『それを「想定外」と呼んだ全ての人の敗北 トランプの米国:「米国」「世界」「日本」はこう変わる』(11/10日経ビジネスオンライン 池田信太朗)、『消去法のアメリカ オバマ政権とリベラルに対する白人の復讐』(11/9日経ビジネスオンライン 篠原匡)、『トランプ大統領の「安保タダ乗り論」にどう対処すべきか』(11/9ダイヤモンドオンライン 北野幸伯)について

小生の本ブログのトップページに、「士気の集い」主催で、12/17に今回の《大統領選後の日米関係》と銘打ち江崎道朗先生による講演会が開催されます。奮って参加ください。トップページはPDFを貼付けしていますので、参加希望者はコピペができず、申し訳ありませんが、下記をクリック願います。

https://goo.gl/forms/k4DOmutB8zUccGDC3

篠原、北野両氏の記事にありますように、二人は貧しくなった白人の怒りが何も手を打とうとしないエスタブリッシュメントに対して復讐したという構図と捉えています。貧しくなった原因となっている不法移民を認めることはおかしいという事を当たり前に意思表示しただけです。アメリカ人の自殺も13万人/年と多いという記事を読みました。不法移民を認めることは法治国家ではありえません。法を蔑ろにし、人情だけで判断するとすれば、韓国と同じく国民情緒法に左右されるという事です。日本も不法移民の取締りと反日活動に勤しんでいる在日外国人を厳格に取り締まるべきです。

今後のトランプの動きですが、小生の3/15ブログの中で、3/9WSJに寄稿したルトワックの記事を掲載していますので参考にして戴ければ。

http://dwellerinkashiwa.net/?p=3489

今回の大統領選で感じましたのはマスメデイアが如何に当てにならないかという事です。バイアスのかかった記事で、印象操作し、世論を誘導しようとしましたが、失敗しました。Brexitもそう。池田氏の記事にありますように、そんな手はインタラクテイブに情報が遣り取りできる時代には通用しなくなったという事です。記者の見方は一つの見方を示すだけで、有権者がどう判断するかは、いろんな情報素材を集めてから下すという事です。自分の意見が世界を動かすと記者が思っているとしたら、それは驕りでしかありません。池田氏の「トランプ大統領が世界を変えるのではなく、世界が変わったからトランプ大統領が生まれたと言うべきかもしれない。」というのが正しい見方と思います。

保守派のスカリア最高裁判事死亡(謀殺の噂もあった)後の人選は、これで保守派の中から選ばれることが決まりました。一安心です。米・民主党並びに国務省は中国のダーテイマネーに塗れているのが多く、中国と対峙できません。自由を建国の理念とする米国の国益を考えれば、一党独裁・人権抑圧国家と対峙せざるを得ません。

また、池田氏記事にありますように、仏のルペンにとっては追い風になるでしょう。彼女が大統領になればEUの崩壊は加速化するでしょう。ドイツの独り勝ちは許されません。中国に宥和的なドイツも方針を変えるかも。ロシアとの関係も、トランプ大統領になればNATOが変わらざるを得ません。

外務省の無能はここに極まれりと言ったところです。安倍首相のトランプ当選祝辞を述べたときの顔がこわばっていました。外務省はヒラリーにだけ会わせたリスクをどう感じているのでしょうか?トランプは日本が核を持つことを一時的に容認したのですから、防衛費負担増の交渉を言って来たら、少なくとも外務省はニュークリアシエアリングについて交渉の材料とすべきです。唯々諾々と相手の言うことだけ聞くのであれば、それは交渉とは言えません。

これから日本人一人ひとりが真剣に国防を考える良い機会です。北野氏の記事によれば米軍駐留費100%負担でも1800億円くらいの支出増です。単独防衛はコスト高と近代戦では勝てません。ABCD包囲網のように、包囲網を敷く側に回らなければ。 解散総選挙についてどう見るかですが、11/9渡部亮次郎メルマガに<年金削減で高齢者層が総選挙直撃の構図 杉浦 正章

新法案は「消えた年金」並みのインパクト

第1次安倍政権退陣の原因となった「消えた年金」と酷似した構図ができあがりつつある。野党が「年金カット法案」として反対する年金改革関連法案である。政府は気づいていないが、高齢者層に怨嗟の声が満ち始めている。

NHKの討論を聞いたが、視聴者に対する訴求力において自民党幹事長代行の下村博文と公明党幹事長代行の斉藤鉄夫は、民進、共産などの主張に、首を並べて討ち死にのていたらくであった。

与党はいくら理屈で練り上げても、結局は法案が高齢者の年金を減らす法案であることを露呈してしまったのだ。生活直撃マターは直ちに投票行動となって現れる。

衆院選挙で常に8割近くが投票をする高齢者層を敵に回すことになる。これを知ってか知らずか下村は先月24日、次期衆院選の小選挙区で自民党の獲得議席が、前回より86減る可能性があるとの見方を示した。これはのほほんとしている若手議員らへの“脅し”だけではなく、実感であったのかもしれない。

新法案は年金財政の悪化を食い止め、現役世代が将来受け取る年金の給付水準を維持する狙いがある。新たなルールは、物価や現役世代の賃金に合わせて年金給付額が変わる「賃金・物価スライド」を徹底するものだ。物価よりも賃金が大きく下がった場合、これまで物価の下落に合わせて年金支給額を下げていたが、新ルールでは、賃金の下落に合わせて支給額を下げる。

野党は「年金カット法案」と主張するが、安倍は「年金水準維持法案」と反論する。民進党の試算では、年金支給額は現在よりも5.2%減少。これが正しければ国民年金は年間約4万円減、厚生年金では年間約14.2万円減る。

既に安倍政権は公的年金を3.4%減らし、医療面でも70~74歳の窓 口負担を2割に引き上げるなど高齢者に厳しい政策を打ち出している。筆者の友人らも会合ではもっぱら年金問題が話題に上がり、感情的反発がまず先行するようになった。

それではなぜNHKで与党が完敗したかというと、人の懐に手を突っ込む法案に、理屈を先行させたからだ。野党幹部からは「スリがへりくつを述べるようなもの」 との批判の声が聞こえるが、うなずけなくもない。

下村は「『年金カット法案』という主張は受給者に対するポピュリズムそのもの」と反論したが、多くの高齢視聴者はこの発言に不快感を覚えたに違いない。ポピュリズムと言うより死活問題であるからだ。

また斉藤は「年金カットというが全く違う。いまは若い人が将来受け取るべき年金を取りくづしているが、将来の年金を確保する法案だ」と述べたが、民進党幹事長代理の福山哲郎は、「年金減少が発動されないのならこんな法案は必要ない」 と切って捨てた。

共産党や社民党の主張は信用がおけないから、文字の無駄で滅多に紹介しないが、今度ばかりは視聴者への訴求力があった。共産党書記局長の小池晃は「物価スライドでないと生活を維持出来ない。今度は物価がいくら上がっても賃金が下がったら年金を下げる。高齢者は生きていけない。」 と 感情に訴えた。

社民党副幹事長吉川元も「見れば見るほど年金カット法案と言うほかにない。生活水準が低下する」と述べた。この「生きていけない」「生活水準が低下する」という感情的表現が選挙戦では高齢者に最も通りやすく、年金制 度の問題については理性的に反応しにくいのだ。

一方で民放でも年金法案たたきが始まった。時事放談で元内閣官房長官武村正義は「年金はシリアスだ。老後の年金をあてにして一生懸命支払ってきた年寄りが納得できるか」と自らの年金にも言及して批判。民進党幹事長代理の玉木雄一郎はしめたとばかりに「確かにもらえると思って払ってきたのに約束が違う。ぎりぎりの生活者にとって年金確保は重要だ」と同調した。これが皮切り となって年金問題は朝テレ、TBSなど左傾化民放のワイドショーの絶好の餌食となることは確実である。

消えた年金問題は高齢者に実質的な影響はほとんどなかったが、今回は高齢者の所得を直撃する問題であり、自宅でワイドショーばかり見て世間話のネタにしている高齢者層への影響は甚大なものがあろう。

投票率を見れば高齢者パワーは一目瞭然である。高齢者人口は3186万 人で過去最多。総人口に占める割合は25.0で過去最高となり、4人に1 人が高齢者。

その高齢者のうち80歳から79歳までの投票率はすべて70%台を超えており、中でも年金が始まる65から69歳は77.75%で8割に迫る。

これらの老人パワーは安倍の対中国、北朝鮮政策に賛同する保守層が圧倒的だが、これが敵に回ったらどうなるか。産経の調査によれば4野党が全 295選挙区に統一候補を擁立した場合の、自民、公明両党は、ただでさえ 計47選挙区で「野党統一候補」に逆転されることが判明した。

前回衆院選で与党は3分の2(317議席)超の大勝を収めたが、野党共闘 により47選挙区で当落が逆転すれば、与党は279議席で3分の2を大きく割り込むとの予想だ。

これに年金問題の逆風が吹いた場合の早期解散は、大敗に輪をかける敗北を喫しかねない。唯一食い止めるのが12月15日の安倍・プーチン会談で北 方領土が前進するかどうかだが、中途半端では勝てない。

したがって安倍は年金を強行採決して1月解散・総選挙を含めた早期解散を完全に断念するか、年金を先送りするかの判断を迫れることになる。しかしほとぼりが冷めるのを待っても、引かれるたびに、怒りが増幅するのが年金削減であり、これは選挙戦に常時不利に働く。法案の内容も一挙に賃金にスライドさせることは避け、例えば5分の1くらいから始めるという、妥協策も必要となる>(以上)。

白人の怒りによる復讐ならぬ、老人の怒りによる復讐が起きる可能性が高いという事です。政治家は国民の声なき声をキャッチしないと、思わぬ展開になるという事を肝に銘じた方が良いでしょう。トランプが良い例です。今までの年金の物価スライド制維持で行くべき。

解散するなら早めにやった方が良いです。11/30臨時国会閉幕時か会期延長した時の最終日にやった方が良いでしょう。野党統一候補を立てられると、自民党若手議員は40~80台まで落選と言うのが上の記事です。野党の体制が整わない内に選挙するのが常道では。幸い、蓮舫の二重国籍問題、連合の自民党接近とかプラスの話題もあります。連合だって賃上げに力のない反日民進党を応援しても仕方ないと思っている筈です。前の総評と同盟とに分かれた方が健全では。

池田記事

「想定外」という言葉を聞く時、私たちは、その言葉を発した組織や人物が時代の変化に対応できなくなっていることを知る。ドナルド・トランプ氏という人物が次代の米大統領に選出されたという結果が示すものとは、その事実を前に「想定外」という言葉をつぶやく他ないすべての人の「敗北」だった。

英国の国民投票がEU(欧州連合)脱退という民意を世界に示した時にも感じていた。フィリピンのロドリゴ・ロア・ドゥテルテ大統領の発する言葉にも、インドのナレンドラ・モディ首相の政策にも感じていた。その違和感に対してそれぞれ世界史上の稀有な「例外」だと自らに言い聞かせて来た人々は、しかし、世界最強の国家で生まれたこの新しいリーダーを前に、どうやらこれらの現象が民主主義のエラーによるものというよりも、世界の大きな変化の表れと考えた方がいいのではないかと悟り始めている。

「金の総量」を上限とした世界の富を奪い合うゼロ・サムゲーム――誰かが豊かになれば誰かが貧しくなるゲーム――が強要された金本位制の時代を超えて、20世紀後半以降、世界は、自由貿易の輪を広げることで「全員が豊かになれる」という夢を共有することができた。その利害が一致していることが、各国に最善の安全保障をもたらす。2度の世界大戦と冷戦を経て、世界はその「結論」に収斂するかのように思えた。いわば「経済は政治を超える」。その20世紀における最大の実験がEUであり、21世紀のそれが環太平洋経済連携協定(TPP)だったと言えるだろう。

英国と米国の民意は、それぞれに「否」を突きつけた。

オバマ政権とリベラルに対する白人の復讐」の中で、篠原匡・ニューヨーク支局長は、産業の転換に取り残されながら、新たな仕事を探すことも、その地を去ることもできない「白人の町」の困窮と、その原因を他国の経済成長や移民に帰する排他主義の台頭を描いていた。その姿は、英国が決別した欧州で、失業したギリシャの人々が、生まれた地から離れようとせず、経済成長を謳歌するドイツに怨嗟の声を上げる姿と重なって見える。

ヒトやモノの往来の障壁を引き下げれば、より豊かな生活を求めて人々は「最適な場所」に移動していく。自由貿易主義のそんな仮説が幻想に過ぎず、どうやら人間とは、やはり土着的なナショナリズムにその心を縛られ、自由になれない存在なのではないか。そんな懐疑が「全員が豊かになれる」という理想を破り、「あの国が豊かになったせいで自分たちは苦しくなった」というゼロ・サムゲームの心理にまで時代を後退させつつある。

『トランプ大統領』、Brexitに意外な追い風」の中で蛯谷敏・ロンドン支局長は「フランスの極右政党である国民戦線のマリーヌ・ルペン党首はすぐにツイッターでトランプ大統領誕生を祝っている。反EUを掲げる欧州の極右政党にとっても、トランプ氏の大統領就任は追い風となる可能性がある」と指摘している。

トランプ大統領が世界を変えるのではなく、世界が変わったからトランプ大統領が生まれたと言うべきかもしれない。

日経ビジネスは、その変化を「例外」と捉えずに大きな変動の兆しと見て、かねて特集「もしトランプが大統領になったら」と題して「トランプの時代」を占って来た。同氏の当選を受けて、新たに3つのテーマで識者や現地に取材して記事を配信する。

その1:米国の変容

1つ目は「米国の変容」。トランピズムを生んだ土壌、廃墟のような「白人の町」を訪ね歩いた「消去法のアメリカ」シリーズに、当選確定後に大統領選挙戦を振り返った「オバマ政権とリベラルに対する白人の復讐」を配信。フィナンシャル・タイムズからは、反トランプの米国人による手記「トランプ勝利 睡眠薬が必要だ」を翻訳掲載した。熱烈にトランプを支持する層と、「明日、ニュージーランドに飛ぼうと思う。筆者は本気だ。とにかく今は、米国から可能な限り遠く離れるのがよさそうだ」と記事を書き出す記者。この両者の断絶の深さを、改めて比べてお読みいただきたい。

「本日配信の記事から

その2:震える世界

2つ目は「震える世界」。トランピズムが顕在化させた世界の変容が、各地にどんな変化をもたらすかを考えた。「経済政策の分かりにくさ以上に分からないのが、トランプ氏が外交で何をやってくるかだ。トランプ大統領の誕生で起きる最も大きな変化は、地政学リスクの高まりではないか」と「これから大きくなるのは地政学リスク」の中で指摘するのは笹川平和財団特任研究員の渡部恒雄氏。ほか、英国のBrexit(EU離脱)に与える影響を蛯谷支局長が取材した「『トランプ大統領』、Brexitに意外な追い風」、サイバー空間におけるリスクを慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の土屋大洋氏が解説する「サイバー空間の不安定化に拍車」などを配信した。

「本日配信の記事から

その3:身構える日本

最後に「身構える日本」。世界で先進国が試みて来た自由貿易の実験の末端で、日本は、内需の伸びが止まりつつあることでようやくその重い腰を上げてTPPに参加を決めた。政府が進めるこの起死回生の決断が、米国に覆されるかもしれない。だが、「そこまで心配ない」と状況を冷静に見守るのが元・防衛大臣の石破茂氏。「選挙期間中に言ってきたことと、大統領になってから実際にやることは大きく変わるなんて、よくあります。例えばロナルド・レーガンは大統領選挙のときに、中国に対抗して台湾と国交を回復すると言いました」と、トランプ氏の理解と変化に期待する(「石破氏:「トランプ大統領」は豹変する」)。一方で、企業経営者からはTPPの実現を注視する声が聞こえてきた(「TPPの成否で船舶需要に影響も」、ジャパンマリンユナイテッドの三島愼次郎社長)。

日本経済に対する短期的なインパクトについては、エコノミストや企業経営者に聞いた。「日本の経済成長率はゼロ%台半ばに落ちる」(第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣氏)、「為替は1ドル90円台前半へ」(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト・唐鎌大輔氏)、「日銀は苦しい立場に追い込まれる」(東短リサーチ チーフエコノミスト・加藤出氏)など悲観論が多数を占めたが、中には「ご安心を、日経平均の底値は1万6000円」(SBI証券投資調査部シニアマーケットアナリスト・藤本誠之氏)といった声も上がった。

「本日配信の記事から

トランプ的なるものが世界を覆いつつある今、その行く末を「想定外」と呼ばずに対応していけるかどうか。この時代を生きる国や企業それぞれが問われている。

篠原記事

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勝利集会に向かうトランプ氏(写真=ロイター/アフロ)

長編の政治リアリティーショーと考えれば、これ以上ない筋書きだったのではないだろうか。

11月9日午前2時40分。米CNNに短いテロップが流れた。「クリントン候補、電話で負けを認める」。その瞬間、共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏の会見が予定されていたヒルトンホテルの周辺は異常などよめきにつつまれた。純粋にトランプの当選に歓喜した人間もいれば、トランプ大統領が米国と世界に与えるであろう混沌を前にしたおののきもあったに違いない。

先の読めない展開と終盤のどんでん返しが優れたシナリオの条件だとすれば、今回の大統領選は100点満点がつけられる。

まず、登場人物の設定が素晴らしい。主人公のトランプ氏は不動産王国を作りあげたビリオネア。メキシコ移民をレイプ魔とののしり、元ミス・ユニバースを公の場で“ミス子豚”と呼ぶなど、大統領候補としてはあまりに粗暴だが、エリートが支配する腐りきったワシントン政治とは無縁のアウトサイダーだ。一方、ライバルのヒラリー・クリントン候補は政策に対する知見も高く、政治家としての実行力も申し分ない。ビル・クリントン元大統領のファーストレディーとしてホワイトハウス入りした後、上院議員、国務長官として権力の階段を駆け上ったザ・エスタブリッシュメントである。

何より展開がドラマティックだった。

昨年6月に出馬表明した時点では「メキシコ国境に壁を築く」と荒唐無稽な政策を唱えるだけの泡沫候補に過ぎなかった。だが、歯に衣着せぬ言動やライバルの主流派候補への容赦ない攻撃で、経済的・社会的に劣後感を感じていた白人労働者層からカルト的な支持を獲得。ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事 など並みいる有力者を押さえて支持率トップに躍り出た。

それでも2月に予備選が始まるまで、多くの専門家はトランプ氏がいずれ失速すると高をくくっていた。だが、予備選が始まると、彼の勢いが本物であると気づき始める。

白人労働者層に共感する唯一の政治家

その背景にあったのは米社会、とりわけ低所得の白人が抱えていた澱のような不満だ。

今回の大統領選でトランプ氏は、オハイオ州やノースカロライナ州、ウェストバージニア州など、白人労働者の比率が高い州で勝利を収めた。こういった州の多くは、日本や韓国、中国などとの国際競争に晒され、製造工程の自動化や工場の海外移転などに直面した地域だ。

鉄鋼業の「グラウンドゼロ」と呼ばれるペンシルベニア州アリクィッパは製鋼所の閉鎖で人口の大半が失業した。ここまで極端ではないにしても、製鋼所を抱えたペンシルベニアやオハイオの企業城下町の多くは1980年代以降、製鋼所の閉鎖や人員削減に見舞われた。それは家具で栄えたノースカロライナ州ヒッコリーや炭坑の街、ウェストバージニア州チャールストン周辺も変わらない。

こういった地域ではコミュニティの崩壊も深刻だ。ラストベルトの白人低所得者階級に生まれ、貧困と暴力の中で育ったJ.D.バンスの回顧録、『ヒルビリー・エレジー(田舎者の哀歌)』。ここで描かれているのは、雇用が失われた後も街を離れることができない貧困層が仕事や絆をなくし、暴力やドラッグに走る現実である。事実、ラストベルトやアパラチア山脈周辺は薬物中毒死がほかの地域よりも多い。

メキシコに壁を築くといった発言や不法移民の強制送還 はニューヨークのエリートやワシントンのエスタブリッシュメントには乱暴な声に聞こえる。だが、ラストベルトに暮らす人々にとってはみれば、自分達の苦境を理解し、共感してくれる唯一の政治家。彼らのような人々がトランプに希望を見出していたのだ。

そして2月。それまでトランプ氏に対する攻撃を控えていたライバル候補も、トランプ氏の躍進を前に慌てて攻撃を始めた。だが、乱戦でのケンカとなればトランプ氏の方が一枚上手。マルコ・ルビオ上院議員とのイチモツの大きさ論争やテッド・クルーズ上院議員との夫人を巡る中傷合戦などくだらない応酬のオンパレードだったが、罵詈雑言をパワーに変えたトランプ氏が熾烈な予備選を勝ち抜いた。まさかの指名獲得である。

ブレグジットの“再来”

相前後して、今回のリアリティーショーに花を添える動きが欧州で起きる。ブレグジット、すなわち英国のEU(欧州連合)離脱を決めた国民投票である。EUの肥大化した官僚機構や国家主権の制限に対する怒りなど、様々な背景が解説されたが、突き詰めれば、経済的な豊かさを実感できず、経済成長から取り残されたと感じている人々、特に地方都市の中高年の反乱である。ブレグジットを主導したボリス・ジョンソン氏がトランプ氏と同様のポピュリストだったこともあり、誰もがその姿をトランプ氏に重ねた。

もっとも、ポール・ライアン下院議長をはじめ主流派は、トランプ氏が党の正式な候補になればそれらしく振る舞うのではないかと期待していた。米国でも無党派層が占める割合は増えている。フロリダ州など大統領選で重要な役割を果たす州でヒスパニックの存在感が増しており、彼らに支持を広げなければホワイトハウスに手は届かない。そのためには従来の移民に対する強硬姿勢を和らげる必要がある。

実際、トランプ氏も演説の際にアドリブを控え、プロンプターを読むなどまともな候補になろうとした時期もあった。だが、70年間で培われた性格は数カ月で変わるものではない。党大会の直後、トランプ氏を批判した米兵遺族を脊髄反射的に攻撃してしまう。米国では戦争で死亡した兵士の家族を侮辱することはタブーである。結果的に、トランプ氏への支持を撤回する共和党主流派が相次いだ。8月半ばには選対本部長が辞任するなど、陣営内のごたごたがやまなかった。この時に、支持層を広げるのはやめて、原点である白人労働者階級に絞った選挙戦を展開すると決めたのだろう。

エスタブリッシュメントにしか見えない

それでも、クリントン氏との支持率の差が思ったほど広がらなかったのは、クリントン氏に対する不信感が大きい。

選挙期間中、クリントン氏は国務長官時代の私用メール問題や慈善団体「クリントン財団」による便宜供与疑惑などで強い批判を浴びた。私用メール問題は米連邦捜査局(FBI)の再捜査など二転三転したが、最終的に訴追を求めないという結論にいたった。それでもクリントン氏に対して、「何かを隠している」「嘘つき」という印象を持つ有権者は数多い。

女性の社会進出を阻む「ガラスの天井」を突き破る存在として同氏に期待する向きもあるが、ファーストレディーにとどまらず、上院議員、大統領と権力を目指すクリントン氏の上昇志向を毛嫌いする層は確実に存在する。サンダース氏を支持した若者たちにとってもクリントン氏は、ワシントン政治に染まりきったエスタブリッシュメントにしか見えないだろう。30年間の政治活動で染みついたイメージは数カ月では変わらない。最終的に、クリントン氏はマイノリティ票とサンダース票の両方を取り逃すことになる。

テレビ討論会を前にした9月半ば。両者の支持率の差は1ポイント以内まで縮まったが、その後、前代未聞のオクトーバーサプライズが炸裂する。テレビ番組に共演した女性に対する過去のわいせつ発言ビデオが暴露されたのだ。トランプ氏は「ロッカールームの会話だ」と火消しに努めたが、「スターであれば誰とでもヤレる」という趣旨の発言が大統領選の1カ月前に出た影響の大きさは計り知れない。「もうトランプは終わった」と多くの政治評論家が結論づけたのも当然だ。

その後、選挙直前にFBI(米連邦捜査局)のコミー長官がクリントン氏の私用メール問題を再調査すると発表する別のサプライズが起きたが、それでもトランプ氏が勝利する道はかなり限られていた。

彼が過半数の選挙人を獲得するためには、2012年の大統領選で共和党のミット・ロムニー候補が勝利した24州をすべて押さえた上で、フロリダやノースカロライナなどどちらに転ぶか分からない激戦州や、コロラドやペンシルベニアなど民主党寄りと考えられている州を取る必要があった。ロムニー氏が2012年に取った州も決して安泰ではない。オハイオ州やアイオワ州などはクリントン氏が力を入れ、激戦州となっている。奇跡に奇跡が重ならなければホワイトハウスへの道のりは厳しい――。そう思われていた。

米国の有権者は変化を選択した

それでも勝利したのはなぜか。ひと言で言えば、変化への渇望である。

ロナルド・レーガン元大統領のスピーチライターを務めたペギー・ヌーナン氏は以前、米ウォールストリート・ジャーナルの定期コラムで、今年の大統領選を「絶望」と「不安」の戦いとたとえた。

民主党のクリントン候補は政治経験が豊富で政策的な知見も高いが、政治経済を牛耳る主流派の代弁者で体制の劇的な変化は望めない。他方、共和党のトランプ候補は既存政治とは無縁のアウトサイダーだが、大統領になった後どのような世界を作るのかはふたを開けてみないと分からない。能力は申し分ないが現状維持の候補と、破壊力は満点だが予測不能な候補の二者択一。それを「絶望」と「不安」という言葉で表したのだ。そして、米国の有権者は最終的に変化を選択した。

サイレントマジョリティとして無視されてきた地方の白人の反乱と言い換えることもできる。

オバマ政権の8年間で経済は着実に回復しているが、所得の伸びは遅々としており、中間値を見れば金融危機前の水準を下回る。グローバル化と貿易の拡大で国は豊かになったのかもしれないが、慣れ親しんだ仕事がなくなり、英語を話さない隣人が増えた。オバマ大統領の8年間で同性婚の容認などリベラルな政策が導入され、「多様性」を重視すべしとの掛け声の下でマイノリティばかりが優遇される。彼らの視点から見れば、オバマ大統領の8年で米国は確実に悪化した。将来に対する不安が高まっているにもかかわらず、ワシントンのエリートは党利党略ばかりで物事が何も決まらない――。

その怒りは共和党の主流派にも向いている。

ライアン下院議長をはじめとする主流派は自由貿易や移民の受け入れを支持してきたが、地方に暮らす白人の多くはそれらを望んでいない。主流派が目指すソーシャルセキュリティの削減や富裕層減税も、ブッシュが始めたイラク戦争や積極的な拡張外交も、恐らく彼らの多くは望んでいない。トランプ氏が共和党の分裂を招いたとしばしば指摘されるが、既に共和党は、エスタブリッシュメントや富裕層と、それ以下に分裂していた。トランプ氏はそこに現れ、人々の不満に火をつけただけだ。

「これは白人の反撃だ。国を変えようという白人の反撃であり、黒人大統領に対する反撃である」。CNNでコメンテーターを努めるバン・ジョーンズ氏はこう述べた。トランプ氏が人格的に大統領に向かないと60%の人々が考えていた。その中でトランプ氏が大統領になり、上下院を制したという事実。それはオバマ政権とリベラルに虐げられてきた白人のせい一杯の復讐なのだろう。

北野記事

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トランプ大統領誕生で株価は下落、為替も円高が進むなど、市場は 「トランプリスク」に怯えている。日本は、トランプ大統領とどのように渡り合っていくべきだろうか? Photo:AP/AFLO

ヒラリー・クリントンとの激戦を制したドナルド・トランプ。数々の暴言で知られるトランプだが、間もなく日本の同盟国・米国の大統領になる。この事実を私たちは受け入れ、未来に目を向ける必要がある。今回は、「日本は、トランプとどうつきあうべきなのか?」を考えてみよう。

なぜ、泡沫候補が勝利できたのか?

日本に対しても、「もっと金を出さなければ、米軍を撤退させる」「日本が核を保有することは悪いことではない」とトンデモ発言を繰り返し、日本人と日本政府を困惑させてきたトランプ。まず、当初「愉快候補」「泡沫候補」と思われていたトランプが、なぜ勝利できたのかを考えてみよう。

1つ目の理由は、「グローバル化」への反発である。

「超富豪が世界を牛耳っている」というと、「陰謀論」と捉える人が大半だろう。しかし、近年「本当にそうなのではないか?」という事実も出てきている。なんと、「世界の大富豪上位62人の資産と、下位36億人の資産は同じ」だというのだ。CNN.co.jp1月18日から。(太線筆者、以下同じ)

<オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。  それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7600億ドル(約206兆円)だった。>

<また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。>(同上)

上位1%の資産は、残り99%の資産額より多い!そして、同報告書によると、格差はますます拡大し続けている。

・62人の超富豪と、貧しい36億人の資産は同じ。 ・上位1% の資産は、残り99%を超える。 ・貧富の差は、ますます拡大している。

このような世界の現状は、陰謀論者でなくても「おかしい」と思うだろう。米国でも、そう考える人が増えた。

ところで、「グローバル化」と「貧富の差の拡大」は、どう関係があるのだろうか?ここでいう「グローバル化」とは、「人、モノ、金の移動が自由になること」を意味する。たとえば、「金の移動」が自由になり、世界の大企業や大富豪たちは、普通にオフショアを利用している。つまり大富豪は、合法的に「税金をほとんど払う必要がない」のだ。

一方で、「人の移動の自由化」により、たとえば米国に貧しい国からの移民が殺到している。労働市場に安い労働力がどんどん供給されるため、元から住んでいた人たちの賃金は安くなり、職を失う人も多い。

しかし、「労働力が安くなること」を、大企業は歓迎する。今回の大統領選で、こうした「行きすぎたグローバル化」に反対の声を挙げた候補が2人いた。1人は、民主党でヒラリーを追いつめた社会主義者サンダース。もう1人は、共和党のトランプだ。

トランプ自身は大富豪だが、移民の規制を明言するなど、「反グローバル化」「米国第一主義」を掲げている。

トランプが勝利した2つ目の理由は、「ISによるテロが頻発していること」だ。

2014年8月、オバマは「イスラム国」(IS)への空爆を開始した。苦境に立たされたISメンバーたちは、難民に混じって欧州に逃れ、その後世界に散らばっていると言われている。たとえばドイツだけで15年、100万人以上の難民がシリア、イラク、アフガニスタンなどから来た。そのうち何人がISメンバーなのか、把握できない(誰も、「自分はISメンバーです」と宣言してやってこない)。

トランプは15年12月、「イスラム教徒の入国を完全に禁止しろ」と発言した。理由は、「誰が普通のイスラム教徒で、誰がISメンバーなのか分からないから」だ。政治家もメディアも「差別だ!」とひどく反発したが、米国民からは、「その通りだ!」という声が上がりで、支持率は下がらなかった。

トランプ当選の最大の理由 FBIはなぜヒラリー捜査を再開したのか?

3つ目、最大の理由は、大統領選直前にヒラリー・クリントンの汚職疑惑に関心が集まったことだろう。

ビル・クリントンが大統領を引退した01年、ヒラリーはニューヨーク州上院議員になった。2人は同年、慈善団体「クリントン財団」を立ち上げている。

政府の汚職を研究する「政府アカウンタビリティ研究所」(GAI)のピーター・シュバイツァー会長は15年5月、「クリントン・キャッシュ」という衝撃的な本を出版した。全米でベストセラーになったこの本によると、クリントン夫妻は、以下のような構図で金儲けをしていたという。

1.ビル・クリントンが、外国政府、企業の要望を聞き、上院議員(後に国務長官)ヒラリーに、それを伝える。 2.ヒラリーは、政治力を行使し、外国政府、外国企業の願いをかなえる。 3.外国政府、外国企業は、見返りとして、ビル・クリントンに高額の講演料を支払うか、あるいは「クリントン財団」に多額の寄付をする。

「クリントン・キャッシュ」によると、その「黒い収入源」は、カザフスタン、ロシア、インド、アフリカ、中東、南米と、世界中にひろがっている。「クリントン財団」の汚職疑惑については、FBIも捜査している。ウォール・ストリート・ジャーナル10月31日付を見てみよう。

<クリントン財団の捜査に関する証拠の強さに上級幹部らが繰り返し疑問を投げ掛け、多岐にわたる取り組みを縮小しようと試みていたことが新たに分かった。一部の関係者によれば、この一件の追及を制限するよう捜査員たちに命じていた。同財団への捜査は、金融犯罪などの有無を見極めるために1年以上前に始まった。>

この記事は、1.クリントン財団に金融犯罪の疑いがあり、FBIが捜査していること 2.FBIの上層部は捜査に乗り気でないこと、を示している。

しかし、上層部が乗り気でなかったはずのFBIは、なんと大統領選挙直前に、「メール問題」「クリントン財団問題」の捜査を再開し、ヒラリーのイメージに決定的打撃を与えた。

捜査再開の理由についてFBIは、ヒラリーの側近フーマ・アベディンと、その夫アンソニー・ウィーナー元下院議員のパソコンから、私用メール問題に関係のある可能性があるメールが「新たに65万通見つかったから」と説明している。

しかし、ロシアでは、「ヒラリーのあまりにひどい汚職に耐えかねたFBIが、彼女の支持率を下げるために、わざと選挙直前に捜査を再開した」とみられている。

真相は分からないが、実際に支持率は下がり、トランプは勝利した。

米軍駐留費全額負担と在日米軍撤退はどちらが日本にとっておトクか?

次に、「トランプ新大統領と、どう付き合うべきか?」を考えてみよう。トランプは、さまざまな暴言を吐いているが、日本がらみで大問題になったのは、2つである。

1.日本がもっと金を出さなければ、在日米軍を撤退させる可能性がある。 2.日本の核武装を容認する。

要するに、トランプは「日本がもっと金を出せば、在日米軍は留まる」ということを言いたいのだ。そうなれば、日本が核武装する必要もなくなる。つまり、日本にとって、トランプ問題は「在日米軍に残ってもらうために、もっと金を出すべきかどうか?」という話に集約される。

これを検討する前に、「そもそも日本には脅威が存在するのか?」を考えなければならない。

真っ先に思い浮かぶのは、北朝鮮だろう。そして、中国。毎度同じことを書いて申し訳ないが、中国は12年11月の時点で、ロシアと韓国に、「反日統一共同戦線」の構築を提案している。そして、「日本に放棄させるべき領土」には、北方4島、竹島、尖閣に加えて、沖縄も入っている。中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない」と宣言しているのだ。さらに同国は、「反日統一共同戦線には、米国も引き入れなければならない」としている。

つまり、中国が尖閣、沖縄を奪うのは「既定路線」であり、米軍が撤退すれば、必ず侵略を開始するだろう。結局、日本の選択は2つしかない。

1.トランプの求めに応じて、米軍駐留費用をもっと払う。 2.米軍に出ていってもらい、自分の国は自分で守る。

「独立国家としての理想」は、いうまでもなく「自分の国は自分で守ること」だろう。しかし、そうなると、巨大な中国に対抗するために、「防衛費増加」を避けて通ることはできない(ストックホルム国際平和研究所のデータによると、中国の軍事費は15年、2150億ドル。日本は409億ドル。その差は、実に5倍以上である)。

現在、日本の防衛費はGDPの約1%、約5兆円である。これは、世界レベルで見ると例外的に少ない。米国の軍事費は15年、GDP比で3.32%。日本が米国並みの軍事費を目指せば、防衛費は年間16兆円となり、現状の5兆円+11兆円増となる。そこまで極端でなくても、GDP比2%ぐらいは、当然必要になってくるだろう。そうなると防衛費は倍増するので、年間5兆円増となる。

はたして日本国民は、「防衛費を年間5兆円増やすこと」に賛成するだろうか?財政面を考えても、おそらく無理だろう。では、トランプの要求に従って「米軍駐留費用」を増額すると、いくらかかるのだろうか?

実をいうと、日本は既に「米軍駐留費用」の約75%を負担している(そのことを知ったトランプは、「日本はそんなに払っているのか!」と驚いたという)。

防衛省によると、平成28年度の「在日米軍関係経費」は、5566億円となっている。これで75%ということは、100%負担すると年間7421億円が必要となる。

7421億円-5566億円=1855億円。

トランプから、「100%日本が負担しろ!」と言われ、それを実行すると、年間1855億円の負担増となる。一方、米軍に出ていってもらって完全自主防衛にし、防衛費を現在のGDP1%から2%にすれば、年間5兆円の負担増だ。どちらに経済合理性があるかは、明らかではないだろうか?

トランプの言動から読み取れる性格 「負けず嫌い」をうまく活用すべき

トランプとは、どんな男なのだろうか?今までの発言からはっきり分かる特徴が2つある。

1.民族主義的である。  多民族国家である米国で、「民族主義」という用語は適切ではないかもしれない。トランプ風にいえば、「米国第一主義」となる。

2.なんでも「損得」「お金」で判断する。  資本家、経営者としては当然かもしれない。このことは、日本、韓国、サウジアラビア、NATO諸国などに、「もっと金を出せ!」と要求していることから明らかだ。

BBCニュース11月2日付は、「ドナルド・トランプ氏の頭の中」という記事の中で、8つの特徴を挙げている。

1.過去について話すのが好きではない 2.けんかが好き 3.失敗を受け入れるのが嫌い 4.自分の名前が記事になるのが大好き 5.良い政治家は良いセールスマンだと考えている 6.自分は正直だから騒ぎになると考えている 7.パットが上手(らしい) 8.スキーの名人を良く思っていない、自分より上手いと見せつけられるのも嫌い

トランプの過去のインタビューを分析して書かれたこの記事からわかるのは、「異常なまでに負けず嫌い」であるということだ。もっとも興味深いのは、「8」だ。

<8. スキーの名人を良く思っていない、自分より上手いと見せつけられるのも嫌い。  本を書くにあたって、ダントニオ氏はトランプ氏の元妻イバナさんにも取材した。付き合い始めて間もなくコロラド州にスキーをしに出かけた時のことを、イバナさんは話した。  イバナさんがスキーが得意だと知らなかったトランプ氏は、先に斜面を下ってから恋人に「こっちだよ、ベイビー、こっちだよ」と呼びかけたという。  そこでイバナさんは「空中で回転したんです。2回、くるって。彼の前で2回。そしてそのまま遠くまで滑って行った」。  「ドナルドは激怒して、スキーを外して、シューズも外して、レストランまで歩いて行ってしまった。我慢できなかった。まったく我慢できなかったんです」> (BBCニュース 11月2日)

恋人が自分よりスキーがうまいのが、我慢できない!その後の態度は、まるで子どものようだ。日本は、こういうトランプの特徴を知り、うまく付き合うべきだ。安倍総理はトランプに会ったら、「私も日本国民も、米国が世界のリーダーで居続けることを望んでいます」と言おう。トランプは、きっと喜ぶだろう。

続いて、「しかし国際社会は、米国が世界のリーダーで居続けるとは思っていないようです。ほとんどの米国の同盟国が警告を無視して、中国主導のAIIBに参加したことからも、それは分かります。世界は、中国が世界のリーダーになると思っているみたいですね」と言う。すると、トランプの負けず嫌いに火がつき、「どうすれば中国に勝てるだろうか?」と考えはじめることだろう。

日本最大のリスクは、米国抜きで日中戦争になることである。そうなれば尖閣は、ほぼ確実に奪われる。

日中戦争を回避するもっとも簡単な方法は、払う金を増やしても日米同盟を強固に保つこと。そしてトランプに、「対中国バランシング同盟」を主導してもらうことだ。日本が考えなければいけないのは、トランプの強大なエネルギーを、正しい方向に向けることなのだ。

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『パキスタン対策で日本の協力を求めるインド』(11/4日経ビジネスオンライン 長尾賢)について

祝!!トランプ大統領誕生!

上院も下院も共和党が押えました。オバマの弱いアメリカから強いアメリカに変貌するでしょう。

11/8本ブログでk.Wada氏(ヒラリー勝利)と宮崎正弘氏(トランプ勝利)の見方を紹介しました。宮崎氏の読みが当たったことになります。また、一昨日、増田俊男氏のメルマガでは「今まではユダヤの左派が世界を牛耳って来たが、今回の選挙からユダヤの右派が仕切り、トランプが勝つ」と予想していました。日本国民一人ひとりが国の安全保障について真剣に考えないと。でなければ民主主義ではなく、衆愚政治に陥るだけです。

11/7ブログ「みずきの女子知韓宣言」の『【韓国の反応】韓国人「事実上同盟関係の日本とインド。…それに比べて今の韓国の悲惨な外交状況」』より、

<事実上同盟関係、日本とインド 韓国人たちに「国民の資格」は十分にあるのか

趙甲濟(チョ・ガプジェ)の超少数派サイトから井戸の外のバンダービルドさん。

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事実上同盟関係、日本とインド(6日、国内外のマスコミの報道より)

<日本がインドの経済成長に必要な核心技術と人材教育を大々的に支援することにした。また日本は、原子力技術の輸出のため、核拡散防止条約(NPT)未加入国のインドと原子力協定を締結することにした。日本は、高速鉄道や新幹線の受注に成功したことに続いて、経済安全保障や原子力など、敏感な部門まで協力に乗り出して、両国関係が新蜜月に入ったという分析である。 6日、日本のマスコミによると、モディ・インド首相は10日から2泊3日の日程で日本を訪問し、安保・経済協力方案を議論する。

モディ首相の日本訪問は、当選直後の2014年8月に続いて二回目だ。 当時の安倍晋三首相は、異例として、東京ではなく京都まで出向いてモディ首相を迎え、首脳会談では3兆5000億円に達する大規模な経済支援を約束したりした。 当時、初めての海外歴訪に日本を選択したモディ首相に大々的な贈り物の包みで力を与えつつ、パートナーシップを内外に強調する効果を得たという評価を受けた。

今回の11日に予定されている首脳会談では、安倍首相はモディ首相に持続的な経済成長を支えるための技術と人材教育を積極的に支援するという約束をする計画である。  10年間で約3万人の技術人材を育成し、そのために、トヨタ車やダイキン工業などの代表企業がインド各地に職業訓練所を設立する方針を伝えることが分かった。

特に両国は、今回の首脳会談で、原子力協定を締結することが知られて非常な関心を集めている。 日本がNPT未加入国と原子力協定を締結するのは極めて異例のことである。 原子力協定を締結すれば、日本の原発技術を移転することまで可能になるものと見られる。 日本は国際社会の懸念を意識して、インドが核実験をした場合は協力を中断するという条件を掲げて協定を締結することが分かった。 この場合、世界最大の市場の一つのインド原子力市場に日本企業が進出する足場を用意することになる。>

ロシア、インド、フィリピンなどのいくつかの周辺国が、日本を利用して様々な利益を得ているが、韓国政府と多くの国民(民官)は、過去数年の間、日本と敵対したくて苦労してきた。 数年もの無駄な歳月をすごして退化したわけである。 日本との関係が円満だっただけでも、例えば韓国の青年就業問題は、日本企業の求人難と調和して、今ごろはWin-Win次元での大規模な韓日経済協力の源(韓国青年の日本現地や韓国内での日本企業への大規模な就業政策など)が導出されていたものである。 ところが今は、日本国内の嫌韓現象だけが増幅した状態だ。

他の国は、敵すら友にするが、韓国はそれなりに友人だった相手(友好国日本)ですら敵に回しつつ、いろいろな種類の有形無形の損害を見ているところである。  <慰安婦>の件は、韓国にあまりにも多くの損失と弊害を与えた。 最も重要な時期に、韓国の外交、安保、経済などさまざまな主要な分野に大きな悪影響を及ぼし、韓国の発展に完全に唐辛子粉をばら撒いた元凶である。

朱子学的観念論に国中がぶら下がり、数年を無駄にしたことに大きな怒りを感じる。  <重要な時期に慰安婦にぶら下がって、それ以来国が衰退し始めた。>と遠い将来歴史の本に記録される可能性が濃厚だ。引用ソース https://www.chogabje.com/toron/toron22/view.asp?idx=&id=137954&table=TNTRCGJ&sub_table=TNTR01CGJ&cPage=1

*はやく慰安婦合意を破棄してくださいね^^(注:ブログ主)

韓国人のコメント・正解と不正解(ハンドルネーム) 民族的愚かさに起因した損害が並大抵ではありません。

どうしてこんなに現実の把握ができないのだろうか。 「日本を孤立させる」という果てしない作戦が、どれだけ愚かな行為なのか、そろそろ知るべきです。>(以上)

韓国人は気付くのが遅かったでしょう。朴の告げ口外交で世界の中で日本を孤立化させる戦略は、ものの見事に失敗しつつあります。世界で嘘の慰安婦像を建てまくることは、日本の嫌韓感情をいやがうえにも増しました。日本を敵に回した韓国に自由主義国としての生存空間はなくなったという事です。中国の属国として中国共産党に大政奉還した方が良いのでは。

本日から12日までモデイ首相が来日します。日本はインドとパキスタンと両方に良い顔は出来ません。どちらかにウェイトはかかります。パキスタンが「中国の敵はパキスタンの敵」と言っているなら、まさしく日本はパキスタンの敵になっている訳です。況してやテロ支援国家であれば猶更です。

中国の軍事拡張に対抗するには、多国間同盟で切り抜けるしかありません。日米豪印台比越で準軍事同盟を結び、第二次大戦の連合国のように、中国を封じ込めることが肝要です。ロシアが加わればもっと良いでしょう。

今や、中国は経済崩壊が囁かれる中、宇宙にまで軍拡の道を歩もうとしています。一党独裁で人権抑圧国家が世界を牛耳れば、人類にとってこんな不幸はありません。一番のポイントは米国の大統領です。

ガンジス川の水源で思い出しますのは、チベットのヒマラヤの水源です。長江も同じですから。中国がチベットを手ばなしたくないのは、それも理由の一つでしょう。下のURLの記事に中印は領土ではなく水源の争いになったとあります。強欲で利他精神を持たない中国ですから、独り占めするように動くのでは。堆積物が溜った三峡ダムが決壊すれば良いのに。

http://www.recordchina.co.jp/a75467.html

http://u1sokuhou.ldblog.jp/archives/50484895.html

記事

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インドとパキスタンの緊張が増している。パキスタンが仕掛けたとされる爆発でけがを負ったインドの子供(写真:AP/アフロ)

インドのナレンドラ・モディ首相が11月10日に訪日する。原子力協定の最終合意、US-2救難飛行艇の輸出にかかわる交渉(価格が1割引になると報じられている)、アンダマン・ニコバル諸島についての海洋安全保障協力などが注目ポイントだ。その中で、インドが力を入れているものの1つは、パキスタン対策における協力だ。今、インドはパキスタンに対して、これまでにない強い態度を示している。そして各国に、インドを支持するよう強く求めているのだ。

図:日本とインド、中国とパキスタン位置関係図

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※筆者作成

越境攻撃に打って出たインド

9月末、モディ政権の新しい方針を明確に示す行動があった。インド軍が、カシミールのパキスタンが管理している地域にあるテロリスト訓練キャンプ7か所に特殊部隊を送り、これを襲撃したのだ。

この作戦は、直接的には9月に起きたテロ事件への懲罰である。しかし、それだけではない。モディ政権がパキスタンに対して新たな政策、より強い政策を採用した点も重要なのだ。インドは1980年代末以来、パキスタンを拠点とするテロ組織の攻撃にさらされてきた。パキスタン政府は、特に軍の統合情報部ISIを中心に、このようなテロ組織を支援してきた(注1)。だから、インドがパキスタン側にあるテロ組織の拠点を攻撃したとしても、おかしくない状況が26年以上続いてきた。

しかし、インドはこれまでパキスタン側に越境してまで攻撃することはあまりなかったのである。越境砲撃に対しては越境砲撃で対応したし、特殊部隊を使って小規模な越境襲撃をしたこともある。しかし、いずれも規模が小さく、非常に抑制された作戦にとどまっていた。

今回は大きく違う。公式の声明を発し、大々的な宣伝を行って比較的大規模な攻撃を実施した。インドは、今回の作戦はこれで終わりとしているけれども、必要があれば再び実施するとも述べている。モディ政権のパキスタン対策は、これまでにない強いメッセージを送っているのである。

(注1)なぜパキスタンはテロ組織を支援するのであろうか。その背景には、まともに戦えばパキスタン軍はインドには勝てないことがある。そこでパキスタンは核兵器を開発するとともに、インドの国力を弱める手段としてテロ組織を支援するようになった。主に、パキスタン軍の統合情報部(ISI)がテロ組織に情報・訓練・武器などを提供しているものとみられている。テロ組織への支援は「千の傷戦略(何千もの小さな傷を付けることでインドの国力を弱める戦略)」とも呼ばれている。

パキスタンへの圧力を強めるインド

モディ政権は外交攻勢にも力を入れている。大きく2つのことに取り組んでいる。パキスタンに対して直接行うものと、世界各国を説得してパキスタンを孤立化させる間接的なものだ。

パキスタンに直接実施するものとして、インダス川水利協定の見直し、反乱を起こしているバルチスタン地域での反乱への支援、最恵国待遇の見直しなどを検討している。インダス川水利協定とは、印パ間でインダス川の水の分け前を決めた協定で、源流が流れるインドが、下流にあるパキスタンに対して、水の安定供給を保証している。モディ首相は「血と水は一緒に流すことはできない」と言及、パキスタンがテロ支援を続けるならば、インドは水の安定供給を保証しないことを示唆した。

モディ首相はバルチスタンにも言及している。バルチスタンは、現在、パキスタンに対して独立運動を起こしている部族がいる地域だ。インドは、反乱鎮圧においてパキスタン軍が人権を無視した暴力行為を行っていると非難している。パキスタンがカシミールでテロ組織を支援しているように、インドはバルチスタンで反乱を支援するかもしれない、と示唆したのである。

そして最恵国待遇とは、他の国と新たに条約を結んだ時は、同様の条約を既に結んでいる国が不平等にならないよう、既存の条約の条件を新しい条約と同等のものに調整する仕組みだ。もともと、インドはパキスタンに対しては最恵国待遇を認めているが、パキスタンはインドに対して最恵国待遇を認めていないアンバランスな状態にある。そこでインドは今回、パキスタンに対する最恵国待遇を見直す検討に入ったのである。

インドは国際社会に訴えてパキスタンを孤立化させる間接的な政策にも取り組む。国連においては、パキスタンによるテロ支援は人道に反する犯罪行為であるとして、各国の支持を求めるべく積極的な外交を展開している。BRICS首脳会議でも、パキスタン対策で各国に同調を求めた。今年パキスタンで行われるはずだった南アジア地域協力機構SAARCの会議も、インドは欠席を決めた。バングラデシュ、ブータン、アフガニスタン、スリランカもこれに続き、全8か国中5か国が欠席を表明する事態になり延期が決まった。実際に一定の効果を上げているといえよう。

インド支持の米国、パキスタンを守る中国

このような動きに対して、各国はどのように反応しているのだろうか。実は、米国と中国は対照的な動きを見せている。

米国はインドに配慮する姿勢を強めている。インドがパキスタンを攻撃した後、ジョン・ケリー米国務長官はパキスタンに対して、パキスタン国内のテロリストがインドに対してテロ攻撃を行うのを防ぐよう求めている。核兵器開発についても中止するよう求めている。

米国のインド傾斜は最近顕著だ。パキスタン国内向けのテロ対策への援助を大幅に減額しつつある。中でも、今年春、F-16戦闘機8機の売却を中止したのは象徴的な事例である。これは、米国が価格の6割分を支払い、パキスタンは残りの4割を負担するだけでF-16戦闘機を購入できるという、事実上の援助であった。これに対してインドは強く反対していた。パキスタンがF-16戦闘機を手にすれば、テロ対策ではなく、インドを攻撃するために使うというのが、インドが反対する理由である。

バラク・オバマ政権はいったん承認したものの、米議会の反対に遭った。結果、米国はパキスタンに対して、全額の支払いとともに、導入後どのように使用しているかチェックさせるよう要求。パキスタンはこれを拒否した。米国がパキスタンから離れ、インドに傾斜していることを象徴する事例であった。

これと対照的なのが中国の対応だ。中国はパキスタンを守る姿勢を示している。例えば、それは国連での活動にはっきりと表れている。パキスタンが支援しているテロ組織ジェイシェ・ムハマンド(JeM)は、今年1月と9月にインドでテロを行った組織とみられており、インドだけでなく米英各国も「テロ組織」に指定している。インドは今年3月、その組織のリーダーを国連が認める「テロリスト」に正式に指定するよう提起した。そうすればパキスタンがテロ組織を支援していると国連が正式に認めたことになるからだ。そして国連安全保障理事会の制裁委員会において協議が行われ、15か国中14か国が賛成した。

しかし中国だけが反対したのだ。中国は関係国と調整する必要があるとして、決定を6か月延期したのである。今回インドが攻撃を実施したのは、その延期の期限が切れる直前であった。インドの攻撃を見たうえで、中国はさらに6か月延期し、パキスタンを支持する立場を守り続けている。

中国は、インドが核物質供給グループ(NSG)に加盟することについても反対の姿勢を貫いている。インドだけが加盟し、パキスタンが加盟できない事態を避けるためだ。中国がこのような姿勢なので、インドでは水問題に関して中国の行動を懸念している。もしインドがインダス川水利条約を見直してパキスタンへの水の供給量を減らした場合、中国がチベットにあるガンジス川の源流を細めインドに対する水の供給量を制限することができる、と見ているためだ。

日本も方針を決定する時期が来ている

このような情勢に、日本はどのように対応すべきだろうか。結論から言えば、日印強化のために日本はより強くインドを支持したほうがいい。ただ、一定の留保も必要だ。その理由は3つある。まず、日本の国益はいくつかの点でインドの対パキスタン政策とリンクしているからだ。特に、パキスタンと中国の協力関係が緊密なのは日印共通の懸念事項だ。昨年12月31日と今年1月1日、中パの海軍は東シナ海で共同演習などを実施した。

中国が進める一帯一路政策においても、パキスタンは重要なルートだ。例えば、ルートの開発が進めば、中国が中東から輸入する石油はこのルートで運ぶことができるかもしれない。中東から、バルチスタンにあるグワダル港で陸路に入り、パキスタン国内を北上して、カシミールを通って新疆ウイグル自治区に運び込むルートが考えられる。

だから中国は、その安全確保のために、グワダル港を整備し、パキスタンに艦艇や潜水艦を輸出している。バルチスタン地域の安全確保についてもパキスタンに強く要請した(バルチスタンの反乱部隊は中国人を襲撃しているため)。カシミールでは、中パ両国で共同パトロールを実施するなど、積極的に活動し始めている。

このような中国の進出は、インドだけでなく、インド洋にシーレーンを抱える日本にとっても無視できない状況になりつつある。

またパキスタン政府首脳は、「中国の敵はパキスタンの敵」と繰り返し公言している(2012年4月にユスフ・ラザ・ギラニ首相が、2015年9月には陸軍参謀長が述べた)。もともとは中国の新疆ウイグル自治区で活動する武装組織に対して述べたものと考えられる。だが、中国の海洋進出にパキスタンが協力している姿勢を見れば、日本としては気になる発言である。

2つ目の理由は、パキスタンはかつて、北朝鮮の核兵器開発に協力した経緯があることだ。北朝鮮が開発する核兵器の設計図はパキスタンが持ち込んだものであり、パキスタンが保有する弾道ミサイルの設計は北朝鮮によるものとみられている。北朝鮮が今年実施した核実験、それに使われた核物質もパキスタンが供給したという報道がある(注2)。

3つ目の理由は、米国がインド寄りの姿勢を強めていることだ。ただ、この点は、日本として、したたかさが必要とされる部分である。これまで米国の対パキスタン政策が揺れ動いてきたからだ。今後も揺れ動く可能性がある。例えば、再び9.11のような大きなテロ事件が起きて、米国がパキスタンとの対テロ協力を強化する事態が想定される。日本も米国に協力して、パキスタン支援を強化することになる可能性があるわけだ。したがって、日本がパキスタンとの関係を完全に断ってしまうと、将来、柔軟に動けなくなってしまうことが懸念される。

以上の3つの理由をまとめると、日印関係強化のためには、パキスタンに対して今よりも強い政策が必要になるが、関係を完全には断たない方がいい、という結論になるだろう。

では具体的にどうするべきだろうか。日本は3つのことを追求すべきだろう。まず、対テロ政策で、よりインド寄りの姿勢を見せるべきである。パキスタンに対しては、インドに対するテロ攻撃を助長するような行動は、テロ攻撃を憎む日本としても看過できないことを伝える。そしてインドに対してテロ攻撃が行われ、インドがパキスタンに対して再び越境攻撃をかけた時、日本は、平和的解決を望むことを明言しつつも、攻撃に至ったインドの心情に理解を示すべきである。

第2に、パキスタンに対しては、北朝鮮の核開発に協力しないよう念を押すことが重要だ。そして第3として、パキスタンに対して、中国と一定程度の距離を置くべきであることも伝えておくべきだろう。

日本はこれまで印パの紛争とは距離を置いてきた。しかし今日、日本、米国、インドの3か国の関係はこれまでにない重要性をもっている。日本もパキスタン対策における立場をより明確にして、日米印関係をより強固なものにしていく時期が来たと考えられる。

(注2)”Pakistan selling nuclear materials to North Korea - CIA’s explosive revelation; US informs India”(Zee News 6 September 2016)

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『「悪手」を重ねる朴槿恵 保守の最後の勝負手は戒厳令?』(11/7日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『韓国野党が朴大統領に辞任を要求しない理由』(11/7日経ビジネスオンライン 重村 智計)について

韓国の今回の騒動は裏で北が動いたのではと感じます。米軍の先制攻撃・金正恩の斬首作戦を阻もうとしたのでは。でも崔順実の件が、今まで漏れなかったのに、ここにきて急にというのは、政権内部に裏切り者が居て、ここぞと言うときに暴露するように温めていた気がします。重村氏の記事によれば、朴大統領から崔順実に情報流出していたたことが何故わかったかと言うと、「JTBCは、崔順実氏のパソコンかタブレットを入手し、事実を確認したと伝えられるが、入手方法が正当なものだったのかどうかには疑問が指摘されている。」とあります。崔順実に近づける誰かが別の媒体にダウンロードしてリークしたと思われます。確かに不通大統領で誰も信用せず、近づけない人間からの情報窃取は難しいでしょう。崔順実側から漏れたと思います。まあ、告げ口外交を世界に向けてやってきた咎めが出たのでしょう。

日本はこれ幸い、日韓通貨スワップもGSOMIAも止めた方が良いでしょう。今でも世界に慰安婦像を建て、日本の名誉を貶めようとしている輩です。こんな国を助ける必要はありません。日本にとっては、中国同様敵国です。『非韓三原則』で臨むのが正しい道です。若者の日本での就職も認めないでほしい。反日教育が刷り込まれた若者は靖国神社の爆弾魔や放尿事件犯など、神をも畏れぬ不逞の輩が沢山入ってくることを意味します。逆に日本に残っていて反日活動をしている在日には帰還して貰った方が良いと国民の多数は思っているのでは。

流石、火病の国で、大統領に対し糞も味噌も一緒くたの非難ですが、崔順実の娘の私立・梨花女子大学の入学ルールを変えての入学は問題ないと考えます。日本の私立大学だって運動選手の推薦入学はあります。学力だけを基準にした選考だけが正しいと言う訳ではありません。問題は崔順実の財団を作って企業から強制的に金を集め、それが娘の教育資金になったという所でしょう。妬み・嫉み・僻みの三大イジケ体質を持つ韓国民ならではの特徴ですが、冷静になれば分かることなのに、国民情緒が優先されます。一所懸命勉強している学生には金持ち優遇と思われるでしょうが、正当に稼いだ金で子女の教育にお金をかけるのは正当な行為です。それこそ資本主義の在り方そのものですので。逆に中国の共産党支配で、権力者の子弟は権力によって名門大学に入学可能です。「紅二代」と言われ、世襲で大学入学ができるという事です。習近平などその典型。この一例を見ても、資本主義と共産主義とどちらが健全か分かるでしょう。韓国民は北の影響を受け過ぎていて、共産主義の本質的に持つ恐ろしさが見えていないようです。

室谷克実氏は、11/4ZAKZAK記事で、朴大統領は崔順実を早く立件させて刑を確定し、クリスマス恩赦で、落着させようと考えているとのこと。姑息なやり方としか思えませんが、「他国の悪口を平気で言える」人間だから、「他人が自分をどう思うか」については考えが及ばないのでしょう。所詮、韓国民の代表だけあります。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20161102/frn1611021848011-n1.htm

鈴置記事

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「朴槿恵退陣」のプラカードを手にソウルのデモに集まった人々(写真:ロイター/アフロ)

韓国という旅客機の乗客が、パイロットを変えろと大騒ぎだ。操縦席にはまだ大統領が座っているようだが、意識があるかは不明だ。いつまで韓国が正常に飛び続けるかは誰にも分からない。

1週間で4倍に膨れたデモ

—11月5日にもソウルで朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の退陣を求める大きなデモがありました。

鈴置:参加者数は主催者発表で20万人、警察発表で4万人強。その間を取るように、保守系メディアの多くは10万人と報じました。

その1週間前の土曜日、10月29日のデモの参加者数は主催者発表で3万人、警察発表では1万人強でした。4倍以上に膨れ上がったことになります。

—朴大統領は2度も国民に謝ったのではありませんか?

鈴置:ええ、10月25日に続き11月4日にも国民向けの談話を発表しました。テレビも中継する中、40年来の友人である崔順実(チェ・スンシル)氏への情報流出に関し国民に頭を下げました。

でも、いずれの謝罪も火に油を注ぐ結果となりました。10月25日の1回目の謝罪はたった90秒間でした。記者からの質問も受け付けなかったので「誤魔化し」と受け止めた韓国人が多かった。

2回目の11月4日の謝罪は9分間に延長しました。自らの捜査に応じるとも大統領は明言しました。が、やはり記者の質問は受け付けませんでした。国民の声に耳を傾けない「一方通行の指導者」との不満をますますかき立てました。

それに検察の捜査が本格化し、世間の関心は崔順実氏が財界に巨額の「強制的寄付」を要求していた事件に移っていたのです。

メディアが「(強制的な寄付に関しては)大統領の指示を受けた」との青瓦台(大統領府)元・高官の発言を報じていた。

というのに2回目の談話で大統領は「特定個人が利権をむさぼり、違法行為まで犯していた」とまるで他人事のように述べ、新たな国民の怒りを呼びました。

「国政壟断事件」の動き(2016年)
10月
24日 JTBC、大統領演説の草稿など機密資料が崔順実氏に漏えいと報道
25日 朴大統領が資料提供を認めて国民に謝罪
   
26日 検察が崔氏自宅など家宅捜索。外交資料なども漏洩とメディアが報道
28日 朴大統領は首席秘書官全員に辞表を出させる。秘書室長が辞表提出
28日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率が6週連続で落ち、過去最低の17%に」と発表
29日 青瓦台、検察の家宅捜索を拒否。ソウルで1万人強の退陣要求デモ
30日 青瓦台、検察に資料提供。朴大統領は一部首席秘書官らを辞任させる
30日 与党、挙国一致内閣を提案するも野党は真相究明が先と拒否
30日 崔順実氏帰国、31日に検察に出頭、逮捕状なしで緊急逮捕
31日 リアルメーター「潘基文氏の支持率が前週比1.3ポイント低い20.9%に」
11月
2日 朴大統領、首相を更迭し、後任に盧武鉉時代に要職を歴任した金秉準氏を指名
2日 野党各党、新首相の就任に必要な国会聴聞会を拒否することで一致
2日 検察、安鍾範・政策調整首席秘書官を緊急逮捕
3日 検察、崔順実氏を逮捕。容疑は「安鍾範氏と共に財閥に寄付を強要した」職権乱用など
4日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率は過去最低の5%、不支持率は89%」と発表
4日 朴大統領「検察の捜査受ける」と国民向け談話。野党は「退陣要求運動を展開する」
5日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
6日 禹柄宇・前民情首席秘書官が検察に出頭

※注 デモの参加者数は警察発表

時局認識が安易か無知だ

—朴大統領は首相も交代させましたが。

鈴置:11月2日に首相を更迭し、後任に金秉準(キム・ビョンジュン)氏を指名しました。左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代(2002―2008年)に副首相という要職を歴任した人なので、野党も受け入れると判断したのでしょう。

しかし、この人事も野党に攻撃材料を提供しました。与党、セヌリ党は「共に民主党」や「国民の党」など野党に対し「挙国中立内閣を作ろう」と持ちかけていました。

そこに突然、朴大統領が相談もなく新首相を指名したわけで、野党はさらに硬化しました。首相任命は国会の同意事項です。2016年4月の総選挙でセヌリ党は少数与党に転落しています。もともと野党への根回しなしに首相交代は不可能なのです。

東亜日報のホ・ムンミョン論説委員は「朴大統領は朴志晩(パク・ジマン)氏から会え」(11月4日、韓国語版)で以下のように書きました。

  • 金秉準首相の内定は順番を間違った。大統領がまず率直に(真相を)解明し、離党した後に与野党の代表と会って挙国内閣を前提に2、3人の複数候補の推薦を得て1人を選ぶという手順を踏めば、収拾の道が開けたであろうに。
  • 大統領の時局認識が安易なのか、あるいは無知なのか、理解できない。

恐慌状態の大統領

—なぜ、朴大統領は事態を悪化させる手ばかり打つのでしょうか。

鈴置:ホ・ムンミョン論説委員は同じ記事で、以下のように分析しています。

大統領が国民の期待とは正反対の方に行くのはなぜだろうか。何といっても家族が一番よく知っている。実弟の朴志晩氏と親しい知人から聞いた同氏の話は以下だ。

「崔順実氏がいない今、姉は精神が恐慌状態に陥っている。崔氏から(朴槿恵氏を)引き離すため10年かけたが失敗した」。

40年来の友人、崔順実氏だけではありません。10月28日から30日にかけて朴大統領は側近の全て――秘書室長や首席秘書官、それに国会議員時代から仕えていた秘書官を辞めさせる羽目に陥りました。

大統領が率直に相談できる人はどこにもいなくなったのです。難局の中、政権がどこに向かうのか、誰にも予測がつきません。

—孤立無援ですね。

鈴置:文字通り、そうなのです。野党は「水に落ちた犬を叩け」とばかりに「とにかく真相解明だ」と叫びます。「朴槿恵の悪行」が明るみに出るほどに、次の大統領選挙で野党が有利になるからです。

退陣60日以内に投票

—その選挙はいつですか?

鈴置:任期満了なら2017年12月。もし、任期途中で大統領が退陣すれば、退陣の60日以内です。仮に2016年11月末に退陣すれば、2017年2月末か3月初めに投票となります。

次期大統領に関するアンケート調査では、与党から出馬すると思われていた国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏がほぼ一貫してトップを走って来ました。「世界の大統領」を歴任した功績からです。

でも、国連事務総長の任期は2016年末まで。選挙が約1年も前倒しになり来年早々に投票となれば、潘基文氏はろくに選挙運動もできません。

それに、この人は朴大統領と近い関係にあると見られてきました。崔順実氏による「国政壟断事件」によって「朴槿恵の悪行」が明るみに出ると、さすがにダメージが大きい。最近のアンケート調査で、野党候補に人気で追いつかれました。

調査会社の「リアル・メーター」が10月24―28日に聞いた世論調査では、潘基文への支持率は20.9%と1カ月で6.5%ポイント落ちました。文在寅(ムン・ジェイン)前「共に民主党」代表の20.3%とほぼ並びました。

「孤立無援」と言えば、検察もそうです。当初はこの事件の捜査に及び腰でしたが、1回目のデモが起きた10月29日ごろから急にやる気を見せ始めました。

国民の怒りが検察にも向いたからと思われます。それに、いつまで朴政権が持つか分からなくなったのです。死に体の大統領より、次の政権を取りそうな野党の顔色をうかがう方が、組織と自分たちを守る「正しい」行動です。

違法デモに感謝した警察

—警察もデモを厳しく取り締まらなくなったとのことでした。

鈴置:左派系紙のハンギョレは、10月29日の1回目のデモで「朴退陣の主張に共感した機動隊」を報じました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

保守系紙の朝鮮日報も「変化した警察『国を愛する皆様のお心を理解します』」(10月31日、韓国語版)で「警察の変身」を伝えました。ポイントを要約して翻訳します。

  • 「尊敬する市民の皆さん、国を愛する皆さんの気持ちは十分に理解します」――。29日午後8時30分頃、ソウル・光化門付近の6車線を占領したデモ隊に対し、ホン・ワンソン鍾路警察署長が解散を要求し、こう述べた。
  • この日、デモ隊は届け出ていたルートを変更し、光化門付近を違法に占拠して警察と対峙した。これは明白な集会デモ法違反である。が、警察の現場幹部は「人道に上がってほしい」と何度も放送しただけで、従来とは異なり放水銃は使わなかった。
  • 翌30日、ソウル地方警察庁は報道資料で違法行為には言及せず「市民の皆さんも警察の案内に従い、理性的に協力してくださったことに感謝申し上げる」と感謝を表明した。

次の土曜日にもデモ

—11月5日のデモではどうだったのですか?

鈴置:警察は集会は許可しましたが、デモ行進は不許可としました。しかし主催した左派団体はソウル市内の大通りを行進させました。というのに、今回も警察は阻止しませんでした。家族連れが目立つ「おとなしいデモ」だったこともあります。

警察は、支持率が5%、不支持率が89%の大統領に対する退陣デモを「弾圧した」と批判されたくないのでしょう。これらの数字は11月第1週の韓国ギャラップの調査結果です。

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一方、左派団体は11月5日に続き、12日にも大規模なデモを計画しています。「おとなしいデモ」により参加人数をさらに増やし、政権により圧力をかける方が得策と計算しているはずです。戒厳令を引き出すような過激な行動は、とりあえずは避けると思います。

外交と国防にしがみつく朴槿恵

—そう言えば、保守運動の指導者である趙甲済(チョ・カプチェ)氏が「朴槿恵大統領が下野するか、あるいは戒厳令でデモを抑え込むか、との状況になりかねない」と指摘しました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

鈴置:2回目のデモの最中、趙甲済氏の主宰するネットメディアに「戒厳令」を準備すべきだと主張する記事が載りました。書いたのは「ヴァンダービルド」の筆名で縦横に論じる外交・安保の専門家です。

刀を振りかざす相手には、同じように真剣で対さねばいけない」(11月5日、韓国語)の一部を翻訳します。

  • 朴槿恵大統領は今後、総理に強い権限を持たせて内政を任せる一方、自分は外交と国防を担うとの構想を持っているようだ。だが、そうなれば左派は「崔順実騒動」を煽った甲斐がない。
  • 韓米日の協調強化、北朝鮮の金氏体制崩壊への動き、北朝鮮への先制攻撃、韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、文在寅氏の北朝鮮とのつながりの追及など(左派にとって)危険な政策を無力化しようと狙ったのに、朴大統領が安保・外交を引き続き担うとすれば失望するしかない。
  • 一方、朴大統領は「崔順実事件」が完全に究明されていないというのに、白旗を掲げて投稿するように一方的に譲歩している。側近を処理し、核心ポストに野党系の人を指名した。捜査にも応じるとした。国民にも謝った。卑屈に見えるほどの譲歩だ。

下野闘争には戒厳令

—ヴァンダービルド氏にすれば「卑屈な譲歩」なのですね。

鈴置:当初、韓国には「上手に立ち回れば、首相の交代ぐらいで事態を収拾できる」と見た人も多かったのです。韓国では譲歩すれば「弱い」と見なされ、さらなる譲歩を迫られます。

ここまで下手を打ち続けて国民の怒りを買うと、政権としては打つ手がありません。大統領をかばうメディアもありません。左派系紙はもちろん、保守系紙も一様に大統領批判を強めています。

少しでもかばえば、国民から「御用メディア」と批判されるからです。さて、ヴァンダービルド氏の記事の続きに戻ります。

  • これだけ大統領が譲歩したというのに、今後も「下野(げや)闘争」が続くというならば、ある種の不純な意図――国防や外交の権限まで掌握した後に「左旋回」しようとの意図が鎧の下にあると見るほかはない。
  • もし、この目的のために今後も騒乱と混乱が続くなら、朴大統領は憲法で保障された緊急措置権の発動を準備すべきだ。国会の承認など面倒な手続きを考えると、緊急措置権の中で「警備戒厳令」が最も現実的な選択肢だ。

—戒厳令ですか。

鈴置:準備しておけ、との主張ですがね。ちなみに「警備戒厳令」とは敵との交戦状態にない場合に発動する「戒厳令」です。軍が公共の安寧秩序を維持するという点では、交戦状態下の「非常戒厳令」と同じです。

カブスだって逆転優勝

—本当に戒厳令まで行くのでしょうか。

鈴置:それは分かりません。もう一度言うと、ヴァンダービルド氏も「準備すべきだ」と言っているだけです。

この人も、戒厳令を布くような状態になると考えているというよりも、そんな状態になるのが保守政権の最後の生き残りのチャンス、と考えている感じです。

なぜなら「戒厳令」の記事と同じ11月5日に、朴大統領に対し「堂々と左派に立ち向かえ」と求める「大統領が国を売ったというのか? なぜ、下野しろと騒ぐのか」(韓国語)を書きました。その最後の1文が以下なのです。

  • この世界は様々の逆転勝ちの記録に溢れている。シカゴ・カブスは1勝3敗の崖っ縁の危機から3連勝し、劇的にワールドシリーズに逆転優勝した。こんなことはスポーツだけに起きるのではない。そして韓国に起こらないという法は絶対にない。

ヴァンダービルド氏も、朴大統領が何とか政権を維持できるのはシカゴ・カブスの逆転優勝並みの確率と見ているのでしょう。

計り知れない大統領の心

左派もこのまま行けば朴政権は自滅すると考えています。これも先ほども言いましたように、左派としては戒厳令などを引き起こす過激なデモは、今のところは避けた方が得策なのです。

左派の作戦は、とにかくデモの参加人数を増やして大統領への圧力を高める。そのためにも検察のお尻を叩いて「朴槿恵の悪行」を暴かせる。それを左派系メディアが煽れるだけ煽る――だと思います。

—結局、今現在は戒厳令の可能性は低いということですね。

鈴置:その通りです。ただ注目すべきは、朴槿恵大統領には相談する相手がもういないことです。孤独な大統領がどんな判断を下すかは予測不能なのです。

(次回に続く)

重村記事

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国民へのお詫びを表明した朴槿恵大統領

朴槿恵大統領を巡るスキャンダルで、野党第一党の「共に民主党」はすでに権力を手にいれた気分だ。与党のセヌリ党は茫然自失の状態で次期大統領候補を誰にするか、その見通しも立たない。政治は、外交も内政も機能停止状態に陥っている。

日本では理解されないが、背景には左翼勢力と保守勢力との歴史的な両極対立がある。政権末期に大統領スキャンダルが噴出する「韓国病」と、「儒教的後進政治」がもたらす悲劇である。

ただし、野党指導者らは朴大統領に「即時退陣」は要求はしていない。同大統領が辞任する可能性は、極めて低い。

今、大統領選にしても得はない

朴槿恵大統領の政治力不足が今回の混乱を招いた第一の原因であると、韓国のジャーナリストや政治家、政府高官経験者は指摘する。

韓国では、朴大統領を「不通(話が通じないの意味)大統領」と呼ぶ。記者会見をせず、支援しようとする元老たちを近づけず、忠告も聞かない。閣僚や大統領府の側近も、世間から尊敬を得られる一流の人物ではなかった。

朴大統領を支持する保守派も「人の話を聞かず、適切な人事もできない」と批判した。支持率は17%から5%へと下落した。大統領を支持する保守勢力は、選挙では40%もの固定票を集めるにもかかわらずだ。ただし、その一方で、大統領に「なお留まるべき」との回答は45%もあった。

ソウルでは5日夕、朴大統領の「辞任」を要求する大集会が開かれた。参加者は10万人を上回ると予想されたが、警察の発表は約4万5000人で予想を大きく下回った。

予想がはずれた背景には、野党の指導者たちが「朴大統領に直ぐに辞任してもらいたい」とは思っていない事情がある。奇妙なことに、野党指導者は、誰も朴大統領の辞任を要求していない。「国政から手を引け」と言うだけだ。

「国政から手を引け」は、辞任を意味しない。その真意は、大統領職にとどまってもいいが、野党も参加する「挙国一致内閣」や「中立内閣」を組閣せよということ。実権を野党が行使する体制を築けという意味だ。

なぜ、野党指導者らは「即時辞任」を要求しないのか。彼らは、混乱する内外政策や困窮する国民への関心は薄い。韓国は、北朝鮮の脅威と経済後退に直面し、多くの対応を迫られているが、政策論争と政策協調はない。それより大事なのは、自分が大統領に就任し、5年の任期と権力を手に入れることだ。

もし大統領が辞任すると、60日以内に大統領選を行う規定になっている。現時点で、大統領選への準備ができている野党政治家は、野党第1党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)元代表だけだ。他の野党指導者は、まだ準備不足で「大統領の即時辞任」は困るのである。

また60日以内に大統領選挙をしても、後任大統領の任期は、朴大統領の任期の残りでしかない(2018年2月まで)。これは、文在寅元代表にとっても好ましいものではない。

だから、左翼勢力が主催する集会の参加者が朴大統領の「辞任」を叫んでも、野党指導者たちは乗れないのである。2017年末の大統領選挙までは朴大統領の力を奪うだけにとどめ、大統領選挙できちんと勝利する作戦だ。

中央日報オーナーを保守の大統領候補に

韓国のケーブルテレビJTBCは10月下旬、朴槿恵大統領の長年の友人「崔順実(チェ・スンシル)=女性」容疑者が大統領の演説文を手直しし、政治に介入したと報じた。これが国を揺るがす大スキャンダルへと発展した。

崔順実氏のスキャンダルについては、以前から噂が絶えず、多くのメディアが取材を進めていた。JTBCは、崔順実氏のパソコンかタブレットを入手し、事実を確認したと伝えられるが、入手方法が正当なものだったのかどうかには疑問が指摘されている。

実はJTBCは、サムスン財閥系の中央日報紙の系列にある。JTBCニュース部門出身の社長は左翼勢力の有力者として知られている。

韓国は、先進国では唯一、大きな左翼勢力が依然として存在する国だ。韓国の左翼とは、北朝鮮に強いシンパシーを抱き、支持する人たちを意味する。民主労組や教員組合がその中心組織だ。金大中元大統領と盧武鉉大統領を支持した勢力でもある。

このため、JTBC報道の背景について、「中央日報紙オーナーが大統領選挙に出馬するため」、および、窮地に陥った「共に民主党」の文在寅元代表を救出するため、とのストーリーが韓国の政界通の間では語られる。

実は文在寅元代表は、盧武鉉(ノムヒョン)大統領の秘書室長として、国連における北朝鮮人権決議採択への「棄権」を決めた。北朝鮮の意向を聞いた上での行動だった。この事実が10月初めに明らかになった。韓国の元外相が、回顧録で暴露したのだ。

文在寅元代表は、このスキャンダルについて他の野党から批判され、窮地に追い込まれた。この状況を変えるため、崔順実スキャンダルを左翼勢力が報じたというのだ。実際、文在寅元代表のスキャンダルは忘れ去られてしまった。

崔順実スキャンダルをスクープしたJTBCの親会社「中央日報」のオーナーは、大統領選に出馬する意向を、有力者たちに以前から打診していた。このため韓国の新聞・テレビ業界は次のように指摘している――政局が混乱し与党セヌリ党に候補者がいなければ、このオーナーにチャンスが巡ってくる。

サムソン財閥の系列に連なるJTBCとの報道合戦で、朝鮮日報紙は「サムソン財閥が数十億円もの巨額の資金を、崔順実の財団に振り込んだ」と報じた。

崔親子は朴槿恵大統領にとって家族と同様

崔順実氏について、同氏の父親が霊感を持つ宗教家で、学生だった朴槿恵氏に取り入ったと報じられている。韓国では、祈祷師の占いに頼る宗教伝統や社会慣習が今でも存在する。儒教的なジャーマニズムが影響力を持つ社会なのだ。このため、朴槿恵大統領も崔親子のシャーマニズムに頼った、とのうわさが広がった。

実は、朴槿恵大統領が父親を失った約37年前、朴槿恵氏を支え支援する人はほとんどいなかった。父親の朴正煕・元大統領の側近たちは皆逃げ出し、同元大統領について新聞紙上や会見、回顧録でウソの証言を語った。

朴正煕・元大統領は資産をほとんど残さなかった。その時代に、朴槿恵氏の生活を金銭面で支えたのが崔親子だった。朴槿恵氏が、外出もできず生活苦に直面した時代に生理用品まで届けたといわれる。それだけに朴槿恵大統領は崔順実氏を信用し、大統領府への頻繁な出入りも認めたのだろう。朴大統領には、人に裏切られた時代のトラウマが強く残っており、人を簡単に裏切る政治家や官僚、ジャーナリストを信用しないと言われる。

韓国大統領制が生み出す悲劇

朴大統領が新たに首相に指名した金秉準(キム・ヒョンジュン)国民大教授は、大方の人に評価され、尊敬される人物だ。野党は国会での承認を拒否する方針だが、拒否すると世論の風向きが変わるかもしれない。

韓国社会は「近くの他人より、遠い親戚」を信用する社会である。日本人のような「遠い親戚より近くの他人」の考えはない。家族と親戚の結束が日本人には理解できないほど強い。だから、企業のオーナーは家族や親戚を役員にし、親戚を幹部に登用する。このため、大韓航空やロッテ、ハナ・グループなど財閥オーナー家族のスキャンダルが後を絶たない。朴大統領は実の兄弟と縁を切っており、崔順実は唯一の家族というべき存在だった。

大統領も同じで、家族を優先する。このため、ポストや利権にあずかろうとする人々が、大統領の夫人や息子、兄弟の元に、賄賂を手にして群がる。頼まれた家族が、大統領に話をつなぎ、大統領もそれを受け入れる。こうして政権末期になると、歴代大統領の家族は逮捕され、大統領本人も任期終了後に裁判にかけられてきた。

朴正煕・元大統領はこうした韓国の政治文化を強く警戒し、大統領の家族や親戚を監視する部局を大統領府に設けた。だが、その後の大統領は、この組織を機能させなかった。

後進国の大統領制は、民主化という名の下に独裁が行われる危険を抱えている。司法、立法、行政の三権が大統領に集中しがちだからだ。米国の大統領制のように三権が分立しチェック機能が働くシステムは、長い時間をかけないと確立できない。

朴槿恵大統領のスキャンダルは、同大統領個人の問題を超えて、韓国政治の後進性を露呈した。法律的には、「職権乱用」と「詐欺未遂」の犯罪でしかない。それなのに、大統領が汚職を行なったかのような大騒動になっている。韓国民の感情が優先されている。

韓国の大統領職は「王様」の気分に浸り、周りもそう扱いがちだ。韓国の指導者は、自分を犠牲にして貧しい国民を救う気概がないと成功しない。韓国語には、指導者に対して「王様と恩師、父親」の三位一体の役割を期待する「君師父一致」のことわざがある。しかし、歴代大統領や朝鮮王朝時代の王様に、貧乏な国民を救い、国家と国民のために犠牲となった指導者が何人いたのだろうか。韓国の指導者と政治家に歴史が問いかける、終わりのない質問である。

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『米国と世界の未来はどうなる?米大統領選直前、政策徹底分析!』(11/7日経ビジネス)、『トランプなら1930年代のブロック経済再来も 早稲田大学の浦田秀次郎教授に「もしトラ」を聞く』(11/7日経ビジネスオンライン 白壁達久)について

2012年11月7日のCNNによれば前回の米大統領選で「東部時間午後7時(日本時間午前9時)から順次投票が締め切られ、開票が始まった。」とのこと。大勢が判明するのは接戦と言われていますので、時間の予測は難しいでしょう。2000年のブッシュVSゴアの時のように、フロリダの投票の数え直しについて12/12の連邦最高裁判決が出るまで大統領選出は留保されました。トランプは「選挙の不正があれば争う」と言っていますので、スンナリ決まるかです。

http://yoiko00.blog9.fc2.com/blog-entry-191.html

11/6k.Wada「リアリストの目」というメルマガでは「エスタブリシュメント、軍産複合体は投票不正工作をして、ヒラリーを勝たせることを決めた。ヒラリーなら$の基軸通貨体制は安泰という判断から」とのこと。11/6宮崎正弘氏のメルマガでは「トランプ。九回裏二死満塁。「逆転満塁さよならホームラン」の可能性 民衆の反エスタブリシュメント、反グローバリズムへの怒りは強烈」とあり、相反する予想です。どちらが勝つかは予断を許しません。

小生はトランプが勝った方が、ジョナサン・リーバー氏のコメントにある通り、日本の自立を促し、作られて来た「平和ボケ」から脱却するのに良いと考えています。外務省はトランプが勝ったらどうするのでしょう。大統領選の途中でヒラリーにだけ会せるのは、民主党に肩入れしている印象を与えました。トランプが会わないと言ったのでしたら別ですが、そんなことはありませんでした。報復が待っているかもしれません。政治リスクが高過ぎます。

浦田氏の記事で、「経済ブロック化は第三次大戦を引き起こす可能性」というのはオーバーでしょう。経済が理由でなく、ロシア、中国の動きを見ていますと、領土・勢力圏拡張で起きるのでは。ただ、核保有国同士で争えば地球はなくなってしまうことは理解しているでしょうから、局地戦になるのでは。

日経ビジネス記事

今後4年間のグローバル政治・経済の趨勢を決めるといっても過言ではない米大統領選。クリントン、トランプ両候補が掲げている政策とその影響について、米国分析の第一人者が解説した。それぞれの政策が生み出す勝者と敗者は誰か。そして企業にどんな影響を与えるのだろうか。

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ジョナサン・リーバー氏

ユーラシア・グループ米国政治担当ディレクター。ミッチ・マコーネル上院議員の主席経済政策アドバイザーを務めるなど、連邦議会での豊富な経験を有する。   第45代米国大統領を決める戦いはクライマックスを迎えている。支持率の差は10月31日時点で3.1ポイント(米政治情報サイト、リアル・クリア・ポリティクスの集計値)と、趨勢は米民主党のヒラリー・クリントン候補に傾いている。共和党のドナルド・トランプ候補が平均支持率でクリントン氏を上回る局面もあったが、10月上旬に流出したわいせつ発言ビデオが尾を引いている。

 とはいえ、BREXIT(英国の欧州連合離脱)を決めた国民投票が体現したように、選挙はふたを開けてみなければ分からない。事実、直前になって米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題の捜査を再開、火種として再浮上している。

 それでは、同時に実施される議会選挙や新大統領による政策の見通しはどうなるのだろうか。政治リスク分析に定評のある米ユーラシア・グループのジョナサン・リーバー米国政治担当ディレクターが今後の展開を分析した。

下院はまだ共和党優勢 ●議会選挙の議席獲得予想

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注:米上院は2年ごとに総議席数の3分の1が改選される。民主党の現職には無所属のアンガス・キング議員を含む 出所:Cook Political Report

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世論調査でのクリントン氏のリードが増えるにつれて、政治評論家の関心は上下両院の動向にシフトしている。

現在、共和党は上院で過半数を上回る54議席を確保しているが、大統領選でクリントン氏が勝利すれば、上院を制するのに必要な4議席を少なくとも失いそうだ(上院の総議席数は100。議員による投票が賛否同数の場合は副大統領が決定票を投じるため50議席を取れば上院を支配できる)。

ウィスコンシン州やイリノイ州、ペンシルベニア州、ニューハンプシャー州などの共和党現職議員は、トランプ氏の支持率低下で打撃を受けており、かなりの苦戦を強いられている。民主党の議席は恐らく半数を少し上回るだろう。その場合、ニューヨーク州選出のチャールズ・シューマー上院議員が多数党院内総務に昇格する。

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トランプ氏との戦いで傷だらけのポール・ライアン下院議長(写真=AP/アフロ)

下院に目を転じると、共和党には現時点で過半数まで約30議席のアドバンテージがあり、民主党が過半数を得るのは難しい状況だ。だが、トランプ氏のわいせつ発言ビデオが暴露された後、同様の行為を受けたと同氏を非難する声が複数の女性から上がった。共和党のポール・ライアン下院議長はトランプ氏を大統領候補として公的に支援しないと明言、下院の選挙戦に注力するよう幹部会のメンバーに要請している。

共和党候補者の中には、無党派や共和党穏健派の有権者の離反を避けるため、トランプ氏と距離を置く人間もいる。だが、結果としてトランプ支持者からの支持を失っており、共和党の過半数を危機にさらしている。

10月28日に、クリントン氏の私用メール問題についてFBIが捜査を再開すると発表したが、大統領選の流れが一変するとは見られていない。ただ、議会選挙の民主党候補者には間違いなく逆風だ。そういった情勢を考えれば、現時点で共和党が下院で議席を減らすのは確実に思われるが、過半数は維持するだろう。

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次に、新大統領がどのような政策を実行することになるか見通してみよう。経済政策と金融規制を見ると、クリントン氏とトランプ氏はかなり異なる政策を提示している。

トランプ氏は貿易や移民について、共和党主流派が唱える伝統的な主張をすべて受け入れているわけではない。ただ、同氏の経済政策は政府支出の縮小や減税、企業や銀行に対する規制緩和を標榜しており、この点では伝統的な共和党候補に近い。

トランプ氏は銀行に対する監視強化を目的にした金融危機後の金融改革法、「ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法(略称:ドッド・フランク法)」の廃止を支持している。数百万の米国人に医療保険のカバーを広げるオバマケア、連邦政府医療費負担適正化法についても廃止を唱える。同法はオバマ大統領のレガシーの一つだが、批判の対象になっている保険料の引き下げという目標は達成できていない。

税制では10年にわたって少なくとも4兆ドル(約420兆円)の減税を提案している。2001年と2003年にジョージ・W・ブッシュ前大統領の下で実施された大規模減税の2倍以上の規模だ。

一方で、ソーシャルセキュリティーやメディケアのような給付金制度に伴う支出は削減しないと語る。中高年層からの支持を拡大することが狙いだが、一方で、社会保障プログラムの民営化を主張するライアン議長との対立を招いている。

経済面におけるトランプ氏の提案は共和党支持者を不安に陥れている。

同氏は米連邦準備理事会(FRB)の独立性を批判している上に、オバマ大統領やクリントン氏のためにジャネット・イエレン議長が政策金利を低く維持していると非難する。また、トランプ氏は米国債の返済額を値切ろうと画策している。外貨準備を原資として米国債を購入している世界中の国々に疑心暗鬼を起こさせる提案だ。

同様に、米国の国益に沿った形の修正に応じなければ、北米自由貿易協定(NAFTA)からの脱退も辞さないと脅している。

このように、トランプ氏の掲げる経済政策は従来の共和党の政策と異なる面が多々ある。だが、トランプ政権が誕生すれば、最終的に保守派の経済学者が起用され、共和党の伝統的な経済政策が追求される可能性が高い。

ウォーレン議員の影響力が増大

対照的に、クリントン氏はオバマ政権のレガシーの主要部分を継承し、拡大すると思われる。同氏はドッド・フランク法を守ると明言している。また、米ウォール街とのつながりが指摘されるが、クリントン政権は少なくともオバマ政権と同程度には金融機関に厳しく対応するとみられる。

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クリントン氏が大統領になった場合、政権で影響力を高めるとみられているエリザベス・ウォーレン上院議員(写真=AP/アフロ)

さらに、クリントン政権が誕生した場合に生じ得る顕著な変化として、マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員の影響が強くなることが挙げられる。

ウォーレン議員は米ハーバード大学教授から上院議員に転じた人物で、民主党の左派として極めて人気が高い。上院を率いるリーダーの中で最も積極的に発言している一人で、今年の大統領選に出馬を打診されたが、最終的に辞退した。ドッド・フランク法の下で設立された消費者金融保護局のアイデアを出したのも同氏で、公共の利益に反する行動を取っている民間企業や同僚議員を追及するのに積極的だ。

ウォーレン議員は民主党をどんどん左傾化させている。クリントン氏は自身の立法議案を通すためにウォーレン議員の支持を必要としており、財務長官や米消費者金融保護局局長など金融監督に関わるポストにウォーレン議員が受け入れるような急進的な人物を任命するはずだ。

立法を伴う追加的な金融規制は共和党が下院を支配する限り実行される見込みが薄いが、ウォーレン議員やクリントン氏が任命する高官が金融サービスに対する規制やアンチトラスト法の執行を増やす可能性はある。民主党内には、民間部門に対する規制の強化が重要という幅広いコンセンサスがある。これは、市場にとって重要な長期的トレンドだ。

クリントン氏が大統領就任後に最初に取り組むのはインフラ支出の大規模なパッケージになりそうだ。同氏は道路や橋の修理、旅客鉄道システムの拡張、ブロードバンドインターネットの提供のため、5年にわたって2750億ドル(約29兆円)を支出すると提案している。また、送電網や上下水道の近代化も優先課題として挙げる。

下院の共和党支配が続けば、米国企業が海外に滞留させている利益を米国内に環流させる際にかかる税金をインフラ投資の財源にすると考えられる。一方で、民主党が過半数を奪い取れば、富裕層や企業に対する増税で財源を賄う可能性が高い。

クリントン氏は同様に、時給7.25ドル(約760円)にとどまる連邦最低賃金を引き上げようとするだろう。同氏は時給12ドル(約1260円)にする案を支持している。労働組合は全米で低賃金労働者を組織しており、最低賃金15ドル(約1575円)という彼らの要求は民主党支持者や進歩主義者に人気がある。

共和党は最低賃金の引き上げに反対するだろうが、要求金額を下げたり、現在のインフレ水準を勘案した金額にしたりすれば妥協も可能だろう。仮に関連する法案が議会を通れば、農業や小売り、レストランなど労働集約的な産業が打撃を受ける。利益を維持するために低賃金労働者に依存している業界だ。

さらに、クリントン氏はオバマ大統領が進めるエネルギー政策や気候変動に関する政策を引き継ぎ、既存の法律を通じて温暖化ガス排出量を規制するに違いない。

米環境保護庁は二酸化炭素の排出を規制する新たな気候変動対策、クリーン・パワー・プランを公表している。規制に反対する州などがこれを提訴しており、来年、最高裁で審議が始まる。クリーン・パワー・プランに対する両候補のスタンスは対照的で、クリントン氏は擁護、トランプ氏は拒絶すると明言している。

クリントン氏はシェールガスやシェールオイルを掘削する際に使用する水圧破砕に伴うメタン排出を規制する一方で、昨年12月に締結された気候変動抑制に関する国際合意「パリ協定」で定めた温暖化ガス排出削減目標の実現を後押しするために大統領令を出そうとするだろう。

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貿易は今回の選挙戦で思いがけず議論の的になった。

民主党を支持するリベラル層はクリントン氏にTPP(環太平洋経済連携協定)への反対を表明するよう圧力をかけることに成功した。TPPは国務長官時代のクリントン氏が積極的に支持した政策だ。一方、トランプ氏は過去の貿易協定に反対する姿勢をアピールすることで、白人労働者からの支持を獲得した。NAFTAについても数百万に及ぶ米国人の雇用を犠牲にした恐ろしい貿易協定だと述べている。

企業や両党の主流派は自由貿易を依然として支持しているが、経済成長の減速に加えて、グローバル化や技術革新に伴う製造業の雇用喪失、所得格差の拡大や社会的混乱のために、両候補者ともに反貿易に転じている。民主党と共和党の候補が貿易自由化にともに反対する大統領選は、米国の戦後史において初めてだ。

こうした中で、TPPの先行きは極めて不透明になっている。レームダック期間(大統領選が終了した後、新たな議会が始まる2017年1月上旬まで)の議会によって批准される可能性は低い。どちらの大統領候補も反対しているため、議会が批准するには新たなリーダーの意向を無視する必要がある。

反貿易で右派と左派が団結

もちろん、レームダック期間の批准は不可能ではないが、TPPのような主要な貿易協定がレームダック期間に批准されればこれも前代未聞の事態だ。

クリントン氏が大統領になり、民主党が上院の過半数を握れば、TPPが批准される可能性はさらに減る。新たに生まれる少なくとも5人の民主党上院議員はいずれもTPPに反対するだろう。

これが意味しているのは、TPPが議会で批准されるチャンスは2019年まで来ないということだ。2018年の中間選挙の結果によっては、自由貿易推進派が上院に復活する可能性はある(実際に新しい議会が開催されるのは2019年1月)。また、クリントン氏が再交渉に成功すれば(再交渉が可能な条項は極めて限られるだろうが)、TPP賛成に転向する建前ができる。

署名から批准まで3年以上も待つのは他の参加国にとっては受け入れがたい事態だと思われるが、米国政治が反貿易に転じる見通しのため、他の選択肢がなくなってしまった。なお、トランプ氏が大統領になれば、TPPは完全に葬り去られるだろう。

有権者の間に広がる反自由貿易の雰囲気は、現在交渉が進められている他の貿易協定にも悪影響を与えている。

TTIP(環大西洋貿易投資協定)は米国とEU(欧州連合)の間で交渉されている大規模な貿易協定だ。ドイツやフランス、その他のEU加盟国からの反対に直面している。大半の米国人はまだTTIPの存在に気付いていないが、企業に対する利益供与だとしてTPPと同様に攻撃する恐れがある。この点では左派と右派は団結している。

一方、トランプ氏は米国の国益に合うよう再交渉しなければNAFTAから脱退すると脅している。国内の抵抗がかなり激しくなると見込まれ、実際に脱退する可能性は低そうだが、将来の不確実性が高まるためメキシコ経済は極めて大きな影響を受ける。現状維持が基本のクリントン氏はNAFTAにいかなる変更も加えないだろう。

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トランプ氏のスタンスは、過去数十年にわたる米国の外交政策を大きく変える可能性が高い。

米国の外交政策はグローバルコモンズ(人類が共有している地球上の公共財)の秩序を保ち、解決困難な国際問題にリーダーシップを発揮することに焦点を当ててきた。だが、トランプ氏は外交政策をゼロサムのビジネス交渉として捉えている。ある一方が勝てば他の一方が負けるという発想だ。

また、トランプ氏は米国が提供している安全保障網を米国の貿易パートナーが享受しており、それが相互利益につながっている側面を認めていない。同氏の公約である「米国第一主義」が意味しているのは、安全保障網に対する対価の多寡によって、同盟国の安全が左右される環境になるということだ。

同時に、トランプ氏の不安定な気質にも懸念がある。彼はロシアのプーチン大統領やシリアのアサド大統領のような絶対的指導者に親しみを持っている。選挙戦のライバルに対して、辛辣な個人攻撃を仕掛けたことを考えても、国際的な紛争に公平かつ冷静な対応ができるとは思えない。

トランプ氏が大統領になれば、中国との摩擦が増える可能性が高い。同氏は遊説で中国をしばしば攻撃対象にしてきた。一方で、国際的な問題をロシアとともに解決すると繰り返し述べており、ロシアとの関係はより近くなる。

日本について言えば、トランプ大統領の誕生によって、米国からより独立した形の外交政策を立案する必要に迫られるだろう。結果的に、中国と対立するリスクが上昇し、日本の自衛隊により大きな裁量を与える憲法修正の議論が影響力を増す可能性がある。

クリントン氏の外交政策は、オバマ政権時代の慎重な姿勢とは異なり、米国の外交政策にリバランスをもたらす方向に動く。同時に、ビル・クリントン元大統領やジョージ・H・W・ブッシュ(父)元大統領の時代の国際協調主義に戻っていくと思われる。これは米国が戦後取ってきた外交政策のメーンストリームに一致している。

アジアでは、クリントン氏はオバマ政権が進めた「アジアピボット(アジア回帰)」を続けることになる。米軍と外交リソースの大きな部分をアジアに割く戦略だ。

クリントン氏は南シナ海での中国の挑発に対して、オバマ政権よりも積極的な対応を取るかもしれない。もちろん、他の差し迫った国際問題で中国の協力が必要なことを考えれば、断固とした対応と協調をうまく両立させることが不可欠なのは言うまでもない。

また、クリントン政権は日本や韓国、フィリピンといったアジアの同盟国に対する軍事援助を続けるだろう。ベトナムやマレーシア、インドなど中国と領有権問題を抱えるアジアの国々とも、より緊密な関係づくりを進めるに違いない。日本にとってはトランプ氏よりもクリントン氏の方が好ましい。

最近の米国大統領がそうだったように、アジアにおけるクリントン政権の最初の試練は、ともに合意できる分野で中国と生産的な関係を維持することだ。同盟国の信頼を維持するために中国の挑発に強く応じる一方で、これを実現しなければならない。

米中関係は、オバマ大統領と習近平国家主席による開かれた対話から恩恵を受けてきた。この関係を継続できるかどうかがクリントン氏の試練となる。

中東については、クリントン氏は優れたオプションがない状況に直面する。

シリア内戦が始まった後の2012年に、クリントン氏は国務長官としてアサド体制の転覆を図るために反体制派への武器供与を支持した。だが、同氏が大統領に就任する頃には、アサド政権はロシアやイランの支援を受けて、内戦を有利に展開していると思われる。

一方、過激派組織「イスラム国(IS)」については、この組織がイラクとシリアで多くの支配地を失っていることもあり、確実に壊滅させようとするに違いない。その上で、シーア派が政権を取っているイラクにおいて、スンニ派が多数を占める地域の自治を適切な形で回復させることに注力するはずだ。

シリアへの地上軍投入はない

シリアでは恐らく、この地域における米国の影響力を拡大するため、特殊部隊と空軍力を今以上に活用するだろうが、地上軍の投入はないと見る。

また、クリントン氏は飛行禁止区域を設定するアイデアを推している。シリア領の大半にロシアの先進的な対空ミサイルシステムが導入されており、飛行禁止区域を設定すれば、ロシア軍と対立を引き起こす恐れがある。それは容認できないリスクだろう。

2人の大統領候補はロシアに関して、明らかに異なるスタンスを取っている。

米ロの2国間関係は今年、劇的に悪化した。ロシアのウクライナ侵攻によって生じた対立は、アサド政権に対するモスクワの支持や、ロシア政府と関係の深いハッカーによる米大統領選の妨害でさらにこじれている。

クリントン氏が勝てば、同氏はシリアやサイバー空間におけるロシアの行動に対して新たな制裁を科す。一般的に、クリントン氏はオバマ大統領よりも、そして確実にトランプ氏よりも、ロシアの挑発に力強く反応するはずだ。

米ユーラシア・グループが徹底分析! 新大統領が生み出すWinner & Loser

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注:米ユーラシア・グループ作成

*    *    *

トランプ氏が大統領になる可能性がなくなりつつあることを考えた場合、最も重大であるにもかかわらずまだ不確かなのは、どちらの党が議会の過半数を獲得するかだ。

民主党が議会を制すれば、オバマ大統領が進めてきたアジェンダを推進するという負託を得たことになる。共和党が議会を握れば、重要な政策に関して保守派の主張を限定的にではあるがクリントン氏に取り入れさせるだろう。

オバマ政権では難しくなっているが、クリントン氏には連邦議会との関係をリセットする機会がある。政権との妥協という困難に議会がどう対処するかは、次の2年間の主要な課題になる。

2人の差は再び広がったが… ●両候補の勝利確率の推移

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(写真2点=ロイター/アフロ)

日経ビジネス2016年11月7日号 10~15ページより

日経ビジネスオンライン記事

いよいよ火曜日に米大統領選が実施される。民主党のヒラリー・クリントン候補の優勢が伝えられるが、共和党のドナルド・トランプ候補も支持率を盛り返している。トランプ候補は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を明言。「もし、トランプ氏が米大統領になったら」、米国はどうなるのか。また、日本にはどんな影響が想定されるのか。TPPや自由貿易について詳しい早稲田大学大学院の浦田秀次郎教授に「もしトラ」について聞いた。(聞き手は白壁 達久)

日経ビジネスオンラインは「もしトランプが大統領になったら…」を特集しています。 本記事以外の特集記事もぜひお読みください。

トランプ氏はTPP離脱、NAFTA脱退を示唆

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浦田 秀次郎(うらた・しゅうじろう)氏 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 1950年埼玉県生まれ。73年慶應義塾大学経済学部卒業。78年、米スタンフォード大学大学院博士号取得。同年にシンクタンクの米ブルッキングス研究所研究員に。81年に世界銀行エコノミスト、88年に早稲田大学社会科学部助教授を経て、2005年より早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。専門は国際経済学、開発経済学(写真は北山 宏一)

—米共和党のドナルド・トランプ候補は、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を公約に掲げています。自由貿易について詳しい浦田さんから見て、「もしトラ」が実現したら、世界はどうなるとどう見ますか。

浦田秀次郎氏(以後、浦田):トランプ候補はずっとTPP反対の立場ですね。それだけではなく、北米自由貿易協定(NAFTA)についても反対を主張している。米国はNAFTAによって非常に大きな被害を受けていると強調しています。NAFTAにTPP、自由貿易に対して一貫して反対する立場ですね。

もしトラが実現すると、米国はNAFTAから脱退し、TPPからも離脱するでしょう。日本は時間をかけて国内での議論を繰り返し、国内での道筋をようやく作った(編集注:取材は、TPP法案が衆院を通過する前に行った)。だが、米国が離脱すると、TPP自体が崩壊する可能性がある。

トランプ氏は「強い米国」を復活させると公言している。その核となるのは強い経済だろう。だが、自由貿易を否定しては、その実現は困難なものになると考えます。米国がNAFTAから脱退する、あるいはTPPに参加しないということになれば、同国の経済成長率は現状と比べて低くならざるを得ないでしょう。

米国経済が伸び悩めば、世界経済に負の影響を及ぼす。負のスパイラルが動き出す可能性がある。

—「負のスパイラル」とはどのようなものでしょう。

浦田:自由貿易に否定的な国が増え、自国の産業を守ろうとする保護主義が台頭します。そうなると、為替の引き下げ競争や、関税の引き上げ競争が生じます。

貿易が減れば、世界の生産も減ることになる。結果的に、世界経済の縮小につながります。

第三次世界大戦勃発のリスクも

—近年はグローバル化が急速に進み、世界経済が飛躍的に拡大してきました。過去の歴史に学ぶことはできないでしょうか。

浦田:同じような現象は過去にもありました。現在の構図は、1930年代の世界経済と似ています。各国が保護主義に走り、貿易が縮小。自分の国で作った商品や製品を海外に売るのが困難になる「ブロック経済」が広がった。

国内市場だけでは生産したものがさばけない。そこで大国がどう動いたか。「植民地」拡大という形で新たな市場獲得に動き出したのです。それが「世界大戦」へとつながっていったことはみなさんご承知の通りでしょう。

負の経験、これは絶対に忘れたらいけないと思います。

—「もしトラ」が第三次世界大戦を引き起こすかもしれない。

浦田:それは分かりませんが、そのきっかけを作り得るかもしれなません。グローバル化が進んで、経済の相互依存が深まり緊密の度を高めてきました。一国の状況あるいは政策がほかの国に伝播するスピードも速くなったし、規模も大きくなった。ひょっとしたら1930年代よりももっと急速に負の影響が世界中に波及するかもしれません。

世界は第二次世界大戦後、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)やWTO(世界貿易機関)の下で自由貿易の道を開いてきました。自由貿易は世界経済の規模を拡大し、豊かにしてきた。ですが、トランプ氏はその恩恵を否定する。

米国が離脱すればTPPは事実上崩壊するでしょう。TPPは自由貿易協定の中でも、非常にレベルの高い枠組みとなっています。

TPPがなくなって動き出すのは中国です。国有企業改革が進まない中国が、自国に都合のいいようルールを作ってアジアに広めたら、日本企業や日本経済全体が大きなダメージを受けます。対岸の火事では済まされません。

—米国に限らず、内向きな政策を取るリーダーを選ぶ国が増えているように感じます。

浦田:たしかに、内向きなリーダーが増えていますね。ただ、その背景はそれぞれ異なると感じています。

米国のように、所得格差の問題が貿易政策に影響を与えている国もあれば、中国のように、権威主義的な国が一般国民が抱く政府への不満の意識をそらすために、保護主義的な貿易政策を採る国もあるでしょう。いずれにせよ、世界の多くの国が以前に比べて保護主義の政策を採る傾向が強いのは事実だと思います。

ただ、トランプ氏のように保護主義を掲げて経済を強化するのはやはり限界がある。分かりやすいのが、米国の自動車産業です。

ビッグスリーに代表される米国の自動車産業は、ずっと保護されてきました。以前よりは経営革新も進み、一時の最悪の状況よりはマシになったかもしれませんが、日本や欧州の自動車会社と競争できるレベルになっているとは言い難いです。その理由の一つは保護政策が続けられてきたからだと私は思います。

—日本の農業も同じですね。

浦田:そうです。保護政策は海外からの競争圧力を軽減させる。プレッシャーが制限されるため、新製品の開発や新技術を創出しよう、あるいはより良いサービスを生み出そう、生産効率を上げようという発想がどうしても乏しくなる。それほど頑張らなくてもいいわけですから。その間、海外のライバルたちはどんどん自分を磨いていく。

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競争力のある産業を創り上げるには、今、自由化されていない産業ならば「これから自由化していくんだ」というメッセージをその産業に伝えなければなりません。ですが、トランプ氏が唱える政策はその流れに逆行します。

トランプ氏の方針では、「強い米国経済」はいつまでたっても実現できません。保護というのは、一度できてしまうと既得権を持つ人たちが生まれる。それを取り上げるのは非常に困難です。

問題は「所得の再分配」にある

—トランプ氏を熱烈に支持する人が少なからずいる背景には、米国内において自由貿易への不満があるからではないでしょうか。

浦田:自由貿易によるデメリットがないとは言いません。確かに、一部の地域や産業において、マイナスの影響が出るのは確かです。ただ、それを上回る恩恵を受けられるのが自由貿易です。

反自由貿易が支持される背景には、格差の拡大があるのでしょう。ただ、問題の根幹は、自由貿易が生み出した利益を一部の階層が多く受け取っているところにある。つまり、自由貿易=悪ではなくて、再分配の仕方に問題があるのです。ここを改めるべきでしょう。

—具体的にどのような再分配をすればよいのでしょう。

浦田:例えば、教育として還元する。

自由貿易によって仕事を失う人が出てくる。ならば、自由貿易で得られた利益の一部を、彼ら彼女らへの教育に再投資する。ほかの仕事ができるようスキルを身に着けさせるのです。

—民主党のヒラリー・クリントン候補もTPPに慎重です。米国の中で、自由貿易に対する議論がもっと膨らんでもいいのかなと思います。

浦田:自由貿易で得られるメリットが一般の人々にきちんと伝わり切っていないのも問題です。モノが安く買えるようになる、あるいは購入できる品物の選択肢が増えるといったメリットは、日ごろ当たり前に享受しています。ただ、当たり前すぎて、そこに目が届きにくい。

一方で、自由貿易によって被害を受ける人たちの声はハッキリと目に見える。失業や生産縮小、倒産――。非常に深刻な被害が目に見えます。当事者にしてみれば絶対に回避したいと思うでしょう。分かりやすいデメリットと分かりにくいメリット。この非対称性が背景にあるのではないでしょうか。

まずは格差の解消。もしトラになった場合、自由貿易を否定するのではなく、自由貿易がもたらすメリットを理解し、デメリットを解消する方向に動いてほしいものです。

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『沖縄米軍用地を中国資本が買っていた』(11/3週刊新潮 櫻井よしこ)、『習近平氏は本当の「核心」となったのか  権力集中が進んでいるとはいえないそのワケは』(11/4石平メルマガ)について

今、加藤隆則(元読売新聞中国総局長)著『習近平暗殺計画 スクープはなぜ潰されたか』(2016/2/25刊)を読んでいますが、中国に対する思い入れ(左翼に近い?高井潔司・北海道大学大学院教授や矢吹晋・横浜市大名誉教授の名前が出て来るのは相当左にシンパシーを持っていると思えます。小生も北京にいたときに高井・矢吹両氏と会って幻滅したことを覚えています。)と習に対する肩入れ、自分の特ダネに対する執念(どちらかというと日本の同業他社を出し抜く為)が垣間見えて、今の日本の記者のレベルを感じさせました。一言で言うと自己中心、TVで良く見るやはり読売出身の大谷昭宏を思い起こさせてくれました。加藤氏が読売を辞めたことは良いですが、その経緯を本にして出版するのは如何なものか。表現の自由の範囲でしょうが、読売に対する私憤を晴らしたものとしか映りません。「ベトナム戦争時の韓国軍慰安所」について報道できず、同じような目に遭ったTBSの山口敬之氏は週刊文春に寄稿して辞めました。また、加藤氏は、習は軍権確立したと述べていましたが、それに対する反論が櫻井氏や石平氏から出される状況になっていて、単に思い込みが激しいだけなのではという気がします。デイープスロートがいるというのも自慢げに書いていましたが、デイスインフォメーションorリークのためのパペットとして使われた可能性もある訳で、それに思いを致さないのは客観的に物が見れないのでは。

日本の外務省はどこまで行っても無能集団です。パリ協定も発効したのに、米中が手を握ることすら分からず、日本の議会批准が遅れています。同盟国の情報入手すらできないのであれば、敵国の情報何て入る訳がありません。櫻井氏の記事のWTO加盟時の留保条件を付けず加盟というのは平和ボケの典型でしょう。幣原以来外務省は相当おかしくなってきていて、国民から見れば死に至る病としか言いようがありません。組織に自衛隊出身者を入れて外務省をチエック、報告は官邸にするというお目付け役が必要なのでは。

外国人の土地買収は大正時代にできた「外国人土地法」を活用して制限すべきです。少なくとも中国は、土地は国のもので所有権売買はできず、使用権売買であるため、相互主義に反します。先人たちは偉かったと思います。やはり、国の安全を考えて立法化していました。それに引き換え平和ボケの今の日本人のだらしないこと。

石平氏の記事では、張春賢氏が「党の建設工作に関する中央指導小組副組長」になったとのこと。共産党の喉と舌と言われる宣伝部を牛耳る劉雲山の後任になると思われます。張春賢氏は調べますと江沢民派で、周永康とも近かったようです。

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http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/trends/2016/08/29/276005.htm%E6%9B%BE%E6%83%B3%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3%E4%B8%8B%E5%8F%B0%EF%BC%9F%E6%B1%9F%E6%B4%BE%E5%A4%A7%E5%93%A1%E5%BC%B5%E6%98%A5%E8%B3%A2%E5%8D%B8%E4%BB%BB%E6%96%B0%E7%96%86%E6%9B%B8%E8%A8%98.html

江派の巻き返しで習は押し返せなかったという所でしょう。共産党の重要ポストは王岐山の中央規律検査委員会と劉雲山の宣伝部で、そこを押えないと主席と雖も絶対権力にはならないと言われています。今まで反腐敗運動で政敵を打倒してきましたが、翳りを見せてきたという所でしょう。内部抗争でエネルギーを使い、対外冒険主義に陥らないことを望みます。

櫻井記事

日本の国土を外国資本が買い漁っている事実は旧聞に属する。日本政府が、自民党政権の時も民主党政権の時も有効な対策を講じてこなかったのも周知のことだ。外国資本に好き放題の国土買収を許してきた日本は異常 だが、それでも沖縄の米軍用地の1割を中国人が買収していると聞けば、 心底、驚かざるを得ない。

10月21日、インターネット配信の「言論テレビ」で中田宏元衆院議員が語った内容は、日本国の土台が浸食されているというものだった。

氏は国会議員だった2013年、対馬を調査して驚いた。自衛隊基地周辺の土地の殆どが韓国資本に買収され、基地は韓国人の土地にぐるりと囲まれていた。万一の時、これでは自衛隊の動きが阻止されかねない。その危機的 状況に対処するべく、氏は土地売買に関して規制する法案を国会に提出した。

「私の法案は廃案にされました。それから3年、事態はより深刻です。沖縄の米軍用地の10%が中国資本に買われているのです」

中国は尖閣諸島を自国領だと主張し、沖縄に関しても日本の領有権に異議を申し立てる。彼らの真の狙いは、いずれ沖縄全体を中国領とすることにあると見てよいだろう。沖縄に迫る中国の脅威を実感するからこそ、わが 国は日米同盟を強化すべく努力してきた。米軍への基地提供にも心を砕いてきた。

沖縄の米軍用地は約2万3300ヘクタール。内、国有地と県、市町村有地が 約1万5700ヘクタール、残りの約7600ヘクタール、全体の約33%が民有地だ。

「この民有軍用地の約3分の1を中国資本が買い取っているのです」と、中田氏は説明する。

事実なら、まさしくブラックジョークではないか。中国人の所有とされる 民有軍用地は2500ヘクタール強になる。坪数で756万2500。沖縄軍用地の借地料は政治的配慮も働いて日本一高い。場所によって異なるが那覇軍港なみの最高レベルの賃料なら坪1万9000円、浦添市などでは坪6000円だ と、「産経新聞」の宮本雅史氏が『報道されない沖縄』(角川学芸出版) で報じている。

国土は即ち国

坪6000円として中国人の手に渡る賃料は453億7500万円にもなる。防衛省に問い合わせたが回答が得られなかったために、果たしてこの数字が正しいのか否か、判然としない。しかし、少なくとも百億円単位の日本国民の税金を、毎年、日本政府が中国人に支払っている可能性がある。

中田氏は、防衛省も中国人による軍用地の取得については知っているのではないかと語る。政府や地方自治体がこうした事実をどれだけ把握しているかについて、沖縄県石垣市議会議員の砥板芳行氏のコメントが興味深 い。私の取材に対して氏は、当初こう語った。

「中国資本が軍用地を買っているとは、余り知りませんでした」

しかし、少し時間をかけて調べたあと、氏はこう語った。

「そのようなケースがあっても中国人は表に出てきません。しかし、注意 深く情報を精査すれば、確かに中国人の動きが見えてきます」

中田氏が指摘した。

「竹富町が所管する離れ小島にウ離島(ウばなりじま)というのがありま す。広さ1万坪の岩だらけの無人島で、水もありません。この島を中国が5 億円という法外な価格で買おうとしたのです」

中国はこの島をなぜ買おうとしたのか。現地の人は、考えられる理由として、海上保安庁の船が尖閣諸島海域に向かうとき、海保の船の動きを逐 一監視できる場所がウ離島であることを挙げた。売却話は、しかし、メ ディアの知るところとなって、結局、立ち消えになった。

砥板氏が説明した。

「いまこの島は地元の不動産業者が管理しています。安全保障上、大事な所にあるだけに監視を続けることが重要です」

このような水もない島を買う理由が経済的要因にあるとは思えない。どう 見ても安全保障上の理由であろう。事実、島を買いにきたのは「中国国際友好連絡会」(友連会)という組織だった。人民解放軍(PLA)の工作 機関と考えてよい組織だ。

彼らは宮古島市の下地島空港周辺の土地も買いたいと申し出た。同空港 には3000メートルの滑走路がある。中国に対処するために、下地島に自衛 隊の拠点をつくることが大事だという指摘は多い。それだけ重要な空港周辺の土地をPLA関連組織が買いにきたのである。

国土は即ち国である。国土があって、そこに人が住み、経済活動をしてはじめて国が形成される。それを守ってはじめて独立国と呼べる。国の基 (もとい)である国土を、わが国は今日に至っても外国資本に買われるに任せている。

1平方ミリでさえも外国人に売らないのは中国だけではない。フィリピンも外国人には売らない。なのになぜ、日本政府は有効な手を打たないの か。国政レベルの動きは信じ難い程鈍いが、地方自治体の憤りは強い。全国市長会会長代理で山口県防府市長の松浦正人氏が語る。

外国人土地法

「10月19日に、北海道旭川市で北海道市長会が開かれ、皆さん憤っておられました。地方自治体の条例だけでは、外資の日本国土買収は全く防げません。これ以上外国人に土地を買われてしまうわけにはいかないと、革新色の強い市長さんも含めて全員の意見が一致しました。来年1月中に案をまとめて、政府に強く申し入れることになりました」

市町村の行政は住民生活に直結する。行政の現場には山林や水源地、防衛施設周辺の土地を中国人が買い付けようと蠢く情報が入ってくる。殆ど の首長は山林や水源地の所有者を説得して外国人への売却を思いとどまらせようとする。しかし、悪貨は現金でやってくる。その現金に動かされる人もいる。

しかし、国土を他国に売ってしまっては、もう戻ってこないのだ。にも拘わらず、日本政府が規制できずにきた理由のひとつに、95年のWTO(世界貿易機関)加盟時に外務省が犯した致命的なミスがある。

他の加盟国がおよそ全て、その国なりの留保をつけて加盟したのに対 し、日本は無条件で加盟したのだ。だから今更、国土は外国資本に売らないとは言えないのである。当時の外務省の目は節穴だったが、現在の国会議員にもできることがある。日本には大正時代の外国人土地法がある。そこには相互主義と、国防上の観点から土地取引は制限できることが書かれてある。相手国が日本人に土地を売れば日本も売るということだ。国防上の懸念ゆえに取引を制限できるということだ。その戦前の法律を現在に通用させるための工夫をすればよいだけである。いま、政治がその工夫をし ないのであれば、それは国民と国家に対する背信である。

石平記事

先月27日に閉幕した中国共産党第18期中央委員会第6回総会(6中総会)の総括コミュニケは

「習近平同志を核心とする党中央」と明記した。

これを受け、日本国内でも「習氏への権力集中が進む」との見方が広がったが、実態は果たしてそうであるのか。

6中総会開催前の10月16日、新華社通信は中央指導部メンバーの動向に関するニュースを配信した。

政治局委員の張春賢氏が「党の建設工作に関する中央指導小組副組長」の肩書で地方視察を行ったという。

張氏は今年8月、新疆ウイグル自治区党委員会書記を退任して中央に戻ってから、その去就が注目されていたが、上述の地方視察ニュースで、「副組長」という彼の新しいポストが判明した。

この目立たないポストが実は張氏の今後の前途洋々を暗示している。

今、党内のイデオロギー統制を担当する「党の建設工作に関する中央指導小組」の組長になっているのは政治局常務委員の劉雲山氏である。

政治局常務委員といえば、それこそ共産党の最高指導部を構成する「チャイナセブン」のメンバーだが、劉氏は69歳の高齢であり、来年開かれる予定の共産党第19回大会で引退する運びである。その時、上述の小組の副組長となった張春賢氏が、劉氏の後を継いで組長に昇任する見通しで、それに伴い、政治局委員である張氏は当然、政治局常務委員へと昇進する道が開かれるのである。

第19回党大会開催の1年前の張氏の副組長就任はまさにこの党大会における彼の政治局常務委員昇進の布石だと理解されている。問題は張氏が次の党大会で最高指導部に入る見込みとなっていることが何を意味しているかである。

張氏は新疆ウイグル自治区党委員会書記時代、習近平総書記(国家主席)に関する2つの微妙な動きで注目されたことがある。1つは、今年3月4日、新疆ウイグル自治区主管のニュースサイト無界新聞に、「習近平引退勧告」の公開書簡が掲載されたことである。

地方政府主管のメディアで共産党トップの「引退」を勧告する文章が掲載されるとは、驚天動地の大事件であるが、問題はその「黒幕」は誰だったのかである。当時から、一部の香港メディアやアメリカに拠点を置く中国系メディアは新疆ウイグル自治区の最高責任者である張氏の関与の可能性を報じているが、真相は今でも不明のままである。

その直後の3月20日、張氏の取ったもう1つの言動がさらに注目を集めた。実はその時、習近平総書記の息がかかっている一部の地方トップが習氏を「党の核心」として擁立する運動を起こしている最中であったのが、北京で開かれた全人代の新疆代表団会見で、張春賢氏は記者らから「習氏を核心として支持するか」と質問を受けたとき、「その話は改めて」と答えを避けた。

中国の政治文化の中では答えを避けたことはすなわち「支持しない」との意思表明である。これで張氏は「反習近平」の姿勢を明確にしたと理解されたのである。

しかし今、どう考えても「反習近平」のこの彼が無傷であるどころか、中央に戻って例の副組長に就任し、来年の党大会で政治局常務委員となって最高指導部入りを果たすことができそうなのだ。

それでは習氏は党中央をすでに制覇したとはとても言えない。

来年の党大会で、次期最高指導部の人事は決して習氏の意のままにならないことも分かった。

冒頭に取り上げた共産6中総会の総括コミュニケは、習氏を「核心」だと位置づける一方、党の集団的指導体制や「党内民主」をことさらに強調しているから、今の共産党内では「習氏の権力集中が進んでいる」とは一概にいえない。

第19回党大会の開催に向けて、党内闘争はさらに激しくなる見通しである。

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11/5『緊迫する南シナ海情勢』セミナーについて-3

講演

テイン・ホアン・タング(ベトナム外務省顧問局長)

国際仲裁裁判判決について米日、国連、国際社会は中国が面子を失わない形での撤退をさせるべき。

日豪印越のパートナーシップが大事。

日本はベトナムの長期的な同盟国。

中国はベトナム、アジア全域、全世界に対する脅威。

日本の協力なくして米越の関係緊密化は難しい。

これからは『パクス・パシフィッカーナ』の時代。

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ハリー・ロケ(フィリピン下院野党院内副総務・野党)

国際仲裁は比中両国を縛る。中国も海洋法条約を批准しているので。ただ、判決はテコにはなっても、最終解決にはならない。交渉しないとダメである。

オバマは日本の尖閣を守ると明言したが、アキノ時代米比は条約結んでいたのにも拘らず、軍の派遣はなかった。オバマは比を日本より劣った国の扱いをした。

ドウテルテ大統領は新しい外交方針を打ち立てた。今まで中国は比を米国の属国扱いして無視してきたが、今回独立国扱いをした。外交方針は比の国益を追求するという事。米中に依存しないという事。日本と中国の投資、貿易が増えることを望む。

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弊会挨拶

藤井厳喜(拓殖大学日本文化研究所客員教授)

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11/5『緊迫する南シナ海情勢』セミナーについて-2

来賓挨拶

渡辺利夫拓殖大学学事顧問ビデオメッセージ

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フレデリック・シャオ(フィリピン下院治安公安委員会委員・与党)

是非フィリピンに来て下さい。

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相林(中国民主化運動家)

中共打倒に是非力を貸してほしい。我々は国際法を守る。

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講演

湯浅誠(産経新聞特別記者・論説委員)

今の中国は帝国主義の戦略的小休止である。ドウテルテ大統領は2年後に外国の軍隊を追い払うと言ったのは心配。

緊急事態の際の連絡網を作っても中国は無視するし、海軍同士は未だしも海警では連絡しようがない。

日本の役割として、尖閣問題は国際化する。2国間でなくする。中国船を断固阻止する。日米豪印で新しい枠組を作る。アジア海洋同盟(緩やかな絆)を作る。

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『退役士官1万人が連携、北京に集結して抗議デモ 地方政府の怠慢に不満、監視かい潜る動員が当局揺らす』(11/4日経ビジネスオンライン 北村豊)について

「政権は銃口から生まれる」と言われる中国ですから、「政権を打倒するのも銃口」となるのでは。一党独裁・軍国主義国家がたどる道でしょう。中国は日本を軍国主義の道に進んでいるといつも非難しますが、彼ら一流のプロパガンダで自分がやっていることを、自分を棚に上げて非難するのが常道です。反日民進党の蓮舫も同じです。

本文中の“打靶帰来(射撃練習して兵舎へ帰る)”の靶=ba3の意味は標的とのこと。秘密裏に1万人を動員できたことは、いつでも大規模クーデターが起きる可能性を表しているのでは。一説によると、習を困らすために、団派が仕掛けたとも言われていますが。全国からの動員規模から言って、団派の策謀と言うよりは、やはり生活待遇を何らかの形で訴えることで、上を動かそうとしたのでは。エリート集団の団派には力技を使えるのはいないと思います。

やはり、中国人と言うのは、どこまで行っても、汚い連中が多いです。悪いことをしてでも、自分が儲かればよいという行動をしますので。本文中にあります、“假兵案(偽兵事件)”=幽霊兵士で自分の懐を肥やそうとしたり、PLAでは兵器の横流しや調達物資の横流し、施設内での売春とか規律無しの軍隊です。

日本でもウィッツ青山学園高等学校(三重県伊賀市)で、国の就学支援金制度に絡み、通信制課程に受給資格がない生徒を入学させたことで、2014年度に「高等学校等就学支援金」1億5711万3千円を不正受給していた詐欺容疑で、ウィッツ元監査役を逮捕した事件が起きました。日本人の中国人化、「悪貨が良貨を駆逐する」、「朱に交われば赤くなる」典型です。外国人の生活保護の不正受給も多数あります。昔の善意が通じた日本ではなくなってきているので、日本人・外国人に関係なく、法の厳正適用を望みます。

中国は内部矛盾を外部闘争へと転化し、戦争を仕掛けるかもしれません。南シナ海はフイリピンに続き、マレーシアも中国に靡きました(フリをしてるだけかもしれませんが)。そうなると可能性としては東シナ海となる可能性が高くなります。南スーダンへの自衛隊派遣は5ケ月後には撤収させて、尖閣周辺の守りに充てた方が良いでしょう。離島対策で自衛隊を駐留させるのも、抑止力・経済振興となります。

その前に、中国は瀋陽軍が反乱を起こし、軍閥割拠の時代に戻した方が世界平和のためになるのではという気がします。習が定めた5大戦区毎、或は元の7大軍区毎に独立させればよいのでは。核の扱いが問題になりますが。満洲、チベット、ウイグル、モンゴルは元の民族に返すべきでしょう。でも、民族浄化で少なくなっていると思いますが。

記事

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(写真:AP/アフロ)

“八一大楼”は北京市“海淀区”の“復興路”に所在する。北京市の中心にある“天安門”の前を走る“長安街”を西へ進むと“復興門”に至り、その先の道路は“復興路”と名称を変えるが、しばらく進むと右手に“中国人民革命軍事博物館”(以下「軍事博物館」)が見えてくる。その軍事博物館の一つ手前、即ち軍事博物館の右隣に威風堂々とそびえ立つのが地下2階、地上12階の八一大楼である。

8月1日は中国共産党の軍隊、“中国人民解放軍”(以下「人民解放軍」)の“建軍節(建軍記念日)”である。これは、1927年8月1日に“周恩来”、“朱徳”、“賀龍”などが率いる中国共産党の北伐軍が、江西省“南昌市”を守備する国民党軍に対し武装蜂起して大勝利を収めたことに由来するもので、一般には8月1日を略して“八一建軍節”と呼ばれている。

八一大楼も8月1日の建軍節にちなんで命名されたもので、中国共産党の最高軍事機関である“党中央軍事委員会”の執務ビルとして建設されたが、実際には当初の目的には使われず、現在では人民解放軍最高指導部が日常の執務を行うほか、重要な軍事会議の開催や軍事関係の外国賓客の接待や外交儀礼の場所として使われている。このため、八一大楼は「人民解放軍の“人民大会堂(国会議事堂)”」とも呼ばれている。また、八一大楼の南側(復興路側)にある“八一広場”では人民解放軍の閲兵式が挙行される。要するに、八一大楼は人民解放軍の中枢が所在する象徴的なビルなのである。

「人民解放軍の中枢」を包囲

2016年10月11日の朝早くから、八一大楼は続々と到着する緑色の迷彩服を着た軍人たちによって包囲された。目撃者によれば、軍人たちは1万人以上で、彼らの隊列は延々2kmも連なり、周辺一帯は迷彩服の軍人たちによって埋め尽くされたという。彼らは“団結就是力量(団結こそが力だ)”、“打靶帰来(射撃練習して兵舎へ帰る)”などの軍歌を高らかに歌い、「職の安定と生活保障を」などと書かれた横断幕を掲げていたが、横断幕の中には「党中央を支持する」、「習主席を支持する」などという標語も見受けられた。

これらの軍人たちの大部分は2000年以前に退役した士官であり、過去10年以上にわたって各地方政府から何ら生活保障や就職斡旋を受けることなく放置され、自力で生計を立てることを余儀なくされたのだった。彼らが軍隊時代に身に付けたのは「敵を殺す」技であり、退役して故郷へ帰っても一般社会で役立つ専門技術を何一つ持たず、社会に適用するのが非常に難しく、本来なら生活保障や就職斡旋を行ってくれるはずの地方政府から放置されたことから窮地に追いやられ、生活に困窮しているのだ。

中国の兵士は、“義務兵(徴兵制による兵士)”と“士官”に区分される。現行の規定によれば、その詳細は以下の通り。

【1】義務兵とは徴兵制によって兵役の義務を果たす兵士を意味し、その服役任期は2年である。(但し、実際にはその大部分が志願兵で、志願兵だけで徴兵で必要な兵数を満足しているのが実態である)

【2】士官への任官は次の3方法を通じて行われる: (1)服役任期を満了した義務兵の中から選抜する。 (2)軍系列の大学を卒業した学士の中から選抜する。 (3)非軍事部門の専門技能を有する民間人から直接に試験などを通じて募集する。

【3】士官は初級、中級、高級に区分され、その服役任期は、初級士官:最高6年、中級士官:最高8年、高級士官:14年以上となっている。

【4】士官は給与制であり、医療の公費負担、住宅手当の支給などの各種待遇が与えられている。また、服役期間が満10年以上の士官には転職先の紹介が行われるし、年齢が満55歳または服役期間が満30年、あるいは病気や障害により労働能力を喪失した士官には退職者としての待遇が与えられることになっている。

放置する地方政府に業を煮やし

基本的に退役士官に対する生活保障や就職斡旋は、退役士官の故郷を管轄する各地方政府が責任をもって行うことが、1999年12月13日施行の『中国人民解放軍士官退役後の身の処し方に関する暫定規則』および同規則を改訂した2011年11月1日施行の『“退役士兵安置条例(退役兵士の身の処し方に関する条例)”』に規定されている。ところが、地方政府は中央政府および中央軍事委員会の意向に従わず、退役士官に対する適切な処遇を行わぬまま放置しているのが実情である。これを不満とする退役士官たちは各地方政府に対して当該規則ならびに条例に規定されている処遇を行うよう要求して陳情を繰り返したが、地方政府は暖簾に腕押しの状態で、彼らを無視するだけだった。

地方政府が対応しないなら、北京市へ出向いて中央政府および中央軍事委員会に陳情するしかない。そう考えた退役士官たちは、北京市へ向かおうとする。そうされては困るのは地方政府である。それは、退役士官たちに北京市で騒がれては、地方政府の退役士官に対する処遇が怠慢で、冷淡なものであることが表沙汰になり、地方のNo.1である一級行政区(省・自治区・直轄市)の党委員会書記やNo.2である省長・自治区主席・市長の業績評価に影響するばかりか、一級行政区自体の評判を落とすことになりかねないからである。彼らの上京を阻止するには、退役士官たちの動向を監視し、上京する気配があったら拘束して足止めすればよい。こうして、退役士官たちは監視対象にされたが、彼らの北京行きの決意は揺るがなかった。

退役士官たちは個々の地域で集団を作るようになり、その地域集団がさらに大きな集団となり、最後には一級行政区レベルの集団と化した。当初は監視の目をかすめた地域集団の代表たちが個別に上京して八一大楼や“国家信訪局(国家投書陳情受付局)”を訪ねて陳情を行っていたが、陳情の成果は何一つ上がらなかった。そればかりか、北京市当局から彼らが陳情のために上京したとの知らせを受けた地方政府は、速やかに北京市へ受取人を派遣して彼らを強制的に連れ戻したのだった。それでも懲りずに幾度も上京しての陳情を繰り返すと、彼らの名前は地方政府のブラックリストに載せられ、彼らの周辺には常に監視の目が光るようになった。

そうなると、退役士官たちは一級行政区を越えた関係を強化し、連携して大挙して上京する計画を立てるようになった。彼らは監視の目を欺き、分派行動で秘密裏に地元を出発して北京市へ向かい、八一大楼や国家信訪局に集合して陳情を繰り返した。過去20年間の統計によれば、この種の退役軍人の集団が北京で陳情を行った回数は50回以上に上り、平均して年3回に及んでいる。但し、彼らの訴えや要求は一切顧みられることなく無視されてきた。

2014年4月28日にも、全国19の一級行政区から上京した2000人以上の退役士官たちが八一大楼および人民解放軍“総政治部”の“信訪辨公室(投書陳情受付事務室)”に押しかけて老後の生活待遇を改善するよう要求を行った。彼らは軍服を着用し、要求を書いたプラカードを掲げていたが、そこには車椅子に乗る人も多数含まれていた。これが退役軍人による過去最大規模の集団陳情行動であったと思われる。なお、2016年に入ってからも北京市では、2月には身障者の退役軍人グループによる陳情が行われたし、5月には1000人規模の退役軍人、8月には数百人規模の退役志願兵や身障退役軍人による陳情がそれぞれ行われた。

監視の目をかすめ、海外にも

さて、話は10月11日の八一大楼に戻る。同日に行われた退役士官1万人以上による八一大楼を包囲しての陳情行動は、史上最大規模のものであった。彼らは12の一級行政区から分散して北京市に集結したもので、その規模の大きさから、国内メディアはもとより海外メディアまでもが注目して彼らの集団陳情を報じたから、当該ニュースは世界中に伝えられた。この日の陳情行動に当初参加を予定していたのは1万5000人以上の退役士官であったが、多くの人々が郷里を離れる前に地元政府によって拘束されたし、1000~2000人が北京市へ向かう途上で阻止されたという。

こうした困難を乗り越えて、10月10日までに次々と北京市へ到着した人々は、事前の打合せに従い北京市内の鉄道や地下鉄の駅を含めた公共の場所に分散して身を潜め、友人宅に宿泊した者を除く大部分は野宿で10日の夜を過ごした。彼らは公安当局に察知されないために相互の電話やメールによる連絡を一切行わず、隠密裏に行動して、翌11日早朝に八一大楼へ集合したのだった。

この日に八一大楼を取り囲んだのは、中国共産党による人民解放軍の兵員削減策によって、1993年から2000年までの間に、服務任期の満了までに残る服務年数を買い取られる形で強制的に退役された人々であり。彼らの多くは未だに仕事がなく、1か月に数十元(約500~600円)から数百元(約5000~6000円)の生活保護を受けているだけで、基本的な生活すら保障されていないのが実情である。彼らが退役を強制された時期の中国共産党中央委員会総書記は“江沢民”であったが、江沢民は1997年9月に第9回目の兵員削減を行うとして、3年以内に兵員50万人を削減することを宣言した。この結果、1999年末に50万人の兵員削減が完了したが、その中には20万人の士官が含まれていた。

11日早朝に八一大楼が退役士官たちによって包囲されると、北京市当局は大規模な警察部隊を投入して警備に当たった。当初には数十人の退役士官が拘束されたが、上部から指令があったからか、彼らは間もなく釈放され、その後の警察部隊は警備だけに徹した。一方、退役士官たちは非常に秩序ある姿勢を示したので、警察部隊との間に大きな衝突は起こらなかった。彼らは八一大楼が面する復興路沿いの歩道に座り込みを行って生活水準の改善を訴えて丸1日を過ごした。しかし、翌12日の早朝3時過ぎに当局が手配した大型バス70~80台が到着し、4時過ぎから11時までの間に退役士官は30~40人ずつ1組で順次大型バスに押し込まれ、北京市南部の“豊台区”に所在する陳情者収容施設の“久敬庄接済中心(援助センター)”へ運ばれたのだった。久敬庄援助センターに収容された退役士官は2000人前後で、残りの人々は現場から逃げたか、地方政府から派遣された受取人たちによって引き取られた。

秘密裡の動員に危機感

今回の陳情で退役士官たちの代表は上層部の指導者には会えなかった。当時、党中央委員会総書記で中央軍事委員会主席の“習近平”は北京市にいたが、退役士官たちには接見しなかったし、国務院総理の“李克強”はマカオと広東省の視察中で不在であった。一説によれば、党中央政治局委員で“中央政法委員会”書記の“孟建柱”が接見しようと申し出たが、退役士官側から関係ないとして拒絶されたという。

久敬庄援助センターには湖南省、河北省、浙江省の3省から“民政”を担当する副省長が駆けつけて自身の省から来た退役士官たちと面会して、彼らを連れ帰った。その他残りの人々は、各一級行政区の北京駐在事務所の職員や地元から派遣された受取人によって連れ戻された。結局、1万人以上の退役士官を動員した陳情行動は何の成果も挙げることなく終結したが、退役士官たちが秘密裏に一級行政区を跨いだ連携を行い、1万人もの人数を北京市へ動員する力を持つことを中国社会に示した意義は大きく、党中央軍事委員会や中国政府は肝を冷やして、危機感を覚えたに違いない。

故郷に連れ戻された退役士官たちを待っていたのは、地元の公安局による取り調べであった。その容疑は『集会・デモ法』第23条規定の「軍事委員会周辺での集会・デモ禁止」並びに同法第27条規定の「違法な集会・デモの禁止」、および『“信訪条

例(投書陳情条例)』第18条と第20条規定の「国家機関への直訴強行禁止」などへの違反であった。取調官は退役士官たちに法規違反を認めて訓戒書に署名することを強要したが、大多数の退役士官は署名を拒否したという。彼らは自分たちに非があるとは全く思っておらず、その責任は退役時に約束された処遇を与えない地方政府に帰されるべきだと考えているのである。

腐敗が生んだ「偽兵事件」、全国で

それでは、地方政府が退役士官たちに約束された処遇を与えないのはどうしてなのか。その原因の一つは役人たちの怠慢であるが、それ以上に問題なのは役人たちの腐敗である。それは、全国各地で摘発されている“假兵案(偽兵事件)”から、その一端がうかがい知ることができる。1例を挙げると、河南省“安陽市”の民政局“安置科(退役軍人の就職斡旋を行う部門)”主任の“孫国銀”は1999年から2011年までの13年間にわたって、失業者から1人当たり3万~5万元(約50万~80万円)を受け取って「偽の退役士官」に仕立て、本来なら「真の退役士官」に提供すべき職場を失業者に斡旋していた。これら偽退役士官の数は13年間の合計で1000人以上に達した。この偽兵事件によって、安陽市では1000人以上の退役士官が就職の機会を失い、放置されたのであった。同様の事件は全国各地で横行している。

ところで、中国では人民解放軍の兵員削減が過去に10回行われ、最大627万人であった兵員は230万人にまで縮小されている。兵員数は上述した江沢民による9回目の兵員削減では50万人削減されて250万人となったが、江沢民は2003年にも10回目の兵員削減を行い、兵員を20万人削減して230万人まで縮小した。2015年9月3日、北京市の“天安門広場”で開催された中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典で演説した習近平は、第11回目となる人民解放軍の兵員削減を表明し、兵力を現有の230万人から30万人削減して200万人にすると宣言した。この削減される30万人のうちの半数は“軍官(士官)”が占めるという。

2016年11月の現時点でも、相当数の退役士官たちが仕事にあぶれ、生活苦に喘ぎ、退役後の処遇に不満を抱いているのが現状である。習近平が宣言した第11回目の兵員削減により新たに一般社会へ送り出される15万人もの退役士官が適正な処遇を受けることはできるのか。それは退役士官の不満分子を増大させることにつながるだけではないのか。経済が沈滞し、企業倒産の増大により失業率は上昇を続けている。国有のゾンビ企業を解体すれば、600万人もの失業者を発生させる可能性がある。そうした中で退役士官たちに職場を与え、生活を安定させることはできるのか。それは大いに疑問である。

1万人以上の退役士官たちが人民解放軍の象徴たる八一大楼を取り囲んで、生活改善の陳情を行ったことは極めて憂慮すべき事態であり、中国社会が抱える矛盾の一面を露呈したものと言えるのではないだろうか。

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『日本はトランプ新大統領を歓迎すべきである』(11/2小浜逸郎ブログ)について

11/4日経朝刊記事<オバマ氏、FBIを非難 クリントン氏メール問題 

【ワシントン=吉野直也】8日投票の米大統領選が再び緊迫している。民主党候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官(69)の私用メール問題が再燃し、世論調査の支持率で共和党候補、ドナルド・トランプ氏(70)が猛追しているためだ。オバマ米大統領は投票直前に再捜査を発表した米連邦捜査局(FBI)を非難。クリントン氏を擁護した。

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2日、クリントン氏の応援演説に駆けつけたオバマ米大統領(ノースカロライナ州)=AP

オバマ氏はFBIの再捜査について「私たちには、結果についてほのめかしたり、不完全な情報に基づいて捜査をしたりしない規範がある」と指摘した。大統領が捜査機関であるFBIに批判的な考えを示すのは異例だ。

米ニュースサイト「ナウディスニュース」が2日、報じた。インタビューは1日に実施した。オバマ氏が再捜査について発言するのは初めて。FBIなどによる度重なる調査の結果、クリントン氏は「過ちを犯したが、その行動に事件性はなかったと判断された」と力説した。

FBIのコミー長官は7月に捜査の終結を宣言したが、10月28日、議会への書簡で再捜査の方針を伝えた。米メディアによると、コミー氏はFBIの上部機関である司法省の反対を押し切って再捜査を決断した。民主党のハリー・リード上院院内総務は投票直前の再捜査の発表に関して「公的権限を使って選挙に影響を与えることを禁じた法に違反する」と断じた。

コミー氏は2013年にオバマ氏にFBI長官に指名された。共和党系弁護士でテロ対策の専門家でもある。05年に司法省を退官した後、10年までロッキード・マーチンの役員などを務めていた。

コミー氏が再捜査を発表して以降、世論調査で10ポイント超離れていた支持率で、トランプ氏が猛追し、一部で逆転した。主要な世論調査を平均した米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の直近の支持率もクリントン氏47.0%に対し、トランプ氏45.3%とその差は1.7ポイントまで縮まった。

選挙人予測についてはクリントン氏が一時、当選ラインである538人(全米50州と首都ワシントン)の過半数に当たる270人に達していたものの、現時点では226人まで下がった。トランプ氏は180人で、クリントン氏がなお優位だが、バージニア州などクリントン氏が引き離していた州が激戦州になった。激戦州でもトランプ氏が接近している。

クリントン陣営はオバマ氏のほか、バイデン副大統領、夫のビル・クリントン元大統領や娘のチェルシーさん、サンダース上院議員、ケイティ・ペリーさんら人気歌手が手分けして応援に入っている。一方、トランプ氏は副大統領候補、マイク・ペンス氏と2人で激戦州などを回っている。>(以上)

11/2の日経朝刊記事では<トランプ氏が支持率上回る ワシントン・ポスト調査 

【ワシントン=吉野直也】米紙ワシントン・ポストとABCテレビは1日、世論調査結果を発表した。支持率は共和党候補ドナルド・トランプ氏(70)が46%、民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官(69)が45%で、トランプ氏がクリントン氏を1ポイント上回った。

調査は米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題の再捜査を明らかにした10月28日を挟み27~30日に実施した。10月下旬にはクリントン氏が一時、12ポイントリードしていた。FBIによるクリントン氏の私用メール問題を巡る再捜査が支持率に響いている。

米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した主要世論調査の平均によると、直近の支持率はクリントン氏47.5%に対し、トランプ氏は45.3%で、クリントン氏がなお優勢だ。>(以上)

同じく11/2の日経朝刊では「一方、獲得できる選挙人の予測ではクリントン氏が263人となり、当 選ラインの過半数270 人に迫る。トランプ氏は 164人にとどまる。

選挙戦の最終盤は、フ ロリダやオハイオなど8 州程ある激戦州(選挙人は約110人)の行方が焦点になる。直近の予測に基づけば、トランプ氏は残る激戦州で9割以上の選挙人を獲得しなけれ ば、当選できない。

大統領選の勝利に自信を深めていたクリントン氏は、1週間を切った選挙戦で激戦州だけでな< 共和党優位の上院選を見据えた遊説を計画していた。ただ、支持率の接近を受け、国民の支持を集めているオバマ大統領の助けも借りながら激戦州をテコ入れする。」とありましたが、地殻変動が起きているようです。後3日間しかありませんが、トランプが勝ってほしいと願っています。

FBIのヒラリーへの調査は大統領選後も続くようですので、もしヒラリーが勝ったとしても、大統領としての職務は果たせないでしょう。パーキンソン病とか認知症とか言われる健康問題もあり、メール問題がストレスとなり、病気を更に悪化させるのでは。結局、ビルが隠れて指揮を執ることになるような気がします。そうなれば、三選禁止の原則を踏みにじるものです。米国もここまで落ちぶれたのかという所です。ユダヤ金融資本の力がそこまであるというのであれば、世界はユダヤ人の為にあるということになります。

オバマはFBIの調査を非難していますが、元々7月に圧力をかけて中止させたのがおかしいはず。それこそが政治的な力で正義を捻じ曲げたものでしょう。民主党というのは日米ともに本当に質が悪い。反日民進党(英文名:The Democratic Party)も蓮舫党首が10/17になっても自分の二重国籍が解消していないことや説明責任を回避しているにも拘らず、山本農水相の辞任を求めるような恥知らずな行為を平気でします。自分が議員を辞任してから言えと言いたいです。行動原理は中国人と同じで「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」というもの。

日本の真の独立の為には、トランプが大統領になった方が良い。審判の日を待ちましょう。

記事

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アメリカ大統領選もあと一週間に迫りました。ヒラリー氏かトランプ氏か、世界中が注目しています。  

今回の大統領選は、いろいろな意味で、史上まれに見るセンセーショナルな選挙だと言えるでしょう。どういう意味でそういえるのか、以下思いつくままに列挙してみます。

①政治の素人で泡沫候補だったトランプ氏が、あれよあれよという間に16人もの共和党候補を出し抜いて大統領候補に昇りつめた。

②一年前には民主党員ですらなかった自称社会主義者・バーニー・サンダース候補が予備選で46%の票を取るという大健闘を示した。

③ヒラリー氏のパーキンソン氏病が疑われている。一説に余命一年。

④トランプ氏が「メキシコとの国境に万里の長城を築く」「イスラム教徒の入国を制限する」「日本は米軍の基地費用を全額支払うべきだ」「日本や韓国は核武装してもかまわない」など、いわゆる「暴言」を発していると報道された。

⑤ヒラリー氏が私用メールで公的問題をやり取りし、FBIが捜査したが7月時点でいったん打ち切られた。しかし投票日10日前になって捜査を再開すると発表した。

⑥両者への不支持率が、これまでになく高い。

⑦有力共和党員の中に、トランプ氏を支持しないと宣言する議員が何人も現れ、民主、共和両党のエスタブリッシュメントが、こぞってトランプつぶしに走っている。

⑧ヒラリー氏が国際金融資本家や投機筋から驚くべき巨額の選挙資金を得ていることが取りざたされている。クリントン財団にはチャイナ・マネーを含む膨大な裏金が流れ込んでいるとも言われている。

⑨トランプ氏の過去の女性蔑視的な発言やセクハラ疑惑がヒラリー陣営によって暴露され、彼は発言のほうは認めて謝罪したがセクハラ疑惑は否定した。

⑩マスメディアのほとんどが民主党寄りであり、トランプ氏自身もテレビ討論におけるその偏りを指摘している。

⑪トランプ氏は結果が出る前から「この選挙は不正選挙の疑いがある。自分が落選した場合には投票やり直しを申し立てる」と広言している。独自のテレビ局を創設するという噂もある。  

まだありますが、このくらいで。  さてこれらの情報の向こう側に何が見えてくるでしょうか。  ①と②について、どうしてこういう現象が起きたのか、日本のマスコミはほとんど論じませんが、理由は明らかです。すでに6月の時点でこのブログにも書きましたが、 http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/a4185972e8dadf6f0151dc4b0a24fb67

これまでエスタブリッシュメント(ほとんどが白人エリート層)の統治によって成り立ってきた民主・共和の二大政党制秩序が、あまりにひどい格差社会(いわゆる「1%対99%」問題)の出現と中間層の脱落によって、崩壊の危機にさらされているのです。国際政治・米国金融アナリストの伊藤貫氏によれば、米国民の五割は百万円以下の金融資産しか持たず、65歳以上の引退者の三分の一は貯蓄ゼロの状態、一方ヘッジファンド業者トップの年収は時には五千億円に達するといいます。

③のヒラリー重病説は確たる証拠があるわけではありませんが、それを疑わせるに足る多くの動画が流れており、また事実9月には「肺炎」と称して入院しました。数年前には脳梗塞で倒れています。  この重病説が事実なら、ヒラリー氏は、すでに大統領の任務をこなす能力を喪失しているのに、彼女の支持基盤の一つである金融資本家層によって無理に立てられた傀儡だということになります。私はその公算が高いと思います。米国で初めての「黒人」大統領の次は、初めての「女性」大統領。この看板が、実態とは裏腹に、人権やポリティカル・コレクトネスをことさら前面に押し出すアメリカという国の国民性にマッチすることは疑いがありませんから。  

④のトランプ氏のいわゆる「暴言」ですが、これも先のブログ記事に書きました。「万里の長城」は、南米やメキシコからの不法移民がいかに多いかを物語っています(一説に現在二千万人超)。いくら国境警備員が努力しても水の泡だそうです。ちなみにトランプ氏は、不法移民を規制せよ、テロリストへの警戒を強めよと言っているのであって、合法的に合衆国国民になった移民やイスラム教徒を排斥しろと言っているのではありません。民主党の人道的理想主義の甘さと失敗を批判しているわけです。  なお日本との安全保障問題に関するトランプ発言については後述。  

⑤のメール捜査再開問題ですが、ヒラリー氏とトランプ氏の支持率にはこれまで水があいていたのに、これによってトランプ氏がヒラリー氏に肉迫したと公式メディアは伝えています。しかし、アメリカのマスコミは、日本以上にリベラル左派の傾向が強く、もともと水があいていたという報道自体、当てになりません。第一回討論会後のWEBによる百万人規模を対象とした世論調査では、トランプ氏が大差をつけたというデータもあります。第二回討論会後は、さらに圧勝だったそうです。  ちなみにこのメール問題は、国家機密を私用メールで漏らしたのですから、明らかに重大な違法行為です。⑨のセクハラ疑惑などの比ではありません。  

⑥の両者の不支持率の高さは、二人のキャラに対する感情的反発が大きいでしょうが、ヒラリー氏の場合は、きれいごとを言っていても⑧のような事情が一部の国民に見抜かれていることが関係しているでしょうし、トランプ氏の場合は、成り上がり物の品格のなさや、人種差別的ととられかねない発言からくるものでしょう。大衆社会では、イメージで決まってしまう部分が大きいですから。いずれにしても、この不支持率の高さは、今回の大統領選における、特に民主党サイドでのかつてない腐敗ぶりを物語っています。トランプ氏はタブーにひるむことなくその欺瞞性を突いたので、現状維持派から嫌われた面もあると思います。現状維持派とは、アメリカが打ち出してきた「普遍的価値」としての自由、人権などの息苦しい建前をまだ信じている人たちのことです。   

⑦の共和党上層部によるトランプつぶしこそは、アメリカ社会がどういう状況にあるかを象徴しています。すでに語ったように、いまのアメリカは世界に類を見ない超格差社会です。共和党の政治エリートもまた、ウォール街の金融資本家やエスタブリッシュメントと密着しているので、その現実を突きつけられるのはたいへん都合が悪い。そこで反ホワイトハウスの代表として登場したトランプ氏の告発を躍起になってつぶそうとしたわけです。  

いったん代表として選ばれた候補者を引きずりおろそうというのは、結束の乱れを周知させてしまう利敵行為であり、はなはだみっともない。でもなりふり構わずそれをしてしまうほどにいまのアメリカは、二極体制ではもたなくなっているのでしょう。資本主義・自由主義のあり方という地点から、根本的に体制を見直さなくてはなりません。  

ちなみにトランプ氏は、プアホワイトにだけ支持されているというようなことを言う人がいますが、不正確です。中間層から脱落してしまった白人か、脱落の不安を抱いている白人から強力に支持されているのです。またたしかに黒人への浸透はいまいちであるものの、ヒスパニックからはけっこう支持されています。  

黒人貧困層はオバマ氏への期待をヒラリー氏にそのままつないでいるのでしょうが、その期待は現実には裏切られており、この八年間に黒人の平均的生活水準はまったく改善されていないどころか、さらに悪化しています。自由平等、人権尊重、マイノリティ擁護のイデオロギーに騙されているのです。  

またヒスパニックは、新たに侵入して来ようとするヒスパニックが同一人種のコミュニティで賃金低下競争を招き、治安も悪化させる可能性が濃厚なので、それを恐れています。だからそれを防いでくれる人を望んでいるのです。  

⑩⑪の偏向や不正は相当のものらしい。マスメディアは民主党を陰で操る富裕層に牛耳られています。民主党政権は不法移民にも免許証を交付しますから有権者登録ができます。またアメリカではそもそも本人確認がきわめて難しく、二つの州にまたがって二回投票することも可能です。さらに、タッチパネル投票なのでUSBメモリーを使って登録された投票を大幅に変えてしまう不正もできるそうです。  

投票前に不正を指摘する候補者というのは前代未聞ですが、そんなことをするのは戦術的に不利であることをトランプ氏が知らないはずはありません(事実、オバマ氏に痛烈に揶揄されましたね)。それでも、あえてやるというのは、選挙戦術に長けたヒラリー陣営のやり口がよほど狡猾なのを感知してのことなのだろうと私は想像します。もっとも不正申し立ては、自分が勝てばやらないとちゃっかり言ってはいましたが。  

以上述べてきたことは、要約すれば、アメリカの民主主義は瀕死の状態にあること、それをトランプ氏が身命をかけて告発しようとしていることを意味します。アメリカは、すでに民主主義国ではなく、ごく少数の強者とその番犬どもが君臨する帝国です。  

私は、この間の選挙戦の経過を遠くからうかがい、信頼のおける情報を知るに及んで、もし自分がアメリカ人だったら、トランプ氏を支持したいと思うようになりました。  

たとえば彼は、金融資本の過度の移動の自由のために極端な格差を生んでしまった今のグローバル資本主義体制に批判的で、銀行業務を制限するグラス・スティーガル法の復活を唱えています。また死に体と化している国内製造業を復活させるためにTPPにも明確に反対の立場を取っています。スローガンの「アメリカ・ファースト」とは、孤立主義の標榜ではありません。イラク戦争以来、多くのアメリカ国民の命を犠牲にし、膨大な戦費を費やしてきたのに、アラブや北アフリカの「民主化」に失敗し、ただ混乱をもたらしただけに終わった過去を反省し、まず国内の立て直しを最優先にするというごく当然の宣言にほかなりません。  

この彼の政治的スタンスは、好悪の念を超えてアメリカの一般庶民の深層心理に届くはずですから、私はトランプ氏が勝つと思います。またたとえ敗れたとしても、いったん開いたパンドラの匣は元に戻りません。彼は強力な問題提起者としてその名を遺すはずです。  

もちろん、彼が大統領になったとしても、この腐敗した帝国の毒気に当てられて、同じ穴の狢になってしまうかもしれない。あるいは、彼の気骨がそれを許さないとすれば、あの野蛮と文明の同居した恐ろしい国では、ひょっとして暗殺の憂き目に遭うかもしれないとまで思います。  

同盟国である日本にとって、もしトランプ氏が大統領になったらどうなるのかという問題が残っていますね。  

先に述べたように、彼は安保条約の片務性を批判して、日本に応分の人的物的負担を求めています。これはアメリカからすれば当然の話で、日本が真に同盟関係を大切にするなら、この提言にきちんと付きあうべきです。そうして、その方が日本にとってもよいのです。なぜなら、対米従属と対米依存から少しでも脱却して、自分の国は自分で守るという世界常識を身につけるよい機会だからです。  

中国の脅威からわが国を守るためにはもちろんアメリカの協力が必要です。しかし協力を正々堂々と要請できるためには、まずこちらが自立した構えをきちんと見せなくてはなりません。平和ボケした日本人の多くは、何となく現状にずるずる甘えて、ヒラリー氏が大統領になってくれればこのままの状態が維持できると考えているようですが、はかない希望的観測というものです。彼女は、よく知られているように、名うての親中派です。日本のために中国と闘う気など毛頭ありません。  私たちはこのことをよく肝に銘じて、トランプ氏が大統領になったほうがよほど「戦後レジーム」の脱却に寄与すると自覚すべきなのです。脅されて突き放されて、初めて目覚める――これが日本人のパターンです。自主防衛の機運を高め、法的にも物量的にもその準備を急ぐことができます。  

トランプ氏はまた、TPPに反対しています。これも日本にとって幸いするでしょう。なぜならTPPは、アメリカのグローバル企業にとってのみ都合のよい条約で、これを呑めば、皆保険制度をはじめとした日本のさまざまなよき制度慣行が破壊されるからです。安倍政権は、率先してこれを批准するというバカなことをやっていますが、自ら墓穴を掘っているのです。経済条約が日米軍事同盟の強化につながるわけではないということがわからないのですね。てんやわんやのアメリカの実態もよく観ず、自由主義イデオロギーという「普遍」幻想に酔っているのです。  

ヒラリー氏もTPPに反対しているではないかという人がいるかもしれません。誤解している人が多いのですが、ヒラリー氏の反対は、トランプ氏のそれとは違って、今の条約規定よりももっと自分たちに都合よくなるように再交渉しようという考えです。具体的には、大きなシェアを占める製薬会社の利益拡大を図って、これと癒着している自分たちの利益につなげようというグローバリズムそのものの魂胆に発しているのです。  

日本人はお人好しで消極的、情緒的で戦略思考が苦手です。でもいざとなると敢然と立ちあがる気概がないわけではありません。トランプ新大統領というショック療法を正面から受け入れ、歓迎する覚悟を速やかに固めましょう。

【参考資料】 1.http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3%E6%B0%8F%E5%84%AA%E4%BD%8D%E3%81%AB%E5%A4%89%E5%8C%96%E3%82%82%EF%BC%9D%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E6%8D%9C%E6%9F%BB%E5%86%8D%E9%96%8B%E3%80%81%E6%8A%95%E7%A5%A8%E5%89%8D%E3%81%AB%E6%BF%80%E9%9C%87%E2%80%95%E7%B1%B3%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8/ar-AAjyjTN?ocid=sf#page=2 2.http://www.mag2.com/p/money/25640?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000204_tue&utm_campaign=mag_9999_1101&l=bcw1560714 3.http://www.mag2.com/p/money/25621?l=bcw1560714 4.「Liberty」2016年12月号 5.「CFR FAX NEWS」2016年10月16日号 6.「正論」2016年12月号 7.「マスコミが報じないトランプ台頭の秘密」江碕道朗(青林堂) 8.産経新聞2016年10月30日付

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