『風前のTPP、米衰退映す』(10/9日経 FT)、『対中戦略で重要なTPPに反対』(10/8週刊ダイヤモンド 櫻井よしこ)について

日本の保守層はTPPに反対している人が多いですが、中国への経済的封じ込め政策と言うのが分かれば賛成に転じるのでは思います。しかし、オバマの政策をヒラリーが覆すとは、流石何でもありの政治家です。野心の為には節を折ることも厭はない、或は元々節なんて始めからなかったのかも。

Andy Chang氏の記事によると「米司法部が武器商人の訴訟を放棄

Fox NewsのCatherine Herridge とPamela Browne両記者が発表した10月5日の記事によると4日火曜日、米司法部は武器商人Marc Turi氏に対する告訴を放棄したと発表した。

この告訴は2012年に起きたベンガジ事件、スティーブンス大使ほか3名がリビアのベンガジ市においてアル・カイーダの攻撃にあって殺害された事件との関連で、オバマ大統領とヒラリー国務長官が深く関わっていた事件である。あと34日で11月8日の総選挙投票があり、この告訴がヒラリーとトランプの得票に大きな影響を及ぼすため告訴を取り下げたのである。

スティーブンス大使は2012年9月、リビアのトリポリ市からベンガジに赴いたが、この際に護衛を一人しかつけていなかった。ベンガジでテロ攻撃に逢った彼らに対しオバマとヒラリーはホワイトハウスで刻々と変わる状況を聞きながら救援を派遣しなかった。このため4名が死亡した事件である。

オバマとヒラリーはこの事件を反イスラムのビデオのせいで暴動が起きたとウソの発表をしたが、ヒラリーは事件直後に彼女の娘に事件がアルカイーダのテロ攻撃だったとメールしていた。オバマは事件後二週間たっても反イスラムビデオのために起きた暴動とウソを言いまくっていた。

その後の国会喚問でもヒラリーはスティーブンス大使を派遣した理由を述べず、重要人物を派遣してなぜ護衛を付けなかったのかという質問に答えていない。

オバマとヒラリーの嘘に拘らず今ではベンガジ事件はアルカイーダの攻撃だったとわかっている。しかもアルカイーダはアメリカの武器を使っていたのだ。アメリカは中東の独裁政権の反乱分子に極秘で武器を提供したが、この武器の大半が反米テロの手に入っていたのだ。オバマ政権、つまりオバマやヒラリーはこの失敗をMarc Turi氏の武器商人の責任として起訴したのである。

アラブの春と呼ばれる、2010年のチュニジア革命から中東各地に広がった暴動、革命運動などがリビア、エジプトの独裁者を打倒し、動乱がカタールやアラブ酋長国、イラクや現在のシリア革命などに及んだ6年来の中東動乱でアメリカは革命分子に極秘で武器を提供していたという。アメリカは数多い武器商人の名前を使って武器提供をしたが、実は国務院とCIAが影の主体であったという。

Turi氏によると、オバマは2011年に秘密の武器提供計画を許可し、カタールとアラブ酋長国がこれに加わった。つまりアメリカは革命軍に武器を提供するため、多くの武器商人の名を使って武器を「カタールに販売した形で」リビアに搬入したという。

Turi氏によると彼は実際に武器を扱っていない。それらは国務院に直属した政治と軍事局(Bureau of Political and Military Affairs)が 主体で、責任者はクリントン長官の直属部下Andrew Shapiroだったという。

だがTuri氏は、国務院のオペレーションが恐ろしく杜撰でリビアに到達した武器は「半分はあちら側、半分は向こう側に行ってしまった」と言う。

  • ベンガジ事件

Turi氏と彼のアドバイサー、Robert Strykによると、国務省はクリントンの失策を隠蔽するため彼を起訴したのであるという。クリントンの失策が2012年9月11日のベンガジ事件を引き起こし、スティーブンス大使など4名が殺害されたのだ。

事件が起きたのが2012年9月11日であるが、オバマは11月の総選挙でロムニーと争っていたので、ベンガジの大使殺害事件を反アラブのビデオのせいにしたが、すぐに嘘がばれて、攻撃はAl QaedaとAnsar al-Shariaの過激分子だったことが判明した。

Turi氏は2014年に武器輸出制限法違反と国務院の要員に虚偽の報告をした廉で起訴された。検察官はTuri氏が武器をカタールとアラブ酋長国に輸出すると虚の申告をしたという。だがTuri氏の弁護士によると武器輸出は政府が認可したリビアの反乱軍を援助するためだったという。

  • 秘密の武器輸出はオバマの政策だった

National Defense University のCelina Realuyo教授によれば、外部の武器商人を使って反乱分子に武器を提供することはオバマの政策の一部だったという。このためヒラリー国務長官時代には武器商人のライセンス許可が急激に増大した。Fox Newsの記事によると2011年に武器商人ライセンスの取得者が86000人で、武器輸出は前年の100億ドルから443億ドルに上がったという。

Fox Newsの記事によると2011年4月11日のヒラリーのメモにはFYI. The idea of using private security experts to arm the opposition should be considered,(参考までに;プライベートな専門家を使って反乱軍に武器を提供する事を考慮に入れるべきである)”と書いてあったという。

Turi氏は2011年5月に武器をカタールに輸出する許可を得た。ところが同年7月になったら武装した連邦警察がアリゾナの彼の住宅を急襲したという。つまり彼はベンガジ事件の生け贄にされたのだと言う。実際に起訴されたのは三年後の2014年であった。

ベンガジ事件が起きた後、2013年1月の国会喚問でPaul Ryan議員からベンガジの武器の行方について質問されたヒラリーは、「私は質問に関した情報は持っていませんが、どんな情報があるか探してみます」と答えたそうである。反乱軍に武器を提供するには外部の武器商人を使えとメモを書いた張本人のヒラリーが国会喚問で情報を持っていないとウソをついたのである。

オバマが反乱分子に武器を提供する許可を出した。ヒラリーは武器商人の名を借りて武器を輸出した。実際には国務省とCIAが関わっていた。計画が失敗して武器商人の責任にしたのであった。」(以上)

とありました。報道したのはやはり保守派のFOXだけと思われます。日本以上に左翼メデイアが多いと言われている米国ですから。「戦争嫌い」で有名なオバマが裏で戦争の種を撒いていたという事です。嘘つきヒラリーだけでなく、嘘つきオバマということで。日本の反日民進党の党首も嘘つきですが、やはり米国の二人と比べると「頭が悪い」印象は否めません。ヒラリーもオバマも弁護士上りで、三百代言ですから、嘘をつくことを何とも思っていないのかも。FOX記事がトランプ支持に回るようになれば良いのですが。

日本もRCEPなどに加盟するのでは「中国の経済的封じ込め」ができなくなります。日本が中心となり、シンガポールや他の参加国と協定を批准していって米国を急き立てるようにすれば良いでしょう。10/10日経朝刊に「パリ協定批准「見誤った」 官邸主導の盲点」という記事が載りましたが、官邸でなく外務省の無能が災いしたと思います。パリ協定は、参院では与野党とも賛成なので、今月下旬には衆院より先に通過、ただ衆院ではTPP法案に野党は反対するのでパリ協定は審議入りが遅れる可能性があるとのこと。パリ協定は外務省の失態でしょうが、批准は時間の問題です。それ程大きな問題ではありませんが、日経の書き方だと官邸が悪と思わせる内容です。メデイアに刷り込まれないようにしませんと。

http://www3.nhk.or.jp/news/imasaratpp/article15.html

FT記事

今後、米国の国力が衰退していく様子について歴史が書かれるとき、環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る大失敗はどう描かれるだろうか。丸1章を割くには値しないかもしれないが、間違いなく脚注よりは大きな紙幅を占めることになるだろう。

■大衆民主主義、危うさを示す

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ラストベルトではTPP反対の声が強い(写真はペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれた7月の民主党全国大会)=米紙ワシントンポスト提供・ゲッティ共同  TPPは太平洋地域12カ国が大筋合意した貿易協定で、参加国の合計人口は約8億人と、欧州連合(EU)単一市場の人口(約5億人)より6割多く、国際貿易に占めるシェアは40%に上る。また、TPPはアジアや世界における米国の指導力を示す最も重要な試金石の一つにもなった。

だが、残念ながら米大統領選挙の主要候補2人はどちらの方がTPPにより強く反対しているか競い合っており、オバマ大統領もTPP発効に必要な承認を議会から得られる見通しが全く立っていないため、TPPが米国によって批准される可能性は急速に薄れている。もし批准されなければ、中国がアジア地域の覇権国として米国に取って代わろうと積極的に動いている時だけに、米国の失態による影響はアジア全域におよぶだろう。

中国は太平洋国家にして世界最大の財の貿易国であるにもかかわらず、TPPからはあからさまに外された。そのため中国政府からすれば、TPPが今にも崩壊しそうなことは不思議に思えるかもしれないが、喜ばしいに違いない。

TPPが頓挫しかねない状況に陥っている事実は、大衆民主主義の危うさを表す最新の事例ともいえる。つまり、国家は国益にからむ問題を、無関心で内容を十分に知ろうとしない大衆の手に決して委ねてはならないことを立証している。最近でいえば、英国が国民投票でEU離脱を決めたこともその一例だ。

鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退してしまった「ラストベルト」と呼ばれる激戦州(編集注、米国の中西部から北東部のミシガン州、オハイオ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州などを指す)の少数の有権者がこれほど明白な形で国益を害するのを許す米国とは一体どんな超大国なのか――。中国の指導者たちは間違いなくこう首をかしげているだろう。

■オバマ政権が矛盾した説明

問題の一端は、オバマ政権が発する矛盾したメッセージにある。TPPは非公式には「中国以外ならどの国でも歓迎されるクラブ」「経済版の北大西洋条約機構(NATO)」と説明されてきた。しかし、公の場では米国は、TPPが中国を封じ込める策の一環であることを必死に否定している。このためオバマ政権は国内では、TPPを単なる自由貿易協定の一つとして売り込まざるを得なくなった。多くの国民が自由貿易協定への疑念を高めている時に、だ。

オバマ氏がTPPの背景にある本当の狙いを明かしかけたのは、2015年1月だった。それはまさにTPPについて米国民を説得できたかもしれない瞬間だった。「中国は世界で最も成長の速い地域のルールを作りたがっている」とオバマ氏は語った。「そうなれば米国の労働者と企業が不利な立場に立たされることになる。そんなことを我々は許せるだろうか。そうしたルールは我々が作るべきだ」と。

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来年1月の任期切れが近づくなか、オバマ大統領はTPPの議会承認をとりつけるのが厳しくなっている=ロイター

カーター国防長官は昨年4月にさらに踏み込んだ発言をした。「TPPを可決させることは、私にとって空母をもう1隻増やすのと同じくらい重要だ」と述べた。カーター氏は恐らく空母というものの価値を過大評価したと思われるが、2人の言葉はいずれも真実だ。TPPを巡り米議会から承認を得られなければ、米国は事実上、世界最速で成長する地域の貿易と経済のルールを定める権利を事実上、譲り渡すことになる。日本のある外務省高官の言葉を借りれば、「中国の指揮下でアジアの貿易制度を確立する絶好のチャンス」を中国に与えることになる、ということだ。

■多大な影響力、譲り渡す危機

アジアでの影響力拡大を狙う中国の台頭を最大の脅威ととらえる日本でさえ、米国がTPPを批准できない場合は、中国が支持する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に参加することを検討している。この交渉には東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のほかオーストラリア、ニュージーランド、中国、インド、日本、韓国が参加する。RCEPは米国が加わらないだけでなく、知的財産やインターネットの自由、労働者の権利、野生生物と環境などに対する保護施策がTPPより不十分だ。

こうした分野に関しては、しかも米企業にとっては、TPPはクリントン氏がオバマ政権の一員だったときに評したように「ゴールドスタンダード(究極の協定)」だ。

中国がネットの自由や人権、環境保護を軽視するだけでなく、海外で事業展開する際も地元の違法行為を黙認するのを慣行としていることを考えれば、彼らはどんな貿易協定でもTPPほど高い基準を実現しようとは思わないに違いない。

米国やアジアでは、クリントン氏が大統領に選ばれたら、違う名称を付けてTPPを事実上復活させるのではないかという楽観的な観測も広がる。しかし、それには長い時間がかかるし、その頃には協定は恐らく意味をなさなくなっているだろう。その間も、中国は米国を参加させないような協定の締結を強く推進するはずだ。

米国がアジアでの影響力や地位を失わないようにするには、11月の選挙が終わってから来年1月に新大統領が就任するまでの「レームダック議会」で、オバマ氏が議会からTPPの承認を得るのが最も妥当なシナリオだ。

もしこれが実現しなければ米国はいわば墓穴を掘ることになる。つまり、中国に多大な影響力を譲り渡すこととなり、その結果、今後中国を中心に結ばれる貿易協定は企業や労働者、世界にとって、今より確実に悲惨なものになるということだ。

By Jamil Anderlini

(2016年10月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

櫻井記事

対中戦略で重要なTPPに反対 クリントン氏にも期待できない現実 

9月26日(日本時間27日)の米国大統領候補によるテレビ討論はあらためて、大変化に備えよという世界各国への警告になったのではないか。

討論の勝者は誰か。直後の世論調査ではクリントン氏の勝利とみた人が 62%、トランプ氏は27%だった。

一方、米国の保守派の論客、チャールズ・クラウトハマー氏は、「内容に関しては、どちらも相手を徹底的に追い詰められなかったという点で引き分け。その場合、挑戦者であるトランプ氏の勝利だ」と分析した。

現時点でクリントン氏がやや有利だが、最終的にどちらが勝利するかは、依然として分からない。しばらく前まで、私はどちらが次期大統領になるのか、非常に気になっていた。外交も安全保障も理解しているとは思えないトランプ氏よりも、親中派だが、経験を積み、中国の実態を冷静に見詰め、戦略的に思考できるクリントン氏の方が日本にとってふさわしいと考えていた。

しかし、今はそうは思わない。外交や安全保障でクリントン氏にも期待できないと感ずる。理由は環太平洋経済連携協定(TPP)についての彼女の変遷である。彼女は、第1期オバマ政権の国務長官としてTPPの戦略 性を認識し、支持したはずだ。TPPに込められた戦略とは、経済や価値 観を軸にして、中国と対峙する枠組みをつくるということだ。

対中関係で軍事と並んで重要なのが経済である。中国はアジアインフラ投 資銀行(AIIB)などを創設して中国主導の不透明な経済・金融の枠組みをつくった。だが、中国的価値観に主導される世界に、私たちは屈服するわけにはいかない。経済活動を支える透明性や法令順守などの価値観を重視したTPPは、21世紀の中華大帝国とでも呼ぶべき枠組みに対処する重要な役割を担っていくはずだ。

無論、TPPはそのような対中戦略の理念だけで成り立つものではない。 日本企業や農家の舞台を国内1億2700万人の市場から8億人のそれへと拡大 し、必ず、繁栄をもたらすはずだ。

こうした中で厳しい交渉を経て、TPPは12カ国間で合意された。それをクリントン氏は選挙キャンペーンの最中の8月11日、「今も反対だし、大統領選後も反対する。大統領としても反対だ」と言い切った。さらに、今 回の討論で、「あなたはTPPを貿易における黄金の切り札(gold standard)と言ったではないか」と詰め寄られて、彼女はこう切り返した。

「それは事実とは異なる。私はTPPが良い取引(deal)になることを願っていると言ったにすぎない。しかし、いざ交渉が始まると、ちなみに私はその交渉に何の責任もないが、全く期待に沿わない内容だった」

ここには、TPPを対中戦略の枠組みと捉える視点が全くない。何ということか。対中戦略の重要性など、彼女の念頭には全くないのである。であれば戦略的とは到底思えないののしり言葉で支持を広げるトランプ氏と、信念も戦略もないという点で、クリントン氏はどう違うのか。

日米同盟に関して、トランプ氏は「日本はカネを払っていない。他方で 100万台規模の車を米国に輸出し続けている」と強い不満を表明した。こ のような考え方は日米同盟の実質的変革につながる。クリントン氏は日米同盟重視だと語るが、TPPを認めない氏に期待するのも難しいだろう。

両氏の討論から、日本の唯一の同盟国が、頼れる相手でなくなりつつあることがより明確に見えてくる。安倍晋三首相は臨時国会の所信表明で、 TPPの早期成立と憲法改正に言及した。日本の地力を強化し、それを もってアジア・太平洋地域に貢献するのにTPPも憲法改正も必須の条件だ。国際社会の速い変化の前で、日本も急がなければならない。

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