トランプは予備選で過半数を取れない可能性が高まっているとのこと。クルーズとの暴露合戦は米国大統領候補としての品位を落とすものですが、FDRやケネデイ、ビル・クリントンなども不倫で有名です。所詮、大衆が選ぶため、品位よりは近づき易さが基準となってしまうのでしょう。
メルマガ『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』によれば、トランプはケーシックを副大統領にする様子を窺わせているとのこと。特別代議員は反トランプが多いので、彼らを取り込む戦術でしょう。
http://melma.com/backnumber_45206_6354792/
トランプの女性の中絶に対する罰発言は、本選になったときに女性候補のヒラリーを有利にします。受け狙いで刺激的な発言をするのは諸刃の剣です。トランプの女性蔑視発言は今に始まった訳ではありませんが。有権者の半分を占めるので考えた方が良いでしょう。
米軍基地の撤退をするのでは「偉大な米国を再び」というのと矛盾します。世界覇権は世界に張り巡らせた米軍基地のネットワーク(軍事力)と基軸通貨$の存在(経済力)によって齎されています。そこが本当に分かっているのかどうか。中国がこの2方面で米国に挑戦してきているのが理解できているかどうかです。ポピュリズムで大統領になっても、米国大統領は世界平和に対する責任を負っています。良いスタッフが必要となるでしょう。
日本の集団安保法制を廃止しようと反日民進党や共産党は画策していますが、トランプの発言にどう答えるのでしょう。本法案により同盟の片務性は薄まったと高村自民党・副総裁は思っていますが、その通りです。一体野党は日本をどのように導こうとしているのか。中国の属国にしたいと思っているとしか思えません。米軍が撤退すれば単独で日本を守ろうとすれば、5兆円の防衛予算では圧倒的に足りません。現在の予算の4~6倍必要になり、財源をどうするかと言う問題が出てきます。自主防衛は良いですが、単独防衛は予算の面から見ても無理なことが分かります。核が安くて良いのでしょうが、国際世論の納得が得られるかどうかです。やはり、日米同盟を堅固にして、「遅れて来た帝国主義国」に対峙しないと。
http://president.jp/articles/-/16057
トランプの言うことをペンタゴンがすんなり受け入れるとは思えません。第二次大戦を経て得た世界覇権の地位を易々とは手放すとは思えません。軍産複合体から報復されるでしょう。多分大統領になれば、宗旨替えすると思われます。
今は、中国の南シナ海進出をこれ以上させないことです。中国の内海にしない為、米軍中心に活動をしていっています。勿論、日本も入っています。また高濱記事にあります、「米国の尖閣巻き込まれ」論は中国の金が撒かれた影響と思われます。米軍は賛成しないでしょう。
4/15日経朝刊記事を紹介します。
<米比、南シナ海を共同哨戒を定期実施 中国けん制
【マニラ=佐竹実、北京=永井央紀】フィリピン訪問中のカーター米国防長官は14日、マニラで記者会見し、米比両国軍が南シナ海で共同哨戒活動を始めたと明らかにした。今後定期的に実施する。米軍は近く両国間の新軍事協定に基づきフィリピンに四半世紀ぶりに事実上駐留する。軍事的な拡大姿勢を続ける中国へのけん制を強める。
カーター氏は「埋め立てなど、中国による行動が地域の緊張を高めている」と名指しで非難した。同席したフィリピンのガズミン国防相は「米国の展開で、中国の不測の行動が控えられることを期待する」と述べた。
カーター氏によると、共同哨戒活動は3月に開始し、2回行った。これまでは米軍や比軍がそれぞれ単独で行っていたが、中国に比べ軍備力に乏しい比軍にとっては米軍の哨戒機や艦艇などを使える利点がある。
カーター氏は、米比両軍の合同演習のため現在フィリピンに配備しているA10攻撃機などの航空機や米兵約200人が、15日の演習終了後、一時的にクラーク基地に残ることも明らかにした。
米比両国は2014年、中国の海洋進出を念頭に「拡大防衛協力協定」を結んだ。フィリピンの憲法では、上院が批准した条約がない限り外国軍の駐留を禁じているが、同協定で、米軍はフィリピン軍の基地を共同利用できるようになったほか、基地の敷地内に米軍の施設を設置できる。
今回の協定は「一時的な軍事力の展開」との位置づけだが、艦船や兵力などを長期間展開し、実質的な駐留となる。
3月には、南シナ海に臨むパラワン島の空軍基地など5カ所を利用することで両国が合意しており、近く本格的な米軍の展開が始まる。
米軍は、中国をけん制するため、南シナ海に米軍機や艦船を派遣する「航行の自由」作戦を続けており、今後はその目と鼻の先に位置するフィリピンを拠点にできるようになる。
かつて米軍はフィリピンに駐留していたが、冷戦終結後の1992年までに撤退した。米軍はその後、日本や韓国の基地のほか、シンガポールやオーストラリアにも拠点を築いてきたが、南シナ海の最前線に位置するフィリピンに足場を失ったままになっていた。
中国は、米軍のいない「空白」をついて、海洋進出を続けてきた。南シナ海を譲歩できない「核心的利益」と位置づけており、米国とフィリピンが安保協力を強めても海洋進出をやめる可能性は低い。
米軍準機関紙スターズ・アンド・ストライプスは、中国軍が西沙諸島の永興(英語名ウッディー)島に戦闘機16機を派遣したと伝えた。同島は中国が実効支配して地対空ミサイルなどを配備している。戦闘機派遣は過去にもあったが、今回は過去最大規模だという。
中国メディアによると中国国防省は14日、米国とフィリピンの安保協力強化について「第三国の利益を損ねず、地域の平和と安定に悪影響を与えないよう求める」と注文を付けた。>
記事
—4月5日に行われた米共和党ウィスコンシン州予備選では、これまで快進撃を続けてきた不動産王ドナルド・トランプ氏がテッド・クルーズ上院議員に完敗しました。
高濱:ウィスコンシン州でクルーズ氏が獲得した代議員数は36。トランプ氏は6人。
これでクルーズ氏の獲得代議員数は517人。トランプ氏は743人。指名獲得に必要な1237人には、どちらもまだまだです。7月の党大会前に1237人を獲得することは、どちらも候補もできないという観測が強まっています。 (”Who’s winning the race to nomination?” Lily Mihalik, Los Angeles Times, 4/6/2016)”
クルーズ氏が勝利した要因は、共和党既成勢力の「ストップ・ザ・トランプ」作戦がやっと効果を上げ始めたことのほかに、トランプ氏のここ1~2週間の言動があります。クルーズ氏にとっては「敵失」による勝利、トランプ氏にとっては「身から出た錆」です。
その言動の一つが、人工中絶問題について暴言です。トランプ氏は3月30日、テレビ番組収録中に「人工中絶手術を施した医師だけでなく、受けた女性も法的に罰されるべきだ」と主張しました。
日本では人工中絶が黙認されています。しかし、米国では未だに「人工中絶は罪だ」という認識が根強いのです。キリスト教保守派の人たちにとって絶対に妥協できないのが人工中絶手術です。中絶手術を施した医師のクリニックを襲撃する事件さえ起こっています。
この発言に対して、各方面から激しい批判の矢が飛びました。するとトランプ氏はこの発言を直ちに撤回するステートメントを発表しました。トランプ氏、お得意の朝令暮改です。
オバマ氏も怒る「大統領の資格なし」
トランプ氏の問題発言はこれにとどまりません。米ニューヨーク・タイムズ、米ワシントン・ポストとのインタビューで、不得意な外交・安全保障政策に関する質問攻めに遭いました。
そしてNATO(北大西洋条約機構)からの離脱、日米安全保障体制の見直し、在日米軍と在韓米軍の撤退、日韓が核武装することの容認など、軍事・安全保障について思い切った発言をしました。これまでの大統領候補指名争いで、こんな発言をした候補はいません。前代未聞のものです。
世界中の指導者やメディアが一連の発言に驚きました。現職大統領のオバマ氏まで、まだ指名されてもいない共和党大統領候補の発言を激しく批判しました。
オバマ大統領は、「日本や韓国が核武装してもしかたがないとトランプ氏は言っているそうだ。この発言だけで、トランプ氏が米大統領になる資格がないことは明らかだ」と吐き捨てるように言っています。
こうした発言はウィスコンシン州予備選に大きく影響しました。各種世論調査によると、同州の共和党員・支持者の学歴は他の州に比べると、比較的高いといった結果が出ています。こうした一連のトランプ発言を聞いた共和党員・支持者たちの中には「こりゃ、ダメだ」と思った人が多いのではないでしょうか。これは地元紙の政治担当論説委員から聞いた話です。 (”Obama: Trump’s nuclear remarks prove he’s unfit for Oval Office,” Jordan Fabian. The Hill, 4/1/2016)
次の焦点は「4・19ニューヨーク対決」
—今後、支持者のトランプ離れは加速するのでしょうか。
高濱:今後の焦点は、ニューヨーク州(4月19日)やペンシルバニア州、メリーランド州(ともに4月28日)で、トランプ急降下現象が起こるのかどうかです。
現時点での予想では、トランプ氏はニューヨーク州、ペンシルバニア州でも優勢のようです。ニューヨーク州はトランプ氏の地元ですが、同州の共和党員はリファインされている(知的で洗練されている)はず。実際の投票で予想通りの結果が出るかどうか、注目したいと思います。
ニューヨーク州の代議員数は95人。「勝者総取り」ではなく、得票率を反映した「比例配分」です。 (”2016 Primary Forecasts: N.Y. Republican primary,” FiveThirtyEight, 4/4/2016) (”2016 Primary Forecasts: Penn. Republican primary,” FiveThirtyEight, 4/4/2016)
核心は「核武装」より「同盟の片務性」
—トランプ氏の日本に関する一連の発言をめぐって、日本国内では複雑な反応が出ています。日本の核武装を是認する発言がクローズアップされていますが、発言の核心は、トランプ氏が「日米安保条約の片務性」を問題視していることではないでしょうか。
高濱:確かに日本の核武装に関する議論はこれまでに何度も出ています。そのいずれも、日本が核武装することを恐れる警戒心から出たものでした。それを「是認してもいい」と言っているわけですからショッキングな発言ではあります。
ただ、トランプ氏のこの発言には、いくつかの前提があります。「安保条約は米国にとって『持ち出し』ばかりでメリットが少ない」という不満がまずある。それを日本と再交渉して改定することができないなら在日米軍を撤退させる。米軍が撤退したあと、日本がどうするかは日本が決めること。もし日本が核武装するならば、それも致し方ない、と言っているわけです。
菅義偉官房長官は「誰が次期大統領になろうとも日米関係は揺るぎない」と発言しています。トランプ氏が大統領になることは恐らくないだろうと考えているのでしょう。大統領になったらなったで、より現実的な対日政策をとるようになるという希望的観測もありそうですね。
安倍晋三首相はトランプ氏の発言について、米ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビュー(4月6日付)の中で、直接言及することは避けながらこう述べています。
「日米同盟の重要性は誰が大統領になろうとも変わらない。予見できる将来では、在日米軍が必要でなくなる状況は想像できない。アジア太平洋において米軍の存在が必要だと信じている」 (”Shinzo Abe Says Countries Must Avoid Competitive Currency Devaluations,” Paul Jackson & peter Landers, Wall Street Journal, 4/5/2016)
日本の革新、超保守はともにトランプ発言を歓迎?
—日本政府の公式反応とは別に、ソーシャルメディアなどではトランプ発言をめぐっては保守・革新入り乱れて複雑な反応が出ています。左翼の人たちは在日米軍の撤退には賛成していますが、核武装はもっての外といった反応です。一方、反米保守の人たちは、対米依存をやめて自主防衛しろという点でトランプ発言を支持しています。米国内の識者や一般大衆の反応はどうでしょうか。 (参考:日本でジワリ広がる “トランプ大統領’待望論”’――対米自立か隷属か――、古谷経衡、Yahoo Japan ニュース、3/27/2016)
米外交・安保専門家は異口同音にトランプ発言を批判
高濱:オバマ大統領のコメントはすでにお話ししました。米政府当局者はもとより、在野の外交・安全保障の専門家たちのほとんどは、トランプ発言について口を極めて批判しています。
例えば、CNNテレビの外交記者、クリスティン・アマンポア氏は驚きを隠すことなくこうコメントしています。「二大政党の大統領候補が、日韓など同盟国との安全保障関係についてこんな発言をするのを聞くのは初めてだ。唯一の被爆国・日本は核武装しない。その代わり米国が核の傘で日本を守る。日本の軍事力はあくまでも防御的なもの、万一攻撃を受けた場合には米国が支援に駆けつける。日本はそれ以外の分野で平和のために貢献する。これは日米のトレードオフ(妥協点、兼ね合い)だ」。
またジ・アトランティック誌で外交を担当するジェフリー・ゴールドバーグ記者はこう指摘しています。「トランプという御仁は、米国が戦後に築き上げてきた国際秩序がなんであるか、まったく理解していない。外交政策について無学であることを完璧にさらけ出した」。 (”Journalists And Foreign Policy Experts Call Out Trump’s ‘Completely Uneducated,’ ‘Baffling’ Foreign Policy,” Tyler Cherry & Christiano Lima, mediamattters. org., 3/28/2016)
尖閣問題への巻き込まれを警戒
—「日米安保条約はアンフェアだ」というトランプ氏の主張を支持する声が米国内にあるのでしょうか。
高濱:あります。これは今に始まったことではありません。尖閣諸島をめぐって日中関係が緊張し始めた2、3年前からそう主張する学識経験者が現われました。米議会の中にもいます。
例えば、保守系シンクタンクのケイトー研究所のダグ・バンドー上級研究員はその一人です。尖閣諸島の領有権をめぐって日中が対決した場合、米国はそれに関与したり、巻き込まれたりしてはならないと主張しています。
同研究員は、13年1月28日にフォーブス誌にこう書いています。「米国は今や、世界の国々が直面している脅威から、それらの国を守ることなどできなくなっている。いわゆる『アジア回帰』政策を掲げているからと言って、米軍が未来永劫アジアに駐留するわけにはいかない。安倍首相自身、『米国は国防予算を大幅カットしており、アジアにおけるバランス・オブ・パワーは揺らぎ始めている。それが不安定さを生み出しうる』と述べている。尖閣諸島の領有権をめぐって日中に紛争が生じる可能性すらある、これも米軍がアジアから撤退する大きな理由の一つだ。日本が防衛面で米国依存をやめる時がすでにきている」 (”It’s Time to End Japan’s Defense Dependence on the United States,” Doug Bandow, www.cato.org., 1/28/2013)
下院では民主党リベラル派のブラッド・シャーマン議員(カリフォルニア州選出)がここ1、2年、日米安保条約の片務性を公の場で取り上げています(日本の安全保障関連法が成立する前のこと)。
今回のトランプ発言について同議員にコメントを求めていますが、まだ回答を得ていません。
トランプ発言が一般大衆に受けている点に注目するジャーナリストもいます。外交誌「ワールド・ポリティクス・レビュー」の編集主幹、ジュダ・グルンスタイン氏はこう指摘しています。「トランプ氏のド素人のような外交政策を批判するのは簡単だ。だが、同氏の言っていることが一般大衆に大いに受けているセンチメントは無視できないし、そのセンチメントはそう簡単に消え去るものではない」。
「トランプ氏の主張していることは、彼のスローガンである『米国を再び偉大な国家にする』ことにつながらない。むしろ米国の衰退を加速させるだけだ。他方、トランプ発言やそれを支持する米一般大衆の高まりを見て、同盟諸国がある日、ある時、対米依存に代わる選択肢としてより信頼のおけるパートナーを見つける可能性を憂慮する識者もいる」 (”Criticize Trump’s Worldview for Its Weaknesses, but Take It Seriously,” Judah Grunstein, worldpoliticsreview.com., 4/4/2016)
ウィスコンシン州予備選までにトランプ支持の共和党員・支持者によってえらばれた代議員の数は743人です。これは共和党全代議員数の30%を占めています。この人たちすべてが、日本に関するトランプ氏の発言に同調しているとは思いません。
なぜなら、この人たちのほとんどは、日米安全保障体制がどういうもので、どのように機能しているのか知らないからです。ましてや集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法が3月29日に施行されたことなど全く知らないでしょう。
それゆえ「日本が攻撃を受けた時に米軍は支援にかけつけるのに、米国が攻撃を受けた時に日本は助けに来ないのはアンフェアだ」とトランプ氏から聞けば「その通りだ」と手をたたくのです。戦略論ではなく、感情論です。
つまり米政府当局者や外交・安全保障専門の学者やジャーナリストと、トランプ氏に票を投じた共和党支持者との間には大きな認識のギャップがあるのです。
エリート層と一般大衆の間にある認識ギャップ
ここに米外交問題評議会が1998年に公表した「The U.S.-Japan Security Alliance in the 21st Century(A Study Group Report)」があります。この報告書は、日米の政策立案者、オピニオン・リーダー、トップ・ビジネスマン、外交官、安全保障問題専門家、学者たちが意見交換し、21世紀における日米安全保障同盟への提言としてまとめたものです。参加者にはハロルド・ブラウン元国防長官、リチャード・アーミテージン元国務副長官らが名を連ねています。
この中に次の指摘があります。
1)日米の間にある経済的、軍事的な格差が狭まった。日本は世界第2の経済力を持ち、いまでは最も充実した通常戦力を保有する国の一つになっている。
2)一方で、米国および日本国内では、この40年にわたって同盟関係を支えてきた政治的コンセンサスが弱まりを見せている。米国には、冷戦期に構築された世界的な軍事同盟のネットワークを存続させるのにかかるコストやその妥当性を疑問視する人々もいる。
3)日米貿易摩擦が恒常的なものになっている。かっての取引の構図――米国が日本に市場を開放する見返りに、米国は日本に軍事基地を置く権利を得る――は今では魅力を失っている。
私が注目したのは以下の下りです。
「米国において、エリート層の見解と一般国民の認識の間にあるギャップは依然として大きい。エリート層は日米同盟に対して肯定的だ。これに対して一般国民の同盟への関心は低い、もしくはほとんど何も知らない」 「日米同盟は、米国民が漠然と信じているほど、あるいは一部の政治家たちが一般国民に吹き込んでいるほど一方的な関係ではない」 「同盟の再構築や在日米軍についての論議を党派政治に持ち込んではならない。…日米両国の指導者は、いまこそ自国の有権者に対して日米関係の重要性を正面から訴えるべきである」
米国の一般大衆の間には「日米安保条約の片務性」を疑問視する人が18年前からいたのです。トランプ氏が急に言い出したものではありません。トランプ氏自身が「一般大衆」の一人だったのです。
—「米国は日本を守る、その代わりに日本は米国に基地を提供する」という構図をトランプ氏は完全否定しているわけです。安全保障関連法が施行となり、日本が集団的自衛権を行使することが可能になりましたし、新ガイドラインの下で日本の防衛負担はさらに増えます。それでも片務的であると米国が言うのであれば、日本としても考えざるを得ません。そうなれば、米国はその世界戦略を根本から変えることになります。果たして米国は将来、そこまで腹をくくった決断を下すでしょうか。
高濱:日米安保体制は、米国の長期的な国家戦略の根幹をなすものです。米シンクタンクの軍事外交問題の専門家の一人は筆者にこう述べています。
「どの国においても、外交と軍事、長期国家戦略は国内政治と直結している。すなわち、軍事産業や経済通商戦略と結びついている。米国が海外に基地を置いて軍を駐留させているのは、他国の独立や自由を守るためだけではない。国益に合わないとみれば、米国は軍を日本からさっさと撤退させる。今、在日米軍を駐留させているのは米国の国益に資する体制と判断しているからだ」 (”The U.S.-Japan Security Alliance in the 21st Century(A Study Group Report)“, Michael J. Green & Mike M. Mochizuki, Council on Foreign Relations, 2/1998)
短期的には「安全保障関連法」は役立っている
トランプ氏の発言は少なくとも大統領選予備選という公の場で出たものです。その発言を支持する米一般大衆がいることもわかりました。相手のホンネを知ることは日本にとってはいいことです。日米安保体制の本質を国務長官としてじっくり見てきたヒラリー・クリントン氏が大統領になったら、「トランプ発言のような見方もあったな」と振り返ることになるでしょう。
重要なのは、このアメリカ合衆国という国にはありとあらゆる意見があり、その是非をみんなで論議する。まず予備選段階で精査し、最後は11月の大統領選の投票で決着する。それを、来年1月にスタートする新政権の下で実行する。
その過程でトランプ氏が代弁した日米安保批判が浮上しているという点です。慌てず、焦らず、クールに聞き耳を立てたいと思います。
自民党の高村正彦副総裁が4月6日の講演で以下の指摘をしました。短期的にみると、これがすべてを言い表している気がします。「安保ただ乗り論が米国世論にあり、トランプ発言が受けているようだ。日本は米艦防護(を可能にする集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法)をやっておいて本当によかった」 (参考:”自民・高村氏 安保ただ乗り論に懸念表明、毎日新聞、4/6/2016″)
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