『ロシア・中国・インドに対するトランプ2次関税の破壊力、ウクライナ停戦は実現するか 停戦に向けたロシアとウクライナの直接交渉の概要』(8/4JBプレス 横山恭三)について

8/4The Gateway Pundit<CIA Director John Ratcliffe and FBI Director Patel Set to Release More Damning Documents Proving FBI Covered Up Clinton’s Collusion Hoax While Amplifying Steele Dossier=CIA長官ジョン・ラトクリフとFBI長官パテルは、FBIがスティール文書を拡大しながらクリントンの共謀の捏造を隠蔽していたことを証明するさらなる有罪文書を公開する予定だ。>

元下院議員でフォックス・ニュースの司会者トレイ・ガウディ氏との衝撃的な新インタビューで、CIA長官ジョン・ラトクリフ氏は、真実を覆い隠し嘘を広めようとするFBIの組織的取り組みを暴露する機密解除文書がさらに出てくるだろうと語った。すべては2016年の大統領選挙に干渉し、ドナルド・トランプ大統領の地位を破壊するためだった。

ラトクリフ氏は、自身と現FBI長官カシュ・パテル氏が、FBIがヒラリー・クリントン氏によるトランプ氏陥れの計画に関する防諜報告を積極的に隠蔽し、一方でクリントン氏自身が費用を負担したスティール文書に完全な正当性を与えていたことを証明する追加記録の機密解除を準備していることを確認した。

ラトクリフ氏によれば、外国の情報機関はすでに、ヒラリー・クリントン氏がトランプ氏をロシアのエージェントとして中傷する陰謀を察知しており、この計画は内部では「クリントン計画」として知られている。

しかし、この情報は議会には一切共有されず、バイデン氏を含むオバマ氏の側近には十分な説明がなされていたにもかかわらず、隠蔽されたままだった。

ジョン・ラットクリフ:
「トレイ、考えてみてください。あるアメリカ大統領候補が、別の候補を外国勢力、つまりロシアの工作員だと主張し、反逆罪で陥れようとしていたという、外国の情報機関からの情報がありました。そして、その情報は、議会の情報監視委員会のメンバーであるあなたや私には決して共有されませんでした。

しかし、ジョン・ブレナンのメモを見つけ、機密解除できた幸運がなければ、この秘密は永遠に隠されていたかもしれません。しかし、私はそれをジョン・ダーラムに提供することができました。今週機密解除された彼の付録に、その一部が載っています。

この付録でわかることは、これまで多くの人が知らなかったヒラリー・クリントンの計画の詳細、その計画にソロス財団のような団体がどのように含まれていたか、そしてFBIが果たした役割です。

それで、トレイ、このすべてが始まる前に私たちが知っていたことは、2016 年 7 月 31 日に FBI が前例のないほど衝撃的な行動をとったということです。彼らは大統領候補、大統領候補のドナルド トランプに対する刑事捜査を開始したのです。これは前例のないことでした。

しかし、今週のジョン・ブレナンの別館で分かったことは、その6日前にロシアの情報機関がまさにそれが起こると予測していたということだ。つまり、ヒラリー・クリントンの計画があり、FBIが今後3年間国を焼き尽くすことになる猛烈な嵐に油を注ぐだろうと予測していたのだ。

トレイ、よく考えてみてくれ。ロシア人は史上最高の予測、あるいは最も幸運な推測をしたのか、それともこの情報は本物だったのか。

CIAは、防諜活動案件としてFBIに調査を依頼する義務を負っていました。しかし、ジョン・ダーラムが明らかにしたように、FBIはそれを隠蔽しました。彼らはファイルを開くことも、分析官を任命することもありませんでした。全く調査しなかったのです。

彼らはその後数年間、ヒラリー・クリントンのスティール文書の嘘を誇張し、ドナルド・トランプを陥れようとする彼女の計画の真実を覆い隠すのに費やした。これは、願わくば私たちが生きている間に目にするであろう最大の政治スキャンダルとなるだろう。」

ラトクリフ氏とジョン・ダーラム元特別検察官がすでに公表した機密解除された資料によると、クリントン陣営は共謀の捏造を承認しただけでなく、ソロス財団を含む外国の団体と連携してトランプ氏に対する偽情報の軍資金を蓄えていた。

一方、ブレナン、コミー、クラッパーは議会の前に座り、繰り返し嘘をついた。

ラトクリフ氏は、さらに多くの文書が機密解除されていることを確認した。これらの文書は、スティール文書がいかにして不当に「諜報」として格上げされたかだけでなく、FBI職員がいかにして防諜紹介メモを記録から完全に抹消しようとしたかを示している。

トレンド:ララ・トランプの目の前で複数の問題で大統領を批判した「人種差別主義者の卑劣漢」ラジオ司会者に対し、トランプ大統領が激しい非難を浴びせる(動画)

トレイ・ガウディ:
あなた、あるいはパテルFBI長官から、今後何か発表はありますか?私たちが注目すべき、何か他に何か発表はありますか?

ジョン・ラトクリフ:
ええ、ありますよ、トレイ。皆さんに理解していただきたいのは、FBIやCIAに「ロシア共謀捏造」ファイルキャビネットは存在しないということです。私たちはこうした文書を探さなければなりません。時には巧妙に隠されていることもあるのです。メールを辿り、兆候や手がかりを探さなければなりません。

そうやってジョン・ブレナンのメモを見つけました。そうやって追加の文書も見つけたのです。

FBI長官パテル氏と話をしました。彼と私は、FBIがヒラリー・クリントン氏のスティール文書を本物で信頼できるものとして誇張し、諜報機関の評価に組み入れようとしたこと、そして先ほど述べた防諜機関への照会メモをいかに隠蔽したかを示す追加文書を機密解除する予定です。

彼らはICAにそれを持ち込ませまいとあらゆる手段を講じました。ですから、今後もさらに事態は悪化するでしょう。

そして、トランプ政権が今後も透明性、明るみ、そして真実を明らかにし続けることを人々は期待すべきだと思います。トレイ、これは疑いようのない事実です。私たちの人生における最大の政治スキャンダルでした。誰もこんなことが二度と起こるのを望んでいません。このスキャンダルは私たちの国を狂わせました。

この事件はトランプ大統領の大統領職、つまり就任後最初の4年間を台無しにしました。これは我が国にとって真に汚点であり、二度と起こってはならないものです。ドナルド・トランプは、このようなことが起こらないよう全力を尽くします。

https://twitter.com/i/status/1952177345420243283

https://www.thegatewaypundit.com/2025/08/cia-director-john-ratcliffe-fbi-director-patel-set/

8/4Rasmussen Reports<69% Agree: ‘RussiaGate’ Requires Accountability=69%が賛成:「ロシアゲート」には説明責任が必要>

いわゆる「ロシアゲート」スキャンダルの暴露を受けて、有権者の3分の2以上が、犯されたいかなる犯罪にも「説明責任」が必要だという国家情報長官トゥルシ・ギャバード氏の意見に同意した。

ラスムセン・レポートによる最新の全国電話・オンライン調査によると、米国の有権者の54%が、バラク・オバマ大統領の国家安全保障チームのメンバーが ロシアとドナルド・トランプに関する虚偽の情報を流布するために情報を操作・捏造し、犯罪を犯した可能性が高いと考えていることが分かりました。そのうち37%は「非常に可能性が高い」と回答しました。一方、41%はオバマ政権関係者による犯罪の可能性は低いと考えており、そのうち28%は「全く可能性がない」と回答しました。

https://www.rasmussenreports.com/public_content/politics/trump_administration_second_term/69_agree_russiagate_requires_accountability?utm_campaign=RR08042025DN&utm_source=criticalimpact&utm_medium=email

https://x.com/i/status/1952174515238084971

8/5阿波羅新聞網<周晓辉:FBI在新西兰设办事处 中共为何不满=周暁輝:中共はなぜFBIのニュージーランド事務所開設に不満を抱いているのか?>パテルFBI長官は、ニュージーランドのジュディス・コリンズ国防相、マーク・ミッチェル警察相とともに、事務所開設式に出席した。演説の中で、パテル外相は事務所開設の目的の一つとして、「太平洋地域における中国の影響力に対抗するための米国とニュージーランドの能力強化」、「インド太平洋地域における中共への対抗、麻薬取引への対策、サイバー攻撃やランサムウェア攻撃の共同防止、そして最重要なのは両国民の保護」を挙げた。

https://www.aboluowang.com/2025/0805/2257826.html

8/5阿波羅新聞網<乌重大转机!首例落实北约美国协议—荷兰5亿欧元军援乌克兰 首例落实北约美国协议=ウクライナに大きな転機! NATO・米国協定の初実施――オランダはウクライナに5億ユーロの軍事支援を実施 初めてNATO・米国協議が実施>オランダ政府は本日、ウクライナに対し、パトリオット防空システムを含む米国からの武器直接購入を含む5億ユーロ(約173億台湾ドル)の軍事支援を実施すると発表した。これは、米国との合意に基づき、NATOが加盟国の負担で米国製武器を調達し、ウクライナに移転するというコミットメントを履行した初の事例となる。

NATO諸国、ウクライナ、米国は、ウクライナ優先要求リスト(Prioritised Ukraine Requirements List、 PURL)に基づき、ウクライナに米国製武器を提供するための新たなメカニズムに合意した。

このメカニズムでは、ウクライナがそれぞれ約5億ドル相当の武器ニーズを優先順位付けする。NATO諸国は、マルク・ルッテ事務総長の調整の下、内部協議を行い、誰が武器を寄付するか、または費用を負担するかを決定する。

ルーベン・ブレーケルマンスオランダ国防相はソーシャルメディアXで、「NATO初の例として、オランダはパトリオットミサイルを含む5億ユーロの米国製武器および軍事支援を提供する」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領はソーシャルメディアへの投稿で、この支援はNATOの軍事支援メカニズムに基づくウクライナへの初の試みであり、ロシアがウクライナへの空爆を激化させている中で特に意義深いものだと述べた。また、この成果はオランダのハーグで開催されたNATO首脳会議後の活発な意思疎通の成果であり、既にオランダのディック・シューフ首相に電話で感謝の意を表したと述べた。

https://www.aboluowang.com/2025/0805/2257843.html

8/5阿波羅新聞網<俄步兵排40人战14天仅剩3人“人海战术”超惨=ロシア歩兵小隊40人、14日間の戦闘で生き残ったのはわずか3人。「人海戦術」は悲惨>露ウ戦争は3年目に突入し、戦場での死傷者数は衝撃的だ。「コロリョフ」は最近、テンセントニュースに寄稿し、ウクライナ東部戦線での14日間の戦闘後、40人からなるロシア歩兵小隊の生存者はわずか3人となり、死傷率は90%を超えたと報じた。

記事は、ロシア軍小隊長の発言を引用し、突撃部隊が約2週間にわたる戦闘でドローンの壊滅的な攻撃に遭い、全軍がほぼ壊滅したと伝えている。

ドローン技術の普及により、かつては高価だった主力戦車が安価なドローンの餌食となっている。兵士1人が操縦するドローン1台で、数百万ドルの戦車を破壊することも可能だ。ロシアが誇る装甲車のフラッド戦術は、ウクライナの戦場で幾度となく死屍累々となり、今や個々の歩兵さえ標的になり、ドローンによる精密攻撃の脅威にさらされている。

報道は、ドローンは火力を強化するだけでなく、戦場で「隠れるところをなくす」とも指摘している。民生グレードの商用ドローンでさえ、リアルタイム偵察を実施し、敵の動き、補給線、部隊の動きを迅速に特定できるため、戦場の透明性と状況把握が大幅に向上する。

このような戦場では、どちらの側でもわずかな動きがあれば即座に攻撃を受ける可能性が高い。

記事はまた、ソ連軍の伝統を振り返り、ロシア軍は長きにわたり戦術的に硬直しており、多くの犠牲者を出そうとも、しばしば人海戦術による正面攻撃に頼り、「命を犠牲にして前進する」という精神を育んできたと指摘している。第二次世界大戦から現在に至るまで、ロシア軍は正面攻撃で繰り返し大きな損失を被ってきた。1941年のキエフ攻防戦では66万人、1944年のベラルーシ攻防戦では50万人以上、1945年のベルリン襲撃では3万人の死傷者と2,400両以上の戦車が失われた。

記事はさらに、台湾海峡情勢を例に挙げ、台湾軍も様々な無人機を開発してきたと指摘している。人民解放軍がロシア軍の戦術的誤りから学ばず、将来の「台湾奪還」作戦において、高コストの正面攻撃を選択したならば、大きな代償を払うことになるだろう。

https://www.aboluowang.com/2025/0805/2257797.html

横山氏の記事では、プーチンの姿勢は強硬なので、経済制裁(2次関税)しても、今のまま戦争が続いていくでしょう。氏の言う「緊急特別総会でロシアの常任理事国の資格停止を決議する」のは、簡単ではないのでは。簡単だったらとっくにやっている。また国連総会決議には法的拘束力はない。ということは、面子を潰すことは出来るが、相手が無視すれば何も変わらないと言うこと。

やはり、①上の中国語の記事のように、欧州がウクライナに本格的に武器支援すること②相互主義の観点から、ウクライナからモスクワへのミサイル攻撃を認めることをして、ロシア国民にも痛みを知ってもらい、停戦・講和に結びつけるしかないのでは。

記事

カナダのカナナスキスで開かれたG7サミットに出席、カナダのマーク・カーニー首相と会話しながら歩くウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(6月17日、ウクライナ大統領府のサイトより)

約3年ぶりとなるロシアとウクライナの停戦に向けた直接交渉(1回目)が5月16日、6月2日に2回目、7月23日に3回目の直接交渉が、いずれもトルコのイスタンブールで実施された。

ところで、2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻した4日後の2月28日に、ロシアとウクライナの代表団は初めての停戦交渉を対面で行った。

その後、4回の対面での交渉と1回のオンラインでの交渉が行われた。最後の5回目(対面)の交渉は、2022年3月29日、トルコの仲介によりイスタンブールで開催された。

その時は、ウクライナの「中立化」(北大西洋条約機構=NATO非加盟)、ウクライナの「武装解除」、クリミア半島並びに「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」の地位問題などの6項目が話し合われ、合意に近づいた項目もあった。

しかし、それ以降、停戦交渉は行われてこなかった。

2022年2月の開戦当初、なぜか、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対話を求めていた。

だが、ブチャでの虐殺が停戦交渉にとって大きな転換点となった。

ゼレンスキー氏は、2022年4月4日、多数の民間人が犠牲となった首都キーウ近郊のブチャを訪れ、「ロシア軍がウクライナで行った残虐行為の規模を見るとロシアとの停戦交渉は非常に難しくなった」と語った。

筆者は、この時にゼレンスキー氏は戦争に勝利し、プーチン氏を戦争犯罪で必ず処罰しようと決意したのだとみている。

これ以降、停戦交渉機運は急速に萎み、ロシアとウクライナとの直接交渉は一度も開催されてこなかった。

開戦初期のロシアとウクライナの停戦に向けた直接交渉の概要は、拙稿「F-16供与やロシア領への攻撃認可でウクライナ軍攻勢へ、どうなる和平交渉」(2024.6.28)」を参照されたい。

さて、停戦交渉に関して大きな転機をもたらしたのは、米国のドナルド・トランプ大統領の再登場であった。

トランプ大統領は選挙運動中、ウクライナ戦争を1日で休戦させると豪語していた。

個人的にもプーチン大統領と良好な関係を誇示し、ロシア寄りの姿勢を見せていた。逆にゼレンスキー大統領に対しては極めて厳しい姿勢を取っていた。

今年2月28日に、トランプ氏とゼレンスキー氏がホワイトハウスで最初に会談した際、トランプ氏はゼレンスキー氏を詰問するかのように責め立てた。

「ウクライナは(戦争を終結させるための)切り札を持っていない。我々と一緒なら切り札がある。(今の)ウクライナは第3次世界大戦を引き起こしかねない賭けをやっている。もし米国の武器がなければ、この戦争は3日で終わっていただろう」

さらに、「戦争はウクライナが始めた」と見当違いの意見も述べた。

ところが、トランプ氏は3月30日に放送されたNBCニュースのインタビューで、米国が提案する30日間停戦案を断固拒否するプーチン氏に対して「とても腹を立てた」「むかついた」と述べた。

また、4月26日のバチカンでのトランプ氏とゼレンスキー氏の2人だけの会談の後、トランプ氏は豹変した。

それまで、トランプ氏はゼレンスキー氏を批判し圧力を強めていたが、この日を境に、トランプ氏はプーチン氏を批判するようになった。

トランプ氏は4月27日、記者団の取材に応じ、ロシア軍がウクライナに対し無人機やミサイルで大規模な攻撃を行っていることについて、「非常に失望した。停戦に向けて協議を行っているのに爆撃したことに驚き、失望している」と述べ、改めてプーチン氏を批判した。

ちなみに、トランプ大統領はそれ以前の4月18日に、大統領執務室で記者団に対し、米国はウクライナでの戦争をめぐる協議の仲介を「見送る」ことになると述べるなど和平仲介断念を示唆していた。

そして現在、ウクライナ戦争の停戦に向けたロシアとウクライナの直接交渉が行われている。

本稿では、約3年ぶりに再開され、これまでに3回開催されたロシアとウクライナの停戦に向けた直接交渉の概要について述べてみたい。

初めに、トランプ大統領の仲介による停戦交渉の経緯を述べ、次にロシアとウクライナの停戦に向けた直接交渉の概要について述べる。

1.トランプ仲介による停戦交渉の経緯

1.1 停戦交渉の経緯

(1)2025年2月12日:米ロ首脳電話会談(トランプ再選後の1回目)

1時間以上に及んだ電話会談の後、トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、プーチン氏が戦争終結を望んでいるとし、「遠くない将来の停戦実現」について協議したと述べた。

(2)2月18日:米ロ高官協議(1回目)

同協議は停戦交渉でなく、米ロ関係改善に向けた協議であった。

(3)3月11日:米ウクライナ高官会議(1回目):ウクライナ30日間の暫定停戦に合意・軍事支援と機密情報共有の再開

米国とウクライナは3月11日夜、共同声明を発表した。ウクライナは「即時かつ暫定的な30日の停戦」という米国の提案に同意し、米国は軍事支援と機密情報の共有を再開するとしている。

マルコ・ルビオ国務長官は、共同声明発表後に記者団に対し「ボールは今やロシア側にある」とし、「トランプ大統領はこの戦争がすでに終わっていることを望んでいた。ロシアができるだけ早く『イエス』と答え、実質的な交渉という次の段階に進めることを望んでいる」と述べた。

(4) 3月13日:プーチン大統領、米の30日間停戦案を拒否

プーチン大統領は3月13日、記者会見で、30日間暫定停戦案については「敵対行為を止めるという提案には同意するが、停戦は長期的な平和につながり、危機の根本的な原因を取り除くものでなければならない」と述べた。

(5) 3月13日:トランプ大統領、ロシア側に停戦案受け入れ求める

トランプ大統領は3月13日、ホワイトハウスで行われたNATOのマルク・ルッテ事務総長との会談の冒頭、記者団の取材に応じた。

この中で米国が提案しているウクライナでの30日間の停戦をめぐり、「ウクライナは完全な停戦に同意した。ロシアにも同じ対応を望んでいる」と述べて、ロシア側に停戦案を受け入れるよう、改めて求めた。

(6) 3月18日:米ロ首脳電話会議(2回目)

ロシア側はウクライナのエネルギー施設などへの攻撃を停止することを受け入れたが、焦点となっていた「30日間の停戦」では合意に至らなかった。

一方、ホワイトハウスは「黒海海域での一時停戦や恒久的な和平に向け、中東で交渉を始めることで合意した」と発表している。

(7) 3月20日:ロシアとウクライナ、エネルギー施設を互いに攻撃

ロシアは3月18日、米国との間でエネルギー施設への30日間の攻撃停止に合意し、19日にはウクライナも合意した。

しかし、双方とも相手国のエネルギー施設への攻撃を継続して、双方とも相手が合意を守っていないと非難の応酬が続いた。

(8) 3月23日および24日:米国は、ウクライナおよびロシアとサウジアラビアで相次ぎ協議

▲3月23日:米ウクライナ、2度目の停戦協議

ウクライナは攻撃停止について、エネルギー施設だけではなく、鉄道や港湾といったインフラ施設も含まれるべきだと訴えた。

▲3月24日:停戦めぐる米ロ協議、12時間に及ぶも結論出ず

協議内容の発表はなかった。トランプ大統領は3月24日、ホワイトハウスで記者団に「我々は今、領土や境界線について話している」と指摘し、停戦ラインや露軍が制圧したウクライナ領の扱いも協議中だと認めた。

(9) 3月25日:ロシア・ウクライナ、黒海での停戦で合意

ホワイトハウスは3月25日、黒海における船舶の安全な航行確保でウクライナ、ロシア両国と個別に合意したと発表した。

ロシア大統領府は、西側諸国が穀物と肥料の輸出に関連する制裁措置を解除することを条件に、黒海における安全な航行確保で合意したと発表した。

(10) 4月10日:米ロ高官協議(2回目)

米国務省によると、ウクライナ和平や安全保障問題はテーマとならなかった。

(11) 4月11日:スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、ウクライナ東・南部4州の領有を認めるようトランプ大統領に進言

ロイター通信は4月11日、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し帰国した米国のウィトコフ中東担当特使がウクライナ戦争の停戦交渉を進めるため、ロシアによるウクライナ東・南部4州の領有を認めるようトランプ大統領に進言したと報じた。

(12) 4月17日:ルビオ米国務長官、和平構想案を提示するも交渉仲介断念を示唆

ルビオ米国務長官は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領らとパリで会合を開き、ウクライナでの和平実現に向けた枠組みを提示した。

各種報道によると、この和平構想案の概要は次の通りである。

①ウクライナの東部・南部4州のほぼ全域についてロシアの占領を非公式に認める。

②ロシアが求めるウクライナのNATO非加盟を約束する。

③ザポリージャ原発を米国が管理する。

④2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島の支配を米国が承認する。

翌18日、ルビオ国務長官は、パリを離れる前に記者団の取材に応じ、「ウクライナ戦争の終結が不可能なのであれば、我々は前へ進む必要がある」と発言。「実現可能かどうかを迅速に判断する必要がある。私が言っているのは数日単位の話だ」と述べた。

また、ルビオ氏は、「これは我々の戦争ではない。始めたのは米国ではない。米国は過去3年間もウクライナを支援してきたし、終結を望んでいるが、これは我々の戦争ではない」とも述べた。

(13) 4月18日:トランプ大統領、和平仲介断念を示唆

トランプ氏は大統領執務室で記者団に対し、ロシアやウクライナが和平合意への到達を「とても難しくする」なら、米国はウクライナでの戦争をめぐる協議の仲介を「見送る」ことになると述べた。

(14) 4月20日:プーチン大統領、4月20日のキリスト教の復活祭にあわせて30時間の停戦を一方的に宣言

(15) 4月28日:ロシア大統領府は、5月8日~11日の72時間のすべての戦闘行為を停止すると一方的に発表

旧ソビエト連邦が第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う5月9日の「戦勝記念日」に合わせた措置である。

(16) 5月11日:プーチン大統領、ウクライナとの「直接交渉」を呼びかけ

ロシアのプーチン大統領は5月11日、ウクライナとの「直接交渉」を呼びかけ、「遅滞なく、5月15日にも開始するべきだ」と述べた。

プーチン氏は11日未明に大統領府で記者団を前に、「我々は真剣な協議を求めている。紛争の根本原因を取り除き、永続的で強固な平和に向けて動き始めるためだ」と述べた。

プーチン氏は、両国の協議はトルコ・イスタンブールで行われるべきだと提案。ロシアとウクライナが協議する中で、「新たな停戦、新たな休戦に合意できる可能性」を「排除しない」と述べた。

(17) 5月16日:ウクライナとロシアとの直接交渉(1回目)

詳細は次項で述べる。

(18)5月19日:米ロ首脳電話会議(3回目)

電話会談後、トランプ大統領は、ゼレンスキー大統領のほか欧州連合(EU)、フランス、イタリア、ドイツ、フィンランドの各首脳を交えて電話で話したとソーシャルメディアに投稿。

「ロシアとウクライナは停戦、そしてより重要なこととして戦争の終結に向けた交渉を直ちに開始する」と述べた。

(19) 6月1日:ウクライナ軍、蜘蛛の巣作戦を実行

ウクライナ保安庁は、ロシア連邦領内において、ロシア空軍基地を標的とした特殊潜入破壊工作作戦「蜘蛛の巣」を実行したことを発表した。

本作戦は、AI制御によるFPV(First Person View:一人称視点)ドローン117機を木製コンテナに隠匿し、トラック輸送によりロシア国内に搬入、基地近傍からドローンを発進させ攻撃を行うという極めて大胆なものであった。

そして、この奇策はロシア軍の警戒を逆手に取った形となり、攻撃は大きな成功を収めた。現時点において、ロシア軍機41機の破壊が確認されたとウクライナ側は発表している。

6月4日、ロイター通信は、米当局者は 損傷を受けたロシア軍機は20機で、破壊されたのは このうち約10機だったと推定したと報じた。

(20) 6月2日:ウクライナとロシアとの停戦に向けた直接交渉(2回目)

詳細は次項で述べる。

(21) 6月4日:米ロ首脳電話会談(4回目)

トランプ大統領は6月4日、SNSでウクライナによるロシアの空軍基地への6月1日の無人機攻撃を巡り、プーチン大統領が「反撃しなければならない」と強い口調で述べ、報復を表明したと明らかにした。

(22)6月14日:米ロ首脳電話会談(5回目)

トランプ大統領はSNSに投稿し、「プーチン大統領は親切に私の誕生日を祝う電話をかけてきてくれたが、より重要なイランについて話した。彼は私と同じく、イスラエルとイランのこの戦争は終わりにすべきと感じている。私は彼の戦争も終わりにすべきだと伝えた」としている。

(23)6月20日:プーチン大統領、ウクライナ侵略を改めて正当化

プーチン大統領は6月20日、サンクトペテルブルクで開催された国際経済フォーラムで、ロシア人とウクライナ人が「一つの民族」だとし、「この意味でウクライナのすべてはロシアのものだ」と主張した。

また、軍事侵攻を招いた責任は、ウクライナをロシアから切り離して取り込もうとした欧米諸国にあると主張した。

(24)7月4日:米ロ首脳電話会談(6回目)

トランプ大統領は、ウクライナ戦争の終結に向けた進展が得られなかったことで「深く失望した」と述べ、長引く紛争に対するいら立ちを示した。ロシア側の発表からも進展がほとんどなかったことが示唆された。

ロシア大統領府のユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交政策担当)は記者団に対し、「トランプ氏は今一度、戦争の早期終結について提起した」と説明。

これに対しプーチン氏は、戦争目標をロシアが「撤回することはない」と主張したという。

(25)7月4日:ロシア軍、ウクライナに対して過去最大の空襲

トランプ氏が米ロ電話会談について不満を示した数時間後、ロシアはウクライナの首都キーウに大規模な攻撃を実施した。

ウクライナ防空部隊によると、ロシアは合わせて550のドローンとミサイルを発射。大半は首都キーウに向けられ、攻撃は11時間余り続いた。このうち478の迎撃に成功したという。

(26)7月10日:重大な声明の予告

トランプ氏は10日、NBCニュースに対し、7月14日にロシアについて「重大な声明」を出すと語ったが、内容の詳細については触れなかった。

(27) 7月14日:トランプ大統領、ロシアへの圧力強化に方針転換

トランプ大統領は7月14日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが50日以内に停戦に応じなければ、ロシアの製品を輸入する国に対して厳しい関税措置、「2次関税」と呼ばれるものを課すと表明した。

トランプ氏は、「2次関税」の対象国については言及しなかったが、中国やインドなどを視野に入れている可能性がある。

そして、それらの国が停戦に向けてロシアへ働きかけることに期待しているとの見方もある。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は7月15日、トランプ大統領の「発言は極めて重大で、分析する時間が必要だ」と述べた。

また、ウクライナ各地でロシア軍の無人機などによる攻撃が繰り返されるなか、トランプ大統領は、ウクライナから要望されていた防空システム「パトリオット」を含む兵器をNATOを通じて供与すると表明した。

(28) 7月15日:トランプ大統領、BBCとのインタビュー

トランプ大統領はBBCとのインタビューで、プーチン大統領について「失望したが、まだ(関係が)終わったわけではない」との認識を示した。

「我々は素晴らしい対話をし、私は『良かった。これで(和平に)近づくと思う』と述べた。

しかし、その直後に「プーチン氏はキーウの建物を破壊してしまう」とも語った。

どのようにしてプーチン氏に「流血を止めさせる」のかとの質問には「取り組んでいるところだ」と語った。

(29)7月23日:ウクライナとロシアとの停戦に向けた直接交渉(3回目)

詳細は次項で述べる。

(30)7月28日:トランプ大統領、ウクライナ停戦の合意期限を「10日か12日」に短縮

訪問先の英スコットランドで記者会見に臨んだトランプ大統領は7月28日、ロシアに対して示している、ウクライナでの停戦に合意する期限を、この日から「10日か12日」に短縮すると述べた。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は7月29日、記者団に対し「発言に留意している。特別軍事作戦は継続している。評価は避けたい」と述べた。

この2次関税が実施されれば、米企業は対象国以外からより安価な製品を購入するようになり、ロシアとその貿易相手国は収益を失うことが予想される。

1.2 筆者コメント

トランプ氏が重視する「力による平和」について、トランプ氏は2024年10月18日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューの中で、次のように述べている。以下の引用は筆者の翻訳である。

「私が(戦争開始当時の)大統領職であったなら、プーチン大統領はウクライナ侵攻を開始しなかったであろう」

「なぜなら、『私は、プーチン大統領に、もしあなたがウクライナを攻撃するなら、私は、モスクワのど真ん中を攻撃するつもりだ』と警告するからだ」

(出典:ロイター通信「Trump says he would impose tariffs on China if China went into Taiwan By Kanishka Singh」2024年10月19日)

2024年11月6日、米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことを受け、ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)で、「素晴らしい勝利、おめでとう」と祝意を伝えると共に「トランプ氏が重視する『力による平和』はウクライナに真の平和をもたらす。共に(和平を)実行に移すことを期待する」と関係強化を目指す意向を示した。

筆者も、これからのトランプ大統領在任中の4年間、トランプ氏の「力による平和」によって、地球上から戦争がなくなり平和であるならば、トランプ氏の傲慢さも我慢しなければならないであろうと思っていた。

ところが、ゼレンスキー氏も筆者も完全に期待を裏切られた。

なぜなら、トランプ氏は国際社会の秩序や正義よりも自国の経済的な利益を優先しているからである。

また、トランプ大統領の「2次関税」は、ロシア産原油を念頭に、その輸入を拡大させる中国やインドに圧力をかけることで、結果としてロシアにウクライナとの停戦合意を迫る狙いと思われる。

しかし、経済的圧力でプーチン氏を停戦へと翻意させることはできないであろう。

プーチン氏を翻意させることができるのは、唯一「力による平和」だけであると筆者は見ている。

2.ロシアとウクライナの直接交渉の概要

本項は、ジェトロのビジネス短信や各種報道などを参考にしている。

(1)1回目の交渉:2025年5月16日

約3年ぶりとなるロシアとウクライナの停戦に向けた直接交渉が5月16日、トルコのイスタンブールで実施された。この直接交渉は5月11日にプーチン大統領が提案したものである。

ゼレンスキー大統領は「トルコでプーチン氏を待つ」と述べて、大統領レベルの停戦協議を求めたものの、プーチン大統領は応じず、ウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官率いる代表団を派遣した。

これを受けて、ウクライナ側はルステム・ウメロフ国防相を団長とする代表団が交渉に参加した。

直接交渉の結果、双方から1000人の捕虜交換と、双方の「停戦に向けたビジョン」の作成・提示などが決まった。

会談後の記者会見で、ウクライナ側は、ロシア側からは受け入れられない要求があったが、冷静にウクライナ側の路線を貫いたと説明した。

また、ロシアのプーチン大統領のみが決断できる事項が多いとして、可能な限り早く2国間の首脳会談実施を求めた。

ロシア側は、交渉は満足できるものだったと評価し、協議継続の意向を示した一方、首脳会談については検討中とした。

複数のメディアによると、ロシア側はウクライナが望むだけ戦争を継続する準備があると、強固な姿勢で直接交渉に臨んだ。

ゼレンスキー大統領は5月18日、イタリアのローマで米国のJ.D.バンス副大統領、ルビオ国務長官と会談し、直接交渉の結果について報告した。

ロシア側が提示した非現実的な停戦要件や、決定権のない交渉団の派遣は、ロシアの終戦意思の欠如を表しており、ロシアに無条件の停戦を合意させるために圧力が必要だと強調した。

プーチン大統領は会談後、一連の立場を明確にした「将来の和平条約の可能性に関する覚書」について、ウクライナと協力する用意があると表明した。

一連の立場の例として、問題解決の原則や、和平合意の時期、合意した場合の停戦の可能性を挙げており、即時停戦とは異なる考えを示した。

さらに、ロシアとウクライナは妥協点を見つける必要があるが、「この危機の根本的な原因を排除することが重要」というロシアの明確な立場を強調した。

(2)2回目の交渉:6月2日

ウクライナとロシアは6月2日、停戦に向けた直接交渉をトルコのイスタンブールで実施した。

約3年ぶりとなる5月16日に実施された直接交渉に続き、ウクライナ側はルステム・ウメロフ国防相、ロシア側はメジンスキー大統領補佐官が各代表団を率いた。

交渉の結果、両国は重傷・重病の捕虜および18歳から25歳までの捕虜の交換、ロシアからウクライナへの6000人の戦死した兵士の遺体の送還に合意した。

ウクライナは以前から最低30日の無条件の停戦を求めていた一方、今回の協議でロシア側は、ウクライナ兵士の遺体回収を目的に、前線の特定地域における2、3日の停戦を提案した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、停戦の目的は人の犠牲をなくすことにあるが、ロシアは戦争中のわずかな一時停止としか考えていないと批判した。

前回の直接交渉で合意した、双方の「停戦に向けたビジョンまたは覚書」が、今回の直接交渉の場で出揃った。その概要は以下の通りである。

ア.ウクライナの停戦に向けた覚書

ロイター通信(6月1日)によると、ウクライナ側が提示した覚書には、合意と交渉プロセスにおける次の主要原則が含まれる。

▲合意と交渉プロセスにおける主要原則

・和平交渉に必要な前提条件として陸海空における完全かつ無条件の停戦

・信頼醸成措置(人道問題への対処):不法に連れ去られた子供および民間人の解放・返還、捕虜交換

・侵略の再発防止

・ウクライナへの安全保障の提供、交渉および合意の履行への国際社会の関与

・主権:ウクライナは、欧州・大西洋共同体への参加を選択でき、中立を強制されない。NATO加盟は同盟国の同意に依拠する。ウクライナは、自国の軍の数、配置(第三国への展開を含む)、その他の事象に対する制限を受けない。

・領土問題:2014年2月以降にロシアが獲得した領土は、国際社会によって認められない。領土問題は、完全かつ無条件の停戦以降にのみ議論される。

・制裁:ロシアに対する制裁は、必要に応じて制裁を再開する用意のもと、段階的に解除できる。ロシアの凍結資産は、賠償が支払われるまで、ウクライナの復興に使用されるか、凍結状態を維持される。

・実施:明確で均衡のとれた、達成可能なロードマップへの合意

▲ウクライナ側の提案では、和平に向けた次のステップとして、①停戦およびその方法と監視、②信頼醸成措置、③首脳会談の準備(米国および欧州の参加を伴う)について、協議の継続、合意を挙げている。

▲また、ウクライナ側は、次回の協議を6月20~30日の間に実施することを提案した。

イ.ロシアの停戦に向けた覚書

ロシア側作成の覚書については、ロシアのインターファクス通信など現地メディアによると、タイトルは「ウクライナ危機に関するロシア連邦の提案(覚書)」で、第1部:最終的な和平の基本的要件、第2部:停戦条件、第3部:実施の手順と期限の3部から構成されている。

▲第1部の最終的な和平の基本的要件の概要は次のとおり。

①ウクライナ南部のクリミアのほか、同国東・南部のルガンスク、ドネツク、ザポリッジャ、へルソン4州のロシアへの「併合」に関する国際法上の承認、および同領域からのウクライナ軍および準軍事組織の完全な撤退

②ウクライナの中立化、軍事同盟・連合への不参加。第三国によるウクライナ領内でのあらゆる軍事活動や軍事基地などの設置の禁止

③上記に反する現行の国際条約などの終了および今後の締結の禁止

④ウクライナが核兵器および大量破壊兵器を保有しない国家としての地位の確認。同兵器のウクライナ領内への受け入れ、通過、配備の禁止

⑤ウクライナ軍および軍事組織の兵力、武器、装備の上限および許容可能な性能の設定。ウクライナ軍と国家親衛隊に含まれる民族主義組織の解散

⑥ロシア人およびロシア語話者の完全な権利、自由、利益の確保。ロシア語の公用語化

⑦ナチズムおよびネオナチズムの賛美とプロパガンダの法的禁止。民族主義組織および政党の解散

⑧ロシア・ウクライナ間の経済的な制裁・禁止・制限措置の撤廃、今後の導入禁止

⑨家族の再会および避難民に関する一連の問題の解決

⑩軍事作戦による損害に関する相互請求権の放棄

⑪ウクライナ正教会(モスクワ総主教系の教会)に関する制限措置の撤廃

⑫外交および経済関係(ガス輸送を含む)、輸送、通信の段階的な回復(第三国とのものも含む)

▲第2部の停戦条件では、2つの選択肢を挙げた。

第1の選択肢には、ウクライナ軍や準軍事組織のウクライナ東・南部4州およびロシア領土からの完全な撤退の開始などが盛り込まれた。

第2の選択肢は「包括的案」とし、ウクライナ軍組織の再展開の禁止、第三国によるウクライナへの軍事援助の停止、ロシアに対する攻撃の放棄、ウクライナでの戒厳令の解除と、同解除後100日以内の大統領選挙および最高会議(国会)選挙の実施を求めた。

▲第3部の実施の手順では、すべての条項の実施期限や和平条約の署名日を定める停戦覚書の締結、同条約署名前のウクライナ大統領および議会選挙の実施や、国連安全保障理事会による法的拘束力を持つ決議で署名済み条約を承認することなどが明記された。

(3)3回目の交渉(7月23日)

ロシアとウクライナは7月23日、トルコのイスタンブールで、3回目となる直接交渉を実施した。

1回目と2回目に続く今回の交渉では、1200人以上のさらなる捕虜交換を行うことで合意し、人道的措置の面で一定の進展が見られた。

一方、停戦合意や首脳会談の実施を含む本格的な和平交渉については、依然として難航している。

ウクライナ側の代表団を率いたルステム・ウメロフ国家安全保障・国防会議書記(前国防相)は交渉の中で、①完全かつ無条件の停戦、②ウクライナとロシアの首脳による会談の実現、③人道的取り組みの継続をロシア側に示したと自身のSNSに投稿した。

特に首脳会談に関しては、米国のトランプ大統領やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領らの参加を得て、8月末までの開催を提案した。

交渉後の記者会見でウメロフ書記は、ウクライナの優先事項は常にこの3点の実現だと強調した。

ロシア側は、さらなる捕虜交換や戦死者遺体の収容を目的とした短期停戦および「軍事」、「政治」、「人道」に関する3つのオンライン作業部会の設置などを提案した。

ウクライナ側が求める両国の首脳会談については、実施に先立って合意条件の確定が不可欠との立場を示した。

ロシア代表団を率いたメジンスキー大統領補佐官は交渉後の記者会見で、第4回会談の実現を期待すると述べているものの、和平に向けた合意の条件については、依然として双方に隔たりがある。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は今回の交渉に先立ち、和平に向けた覚書の草案が両国では「正反対」で、今回の交渉も非常に困難になる見通しだと指摘していた。

ロイター通信などによると、協議は約40分で終了した。

(4)筆者コメント

ロシア側はウクライナが望むだけ戦争を継続する準備があると、強固な姿勢で直接交渉に臨んでいる。

そして、ロシアは、ウクライナが決して受け入れられない「危機の根本的な原因の排除」を持ち出している。

これらは、プーチン氏がウクライナの無条件降伏を目指していることを示している。

従って、ウクライナは領域内の戦場で勝利しない限り、自分に有利な条件で停戦交渉・和平交渉を成立させることができない。

しかし、プーチン氏は、「ウクライナが戦場でロシアに勝つのは不可能」であると豪語する。確かに一理ある。

では、ウクライナはどうするかである。

筆者は、以前の記事(「欧米のウクライナ支援疲れが顕著に、2024年の戦況はこう動く」2024.1.9)で、ウクライナが、ロシアに勝利するためには、日露戦争で日本勝利の重要な一因となった明石謀略を模倣すべきであると述べた。

ウクライナは、「蜘蛛の巣作戦」で大勝利を得た。この作戦の成功は、ロシアの国内防御体制・態勢に弱点があることを明らかにした。

筆者は以前からロシアの国内防御体制・態勢に不備・弱点があるとみている。

古くは、冷戦時代の1987年の5月28日、19歳の西ドイツ人マチアス・ルストが操縦するセスナ機が、ソ連国境警備隊の警戒網をくぐりぬけ、モスクワの赤の広場(正確に赤の広場の脇にある橋のたもと)に着陸にした所謂ルスト事件がある。

また、2002年10月23~26日にかけて、「イスラム国ホラサン州」が起こしたモスクワ劇場占拠事件がある。

この時も、プーチン政権は米国からテロに関する情報提供を受けながら、テロ攻撃を防げなかったという大きな失態を招いた。

直近では、2023年6月23日に、ロシアの民間軍事会社・ワグネル・グループの創設者であるエフゲニー・プリゴジンの武装蜂起がある。

この時反乱部隊は何ら抵抗を受けずモスクワの手前200キロの地点まで迫った。

以上のように、ロシアの国内防備体制・態勢には、いくつかの弱点が存在すると見られる。

筆者は、ウクライナがロシアに勝利するには、明石謀略を模倣した後方攪乱工作により、相手の弱点を突き、ロシア国民の厭戦気分や反政府運動を惹き起し、プーチン政権に戦争継続意欲を放棄させるしかないとみている。

おわりに

世界の国々は、第2次世界大戦後の教訓に基づき、戦争を防止し、紛争を平和的に解決しようとして、国連による集団安全保障制度を導入し、その中核である安保理に大きな責任と権限を付与した。

しかし、安保理は常任理事国の拒否権行使により機能不全に陥っている。国際社会は、このまま手をこまぬいていてよいのだろうか。

そこで、筆者は、国連を再生するために拒否権という関門に阻まれてなかなか結果の出ない国連安保理改革に取り組むのでなく、「平和のための結集決議」に基づく緊急特別会期(Emergency Special Session:ESS)の総会(以下、緊急特別総会という)をもっと活用すべきであると考える。

「平和のための結集」決議についての詳細は拙稿「国連安保理の常任理事国からロシアを排除する方法」(2023年10月6日)を参照されたい。

結論を言えば次の3つである。

1つ目は、緊急特別総会でロシアの常任理事国の資格停止を決議する。

2つ目は、緊急特別総会の決議でロシアの戦争犯罪を訴追する特別法廷を設立する。

3つ目は、緊急特別総会の決議とマンデート(任務付与)に基づき「平和執行部隊」を創設・派遣する。

国連は、安保理決議だけでなく、緊急特別総会の決議により国連軍を派遣したことがある。

1956年に創設された第1次国際連合緊急軍(First United Nations Emergency Force:UNEF1)である。

また、かつて、ブトロス・ガリ国連事務総長は、憲章第43条の特別協定の締結を促進し、強制力を有する重装備の平和執行部隊(peace-enforcement units)を創設する構想を示したことがある。

平和執行部隊は、スレブレニツァの虐殺(1995年)の発生を防止できなかったことなどで、かつては失敗したが、国連復権のため、平和執行部隊構想を見直し、新たな構想に基づく、国連軍を創設し、緊急特別総会の決議に基づき、ウクライナに派遣することを筆者は提言する。

最後に、国際の平和と安全を維持するという国連の目的の遂行に尽力した元国連事務総長のダグ・ハマーショルド氏や第1次国際連合緊急軍の設立に尽力した元カナダ外務大臣のレスター・B・ピアソン氏のような信念と行動力を持った政治家・外交官の登場が待たれる。

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