『中国「長征5号」打ち上げ成功の意味 宇宙覇権への野望は、はったりではない』(11/9日経ビジネスオンライン 福島香織)について

11/11日経朝刊<人工衛星製造、中国が台頭

世界の人工衛星の製造数ランキングで中国が台頭している。2005年は米国、欧州、ロシア、日本に続き5位だったが、15年は米に次ぐ2位に躍り出た。背景には、他国に頼らない独自の全地球測位システム(GPS)の構築を進めていることなどがある。

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中国の製造数は、10年前の3基に比べ、15年は約7倍の22基にまで膨れあがった。ほとんどを国営企業の中国空間技術研究院(CAST)が製造する。35基の衛星を束ねて運用する中国版GPSの「北斗2」の整備が進んでおり、20年ごろの完成まで製造数が大きく伸びると見られる。

米国は、06年に52基まで製造数を伸ばし、以降は増減を繰り返している。15年には、ここ5年で最も多い37基を製造し世界トップの座を守った。ボーイングが10基、ロッキード・マーチンとスペースシステムズ・ロラール(SSL)が4基ずつ製造した。

13年、14年と打ち上げ数2位だったロシアは15年の製造数が前年より10基以上減少、4位に転落した。

欧州は欧州版GPS「ガリレオ」の整備を続けており、08年以降はコンスタントに20基以上製造を続けている。日本は三菱電機が製造する衛星を中心に5基前後で、低空飛行が続く。>(以上)

この日経記事は、事実だけを述べていますが、何のために中国が人工衛星を多く造って飛ばすかについては一言も触れていません。読者が考えろというのでしょうけど、忙しいサラリーマンでは解説しないと分からないでしょう。特に「平和愛好」を刷り込まれた人間には。科学技術の進歩は大きく言えば、軍事目的で為されて来たか、転用することにより為されて来ました。中国が開発に力を入れていますのは、軍事目的に決まっています。

中国は、地球制覇だけでは飽き足らず、宇宙にまで手を出し、欲望を最大限に追求しようとしています。黄文雄が『それでも中国は崩壊する』の中で、中国を「人口最多・資源最少・欲望最大・道徳最低」と言ったのも頷けます。強欲そのものです。18世紀の米国の西漸運動、ロシアの南下政策、英国の東方侵略と並んで、後世の人間に世界史の中での汚点として語られるのでは。

福島氏の本記事の中に、「国土資源開発計画では、深海、深地、深空の三方向」、「未開拓の地には先に行って旗を立てたものの所有となるという感覚が中国当局にはまだあり、彼らはいずれ、月面や火星の資源を奪い合う国際競争時代が来ると予想している。」とあり、遅れて来た帝国主義国の色合いを濃く滲ませています。歴史は不可逆であり、起きてしまったことを元には戻せませんが、将来は変えて行くことができます。中国の野望をどこかで止めないと。

また、「毛沢東時代を振り返れば、国内で数千万人の人民が餓死しかけていても「両弾一星」(原水爆と大陸間弾道ミサイルと人工衛星の総称)精神を掲げ、本気で旧ソ連と全面核戦争するつもりで核兵器開発を行い、文革の混乱の最中に初の衛星・東紅1号を打ち上げてきたのが中国という国であった。」、「「宇宙ステーションについても、米国は経済的理由でできなくなり、欧州も日本も諦める中、中国だけがその科学的価値を認めて、やり続ける。…2024年で国際宇宙ステーション(ISS)の運用が終われば、中国だけが世界で唯一宇宙ステーションを保有する国家になるのだ」。 中国の宇宙覇権への野望はもはやはったりではない。果たして中国経済がその野望を最後まで支え切れるのか、という点についてはいろいろ意見の分かれるところかもしれないが、いかなる犠牲も失敗も意に介さずひたすら天空を目指す中国の本気を、日本も米国も決して侮れるものではないということはしっかり認識しなくてはならないだろう。」とあり、中国がここまではっきり、野望をあからさまにしているので、国際社会は中国経済を崩壊させるように動かなければ、本当に大変なことになります。

中国は毛沢東時代に「中国人はたとえズボンをはかなくても、核兵器をつくってみせる」という強い意志の下に開発しました。今回もその通りに行動するでしょう。米国軍はコンピューター制御が生命です。米軍衛星が中国軍に簡単に撃ち落されれば、米軍は全く機能しなくなります。米国ももっと危機感を持たねば。幸いトランプが大統領になり、「偉大なアメリカの再興」を掲げていますので、良き人材を国防長官に据えれば対応するのではと考えます。菅官房長官、長島昭久議員と会談したマイケル・フリン元陸軍中将がその候補に挙がっています。

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016111102000066.html

将来的に核融合が実用化されれば、エネルギーの問題は解決されるというのに、中国は何故に軍事膨張を続けるのでしょうか?習近平の言う「中華民族の偉大な復興の夢」というのは、真の「中華世界」を作り、世界を中国人で支配し、他の民族はチベット、ウイグル、モンゴル人と同じように奴隷として扱おうと考えていることです。国際社会が早く気付き、手を打たねば。

記事

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11月3日、中国は新型ロケット「長征5号」の打ち上げに成功した(写真:ロイター/アフロ)

11月3日夜、中国海南島・文昌宇宙発射場では長征5号の打ち上げが成功した。長征5号は、直径5メートル、全長57メートル、20階立てビルに相当する巨大運搬用ロケットで、最大25トンを運搬できる。運搬能力係数としては米ボーイング社のデルタIVに次ぐ世界2位だ。今回は通信衛星のひとつ「実践17号」を搭載した打ち上げだが、今後中国が進める天宮計画(独自宇宙ステーション建設)や嫦娥計画(月面基地建設)の資材運搬に欠かせない中国の新世代ロケットである。

今年秋の天宮2号打ち上げ時に使用される予定だったが、最終的には天宮2号打ち上げは長征2号FT2が使われたので、今回の打ち上げが、5号の披露目となった。ネット中継で世界中のロケットファンがこの打ち上げの中継を見ただろうが、その長征5号の巨大さや性能だけでなく、打ち上げ直前にエンジンの予冷システムに問題が起きたにも関わらず、いったん燃料タンクを空にして再充填して160分の遅延だけにとどめて、再度打ち上げ体制に入った中国当局の強引なほどの情熱にも驚嘆させられたことだろう。

中国経済がハードランディング必至といわれるなか、かくも宇宙開発に膨大な予算と情熱を示すのはなぜか。その背景と現状について整理しておきたい。

247項目の独自開発技術の塊

長征5号について、中国公式メディアを参考にもう少し説明しておこう。研究者の間では「デブ5(胖五)」とあだ名される、直径5メートルの大型ロケットで、中国の従来の運搬ロケットの1.5倍の太さがある。推進力は従来の2.5倍、最大25トンを低軌道、14トンを静止トランスファ軌道に運搬できる。長征5号には247項目の中国独自開発新技術が使用され、中国新技術の塊と言っても過言ではない。一般にロケット開発では、打ち上げの失敗が与える損失やマイナス影響が大きいため、ここまで思い切って新技術を使用することはなく、中国としては非常の冒険的な試みだったとか。

なかでも開発に困難を極めたのが、主要の新技術の一つ、YF-100(120トン級液体酸素ケロシンエンジン、酸素リッチ段階燃焼サイクルエンジン)だ。これは旧ソ連のRD-120を参考に開発したと言われているが、試作機の最初の4台のうち2台は爆発、2台は燃料系統が焼損するといった失敗もあった。ようやく5台目を成功させることができたあとも、燃料層壁の接合の問題などさまざまな技術的困難に直面し続けたとか。

長征5号プロジェクトはいわゆる863計画(1986年3月の国家ハイテク発展研究計画)に従って、2001年2月、江沢民政権時代に正式にスタートし、足かけ15年、約45億元をかけて実現にこぎつけた。総設計責任者は1967年生まれの李東(航天科技集団一院)。長征5号の開発、研究、そして打ち上げにかかわっているのは、ポスト文革世代である60后から80后までの若手技術者、研究者たちであり、17歳で1999年の神舟1号の打ち上げを見て、宇宙開発の路を志した80后の若手エンジニアが注目を集めたりもした。

長征5号は160分の発射遅延はあったものの、初の発射をみごと成功させ、これらメードイン中国の先端技術の信頼性、中国ロケット研究の成熟ぶりを世界に見せつけることに成功した。今の時点では、中国の宇宙開発の実力について、旧ソ連の物まねであるとか、米国などと比べて大きく遅れをとっていると考える人は、国内外にほとんどいなくなっただろう。

「中国クオリティ」の概念を塗り替える

全世界の運搬ロケットの発射成功率は平均で91.5%、米国で93.1%、ロシアで94.9%。中国の長征シリーズロケットの発射成功率は97%。もともと中国のロケット発射技術は決して低くない。これまで米ロのロケット発射成功率が中国に劣っていた理由としては、中国よりも大型ロケットが多く、技術難度も高度であったからで、中国は打ち上げやすいものを数こなして実績を重ねてきたと言われてきた。だが、今回の長征5号発射、中国も米国並みの大型ロケットを、高難度の技術を用いて打ち上げたことで、中国宇宙開発における「中国クオリティ」の概念を塗り替える事件であるともいえる。

こうした中国の宇宙開発は習近平政権になってから加速している。特に、中国の宇宙開発元年とされた1956年10月の国防部第五研究院(中国最初のミサイル研究機関)創設からちょうど60年という節目の今年に合わせて、宇宙開発の成果を人民に知らしめるイベントが集中した。

9月15日に宇宙ステーション天宮2号が打ち上げられ、10月17日に打ち上げられた有人宇宙船神舟11号と19日にドッキングした。宇宙飛行士2名が天宮2号の中で、30日にわたり滞在し、さまざまな実験を行う予定だ。天宮宇宙ステーションは2018年以降にコアモジュールの打ち上げが始まり、2022年には完成させる予定だが、この天宮モジュールの打ち上げにも長征5号の活躍が期待されている。

月面への意欲も強く、嫦娥計画については、来年にはサンプルリターンを目的とした嫦娥5号の打ち上げを予定。その次には、いよいよ宇宙飛行士の月面着陸を予定している。中国は月面と火星の宇宙資源開発については十三次五カ年計画の国土資源技術工作の中に含めており、月面、火星資源開発を国土資源開発の延長と位置付けている。つまり未開拓の地には先に行って旗を立てたものの所有となるという感覚が中国当局にはまだあり、彼らはいずれ、月面や火星の資源を奪い合う国際競争時代が来ると予想している。火星探査機は2020年に打ち上げを予定している。火星探査ローバーのデザインなども公開されている。

1万人強制移住で「天眼」建設も

ちなみに十三次五カ年の国土資源開発計画では、深海、深地、深空の三方向への進軍を訴えており、宇宙だけでなく、1000メートル以上の海底や、2000メートル地下の資源探査など、地球の深部の人類未踏域にもその開発欲は向いている。中国の拡張意欲は上下左右360度、全方位に向かって展開されている。

このほか今年8月には量子通信衛星「墨子」号を世界で初めて打ち上げた。ある量子状態の完全な復元は不可能という物理的性質を利用して、解読不可能な暗号通信を可能にするという。これが正常に稼働すれば、中国は米国などとのサイバー戦において、一歩先んじたことになる。英BBCなどの報道によれば、もともとのアイデアはウィーン大学のアントン・ツァイリンガー教授が提唱した理論だが、ツァイリンガーが2001年に欧州宇宙機関に実用計画を提案したが実現には至らなかった。一方、このツァイリンガーの教え子である1970年生まれの潘建偉が、世界の最先端の量子通信研究の成果を祖国に持ち帰り、実用に向けた開発に大きく貢献した。現在は、ツァイリンガー自身も潘建偉の研究に協力しているという。

また直径500メートルの世界最大の電子望遠鏡「天眼」を、1万人を強制移住させて貴州省の山村に建設したことも瞠目に値する。100億光年以上向こうの目標を観測でき、宇宙の起源や地球外文明史探査が目的というとロマンチックだが、一部では軍事利用や軍事技術の開発が真の目的だとも言われている。電子望遠鏡の開発によって、軍事スパイ衛星やミサイル予警衛星の動向、観測技術やステルス機の捕捉技術が蓄積されるとか。

当たり前のことであるが、中国にとっての宇宙開発の真の目的は強軍化、軍事利用目的である。また、そう遠くない未来に宇宙戦争時代が来るということも見据えている。衛星爆破実験を国際社会の非難を浴びながらも実行し、軍制改革においても、航天部隊(宇宙部隊)創設が言及されている。宇宙飛行士はみな空軍所属である。宇宙空間を征し、衛星破壊戦争を征すれば、核兵器などは恐れるに足らない。宇宙ステーションも純粋な研究施設というよりは、衛星破壊戦争を想定した施設だと見られている。

文革時代の東紅1号…空気が似てきた

普通の炭鉱や化学工場では驚くほどの杜撰な管理による事故やその隠蔽が頻発して、製造業とていまだ「山寨(パクリ)」商売が横行する状況が21世紀になってもあまり改善されていないにも関わらず、軍事的最先端技術開発は、欧米、ロシアをしのぐ最速スピードで進められる。国有ゾンビ企業が整理され数百万人の失業者があふれ、地方財政の事実上の破綻も目に見えているにも関わらず、世界に先駆けて月や火星の資源開発に手を出そうとする。

日本などの民意重視の民主国家では、なぜそのようなことが可能なのか、なかなか理解できないだろうが、毛沢東時代を振り返れば、国内で数千万人の人民が餓死しかけていても「両弾一星」(原水爆と大陸間弾道ミサイルと人工衛星の総称)精神を掲げ、本気で旧ソ連と全面核戦争するつもりで核兵器開発を行い、文革の混乱の最中に初の衛星・東紅1号を打ち上げてきたのが中国という国であった。

まさしくあの時代に社会の空気が似てきた習近平政権時代において、経済よりも民生よりも宇宙開発に国家の関心と財力が注ぎ込まれるのは全く不思議ではない。中国は国家が貧したときほど、こういった国家大事業によって人民に党に対する求心力を生もうとした国なのだ。経済や社会が荒れたときほど、民生や経済ではなく宇宙開発を含む軍事・国防の強化に一番のプライオリティを置き、国外の敵を想定することで、人民の不満の矛先を外側に誘導することに成功してきた国である。

中国宇宙開発事業60周年記念日に際し、中国航天科技集団董事長の雷凡培が新華社のインタビューにこう語っている。

2024年、唯一の宇宙ステーション保有国に

「目下、我々の宇宙開発能力は国際先進レベルの指標の三分の一ぐらいにある。有人宇宙船、月面探査などの主要技術指標についてはすでに国際先進レベルに到達しているだろう。あともう少しの時間をかけて、2025年には宇宙強国の目標を達成できるだろう。…中国の宇宙技術は買ってきたものでも、人から与えられたものでもない。自主独立で艱難辛苦の奮闘を経て、いくつもの挫折を経験しても、這い上がるようにして作り上げてきた。だから西側先進国の宇宙大国とは違う道を行く」

「宇宙ステーションについても、米国は経済的理由でできなくなり、欧州も日本も諦める中、中国だけがその科学的価値を認めて、やり続ける。…2024年で国際宇宙ステーション(ISS)の運用が終われば、中国だけが世界で唯一宇宙ステーションを保有する国家になるのだ」

中国の宇宙覇権への野望はもはやはったりではない。果たして中国経済がその野望を最後まで支え切れるのか、という点についてはいろいろ意見の分かれるところかもしれないが、いかなる犠牲も失敗も意に介さずひたすら天空を目指す中国の本気を、日本も米国も決して侮れるものではないということはしっかり認識しなくてはならないだろう。

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