『天安門事件を成功体験として語り始めた中国の物騒さ “恐怖政治”を徹底する習近平、天安門事件は再び起きるのか』(6/6JBプレス 福島香織)、『トランプ政権が今も天安門事件を厳しく追及する理由 米国の価値観と正反対の人権弾圧、対中政策の大きな指針に』(6/5JBプレス 古森義久)について

6/7希望之声<中共持续打压宗教信仰 强拆教堂又逼迫教徒缴强拆费=中共は宗教信仰を抑圧し続けている 教会を取り壊し、信者たちに解体費用を払うように強制>中共当局は長期に亘り中国の宗教団体を迫害してきた。 最近、河南省唐河県のキリスト教会は夜の間に強制的に取り壊されたが、解体が完了した後、当局は教会に何万元もの解体費を支払うように要求した。 現在、江西省、安徽省、中国北東部でも同様の事件が発生している。

以前中国の死刑執行は銃殺でしたが、弾代を遺族に請求していたのと相通ずるものがあります。信仰の自由を認めない国がどうして自由貿易を主張できるのか?

中共当局は長期に亘り中国の宗教団体を迫害し、教会を破壊、十字架を焼き払ってきた(出典:対中援助協会)

写真は河南省鄭州市大里の破壊された教会を示している。 (出典:対中援助協会)

https://www.soundofhope.org/gb/2019/06/07/n2943202.html

6/8阿波羅新聞網<失禁崩溃!女基督徒遭强灌药 中共毁灭信仰恶行曝光=失禁や精神崩壊! 女性クリスチャンは中共の強制服薬に遭う 中共による信仰破壊の悪行が明らかに>中国の人権問題について長い間ウオッチしてきた雑誌「寒冬」は本日、「中共政府が長い間人権を迫害し、法輪功信者、全能神教会の信者、良心犯、そして多くのウイグル少数民族達を刑務所に送り、酷刑を課している。中には生きたまま臓器を取られる人も」と報道。 たとえ死んでいなくても、多くの信仰者は長期間向精神薬を服用することを余儀なくされ、その結果重大な肉体的、精神的な傷をもたらしている。

写真は酷刑を示す(武林軍事ネットから取ったもの)

https://www.aboluowang.com/2019/0608/1299437.html

6/7阿波羅新聞網<川普一句话戳破北京硬扛 金融战美国打响第一枪 涉1.8万亿美元还有第四波加税=トランプの一言は北京の強硬姿勢を打ち砕く 金融戦争に向け米国は号砲を撃つ 米国は1.8兆ドルと追加関税の第4波を>6/5(水)、米国議会は、米国に上場している中国企業に規制の遵守、財務の透明性と説明責任に関する米国の法律と規制の遵守、米国内の1.8兆ドルもある中国系上場企業への管理監督を求める法案を提出した。 アポロネットの時事評論家の王篤然は、「これは米国における金融戦争の最初の一撃である」と分析した。

トランプは6日、中国製品の3,000億ドルに対して適当な時に関税を課すと述べた。 中共の商務部は「徹底的に付き合う」と言ったが、トランプのその一言で北京の強硬姿勢を打ち砕いた、中共はまだ米国と私的に交渉している。 トランプの貿易戦争は米国人に経済的な恩恵をもたらし、トランプの世論調査の支持率は上がっている。(6/5CNNによれば、トランプ再任賛成が54%、反対が41%、あの反トランプのCNNの数字です)。 さらに、FRBの最新のデータによると、米国の家計純資産は今年第1四半期に4.5%増加し、過去最高を記録した。

いよいよ貿易戦だけでなく、金融戦争に走りだしました。次は通貨戦争でしょう。日本政府と日本企業は中共に加担すれば負けが見えています。米国をしっかり支えないと。

前にも書いていますが、中国の企業は少なくとも3種の財務諸表を作成しています。監督機関、株主、銀行とそれぞれ数字が違います。それに賄賂や接待用に「小金庫」も必ず持ちます。コンプライアンス上、重大な問題です。

写真は法案提出発起人の一人である共和党議員のMike Conaway

https://www.aboluowang.com/2019/0607/1299255.html

6/8阿波羅新聞網<特朗普:中共已用完所有武器 中美将达成贸易协议=トランプ:中共はすべての武器を使い果たした 米中は貿易で合意に達するだろう>米中貿易戦争はまだ鎮まっていない。 トランプ大統領は6/7(金)米国メディアの独占インタビューを受けて、中国との貿易協定で合意に達するだろうと述べた。 彼は、米国がまだ3,250億ドルの中国の輸入品に課税していないことを強調した。だが、中共はすでにすべての武器を使い果たしている。

米中両国の貿易戦争は益々激しくなる中、トランプ大統領は6/7(金)フランスでフォックスニュースキャスターのローラ・イングラハムの独占インタビューを受け、中国との貿易協定に合意するだろうと述べた。

イングラハムが中国との貿易協定を締結するかどうかという質問に、トランプは「イエス、中国と貿易協定を確実に締結する。その意味は、彼らは今すぐ合意したがっている。 私も合意したいが、彼らがしてきたことは非常に悪辣である。我々はかつて協議書があり、彼らは最初からの再交渉を望んでいたが、そのようにはできない」と答えた。

トランプはバイデン元副大統領の中共の脅威に対する無知を批判し、習近平はバイデンが米国をリードすることを期待していると述べた。

まあ、トランプのリップサービスというか目くらましでしょう。合意の目途は立っていません。習は米国の敵と認定されているロシアと手を組もうとしているようですが、プーチンがそんなに簡単に中国を信じる筈もない。助け合えれる部分はと言う所でしょう。

https://www.aboluowang.com/2019/0608/1299467.html

6/8日経<AI独裁ばらまく中国 拡販される監視システム 本社コメンテーター 秋田浩之

街のすみずみに監視カメラを置き、顔認証で特定の個人を追いかける。ネット空間を厳しく検閲する。中国は最新の人工知能(AI)を使い、AI独裁ともいえる体制を固めつつある。

さらにはクレジットカードや交通違反の履歴、国への貢献によって、一人ひとりに点数を付け、管理するシステムも確立しようとしている。

こうした動きに手を貸しているとして、米政府は防犯・監視システムの中国最大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)に制裁を科すことを検討中という。

しかし、中国の動きは、はるかに先をいっている。彼らは厳しい監視システムを国内に張りめぐらせるだけでなく、それらを海外にも広めているのだ。

米人権団体、フリーダム・ハウスの報告書によると、少なくとも18カ国が中国企業の支援を受け、AIなどを駆使した監視システムを築いている。その中にはジンバブエやウズベキスタンなど、強権が指摘される顔ぶれも並ぶ。

日本が長年にわたって援助を注ぎ、改革を促してきた東南アジアも例外ではない。各種の報道などによると、タイやマレーシアが中国企業と契約し、最先端の監視システムの導入に動いている。ミャンマーは交通違反の摘発などに、中国のAI技術を使う計画だ。

中国側の目的は、お金もうけだけではなさそうだ。中国企業には監視システムの顧客である外国政府の同意を得て、顔認証のデータを自社に吸い上げ、解析を手伝うケースもあるという。こんな契約が広がれば、中国は外国からも膨大なデータをかき集め、顔認証の精度を高められる。

日米欧やオーストラリアはいま、中国が「一帯一路」構想に沿ってインド太平洋の要所に港や鉄道をつくり、政治力を広げることを警戒している。対抗策として、米豪は昨年秋、新たにファンドを設け、域内国のインフラ整備を支援していくことを決めた。

とはいえ、こうした目に見えるインフラ整備よりも、中国によるAI監視システムの拡散のほうが、世界への影響は深刻だ。中国が港や鉄道をつくったからといって、その国の民主主義が後退するとは限らない。しかし、民主的といえない国々に高度な監視システムが渡れば、さらに強権政治に染まってしまう恐れがある。

むろん、中国によるAI支援のすべてがいけない、というわけではない。空港の管制や交通網の制御など、相手国の近代化に役立つ協力であれば、悪い話ではない。問題なのは、強権政治を広めかねないAI支援である。

もう一つ気がかりなのは、中国がハード面だけでなく、法体系というソフト面でも、デジタル独裁のノウハウを拡散していることだ。そのひな型が2017年6月、中国が制定したインターネット安全法である。

同法は中国で集めたデータをすべて国内で保存し、海外持ち出しの際は当局の審査を受けるよう義務づける。「国家の安全」を脅かす問題では、企業が捜査に協力するよう定めた。

デジタル空間に「国境」を設けて隔離するとともに、反政府の情報を摘発しやすくする狙いだ。運用によっては、中国内の外国企業も「国家の安全」を理由に情報の開示を迫られ、拒めば処罰されかねない。

日米欧や豪州の安全保障当局者は懸念を強めるが、状況は悪くなっている。中国の法律を参考にタイやベトナムが今年、似たような法律を設けた。この動きが広がれば、世界のデジタル空間でも自由が制限されてしまう。

こうした展開に歯止めをかけるため、日米欧や豪州は連携し、早く手を打つことが大切だ。AIを跳躍台にした中国による影響力の拡大は、決して侮れない。

民主主義国とは異なり、中国は人権批判をさほど気にせず、約13億人の国民のデータを集め、AIを進化させられる。中国の監視システムを売った国々と契約し、個人のデータを集めることも不可能ではない。

では、日米欧や豪州は、どうするか。残念ながら即効薬はないが、少なくとも2つ、やれることがある。

第1に、中国の監視システムに依存するリスクについて、各国に説明していくことだ。

日米豪は重要情報が中国に漏れかねないとして、次世代通信規格「5G」から中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を外すことを決めた。同社は疑惑を否定しているが「中国の国内法を入念に分析した結果、情報の提供を当局に迫られたら、ファーウェイは拒みきれないと判断した」(外交筋)という。

日米豪はそうした分析結果をもっと積極的に他国と共有し、注意を促すべきだろう。民主主義国はもちろん、強権国といえども、情報が中国に筒抜けになることは望まないはずだ。

第2に、日米豪や欧州連合(EU)が歩調をそろえ、デジタル空間の国際ルールづくりを急ぐことも大事だ。政府による過度の介入や監視を禁じるルールを定め、そのうえで、賛同国を募って共通のデジタル圏を立ち上げ、規模を広げていくことが望ましい。

使いようによって、AIは世界の民主化を促す道具にもなるし、強権政治の台頭を招く装置にも転じる。後者の展開だけは、防がなければならない。>(以上)

宮崎正弘氏のメルマガで中国はデジタル全体主義と唱えていましたがその通りです。共産主義がデジタルを使って人権侵害し、世界革命を引き起こそうとしているのが、「今」です。自由主義国で自由を享受している人はその危険性を認識し、中国の共産主義を崩壊させないと、自由も民主主義も跡かたなく消え去るでしょう。

福島氏の記事では、再度天安門事件(場所が違っても)が起きるのではと懸念しています。しかし、文中にある通り、これだけ監視の網が張り巡らされれば、一瞬に鎮圧されるでしょう。以前は軍を味方につけて反乱を起こせばと考えたときもありましたが、ITの進歩でそれも難しいと感じます。やはり外圧で、世界が中共を相手にしないように仕向けるのが大事かと。秋田氏の記事によれば、後進国が中共のハード、ソフトを導入して強権政治を実行しようとしているとあります。説得してそうならないようにしませんと。

古森氏の記事では、ナショナリストの方が人権侵害に真剣に取り組むという事でしょう。左翼は人権侵害が当り前、リベラルはPCに代表されるように自由を奪います。リベラルを英和辞書で引くと「自由な人に相応しい」が本義と出てきます。自由を奪う人たちがリベラルと呼ばれるのはおかしいでしょう。

福島記事

中国・北京の天安門広場(資料写真)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 この原稿がJBpressにアップされるのは天安門事件30周年の6月4日が過ぎたあとだが、やはり天安門事件のことを書きたい。この事件は風化させてはいけない。習近平政権になってそう強く思うのは、ひょっとすると天安門事件は再び起きるのではないか、と危惧しているからだ。

 天安門事件とは何か、いまさら説明する必要もないように思える一方で、これほど複雑な背景を持つ事件もあまりない。単純に学生が民主化を求め、中国共産党がそうした学生たちの運動を武力で蹂躙した、という構図だけでは十分に説明しきれない。経済状況の悪化、党内権力闘争、国際情勢の変化、海外からの干渉、そういったものが複合的に影響し、知識人・学生と一般市民・労働者らを同じ方向の運動に走らせていった。なぜあそこまで人々が恐れ知らずの熱狂に染まったのか。なぜ共産党はそれを戦車で踏みつぶすと決断してしまったのか。そのプロセスは依然、多くの専門家たちの研究テーマとなっている。

 犠牲者数もいまだ不明だ。中国の公式発表では319人。元新華社国内部主任の張万舒が香港で出版した手記の中で引用した、中国赤十字の当時の書記から聞いた数字が727人。2014年の機密解除で明らかになった米公文書によれば死者1万454人(天安門広場および長安街8726人、それ以外の北京市内1728人、戒厳部隊筋が中南海に挙げた数字)、負傷者4万人。2017年12月に明らかになった英国情報当局の推計が1000~3000人。当時の英国大使が国務委員から聞いた数字として本国に打電した数字は少なくとも1万人。中国赤十字の推計として報告した数字は2700~3400人。また「解放軍総参謀部が1989年10月12日にまとめた数字によると、6月1~10日の間の死者数3万1978人」という“噂”が中国の民主化活動サイトなどに挙げられている。一方で「天安門広場で虐殺はなかった」と信じている人も多くいる。

 軍同士の相打ち混戦や市街戦のような事態になり、兵士側にも相当数の犠牲者が出たと言われている。当時、北京以外でも、およそ70都市で大規模民主化要求運動が起き、治安維持のための武装部隊と激しい衝突を繰り返していた。その実態はほとんど不明なのだから、私は死者が万人単位であっても「あり得ない」とは思えない。

中国・北京の天安門広場で、軍と衝突したデモ参加者によって焼かれた軍用車両20台の残骸のそばに集まる住民たち(1989年6月4日撮影)。(c)Manny CENETA / AFP〔AFPBB News

天安門事件を成功体験として語り始めた共産党

 事件から30年たってなお犠牲者数がわからない上に、情報統制はますます厳しく、巧妙になっている。今の中国人大学生たち、若い記者や編集者たちに天安門事件の話を振っても知らないという。

 私が上海に留学していた1999年、ちょうど天安門事件10周年のころは、ユーゴスラビアの中国大使館の誤爆事件があり、各地で反米デモがあった。多くの学生たちが、反米デモに参加するよう共産党に扇動されていた。だが、みんな心の片隅には天安門事件があって、おびえていた。ある女子学生から「お母さんからデモに絶対参加するなと言われた。天安門事件を忘れるな、と。政府が認めているデモも、いつ“治安維持”を理由に鎮圧されるかわからない」と打ち明けられたことがある。

 この20年の世代間ギャップを思えば、この先、40周年、50周年を迎えるころに共産党体制が続いているのなら、「天安門事件で虐殺はなかった」「米国が中国を貶めるためにでっちあげたフェイクニュース」というのが国際社会の通説になっているかもしれない。

 現に、中国共産党からは天安門事件を“成功体験”と語る声が出てきた。中国国防部長の魏鳳和がシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリア対話)で、天安門での武力鎮圧は政治的に「正しい判断だった」と公言した。魏鳳和は「そこ(武力鎮圧)から中国が安定に向かった」と語り、「この30年で中国共産党の指導による中国の大きな変化をみても、中国政府の天安門事件に対する処理を過ちだったと言えるのか?」と問いかける。

 これまでは、党内でも天安門事件は“トラウマ”であり、だからこそ言葉にできない“タブー”であったが、そのタブーは悪い意味で破られつつある。「天安門事件」を成功体験として対外的に語り出したのは習近平政権が初めてである。習近平は天安門事件当時、福建省寧徳区(今の寧徳市)の書記であり、都会の民主化の熱狂にまったく共感できなかったのかもしれない。

事件の教訓を政策に盛り込んでいる習近平

 先日、明治大学でシンポジウム「30周年 六四・天安門事件を考える-民主化は、なぜ挫折したのか」が開かれ、私はその前日の内部討論会と記者会見に参加した。内部討論会では、シンポジウムの登壇者であるアンドリュー・ネイサン(コロンビア大学教授)が自著『最後的秘密』(香港新世紀出版)についての解説を行った。ネイサンが最近発掘した新資料を書籍化した同書には、天安門事件直後に行われた政治局拡大会議上での王震ら保守派長老や政治局メンバーの肉声が収録されており、当時の党内ハイレベルが天安門事件をどのように考え、何を教訓としていたかが読み取れる。

 共産党はこの事件が起きた原因を、(1)外部敵対勢力(米国)と内部敵対勢力の結合、(2)イデオロギー政策の過ち、(3)党内分裂、(4)党の核心の不在、などと総括している。特にそのような状況を生じさせたのが趙紫陽であり、彼が民主化の領袖として鄧小平にとって代わろうとした政治的野心を攻撃する発言も多々あった。

 ネイサンによれば、この4つの教訓を習近平ほどしっかり汲み取り、自分の政策に反映した指導者はいない、という。習近平政権の政策(たとえば反スパイ法などで“外国スパイ”の摘発を強化し、公民運動や労働者運動を徹底的に弾圧し、西側イデオロギーに対する厳重な取締りを行い、メディア、作家、知識人らへの弾圧、監視、コントロールを強化し、反腐敗闘争において党内の異なる意見を完全排除し党内分裂の可能性を封じ、自ら核心になろうとしている)などを見れば、確かにそう思われる。

 だが、その教訓による政策というのがうまく機能しているかというと、私は懐疑的だ。国内外の“敵対勢力”は、習近平の強硬な政策によってむしろ増えているのではないか。特に米トランプ政権はこれまでにない対中強硬姿勢を打ち出すようになった。また、党内分裂を防ぐつもりで徹底粛清を行った結果、党内に習近平に対する恐怖と恨みを隠し持つ面従腹背の反習近平派がむしろ増え、習近平の不安と疑心暗鬼と孤立がますます深まっているように見える。“習核心キャンペーン”も習近平のカリスマ性のなさを暴露する結果となっている。天安門事件の教訓を汲み取った政策の結果、天安門事件がいまだかつてないほど起こりそうな条件が整いつつあるような気がするのだ。

体制は当時よりも安定している

 ちなみにネイサン教授は当時のような大衆運動が短期的将来に起きる可能性については否定的だった。彼によれば、「体制はむしろ安定している印象だ」という。

 同じシンポジウム登壇者の張博樹(在米華人知識人、憲政・思想史学者、元社会科学院哲学研究所)はさらにこう説明する。

「1989年の大規模なムーブメントの状況と今の状況は大きく違う。87年の第13回党大会では政治体制改革が打ち出されており、党内ハイレベルでも改革を進める動きがあった。それに89年の民主化希求の動きが結びつく上下結合があり、天安門事件前のようなダイナミックな民主化運動が起きた。

 しかし、習近平政権下には政治改革の動きはなく、89年のような状況はできていない。さらにいえば、習近平政権下ではITなどハイテク技術を駆使した監視社会を実現しつつあり、民間の動きを厳格にコントロールしている。民衆の力だけでは体制を変えることは難しい。しかも、そうした独裁政治にもかかわらず、貧困は減り経済は発展している。大規模な経済危機が起きて国民が生きていけなくなる状況は存在せず、体制はむしろ安定している。

 もし体制がひっくり返るような動きがあるとしたら、習近平が病没するとか、南シナ海や台湾で紛争が起きて負けるといった特殊な状況が起きた場合。だが、それは習近平政権が終わるのであって、共産党体制が終わるという話ではない」

 張博樹は、貧困によって民衆が立ち上がるのではなく、もっと次元の高い権利要求運動が起き、党内にも改革開放の経験を経て民主化を求める官僚が台頭し、彼らが結びつく時代が来ることに期待する、と語っていた。

 元学生リーダーの王丹は、天安門事件の背景にハイパーインフレと都市部の失業者の急増という経済要因があったことに触れ、「中国の経済がマイナス成長に入れば、大衆の不満が爆発する」形で変革を求める運動が起きるのではないかという期待を示した。同時に、米中貿易戦争の行方次第では、党内の路線対立がより先鋭化し、場合によっては習近平体制が崩壊するシナリオはありうるという見方も否定していない。

中国を「許した」米国の失敗

 実際に天安門事件が再び起きるか否かは、誰であっても簡単に予想できるものではない。ただ、言えることは、もう一度同じような状況が起きれば習近平政権は武力弾圧をためらわないであろう、ということだ。

 中国の民主化運動を支持する雑誌「北京の春」編集人の胡平は、「天安門事件前まで、共産党は弾圧するときに“敵”のレッテルを張ってからするという手順を踏んでいたが、天安門事件では学生、知識人、一般庶民といった普通の中国人をいきなり虐殺した。この恐怖こそが中国人に植え付けられた天安門事件の負の遺産」と言い、この事件以降、人々が共産党に抵抗する意志を完全に失ったと指摘する。今の習近平政権はまさに容赦ない弾圧や粛清をちらつかせ、反対意見を完全に押さえつけることでの見せかけの体制の安定を演出している。

 だが、人間というものは本当に恐怖に屈したまま生き続けることができるのだろうか。私はそうは思わない。

 香港では6月4日の夜、恒例のビクトリアパークのキャンドル追悼集会が行われ、主催者発表で18万人、警察発表で3.7万人が参加した。これは雨傘革命が起きた2014年以来の規模だ。

 また台湾では6月4日夜、陳破空ら天安門事件に参加した在米華人民主活動家や人権活動家らが総統府に招かれ蔡英文総統と会見した。蔡英文は5月23日、王丹ら天安門事件参加者とも会見している。台湾の総統が総統府に天安門事件関係者を招いて会見するのは初めてだ。事件を過去のものとさせない努力を多くの人が続けている。逃げ場のない恐怖、それを口外できない鬱屈は“窮鼠猫を咬む”式の暴発となり、天安門事件の弾圧・虐殺を再演しかねないのではないかと強い懸念を持っているからに他ならない。

 天安門事件後、日本は米国からの水面下の要請を受けて経済制裁を早々に解除し、米国とともに今の中国を“育てた”。ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国を許した米国の失敗」と当時の米国の決断を批判している。米国政府も失敗を認めているからこそ、今、対中強硬策姿勢に出ている。

 ポンペイオ国務長官は6月4日、中国の人権問題に強い不満を表明し、国務省の報道官も天安門事件を「虐殺」と表現した。日本の菅義偉官房長官は「遺憾」表明はしたが、果たして天安門事件後の日本の中国への対応は、「遺憾」で済ませられるものだろうか。

 日本も今一度、天安門事件後から今に至るまでの中国への対応や姿勢について振り返って反省してみてはどうだろう。

古森記事

事件から30年目を迎える天安門広場(2019年6月3日撮影、写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 2019年6月4日は天安門事件の30周年の記念日だった。いや追悼の日というべきだろう。この日に殺された多数の中国人男女の霊が悼まれる日だからだ。

 その追悼の行事が世界各地で開かれたが、現時点におけるこの事件の最大の意味は、その教訓が米国のトランプ政権の対中政策に堅固に生かされていることだろう。現在の激しい米中対立は、天安門事件が大きな要因になっているとも言えるのである。

天安門事件の民主化運動指導者が証言

 天安門事件の30周年を追悼する6月4日、米国の首都ワシントンでは多様な行事が催された。いずれもあの事件で命を奪われた多数の中国人男女の霊を悼み、その悲劇を起こした中国共産党政権の残虐性を糾弾する趣旨の行事だった。

 米国があの事件を現在も解決されていない重大な課題としてとらえ、対中政策の指針に反映させているという基本姿勢は、4日に米国議会で開かれた「中国に関する議会・政府委員会」主体の大公聴会でも明らかだった。

「中国に関する議会・政府委員会」は、米国の立法府である議会と、行政府である政府が合同で中国の人権状況を恒常的に調査する機関である。公聴会は、同委員会が主体となり、下院外交委員会、同じく議会で人権問題を専門に扱う「トム・ラントス人権委員会」(下院で長年、人権問題を専門に活動した著名な故ラントス議員の名をとった特別機関)、そして行政府のホワイトハウスや国務省の代表も含めて合同で開かれた。主題は「30年目の天安門事件・中国の弾圧の深化を点検する」とされていた。

 この公聴会の主役は、当時、天安門事件で民主化運動の指導者として活動し、その後の弾圧を逃れて海外に避難したウーアルカイシ氏や周鋒鎖氏だった。彼らは証人として登場し、当時の天安門広場での弾圧から、中国当局によるその後の長く過酷な民主化運動抑圧の実態を生々しく語った。

中国・北京で行われた民主化を求めるデモで、天安門広場に集まった人々(1989年6月2日撮影)。(c)CATHERINE HENRIETTE / AFP〔AFPBB News

「拘束された人々はただちに釈放されるべき」

 米国にとって、天安門事件は単なる歴史上の出来事ではなく、現在、目の前に存在する未解決の問題である。公聴会の開催趣旨は、そのことを明確に物語っていた。開催趣旨は以下の通りだった。

「1989年、中国のあらゆる階層の市民たちが天安門広場に集まり、平和的な集会によって政府に対し民主化の促進や腐敗の追放を求めたが、暴力的な弾圧にあった。中国政府はその後、事件が起きたことを否定し、言論を抑圧した。この公聴会は、当時の弾圧、その後の抑圧を再点検して、習近平政権下の現在の中国に情報の開示を求め、あわせて現在のアメリカの対中政策の指針とする」

 このように天安門事件はドナルド・トランプ大統領下の現在の米国において、なお強烈なインパクトを発揮し、対中政策にも影響を及ぼしているのである。

 実際にトランプ政権の国務省報道官は、政府の公式見解として、30周年記念の直前の5月30日の記者会見で以下のように言明していた。

「天安門事件において、中国当局による徹底した虐殺が実行されたことを我々は忘れてはならない。事件の30周年を前に、中国共産党が断行したおぞましい組織的な迫害行為で拘束された人々はただちに釈放されるべきだ」

 この声明は、具体的には習近平政権が最近また天安門事件関連の民主化の活動家や支援者を拘束したことへの抗議だった。トランプ政権はこのように天安門事件での弾圧を現在の習近平政権に結びつけて非難する姿勢をとっているのである。

中国の人権侵害をこれまでになく問題視

 これまで中国政府は天安門事件を「反革命暴乱」と断じて、その出来事自体を闇に葬っていた。事件自体について完全に口を閉ざしているのである。

だがトランプ政権はそれを承知のうえで、あえて事件を未解決の問題として習近平政権に突きつけ、全容の解明を迫った。それは中国共産党政権の邪悪性を衝く要求でもあった。

 米国の他の歴代政権も、天安門事件の悲劇を中国政府の人権弾圧として非難してきた。だが、中国との経済や外交の関係を断ったり保留したりすることはなかった。基本的にはオバマ政権まで各政権はみな中国との関与政策を続けてきた。

 ところがトランプ政権は、その関与政策自体を間違いだったと公然と宣言した。共産党政権下の中国は、基本的な価値観においても、安全保障においても、国民の生活に直結する経済においても、米国と対立する相手だと言明し、正面衝突をも辞さない姿勢を明確にするようになったのだ。

 現在の米国の対中政策にとって、なぜ天安門事件が大きな意味を持つのか。その最大の理由は、トランプ政権が対中政策を立案するうえで「人権」という要素をますます重視するようになってきたことである。

 トランプ政権の対中政策の支柱となる「国家安全保障戦略」も、「米国の価値観」として個人の自由や権利の尊重を強調している。

 トランプ大統領は貿易、そして安全保障という順番で中国との対決姿勢を固めてきたという印象が強い。しかし、最近は中国政府のウイグル民族大弾圧に象徴される人権抑圧への非難も頻繁に述べるようになった。この人権弾圧非難の中核が、天安門事件への糾弾なのである。つまり、現在のトランプ政権の対中政策には、天安門事件への激しい非難が大きな役割を占めている、ということなのだ。

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