7/15日経ビジネスオンライン 福島香織『暗黒の金曜日は赤いファシズムの始まりか 「弁護士狩り」の絶望を民主化への胎動に変えよ』について

人権抑圧国家・中国の面目躍如たるものがあります。こういう国が言うことを信じる人は、どういう精神構造をしているのでしょう。「慰安婦」「南京虐殺」を今でも信じられますか。共産党・政府の都合の良いように法律を変え、正義を実現しようとする人を弾圧します。日本でも左翼政党に政権を渡せばそうなります。民主党政権で学習はしたでしょうけど。

南シナ海、東シナ海で彼らの取っている行動も、法律を勝手に作ったり、解釈したりして自己中な行動を取ります。また内蒙古、チベット、ウイグル(タイに圧力をかけてウイグル族100人を強制送還させました。新国家安全法違反で死刑になるかも知れません。国際社会はもっと中国を糾弾すべき)の弾圧も半端ではありません。

習近平のやり方は金正恩に似てきました。金は自分に逆らった玄永哲前人民武力相を銃殺したとのこと。政敵を倒すのに腐敗を理由に逮捕・拘留するのと直接死刑にするのとの違いですが、両方のトップとも腐敗しているのは間違いありません。中華と小中華というのは「賄賂社会」です。「清官三代」と言われるくらいですから。

香港に新国家安全法を適用させるのも時間の問題でしょう。香港の後背地の深圳が充分香港の代わりをしますので。香港経由で外国からの投資を呼びかけるより大陸に直接投資させるようにしてきましたので。李嘉誠も英国に逃げるかも知れません。

記事

「きょうは暗黒の金曜日です」。7月10日、中国内外のネット上に、こんなフレーズが駆け抜けた。中国株の大暴落のことではない。この日、中国で改革開放後、最大級の「弁護士狩り」が始まったからだ。中国は7月1日に新国家安全法案を可決し即日施行しているが、国家の安全を「国内外の脅威」から守るためなら、どんな無茶ぶりも容認するといわんばかりのこの法律は、これまでの法治の概念を覆すものとして、中国の心ある法律家や弁護士は懸念を示していた。今回の「弁護士狩り」は、こうした懸念が具体化したものと言える。新国家安全法、株式市場の仮死状態、法曹界に広がる粛正と続いている暗黒の7月。それは赤いファシズムの幕開けなのか。それとも。

人権擁護活動の拠点をターゲットに

 香港のラジオ局、ラジオフリーアジア(RFA)の報道などによると、10日の金曜日、多くの弁護士、人権活動家の家が家宅捜査され、また多くが行動の自由を制限され、そして多くが外界との連絡を断ち切られた。11日までに連絡が取れなくなったのは17人、うち10人が弁護士だ。5月末に政権扇動転覆容疑で逮捕された福建省の人権活動家・呉淦(ハンドルネーム「屠夫」として、ネット上で人権問題を発信していたとされる)の弁護にあたっていた弁護士や、香港の雨傘運動(革命)を支持していた弁護士らが含まれていた。

 香港愛国民主運動連合会によると12日夕までに警察当局に87人が連行され、うち7人が逮捕あるいは在宅監視、26人が連行されたまま消息不明、そのほかの54人が釈放されたという。

 一番のターゲットになったのは北京鋒鋭弁護士事務所。中国の有名な人権弁護士が所属する事務所で、中国の人権擁護活動の拠点の一つとも言われている。

 この事務所に所属する女性弁護士で、人権活動家・呉淦の弁護を担当していた王宇は木曜から夫と息子らともども連絡が取れなくなった。また同事務所の主任弁護士・周世鋒も金曜早朝、ホテルにいたところを連行されたという。周世鋒は去年、香港雨傘運動を支援して拘束されていた中国人記者助手の張淼の弁護を担当していた。張淼は木曜に釈放されたが、その後に連行されたという。鋒鋭事務所に所属する弁護士たちも一様に電話で連絡がとれなくなっていた。その後、周世鋒が連行されたと最初に情報発信した人権弁護士、劉暁原も携帯電話に出なくなった。

鋒鋭事務所は警察のガサ入れにあった。この時、事務所を訪れていた人権弁護士、張維玉も約4時間拘束された。張維玉は「午後1時頃、突然警察がやって来て、私の携帯電話などを調べた。5時半まで取り調べが続いた。鋭鋒の弁護士たちの何人かは釈放されて、この場所を離れている」とRFAに語っていた。

 また李金星、李和平、江天勇といった著名人権弁護士が連絡の取れない状況という。このほか、法律相談NGOのボランティアや、民間の人権活動家も行方が分からなくなっている。

 これを受けて、7月12日、新華社、人民日報、CCTVなど中国中央メディアは「”維権(人権擁護)”事件の黒幕、鋒鋭事務所を摘発」と一斉に報道。ほとんどの中国メディアがこれに準じた報道を展開した。

 その内容は、実に恐ろしいものである。

「社会秩序擾乱を推進した大犯罪集団を壊滅」

 「目下、中国公安部の指揮により、北京はじめ各地公安機関は集中摘発行動を展開し、北京鋒鋭弁護士事務所を拠点に、2012年7月以降、中国社会で起きた40以上の(政治的)敏感事件、社会秩序を深刻に擾乱する重大犯罪を組織、画策、扇動した大犯罪集団を壊滅させた。”人権擁護”弁護士の立場でもって、”陳情者”が相互に連携して組織化するのを推進し、人数を集めて、細かい役割を振り分けてきた犯罪集団の全容がこれにより浮かび上がってきた。

 例えば今年5月の黒竜江省で発生した”慶安事件”。警察は合法的に発砲したのだが、これがなぜ”陳情者殺害事件”と扇情的に伝えられてしまったのか?(この事件がらみで社会秩序擾乱容疑で逮捕された)翟岩民、呉淦、劉星ら、”人権活動家”の仕業である」

 慶安事件について少し説明しておこう。2015年5月2日に、黒竜江省の慶安鉄道駅待合室で、陳情(地元政府の横暴を改善してもらうために上級政府に訴えること)のために列車に乗ろうとした男性(45)が、警官に乗車を妨害されたため、その警官の銃を奪ったので、警官に射殺された事件である。男性が、単なる「狼藉者」として、警官の発砲を正当化されそうになったところ、人権活動家の呉淦らが人権問題として再調査を訴え、人権弁護士らも調査に乗り出し、陳情者の人権問題としての関心を集めて世論も喚起された。だが公安警察は翟岩民らを「各地の陳情者に報酬を出して抗議活動を組織した」として社会秩序擾乱(じょうらん)罪で逮捕していた。

 公安サイドに言わせれば、こうした人権活動の名の下に行われる社会秩序の擾乱が、全国で急速に増えており、その黒幕の一つが鋒鋭事務所だというのだ。

報道ではこう主張している。「普通の事件を政治的敏感事件に扇動し、真相を知らない群衆やネットユーザーの政府への不満を焚き付けるのが鋒鋭の一貫したやり口だ。鋒鋭に所属する弁護士・黄力群はこう供述している。『(事務所主任弁護士の)周世鋒は自分のことを法曹界の宋江(北宋末の農民蜂起の指導者、水滸伝の主人公モデル)だと言っている。…違法な手段で事件を大きくする、法律を守らない食い詰めた弁護士を集めて、担当事件を大きく扇動していた』…目下、周世鋒、劉四新、黄力軍、王宇、王全璋、包龍軍など多くの容疑者が法に従って刑事拘留されている。彼らは他の重大違法犯罪に関わっている可能性もあり、さらに捜査を進めている」

習近平政権は人権擁護を重大犯罪と位置づけた

 これがどういうことか。習近平政権は、人権擁護活動を公式に違法だと、政権に刃向かう重大犯罪だと位置づけたのである。

 中国の人権問題は今なお深刻である。2011年の段階で年間23万件あった群集性事件、つまり暴動やデモ・抗議活動はその後も増えており、その多くが、自分たちの権利を不条理に踏みにじられたと感じる人々の不満の発露としての行動である。不完全な法治の下で、不条理な暴力に抵抗する最後の手法はやはり、暴力になってしまうのだ。

 中国では、あまり機能しない司法のかわりに、中国共産党の上層部門に直接問題を訴える陳情という独特の問題解決手段が残されている。だが、慶安事件のように、その陳情の権利すら、踏みにじられることが多い。人権活動家や人権弁護士たちの役目は、その庶民が受ける不条理な暴力や踏みにじられた権利を、ネットや国内外メディアを通じて広く社会に知らしめることで世論を喚起し、事実を党中央、中央政府の耳に届け、善処してもらおうということである。

 暴力に暴力で刃向かうしかなかった人々に、世論に訴える方法で、自分たちの窮状を中央政府に認識してもらい、中央政府に助けを求める手法を教える人権弁護士たちが、どうして政権転覆扇動や秩序擾乱に問われるのか。むしろ、社会を不安定化させる暴力的な群衆性事件や、不条理な社会への報復を目的とした他人巻き込み型自殺を防ぐ効果があるとは言えまいか。だが、習近平政権は、そういう人権活動家、人権弁護士たちを、社会の不満分子を焚き付けて社会を不安定化させるものと決めつけたのだった。

これまでの政権は、建前だけでも「国は人権を尊重し保障する」という中国憲法の条文を真っ向から否定するようなことはなかった。だから地方政府がいかにあくどく庶民の人権を蹂躙しても、党中央に声が届けば助けてもらえる、という一縷の望みを人々は持っていた。だが、この「弁護士狩り」によって、それは幻想であることを突きつけられた。「大衆路線」を掲げ、社会の末端の基層民(農民・労働者)の絶大な支持を得ているとされる習近平が一番恐れ、敵とみなしているのは実は、末端の虐げられた人民なのだ。

 実は、習近平政権のこうした性格は7月1日に施行された新国家安全法にも垣間見えていた。この法律は、「国家の安全を守る」ための総合的な法律と位置づけられ、その適用範囲が非常に広い。政治の安全、国土の安全、軍事の安全、経済の安全、文化の安全、社会の安全、科学技術の安全、情報の安全、生態の安全、資源の安全、核の安全などが、すべて国家の安全であり、これら国家安全を国内外の脅威から守ることが中国公民と組織の義務であるとしている。

 条文の中では、「いかなる国への謀反、国家分裂、反乱の扇動、人民民主専制政権を転覆あるいは転覆扇動する行為を防止する」とあり、この法律を理由に、人権擁護活動や言論の自由が大きく制限されるのではないか、と懸念されていた。従来も、政府に批判的な言論や活動は、挑発罪や政権転覆扇動罪などに問われる可能性は大きかったが、この立法によって、適用範囲はインターネット上や文化活動、経済活動などにも広がることになり、たとえば株価暴落を引き起こした企業の持ち株大量売りなども、政権転覆、あるいは国家安全を損なった容疑に問われるかもしれない。

 ちなみに、この法律は、反テロ法、国外非政府組織管理法と並んで習近平政権の高圧政治を実現するための三大立法とかねてから警戒されていた。また、ある種の非常事態、内乱や紛争状態までを仮定した立法ではないかという意見もある。

個人独裁、それは絶望への道

 こうした今の中国の現状を見て、思い浮かぶ言葉は、ただ一言、絶望である。習近平政権が望むのは、赤い帝国主義、赤いファシズムである。従来の共産党政治も独裁であったが、それは集団指導体制という寡頭独裁であり、改革開放を推し進めるにしたがって、それは党内民主に拡大していくかも、という期待を持つ余地があった。

 だが習近平政権が今向かっているのは、習近平を頂点とした個人独裁であり、政治も経済も人民の思想も心も、周辺国家の価値観ですら党の完全なコントロールを受ける世界である。このままでは、国際社会にとっても非常に危険なきな臭い国になっていくのではないだろうか。

だがここで、少しだけ気休めかもしれない言葉を贈ろう。台湾の民主化プロセスを積極的に取材している在米亡命中国人作家の余傑が、この事件について書いたコラム「中国は美麗島時代に突入」の引用である。「美麗島」とは、国民党独裁時代の台湾で、党外各派の活動家が集結して創刊された雑誌の名だ。1979年12月10日、「美麗島」誌が主催した高雄市のデモが警官隊と衝突し、同誌関係者が投獄された弾圧事件を美麗島事件と呼ぶ。この事件によって、台湾の民主化への希求は勢いを増し、後に逮捕されたメンバーや弁護団が民進党幹部となり、台湾民主化の大きな推進力となった。余傑はこう書いている。

新たな「美麗島時代」の始まりとせよ

 「私は明確に思ったことがある。この”暗黒の金曜日”は、中国が正式に『美麗島時代』に突入したという証しではないだろうか。中国の民主化の進み具合は台湾よりまるまる36年遅れている。しかし、ついにその時は来た。

 1979年の台湾は、今日の中国と同じく、もっとも恐ろしく、純心な時代であった。政治評論家の陳芳明の言葉を用いれば、美麗島事件は一つの歴史の終結のシグナルであり、一つの歴史の始まりであった。『美麗島事件は革命とは言えず、もちろん政変でもなく、政府がいうところの暴動でもない。だからこそ、新しい世代にとって、魂における一つの革命的風景となったのだ。…我々(中国人)は美麗島事件がどのように歴史の流れを改変したか遡って見る必要がある』…」

 余傑はあまりに夢見がちだろうか。

 いや、台湾の民主化の背景に、国際社会のサポートもあったことを思えば、そういう可能性もまだあるのだと思いながら、中国と向き合っていくことは必要かもしれない。

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