『党大会直前「七中全会」コミュニケを読み解く 習近平独裁へ着々、暗き道か、共産党瓦解への道か』(10/18日経ビジネスオンライン 福島香織)、『The Economist 10/14』(10/18日経 米の対中圧力にリスク 「北朝鮮」契機に制裁合戦も)について

18日から第19回中国共産党大会が始まりました。日経に依れば、24日閉幕、25日に開かれる中央委員会第1回全体会議(1中全会)で人事が決まるとのこと。王岐山や栗戦書等、いろいろと人事が言われていますが、蓋を開けてみないと何とも言えません。

福島氏記事では、習の独裁権力が強化されてはいますが、軍権は未だ掌握できていないとのことです。また、スターリン型党内粛清を今後も大々的にしていくだろうとの予測です。ソ連には赤いナポレオンと称賛されたトハチェススキー将軍がいましたが、スターリンの嫉妬で処刑されました。中国にはそれに比肩するような英雄はいないでしょう。権銭交易で蓄財に励み、妾を何人も持つ将軍ばかりでしょう。まあ、中国人らしいといえばそれまでですが。

習近平は絶大な権力を握って何をやろうとしているのか、それは「中華民族の偉大な復興の実現の夢」に表されていると思います。要するに世界を中国人が牛耳るようになりたいという事です。福島氏が書いていますように、中国は共産主義ですので、当然個人の自由はありません。共産主義が世界に蔓延するという事は、中世社会に戻るということになります。ウエストファリアの平和の“Liberalism”以前の状態になります。そんなことを世界が許して良いのかという事です。

日経のエコノミストの記事は中共崩壊の処方箋を示してくれています。渡邉哲也氏の主張している金融制裁です。更には、軍事的に兵頭二十八氏の言う中国沿海に機雷を敷設すれば、中国経済は持たないでしょう。後は米国の覚悟の問題です。中国のことですから米国要人に合法・違法に拘わらず金銭を渡したり、ハニーを仕掛けたりしていると思います。これらをうまく撥ね返せるかどうかと言う所です。違法に米国入国した中国人や韓国人は強制送還すべきです。

米国が真の敵は中国と決めることが大事です。ピルズベリーのように中国にずっと騙されて来たというのがやっと分かった人もいます。何年中国人と付き合ってきたのかと言いたい。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族です。ジョージ・ケナンの中国版を出せる戦略家が必要です。キッシンジャーが力を持っているようでは駄目です。中国にいろんな意味で籠絡された老いぼれでしょう。

GMやアップル等の中国市場の喪失の犠牲は諦めないと。米国との貿易が軍拡に使われ、米国の脅威を増大させていることに気付けば、今こそが中国経済を崩壊させるべき時です。ロシアとはMADができても、習が偉大な毛(ポンピドーに核戦争の危険を窘められたときに中国人は人口が多いから数千万人くらい死んでも構わないと発言)を超えたいと思っている時には、MADは成り立たないかもしれません。中国大陸が跡形もなくなるかもしれません。核戦争は避けたいところですが。エコノミストにあるようにキノコ雲より、商業戦争の方が良いに決まっています。早く米国が北朝鮮問題を解決して、中国に精力を傾けんことを祈っています。

Facebookから見つけた写真。“小时候老师说,国家强大了就没有人欺负我们。长大后才知道,国家强大后没有人敢救我们 !”(=小さいときに先生は「国が強大になれば、人が我々を虐めることはなくなる」と言った。大きくなって「国が強大になれば、人は敢えて我々を救おうとはしない」と言うのにやっと気づいた)。これが、共産党が統治する中国の実態です。

福島記事

「七中全会」のコミュニケには「習近平独裁」への道筋が浮かび上がった(写真:新華社/アフロ)

第19回党大会(10月18日)前の最後の中央委員会全体会議である七中全会が14日に閉幕し、コミュニケが発表された。その中身は、なかなか中国人民にとっても、国際社会にとっても暗いものである。コミュニケの中身を整理しつつ党大会の行方を占ってみよう。

習近平が完全に仕切った

まず、この七中全会は、習近平が完全に仕切ったという印象だ。つまり党大会も習近平の主導で進められていきそうだ、ということだ。

新華社が発表したコミュニケを読み解くと、まず、党規約改正について、三つの文書が審議されることが決定した。その一つはおそらく、習近平の治国理政の指導思想が書き込まれるのだが、コミュニケではその指導思想を「習近平総書記の一連の重要講話精神と治国理政新理念新思想新戦略」と書いている。

そして、「全党全軍全国各民族人民を団結させ、安定の中での任務を求める基調を堅持し、国内国際の二つの大局を統括し、“五位一体”の全体采配推進、“四つの全面”戦略采配を統括して推進し、新発展理念をぶれずに貫徹実施し、ぶれずに改革を手堅く推進し、ぶれずに党風廉政建設と反腐敗闘争を推進し、様々なリスクへの挑戦には有効に対応し、イノベーションとマクロコントロールをうまくし、安定成長、改革促進、構造調整、民生を統括し、リスク予防の各種工作を行い、社会主義経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、エコ文明建設を全面的に推進し、軍隊改革と建設を深化させ、対香港マカオ工作、対台湾工作を積極的にうまくやり、中国の特色ある大国外交を全面的に展開し、全面的に厳格な党を治める各種工作をしっかりやり、経済の安定発展を維持し、社会を調和的に安定させ、第19回党大会を開催するための良好な条件を創った」とした。

「独裁」と「粛清」の正当性を説く

過去の五年の政権運営については、きわめて平凡ならざる五年、と評価し、改革開放と社会主義現代化建設において歴史的な成果を得た、とした。「習近平同志を核心とした党中央」が、「巨大な政治的勇気と強烈な責任感をもって、多くの歴史的特徴のある偉大な闘争を推し進め…解決できないと思われていた多くの長期的問題を解決し、成し得ないとも思われていた多くのことを成し遂げ、党と国家事業の歴史的変革をもたらした」と絶賛。

さらに、中央規律検査委員会の仕事についての総括では、「習近平同志を核心とした党中央の堅強な指導のもと、各レベルの規律検査委員会当局が忠誠をもって、党規約を職責をもって履行し、厳格な党の統治を全面的に推進し、党風廉政建設と反腐敗闘争を深く展開」「反腐敗闘争の圧倒的態勢をすでに形成し、しっかりと発展させた」と評価。

孫政才、黄興国、孫懐山、呉愛英、蘇樹林、王三運、項俊波、李雲峰、楊崇勇、田修思、莫建成、王建平ら中央委員11人を含む12人の党籍剥奪を確認するとともに、中央委員候補委員11人を中央委員に繰り上げる、とした。

また「われらが党は8900万人以上の党員を抱える大党であり、13億人以上を指導して改革開放と社会主義現代化建設を進める執政党であり、もし党中央の権威と統一的な指導、厳格な政治規律と政治規則がなく、清廉な風紀の良好な政治生態がなければ、創造力、求心力、戦闘力は失われ、執政の基礎と執政の能力も失われ、人民から深刻な離脱を起こし、人民を指導して改革開放と社会主義現代化建設といった歴史的重責を担うことが不可能になってしまう」として、「全党が必ずや堅牢な政治意思、大局意思、核心意思、看斉意思(足並みをそろえる意識)を打ち立てねばならず、党中央の権威維持、党中央の集中統一指導への服従を堅く決心せねばならず、思想上、政治上、行動上、習近平同志を核心とする党中央と高度に一致させねばならない。党の指導の堅持は必須であり、完璧な民主集中制の堅持、党指導の各項目のシステムメカニズムの堅持、一切の活動における党の指導の確保、党の全局的な指導、各方面との協調の確保が必須である」と、習近平が独裁的権力をふるい、党内粛清を行うことの正統性を説いている。

「党の理論と路線方針政策を揺らぐことなく堅持し、忠実に正確に党中央政策決定の陣容を執行し、いかなる地方、部門の仕事も必ず党中央政策決定の陣容を前提に貫徹せねばならない。党の核レベルの指導幹部、特に高級幹部は必ず党に忠誠をつくし、心の中に党を持ち、心の中に民を持ち、心の中に責任を持ち、心の中に戒めを持ち、政治定力(決定力)、規律定力、道徳定力、抵腐定力(腐敗に抵抗する決定力)を強化し、党中央の権威維持と党の団結統一維持を自覚し、全党の手本とならねばならない」と、党中央(習近平)への忠誠と服従を求めている。

そして最後に、「全会は全面的に当面の情勢と任務を分析し、多くの歴史的特徴を持つ偉大なる闘争の推進、党建設の新しい偉大なるプロセスの建設、中国の特色ある社会主義の偉大なる事業の推進、民族復興の偉大なる夢の実現の若干の重大問題について深く討論し、第十九回党大会ために十分な準備を行った」と結んだ。

不満の芽は育ち、軍部は掌握できず

専門用語も多いが、それを今回はいちいち説明しない。習近平の思想や戦略、四つの全面や五位一体といった用語は、過去のコラムを読んでもらった読者はだいたいお分かりだと思う。このコミュニケの注目点は四つある。

まず、党規約に習近平の指導思想が入ることがほぼ確定したこと。どのような名称になるかまでは確定していないようだが、「習近平」という個人名は入りそうだ。となると習近平の指導力が鄧小平に並ばずとも劣らず、というふうに党中央も認めた、ということになる。

次に、「習近平同志を核心とする党中央」という表現が三度にわたってあり、「四つの偉大」(闘争、プロセス、事業、夢)など、いわゆる「習近平フレーズ」がちりばめられ、任期一期目の五年の業績について、解決できないと思われていたことを解決し、成し得ないと思われていたことを為し得た、と大絶賛した。はっきりいって、李克強から操縦桿を奪って自分でかじ取りしたマクロ経済政策は惨憺たる結果であったし、確かに一人っ子政策の廃止や労働教養制度の廃止などは、それなりに重要な成果かもしれないが、709事件のような苛烈な人権弁護士弾圧などに象徴されるように中国の人道上の問題は習近平政権になってむしろ悪化している。反腐敗キャンペーンは大きな成果だが、これはむしろ既存の秩序を破壊し、官僚や中産階級を混乱と恐怖に陥れたもので、果たして絶賛されるような成果といえるのだろうか。

三つ目は、過去に例をみないほどの大量の党籍剥奪。第17期の七中全会での中央委員以上の党籍剥奪は2人、16期での党籍剥奪も2人だったことを考えると、中央委員以上で一気に11人の党籍剥奪は、党中央の異常事態である。失脚者の中には、元法務部長(法務相)の呉愛英や、元空軍政治委員の田修思や副参謀長の王建平も含まれた。そして、この激しい反腐敗キャンペーンという名の粛清は次の五年、より強固に展開されるということだ。

四つ目は、共産党の執政党としての権威維持のために、習近平に権力を集中させることや反腐敗に象徴される厳格な党の統治、経済活動を含めあらゆる活動についての党の指導の徹底が必要であるということ、そして党員の絶対的服従が必要であることを、これでもかというほど説いている点だ。これは逆にいえば、習近平独裁に抵抗を持つ党員が多いということでもあり、また党の執政党としてのレジティマシーが揺らいでいるという自覚があるということでもある。

もう一つ、隠れた注目点がある。中央軍事委員会改革についての言及がないことだ。習近平は、軍事員会副主席職をもう一つ増やし、制服組の権力を分散させたい考えを持っていた。しかしながら、軍事委改革については一切触れていない。これは、普通に考えれば、軍部からの激しい抵抗にあってコミュニケに書き入れられなかったということであり、習近平は軍権をまだ掌握していない、と受け取れる。

「自由」や「発展」とは縁がない

この七中全会のコミュニケに従って党大会が進められるとしたら、習近平政権二期目はこれまで以上に権力を集中させ、綱紀粛正を行い、さらに苛烈な反腐敗キャンペーンを展開し、一層独裁的な権力をふるうという風に思われる。

しかも、一切の活動において党の指導が確保されるということは、企業の経済活動も人民社会の活動も、文化娯楽活動も、エコや文明も、すべて習近平同志を核心とする党中央、つまり習近平のデザイン通りに行われる、ということである。

中国人民にとっても国際社会にとっても、これは先行き暗い話である。なぜなら、習近平のデザインする中国社会のイメージは、過去の五年の執政ぶりを見る限り、自由や発展とは縁がない。習近平を核心とした党中央による、がちがちの統制強化、絶対服従、相互監視と反腐敗、綱紀粛正という名の権力闘争、政敵排除の粛清が次の五年、さらにエスカレートすることになる。

共産党体制の瓦解の始まりか

米国発の華字ニュースサイト・博訊が、10月14日に不穏なコラム記事を掲載していた。

要約すれば、次のようになる。

「党大会後、中国は習近平時代に入る。これは新たな極権時代である。習近平は権力を掌握するだけで満足できず、毛沢東の未完の事業を実現し、中国に対する全面的な改造を行い、地上の理想郷を創ろうとするだろう。極権主義とは、ナチス・ヒトラーモデル、旧ソ連スターリンモデル、毛沢東モデルなどがあるが、習近平が模倣しようとするのはスターリンモデル(の党内・軍部粛清)であろう。実際、習近平がやってきた粛清を見れば、薄熙来、周永康、令計画、徐才厚、郭伯雄、孫政才などはすべて党内粛清だ。

スターリンが行った党内政治弾圧・迫害運動は百万人以上が迫害死し、数十万人が処刑され、百万人以上が居場所を追われた。第19回党大会後、習近平は党内粛清を展開するのか? その可能性は高い。

現在の8000万人以上の党員はもともと出世と蓄財のために入党した。もし習近平が彼らの出世の道をふさぐというならば、8000万人党員が習近平極権統治の天敵となる。

粛清は必然であり、極権統治は粛清を拡大するものだ。粛清はたえず己の敵を生み出すからだ。中国共産党の歴史はそれを繰り返してきた、AB団事件、延安整風、反右派運動、文化大革命、すべて粛清を伴ってきたではないか」

習近平政権第二期は、共産党の大粛清時代の始まりであり、そして共産党体制の瓦解の始まりの時代かもしれない。

日経記事

戦争は武器で戦われるが、お金でも戦われる。今後数十年の世界のパワーバランスを理解するには、北朝鮮危機の経済的なサイドストーリーに注目することが役に立つ。米国は中国の企業と銀行が国連と米国の制裁を破ることで北朝鮮を支えていると見ており、今回初めて、司法と金融の力をフル活用して、こうした企業の行動を変えようとしている。米国の一部の政治家は、中国企業は世界経済に統合されたことから、米政府の怒りに弱くなったと結論付けている。確かに米国は強力な武器を持っているが、問題は、中国が破壊的な形で報復できることだ。

北朝鮮は中国に大きく依存している。貿易の6~9割は中国が相手だ。中国国営の巨大エネルギー企業、中国石油天然気集団(CNPC)は近年、北朝鮮に石油を売ってきたと考えられている。そのCNPCは、ニューヨーク市場に米預託証券(ADR)を上場している中国石油天然気(ペトロチャイナ)の親会社だ。また、北朝鮮の銀行と企業は中国で営業しており、中国の銀行はこれらの北朝鮮企業やその代理組織と取引してきた可能性が高い。

トランプ政権は中国への圧力を強める(9月25日、北京で中国の李克強首相=右=と会談するロス商務長官)=AP

米国が数カ月圧力をかけた末、9月21日には中国の中央銀行が国内の金融機関に対して北朝鮮との新規取引を停止するよう命じたと伝えられた。だが、米財務省はまだけんか腰だ。9月26日には中国で働く北朝鮮の銀行関係者19人と北朝鮮の8企業を新たに制裁対象に加えた。米財務省は内々では米国に自己資本総額の14%に相当する合計1250億ドル(約14兆円)の資産を保有している中国の大手金融機関を痛烈に批判している。9月28日には上院の委員会が中国の銀行に対する取り締まりの強化を要求した。

■処罰を免れてきた中国企業

米国の規制当局や裁判所によるこのような法規制の域外適用は、国際ビジネスの特徴となっている。問題の企業が米国で証券を発行していたり、米国に子会社を持っていたり、ドル建てで電子取引を行っていたりすれば、どこであろうと米国によって不正行為が処罰されうるのだ。米国は過去10年間に、株式時価総額で欧州最大の企業50社のうち8社を制裁違反、18社を汚職疑惑で追及した。2001年9月11日の米同時多発テロの後には、グローバルなドル決済システムを取り締まる対策を強化した。

米国はイランへの制裁を強硬に遂行した。欧州の金融機関はイラン制裁関連で130億ドルの罰金に直面し、仏BNPパリバと英スタンダードチャータード銀行はもう少しで米国での事業免許を失うところだった。実際に免許をはく奪されていたら、両行は恐らく廃業に追い込まれていただろう。

1年前まで中国の大手企業はこうした処罰を免除されていた。米国はおそらく、貿易戦争を始めることに不安を抱いていたのだろう。米国が13年にイランと取引していた小さな中国企業4社に制裁を科したときには、中国外務省から猛烈な反応が返ってきた。一部のケースでは、米政府の寛容な態度は明白だった。15年には国有銀行大手の中国建設銀行のニューヨーク支店が米連邦準備理事会(FRB)の審査で資金洗浄(マネーロンダリング)防止対策に不備があると断定されたが、大目に見ることにされた。

14~15年には中国農業銀行のニューヨーク支店が十分な審査をせずに1千億ドル以上の決済を処理したが、米当局から科されたのは、2億1500万ドルという形ばかりの罰金だった。米ゴールドマン・サックス出身で後に米財務長官になったヘンリー・ポールソン氏の回顧録によれば、ペトロチャイナが00年にニューヨークで上場したときには、スーダンの資産をCNPCに移管することで制裁を回避したという。

■3月に雰囲気が急変

ところが今、「中国株式会社」は格好の標的のように見える。数百を数える企業が米国に証券を上場している。中国は汚職がまん延しており、北朝鮮だけでなく、やはり米国から制裁を科されているイラン、シリア、キューバの大きな貿易相手国でもある。

今年3月、雰囲気の急変を告げる出来事があった。ロス米商務長官が、イランや北朝鮮と取引した中国のIT(情報技術)企業、中興通訊(ZTE)に12億ドルの罰金を科すと発表したのだ。競合する華為技術(ファーウェイ)も、イランとシリアに対する米国の貿易統制に違反した疑いで調査を受けている。

中国は国内銀行に対する最近の命令で事態が落ち着くことを期待しているかもしれないが、ワシントンでは愛国的な理由に加えて保護主義者が新たに影響力を強めていることから、中国企業を罰しようとする機運が盛り上がっている。

中国の銀行は人民元だけでなくドルでも大規模な事業を手がけており、このため特に米国の圧力に弱くなっている。中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国工商銀行の四大銀行は、国際市場で調達した借入金と預金を含め、9400億ドルのドル建て負債を抱えている。

もし米国の金融システムから排除されれば、世界の投資家から敬遠され、大きな問題に直面するだろう。中国の中銀がこれらの銀行の資金繰りを助ける必要が出てくるかもしれない。このため米国の議員にとっては、中国の大手銀行は魅力的な標的になる。特に、中国での融資残高が540億ドルしかなく、人民元建ての負債も少ない米国の大手銀行は、中国などほとんど必要としていないため、なおのこと標的として魅力的だ。

■世界のビジネス構造の断層

だが、地政学的な目的のために企業を脅す邪悪な技術にかけては決して素人ではない中国は、他の報復手段を持っている。例えば英石油大手のBPは09年にベトナム沖の石油プロジェクトから手を引くよう中国側から警告された。中国問題の専門家であるリチャード・マグレガー氏の新著「アジアズ・レコニング」によると、もしBPが手を引かなければ、中国でのすべての契約が再検討され、中国は同社社員の安全を保証できなくなると言われていたという。

現在、米ゼネラル・モーターズ(GM)と米アップルの2社は中国で年間200億ドルの利益を稼いでいる。両社に罰金を科したり、事業を妨害したりすれば、米国の利益に大きな打撃を与えられる。中国は攻撃をエスカレートさせ、香港に圧力をかけたり、香港域内の大手米銀を処罰させたりする可能性もある。

北朝鮮は地政学的な紛争の火種であり、人道的な惨事でもある。ただ、北朝鮮は今後数十年にわたって問題を引き起こす世界のビジネス構造の断層も浮き彫りにしている。米国と同盟関係にある欧州諸国と日本は米国の法制度と金融システムの米国外での適用を受け入れたが、中国が同じように受け入れるとは到底思えない。

もしかしたら米国は後々、自ら適用範囲を制限するかもしれない。一方の中国は、10年ほど前に開始した独自の国際決済システムなど米政府による域外適用から逃れるための防衛策を講じているが、これには何年もかかるだろう。それまでは、くすぶる緊張と(双方への打撃が大きいため衝突が抑止される)金融版の相互確証破壊(MAD)のリスクが続くことになる。唯一の慰めは、商業的な戦争は必ずしも核爆弾のきのこ雲を伴わないことだ。

(c)2017 The Economist Newspaper Limited. October 14, 2017 all rights reserved.

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