池田信夫『戦後リベラルの終焉』を読んで

本書を読みますと日本をダメにしたのは過剰なサクセシズム(立身出世主義)ではないかという気がします。公益よりも私益、東芝の不適切会計にも見られるように、自分だけ良ければ良いという発想にリーダーがなっているというか、そういう人でないとトップになれない所が大きな問題でしょう。東芝はすぐに見つかり、責任を取らされますが、朝日新聞は責任を取っていません。誤報をして世界を誤導し、国益を大いに損ねた訳ですから、国際的にキチンと数か国語で「慰安婦報道は事実でなかった」と謝罪記事を掲載すべきです。

左翼が日本を蝕んでいます。沖縄でも、今度の集団安保法制の国会周辺デモでも、左翼くずれの老人と2万円貰ったアルバイトで、警察発表6千人のところメデイアは10万人とか発表する訳ですから、捏造以外の何物でもありません。中国共産党のやり方と一緒です。ひどいのは保守派のデモの方が数が多い場合があるのに一切報道しません。腐っています。こんなメデイアを信じるから誤判断する訳です。やはり、不買をしなくては経営陣には分からないでしょう。といっても小生は当然朝日新聞を取っていませんので、取っている人が不買しないと効果はありません。

今は、反日メデイアは反戦を貫いていますが、日本人が中韓に怒っていることを感じていません。中国が尖閣に侵略を開始しても何も言わなければ部数を今以上減らすでしょう。朝日・毎日はどういう報道をするのでしょうか?部数が減っても今と同じ主張(反戦)を貫くのでしょうか、それとも打って変わって戦争をアジるのでしょうか?興味のあるところです。間違いなく中国は尖閣を取りに来ます。いつとか言えないだけです。裏でアメリカと握る可能性もありますけど。アメリカは正義の警察官ではありませんから全面的に信用するのは危険ですが、今の所日米で中国に対抗するしか方法はありません。

内容

P.29~43

大誤報の主役は植村記者ではない

一九九ニ年の大誤報を書いたのは、報告書にも書かれたように、東京社会部の辰濃哲郎記者(のちに別件で懲戒解雇)だった。彼は当時、厚生省クラブだったのに、なぜか吉見義明(中央大学教授)からの売り込みで陸軍省の副官通達を記事にしたと書いている。

しかも売り込まれたのが九一年十二月二十四日ごろで、記事にしたのが正月休みをはさんだ一月十一日だという。その記事と一緒に出た「メモ」に「挺身隊の名で強制連行」と」 書かれていたことが、問題の発端だった。辰濃はこう書いている。

この「メモ」は私が書いたものではないのだが、一面の記事の執筆者として誤リ気づかなかったことを問われれば、全責任は私にある。おそらく「メモ」を書いた記者はデスクに指示されて、過去のスクラップを参考にして書いたに違いない。【中略〕

この点については謝罪させていただきたい。少なくとも、両者の混同が明らかになった時点で、それを修正すべきだった。(『朝日新閒日本型組織の崩壊』P.158)

この説明は不自然だ。一面トップで政府の方針をゆるがすような記事が、正味一週間で書けるものではない。しかも書いたのは、歴史には素人の医療担当記者。それをチエックしたデスクが複数いるはずだ。その記事が宮沢訪韓の直前に出たのも、偶然とは考えられない。 ただ辰濃もいうように、本質的な責任は「两者の混同が明らかになった時点で修正」しなかった編集体制にある。少なくとも九ニ年四月には「強制連行」は嘘だという事が判明していたのに、いまだにそれを認めない。

これを検証した第三者委員会にも問題がある。「朝日新聞の国際的な責住は重くない」と主張した林香里委員は、「吉見義明教授の裁判闘争を支持し、『慰安婦』問題の根本的解決を求める研究者の声明」の賛同者であり、第三者とはいえない。

吉田清治に関する一九八二年の記事についても、朝日の論説委員だった長岡昇が二〇一四年十二月二十三日のブログ記事でこう指摘している。

今年八月の慰安婦特集で、この記事を執筆したのは「大阪社会部の記者(66)」とされ、それが清田治史記者とみられることを、このブログの丸月六日付の文章で明らかにしました。清田もその後、週刊誌の取材に対して事実上それを認める発言をしています。

ところが、朝日新聞は九月二十九日の朝刊で「大阪社会部の記者(六六)は当時国内にいなかったことが判明しました」と報じ、問題の吉田講演を書いたのは別の大阪社会部の.記者で「自分が書いた記事かも知れない、と名乗り出ています」と伝えました。しかも、今回の報告書ではそれも撤回し、「執筆者は判明せず」と記しています。

彼もいうように「第二社会面のトップになるような記事を書いて記憶していないなどということは考えられません」。誰かが嘘をついているが、清田も記者会見に出てこない。元役員だったのだから、責任は重大である。

この問題の主役は植村ではない。彼はデスクに命じられてニ本の署名記事を書いたにすぎない。このキヤンぺーンの責任者は、当時の大阪社会部デスクの鈴木規雄である。この点は、植村も『現代ヒジネス』で、青木理のインタピユーにこう答えている。

ところで、韓国への出張取材は、どうして植村さんが行くことになったんですか。

植村「僕は慰安婦問題の取材はしたことがなくて、在日韓国人政治犯の問題をずっとやっていたんですけど、韓国語もできるし、規さん〔鈴木規雄〕は広い目で(部下を) いろいろ見ててくれたから、そういうのがあって派遣されることになったんだと思います」

これは重要である。というのは、報告書にも鈴木が登場するからだ。

辰濃は上記朝刊1面記事を中心となって執筆したものの、従軍慰安婦の用語説明メモの部分については自分が書いたものではなく、記事の前文もデスクなど上司による手が入ったことによリ、宮沢首相訪韓を念頭に置いた記載となったと言う。用語説明メモは、デスクの鈴木規雄の指示のもと、社内の過去の記事のスクラップ等からの情報をそのまま利用したと考えられる。

なんと一九九一年八月に植村に韓国出張を命じた大阪社会部の鈴木デスクが、翌年一月には東京社会部に転勤して、宮沢訪韓の直前の記事の執筆を指揮したのだ。これは書いた記者も別であり、偶然とは考えられない。大阪から東京に拠点を移し、社を挙げて慰安婦キャンぺーンを張った責任者は、明らかに鈴木である。

それだけではない。鈴木は一九九七年の慰安婦特集のときは、大阪社会部長としてその原稿をチエックする立場にあった。若宮啓文政治部長は「吉田清治の証言は虚偽だ」という訂正を出すべきだと主張したが、清田外報部長と鈴木部長が握りつぶして「真偽は確認できない」といった曖昧な記事になった。

その後、鈴木は東京社会部長になり、大阪本社の編集局長になった。つまり慰安婦問題は、植村個人の誤報ではなく、朝日新聞の幹部が企画し、社を挙げて実行したキャンべーンであり、これは朝日の構造問題なのだ。それがこの問題が嘘とわかってから、二十年以上も隠蔽された原因である。

左翼的な出世主義

鈴木規雄は一九四七年生まれの団塊の世代である。早稲田大学を卒業して朝日新聞社に入社し、大阪社会部の記者として活躍し、社内では「規さん」と呼ばれて親しまれた。蜷川京都府知事や黒田大阪府知事などの革新自治体が誕生したー九七〇年代には、朝日新聞として彼らを支援するキヤンペーンも張った。

新聞社にはデスクから編集幹部などになる行政職コースと、編集委員や論説委員になる専門職コースがあるが、行政職が本流である。鈴木の歩んだキャリアは本流中の本流だった。 彼が二〇〇六年に死去したとき、ある記者は彼が大阪本社の編集局長だったときの思い出をこう書いている。

個人情報保護法をめぐる論議がふっとうしていたころ、規さんが大阪朝日の勉強会に呼んで下さったことがあった。そのうちあわせのため夜十一時半に編集局に電話した。 「こんな遅い時間に編集幹部がいらっしゃるんですか」

「何言ってるんだ。毎日ですよ。十二時前に局をはなれたことはないよ。一字一句川柳にいたるまで全部目を通すんだから」

それが彼の憤然とするような答えだった。

勉強会の帰路にたつとき、はにかんだような表情で一冊の本を下さった。赤報隊を名乗る集団の凶弾にたおれた小尻.記者のお母さんの句集だった。

鈴木が取り組んだのは、一九八七年に阪神支局の小尻記者がテロリストに殺された事件をきっかけに朝日が始めた、市民の「もの言う自由」の現状を検証する長期連載企面「『みる・き<・はなす』はいま」だった。彼は記者、デスク、部長として十五年間、このキャンペーンを続けた。

彼とともに慰安婦キャンぺーンを張った大阪本社論説委員が、北畠清泰だった。彼は一九九ニ年一月二十三日のコラム「窓」では、吉田清治の「国家権力が警察を使い、植民地の女性を絶対に逃げられない状態で誘拐し、戦場に運び、一年ニ年と監禁し、集団強姦し、そして日本軍が退却する時には載場に放置した」という話を紹介し、「知りたくない、信じたくないことがある。だが、その思いと格闘しないことには、歴史は残せない」という名言を残 した。

元同僚によると、北畠は一九八八年ごろから吉田清治と電話で連絡し、自分の嘘がばれることを恐れる吉田を説得していたという。さらに一九九六年の社説では「国費を支出するという枠組みを、解決への一歩とすることが、現実的な道だと思う」と主張している。 慰安婦報道の中心になった鈴木規雄(大阪社会部長→東京社会部長→大阪編集局長)、北為清泰(大阪企画報道室長→大阪論説副主幹)、清田治史 (外報部長→東京編集局次長→西部本社代表) などのポストは社会部の本流で、社論を決める立場である。彼らが方針を決めると、それが編集の基準になり、記者の書く原稿もそれにもとづいて採択される。

記者にとって自分の原稿が記事になることは生命線であり、なるべく大きな扱いにしてもらうことが出世の条件である。つまり新聞記事は言論であると同時に、記者にとっては業績評価の基準なのだ。メディアでは普通の企業とは違って、人間関係の調整しかできない人が出世することはない。ジャーナリストの仕事は言論なので、その内容が社の方針にふさわしくない人は、幹部になることはできない。

特に新聞社の地方支局は多く、記者の半分以上は支局勤務なので、社の方針に沿わない記事を書く記者は地方支局に飛ばされ、表現の場を奪われてしまう。鈴木のような左翼的な幹部が社論を決めているときは、リベラルな正義感に沿った記事を書く記者が出世し、彼らの記事が社内の雰囲気を決めるのだ。

「角度をつける」報道

朝日新聞の第三者委員会の報告書は、事務局である朝日新聞の意向が強く反映され、全体としてはあまり目新しい指摘はないが、おもしろいのは最後につけられた「個別意見」だ。

岡本行夫は次のように考えている。

当委員会のヒアリングを含め、何人もの朝日社員から「角度をつける」という言葉を聞いた。「事実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新閒としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」と。事実だけでは記事にならないという認識に驚いた。だから出来事には朝日新聞の方向性に沿うように「角度」がつけられて報道される。慰安婦だけではない。原発、防衛、日米安保、集団的自衛権、秘密保護、増税、等々。

これは朝日の特異な社風である(NHKで「角度をつける」という言葉は一度も聞’いた事とがない)。記事を書くときに何らかの仮説を立てること自体は悪くないが、朝日の場合はそれが事実と違っていても訂正せず、一つの社論に向けて事実を集め、角度をつける。このような「キヤンぺーン体質」は、北岡も指摘している。

この原因は単純な商業主義というより、官僚的な前例主義が出世主義とあいまったもので、それが問題の是正を遅らせたのではないか。報告書は、検証記事ができるまでの経緯でも経営陣がこう心配していたと書いている。

おわびをするとこの問題を放置してきた歴代の人達についても責任を問うことになってしまうのではないか、あるいは今朝日新聞にいる人違が責任をとらなければならないのか、謝罪することで朝日新閒の記事について「ねつ造」と批判している勢力を「やはリ慰安婦報道全体がねつ造だった」とエス力レートさせてしまう恐れがある。

このように彼らが意識していたのは、自分や先輩の責任問題であり、「朝日を批判している勢力」である。検証記事のあと木村が社内に出したといわれるメールでも、彼は「偏狭なナショナリズムを鼓舞して韓国や中国への敵意をあおる彼らと、歴史の負の部分を直視したうえで互いを尊重し、アジアの近隣諸国との信頼関係を築こうとする私たちと、どちらが国益にかなうアプローチなのか」という。

彼は「偏狭なナショナリズム」を批判しているが、これは偏狭ではないナショナリズムがあるという意味ではなく、ナショナリズム=偏狭という意味だろう。彼はもと政治部の自民党担当記者だから保守派だが、社内向けには「進歩的」な思想を表明しないと出世できな い。今回の慰安婦報道でも、安倍政権と取引する一方で「偏狭なナショナリズム」を排撃する狡猾さがないと、社長にはなれないのだろう。

「社内野党」が政権を乗っ取った

社員の多くが指摘するのは、朝日新聞の官僚主義である。官僚的というのは必ずしも悪いことではなく、大きな組織は官僚が合理的に運営する必要がある。しかし朝日新聞の場合は、それが特殊な形をとっている。営業的に新聞を売るときに役に立つのは、社会面の事件•事故のおもしろい記事だが、大事な問題ではない。これに対して政治部や経済部の記事は大事だが、地味でおもしろくない。

これは日本の新聞に特有の現象で、たとえば高級紙として知られるニユーヨーク・タイムズの発行部数はニ〇〇万部ぐらいで、ウォール•ストリートジャーナルなども同じぐらいだ。これに対して朝日新聞は七〇〇万部、読売新聞は九〇〇万部だが、人口比でるとニユーヨーク・タイムズが1パーセント未満なのに対して、朝日新聞は七パーセントと世界的に見ても圧倒的に高い。このため高級紙と大衆紙の棲み分けができず、1つの紙面に報道と娯楽が同居しているのだ。

記者の動機も、社会部と政治部•経済部では違う。社会部はとにかく早く派手に大きな記事を書くことが出世の条件だが、政治部•経済部では政府や企業から重要な情報を得ることが大事で、ときには情報を抑えることが出世の条件になる。NHKの海老沢勝ニ元会長も「抑える記者」だった。

つまり「反権力」の社会部と「権力の番犬」である政治部•経済部が一つの組織に同居し、紙面でそれを使い分けている。たとえば政治家の政治活動は政治部が報道するが、汚職で逮捕されると社会部が報道する。企業の業績は経済部が報道するが、不良品などのスキャンダルは社会部が報道する。

このような使い分けは朝日だけではないが、朝日は両者の落差が最大である。朝日新聞社の経営者は権力者だから、反権力の社会部出身者がなることはなじまない。朝日新聞の社長は、政治部と経済部が交代で社長になってきた。今度の渡辺社長は、朝日の歴史上二人目の社会部出身である。

逆にいうと、社会部は決して権力を取らない(責任をもたない)という前提で、理想論をいうことが仕事になる。彼らはサツ回りから労働問題まで担当する「何でも屋」で、専門分野がないが、どの分野でもスキャンダルとして「角度をつける」習性がある。

今回の経緯を見て感じるのは、このようなニ極化が先鋭化し、「社内野党」である社会部が経営を乘っ取ったという印象だ。慰安婦報道の「主犯」だった清田治史が役員になり、国家賠償を求める社論を主張し続けたことはその一例である。

このように貴任をもつ「与党」と文句をいう「野党」が二極化する現象は、政治だけでなく日本社会に遍在する。問題は野党が存在することではなく、それが一度も責任を取らない「万年野党」になっていることだ。他方で与党的な立場の政治部は、政策に興味がなく、政局の記事ばかり書いている。

碩直化した人事システム

慰安婦報道も吉田調書も、反日とか左翼とかいうイデオロギーの問題ではなく、朝日新聞の組織としての体質に原因がある。その背景にあるのは、抜きがたいエリート意識だ。序列意識が社内でも強く、本流と傍流の差が大きい。「キャリア」の本社採用と「ノンキャリ」の地方採用はまったく別で、地方採用の記者が本社に上がることはまずない。今度の渡辺雅隆社長は初の地方採用出身だが、もとは木村社長が「院政」を敷こうとして引き上げた人だ。

政治部•経済部•社会部の三部が本流で、学芸部や科学部などは傍流、政治部の自民党宏池会担当は本流で野党担当は傍流——といった序列が、あらゆる階層ではっきりしている。今でも東京本社と大阪本社の人事交流がほとんどないため、西日本が初任地の記者は東京本社に「上がる」可能性がほとんどない。

このような硬直した人事システムのために、社員の人事への執着が強い。「読売の記者が三人寄ると事件の話、毎日の記者は給料の話、朝日の記者は人事の話」という業界ジョークがあるそうだ。この点は、霞が関の官僚と似ている。どの部署に配属されるかで、仕事の中身がほとんど決まってしまうからだ。

こういうサラリーマン根性は朝日に特有のものではなく、多かれ少なかれ日本の会社にはあるが、それが報道に反映されると多くの国民(場合によっては世界)に影響を及ぼす。普通のメディアでは、良くも悪くもそういうバイアスが出ないようにチエックするシステムができているが、朝日では昔は本多勝一のようなスター記者は別格の扱いを受け、極左的な記事を書いても通る傾向があったという。

このような状態を是正しようという意識は九〇年代から出てきたようだが、「リベラル」な社風が邪魔して、読売のように上司が現場の記者に指示できない。特に大阪社会部は「モンロー主義」で慰安婦問題に執着が強く、東京本社が軌道修正しようとしてもできないという。こういう意思決定の混乱が大誤報の原因だ。

P.85~91

戦争は新聞の「キラーコンテンツ」

海軍だけでなく陸軍も、日米戦争に勝てないことは知っていた。それなのに満州事変などで既成事実を積み上げて「空気」を作り出した主犯は陸軍だが、近衛文麿などの政治家はそれに抵抗できず、日中戦争以降はむしろ軍より強硬になった。そういう「空気」を増殖させた共犯は新聞である。朝日新聞は、

〔満州事変の始まった〕昭和六年以前と以後の朝日新聞には木に竹をついだような矛盾を感じるであろうが、柳条溝の爆発で一挙に準戰畤状態に入るとともに、新聞社はすべて沈黙を余儀なくされた。(『朝日新閒70年小史)

と書いているが、これは嘘である。陸軍が記事差止事項を新聞社に配布して本格的な検閲を開始したのは一九三七(昭和十二)年で、それまでは新聞紙法はあったが、その運用は警察の裁量に任されており、発禁処分はほとんどなかった。なぜなら、ほとんどの新聞が自発的に軍国主義に走ったからだ。

その理由は検閲ではなく、商売だった。日露戦争のとき、戦争をあおって日比谷焼打事件を起こした大阪朝日と東京朝日の部数は合計一八•五万部から五〇万部に、大阪毎日は九• ニ万部からニ七万部に激増した。他方、非戦論を唱えた『万朝報』は一〇万部から八万部に落ち、片山潜や幸德秋水などを追放して軍国主義に転向してから二五万部に増えた。

これが「戦争をあおればあおるほど売れる」という成功体験になり、満州事変のあと新聞は従軍記者の勇ましい記事で埋め尽くされた。最後まで抵抗した大阪朝日も、在郷軍人会の不買運動に屈して軍国主義に転向した。このあと軍部を批判する新聞記者は信濃毎日新聞の桐生悠々ひとりになったが、ここでも不買運動が起きて桐生は1九三三年に辞職し、非戦論をとなえる記者はゼ口になった。

しかし軍部もアメリカに勝てないことは知っていたのに、新聞記者が何も知らなかったはずはない。朝日新聞でも、むのたけじ記者は戦争責任を取って終戦直後に辞職した。しかし (ドイツと違って)日本の新聞社はGHQに解体されず、かつて戦争の旗を振った朝日新聞が、 最近は「原発ゼロ」や「解雇特区」つぶしの旗を振っている。これも商売のためと考えれば、それなりに一貫してはいる。

メディアにとって、戦争は最高のキラーコンテンツである。次ぺージの図1は昭和戦前の各新聞の部数の推移だが、満州事変や日華事変(日中戦争)など、戦争のとき大きく伸びた(太平洋戦争のときは紙が配給制になったので落ちた)。

newspaper issued number

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リベラル」が戦争を主導した

今は朝日も毎日も「平和主義」なので過ちは繰り返さない、と思っている人が多いだろうが、大きな間違いである。一九二〇年代にも新聞は反軍だったのだ。一九三〇年のロンドン軍縮条約で日本の若概全権大使が軍縮案を受諾して帰国したとき、新聞はそろって「全権帰朝に際し今回の如く盛に歓迎せられる事蓋し稀有なるベし」と軍縮を歓迎した。

しかしその批准の過程では、論調がわかれ始めた。大阪朝日や読売は軍縮派だったが、東京日日(毎日の前身)は徐々に海軍寄りに立場を変えた。翌年、満州事変が起こると、各が は多くの特派員を派遣して号外を出し、戦争報道を競った。東京朝日も主筆の緒方竹虎の指導のもと「事変容認•満蒙独立」に舵を切り、最後まで残った大阪朝日も反軍派が処分されて容認派に転向した。

このとき東京朝日の主導権を握ったのは、緒方や笠信太郎などの「リベラル」な革新派だった。これは岸信介などの革新官僚と連携して日本を国家社会主義にしようとする人々で、彼らが満州国や日中戦争の中心だった。軍のなかでも、東條英機を始めとする統制派は計画経済を志向しており、緒方はのちに閣僚にもなって戦待体制に協力した。

だから平時に新聞が反軍的なのは普通である。反政府的な論調のほうが人気があるからだ。そして戦争が始まるとナショナリズム一色になるのも普通だ。あのニユーヨーク・夕イムズでさえ、「イラクは大量破壊兵器をもっている」という「スクープ」を飛ばして、開戦に賛成の論陣を張った(のちに誤報と判明)。

朝日新聞は敗戦の翌日から「平和主義」に転向したが、それは戦争に賛成したとき何の信念もなかったからだ。今の反原発も反秘密保護法も、彼らの「平時モード」としては普通だが何の論理的根拠もないので、「有事」になったらコロッと変わるだろう。特に緒方や笠のような「リペラル」が危ない。それは(国家)社会主義の別名だからである。

今後、尖閣で軍事衝突が起こったとき、もっとも懸念されるのは、マスコミが大きな声で報復を叫ぶことだ。それを煽動するおそれがもっとも強いのは、朝日新聞である。ニ〇一〇年十一月六日の朝日社説は、尖閣諸島の衝突事^のビデオが流出した事件についてこう書いている。

流出したビデオを単なる操作資料と考えるのは誤リだ。その取リ扱いは、日中外交や内政の行方を左右しかねない高度に政治的な案件である。それが政府の意に反し、誰でも容易に視聴できる形でネットに流れたことには、驚くほかない。[中略〕仮に非公開の方針に批判的な捜査機関の何者かが流出させたのだとしたら、政府や国会の意思に反する行為であリ、許されない。

この映像は「特定管理秘密」に指定されていなかったにもかかわらず、朝日新聞は機密を漏洩した者(当時は不明)の処罰を求めている。それは当時の菅政権がこれを激しく非難したからだ。このビデオは彼らの政治決着の誤りを暴露し、民主党政権の(すでに落ちていた)支持率はさらに落ちた。民主党を支持する朝日新聞は、ビデオを隠蔽したかったのだろう。 要するに、朝日新聞には一貫した原則も論理もないのだ。一貫しているのは、感情的世論に迎合しようという商業主義である。このように部数を増やすために戦争をあおった新聞が、日本を戦争に導いたのだ。

7/19現代ビジネス 長谷川幸洋『プラカードを掲げるぐらいなら、議員辞職せよ 国民を裏切ったのは 政府ではなくお粗末な野党だ』について

本記事を書いたら左翼と思しき人から脅迫が来たとのこと。さすが暴力を肯定する連中のことだけあります。長谷川氏は左で有名な東京・中日新聞に属していますが、正論だから載せないわけにはいかないでしょう。最終的には数で決着するのが民主主義の基本。採決拒否したら議員報酬をカットせよ。民間企業だったら一種の職場放棄で懲戒処分対象になるのでは。我々国民が選んだ選良という事になっていますが、レベルが低すぎます。こういった政党に属する議員を選んだ国民に猛省を促したい。またいつも言ってますように、議会は通年開催すべきです。選挙期間だけ外すようにして議員の仕事である討論をして法案成立をスピードアップした方が良いと思います。

本人のtwitterを紹介します。『「採決を拒否した野党議員は辞職せよ」というコラムを書いたら、左巻きの人たちはネットで「長谷川を東京新聞から追放しろ」とか合唱してます。「意見が違う人間は問答無用で抹殺すべし」というのが、まさに左翼のDNA。ロジックで反論してくる人は皆無。実に興味深い。またネタができた(笑)』

またfacebookから5月ですが、今度の集団的自衛権に対する賛成・反対率を比較したものがあります。各社でこれだけバラツキが出るという事は、反対が多い新聞は反対の論調を展開し、刷り込みを図ったと考えられます。長谷川氏の言うように論理でなく、センセーショナルな決め付ではなかったかと推測します。朝日・毎日が反対が多いのは頷けますね。

the rights of collective defense

 

 

 

 

 

 

 

記事

「採決拒否」に国会議員の資格なし

安全保障関連法案の採決で議会制民主主義を踏みにじったのは、だれなのか。左派系マスコミは政府与党であるかのように報じているが、そうではない。採決を欠席した野党である。お粗末な野党のおかげで、政局の潮目はまた変わった。

7月15日の衆院特別委員会室は、まるで街頭デモのようだった。民主党議員はプラカードを掲げて委員長席を取り囲み「反対、反対」と大声を張り上げた。維新の党の議員は自分たちが提出した対案を否決されると、さっさと退席した。

翌16日の本会議では民主、維新、共産、生活、社民の野党5党がそろって採決を欠席した。ここに野党の未熟さが如実に表れている。彼らは「採決を拒否する」という行為が、いったい何を意味しているか、分かっているのだろうか。

議会制民主主義の下で、国民が国会議員を選ぶのは自分たちに代わって国会で法案を審議し、最終的に採決してもらうためだ。なかでも採決はもっとも重要な国会議員の仕事である。それをサボタージュするのは、自分を選んでくれた「国民に対する裏切り」にほかならない。

野党議員たちは「自分が議員でいられるのは、国民が自分に1票を投じてくれたからだ」という議会制民主主義の根本原理を無視している。自分の選挙では国民に投票を呼びかけながら、いざ国会で国民に代わって投票しなければならないときに、投票するのを拒否したのである。

国民はそんな議員に仕事を続けてもらいたいと思うだろうか。私はまったく思わない。ずばり言えば、採決を拒否した野党議員は国会議員である資格がない。採決に応じないなら、辞職すべきである。もっとも肝心なときに、国民の代理人たる役割を果たしていないからだ。

なぜ「議員辞職」をしなかったのか

野党議員は採決拒否戦術ではなく、潔くそろって全員が「国会議員を辞職する」という戦術を考えなかったのか。野党がそこまで腹をくくって抵抗したなら、もしかすると局面は変わったかもしれない。採決に応じない代わりに、国会議員を辞職する。それは議会制民主主義の原理に沿った最大限の抵抗である。

だが、野党は腹を決めるどころか、そんな抵抗戦術などチラとも頭をかすめなかったに違いない。彼らは自分たちの議員バッジと既得権益は絶対に守ろうとする。それでいながら、仕事は放棄したのだ。所詮は事前に決められた役割分担に応じて、国会で安っぽい三文芝居を演じただけだ。

ある女性の野党議員は「私の祖父は戦争で死んだ」と涙混じりにカメラの前で訴えてみせた。テレビドラマさながらのお涙ちょうだい芝居を見せられた国民はシラケかえったに違いない。

今回の出来事は民主主義原理の根本を問うている。そんな本質を見極めないで「強行採決の暴挙」などと報じている左派系マスコミも、まったくトンチンカンとしか言いようがない。記者や論説委員は、採決欠席こそが民主主義に対する最大の暴挙だったと思わないのか。

採決欠席を批判しないのは、国民が選挙で棄権するのを容認するのと同じである。選挙で国民に投票を呼びかけておきながら、国会採決で議員が投票を拒否しても批判しないマスコミは、二重基準どころか完全に思考が停止している。

そういえば、同じ左派系マスコミは昨年の解散総選挙でも「解散に大義はない」と批判していた。国民に選択権が委ねられた選挙こそが民主主義の根幹と理解していなかった。今回も頭の中身、発想はまったく同じである。

彼らも野党と同じく先に反対ありきで「どうせ負けるなら選挙や採決などどうでもいい」と本心で思っているのだ。左派系マスコミとは、その程度なのである。

維新の党にもがっかり

民主党や共産党には最初から期待していないが、がっかりさせられたのは維新の党だ。彼らは自分たちの対案が否決されると、そそくさと委員会室から出て行ってしまった。いったい何なのか、その態度は。

まるで自分の言い分が通らなくて、床にひっくり返っている子供である。維新の党には多少、期待もしていたが、今回の対応は情けないというほかない。

民主党は「次は徴兵制だ」と煽った。集団的自衛権を容認した日米安保条約の下、有事で米軍の支援をあてにできるからこそ、日本は軽武装の自衛隊で済んでいる。もしも個別的自衛権だけで国を守ろうとすれば、米軍は頼りにできないのだから、はるかに重武装の軍事国家にならざるをえない。その先にあるのが、徴兵制である。

スイスはどの国とも同盟を結ばず、自前の軍事力に頼っているからこそ徴兵制なのだ。自分たちのロジックこそが徴兵制につながるのに、ねじ曲げた空想論を展開するだけの民主党に明日はない。

まともな政策論を展開できずに「徴兵制の復活」とか「戦争法案」とレッテルを貼る民主、共産、生活、社民の議論と行動は、いまや国民感覚から離れて完全に上滑り状態に陥ってしまった。この調子だと、参院審議も衆院以上に空虚なカブキ化が進むだろう。

本当の政策論議がなく、同じ三文芝居のやりとりが繰り返されるだけだから、やがてテレビも視聴率がとれずに注目しなくなる。加えて、本会議採決と同じ日に新国立競技場の計画見直しが明らかになった。遅きに失したとはいえ、これも政権にはプラス材料である。

あえて政府与党に注文をつけるなら、年金情報漏洩問題のケリをさっさとつけてもらいたい。日本年金機構と厚生労働省担当者に対する厳重処分を急ぐべきだ。真相解明はそれからである。

私はつい2週間前のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44000)で「安倍政権の危機」を指摘したばかりだ。ところが、民主主義の原理原則を踏まえない野党戦術の誤りと、新国立競技場問題をめぐる政府与党の方針転換をきっかけに、また流れは変わってしまった。

目先の内閣支持率が多少、下がることはあっても、たいしたことはない。こんな野党に支持が集まるはずはないからだ国民は賢明である。

 

7/17日経ビジネスオンライン 北村豊『12年連続「離婚」増、急増要因は所得税逃れ 酷暑の喧嘩、番号制限…中国的離婚最新事情』について

「上に政策あれば下に対策あり(上有政策、下有対策)」だと思います。証明書だって偽造が当たり前の国ですから。いつも言ってますように、騙されるのが悪いというお国柄です。でもこれは合法的なやり方でましなやり方です。

中国は男女平等で働くのが当たり前、転勤も当たり前、働く場所も中国全土ですから、小生が中国で勤務していた時に不倫はごく自然と言う感じでした。そういう意味ではアメリカ人に近いのかも。彼らが孔孟の末裔とは思えません。

日本の離婚率は1.77%とのこと。日本でも以前より離婚に対して社会の許容度は上がっていると思います。

http://woman.mynavi.jp/article/150202-160/

中国は男女とも主張する民族で、わざと女性は大声を挙げて男性を詰ります。一人っ子政策で女性が少ないという影響もあると思います。中国では宗族を継げる(お墓を守れるのは)のは男となっていますので男を生みたがります。ですから男女比が極端にアンバランスになります。女性が強くなり、共産党の政策を変えることができれば良いのでしょうけど、共産党は人民は収奪対象と思っていますので期待するだけ無駄でしょう。

記事

2015年6月10日、中国政府“民政部”は『“2014年社会服務発展統計公報(2014年社会サービス発展統計官報)”』を発表した。同統計によれば、2014年に法的手続きを経た離婚件数は363.7万組で、前年比3.9%増、その“粗離婚率”<注1>は2.71%で、前年比0.1%増であった。離婚件数の内訳は、民政部門に届けを出した離婚件数が295.7万組、“法院(裁判所)”が離婚処理を行った件数が67.9万組であった。

<注1>粗離婚率(crude divorce rate)は国連のデータに使用される指標で、人口1000人につき離婚が成立した合計数を使って算出される。

 中国では2003年以来、離婚率が12年連続で年々上昇している。この軌跡を過去8年間の数字で見てみると下表の通りである。

中国の離婚件数と粗離婚率(2007~2014年)

離婚件数 (万組) 届け出による 離婚件数 (万組) 裁判所の処理による離婚件数 (万組) 粗離婚率 (‰)
2007 209.8 145.7 64.1 1.59
2008 226.9 160.9 65.9 1.71
2009 246.8 180.2 66.6 1.85
2010 267.8 201.0 66.8 2.00
2011 287.4 220.7 66.7 2.13
2012 310.4 242.3 68.1 2.29
2013 350.0 281.5 68.5 2.58
2014 363.7 295.7 67.9 2.67

(出所)中国・民政部統計データにより筆者作成

2013年、離婚急増の要因は?

 表を見れば分かるように、離婚件数は2007年から2014年までの8年間に73%も増大している。届け出による離婚件数は何と103%の増大で倍増している。一方の裁判所の処理による離婚件数は、最大68.5万組、最低64.1万組と60万組台で推移しているが、これは裁判所の処理能力によるもので、大きく変動することはないのだろう。ちなみに、2013年における日本の離婚件数は23万1383組で、粗離婚率は1.80%であった。

 離婚件数が前年比で最も増大したのは2013年であった。2012年に310.4万組であった離婚件数は、2013年には350.0万組となり、約40万件増えて12.8%も増大した。これを北京市の数字で見てみると、北京市の離婚件数は、2010年:3万2595組、2011年:3万2999組、2012年:3万8243組と推移したが、2013年には5万4536組と前年比42.6%も増大したのだった。なお、2014年は5万5944組で、前年比2.5%の微増にとどまった。それでは、2013年に離婚件数が急増した理由は何だったのか。

2013年2月20日、中国政府“国務院”の“常務会議”は暴騰する不動産市場の抑制強化を目的とした5カ条からなる政策を決定し、全国の大中都市に対して不動産価格の安定を図るよう指示を出した。この5カ条の政策を「新国五条」と呼ぶが、その細則の中に「個人が住宅を転売して得た所得については、転売収入から住宅原価と合理的な費用を差し引いた金額に対して20%の税率で個人所得税を徴収する」という規定があった。

「住宅転売に所得税20%」に偽装で対抗

 これに驚いたのが投資目的で2軒目の住宅を所有する夫婦であった。投資目的の住宅を転売すれば利益に対して20%の個人所得税を徴収される。新国五条だかなんだか知らないが、勝手に決めた政策で税金を徴収されるのは面白くない。何か良い方策はないものか。そこで考えたのが、夫婦が形式的に離婚するという方策だった。

 2011年8月13日から施行された法規定の『最高人民法院による「中華人民共和国婚姻法」適用に関する若干問題の解釈(三)』は、従来は非常に面倒だった離婚の際の財産分与を容易にしていた。また、これに加えて、2003年10月1日から施行された「婚姻登記条例」によって離婚手続が大幅に簡素化された。当該条例によって、“単位(勤務先)”や“居民委員会(住民委員会=町内会)の“介紹信(紹介状)”なしで、必要書類さえそろっていれば、従来必要だった1カ月の審査期間なしで、離婚できるようになった。

 この規定と条例を利用して偽装離婚すれば、個人所得税を逃れることが可能となる。すなわち、夫婦は地元の“民政局”の「婚姻登記所」に離婚届を提出し、正式に離婚する。その際、協議により夫婦の財産である2軒の住宅を分配して、それぞれ1軒の住宅を所有することにする。そうすれば、所有する住宅は元の夫が1軒、元の妻が1軒となり、たとえどちらか1軒を売ったとしても転売益にかかる20%の所得税は徴収されないことになる。こうした前提の下で、夫婦が共謀して偽装離婚するのだから、2013年当時は、離婚する夫婦が両親や子供を連れて楽しげに婚姻登記所を訪れ、満面の笑みをたたえて離婚届を提出するという奇妙な現象が多発したという。

ところで、この2013年の現象について、米国の大学で教鞭を取る中国人の某客員教授は興味深い見解を述べているので、参考まで紹介すると以下の通り。

翌年に復縁、上海で17.4%増

  • 【1】伝統的な中国文化では、婚姻は天が定めたもので、“美満婚姻(めでたい婚姻)”を「“天作之合(天意による結合)”」と形容したし、俗語では「“五百年前結成姻縁(500年前に結ばれた縁組)”」とも言った。暗闇の中で“月下老人(縁結びの神)”が縁のある男女の足首を赤い紐で縛るのが夫婦の縁である。結婚後は、妻が夫に従い、夫は妻をいたわる。妻が親不幸や淫乱、盗み、嫉妬などの大罪を犯した時だけ、夫は妻を離縁することができるというものだった。
  • 【2】しかし、現在の中国人はその大多数が物質的利益を重視しており、結婚をある意味で再分配の機会だと考えている節すらある。結婚式では若い新婚夫婦がひたすら“紅包(祝儀)”のカネを数えているし、20%の所得税の徴収を逃れるという物質的利益のためなら、偽装とはいえ離婚することもいとわない。これは無神論に起因するもので、物質が意識を決定する。このため、人は物質的利益をますます重視するようになる一方で、中国には宗教や信仰がないことも加わって、人には結婚も含めて神聖な物が何も存在しないことになる。

 閑話休題、2015年3月に上海市の民政局が発表した「2014年上海市婚姻登記報告」によれば、上海市では2014年に復縁した夫婦が1万7286組あり、前年比17.4%増大したという。上海市当局は、これらの復縁した夫婦の大部分は3年前の2012年2月に発動された新国五条の細則規定に基づく所得税の納入を嫌って偽装離婚した夫婦で、投資目的の住宅を転売した後に再び婚姻届を提出したものと思われると分析した。我々日本人の感覚から言えば、「住宅の転売収入から住宅原価と合理的な費用を差し引いた金額に対する20%の所得税」を免れるためにわざわざ偽装離婚をするかと思うが、たとえ小額であろうとも意に沿わない税金を納めるくらいなら、偽装離婚してでも逃れた方がよいと考えるのが中国人の真骨頂なのだ。

さて、中国で離婚件数および離婚率が増大しているのは、社会のテンポが速まっているのに加えて、社会観念の変化、“婚外情(不倫)”の増大などに起因していると考えられる。さらに、夫婦関係に亀裂が生じた時、“微信(WeChat)”や“陌陌(momo)”などのSNS(Social Networking Service)が不倫を誘発させる道具となり、婚姻関係の新たな破壊者として機能する可能性が高い。

夏に急増、番号制限も

 7月10日付の中国メディアは、夏季になって全国各地で離婚が急増していると一斉に報じた。当該報道によれば、離婚急増の理由は以下の通り。

  • (1)夏季の酷暑に人々はいら立ち、土・日曜日に家でけんかをしたら、月曜日の朝一番で民生局へ離婚手続きにやって来る。
  • (2)高校や大学の入学試験の合格者名が発表された後、子供の学習意欲を妨げないように我慢していた親たちはほっと一息つき、密かに離婚する。
  • (3)希望校の通学区内に住宅を購入するため、一部の親は9月の新学期前に離婚する。

 上記(3)は、上述した新国五条に基づき各地方政府によって発令された“限購令”の規制を免れるためという意味だろう。すなわち、“限購令”とは、1つの家庭が購入可能な住宅を1軒に制限することを骨子とした法令だが、最近は徐々に解除される方向にある。“限購令”が依然として解除されていない地域であれば、子供を希望校へ入学させようと、親が離婚して当該校の通学区内に住宅を購入するのは有り得ないことではない。

 何はともあれ、夏季になって各地の民政局には離婚届を提出しようとする夫婦が殺到するようになった。しかし、だからと言って、提出された離婚届を受け付ける民政局婚姻登記所の窓口が増える訳ではない。必然的に窓口には離婚届を提出しようとする夫婦の列が出来るが、1日に処理可能な件数には限りが有る。江蘇省“南京市”や広東省“広州市”などの大都市では、離婚届を提出しようとする夫婦には1日に処理可能な分だけ整理番号が配られるようになった。早朝に婚姻登記所へ出向けば整理番号はもらえるが、少しでも遅くなれば整理番号はもらえない。メディアはこうした整理番号方式を“限号(番号制限)”と呼び、「遂に離婚も番号制限」という見出しで夏季の離婚増大を報じた。

一方、7月10日付の北京市の朝刊紙「北京晨報」は、毎年“高考(大学入試)”<注2>が終わった6月から9月の間に離婚する夫婦が増大し、ちょっとした離婚のピークを形成していると報じた。これは上述した離婚急増理由のうちの(2)に該当するものだが、北京晨報は他紙の報道を引用して、“高考”終了後に急増する離婚の実態を次のように示した。

<注2>“高考”は“全国統一高等院校招生統一考試”の略。“高等院校”は高等教育機関の総称。

  1. 湖北省武漢市の朝刊紙「武漢晨報」  統計数字を見て記者は、2009年以来、遼寧省、湖南省、青海省、天津市、重慶市、山東省、浙江省、河南省などの地域では、毎年“高考”終了後の20日間は、その前の20日間に比べて、“法院(裁判所)”が受理する離婚の案件数は比較的増大する趨勢にある。
  2. 湖南省の夕刊紙「三湘都市報」  “長沙市”の“五城区”では、“高考”が行われていた1週間に247組の夫婦が離婚したが、“高考”が終了後の1週間は493組の夫婦が離婚し、離婚件数は倍増した。離婚原因の大部分は「感情の不調和であり、もう子供のために我慢する必要がなくなった」というものだった。
  3. 黒龍江省の夕刊紙「生活報」  若い夫婦の離婚が衝動的なのと比べて、これら子供に対する責任感から結婚生活を継続して来た中年夫婦の離婚はその大多数が非常に冷静で、決意が固いものである。

中国の離婚率、上昇は止まらず

 昨今の日本では夫の定年退職後に妻から要求して離婚する夫婦が増えていると言われている。これは年代的に夫の収入に依存して生活してきた家庭婦人が多いことに起因している。彼女たちは子供の成人で親としての責任を果たし、夫の定年退職で妻としての責任を果たしたことを契機に、自立した自由な生活を求めて離婚を選択しているものと思われる。一方、中国では基本的に夫婦は共働きで、各々収入を得ている上に、夫婦別姓であるから、離婚しても社会生活に支障を来たすことはほとんどない。

 従い、主として若い夫婦の衝動的な離婚は別として、子供が大学に合格したことを確認し、親としての責任を果たした時点で、離婚する夫婦が多いことは納得できる。これに対して、所得税の徴収を逃れるために偽装離婚する夫婦が多いことは、“向銭看(拝金主義)”<注3>の中国人を象徴している。もっとも、日本にも生活保護を受けるために偽装離婚して、夫婦がそれぞれ生活保護費を受けている不埒な輩も多数いるようだから、中国人だけの特性とは言い難い。

<注3>“向銭看”は“向前看(前を見る)”と同じ発音で、拝金主義を揶揄した造語。

 筆者の友人の中国人にも離婚経験者が多数いるが、総じて言えることは、彼らが離婚をそれほど重いものと感じておらず、気持ちが合わないパートナーとはさっさと分かれた方が精神的負担に悩まなくて済むと気楽に考えていることである。社会がますます複雑化する中で、ただでさえも自己主張の強い中国人が夫婦間で軋轢を感じる度合は今以上に増大し、中国の離婚件数と粗離婚率は今後も引き続き上昇してゆくものと思われる。

7/16北野幸伯メルマガ『世界を変えるイラン核交渉最終合意ー日本にとっては?』について

直感でイランと合意して制裁解除に行くのは日本にとって良いことだろうと思っていました。アメリカのリバランス政策が現実のものになる可能性があるからです。口先男のオバマがやった数少ない外交得点です。キューバとの国交回復と言っても相手が小さすぎて世界史的な影響はありません。これで、オバマが本格的に中国と対峙すれば良いのですが。中国の横暴を許せば、ナチスの台頭を許すのと同じになります。宥和政策は平和をもたらさないというのは歴史の教える所です。

日本も集団的自衛権の行使が9月にはできるようになります。中国の南シナ海の内海化を防ぐことを日米、ベトナム、フィリピン、できれば印豪とも手を組んでやっていくようにしないと。中国の戦略は同盟・準同盟の分断化です。多国間で協調して中国の覇権への野望を挫かねばなりません。東シナ海も軍事基地転用できる石油掘削リグを造っているとのこと。中国の野望は留まるところを知りません。

日本は巡視船や艦船・潜水艦の供与、操舵、戦術の教育とかベトナム、フィリピンにできるはずです。国際秩序を乱し、人権を抑圧する暴虐国家の膨張を許してはなりません。安保法案に反対した民主党の議員に聞きたいです。「あなたたちは中国の拡張主義をどう見ているのですか?日本はどうやって中国の侵略を防いだら良いのですか?」と。日本のメデイアも民主党と同じく、批判するだけで現状分析から解を得ることはいつも通りありません。無責任です。でも新聞・TVの報道を鵜呑みにして信じてしまうのは危険と言うのを日本人自身が気づかないと。

記事

「歴史的」といえるできごとがありました。

<イラン核交渉>最終合意 ウラン濃縮制限、経済制裁を解除

毎日新聞 7月14日(火)22時1分配信

<【ウィーン和田浩明、田中龍士、坂口裕彦】イラン核問題の包括的解決を目指し、ウィーンで交渉を続けてきた6カ国(米英仏露中独)とイランは14日、「包括的共同行動計画」で最終合意した。

イランのウラン濃縮能力を大幅に制限し、厳しい監視下に置くことで核武装への道を閉ざす一方、対イラン制裁を解除する。2002年にイランの秘密核開発計画が発覚してから13年。粘り強い国際的な外交努力によって、核拡散の可能性を減じる歴史的な合意となった。>

・イランの核開発を厳しい監視下に置く

・核兵器開発の道を閉ざす

・見返りに制裁を解除する

だそうです。

なぜこれが「歴史的事件」なのでしょうか?

▼「イラン問題」は「核兵器開発問題」にあらず

これ、新しい読者さんにとっては仰天情報ですね。

「トンデモ!」「陰謀論!」という声が聞こえてきそう。

しかし、これ本当です。

証拠をお見せしましょう。

<〈イラン核〉米が機密報告の一部公表 「脅威」を下方修正

[ワシントン笠原敏彦]マコネル米国家情報長官は3日、イラン核開発に関する最新の 機密報告書「国家情報評価」(NIE)の一部を公表し、イランが03年秋に核兵器開発計画を停止させたとの

分析結果を明らかにした。>(毎日新聞2007年12月4日 )

どうですか、これ?

最初に引用した記事によると、イランの核兵器開発計画が発覚したのは「02年」。

ところが、翌03年には、「核兵器開発計画を停止した」と、アメリカ自体が認めているのです。

そもそも、イランの「核兵器開発計画があったのか」も怪しいですね。

IAEAの天野事務局長さんだって、こんなことをいっていました。

<イランが核開発目指している証拠ない=IAEA次期事務局長

[ウィーン 3日 ロイター] 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥次期事務局長は3日、イランが核兵器開発能力の取得を目指していることを示す確固たる証拠はみられないとの見解を示した。

ロイターに対して述べた。

天野氏は、イランが核兵器開発能力を持とうとしていると確信しているかとの問いに対し「IAEAの公的文書にはいかなる証拠もみられない」と答えた。>(ロイター2009年7月4日 )

どうですか、これ?

「イランが核兵器開発能力を持とうとしている」「いかなる証拠もみられない」これが6年前のこと。

私が「イラン問題 = 核兵器開発問題にあらず」と書いたことが、「トンデモ」「陰謀論」でないこと、ご理解いただけたことでしょう。

▼「イラン問題」と「石油ガス利権」

イラン問題ではなく、「イラク戦争」の真因について、超重要人物の「衝撃告白」をとりあげます。

<「イラク開戦の動機は石油」=前FRB議長、回顧録で暴露

[ワシントン17日時事]18年間にわたって世界経済のかじ取りを担ったグリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長(81)が17日刊行の回顧録で、二〇〇三年春の米軍によるイラク開戦の動機は石油利権だったと暴露し、ブッシュ政権を慌てさせている。>(2007年9月17日時事通信)

グリーンスパンさんが、「イラク戦争の動機は石油だった」と暴露した。

ちなみに、彼はこの件について、「誰もが知っている事実だ」と語っています。

「イラン核開発問題」がはじまったのは02年のこと。

このとき、ブッシュは、中東の資源大国イラクとイランを、同時にバッシングしていた。

それは、グリーンスパンさんにいわせると、「資源がらみ」なのです。

実際、ブッシュは03年、ロシアの石油利権にも手を出し、プーチンを激怒させています。(=ユコス事件)

ブッシュ(子)政権時代、アメリカは積極的に世界の資源利権確保に動いていた。

これが、「イラン問題」の真因1です。

▼「イラン問題」と「ドル基軸通貨体制」

イラク戦争については、「フセインが原油の決済通貨をドルからユーロにし、ドル体制に挑戦したからだ」という説があります。

これも「トンデモ話」ではなく、新聞にも載っている事実。

例えば06年4月17日付の毎日新聞。

<イラクの旧フセイン政権は〇〇年一一月に石油取引をドルからユーロに転換した。 国連の人道支援「石油と食料の交換」計画もユーロで実施された。 米国は〇三年のイラク戦争後、石油取引をドルに戻した経過がある>

では、イランはどうか?

この国も、フセインと同じ道を進んでいました。イランは07年、原油のドル決済を中止した。

<イラン、原油のドル建て決済を中止[テヘラン 8日]

 イラン学生通信(ISNA)は8日、ノザリ石油相の話として、同国が原油のドル建て決済を完全に中止した、と伝えた。 ISNAはノザリ石油相からの直接の引用を掲載していない。 ある石油関連の当局者は先月、イランの原油の代金決済の「ほぼすべて」はドル以外の通貨で行われていると語っていた。>

(2007年12月10日ロイター)

「石油ガス利権」 と 「ドル基軸通貨体制防衛」おそらくこの二つが、「イラン問題」の本質なのです。しかし、「イランには石油・ガスがたっぷりあるんだよね。それを確保するためにイランをいじめてる」とか、「ドル体制を守るためにイランをバッシングしてる」とはいえない。だから、ありもしない「核兵器開発問題」をでっちあげたのでしょう。実際、NIEが「イランは核兵器開発を03年に停止したよ」と報告してから、実に8年の月日が流れています。

<〈イラン核〉米が機密報告の一部公表 「脅威」を下方修正

[ワシントン笠原敏彦]マコネル米国家情報長官は3日、イラン核開発に関する最新の 機密報告書「国家情報評価」(NIE)の一部を公表し、イランが03年秋に核兵器開発計画を停止させたとの

分析結果を明らかにした。〉(毎日新聞2007年12月4日 )

▼なぜアメリカは変わった

「イラン核兵器開発問題」は、アメリカの「いいがかり」だった。では、なぜアメリカは、「いいがかり」をやめたのでしょうか?その理由が、こちら。

<米国が最大の産油国に。世界はどうなる?

THE PAGE 6月18日(木)9時0分配信

 米国がサウジアラビアを抜いて、とうとう世界最大の産油国に躍り出ました。これにはどのような意味があるのでしょうか。 英国の石油大手BPが発表した2014年のエネルギー統計によると、

米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になりました。>

<米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になりました。>

シェール革命で、アメリカは世界一の「産油国」になった。ちなみに、アメリカは09年、ロシアを抜いて世界一の「産ガス国」になっている。つまり、いまやアメリカは、「世界一の産油、産ガス国」「世界一の資源超大国」なのです。要するに「石油・ガス利権」をゲットするためにイランをバッシ

ングする必要がなくなった。それで、もともとなかった「核兵器開発問題」もなくなったのです。

(「ドル体制問題」について。「ドル体制崩壊運動」の中心国は、いまや中国とロシア。この件でイランをバッシングしても問題は解決しないのです。)

アメリカとイランが和解する。

このことは、世界にどんな影響を与えるのでしょうか?

▼捨てられるイスラエル

アメリカは、「資源利権を確保するため」に中東を重視してきました。ところが、自国に石油ガスがたっぷりあるので、「もう中東のことはどうでもいいや」となった。そうなると困るのが、イスラエルです。まわりをイスラム国家群に囲まれた「ユダヤ教国家」イスラエル。アメリカに捨てられる可能性が強まっています。というか既に、アメリカとイスラエル関係は、悪化しつづけている。

たとえばこちら。

<イスラエル首相、米議会で外交政策を批判 確執深まる

朝日新聞デジタル 3月4日(水)10時53分配信

 訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相は3日、米上下両院合同会議で演説し、イランの核開発をめぐって米国など主要6カ国が合意を目指していることについて「非常に悪い取引だ」と批判した。外国首脳が米議会で米国の外交政策にノーを突きつけるのは異例で、米イスラエル間の確執が深まっている。>

安倍総理の「希望の同盟演説」とはえらい違いですね。

もう一国、アメリカと仲が悪くなっているのがサウジアラビア。

「資源確保のために大事な中東」という前提が崩れた。それで、アメリカにとってサウジの重要性は、下がっているのです。

アメリカに見捨てられるイスラエルやサウジは、ロシアや中国に接近することで、危機を乗り切ろうとすることでしょう。

▼アメリカ、強まる「アジアシフト」

オバマが「アジアシフト宣言」をしたのは2011年11月でした。そしてアメリカは今、「中東最大の敵」イランと和解した。これを戦略的に見ると、「中東戦線から離脱する」ということでしょう。アメリカは今まで、大きく三つの地域で戦っていました。(もちろん、米軍が直接戦っているという意味ではありません。)

一つは、もちろん中東です。アフガン、イラクとは実際に戦争した。「イスラム国」を空爆した。シリア、イランとは、「戦争一歩手前」までいった。

二つ目は、「ウクライナ」です。

傀儡ウクライナ政府を使って、ロシアと戦っている。

三つ目は、アジアです。

たとえば、「南シナ海埋め立て問題」。ここでは、中国と戦っている。しかし、シェール革命で中東の重要度が下がった。

残りは、ロシアと中国。

2014年3月のクリミア併合後、アメリカ最大の敵は、もちろんロシアでした。

ところが、2015年3月の「AIIB事件」で流れが変わった。イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、アメリカを裏切って中国主導の「AIIB」に参加した。これで中国の影響力の大きさを自覚したアメリカは、中国を「最大の敵」と定めたのです。

アメリカは今後、中東戦線、ウクライナ戦線で力を抜き、中国との戦いに集中していくものと思われます。

▼米ーイ和解は、なぜ日本にとって「吉報」なのか?

アメリカとイランの和解は、日本とってとてもめでたいできごとです。

今、日本最大の話題は、「安保関連法案」でしょう。反対派の主張は主に、「アメリカの戦争に巻き込まれる!」です。で、「アメリカの戦争に巻き込まれる」とは、具体的「中東戦争」を想定しているのでしょう?

なぜかというと、「北朝鮮」「中国」などとの戦争は、「巻き込まれる」のではなく、「日本自身の戦争」だからです。「集団的自衛権行使容認」「安保関連法案支持」の私自身、「中東に自衛隊が派遣させられる危険性」については、「そのとおりだ」と思っています。

そして、アメリカがはじめそうな「中東戦争」、ナンバー1は、「イランとの戦争」だったのです。日本とイランの関係はこれまでとても良好で、これをぶち壊すことは、日本の国益を大いに損ねるものでした。

ところが、今回の和解で、「アメリカーイラン戦争の可能性」がほとんどなくなった。これは、「安保関連法案反対派」の主張を弱める結果になります。

7/15日経ビジネスオンライン 奥山真司『日本が関わる戦争は将来100%起こる 日本の外交政策:地政学が示す3つの選択肢』について

何ともショッキングな題でしょう。日本が望まなくとも戦争が起きるということです。勿論、第2のオプションである中国の属国になれば別と思うかも知れませんが、米国は裏切ったと感じ、米国が攻めてこないとも限りません。昨日のブログのテーマで明らかなように中国は世界で最大の人権抑圧国家です。というか人権何ていう概念はハナから持ち合わせていない国です。米国を取るか中国を取るか究極の選択を迫られれば、どちらを取るか言わずもがなでしょう。

理想は第3のオプションですが、言うは易く行うは難しです。というか、米国一国ですら安全保障について防備できない(中国潜水艦が米国西岸に潜む可能性もある)時代に来ています。多国間で防衛する時代です。国益の合う国同士が手を結んで戦争を防ぐという事です。国益の判断の要素として「自由、民主主義、基本的人権、法治」といった価値観を共有できる国々と手を結ぶという事です。中国はこの4つ全部ありませんし、韓国も法治国家でないので手を結ぶのは難しいです。

集団的自衛権の話は、お互いに防衛できるところは協力しようというものです。自分だけは守ってもらいたいけど、相手を守るのは嫌というのは臆病者のやることです。集団的自衛権は国連憲章で定められている権利でそもそも「保持しているが行使できない」という論理がおかしいです。

そもそも憲法九条二項は米国が日本無力化を狙って強制的に(これこそforcedではないですか)入れたもので、憲法を議論するのであればその出自も議論しないと。「戦争ができる国」にするというのはおかしな議論で、世界で戦争をしないと明言している国はありません。正当防衛の一種でしょう。戦わねば隷従しか方法がなくなります。それこそ日本を形造ってきました先祖に申し訳ないと思わないのですかね。歴史を鑑にしたら良く分かると思うのですが。

記事

いよいよ本連載も今回で最後になる。日本を取り巻く安全保障環境を地理的な面から地政学的に考えてみたい。

 日本は地政学的に見てどのような位置づけにあるのか――いま一つ分かりづらいと感じている方がいるかもしれない。

 その理由は大きくわけて2つある。一つは地政学、とりわけ古典地政学で使われる「シーパワー」や「ランドパワー」の概念が、現代のわれわれにとって縁遠いものになってしまっているからだ。戦後の特殊な安全保障環境の中で、日本のメディアや教育界が軍事や戦略に関する議論そのものを忌避してきたことが背景にある。

 もう一つは、地政学的なものの見方に、われわれ日本人がいまひとつ慣れていない点にある。地政学的なものの見方は極めて特殊なものだ。とりわけ、帝国主義を源流とする「上から目線」の、スケールの大きいとらえ方に違和感を覚える方がいるだろう。

 ところが、現代のようにグローバル化が進むと、日本は以前よりも大きな視点から対外政策を決定する必要に迫られる。この際の一つのツールになるのが、本連載で紹介してきた地政学なのだ。

 では地政学的な見方をした場合、日本はどのような状況に置かれており、今後どのような対外政策をとっていくべきなのだろうか?

日本は「シーパワー国家」か?

 日本について書かれている地政学本を読むと、「日本はシーパワーを基礎とした海洋国家であり…」という決まり文句で紹介されている。たいていの場合、全く疑いのない前提としてこう書かれる。

 ところが、シーパワー論の聖書である『海上権力史論』の序章でマハンは、ある国が海洋国家・シーパワー国家であるかどうかを判断する基準として、(1)地理的位置、(2)海岸線の形態、(3)領土範囲、(4)人口、(5)国民性、(6)政府の性格という6つの要素を挙げている。

 実際にこの基準を日本に当てはめると、(1)から(4)までの純粋に地理的な部分は確かに「シーパワー」として該当する。しかし、(5)国民性と(6)政府の性格については、日本が「海洋国家」に当てはまるか、疑問符がつく。

 日本のシーパワーの伝統を研究した代表的な論文に、「日本のシーパワー:海洋国家のアイデンティティの悩み」がある。立川京一氏と佐島直子氏が書いたもので、オーストラリア海軍のウェブサイトに掲載されている。ここでは、日本のシーパワーの伝統が、歴史上何度か断絶したことが正確に指摘されている。これを読むと日本が「伝統的な海洋・シーパワー国家」とは言い切れないことが分かる。

 日本の歴史を振り返ると、「シーパワー的な勢力」が確かに存在していた。倭寇や村上水軍はその代表だ。明治から昭和にかけての帝国海軍は、世界トップクラスの海軍力を誇っていた。

 けれどもマハンが示した基準の(5)国民性と(6)政府の性格を考える時、「国家・国民が海軍力を積極的に活用してきた」とは言い切れないのではないか。

 これは戦後になってからも同様だ。確かに戦艦大和の伝統を生かして巨大なタンカーをつくった造船業の強さは「シーパワー神話」になっている。だが、たとえばシーパワー国家の代表格である英国のように、海軍力と海運を「積極的かつ主体的に活用してきた」かと言うと、やはり怪しい。

「シーパワーシステムの一員としての国家」

 ここで重要なことが一つある。それは、現在の国際貿易の世界が、シーパワーをベースとした「システム」から出来上がっている事実だ。

 その分かりやすい例が「グローバル海洋パートナーシップ」というコンセプトだ。米軍の制服トップのマイケル・マレン元統合参謀本部議長が2006年頃から提唱し始めたものだ。簡単に言えば、「世界の海洋システムは、それを使う国々によって維持・管理されるべきだ」ということになる。その究極の前提としてあるのは「そのシステムの土台を支えているのは米海軍だ」という考え方だ。

 実はこれと同じことをマハンも言っていた。もちろん当時の(そして今でも)シーパワーというコンセプトは純粋な「海軍力」を示す。だが、マハンは他の場所で、シーパワーを「一国の海軍力をベースにした、貿易・商業活動を含めた海洋国家としてのグローバルなシステムである」とほのめかしている。

 要するに「シーパワー」は単なる「海軍力」だけでなく、それを積極的に活用したり、さらには巨大な貿易体制を構築したりする「海洋国家」としての性格を指すと言える。この意味で考えると、日本は伝統的な「シーパワー国家」ではないかもしれない。

 ただし(特に戦後の)日本は、米国が敷いた「システム」にうまく乗ることによって発展してきた「シーパワーシステムを構成する一つの国家である」とは言えるだろう。米国のシーパワーのシステムに乗っている」という留保付きではあるが、やはり日本は「シーパワー」国家なのだ。

日本の地理から考える地政学

 ではその日本の「シーパワー」の「シー」の部分はどのような状況になっているのだろうか?

 日本は太平洋の西端、そしてユーラシア大陸の東端(極東)の海に浮かぶ島国だ。人口は減少傾向ではあるが、現在1億2000万人で世界第10位。国土は38万平方キロ。世界で第61位と比較的小さいが、排他的経済水域(EEZ)を含めると447万平方キロとなる。南北は沖ノ鳥島から稚内まで、東西は南鳥島から与那国島まで、なんと世界で第6位の広さを誇る。

 この日本を含むアジアに、世界経済の中心が移りつつある。欧州から米国、そして米国からアジアへと西進してきている。

 この動きについては、マハンがすでに1900年頃から説いていた。興味深いのは、このことが経済データによって本格的に裏付けされたのが、ここ最近であることだ。米国は「政治的なアジアシフト」を長年標榜しながらも、欧州諸国との貿易額の方がアジア諸国との貿易額よりも20世紀を通じて高かった。ところが2003年を境にそれが逆転し、対アジアが対欧州を上回った。それ以降もこの傾向はまったく変わっておらず、現在はその差がますます広がっている。

アジアの端でランドパワーの脅威を阻止

 このアジアにおいて日本は少なくとも戦後70年の間、世界のシーパワーシステムに脅威を及ぼしそうなランドパワー国家の海洋進出を阻止できる位置にあった。

 冷戦時にはソ連と対峙した。ソ連は世界最大の国土面積を誇っていたにもかかわらず、年間を通じて使用できる不凍港は日本海に面したウラジオストック港のみだった。ソ連がここに配備していた太平洋艦隊は、日本の周辺にある「チョークポイント」、つまり宗谷、対馬、津軽の「3海峡」のいずれかを通過しないと外洋に出ることができない。つまり、日本がこれらの海峡を監視していれば、彼らの動きを把握できたのだ。

 冷戦後も、「シーパワーシステムの維持に貢献できる」という日本の地理的状況は変わらない。中国の人民解放軍がここ数十年、驚異的なスピードで軍拡を続けている。この海軍が外洋に出るためには、中国の海岸線の3分の2にわたって覆いかぶさっている日本の周辺のチョークポイント(たとえば宮古海峡)や、その近く(フィリピンと台湾の間のバシー海峡など)を通過せざるを得ない。

つまり日本の地理そのものは変わらないのだが、その意味合いは変わってきている。とくに冷戦中から冷戦後にかけて、その重点が北海道周辺の海から沖縄周辺の南西諸島近海にシフトしている。

 もちろん「北極海航路の開拓が起こす、世界規模の地殻変動」の回で書いたように、北極海ルートが本格的に始動すれば、その重点はまた変わるかもしれない。しかしシーパワーシステムの維持に貢献できる日本の地理的な位置は、今のところそのまま変わらずに残っている。

日本の外交政策:地政学が示す3つの選択肢

 これらの地政学的状況から考えられる、日本の対外政策の選択肢はどのようなものになるだろうか? 筆者は日本には以下の3つの選択肢しかないと確信している。

 第1の選択肢は、米国が主導するシーパワーシステムを支える「シーパワー国家」であり続けることだ。これまで70年間、日本が歩んできた道である。これは現在の日本にとって非常に楽な選択肢だと言える。戦後の日本の民主制や資本主義体制は、基本的に米国のリーダーシップに追従する形でできている。

 民主党政権時代に、一時的に中国側にすりよった時期があった。しかし、筆者は野田政権が環太平洋経済連携協定(TPP)の協議への参加を公式に表明したことで、日本はシーパワー体制の下で生きていく選択を再確認したとのだと評価している。

 現在の安倍政権はこの傾向をますます強めている。たとえば安倍首相が政権に就く直前に発表した英語の論文、「安全保障ダイアモンド」構想は、日米豪印で中国の海洋進出を牽制する考えを述べている。日本の新たなシーパワー宣言であると言える。

中国の“冊封体制”に入る

 第2の選択肢は、日本がランドパワーとなる道を選択し、米国を日本から追い出し、中国の冊封体制に入るというものだ。キツい言い方をすれば、中国の属国になる選択と言っていい。

 これは、日本にとっては選びづらい選択肢だ。日本は民主主義体制をまがりなりにも成功させている。感情的にも壁があるだろう。ただし、米国の力が相対的に落ちることで世界が多極化した。この中で中国の国力が増大すると、日本は経済的にも安全保障的にも中国との関係をさらに強化しなければならないかもしれない。

 韓国の学者や日本の実務家の一部には、次の見方をする人がいる――「中国が東アジアで覇権を確立すれば、冊封体制が復活する。それに組み込まれてもそれほど恐れることはない」。非現実的かもしれないが、こうした選択肢が存在する事実を我々は念頭におくべきであろう。

独立独歩の道

 第3の選択肢は、日本が「大国」の地位を復活させて、どこにも属さずに非同盟の状態を目指すものだ。

 これを実行するためには核武装を視野に入れる必要がある。ただし、これは現在の日本にとって現実的な選択肢とはなりえない。まず、戦前の「大東亜共栄圏」で失敗したトラウマがある。NPT(核不拡散条約)体制から脱退し、日本から米軍を撤退させる必要も出てくる。このため、一時的にせよ日本を巡って国際関係が大混乱に陥る可能性が大きい。

 この3番目の選択肢が究極的な理想かもしれない。ただし、シーパワーシステムによってここまで世界経済がグローバル化した現状において、この選択肢を選ぶ合理性が果たしてあるのかを問う必要がある。

 日本が第3の選択肢を選んだ結果として、たとえば北朝鮮のように「核武装をしたが餓死者が大量に出るような状態」になってしまえば、合理的な理由は存在しない。

日本の将来

 さて、最後のまとめとして、日本が将来直面する可能性のある地政学的な状況を考えてみたい。これには悲観的な見通しと楽観的な見通しがある。

 まずは悲観的な見通し。本稿をお読みの方々にぜひ覚えておいていただきたいことは、日本が関与する戦争が将来100%の確率で起こるということだ。

 戦後70年の微妙な今の時期に、このようなことを明言するのは実に心苦しい。だが、それでも現在までの人類の歴史を見てみると、日本が将来どこかの時点で戦争に巻き込まれるのは明らかだ。我々は戦争を防ぐ術をまだ確立していないからである。

 国際政治学(正式には国際関係論)が学問として始まったそもそものきっかけは、第一次世界大戦後に起こった「そもそも戦争の原因は何なのか」「悲惨な戦争をどう防ぐべきか」という問いかけにあったことは、この分野を知る人々の間では常識である。ところが現在に至っても満足のいく学問的な答えは出ていない。

 私見であるが、この分野で最も深い考察をしたのは、おそらくヒデミ・スガナミという日本出身の英国の学者であろう。スガナミは1996年に書いた『戦争原因論』(On the Causes of War)の中で、「科学的に見て、戦争の原因に関する統一見解は存在しない」と結論づけている。戦争の専門家にもその原因は不明なのだ。つまり「人類は戦争の勃発を防ぐ方法をまだ発明していない」のである。

 また、ここで強調しておきたいのは、「平和が戦争の原因になる」ことだ。なんとも矛盾した考えに聞こえるかもしれないが、平和な状態は経済発展を促すため、それが国力のバランスを崩し、戦争につながると見ることができる。

 たとえばロバート・カプランという米国の世界的なジャーナリストが「資本主義による経済発展は軍備増強につながる…厳しい話だが、これは現実だ」と書いていることは特筆に値する。現在の中国の軍備増強を考えても、平和な国際環境が軍備増強を促しているように見える。なんとも皮肉な話だ。

 さらに言えば、戦争は平和を実現するために行われる。戦略的な観点から考えれば、国家が戦争をするのは、相手の国家を打倒し、その後にやってくる(自分に都合のよい条件の)平和を実現するためである。

 古典地政学を理解する際、戦争と平和の間にあるこのような相互作用を知見としてもっておくことが極めて重要になる。平和は、戦争を想定しなければ守れないからだ。

制海・制空権さえ維持すれば日本の安全は続く

 次に、楽観的な見通しを述べる。

 日本は海に囲まれている。このことは世界的にみて国土を安全に保ちやすい状態にあることを意味する。日本のような島国にとって最大の脅威は、もちろん他国から上陸侵攻されることだ。だが、歴史的に見て上陸作戦は成功させるのが非常に難しい。

 近代に入ってからのいくつかの例を見ると、成功したのは上陸する側が空を自由に使える状態、つまり「制空権」を圧倒的に確保していた場合のみである。制空権を日本が手放さない限り、上陸による侵攻は比較的防ぎやすいと言える。

 結果として、海(と空)の安全、そしてそれを活用したシーパワーシステムによる海上貿易体制が日本に不利にならない限り、一時的な問題は出るにせよ、日本の将来は基本的に明るいと言えるだろう。

 そういう意味で、やはり日本は「シーパワー国家」なのだ。

7/15日経ビジネスオンライン 福島香織『暗黒の金曜日は赤いファシズムの始まりか 「弁護士狩り」の絶望を民主化への胎動に変えよ』について

人権抑圧国家・中国の面目躍如たるものがあります。こういう国が言うことを信じる人は、どういう精神構造をしているのでしょう。「慰安婦」「南京虐殺」を今でも信じられますか。共産党・政府の都合の良いように法律を変え、正義を実現しようとする人を弾圧します。日本でも左翼政党に政権を渡せばそうなります。民主党政権で学習はしたでしょうけど。

南シナ海、東シナ海で彼らの取っている行動も、法律を勝手に作ったり、解釈したりして自己中な行動を取ります。また内蒙古、チベット、ウイグル(タイに圧力をかけてウイグル族100人を強制送還させました。新国家安全法違反で死刑になるかも知れません。国際社会はもっと中国を糾弾すべき)の弾圧も半端ではありません。

習近平のやり方は金正恩に似てきました。金は自分に逆らった玄永哲前人民武力相を銃殺したとのこと。政敵を倒すのに腐敗を理由に逮捕・拘留するのと直接死刑にするのとの違いですが、両方のトップとも腐敗しているのは間違いありません。中華と小中華というのは「賄賂社会」です。「清官三代」と言われるくらいですから。

香港に新国家安全法を適用させるのも時間の問題でしょう。香港の後背地の深圳が充分香港の代わりをしますので。香港経由で外国からの投資を呼びかけるより大陸に直接投資させるようにしてきましたので。李嘉誠も英国に逃げるかも知れません。

記事

「きょうは暗黒の金曜日です」。7月10日、中国内外のネット上に、こんなフレーズが駆け抜けた。中国株の大暴落のことではない。この日、中国で改革開放後、最大級の「弁護士狩り」が始まったからだ。中国は7月1日に新国家安全法案を可決し即日施行しているが、国家の安全を「国内外の脅威」から守るためなら、どんな無茶ぶりも容認するといわんばかりのこの法律は、これまでの法治の概念を覆すものとして、中国の心ある法律家や弁護士は懸念を示していた。今回の「弁護士狩り」は、こうした懸念が具体化したものと言える。新国家安全法、株式市場の仮死状態、法曹界に広がる粛正と続いている暗黒の7月。それは赤いファシズムの幕開けなのか。それとも。

人権擁護活動の拠点をターゲットに

 香港のラジオ局、ラジオフリーアジア(RFA)の報道などによると、10日の金曜日、多くの弁護士、人権活動家の家が家宅捜査され、また多くが行動の自由を制限され、そして多くが外界との連絡を断ち切られた。11日までに連絡が取れなくなったのは17人、うち10人が弁護士だ。5月末に政権扇動転覆容疑で逮捕された福建省の人権活動家・呉淦(ハンドルネーム「屠夫」として、ネット上で人権問題を発信していたとされる)の弁護にあたっていた弁護士や、香港の雨傘運動(革命)を支持していた弁護士らが含まれていた。

 香港愛国民主運動連合会によると12日夕までに警察当局に87人が連行され、うち7人が逮捕あるいは在宅監視、26人が連行されたまま消息不明、そのほかの54人が釈放されたという。

 一番のターゲットになったのは北京鋒鋭弁護士事務所。中国の有名な人権弁護士が所属する事務所で、中国の人権擁護活動の拠点の一つとも言われている。

 この事務所に所属する女性弁護士で、人権活動家・呉淦の弁護を担当していた王宇は木曜から夫と息子らともども連絡が取れなくなった。また同事務所の主任弁護士・周世鋒も金曜早朝、ホテルにいたところを連行されたという。周世鋒は去年、香港雨傘運動を支援して拘束されていた中国人記者助手の張淼の弁護を担当していた。張淼は木曜に釈放されたが、その後に連行されたという。鋒鋭事務所に所属する弁護士たちも一様に電話で連絡がとれなくなっていた。その後、周世鋒が連行されたと最初に情報発信した人権弁護士、劉暁原も携帯電話に出なくなった。

鋒鋭事務所は警察のガサ入れにあった。この時、事務所を訪れていた人権弁護士、張維玉も約4時間拘束された。張維玉は「午後1時頃、突然警察がやって来て、私の携帯電話などを調べた。5時半まで取り調べが続いた。鋭鋒の弁護士たちの何人かは釈放されて、この場所を離れている」とRFAに語っていた。

 また李金星、李和平、江天勇といった著名人権弁護士が連絡の取れない状況という。このほか、法律相談NGOのボランティアや、民間の人権活動家も行方が分からなくなっている。

 これを受けて、7月12日、新華社、人民日報、CCTVなど中国中央メディアは「”維権(人権擁護)”事件の黒幕、鋒鋭事務所を摘発」と一斉に報道。ほとんどの中国メディアがこれに準じた報道を展開した。

 その内容は、実に恐ろしいものである。

「社会秩序擾乱を推進した大犯罪集団を壊滅」

 「目下、中国公安部の指揮により、北京はじめ各地公安機関は集中摘発行動を展開し、北京鋒鋭弁護士事務所を拠点に、2012年7月以降、中国社会で起きた40以上の(政治的)敏感事件、社会秩序を深刻に擾乱する重大犯罪を組織、画策、扇動した大犯罪集団を壊滅させた。”人権擁護”弁護士の立場でもって、”陳情者”が相互に連携して組織化するのを推進し、人数を集めて、細かい役割を振り分けてきた犯罪集団の全容がこれにより浮かび上がってきた。

 例えば今年5月の黒竜江省で発生した”慶安事件”。警察は合法的に発砲したのだが、これがなぜ”陳情者殺害事件”と扇情的に伝えられてしまったのか?(この事件がらみで社会秩序擾乱容疑で逮捕された)翟岩民、呉淦、劉星ら、”人権活動家”の仕業である」

 慶安事件について少し説明しておこう。2015年5月2日に、黒竜江省の慶安鉄道駅待合室で、陳情(地元政府の横暴を改善してもらうために上級政府に訴えること)のために列車に乗ろうとした男性(45)が、警官に乗車を妨害されたため、その警官の銃を奪ったので、警官に射殺された事件である。男性が、単なる「狼藉者」として、警官の発砲を正当化されそうになったところ、人権活動家の呉淦らが人権問題として再調査を訴え、人権弁護士らも調査に乗り出し、陳情者の人権問題としての関心を集めて世論も喚起された。だが公安警察は翟岩民らを「各地の陳情者に報酬を出して抗議活動を組織した」として社会秩序擾乱(じょうらん)罪で逮捕していた。

 公安サイドに言わせれば、こうした人権活動の名の下に行われる社会秩序の擾乱が、全国で急速に増えており、その黒幕の一つが鋒鋭事務所だというのだ。

報道ではこう主張している。「普通の事件を政治的敏感事件に扇動し、真相を知らない群衆やネットユーザーの政府への不満を焚き付けるのが鋒鋭の一貫したやり口だ。鋒鋭に所属する弁護士・黄力群はこう供述している。『(事務所主任弁護士の)周世鋒は自分のことを法曹界の宋江(北宋末の農民蜂起の指導者、水滸伝の主人公モデル)だと言っている。…違法な手段で事件を大きくする、法律を守らない食い詰めた弁護士を集めて、担当事件を大きく扇動していた』…目下、周世鋒、劉四新、黄力軍、王宇、王全璋、包龍軍など多くの容疑者が法に従って刑事拘留されている。彼らは他の重大違法犯罪に関わっている可能性もあり、さらに捜査を進めている」

習近平政権は人権擁護を重大犯罪と位置づけた

 これがどういうことか。習近平政権は、人権擁護活動を公式に違法だと、政権に刃向かう重大犯罪だと位置づけたのである。

 中国の人権問題は今なお深刻である。2011年の段階で年間23万件あった群集性事件、つまり暴動やデモ・抗議活動はその後も増えており、その多くが、自分たちの権利を不条理に踏みにじられたと感じる人々の不満の発露としての行動である。不完全な法治の下で、不条理な暴力に抵抗する最後の手法はやはり、暴力になってしまうのだ。

 中国では、あまり機能しない司法のかわりに、中国共産党の上層部門に直接問題を訴える陳情という独特の問題解決手段が残されている。だが、慶安事件のように、その陳情の権利すら、踏みにじられることが多い。人権活動家や人権弁護士たちの役目は、その庶民が受ける不条理な暴力や踏みにじられた権利を、ネットや国内外メディアを通じて広く社会に知らしめることで世論を喚起し、事実を党中央、中央政府の耳に届け、善処してもらおうということである。

 暴力に暴力で刃向かうしかなかった人々に、世論に訴える方法で、自分たちの窮状を中央政府に認識してもらい、中央政府に助けを求める手法を教える人権弁護士たちが、どうして政権転覆扇動や秩序擾乱に問われるのか。むしろ、社会を不安定化させる暴力的な群衆性事件や、不条理な社会への報復を目的とした他人巻き込み型自殺を防ぐ効果があるとは言えまいか。だが、習近平政権は、そういう人権活動家、人権弁護士たちを、社会の不満分子を焚き付けて社会を不安定化させるものと決めつけたのだった。

これまでの政権は、建前だけでも「国は人権を尊重し保障する」という中国憲法の条文を真っ向から否定するようなことはなかった。だから地方政府がいかにあくどく庶民の人権を蹂躙しても、党中央に声が届けば助けてもらえる、という一縷の望みを人々は持っていた。だが、この「弁護士狩り」によって、それは幻想であることを突きつけられた。「大衆路線」を掲げ、社会の末端の基層民(農民・労働者)の絶大な支持を得ているとされる習近平が一番恐れ、敵とみなしているのは実は、末端の虐げられた人民なのだ。

 実は、習近平政権のこうした性格は7月1日に施行された新国家安全法にも垣間見えていた。この法律は、「国家の安全を守る」ための総合的な法律と位置づけられ、その適用範囲が非常に広い。政治の安全、国土の安全、軍事の安全、経済の安全、文化の安全、社会の安全、科学技術の安全、情報の安全、生態の安全、資源の安全、核の安全などが、すべて国家の安全であり、これら国家安全を国内外の脅威から守ることが中国公民と組織の義務であるとしている。

 条文の中では、「いかなる国への謀反、国家分裂、反乱の扇動、人民民主専制政権を転覆あるいは転覆扇動する行為を防止する」とあり、この法律を理由に、人権擁護活動や言論の自由が大きく制限されるのではないか、と懸念されていた。従来も、政府に批判的な言論や活動は、挑発罪や政権転覆扇動罪などに問われる可能性は大きかったが、この立法によって、適用範囲はインターネット上や文化活動、経済活動などにも広がることになり、たとえば株価暴落を引き起こした企業の持ち株大量売りなども、政権転覆、あるいは国家安全を損なった容疑に問われるかもしれない。

 ちなみに、この法律は、反テロ法、国外非政府組織管理法と並んで習近平政権の高圧政治を実現するための三大立法とかねてから警戒されていた。また、ある種の非常事態、内乱や紛争状態までを仮定した立法ではないかという意見もある。

個人独裁、それは絶望への道

 こうした今の中国の現状を見て、思い浮かぶ言葉は、ただ一言、絶望である。習近平政権が望むのは、赤い帝国主義、赤いファシズムである。従来の共産党政治も独裁であったが、それは集団指導体制という寡頭独裁であり、改革開放を推し進めるにしたがって、それは党内民主に拡大していくかも、という期待を持つ余地があった。

 だが習近平政権が今向かっているのは、習近平を頂点とした個人独裁であり、政治も経済も人民の思想も心も、周辺国家の価値観ですら党の完全なコントロールを受ける世界である。このままでは、国際社会にとっても非常に危険なきな臭い国になっていくのではないだろうか。

だがここで、少しだけ気休めかもしれない言葉を贈ろう。台湾の民主化プロセスを積極的に取材している在米亡命中国人作家の余傑が、この事件について書いたコラム「中国は美麗島時代に突入」の引用である。「美麗島」とは、国民党独裁時代の台湾で、党外各派の活動家が集結して創刊された雑誌の名だ。1979年12月10日、「美麗島」誌が主催した高雄市のデモが警官隊と衝突し、同誌関係者が投獄された弾圧事件を美麗島事件と呼ぶ。この事件によって、台湾の民主化への希求は勢いを増し、後に逮捕されたメンバーや弁護団が民進党幹部となり、台湾民主化の大きな推進力となった。余傑はこう書いている。

新たな「美麗島時代」の始まりとせよ

 「私は明確に思ったことがある。この”暗黒の金曜日”は、中国が正式に『美麗島時代』に突入したという証しではないだろうか。中国の民主化の進み具合は台湾よりまるまる36年遅れている。しかし、ついにその時は来た。

 1979年の台湾は、今日の中国と同じく、もっとも恐ろしく、純心な時代であった。政治評論家の陳芳明の言葉を用いれば、美麗島事件は一つの歴史の終結のシグナルであり、一つの歴史の始まりであった。『美麗島事件は革命とは言えず、もちろん政変でもなく、政府がいうところの暴動でもない。だからこそ、新しい世代にとって、魂における一つの革命的風景となったのだ。…我々(中国人)は美麗島事件がどのように歴史の流れを改変したか遡って見る必要がある』…」

 余傑はあまりに夢見がちだろうか。

 いや、台湾の民主化の背景に、国際社会のサポートもあったことを思えば、そういう可能性もまだあるのだと思いながら、中国と向き合っていくことは必要かもしれない。

7/14ダイヤモンドオンライン 北野幸伯『「安保関連法案」で安倍総理が犯した2つのミス』について

アメリカも議会と行政府が対立するし、与党だって党議拘束がないため、大統領に造反する議員がいます。大統領が電話して説得したりしているではないですか。二階が3000人ほど中国に連れて行ってもアメリカが文句を言うとは思えません。自分たちだってさんざんやってきたではないですか。時事通信によれば、「首相が着目するのは、9月3日の抗日戦争勝利記念日だ。このイベントは、下手に扱えば抑え切れない対日批判に火をつけかねないが、今や日中関係は、5月の二階俊博自民党総務会長率いる3000人訪中と、その機会をとらえた習近平「対日講話」によって、「硬」から「軟」へとモードが切り替わった。」とありました。マイナスだけではないという見立てです。

それより9月安倍訪中の地ならしで谷内正太郎国家安全保障局長が中国訪問との記事の方がアメリカは気になるのではないですか。多分習近平の訪米前に話し合われるでしょうから、露払いになります。会うにしても日米間できっちり意見を擦り合わせしてから臨まないと。北野氏の言うように中国のアジア覇権のためには、彼らは日米分断が絶対必要なので隙を見せるのはダメです。

安保法案は強行採決でも通すでしょう。アメリカとの約束ですから。夏までに通さなければ「約束違反」となります。エクスキューズして延ばしたとしても米国人からは「頼りのない奴」と思われるだけですし、時間をかけて説明するとしても、反政府のメデイアが世論を牛耳る限り、日本国民に理解できるとは思えません。安倍首相は祖父の岸の60年安保を思っているでしょう。安保改定で日本の安全はより強固となりました。今回の集団的自衛権を認めることは日米の絆をより高めることとなり、バランスオブパワーの観点から中国に付けいる隙を少なくする効果があります。

記事

4月末の米議会演説で戦略的勝利をおさめたのもつかの間。安保関連法案に関する強硬姿勢でそっぽを向く国民が増え、安倍総理は窮地に陥っている。わずか数ヵ月のあいだに、安倍内閣が犯した間違いについて、解説する。

 安倍内閣の支持率が急落している。朝日新聞が6月20、21日に実施した世論調査によると、内閣支持率は1ヵ月で6ポイント低下し、39%になった。7月4、5日に実施した毎日新聞の調査では、不支持が支持を上回り、第2次安部内閣発足後、初めて逆転した。

 支持率が下がっている理由は、「安保関連法案問題」である。直接的な理由は、衆院憲法審査会で憲法学者3人が、安保関連法を「憲法違反」と指摘し、政府がそれを事実上「無視」していること。また、自民党若手議員の勉強会で、法案に批判的なマスコミへの圧力を支持する発言が相次いだことなどだろう。しかし、この問題は、長期的視点で見ると、もっと根が深い。

過去数年の劣勢を一気に逆転  安倍演説で「戦略的勝利」をした4月

「私たちの同盟を、『希望の同盟』と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟。一緒でなら、きっとできます」

 4月29日、安倍総理は絶頂にあった。米議会における「希望の同盟」演説は大成功。オバマ大統領は、ホワイトハウスのツイッターに「歴史的な訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固だったことはない」と書き込んだ。

 しかし、ここに来るまでの道は、平坦ではなかった。2012年12月に第2次安倍内閣が誕生した時、日中関係はすでに、「尖閣国有化問題」(12年9月)で「最悪」になっていた。

 12年11月、中国は、モスクワで仰天の「対日戦略」を提案している。その骨子は、①中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる ②日本の北方4島、竹島、沖縄の領土要求を退ける(つまり、沖縄は中国領) ③米国を「反日統一共同戦線」に引き入れる――である(中国、対日戦略の詳細はこちらの記事を参照)。

 この戦略に沿って中韓は、全世界で「反日プロパガンダ」を展開し、大きな成果をあげた。13年12月26日、安倍総理が米国のバイデン副大統領の「警告」を無視して靖国を参拝すると、世界的「日本バッシング」が起こる。

 中韓に加え、米国、英国、EU、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが、靖国参拝を非難した。この時、安倍総理は「右翼」「軍国主義者」「歴史修正主義者」とレッテルを貼られ、世界的に孤立した。

 しかし、14年3月、ロシアがクリミアを併合すると、日米関係は好転する。「対ロシア制裁」に、日本の協力が必要だからだ。そして15年3月、今度は「AIIB事件」が起こった。英国、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、続々と米国を裏切り、中国主導のAIIBに参加していく。

その中で、日本だけは、米国以外の大国で唯一「AIIB不参加」を決めた。これで、米国にとって日本は、「英国よりもイスラエルよりも大事な国」になった。そして、4月29日の「希望の同盟」演説。オバマがいうように、日米関係は、これまでにないほど「強固」になったように思えた。

 中国の戦略は、「日米分断」である。

 よって、日本の戦略は、「日米一体化」である。

 安倍総理は、「希望の同盟」演説で日米一体化を成し遂げ、「戦略的勝利」をおさめた。しかし、「2つの失敗」を犯したことで、現在は再び苦境に陥っている。

再び苦境に陥った安倍総理  「2つの失敗」とは何か?

実をいうと、1つ目の失敗は、「希望の同盟演説」の中にある。(太字筆者。以下同じ)

<日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。

 戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます。>

「この夏までに、成就させます」。これは、安倍総理が米国に「約束」したのだ。この約束が、「1つ目の失敗」である。

 なぜか?当たり前のことだが、約束は「守らなければならない」。つまり演説後、4ヵ月で「安保関連法案」を成立させる(「夏までに」というと、「夏に入る6月までに」という解釈もできるが、ここでは「夏中に」と考えることにする)。

 だから、急がなければならない。急ぐと、あせる。あせると、国民への説明が不十分になる。野党への根回しがイイカゲンになる。それでも「なんとか米国との約束を果たさねば」と必死になると、言動が「強引」「独裁的」になる。反対するマスコミが憎らしく思え、「懲らしめてやれ!」と思ったり、そう発言したりする議員が出てくる。結果、国民が、ますます内閣への疑念と嫌悪感を強めていくという悪循環になっている。

 そして、総理は、「米国との約束を果たすため」に急いでいるというのも重要なポイントだ。この態度は、いかにも「属国的」だ。実をいうと、国民は皆「日本=米国の属国」であることに気がついている。しかし、国政の長には、「自立した国のトップ」としてふるまってほしいのである。

 2つ目の失敗は、「中国との関係改善」である。二階俊博・自民党総務会長率いる約3000人の使節団が5月22~24日、中国を訪問した。習近平は5月23日、使節団の前に姿を現し、日本に「ラブコール」を送った。

<「朋あり遠方より来る、また楽しからずや。

 3000人余りの日本各界の方々遠路はるばるいらっしゃり、友好交流大会を開催する運びになった。われわれが大変喜びとするところだ。>

 なぜ日中関係改善が、「失敗」なのか?この時期、米中関係はどうなっていたのか、思い出してほしい。

<米中激突なら1週間で米軍が制圧 中国艦隊は魚雷の餌食 緊迫の南シナ海

夕刊フジ 5月28日(木)16時56分配信
 南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺の領有権をめぐり、米中両国間で緊張が走っている。


 軍事力を背景に覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を牽制するべく、米国のオバマ政権が同海域への米軍派遣を示唆したが、中国側は対抗措置も辞さない構えで偶発的な軍事衝突も排除できない状況だ。>

これは、5月28日の夕刊フジ。つまり、訪中団が、習近平と「日中関係改善」について話し合ってから、わずか5日後だ。実際、「習近平ラブコール」の日、既に米中関係は十分悪化していた。その時、米国の「希望の同盟国」であるはずの日本は「3000人」の「大訪中団」を送り込み、「戦略的互恵関係」について協議していたのだ。 

日本に猜疑心を覚えた米国  「二階訪中団」が裏目に

 この状況、米国のリーダーの目にはどう映るだろうか?「安倍の演説は、ウソなのではないか?」「日本は、米国を『バックパッシング』しようとしているのではないか?」と考えるだろう。

 前回も書いたが、もう一度、おさらいをしよう。大国が敵と戦う戦略には、大きく2つある。

  1. バランシング(直接均衡)…自国が「主人公」になって、敵の脅威と戦う。
  2. バックパッシング(責任転嫁)…「他国と敵を戦わせる」こと。自国が直接、戦争によるダメージを受けずに済む。

 この場合の「バックパッシング」とはつまり、「日本は、米中を戦わせて、自分だけ漁夫の利を得ようとしている」ということ。もちろん、日本側にそのような「狡猾さ」はない。ただ単に、「中国と仲良くしたい」と考えただけだ。しかし、米国は、そうは取らないだろう。

 安倍総理は、「希望の同盟」演説で、日米同盟を改善させたのだから、しばらくは「米国への一途さ」を示すべきだった。もちろん、中国を挑発するのは論外だが、「3000人の訪中団」はやりすぎだろう。この訪中団で、「希望の同盟演説」で醸成された米国側の「日本愛」は、かなり冷めたと見るべきだ。

 第2の失敗「日中関係改善」が引き起こした、もう一つの現象は「国民が『安保関連法案』の意義を理解できなくなった」ことだ。

「集団的自衛権行使」を実現するための「安保関連法案」。反対派と賛成派の論理は、真っ向から対立している。反対派の論理は、「米国の戦争に巻き込まれる」である。米国は、21世紀に入って、アフガン、イラク、リビア(=北アフリカに位置)で戦争をしている。そして、13年にはシリアと戦争直前の状態になった。現在は、少し関係が改善しているが、イスラエルロビーのプッシュで、イラン戦争が起こる可能性も否定できない。

 つまり、「米国の戦争に巻き込まれる」というのは「中東戦争に自衛隊が送られることへの恐怖」といえるだろう。

 一方、賛成派の主張は、「尖閣、沖縄を狙う中国と対抗するために、日米関係をもっと緊密にしなければならない」。つまり、「中国の脅威があるから、安保関連法が必要だ」という論理だ。ところが、習近平のスピーチとスマイルで、日中関係が改善してしまった。これは、「安保関連法案」の視点からすると、「対中国で必要」という賛成派の主張への大きな打撃である。

「安保関連法案を通さなければならない時期」に、なぜ大訪中団を送ったのか、とても理解に苦しむ。

強行採決すれば祖父と同じ道?  安倍総理が危機を脱出する方法

 では、安倍総理は、これからどう動けばいいのだろうか?問題の本質はなんだろう?論点は大きく分けて、2つに整理される。

 1つ目は、安倍総理が米国に「安保関連法案を、夏までに成立させる」と約束したこと。もし約束が守れなかったら、どうなるのだろう?元外務省国際情報局局長・孫崎享氏の著書「アメリカに潰された政治家たち」(小学館)は、こんな印象深いフレーズからはじまる。



<皆さんは、「日本の総理大臣」は誰が決めているのか、ご存知でしょうか?>(「アメリカに潰された政治家たち」8p)


<国民の与り知らぬところで何かが起き、いつのまにか総理の首がすげ替えられることは日本ではよくあります。しかも、政権が代わるたびに、日本におけるアメリカのプレゼンスが増大しているのです。(中略)

 そして、そのときに失脚した政治家は、おしなべてアメリカを激怒させる“虎の尾”を踏んでいました。>(同上10p)


 孫崎氏は、要するに「日本の総理大臣を決めているのは米国だ」と主張している。本当かどうか確認することはできないが、市井の「陰謀論者」ではなく、元外務省国際情報局局長の言葉であることが重要だ。そして国民も、「親米派の内閣は長続きするよね」と感じている(例、中曽根内閣、小泉内閣)。

 つまり、安倍総理は、米国との約束を破ることで、政権が崩壊することを恐れているのではないだろうか?(もちろん、総理の心の内面までわかるはずもないが)

 2つ目は安保関連法案を強行採決することで、さらに支持率が下がり、政権が崩壊すること。自民と公明は、安保関連法案を強行採決して成立させることができる。だが、それをやると、「独裁的だ」「やはり軍国主義者だ」との批判が高まり、安倍内閣は崩壊に向かうかもしれない。

 ちなみに、安倍氏の祖父である、故・岸信介元首相は1960年5月19日、「新安保条約」を強行採決した。しかし、2ヵ月後には総辞職している。安倍総理も、祖父と同じ道を行くかもしれない(あるいは、強行採決して支持率が下がっても、サバイバルする方法を見つけるかもしれないが)。

もう一度整理すると、

1、米国との約束を破れば、安倍内閣は崩壊するかもしれない。

2、しかし、国民を無視して「強行採決」すれば、民意によって安倍内閣は崩壊するかもしれない。

 要するに、「止まっても崩壊」「進んでも崩壊」だ。もちろん、必ずそうなるわけではないが、非常に舵取りが難しい局面であることは間違いない。

 筆者が安倍総理にお勧めしたいのは、日本国民と米国、両方によい道である。たとえば、こんな会話だ。

日本:「親中派の巻き返しが激しく、約束は果たせない」

米国:「強行採決したらどうなるか?」

日本:「強行採決は可能だが、それをやると国民の反発が高まり、退陣に追い込まれる可能性がある」

米国:「あなたが辞めたらどうなるか?誰が次の総理になるか?」

 ここで、「3000人訪中団を率いたバリバリの親中派・二階氏が最有力候補だ」と伝えるのだ。すると米国は、「二階氏が総理になると日本はどうなるか?」と質問してくるだろう。総理は、「鳩山・小沢時代のごとく、日米同盟はメチャクチャになるだろう」と伝える。

 要するに、「約束は守れないが、私が総理を続投しなければ大変なことになる」と主張するのだ。「小鳩時代の悪夢再現」を恐れる米国は、納得してくれるのではないだろうか。こうして時間を確保した総理は、腰をすえて「安保理関連法案」成立に取り組むことができる。

 国民への説明と野党への根回しをより丁寧にしていくことで、「独裁」「軍国主義者」という批判を和らげることができるだろう。

P.S
.ちなみに筆者は、「安保関連法案」を支持している。それは、「集団的自衛行使容認」を支持するのと同じ理由である。総理の「手法」に不満な方も、是非こちらの記事を参考にしていただきたい。

7/13宮崎正弘メルマガ『米中もし戦わば、「そこには11のシナリオがある」(プラウダ)   ロシアは米中戦争で最大の漁夫の利が得られるだろうと示唆。』について

中国もロシア同様、オバマが大統領でいる限りアメリカは何もしてこないだろうと読んでいます。しかし来年の11月の選挙、再来年の1月の新大統領就任後に今のようなことができるかです。ヒラリーにしても、ジェブ・ブッシュにしても中国には強硬な態度を取らざるを得ないでしょう。それが大統領交代の意味ですから。キッシンジャーだって宗旨替えしたのですから、献金を受けていたヒラリーにしろ、父が米中連絡事務所長であったブッシュにしろ、相当態度を変えるでしょう。ペンタゴンは相当オバマに怒っているはずです。

これはロシアの希望的観測というか中国を使嗾して戦争を起こさしめ、漁夫の利を狙っているのは明らかです。ロシアが中国の軍事の実力を知らないはずがありません。ウクライナが売った空母「遼寧」はポンコツ同然で使い物にならないそうです。練習用空母と言ってるそうですが。空母も運用できない海軍がどうやって戦うのでしょう?大日本帝国海軍の空母にはカタパルトがない時代でしたが、米軍空母を相手に空母戦を展開しました。中国の政治的プロパガンダというのはロシアも百も承知のはずです。A2/AD戦略を唱え、中国のクルージング・ミサイルの性能が上がったので、建造費の高い空母は中国に近づけないというのが中国の主張でした。ロシアは中国の言い分を鸚鵡返しに繰り返しているだけです。日高義樹氏の『中国敗れたり』によれば、クルージング・ミサイルのスピードが遅く迎撃できるし、その間米軍が何もしないことは考えにくい。核を使用しなくとも、キャプター型機雷を中国沿岸に敷設すれば、中国に入ってくる石油はストップし、継戦能力は格段に減っていきます。そんなことも知らない中国人だとは思えません。彼らは大言壮語・政治的プロパガンダするのが得意ですが、戦闘は不得意です。利に敏い中国人が米国相手に戦争するとは考えにくい。日本にも今だったら負けると言われているのに。オバマのアメリカだから今のうちに侮辱しておこうと思っているのでしょう。でもアメリカの怒りは深いところで渦巻いているはずです。鄧小平だったら「有所作為はまだ早い」と言ったのでは。やはり政治家の資質が小さくなったのでしょう。

記事

 プラウダ(英語版、6月24日)には米中戦争、11のシナリオが描かれた。行間には米中戦争への「期待」(なぜなら「最大の漁夫の利」を獲得できるのはロシアだから)がにじみ出ている文章となっている。

 米中それぞれは大規模な軍事衝突への準備を怠っていない。米中の貿易関係に甚大な悪影響を与えることになるだろうが、それよりも深刻な利害関係の衝突が基底に流れているからだとして、プラウダが掲げたシナリオとは、

 第一に中国は「米国が南シナ海における岩礁の埋立に中止を求めることを止めない限り、米中の戦端が開かれることは『不可避的』であると中国共産党系の新聞が幹部の発言として何度も報道している。

 第二に米国の見積もりでは、戦時動員の中国人を1400万人としている。オバマ政権はハッカーを含めずに情報、軍事インテリジェンスに従事する中国人を準戦闘員として捉えている。

 第三に中国は台湾攻撃を想定した軍事演習を大規模に繰り返している。もし中国が台湾を侵略した場合、台湾関係法に依拠して米国が乗り出してくることは明らかである。

 第四に中国の数千隻の『商船』は、戦闘となれば、準軍事目的で転用される。戦争の兵站、後方支援などの目的でこれら中国籍商船は機能的に転用できるようなシステムが構築されている。

 第五に中国は米空母攻撃用のミサイルを開発している(ペンタゴンは、この『空母キラー』と呼ばれる新型ミサイルを脅威とみている

▲中国の戦略ミサイルはMIRV化し、米国とのバランスは対等になった

 第六に中国は核ミサイルの多弾頭化を進捗させており、ミサイルの弾頭数における米中バランスは対等となる。

 第七に中国が保有したMIRV(多弾頭ミサイル)は超音速、そのスピードにおいて米国諸都市に達する時間は想定より早くなったと考えられる。

 第八に潜水艦発射型ミサイルを搭載した中国海軍の潜水艦が、スクリュー音を出さない新型を就航させているため発見がしにくくなった。

 第九に上記ミサイル搭載の潜水艦の基地は海南島であり、南シナ海への出撃ベースとして構築された。

 第十に「ジン級」潜水艦に搭載されているJL型ミサイルは射程7350キロであり、全米50州の軍事目的に向けてほぼ同時に発射されることが可能と米議会報告書は述べている。

 第十一に中国の軍事費は毎年二桁成長を続けてきたが、公式にも本年の国防費は1320億ドル(10・2%増)となった。軍事縮小が顕著な米国と対比的である。昨年も中国の軍事費は1140億ドルで前年比10・7%増加した(ちなみに米国の同年度の国防費は6004億ドルだったが)。

 米国は多国間と軍事演習を繰り返しているが、これらの基本は中国との軍事衝突を前提としたものであり、2009年に提示された「エア・シー・バトル」に沿った演習となっている。

こう見てくると米中軍事衝突は不可避的であるとするのがロシアである。

7/9産経ニュース 古田 博司『世界遺産でゴネた強制性の意味』について

佐藤地ユネスコ大使は女性だから交渉ができなかったとは思いません。今の外務省の男性役人でも同じでしょう。でも彼女は、女性のハンデイを認識していなかったのでは。今政治家にもクオータ制をと議論になっているご時世ですよ。足を引っ張ることになりかねません。「女性に任せるとやはりダメか」と内心思われる危険性について考えたことがあるのでしょうか?“forced to work”の定義ではなく外国の大衆がどう思うかという感性が彼女には備わっていないと思います。命令を忠実に守るだけでしたら、大使の役目は務まりません。以前紹介しました日露戦争時の上村彦之丞がそうでした。今の時代は骨のある上司がいないので難しいのかもしれませんが。

古田教授の唱える「非韓三原則」こそが正しい道です。文中にありますように「韓国の自律行動は、 ゴネ、イチャモン、タカリという至極低劣な『民族の最終独立兵器』によって全うされるのが常」「この点に関しての彼らの『恥』意識は存在しない」ということを我々は銘記すべきです。Korea fatigueを引き起こす現象です。日本のヤクザのやり方と一緒。蛇蝎すべき民族です。それはそうです。「醜業」と日本では言われる「売春業」で大儲けした女性が恥も知らず、事実と違うことで日本政府をユスリにかけているのです。正義とは何ぞやという事です。「恥を知れ」と言っても「恥知らず」の連中には「糠に釘」かもしれませんが。

アメリカもTHHAD情報が漏れては在韓米軍だけではなく、他の部隊にも影響を与えるので、戦時作戦統制権返還、米軍撤退となるのでは。米国も如何に中韓と言うのは平気で嘘がつける民族と言うのが分かってきていると思います。

記事

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産に登録することを決めた。これまでご努力なさってきた方々に祝賀と慰労の言葉を贈りたい。

 ≪繰り返される韓国の要求≫

だが6月29日付の「正論」欄で、私は次のように予告しておいた。 「今回の世界遺産申請抱き合わせでもわかるように、韓国の自律行動は、 ゴネ、イチャモン、タカリという至極低劣な『民族の最終独立兵器』によって全うされるのが常」「この点に関しての彼らの『恥』意識は存在しない」「むしろ今後、さまざまな要求を抱き合わせてくる可能性がある。わが国が注意しなければならないことはむしろこちらの方」だ、と。

佐藤地ユネスコ政府代表部大使は「1940年代に一部の施設で大勢の朝鮮半島の人々などが意に反して連れてこられ厳しい環境下で労働を強いられた」「この犠牲者のことを忘れないようにする情報センターの設置など、適切な措置を取る用意がある」と述べたという。

だが気を付けなければならない。韓国は「明治日本の産業革命遺産」の標榜や情報センター表 示の文言に、確実に「強制性」を盛り込むように、ゴネとイチャモンを国 内外のさまざまな団体を使って繰り返すことであろう。

なにしろ会場の外に来ていた反日団体と、韓国の代表団を率いる趙兌烈外務第2次官が、手を取って激励し合う姿をNHKの報道で見てしまった。この趙氏が日本側の言及した措置について、世界遺産委員会に対し確実に実行されるか検証するよう求めたのだった。

米軍進駐により棚ぼた式に独立を手に入れた韓国には、もとより国家の正統性がない。少なくとも独立運動で戦った生き残りは北朝鮮の故金日成主席の方で、こちらに正統性がある。そこで韓国ではさまざまな歴史の捏造(ねつぞう)を繰り返し、ドロップアウターやテロリストを英雄にせざるを得なかった。

日韓併合は不法であり、彼らが日本の不法と戦い続けたという物語を作成し、日本人に同化して生き続けた統治時代のコリアンの生を無化しようとしたのである。だが、朴槿恵大統領の父、朴正煕氏が満州国軍の将校、高木正雄だったことや、結局、世界を魅了し得なかった韓国近代文学の

祖、李光洙が香山光郎と名乗ったことを否定することはできなかった。

 ≪残るは「徴用工」問題≫

否定するには、強制されてやむなくそうしたのだという口実が必要なのである。「強制性」さえあれば、不法だったと言い訳ができる。日韓併合自体を不法だとする主張は、既に2001年11月に米ハーバード大学、 アジアセンター主催の日・米・英・韓の学者による国際学術会議で退けられた。

今回「強制性」から不法を導くというのはいわばからめ手である。

「慰安婦」「徴用工」も「強制性」を剥奪されれば、ただの同化日本人にすぎない。朝日新聞が「従軍慰安婦」の誤報を認めたことで「強制性」の大半は剥奪された。残るは「徴用工」で、韓国は必死に挑んでくることだろう。

問題はそもそも国初をめぐるボタンのかけ違いにあった。たとえ棚ぼた式独立だとしても、民主主義、法治主義、基本的人権の尊重などが満たされれば、韓国は立派な近代国家としての正統性を得ることができ、北朝鮮のような無法国家を凌駕(りょうが)できたのである。しかし、そうはならなかった。

法治主義は、司法の為政者に対する「忠誠競争」により劣化し崩壊した。人権の尊重は、セウォル号沈没やMERS(マーズ)感染拡大に見られるように停滞し、さらに恐ろしい半災害・人為的事件が引き起こされることが予測される。

 ≪「反日」めぐる危険な共闘≫

内政は破綻し、外政で追い詰められる朴槿恵大統領は、政治家としてはいたく素人である。すでに政府や軍の中に北朝鮮シンパがたくさんいるのだ。外相の尹炳世氏からしてそうである。

彼は盧武鉉大統領(03年2月~08年2月)の左翼政権時代に国家安全保障会議(NSC)室長、外務省次官補、大統領府外交安保首席秘書官など外交分野の実務や重要ポストを歴任し、盧武鉉・金正日氏による南北首脳会談実現の立役者となった。

尹氏は政権が代わると09年からは西江大学(朴槿恵大統領の出身大学)の招聘(しょうへい)教授となり、10年末に発足した朴氏のシンクタンク「国家未来研究院」で外交・安保分野を担当し、朴政権で外相になった。「国家未来研究院」時代の同僚を洗うと、北朝鮮シンパがゴロゴロと出て

くる。

今回の世界遺産登録で、反日団体と趙兌烈外務第2次官が手を取って激励し合っている姿に、私は従北勢力の市民団体と政権内部の北朝鮮シンパとの「反日」をめぐる危険な共闘を見るのである。

恐らくアメリカは、政府内部、軍内部のリストアップをより着実に行い、韓国が南ベトナムにならないための担保として、高高度防衛ミサイル(THAAD設置を踏ませようとしているのであろう。絵踏みしなければ米軍撤退はより確実なものになるだろう。

7/9日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「世界遺産で勝った」韓国が次に狙うのは…… 「日本も強制性を認めた」と世界に発信を開始』について

日本がいくら“forced to work” は”forced labor”と違うと言っても大衆にそんな区別は出来ません。相手の言い分に乗っかるというのが如何に危険か外務省の偽エリートたちには分からないのです。

中韓の言ってくることは「おれおれ詐欺」と同じと言うことが全然分かっていない。言葉の裏にある意味、リスクについて民間の交渉でも脳漿を絞って考えます。揺さぶりをかけて来るのは外交では常套手段。それで相手の言いなりになってしまうというのは精神的タフネスが足りなさ過ぎ。最も不適な人間を交渉人として選んだという事でしょう。Facebookでは佐藤ユネスコ大使は懲戒解雇せよとありました。確かに昔なら切腹ものでしょう。女性は首を切ったところでしょう。如何に日本の官僚が危機意識がないかという事です。

官邸は外務省を信用し過ぎです。「登録最優先」なんていうからアホな外務省はすぐ譲歩するのです。韓国が汚い手を打ってくるのは「慰安婦」で分かっているでしょう。「無理な要求には屈せず席を立て」と何故注意しなかったのか悔やまれます。日本人もいい加減中韓のやり方に目を覚ましてほしい。一番いいのは断交です。別に国の命令でなく、日本企業・国民が付き合わなければ良い。それといい加減腐った左翼プロパガンダ新聞は取らないことです。そうすればTVしかなくなります。総務省も放送免許を入札制にして税金をもっとかけ、自由に放送局を設立できるようにしないと。左翼を潰すのは声高に騒ぐのでなく、これに限ります。いいものしか残らなくなりますから。

記事

 韓国メディアはお祭り騒ぎだ。日本の世界遺産登録と引き換えに、新たな外交的武器を勝ち取ったからだ。

初めて強制労働を認めた

—7月5日、明治日本の23の産業革命遺産がユネスコの世界遺産として登録されました。韓国紙は「日本に勝った」と大喜びしているそうですね。

鈴置:韓国政府は、うち7つの施設で朝鮮人労働者が強制労働させられていたと主張、登録に反対しました。結局、朝鮮人労働者に関し日本政府が言及することで両国は妥協、登録が実現したのです。

 韓国各紙が喜んでいるのは「日本の言及ぶり」です。ここで「朝鮮人労働者の強制連行を日本政府に初めて認めさせた」からです。

 中央日報の「日本『韓国人の意に反して強制的に働かせた事実ある』」(7月6日、日本語)は、以下のように韓国政府の成功をうたいました。

  • 尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は登録決定後に会見し「韓国側の正当な憂慮が忠実に反映された」と評価した。外交部の関係者は「事実上、初めて日本政府が国際社会に強制労役を公式的に認めたという点に大きな意味がある」と述べた。
  • 外交部の当局者は「当初の目標は7カ所の施設を遺産登録から除外することで(これは果たせなかった)が、日本が強制徴用を認め、日帝強占期に対する国際社会の認識を高めることができた。この成果がより大きかった」と述べた。

 韓国外交部も同日、ホームページ(韓国語)で日本政府代表が世界遺産委員会での公式発言で「強制して労役」という言葉を使ったことを強調しました。

「強制を意味しない」

—岸田文雄外相や菅義偉官房長官は「日本政府代表の発言は強制労働を意味しない」と説明していますが。

鈴置:日韓の間で最後まで揉めたのは、まさにその「表現」でした。不法な強制労働だったと主張する韓国は「forced labour」(強制労働)という言葉を使うべきだとしました。

 一方、朝鮮人の労働は戦時徴用(requisition)という、法に則ったものだったと主張する日本は「forced to work」(働かされた)を使うべきとしました。

 最後は日本の主張する「forced to work」を使うことになりました。そして「働かされた」という日本語訳を念頭に、岸田外相らは「強制労働を意味しない」と主張したのです。

 これに対し、韓国外交部は先ほど紹介したように「forced to work」を「強制して労役」と韓国語に訳し「強制労働だったことを日本に認めさせた」と言っているのです。外交的にはよくある玉虫色の解決です。

 ただ、正本は英語。「forced to work」です。もろに「強制労働」を意味する「forced labour」ほどではないにしろ「強制労働」と受け止められる可能性が高い、と指摘する専門家が多いのです。

 ことに7月5日のユネスコの世界遺産委員会での演説で、日本政府代表の佐藤地(くに)ユネスコ政府代表部大使は「brought against their will and forced to work under harsh conditions」と語りました。

 交渉の過程で韓国側と折り合うために盛り込んだ発言と見られます。これを日本政府は日本語では「その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の中で働かされた」と翻訳しています。

第2の河野談話か

 しかし、福井県立大学の島田洋一教授は自身のブログ「第2の河野談話か、世界遺産『意思に反し労働強いる』」などで、以下のように懸念しました。

  • 「brought against their will…」との表現も強制連行を想起させる。だから、韓国外交部もメディアに対し、日本政府代表の発言としてここを強調している。中央日報の「『強制労働でない』という日本に韓国政府『英語の原文を見るべき』一蹴」(7月7日、日本語版)を見るとよく分かる。
  • 日本政府代表は演説で『requisition(徴用)』という単語を使い、強制労働ではないことを主張した。だが、英語を母国語とする人でもこの単語を聞いてすっと意味が分かる人は少ない。するとそれを説明する「brought against their will…」部分を見て「強制連行、強制労働」を思い浮かべることになる。

 実際、聯合ニュースは世界に向け英文でこの部分を配信しました。「S. Korea, Japan stand apart over world heritage deal」(7月7日)です。

 この記事は岸田外相らの「強制労働を意味しない」との発言を、日本の食言として批判したものです。「brought against their will…」は、日本政府がいったんは強制性を認めた証拠として引用されているのです。

韓国の口約束を信頼

—日本の各紙は「岸田外相は尹炳世外相から『日本がそうした発言をしたからといって国内の裁判で利用することはない』と言質をとった」と報じています。

鈴置:現在、戦時中の朝鮮人徴用工が補償を求め、日本企業を韓国の裁判所に訴えています。日韓正常化の際の基本条約で「両国間の財産、請求権一切の完全かつ最終的な解決が確認されている」のですが、日本企業の敗訴が続いています。

 日本政府は、こうした裁判への影響を恐れ尹炳世外相から『国内の裁判で利用することはない』との言質をとったのでしょう。

 しかし、それは口約束に過ぎません。韓国の都合によりいとも簡単に反故になるでしょう。島田洋一教授は先のブログで「慰安婦」問題に直ちに影響を与えるだろうと予測しています。

  • 韓国人一般を強制動員・強制労働の対象とした日本が、慰安婦についてのみ強制を控えたと考えるのは非合理、と(韓国の)反日勢力は慰安婦問題でも攻勢を強めるだろう。

 神戸大学大学院の木村幹教授も「brought against their will…」に関し「今、元慰安婦も元徴用工も米国で、日本政府などを訴える準備を進めている。この日本政府代表の英語での発言を韓国は十二分に活用するだろう」と語っています。

 韓国は日本の世界遺産登録に難癖を付けることで、大きな外交的な武器を手にしたのです。朴槿恵(パク・クンヘ)政権としては「日本にひと泡吹かせた」という国民の喝采も得られましたし。

奇襲に狼狽した日本

—日本政府はなぜ、そんな言質を与えたのでしょうか。

鈴置:専門家の間でもそれは謎なのです。世界遺産への登録に必死になるあまり「徴用工」や「慰安婦」への影響を考えるのがお留守になった、との見方もあります。

 ほぼ決まった、と安心しているところに韓国から突然に横やりが入ったので狼狽したのかもしれません。日本の困惑ぶりが、4月10日の下村博文文部科学相の会見にのぞいています。以下です。

  • 山口、九州の近代産業遺産群は、いわゆる韓国の主張される1910年以前のお話で、そこに強制的に朝鮮の方の労働が行われたとかいうことではない、つまり時代が全然違う話なわけですね。
  • ですから、韓国の主張、懸念は、この近代工業明治遺産については当たらないということを、詳しく丁寧に説明をしていきたいと思います。
  • このことについては、韓国の文化大臣と2度ほどお会いしたことがありましたが、昨年、一昨年と、韓国側から懸念が出たときに、そういうことを申し上げました。それに対して、特に反論はありませんでした。

「言いつけ」で墓穴

 下村文科相も指摘するように、昨年までに2度に渡って説明しても文句を言わなかった韓国政府が、世界遺産登録直前になって突然、大騒ぎしたのです。何と、大統領までがユネスコ高官に「言いつけた」のです。

 あるいは日本政府は「慰安婦」と同様に「徴用工」の問題も、日韓基本条約ですべて解決済みと主張すればいいのだ、と判断したのかもしれません。

 ことに韓国が「慰安婦」で執拗な言いつけ外交を展開した結果、米国の韓国疲れを呼ぶなど自ら墓穴を掘ったことも、日本の強気材料になったのかもしれません(「朴槿恵外交に噴出する『無能』批判」参照)。

 しかし「慰安婦」では、日本が法的に正しかったから米国の支持を得たのではありません。韓国のやり方があまりに強引だったからです。それを考えると、何も「徴用工」という新たな対日攻撃材料を韓国に与えることはないのです。

逆転勝ちの韓国

—「日本をやっつけた韓国」は強気になりますか?

鈴置:4月以降「無能外交」「外交敗北」などの見出しが新聞に躍っていました。米中を背景に日本を叩く、という戦略が破綻したからです。韓国全体がしょげ返っていました。

 それが一転、元気が出た感じです。「世界遺産」は世界中の国を味方に付け、日本叩きに成功したケースと韓国人が考えたからです。他国の力を使って日本を叩く――という発想は間違っていなかったのだ、と自信を取り戻したのです。

 中央日報の「韓国、『逆転判定勝ち?』(6月6日、日本語)は、日本が5年間もかけて周到に準備した遺産への登録を「逆転勝ち」できたのは国を挙げての国際社会への働きかけが奏功した、と書いています。以下です。

延期は日本に打撃だった

  • 朴槿恵大統領は4月の中南米訪問で会員国のコロンビア・ペルーの大統領に会ったのに続き、5月には訪韓したインド首相に会い、韓国側の立場を詳細に説明した。最近は19委員国すべてに親書を送った。
  • 尹長官は6月、世界遺産委員会議長国のドイツに行って外相会談を開き、マレーシア外相に会いに米ニューヨークへ行った。政府当局者は委員国の関係者と接触する際、強制徴用関連の写真、証言録などを動員した。当時、「こうした歴史的な事実があったことを全く知らなかった」という反応が多かったという。
  • 国会も動いた。鄭義和(チョン・ウィファ)国会議長は5月にインドを訪問し、訪韓したベトナムのホーチミン党書記と夕食会で文化遺産登録問題を議論した。羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)国会外交統一委員長も4、5月、委員国の国会外交委員長あてに書簡を発送した。
  • 国際社会の圧力もあった。議長国ドイツのシュタインマイヤー外相は先月、尹炳世外相との会談で、「両国が合意できなければ、次の会期の来年にまた議論することも可能」という考えを明らかにしたという。来年また議論するという発言は日本には大きな負担だった。韓国の委員国任期は2017年までだが、日本の任期は今年11月までだった。
  • 米国のマイク・ホンダ氏(民主)、クリス・ギブソン氏(共和)ら下院議員6人は3日(現地時間)、マリア・ベーマー世界遺産委員会議長に連名書簡を送り、「日本が自国の現代史を強調することには反対しないが、第2次世界大戦当時の連合国戦争捕虜の歴史が抜けたのは遺憾」と明らかにした。

松下村塾も排撃する

 自信を取り戻した韓国では、今回登録が決まった松下村塾も排撃の対象にしようとの声が上がりました。聯合ニュースの「松下村塾の世界遺産登録 韓国政府『問題意識ある』」(7月7日、日本語版)は、以下のように報じています。

  • 7日の定例会見で記者の質問に答えた外交部の魯光鎰(ノ・グァンイル)報道官は「世界遺産委員会のレベルで(問題を)提起するのは効果的でない面がある」と述べ、今後、世界遺産を離れたほかの場でこの問題を検討する考えを示した。
  • 松下村塾は江戸時代末期に吉田松陰が主宰した私塾。吉田松陰は征韓論や大東亜共栄圏などを提唱し、朝鮮の植民地化を含めた日本の帝国主義政策に理論を提供した。安倍晋三首相が最も尊敬する人物とされている。

—すっかり元気になりましたね。それにしても感情の起伏が本当に激しい……。

鈴置:それが韓国です。そんな、情緒的な外交を展開する自分の国を匿名で厳しく批判するヴァンダービルド氏が「世界遺産」に関し筆をとりました。ワールドカップの日韓共催になぞらえ、韓国人に「調子に乗るな」と警告を発しています。

 「ユネスコ事件は2002年ワールドカップの再現」(7月6日、韓国語)を要約します。

慰安婦問題がもう1つ

  • 2002年のワールドカップ開催はまず日本が動いた。韓国は遅れた。そこで政治的なカードを使った。第3国は韓日の先鋭的な対立を懸念、共同開催案を提示した。拒否した側には賛成票を投じないと妥協を勧めた。結果、共同開催が決まった。
  • 世界遺産もまず、日本が関心を持ち、韓国が後から関心を持った。登録阻止が難しいと考えた韓国は強制労働も説明せよと政治カードを活用。第3国は韓日の先鋭的な対立を懸念、票対決で苦労をかけるなと妥協を勧めた。結果、強制労働を説明するとの条件付きで登録が決まった。
  • 今後の展望は以下だ。朝鮮人強制労働をついに日本が認めたと、韓国内の特殊な性向を持つ団体が今後、本格的に政治問題化するかもしれない。慰安婦が先例だ。慰安婦の強制性を匂わせた河野談話により問題が解決すると日本は考えたが、結果は反対になった。
  • 韓国政府が特殊な性向を持つ団体に引きずられがちであることを考えると、強制労働が問題化すれば、韓日関係が悪化し、第2の慰安婦問題と化す可能性がある。
  • 政府も国民も「韓日関係の悪化→韓米日協調に亀裂→韓米同盟の弱体化」を念頭に置き、特定勢力の反日扇動に流されないよう、慎重に処すことが大事だ。

中国も韓国の味方だ

—ワールドカップで日韓関係が悪化し、それが韓米同盟にも打撃を与えた、ということですか?

鈴置:ヴァンダービルド氏は書いていませんが、日本が単独開催しそうになったところに韓国が割って入ったので日本から恨まれ、1997年の通貨危機につながった、と考える韓国人もいます。

—「徴用工」は「第2の慰安婦化」しますか?

鈴置:韓国人が冷静に国益を考えれば、当然、ヴァンダービルド氏の意見に従うでしょう。でも今、韓国人は「世界を味方に日本を叩けるようになった自分」をとても愛おしく思っているのです(「『目下の日本』からドルは借りない」参照)。

 そんな中、「極右のアベ政権の外相や官房長官が、徴用工の強制性を否認した」のです。新聞の社説も一斉に日本攻撃を始めています。

 世論の風向き次第では「徴用工の強制性」を認めなければ、日本との首脳会談は開くべきではない、といった声が出てくるでしょう。

 7月6日、中国外務省の華春瑩・副報道局長は世界遺産に関し「日本は第2次世界大戦中の強制労働政策について適切な措置を取ると約束した。実際の行動でアジアと国際社会の信頼を得るべきだ」と述べました。

「俺が付いているぞ。思う存分、日本と戦え」とのメッセージです。韓国にとっては百万の味方を得た思いでしょう。