠅もおえずに片腹痛いです。ギリシャがドンドン悪態をつき、ドイツを強請れば、日本が中国と朝鮮半島から如何に何度も過去の謝罪(金で解決せよという意味)を迫られて来たかの痛みが分かるハズです。彼らはそれだけでなく、歴史を改竄・捏造することにより世界に「日本民族は道徳的に劣った民族」と刷り込みを図り、20世紀の日本の統治に対する復讐を図ろうとしています。ドイツはユダヤ人の民族浄化を図ろうとしましたが、日本は戦争をしただけです。これは世界の歴史の中では常にあることで、非難されるいわれはありません。国際法でも認められています。負けたことが一番悪いだけです。少なくとも日本はベルサイユ講和会議で「人種差別撤廃法案」を出しましたが、ウイルソン米国大統領に拒否されました。ドイツとは違います。

日本人はもっと近現代史を勉強しないと、敵の口車に乗せられてしまいます。世界は悪い人間の方が多いのですから。

記事

ドイツとギリシャの指導者たちは建設的と言うにはほど遠い非難の応酬に明け暮れ、ユーロ圏を存続の危険にさらしている。その1例が、ギリシャのヤニス・バルファキス 財務相に関する2013年に撮影されたユーチューブの動画を巡る騒動だ。当時、左寄りの経済学者として知られたバルファキス氏が「ギリシャはデフォルト(債務不履行)すべきだ。あとはドイツが自分で解決しろ」と述べ、中指を突き上げる侮辱的なジェスチャーをする姿が動画に映っている。

 独テレビのトーク番組中で3月15日に放映されたこの映像を、バルファキス氏は改ざんされたものだと主張した。前後の関係が無視されているとはいえ、問題の映像は本物であることをドイツのメディアが証明したことで、騒動が長引く結果となった。ドイツの批評家は怒りに任せ、ギリシャは嘘つきで無礼だと言い放った。

 ここにきてギリシャとその最大の債権国、ドイツの関係は最悪の状況に陥っている。ギリシャの極左政党、急進左派連合(Syriza)党首のアレクシス・チプラス氏が同国の首相に就任した1月以降、両国の関係は悪化の一途をたどっている。ギリシャ救済策の延長交渉に当たるドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相 とギリシャのバルファキス財務相が、互いに信頼を失っていることは明らかだ。ショイブレ氏がバルファキス氏を「愚かなほど単純」とこき下ろすと、駐ベルリンのギリシャ大使はドイツ外務省に抗議した。

 ギリシャの国防相は、シリア難民をギリシャからドイツに送り込むと脅しをかけている。その中にテロリストが紛れ込んでいても責任は欧州にあると発言した。さらにギリシャの司法相は、ナチスがギリシャを占領した時に与えた損害の補償の一環として、アテネにあるドイツ語学校、ゲーテ・インスティチュートを差し押さえることもあり得ると示唆している。

第2次世界大戦の過去を反省したドイツ

 中指を立てるジェスチャーをしたかどうかなどは、子供じみた喧嘩として済ませることができるかもしれない。だが、ドイツの資産を差し押さえるという、過去の歴史に基づく威嚇は大きな影響をもたらす。両国に付きまとう暗い記憶を蘇らせるからだ。

 1941年から1944年までナチスはギリシャを占領した。その時の残虐さは、ナチスがスラブ諸国において見せた残虐さ次いで悲惨なものだった。その時以降、ギリシャはドイツに対する損害賠償請求を公式に取り下げたことはない。そしてこの数年、ギリシャが抱えるに至った膨大な債務を巡って激しい論議が戦わされるなか、ギリシャ政府は突如、ドイツに財政上、モラル上の歴史的責務の精算を求め出した。

 ドイツは、その過去について他の国から触れられることを嫌がる。独自の極めて正式な歴史認識方法があるからだ。過去の記憶を思い起こし、そこから学習することは、ドイツの政治的、心理的、物理的アプローチの根幹をなしている。ドイツの議員たちが国政を論じるため連邦議会議事堂に向かう時、目にするのは壁に書かれたキリル文字の落書きだ。1945年にベルリンが陥落した時、同議事堂を占領したロシア赤軍が書いた落書きである。無謀な統治を二度と行わないための静かな警鐘として、ドイツはこの落書きを敢えて残した。ナチスが侵略もしくは占領した国に対して、ドイツの政治家は通常は意識して気を配る。

 仮にロシアによるウクライナ侵攻がなければ、アンゲラ・メルケル独首相は今頃、旧ソ連が対ドイツ戦に勝利した70周年を祝う式典に出席する準備をしていたことだろう。だが実際には、その翌日の5月10日にモスクワにある無名戦士の墓を訪れることになりそうだ 。メルケル首相がドイツを欧州におけるイスラエルの最強の同盟国と呼ぶのは、ドイツがホロコーストに対して紛れもない悔恨の意を表明しなければならないことが、最大の理由である。

戦時補償のあいまいな解決

 しかしながら、ドイツが深い贖罪の意を表し、気配りを見せても限界がある。ギリシャが持ち出した一連の歴史問題と、それらがどのよう扱われているかを詳細に見れば明らかだ。ギリシャの要求は次の3つに分けられる。第1は、ナチス侵攻の犠牲となった国の政府に当然支払うべきと考えられる一般的な賠償金の問題。第2が、犠牲者1人ひとりに対してドイツが負うべき精神的なもしくは法的な責務。そして第3は、占領時代にギリシャがドイツに強要された融資である。この融資はアフリカでの戦争の戦費として使われた。

 1953年のロンドン会議において、ギリシャを含む対独債権国は、西ドイツが抱えていた海外債務のほとんどについて支払いを免除した。この結果、ドイツの「経済の奇跡」が成し遂げられたのだ。その際、賠償問題は将来の平和条約に委ねられた。平和条約は1990年に調印され、東西両ドイツと戦勝国4カ国(米国、英国、フランス、ソ連)がドイツ統一を受け入れた。当時のヘルムート・コール首相 とハンス・デートリッヒ・ゲンシャー外相は、この「2+4カ国合意」を平和条約と呼ぶことを敢えて避けた。このことは、賠償問題は条約締結と同時に明白な形で対処されるべきだったとの提案をそらすのに役立った。一方で、賠償問題は解決済みと見なす動きが広がっていった。

 この時、ギリシャが抗議することはなかった。だが、やがて同国が調印していない条約はギリシャの賠償請求権を消滅させるものではないと主張するようになった。ギリシャ人がしばしば指摘するように、1990年以前は賠償問題を議論するのは時期尚早だと言われていた。なのに、今では、いま議論しても遅すぎると言われてしまう。今月、チプラス首相は議会で、ドイツは賠償金の支払いを回避するために「トリック」を使ったと非難した。ドイツはこれを強く否定した。つい最近、メルケル首相の報道官が繰り返したように、ドイツは賠償問題を「法的にも、政治的にも解決済み」と見なしている。

ドイツは710億ユーロの賠償を支払ってきた

 ドイツは犠牲者個人及びその家族に対する責務についても同様の見解をとっている。西独は戦後、多額の賠償を行ってきた。政府データによれば、賠償額は合計710億ユーロ(約9兆3000億円)に上る。欧州諸国と1960年に交わした合意の一環としてドイツは、ギリシャにおいてナチスの犠牲となった人々に1億1500万ドイツマルク(5750万ユーロ、約74億4000万円)を支払った。

 歴史学者のエーベルハート・ロンドルツ氏によれば、これはアウシュビッツに収容されていた日1日当たり2.50ユーロ(約330円)に相当する。犠牲者とその子孫にとって、これは笑止千万な額だろう。ナチスが1944年にディストモ村で繰り広げた大量殺戮の犠牲となった人々は、ドイツを1997年に個人として初めて訴えた。

 しかしながら2012年に、ハーグの国際司法裁判所はドイツ側に立ち、政府は、海外の裁判所において個人から起こされた訴訟に関しては免責されるとの概念を導入した。この決定にほっとしたのはドイツだけではない。過去においては、外国人にひどい振る舞いをした政府はいくらもある。

戦時融資は賠償とは異なる

 だが1942年にギリシャがドイツに強要された戦時融資については事情が異なる。融資額は4億7600万ライヒマルクで、ギリシャによれば、今日の価値にして推定110億ユーロ(1兆4000億円)に達する。これは、救済策の一部としてギリシャがドイツに負っている支援額650億ユーロ(約8兆5000億円)の約17%に相当する。1960年代、首相を務めたルートヴィヒ・エアハルト 氏は、ドイツは再統一後にこれを返済すると述べた。エアハルト氏は、ドイツ再統一は決して実現しないと考えていたのかもしれない。

第2次世界大戦中にギリシャに強要した戦時融資の返済について検討すべきだと考えるドイツ人も多い。「今やらなければ、いつやるのか」とロンドルツ氏は言う。前例を作ることを避けたいのなら、ドイツは信託や基金に資金を拠出すればよいと同氏は示唆する。中道左派の社会民主党や緑の党に所属する政治家の中には、責任を負い、誠意を示すというドイツの戦後の伝統を貫くべく、返済を主張する者もいる。

 一方、ギリシャが戦争のことを持ち出し、改めて苛立ちを募らせているタイミングを疑いの目で見るドイツ人もいる。2000年ころからドイツのアイデンティティは変わってきたと「ザ・パラドックス・オブ・ジャーマン・パワー」の著者、ハンス・クンナニ 氏は指摘する。ドイツはもはや自らを戦争の加害者とだけ見てはいない、犠牲者としても受け止めている。アウシュビッツの子孫であるだけでなく、英国軍による爆撃で戦火に包まれたドレスデンの子孫でもあるからだ。

ドイツで進むギリシャ不信

 今日の文脈で語れば、それが合理的かどうかはともかく、ドイツ人は自らをユーロ危機の犠牲者だと見ている。クンナニ氏によればドイツ人は、「奴らはドイツからカネを奪う口実として過去を持ち出し、自分たちの過ちの尻拭いをドイツにさせようとしている」と考えている。事実、ドイツ最大のタブロイド紙のビルド紙は、賠償の要求を「脅迫」と呼んでいる。

 こうした環境の悪化は、当然ながら、ユーロ圏の将来を巡る論議のトーンにも影響を及ぼしている。直近の世論調査によると、ドイツ人の82%がギリシャが約束した改革を遂行できるかを疑問視しており、52%がギリシャにユーロから離脱してほしいと望んでいる。関係悪化を懸念して、メルケル首相は3月23日、チプラス首相をベルリンに招いた*。欧州を意図せぬ災難から守るために、メルケル首相は自慢の交渉力を駆使しなければならないだろう。

*:報道によると、メルケル首相とチプラス首相はこの会談で、信頼関係を築くことでは同意したものの、政策面での進展はなかった。

3/25 日経ビジネスオンライン 福島香織『パラオ海底の五星紅旗の愚 「天皇訪問」直前の挑発、「単なる悪戯」か?』記事について

パラオは本記事にありますように台湾と国交がある数少ない国です。小生が2011年末から2012年年始に家族と共に訪れたときには、中国人はいなくて台湾人が多かったです。台湾人はパラオに農業指導に来ていました。中国人が蔓延るのは所詮受入側の金のためでしょう。国防上の問題があるというのに。目先の利益だけしか見ないのは非常に危険です。国防動員法がありますから。

この行動は単なる悪戯とは思えません。軍の許可を取った行動と思います。「政府を批判する自由の無い国」でこんな行動は取れません。反日デモが中国共産党の指導でなされているのと同じです。中国のやり方はジワリジワリと人口を植民させていくやり方です。現在のシベリア然り、アフリカ然りです。1930年代の長野朗の『支那30年』にも明らかです。

中国人にマナーを守れと言っても無駄でしょう。バス内の標識には「吐痰請向外吐  提高個人素質」(痰を吐くなら外に、個人の資質を高めよう)と言うのが堂々と貼られている国ですので。

http://gakugo.net/unarigoe/2009/09/97913.html

記事

今年は中国にとって抗日戦争勝利70周年目ということで、おそらく中国政府や中国人の行動の中には、なかなか日本や日本人を刺激するものが出てくると予想している。たとえば共同通信が先日、特ダネとして報じたパラオ海底の旧日本海軍給油艦の船尾に中国国旗「五星紅旗」が結びつけられていた事件。あれはいったい、何だったのだろう。ありがちな中国人旅行者ダイバーのいたずらだと、やり過ごしていい話なのだろうか。

旧日本海軍給油艦「石廊」の船尾付近に中国国旗

 このニュースは、大手メディアでも詳しく報じられていると思うが、簡単に説明したい。

 パラオは、太平洋上にある島嶼国で、第一次大戦後、ドイツの植民地支配から脱し、日本の委任統治領となった。第二次大戦がはじまると北西太平洋方面の拠点となり、1944年9月から2カ月に渡るペリリュー島の戦いなどで日米軍に1万2000人を超える犠牲を出した激戦の地である。戦後はアメリカの信託統治を受け、1993年に独立している。

 このパラオに、天皇皇后両陛下が4月8~9日の日程で慰霊のために公式訪問されることが1月に発表された。パラオには、多くの戦争遺跡がある。日本軍1万695人、米国軍1794人という戦死者をだしたペリリュー島の戦いの現場などには、日米軍の遺構、戦車、ゼロ戦、破壊された停泊中の艦船や兵士の遺品などが点在している。

 この戦争遺跡の一つで、沈没している旧日本海軍の給油艦「石廊」の船尾付近に中国国旗が結び付けられているのを、21日、取材で海底に潜った共同通信記者が見つけた。石廊は太平洋戦争中の1944年3月30、31日、パラオ・コロール島沖で停泊中に米軍の大空襲を受け、多くの乗員と共に沈没。今なお、当時の船体をとどめたままコロール島西南8キロ、水深40メートルの水底に沈んでいる。五星紅旗は幅1メートルほどで、船尾の砲座を囲む柵の支柱だったとみられる水深約26メートルの場所に針金と白い結束バンドで取り付けられていたという。付着物が少ないので一週間以内に取り付けられたものらしい。人気のダイビングスポットであり、中国人ダイバーの仕業ではないかと見られている。

 パラオには毎年、多くの日本人が慰霊や観光に訪れており、日系人が大統領を務めたこともあり、「世界で一番の親日国」とも言われている。その一方で、去年あたりから急増している中国人観光客のマナーの悪さについては、現地の反感が高まっているようで、人民日報系タブロイド紙・環球時報(3月15日)も「珊瑚を破壊し、ゴミを海にポイ捨てすると、現地のタクシー運転手が苦言を呈していた」と報じていた。パラオはGDPの85%が観光収入という観光立国であるが、春節休みがあった2月の訪問観光客の62%にあたる1万955人が中国人だった。これはパラオ人口1.8万人の半分以上を占める。2014年のパラオ観光客は前年比34%増と急増だったが、この最大の要因が中国人観光客らしい。この年の中国人観光客は4万人を超え、国別では一番多かった。

 パラオは台湾と国交を持っているために中国とは国交がない。2012年4月にパラオ警察が同海域で保護されているサメの違法漁を行っている中国漁民を取り締まる際に、中国漁民を一人射殺し、漁民25人が逮捕される事件が発生するなど、パラオと中国の間にはトラブルも結構多い。だが観光立国としては、反感を持ちながらも、1400ドルのヘリクルージングなど金に糸目を付けずに遊ぶ中国人観光客増を歓迎せざるを得ない状況だった。

普通の中国人観光客の発想なのか

 こういう状況をかんがみると、石郎船尾の「五星紅旗」は、マナーの悪い中国人観光ダイバーの悪ふざけだろう、とは思う。実際、愛国を掲げる中国人が国旗を持って旅行に行き、無邪気に国旗を広げて記念写真を撮影する光景は実はわりと見かける。私は台北で、そういう中国人観光客を見かけたことがある。これは台湾の人々が相当鼻白む行為である。だが、多くの場合は、単に訪問国に対する知識が不足していたり、想像力が欠如していたりして、無礼なだけで、何が悪いか、本当に分かっていないようなフシもある。

 ただし、日本人にとって英霊の眠る海であり慰霊の場であるパラオの海で、天皇皇后両陛下が慰霊に訪れられる直前のタイミングで、わざわざ水底の旧日本軍艦に五星紅旗を掲げる行為は、あきらか日本のパラオにおける歴史を知り、日本とパラオの関係や国情を知った上での日本や日本人に対しての政治的挑発の意図があるだろう。日本人の死者に対する思いの深さ、慰霊や弔いの心を重視する国民性を知った上での侮辱行為ではないか。当然、パラオの誇る世界遺産の海を汚す環境破壊行為でもあるし、また独立国で国交のないパラオに対する失礼極まりない行為でもある。知りたいのは、こうした行為が本当に普通の中国人観光客の発想なのか、あるいは国家的意志のようなものが働いているのか、ということである。

 と言うのも、2013年8月1日、中国人民解放軍のあの過激なタカ派発言で知られる羅援少将が人民日報海外版主催の講演会で「五星紅旗を釣魚島(尖閣諸島)海底にさして主権を主張すべきだ」と発言していたことを思い出したからだ。その対談内容を簡単に紹介すると。

「五星紅旗を海底に挿して主権を主張すべきだ」

 「八一建軍記念日のおり、著名軍事専門家で軍事科学院世界軍事研究部の副部長である羅援少将が(人民日報海外版が運営する)海外ネット“名家講堂”のゲストとして、『中国領海をめぐる争いに対する策略』と題する講演を行った。人民日報の編集委員で海外版総編集長の張徳修が出席、海外版副編集長の王咏賦が司会を担当した。このとき、羅援は『目下我が国の平和崛起が直面する問題は外部からの挑発が“両海三領域”、つまり東シナ海、南シナ海、インターネット領域、宇宙領域、金融領域に集中していることだ』と語り、黄岩島(スカボロー礁)事件、仁愛礁(セカンド・トーマス礁)事件など、フィリピンとの領海問題および、釣魚島(尖閣諸島)をめぐる対立の文脈を分析。同時に中国がいかにこの争いに対応して主権防衛を行うかについて、具体的な提案をした。

 羅援は『我々は東シナ海と南シナ海で、六つの存在感を突出しなければならない。つまり行政、法律、軍事、執法、経済、世論における存在感である』と語り、『さらに国防は科学と相互に結合するべきだ。たとえば蛟龍号有人深海探査艇の技術をもって、釣魚島と南シナ海の島礁の海底に五星紅旗を挿し、中国の主権を喧伝するべきである』と語った。

 『万里海疆孤島咽、銅墻鉄壁誰能越』(万里の海の辺境と孤島に、銅墻鉄壁をはりめぐらせば誰も越えることはできない)と、岳飛の満江紅に習った自作の漢詩を披露。聴衆の大喝采を受けていた」…

解放軍は実際に2010年8月26日、国産有人深海探査艇蛟龍号によって南シナ海の深さ3000メートルの海底にまで潜り、五星紅旗を立てることに成功。その様子はCCTVでも放送されている。この蛟龍号は改良を重ねられて今は7000メートル位潜れるそうだ。

 こうした国家戦略と、親日国の海底に眠る旧日本軍艦に中国国旗を飾る発想はかなり似ている。30メートルの深さで国旗の取り付けなど、ツアー参加のにわかダイバーの所業というよりは、かなり慣れたダイバーではないだろうか。本当にただの観光客だろうかと、ひょっとして軍関係者じゃないのか、とかんぐりたくもなるだろう。

「遺憾の意」なければ「国家の意思」では?

 中国ではこの報道については、共同通信を引用する形の事実報道が中心で論評は23日の段階ではほとんどなかった。微博では、日本人を悔しがらせているぞ、といった賞賛や歓声が散見される。だが、日中の複雑な歴史関係に絡む感情を差し引いても、この行為は明らかに海にゴミをポイ捨てする中国人観光客と同じかそれ以上のマナー違反である。最近、パラオ周辺の海底には簡体字ラベルのついた食品の袋や缶などのゴミが落ちており、パラオ政府はこれを問題視して4月15日から中国人の入国者数を制限することにしている。中国人にとって神聖な五星紅旗も、こういう使い方をしては、海底に落ちている簡体字のついたゴミと同じ、海を汚しているだけである。

 個人的な意見を述べるならば、中国政府がこの件に関して正式に遺憾の念を示さない限り、こういった行為は中国の国家としての意志とみなしてよいと思う。海底の戦争遺跡に五星紅旗を結び付けた輩が政府や党や軍の指示を受けてやったのではないとしても、いまだに海底に旗を立てて主権を主張するが勝ちという発想で、領土をめぐるトラブルを解決しようと軍の少将が中央メディアで呼びかけている以上、このような国民の行為は党と政府の指導に従ったものだとはいえるだろう。

中国人観光客は世界の観光立国の救世主であるとみなされている。彼らが昨年海外旅行先で使った金は1兆元を超え、それは中国国内における中国人観光客の消費よりはるかに多い。日本で春節(旧暦正月)休みがあった2月、45万人の中国人観光客が訪れてくれて、百貨店や家電量販店などで引き落とされた銀聯カード(中国版デビッドカード)の総額は30億元を超えていたという。日本に興味を持ち、大量に買い物をして経済に貢献してくれたことに、日本人の多くは感謝し歓迎している。

「救世主」よ、最低限のマナーは守れ

 だが、ふと思うのだ。観光客が、単純に日本が好きで、日本をもっと知りたくて観光に訪れてくれるのならば、私たちは心をこめてもてなしたいと思うけれど、そこで声高に領土や領海の主権主張や政治的ロビー活動を展開されれば、それはもはや普通の観光客ではない。中国政府のプロパガンダを担った経済、文化進出の尖兵として、日本人の目には警戒すべき相手としか映らないだろう。

 私は中国人観光客を歓迎したい方なので、訪問先の環境を損なわない、遺跡・文物を傷つけたり汚したりしない、その土地の宗教、文化、歴史に配慮する、という最低限の観光客マナーをどこの国にいくのであれ守ってほしい。もし、中国が、観光客を公共外交戦略の一環と位置付けているのならなおさら、旗を振りかざして権利や存在感を誇示するようなやり方は逆効果であると気付いた方がいい。

 

3/24 日経ビジネスオンライン 高濱賛『ヒラリー危うし!「メールゲート」スキャンダルでぐらつく』記事と3/14 Andy Chang 『ヒラリードットコム・ゲート』について

民主党と言うのは日米問わずダメでしょう。メール問題の報道の仕方は、ヒラリーとジェブ・ブッシュを相討ちにしたい構図がすけて見えます。安倍さんが上・下院で演説するのですら中韓はオバマ政権を使って、日本政府に圧力をかけているようです。

歴史認識の問題は日本国民がもっと危機感を持たないといけない問題です。小生の体験で言えば、余りに左翼メデイアに影響を受け過ぎではないかと思わざるを得ない場面に遭遇しました。一昨日、小生が総会屋担当をした時に、一緒に働いた尊敬できる先輩と飲みました。小生が総会屋に妥協しようとしたときに決然と“No”を言われた大先輩です。でも意見が全然合いませんでした。意見が合わないのは小生の考え方が飛躍しすぎであるからかも知れません。でも、中国の体験のない人には分からないのかもと思いました。それだけ中国人のやり方は日本人の想像を絶するという事ですが。

「士気の集い」、「防人を励ます会」のメンバーと飲むのが心の安らぎを感じます。やはり、昔の会社関係の人とは議論が噛み合わないような気がします。残念ですが。小生の意見が正しく、他の人の意見が間違っているという意味ではありません。日本は中韓と違い、多様な意見の存在を認める国です。でも酒を飲むときには、自分の意見と近い人と飲む方が精神的に落ち着きます。

高濱賛記事

次期米大統領の最有力候補と目されるヒラリー・クリントン前国務長官(69)が在任中に私的メールアドレスを公務にも使用していたこと(米メディアは「メールゲート」と命名)が3月2日明るみに出た。

 米下院のベンガジ調査特別委員会(2012年9月11日に駐リビア米総領事館襲撃事件を調査している)がその事実を「発見」し、米国務省が内部調査し確認した。

 「連邦公文書記録管理法」(The Federal Records Act)は、閣僚ら政府高官に対し、在任中行う公務に関する電子メールはすべて公用アドレスを使うことを義務付けている。その記録は退任後、「米国立公文書記録管理監督局」(NARA)の管理下に置かれる。同法は同局に強力な法的強制力を付与していないため、違反者に罰則を科すことはごく稀とされる。だが今回は、次期大統領の有力候補が国家機密を扱う国務長官在任中に行った「違法行為」であるだけに、そのインパクトは想定外の方向に広がる可能性がある。

 クリントン氏は報道から8日後の3月10日に記者会見を開き、「持ち歩く端末が1台の方が便利だった。公私を分けておいた方が良かった。法令違反はしていない」と弁明した。だが、この程度の釈明でメディアや共和党が収まる気配はない。私的メールアドレスを使用した送受信メッセージの数は約6万通。クリントン氏はそのうち公的なもの約3万通を、発覚後、国務省に提出している。残りは「とっておく必要がない」私的メッセージだとして消去したことを示唆している。

連邦公文書記録管理法に違反する恐れも

 米政界の事情に精通している専門家たちは「この場は凌いだようだが、中長期的に見ると傷は残った。国民は次に発覚するスキャンダルは何かと見ている」(政府関係コンサルタント会社プライム・ポリシー・グループ幹部のケリー・ギブソン氏)と厳しい見方をしている。

 保守派の法律学者の中には「今回のケースは完全な法破り。発覚後、私的メッセージは消去したという。提出することを強制的に要求される可能性のあるメッセージを1通でも破棄することは立派な犯罪だ」(ロナルド・ロツンダ チャップマン法科大学院教授)といった意見も出ている。

(”Clinton’s Email Scandal Will Leave a Scar,” Cary Gibson, Thomas Jefferson Street Blog, US & World Report, 3/17/2015)

(”Hillary’s Email and the Law,” Ronald D. Rotunda, Wall Street Journal, 3/16/2015)

 というのも、「クリントン元大統領、前国務長官夫妻には、その政治活動において不透明な点があるとして批判が付きまとっている。今回のスキャンダル発覚はそれを増幅させる結果になった」(米ニューヨーク・タイムズ紙)からだ。

(”Hillary Clinton Used Personal Email Account at State Dept., Possibly Breaking Rules,” Michael S. Schmidt, New York Times, 3/2/2015)

共和党は「第三者調査委員会」立ち上げを要求

 共和党にとってはクリントン氏のスキャンダルは降って湧いた幸運。クリントン叩きの絶好の材料と言える。

 ジョン・ベイナー下院議長(共和、オハイオ)は3月17日、第三者調査委員会の設置を提唱した。「ベンガジ事件の真相を究明するため、クリントン氏が私的なメールアドレスで送受信されたメッセージのうち同事件解明に必要なものがどれかを決める決定権を第三者機関に与えるべきだ」。

 一方、下院ベンガジ特別委員会のトレイ・ガウディ委員長(共和、サウスカロライナ)は「ベンガジ事件にかかわり合いのあるすべてのメッセージを委員会に提出してもらうため、クリントン氏には2週間の猶予を与えた」と発言。また下院監視・政府改革委員会のジェイソン・チェフェッツ委員長(共和、ユタ)は、私的メッセージも含めすべてのメッセージを提出するようクリントン氏に求めている。

(”Boehner calls for ‘third party’ access to Clinton emails,” Scotto Wong, The Hill, 3/17/2015)

 今後の動き次第では「クリントン氏を委員会に招致する可能性も出てくる」(下院監視・政府改革委員会スタッフ)。

発覚以後、「ヒラリー好感度」は6ポイント減

 今回の「メールゲート」が16年に行われる次期大統領選に向けたクリントン氏の好感度にどのような影響を与えているのか。

 問題発覚後の3月13~15日にCNNが行った世論調査によると、同氏の好感度は53%(昨年11月は59%)、不人気度は44%(同38%)。「ヒラリー嫌い」が6ポイント増えている。昨年11月の時点では、56%が「ヒラリーは正直で信頼できる」と答えていたが、この回答も50%にダウンしている。

(”Poll: Hillary Clintoin’s email divides public,” Jennifer Agiesta, CNN, 3/16/2015)

 共和党サイドでは本命と目されながらも支持率では今ひとつ伸び悩んでいたジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が他候補を一歩リード。

 CNNが実施した先の世論調査ではクリントン支持は55%(昨年12月は54%)、ブッシュ支持40%(同41%で)、依然としてクリントン氏が15ポイント、リードしている。だが共和党サイドは、「メールゲートの重要性が米世論にさらに浸透すれば、ヒラリー支持はさらに落ち込む。ブッシュが追いつき,追い超すことチャンスは十分ある」(共和党選挙対策担当者)とあくまでも強気だ。

「ヒラリー大統領選キャンペーンの終わりの始まり」

 保守派メディアの「ヒラリー叩き」にも力が入ってきた。3月10日の記者会見の様子を見た保守派コラムニスト、ペギー・ヌーナン氏は米ウォール・ストリート・ジャーナル(3月13日付け)のコラムでこう書いている。

 「ヒラリーの目はうつろで、質問する記者とアイ・コンタクトすら取らなかった。国務長官がメールを公私混同すること自体、スキャンダルなことは皆知っている。ヒラリーにはそのことすら他人から問題にされたくないだけのだ。…彼女には戦闘に赴くハングリー精神が微塵もない。戦いに疲れたようにすら見える。…たぶん、私たちはヒラリーの大統領選挙に向けたキャンペーンの終わりの始まりを見たのかもしれない」。

(”Hillary Seems Tired, Not Hungry” Peggy Noonan, Wall Street Journal, 3/13/2015)

 ヌーナン氏は、ロナルド・レーガン第40代大統領のスピーチライターなどを経て政治、宗教、文化に関する著書、論文を書きまくっている女性論客だ。

Andy Chang 記事

ヒラリー・クリントン元国務長官が公務通信に彼女の個人のメールアドレスを使用していたことが問題化したので、ヒラリーは3月10日、ニューヨークで記者会見を開いて釈明した。

ヒラリーは2016年の大統領選挙で民主党の最有力候補とされていたが、このスキャンダルで違法行為を究明されることになったので、たとえ出馬しても当選は無理と言われている。

ヒラリードットコム・ゲート、またはイーメール・ゲートと呼ばれている。ヒラリーは記者会見で問題の鎮静化を図ろうとしたが、その逆にパンドラの箱を開けてしまった感がある。

アメリカ政府の規定では、公務執行中は公務用のメールアドレスを使うことが義務付けられているが、ヒラリーが国務長官に就任した2009年にはまだ規定がなかったという。

しかし規定した後もヒラリーは規定を無視して私用スマホで個人メルアドを使用していたことが去年8月に発覚した。ヒラリーは今年1月になってからようやく5万5千通のメールのコピーを提出した。しかもヒラリーは一般のサーバーでなく、クリントン家の自宅サーバーを使用していた。

  • ヒラリーの記者会見で述べたウソ

記者会見でヒラリーは次のような4点の説明をした。

(1)国務長官に就任した時に、公務用と私用のスマートフォン(スマホ)、二つのスマホは面倒だから、一つに絞って私用スマホを使うことにした。当時はこれが許されていた。

(2)私用スマホから発信したメールは受信者の公用アドレスに送信したので、受信者は規定に従って政府に提出され保存された。

(3)引退後、政府は国務長官に在任中のメールの「コピーの」提出を求めた。私は要求に従い55000通のコピーを提出した。しかし、プライベートなメール、例えば娘の結婚式などのメールは提出せず、「消去してしまった」。

(4)更に私は、国務省に提出したメールすべてを公開するよう要求した。私用スマホで国家機密を送信したことはなかった。

この4つの声明はみんな嘘の塊である。

(1)ヒラリーは「公用と私用の二つのスマホは面倒だ」と言ったが、実際にはiPhone、Blackberry、iPad二個の計4つの私用スマホを使っていた。更に彼女はヒラリーだけでなく別のメルアドを使っていた可能性もあると言われる。

(2)政府の規定ではメールの提出を義務付けられていたが、受信者側が規定に従って提出したのに、彼女だけが規定に反して提出しなかった。しかもヒラリーは2012年に国務長官の通達として公務員の私用スマホを禁止しただけでなく、私用スマホを使った直属部下の駐ケニヤ大使を免職処分にしたのである。部下に対して法規に従えと命令し、本人は法を犯したのである。

(3)政府がメール提出を求めたとき、彼女は55000通のメールを「紙にコピーして」提出した。紙に印刷されたメールでは違法行為があったかどうかの調査はできない。メールの提出は電子メールのコピーでなければならない。

また、彼女はプライベートのメールを消去したと説明したが、彼女には公私の「判断する権利」はない。

「不都合メール」を消去した疑いが残る。提出しなかったメールを消去する権利はない。証拠隠滅である。しかもヒラリーは自宅サーバーの提出を拒否した。

オバマ政権は2011年に二つの行政命令を出している。一つ目は公務員の私用スマホの私用を禁止したこと、二つ目は公務メールをすべて政府が保存することである。2009年の就任当時は私用スマホが「許されていた」としても、2011年の命令に従わなかったのは違法行為である。しかも2012年には本人が部下に通達を出している。

  • AP通信社が国務省を告訴

記者会見の翌日11日、AP通信は米国の国務省を告訴すると発表した。AP通信はアメリカの情報公開の自由(Freedom of Information Act)でヒラリー在任中のメール提供を国務省に申請していたが、国務省はAP通信の要求を数年間放置したままだった。だからAP通信は遂に国務省を告訴することにしたという。

AP通信だけでなく、国民が最も知りたいことはベンガジ事件と呼ばれるヒラリーの部下だった駐リビア大使ほか三人がリビアのベンガジ市でテロ攻撃を受けて死亡した事件の詳細である。テロ攻撃が始まった際にヒラリーとオバマはホワイトハウスで攻撃の消息一切を聞きとっていたが、オバマは救援隊を派遣しなかった。そして四人の死亡が確認された後もベンガジ事件をテロ行為ではなく、ある男のビデオに抗議した事件だったと強弁したのである。

ベンガジ事件の調査委員会の主任・トレイ・ガウディ国会議員は、事件当時のメールと自宅サーバーの提出を要求している。

  • クリントンスキャンダルの多いこと

クリントンのスキャンダルは私用スマホの使用やメール消去などの一か月ほど前から外国献金問題が問題化していた。ワシントンポストの報道によると、クリントン基金会(ビル、ヒラリー、チェルシーの基金会)が2001年から今日までに20億ドル以上の献金を集めたことを素っ破抜いたが、この基金会は多くの外国の献金を受け取っていた。

ヒラリーが2009年に国務長官に就任し、基金会はヒラリーが政府の要職に就いたので外国の献金を断ると通達したが、2014年にヒラリーが退職すると同年12月には外国にヒラリーが公務を引退したので再び献金を受け付けると通達したと言う。

報道によるとサウジアラビアの献金は1000万~2500万ドル、アラブ酋長連合国は100万~500万ドル、このほかにカタール、アルゼンチン、オーストラリアなども献金リストに入っている。

ヒラリーは大統領選挙に出馬すると言われ、国内国外でも彼女がアメリカ大統領になる可能性を報じている。しかし、たとえ当選した後に外国献金を返還したとしても献金の恩情は残る。大統領が外国の献金を受けたら政治にどんな影響を与えるか。彼女に大統領の野心があったら初めから外国献金を断るべきだった。それなのに引退したから再び献金を受け付けると言いだしたとは呆れる。

  • ウオーターゲートとヒラリーゲート

アメリカのメディアは民主党贔屓で、ヒラリーやビル・クリントンのスキャンダルの報道を避けてきたが、記者会見後は三大テレビが少しだけ報道するようになった。フォックスニュースは共和党系でベンガジ事件やヒラリー献金問題などを追及していたが、AP通信の告訴で今後はスキャンダル報道がエスカレートすると予想される。

民主党員はヒラリーの「消極的支持」が多く、やがて問題が沈静化して彼女の立候補に影響を及ぼさないことを願っている。だが彼女が本当に立候補すれば共和党候補にとっては願ってもない有利な選挙となるであろう。

ウオーターゲート事件の後、政府がらみのスキャンダルはみんな何とかゲートと呼ばれるようになったが、ヒラリーのメール消去は、ニクソンテープの消去にソックリである。ニクソンはウオーターゲート事件の介入を否定し続けていたが、ホワイトハウスでは常時録音が設置されていたことがわかり、国会がテープの提出を求めた。

するとニクソンは録音テープをタイプした文書を提出し、おまけに秘書が録音テープを18分ほど「間違って消去した」と発表したので、一挙にニクソン罷免問題、ニクソン辞職に発展したのだった。

ヒラリーの個人メールのタイプと部分消去は、ニクソンテープとそっくりである。スキャンダルは始まったばかり、ヒラリードットコム・ゲートはどんどんエスカレートするだろう。