『「悪手」を重ねる朴槿恵 保守の最後の勝負手は戒厳令?』(11/7日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『韓国野党が朴大統領に辞任を要求しない理由』(11/7日経ビジネスオンライン 重村 智計)について

韓国の今回の騒動は裏で北が動いたのではと感じます。米軍の先制攻撃・金正恩の斬首作戦を阻もうとしたのでは。でも崔順実の件が、今まで漏れなかったのに、ここにきて急にというのは、政権内部に裏切り者が居て、ここぞと言うときに暴露するように温めていた気がします。重村氏の記事によれば、朴大統領から崔順実に情報流出していたたことが何故わかったかと言うと、「JTBCは、崔順実氏のパソコンかタブレットを入手し、事実を確認したと伝えられるが、入手方法が正当なものだったのかどうかには疑問が指摘されている。」とあります。崔順実に近づける誰かが別の媒体にダウンロードしてリークしたと思われます。確かに不通大統領で誰も信用せず、近づけない人間からの情報窃取は難しいでしょう。崔順実側から漏れたと思います。まあ、告げ口外交を世界に向けてやってきた咎めが出たのでしょう。

日本はこれ幸い、日韓通貨スワップもGSOMIAも止めた方が良いでしょう。今でも世界に慰安婦像を建て、日本の名誉を貶めようとしている輩です。こんな国を助ける必要はありません。日本にとっては、中国同様敵国です。『非韓三原則』で臨むのが正しい道です。若者の日本での就職も認めないでほしい。反日教育が刷り込まれた若者は靖国神社の爆弾魔や放尿事件犯など、神をも畏れぬ不逞の輩が沢山入ってくることを意味します。逆に日本に残っていて反日活動をしている在日には帰還して貰った方が良いと国民の多数は思っているのでは。

流石、火病の国で、大統領に対し糞も味噌も一緒くたの非難ですが、崔順実の娘の私立・梨花女子大学の入学ルールを変えての入学は問題ないと考えます。日本の私立大学だって運動選手の推薦入学はあります。学力だけを基準にした選考だけが正しいと言う訳ではありません。問題は崔順実の財団を作って企業から強制的に金を集め、それが娘の教育資金になったという所でしょう。妬み・嫉み・僻みの三大イジケ体質を持つ韓国民ならではの特徴ですが、冷静になれば分かることなのに、国民情緒が優先されます。一所懸命勉強している学生には金持ち優遇と思われるでしょうが、正当に稼いだ金で子女の教育にお金をかけるのは正当な行為です。それこそ資本主義の在り方そのものですので。逆に中国の共産党支配で、権力者の子弟は権力によって名門大学に入学可能です。「紅二代」と言われ、世襲で大学入学ができるという事です。習近平などその典型。この一例を見ても、資本主義と共産主義とどちらが健全か分かるでしょう。韓国民は北の影響を受け過ぎていて、共産主義の本質的に持つ恐ろしさが見えていないようです。

室谷克実氏は、11/4ZAKZAK記事で、朴大統領は崔順実を早く立件させて刑を確定し、クリスマス恩赦で、落着させようと考えているとのこと。姑息なやり方としか思えませんが、「他国の悪口を平気で言える」人間だから、「他人が自分をどう思うか」については考えが及ばないのでしょう。所詮、韓国民の代表だけあります。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20161102/frn1611021848011-n1.htm

鈴置記事

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「朴槿恵退陣」のプラカードを手にソウルのデモに集まった人々(写真:ロイター/アフロ)

韓国という旅客機の乗客が、パイロットを変えろと大騒ぎだ。操縦席にはまだ大統領が座っているようだが、意識があるかは不明だ。いつまで韓国が正常に飛び続けるかは誰にも分からない。

1週間で4倍に膨れたデモ

—11月5日にもソウルで朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の退陣を求める大きなデモがありました。

鈴置:参加者数は主催者発表で20万人、警察発表で4万人強。その間を取るように、保守系メディアの多くは10万人と報じました。

その1週間前の土曜日、10月29日のデモの参加者数は主催者発表で3万人、警察発表では1万人強でした。4倍以上に膨れ上がったことになります。

—朴大統領は2度も国民に謝ったのではありませんか?

鈴置:ええ、10月25日に続き11月4日にも国民向けの談話を発表しました。テレビも中継する中、40年来の友人である崔順実(チェ・スンシル)氏への情報流出に関し国民に頭を下げました。

でも、いずれの謝罪も火に油を注ぐ結果となりました。10月25日の1回目の謝罪はたった90秒間でした。記者からの質問も受け付けなかったので「誤魔化し」と受け止めた韓国人が多かった。

2回目の11月4日の謝罪は9分間に延長しました。自らの捜査に応じるとも大統領は明言しました。が、やはり記者の質問は受け付けませんでした。国民の声に耳を傾けない「一方通行の指導者」との不満をますますかき立てました。

それに検察の捜査が本格化し、世間の関心は崔順実氏が財界に巨額の「強制的寄付」を要求していた事件に移っていたのです。

メディアが「(強制的な寄付に関しては)大統領の指示を受けた」との青瓦台(大統領府)元・高官の発言を報じていた。

というのに2回目の談話で大統領は「特定個人が利権をむさぼり、違法行為まで犯していた」とまるで他人事のように述べ、新たな国民の怒りを呼びました。

「国政壟断事件」の動き(2016年)
10月
24日 JTBC、大統領演説の草稿など機密資料が崔順実氏に漏えいと報道
25日 朴大統領が資料提供を認めて国民に謝罪
   
26日 検察が崔氏自宅など家宅捜索。外交資料なども漏洩とメディアが報道
28日 朴大統領は首席秘書官全員に辞表を出させる。秘書室長が辞表提出
28日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率が6週連続で落ち、過去最低の17%に」と発表
29日 青瓦台、検察の家宅捜索を拒否。ソウルで1万人強の退陣要求デモ
30日 青瓦台、検察に資料提供。朴大統領は一部首席秘書官らを辞任させる
30日 与党、挙国一致内閣を提案するも野党は真相究明が先と拒否
30日 崔順実氏帰国、31日に検察に出頭、逮捕状なしで緊急逮捕
31日 リアルメーター「潘基文氏の支持率が前週比1.3ポイント低い20.9%に」
11月
2日 朴大統領、首相を更迭し、後任に盧武鉉時代に要職を歴任した金秉準氏を指名
2日 野党各党、新首相の就任に必要な国会聴聞会を拒否することで一致
2日 検察、安鍾範・政策調整首席秘書官を緊急逮捕
3日 検察、崔順実氏を逮捕。容疑は「安鍾範氏と共に財閥に寄付を強要した」職権乱用など
4日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率は過去最低の5%、不支持率は89%」と発表
4日 朴大統領「検察の捜査受ける」と国民向け談話。野党は「退陣要求運動を展開する」
5日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
6日 禹柄宇・前民情首席秘書官が検察に出頭

※注 デモの参加者数は警察発表

時局認識が安易か無知だ

—朴大統領は首相も交代させましたが。

鈴置:11月2日に首相を更迭し、後任に金秉準(キム・ビョンジュン)氏を指名しました。左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代(2002―2008年)に副首相という要職を歴任した人なので、野党も受け入れると判断したのでしょう。

しかし、この人事も野党に攻撃材料を提供しました。与党、セヌリ党は「共に民主党」や「国民の党」など野党に対し「挙国中立内閣を作ろう」と持ちかけていました。

そこに突然、朴大統領が相談もなく新首相を指名したわけで、野党はさらに硬化しました。首相任命は国会の同意事項です。2016年4月の総選挙でセヌリ党は少数与党に転落しています。もともと野党への根回しなしに首相交代は不可能なのです。

東亜日報のホ・ムンミョン論説委員は「朴大統領は朴志晩(パク・ジマン)氏から会え」(11月4日、韓国語版)で以下のように書きました。

  • 金秉準首相の内定は順番を間違った。大統領がまず率直に(真相を)解明し、離党した後に与野党の代表と会って挙国内閣を前提に2、3人の複数候補の推薦を得て1人を選ぶという手順を踏めば、収拾の道が開けたであろうに。
  • 大統領の時局認識が安易なのか、あるいは無知なのか、理解できない。

恐慌状態の大統領

—なぜ、朴大統領は事態を悪化させる手ばかり打つのでしょうか。

鈴置:ホ・ムンミョン論説委員は同じ記事で、以下のように分析しています。

大統領が国民の期待とは正反対の方に行くのはなぜだろうか。何といっても家族が一番よく知っている。実弟の朴志晩氏と親しい知人から聞いた同氏の話は以下だ。

「崔順実氏がいない今、姉は精神が恐慌状態に陥っている。崔氏から(朴槿恵氏を)引き離すため10年かけたが失敗した」。

40年来の友人、崔順実氏だけではありません。10月28日から30日にかけて朴大統領は側近の全て――秘書室長や首席秘書官、それに国会議員時代から仕えていた秘書官を辞めさせる羽目に陥りました。

大統領が率直に相談できる人はどこにもいなくなったのです。難局の中、政権がどこに向かうのか、誰にも予測がつきません。

—孤立無援ですね。

鈴置:文字通り、そうなのです。野党は「水に落ちた犬を叩け」とばかりに「とにかく真相解明だ」と叫びます。「朴槿恵の悪行」が明るみに出るほどに、次の大統領選挙で野党が有利になるからです。

退陣60日以内に投票

—その選挙はいつですか?

鈴置:任期満了なら2017年12月。もし、任期途中で大統領が退陣すれば、退陣の60日以内です。仮に2016年11月末に退陣すれば、2017年2月末か3月初めに投票となります。

次期大統領に関するアンケート調査では、与党から出馬すると思われていた国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏がほぼ一貫してトップを走って来ました。「世界の大統領」を歴任した功績からです。

でも、国連事務総長の任期は2016年末まで。選挙が約1年も前倒しになり来年早々に投票となれば、潘基文氏はろくに選挙運動もできません。

それに、この人は朴大統領と近い関係にあると見られてきました。崔順実氏による「国政壟断事件」によって「朴槿恵の悪行」が明るみに出ると、さすがにダメージが大きい。最近のアンケート調査で、野党候補に人気で追いつかれました。

調査会社の「リアル・メーター」が10月24―28日に聞いた世論調査では、潘基文への支持率は20.9%と1カ月で6.5%ポイント落ちました。文在寅(ムン・ジェイン)前「共に民主党」代表の20.3%とほぼ並びました。

「孤立無援」と言えば、検察もそうです。当初はこの事件の捜査に及び腰でしたが、1回目のデモが起きた10月29日ごろから急にやる気を見せ始めました。

国民の怒りが検察にも向いたからと思われます。それに、いつまで朴政権が持つか分からなくなったのです。死に体の大統領より、次の政権を取りそうな野党の顔色をうかがう方が、組織と自分たちを守る「正しい」行動です。

違法デモに感謝した警察

—警察もデモを厳しく取り締まらなくなったとのことでした。

鈴置:左派系紙のハンギョレは、10月29日の1回目のデモで「朴退陣の主張に共感した機動隊」を報じました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

保守系紙の朝鮮日報も「変化した警察『国を愛する皆様のお心を理解します』」(10月31日、韓国語版)で「警察の変身」を伝えました。ポイントを要約して翻訳します。

  • 「尊敬する市民の皆さん、国を愛する皆さんの気持ちは十分に理解します」――。29日午後8時30分頃、ソウル・光化門付近の6車線を占領したデモ隊に対し、ホン・ワンソン鍾路警察署長が解散を要求し、こう述べた。
  • この日、デモ隊は届け出ていたルートを変更し、光化門付近を違法に占拠して警察と対峙した。これは明白な集会デモ法違反である。が、警察の現場幹部は「人道に上がってほしい」と何度も放送しただけで、従来とは異なり放水銃は使わなかった。
  • 翌30日、ソウル地方警察庁は報道資料で違法行為には言及せず「市民の皆さんも警察の案内に従い、理性的に協力してくださったことに感謝申し上げる」と感謝を表明した。

次の土曜日にもデモ

—11月5日のデモではどうだったのですか?

鈴置:警察は集会は許可しましたが、デモ行進は不許可としました。しかし主催した左派団体はソウル市内の大通りを行進させました。というのに、今回も警察は阻止しませんでした。家族連れが目立つ「おとなしいデモ」だったこともあります。

警察は、支持率が5%、不支持率が89%の大統領に対する退陣デモを「弾圧した」と批判されたくないのでしょう。これらの数字は11月第1週の韓国ギャラップの調査結果です。

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一方、左派団体は11月5日に続き、12日にも大規模なデモを計画しています。「おとなしいデモ」により参加人数をさらに増やし、政権により圧力をかける方が得策と計算しているはずです。戒厳令を引き出すような過激な行動は、とりあえずは避けると思います。

外交と国防にしがみつく朴槿恵

—そう言えば、保守運動の指導者である趙甲済(チョ・カプチェ)氏が「朴槿恵大統領が下野するか、あるいは戒厳令でデモを抑え込むか、との状況になりかねない」と指摘しました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

鈴置:2回目のデモの最中、趙甲済氏の主宰するネットメディアに「戒厳令」を準備すべきだと主張する記事が載りました。書いたのは「ヴァンダービルド」の筆名で縦横に論じる外交・安保の専門家です。

刀を振りかざす相手には、同じように真剣で対さねばいけない」(11月5日、韓国語)の一部を翻訳します。

  • 朴槿恵大統領は今後、総理に強い権限を持たせて内政を任せる一方、自分は外交と国防を担うとの構想を持っているようだ。だが、そうなれば左派は「崔順実騒動」を煽った甲斐がない。
  • 韓米日の協調強化、北朝鮮の金氏体制崩壊への動き、北朝鮮への先制攻撃、韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、文在寅氏の北朝鮮とのつながりの追及など(左派にとって)危険な政策を無力化しようと狙ったのに、朴大統領が安保・外交を引き続き担うとすれば失望するしかない。
  • 一方、朴大統領は「崔順実事件」が完全に究明されていないというのに、白旗を掲げて投稿するように一方的に譲歩している。側近を処理し、核心ポストに野党系の人を指名した。捜査にも応じるとした。国民にも謝った。卑屈に見えるほどの譲歩だ。

下野闘争には戒厳令

—ヴァンダービルド氏にすれば「卑屈な譲歩」なのですね。

鈴置:当初、韓国には「上手に立ち回れば、首相の交代ぐらいで事態を収拾できる」と見た人も多かったのです。韓国では譲歩すれば「弱い」と見なされ、さらなる譲歩を迫られます。

ここまで下手を打ち続けて国民の怒りを買うと、政権としては打つ手がありません。大統領をかばうメディアもありません。左派系紙はもちろん、保守系紙も一様に大統領批判を強めています。

少しでもかばえば、国民から「御用メディア」と批判されるからです。さて、ヴァンダービルド氏の記事の続きに戻ります。

  • これだけ大統領が譲歩したというのに、今後も「下野(げや)闘争」が続くというならば、ある種の不純な意図――国防や外交の権限まで掌握した後に「左旋回」しようとの意図が鎧の下にあると見るほかはない。
  • もし、この目的のために今後も騒乱と混乱が続くなら、朴大統領は憲法で保障された緊急措置権の発動を準備すべきだ。国会の承認など面倒な手続きを考えると、緊急措置権の中で「警備戒厳令」が最も現実的な選択肢だ。

—戒厳令ですか。

鈴置:準備しておけ、との主張ですがね。ちなみに「警備戒厳令」とは敵との交戦状態にない場合に発動する「戒厳令」です。軍が公共の安寧秩序を維持するという点では、交戦状態下の「非常戒厳令」と同じです。

カブスだって逆転優勝

—本当に戒厳令まで行くのでしょうか。

鈴置:それは分かりません。もう一度言うと、ヴァンダービルド氏も「準備すべきだ」と言っているだけです。

この人も、戒厳令を布くような状態になると考えているというよりも、そんな状態になるのが保守政権の最後の生き残りのチャンス、と考えている感じです。

なぜなら「戒厳令」の記事と同じ11月5日に、朴大統領に対し「堂々と左派に立ち向かえ」と求める「大統領が国を売ったというのか? なぜ、下野しろと騒ぐのか」(韓国語)を書きました。その最後の1文が以下なのです。

  • この世界は様々の逆転勝ちの記録に溢れている。シカゴ・カブスは1勝3敗の崖っ縁の危機から3連勝し、劇的にワールドシリーズに逆転優勝した。こんなことはスポーツだけに起きるのではない。そして韓国に起こらないという法は絶対にない。

ヴァンダービルド氏も、朴大統領が何とか政権を維持できるのはシカゴ・カブスの逆転優勝並みの確率と見ているのでしょう。

計り知れない大統領の心

左派もこのまま行けば朴政権は自滅すると考えています。これも先ほども言いましたように、左派としては戒厳令などを引き起こす過激なデモは、今のところは避けた方が得策なのです。

左派の作戦は、とにかくデモの参加人数を増やして大統領への圧力を高める。そのためにも検察のお尻を叩いて「朴槿恵の悪行」を暴かせる。それを左派系メディアが煽れるだけ煽る――だと思います。

—結局、今現在は戒厳令の可能性は低いということですね。

鈴置:その通りです。ただ注目すべきは、朴槿恵大統領には相談する相手がもういないことです。孤独な大統領がどんな判断を下すかは予測不能なのです。

(次回に続く)

重村記事

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国民へのお詫びを表明した朴槿恵大統領

朴槿恵大統領を巡るスキャンダルで、野党第一党の「共に民主党」はすでに権力を手にいれた気分だ。与党のセヌリ党は茫然自失の状態で次期大統領候補を誰にするか、その見通しも立たない。政治は、外交も内政も機能停止状態に陥っている。

日本では理解されないが、背景には左翼勢力と保守勢力との歴史的な両極対立がある。政権末期に大統領スキャンダルが噴出する「韓国病」と、「儒教的後進政治」がもたらす悲劇である。

ただし、野党指導者らは朴大統領に「即時退陣」は要求はしていない。同大統領が辞任する可能性は、極めて低い。

今、大統領選にしても得はない

朴槿恵大統領の政治力不足が今回の混乱を招いた第一の原因であると、韓国のジャーナリストや政治家、政府高官経験者は指摘する。

韓国では、朴大統領を「不通(話が通じないの意味)大統領」と呼ぶ。記者会見をせず、支援しようとする元老たちを近づけず、忠告も聞かない。閣僚や大統領府の側近も、世間から尊敬を得られる一流の人物ではなかった。

朴大統領を支持する保守派も「人の話を聞かず、適切な人事もできない」と批判した。支持率は17%から5%へと下落した。大統領を支持する保守勢力は、選挙では40%もの固定票を集めるにもかかわらずだ。ただし、その一方で、大統領に「なお留まるべき」との回答は45%もあった。

ソウルでは5日夕、朴大統領の「辞任」を要求する大集会が開かれた。参加者は10万人を上回ると予想されたが、警察の発表は約4万5000人で予想を大きく下回った。

予想がはずれた背景には、野党の指導者たちが「朴大統領に直ぐに辞任してもらいたい」とは思っていない事情がある。奇妙なことに、野党指導者は、誰も朴大統領の辞任を要求していない。「国政から手を引け」と言うだけだ。

「国政から手を引け」は、辞任を意味しない。その真意は、大統領職にとどまってもいいが、野党も参加する「挙国一致内閣」や「中立内閣」を組閣せよということ。実権を野党が行使する体制を築けという意味だ。

なぜ、野党指導者らは「即時辞任」を要求しないのか。彼らは、混乱する内外政策や困窮する国民への関心は薄い。韓国は、北朝鮮の脅威と経済後退に直面し、多くの対応を迫られているが、政策論争と政策協調はない。それより大事なのは、自分が大統領に就任し、5年の任期と権力を手に入れることだ。

もし大統領が辞任すると、60日以内に大統領選を行う規定になっている。現時点で、大統領選への準備ができている野党政治家は、野党第1党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)元代表だけだ。他の野党指導者は、まだ準備不足で「大統領の即時辞任」は困るのである。

また60日以内に大統領選挙をしても、後任大統領の任期は、朴大統領の任期の残りでしかない(2018年2月まで)。これは、文在寅元代表にとっても好ましいものではない。

だから、左翼勢力が主催する集会の参加者が朴大統領の「辞任」を叫んでも、野党指導者たちは乗れないのである。2017年末の大統領選挙までは朴大統領の力を奪うだけにとどめ、大統領選挙できちんと勝利する作戦だ。

中央日報オーナーを保守の大統領候補に

韓国のケーブルテレビJTBCは10月下旬、朴槿恵大統領の長年の友人「崔順実(チェ・スンシル)=女性」容疑者が大統領の演説文を手直しし、政治に介入したと報じた。これが国を揺るがす大スキャンダルへと発展した。

崔順実氏のスキャンダルについては、以前から噂が絶えず、多くのメディアが取材を進めていた。JTBCは、崔順実氏のパソコンかタブレットを入手し、事実を確認したと伝えられるが、入手方法が正当なものだったのかどうかには疑問が指摘されている。

実はJTBCは、サムスン財閥系の中央日報紙の系列にある。JTBCニュース部門出身の社長は左翼勢力の有力者として知られている。

韓国は、先進国では唯一、大きな左翼勢力が依然として存在する国だ。韓国の左翼とは、北朝鮮に強いシンパシーを抱き、支持する人たちを意味する。民主労組や教員組合がその中心組織だ。金大中元大統領と盧武鉉大統領を支持した勢力でもある。

このため、JTBC報道の背景について、「中央日報紙オーナーが大統領選挙に出馬するため」、および、窮地に陥った「共に民主党」の文在寅元代表を救出するため、とのストーリーが韓国の政界通の間では語られる。

実は文在寅元代表は、盧武鉉(ノムヒョン)大統領の秘書室長として、国連における北朝鮮人権決議採択への「棄権」を決めた。北朝鮮の意向を聞いた上での行動だった。この事実が10月初めに明らかになった。韓国の元外相が、回顧録で暴露したのだ。

文在寅元代表は、このスキャンダルについて他の野党から批判され、窮地に追い込まれた。この状況を変えるため、崔順実スキャンダルを左翼勢力が報じたというのだ。実際、文在寅元代表のスキャンダルは忘れ去られてしまった。

崔順実スキャンダルをスクープしたJTBCの親会社「中央日報」のオーナーは、大統領選に出馬する意向を、有力者たちに以前から打診していた。このため韓国の新聞・テレビ業界は次のように指摘している――政局が混乱し与党セヌリ党に候補者がいなければ、このオーナーにチャンスが巡ってくる。

サムソン財閥の系列に連なるJTBCとの報道合戦で、朝鮮日報紙は「サムソン財閥が数十億円もの巨額の資金を、崔順実の財団に振り込んだ」と報じた。

崔親子は朴槿恵大統領にとって家族と同様

崔順実氏について、同氏の父親が霊感を持つ宗教家で、学生だった朴槿恵氏に取り入ったと報じられている。韓国では、祈祷師の占いに頼る宗教伝統や社会慣習が今でも存在する。儒教的なジャーマニズムが影響力を持つ社会なのだ。このため、朴槿恵大統領も崔親子のシャーマニズムに頼った、とのうわさが広がった。

実は、朴槿恵大統領が父親を失った約37年前、朴槿恵氏を支え支援する人はほとんどいなかった。父親の朴正煕・元大統領の側近たちは皆逃げ出し、同元大統領について新聞紙上や会見、回顧録でウソの証言を語った。

朴正煕・元大統領は資産をほとんど残さなかった。その時代に、朴槿恵氏の生活を金銭面で支えたのが崔親子だった。朴槿恵氏が、外出もできず生活苦に直面した時代に生理用品まで届けたといわれる。それだけに朴槿恵大統領は崔順実氏を信用し、大統領府への頻繁な出入りも認めたのだろう。朴大統領には、人に裏切られた時代のトラウマが強く残っており、人を簡単に裏切る政治家や官僚、ジャーナリストを信用しないと言われる。

韓国大統領制が生み出す悲劇

朴大統領が新たに首相に指名した金秉準(キム・ヒョンジュン)国民大教授は、大方の人に評価され、尊敬される人物だ。野党は国会での承認を拒否する方針だが、拒否すると世論の風向きが変わるかもしれない。

韓国社会は「近くの他人より、遠い親戚」を信用する社会である。日本人のような「遠い親戚より近くの他人」の考えはない。家族と親戚の結束が日本人には理解できないほど強い。だから、企業のオーナーは家族や親戚を役員にし、親戚を幹部に登用する。このため、大韓航空やロッテ、ハナ・グループなど財閥オーナー家族のスキャンダルが後を絶たない。朴大統領は実の兄弟と縁を切っており、崔順実は唯一の家族というべき存在だった。

大統領も同じで、家族を優先する。このため、ポストや利権にあずかろうとする人々が、大統領の夫人や息子、兄弟の元に、賄賂を手にして群がる。頼まれた家族が、大統領に話をつなぎ、大統領もそれを受け入れる。こうして政権末期になると、歴代大統領の家族は逮捕され、大統領本人も任期終了後に裁判にかけられてきた。

朴正煕・元大統領はこうした韓国の政治文化を強く警戒し、大統領の家族や親戚を監視する部局を大統領府に設けた。だが、その後の大統領は、この組織を機能させなかった。

後進国の大統領制は、民主化という名の下に独裁が行われる危険を抱えている。司法、立法、行政の三権が大統領に集中しがちだからだ。米国の大統領制のように三権が分立しチェック機能が働くシステムは、長い時間をかけないと確立できない。

朴槿恵大統領のスキャンダルは、同大統領個人の問題を超えて、韓国政治の後進性を露呈した。法律的には、「職権乱用」と「詐欺未遂」の犯罪でしかない。それなのに、大統領が汚職を行なったかのような大騒動になっている。韓国民の感情が優先されている。

韓国の大統領職は「王様」の気分に浸り、周りもそう扱いがちだ。韓国の指導者は、自分を犠牲にして貧しい国民を救う気概がないと成功しない。韓国語には、指導者に対して「王様と恩師、父親」の三位一体の役割を期待する「君師父一致」のことわざがある。しかし、歴代大統領や朝鮮王朝時代の王様に、貧乏な国民を救い、国家と国民のために犠牲となった指導者が何人いたのだろうか。韓国の指導者と政治家に歴史が問いかける、終わりのない質問である。

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