7/17日経ビジネスオンライン 北村豊『12年連続「離婚」増、急増要因は所得税逃れ 酷暑の喧嘩、番号制限…中国的離婚最新事情』について

「上に政策あれば下に対策あり(上有政策、下有対策)」だと思います。証明書だって偽造が当たり前の国ですから。いつも言ってますように、騙されるのが悪いというお国柄です。でもこれは合法的なやり方でましなやり方です。

中国は男女平等で働くのが当たり前、転勤も当たり前、働く場所も中国全土ですから、小生が中国で勤務していた時に不倫はごく自然と言う感じでした。そういう意味ではアメリカ人に近いのかも。彼らが孔孟の末裔とは思えません。

日本の離婚率は1.77%とのこと。日本でも以前より離婚に対して社会の許容度は上がっていると思います。

http://woman.mynavi.jp/article/150202-160/

中国は男女とも主張する民族で、わざと女性は大声を挙げて男性を詰ります。一人っ子政策で女性が少ないという影響もあると思います。中国では宗族を継げる(お墓を守れるのは)のは男となっていますので男を生みたがります。ですから男女比が極端にアンバランスになります。女性が強くなり、共産党の政策を変えることができれば良いのでしょうけど、共産党は人民は収奪対象と思っていますので期待するだけ無駄でしょう。

記事

2015年6月10日、中国政府“民政部”は『“2014年社会服務発展統計公報(2014年社会サービス発展統計官報)”』を発表した。同統計によれば、2014年に法的手続きを経た離婚件数は363.7万組で、前年比3.9%増、その“粗離婚率”<注1>は2.71%で、前年比0.1%増であった。離婚件数の内訳は、民政部門に届けを出した離婚件数が295.7万組、“法院(裁判所)”が離婚処理を行った件数が67.9万組であった。

<注1>粗離婚率(crude divorce rate)は国連のデータに使用される指標で、人口1000人につき離婚が成立した合計数を使って算出される。

 中国では2003年以来、離婚率が12年連続で年々上昇している。この軌跡を過去8年間の数字で見てみると下表の通りである。

中国の離婚件数と粗離婚率(2007~2014年)

離婚件数 (万組) 届け出による 離婚件数 (万組) 裁判所の処理による離婚件数 (万組) 粗離婚率 (‰)
2007 209.8 145.7 64.1 1.59
2008 226.9 160.9 65.9 1.71
2009 246.8 180.2 66.6 1.85
2010 267.8 201.0 66.8 2.00
2011 287.4 220.7 66.7 2.13
2012 310.4 242.3 68.1 2.29
2013 350.0 281.5 68.5 2.58
2014 363.7 295.7 67.9 2.67

(出所)中国・民政部統計データにより筆者作成

2013年、離婚急増の要因は?

 表を見れば分かるように、離婚件数は2007年から2014年までの8年間に73%も増大している。届け出による離婚件数は何と103%の増大で倍増している。一方の裁判所の処理による離婚件数は、最大68.5万組、最低64.1万組と60万組台で推移しているが、これは裁判所の処理能力によるもので、大きく変動することはないのだろう。ちなみに、2013年における日本の離婚件数は23万1383組で、粗離婚率は1.80%であった。

 離婚件数が前年比で最も増大したのは2013年であった。2012年に310.4万組であった離婚件数は、2013年には350.0万組となり、約40万件増えて12.8%も増大した。これを北京市の数字で見てみると、北京市の離婚件数は、2010年:3万2595組、2011年:3万2999組、2012年:3万8243組と推移したが、2013年には5万4536組と前年比42.6%も増大したのだった。なお、2014年は5万5944組で、前年比2.5%の微増にとどまった。それでは、2013年に離婚件数が急増した理由は何だったのか。

2013年2月20日、中国政府“国務院”の“常務会議”は暴騰する不動産市場の抑制強化を目的とした5カ条からなる政策を決定し、全国の大中都市に対して不動産価格の安定を図るよう指示を出した。この5カ条の政策を「新国五条」と呼ぶが、その細則の中に「個人が住宅を転売して得た所得については、転売収入から住宅原価と合理的な費用を差し引いた金額に対して20%の税率で個人所得税を徴収する」という規定があった。

「住宅転売に所得税20%」に偽装で対抗

 これに驚いたのが投資目的で2軒目の住宅を所有する夫婦であった。投資目的の住宅を転売すれば利益に対して20%の個人所得税を徴収される。新国五条だかなんだか知らないが、勝手に決めた政策で税金を徴収されるのは面白くない。何か良い方策はないものか。そこで考えたのが、夫婦が形式的に離婚するという方策だった。

 2011年8月13日から施行された法規定の『最高人民法院による「中華人民共和国婚姻法」適用に関する若干問題の解釈(三)』は、従来は非常に面倒だった離婚の際の財産分与を容易にしていた。また、これに加えて、2003年10月1日から施行された「婚姻登記条例」によって離婚手続が大幅に簡素化された。当該条例によって、“単位(勤務先)”や“居民委員会(住民委員会=町内会)の“介紹信(紹介状)”なしで、必要書類さえそろっていれば、従来必要だった1カ月の審査期間なしで、離婚できるようになった。

 この規定と条例を利用して偽装離婚すれば、個人所得税を逃れることが可能となる。すなわち、夫婦は地元の“民政局”の「婚姻登記所」に離婚届を提出し、正式に離婚する。その際、協議により夫婦の財産である2軒の住宅を分配して、それぞれ1軒の住宅を所有することにする。そうすれば、所有する住宅は元の夫が1軒、元の妻が1軒となり、たとえどちらか1軒を売ったとしても転売益にかかる20%の所得税は徴収されないことになる。こうした前提の下で、夫婦が共謀して偽装離婚するのだから、2013年当時は、離婚する夫婦が両親や子供を連れて楽しげに婚姻登記所を訪れ、満面の笑みをたたえて離婚届を提出するという奇妙な現象が多発したという。

ところで、この2013年の現象について、米国の大学で教鞭を取る中国人の某客員教授は興味深い見解を述べているので、参考まで紹介すると以下の通り。

翌年に復縁、上海で17.4%増

  • 【1】伝統的な中国文化では、婚姻は天が定めたもので、“美満婚姻(めでたい婚姻)”を「“天作之合(天意による結合)”」と形容したし、俗語では「“五百年前結成姻縁(500年前に結ばれた縁組)”」とも言った。暗闇の中で“月下老人(縁結びの神)”が縁のある男女の足首を赤い紐で縛るのが夫婦の縁である。結婚後は、妻が夫に従い、夫は妻をいたわる。妻が親不幸や淫乱、盗み、嫉妬などの大罪を犯した時だけ、夫は妻を離縁することができるというものだった。
  • 【2】しかし、現在の中国人はその大多数が物質的利益を重視しており、結婚をある意味で再分配の機会だと考えている節すらある。結婚式では若い新婚夫婦がひたすら“紅包(祝儀)”のカネを数えているし、20%の所得税の徴収を逃れるという物質的利益のためなら、偽装とはいえ離婚することもいとわない。これは無神論に起因するもので、物質が意識を決定する。このため、人は物質的利益をますます重視するようになる一方で、中国には宗教や信仰がないことも加わって、人には結婚も含めて神聖な物が何も存在しないことになる。

 閑話休題、2015年3月に上海市の民政局が発表した「2014年上海市婚姻登記報告」によれば、上海市では2014年に復縁した夫婦が1万7286組あり、前年比17.4%増大したという。上海市当局は、これらの復縁した夫婦の大部分は3年前の2012年2月に発動された新国五条の細則規定に基づく所得税の納入を嫌って偽装離婚した夫婦で、投資目的の住宅を転売した後に再び婚姻届を提出したものと思われると分析した。我々日本人の感覚から言えば、「住宅の転売収入から住宅原価と合理的な費用を差し引いた金額に対する20%の所得税」を免れるためにわざわざ偽装離婚をするかと思うが、たとえ小額であろうとも意に沿わない税金を納めるくらいなら、偽装離婚してでも逃れた方がよいと考えるのが中国人の真骨頂なのだ。

さて、中国で離婚件数および離婚率が増大しているのは、社会のテンポが速まっているのに加えて、社会観念の変化、“婚外情(不倫)”の増大などに起因していると考えられる。さらに、夫婦関係に亀裂が生じた時、“微信(WeChat)”や“陌陌(momo)”などのSNS(Social Networking Service)が不倫を誘発させる道具となり、婚姻関係の新たな破壊者として機能する可能性が高い。

夏に急増、番号制限も

 7月10日付の中国メディアは、夏季になって全国各地で離婚が急増していると一斉に報じた。当該報道によれば、離婚急増の理由は以下の通り。

  • (1)夏季の酷暑に人々はいら立ち、土・日曜日に家でけんかをしたら、月曜日の朝一番で民生局へ離婚手続きにやって来る。
  • (2)高校や大学の入学試験の合格者名が発表された後、子供の学習意欲を妨げないように我慢していた親たちはほっと一息つき、密かに離婚する。
  • (3)希望校の通学区内に住宅を購入するため、一部の親は9月の新学期前に離婚する。

 上記(3)は、上述した新国五条に基づき各地方政府によって発令された“限購令”の規制を免れるためという意味だろう。すなわち、“限購令”とは、1つの家庭が購入可能な住宅を1軒に制限することを骨子とした法令だが、最近は徐々に解除される方向にある。“限購令”が依然として解除されていない地域であれば、子供を希望校へ入学させようと、親が離婚して当該校の通学区内に住宅を購入するのは有り得ないことではない。

 何はともあれ、夏季になって各地の民政局には離婚届を提出しようとする夫婦が殺到するようになった。しかし、だからと言って、提出された離婚届を受け付ける民政局婚姻登記所の窓口が増える訳ではない。必然的に窓口には離婚届を提出しようとする夫婦の列が出来るが、1日に処理可能な件数には限りが有る。江蘇省“南京市”や広東省“広州市”などの大都市では、離婚届を提出しようとする夫婦には1日に処理可能な分だけ整理番号が配られるようになった。早朝に婚姻登記所へ出向けば整理番号はもらえるが、少しでも遅くなれば整理番号はもらえない。メディアはこうした整理番号方式を“限号(番号制限)”と呼び、「遂に離婚も番号制限」という見出しで夏季の離婚増大を報じた。

一方、7月10日付の北京市の朝刊紙「北京晨報」は、毎年“高考(大学入試)”<注2>が終わった6月から9月の間に離婚する夫婦が増大し、ちょっとした離婚のピークを形成していると報じた。これは上述した離婚急増理由のうちの(2)に該当するものだが、北京晨報は他紙の報道を引用して、“高考”終了後に急増する離婚の実態を次のように示した。

<注2>“高考”は“全国統一高等院校招生統一考試”の略。“高等院校”は高等教育機関の総称。

  1. 湖北省武漢市の朝刊紙「武漢晨報」  統計数字を見て記者は、2009年以来、遼寧省、湖南省、青海省、天津市、重慶市、山東省、浙江省、河南省などの地域では、毎年“高考”終了後の20日間は、その前の20日間に比べて、“法院(裁判所)”が受理する離婚の案件数は比較的増大する趨勢にある。
  2. 湖南省の夕刊紙「三湘都市報」  “長沙市”の“五城区”では、“高考”が行われていた1週間に247組の夫婦が離婚したが、“高考”が終了後の1週間は493組の夫婦が離婚し、離婚件数は倍増した。離婚原因の大部分は「感情の不調和であり、もう子供のために我慢する必要がなくなった」というものだった。
  3. 黒龍江省の夕刊紙「生活報」  若い夫婦の離婚が衝動的なのと比べて、これら子供に対する責任感から結婚生活を継続して来た中年夫婦の離婚はその大多数が非常に冷静で、決意が固いものである。

中国の離婚率、上昇は止まらず

 昨今の日本では夫の定年退職後に妻から要求して離婚する夫婦が増えていると言われている。これは年代的に夫の収入に依存して生活してきた家庭婦人が多いことに起因している。彼女たちは子供の成人で親としての責任を果たし、夫の定年退職で妻としての責任を果たしたことを契機に、自立した自由な生活を求めて離婚を選択しているものと思われる。一方、中国では基本的に夫婦は共働きで、各々収入を得ている上に、夫婦別姓であるから、離婚しても社会生活に支障を来たすことはほとんどない。

 従い、主として若い夫婦の衝動的な離婚は別として、子供が大学に合格したことを確認し、親としての責任を果たした時点で、離婚する夫婦が多いことは納得できる。これに対して、所得税の徴収を逃れるために偽装離婚する夫婦が多いことは、“向銭看(拝金主義)”<注3>の中国人を象徴している。もっとも、日本にも生活保護を受けるために偽装離婚して、夫婦がそれぞれ生活保護費を受けている不埒な輩も多数いるようだから、中国人だけの特性とは言い難い。

<注3>“向銭看”は“向前看(前を見る)”と同じ発音で、拝金主義を揶揄した造語。

 筆者の友人の中国人にも離婚経験者が多数いるが、総じて言えることは、彼らが離婚をそれほど重いものと感じておらず、気持ちが合わないパートナーとはさっさと分かれた方が精神的負担に悩まなくて済むと気楽に考えていることである。社会がますます複雑化する中で、ただでさえも自己主張の強い中国人が夫婦間で軋轢を感じる度合は今以上に増大し、中国の離婚件数と粗離婚率は今後も引き続き上昇してゆくものと思われる。