『草の根民主」勝ち取った烏坎村に、再びの乱 村長逮捕に村民が抗議デモ。政争か、新たな胎動か』(6/29日経ビジネスオンライン 福島香織 )について

無法国家中国の面目躍如といったところでしょうか。国際的・国内でもトラブル尽くしの感があります。住民自治のテストケースである烏坎村を弾圧すると言うことは、権力闘争の面だけでなく、中国共産党は「民主主義は絶対に認めない」固い決意の表れと思います。香港の民主主義も危ういでしょう。台湾も良く見ておかないと。今回の烏坎村の村長の拉致も香港の銅鑼湾書店の拉致も同じです。しかも、孫を人質にしたり、香港では愛人を楯に取ったりしました。弱い部分を責めるのが中国人のやり方です。卑怯と言えば卑怯、日本の政治家や要人でハニートラップや賄賂を与えて弱みを握るのは彼らの常套手段です。何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国柄ですから。

藤野日共政策委員長が自衛隊の予算を「人殺し予算」と呼んで辞任させられました。彼の発言は本音でしょう。モデルとして考えているのはソ連なき後は中共でしょうから、政権を取れば(ありないと思っていますが)自衛隊(=国家の軍隊)から日共軍(人民解放軍と同じ党の軍隊)に変える積りなのでしょう。人民解放軍と同じく日共軍は天安門事件のような内乱鎮圧の名目で国民に刃を向けるでしょう。共産主義とは人権抑圧する自己中の人類を不幸にするシステムのことです。中国駐在8年間の経験から言ってそう断言できます。

今度の参院選で、共産党が伸びるような報道がされていますが、彼らの仮面の下には恐ろしい野心が隠されていることに国民は早く気付くべきです。反日民進党の岡田党首は日共との野合で「庇を貸して母屋を取られる」状況となりました。愚かなリーダーを戴くと組織は弱体化する良い例です。東大→官僚出身はアカにシンパシーを持つ人が多いので要注意です。ネットで不断の言動に注意を払っておかないと。マスメデイアは「報道しない自由」を行使するときが多いので。

記事

Wukan cun

広東省・烏坎村の村長逮捕に村民が抗議デモ。子供たちも参加した(写真:ロイター/アフロ)

 広東省汕尾市の烏坎村で今月17日、異変が起きた。村民直接選挙で選ばれた村長(村民委員会主任)・林祖恋(銮)が“汚職容疑”で突如拘束されたのだ。だが、この“汚職容疑”を村民が信じることはなく、村長釈放を求めて村では村民3000~4000人が連日抗議デモを展開中だ。当初は外国メディア、香港メディアも村で現場取材を行ったが、現在はメディアは締め出されている模様。これは、中国の農村でありがちな単なる“群衆事件”の一つにすぎないのか。

 だが、この烏坎村は、ただの農村ではない。2011年から12年にかけて“烏坎の乱”と呼ばれた村民のデモによって自治を勝ち取り、旧共産党支部書記を追い出した。その後、林祖恋は党支部書記を兼任してはいるが、村の重要政策は村民大会という民主的な方法で決める、村内民主を実現。中国唯一といってよい“草の根民主の村”として、“烏坎モデル”と呼ばれるようになった。そんな村で、今何が起きているのか、それが何を意味するのか、考えてみたい。

道路を封鎖し、汚職容疑で逮捕

 今回の事件の経緯を振りかえってみよう。

 6月17日深夜、烏坎村に突然、大量の警察官がやってきて、道路を封鎖しはじめた。そして18日未明、村長の林祖恋を“汚職容疑”で拘束した。香港紙明報に、林祖恋の妻が語ったところによると、17日夜は林祖恋の友人の前東海鎮長が林家を訪れていたのだが、その親友が帰宅した直後を見計らって警官隊が家になだれ込んだ。親友に「携帯電話を忘れた」と言わせて、林家の玄関を開けさせると、着替える猶予も与えずに、ランニングシャツ一枚の恰好のまま彼を連行していったという。このとき警官たちは連行の理由も言わなかった。林祖恋は19日に村民大会を開き、21日に2011年の“烏坎事件”の原因ともなった土地強制収容問題の解決を求めて、上層部門に陳情にいくことを決定するつもりであったという。この陳情行動のため、林祖恋は自分が捕まったときに妻や子供たちに累が及ばないように離婚の書類にもサインしていたという。

 その翌日の新聞で、地元の地方検察院が林祖恋を汚職・収賄罪で立件したことが発表された。また地元公安当局は、現在、彼を取り調べ中であり、村民全員が捜査に協力するようにと呼びかけたうえ、「不穏分子が、この事件を利用して過激な行動をとらないように。暴力沙汰が起これば、法に基づいて鎮圧する」と警告を発した。

 その警告どおり、村のいたるところに、重装備の警察の暴動鎮圧部隊が配置され厳戒態勢が敷かれた。これに驚いた村民は19日、村長の冤罪を信じて抗議デモを行った。

 このデモは3000人規模に膨らみ、「われらの土地を返せ! 村長を返せ!」と叫びながら、重装備の警官隊と対峙した。この様子はビデオに撮影され、ネットにアップされたものだから、香港、海外メディアも続々と現地入りして取材するようになった。警官隊は記者たちを追い出そうとしたが、村民は記者たちを保護し、取材させた。5年前にこの村が自治を勝ち取ったのと同じ戦略で、村長不在のまま村民の抵抗運動が始まった。デモは連日、繰り返された。村民たちは、訪れる記者たちに口々に「村長は我々が選んだよい村長だ。汚職などするわけがない」と冤罪を主張した。

自白ビデオは孫を人質に強要

 だが、21日に汕尾市政府は、林祖恋の取り調べ中に自分の罪を認めているビデオを公開。

 ビデオの中では警察の尋問に対し、林祖恋自身が「法律知識が浅いために、建設プロジェクトの管理職務にあることを利用して、民生建設プロジェクトの発注の便宜を図るために巨額のキックバックを受け取ってしまいました。この件について検察機関に自首し、素直に処分を待つものです」と述べていた。汕尾市政府の発表によれば、村の学校の運動場工事にかかわる汚職ということだった。だが、この自白は孫を当局に人質に取られて仕方なく行ったものであるということが後に判明した。

 汕尾市政府はこの件について「国内外メディアはこの事件を法に従って客観的公正に取材し報じるように。しかし、蘋果日報(香港紙)、端傳媒(香港ネット総合メディア)など、個別の境外メディアは村内で扇動、画策、指導を行っており、我々は法に基づいて措置をとる」とコメントし、メディアをけん制した。

 村の副書記である張水金は「市政府は、土地問題については処理チームを立ち上げたので、もう村民大会は開く必要ない。この問題に対し村民委員会は何の権力もない」と村民に説明した。

 このことが村民たちの怒りにさらに油を注いだ。林祖恋の自白によって無事釈放された実孫によれば「村民の99%は爺さんを支持している」と祖父を擁護した。汚職容疑についても、“巨額”というだけで具体的な汚職額も出ておらず、また裁判も開かれないうちに、林祖恋の自白ビデオを公開して罪を確定するような印象操作のやり方からも、村民のほとんどは冤罪であると考えているようだった。

 中国の農村で、村民が土地の強制収容問題などで当局サイドと対立して抗議デモを行う、あるいは官民衝突に発展するという事件は実は中国全土で毎日、何百件という頻度で起きている。だが、なぜこの村の事件が、海外メディアまでに、ここまで注目されるのか。

 それは間違いなく、この村が烏坎村だからだ。

烏坎モデルは汪洋の遺産

 2011年9月21日から翌年3月にかけて、通称“烏坎事件”と呼ばれる、村民デモと地元警察の衝突、そして村民自らが立ち上げた自治組織による村政の奪還を実現する一連の事件が起きた。きっかけは当時の村の書記兼村長らが農地を勝手に不動産企業に7億元で譲渡したこと。村民には一人500元というわずかな補償金(全村で約400万元)を渡しただけで、残りを書記ら一部役員で着服していた。村の青年たちはこの土地汚職の真相究明を求めデモを繰り返していたが、9月21日、3000人規模に膨れ上がった抗議デモは地元警官隊と衝突、10人以上の負傷者と4人の逮捕者を出した。村民たちは自ら投票で選出した村民代表による自治組織、臨時村民代表理事会を結成して、旧来の党支部書記ら村民委員会の役員たちを追い出した。

 土地収用汚職事件については上級市である陸豊市が調査班を送りこんで調査することになったが、村民が選挙によって自ら選んだ臨時村民代表理事会は違法組織ということになり、副会長として土地収用汚職事件の追及を中心となって行っていた薛錦波が12月9日に不当に逮捕された。だが、12月11日に薛錦波は警察の拷問により死亡。村民の抗議活動はこれでますます激化した。村民暴動を恐れた当局は武装警察を派遣して村の電気水道などライフラインを断ち、兵糧攻め作戦を展開し、報道規制も行うのだが、出稼ぎにいっていた村の若者たちがインターネットやSNSを駆使して、世界にこの事件を発信。当局の報道規制の網をかいくぐって外国メディア記者たちを村内に手引きし、外国メディアにも報道させた。この時点で、すでに事件のテーマは土地汚職問題解明ではなく、村民の自治組織を違法組織とするか中国当局として村民の委託を受けた正式の組織と認めるかという“民主化”の容認問題となった。

 結局、事態の拡大を恐れた当時の広東省党委書記の汪洋は、当時の広東省副書記の朱明国を現地に派遣し、村民自治組織の正当性を認めるべきだとする朱の報告を受けて、翌年1月、旧党支部を解散、臨時村民代表理事会顧問の林祖恋を新たに党支部書記に任命し、2月に村民委員会選挙を行い、新しい村長、村民委員を選出しなおした。このとき選出された村長は、自分は一村民委員に立候補したのであって、村長の任は荷が重いと辞退。3月に再度選挙を行い、林祖恋が村長も兼任することになった。

 広東省党委員会が村民の自治組織の正当性を認め、村の旧党組織を解散させたということは、“草の根民主”の勝利だと当時は外国メディアも盛んに報道した。広東省書記であった汪洋の決断が大きかったので“汪洋の遺産”という人もあった。また“烏坎モデル”が周辺の農村にも広がり、広東省で草の根民主が広がるのではないかという期待も出てきた。

 私は2012年秋に烏坎村を訪れ、事件当時、ネットの微博で事件の実況をアップして、海外メディアに事件を報じさせることで勝利を導いた若者グループの代表格である呉吉金青年を取材したことがある。彼は事件当時15歳であったが、18歳になったら村民委員に立候補して村の自治のために尽くしたい、という夢を熱く語っていた。彼らは中国共産党中央に対して深い反感はなく、党の指導を受けつつ村内民主を進めていきたいとしており、必ずしも党中央の脅威となるような思想はなかったと思う。

 だが、状況は朱明国の失脚によって変化してくる。2014年11月に広東省政治協商委員会主席の朱明国は1.4億元以上の賄賂を受け取ったとして汚職で失脚。朱明国は長らく汪洋の側近でもあったので、この事件は元政治局員の汪洋につながりかねないと噂された。

 その前のことになるが、2014年3月の村民委員選挙を前に、副主任(副村長)らが次々と汚職容疑で逮捕され実刑判決を受けた事件もあった。家族らはこれを冤罪と主張し、村民も不当逮捕であるとして昨年秋ごろから、抗議集会が行われていた。

習近平が仕掛けたのか、仕掛けられたのか

 こういった状況から推測すると、林祖恋逮捕事件は、単に烏坎村の“草の根民主”を共産党体制の脅威としてつぶそうという狙いだけでなく、来年の党大会を控えた党中央人事をめぐる権力闘争の材料ではないか、という気がする。少なくとも、林祖恋の汚職など、習近平政権の反腐敗キャンペーン“虎も蠅もたたく”においては“蠅の汚職”であり、彼を捕まえるまえに捕まえなければならない巨額汚職者が党中央にもたくさんいるわけだ。それでも、あえてその“蠅”をたたくのは、この小さな蠅が、その背後の虎の致命傷になる、と考えたからではないだろうか。

 では、この事件は誰が仕掛けて、どの“虎”をたたくつもりであったのか。二つ説がある。

 一つは、林祖恋逮捕事件が、習近平の外遊中であったことから、習近平不在の間に、習近平を困らせるために、反習近平派勢力、たとえば政治局常務委員の劉雲山らが仕掛けたのではないか、という見方である。これは大紀元などのネットメディアが報じている。

 もう一つは、前広東省書記であり政治局員の汪洋の足元をすくうために、習近平派が仕掛けた事件という見方である。烏坎村の問題を暴発させずに丸く収めた対応は、汪洋の功績として評価されていたが、その後の村の“草の根民主”が汚職と腐敗にまみれていたとなれば、その評価も地に落ちる。さらに、村民がこれに抵抗して抗議デモを繰り返えすことになれば、現広東省党委書記である胡春華が大きな政治リスクに直面することになる。汪洋も胡春華も共産主義青年団派(団派=胡錦濤派)に属する。つまり、来年の党大会を前に、ポスト習近平と噂される胡春華をつぶし、次期政治局常務委員の座が通常ならば確実視される汪洋を失脚させようとする策略ではないか、という。烏坎村の村長汚職が事実であってもなくても、村民抗議を拡大させても、武力で鎮圧しても、汪洋や胡春華はなにがしかの打撃をこうむることになるだろう。

 こうした権力闘争と結び付けた見方以外に、広東省では多くの人たちが思っている以上に、草の根民主の素地が広がっているのではないかという予測もある。以前、農村の出稼ぎ労働者問題に詳しい中国の研究者に非公式な場で質問したことがある。中国で政治改革、民主化が行われるとすれば、党中央の指導者の英断によって進められる可能性と、草の根民主による底辺からの圧力によって進められる可能性と、どちらが大きいか、と。

底辺からの圧力は高まっている

 その時の彼の答えは、迷いなく底辺からの圧力だ、というものだった。特に、若い世代の出稼ぎ農民、俗に新生代農民工とよばれる若者たちの間に急激に政治権利を求める要求が高まっている、とのことであった。

 中国のメディアコントロールが以前にもまして厳しくなっているため、南部の地方都市の工場地帯などで起こっているストライキ、労働争議の実態はほとんど報道されなくなっているが、昨年暮れから広東省の四つの労働NGO幹部が次々と拘束された背景には、労働争議が、共産党と無関係な労働者自身による労働組合の設立要求など、徐々に政治運動化しつつある実態があったという。

 その学者は、数年後には、農民や労働者の若者の間で、政治権利要求運動が目に見える形で台頭してくるのではないか、という予測を持っていた。

 そう考えると、何かの拍子で、自治を求める抗議運動などに火が付くような状況は、広東省の地方都市、農村では予想以上にくすぶっているのかもしれない。

 そういう視点でみると、烏坎村の乱の再燃は、単なる汚職摘発事件でも一過性の農村集団事件でもなく、もっと長期的な視野で考える必要があるといえそうだ。

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『金融街シティでは失業者10万人超えも EU離脱が示唆する3つの懸念』(6/29日経ビジネスオンライン  倉都康行)、『「英国EU離脱はロシアを利する」は本当か? プーチン政権、対EU政策の舵取りに伴う大きなリスク』(6/30日経ビジネスオンライン 池田元博 )について

7/1日経によればボリス・ジョンソンは次期首相選に出ないとのこと。離脱派のゴーブが名乗りを上げたからと言っても、あれだけ離脱を煽って無責任の感じがしますが。

7/1宮崎正弘氏のメルマガには「英国に進出している日本の自動車メーカーは、EUの自動車関税10%がかかっても、£安になりユーロ:£=1:1(今の£のレートは83ペンス。7/1日経)まで下がれば同じ効果が得られる」と解説していました。

7/1大前研一氏のメルマガには

<国民投票の結果を受けて、今後、どのような展開がありえるのか?

まず、大前提として国民投票には何ら「法的拘束力」はありません。今回、EUからの離脱が過半数を超えましたが、議会で否決されれば残留することになります。もちろん、その場合にはキャメロン首相は嘘つき呼ばわりされ、英国国内はぐちゃぐちゃになると思います。

すでに再投票を求める署名が200万、300万を超えたと報じられていますが、これも非常に難しいところです。もしこれで再投票をするとなったら、今後誰も英国を相手にしてくれない状況になるでしょう。

今後の展開は予測が非常に難しいですが、私は「グレートブリテン」の崩壊という危険性を感じます。

スコットランドが独立投票をしたとき、彼らの思惑は独立後に今のアイルランドのようにEUに加盟することでした。ところが、スコットランドの場合にはEUに属しているイングランドが反対すると加盟できないため、これが抑止力として働きました。

しかし今後、イングランドがEUに属さないとなると、スコットランドに対する同様の抑えは効かなくなります。スコットランドが再び独立に向けて動き出す可能性は高いと思います。

そうなれば、ウェールズ、北アイルランドでも独立運動が始まるかも知れません。ウェールズにしても征服された歴史を考えれば、独立したいと考えているでしょう。北アイルランドも、十数年前に和平交渉が成立して今では平和ですが、過去には長い間の争いと混乱がありました。ウェールズ同様に、独立の気運が高まる可能性は大いにあると思います。

また忘れてはいけないのが、「ロンドン」です。離脱派が多かったイングランドにおいて、ロンドンはEUへの残留を支持しました。EUから離脱するとなると、金融センターのポジションをフランクフルトに奪われることは間違いありません。何とかその立場を死守したいはずです。

EUには、ルクセンブルクといった小さい国もあります。今、加盟に向けて動いているクロアチアやコソボと比べても、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドは遜色ありません。

英国の状況変化だけでなく、EU内でもさらに動きがあるかも知れません。EU離脱をほのめかしているデンマークやハンガリーの動きを助長する可能性です。ハンガリーはともかく、経済的に豊かなデンマークの離脱はEUとしても無視できない影響があるでしょう。EU内におけるドイツの負担がさらに増すことは間違いありません。メルケル首相が怒り心頭になるのも頷けます。

各国の心理を考えると、可能性がありすぎてどこに落ち着くのか、予測不能です。

兎にも角にも現時点で言えば、英国は「やる必要もない国民投票」をやってしまったために、「進むも地獄、戻るも地獄」という非常に難しい立場にあります。

このままEUを離脱するにしても、議会でひっくり返すにしても、再投票するにしても、いばらの道しか残されていないと思います。>(以上)

とあり、今後の予測は難しいです。

しかし、メデイアは世の東西を問わず、反EU、反移民を掲げる政党を極右呼ばわりして印象操作しています。ナショナリズムVSグローバリズム(国際金融資本≒ユダヤ金融資本)の争いなだけです。メデイアも金の力に弱いというところでしょう。東京都知事選に在特会元会長の桜井誠氏が立候補します。自民党が成立させた在日朝鮮人のための「ヘイトスピーチ法」のおかしさや、パチンコ、生活保護受給資格などを訴えています。メデイアは無視を決め込むかもしれませんが、街頭演説で訴えることができます。供託金没収がないくらいの票が集まれば、彼の立候補も効果があったと判定できます。

これからは長くなりますので記事の紹介だけです。

6/30日経<Brexitの衝撃(3)「次は我々の番だ」 

 「英国、欧州連合(EU)から離脱へ」。24日早朝、英メディアが国民投票の大勢判明を速報すると、オランダの極右・自由党の党首ヘルト・ウィルダース(52)はすかさずツイッターに書き込んだ。「次はオランダの番だ」。ブリュッセルとロンドンのエリートだけが得をする欧州統合に英国民は「ノー」を突きつけた。そうウィルダースは解釈してみせる。「そんなEUに未来はない」

Donald Tusk & Jean Juncker

「反EU」機運の拡大がEUを揺さぶる(28日、トゥスクEU大統領(右)とユンケル欧州委員長)=AP

 翌25日、パリのエリゼ宮(大統領府)では、極右・国民戦線を率いるマリーヌ・ルペン(47)と仏大統領のフランソワ・オランド(61)が向き合っていた。

 「我々も国民にEUに残りたいかどうか問わねばならない」。与野党の緊急党首会談に臨んだルペンは、こう切り出した。背筋を伸ばし、硬い表情のオランドは首を縦にふらなかったが、ルペンの表情は余裕に満ちあふれていた。会談後、大統領府の中庭で上機嫌で記者団の取材に応じ、「議会でオランド氏の公約をしっかり検証してもらいたい」。鬱積する政府への不満で現政権の支持率は超低空飛行が続く。その裏返しでルペンらには追い風が吹いている。

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 2017年は3月にオランダ議会選、5月にはフランス大統領選が控える。世論調査では両国とも極右が支持を伸ばしている。ナショナリズムに訴え、反EUを掲げて支持を広げてきた極右。英国のEU離脱は、自らの主張が極論ではなく現実的な選択肢だと主張する格好の材料となる。

 欧米メディアや市場関係者の間では「ブレグジット(英国のEU離脱)」に続く「ネクジット(オランダ=ネザーランドの離脱)」や「フレクジット(フランスの離脱)」のドミノ連鎖がささやかれる。

 EUが抱える病は一国主義への回帰を唱える極右だけはない。金融危機後の緊縮財政への反動から生まれた急進左派勢力の台頭も、結束と安定を脅かす。

 総選挙から一夜明けた27日、スペイン首相のマリアーノ・ラホイ(61)はラジオ番組に出演し、こわばった声で「今度こそ、何としても過半数を持つ政権をつくらなければならない」と他党に妥協を訴えた。前夜、マドリード市内で支持者を前に華々しく勝利宣言した喜びは消えていた。

 スペインは昨年12月の総選挙で与党・国民党が過半数を割り、その後半年かけても連立交渉が実らず、政治空白が続いた。今回こそ政治危機に終止符を打つはずだったが、民意は安定を選ばず、国民党は再び過半数を取れなかった。

 既存政党への不満の受け皿として14年に結党した新興政党ポデモスは、わずか2年で長年の二大政党制を打ち破った。26日夜、党首のパブロ・イグレシアス(37)は「結果には満足していない」としながらも、「スペインの将来にはポデモスは必要だ」と大衆の支持の強さに自負をみせた。

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 英国のEU離脱決定直後の25日朝、ギリシャ首相のアレクシス・チプラス(41)は仏大統領のオランドと電話で話し込んでいた。「もっと社会福祉を充実した政策が必要だ」。両者はそんな内容で合意したという。

 反緊縮財政を掲げて首相に駆け上ったチプラスは1年前の7月、金融支援と引き換えに追加緊縮策をのまされた。ドイツを中心とする北部欧州に支配されたEUの横暴は、民衆の不満を高めるだけだ――。その思いは消えず、締め付けをはねのける機をうかがう。

 欧州解体論を振りかざして支持を広げようとする極右。過去の放漫財政のツケを直視せず、EUの財政規律や政策協調を脅かす急進左派。2つの対極にある政治思想が、EUをゆさぶる。

 28日、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議。EU本部には、徹夜協議を繰り広げた1年前のギリシャ危機時のような切迫感はなかった。英国との離脱交渉入りを9月以降に先送りすることを承認し、協議は日付が変わる前にあっさり終わった。記者会見場に現れたEU大統領のドナルド・トゥスク(59)は「議場は落ち着いた雰囲気だった」と淡々と語った。

 交渉の遅れは先行き不透明感として政治や経済、金融市場の安定をむしばみ、「反EU」機運の拡大にもつながりかねない。だが、離脱交渉開始の権限を英国が握る以上、EUはそれを待つしかない。半世紀にわたる欧州統合の歴史上、最大の危機を迎えたEUは、未曽有の事態を前に立ちすくんでいる。(敬称略)>(以上)

6/30日経<英EU離脱交渉 膠着へ  新首相候補 時期や方針、不透明 与党党首選、受け付け開始へ 

 【ロンドン=黄田和宏】英国の欧州連合(EU)からの離脱をめぐる状況はしばらく膠着する見通しだ。EUは28日の首脳会議で、離脱交渉を9月以降に先送りすることを容認した。英政治は29日から与党・保守党の新しい党首(首相)を選ぶ選挙戦に入る。英国がいつどんな方針で交渉を始めるかは、9月9日までに選出される新党首に委ねられる。(1面参照)

summit of EU

 保守党は29日、キャメロン首相の後継者を選ぶ党首選の立候補を受け付け始め、30日に締め切る。キャメロン氏はEUとの離脱交渉を後任に委ねる考えを示している。

 党首選で本命視されるのは、離脱派リーダー格だったジョンソン前ロンドン市長と、残留派などの支持を集めるメイ内相による対決の構図だ。

 保守党員向けの情報サイト「コンサバティブ・ホーム」が28日公表した調査では、次期首相候補としてメイ氏が29%、ジョンソン氏が28%の支持を集め、接戦が予想されている。立候補者は3人以上になる見通し。党所属の下院議員330人による投票で候補を2人に絞り込んだうえで、保守党員の決選投票に進む。

 党首選で大きな争点になりそうなのが、EU離脱に賛成した民意をどう受け止めるかだ。両氏とも国民投票の結果が出てからは、公の場で発言を控えており、考えを表明していない。

 党内からは「単一市場へのアクセスを維持するのかが最大の焦点だ」(ジャビド民間企業・技術革新・技能相)との声も上がる。両氏ともEU離脱の対処方針を含めた公約を出馬時に表明するとみられている。

 英メディアによれば、ジョンソン氏はEU離脱を公約に掲げた総選挙には消極的とされる。だが、野党・労働党が内紛状態にあるだけに、総選挙でEUとの離脱交渉の是非を問う可能性も取り沙汰される。メイ氏は国民投票で争点となった移民問題では強硬派として知られ、移民の制限で厳しい姿勢を貫く可能性もある。移民の制限などでEUの譲歩を引き出せれば、国民投票を再び実施する選択肢も残る。

 英国とEUとの離脱交渉が始まるのは、早くても新党首が選出される9月上旬以降になる。ボールは新党首が握る。EUの基本条約であるリスボン条約50条によれば、英国が欧州理事会に離脱の意思を通告しなければ交渉は始まらない。

 EUは一部で浮上した事前交渉に応じない。9月に首脳会議を再び招集し、英国の出方を待つ。だが、それまでに英国がEUに通告する準備が整うかは見通せない。>(以上)

 

倉都記事

City in London

EU離脱でロンドンの金融街、シティに開く穴はどれほどになるなのか (写真=ロイター/アフロ)

 先週木曜日の国民投票で、英国はEUからの離脱を選択した。1973年のEC(当時)加盟から40年余り続いた政治経済構造の変化が意味するものは小さくない。為替市場や株式市場の大揺れは、まるで欧州史の大転換に対する弔いの鐘のようだ。

 だが、恐らくそれは欧州にとどまらず、日本を含めた現代世界史の断層を示すものとして、後世に語り継がれることになるだろう。この事件はそれほどの重みをもつものである。英国が意識したかどうかは知らないが、彼らは21世紀のパンドラの箱を開けてしまったのだ。

 もともと英国が、ブラッセルの役人に箸の上げ下ろしを命じられることに強い反感を抱いてきたことはよく知られている。ユーロにも参加せず、EU内の政治経済面ではしばしばドイツやフランスなどと対立を繰り返してきた。

 だがその一方で、共同体の一員であることの利点も熟知し、過去半世紀近くの間、その枠組みの中で巧みに特異な地位を維持してきたのが英国であった。だが先週、移民問題への苛立ちが充満する中で、ユートピアニズムと官僚主義に陥った現状のEUに深く失望した英国は、なんとEUからの離脱を決めてしまった。

 今後英国は、スコットランド独立や北アイルランド分離への動き、EUとの刺々しい離脱交渉、外国企業の英国離れ、経済成長率の急低下、資本コストの急上昇といった様々な逆風に見舞われることになるだろう。世界各国の市場不安も簡単には収まらないと思われる。

 こうした点に関しては既に多くの評論がメディアに溢れているので、屋上屋を架すことは避けよう。やや重なるところはあるかもしれないが、今回は金融面を中心にして①シティの将来像、②ユーロの脆弱性、そして③2008年金融危機からの連続性、といった三点に絞って論点を整理しておきたい。

免れ得ないシティの存在感低下

 今後英国がEUとどのような離脱交渉を行うのかは不明だが、長らく国際金融センターとして機能してきたロンドンに変化が生じることは不可避だろう。筆者が約9年間勤務してきた金融街シティを擁するロンドンは、言うまでもなくニューヨークと肩を並べる存在であり、為替や国際的債券、派生商品などの金融取引規模では世界一の市場と言ってもよい。そうした機能がいきなり消滅することは有り得ないが、それでも存在感の低下は免れ得ない。

 英国金融の調査機関である「TheCityUK」の資料に拠れば、現在ロンドンに進出している外国銀行の数は約250行で、彼らのビジネスを支える外国系法律事務所は約200社を数える。2014年時点で金利スワップなどデリバティブズ業務の全世界に占めるシェアは約50%、外国為替取引は約40%、海上保険は約30%、国際的な銀行融資とヘッジファンド運用の残高がともに約18%という、巨大な金融センターである。

 金融関連の雇用者数は、会計士や弁護士などを含めると約220万人の規模であり、金融ビジネスの経済的貢献度はGDP比12%と見積もられている。そこから納められる税金は、歳入の約11%を占める、という。

 こうしたビジネスの一部が大陸諸国に奪われ、失業者が発生することは避けられない。PwCは失職者の数を最大10万人程度と推測しているが、それはやや甘い計算かもしれない。海外の大手金融機関が欧州本拠地を大陸に移す動きが顕著になれば、予想を超える数の職が、パリやフランクフルトに流れる可能性がある。

「単一パスポート」消失と大手金融機関の移転

 交渉次第ではあるが、EEA(欧州経済領域)に参加してEUとの一定の接点を維持するノルウェーのような方式を採らない限り、ロンドンの金融界が活用してきたEUの「単一パスポート」は消失する可能性が高い。EU加盟国どこでも支店などを持たないで営業が可能になるこの便利な通行手形を失えば、英国に金融拠点を持つ意味は薄れてしまう。

 2014年に改訂されたEUの「金融商品市場指令(MiFID Ⅱ)では、第三国の規制・監督体制が欧州委員会によって「EUと同等」と認めれば、加盟国内に支店を設けなくても営業ができるとされたので、英国は引き続き従前同様のビジネスが可能と期待する声もある。だが、同指令では「同等性評価決定の3年後にサービス提供が可能」としており、一度EUを離脱すれば相当期間のブランクが発生することは避けられない。

 また銀行融資の面では、これまで「資本要求指令(CRD)」に基づくパスポートで預金や貸出、リースなど、国境を跨いだ取引が可能であったが、これもEU加盟国に新たに現地法人を設立しなければ業務が遂行できなくなる可能性が高い。

 さらにビジネス流出確率の高いのが、ユーロ建て証券やユーロ建てデリバティブズ取引の清算(クリアリング)および決済(セトルメント)業務である。英国のLCHクリアネットはデリバティブズ清算業務で圧倒的なシェアを誇っており、ロンドンで取引され、ロンドンで決済される、という一連の業務の流れを囲い込んでいる。

 ECBは、ユーロ建て取引はユーロ圏内で行われるべきと主張して欧州裁判所に提訴したが、この訴えは昨年棄却され、英国でのビジネスが維持された。だが今後はストーリーが変わるかもしれない。

 「単一パスポート」の消失で大手金融機関におけるユーロ建て債券、クレジット商品、スワップなどデリバティブズのトレーディングおよびセールス、そしてその決済を担う部門がこぞって英国を去ることになり、清算や決済も英国を離れるとなれば、シティの業務に大きな穴が開くことになる。そして大規模なオフィスを構える法律事務所も、金融機関の異動とともに英国を去ることになるだろう。

 既にJPモルガンやHSBCなど大手金融機関は、投資銀行の主要スタッフを英国から大陸に異動させる考えを示しており、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、そして大和証券などもロンドンの一部の機能を欧州大陸へ移転する検討を始めている、と報じられている。

 英国は必死に利権を守ろうとするだろうが、ロンドンが独占してきた金融ビジネスを何とか奪い取りたいドイツやフランスが、交渉過程において勝手にEUを出ていく英国に対して甘い顔を見せることはないだろう。

ポンド急落より影響大きいユーロ崩壊

 通貨の面で言えば、懸念されるのは「ブレグジット・ショック」で大揺れして30年ぶりの安値に沈んだポンドよりも、制度疲労が表面化しつつあるユーロである。市場では英国のEU離脱は「EUの終わりの始まり」か、と危惧されているが、それよりも「ユーロ崩壊の終わりの始まり」の方が現在の市場経済には脅威であろう。

 ユーロは、ギリシアを発端とする危機的状況を2012年のドラギ総裁の「何でもやる」発言で乗り切ったが、通貨誕生時点で胚胎していた病巣は残ったままである。つまり、手術はしてみたものの再発の可能性を残した中途半端なオペに終わった、というのが実情だ。

 PEW Research CenterがEU加盟国10カ国を対象に行った調査に拠れば、英国のEU離脱に関しては、英国以外の9加盟国の70%が「良くないことだ」と回答しているが、それは彼らがEUを高く評価していることを意味していない。

 EUを好意的に見ている国はポーランドやハンガリーなど少数であり、10加盟国全体では51%に過ぎない。昨年以降、好意的な回答が顕著に減少しているのが英独仏そしてスペインなどの大国やギリシアである。難民問題の深刻化が影響していることは想像に難くない。

 また英国と同様に、自国に一定の権限を取り戻したいと願う回答は6カ国で過半数を超えている。経済的な思惑から市場の一体化は望むものの、政治的な一体化即ち「欧州合衆国」の理念は受け容れられない、というのが多くの人々の思いであろう。それがEUの抱える本質的な脆弱性でもあり、その行政組織が硬直化している主因でもある。

 英国のEU離脱を契機に、既にオランダやスウェーデン、デンマークなどで同様の国民投票を求める運動が始まっている。中軸国でも反EU運動が結束を固めるようになれば、ユーロの安定性を大きく揺るがすことになりかねない。それがイタリアから勃発するのか、スペインが火種になるのか、フランスが中核になるのか、或いは渋々ユーロを受け容れたドイツが主軸となるのか、解らない。

 確実なのは、ユーロの脆弱性が世界に与える影響はポンドの急落どころの話ではない、ということである。それは、2012年以降たびたび世界の市場を襲ったユーロ危機を思い出せば十分だろう。

 欧州では来年5月にはフランス大統領選挙が、来秋にはドイツの総選挙が予定されている。前者ではFN(国民戦線)のルペン党首が決選投票に残る確率が高く、後者では反EUの新興保守勢力であるAfD(ドイツのための選択肢)が議席数を増やすことが確実視されている。どちらもEUの存続性を脅かしかねない要因である。

 こうした状況で、EUが英国の離脱を契機として共同体を維持することが一段と難しくなると見透かされ、投機筋に欧州狙い撃ちの機会を再び提供することになれば、市場不安が再燃してしまう。確かに現時点ではユーロへの危機感は下火になっているが、ユーロ圏が本当に通貨体制を維持出来るのかどうか、EUに対する不安感の延長線上に、再び疑念が沸いてくる可能性はある。

 ユーロ圏の課題の一つが、通貨同盟に不可欠な統一預金保険制度への取り組みの頓挫である。ユーロ圏財務相会議では本件に関する議論の進展が見られず、先送り状態が続いている。最近、南欧国債の利回りがじりじりと上昇し、低下傾向を強めるドイツなどの国債利回りとの格差が拡大しているのは不気味な兆候だ。

 スペインやポルトガルの政権は不安定なままであり、ギリシアの財政再建も楽観できない。英国なきあとのEUの耐性をテストするような、投機筋による南欧国債売りはいつ起きてもおかしくない。

 英国の離脱によってEUにおけるユーロ圏の経済シェアが70%から85%に拡大することから、ユーロ危機はEU危機に直結しやすくなる、との見方もある。唯一の軸となるドイツに、果たして多大な自己犠牲を払ってまで共同体を死守する強い意志や覚悟はあるのだろうか。

源流は2008年の金融危機

 そして日本にとって最も重要な視点は、2008年の金融危機との連続性である。今回の英国の判断は、唐突に起きたものではない。争点となった移民問題の源泉を辿れば、EUの夢想的な拡大主義に行き当たるが、その先には欧州各国における経済的疲弊という底流に行き着く。その主流をなすのはギリシアの債務危機であり、源流は2008年の金融危機なのである。

 EU加盟国の移民がこぞって英国に流入したのは、同国の経済が比較的安定しており給与水準が高いことや、移民に対する社会保障が寛容であること、英語で仕事や生活ができることなど、幾つかの点が挙げられる。

 これを逆に辿って見れば、金融危機以降の欧州大陸諸国における経済の低迷が、英国のEU離脱の引き金を引いたのだ、とも言えよう。EUによる財政支援やECBによる超金融緩和策にもかかわらず、南欧諸国における高い失業率や成長率の低迷が克服されたとは言い難い。

 2008年のグローバルな金融危機は世界の資本市場を震撼させたが、今回の「ブレグジット・ショック」の市場破壊力も凄まじいものであった。前者は米国経済構造の歪みを起点とするものであり、後者は欧州における政治経済的構造の行き詰まりを反映したもので、必ずしも同質の危機とは言えないが、全く無縁のものでもない。

 金融危機以降、なかなか完治できない経済的疲弊が今回の投票結果を生む契機になったと考えられるならば、今回の市場の大混乱は、2008年の「第一次ショック」に次ぐ「第二次ショック」と位置付けてもいいかもしれない。

 また、国民投票を前に「EUから離脱すれば経済が急縮小して生活水準が低下する」と警告した政財界の声や、オバマ大統領、メルケル首相ら海外首脳からの残留支持の発言が、さほど効果をもたらさなかったことは、英国の大多数の人々のエスタブリッシュメントに対する不信感を象徴している。

それは米国に吹き荒れるトランプ旋風や日本におけるアベノミクスへの失望感にも通じるものがある。従って今回の「第二次ショック」は、欧州という枠を超えて、先進国の既存政治の限界が露呈したものであった、と読むこともできよう。日本社会も、この大きな流れの中の一コマなのである。

密接に結びつく金融政策の限界とEU離脱

 2008年以降、先進国は主に金融政策を活用し、非伝統的な手段を繰り出して経済を活性化しようとしてきたが、所期の目的を達せぬまま限界論が広がっている。一足先に、見切り発車的に「金利正常化」を演出してみせた米国も、事実上の利上げ先送り状態に追い込まれている。金融政策の限界と英国のEU離脱は全く別問題のように見えるが、実は視界の奥で密接に結びついているのだ。

 いま、欧米の悲観的な機関投資家やエコノミストは、英国EU離脱の延長線上に世界経済の暗黒時代到来シナリオを描き始めている。その想定下では、2008年の「第一次ショック」と2016年の「第二次ショック」だけでは終わらないだろう。「第三次ショック」が発生する候補地は、不良債権が積み上がった中国の金融システムかもしれないし、日銀が大量に抱え込んだ日本国債かもしれない。そんな危機意識を、参院選の討論の中に見出すことはできるだろうか。

池田記事

「英国のEU離脱はロシアを利する」。多くのメディアで目にする解釈だ。しかし、ロシアが置かれた厳しい状況を踏まえれば、そう単純な話ではない。プーチン政権にとっても、対EU政策の舵取りには大きなリスクが伴う。

Putin in Oʻzbekiston

ウズベキスタンで開かれた上海協力機構の首脳会議に参加したロシアのプーチン大統領。この場で初めて、英国のEU離脱に関してコメントした。(写真:Russian Presidental Press and Information Office/Abaca/アフロ)

 「英国が欧州連合(EU)から離脱したら誰が喜ぶだろうか。プーチンは喜ぶだろうし、バグダディもそうだろう」

 英国のキャメロン首相はEU離脱を問う国民投票に先立ち、過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者であるバグダディ容疑者とともにロシアのプーチン大統領の名を挙げて、EUへの残留を国民に訴えた。キャメロン首相だけではない。「ロシアを利するだけだ」という文言は、残留派が離脱の危険性を唱える中でしばしば利用されていた。

ロシアをネタにした英キャメロン首相への皮肉

 英国民投票の格好のネタにされたわけだが、プーチン大統領自身はどう反応したのか。投票前は「私なりの意見はあるが、それを明らかにするのは得策ではない」と思わせぶりに語り、離脱に賛成するか反対するかを一切、明らかにしなかった。「これはEUと英国の問題だ」と距離を置いてきたわけだ。

 そのプーチン大統領は24日、英国民投票でEU離脱の選択が明らかになった当日にようやく自らの見解を明らかにした。上海協力機構の首脳会議が開かれたウズベキスタンの首都タシケントで、記者団の質問に答えたものだ。

 「我々は(投票に)一切介入しなかったし、決して自らの立場を明らかにしなかった。これは正しい選択だった」。こう前置きした大統領が真っ先に口にしたのは、ほかならぬキャメロン首相への苦言だった。

 「キャメロン英首相は国民投票に先立つ声明でロシアの立場について話していたが、これは根も葉もなく、全く根拠がないものだ」

 そもそも国内世論に影響を与えようと、ロシアをネタにしたこと自体が間違った試みであり、しかも結果的に失敗した――。英首相への皮肉をたっぷりと交えた大統領は、「ましてや投票後に、ロシアの立場を代弁する権利は誰にもないし、それは政治文化の低俗さを示すものだ」と語気を強めた。

ロシアが立つ、期待と懸念の狭間

 では、肝心のロシアに与える影響はどうなのか。

 プーチン大統領は「我が国にも当然、影響を与える」とし、「動向を注意深く分析し、我が国の経済に与える負の影響を最小化するよう努めていく」と述べた。ウクライナ危機をめぐるEUの対ロシア経済制裁の緩和に結びつくのではないかとの観測については「そうは思えない」と断じた。ただし、国内経済の低迷が深刻なこともあり、EU側がいつの日か制裁問題で建設的な対話をしてくることを「切に望む」と期待もにじませている。

 政治経験が豊富な大統領だけに、無難な受け答えに終始したといえるだろう。 とはいえ、ロシア国内では制裁を続けるEUへの不信感も根強く、“EUの分裂”につながりかねない英国の離脱選択を歓迎する向きは多い。現にロシア議会で民族派の代表格ともいえるロシア自由民主党のジリノフスキー党首は「英国は正しい選択をした」と豪語したという。

 議会上院のコサチョフ外交委員長は、ロシアの対外貿易の5割近くがEUだけに「EU内部の衝撃は貿易・経済関係に否定的な影響を及ぼしかねない」と指摘。その一方で長期的には、「適切な改革の結果、EUがより非政治化され、ロシアを含む外部のパートナーとより柔軟で開かれた協力関係を築く可能性がある」と、前向きに受けとめるコメントをロシア紙に出している。

「ロシアを利する」論の根拠

 こうした中、内外で話題を呼んでいる論文がある。

「Brexit(英国のEU離脱)はなぜ、プーチンの勝利なのか」

 米国のマクフォール前駐ロシア大使が投票結果の判明直後、ワシントン・ポスト紙に掲載したものだ。前大使は「プーチン大統領はもちろん、英国の投票に影響を及ぼしていないが、彼と彼の外交路線にとって得るものは非常に大きい」と言明。とくに、ロシアの欧州での侵攻行為に最も批判的で、米国の代弁者だった英国がEUから離脱する影響の大きさを挙げた。

 また、ルペン党首率いるフランス極右政党の国民戦線には「クレムリンに近いロシアの銀行」が資金支援しており、こうした勢力による親プーチン、反EU運動が欧州内で強まる懸念も強調した。さらに、ウクライナで親欧米派がEU加盟を求める根拠が希薄になる恐れや、ロシアが旧ソ連圏で主導する「ユーラシア経済同盟」という経済圏づくりが短期的に勢いを増す可能性などにも触れ、英国のEU離脱が「ロシアを利する」理由を列挙している。

 確かに、ロシアと欧米の関係悪化を決定づけたウクライナ危機は、EU接近か、ロシア接近かというウクライナ世論を二分した国内対立が発端だった。当時のヤヌコビッチ政権が結局、EUとの連合協定調印を延期して親ロ寄りに路線修正したことで親欧米派の市民らが決起し、同政権が倒された経緯がある。

 ロシアはこの過程で、ヤヌコビッチ政権に相当な圧力をかけたとされるが、その狙いのひとつが「ユーラシア経済同盟」にウクライナを加盟させるためだったとされる。

 結局、ウクライナでは親欧米派が政権を握り、ロシアの思惑通りにはいかなかった。それでも英国のEU離脱の衝撃により、ウクライナのEU接近に多少なりとも歯止めがかかるとみているのは確かだろう。

ロシアにとっての「対EU」政策の難しさ

 EUの対ロシア制裁との関連については、先でも触れたように、プーチン大統領は大きな期待はしていないようだ。ロシアの銀行の資金調達、石油企業への技術支援などを制限したEUによる最も厳しい制裁措置は7月末に期限を迎えるが、そのまま来年1月末まで延長される見通しだ。

 とはいえ、プーチン大統領は5月にはギリシャを訪問した。6月にはサンクトペテルブルクで開いた国際経済フォーラムに欧州委員会のユンケル委員長、イタリアのレンツィ首相、フランスのサルコジ前大統領らを招き、関係改善の必要性を訴えたばかりだ。

 ロシアとEUの間では制裁問題に限らず、例えばロシア産の天然ガスを欧州南部にパイプラインで供給する「サウスストリーム」計画が中止に追い込まれるなど、関係が大きく冷え込んでいる。ただ、EU諸国でもイタリア、ギリシャなどのように、主に経済的な利害からロシアとの早期の関係改善を求める国々は少なくない。

 英国の離脱騒動をきっかけにEU内の足並みが乱れるようなら、プーチン政権は対ロシア政策での結束を揺さぶる好機と捕らえ、早期の制裁緩和や経済協力の強化を実現すべく切り崩しに動くとみるべきだろう。今後の情勢次第では「ロシアを利する」可能性は十分にあるわけだ。

 もっともロシアの専門家の間では、英国のEU離脱がもたらす負の影響を懸念する声も根強い。国際問題の専門家フョードル・ルキヤノフ氏は「欧州の手綱を締めるため、北大西洋条約機構(NATO)の役割が高まる恐れがある」と警戒する。英国のEU離脱が逆に刺激となってNATOが一層強化され、ひいては米国の影響力が強まるというシナリオだ。米国が加わっているNATOの軍事力強化はプーチン政権が最も嫌う構図である。

 吉と出るのか、凶と出るのか――。プーチン政権にとって英国の選択を受けた対EU政策のかじ取りは、もろ刃の剣なのかもしれない。

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『北方領土交渉進展に向けたロシア側の“秘策” ソチでの日ロ首脳会談後、にわかに強まるロシアの攻勢』(6/23日経ビジネスオンライン 池田元康)について

相手がロシアだけでなく領土交渉は難しいです。お互いに国益を賭けて交渉しますので。日本の外交官くらいでしょう。日本の国益・名誉を考えないで交渉しているのは。

ルトワックの言う中国包囲網の完成にはロシアの協力が必要になります。韓国はほぼ中国の属国になったのと同じで、反共の繋がりは期待できないというか、世界に日本の悪口を告げ口する外交や慰安婦の年齢を調べれば分かる自称従軍慰安婦などでっち上げを世界に撒き散らし、慰安婦像を建てて、ない事ないことを主張しているのですから、日本にとって敵国であることは間違いありません。

ロシアを仲間にと言っても、スターリンとFDRの秘密交渉で、火事場泥棒的に領土を奪った経緯を考えますとロシアの主張(戦争の結果、北方4島はロシアのものになった)をスンナリ認める気にはなれません。が、ここは安倍内閣を信じて任せるしかないのでは。プーチンも「引き分け」と言ってきた経緯がありますので、ゼロ回答はないでしょう。本当に50:50にするのかどうかです。外交交渉が表に出ることはないから、心配な部分はありますが。ロシアだけでなく、米国・中国も頭に入れた交渉をするでしょうから、4元連立方程式を解かなければなりません。参院選、東京都知事選と勝ち進み、安倍外交の真骨頂を見せてほしいものです。

記事

日ロが先のソチ首脳会談で「新たな発想に基づくアプローチ」で平和条約締結交渉を加速することで合意したのを受け、ロシア側が交渉進展のためのある“秘策”を盛んに提案するようになっている。北方領土での共同経済活動だ。

Kunashiri

北海道から望む国後島(アフロ)

「我々は(北方領土を)売り渡すことはない」(プーチン大統領)

「我々はクリール諸島(北方領土)を渡さないし、日本に平和条約の締結をお願いすることもない」(ラブロフ外相)

 最近、北方領土問題をめぐるロシア要人の〝強硬〟発言が相次ぎ報じられている。5月にソチで開いた日ロ首脳会談では、安倍晋三首相が「相手の国民感情を傷つける言動は控えるべきだ」と強調したばかりだった。

 そのソチ会談では、北方領土問題を含む平和条約締結交渉を「新たな発想に基づくアプローチ」で加速することで合意した。今月22日には首脳間の合意に基づいてさっそく、平和条約締結問題を話し合う外務省高官レベル協議が東京で開かれた。

 9月初めには東方経済フォーラムに合わせて安倍首相が極東のウラジオストクを訪問し、プーチン大統領と会談する予定だ。何年も先送りされてきたプーチン大統領の訪日も年末には実現する見通しで、長らく停滞していた領土交渉に弾みがつくとの期待は大きい。

 そんな流れに水を差すようなロシア要人の発言には、領土問題に対するロシアの強硬な立場を改めて日本側に認識させる意図があるとの見方もでている。

 ところが冒頭の2人の発言は、いずれも前後の文脈を踏まえてみてみると、やや異なるニュアンスが浮き彫りになってくる。

「我々は何も売り渡さない」

 まずはプーチン大統領だ。5月20日、ソチで開いたロシアと東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会合後の共同記者会見の場だった。「ロシアは領土問題の対話を続けることで、我らの島々を高く売りつけようとしているのではないか――。あなたと日本の安倍首相との最近の会談を受け、こんな噂が流れている。貿易・経済協力と領土問題は切り離し、互いに関連しないと言い切っていいですか」。

 会場からのロシア人の質問に対して、答えた大統領の発言が「我々は何も売り渡さない」だった。

 ただし、大統領はこう続けている。

「しかし、我々は他のすべての我々のパートナーと同様、日本と対話の用意があるし、対話をしたいと願っている。平和条約締結問題も対話に含まれるし、その文脈で領土問題も話し合うつもりだ」

 次にラブロフ外相の発言だ。5月31日、ロシアの大衆紙コムソモリスカヤ・プラウダが読者向けに企画した生放送のラジオ・インタビュー番組「ラブロフに聞こう」の一コマで、こちらも読者の質問への回答だった。その質問の内容は「戦勝国がなぜ、戦争に負けた国に平和条約をお願いしなければならないのですか。我々はなぜ、クリール諸島(千島列島のロシアでの呼称)を引き渡して、日本に平和条約を懇願しなければならないのですか」というものだった。

 こうしてみると要人発言もさることながら、先のソチ首脳会談をきっかけに、ロシア市民の間で北方領土が日本に引き渡されるとの観測が浮上し始めていることに注目すべきかもしれない。

前提は、北方4島がロシア領となったことを認めること

 話を元に戻そう。回答の冒頭に「我々はクリール諸島を渡さないし、日本に平和条約をお願いすることもない」と述べたラブロフ外相は、続いて日ロの平和条約締結交渉について延々と解説している。

 要約すれば、1956年に調印した日ソ共同宣言は両国の議会が批准したもので、ソ連の継承国であるロシアにも履行義務がある。この宣言は平和条約を締結した後に、当時のソ連が日本国民に対する善意の証しとして歯舞、色丹の2島を日本に引き渡す可能性に言及している。

 ただし、これは日本側が第2次世界大戦の結果を無条件で認めることが前提となる。日本と協力の道を探る用意はあるが、日本が第2次大戦の結果を認めない限り、領土問題で双方に受け入れ可能な解決策を話し合うことはできない――というものだ。

 日ソ共同宣言はロシアにも履行義務があるが、第2次大戦の結果、北方4島がロシア領となったことを日本が認めることが交渉の前提条件だという従来の主張を繰り返したわけだ。ラブロフ外相はソチで両首脳が合意した「新たなアプローチ」についても、何ら目新しいことはなく、「あらゆる方向でパートナーとしての関係をはぐくむ必要性」を確認したものだと説明した。熟練した外務官僚だけに、こと領土問題については原則的な立場を強調したといえるだろう。

北方領土問題をめぐる日ソ、日ロ間の主な合意

▽日ソ共同宣言(1956年10月) ・平和条約締結後に歯舞・色丹の2島を日本側に引き渡すと明記。 両国議会が批准。

▽東京宣言(1993年10月) ・択捉、国後、色丹、歯舞の4島の帰属問題を歴史的・法的事実に立脚し、法と正義の原則を基礎として解決し、早期の平和条約締結をめざす。

▽川奈提案(1998年4月) ・択捉島とウルップ島の間に国境線を画定。4島の日本の主権を確認する一方で、ロシアの施政権を認める。→その後、ロシア側が拒否。

▽日ロの創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言(1998年11月) ・国境画定委員会と共同経済活動委員会の設置を指示。

▽イルクーツク声明(2001年3月) ・東京宣言を含む諸文書に基づき平和条約締結交渉を継続。56年の日ソ共同宣言は交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書。

▽日ロ行動計画(2003年1月) ・共同経済活動委員会を通じて、両国にとって受け入れ可能な形態を模索する。

▽ソチ非公式首脳会談(2016年5月) ・「新たな発想に基づくアプローチ」で交渉を加速。

落としどころは「共同経済活動」?

 ただし、このラジオ番組のなかで、ラブロフ外相は日本との関係改善への期待も表明している。それだけではない。領土交渉進展に向けたロシア側の“秘策”ともいえる方策を、ロシアの視聴者向けに披露したのだ。

「我々は以前から隣人の日本の人々に、これらの島々(北方4島)で一緒に経済活動をしようと提案している。そのために投資もし、特別経済地域もつくった。すべて可能だ。日本の仲間たちがまさに、この活動を積極的に推進してくれればうれしい。これ(共同経済活動)は多くの問題の解消に役立つ。これらの島々が日本人の訪問、日本のビジネスや人道活動にとって開かれた場所になる――。もしそのことが重要なら、他の問題はさほど本質的ではなくなる」

 実は北方領土での日ロの共同経済活動は、ソチでの首脳会談以降、ロシアの要人が頻繁に提案するようになっている。先に来日したトルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表、コジェミャコ・サハリン州知事もしかりだ。それに呼応したようなラブロフ外相の発言は、単なる偶然とは思えない。「新アプローチ」で交渉を進めるうえで、ロシア側が「共同経済活動」を柱に据えようとしているのではないかとの印象を受ける。

 共同経済活動は北方領土を日ロが共同開発する構想で、両国の企業が合弁で工場を建設したり、共同事業を展開したりすることを想定している。ロシア側はとくに水産加工や地熱・風力発電、観光分野への投資を期待しているという。ロシア極東発展省は新型の経済特区「先進社会経済発展区」を北方領土でも適用する意向で、国後、択捉の両島が対象になるとの見方がでている。進出企業には税制面や通関等の優遇策を付与するほか、渡航する日本のビジネスマンにロシアのビザ(査証)取得を免除する案などが検討されているようだ。

日本側が難色を示し、立ち消えになっていた構想

 もちろん、ラブロフ外相が指摘したように、北方領土での共同経済活動は決して新しい構想ではない。公式的にはエリツィン政権時代の1996年11月、当時のプリマコフ外相が訪日時に提案したのが始まりだ。

 過去には日ロ間で「共同経済活動委員会」が設置され、実務レベルで検討されたこともある。プーチン、メドベージェフ政権下でもたびたび浮上し、ラブロフ外相も何度も提案してきた経緯がある。その意味では古くて新しいテーマであるわけだ。

 こうしたロシア側の長年のラブコールにもかかわらず、日ロの共同経済活動は一度も実現していない。例えば現地に工場を建設するにしても、どちらの国の法律に基づくかという「主権」の問題が絡むからだ。「ロシアの主権を認めるわけにはいかない」「帰属の問題があやふやになる」といった理由から日本側が難色を示し、結局は立ち消えになっていた。

 とはいえ、プーチン政権になって以降、北方領土では「クリール諸島の社会経済発展計画」に基づくインフラ開発が着々と進んでいる。韓国企業が択捉島の港湾整備事業に参加するなど、外国企業の進出もしばしばとりざたされている。さらにロシア国防省は北方領土を含むクリール諸島の軍備強化に動いており、北方領土の〝ロシア化〟は加速する一方だ。

限られる、双方が受け入れ可能な妙案

 もちろん、北方4島の日本の主権確認という日本政府の主張が通ればそれにこしたことはない。

 しかし、択捉島とウルップ島の間に国境線を画定するという1998年の川奈秘密提案はロシア側によって拒否された。以前に記したように、プーチン政権が想定する最大限の譲歩は日ソ共同宣言の履行とみられるだけに、4島の面積等分、あるいは3島の引き渡しといった案も非現実的だ。「双方に受け入れ可能な解決策」の妙案はおのずと限られてくる。

 共同経済活動については例えば、日ロの元外交官がこんな提案をしている。

 日ソ共同宣言の中で、平和条約締結後の歯舞、色丹島の日本への引き渡しを定めた条項を交渉の出発点とするとともに、同時並行で国後、択捉島に双方が受け入れ可能な法的地位をもった「特別共同経済地区」をつくる交渉を進めるというものだ。パノフ元駐日ロシア大使と東郷和彦・元外務省欧亜局長が2013年7月、ロシアのネザビシマヤ・ガゼタ(独立新聞)に共同で寄稿した。

 日本はあくまで原則論を貫くのか。あるいは共同経済活動を前向きに検討し、日ソ共同宣言の履行(歯舞、色丹島の日本への引き渡し)と国後、択捉両島の共同経済活動という合わせ技で解決策を模索するのか。はたまた第3の案を練るのか。

 当面は年末に見込まれるプーチン大統領の訪日を視野に、「新アプローチ」による水面下での交渉が本格化していくことだろう。

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『「塩野七生」は韓国の公敵になった 「オバマは韓国人慰霊碑を無視した」(4)』『「米国の尾」を踏みつけた韓国 「オバマは韓国人慰霊碑を無視した」(5)』(6/22・23日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

英国のEU離脱が現実のものとなりました。合理的判断をすれば残留と思っていましたが。スコットランドの投票率が低いとTVで言ってましたので、スコットランド独立派は投票に行かなかったか離脱に投票したのかも。当分日本の株式市場と為替はダメでしょう。参院選への影響は与党に有利になるとFacebookで見ました。動乱を乗り切る力は野党にないのが国民は分かっているというのがその理由です。そう信じたいです。新聞には参院も与党他で2/3超と言う記事を見かけましたので、その反動を恐れていました。英国の次期首相は昨年10月舛添が会ったボリス・ジョンソン(保守党・元ロンドン市長)が有力とのこと。

http://jp.sputniknews.com/europe/20160624/2364381.html

 

本日夜から6/29朝まで保守派の先輩とパラオへ行きます。ペリリュー島へ行き、戦没者の慰霊をしようと考えています。現地のWifiがうまく繋がれば、そちらから写真でブログを届けたいと思っています。(スマホよりの投稿となりますので、字は少なく、写真中心となります)。うまく行かない場合はご容赦を。

朝日新聞の見方は何時も狂っています。塩野七生の本を読んだこともないのでしょう。憲法改正は96条からと提案したのは小生の知る限り塩野氏が初めてかと記憶します。シーザーに憧れ、強い男(知力、説得力、肉体的耐久力、持続する意志、自己制御の5つを備えている人物)が好きなのだから、論理がこういう展開になることは予想されたはず。ネットでは塩野七生を元左翼と言ったものもありますが違います。60年安保時、多分学習院大学にいたと思われますが、そこで左翼のやり方の酷さを目の当たりに見て信用しなくなったとのこと。さもありなん。今でも左翼は平気で嘘を言う卑怯な中韓人と一緒の連中です。

http://wakusan.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-a5f3.html

韓国は自由主義陣営から脱落するでしょう。米国も見限ってきているとなると、本記事にありますように、中国にあらゆる面で頼ることになります。少し歴史を知っていれば、日本の植民地支配を非難する資格を欧米は持ってないことが理解できるはずですが、それができないのは情緒優先の国民性からです。中国だって戦後満州族やチベット族、ウイグル族の土地を奪い、現在植民地支配しています。日本と違う所は武力侵攻して占領しました。日本は朝鮮半島を平和的に統合しました。中国に日本を非難する資格はありませんが、特亜と言われる国々ですから、自分の事はさておいてするかもしれません。そのときは満州族やチベット族、ウイグル族の話をして反論すれば良いでしょう。非常に嫌がることと思います。韓国の独り相撲で終わる可能性があります。

韓国は中国同様敵国です。2012年にはGSOMIA(軍事情報包括保護協定)をサイン直前でキャンセルするという非常に礼を失した態度を取り、6月の海軍軍事共同演習では旭日旗にイチャモンをつけるなど軍事の国際常識から外れた態度を取ります。軍事情報を共有したら中国に流れる可能性も高く、GSOMIAは結ばなくて良かったと思います。北がミサイルで存在をアピールし、南と戦争になっても日米ともに韓国を守る気はないのでは。THAADの配備もできないようでは、在韓米軍は撤退でしょう。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160621/frn1606211852008-n1.htm

記事

Nanami Shiono-2

なぜ韓国メディアは塩野七生氏を公敵と位置づけるに至ったのか(写真:大高 和康)

前回から読む)

 塩野七生氏が不都合な真実を語った。すると韓国で公敵となった。

全体主義の象徴

—前回の「ドン・キホーテは『進撃の巨人』の夢を見るか」に引用されたハンギョレの記事の見出し。なぜ「塩野七生」が入っているのですか。

鈴置:キル・ユンヒョン東京特派員が書いた「塩野七生、あるいは全体主義の誘惑」(5月27日、日本語版)のことですね。

 オバマ(Barack Obama)大統領の広島訪問を論じたこの記事は「謝罪要求を口にさせない日本」を批判し「日本は全体主義に向かう」と警告しました。

 キル・ユンヒョン特派員によれば「塩野七生」こそが、日本の全体主義を象徴します。だから見出しに入っているのです。

 筆者は記事の冒頭で、塩野七生氏の著作を読破したと告白しています。しかし文末では、ソウルに戻ったらそれらの本はすべて片付ける、と書きました。

国の品位の差

—どうしてですか。

鈴置:塩野七生氏が朝日新聞のインタビューに答え「無言で静かにオバマ大統領を迎えよう」と語ったからです。

 キル・ユンヒョン特派員はこれを「原爆投下に対し謝罪を要求する個人の切実な呼びかけを、国家の品格という名で遮断しようとする全体主義的な日本社会」の一端と見なしたのです。

 朝日新聞の「オバマ大統領の迎え方」(5月25日)の塩野七生氏の発言のうち、以下の部分をハンギョレは引用しました。朝日の原文と少し異なりますが、ハンギョレの記事をそのまま引きます。

  • 謝罪を求めず、無言で静かに(オバマ大統領を)迎える方が、謝罪を声高に求めるより、断じて品位の高さを強く印象づけることになるのです。
  • (韓国と中国は)ヨーロッパを歴訪して『日本は悪いことをしていながら謝罪もしない』と訴え、効果があると考えたのでしょうか。私には、外交感覚の救いようのない欠如にしか見えませんが。
  • 日本が原爆投下への謝罪を求めないとしたことの意味は大きいのです。欧米諸国から見れば、同じアジア人なのに、と。国の品位の差を感じ取るかもしれません。
  • デモや集会などはいっさいやめて、静かに大人のやり方で迎えてほしい。

 前回も話しましたが、韓国では被害者とは「地面を転げ回って大声で泣き叫ぶもの」です。「静かに迎える日本」は韓国人には全体主義国家に見えるのです。

「朝日」に怒るハンギョレ

—「韓国は品位がない」と朝日新聞から馬鹿にされたと思ったのでしょうね。

鈴置:そう思います。キル・ユンヒョン記者も「朝日新聞はどうしてこうしたインタビューを現在のこの微妙な時期に載せたのだろうか」と大いに不満を漏らして――怒っています。

 韓国語版(5月26日)の記事では「塩野七生」は初めから最後まで呼び捨てです。韓国の公敵に認定されたわけです。ただ、韓国人が「塩野七生」にカチンと来るのはそれだけが理由ではありません。

 ハンギョレが引用しなかった塩野氏の発言部分にこそ、韓国にとって不都合な指摘があるのです。朝日の記事から直接引きます。先ほどの引用と少しダブります。

  • 少し前に、アジアの二つの強国のトップが、相前後してヨーロッパ諸国を歴訪したことがありました。その際にこのお二人は、訪問先の国々でまるで決まったように、日本は過去に悪事を働いただけではなく謝罪もしないのだ、と非難してまわったのです。
  • ところがその成果と言えば、迎えた側の政府は礼儀は守りながらも実際は聞き流しただけ。マスコミに至っては『スルー』で終始したのです。
  • 当然ですよね。ヨーロッパは旧植民地帝国の集まりみたいなようなものだから、日本の優に十倍の年月にわたって、旧植民地に言わせれば、悪事を働きつづけた歴史を持っているのです。それでいて、謝罪すべきだなどとは誰も考えない。
  • そういう国々を歴訪しながら『日本は悪いことをしていながら謝罪もしないんです』と訴えて、効果があると考えたのでしょうか。私には、外交感覚の救いようのない欠如にしか見えませんが。

植民地に謝罪はしない

—なるほど。「欧州各国は植民地支配を謝らない」との説明があって初めて「救いようのない中韓の外交感覚の欠如」が納得できますね。

鈴置:私も初めにハンギョレの記事を読んで、この部分は論理が飛んでいるな、と首を傾げました。そこで朝日の元記事をチェックして、ようやく納得したのです。

—肝心なくだりをなぜ、ハンギョレは引用しなかったのでしょうか。

鈴置:分かりません。長くなるから入れなかったか、あるいは韓国にとって不都合な真実であるからか――。

 いずれにせよ、この「植民地支配への謝罪」は、韓国にとってオバマ広島訪問のもう1つの戦略目標だったのです。

 初めはオバマ大統領の訪問――つまり被爆者への追悼に反対していた韓国メディアも、阻止できないと見ると今度は「韓国人被爆者にも謝罪しろ」「韓国人の慰霊碑にも行け」と言い出しました。

 その際、韓国メディアは「韓国人被爆者は植民地の人間で、被曝と合わせ二重の被害者であった」ことを理由に掲げたのです。

オバマに日本を叱ってもらう

 5月27日にオバマ大統領が献花した慰霊碑は、すべての被爆者を悼むものです。別段「日本人専用」と書いてあるわけではありません。韓国人慰霊碑にも行かせるには理屈が要ると考えたのでしょう。

 朝鮮日報の「広島に行くオバマ大統領へ」(5月16日、韓国語版)。金秀恵(キム・スヘ)東京特派員は以下のように書きました。

  • 朝鮮の人々は植民地支配と原爆で2回、苦痛を受けました。その苦痛に何とおっしゃるのか、広島で見守りたいと思います。

 「植民地支配」はオバマ大統領を韓国人慰霊碑に行かせる理由付けで使われました。が、次第に「オバマ大統領に日本の植民地支配を叱らせ、その不当さを認めてもらう」のも目的となったのです。

新たな対日攻撃カード

—「植民地カード」ですね。

鈴置:その通りです。「植民地カード」を磨こう、との意見が韓国で高まっています。もちろん、日本に対し外交的に優位な立場を得るためです。

 安倍晋三首相が2015年8月14日に「戦後70年談話」を発表しました。韓国政府はこの談話に植民地支配に対する謝罪を盛り込ませ、新たな外交カードを作ろうとしました。

 しかし、日本政府にスルリとかわされてしまいました(「『韓国外し』に乗り出した安倍政権」参照)。

 この直後、韓国の元外交官、趙世暎(チョ・セヨン)東西大学特任教授がハフィントンポスト韓国語版に「安倍談話、交戦国と植民地は異なるという優越意識」(2015年8月20日)を寄せました。

 これは翻訳され「安倍首相の『戦後70年談話』に潜む『植民地』への優越感」(2015年8月21日)の見出しで日本語版に載りました。「植民地カード」関連部分は以下です。

飼い犬に手をかまれた

  • 安倍談話は戦後70年にあたって全世界を対象としたので、日韓関係への影響は限定的だった。しかし、将来、日韓首脳会談をする場合、当然ながら、韓国への植民地支配に対する安倍首相の反省と謝罪が焦点となるだろう。
  • もちろん安倍首相は、いまだ菅談話の存在すら正式に口にしたことがないほど抵抗感が強い。しかし、先に紹介したように菅談話は、植民地支配の歴史認識の中で最も進展したものであり、閣議の議決を経た日本政府の公式見解であるため、日本に対して堂々と継承を要求しなければならない。
  • 一つ残念な点は、菅談話の存在が韓国内であまり注目されていないことだ。韓国がまず、菅談話の成果を守ろうとしなければ、安倍政権は村山談話の鮮明性を後退させたように、菅談話にも同じことを試みるだろう。

 2010年8月10日、菅直人首相(当時)は「内閣総理大臣談話」を発表し、韓国に対し植民地支配を謝罪しました。

 趙世暎特任教授は菅談話をもっと活用し、日本に対する外交的武器とすべきだ、と韓国人に訴えたのです。

 ことに2015年末の「合意」で「慰安婦カード」が使いにくくなっている(「掌返しで『朴槿恵の親中』を批判する韓国紙」)。今こそ「植民地カード」の出番なのです。

 というのに、韓国人が「日本の良心」と持ちあげてきた朝日新聞が「植民地支配を謝罪する欧州の国なんてないぞ」と本当のことを書いてしまった。韓国人とすれば、飼い犬に手をかまれた感じでしょう。

見損なっていた「朝日」

—朝日はなぜ、韓国から怒られるようなインタビュー記事を載せたのでしょうか。

鈴置:聞き手の刀祢館正明編集委員が、編集後記に当たる「取材を終えて」で以下のように書いています。

  • てっきり「謝罪を求めないなんて、日本はだらしない」と語ると思っていた。そんな予想は大はずれ。

 塩野七生氏を見損なっていたのです。

(次回に続く)=6月23日に掲載予定

Hawaii

ハワイは併合した米国ではなく中国のもの――中国の「帝国主義批判」が始まった。韓国は米国の側に立つのか、中国の側に立つのか

前回から読む)

 「植民地支配」を新たな外交カードに育てたい韓国。「広島訪問」でも画策した。しかし空振りし「米国の尾」を踏むだけに終わった。

「裏書き」を貰うのに失敗

前回の話で、ようやく分かりました。韓国人が、広島を訪れたオバマ(Barack Obama)大統領に「日本の植民地支配」を叱りつけてもらおうとしたことが。

鈴置:もっとも「植民地カード」に裏書きしてもらうのには失敗しましたけれどね。オバマ大統領は韓国人慰霊碑に行かなかったのです。

—でも、大統領は広島での演説で「thousands of Koreans」も被爆したと語りました。

鈴置:うるさく言ってくる韓国にある程度、対応したのは確かです。ただ、広島演説「Remarks by President Obama and Prime Minister Abe of Japan at Hiroshima Peace Memorial」をよく読むと、日本の植民地支配を批判したと取られる表現は避けています。

 韓国紙が言い募る「強制連行された」といった形容詞が「thousands of Koreans」に付いているわけではありません。

「半島出身の人々」

—確かに、そうでした。

鈴置:ことに日本語版「広島平和記念公園におけるバラク・オバマ大統領の演説」を見ると「植民地」に関し言質を取られないよう、米政府が相当に神経を使ったのが分かります。

 米政府は日本語版を仮翻訳と呼んでいますが、英文が正式の文書であるとの意味で「仮」なのです。とりあえずの適当な訳だとか、後で本当の訳が出る、というわけではありません。相当に考えられた訳文です。

 「thousands of Koreans」は仮翻訳――日本語版では「何千人もの朝鮮半島出身の人々」と訳されています。

 もし、これを「何千人もの韓国人」とか「何千人もの朝鮮人」と訳せば「韓国」ないし「朝鮮」という別の国が当時あって、あるいは別の国が存在すべきであって、その国の国民が広島や長崎で働かされていた――と米国が認識していると受け取られかねない。

 「朝鮮半島出身の人々」なら素直に読む限り、朝鮮半島という地域の出身だけれど併合により日本人になっていた人々――との意味になります。

 被爆した朝鮮人の多くは自由意思で、一部は徴用で働きに来た人でした。後者は日本国民の義務を果たしていたわけです。

 韓国各紙の「強制的に広島や長崎に連れて来られて被爆した」との主張には与しない翻訳になっているのです。

 なお、「強制連行」との主張がいかに根拠のないものであるかについては、東京基督教大学の西岡力教授が『日韓「歴史問題」の真実』に詳しく書いています。

中国が批判し始めた「ハワイ併合」

—日本の新聞が「朝鮮半島出身の人々」としたのも、米政府の訳を尊重したということですね。

鈴置:その通りです。なぜか、全国紙の中で朝日新聞だけは「朝鮮人」と訳していますけれどね。

—「日本の植民地支配の不当性」を認めろとの韓国の要求を今回、米国が無視したのはなぜでしょうか。

鈴置:当然の話です。米国だってテキサスやハワイ、フィリピンなどを併合しています。そもそも、日本の韓国併合を真っ先に承認したのは米国です。交換条件としてフィリピンは米国のものと日本に認めさせるためでした。

 いくら「リベラル」が売り物のオバマ大統領だって「米帝国主義の悪行」を容易には認めないでしょう。

 それに今、中国が「ハワイ併合」(1898年)を材料に米国に揺さぶりをかけ始めています。米国とすれば、中国に付け入られるわけにはいかない。

クリントン国務長官に威嚇

—ハワイ併合を問題化するのですか?

鈴置:2012年当時、国務長官だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏に対し――現在、民主党の大統領候補ですが、中国の要人がハワイの領有権を主張しました。

 同氏によると、中国による南シナ海の軍事基地化を議論していた際のことだそうです。ハワイが中国領との理屈は、米国による併合以前から中国からの移民が住んでいた、ということでしょう。

 『China 2049』を書いたマイケル・ピルズベリー(Michael Pillsbury)氏も中国のタカ派から「米国が台湾に武器輸出を続けるのなら、ハワイ独立運動の活動家に武器援助する」と威嚇されたそうです。

 いずれのエピソードも「The Washington Free Beacon」という軍事サイトが「Hawaiian Independence Movement Attracts Chinese Interest」という見出しの記事で報じています。

米帝国主義が南北を分断

—ハワイの人々が中国国民になりたいと願うとは思えません。

鈴置:もちろん、そんなことにはならない。しかし、強国の併合の歴史を言い募れば、フィリピン人や韓国人は心が揺れるでしょう。

 米国に複雑な思いを持つフィリピン人は一度、米軍基地を追い出したこともあるのです。韓国の左翼は「日本に代わって米国が韓国を支配している」「米帝国主義は韓国に軍事拠点を確保すべく、南北を分断したうえ対立を煽っている」と主張しています。

 中国は米国とフィリピン・韓国の分断工作や、沖縄の独立運動に油を注ぐためにも「帝国主義がアジアを食い物にした歴史」を今後、ますます声高に語るでしょう。韓国は例によって、そのお先棒を担いでいるわけです。

—韓国人はなぜ、米国がハワイやフィリピンを併合したことを忘れているのでしょうか。

鈴置:彼らはものごとをきちんと調べずに語るところがあります。感情的になって主張し始めると、事実関係はどうでもよくなってしまう。「コリアン・ロジック」のゆえんです。

—韓国では日本で以上に「桂―タフト協定」(Taft-Katsura Agreement、1905年)が有名と聞きます。

鈴置:ええ。しばしば新聞で言及されます。ただ、それは「日本による韓国支配を米国が認めた」協定――つまり、韓国が米国に捨てられた契機と理解されていて「米国によるフィリピン領有を日本に認めさせた」側面は、ほとんど語られないのです。

無神経さに米国も困惑

—結局、韓国は「広島訪問」で……。

鈴置:前々回のドン・キホーテの例えをもう一度使えば、日本という悪い巨人――本当は単なる風車に過ぎないのですが――にヤリを掲げて突進し、間違って隣の風車――同盟国の米国を攻撃してしまったのです。

 この無神経さには、広島演説を書いた人を含め米国の関係者はさぞかし困惑し、苦笑したと思います。

 もっとも、韓国人の立場からすれば「苦笑された」では済みません。欧州に加え米国というただ1つの同盟国から、植民地であったことに同情なんてしないよ、と申し渡されたのと同じなのですから。

 ただでさえ友達の少ない国です。韓国人の寂寥感は増すばかりと思います。これにより、日本攻撃用の新たな武器「植民地カード」を作る際の応援団が西欧では得られないことも判明しました。

 この問題でも中国だけが頼みになります。オバマ大統領の広島訪問は、韓国をしてさらに中国に向かわせる材料となりそうです。

米国こそ帝国主義の親分

—「米国の尾を踏むな」と指摘した韓国人はいますか?

鈴置:それを書いた人は、私が見た限りでは2人いました。1人は朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員です。

 「『コリアン・ロジック』で逆恨みする韓国」でも引用した「ベトナム、広島、リ・スヨン」(6月1日、韓国語版)の一節が以下です。ちゃんと「米国にとっての植民地問題」に触れています。

  • オバマ大統領が韓国人慰霊碑を訪問しなかったことも、同じ脈絡で理解できる。韓国を無視しているからではなく、自身の訪問が歴史問題、特に植民地支配問題として解釈されたくなかったからではないか。そんな友邦をできるだけ理解すべきではないだろうか。

—なるほど。「米国も弱い国を併合した帝国だったことを理解しよう」というわけですね。

鈴置:韓国は今回の一連の「広島騒動」で、米国というトラの尾を思い切り踏んでいたのです。その危さに気がつくべきだと鮮于鉦論説委員は言いたいのでしょう。

 なにせ、後輩の金秀恵(キム・スヘ)東京特派員も「大日本帝国の悪行」を「米帝国主義の親玉」たるオバマ大統領に訴えてしまったのですから(「『塩野七生』は韓国の公敵になった」参照)。

韓国の大統領も訪問していないのに

—もう1人は?

鈴置:外交・安保専門家のヴァンダービルド氏です。原爆投下への謝罪要求に関してですが「米国はますます韓国という国をいぶかしく見るであろう」と訴えました。

 趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに載った「オバマが『韓国人慰霊碑』に献花しなかったと残念がる前に」(5月28日、韓国語)から「韓国の奇妙な行動を見る米国の眼差し」を書いた部分を要約しつつ翻訳します。

  • 韓国人被爆者はソウルの米大使館前で謝罪と補償を要求するデモをした。もし、オバマ大統領が韓国人慰霊碑に献花すれば「ついに米国が過ちを認めた。次は補償だ」と韓国側が出てくると、米国は懸念しないか?
  • 韓国の大統領が韓国人慰霊碑を一度も訪れていないというのに、米国の大統領に献花してくれというのは非常識である。これまで韓国政府関係者何人がここを訪れたというのか?

一度、謝罪を引き出したら

—「相手からとにかく謝罪を引き出しておき、次には『非を認めたのだからさらなる謝罪や補償をしろ』」ですね。

鈴置:ヴァンダービルド氏は日韓関係がおかしくなったのも、韓国のこうした手口が原因だと警告を発してきました。

 同氏の書いた「日本政府の公式な謝罪と補償の履歴」(2月29日、韓国語)によると1982年以来、日本政府は2年半に1度のペースで韓国に謝っています。

 日本が謝っても、後で「あれは謝罪ではない」と韓国が言い出した結果です。日本よりももっと大事な米国に対し、こんなやり口を使って関係が取り返しのつかないものになったら大変、とヴァンダービルド氏は危機感を募らせたのでしょう。結論は次です。

オバマ大統領が広島演説で、韓国人の被爆という事実に具体的に言及したことで満足せねばならない。もともと成功する可能性もないのに抱いた過ぎた欲は捨てねばならない。

期待が大きければ失望も大きいように、欲が過ぎると恨み(反米など)が生まれるものだ。メディアは不必要な刺激(扇動性のある)記事を自制せねばならぬ。

友達の少ない国は……

—韓国はどこへ行くのでしょうか?

鈴置:朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を先頭に、日本による植民地支配の不当性を世界中に訴えて回った。しかし、少なくとも西欧からは同情してもらえないことがはっきりしました。

 結局「歴史問題」で韓国の頭をなぜてくれるのは中国ぐらい。寂しがり屋なのに友達が少ない韓国は、この点でも中国にすり寄っていくことになるでしょう。

 韓国の「離米従中」には様々の理由があります。対中依存度が高いという経済的な要因。中国に近く軍事的な脅威を受けやすいという地理的な問題。千年以上も中華帝国の一部だった歴史。

 それに加え、日本をひれ伏させるための「歴史カード」作りで中国のバックアップが必須となったのです。韓国の動きをさらに子細に観察する必要があります。

(次回に続く)

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『銅鑼湾書店事件、「ノーと言える香港人」の告発 中国の強権に屈せず、香港の核心価値を守れ』(6/22日経ビジネスオンライン 福島香織)について

拉致された林栄基と中国政府の言い分のどちらを信じるかというと自明です。命を賭けて発言している人間と「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国の政府が言うこととどちらを信じるかは明らかです。逮捕状なしで拘束するのは違法かつ人権蹂躙ですし、況してや香港人を拉致するのは1国2制度に反します。李波のように、英国人であっても拉致されるのですから、日本人だって可能性がない訳ではありません。英国政府は何故もっと動かなかったのでしょうか?キャメロン・オズボーンの親中国政策、経済的理由の犠牲になったのでしょうか?日本人が拉致されても、現実的に政府が救済に動くことは出来ません。北朝鮮の拉致が発覚して何年経ちましたか?今でも解決できていません。日本共産党や反日民進党は自衛隊の海外派兵に反対しています。日本の少子高齢化による経済成長ダウンへの対策は①AI・ロボット化による生産性向上②海外投資・海外人材派遣による所得収支の向上と考えています。有事の際、自衛隊が海外にいる駐在邦人を救出に行かなければ、誰も海外で働こうとしません。別に戦争しに行くわけではありません。自国民を保護するのは国家の務めです。それをさせないという政党の政策と言うのは畸形です。

香港の経済的地位も危うくなっています。中国銀行券で偽札が見つかったとのこと。中国国内では2割が偽札と言われています。偽札が香港でも流通してきたというのは香港の国際金融の地位を上海に移そうとしているのでは。言うことを聞かない香港を経済的締め付けで困らせ、手懐けようとしている可能性があります。1国2制度の約束を守らないのは中国政府なのですが。台湾やASEAN諸国へ経済援助という飴と武力侵攻というムチを振るおうとしているのと同じです。対抗策は中国への経済封鎖(国際組織から排除)と同盟による包囲網です。

http://melma.com/backnumber_45206_6380480/

香港の1国2制度は風前の灯です。国際社会が中国にペナルテイを課さなければ、優秀な人間はドンドン脱出していき、「宴のあと」の状況になるかもしれません。シンガポールはマレーシアから独立した人口541万人の小さな華僑国家ですが、金融・貿易で稼ぎ、一人当たりGDPは55,000$で米国より高いです。因みに米国53,000$、香港38,000$、日本38,000$です。水や食料をマレーシアに依存していますが、独立しています。香港も独立できれば良いのでしょうけど、中国が許さないでしょう。国際社会の支援、特に米国の支援がない限り無理です。台湾もそうならないように、日米、ASEANで連帯して防がねば。第一列島線を突破すれば第二列島線、太平洋と中国は進出してきます。領土的野心を隠さない「遅れて来た帝国主義国」ですから。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/215516.html

記事

Lin Rongji

中国当局に拘束されていた香港銅鑼湾書店の店長・林栄基が香港に戻り、会見を行った(写真:AP/アフロ)

 中国当局により昨年10月以降から拘束されていた香港銅鑼湾書店の店長・林栄基が6月14日に釈放され香港に戻った。この事件で失踪した関係者5人のうち、香港に戻ったのは彼が4人目。“ひき逃げ犯として自首”して中国中央テレビ(CCTV)上で涙ながらに罪を認めたオーナーの桂敏海以外は全員戻ってきたことになる。もし、林栄基が先の3人同様、沈黙を守っていたら、この事件は真相不明のまま、香港に言い知れぬ不安を残しつつ風化していたかもしれない。

 だが、彼は16日に香港で記者会見を開き、この失踪事件が「中央専案組」と呼ばれる特別捜査チームによって実行された、中国当局によって仕掛けられた事件であることを暴き、中国当局による「一国二制度つぶし」であることを告発したのだった。

 この会見以降、香港はハチの巣をつついたようになっている。親中香港メディアは林の発言が民主派議員に操られた嘘であると批判する一方、香港市民の間では林栄基擁護デモも発生。いったいこの事件の真相はどこにあるのか。そして香港の行方は。林栄基の記者会見やインタビューの内容を振り返って検証してみたい。

ひきつった笑顔がもたらす恐怖

 銅鑼湾書店の事件の概要そのものは、過去の拙コラム「香港銅鑼湾書店『失踪事件』の暗澹」や「中国の『越境拘束』、タイや香港で続発の脅威」を参照してほしい。

 失踪した5人のうち、銅鑼湾書店の親会社である巨流傳媒有限公司の社長の呂波が今年3月4日、経理の張志平が3月6日、そして英国国籍で、大株主の夫で店主の李波が3月24日に釈放されていた。

 この事件について、先に釈放された関係者はほとんど口をつぐみ、唯一、李波が釈放後、香港フェニックステレビや星島日報など“親中派メディア”の取材を受けている。

 李波は、桂敏海の取り調べに協力するために自ら望んで中国本土に渡ったと主張し、自分が中国当局に拉致されたわけでも、失踪したわけでもないと強調。自分も妻も政治に利用されたくないので、これ以上、メディアは大騒ぎしてくれるなと釘を刺した。このときのインタビューで見せた李波のひきつった笑顔は、香港人たちを恐怖に突き落とした。李波はその後、なぜか英国国籍放棄の手続きをとった。

それから約3カ月たった6月14日、銅鑼湾書店の創始者であり、元オーナー店長だった林栄基が釈放された。林栄基は香港にもどるやいなや、何俊仁議員(民主党元主席)に付き添われて立法会ビルで記者会見を開き、中国当局の「中央専案組」という超法規組織によって拉致され、24時間監視のもと厳しい尋問を受けていたことを告発したのだった。

 まず、その告発内容を整理して、ここに紹介しよう。

目隠し、連行、監禁、尋問、圧力

 林栄基は10月24日、広東省東莞在住の女友達に会いに行くべく深圳市羅湖のパスポートコントロールを通過するときに深圳公安警察当局に身柄を拘束された。しばらく深圳で公安の拘置所に拘留されたのち、浙江省寧波に連行され、24時間の監視付きで軟禁生活を送り、厳しい尋問を十回以上受けたという。次に広東省韶関に移送され、6月14日に「読者に関する資料(ハードディスク)を本土に持って戻る」という約束で、香港に帰郷を許された。しかし、九龍塘駅に列車でたどり着いたとき、事件の顛末を香港人に公開し、二度と本土に戻るまいと決心したという。

 最初、パスポートコントロールで公安警察に連行されたとき、林は「私が何の罪を犯したというのだ?」と何度も問いかけたが、彼らは答えなかった。その後、11人の係員に取り囲まれるようにして外に連れ出されて、7人乗りの車に係員とともに押し込まれ、深圳のある派出所に連れていかれた。パスポートや身分証は没収されてしまった。「何があったんだ」と林は何度も聞くが、だれも答えなかった。その夜は派出所で過ごしたが、座ったままで一睡もさせてもらえず、まるで犯罪人扱いであったという。

 翌朝午前7時頃、再び車に押し込められると北方行の列車に乗せられた。その間目隠しをされ、ハンチング帽を目深にかぶらされ、他の人と一切接触をさせてもらえない状態だった。約14時間後、下車した駅名をこっそり盗み見て、そこが寧波だと知ることができた。そこから再び車に乗せられ、45分ほど走ると、大きな建物の前に止まった。その建物の二階の部屋に彼は監禁された。

 室内の家具はプラスチックフィルムで包まれており、それは自殺防止のためのようだった。歯ブラシはナイロンのひも付きで、歯を磨くときは監視人がひもの端をもって脇に立っている。「歯ブラシを飲み込んで自殺を図るのを防ぐためだろう。前に誰かがやったのではないか」と林は想像した。

その後、尋問が始まるが、依然、彼が何の罪を犯したかも教えてもらえなかった。相手は、林に二つの条項についてサインするよう求めた。まず家族と連絡をとることを放棄すること。そして、弁護士との連絡を要請しないと承諾すること。

 「このとき、自分は孤立無援で、だれにも助けを求められないのだと思い知った」と振り返る。さらに尋問者は銅鑼湾書店における林の職位と銅鑼湾書店のオーナーとの関係性、何のために本土に禁書を販売するのか、といったことを尋ねられた。林は銅鑼湾書店は合法的な書店だと主張するも、尋問者は「本土に禁書を持ち込んだり配本したりすれば本土の刑法に背くのだ」と指摘。また、習近平のスキャンダル本などの筆者や資料にかんする尋問も行われた。たとえ香港で出版されたものでも、本土に配本することはできず、後日にこの問題の取り調べが行われる可能性があるのだと説明した。

 林によれば「拘留期間中、特に激しく暴言を吐かれたり、暴力を振るわれるなどのことはなかったが、精神的圧力は非常に大きかった」という。寧波に拘留中の五カ月間、小部屋に押し込まれて電話もできず、活字を読むことも許されず、尋問が続いたのだから当然だ。尋問者は、どうやら禁書の筆者・編集者、購読者の資料をほしがっているようだった。自分以外の銅鑼湾書店関係者が寧波で拘留されていることは耳にしたが、彼らがどのような状況にあるかは知る由もなかった。

欲しいのは補償ではなく、自由だ

 2月の終わりに、香港フェニックステレビから軟禁先で取材を受けた。これは“監督”と“台本”のある完全なヤラセであった。もし彼らが満足のいかない取材となれば、やり直しをさせられた。林栄基は台本通りのセリフをカメラの前で言わざるを得なかった。

 3月になると、韶関に移送された。韶関の監視は寧波ほど厳しくはなかった。

 林は尋問者、監視人に香港に帰り家族に会いたいと何度も要求してきた。尋問者は、もし会社が保有している禁書購読者リストの入ったハードディスクを提供すると約束するなら応じてもよいと返答された。だが林は、その要求を最後まで拒み続けた。林によれば、中央政府はそのときすでに、銅鑼湾書店の購読者リストを手に入れていたようである。林は「ハードディスクの中身を李波がコピーをして渡したはずだ。リストは500~600人に上り、ほとんどが本土の顧客で、その顧客たちは4000冊以上の本を購入していた」という。自分の尋問は、李波が提供した資料に基づいて行われたのだと考えた。

 また、韶関にいるとき、軟禁状態の林の性的欲求に付け込むように、ある深夜午前一時ごろに二人の女性が訪ねてきたことがあったという。おそらくは当局が買春の罪をかぶせるために林に仕掛けた罠であろうと思われる。林はドアを開けないまま「何かの間違いだろう」と答えて追い返したという。またある時は、10万元の補償金をやるので書店を閉店させよ、と尋問者から持ち掛けられたこともあったという。林は「欲しいのは補償ではなく、自由だ」と答えた。

14日に林は羅湖経由で香港に戻り、香港警察と面会した。香港に入るまで監視員がずっと見張っていた。林は二日にわたって、事件の詳細を振り返り、今後どうするかをよく考え、事件の顛末を記者会見で公表することを決心した。本来なら16日に本土に戻る約束で釈放されたのだ。だが、失踪した銅鑼湾書店関係者の無事解放のために香港人6000人が抗議デモを行ったニュースフィルムなどを見て感激し、香港の自由を守るために、自分もリスクを負う覚悟ができた。彼は議員で弁護士でもある何俊仁に電話して協力を求めたのだった。

 「なぜなら、これは社会の表現の自由の権利を奪う事件だからです」。他の書店関係者の呂波も張志平も、そして林栄基も女友達が内地にいる。だが林はそのリスクを承知の上で「中国政府が、彼女らに対してよい対応をしてくれることを期待するしかありません」といい、あえて記者会見で、事件の内幕を告発したのだった。

強権にノーと言おう

 以上は記者会見、グループインタビューなどで明らかにされた内容だ。

 事件の要点の一つは、この事件が、中国公安や軍部、国家安全部など既存の組織ではなく、「中央専案組」とよばれる、銅鑼湾書店問題処理のための中央直属組織がわざわざ作られていたことだろう。おそらくは総書記の習近平の指示で動く組織ではないか。

 林によれば、自らの意志で香港から内地に渡ったと主張している李波は、香港から“拉致”されたのであって、「すでに中国政府は香港の後戻りの道を断っている。一国二制度はすでに有名無実化している。今回は(香港と本土の)境界を越えて司法を執行した」といい、一国二制度の最後の砦である司法の独立が完全に崩れていることを指摘する。

 その上で、林栄基は香港人に向かってこう呼びかける。「強権に向かってノーと言おう、私にはできる。あなた方はできないのか?私は権力に屈服しないぞ」

 司法の独立がないということは、中国当局側はいつでも再び林栄基を拉致して、何がしかの罪で有罪にすることも可能なのだが、その身を危険にさらしても、彼は強権に向かってノーということを選んだわけだ。この会見を受けて18日、“強権にノーと言おう”という標語を掲げた「中国白色テロへの抵抗デモ」が実施され主催者発表で6000人が参加した。

 一方、香港の親中メディアおよび親中派はこうした林栄基の命がけの記者会見に一斉に反発。まず李波はマンションの下で、林栄基の告発は嘘ばかりだと香港紙明報などに語り、自分が拉致されて本土に連れていかれたということも、購読者資料のコピーを中国側に渡したことも全部否定した。

 また東莞に残された林栄基の女友達(37)も星島日報に対して林栄基が彼女をだまして、本土の顧客に禁書を郵送させたと告発。「林は男じゃない卑怯者!」と激しくののしり、林が会見でいったことも、嘘ばかりだ、中国当局は弁護士を呼ぶことを拒否しなかった、などと語った。星島日報は、呂波と張志平からもコメントをとっており、彼らも林栄基の言っていることに反論しており、張志平は「林栄基がこんなに不誠実な人間だったとは思いもしなかった」と彼を罵った。

 中国外交部報道官は定例記者会見でこの件について「中国当局には当然、この件を法律に基づいて処理している。寧波公安当局はすでに香港メディアの取材に対して、はっきりとさせている。林栄基は中国公民であり、彼が内地で法律違反をすれば、中国当局は当然、法に基づいて処罰することができる」とコメント。「李波がすでに林栄基の発言を否定している。中国政府は一貫して一国二制度を貫徹する決心を固めている」と主張した。中国系香港紙大公報などは、林栄基が中国で禁書を販売したことが本土の法律に触れた事実は否定できないということを強調し、何俊仁が事実を歪曲し、林栄基を政治利用して中央政府のネガティブイメージを発信していると批判キャンペーンを展開。このキャンペーンにのって1000人規模の反何俊仁デモも行われた。

失ってはならない香港の核心価値

 さて事件の真相について、林栄基の告発が正しいのか、あるいは李波らの主張が正しいのか。私は林栄基の主張の方を信じている。常識的な判断をもてば、同僚たちや女友達は、当局から家族が人質に取られてそういわざるを得ないことは想像できる。もちろん、林が、桂敏海ら銅鑼湾書店関係者が次々と失踪しているさなかに、なぜ香港を離れ東莞の女友達に会いに行くという危険を冒したのか腑に落ちないことはある。ちなみに彼は妻と事実上の別居状態にあり、彼の仕事を手伝う女友達が内地にいること自体は、さほど不思議ではない。

 いずれにしろ、この林栄基の衝撃的な記者会見によって、香港がいかに危機的状況であるかということが思い知らされた。中国が現在、香港でやっていることは、中国共産党政権による赤い「白色テロ」と言ってもいい。香港はあと30年を待たずして一国二制度を失い、その核心的価値、つまり民主・自由・法治は危機に瀕している。

 だがそうなると、香港の国際金融センターとしての地位も失われてしまうだろう。中国当局に批判的な言論をしたり書物を販売したりするだけで、人間が突然蒸発するような恐ろしい地域でどうして安心して国際的な経済・金融活動が営めるだろうか。

 香港では雨傘革命以降、独立派が台頭し、一国二制度維持を掲げる民主派とは微妙に対立しているのだが、どうか、この香港の危機のために団結してほしい。香港を守ることは、香港人のためだけでなく、香港という金融・経済センターの恩恵を受けている国際社会、そして中国自身の未来のためでもある。中国人を含む国際社会の人々が、この事件を契機に、失ってはならない香港の核心価値について改めて思いをはせる時だと思った。

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『雷洋事件続報、売春逮捕は警官による偽装が濃厚 傷害致死を隠蔽か? 「法治国家」中国への道は遠い』(6/17日経ビジネスオンライン 北村豊)、『習近平政権にとってパナマ文書流出は船底で水中爆弾が爆発したようなものだ…』(6/19産経ニュース 矢板明夫)、『焦燥感を深める習政権 ロシア、北朝鮮と連携する「毛沢東外交」へ退行』(6/20ZAKZAK 石平)について

習近平のパナマ文書流出が権力闘争を激化させるとすれば、敵対勢力(含む人民)に対して弾圧は益々激しくなるという事です。雷洋事件を受けて「依法治国」を打ち出したとのことですが、中国で歴史上法に則って政治が行われた試しがありません。「法三章」が良いと言われた時代もありました。為政者の思いのままの政治ができるためです。

「依法治国」を言うなら、国際法も遵守せよと言いたい。国際的に責任ある立場を貫くのであれば、フィリピンの国際仲裁裁判所に提訴した南シナ海の領有権問題の判決にも従わねば論理が一貫しないでしょう。でも中国政府は判決には従わないと明言しているのですから。

公安の拷問たるや凄まじいものがあります。逮捕されれば、強烈な灯りで眠らせず、殴る・蹴るは当り前で、我慢できずにやってもいないことを自白させられると中国駐在時代聞きました。雷洋も便衣(私服警官)の捜索をスマホで撮ったからと言って撲殺されるのではたまったものではありません。南京虐殺も便衣兵を処分しただけとの話もあります。中国伝統の誤魔化し文化です。会社の現地スタッフも反日デモが起きたとき時、国家安全部のヒアリングを受けました。恐怖政治そのものです。基本的に人権を守る考えがないからです。エクスキュ-ズは後から何とでもでっち上げられると思っています。立派な法律はあっても運用で全部骨抜きになります。何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国柄です。

邦人中国駐在員は帰国を勧めます。小生の駐在時代も全体主義国家の底知れぬ不気味さを感じていましたが、当時はまだ貧しく、日本の資金と技術を欲していましたのでまだ安全でした。韜光養晦の時代でしたから。習近平の時代になり、有所作為に変わりました。中国人に独特の中華思想(自己中、傲慢、横柄)に裏打ちされて、力の行使を躊躇わなくなりました。日本も中国包囲網を作ろうとしているので、ぶつかることは必定です。日本の経営者も我が身のことと思って駐在者を帰国させ、撤退に向けて動いた方が良いでしょう。

日経記事

修士号を持つ新進気鋭の環境研究家である“雷洋”が不慮の死を遂げたのは5月7日の夜だった。享年29歳。彼は中国の重点大学の一つで、北京市にある“中国人民大学”で環境学の修士を取得した後、“中国循環経済協会”に就職して活躍、中国環境保護分野の若き俊才と将来を嘱望されていた。5月7日は雷洋とその妻の“呉文萃”にとって3回目の結婚記念日であった。その日は23時30分着の飛行機で故郷の湖南省“常徳市澧(れい)県”から親類が生後2週間の娘を見に来る予定で、雷洋は彼らを出迎えるため21時前に北京市“昌平区”にある自宅を出発して北京首都国際空港へ向かった。これを境に雷洋が妻と生後間もない娘と生きてまみえることはなかった。

若き研究者が死亡した「雷洋事件」とは

 23時30分に北京首都国際空港へ到着した親類は、到着出口で迎えに来ているはずの雷洋を捜したが、いくら待っても雷洋は現れなかった。親類は電話で呉文萃に雷洋が迎えに来ていない旨を伝えてからタクシーで雷洋の家へ向かったが、雷洋が空港で親類を出迎えなかったと聞いた家族は不安になった。雷洋の身に何かあったのではないか。雷洋のスマホ(iPhone)に電話をかけたが応答がない。家族は必死に電話をかけ続けた。ようやく電話がつながったと思ったら、電話口にでたのは警官で、雷洋に事故が起こったので急いで“北京市公安局昌平分局”傘下の“東小口派出所”へ来るよう要求したのだった。家族が東小口派出所へ駆けつけると、そこで告げられたのは雷洋が死亡したという事実だった。

 警官によれば、雷洋は自宅近くの“足療店(足裏マッサージ店)”で買春した容疑で逮捕され、激しく抵抗した上に、連行途中に車から飛び降り、再度捕捉された後に体の変調を来して心臓病で死亡したとのことだった。その後、警官に付き添われて雷洋が収容された“昌平区中西医結合医院”の遺体安置所で家族が対面した雷洋の遺体には頭部と腕に明らかなうっ血がみられた。家族が見ることができたのは仰向けに横たわる遺体の上半身だけで、布に覆われた下半身を見ることは許されなかった。対面が許された時間はわずか5~6分で、写真撮影も禁止され、所定の時間が過ぎると家族は早々に5~6人の“便衣(私服警官)”によって遺体安置所から追い出された。

 この通称「雷洋事件」の詳細は、5月20日付の本リポート「若き研究者は偽りの買春逮捕の末に殺されたのか」を参照願いたい。

さて、2014年10月20~23日に北京で開催された「中国共産党第18期中央委員会第4回全体会議(略称:中共第18期4中全会)」は、中央委員会で初めて「法治」が会議の主題となった。当該会議では、総書記の“習近平”が“中央政治局”の委託を受けて行った業務報告の内容を討議した上で、中央政治局が提出した議案、『“依法治国(法に照らして国を治める)”の全面的推進に関するいくつかの重要問題の決定』が審議を経て採択された。同決定の主旨は、「“依法治国”を全面的に推進し、中国特色社会主義の法治体系を建設し、社会主義法治国家を建設することを最終目標とする」であった。習近平にとって、「社会主義」という制約付きながら“依法治国”の全面的推進による法治国家の建設は至上命題なのである。

習近平の「法治」推進と検死と公表延期

 雷洋事件がメディアによって報じられると、中国国民はそこに違和感を覚え、世論は激しく反発した。それは、3回目の結婚記念日の当日に、修士号を持つ若手のインテリで2週間前に父親となったばかりの人物が、空港へ親類を迎えに行く直前に、自宅付近の足裏マッサージ店で買春を行うなどということが有り得ようかというものだった。雷洋の死因に疑問を持った家族は、“北京市人民検察院”(以下「北京市検察院」)に対して第三者による検死を要求し、北京市検察院がこれを認めたことから、北京市公安局の法医検査鑑定センターで5月13日の14時から14日早朝2時までの12時間にわたり、北京市検察院と法医学専門家の立ち合いの下で第三者による検死が行われた。

 5月13日に検死が開始される直前には、北京市検察院の同意を得て雷洋の家族が遺体に最後の別れを告げた。家族の人数が多いので、家族は2グループに分かれて雷洋の遺体に別れを告げた。家族の委託を受けて検死に立ち合う専門家は、“中国人民公安大学”教授の“張恵芹”だったが、告別を終えた雷洋の両親は張恵芹の足元にひざまずいて涙を流した。張恵芹は「私を信じて」と述べ、心に自己の良心と法医の良心に恥じないことを決意したという。なお、雷洋の遺体に別れを告げた家族がメディアの記者に語ったのは、遺体には全身に無数の傷跡があり、睾丸は大きく腫れ上がり、右手の皮がむけ、太腿には青あざと血痕が見られ、明らかに外部から強力な打撃を受けて死に至ったものと判断したということだった。

 検死結果は20日後の6月3日頃に公表される予定だったが、6月4日が1989年に発生した“6・4事件(天安門事件)”の28回目の記念日であることから、天安門事件そのものを隠蔽している中国共産党と中国政府は社会に波風を立てないように、検死結果の公表を遅らせている。

さて、雷洋の妻である呉文萃は、雷洋の遺体をつぶさに見たことで、雷洋が警官の暴行を受けたことにより死亡したと確信した。このまま泣き寝入りすることはできない。大事な夫を殺しておきながら、雷洋が心臓発作で死亡したなどと嘘を言って口を拭う警官を許してはおかない。買春したと濡れ衣を着せられた夫の無念を晴らし、名誉を挽回しなければならない。呉文萃は冤罪で殺された夫のために戦おうと決意を固めた。

妻が警官を告発、立件調査へ

 5月16日、呉文萃は北京市検察院に対して雷洋を買春容疑で逮捕した北京市公安局昌平分局の警官を故意による傷害致死罪、職権乱用罪および証拠ねつ造幇助罪で告発し、翌17日に呉文萃の委託を受けた弁護士の“陳有西”が正式な訴状を北京市検察院へ提出した。5月19日、北京市検察院は呉文萃の訴状を受け取り、すでに管轄下の“昌平区検察院”へ当該事件を移牒し、捜査して処理するように命じたと公表した。これに呼応する形で、北京市公安局は決して身内を擁護することはしない旨を公表したのだった。

 5月20日、中国共産党中央委員会“全面深化改革領導小組(改革の全面的深化指導グループ)”の第24回会議が開催された。会議では『公安部門による法執行の規範化を推進することに関する意見』などの一連の制度関連文書が承認されたが、会議を主宰した習近平は次のように発言した。すなわち、公安部門の法執行の規範化を推進し、公安部門の法執行権力の運用制度を完全なものとすることに着目し、法執行の質を保障し、法執行の信頼性を常に高めねばならない。法執行を厳格に監督し、法執行の突出した問題を解決することにより、1件毎の法執行活動、1件毎の事件処理の中で人々に公平な正義を感じさせねばならない。

 中国共産党の文書は格式ばって難しい表現を取るので1回読んだだけでは理解できないことが多いが、習近平の発言を要約すれば、「公安部門の法執行を厳格化して、取り締まりや事件処理に際しては、人々に社会の公平な正義を感じさせるようにしなければならない」というもので、習近平が標榜する“依法治国”の推進を後押しする内容であった。習近平がこの発言を行った背景に、5月7日に発生した雷洋事件の存在があったことは想像に難くない。

上述した北京市公安局ならびに習近平の態度表明は雷洋事件の展開に大きく作用した。北京市検察院の指示を受けて雷洋事件の調査を行っていた“北京市昌平区人民検察院”は初歩的調査を5月末までに完了し、雷洋事件が立件調査の条件に合致することと確認した。

 この結果を受けた北京市検察院は同事件を“北京市人民検察院第四分院”(以下「北京市検察第四分院」)に送致し立件調査を行わせることを決定した。6月1日、北京市検察第四分院は法に基づき事件の当事者である警官の“邢某某”など5人に対して立件調査を行うことを決定した。

 ところで、雷洋事件は北京市昌平区で発生しており、本来なら同事件を担当するのは北京市昌平区人民検察院(以下「昌平区検察院」)であるはずだが、これに代わって北京市検察第四分院が担当することになったのはなぜか。北京市検察院には分院が4カ所あり、第一、第二、第三の各分院はそれぞれ管轄区域を持ち、昌平区を管轄するのは第一分院である。一方、第四分院は管轄区域を持たず、区域をまたいだ重大事件およびその関連事件を管轄する。要するに、第四分院に雷洋事件を担当させた背景には立件調査の中立性を考慮したものと判断できる。雷洋事件を規定通りに昌平区を管轄する第一分院に担当させれば、業務上で密接な関係にある北京市公安局昌平分局との間に癒着が疑われかねないからである。

おとり捜査をスマホで撮影、警官と気づかず揉めた末

 それでは、立件調査を行うことが決定した邢某某など5人とは具体的に誰なのか。それは5月7日に事件の現場となった昌平区霍営で雷洋を買春容疑で逮捕した北京市昌平分局東小口派出所副所長の“邢永瑞”を筆頭とする“便衣(私服警官)”5人である。彼らはどのようにして雷洋を死に至らしめたのか。第三者による検死結果と第四分院による調査結果はいずれも未だ公表されていないが、6月2日にネットの掲示板には下記の書き込みがなされた。

(1)昌平区検察院の友人が漏らしたところによれば、雷洋事件は全て解明されたが、天安門事件の記念日である6月4日の前後は敏感な時期であることに鑑み、解明結果を公表するのには相応しくない。東小口派出所の副所長など5人の容疑者はすでに拘束されており、6月4日以降の適当な時期に逮捕されることになろう。これは対外的に公表され、5人には刑罰が下されることになるが、その量刑はそれほど重いものにはならない。

(2)雷洋は足裏マッサージ店を通り過ぎる時に、警察が同店に照準を合わせた“釣魚執法(おとり捜査)”を行っているのを目撃した。興味を抱いた雷洋は軽い気持ちでその状況をスマホで密かに撮影したが、それを私服警官に見つかった。私服警官は雷洋にスマホから当該写真を削除するよう要求したが、相手が私服であったことから警官とは思わなかった雷洋はそれを拒否した。拒否されたことで激高した私服警官は雷洋を逮捕しようとしたが、雷洋が反抗したので激しい暴行を加え、遂には雷洋を死に至らしめた。買春容疑うんぬんは後から私服警官がこじつけた茶番劇である。

北京市公安局昌平分局が5月9日と11日に発表した雷洋事件の経緯によれば、雷洋は自宅付近の足裏マッサージ店で買春を行った後に、警官による職務質問を受けて逃亡、反抗の末に逮捕されたが、取り調べのために連行される途中で体の不調を示し、搬送された医院で緊急の応急手当を受けたが死亡したことになっていた。ところが、現場周辺の監視カメラの映像から判明した雷洋の足跡から考えると、雷洋がいわゆる「本番」に費やした時間はわずか9分でしかなく、全く辻褄が合わなかった。しかし、上述のように雷洋が警察のおとり捜査を行っているのをスマホで密かに撮影し、その写真の削除を巡って男たち(私服警官)と争いになったということなら辻褄が合う。恐らく、これが事件の真相であると考えてよいだろう。

第二、第三の雷洋を出さないために

 たとえ雷洋が本当に買春したとしても、買春は治安事件であって刑事事件ではなく、雷洋は刑事犯罪の容疑者ではない。刑法の規定によれば、公安・検察・司法の職員が犯罪容疑者に対して拷問により自白を強要して死に至らしめた場合は、たとえそれが過失致死であっても、故意殺人罪を適用して重罪に処することになっている。これから公表される検死結果が故意傷害を明確に示せば、本事件の容疑者たちは故意傷害罪で立件されねばならないし、故意傷害によって死に至らしめた故意傷害致死罪の最高刑は死刑である。また、警官という職権を濫用したことが明白となれば、最高刑は7年である。

 雷洋事件の第三者による検死結果および第四分局の調査結果が公表されない限り、拘束された邢永瑞以下5人の私服警官の処遇がどうなるかは分からない。死人に口なしを良いことにして、死亡した雷洋に買春の汚名を着せ、自分たちの殺人行為を隠蔽しようとする悪徳警官を罰しない限り、人々が社会の公平な正義を感じることは有り得ない。中国の人々はこの雷洋事件が“依法治国”を推進する契機となり、中国を法治国家にする一里塚となることを期待している。そうならない限り、第二、第三の雷洋が出現する可能性は高いし、明日は我が身かもしれないのである。

産経記事

習近平政権にとってパナマ文書流出は船底で水中爆弾が爆発したようなものだ…

Li & XI

パナマ文書が明るみに出たことで、習近平国家主席の党内影響力低下がささやかれる。後ろは李克強首相=2016年3月、北京の人民大会堂(ロイター)

 パナマ文書によれば、トウ氏は2004年に英国領バージン諸島に会社を設立、07年にいったんとじたが、09年、同島にまた2つの会社を設立した。習氏が中国の最高指導者に就任した2012年ごろから、この2つの会社は実質休眠状態に入った。トウ氏がこの会社をどう利用したかは不明だが、節税だけではなく、巨額資産の隠蔽のためだった可能性が大きいといわれる。トウ氏夫妻はこれまで、株売買などで3億ドル以上を稼いだことがあったと米メディアに報じられたことがあった。

 習氏のほか、最高指導部で宣伝担当の序列5位の劉雲山・政治局常務委員の義理の娘と、序列7位の張高麗・筆頭副首相の義理の息子の名前もあがった。李鵬元首相、曾慶紅元国家副主席ら6人の引退した指導者の親族もパナマ文書に登場した。

 共産党関係者が注目しているのは、疑惑が浮上した指導者たちはみな、習主席か、江沢民元国家主席に近い幹部たちだ。習氏の現在の最大のライバルである胡錦濤前主席と李克強首相が率いる共産主義青年団(共青団派)のメンバーはだれもいない。習派と対抗する李派にとって極めて有利な状況だ。

 習指導部がこれまで約3年間、「トラもハエも同時に叩く」と宣言して、全国で反腐敗キャンペーンを展開し、汚職官僚との名目で「周永康」「郭伯雄」「徐才厚」ら多くの大物政治家を失脚させたが、政敵排除にすぎないという声も多かった。今回のパナマ文書のなかに、汚職問題で失脚した元指導者らの関係者の名前がなく、取り締まる側の習氏らの親族が不正蓄財疑惑に名前が浮上するという皮肉な状況だ。

 共産党幹部は「党内に習氏の求心力が弱まることは避けられない。反腐敗キャンペーンも継続できなくなる可能性がある」と指摘した。

 パナマ文書が明るみに出たことで、党内の派閥バランスへの影響が早速出たようだ。国営新華社通信は4月15日、李首相が3月28日に開かれた国務院会議で、腐敗撲滅に関する内部談話の全文を発表した。内容はいつもの主張を繰り返すもので、新しい中味はないが、発表されない予定の談話がこのタイミングで公になったことは大きな意義があるといわれている。「反腐敗問題の主導権は習主席から李首相に移りつつある」と証言する党関係者もいた。

 「党内の習氏に対する不満を持つ幹部は多くおり、今夏は大きな山場を迎える」とみる党幹部もいる。習近平政権の2期目メンバーが決まる党大会は2017年秋に予定されているが、16年夏に開かれる現役、元指導者が集まる重要会議である北戴河会議はその前哨戦といわれる。

 4月はじめの最高指導部会議で、「一致団結してパナマ文書がもたらした危機を乗り越えよう」という方針がきまったものの、反習派はこれを権力闘争の材料に使わない理由はない。

李首相と周辺は、党長老と連携して北戴河会議で習氏らに対しパナマ文書への釈明を求め、主導権を一気に奪おうと窺っているようだ。習派の対応によっては、共産党内権力闘争が一気に重大局面を迎える可能性もある。

(産経新聞北京総局特派員 矢板明夫)

ZAKZAK記事

政府は今月9日未明、中国、ロシア軍艦艇が相次いで、尖閣諸島周辺の接続水域に入った、と発表した。  中国軍艦が侵入してきたことは、日本に対する重大な軍事的挑発であるに違いないが、ロシア軍艦が同時に侵入した真相は不明だ。中露両国が事前に示し合わせた計画的行動である可能性もあれば、この海域を通過するロシア艦隊に中国軍が便乗して行動を取ったのかもしれない。いずれにしても、中国が意図的に、ロシア軍の動きと連動して日本への挑発的行為に乗り出したことは事実だ。  日本とともに尖閣防備にあたるべきなのは同盟国の米国である。中国の戦略的意図は明らかに、軍事大国のロシアを巻き込んで「中露共闘」の形を作り上げ、日米両国を威嚇して、その同盟関係に揺さぶりをかけることにあろう。  中国はなぜ、日米同盟に対してこのような敵対行為に出たのか。その背後にあるのは、先月下旬の伊勢志摩サミット前後における日米の一連の外交行動である。  5月23日、オバマ米大統領はサミット参加の前にまずベトナムを訪問し、ベトナムに対する武器禁輸の全面解除を発表した。  中国からすれば、南シナ海で激しく対立している相手のベトナムに、米国が最新鋭武器をもって武装させることは、中国の南シナ海制覇戦略に大きな打撃となろう。  そして、伊勢志摩サミットの首脳宣言は名指しこそ避けているものの、南シナ海での中国の一方的な行動に対する厳しい批判となった。  これに対し、中国政府は猛反発してサミット議長国の日本だけを名指して批判した。つまり中国からすれば、サミットを「反中」へと誘導した「主犯」は、まさにこの日本なのである。

6月に入ると、外交戦の舞台はシンガポールで開催のアジア安全保障会議に移った。そこで、米国のカーター国防長官は先頭に立って中国を名指しして厳しく批判し、大半の国々はそれに同調した。今まで南シナ海問題でより中立な立場であったフランスまでがEU諸国に呼びかけて、南シナ海で米国と同様の「航行の自由作戦」を展開する意向を示した。  中国の孤立感と焦燥感はよりいっそう深まった。  そして、今月7日に閉幕した「米中戦略・経済対話」で、南シナ海をめぐる米中の話し合いは、完全にケンカ別れとなり、米中の対立はより決定的なものとなった。  その直後に、中国は直ちに前述の威嚇行動に打って出た。追い詰められた中国は、ロシアの「虎の威」を借りて日米主導の中国包囲網に対する徹底抗戦の意思を示したのであろう。  その前に、中国はもう一つの布石を打った。今月1日、習近平国家主席は訪中した北朝鮮の李洙●(スヨン)労働党副委員長との会談に応じたが、立場の格差からすれば北朝鮮に対する異例の厚遇であった。つまり習主席は日米牽制(けんせい)のために、北朝鮮の核保有を容認したまま、金正恩政権との関係改善に乗り出した。  このように、日米主導の中国包囲網に対抗して、習近平政権は今、世界秩序の破壊者同士であるロシアや北朝鮮を抱き込んで対決の道を突き進んでいる。  ある意味ではそれは、1950年代初頭の冷戦時代の「毛沢東外交」への先祖返りである。ソ連や北朝鮮などの社会主義国家と連携して「米国帝国主義打倒」を叫びながら西側文明社会と対抗した毛沢東の亡霊が現在に蘇(よみがえ)った感がある。  人や国が窮地に追い込まれたとき、先祖返り的な退行に走ることは往々にしてあるが、もちろんそれは、窮地打開の現実策にはまったくならない。南シナ海への覇権主義的野望を完全に放棄することこそ、中国が外交的苦境から脱出する唯一の道ではないのか。

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『英EU離脱問題、日系金融機関も他人事ではない 「脱ロンドン」拠点大移動が始まる可能性も

明日、英国のEU離脱・残留の投票が為されます。結果判明は

『英EU離脱問題、日系金融機関も他人事ではない 「脱ロンドン」拠点大移動が始まる可能性も

』(6/16日経ビジネスオンライン 菅野泰夫)日本時間で24日昼頃とのこと。離脱派と残留派が拮抗していますのでずれるかもしれません。

ジョー・コックス下院議員の殺害のトーマス・メイア容疑者は単なるテロリストでしょう。或は、残留派が仕掛けたものという見方もネットの意見では出ていました。支持率を伸ばして来た離脱派が不利になるようなことはしないだろうとの読みですが、穿ちすぎと思います。MI5やMI6の伝統のある英国ですが、離脱派に不利になるようなことを黙認することはないと思います。メイア容疑者は狂信者です。宗教が理由でないとしても、無辜の市民を殺戮するイスラム過激派と同じでしょう。言論には言論で対抗すべきです。言論の自由のない国(中国共産党を代表とする一党独裁国家)ではすぐ言論には暴力で対抗します。況してや公安や軍を使ってですが。銅鑼湾書店店長で中国公安に拘束された林栄基氏の記者会見を受けて、香港ではデモも起こりました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160618/k10010561211000.html

中国駐在者は中国軍艦が日本の領海侵入した事実をもっと深刻に考えた方が良いでしょう。

福島香織氏もツイッターでこう呟いています。

「福島香織 @kaori0516kaori

私が中国の駐在員だったら、とりあえず家族を日本に帰国させているレベル。

あと、中国の銀行においてある資産をどう脱出させるか悩む。

最悪の事態にならないと思うけれど、それくらいはする。

福島香織 @kaori0516kaori

何度もいうけど、別に煽ってるわけじゃないよ。最悪の事態にはならないと思っている。

でも、そこにある危機に対する認識がないと、危機を回避できない。

知らんふりしていたら勝手にすぎさっていく都合のよい危機ばかりではない。

https://twitter.com/kaori0516kaori/status/742987299076603904」と。

話を英国に戻します。欧州で極右は移民反対の立場なだけです。極端な国家主義者が国民の広範な支持を受ける訳ではありません。リベラルを標榜するマスメデイアはいずこの国も同じで、自国民のための政策を行おうとすると「極右」のレッテルを貼って邪魔します。舛添の韓国人学校敷地貸与未遂事件や韓国人向け老人ホーム建設事件について報道しない自由を行使します。

http://ameblo.jp/tubasanotou/entry-12142827105.html

蓮舫は台湾人ではなく中国人(国民党)がルーツです。都知事選には出ないと言ってますが、未だ分からないでしょう。東京都民も騙されないように。日本人のための政策をして貰わないと。都知事選は7/14公示、7/31投票ですので、参院選で勝利し、その枠を次点の議員に譲る(反日民進党になるとは限りません)可能性もあります。何せ都知事選では後出しが有利とのことですので。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%B0%E3%82%8A%E4%B8%8A%E3%81%92%E5%BD%93%E9%81%B8

国家が二つに分断されるのは時代の流れかもしれません。移民国家の米国でも、大統領選で見られるように、候補者の価値観の違いが大きい=支持者の価値観も大きく分かれています。宗教や人種の差、経済政策についての考えの違いが出てきています。

一方、国民国家重視派とグローバリズム(人・物・金・情報の移動をたやすく)派の争いもあります。

『英EU離脱問題、日系金融機関も他人事ではない 「脱ロンドン」拠点大移動が始まる可能性も

』(6/16日経ビジネスオンライン 菅野泰夫)記事

Cameron-3

写真:ロイター/アフロ

英国ではいよいよ6月23日にEU(欧州連合)残留の可否を問う国民投票が実施される。投票日まで2週間を切ったところでの世論調査によれば離脱支持がじわじわと伸びはじめている。

 特に一部の調査では離脱支持派が残留派を10%ポイント引き離すなど、離脱派が優勢な状況も出始めている。これによりポンドは大きく下落して余談を許さない状況が続いており、ロンドンのマーケット関係者からも“離脱は間違いないのでその準備を”などと物騒な声が日々増えている。

 ただし肝心の世論調査があてにならないことは有名な話で、代替策として挙げられる物差しの一つがブックメーカーの賭け率だ。それでも2015年5月の総選挙で、ブックメーカーの賭け率から選挙5日前に90%以上の確率でハングパーラメント(宙吊り国会)と予測されていたが、結果的に保守党単独政権が誕生し大外れとなった。今回は70%以上の確率で残留と予測されているが、総選挙時よりも確率が低いことが当然気になる。あてにならない指標より可能な限りサンプルを集めようと、保守党が単独政権となり国民投票の実施を決定した時から筆者は色々な場面で英国人に取材を試みている。

 ここで気がついたことは、世論調査で示された属性別の支持層の違い(図表1参照)は概ね筆者の取材ともその傾向が一致していることだ。たとえば、労働者階級、白人、高齢者の組み合わせからは、見事なまでに離脱派の意見が出てくる(同じ白人でも富裕層、スコットランド出身はほぼ残留派だ)。もともと英国では、欧州の中でも移民に寛容な国であり、反移民的な態度を人種差別の表れとして、移民政策の厳格化に反対する社会的な風潮も存在する。ただしこういった英国人ですら移民の大量流入に我慢できないという声を多く耳にする。

図表1 世論調査の属性別の比較

approval rating of the secession from EU

(出所)YouGovより大和総研作成

 日本人同様に本音と建前を使い分ける英国人から本音を引き出すことは難しい。

 ある英国人は、「まあ残留に入れるかな?」と淡々とした口調で答えてくれた。ところがその後、急に感情的な声色になり、「だけどね、EUから来るラトビア人やルーマニア人などは英語が全く話せないにもかかわらず、ロンドンで労働ビザ無しで働ける。一方、(英国女王を元首とする英国連邦加盟国の)オーストリア人やニュージーランド人たちは、英語を母語としながらも一定の年収や学歴のポイントがないと労働ビザが出ないので働けない。これは不公平だと思わないか?」と付け加えた。

 日本人である筆者に対し、面と向かって移民に対してNOを突きつける過激な意見を主張したりはしないが、EUからの移民に対して相当な不満が蓄積していることが垣間見られる。彼が当日“離脱”に投票することは明らかであろう。

 英調査会社YouGovによる調査でも若年層(18歳から29歳)のうち残留支持は約7割を超えていたが、若者たちは往々にして投票率が低く、実際の残留票に結び付くかは疑問視されている。特に、親元を離れている若年層が現住所で選挙登録してしまうと、実家に住民票を置いたままごまかしていた地方税(カウンシルタックス:日本の固定資産税の様に住居にかかる。賃貸では持ち主でなく借主が払う)の未払いが発覚し、遡及して払わなければいけない問題に直面するそうだ。このため特に学生の投票行動が制限されるのではないかとの指摘もある。

BREXITが起こったときの金融面の影響は…

 もし離脱が決定したとき、影響が直ぐに表れるのは、通貨ポンド、英国債(ギルト債)などの金融市場といわれている。英国の貿易収支は赤字が続き、特に過去3年間はその赤字幅が拡大している。

 英国債の国外投資家比率は過去10年一貫して25%を上回っており、英国のEU離脱(BREXIT)が決定した直後から国外投資家の資本逃避が一斉に起こる可能性も否定できない。それに加えて、今の英国では、さらなる経常赤字幅の拡大を止めることは難しく、年初来から大きく下げた通貨ポンドがさらに下落することが予想される。現段階では、いまだ大規模な資本逃避は確認されていないが、今後起こりうる影響を懸念して、新規投資を手控える動きから、足元、通貨ポンドは不安定な展開となっている。

図表2 英国債の国外保有状況と経常収支と対GDP比推移

Britain bonds

(出所)英国債務管理庁(DMO)、ONSより大和総研作成

 世界的な金融ハブ、シティを抱える英国の金融街としての側面における影響も必至だ。特に英国に拠点を置く日系金融機関は、今後、欧州拠点の中心を英国に置くことへの再考が求められる。現在は、英国に拠点を置き英国当局から認可を受けた金融機関は、英国以外のEU加盟国でも別途認可を必要とせずに、金融サービス業務を行うことが可能である(いわゆるEUパスポート制)。

 銀行業務は自己資本規制指令IV(CRD IV)、投資サービスはEU金融商品市場指令(MiFID)など、提供される金融サービスの違いにより各パスポートがありEU域内へのアクセスが可能となっている。

 邦銀等のEU域外国、すなわち第三国の金融機関は、ロンドンの金融街シティに拠点を構えこのEUパスポートを利用して、EU市場へのアクセスを享受していた。ただBREXITが実現した場合、英国は第三国となりEUパスポートが失われるため、EU加盟国内での金融サービス業務継続には何かしらの措置が求められる。唯一の例外として、英国がEEA(欧州経済領域*1)に加盟し直した場合は、そのままEUパスポートが維持され、EU域内での金融サービス業務が可能となる。

 ただし、2018年1月にMiFIDはMiFIDⅡに置き換えられることが予定されており、BREXITは最短でも2018年央となるため(リスボン条約50条により2年以内の脱退協定の締結が求められるため)、英国はたとえEUを離脱する場合でも、わざわざMiFIDⅡを国内法に移管する必要がある。

図表3 BREXIT後、英国に支店がある邦銀がEUの金融サービスへアクセスするには

BREXIT later

(※注1)サービス提供先となるEU加盟国で、リテール顧客に対する業務認可の条件に支店設立を含める条文 (※注2)各国により、子会社を設立すればアクセスが可能となるケースもある (出所)欧州委員会、Ashurstより大和総研作成

 一例を挙げると、BREXIT後、日本をはじめとする第三国や英国の銀行が、EU域内に支店を設立せずに、(EU域内の)機関投資家(プロ顧客)と取引するためには、欧州証券市場監督機構(ESMA)への登録が必要となる。この登録の条件は、当該の第三国の投資サービス規制の枠組みがEU相当として認められること(同等性評価*2 )であり、最終的に欧州委員会の承認が必要である。

 無論、日本や英国等の先進国の金融サービス規制のフレームワークが同等と認められないということは理論的に想定しづらい。それでもEU離脱後の英国に対して政治的な妨害が加わり、承認申請プロセスに相当の時間がかかる可能性は懸念材料となる。特にシティに拠点を置く第三国金融機関の取引の中心はユーロ域内の国債や社債であるため、欧州中央銀行(ECB)がこれを域内の監視下に置きたいという本音も見え隠れしている*3。

 さらに、CRD IV範囲の融資や預金預かり業務など伝統的銀行業務に関しては、(MiFIDⅡが導入されて以降)CRD IVでの同等性評価がどのように変更されるか、その詳細は明らかになっていない(MiFIDのEUパスポートと同様にCRD IVのEUパスポートも、BREXIT後に失効することだけは決定している)。日本を含む英国以外の銀行に至っては、英国からどの様にEU市場にアクセスするかのフロー詳細に関しては白紙状態となっている。

 具体的な取り決めが決まるまで同程度の時間がかかることは間違いなく、すなわち、英国に拠点を構える邦銀は(リスクシナリオとして)EU域内に別支店を設置せざるを得ない状況も想定されている。

離脱派を左右するテレビでの討論演説

 6月9日の公開テレビ討論会では、ボリス・ジョンソン元ロンドン市長率いる離脱派とニコラ・スタージョンSNP(スコットランド民族党)党首率いる残留派とが3対3での論戦を繰り広げたこの討論会を境に、世論が離脱支持にやや傾き出したといっても過言ではない。

1 EUとEFTA(欧州自由貿易協定)との自由貿易協定。EFTA加盟国のうちスイスを除く、アイスラ ンド、リヒテンシュタイン、ノルウェーが加盟。 2 EU域外の金融機関は、その国の規制がMiFIDでの規制内容と同等であることを認められて初めて、EU市場へアクセスする権限を付与される。 3 支店や子会社を域内に設置させ銀行同盟の監視下に置きたい。

 残留派は次期首相になることしか念頭にないとしボリス・ジョンソン氏に非難を集中させたが、むしろこれが個人攻撃として顰蹙を買い残留派の支持を下げる結果となった。一方、離脱派は再三、「実権を取り戻す(Take back control)」との発言を繰り返し、離脱が移民抑制と診療時原則無料の国営医療制度(NHS)を含む公共サービスの財源増加につながると主張したことが功を奏した。トルコがEUに加盟した場合7600万人が大挙して英国に移民としてやって来るなど具体手的な数値をあげ移民流入拡大の懸念を指摘したことも効果的であった。

 結果的にいえるのは、ここまで残留派が続けていた「EUを抜けたらオオカミが来るぞと脅かすキャンペーン(通称:fear campaign)」は限界に達しており、各国首脳や企業トップがEU残留への嘆願をすればむしろ、英国離脱による悲観的なシナリオがプロパガンダとしてとらえられている事実である。BREXIT による不安を強調すればするほど、有権者がむしろ懐疑的となり、逆説的にEU 離脱が現実化する可能性も指摘されている。米国オバマ大統領をはじめ主要国首脳が英国でEU への残留を呼びかけても、内政干渉との批判を招き、逆効果を指摘する声が大きくなりつつあることに残留キャンペーン陣営は早く気がつくべきである。

 今回の国民投票については党議拘束がかけられていないため、与党保守党内、野党労働党内でも残留派と離脱派とに別れ、激論を交わしていることにも不思議な感覚を覚える。前述の公開テレビ討論会でも、公の場で同僚である同じ政党の議員同士が罵り合うという英国ではめったに見かけない光景が繰り広げられた。残留、離脱のどちらに転んだとしても、この国民投票が終わった後、本当に英国は一つの国として同じ方向を目指すことができるのだろうかと心配になる。

 英国は、むしろ6月23日が過ぎた後が注目されるといっても過言ではない。

『[FT]英のEU離脱 その代償は』(6/19日経ビジネスオンライン FT)記事

英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う6月23日の国民投票を前に、離脱派はいわばEUへの抗議を表明している。EUにうんざり、あるいは移民問題が心配というなら離脱に投票をと訴えている。確かに今回の国民投票は英国民に第2次大戦以降、最も重大な選択を迫っている。それだけに離脱した場合と残留した場合、双方のケースをきちんと比較して考える必要がある。モノや人の移動に対し、バリケードを築くことが本当に賢明な選択肢なのか。有権者がいずれを選ぶのかは間もなく判明する。

caricature of FT

Ingram Pinn/Financial Times

 民主主義の素晴らしい点は、市民が考えを変える機会があることだ。政治家が約束を破ったら次の選挙で落とせばいい。だが今回は結果がもたらす影響があまりに大きい。英国が残留を選べば10年、20年後の再考は十分あり得る。だが離脱を決めたら、それは永遠の結果となり、連合王国の解体につながることになる。

□   □

 英国を外から見守る人はなぜ今なのかと不思議に思うだろう。確かにEUは理想的な状態にはないが、近年数々の重圧を乗り切ってきた。国民投票のタイミングはEUの本質とは全く関係ない。すべては党運営の問題であり、キャメロン英首相は国民投票をすれば保守党をまとめておけると思ったのだ。首相としては賢明な判断ではなかった。

■西洋文明への脅威

 各国の中央銀行が金融市場に走るショックに対処する方法を学んだとしても、離脱が決定した場合の影響は英国外にも大きく広がる。EUのトゥスク大統領は、英国の離脱は西洋文明の終わりの始まりになりかねないと言った時、恐らく誇張していた。だが残るEU各国を含む西側諸国にも強烈な打撃となるだろう。

 EUがなし遂げようとしていることは3つの柱に基づく。国家の繁栄、安全、そして自由、民主主義、法の支配といった価値観だ。西側の利益と価値観が世界中の独裁者から挑戦を受けている今、これらは多くの英国民が自分たちのものだと考える価値観である。

 英保守党内の反EU勢力が強いだけに、あまり明らかにされてこなかったが、英国は1973年に欧州の病人としてEUに加盟して以来43年間、実は経済的繁栄を謳歌してきた。この間の英国の1人当たり国内総生産(GDP)の伸び率は年平均1.8%と、ドイツの1.7%、フランスの1.4%、イタリアの1.3%を上回る。

 加盟したことで、英企業は競争に直面し鍛えられ、同時に単一市場へのアクセスを得、さらに海外から大規模な長期投資がなされるなど英国は大きな利益を受けてきた。経済協力開発機構(OECD)が記したように、英国は欧州各国ほど労働規制が厳しくないことによっても競争力を発揮してきた。つまり、EUが英国の発展の足かせになっているという主張は根拠がないということだ。

 大きな声では言えないが、英国は欧州大陸から来る野心的で勤勉な若者からも恩恵を受けた。移民問題を巡る失敗は、大規模な移民流入に適応するために必要な資源を自治体に与えなかった歴代政権の失敗だ。

 戦後の繁栄は安全保障に依存していた。EUの加盟国が互いに協力してまとまった体制として存在することは、米国が平和の保証人として機能することと密接につながってきた。軍事問題では北大西洋条約機構(NATO)の役割が大きいが、米政府にとってはEUがまとまって政治や外交政策を出せることも同じくらい重要だ。ロシアのウクライナ侵攻に対し制裁を科したのはNATOではなくEUだ。成功を収めたイランとの核交渉のきっかけを作ったのもEUだ。

■欧州全体が弱体化

 ロシアのプーチン大統領の領土を取り戻そうとする姿勢、核拡散、過激派組織「イスラム国」(IS)のテロ、中東やアフリカ北部からの際限のない移民流入、国際的な犯罪組織ネットワーク、気候変動などはすべて集団的な対応を必要とする脅威だ。英国のEU離脱は欧州を弱体化させ、こうした脅威への対処を難しくする。同時に英国をも弱体化させ、その対応力を損ねる。

□   □

 離脱派の考え方は啓蒙時代以前のように古く、道徳や倫理観といった発想があまりない。人権は欧州が勝手に考え出した概念だとみなしている。英国が欧州人権裁判所創設の原動力だったことも念頭にない。移住者は犯罪者、たかり屋として悪者扱いされる。皮肉にも彼らは議会主権こそが重要だと主張するが、英議員の3分の2は離脱に反対しており、矛盾している。

 離脱の是非を巡る議論には、難民の人権などの道義的側面に加え、経済的利害も絡んでいる。国の安全と繁栄の基盤となる開かれた国際体制は、法の支配があって成立している。英国もそうだ。だがルールを支える価値観を軽視するなら、無法状態にも近いカオスに舞い戻ることになる。

 離脱派にはこうした問題はどうでもいいようだ。彼らの信念は、昔から変わらぬポピュリスト(大衆迎合主義者)の主張で、「支配階級を攻撃せよ」と駆り立てる。そうしたい気持ちは分かるが、その代償に目を向けなければならない。

By Philip Stephens

(2016年6月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

『英国の女性議員殺害が問う“憎悪扇動”の大罪 EU離脱の国民投票直前に起きた悲劇の裏側』(6/20日経ビジネスオンライン 伏見香名子)記事

Jo Cox

英国のEU(欧州連合)離脱を問う選挙戦が終盤を迎えようとする中、6月16日、野党労働党の新人女性議員が白昼、地元で銃撃を受けた上に刺され、死亡するという事件が起きた。

 容疑者は50代の白人の男で、目撃証言によれば「ブリテン・ファースト!」と叫びながら議員を襲撃したとされている。

 「ブリテン・ファースト」とは反移民、反イスラムを掲げる英国の極右政党の名前とも同じであり、これが団体名を指したものなのか、言葉の通り“英国至上主義”を示したものなのか、本稿執筆現在(17日午後)、犯行に至った動機も含め、確認されていない。一部報道によれば、容疑者が精神的な疾患を持っていたとも、また、米国の白人至上主義の過激派団体より、銃の作り方を取り寄せたとも言われている。

犠牲になったコックス氏は人道支援を続けてきた

 犠牲となったのは、労働党議員のジョー・コックス氏(41)。国会議員になったのは去年5月で、政治家になる前は英国の大手NGO(非政府組織)、オックスファム(Oxfam)で人道支援キャンペーンを主導するなどし、ダルフールで性的暴力を受けた女性、ウガンダで戦わされた少年兵などを支援する活動を精力的に行った。また、セーブ・ザ・チルドレン、英国児童虐待防止協会(NSPCC)などのNGO団体に在籍した経験もあり、貧困や差別問題にも積極的に取り組んだ。

 議会での初演説においてコックス氏は「こんな多様な選挙区を代表できることは、喜びである(中略)私たちのコミュニティーはカトリック系のアイルランド人であれ、インドのグジャラート、あるいはパキスタンの、主にカシミール出身のイスラム教徒であれ、移民によってその価値がより深められた。こうした多様性を尊ぶとともに、選挙区を回るたび、私はいかに互いの中に、違いよりも共通項が存在し、より団結しているのかに驚かされる」と述べた。シリア難民の支援に関しても積極的に発言し、この問題に取り組む議会グループを設立、下院での議論も主催した。

 一方で、英国の大手新聞・テレグラフによれば、コックス議員は過去に極右政党「ブリテン・ファースト」の差別主義とファシズムを糾弾する発言を行っているとされる。「ブリテン・ファースト」は襲撃の直後、リーダーがビデオメッセージで、事件との関与を否定する声明を発表した。

bouquet for Jo Cox

「英国白人対その他民族」という構図

 弱い人たちを支援したいと政治の道を進んだコックス議員の情熱は、就任わずか13カ月で、突然絶たれた。

 コックス議員は現在、英国を揺るがしている「EU離脱を問う国民選挙」において、残留派の立場であった。6月10日付で固定されたツイートには「移民問題は確かに存在するが、EUを離脱する正しい理由ではない」と書かれている。

 民主主義の根幹を揺るがす殺人事件に驚愕しながらも、このところ筆者はEU離脱関連取材を通じ、選挙戦を取り巻く気持ちの悪い違和感に襲われてもおり、心の片隅で「起こるべくして起こってしまった事件」だとも感じている。白昼堂々、銃のみならず刃物まで使用して大の大人の男が女性を殺害するなど、どんな強烈な憎悪が渦巻いていたのか、知る術はない。しかし、EU離脱を問う今回のキャンペーンが、多分に英国白人対その他民族という構図を煽るような展開で来ている感は、否めない。

 殺害を受け、国民投票関連のキャンペーンは、離脱派、残留派が両陣営とも即日活動を一時停止し、コックス議員の死を悼むとした。筆者の元へは残留派のボランティアより、活動責任者らの言葉として「今は静かに内省するときだ。活動員としても、一個人としても、ソーシャルメディア上などで憶測に基づくコメントは差し控えるように。今は、政治ポイントを稼ぐときじゃない。議員の家族を思うべきだ」とし、活動停止の旨を知らせる一斉メールが届いた。

 BBCはコックス議員が死亡した16日夜、容疑者の動機の解明に至っていない段階で、看板報道番組「ニューズナイト」がいち早くこの事件に関連し、EU離脱を問う国民投票における、移民を悪とし社会に憎悪をあおる離脱派の分断的なキャンペーンの是非について討論を行った。また、大手新聞ガーディアンも同日夜、襲撃に直接加担したとは言えないまでも、最近社会に蔓延する憎悪に満ちたムードは、離脱派のキャンペーンの多くに「過激な言動、非難の応酬」さらに「公然とした差別主義」が含まれ、そうしたスタンスに起因するとのコラムを掲載している。

前ロンドン市長までも憎悪を煽るキャンペーン

 社会がなんとなくピリピリし、憎悪を糧とした事件の起こりかねない前兆は、年初以来、今回の国民投票がらみで行ってきた様々な取材の中、ロンドン各地や地方都市を訪れるごとに、特に最近感じていた。EU離脱派がメディアにおいて展開してきた、人々の憎悪を煽るアグレッシブさには、時に言葉を失うこともあった。この数カ月、離脱派は移民問題を選挙争点の核とし、現在、英国が直面する様々な課題の全てが、あたかもEUからの移民流入が原因だとするような情報を流し続ける戦略を展開してきた。

 キャンペーンの中には誤った情報も多数含まれている。例えば、残留すればいずれEUのトルコ加盟が起こり、膨大な量の移民が英国に流入するなどという情報だ。シンクタンク、オープンヨーロッパのアナリストによれば、現状、トルコのEU加盟には人権問題など様々なハードルがあり、直近では現実的ではない上、英国には加盟を阻止する拒否権があるというが、こうした背景は離脱派のキャンペーンに採用されていない。

コックス議員が殺害された当日、離脱を掲げる英国独立党のナイジェル・ファラージ党首は大量のシリア難民の画像を用い、移動の自由が可能なEUが難民問題を引き起こしたとのニュアンスを含め「EUから自由になり主権を取り戻そう」と掲げるポスターを選挙戦に投入したばかりだった。この画像は、去年スロベニアに押し寄せた難民を写しているもので、英国には到底入国などできない人々だとガーディアンは指摘している。このポスターには、民族的な憎悪扇動に関する法律に抵触するとして警察への通報があったほか、残留派の主だった政治家らはもちろん、他の主流離脱派からも敬遠され、強い反発を招いている。

 しかし、寛容性、多様性をうたい、移民を多く受け入れてきた英国社会を二分しかねない危険な要素は、議員殺害事件までにもあちこちに垣間見えていた。2度の大戦を引き起こした教訓から生まれたEUを、離脱派の旗印・前ロンドン市長のボリス・ジョンソンがこともあろうに「EUはまるでヒットラー」と煽るなど、選挙戦が盛り上がるに連れ政治家の大げさな舌戦も過熱した。それを日々見続ける市民同士の議論もヒートアップする中、社会を分断しかねない危うさが、日を追うごとに増幅していった。正直、このところ離脱がらみの取材にいささかうんざりしてきたのも、各地で憎悪を煽る政治家の声が聞くに堪えなくなってきたからである。

EU離脱の是非を利用する政治家たちの欺瞞

 ある選挙区で取材を進めていた時のことだ。その地区の超党派の離脱派会合に参加した。そこで飛び出したのは、残留派から誤送信されたメールを元に、残留派のビラ配りの場所を突き止め、同日同じ場所に行き「そこを潰してやろう」という話し合いの様子だった。

 当日その駅へ赴くと、離脱派が地元選出の国会議員を筆頭に、残留派のボランティアがビラ配りをしていた隣で自分たちもキャンペーンを展開し始め、通勤帰りの人たちへのビラ配り合戦と、ボランティア同士の激しい議論が始まった。別の日には、同じ選挙区で、離脱派が英国ではめったに見ない街宣車まで動員し、拡声器で残留派の真後ろを通り、その上、ビラ配りをしていた残留派のボランティアらの中に離脱派の一人が乗り込んできて、口論をふっかけ出した。

 ただし、筆者が見た限り、街頭で活動している多くの一般人のボランティアたちは、一人一人がそれぞれ純粋な思いを抱え、離脱、あるいは残留それぞれの支持を訴えている。離脱派すべてが極右でもフーリガンなわけでも、またどこかの党員なわけでもない。その多くが深刻な住宅問題で苦しんでいる人たちや、また、地元の小さな町に移民が押し寄せ、社会に統合してくれず悩む、という身近な問題を抱えている人たちだ。「東欧から移民の人たちがやってきたときは、本当にワクワクした。でも、彼らは英語も話さず、社会に溶け込んでもくれなかった」という若者の言葉が突き刺さる。

 こうした不安や不満がEUからの移民を遮断すれば解決するなどと声高に訴え、苦しむ人たちの真摯な思いを己の政治目的に利用せんとする政治家も、残念ながら少なからず存在する。移民が押し寄せているから住宅問題が急増するのだ、と唱えるある地区選出の保守党国会議員に「では、具体的に、貴方の選挙区のどこの地域・住所に住宅問題が生じているのか」と聞いたところ「秘書に聞け」という答えが返ってきたこともある。

 住宅問題があると言って選挙戦を展開しているのに、問題が地元のどこにあるのかすら知らないでいるのだ。こうした議員らにとってこの選挙は、地元の問題を解決するために行っているものではなく、いかに選挙後の自分たちの党内での立場を確保するか、彼らにとってはそのためだけに政治利用しているキャンペーンであることが透けてみえる。

ロンドン市長選でもあった対立煽るメディア戦略

 こうした不快極まりない政治家らによる選挙戦略を見ていて、ふと最近の類似キャンペーンを思い出した。先月まで行われていたロンドン市長選である(「トランプに屈しないイスラム教徒のロンドン市長」参照)。

 初のイスラム教徒の市長誕生に至るには、首相までもが便乗した、執拗な保守党陣営からのイスラム敵視キャンペーンがあった。ところが、全く根拠のない市長とイスラム過激派とのつながりを追及した当のキャメロン首相は、その舌の根も乾かぬうちに、今度は見事当選したそのカーン市長にEU残留キャンペーンでの協力を要請し、白々しく壇上を共にしている。ここへきて残留派がリードを広げられているのも、キャンペーンを率いるキャメロン首相のこうした態度が、人々の信頼を勝ち取れないからだとも言われている。

 ロンドン市長選において、保守党陣営を支えたのはオーストラリア人のキャンペーン・ストラテジスト、リントン・クロズビー氏率いるCTグループ所属の元タブロイド紙ジャーナリストだ。クロズビー氏はかつて、英国総選挙における保守党キャンペーンや、ジョンソン前ロンドン市長選出の際のキャンペーンを手がけている。英国の大手新聞ガーディアンは以前、クロズビー氏の切り札はネガティブ・キャンペーンで「人種や移民問題を強調し社会を分断することで、政治的勝利をおさめる手法を得意とする」と指摘した、対抗陣営ストラテジストのインタビューを引用している。

 クロズビー氏はオーストラリアのジョン・ハワード元首相のトップストラテジストでもあった。ハワード首相は移民に対する厳しい政策で4期もの続投を果たしたと言われており、メディア受けする巧みな難民蔑視ギリギリの言葉使いが保守層からの支持を得たとされている。同じくトニー・アボット前首相のキャンペーンでは「(難民を乗せた)ボートを追いかえせ」というスローガンが受けたと、ガーディアンは指摘している。

 今回の国民投票でクロズビー氏がキャンペーンに関わっているという情報は今のところ見当たらないが、少なくとも離脱派キャンペーンの一部には広告代理店がついていることが、現場取材で判明している。

社会の分断に加担するメディアの大罪

 こうしたメディア戦略家たちは、キャンペーンの成否については綿密な調査を行うのであろうが、社会の分断を煽り、憎悪を広めるようなキャッチフレーズや動画・ポスターなどの拡散が、長期的に社会におよぼす影響まで調査しているのか甚だ疑問である。

 だが自戒を込め、こうした分断的なキャンペーンに乗っかり「視聴率」という得体の知れないもののために、キャンペーンをそっくり垂れ流し続けるメディアの側にも全く責任がないとは言えない。「良いテレビ」企画を作るために、強い映像を撮れそうな現場を探し、解りやすいフレーズを切り取り、放送するのは制作者にとって必須だ。しかし、分断的な戦略を各陣営がとることを知りながら、それをそのまま流し続けることがより社会の分断に加担しているとすれば、メディアの功罪はとてつもなく大きい。

 コックス議員の3歳と5歳の幼い子供達から母親を奪った事件に加担してしまったのなら、憎悪を煽ってきた政治家同様、それを流し続けたメディアは取り返しのつかない大罪を犯したことになる。今後、この英国の国民投票のみならず、憎悪をばら撒き続けるドナルド・トランプが共和党候補となった米大統領選など、こうした戦略家たちによって手がけられているであろう「憎悪キャンペーン」を扱う放送関係者は、これを肝に銘ずるべきである。

 コックス議員の夫は、妻の死に際し以下の声明を発表している。

「彼女はきっと、何よりも2つのことを望むだろう。一つは、大切な2人の子供たちが溢れる愛で満たされること。そして、彼女を殺した憎悪と戦うため、私たちが団結することだ。憎悪には、信条も人種も宗教もない。ただ、有毒なだけだ。」

 この戦いに、メディアは無関係ではない。

a memorial for Jo Cox

追記:尚、地元警察は18日未明、事件に関連してトーマス・メイア容疑者(52)を殺人の罪で起訴したと発表した。19日、ロンドンの治安裁判所に移送され、初出廷で氏名を問われた被告は「私の名は「裏切り者に死を、英国に自由を」であると述べている。

良ければ下にあります

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『「中道左派にはもう頼れない」欧州移民の悲哀 “移民の味方”である民族政党は国家分断の源?』(6/16日経ビジネスオンラインThe Economist)について

欧州移民の問題は、白人の「成功の復讐」でしょう。キリスト教を先兵として植民地を開拓して富を収奪、第一次大戦後のパリ・ヴェルサイユ講和会議での日本の「人種差別撤廃提案」(米ウイルソン大統領に否決)、第二次大戦後植民地の独立運動(日本の敗戦の結果でも、やればできるかもと被植民の国民に思わせた、東南アジアの独立に残留日本兵の活躍もあった)、その後宗主国として影響力行使のためもあり、移民を受け入れざるを得ない歴史的展開になりました。

日本も韓国は植民地支配でなく、一進会等の要望もあり統合したにも拘らず、日本の敗戦後、韓国は戦勝国を自称するに至り、今でもそう言っていますが、世界で韓国が戦勝国と認める国はありません。それはそうでしょう。韓国ができたのは戦後、米国統治から韓国の独立が認められただけで、戦前・戦中は日本の一部だったわけですから。彼らの頭の中を覗いてみたい。不合理の塊なのでしょう。ノーベル賞を切望しても取れる訳ありません。科学は合理性の追求ですので。文学賞も「火病」を持った民族に良い作品ができる訳ありません。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160608/frn1606081140001-n1.htm

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160615/frn1606151848008-n1.htm

日本も欧州と同じく、在日の問題が大きく存在します。差別ではなく、弱者を騙り、日本から優遇策を勝ち取り、寄生虫そのものです。認めてきた方が悪いのですが。戦後日本人は経済成長だけに目が行き、名誉を守ることを忘れてきたせいでしょう。すぐ金で解決しようとします。そこが落とし穴です。一度払えばヤクザ同様延々と要求が続きます。偏向メデイアや左翼政党の影響を受け過ぎです。在日が日本に本当に馴染めないのであれば、権利の主張ばかりするのでなく、祖国に帰るべきです。欧州も極右と呼ばれていますが、移民受け入れ反対政党が票を伸ばしてきています。英国のEC離脱の理由として、難民問題もその一つです。6/23英国の国民投票でEU残留するかどうかですが、ジョー・コックス下院議員の銃殺事件がどう影響するかです。

記事

オランダの中でもハーグ市ほどオランダらしい都市はない。政庁所在地であるビネンホフ地区にはグリム童話から抜け出てきたかのような古風なゴシック建築がそびえ立つ。

 そこから1マイルほど西に向かうとボザール様式の平和宮が建っている。ここは国際司法裁判所の本部だ。また、北側に位置するガラス張りの財務省は、財政規律を教条的に重んじる人々の総本山である。

Wilders

オランダの極右政党、自由党のウィルダース氏(写真:AP/アフロ)

 一方、東に向かって1マイルほど歩くと(自転車でもいいのだが)、伝統的なオランダの風景とは異なるものが見えてくる。ガーナ人が経営する理髪店。トルコ風ティーハウスの数々。女性たちは頭からスカーフをかぶっている。ジュラバ(モロッコの民族衣装)を着た男性たちは夕べの祈りを捧げるため、道路に面したモスクへと足早に入っていく。

 モスクの向かいにあるのは「アミンのモロッコ風肉店」。その日の午後、中近東のサンドイッチ「シュワルマ」がぎっしり並ぶ冷蔵カウンターの後ろでは、オーナーの息子で31歳のジャマールがコンピュータの設定に取り組んでいた。

 彼のような人物こそ、この国の伝統的なアイデンティティと新たな移民コミュニティの間に存在する断絶の橋渡し役となり得る存在だ。ジャマールは2歳のときに家族とオランダに渡ってきた。エラスムス大学で経営学の学位を修得し、これまでに複数の中小企業でデータ解析の仕事に携わった経験を持つ。だが昨年になって企業世界に見切りをつけ、父親の精肉店に戻った。

 「オランダ社会では人種による選別が至る所で行われている」と彼は言う。最後に勤めた企業では、白人の同僚が欧州出身でない求職者を拒絶する理由をあれこれ並べ立てるのを見て落胆したという。

ムスリムや少数派民族を“代表”する民族政党が台頭

 移民という経歴を持つオランダ人の大半がそうであるように、ジャマールも過去の選挙では中道左派の労働党に票を投じてきた。だが今は新しくできた「デンク」への乗り換えを検討している。デンクは「考える」という意味。この政党は、ムスリムや少数派民族に対して自らを売り込んでいる。

 ムスリムや移民の多くは10年もの間、反ムスリム主義・反移民主義を掲げる政治家、ヘルト・ウィルダース(極右の自由党に所属。支持率では現在首位にある)からの執拗なまでの侮辱を受け続けてきた。彼らは今、労働党などの主流政党は自分たちを守ってくれないと感じている。

 デンクが来年の総選挙で数議席以上を獲得することはないだろう。だが、この政党は極めて重大な疑問を投げかけている。すなわち「外国人排斥の機運が高まったとき、欧州の少数派民族はこれまで投票してきた中道左派政党(幅広い政策を掲げる)を頼ることができるのか」「少数派民族は自らの手で政党を立ち上げるべきか」「そうすることは国の分裂を進めるだけなのか」といった問いである。

中道左派離れが始まった

 欧州全体において、ムスリムや非白人は中道左派に投票する傾向がある。オーストリアでは少数派民族の68%が最近の総選挙で社会民主党に票を投じた(白人は32%)。フランスで行われたある調査では、2012年の大統領選挙でムスリムの93%が社会党所属のフランソワ・オランド氏に投票したことがわかった。

 だが少数派民族の人たちは往々にして、中道左派政党は自分たちからの支持を当然視し、それに見合う見返りを与えてくれないと感じている。2012年にオランド氏に投票するため投票所に足を運んだムスリムたちは、2014年の市会議員選挙では家から出なかった(彼らの多くは社会党政権が同性婚を合法化したと非難した)。フランスに限ったことではなく、中道左派政党が移民やテロリズムに対して厳しく臨もうとするとき、少数派民族は裏切られたと感じる。

移民を軽視する政府高官

 新党のデンクはそんな中に誕生した。2014年、オランダのローデワイク・アッシャー副首相(労働党)はトルコ系オランダ人の市民団体への監視強化を認めた。イスラム過激主義を扇動しないよう見張るためだ。

 その直後、オランダのメディアは「トルコ系市民の若者の87%が過激派イスラム国(IS)に共感している」とする世論調査の結果を発表した。だが後の調査でこの結果はひどい代物であることが判明した。インタビューを受けた人たちは質問を理解していなかったのだ。だがアッシャー副首相はこの調査結果を無効とするのではなく、これが「厄介なもの」であると発言した。

 これに対し、労働党を支持していたトルコ系オランダ人の多くが激怒した。政党のトップたちは自らの支持母体についてまったく理解していないようだった。アムステルダム議会のムニーレ・マニサ議員は「この調査が意味をなさないことは誰の目にも明らかだ」と指摘する。マニサ議員はこの問題を解決すべく、アッシャー副首相に会い、何よりも先にこの結果が無効であることを示した調査を認めさせようと考えた。

 だが2人の野心的なトルコ系国会議員、トゥナハン・クズ氏とセルチュク・オズトゥルク氏がこの機に乗じて労働党を離れ、新党を設立した。

既存の政治に失望する移民は投票に行かない

 デンクはオランダにおける他の2大マイノリティグループであるモロッコ系オランダ人、アフロカリビアン系オランダ人から候補者を募っている。この4月には元高級官僚で現在はオランダの主要モロッコ系市民社会グループを率いるファリド・アザルカン氏を引き入れた。

 そして5月には南米スリナム生まれのテレビ番組司会者、シルバーナ・シモンス氏が参加した。同氏は、オランダにおける子どもの祝日である聖ニコラス祭で、顔を黒く塗ったキャラクター「ズワルト・ピート」がクッキーを配る風習が人種差別的だとして反対運動を行ってきた人物だ。シモンス氏は教育と言語の「非植民地化」を訴えた。これに対してオランダ国内の伝統主義者たちは交流サイトのフェイスブックで人種差別的な罵詈雑言を浴びせかけ、結果的にデンクが注目を集めるという一幕があった。

 デンクは、労働党などの政党が国内の少数派民族を見下していることが、彼らが疎外感を強める原因となっていると非難する。「彼らは自分が認めてもらえているとは感じていない。また、安全性を感じることもできない」とアザルカン氏は言う。

 アムステルダムの市会議員選挙を対象に長年行われている調査によると、1990年代半ばから2006年(ウィルダース氏の自由党が誕生した年)までトルコ系市民による投票率は約50%だった。それが2014年の選挙では34%に低下した。モロッコ系市民に関して言えば、2006年には37%だった投票率が2014年にはわずか24%となった。

 アムステル大学の准教授でこの調査の共同代表を務めるフロリス・ベルメウレン氏は「彼らは労働党が自分たちの声を反映していないと感じてはいるものの、他に向かう先がない」と指摘している。

政党は何のために存在するのか

 だが、「少数派民族以外の代表とはならない」というデンクのアプローチはオランダ社会が抱える分断を広げてしまう危険性をはらむ。「デンクに所属する議員の発言は”自分たちと相手の対立“という議論であふれている」――。労働党所属のモロッコ系議員、アハメッド・マルコウチ氏はこう指摘する。

 最近、オスマン帝国政府によるアルメニア人虐殺を認定する決議案についてオランダ国会が審議した際、デンクは異例の行動に出た。誰が賛成票(もしくは反対票)を投じたのか分かる形で投票するよう要求したのだ。これには、この発議に投票する他党のトルコ系議員の映像を政治キャンペーンの材料として使い、支持層にアピールする狙いがあった。

 もしも政党が民族を代表するものであるのなら、こうした政治の分断は避けられないものなのかもしれない。前出のジャマールが最終的にはデンクへの投票をためらうであろう理由は、おそらくそこにあるのではないか。ジャマールはこう問いかける――「問題は、デンクが移民の利益のみを代表する政党のつもりでいるのか、という点だ」「政党とは人々をまとめることが仕事のはずだ」と。

© 2015 The Economist Newspaper Limited. Jun 11th 2016 | From the print edition

英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

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『ドン・キホーテは『進撃の巨人』の夢を見るか 「オバマは韓国人慰霊碑を無視した」(3)』(6/16日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

韓国は分を弁えない民族的特質が仇になってきている感じです。「誇大妄想」、「被害妄想」という世界に浸りきれる「特異体質」を持った民族です。こんな民族に日韓基本条約を結んで助けた訳ですから。戦後の政治家は劣化したと言っても言い過ぎではありません。政治は結果責任の世界です。福沢諭吉は中韓と付き合うと碌なことにならないことを見抜いていました。今や在日中国人や在日韓国人が偏向メデイアと一緒になって、反日活動に勤しんでいます。獅子身中の虫としか言いようがありません。帰化日本人になっても祖国の為に動くのであればスパイです。スパイ防止法の制定が急がれます。こともあろうに自民党がスパイ防止法の代わりにヘイトスピーチ防止法を制定しました。表現の自由を制約するし、対象も特定の人種や民族という偏ったものです。これで自民党は本当に保守党と言えるのかどうか。多数の日本人を蔑ろにするものです。二階による野中広務の復党とか谷亮子の参院比例選抜とかおかしなことばかり。安倍首相はこれで本当に参院選に勝てると思っているのでしょうか?逆に「こころ」とか「おおさか維新」に票が流れるのでは。安倍首相の力が衰えてきているという事でしょうか?

韓国人は6/11のブログで書きましたが、「妬み」「嫉み」「恨み」「駄々こね」「嘘つき」「強請り」「タカリ」の特異体質を持っています。「火病持ち」で合理的精神のない未熟な民族です。でもそれは本記事にありますように、風車たる日本にだけしか通用しません。進撃の巨人の中国は韓国を属国扱いにしかしないでしょう。韓国の海も川も中国のものと中国人は思っています。今更日米に縋りつこうとしても「時すでに遅し」です。愚かな民族はどこまで言っても愚かです。日本も後世の日本人から「平成の日本人は本当に愚かだった」と言われないように。そのためには、マスメデイアの言うことの逆をやれば正しい道を歩めるでしょう。

記事

Don Quixote

前回から読む)

 韓国人は不都合な真実に目をつむる。日本叩きはそのためにも必要だ。

風車に突撃する韓国人

—オバマ(Barack Obama)大統領の広島訪問に大騒ぎした韓国。風車を巨人と思い込んで突進した「ドン・キホーテ」を思い出しました。

鈴置:もっともです。日本を悪い巨人と思い込み――「日本は戦犯国家のくせに免罪符を得ようと、オバマを広島に呼んだ」と妄想し、国を挙げて難詰したのですから。

 米国に対しても「オバマは広島に行くな」「行っても日本に謝るな」「もし、謝るなら韓国にも触れろ」と韓国紙は騒ぎ立てました。

 表で動きにくい政府の意も体し、メディアが「巨人を倒せ!」と呼び掛けた。常識人――サンチョ・パンサが「あれは風車ですよ」といくら言っても聞く耳を持たず、国を挙げて「巨人」に突撃……。

数少ないサンチョ・パンサ

—サンチョ・パンサとは、前回登場した朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員のことですね。

鈴置:彼だけではありません。数は少ないのですが、まだいます。元外交官の趙世暎(チョ・セヨン)東西大学特任教授も「オバマ大統領の広島訪問を『勝った、負けた』の次元で見るな」と韓国人を諭しました。

 5月26日、左派系のキョンヒャン新聞に「『核兵器のない世界』 オバマ広島訪問と韓国の選択」(韓国語)を寄稿しました。

 5月27日の広島訪問の翌日、この寄稿はハフィントンポスト日本語版に「オバマ大統領の広島訪問は日本への免罪符となるのか」の見出しで翻訳・転載されました。後者を引用します。見出しで提示した疑問に対し、趙世暎特任教授は簡単に答えます。以下です。

  • オバマ大統領の広島訪問は、果たして日本に免罪符を与えるだろうか? 私はそうは思わない。アメリカの大統領が広島を訪問して犠牲者を称える「道徳的優位」は、日本の戦争責任を上書きするどころか、日本に大きな負担となるだろう。

トランプに反応「核武装を」

 そして話題を転じ、次のような主張で結びました。

  • 問題は韓国だ。私たちは、果たして核兵器のない世界という目標を深く切実に考えているだろうか。核兵器の非人道性という、より根源的な問題意識とは遠い。そのため、トランプ氏が在韓アメリカ軍撤収を言い出すと、すぐに核武装を、といった話があまりに簡単に登場するのだ。
  • 韓国社会にも核武装論への批判がないわけではないが、北朝鮮に非核化を要求する大義名分がなくなり、米韓同盟に支障をきたし、原子力発電をはじめとする実利的な面で損害が大きいという現実的な主張がほとんどだ。
  • オバマ氏の広島訪問を加害と被害という面でばかり見てはならず、戦争や平和、そして核兵器と人道主義というレベルで深く考察する機会となることを願う。

現実主義者からも白い目

—趙世暎特任教授は反核運動の賛同者……でもなさそうですね。

鈴置:現実に足の着いた外交評論家です。この記事は11の段落で構成されていますが、8つの段落を使って「核のジレンマ」、つまり核廃絶が容易ではない現実を説明しています。

 具体的には、マーシャル諸島共和国が「核軍縮に努力していない」と核保有国を国際司法裁判所に訴えたのに「核なき世界」を訴えノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領からも無視されたこと。日本は核廃絶に関心を見せながら米国の核の傘に依存すること――などを挙げています。

 しかし、趙世暎特任教授はそうした現実も踏まえたうえで「オバマ広島訪問」に際し、韓国が「核兵器の非人道性という、より根源的な問題」には目を向けず「加害と被害」を掲げて立ち回ったことを批判したのです。

 核廃絶を主張する人の多くは「広島訪問」の実現が、その一歩となることを期待しています。一方、オバマ大統領の「実績作り」と冷ややかに見た人もいます。前者の人々はもちろん、後者――現実主義者からも韓国の自己中心的な行動は白い目で見られるでしょう。

「日米同盟」も攻撃

—核廃絶論者が白い目で見るのは分かります。現実主義者も韓国をそう見るのですか?

鈴置:米国の現実主義者の多くは保守派です。彼らは、日米同盟強化も狙った「広島訪問」に難色を示した韓国を疑いました。

 2015年の安倍晋三首相の米上下両院演説に対しても、韓国は国を挙げて反対しました。その執拗なロビー活動に米国の外交関係者は疲れ果てました(「『アベの米議会演説阻止』で自爆した韓国」参照)。

 韓国の背後に中国がいると見なした人も多い。彼らの目には、今回の「広島騒動」はその再演に映ったのです。

 ドン・キホーテが攻撃した対象は日本だけではなかった。日本との同盟強化を狙う米国にも韓国人はヤリを向けて突進したのです。本人たちはそれに気づいていませんが。

 外交通商部(現・外交部)で東北アジア局長まで務めた趙世暎特任教授にすれば、とても見ていられなかったのでしょう。

韓国が立つ場はなかった

 現役の外交官からも、韓国人の世界認識と姿勢に疑問が呈されました。徐張恩(ソ・チャンウォン)広島総領事が中央日報に「広島で過去より未来を語ったオバマ大統領」(日本語版、5月28日)を寄せました。骨子は以下です。

  • 原爆を落とした国とその原爆で多くの命を失った国の首脳が「グラウンド・ゼロ」に並んで立った。韓日間の過去の歴史でいくつかの苦痛を忘れることができない我々が、このすべての場面を快く受け入れるのは容易ではない。
  • しかし筆者は91歳の坪井さんら被爆者代表2人がオバマ大統領と握手しながら万感の笑みと涙を見せた場面で、今回の訪問のもう一つの側面を考えるようになった。
  • 果たしてこの人たちは安倍政権の対外政策に同意してあの位置に立ったのだろうか。現場にいた広島の人々の多くは普段、安保法案など安倍政権の政策に非常に批判的だった。
  • しかし今回は左右に関係なく声を一つにして訪問を希望し、これを実現させた。広島市民の主な関心事は「未来」であり、この「未来」に向けた歩みが忙しく、苦痛の過去を胸にしまい込んだようだった。
  • 一方、我々は韓国人の原爆被害という、よりいっそう痛恨の「過去」を話しただけで、これを「未来」に結びつけようとする努力は見せられなかったようだ。慰霊碑訪問、そして現地を訪問した被爆代表団の謝罪・補償要求まで…。このため、未来だけを話すという場に我々が一緒に立つ余地はなかったようだ。

左右が声を1つに

—韓国人、ことに外交官が「過去ばかり見るな」なんて言っていいのですか?

鈴置:私も驚きました。韓国の対日外交の基本戦略は「歴史カード」を駆使して日本の足を引っ張ることですから。でも、徐張恩氏の経歴を見ると、職業外交官ではなく政治的任命を受けた研究者。それでこれだけ書けたのかな、と思います。

 この寄稿にはもう1つ興味深い点があります。安倍政権に批判的な日本の被爆者らが、政府と歩調を合わせることでオバマ訪問を実現したことに注目したことです。

 「昔は『弱さ』を恥じる韓国人もいた」で紹介した日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳事務局長。5月19日の日本記者クラブでの会見で、以下のように語っています。発言はYouTubeの『田中煕巳被団協事務局長「オバマ広島訪問」①』で視聴できます。

  • 謝罪をしてほしいという気持ちはあります。が、それはぐっと抑えて(オバマ大統領に)核兵器廃絶の先頭に立ってほしいとの思いがあるのでしょう(開始後27分10秒から)。
  • 広島に来られたらオバマさん個人の原爆に対する体験が質的に変わるだろうと期待しています(同19分48秒から)。

 「苦痛の過去を胸にしまい込んだ」のです。その田中事務局長も「戦争をしない国になると決めた憲法9条に反した、ここ数年の安倍政権の方向」には極めて批判的です(同16分05秒から)。

 徐張恩総領事はまさにこの点、「左右に関係なく声を1つにした」ことを特筆したのです。これは韓国人にとって驚きでしょう。韓国で被害者が「目的のためにぐっと我慢する」とは考えにくい。ましてや、対立する他の党派と協力するなど想像もできません。

 「広島訪問」とは全く関係ない記事にも、この話が登場しました。書いたのは朝鮮日報の宋煕永(ソン・ヒヨン)主筆。1993年から2年間東京特派員を務め、経済科学部長、ワシントン支局長、編集局長などを歴任した有名な記者です。

1等国民と2等国民

—四半世紀前は……。

鈴置:そうです。その頃は、韓国メディアはとびきり腕利きの記者を東京に送り込んでいたのです。

 宋煕永主筆が書いた「1等国民、2等国民」(6月4日、韓国語版)は、韓国でひどくなる一方の格差を論じたコラムです。

 「持つ者」(1等国民)と「持たざる者」(2等国民)の対立が激しくなる現状を憂い、このままでは両者の間での「全面戦争がいつ勃発するか気が気でない」とまで書きました。

 この純然たる内政を論じる記事に突然、謝罪を求めなかった日本の被爆者の話が出てくるのです。以下です。

  • オバマ大統領は先週広島で原爆被害者たちに会った。戦争を起こした側は日本だ。その原罪を消すことはできない。しかし、原爆被害者たちは「弱くて罪がなくかわいそうな」人々だった。今日の生存者は当時、何も分からない子どもたちだった。
  • にもかかわらず、広島では謝罪要求のためのデモが起こらなかった。補償要求もなかった。原爆被害者団体は1984年以降、米国に謝罪要求をするという方針を取っていたが、一切口を開かなかった。
  • オバマ大統領が「謝罪はしない」と宣言していたため、諦めたのではない。「核兵器の根絶に向け先頭に立ってください」と言いたかったというが、それさえ最後まで自制した。
  • 71年間にわたって彼らは、鬱憤と償いを求める心を抑えに抑え込んできた。熱い感情を冷たい胸に押し込んで生きてきた広島の人々を、我々はどう受け止めるべきか。
  • 韓国人特有の被害者意識は「忍耐」を知らない。感情の高まりに歯止めが掛からない。

全体主義の誘惑

 この記事は、韓国の持たざる者に「我慢せよ」と説いているわけではありません。格差の拡大を放置している為政者に矛先を向けています。

 それでもなお、「熱い感情を冷たい胸に押し込んで生きてきた広島の人々を、我々はどう受け止めるべきか」と韓国人に問いかけたのです。

 社会的葛藤の解決には「激突」以外にも方法があるのだ、と宋煕永主筆は言いたかったに違いありません。ただ、こうした発想は韓国人には受け入れにくいようです。

 左派系紙、ハンギョレのキル・ユンヒョン東京特派員は「謝罪要求を口にさせない日本」を批判し、見出しで「日本は全体主義に向かう」と警告しました。「塩野七生、あるいは全体主義の誘惑」(5月27日、日本語版)という記事で、関連部分は以下です。

  • 広島には自身の被爆経験を気楽には話せない微妙な雰囲気が出来上がっている。今までオバマ大統領に謝罪を要求する明確なメッセージを出してきた人は、広島の著名な平和運動家の森滝市郎氏(1901~1994)の娘でもある、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子代表だけだ。
  • 自分の被害だけを前面に掲げる被爆者の姿を見るのも多少違和感があるが、被爆者の自然な感情の表現まで封じ込めようとする日本社会の雰囲気には、本当に息苦しさを感じる。

泣き叫ぶ韓国の被害者

—全体主義ですか。

鈴置:「広島訪問」後、日本メディアはオバマ大統領への不満の声も紹介しました。5月28日の日本経済新聞朝刊・社会面の1本の記事の見出しが「核廃絶、力強さ感じず」「不満の声も」でした。

 5月27日のNHKの中継放送でも、ある被爆者が「オバマ演説は核兵器の恐ろしさに十分に言及しなかった」と批判していました。

 それでも韓国人には全体主義に見えるのでしょう。被害者は要求を通すため建物を占拠したり、泣き叫びながら道を転がって訴える。権力側はそれを警察力で弾圧する――。物理的な力の激突によって「正義」を決めるのが、韓国社会における対立の解決法ですから。

 もちろんすべての韓国人がそれを「良し」としているわけではありません。ひょっとすると徐張恩総領事の「日本人は左右に関係なく声を1つにした」という寄稿は、キル・ユンヒョン東京特派員の「日本は全体主義に向かう」という記事に触発されて書かれたのかもしれません。

韓国を食う本当の巨人

—結局、韓国社会で「広島訪問」はどう記憶されていくのでしょうか。

鈴置:小ずるい日本がオバマを騙して免罪符を得たつもりになった。米国はやはり日本だけを可愛がる――という認識が定着していくと思います。メディアがその線で報じ続けたからです。

 訪問前からいち早く、朝鮮日報の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問が「世界の大局の変化を読み取れ。これは米日が手を組み中国と対決姿勢を造る一コマだ」と警告しました(「韓国は『尊敬される国』になるのか」参照)。

 訪問後にも数人のサンチョ・パンサが出ました。でも、こうした大局論は論壇では少数派に留まりました。

—「凶悪な日本にまたやられた」という話の方が、普通の人の耳には入りやすいのでしょうね。

鈴置:その通りです。ただ、見落とすべきではないのは、国際情勢の変化には気がついても、その現実から顔をそむけるために「小ずるい日本」を言い立てる空気が出てきたことです。

 普通の韓国人と話していても、交流サイト(SNS)を覗いてみても、韓国の未来が極めて厳しいとの前提で会話が進むことが増えました。

 米中対立がどんどん先鋭化する。中国は「お前はいつまで米国の子分をやっているのか。戻ってこい」と凄んでくる。本当に危険なのは、隣の巨大な全体主義国家ではないか――。

 こんな認識がようやく韓国人の間で語られ始めたのです。ますます大きくなる巨人が、韓国を取って食べようとしている。というのに、防壁たる米韓同盟は壊れ始めている、という恐怖です。

韓国の“荒川”河口に中国漁船

—同じ巨人でも、今度は『進撃の巨人』ですね。

鈴置:このマンガ・アニメは韓国でも有名です。例えを『ドン・キホーテ』に戻すと、最近の韓国人は恐ろしい現実から目をそらすために、風車に突撃しているように見えます。

 巨人と戦っているという自己満足は得られますし、ありがたいことに風車――日本なら反撃してきません。

—今やドン・キホーテが風車攻撃に出るのは、不都合な真実に気がつかないというよりも、それを見たくないから、というわけですね。

鈴置:仁川国際空港とさほど離れていない海で、違法操業を繰り返す中国の漁船2隻を韓国の漁民が拿捕するという事件が起きました。「自力救済」です。

 ウンカのように――数百隻も同時に押し寄せる中国漁船に、韓国海軍も海洋警察も対応しきれなくなっています。政府も中国に再三、抗議してきましたが、相手にされません。

 中国の漁民はこん棒などで武装しており、すでに韓国の海洋警察官2人が殺されています(「『中国に屈従か、核武装か』と韓国紙社説は問うた」参照)。

 中国漁船は何と、ソウルを流れる漢口の河口まで侵入しています(中央日報社説「漁民が中国違法漁船を拿捕する国=韓国」=6月7日、韓国語版)。日本で言えば東京・荒川や大阪・淀川の河口に中国漁船が居座って違法操業しているわけです。

 韓国経済新聞は社説「中国漁船問題が見せる異様な韓中関係」(6月8日、日本語版)で以下のように嘆きました。

  • 泥棒を警察ではなく家主が直接捕まえなければならない状況が広がっているということだ。まったく一流国家では有り得ないことだ。

「進撃の巨人」は見ない

 韓国漁民による拿捕事件が発生したのが6月5日。3日後の6月8日、韓国海軍は「本日から海洋警察とともに独島(竹島)で防衛訓練に入る」と発表しました。海軍は「独島の領有権主張を強める日本への強力なメッセージである」と国民の前で胸を張りました。

 聯合ニュースの「韓国軍、東海上で独島防衛訓練を実施=明日まで」(6月8日、日本語版)などが一斉に報じました。日韓両国政府が関係改善を模索する中、わざわざ日本に対し肩を怒らせて見せたのです。

 隣国のドン・キホーテたちは「本当の巨人」は存在しないことにしてしまい、風車に突撃し続けるつもりでしょう。

(次回に続く)

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『日本企業はなぜアジアで欧米勢に勝てないのか ボストン・コンサルティング・グループ日本代表 杉田浩章氏に聞く』(6/15日経ビジネスオンライン 鈴木哲也)について

<6/17ロイター 中国が為替政策で後戻りなら新たな火種に=ルー米財務長官

[ワシントン 16日 ロイター] – ルー米財務長官は、中国人民元の対ドル相場を人為的に低く抑える過去の為替政策に後戻りすれば、米中関係に新たな緊張を生むとの認識を示した。アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートでの講演で述べた。

長官は「世界経済が弱含む中で、中国が過去の為替政策や輸出主導型経済に後戻りすれば、米中2カ国間に新たな緊張を生む」と警告した。

為替問題において、米中関係は近年、大きな進展を遂げたとも指摘。人民元安を狙った為替介入を行なうのではなく、中国当局は過去1年、外貨準備を活用し元を支援したとしている。

ただ中国は市場原理に基づく為替相場への秩序だった移行に向けて実現すべき課題をなお抱えているとし、先週の米中戦略・経済対話では、中国側が市場の力に委ね人民元を上昇、下落させるための為替改革に注力していると姿勢が示されたと明らかにした。

その上で「中国は双方向の弾力性へのコミットメントについて、言葉ではなく行動で示す必要がある」と指摘。中国が人民元安を許容するのは市場に下落圧力がある時だけとし、「中国のコミットメントの真価は、市場で上昇圧力が再燃した際に元高を許容できるかどうかだ」と話した。

また中国のビジネス環境は、外資系企業にとりマイナスの方向へと変化しているとして懸念を表明。米中が協議を進めている投資協定に対する中国当局のスタンスが、市場開放や競争促進に対する中国の本気度を占う試金石となると述べた。

中国は米投資の対象外とするセクターをまとめた新たな「ネガティブリスト」を提出したが、真剣な申し出なのか判断するのはまだ時期尚早とした。>

6/17産経ニュース 中国の市場経済国、米財務長官が「自動的には認められない」

 【ワシントン=小雲規生】ルー米財務長官は16日、ワシントン市内でのイベントで、中国が求めている世界貿易機関(WTO)の規定上の市場経済国としての認定について「自動的に認められるものではない」と述べた。中国はダンピング(不当廉売)課税を受けにくくなる利点がある市場経済国認定を目指し、15年前のWTO加盟時の合意を理由に12月には自動的に市場経済国になると主張しているが、ルー氏は公の場で異議を唱えた格好だ。

 ルー氏は米国として中国を市場経済国として認定するかどうかは「米国の商務省が決めることだ」と指摘。一方、経済改革を進めれば進めるほど認定されやすくなると中国に伝えていることも明らかにし、将来的な認定に含みを残した。>

<6/17日経米財務長官、アジア投資銀を評価 米中投資協定妥結に意欲 

フォームの終わり

 【ワシントン=河浪武史】ルー米財務長官は16日、ワシントン市内での講演で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を「統治や環境保護などの運用面で高い基準を満たしそうだ」と評価した。交渉中の米中投資協定も早期妥結に意欲をみせた。米国はAIIBには日本とともに参加していないが、ルー氏は米中の経済協力の拡大を目指している。

 米国は「AIIBは融資や資金調達などの運営体制が不透明だ」として、参加を見送ってきた。ルー氏は16日の講演で、世界銀行などとの協調融資体制がAIIBの運営基準を高めていると指摘し、米当局の一方的な反対姿勢を修正した。

 外資規制の撤廃などによって米企業が中国に進出しやすくなる投資協定は「今後7カ月の交渉が重要だ」と述べ、オバマ政権下での妥結に意欲をみせた。投資自由化の例外対象とする「ネガティブリスト」について、週内に米中両国で協議するとも明かした。

 米中は6月初旬に北京で戦略・経済対話を開き、貿易や通貨政策などの経済協力を議論した。米産業界は投資協定の早期妥結を求めており、ルー長官は中国との関係強化を急いでいる。>

ロイター、産経、日経の3社のルー米財務長官の発言を取り上げて見ました。日経だけの記事では中国に融和的な印象が残りますが、ロイターや産経を読むと言うべきことは言っていると感じます。日経は今でも中国進出、中国サポートに躍起な感じがします。愚かでしょう。日本の領海が蹂躙されているというのに。

本記事も中国へのリスクは論じられずに、中国経済はアッパーミドル層や富裕層が増えているなどと提灯記事のようです。あれだけ中国進出を煽った大前研一ですら、中国経済崩壊、手の打ちようがないと言っているのに。マクロで物事を見ているのかと言いたい。中国政府のプロパガンダを鵜呑みにしているだけ。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160209/frn1602091846006-n1.htm

ゆめコンサルタントや日経などに騙されないように。

記事

新興国経済の減速によって世界経済が変調する中で、日本企業の海外展開は一段とハードルが高くなるのか--。ボストン・コンサルティング・グループ日本代表の杉田浩章氏は、中国や東南アジアの消費市場は底堅さを保っており、むしろ課題はマクロ経済よりも日本企業の経営力にあると指摘する。生産技術には優れているものの、人材マネジメントや商品流通などの面で標準化された仕組みをもたないことが弱点になっている。杉田氏にグローバル展開を軌道に乗せるための重点ポイントを聞いた。(聞き手は鈴木哲也)

Hiroaki Sugita

杉田浩章(すぎた・ひろあき)氏 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)日本代表 東京工業大学工学部卒。慶応義塾大学経営学修士(MBA)。日本交通公社(JTB)を経て現在に至る。消費財、自動車、メディア、ハイテク等の業界を中心に、トランスフォーメーション、グローバル化戦略、営業改革、マーケティング戦略、組織・人事改革などコンサルティングを数多く手掛けている。著書に「BCG流 戦略営業」などがある。

—中国経済減速や資源価格下落という要因によって世界経済が不安定になりました。消費のマーケットという面でみたとき、アジアの現状はどうでしょうか。

杉田:東南アジアの消費マーケットは結構、影響を受けましたね。影響の少ない、ベトナム、フィリピン、インドといったあたりが注目されるのがここ数年の流れです。インドネシアは成長が鈍化していましたが、ジョコ大統領の内政掌握の力が高まってきている面もあり、経済改革が進み始める期待感も生まれています。では中国はどうかというと、GDP(国内総生産)が減速しているのは、BtoB系や、インフラ系のビジネスの落ち込みによるものです。一方で消費関連は10%成長を続けています。

—消費の仕方には変化がありますか。

杉田:中国の消費の変化をみると、過去はエマージング・ミドル・クラス(新興中間層)という人たちがずっと消費をリードしてきたのですが、こうした層の人数の伸びが頭打ちになってきました。もう1段上のアッパーミドル・クラス(上位中間層)や富裕層の人数が、急速に今増えているのです。2020年を過ぎると上位中間層の人数が、新興中間層を上回る見通しです。売れるものも変化していて、基本的な生活を整えるための需要から、付加価値の高いものや高級なものへ移って来ています。東南アジアの多くは、まだそこまでいっていなくて、やはり中国の5年前や、国によっては10年前の水準ですが、これから発展していくでしょう。

—マクロ経済の変調にも関わらず、現地の消費市場を狙う日本企業にとっては、攻めるチャンスということでしょうか。

杉田:アジア市場というのは日本企業にとって、利益を生み出せる段階に入ってきたのだと思っています。消費者ニーズが低価格の商品から移り始めて、日本的な品質の良さが受け入れられるようになっています。そうしたものが一定のボリュームで売れるようになれば、利益が出てきます。それと現状では、GDP成長率の変化が直接影響するほどに、現地の事業が大きく育っている日本企業はあまりないでしょう。マクロ経済の変動よりも、これから開拓すべき「白地」、ホワイトスペースがずっと大きいのです。

生産以外に「手法」を持たないのが弱点

—景気などの外的要因ではなく、企業の内部に課題を見つけて改善するべきだということですね。よく指摘されるのが「日本企業は海外の工場など生産現場のマネジメントは上手だが、それ以外の商品開発、マーケティングなどではうまく海外でマネジメントができない」という点ですね。

杉田:生産では手法があるんですよ。生産現場の場合、英語があまりできなくても現地の人とコミュニケーションをして、技術を伝承できた例が多くあります。なぜかというと日本企業の場合、生産では何をどういう手順で、どういうふうに回していったら良くなるか、どこを重要ポイントとしてみて管理していったらよくなるかという一連の手法が確立しているんです。現地の人がそれを身につければ、生産のマネジメントができるようになる。そういう手法があるんです。

 しかし生産以外のところには手法がないのです。マーケティング、流通、商品開発では、日本企業は勘に頼っていたり、その分野に強い人が個人の力で動かしていたりするのです。つまり属人性で勝ってきている例が多いのです。日本で戦後からずっとここまで、そういう状況で事業展開してきたので形式化ができていなのです。

—それが海外展開するうえで、日本企業の弱みになっているのですね

杉田:こうした面では圧倒的に欧米系が強いんですよ。代表例はP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)、コカ・コーラ、ペプシコ、こういうグローバル企業は、原理・原則というか、何をどういうふうに押さえて、どう経営していったらいいのかという、手法や型をもっているのです。そのためローカルの市場に行っても、落とし込むべき型が明確にあります。

 例えば、先進的なマーケティングで有名なP&Gは、市場の見方とか、分析した市場の特性に応じてどんな手を打つのかという、フレームワークをもっています。マーケットの状況が見えにくい、新興国に行っても、即座にこうしたことをやる。これが先行しているグローバルプレーヤーの強さなのです。

—サントリーホールディングスは、2012年に米ペプシコのベトナム現地法人の株式の過半を取得することを決め、傘下に入れました。業績は堅調に推移しています。対象の企業が、もともと強い販路をもっていたことが、買収を決めた要因のひとつだそうです。

 ペプシが商品流通で取り組んできたことから、サントリーが学ぶことは大きいと思われます。例えば取引先の組織化、卸をどう教育するか、そこにどうインセンティブの制度つくるかといった仕組みです。どうPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すのか。何がチェックポイントで、どのタイミングでそれをチェックしていくのか、まさにPDCAですよね。こうしたことがちゃんと仕組みとしてできていて、やっぱりパッケージとして優れているのです。こうしたことは日本企業が欧米系から学べるところだと思います。

—新興国など流通が組織化されていない未成熟のマーケットでは、どうすれば消費者に効率的に商品を届けられるかが一層重要になりますね。

杉田:例えば卸など外部の企業を、自ら教育するとか、資金も入れたりするということも含めて、販路を育てていかないと、なかなかシェアはとれない。いい商品だけあっても、流通をしっかりやらないとうまくいかないのです。

—生産の「カイゼン」などと違って、マーケティングや流通政策は、日本の中でも手法が確立していないなら、どのように海外で展開していけばいいのでしょうか。

杉田:日本でやっていることをマニュアル化するというよりも、海外拠点のどこかで先行してやっていて、うまくいっている経験をマニュアル化して、別の国に持っていく「横展開」が有効ではないでしょうか。

欧米のパワーゲームにどう対抗するか

—欧米大手の消費財メーカーがアジアでの存在感が高いのは、もちろん進出から歴史が長いということもあると思いますが、そのほかに彼らの戦略の特徴はありますか。

杉田:米国系だけでなく、ネスレやユニ・リーバなど欧州系も強いですね。傾向的に欧米系は、やはり規模が大きくて、市場の中で一気にシェアを取りに行くために、いわゆるパワーゲームをします。ものすごい資金を突っ込んで、下手すると10年どころじゃなくて、収益が生まれなくてももっと長期的視点で、エリアポートフォリオの一環として市場開拓を続けるのです。エリア内の他の地域で莫大な利益を上げているので可能なのです。それぐらい先行投資でブランドをつくるとか、生産や流通網をつくるということをやります。飲料の「ボトラー」のマネジメントなどもその一例ですね。

 それからもう1つが、欧米大手はグローバルブランド、グローバルプロダクトというものをいくつかの価格帯で持っていて、それらを、各国市場ごとにカスタマイズすることで投入しようとします。どちらかというとグローバルの規模を背景に、コスト優位性みたいなものを最大限生かして戦うという傾向がとても強い。これもある種のパワーゲームですね。

—日本企業が正面から戦いを挑むのは難しそうですが、一方で、タイやインドネシアでの味の素や、ユニ・チャームなど成功している例もありますね。

杉田:ええ。日本では、欧米のトップ企業と同じパワーゲームをやって勝てる企業はないと思います。しかし逆の言い方をすると、ローカル市場ごとに、深くマーケットに入っていって、そこのローカルの構造に合わせて商品を設計すること、一つ一つのマーケット最適な物を作っていくということが日本企業はすごくたけていると感じます。欧米ジャイアントとは違う戦い方をうまく構築できた企業は、そのやり方を別の国でも適用しています。味の素やユニ・チャームなどはその好例だと思います。日本企業一般で言うと、ローカルに対応した物づくりの力はあるのだから、先ほど言った流通やマーケティングを含めた、経営の手法を確立して、さらに広く横展開していけるようになれば、もっと強くなるでしょうね。

—もうひとつ、日本企業の海外展開の課題として指摘されるのが、人材マネジメントですね。

杉田:そういうところもおそらく欧米大手のほうが長けている部分が多いのではないでしょうか。人材の採用、育成の仕方も、日本企業よりは一般的には優れていると思います。そして大切なのは企業の理念やビジョンなのです。あるマーケットの中で自分たちは何を成し遂げたいと思うのか。自分たちはどういう存在を目指すのか、といった理念やビジョンを、ローカルの人材ととどこまで共有できるのかというのが重要なのです。日本企業でも、何度も失敗を繰り返して、苦労して成功したところは、こうした理念を共有することの重要性を理解しています。

 何となく一般論で、強い人材を採ってこようと思うと、お金が高くて日本企業はそこまで給料を払えないとかいうじゃないですか。あるいは給与で引き抜かれちゃうので、なかなか難しいんだよとか。そんな単純なものではないのです。そのマーケットにおいて、どう一緒になって大きくなっていくのかという感覚が共有できるかできないかというのが、人材の採用にも維持にも、とても影響します。ローカルの社員に単に指示を出すということではなく、自分たちはどういうふうに働き方を変えるのかとか、次、何を目指すのかということを自ら考えさせること。これが長期的にその市場で勝ち続けるためには、とても重要だと思うのです。

やる気をそぐ「ガラスの天井」

—いくつかの調査で、日本企業の海外法人で働いている現地の社員の満足度が低いという結果が出ています。杉田さんが、今言ったことと関連しているのでしょうね。

杉田:はい。よくガラスの天井と言われる問題です。現地の社員はあるところ以上は昇進できないという。やっぱりローカルの人間の方が本当に実力がある、あるいは実力を付けさせてやるんだったら、同じレベルであっても、ローカルの人間を上に置くべきです。どんどん日本人を置いてポジションを取って行ったら、ローカルの人間はその会社にいようと思わないし、自分の将来が見えないですよね。

—しかし、欧米企業にもガラスの天井があるのではないですか。

杉田:ただ欧米企業の場合、現地社員にもこういうキャリアの可能性があるというのが、みえやすいのです。例えば、グローバル人材のプールに加わることになる、つまり他の国で働けるといった機会が現地の社員にも開かれている。日本企業でも海外で上手くいっているところは、欧米的な洗練されたルールや仕組みになっているわけではなくても、ローカルにいる人間たちに大きなチャンスを提供しようということを、本気で考えています。

—ボストン・コンサルティング・グループと、スイスのビジネススクールであるIMDが最近共同で行った調査で、海外展開したいという希望と、それに対してどれだけ準備ができているかという自己評価を経営者に聞いています。「希望」と「準備」のギャップが一番大きいのは、日本企業だそうですね。

杉田:そうです。ものすごくチャンスがあって、グローバルにもっと出ていきたいという気持ちが強いんだけれども、では会社にそれだけの能力があるか、準備ができているかということにおいては、全くできてないという自己認識があるということですね。このギャップをどのように埋めていけるかということになると、これまでお話してきたようなことがヒントになると思うのです。物づくり系のところは、日本人が入ってきちっとやると品質水準は上がります。しかし弱いのは商品の流通網を育てながら組織化して、どう運営していくのかという部分。そして、現地の人材の意欲を高めて自社につなぎとめるような組織マネジメントの部分でしょうね。

 この調査は何年かやっているのですが、このギャップはあまり縮まってこないのです。これを埋めるための重要ポイントが何なのかについて、経営者の理解がまだ足りないのかもしれません。

—杉田さんは、日本企業の海外展開の特徴として現地法人に対して「手を突っ込みすぎか、放任主義かのどちらかになりがちだ」という指摘をしています。M&Aを実施した場合などを想定した話ですか。

杉田:M&Aじゃなくてもあります。特に新興国に入っていった場合、マーケットの環境も消費者も違うのに、日本企業が持っている強みをもっとアピールするべきだと考えがちですね。しかし日本製品のクオリティーといっても、日本人が必要だと思うクオリティーと、別の環境におけるクオリティーでは定義が違うはずです。手を入れ過ぎる理由は、やはり日本におけるそれなりの成功体験があるからでしょう。これが自分が成功してきたポイントなので、これをやってみたらどうなんだという、お節介になるわけですね。一方、放任主義になってしまうケースは、全く分からないマーケットなのでとか、さっきの逆で手を入れ過ぎるとビジネスを失敗させるといった思いからでしょうね。それともう1つが単純に、まだ事業が小さいので、本社サイドが興味がないということもあるでしょう。現地法人のトップの人がよく言うのは、日本の社長や事業部門の責任者を現地に連れてきて市場の可能性を実感してもらうことが重要だという話です。

現地のトップとしっかり握れているか

—日本企業の特徴として、M&Aを実施した後など、現地のCEOをどう評価するか、場合によっては交代させるかといった人事戦略が不得手という指摘もあります。

杉田:そうですね。いくつかの要素があります。1つには、日本側のトップは何を期待していて、何を約束してほしいのかという点について、現地のトップとちゃんと握れていることが重要です。同床異夢にならずに、ゴールを共有し、達成のために何の課題を乗り越えないといけないのかということもお互いに理解する必要があります。

—日本的な「あうんの呼吸」ではなくて、明確にしなくてはいけないのですね。

杉田:はい。こうしたことが、できてないと評価のしようがないので、いいともだめとも言えないですよね。ローカルのトップに対して、いいとも悪いとも言えないと、辞めさせることもできません。

 それからもう1つは、代えた後に代替案を持っているかということです。自分よりもこのマーケットを理解して経営できる人は誰もいませんよなどと現地のトップから言われ続けると日本側は不安になりがちで、代えられないのです。だからこそ、代わりになる人材を把握しておく必要があります。トップの下の層に、どんな後継候補がいるということを、日本からも常に見えるようにしておく必要があります。外から人材を持ってくるケースでも、やはりヘッドハンターなどを通じて人材の候補を把握しておくべきです。

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