『中国スマホ社会で高齢者置き去り、タクシー拾えず救急搬送の悲哀』(12/26ダイヤモンドオンライン 王青)について

12/28日経朝刊中国スマホ決済 500兆円 7~9月期 前年同期比3.3倍 地方都市へ裾野拡大

【広州=中村裕】中国大手調査会社の易観が発表した7~9月期のスマートフォン(スマホ)を使った中国での決済金額は、前年同期比約3.3倍の29兆4959億元と急拡大した。ここには商品の支払い決済以外にも、金融商品の購入や個人間のお金の貸し借りなども含まれるが円換算で約509兆円となった。今後、サービス領域の拡大や地方都市への普及で、さらに中国でのスマホ決済は勢いを増しそうだ。

スマホ決済は、サービス名「支付宝」で知られるアリババ集団と、「微信支付」を提供する騰訊控股(テンセント)の中国ネット2強が、ほぼ市場を独占し、合計で93%(金額ベース)を占めた。アリババが54%、テンセントが39%だった。

中国のスマホ決済はもともと、店舗での買い物、レストランでの会計時やインターネット通販、出前の注文、ライドシェア、シェア自転車の利用時に使うことが多かった。ただ、サービス範囲の拡大は著しく、地下鉄やバスなど公共交通機関でもスマホ決済が利用できる都市が増えている。

直近でも、南部の中核都市である広東省広州市では11月から地下鉄、バスでテンセントの「微信支付」が使えるようになったほか、12月からは浙江省杭州市でアリババの「支付宝」で同様のサービスが始まり、スマホ決済が増え続けている。

さらにスマホを使って財テク商品「理財」を購入する人が増えていることも、スマホ決済額の増加の背景にある。銀行の預金金利を上回る商品が多く、スマホを通じて理財を買うのは、もはや中国人にとっては一般的な投資行動となっている。

サービスの種類だけではなく、大都市から中小都市へ地域的なサービスの広がりも、スマホ決済額の急増の背景にある。

一方、1~9月の累計のスマホ決済額は71兆元と、円換算で1千兆円の大台を突破し、すでに1230兆円に達した。

中国では、「スマホで何でもできるので、今年になってから、外出時に財布を持たなくなったし、銀行にも行かなくなった。もし急にお金が足りなくなった場合でも、友達に頼んで、友達のスマホから自分のスマホに直接お金を送ってもらうことができるので、スマホだけで事は十分に足りる」(広東省広州市在住の大学4年生の女性)といった人が増えている。個人レベルではまさに財布要らず、銀行要らずともいえる状況がこの1年間で中国で出来上がった。

今後は、公共交通機関での利用が一段と進むほか、クレジットカードの毎月の返済、銀行を介さず友人間でのお金の貸し借りといった範囲で、さらに利用が拡大するとみられている。来年の18年も中国ではスマホ決済額は一段と膨らむのは間違いなさそうだ。>(以上)

スマホ決済で理財商品まで簡単に購入できるというのは、ビットコイン同様、非常に危険と感じます。まあ、自己責任で買うのですから何とも言えませんが。バブルが弾けたときには無一文になるのでは。何の担保もないでしょう。

王氏の記事によりますと、中国の高齢者はスマホ決済に追いついて行けないとのこと。それはそうです。今60歳以上の人は大躍進から文革の間、真面に勉強する機会はありませんでしたから。なお、「中国の道徳を10年後退させた」という表現がありますが、賄賂社会・自己中・嘘つき・他責の人達にはハナから道徳はなかったと思っています。

翻って日本では、以前にも触れましたが、調査に依れば高齢者のスマホ利用率は55%とあります。ただ携帯の代わりにしか使っていない気がします。もし、ネット検索でいろんな情報を取るようにすれば、日本の既存メデイアはフェイクニュースを如何に垂れ流しているか、気付くと思います。特に中韓の見方を肯定して著しく日本の名誉・国益を如何に損ねているか分かろうと言うもの。

https://marketing-rc.com/article/20160731.html

12/29日経朝刊日中和解を阻む敵意の深層 リチャード・マクレガー氏 ジャーナリスト・作家

中国の戦略専門家らは太平洋戦争の終結した1945年から何十年にもわたり、米国の東アジアでの支配的な役割をけん制し、突き崩そうと熟考してきた。中国はすでに多くの選択肢を実行に移している。

Richard McGregor 英フィナンシャル・タイムズで北京、ワシントン支局長。「Nikkei Asian Review」に寄稿。近著に「Asia’s Reckoning(アジアでの審判)」(未邦訳)。

中国は海洋で、米国に挑戦するため海軍を増強し、南シナ海で軍事拠点化を進める。米国の中国沿岸での偵察飛行にも強く反発する。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など近隣諸国を(米国陣営から)引き離し、中国中心の新しいクラブに引き込もうとしている。最近の例はフィリピンだ。

中国がまだ試みていないが、米国の世界での地位までを破壊する選択肢が1つある。日本を長年の米国との同盟関係から引き離すことだ。日本は米国の最も重要な軍事面での同盟国といえる。トランプ米大統領は就任後、安倍晋三首相と親しい個人的関係を築き、日本と緊密な協力を続ける。中国が日本の安全を保証し、少しでも米国との距離を置かせることに成功したらどうなるか、想像してほしい。アジアにおける超大国としての米国の地位は失われてしまう。

なぜ中国は日本を抱き込もうとせず、敵意をあらわにするのだろうか。中国があえて日本に手を差し伸べようとしないのは、日本が(37年からの日中戦争を含む)戦時中の残虐な行為について謝罪するのを拒否し、中国全体が激怒しているからだという。だが紋切り型の説明では、筋が通らない。中国と日本の和解の障害になっているのは別のものだ。アジアにおける二大大国の間の自然な対抗意識が、戦争の歴史と結びつき、国内政治に埋め込まれてしまった。

90年代に本格的に始まった中国の容赦ない反日の動きは、中国の国内政治に大きな影響を及ぼした。中国国内が日本の政策に神経過敏になったため、政府高官が純粋に日中の緊張緩和を主張するのは、キャリアを棒に振る行為に等しくなった。

例えば中国の王毅外相は、政府でも群を抜く日本通で、流ちょうな日本語を話す。だが中傷を避けるため、公の場で日本語を話さないようだ。中国の外交官や学者はだれもが、日本との関係改善を提唱することの危険を知っている。名門の清華大学の楚樹龍教授は「日本について何か前向きの発言をすれば、学生から必ず怒りの反応が返ってくる。ただ私は米国の研究者であるため、世間の意見を気にすることはない。ほかの人と意見が違っても、裏切り者と呼ばれることはない」と語る。

サイバー空間では、日本に対する敵意が、中国の「裏切り者」を取り上げるサイトにあらわれている。名前があがる人物のほとんどが日本に関連しており、北京と上海の著名な学者や中国の学校で使われる教科書の著者らが含まれているようだ。

両国の関係に過敏になるのは中国側だけではない。日本では安倍首相も含めた保守派が、戦時中の歴史について修正主義的な見解を示してきた。日本政府内の中国専門家である「チャイナスクール」は対中政策に影響力を持っていたが、中国寄りの態度を示す親中派とみられ、遠ざけられている。

また日本はしばしば戦争について謝罪しているものの、同じくらい頻繁にベテランの政治家が逆の発言をし、日本の誠意ある姿勢を台無しにする。世界第2、第3の経済大国として世界の貿易の操縦席に座る両国は、対話による安定した一般的な関係を構築することができなくなった。

中国と日本の長年の緊張は米国にとって大きな意味を持つ。トランプ氏は、戦後70年以上たつにもかかわらず米軍が日本に駐留を続けるのはなぜかと問いかける。もっともな問いだが、簡単に答えられる。日本は自国だけで中国を御しきれないことを知っている。北朝鮮の核を巡る動きが、日本の不安に拍車をかける。

米国が在日米軍の規模を縮小するようなことがあれば、日本は動揺し、核保有にも動くだろう。動きをみて初めて、中国は日本に対する積年の敵意の代償に気づくのかもしれない。

限られる日本の道

中国が、日本を長年の米国との同盟関係から引き離そうと狙っている。その懸念は今後、現実味を帯びる。中国共産党大会では、トップを走る米国を2035年に経済で抜き去り、50年には戦争でも勝てる強国になると宣言した。

順調な成長を経て、それが本当に成功すれば、はざまに生きる日本は選択を迫られかねない。今後も米国との同盟関係を続けるのか、これを解消して中国との協商や同盟といった関係を探るのか、である。

とはいえ戦後70年、民主主義を享受し、それが定着した日本と、一党独裁体制が続く中国では政治体制が根本的に異なる。共産党の中国と同盟を組む選択肢はない。日米同盟を維持しつつ、中国とも協調する。日本が選ぶべき道は限られる。(編集委員 中沢克二)>(以上)

二階幹事長が中国に行き、習と会って舞い上がっていますが、中国の狙いは上記の通り日米離間策にあります。それを分かって付き合わなければ(本来は敬して遠ざけるべきですが)。12/30日経朝刊には菅官房長官の「日中関係改善」へのコメントが載っていましたが、無条件受入ではなく、主張すべきは主張するスタンスです。そもそも関係改善する必要があるのかどうか。技術を詐取されるだけで、新幹線と同じく世界に中国製として売り出されるのが目に見えています。日本企業は騙されないように。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25098740W7A221C1000000/?df=2

リチャード・マクレガー氏が「順調に中国が経済を拡大し、軍事力でも米国を抜く」と思っているのは、米国が拱手傍観しているのを前提としているのでしょうが、米国がそんなにバカとは思えません。戦後覇権が英国から米国に移った時に、スムースに行ったのは価値観が近かったからです。米国と中国では強欲という共通項はあっても、自由や民主、人権と言う価値観を中国は持ち得ていません。パクス・アメリカーナからパクス・シニカにさせようとすれば、西側諸国は抵抗するでしょう。あり得ないと思います。日本もNATOに入り、西側との連帯を強めていけば良いと思います。

12/28JBプレス 北村淳<「北朝鮮暴発の危機」は中国のシナリオだった? 中国の海洋戦略が勝利を手にした2017年>北村氏の見方と言うか、米軍の一部の見方が正しいかどうか分かりませんが、中国は北に騒動を起こさせ南シナ海や東シナ海から目を逸らさせようとした可能性は勿論あります。狡賢い連中ですから。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51961

12/29日経トランプ氏、中国に「非常に失望」 北朝鮮の石油輸入容認で>「北朝鮮の船が10月以降、約30回にわたり公海上で中国籍とみられる船から石油を密輸している現場を米国の偵察衛星が確認した」と。中国を信じてはいけないという事です。北村氏の記事のように、中国と北の自作自演、茶番なのかもしれません。江派+瀋陽軍区+金一族の繋がりもどこまで本当やら。中共と北がグルになっている可能性も充分あり得ます。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25243560Z21C17A2000000/

12/28NHKニュース20:52北朝鮮への米国の軍事行動 米国では3割超が「賛成」

日本とアメリカの共同世論調査の結果が発表され、核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮へのアメリカの軍事行動の是非について、アメリカでは「賛成」と答えた人が日本より10ポイント以上高く、3割を超えました。

この世論調査は日本の民間団体「言論NPO」がアメリカのメリーランド大学と共同で、ことし10月から11月にかけて行ったもので、日本では1000人、アメリカでは2000人が回答しました。 それによりますと、核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮へのアメリカの軍事行動の是非について、「賛成」と答えた人は、日本で20.6%、アメリカでは32.5%で、アメリカが日本より10ポイント以上高くなっています。 一方で「反対」と答えた人は、日本で48.3%、アメリカでは44.2%と、アメリカが日本より4ポイント余り低くなりました。 これについて調査を行った言論NPOは「北朝鮮への軍事行動に対する反対の声がアメリカでは支配的なわけではない」と分析しています。 また、北朝鮮の核開発を止める最も有効な方法について聞いたところ、日本では「止めることができるとは思わない」が最も多く、27.2%になりましたが、アメリカでは「6か国協議など、多国間での外交努力」が最も多く、35.3%で、「アメリカによる軍事行動」と答えた人の3倍以上に上り、アメリカでは、軍事行動はあくまでも最後の手段という意識が強いとしています。 さらに北朝鮮を核保有国として認めるべきかについて、アメリカでは日本の3倍近い37.6%が「認めるべき」と答えていて、言論NPOは「日本国民との意識のズレも浮かび上がっている」と指摘しています。>(以上)

「言論NPO」なるものは工藤泰志元東洋経済新報社編集長が理事長を務めているようですから、既存メデイアの延長線にあると見て良いのでは。つまり、中立・公平を装って世論を誘導しようとしていると思います。BPOと同じでしょう。真面には信じられません。NHKも同じ穴の狢でしょう。

記事

どんなに小さな店や屋台でもスマホで決済できるほど、モバイル決済が常識化している中国は「IT先進国」「モバイル先進国」と呼ばれ、あらゆるものがスマホアプリでどんどん便利になっている。その一方で、IT化の波について行けず、取り残される高齢者も多い。(日中福祉プランニング代表 王青)

現在の中国IT社会を象徴する 街角でひたすらタクシーを待つ老夫婦の姿

先月の上海、寒気襲来の日―――。

住宅街を出たところの大通りの角に、老夫婦が寄り添ってタクシーを止めようとしています。空車の点灯があるにもかかわらず、タクシーは止まる気配もなく、猛スピードで次から次へと老夫婦の目の前を走り去ってしまいます。

冷たい風の中で、老夫婦が疲れた様子でひたすらタクシー待つ……。

これは、最近の上海や北京などの大都会でよく見かける光景で、スマホ決済やアプリなどのIT技術の進歩に無情に置き去りにされる高齢者たちの、まさに象徴ともいえるシーンとなっています。

中国の上海、北京などの大都会で急速に利用が増えるシェア自転車や、ウィーチャットやアリペイなどモバイル決済は着実に普及しています。スーパーやコンビニエンスストアは当然のこと、個人がやっているどんなに小さな店でも、屋台でもQRコードがあります。ほとんど財布を持たなくて済みます。

タクシーを呼ぶ際には、なくてはならないディデイやウーバなどの配車アプリ。これらは、世界中から注目を集め、「凄い!」と称賛の声も浴びており、輝く最先端の存在となっています。中国に比べて遅れている日本は「まるで前世紀にいる」とも言われたほど、日本でも大きな話題となりました。

確かに筆者も中国へ出張の度、その便利さの恩恵を受けています。“バイ菌”満載の汚い紙幣を触らなくても済むと助かっています。

しかし、これらの先進的ITサービスを、若者が「時代の進歩」の象徴のように享受すればするほど、その光の陰で、高齢者の日常生活には不便さが増していきます。

タクシーを拾えずに炎天下で倒れ 皮肉にも来たのはタクシーではなく救急車

上海の60歳以上の人口率は32%で約460万人がいます。その上、一人暮らしや老夫婦だけの世帯が高齢者世帯の60%以上を占めています。

日本と同様、高齢者の多くはスマホのさまざまなアプリを上手く使いこなせない方が普通です。

「使い方がわからない」、「見えないお金を使うのは騙されないのか」と不安を感じるうえに、「老眼でスマホの字が見えにくい」、「パスワードをいちいち覚えられない」など、高齢者であれば万国共通の悩みもあります。

特にタクシーを拾う場合、高齢者が道端でいくら待っても来ず、目の前まで来ても停まってくれません。今年の夏には、気温40度に達した炎天下で、タクシーを待ち続けていた一人の高齢者が熱中症となってしまい、結局、皮肉にも来たのはタクシーではなく救急車でした。

先月、中国の「敬老の日」に、ある会社員の女性が90代の祖父母に膝用のサポーターとマッサージ機をネットで購入し、その日に届けるように指定しました。

ところが、荷物は玄関まで届けられず、マンション敷地内に新設された配達ボックスに入れられました。受け取るには携帯にショートメールで送った受取番号が必要で、もし24時間が過ぎたら、今度はウィーチャットでバーコードをスキャンし、新たな番号を取得しなければならない仕組みです。

普段は携帯で通話しかしない90代の高齢者に、こんな複雑なやり方は到底できません。結局、敬老の日のための祖父母孝行の気持ちは無駄になってしまった、と女性は嘆いていました。

高齢者の「待ち時間」が長くなっている病院 レジで「今さら現金で払う?」と舌打ちする若い男性

高齢者の通院も最近段々と待ち時間が長くなってきています。

なぜなら、アプリでの予約ができるようになったからです。スマホが使える人であれば、指一本で予約番号を獲得し、わざわざ早く病院に行って並ぶ必要がありません。

ところが高齢者は早朝から病院へ行き、診察開始前よりも並んでいるのに、後から来る人が続々と自分たちの順番の前に入っていき、どんなに待っても診察室には入れません。また、最近はスマホによる振り込め詐欺も多発しているとの報告があり、被害者の多くは高齢者です。

先月上海へ出張した際の出来事です。コンビニのレジでゆっくりと財布から小銭を出そうとしている高齢の男性が、目が悪いせいかのろのろしていると、後ろに並んでいた若い男性が舌打ちして「今さら現金で払う?」と罵っていました。

また、レストランで隣のテーブルにいた年配の女性が、若い店員さんにスマホ決済を要求された時の、途方に暮れた顔が忘れられません。

もはや、モバイル決済などで最先進国であると言われる中国では、日本と別の意味での高齢者による「買い物難民」、「外出難民」、「通院難民」などが続出してくるのではないかと思われます。

「経済の発展」や「社会の進歩と成熟」とは、一体何を基準に測られて評価されるのでしょうか。

日本に観光や仕事でやってくる中国の人たちによく感心されるのが、日本の公共空間の、高齢者や障害者が行動しやすいインフラとソフトサービスによる街の優しさです。

よく挙げられる例としては、地下鉄に乗る車いすの方の移動です。乗車の際にその駅の駅員が折り畳みのスロープを持ってサポートします。下車駅では、すでに車いすの方が何両目に乗っているかを把握して、駅員がスタンバイしています。

また駅構内には大抵、エスカレーターやエレベーターが備え付けられていて、高齢者の方や、身体の不自由な方にはとても便利になっています。

時には階段昇降機まで設置されているところもあります。「だから、日本の街ではよく障害者や車いす姿の人を見かけるのだ」と納得させられます。逆に、中国では、「障害者の姿が少ないのはなぜ?」と中国を訪れる日本人から質問されます。

中国の道徳モラルを「10年は後退させた」といわれる事件

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、「もし、お年寄りが街で倒れたら、助けるべきか、無視するか」という問題では、ある民事裁判の判決が長年、中国の国民を悩ませてきました。

これは2006年に南京で起こった出来事です。ある20代の男性がバスを降りたところ、バスに乗ろうと転んでケガした60代の女性の身体を起こし病院に連れて行きました。その後、女性は「男性にぶつけられた」と言い、賠償金を要求したのです。

結局、裁判まで持ち込まれ、判決で男性は4万元(日本円約64万円)の支払いを命じられました。この判決は当時全国に大きな波紋を広げ、さまざまな議論を呼びました。その「後遺症」はいまだに強く残っていて、「善意ではもう人を助けられません、特にお年寄りは……」と、多くの人々はそう思ってきました。

実際、困っているお年寄りを無視することが多くなりました。

そして、目の前でお年寄りが倒れたら、「まず、写真を撮って自分が潔白となる証明を残し、それから助けの手を差しのべる」というやり方がメディアで紹介されました。

日本では信じられない話かもしれませんが、以後、中国では実際に多くの人が同じ方法を取りました。

この事件は中国の道徳モラルを「10年は後退させた」と専門家が指摘しています。

中国自慢のネット社会に高齢者は置き去りにされている

誰にとっても暮らしやすい社会とはどのような社会なのか――。

今、皆が自慢している中国のインターネット社会で、残念ながら高齢者たちは置き去りにされた状態となっています。

彼らは年を取るにつれ、身体機能の衰えよりも、精神的な焦り、つまり自分が「時代の変化に遅れて追いつけない」という喪失感に翻弄されている寂しさが大きいに違いありません。

一方で、ITの発展に道徳モラルはついていけているのか、考えさせられます。

最近、アリババ創業者のジャック・マーが新たな事業として始めた無人スーパーが、またも熱い視線を浴びています。

これに対してある高齢者の女性が「無人スーパーなら、人件費を省いた分、品物の値段は安くなるの?もし安くならなかったら、我々庶民にとって何のメリットがあるの?ITやキャッシュレスやいろいろ称賛されるけど、我々高齢者には一切関係ない。会話のない買い物はつまらない、ますます孤独になっていくだけ」と愚痴る姿は、多くの高齢者の心情を代弁しているのかもしれません。

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