12/12笹川平和財団主催の奥山真司講師の『地政学から見た海洋安全保障 ~北朝鮮問題を事例として~』のスライドから。
中国が掲げている「一帯一路」に酷似しています。中国人はパクリの名人ですからこれからヒントを受けたことは間違いないでしょう。12/16本ブログでも紹介しました「南シナ海の内海化」も欧米の地政学者の発想のパクリです。
http://dwellerinkashiwa.net/?p=7822
近藤氏の言う「中国模式」が東南アジアに広がっていると言いますが、それは軍事力を恐れてのことです。米国の出方によって変わります。
また「ツキディデスの罠」を避けるために、アメリカを除く「ユーラシアの覇者」を目指すとのこと、ユーラシアの覇権を握るとなると欧州とロシアは黙っていないでしょう。ルトワックの唱えた説(周辺国の合従連衡で対抗)通りとなるのでは。
遠藤氏も近藤氏も「中国が世界征服を目指している」と考えています。小生も本ブログでそのことの危険性を早くから指摘してきました。鄧小平の“韜光養晦”から“有所作為”へ変わったころから中国は野心を剥き出しにして来ました。それが今度の12/1の習の発言で明らかになっただけです。「われわれは外国のモデルを『輸入』しない。同時に、中国のモデルを『輸出』もしない。そして他国が中国のやり方を『コピー』することも求めない。
第一に、中国共産党は一貫して世界の平和と安寧に貢献する。第二に、一貫して世界共同体の発展に貢献する。第三に、世界の文明交流に貢献する」との発言は明らかに嘘です。「南シナ海の人工島は軍事拠点にしない」と習自ら言ったのにも拘らず、軍事拠点化しているではないですか。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」と言う国ですから。日本も遠藤氏の言うように甘い対応をしては駄目でNATOに入り、中国の封じ込めをするようにしないと。
12/26中国観察<中共打壓聖誕重慶上狙擊手 網民抵制洋幽靈共產黨 信徒抗命上街遊行過聖誕 阿波羅網=中共は重慶に狙撃手を配置してクリスマスを祝わせなかった ネットでは“西洋の幽霊である共産党(マルクスの共産党宣言の「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である」からもじって)”をボイコット 信徒は命令に逆らいクリスマスにデモ行進>
今年の重慶市のクリスマスイブ
昨年度の重慶市のクリスマスイブ
「 通知 今年のクリスマスイブ・クリスマスには、全校の教師と生徒は真剣に中共中央弁公庁の定めた“中華の優秀な伝統文化を継承・発展させるプロセスについての意見”を学び、西洋崇拝を止め、西洋の祝日に盲従せず、キャンパス内でのいかなる形でのクリスマス祝賀活動を厳禁する 〇〇中学校」
ショービニズムの極みでしょう。これで「相互尊重、公平正義、提携共勝」と言う言葉がどこから出て来るのか。中共中央がやらせていることです。やはり中国人と言うのは嘘つきです。警戒しませんと。
12/28日経電子版<イスラエル・パレスチナ・日米 東京で4者会談構想 河野外相が提案>12/27本ブログで紹介しました増田俊男氏のメルマガ記事が当たっているのかも。でも日本の安全保障・エネルギー対策上非常に良いことです。中国に顔を向けさせないためにも。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25131660X21C17A2MM0000/
遠藤記事
「中国共産党章程(党規約)」の現物
12月初旬、「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」が北京で開催された。各国政府のど真ん中の人物に焦点を当てて、中国への理解を深めさせ、そして「中国礼賛」へと洗脳していく――。「世界の工場」「巨大市場」として、経済に大きな存在感を占めるに至ったこの国が、次に狙うのは精神だ。対話会では「中国イニシアチブ」が採択された。紅い中国が世界を染める狙いを覗かせる日がやってきたのだ。
本稿では、第19回党大会で決議された「習近平(シージンピン)新時代、中国の特色ある社会主義思想」とは何かを紐解き、その一連の流れの中で遂に現し始めた習近平の正体を考察する。
「習近平思想」とは何か
遠藤 誉(えんどう・ほまれ)
1941年、中国吉林省長春市生まれ、1953年帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員教授などを歴任。最新の著作は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』。主な著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)『チャーズ 中国建国の残火』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』(朝日新聞出版)など多数。
10月24日に閉幕した第19回党大会(中国共産党第19回全国代表大会)では、党規約の改正が行われ、党の綱領として「習近平思想」が盛り込まれることが決議された。正式名は「習近平新時代中国特色社会主義思想(習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想)」という非常に長い文言で表現されている。
これまで党規約には、その政権が終わった段階で、新たに当該政権スローガンを明記する、という習慣があった。毛沢東思想は建国前から入っていたが、それ以外は政権一期目に書き入れることはない。党規約の冒頭には「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表重要思想、科学的発展観」が書かれていたのだが、ここに「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という言葉を、まだ政権一期目の終わりにも拘わらず、明記することが決議されたわけだ。
マルクス・レーニン主義という共産主義国家におけるくくり以外では、個人名があるのは毛沢東と鄧小平のみ。おまけに「個人名+思想」という形は、建国の父である毛沢東以来、初めてのことだ。習近平は、少なくとも党規約の中では、毛沢東と並んだことになる。
それでもストレートに「習近平思想」と書かなかったのは、建国前から中国人民の中に浸透している「毛沢東思想」と全く同じ文字数で明記するのは、さすがにおこがましいと思ったからだろうか。だから、なぜ「習近平思想」を党規約に書き入れるかという理由を同時に弁明するために、間に「新時代の中国の特色ある社会主義」という文字を入れたもの、と思われる。
新時代を説明するに当たり、習近平は党大会の演説で「アヘン戦争以来、中華民族は虐げられてきたが、しかし遂に人民は站起来(ザンチーライ)(立ち上がり)、富起来(フーチーライ)(富み始め)、強起来(チャンチーライ)了(ラ)(そして強くなり始めたのだ)!」と言った。この「站起来」は中国を建国した毛沢東時代を指し、「富起来」は改革開放後の鄧小平時代を指す。富国時代だ。そして最後の「強起来」こそは、習近平が描いた強国時代を指している。このように三つの象徴的な言葉で時代区分することにより、習近平がもたらした「強国時代」を「新時代」と称したのである。
また演説で習近平は、中国を「世界の舞台の中心で重要な役割を果たすようになった」と位置付けた。これは、米国に追いつき、追い越して、世界のナンバー1の国家となり、全世界を制覇することを示唆している。それが「中華民族の偉大な復興」であり、「中国の夢」だ。
メディアをフル活用、全国を“洗脳”
10月31日、習近平ら新チャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員7名。筆者命名)は上海にある第一回党大会開催跡地を視察した。これに関して日本では「江沢民派閥排除を強調」などの報道があったが、いささか矮小な分析ではないか。中国の真相を観る視座を歪めかねない。
習近平は党大会における演説で何度も「勿忘初心(初心、忘るべからず)」と言っている。1949年10月1日に中華人民共和国が誕生してからの2年間ほどは、人民はまだ中国共産党を信じていた。今では腐敗と虚偽に満ち満ちた中国共産党を誰も信じていない。それでは、世界を制覇すると言っても国内が先に崩壊する可能性がある。
だからこそ新チャイナ・セブンは、上海市にある第一回党大会跡地へ赴き、中国共産党に入党するときの「宣誓の言葉」を斉唱した。「党員になった時の初心を忘れてはならない」と誓ったのだ。
これだけならば日本でもありそうなお題目だが、中国共産党はそこからが違う。全国的な再洗脳を始めたのである。
11月1日、中共中央は、中宣部を中心として新「中央宣講団」を結成し、共産党精神の宣伝活動に入った。管理指導するのは王滬寧(カタナカで無理に読み下すと、「ワンフーニン」か)。イデオロギーを担当する新チャイナ・セブンのメンバーの一人だ。「中央宣講団」は中央のあらゆる関係部門と提携して、地方にも出かけていき、講話を含めた双方向的な党宣伝を行なう。中央宣講団のメンバーが各地方を回って、地元住民に対しFACE TO FACEで話をするのだ。その模様を、中国共産党管轄下のテレビ局CCTVなどが一斉に全国津々浦々へと報道する。
中でも一際注意せねばならないのが、王滬寧の談話だ。彼は「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を企業や農村、各関係機関、大学のキャンパス、社区(社会のコミュニティ)など、全ての群衆に広めていかなければならない」と表明した。
中国人の話だろう、と聞き流してはダメだ。たとえば、中国に進出している日本企業も「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を学び遵守する義務を要求されることを意味する。
最近、中国が外国企業に対して、強いネット規制や原材料管理を打ち出しているが、実はこれはまだまだ序の口だ。そもそも中国では政府機関や大学は言うに及ばず、各企業にも中国共産党委員会があり、それぞれに「書記」(社長より上の最高権限を持つ)がいる。今後は外資系企業にも同様の書記が置かれ、「習近平思想」の遵守を日本側企業にも要求してくることになるのではないか。私はそう見ている。
中国共産党が全世界の政党を北京に集めた理由
このような流れの中、11月30日から12月3日にかけて「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」が北京で開催され、120数ヵ国の300以上の政党から成る600人の幹部たちが一堂に集まった。これは世界史上初めてのことだと、中国は胸を張っている。主宰したのは中国共産党の対外聯絡部。
中国共産党の宣伝工作を行う組織には中共中央宣伝部、統一戦線工作部などがあるが、これらは主として中国大陸および香港やマカオなどの特別行政区を含めた「中国国内」に対して「中国共産党が如何にすばらしいか」ということを宣伝する組織だ。それに対して対外聯絡部は「対外」とある通り、国際社会に対して「中国共産党の偉大さ」を宣伝していく組織なのである。
これまでは、それほど大きな活動をしてこなかったが、第19回党大会が終わり、習近平政権第二期に入ると、突然、この「対外聯絡部」の存在が大きく前面に打ち出されるようになった。
その目的は、「中国共産党」という世界最大の政党(党員数、約9000万人)が、世界各国の政党と関わり、指導し、影響力を強めていく、というものだ。中国が国家として他国に介入するのは「越権だ」という抗議を受け得るだろうが、一つの政党として他国の政党に声をかけて連携していくのは、なんら非難される筋合いはない、という論理で動いている。
もっとも中華人民共和国憲法では、中国共産党が中国という国家を統治していくと明記しているので、一政党と雖も当然、中国の場合は国家を代表することにはなる。
中国共産党という一政党の名において、全世界を「習近平思想」を軸にした「紅い中国」の思想に洗脳し、「中国礼賛」という心情を植え付けていこうというわけだ。しかしこの「大戦略」、果たして現実味はあるのだろうか。民主主義的な世界に生きている日本人や欧米人には、誇大妄想のようにも思えるだろう。言論弾圧やネット規制がある中、中国がグローバル・スタンダードに則ることができるか否かも甚だ疑問だ。
中国イニシアチブ確立を本気で目論む
成功するかどうかはもちろん分からない。だが、中国(中国共産党=習近平)は本気だ、と思う。
冒頭の「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」に戻ろう。開会の辞は習近平国家主席自身が行い、3日に会議は閉幕したが、それらを総括する形で、中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」は「中国イニシアチブ」に関する全文を掲載した(こちら)。
それを読むと、一見、参加者の心を納得させ感動させるスピーチの中に、中国を礼賛せずにはいられないような心理を醸成する「核」を隠し込んでいることがわかる。全文を翻訳するのは避けるが、日本は中国のこの戦略にまんまと嵌っていきかねないと個人的に危惧しているので、肝心の部分だけを抽出してご紹介したい。
1.人類の運命共同体を構築するために、「習近平による中国の特色ある社会主義思想」を実現し、ともに一帯一路の建設に携わるために、中国の貢献と各国政党間の連携を強化していきたい。
2.テロやネットの安全あるいは気候変動など、これまでとは異なる脅威が世界に蔓延している。しかし平和と安定は依然として私たちの最大の課題だ。深刻で複雑な国際情勢の中で、いかなる国家も自国単独で人類が直面しているさまざまな挑戦に対応することは出来ないし、どの国も閉鎖的な孤島の中に閉じこもって問題解決に当たることは出来ない。したがって我々は「人類の運命共同体」を形成していかねばならないのである。
3.異なる社会制度や意識形態(思想)あるいは伝統文化を乗り越え、開放と包容的な態度で各国間の交流協力を推進し、自国の利益を追求すると同時に、他国の利益に配慮してウィン-ウィンを目指す。
4.新型国際関係の基礎の下「小異を残して大同に付く」関係を樹立し、相互尊重と相互を鑑とする「新型政党関係」を築く。全ての国の政党が人類の未来を創っていく。われわれは習近平総書記を中心とする中国共産党と中国政府が人類運命共同体を構築し、一帯一路建設が実現していることを喜ばしく思う。習近平総書記が一帯一路建設において提唱してきた精神である「共商共建共享(Jointly sharing)」が地球ガバナンスの方向性として国連決議に盛り込まれ、人々の心の中に深くしみわたっている。一帯一路の精神は、まさに人類の運命共同体という時代の潮流にふさわしいものである。
5.このように「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」は人類運命共同体の構築を強調している。これは、中国共産党が中国人民の幸福をもたらすだけでなく、人類の進歩のために奮闘する正当であることを証明している。
概ね以上のような内容だが、参加者は身を乗り出して聞き入っていた。
「閉鎖的な孤島」という言葉を用いて「人類運命共同体」を新型国際関係と位置付けるあたり、明らかに米国を意識してのことだ。「民主主義とハンバーガー」のような、アメリカンウェイの一方的な押しつけをするようなことは、我々はしませんよ、いっしょに独自性を保ちつつ繁栄しようではありませんか…。
強面と思われた習近平の、耳に心地よい「おもてなし」を受けた参加者たちは、昨今のトランプ政権の不手際の連続もあり、「わが党も、新たな人類運命共同体を担う一員として認められている」と自尊心をくすぐられて、中国に協力していく抵抗感が薄れる…と、中国側は期待しているのだろう。
巧拙はさておき、これだけ幅広く、またフレンドリーに「仲間作り」を始めたのは、おそらく中国始まって以来のことだ。
と、思ってCCTVを見ていたら、画面には、日本の公明党の山口那津男代表や吉田忠智社民党代表などの紅潮した顔と弾んだ声が現れた。山口氏は「新時代の第一歩を記せた」と訪中成果を誇っていた。もちろん、日本が自公連立政権であることを知った上での中国の戦略だろう。与野党を問わず、政界のキーマンと目される人々に自分の国に対する好意を醸成するのは国際政治の常だが、中国は自国の夢を賭けて本気で乗り出している。
心理戦に負けつつあるのでは?
笑顔の一方で、全世界にいる6000万人の華人華僑をまとめ上げてコントロールするのも中共中央と国務院(中国人民政府)の任務だ。その巨大なネットワークを駆使して、南京事件や慰安婦問題に関して抗議活動を展開させ、当該国の政権与党内の、これはと思う議員を動かして議会で抗議決議を可決させ、日本を追い込む。
こういった心理戦は、習近平政権に入ってから徐々に強化されてきた。だから本年中に日本で開きそうだった日中韓首脳会議を、わざと延期させて安倍晋三首相をじらすのである。そうすれば日本から頭を下げてくることを中国は知っている。
もちろん、日本の経済界が「一帯一路」のバスに乗り遅れまいと焦っていることも中国は見逃していない。日米のどちらかを落せば両国とも「一帯一路」構想の陣営に入るので、天下は中国のものだと考えているのだろう。
政治情勢のなせる技、と、油断している間に、中国はどんどん石を打っていく。その音に耳を澄ました方がいい。
近藤記事
中国は「ユーラシアの覇者」へ
早いもので、トランプ政権登場に始まった2017年は、瞬く間に過ぎてゆき、2018年の戌年に移ろうとしている。
2017年の世界は、トランプ政権発足によって、大きく変化した。周知のようにトランプ大統領は、就任早々、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)から脱退し、メキシコとの壁を築くと宣言し、中東移民の制限も行った。夏になると地球温暖化防止の新たな枠組みであるパリ協定から脱退し、秋になるとユネスコ(国連教育科学文化機関)からも脱退した。
そして冬になると、エルサレムをイスラエルの首都に認定し、イスラム社会は大騒動になった。その間、北朝鮮の核ミサイル問題を巡って金正恩政権との角逐はエスカレートし、東アジアは不安定化した。
こうしてみると、2017年は、トランプ大統領という「怪物」が暴れ回った一年だったと言える。
これに対し、2018年に最も注目すべきなのは、習近平主席率いる「巨竜」かもしれない。巨竜・中国は、アメリカと並ぶ「世界のもう一つの基軸」となるべく、前進を続けると見られるからだ。
習近平総書記は、2017年10月の第19回中国共産党大会と、翌11月のトランプ大統領訪中を成功させたことで、「ユーラシアの覇者」となる決意を新たにした。
なぜ「ユーラシアの覇者」かと言えば、習近平政権は発足当初の2012年、短期目標として、共産党創建100周年の2021年までに、「アジアの覇者」にならんとしていた。だが5年を経て、当初思い描いていたよりもスムーズに実現できそうな見通しがついた。
そこで今度は、中期目標として2035年までに、「ユーラシアの覇者」になろうとしている。習近平主席はこの時まで自ら政権を担う決意でいるように見受けられる最後は建国100周年までに「世界の覇者」を目指すのだが、まずは「ツキディデスの罠」を避けるためにも、アメリカを除く「ユーラシアの覇者」を目指そうということだ。
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そのため、2018年は、「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)という習近平政権の外交スキームを使って、どんどん「攻め」に転じる年になるだろう。アメリカは秋の中間選挙で内向きになり、ロシアも春の大統領選挙で内向きになる。EUもBrexitやドイツの政局不安などで、やはり内向きだ。そんな中、中国は外交攻勢を強めるチャンスなのである。
習近平政権は、自信と余裕が生まれたことから、対日関係の改善にも乗り出した。換言すれば、過去一世紀半近くとは真逆の「中国が上で日本が下」という、新たな日中関係の構築を目指し始めたのだ。
12月1日には、北京に世界300近い政党幹部たちを一堂に集めて、「中国共産党と世界政党幹部対話会」を開いた。そこで習近平総書記は長い演説を行い、次の2点を主張した。
第一に、中国が主導する「一帯一路」によって、ユーラシア大陸に人類の運命共同体がもたらされるということだ。習総書記はこう述べた。
「2013年に、私は初めて人類は運命共同体であると提唱した。その時以降、嬉しいことに、中国と世界各国との友好的な提携を不断に開拓、発展させている。そして、人類は運命共同体であるという理念が、ますます多数の支持と賛同を得て、私の提唱したことが理念から行動へと移り行くさまを見ている。
私が提起した『一帯一路』はまさに、人類が運命共同体であるという理念を実践することなのだ。この4年来、『一帯一路』は、関係各国が共同で実現する発展の巨大な提携プラットフォームとなってきた。
細々とした支流も、集まれば大海に流れるのであり、点々たる星々も、集まれば銀河の輝きを見せるのだ。私は、おのおのが人類の運命共同体の理念を樹立し、計画を立ててそれを実践し、一歩一歩たゆまぬ努力を続ければ、人類の運命共同体の目標は、必ずや実現できるのだ」
もう一点は、中国はアメリカや前世紀のソ連と違って、他国に対して自国の制度の強要はしないということである。習総書記はこう述べた。
「中国共産党は、中国人民の幸福を謀る政党であり、人類を進歩させる事業に奮闘する政党である。中国共産党は世界最大の政党だが、大なる者は大なる者にふさわしい様子というものがある。
つまり中国共産党の行動の一切は、中国人民に幸福を謀るためであり、中華民族の復興を謀るためであり、人類の平和と発展を謀るためである。われわれは自分のやるべきことをうまくやれば、それはすなわち人類の運命共同体作りに貢献することなのだ。
われわれは外国のモデルを『輸入』しない。同時に、中国のモデルを『輸出』もしない。そして他国が中国のやり方を『コピー』することも求めない。
第一に、中国共産党は一貫して世界の平和と安寧に貢献する。第二に、一貫して世界共同体の発展に貢献する。第三に、世界の文明交流に貢献する」
習総書記は、このように非常に慎重な物言いで、中国に対する世界の警戒感を解こうとしたのだった。中国は恐い国ではないから、安心してついて来なさいというわけだ。
2018年以降の指針を示す論文
もう少し精緻に、2018年以降、中国が世界で目指す指針を示した一篇の論文がある。11月13日、中国共産党の幹部養成機関である中央党校の機関紙『学習時報』に掲載されたもので、タイトルは「中国の特色ある社会主義が新時代に入った世界的意義」。
筆者は、韓志強・外交部弁公庁主任である。2011年7月から4年以上にわたって、駐日本中国大使館公使として、「最悪」と言われた日中関係の最前線に立ち、一時は次期駐日大使とも噂された外交官だ。
この論文は、中国共産党の厳格な「査読」を経ているので、今後の習近平政権の外交指針を定めたものとも言える。かなりの長文で、かつ難解だが、非常に重要な内容なので、全文を訳出してみる。
<中国の特色ある社会主義は新時代に入った。これは、わが国の総合的国力が世界のトップクラス入りしたこと、国際的地位が前代未聞の昇級を果たしたこと、及び党と国家の事業が全方位的に、開放の創造的な成就を深いレベルで取得し、根本的変革の発展を獲得したことなどをもとに、わが国の新たな歴史の方位に対して、党が出した科学的判断である。
この判断は、世界に向けて宣告する。中国共産党の党員が牽引する中国人民は、中国の特色ある社会主義の道の偉大なる成功を一心に模索し、中華民族はいままさに世界の東方にまったく新たな形で屹立していく、と。中国の特色ある社会主義が新時代に入ったというのは、中華人民共和国の発展史上、もしくは中華民族の発展史上において重大な意義を有するものである。そればかりか、世界の社会主義の発展史上、人類社会の発展史上にも重大な意義を持つものなのである。
中国の特色ある社会主義が新時代に入ったということが意味するのは、科学的な社会主義が、21世紀の中国に強大な機会と活力を生み、世界に高く高く中国の特色ある社会主義の偉大なる御旗を掲げるということである。
科学的社会主義は、人類社会発展の客観的規律の真理を提示しており、誕生して一世紀半の間、人類社会の発展と変革に、他の思想理論とは較べものにならないほど重大な影響を与えてきた。
その意味するところは、世界で一大無産階級の政党が政権を掌握した社会主義国家を建国したというばかりでなく、現在の資本主義制度の国家がほぼ例外なく社会主義の要素を借用し、マクロコントロールを強化し、そこに内在する社会矛盾など多方面のことを緩和することによって社会福利を発展させていったことを示している。
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20世紀の80年代末から90年代初めにかけて、ソ連が巨大な変化を見せて解体し、その他の東欧の社会主義国も次々と旗色を変えていった。それによって、科学的社会主義の実践は、深刻な曲折の時を迎えた。一部の西側国家は、共産主義は失敗し、自由民主制度が「人類の意識形態発展の終着点」「最後の統治形式」などと宣称したものだ。
しかしながら、中国共産党の党員は、確固としたマルクス主義の信念に従い、畏れることなく政治的勇気を持って、そうした圧力を抑えつけ、自己の道を切り開き、中国の特色ある社会主義の偉大なる政治的選択を行った。先のない旧道を歩むことなく、かつ旗色を変えた邪な道を往くこともなく、マルクス主義の普遍の真理と中国の現実とを結合させて、改革開放を実行する道を進んだ。
まさにその道こそが、中国共産党が中国人民を率いて、国家と民族の発展を阻害する一切の思想や体制を除去し、社会主義制度のメリットを十分発揮し、大股に時代を闊歩し、党と国家事業を繁栄させ、国家と民族の面貌に前代未聞の変化を発生させるものだったのだ。
そして実際に、中華民族の偉大なる復興という光明の前景を迎えた。中国の特色ある社会主義の成功実践が雄弁に物語っているのは、科学的社会主義は真理であり、ただその基本原理を正確に応用し、実践しさえすれば、真理の無比で巨大なパワーが展示されるということである。
新時代に入った中国の特色ある社会主義は、発展途上国に現代化の道を切り拓き、世界で発展していけるという希望、自身の独立した国家と民族が新たな選択をできるという希望を与えた。人類の問題を解決するのに、中国の智恵と方案が貢献した。
すなわち、中国の特色ある社会主義は成功したのだ。その成功のもとは、中国共産党の堅強かつ安定した政治的リーダーシップ能力にある。党が正確に基本的な国情を把握して、長期にわたる正確な基本路線を制定し、改革が安定して発展していけるようあらゆる堅忍不抜の努力を怠らず、民主法治建設と国家の統治システムと統治能力の現代化を不断に強化し、整備してきたことによるものなのである。
もう一つの特別重要な経験は、国家がどのような発展の道を選択し、どのような社会制度を実行するかという際に、必ずや社会の発展の規律を尊重し、人民の意思を尊重しながら、わが国が実際に出発することを確定させていかねばならないということだ。
机上の理論を指導したり、外国の経験を持ってきて参考にしてもよいが、ただ模倣するだけではいけない。世界には、四方にあまねく通じる標準モデルなどなく、成功の要諦はあくまでも、自己の道を歩んでいくことにあるのだ。
われわれはいまだ前進の途上にあり、またわれわれの制度システムは、さらなる改革改善が必要である。だが科学的な社会主義は疑いなく、中国国内において巨大な成功を得たのであり、このことが世界に対して、特に多くの発展途上国に多彩な選択の道を提供し、人類文明の進歩に一大貢献をしたと言っても過言ではない。
中国の成功に世界は瞠目し、発展途上国は、さらに羨望と期待の眼差しで中国を見つめ、多くの国家が自身の発展の秘薬にしようとし、そこから秘訣を汲み取ろうとした。
まさにエチオピアのハイアマリアム総理が中国中央テレビのインタビューで述べたように、「中国の特色ある社会主義が新時代に入ったという点は、中国の経済、政治、軍事などの発展の中に見て取れ、中国の発展モデルを全世界が学習する価値があると言える」。この総理の話こそが、多くの発展途上国の声なのだ。
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中国の特色ある社会主義が新時代に入ったことが意味するのは、中国が日増しに世界の舞台の中央に近づいていることであり、世界平和と発展の力の増強である。そして、中国が将来の人類の進歩に、さらに大きな貢献をするということである。
習近平総書記が第19回共産党大会の報告の中で述べたように、中国共産党は中国人民の幸福を追求する政党であり、人類の進歩のために奮闘する政党である。そして、中国共産党は無産階級政党の国際主義の立場として、中華民族が天下をすでに担っているという崇高な心情を体現したのである。
長期にわたって、われわれは自身の安全と発展を維持、保護すると同時に、積極的に世界平和の発展に知恵と力で貢献してきた。わが国は国連の24項目の平和維持活動に累計3・5万人を派兵してきた。50数年間にわたって、発展途上国に1・5万人あまりの医療チームを覇権してきた。加えて、世界経済成長への貢献率は、多年にわたって一国で3割を超えている。
第18回共産党大会以降、われわれは中国の特色ある大国外交を全面的に推進してきた。そして、国際情勢の大発展、大変革、大調整と世界各国の平和と発展という共通の要求に直面しながら、積極的に国際地域のホット・イシューの解決に参画し、全世界の統治をリードしてきた。中国は積極的に提議と方案を提出し、国際的な影響力、カリスマ力、組成力をさらに一歩上昇させてきた。
第19回共産党大会の報告で、中国の特色ある大国外交によって、新型の国際関係を構築することを明確にした。そして人類の運命共同体の構築を、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の中に組み込んでいくことを推進し、その具体的内容を鮮明にしたのだ。それはすなわち、「相互尊重、公平正義、提携共勝」という新型の国際関係であり、「平和保持、普遍的安全、共同繁栄、開放包容、清潔美麗」という世界の姿だ。
これらは、新時代の中国の特色ある大国外交という目標の権威的解釈であり、世界に向けて中国外交が追求する理想を明らかにしたものである。こうした外交理念は、人類の歴史発展の過程の高みに位置しており、国家や社会制度の同異を超えて、世界各国の共同利益と普遍的な期待を反映したものなのである。
おかげで国際社会の広範な歓迎と支持を得て、すでに何度も国連の文書に組み込まれている。今後、われわれが期待できることは、中国の国際的影響力を不断に上昇させていき、中国の特色ある大国外交を不断に推進させていくことだ。そして人類の運命共同体構築を理念から実践に移し、必ずや不断に結実、開花させ、中国人民と世界人民の幸福に貢献していくのだ。
習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導のもと、さらに一層、広闊な眼で世界を見つめて、さらに一層、国際的責任を自覚し、さらに一層、国家のために担当能力を持つようにする。そうして新時代の中国の特色ある大国外交の新局面を開闢していくのだ。
第19回中国共産党大会の報告では、平和的発展の道を堅持し、人類の運命共同体建設の推進を主線としている。そして党と国家の対外政策の主張を系統立てて陳述し、新時代の中国外交の重要な戦略的配備を行い、その方向と任務を明確にし、新時代の外交活動に強力な基本的定めと指導を提供している。
この部分の内容は、外交活動の各方面を全面的に網羅している。文中や行間に浸透しているのは、中国共産党の党員は、中華民族の偉大なる復興を実現するための深思熟慮の民であり、天下世界を治めていくという胸懐の人士であり、新時代の中国外交が鮮明にした新たな視野と新たな境界を体現する者だということである。
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第19回共産党大会の精神の学習を貫徹し、思想認識を必ず新たな形勢の上に置き、新たな任務と新たな要求に適応していくことが、われわれに求められている。対外活動においては、国家のためになり、民族の利益を考え、国家と民族の利益と安全を堅く維持、保護すること。
及び人類の進歩に役立つ事業を考え、大国としての役割を積極的に果たし、大国の責任を履行し、大国の作用と影響力を発揮していくことが求められているのだ。
煩雑で複雑な国際問題や地域の問題に直面した際に、うまく互いの利を掴んで害を避け、うまく主動的に介入、参与し、積極的に中国から方案を提唱していく。そして協商・協建・共受の全世界的な統治観を持ち合わせ、全世界の統治システムの改革と建設に積極的に参与し、わが国の体外環境の組成力を高めていく。
人類の運命共同体の構築はすでに、中国外交の崇高な目標であり、世界の発展と人類の未来に対する中国共産党員の正確な方向づけである。それを中国がリードする時代の潮流と、人類の文明の進歩の方向に向かって旗幟を高く掲げ、そこに内在する豊富なものを認識し、その重大な意義を深刻に捉え、新時代の外交活動をうまく執り行うのだ。
第19回共産党大会の報告の精神と関係する論述を全面的かつ正確に捉え、客観的な現実から出発して主動的にアプローチし、政策を把握し、それらを実際の活動にうまくマッチさせていくのだ。
第19回共産党大会の報告では、「中国人民の幸福を謀るため」「人類を進歩させる事業に向かって奮闘するため」といったことが提出された。これらは、中国共産党が全人類を解放させる無産階級の政党としての基本的な属性と基本的立場を反映させたものである。同時に、中国と世界との空前の連結であり、中国の発展が世界と切り離すことはできず、世界の発展もまた中国の客観的な現実の反映と切り離せないということを示したものなのである。
中国外交の服務は、(国内と国外の)二つの同じでない目標がある。それは、二つの同じでない対象を向いているということだが、実際には両者は密接に関係しあい、統一的に内在されている。これらは、われわれが国内と国外の二つの大局をうまく統治することを要求するものであり、内外の両方向に目を向けることなのである。
また、国家の利益を根本的な出発点とすることは堅持しながらも、同時に外部の影響も顧みるということである。つまり、国際的責任を履行するに際して、わが国の利益と安全の角度からの着想を多く持つということでもあるのだ。
西側諸国は長期にわたって、わが国の社会主義制度を、偏見ないしは敵視しながら見てきた。そして常にこれを排斥し、疑義を唱えようとしてきた。それに対し、科学的社会主義が中国にもたらした偉大な成功は、そのような態度と立場に対して、強力な回答を与えるものだ。
われわれには、自分たちのサクセス・ストーリーを、気宇壮大に世界にアピールする完全な理由がある。中国人民が自主的に選択した中国の特色ある社会主義の道が、全世界に応用できる認識、同意と尊重を得られるよう推進していく完全な理由があるのだ。
中国は一貫して、世界各国の相互尊重、同じでない社会制度を持つ国家同士の平和共存を主張してきた。中国の道の成功が必ずしも、国際的な思想対立や闘争を招くものではないと主張してきた。そして無知と偏見を除去し、よりよい平和共存の道を実現させようと主張してきた。
習近平総書記は、第19回共産党大会の報告の中で、世界には完全に同じ政治制度モデルなどなく、政治制度は特定の社会の政治条件や歴史文化の伝統の具合などと密接に結びついていると指摘している。そのため一国の政治制度は、指導者の一存では定められず、また無理やり外国の政治制度を自国に運び込めないということも指摘している。
中国の道の成功は、一部の発展途上国に、主動的に自身の発展の道の問題を考えさせる機会を与えた。われわれには、中国の話や経験を彼らに紹介し、参考にしてもらう義務と責任がある。しかし、一つの国家がどのような発展の道を選択するのかは、最終的にはそれぞれが自己の道を探索し、選択していかねばならないのである。>(以上)
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どうだろう、この自信に満ち溢れた「中国模式」(チャイナ・モデル)のアピールぶりは。やや大袈裟な言い方をすれば、19世紀に興った「欧米型資本主義」、20世紀に興った「ソ連型社会主義」に続き、21世紀には「中国型社会主義」が、世界の政治システムの主流をなすであろうと予見しているのである。
実際、足元のA.S.E.A.N.10ヵ国を見ると、社会主義国のベトナムとラオスが「中国模式」を採用している。加えて最近は、フンセン首相の独裁化が進むカンボジア、同じくロヒンギャ難民を弾圧し、独裁化に転じた「スーチー政権」のミャンマー、そして「薬物撲滅」の大義名分のもと、ドゥテルテ大統領がやはり専制民主の道を歩むフィリピンも、「中国模式」に傾きつつある。つまり、すでにA.S.E.A.N.の半数の国が、「中国模式」を採用しているか、もしくはその方向に向かっているのである。
アジアは「中国模式」がスタンダードとなっていくのか。2018年も「巨竜」から目が離せない。
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