『春節の中国で「習近平新時代」を実感、河北省の田舎町を行く』(2/12ダイヤモンドオンライン 加藤嘉一)について

2/12阿波羅新聞網<中资加速倒闭 中共备战打仗 对委内瑞拉态度微妙转变 韩媒:习近平关切金正恩=中国資本は倒産が加速 中共は戦争準備 ベネズエラへの態度は微妙に変化 韓国メデイア:習近平は金正恩を大事に>フランス貿易保険会社のEuler Hermesの最新のレポートでは、「中国経済は下降し、国営企業と民間企業で衝突があり、2018年の企業破産は前年比6割増となった。破産と債権の焦げ付き率が上がっているのは2018年にシャドーバンキングに打撃を与え、融資を縮減して信用収縮を図ろうとしたことに関係がある。2019年の企業破産は20%を超える」と。日経は「中国の3600の上場会社の内、30%の会社が昨年の純利益を落とし、400の会社は赤字となっている。影響を受けたのは政府の融資を受けられない中小の私企業である。北京当局は企業の債務リスクを下げるために、2019年も信用収縮政策を継続する。私企業は益々破産の圧力が強まっていく。去年の焦げ付き率は歴史的な高さを記録した。

2/11新華社は中共軍隊軍事訓練監察施行条例を近く公表すると報道した。米軍退役将校の議会証言によれば「習は中共軍には重大な欠陥があることを意識している。作戦能力の欠落と軍の教育と訓練制度が勝てる戦争をするためには兵を指揮できないものになっている。それゆえ、中共のリーダーは2035年前までは軽々しく軍の参戦はできない」と述べた。去年7月には内部文書が暴露され、「習の強軍思想は、習を党の核心とし、習思想に服従」させるのが本当の意図と。この内部情報が出て来る背景には、軍は江沢民の下で腐敗が進み、昇進には多額の金が要るようになったので、習が直そうとしているが、そうはなっていないため。

ベネズエラのマドウロ政権を中国は応援して来たが、ここにきて態度を微妙に変え、「人民の決めること」とした。グアイドが選ばれるかも知れず、洞ヶ峠を極め込んだ。

韓国メデイアの《ニュース通信社》は2/7に「習は金正恩の健康状態を心配し、健康診断を受けるよう勧めた。1/7~10の訪中時に北京同仁堂製薬工場を訪れたときに、糖尿病・肥満・高血圧等の精密検査を受けた」と報道した。金の健康状態は朝鮮の核心的機密と看做されている。外部から見て彼には痛風・高血圧・性病・精神病を持っていると。北京での検査は、重大疾患が分かったと思われる。韓国国家情報院は2016年7月に「金の体重は130Kgになり、プレッシャーで不眠症、暴飲暴食をしたため、恐らく糖尿病・高血圧・痛風・心臓病を持っている」と発表した。

https://www.aboluowang.com/2019/0212/1245384.html

2/13阿波羅新聞網<闯美军基地中国留学生间谍案 涉中共公安部=米軍基地を撮影していた中国人留学生スパイ事件 中共公安部が関係>米国フロリダのキーウエスト海軍基地の機密施設を中国人学生が撮影した事件で、2/5裁判所は1年間の入牢を言い渡した。名前は趙千里(音訳)で音楽専攻の学生、フロリダには旅行で来たと。9/26基地撮影の後、軍事警察が逮捕しFBIに移送した。

《ワシントン・フリー・ビーコン》によれば「彼は英語を流暢に話し、逮捕時には身分証を携帯しなかった。これは行動を隠蔽するためである。捕まった時を考えたのだろう。趙は軍事警察に「道に迷い、不注意で誤ってこの基地に入った」と。趙の説明は強烈な疑問を巻き起こした。連邦検察官は「趙の衣服は水に濡れ、基地の南端の安全フェンスまで回り込んだ。そこには“ここは進入禁止”と標識が立っている。

彼はキーウェストはヘミングウエイの旧居があり、そこを訪問するためと説明したが、彼のスマホにはヘミングウエイの家も、基地外部の写真も一枚もなかった。連邦検察官は「旅行客が道に迷って軍事施設をうろつく」ことはないと述べた。趙の裁判では2/5に1年の有期刑に処せられ、これはスパイの最高刑期である」と。

また《ワシントン・フリー・ビーコン》は「過去中共の特務工作は、日本、ハワイ、アラスカで見つかった。彼の逮捕後、FBIがマイアミのホテルを調べた所、中共公安部が着る青いシャツとベルトが見つかった。中共公安部は国内の安全を専門とするのに、今回のように海外でスパイ活動をするのは尋常ではない。中共のスパイ活動は国家安全部か軍事情報部門(2PLA)が普通はする。これは公安部や国民が非合法にスパイ活動をしていることを意味する」と。

FBIは彼に「何故中国公安のシャツとベルトを持っているのか」尋ねると「これは父の物で、父が米国旅行時に着てほしいと願ったから」と答えた。しかしこの説明では納得させるのは難しい。基地に入る前に米国にいる中共の情報役人と連絡を取っていた。彼は「父は解放軍の高官で、母は政府で働いている」と説明。しかし彼は何度も嘘をついているのが分かった。音楽の学生というのもビザ申請時の書類にはそんな経歴はなかった。趙のスマホの中にある大学からの文書が入っていたが、彼は「どうして自分のスマホに入って来たのか分からない」と答えた。年齢も20歳と言っているが明らかに上である。

この事件は米国政府に中共に対し積極的に防諜活動を採るよう促している。中共は軍事基地の通信情報を収集しハックしようとしている。戦争になった時に、中共の電子戦部隊は敵の通信設備を破壊して通常兵器や無人兵器、その他の重要な兵器のコントロールを効かなくする計画を立てている。

https://www.aboluowang.com/2019/0213/1245413.html

加藤氏の記事で、習の腐敗撲滅運動で役人の収賄はなくなったように書かれていますが、信じられません。“上に政策あれば下に対策あり”の民族で、隋の科挙以降(もっと前かもしれませんが)賄賂を取るのが当り前の歴史を持った国です。為政者の一声で止めるとは思えませんし、習自体だってやっているでしょう。腐敗撲滅は政敵を倒すためだけというのは、中国人だったら分かっている筈。

加藤氏も共産主義には国民を統治する正統性がないことは分かっています。しかし、売文業のさがか中共の批判記事は余り見受けられません。取材できなくなることを恐れているのかもしれませんが。まあ、中国と日本を比較して、日本を腐さないだけ良いと思います。日本には人間にとって一番大事な自由があります。中国にはそれは全くありません。これは大きな違いです。

共産党の富の分配がおかしいから世界第二位(?)の経済体なのに「脱貧工作」というスローガンを掲げている訳です。おかしいと思いませんか?本来共産主義は結果の平等を目指していた筈。如何に共産主義は嘘に塗れたシステムかという事です。

トランプは進展があれば期限延長しても良いと言いだしたようです。そんなに簡単に中共が共産党の存続に関わる構造改革を呑むとは思えませんが。両会までの遷延策か、約束しても騙せればよいという考えでは。中共に約束履行をどう担保させるつもり?元々米中貿易戦争はなぜ起きたかと言うと世界覇権を巡り、ホットウオーの代わりに展開されたもの筈です。中共が米国との貿易で得る金を「軍拡、治安維持(人権・宗教・少数民族弾圧)、高官の収賄、海外要人への贈賄に使わせない」ために起こしたものの筈です。トランプは初心忘るべからずです。助けてやっても恩義に着る連中ではありませんから。

記事

中国では至る所にスローガンが掲げられている。河北省のS県での社会主義核心価値観を掲げる横断幕 Photo byYoshikazu Kato

春節の大みそかの前夜、19時30分ごろ北京西駅に到着した。黄金色にライトアップされた伝統ある駅の正面玄関前には1つのスローガンが掲げられていた。

「永遠把人民対美好生活的向往作為奮斗目標」ーー。

「永遠に人民の豊かな生活への追求を奮闘の目標とする」を指す。新鮮さに欠ける、聞き慣れた常套句だ。

このスローガンの主語は誰か。

9000万人以上の党員を抱える中国共産党である。同党の首長であり、中華人民共和国の最高指導者である習近平は、2017年秋に開催された党の19回大会で行った談話で、「中国の特色ある社会主義が新時代に突入した今日、我が国社会の主要な矛盾は、人民の中で日増しに増加する豊かな生活への需要と不均衡で不充分な発展の間に存在する矛盾へと転化している」と主張している。

スローガンがその延長線にあることは容易に理解できた。中国は「文字の国」である。そこにどれだけの誠実さや真実性が隠れていようとも、中国共産党は自らの政策や考慮を文字にして、談話の中のエッセンスとして忍び込ませたり、道端や駅の前にスローガンとして掲げたりする。そういう文字は至るところに存在する。どこに行ってもそういう文字が可視化されている。

だからこそ中国を理解することには骨が折れる。辛抱強く自分なりの“現場”に足を運び、愚直に己の中国観の形成に奔走すべきゆえんがそこにあるのだ。

“民族大移動”が展開される春節 拳銃を保持した武装警官が巡回

延べ30億人の“民族大移動”が展開される春節(2019年は2月5日)の時期だからであろう。駅の中ではこれまで見たこともない数の、拳銃を保持した武装警察が巡回し、人民たちの一挙手一投足に目を光らせていた。ある乗客が入ってはいけないエリアに入ろうとすると、ジェスチャーでそれを伝える。

彼らは安易に言葉を発しない。

セキュリティーチェックポイントや駅の要所では普通の警察が一部乗客に声をかけ、身分証の提示を求めていた。それを写真に撮り、データとして専門の機械に吸い取っていた。習近平政権下で強化されてきた全国各地・全社会に張り巡らされた監視機能の一環であろうか。私の隣にいた1人の中国人が提示を要求された。3分ほど待って身分証が返されたが、先方からは「ご協力ありがとうございました」という類いの謝辞は述べられなかった。

中国社会で生きていく上で直面する“日常”がそこにあった。

河北省保定市に直属する 人口30万人強のS県で過ごす

黒社会勢力撲滅を掲げるスローガン Photo by Y.K.

高速鉄道に乗って南西に約40分。保定東駅に着いた。今年の春節は河北省保定市に直属する人口30万人強の某県(以下“S県”。中国の「県」は概ね日本の「町」に相当する)で過ごす。駅を出て駐車場に向かおうとすると、道端に「打黒」、すなわち黒社会・勢力撲滅運動の強度をピークに持っていくことを謳う文字がスローガンとして掲げられていた。

それを眺めながら、筆者は約8年前に訪れた重慶市、そこで面会した薄熙来・前同市共産党委員会書紀、前政治局委員を思い出した。当時重慶では薄熙来が大々的に掲げ、推し進める「打黒唱紅」というスローガンの下、黒社会・勢力に次々にメスが入り、“文化大革命”時代を彷彿(ほうふつ)させるような毛沢東万歳が学校や広場など至るところで“合唱”されていた。その後、その政治手腕や思惑、腐敗や犯罪への関与などが問題視された薄熙来は失脚することになる。

保定の田舎で数日間過ごすなかで、私は幾度となく“打黒”を掲げるスローガンを見かけることになるのであるが、その度に、薄熙来のあの殺人鬼のような目と乾ききった手のひらを思い出さずにはいられなかった。自分がいま現在身を委ねている“新時代”に入った中国が、まるで薄熙来という亡霊に取りつかれているかのように感じられた。

S県はどこにでもある標準的な地方の田舎

S県は中国でどこにでもある標準的な地方の田舎である。町の中心部に約3万人、それ以外の農村部で約27万人が暮らす。町には2、3の中型ショッピングモールや海外ブランドをコピーしたような名前の飲食店が並ぶ。

スターバックスはおろか、マクドナルドもケンタッキーもない。道端では、特に朝夕の時間帯にありとあらゆる屋台がゲリラ的に並び、いろいろな味の麺類や、肉を詰め込んだ中国式バーガーなどが売られる。道路や交差点はほこりっぽく、汚い。ゴミが山積みにされ、そこには野良犬たちが群がる。住宅地は建設中のものを含めて乱立している。

新設のアパートは1平米平均5000元(約8万円)といったところか。自家用車の保有は現地では普遍的であり、地元の人たちに言わせれば、10万元(約160万円)くらいの自動車が最も多く、トヨタやホンダなど日本の車も視界に入る。ベンツ、BMW、アウディといった高級ブランドも時に見かける。

同県で暮らす人々の平均月収は約2500元(約4万円)。10万元の車を購入するためには3年分以上の給料が、120平米の住宅を購入するためには約20年分の給料が必要となる計算になる。

日本人の感覚からすれば、明らかにその収入に見合っていない買い物に見えるに違いないが、それでも中国人はそれを購入するためにあらゆる手を尽くすのである。サバイバルだ。自らの貯金、両親が残した貯金、知人、銀行、高利貸しからの借金、株、理財商品、賭博…。

「自分の家を保有していないことは家族が生活を持たないに等しい。自家用車を保有していなければ、この狭い地元ではメンツが立たず生きていけない」

S県で生まれ育ち、大学、大学院まで卒業した30代の女性はこう語る。家、車、婚姻、生活、メンツ…これらがセットになって、1人の、あるいは一家の中国人の尊厳と人生に襲いかかる原理は、S県にもそのまますっぽり適用されている。

脱貧工作をどう評価していますか?

「加藤さんは脱貧工作をどう評価していますか?」

S県民政局で働く40歳手前の男性(H氏)が聞いてきた。H氏によれば、ここ近年、S県政府が最重要視している仕事が“脱貧”(トオピン)、すなわち脱貧困政策であるという。

党の19回大会で習近平は、中国が近年最優先事項として取り組み、解決すべき“三大攻堅戦”は「重大リスクの緩和(例えば金融)」、「環境汚染の防止」、そして「精準脱貧」であるという決定事項を主張した。

「精準」とは「照準を合わせた」、「ピンポイントの」を指す。中央政府の規定によれば、中国では年収が2800元(約4万5000円)以下の人々を「貧困人口」と定めている。習近平政権が本格的に発足した2013年の時点で、中国の貧困人口は約7000万人いたが、習近平は「脱貧」の目標として、2020年までにこの数字をゼロにする目標を掲げ、現在に至っている。

貧困撲滅運動を掲げるスローガン Photo by Y.K.

他の2つに比べて、農民や工場労働者といった“無産階級”に寄り添うことで、社会的弱者からの支持を集めることで(反腐敗闘争もこの文脈で解釈が可能)共産党政権の“支持率”を確保、向上させようともくろむ習近平にとって「精準脱貧」はその政治スタイルに最も合致した目標だというのが私の理解である。

党の“核心”として、憲法改正を通じて国家主席の任期を撤廃し、終身最高指導者の地位を制度的に確保するまでに権力を自らに一極集中させた習近平の掲げる目標は絶対である。

地方の一田舎の政府や役人に選択肢などない。

絶対服従の立場を全面的に押し出すことで、自らの政治的地位を死守することへの邁進(まいしん)。それが“習近平新時代”に現場の役人たちに課された責務であることに考えを及ぼせば、S県政府が部署の垣根を超えて「脱貧」工作に奔走している現状は想像に難くなかった。

地方や部下の失敗や漏れは習近平のメンツをつぶす

「しかし、基層工作(筆者注:“基層”とは低所得者層を含めた社会の底辺を指す)は本当に難しい。底辺にいる農民たちは道理を重んじない。自分勝手に利益を要求してくる。彼らを納得させるのは並大抵の仕事ではない」

こう語るH氏が最近関わっている「脱貧」工作の内容を伺ってみた。

主にS県だけで約27万人を抱える農村地区の高齢者が対象であるという。子どもたちがより発展した地域へと出て行ってしまい、自らも畑を耕す体力や気力を失ってしまい、現金収入がほとんど見込めない人々の家を1軒1軒訪問し、状況を把握した上で対応策を検討し、可能な限り迅速に実行に移すのだという。

「500元、1000元といった現金を直接手渡すこともありますが、できる限り養老金を提供するといった社会福祉の枠組みを生かすことで、同時に貧困人口を減らしていくやり方を採用するようにしています」

2020年の時点で、全国に1300以上ある県の1つである河北省保定市S県に1人でも貧困人口が残っていれば、習近平が掲げた目標は達成できなかったことに理論上はなる。民主選挙によって選ばれていない、すなわち政権の正統性が制度的に担保されない中国共産党と、その首長である習近平にとっては、業績、言い換えれば結果がすべてである。

地方や部下の失敗や漏れは、習近平のメンツをつぶすことにほかならない。

2020年の段階でどのような実情があるにせよ、中国共産党はどうにかつじつまを合わせて目標達成という“偉大なる勝利”を大々的に宣伝するであろう。そういう光景は目に見えているが、それでも現場は必死ということであろう。

地方の田舎で働く公務員の実情

H氏に地方の田舎で公務員として働くモチベーションについて聞いてみた。

反腐敗闘争や贅沢(ぜいたく)禁止令を含め「従厳治党」を党建設の目標に掲げる習近平は、中央か地方か、そして高級か基層かを問わず、全国各地の共産党員たちに自らを厳しく律すること、そうすることで初めて人民からの信頼を得られるのだと呼びかけ、要求してきた。習近平政権発足以来、賄賂や宴会なども厳しく禁止されてきた。S県にはどのように反映されているのだろうか。

「以前であれば、人民に便宜を図れば“灰色収入”を受け取れました。春節を迎える前には500元、1000元といった現金や商品券、酒、たばこなどが支給されました。ただ、ここ数年は一律なくなっている。給料は雀の涙くらいしか上がっておらず、ボーナスも、残業代もありません」

H氏の月収は約2500元。S県の平均月収である。筆者が胡錦濤時代(2003~2012年)からこれまで中国の各地で役人たちと付き合ってきた経験からすれば、彼らの灰色収入は正規の報酬よりも断然多い。前者が後者の2倍という状況は当たり前で、5倍、10倍、100倍といった状況すら稀(まれ)ではなかった。

言うまでもなく、そのような状況が異常であり、役人たちのそういった横暴を許してきた体制や制度に根本的な問題があったのは疑いない。

ただ、「廉政」や「徳治」という言葉に代表されるように、「政府は清廉であれ」、「役人は徳を持て」といった鶴の一声で、安月給で役人を使い古すやり方は持続可能と言えるだろうか。

しかも、反腐敗闘争が依然として猛威を振るう中、「役人が何かしようとすれば必ず何らかの痕跡を残すことになります。地元の実業家と食事をしたり、関係者に口を利いてもらったりしないと事業にならないことも多々あります。ただそれによって尻尾をつかまれ、処分を受けたり、懲戒解雇されるリスクは常にあるのです」(H氏)。

一方で、役人たちが無作為状態、すなわち“事なかれ主義”に陥ることで同様のリスクにさらされているのもまた事実である。

筆者が本連載で指摘してきた習近平政権特有の“二重の恐怖政治”という構造は何ら変わっていない。それでも役人として働き続けることを選択するのは「安定していて、しかも地元での地位や尊厳という意味で優位性があるから」だとH氏は言う。実際に、S県で過ごした数日間、地元の人々と会話を重ねた限り、地元で最も敬意を抱かれ、ゆえに就職先としての人気ナンバーワンは断トツで公務員であった。

少し欲張りすぎだと感じるイデオロギーのスローガン

大仏光寺の一角に掲げられたスローガン(上)、大仏光寺(下) Phot by Y.K.

S県の中心地を歩いていると、視界のなかには必ずと言っていいほど「社会主義核心価値観」という習近平政権が掲げるイデオロギーが飛び込んでくる。富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善から成る。

少しばかり欲張りすぎだと感じるのは私だけだろうか。県の中心地から車で30分ほど行ったところにある仏教寺院「鳳凰山・大仏光寺」の敷地内にすら「社会主義核心価値観」のスローガンが掲げられていた。正真正銘の「政教合一」。

もちろん、中国共産党が「イスラム教の中国化」といった宗教政策を強行してきた経緯を顧みれば、目の前に広がるこの光景も決して不思議ではない。私はただその極端さというか、赤裸々さに若干の驚嘆を覚えているだけである。

大みそかの夜。日本の紅白歌合戦に当たる「春節挽会」が始まる20時の前に、県の中心地をぶらぶら歩いた。気温は零下5度。ほとんどの店は閉まっている。通行人もほとんど見られない。漆黒に染まった町並みが体温をぐっと下げた。空気は悪い。「重度汚染」。せき込みながら歩を進める。マスクを付けてくるべきだった。

長時間工事が中断されている建築物が目に入った。景気が下振れするなか資金繰りに苦しむ全国の企業家や、約束された報酬をもらえないまま春節の数週間前に農村に帰省することを余儀なくされた“農民工”たちの表情が不意に脳裏に浮かんだ。

建築物から路面に向かって視線を下げると、そこには「党の19回大会の精神に学べ」「新時代、新目標」「中国夢、復興夢」といった政治やイデオロギーのスローガン、すなわち、お上からのプロパガンダが飛び込んできた。

町の至るところに中心地での爆竹禁止が謳われている Photo:Y.K.

両者のコントラストが、路頭に迷う企業家や農民工だけでなく、1人の外国人としてそこにいるにすぎない私をも不安にさせた。思わず尻もちをつきそうになった。薄熙来の両目ににらまれた時のように。

爆竹の音が聞こえてくる。町の中心部ではすでに禁止されている。昼間、禁止を通達する張り紙を至るところで見た。確かに震源地は少し遠いところのようだ。守っていない町民もいる気配がする。町の中心部と農村部の境界線はどこにあるのか。誰が引いたのか。グレーゾーンはあるのか。許されるのか。誰がそれを決めるのか。

はっきりしない。

宿泊先に着くまでの間、その音は鳴り止まなかった。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)

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