iRonna 呉善花『呉善花「反日」という「バカの壁」からの脱出』について(『別冊正論』)

北のテロの噂で韓国も慌てふためいています。開城(ケソン)からの撤退もそのためのようです。まあ、火病持ちの同じ民族同士で勝手にやってほしい。日本に向くことのないように。韓国もあれだけ日本を貶め続けてきて、困ったときだけ日本に擦り寄らないように。儒教国家とか言われますが、信義に悖る行為しかしてこなかったでしょう。

国連人権理事会で外務省高官が、慰安婦の説明をした道筋をつけたのは杉田水脈女史(次世代の党・前衆院議員)です。メデイアでは報道されませんが。杉田氏も国連人権理事会に行っていました。状況を2/17杉田水脈女史のFacebookより紹介します。左翼が組織の金を使ってわざわざ日本を貶めるための工作をしに行くのですから。共産党から金が出ているのでは。中国共産党からかもしれません。世界に訴えるのに日本人が言った方が信用が得やすいと考えているかも。

「【日本国の恥晒し】 委員会から一夜明け、これから帰国します。いつも仕事は自分との戦いだと思ってやってきましたが、今回は違いました。目の前に敵がいる!大量の左翼軍団です。 大型連休でもない、また観光シーズンでもないこの時期にスイス・ジュネーブに100人を超す日本人が訪れるのはやはり異様です。彼らは街でも、レストランでも、ホテルでも、国連の中でも一目でわかります。

ハッキリ言って“小汚い” なんでこんなにきたない人ばっかりで集団を作れるのか不思議です。 曲がりなりにも国際会議です。近所のスーパーに買い物に行くのとはわけが違います。(私は近所のスーパーに行く時でもあんな格好はしませんが)「場をわきまえる」という日本人なら誰でもできることができていないのです。 我々はみんな各自でフライトやホテルを予約して、現地集合です。(あっちはツアーで来ているのか、胸にバッチを付けています。そういうツアーを専門的に請け合うところがあると優美子さんに聞きました。そこからして規模が違う。)今回も一人でお気に入りのホテルに泊まっていたのですが、朝食のレストランに行くと、それらしい集団が居て、ジロッと一斉に睨まれる。私は左翼活動家の名前も顔も一切知りませんが、向こうは知っているかもしれません。さすがにゾッとしました。 レストランでも我々が食事をしていると近くのテーブルにそれらしい団体が座ります。その途端、話を中断しなければいけません。 国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります。そんな中、唯一見たことがある方を発見しました。糸数慶子参議院議員です。確か今は国会会期中のはず。不思議に思って名刺交換をして少しお話しを伺いました。そのことは今度詳しく書くとして、国会議員が在特会なんかと写真に写ると大問題になるのに(在特会のことは全く支持しませんが)、左翼活動家と写真に写っても何の問題にもならないなんて、おかしな世の中です。左翼活動家の方が暴力的で危険ですし、共産党員は公安の監視対象です。 委員会終了後、彼らが記者会見をするというので聞きに行こうとしました。日本政府の発言を受け、どんな反応かを知りたかったのです。 でも、近寄ろうとすると大勢の人間に囲まれました。辺野古の時と同じです。 「あなた、杉田さんですよね。(やっぱり知っている!)こっちに来ないでください。」 「どうしてですか?皆さん、多くの人に知って欲しくて記者会見するんですよね?私は一般市民です。聞かせてください。広く広報したいのに一般市民に聞かせないなんて矛盾していませんか?」とお願いしてみました。 「駄目です!あなた、杉田水脈でしょ!来ないでください。」と、人間の壁を作られてしまいました。 とにかく、同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなるくらい気持ち悪く、国連を出る頃には身体に変調をきたすほどでした。 とにかく、左翼の気持ち悪さ、恐ろしさを再確認した今回のジュネーブでした。 ハッキリ言います。彼らは、存在だけで日本国の恥晒しです。」

次は外務省の杉山審議官の国連人権理事会でのスピーチです。2/18藤岡信勝氏のFacebookから。国連は英文の質疑を公表しないと言っているとのこと。これを英訳して送ることも考えれば良いと思います。流石鼠男潘基文が事務局トップの組織だけあります。日本も分担金削減、通貨スワップはしないことも明言して脅さないと。いい子でいたら舐められるだけ。

「【国連女子差別撤廃委員会 2016年2月16日午前】 アイテム9 慰安婦関連質疑応答 マイスター委員(Australia)  次に慰安婦問題です。私の専門家としての立場を言う時間はありませんけども、人権の違反であります。これは被害者が納得のいく結果にならなければなりません。  1993年から人権、これは人権の会、国連の会議がウィーンで開催されました1990年以来、常にこれは国際的政治的議題になっていました。オーストリア政府、北京の代表として1995年にまいりました。2014年に日本のオーストリアの大使館からブリーフィングを頂きました。  そこで質問です。法的なステータス、2国間の合意が日本と韓国の間でみられました。それに関してどうやって実施されていくのか、コメントをお願い致します。  日本の義務は国際人権法の中でどうなっているのでしょうか。他の国の被害者、例えば中国の被害者等に関して、フィリピンの被害者等に関して如何なのでしょうか。また、どうやって勧告、いくつか最終形態の本委員会のものをどうやって行っていかれるのでしょうか。  その他の国連の勧告に致してもそうです。特に本委員会が2009年に行った勧告ですけれども、そこでは補償、それから加害者の警察の訴追、それから日本の軍当局などに関してこれらが必要だと申しました。  また、歴史の教科書の改訂も含めてどうなっているのか。あと、被害者中心のアプローチ、それから完全な形で賠償も行って、そしてお詫びも行う、完全なリハビリテーションを行うということ、どうなっているのか、これをお聞かせ頂きたいと思います。   杉山晋輔外務審議官(日本政府団・団長)  有り難う御座います。マイスター委員、慰安婦問題に関して言及いただきまして有り難う御座います。   まず、私としましては、冒頭ステートメントに加えまして、書面での回答を頂いたLOI(List of Issues) に対して行っております。そこに添付致しましたのが、先ほどゾウ主査から言及がありました日韓合意に対しての文章です。   これは昨年の12月の文章となります。回答に先立ちまして、重要な点について、私のほうから説明をさせて頂きたいと思います。日本語で申し上げます。  えー、これまで、えー、申し上げたことに加えて、次の通り、主要な点、重要ですので、えー、口頭で申し上げます。  まず、書面でも回答した通り、日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治外交問題化した1990年代初頭以降、えー、慰安婦問題に関する本格的な事実調査を行いました。しかしながら、日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲による、いわゆる強制連行と言うものを確認するものは、確認は、出来るものはありませんでした。  慰安婦が強制連行されたという見方が広く流布された原因は、1983年、故人になりました吉田清治氏が、『私の戦争犯罪』という本、刊行物の中で吉田清治氏自らが日本軍の命令で韓国の済州島において大勢の女性狩りをしたという虚偽の事実を捏造して発表したためであります。  この書物の内容は、当時大手の新聞社の一つである朝日新聞社により事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも大きな影響を与えました。  しかしながら、この書物の内容は後に複数の研究者により、完全に想像の産物であったことが既に証明されています。それが証拠にこの朝日新聞自身も、2014年8月5日及び6日を含め、そのあと9月にも、えー、累次にわたり記事を掲載し、事実関係の誤りを認め、正式にこの点につき読者に謝罪をしています。  また、20万人という数字も具体的な裏付けがない数字であります。 朝日新聞は2014年8月5日付けの記事で、女子挺身隊とは戦時下の日本内地や旧植民地の朝鮮、台湾で女性を労働力として動員するために組織された『女子勤労挺身隊』を指す。目的は、労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別だ。としたうえで、「20万人との数字の基になったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、ここで言う慰安婦を誤って混同したことにある」と自ら認めているのであります。  尚、性奴隷といった表現は、事実に反します。日韓両政府間では、慰安婦問題の早期妥結に向けて真剣に協議を行っていたところでえ~、ありますが、先ほど申し上げたように昨年12月28日にソウルにて日韓外相会談が開催され、日韓外相間で本件につき妥結に至り、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることが確認をされました。  同日午後、日韓首脳電話会談が行われ、両首脳はこの合意に至ったことを確認し、評価をした次第であります。冒頭申し上げましたように、この時の日韓合意を表す資料は、書面の回答に添付されておりますので、ここでその内容の詳細を繰り返してご説明する事はしません。  日本政府はこれまでも、アジア女性基金などを通じて、本問題に真剣に取り組んでまいりました。今後、したがって韓国政府が、えー、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算、えー、10億円程度でありますが、資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しのための事業を行う事となっております。  現在、日韓両国政府は、それぞれ合意内容を誠実に実行に移すべく取り組んでいるところであり、この点は現時点でも全く変わりはありません。このような日韓両国政府の努力につき、国際社会のご理解を頂けると大変有り難く思います。ちなみに潘基文国連事務総長を含め国際社会は、日韓両国が合意に達したことに歓迎の意を表明していると承知をしています。  もう一点だけ、最後に付け加えます。  えー、今、ご質問を頂いた、えー、ホフ・マイスター判事は、他の国の例もお上げになりました。先の大戦にかかる賠償並び財産及び請求権の問題について、ご指摘になられた点も含め、日本政府は、米英仏等45カ国との間で締結したサンフランシスコ平和条約、それだけではなくて、その他の2国間の条約など、えー、これは、えー、日韓請求権経済協力協定も含みますし、日中の処理の仕方も含みます。  えー、こういった、あー、あー、あー、ものによって、ここでこれらをいちいち説明することはしませんが、誠実に対応してきており、これらの条約等の当事者との間では、個人の請求権の問題を含めて、法的に解決済みだというのが日本政府の一貫した立場であります。  最後に一言。えー、にも拘わらず日本政府は、えー、アジア女性基金をえ~、構築し、えー、我が国の予算からの拠出と一般からの募金によって、一定の活動をしたという事も、えー、説明すると、きちんと説明をすると長くなりますので、ここでアジア女性基金の詳細については説明しませんが、おそらく、ここにおられる各委員の皆様はその内容をよくご存じだと思いますので、その点だけ付言をして、私の答えにさせて頂きたいと思います。どうも有り難う御座います。  フォローアップ質問 ゾウ委員(主査) (※実際には、この様な口調では無くかなり無礼なしゃべり方でした。)    私は、日本の団長の発言に対して非常に不満を覚えます。一切許容出来ない発言でございました。歴史は歴史です。誰も歴史を変えることはできません。歴史的な事実については、70年前であってもそれを変更することはできません。  いただいた発言の中では、日本政府の立場として、矛盾をしているということが分かりました。慰安婦の問題を否定なさいました。一方で、日韓の合意が成立したことに関しては、これを歓迎していると仰っていました。もし、慰安婦の問題が無いのであれば、なぜ韓国との間に合意を形成する必要があったのでしょうか。  そして、93年の河野証言に於いて、93年に於いて、官憲そして軍が何万人という韓国の慰安婦の採用に携わったと、動員に携わったという事が、なぜ表現されたのでしょうか。  もし、日本政府が慰安婦問題に関しては、既に完全に解決されているとお考えなのであれば、そして安倍首相がまた、謝罪の意を表されたということであれば、時の政府が誠実な対応をとるのであれば、全ての慰安婦の女性に対して日本が首相の書面での手紙を送付するべきではありませんでしょうか。 70年間にわたって苦しまれた女性に対しての謝罪の手紙を、全て、生存されている慰安婦の女性に対して送付すると共に、加害者の訴追が必要となるのではないでしょうか。これは人権規約そして国際社会に於いて求められているものです。   もし、こういった事を否定されるのであれば、なぜそのUPIの勧告に基づいて教科書に慰安婦の問題を含めるということに関しても、対応されないのでしょうか。ぜひ日本政府の立場を伺いたいと思います。  <杉山晋輔外務審議官(日本政府団・団長)   明確にお話しするために日本語でお話しさせて頂きます。ゾウ委員からご指摘いただいた点についていくつかお答えをします。   えー、まず第一に、先ほど内容については、あのー、既にお配りしてあるので、えー、詳しくは説明しませんと申し上げましたが、12月、昨年の12月28日に岸田大臣と尹長官の間で、最終的かつ不可逆的に解決されている事は、えー、文書の回答の添付の文書を見て頂ければ、明確だと思います。   従って日本政府が、あー、あー、この問題について、えー、えー、例えば歴史の否定をしているとか、この問題について、えー、えー、何の措置も執っていないというご批判は事実に反すると言わざるを得ません。   ちなみに、えー、先程、えー、いわゆる、うー、強制、えー、えー、ということは、あー、我々が調査した中では、あー、えー、裏付けられなかったと申し上げましたが、この岸田大臣の合意の中には、えー、「慰安婦問題は当時の軍の関与の基に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感して」えー、ちょっと飛ばしますが、えー、「これらすべての方々に心からお詫びと反省の気持ちを表明する。」そして、まっ、額は、10億円程度ということですが、日本の予算の措置により財団を設立すると、えー、まー、あのー、それから更に色んな説明をしなければいけないのですが、えー、中味について時間がないのでそれ以上は言いません。  で、ここで言う当時の軍の関与というのは、えー、慰安所が、あー、軍当局の要請により設立されたものであるとか、慰安所の設置・管理および慰安婦の移送について、えー、日本軍の関与があったとか、あるいは慰安婦の募集について軍の要請を受けた業者が主にこれに当たったとかいうことであるとかは、従来から認めていることであって、私がさっき申し上げた事は、そのことと共に、えー、例えば20万人という数字は、完全に間違いだと、本人、ていうか、出した新聞社が認めているとか、そういうことを明確にするために申し上げた訳だし、それから「性奴隷」という表現も事実に反するということを、もう一度ここで繰り返しておきたい。  えー、ちなみに、えー、書面で、えー、回答に添付した、えー、両外相の共同発表の文章の中にも、「性奴隷」という言葉は1カ所も、おーおー、見つからないのも事実であります。  従って、今、おー、ゾウ委員から、あーあー、ご指摘を、おー、受けましたが、えー、非常に残念なことにゾウ委員のご指摘は、いずれに点においても、えー、日本政府として受け入れられるものではないだけではなくて、事実に反する事を、おー、発言されたという風に、申し上げざるを、残念ながら申し上げざるを得ないということを明確に発言しておきたいと思います。  ほんの数十秒、先程一つ大事なことを言うのを忘れたので、言います。  あのー、えー、既に先程申し上げたように、えー、委員のお手元に届けてある日韓の合意、えー、これは、日韓間の合意であって、えー、これを現在、日韓両国政府は、えー、それぞれ、誠実に実行に移すべく取り組んでいるところであり、この点は、全く変わっていません。 えー、この様な日韓間の合意について、是非、理解をしていただきたい。こう言う重要な事を言い忘れたので、もう一回繰り返します。」

遅きに失した感はありますが、better late than never です。反撃の第一歩としたい。

本記事を読みますと、如何に反日教育が罪深いかという事です。朴正煕大統領が16年間、反日教育を徹底したと呉善花教授は言っております。民族的特質と相俟って日本に対するコンプレックスからジャパンデスカウントを世界的に、金とハニーでやって来ました。台湾は外省人は中国人ですから、馬英九も台湾に慰安婦記念館を作り、中共と一緒になって日本への貶め工作と金を強請る積りです。日本にとって最大の敵は中国、北や南、民主党・社民党・共産党、朝日新聞等左翼メデイアは中国の手先です。日本国民も良く見て、彼らの発言に惑わされないようにしないと。

記事

呉善花(評論家・拓殖大学教授)

Wu Shang Hua

 

 

 

 

 

 

 

 

反日への入り口

 私の幼い頃、母は戦前に父と共に日本で働いた時分の思い出をなつかしみながら、日本人への親しみを込めてしばしば語ってくれた。1960年前後のことである。私が育ったのは済州島の海村だったが、村の人で日本をことさらに悪くいう人はいなかった。村の祭りになると、私はしばしば、ムーダン(巫女)のおばさんの勧めで、母に教わったいくつかの日本語の単語を大人の前で披露してみせた。いつも拍手喝采で、ムーダンのおばさんからきまって、「よく知っているね、偉い子だね」と頭を撫でられたものである。

 それが小学校に入り、学年を重ねていくにつれて、「日本人はいかに韓国人にひどいことをしたか」と教えられていくことになる。教室の黒板の上には、真ん中に大統領の写真が掲げられ、その両脇に「反共」「反日」と大きく書かれたポスターが貼ってある。反共の「共」はそのまま北朝鮮を指し、いかに北朝鮮が邪悪で恐ろしい国なのかを教わり、その一方で日本人がいかに韓国人に対して悪いことをしたかを教わる。

 ずっと後、日本に来て知り合いになった台湾人留学生に、「こんな教育を受ければ、どんな人でも必ず反日感情をもつ」というと、「そんなことはないでしょう」という。「なぜか」と聞くと、「学校ではすさまじい反日教育を受けた一方、家庭や地域で聞くのは大部分がその反対のことばかりだったからだ」という。  私の場合はそうではなかった。家へ帰って学校で教わったそのままに「日本人てひどい人たちなのだ」といったことを語ると、父も母も無言で応じたり、適当にあいづちを打つばかりだった。村の大人たちにしても、大方はそんなふうであった。私はそれが不満で、「お父さん、お母さんや村の大人たちは、学歴の低い田舎者だから、何もわかっていないんだ」と思うようになっていった。

meeting to show respect for the aged in Korea

日本統治下で行われた「敬老会」。朝鮮の子供が遊戯を披露し、日本女性が朝鮮の老人たち(写っているのは男性ばかり)に給仕している(朝鮮総督府『朝鮮事情』昭和15)

  田舎のおばさん、おじさんたちほど、反日意識が弱いのは、彼らには学がなく無知であるからだ、といういい方は一般的にもよくされていた。高い教育を受けた者ほど反日意識が高いというのが常識だった。私も、勉強をすればするほど次第に反日意識を強くもたねば、という気持ちにもなっていく。

  私は、小学校高学年あたりから、そのことで大きく迷った。

South Korean texbook

 

 

 

 

 

 

日本について事実と異なる記述が羅列された韓国の中学国史の国定教科書  

母から聞いた日本は、叔父さんたちが住んでいて、ミカンがたわわに実り、泥棒する人もいない、しかもお風呂が普段に入れて、人は親切だという日本だった。その国の言葉をいってみせると、大人たちは「いい子だ」と拍手さえしてくれた。なぜそうなのか。「大人たちはみんな無学な田舎者なんだ。ほんとうの日本がどういう国かということを教わってこなかったんだ。だから、何もわかっていないんだ」と、きっばり意識チェンジをしていった。

私は学校教育を通して、それまで知らなかった新しい世界の見方を知ったと思った。旧世代の韓国人、旧時代の韓国との別れだった。私たち立派な知識を身に付けた新世代韓国人が、これからの新しい韓国を建設するんだ。しだいにそういう意識が芽生え、私のなかから急速に日本への親しい感情が消え去っていった。

情緒教育としての反日教育

 授業を通して、父母たちの世代は土地を収奪された、日本語教育を強制された、独立を主張して殺害された、拷問を受けた、強制徴用されたと知らされていく毎に心にやってくるのは、自分自身の身を汚されたかのような、いいようのない屈辱感であり、そこから湧き起こる「決して許せない」「この恨みは決して忘れてはならない」という、ほとんど生理的な反応といえる怒りであった。

 当時の教科書の内容は詳しく覚えていないが、基本は現在のものと大差はない。現在の国定教科書では、「[侵略戦争を遂行するために]日帝はわれわれの物的・人的資源を略奪する一方、わが民族と民族文化を抹殺する政策を実施した」として、それを「日帝の民族抹殺計画」と名付けている(「中学校国史教科書」1997年初版)。「民族抹殺」という言葉が情緒を強く刺激する。

texbook of Korean language

 

 

 

 

 

日本が開設した普通学校(小学校)の朝鮮語、授業で使われた『朝鮮語読本』  

「日帝の民族抹殺計画」として挙げられているのは、内鮮一体・皇国臣民化の名の下に、韓国人を日本人にして韓民族をなくそうとした、韓国語を禁じ日本語の使用を強要した、韓国の歴史の教育を禁じた、日本式の姓と名の使用を強要した、各地に神社を建てさせ参拝させた、子供にまで「皇国臣民の誓詞」を覚えさせた、というものだ。しかし、そう列挙されているだけで具体的な内容は一切書かれていない。「高等学校国史教科書」も同じことである。そのため、強く刺激された情緒が知識の媒介をほとんど受けることなく、身体にストレートに浸透するのである。  小学校でも同様に、日本によって民族が蹂躙された、奴隷のように扱われた、人間の尊厳に大きな傷を受けたといった形で反日教育が教室のなかで行なわれている。幼い時期はより多感なものだから、「ひどすぎる」「絶対に許せない」という思いで心がいっぱいになる。

 もちろんそれは人ごとではないからだ。同じ血を分けた韓国人であり、お父さん、お母さん、お祖父さん、お祖母さんたちのことだから、自分がやられたのと同じ気持ちになってくる。我が身を切り裂かれるような辛く苦しい気持ちになり、激しい怒りがこみあげてくる。そうか、日本人はそんなに「侵略的で野蛮な民族的資質」をもつ者たちかと、心から軽蔑していくことになる。

 これは歴史教育ではなく明らかな情緒教育である。歴史認識以前に、反日情緒・反日心情をしっかり持つことが目指されているのである。

侮日教育としての反日教育

 一九六〇年代のことだが、小学校では「反共ボスター」をよく描かされた。私たちが描く「反共ボスター」の絵柄の多くは、「鬼のような形相をした金日成が韓国を蹂躙する姿」だった。いかに北朝鮮が怖い国かを描くことに力を入れたと思う。

poster of blaming Japan

仁川の地下鉄駅に貼り出された竹島をめぐる日本非難ポスター。子供が描いたとは思えないほどむごく、汚れた絵柄だ

 私は全斗煥政権時代の1983年に来日するまで、金日成の写真も映像も見たことがなかった。客観的な情報もいっさい知らされていなかった。自分が受けた教育からイメージした北朝鮮は、「悪の権化の金日成を頂点に諸悪を凝り固めてつくった国家」であり、人間らしい気持ちをもって生きる者が一人として存在しない世界であった。金日成の姿は絵でしか知らされることがなく、その絵たるやいかにも凶暴な悪魔のように描かれていた。私が日本で金日成の写真を初めて見て、「なんてハンサムで穏和な顔をしているのだろうか」と思ったものである。

 「反日ポスター」も描かされたが、そのモチーフは北朝鮮のように「恐怖」ではなく、いかに日本は侮蔑すべき国かという「侮日」にあったと思う。日本はどれほど卑しく野蛮な国か、韓国はどれほど尊く文化的な国かといったところに力を入れていたように思う。それでも、当時の私たちが描いた「反日ポスター」は、現在のものほど下劣ではなかった。子供もなりに「愛国者」として持つべき品位が心されていたと思う。

 2005年6月、仁川市の地下鉄キュルヒョン駅構内で、地元の小中学生による「獨島(竹島)問題」をテーマにしたポスター展があった。子供たちのポスターは百枚以上貼られていたと思うが、それらを見て私は心から驚いた。獨島問題がテーマなのに、大部分がテーマを大きくはみだしている。悲しくなるほどの下品な絵や言葉で日本を貶め、日本人を侮蔑するものばかりだった。

 たとえば、ウサギが日本に糞をしている絵柄があった。韓国は国土の形からウサギになぞらえられているのだが、そのポスターでは中国・韓国・日本をカバーする地図が描いてあって、韓国の上に立ったウサギが中国の方に顔を向け、お尻を日本に向け、お尻から日本列島の形をした糞を出している。

 そのほか、子供たちが日の丸を取り囲んで踏みにじっている絵、日の丸が描かれたトイレットペーパーを燃やしている絵、日本列島を火あぶりの刑に処している絵、「嘘つき民族日本人」を犬小屋で飼っている絵、核ミサイルを韓国から日本へ撃ち込んでいる絵など、まるで日本は交戦国であるかのようだ。絵に付された言葉も、「日本の奴らは皆殺す」「日本列島を火の海にしたいのか」「日本というゴミ、捨てられる日はいつなのか」など、「なんでもあり」なのだ。

 これら「反日ポスター」からわかることは、昔も今も韓国の小中学校では反日というより侮日教育をしているまぎれもない事実である。

 韓国の教育界は、小学生のときからこうした教育を受けさせることで、伝統的な侮日観をしっかり身につけさせていこうとしている。これによって、相手が日本人であれば、その言動は「倫理・道徳にもとろうとも構わない」という意識が植え付けられていく。

 韓国の著名な小説家・翻訳家の李(イ)潤(ユン)基(ギ)氏も新聞コラムで、韓国では「相手が日本人ならば、ちょっとやそっとは無礼であっても構わない」が通念になっていると書いている(「日本人に対する礼儀」東亜日報2006年1月4日付)。いや、「ちょっとやそっと」どころではない。実際には「どんなに」無礼であっても構わないのである。

唯一の観点からの歴史教育

 歴史にはさまざまな観点があり得る―ことは、長い間私の意識のなかにはなかった。歴史には一つの見方しかないと思っていた。こういうと、お前はいったい何を勉強してきたのかといわれそうだが、日本に来るまでは正直にいってそうだった。

registers of Korean land

 

 

 

 

 

 

土地調査事業で詳細に作成された新土地台帳と旧来のおおざっぱな台帳(朝鮮総督府臨時土地調査局編『朝鮮土地調査事業報告書追録』大正8)

 そういう私は、韓国人のなかで例外的な存在だったのではない。一般の韓国人ならばほとんどがそう思っているのと同じように、私もまた歴史には一つの見方しかないと思っていたのである。なぜかと思い返してみるほどに、韓国の学校歴史教育を受けてきたから、というほかにどんな理由もないと思える。

Copy of the registration in Korea

 韓国の歴史教科書は、日本の歴史教科書とはその記述方法がまったく異なっている。反日教育といっても多様な面があるのだが、日本統治下での土地問題がどんなふうに教えられているかを例に挙げてみたい。  韓国の生徒たちが学んでいくのは、朝鮮総督府が統治にあたって行なった土地制度の近代化を目的とする、土地の面積、所有関係、使用状況などに関する土地調査事業についての史実なのではない。

公有地管理がずさんで農民などが長年無断占拠した「駅屯土」も土地調査で所有権が明確化し、改めて小作申請を求めた。手続きが理解できず小作できない農民が続出した(同)

 私が学んだ教科書でもそうだったが、最近の教科書でも「日帝は土地を奪うために…」という文言から書き始められている。日本統治下での土地問題を学ぶにあたって、生徒たちが最初に頭に入れなくてはいけないのは、「土地調査事業は日帝が土地を奪うために行なったものである」と意味づけられた一つの観点である。その上で、次から「現実の諸関係はどうだったか」を見ていく、という流れになる。

 生徒たちが学ぶのは何よりもそうした一つの観点なのである。つまり、歴史についての「唯一の正しい観点」を学ぶことが、韓国では歴史を学ぶことである。そして、その観点から歴史的なさまざまな物事を理解していこうということになる。ようするに、生徒たちはその唯一の観点に立って、そこから足を踏み外すことなく、歴史的な物事のあり方、性格、推移などを位置づけていく力を養いなさい,ということになる。

 そういうわけだから、その唯一の観点とは別の観点で歴史を見ていくことは、歴史に対する見方の踏み外しだということになる。個々の歴史事象については、その学び取った観点から光を当てることによってだけ意味をもつものとなる。したがって、「土地所有を近代的に整理する」という朝鮮総督府の政策は、「土地を奪うための口実」として意味づけられることになる。

 「日帝は土地を奪うため」が土地調査事業の真意なら、その「収奪」はとてつもなく過酷なものでなくては意味をなさなくなってくる。そうであれば、朝鮮総督府の資料に基づいて知られる「朝鮮総督府が接収した農地は全耕作地の3%」という数字は余りにも少なすぎるため、とうてい採用することはできない。採用すれば観点そのものが崩れてしまう。

 そこで教科書では「40%の土地を奪った」とするのである。この数字の根拠は不明で,「日帝は土地を奪うため」という観点との整合性をもたせるための数字だというしかない。数字の出所や計算方法は、教科書ではまったく示されていない。

民族主義教育としての反日教育

 反日教育は反日民族主義教育として本格化される。その第一の前提におかれるのが、「生来の野蛮で侵略的な資質をもった日本民族」である。この日本民族の性格は、日韓関係の歴史を次のようにとらえる歴史観から導き出されるものだ。

 韓国は文化も何もなかった時代の日本に、儒教・仏教・技術をはじめとする高度な文化を伝えてあげた。にもかかわらず日本はその恩を忘れ、古代には「神功皇后による三韓征伐」や「任那日本府(日本による朝鮮の植民地)」があったなどの捏造記事を国史に記載し、中世には豊臣秀吉による朝鮮侵略が行なわれ、近世末には国学者らにより韓国征伐論が唱導され、明治初期には政府内に征韓論が火を噴き、韓国の江華島に砲撃を加えて戦争を仕かけ、明治末に韓国を併合して36年にわたる暴力的な支配を行なった―。

 このように歴史を連続させ、この流れを一連のものとみなして、その根本的な原因を「日本民族の野蛮で侵略的な資質」に求めるのが、韓国の反日民族主義史観である。これが反日教育の柱となる。

 日本民族というのは、そもそもからして野蛮な侵略者だったという考えが、なぜ出てくるかというと、古くからの朝鮮半島諸国には、日本を蔑視していた歴史があるからである。なぜ日本を軽蔑したかというと、朝鮮半島諸国が奉じた中華世界では、華夷秩序(かいちつじょ)が正しく善なる世界システムだからにほかならない。

 世界の秩序は「文明の中心=中華」と「その周辺の感化・訓育すべき対象としての侵略的で野蛮な夷族」で構成される、というのが華夷秩序の基本的な世界観である。中華世界の中心にあった中国とその忠実な臣下だった歴史的な朝鮮半島諸国は、日本という国を千数百年にわたって、「その周辺の感化・訓育すべき対象としての侵略的で野蛮な夷族」とみなし続けてきた。韓国の日本観の根本にあるのは、こうした歴史的・伝統的な意識体験に由来する侮日観なのである。

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シナ皇帝の使者を属国朝鮮として迎えた「迎恩門」。日清戦争後の日本が清から独立させると取り壊され、代わって「独立門」が建立された

 道徳的に優れた上の者が、道徳的に劣った下の者を、常に訓育・感化していかなくてはならないという儒教の考えが侮日観を形づくっていて、これが韓国の対日民族優越意識の根本にある。さらに韓国には、自らこそ中華の正統なる継承者であるという小中華主義の誇りから、潜在的なエスノセントリズム(自民族優越主義)がある。

 そのため、対日民族優越意識がいっそう強固になっているといってよい。竹島問題にしても、靖國神社をめぐる問題にしても、慰安婦問題にしても、我々が文化を与えてきた、本来は我々の下に立つべき日本人が、我々を下に見て、我々をばかにしていると、そういう感覚からの反発が第一となっている。

 そもそも民族主義とは、戦後に独立したアジアやアフリカ諸国の民族主義をみても、まずはエスノセントリズムから出発したといえるかと思う。かつての西洋にも、これを拡大した白人優越主義があった。我が民族は他民族に優越する優秀な民族だというエスノセントリズムは、民族国家の出発に際しては多かれ少なかれどこにもあったものだ。それを秘かに思っていようと、常に公言していようと、初期の民族主義成立にはそういう自民族優越主義の要素が不可欠だったと思う。

 しかし韓国の民族主義はそこから一歩も進まない。なぜかというと、民族主義の内容が反日と結びついた反日民族主義だからである。反日なくしては韓国の民族主義が成り立たない。反日の理念を核に国民国家の意識を形成してしまったのが韓国である。こんな国は他に例がない。

 結局のところ、韓国の反日民族主義の根は日本を蔑視してきた歴史にある。日本統治時代への恨みが反日の根拠となっているのではない。日本が韓国を統治したというのは、そういう蔑視すべき民族がもたらした結果であって、日本統治を原因として日本蔑視の反日民族主義が興ったのではないのである。

来日2、3年目にぶつかる壁

 学校教育で身に付いた、反日感情に裏打ちされた反日意識は、成長するに従い、社会的・国民的なコンセンサスとしてあること、韓国人ならば誰もがもつ常識であることを自覚する。異議・異論と一切出会うことがない社会環境で、疑問の余地なく韓国人としての自分のアイデンティティとなっていく。こうして私は、「反日心情・侮日観」と「唯一の正しい歴史認識・反日民族主義」の混合体を強固に抱えもつ、「新世代の韓国人」へと成長していった。

 私は小さい頃から、島から半島へ、半島から世界(欧米)へという志向が人一倍強かった。男尊女卑の強い韓国社会を脱して世界に羽ばたきたかった。そこでアメリカへ留学したいと思ったが、当時の韓国ではアメリカのビザ取得はきわめて困難だった。そのため、まず何人かの親戚も生活する日本へ留学し、日本を足場にアメリカへ渡ろうと思った。三十数年ほど前のことである。

 日本へ留学する数カ月前、たまたま機会があって、韓国のキリスト教教会の関係で、日本の老人ホーム慰問団の一員として初来日を果たした。1982年12月から翌年の1月にかけての短い期間だったが、そのときに私が体験した日本は、韓国にいるときにイメージしていた日本とはまるで違っていた。

 日帝時代を頑迷に反省しない日本人―決して許してはならないと強く思っていた私は、どこへ行っても優しく親切な日本人に触れて、大きく肩透かしをくった感じがした。わずかに触れた日本の生活風習も、私にはとても好感のもてるものだった。

 駆け足での体験とはいえ、滞在した一カ月の間、悪い印象はまったくなかったことは大きなショックだった。きわめて驚くべきことであった。

father of victim

イスラム過激派に拉致・殺害された邦人男性の父親は取材を受け「皆さまにご迷惑をおかけしました」とまず詫びた。この冷静な態度を称賛したり、理解しがたいとしたりする声が韓国で上がった

  私がはじめて知った日本は、そのようにとても印象のよいものだった。反日意識に変わりはないが、「これなら、それほど緊張することなくやっていけそうだ」という感じをもてた。いや、表面だけではわからないぞ、とも思うのだが、帰国した私は気を昂らせながら日本へ渡る留学手続きに奔走した。留学生ビザを手に日本にやって来たのは1983年7月のことだった。

 留学生として、また仕事関係で日本に長期滞在する場合、ほとんどの外国人、とくに韓国人や中国人は、来日1年目はとてもよい印象をもつものである。韓国人には多かれ少なかれ、日本人=未開人、野蛮な人たちというイメージがある。しかし、実際に日本人と付き合ってみると、誰もが親切で、優しくて、思いやりがあって、未開人的な、野蛮人的な日本人はどこにもいないではないか、日本はなんて素晴らしいのか、ということを誰もが感じる。なんといっても、日本は自然が美しい。そして、空気がきれい。しかも、治安がすこぶるよい。

 とくに反日意識が刺激されることもなく、こうした日本の良さを感じながら、最初の一年は楽しく過ごすことができるのが普通だ。

 しかし1年が過ぎて、もう一歩踏み込んだ付き合いをすることになる2年目、3年目になると、多くの韓国人は日本人がさっぱりわからなくなる。価値観が違うし、善悪の考え方も違う、日本人の精神性、メンタリティーがどうにも理解できないことになってしまう。人によって、程度の差はあるけれども、だいたい2年目、3年目で落ち込んでしまう。

 もはや日本人は人間ではないとまで思う人たちもいる。私もそう感じて深刻に落ち込んでしまった。同じ人間なのに、日本人はなぜこうなのか、日本は人間が住む社会ではないとまで私は落ち込んでしまった。日本人は我が国を貶めてきただけに、やはりおかしな人たちだったのだと思うようになっていく。

 実際には、本格的な異文化体験がはじまったということなのだが、異文化ゆえの異質性が、根にある反日意識と結びつき「人間としておかしい」といった感覚的な判断を生じさせてしまうのである。

 その典型を、日本に2年半滞在して韓国に戻った韓国人の女性ジャーナリストに見ることができる。彼女は、帰国して書いた本で「日本に学ぼうという声が高いけれども、日本のような国には絶対学んではいけない」、なぜかといえば、日本人は異常な人たちだからだ、というように書いている(田麗玉「日本はない」、日本語版「悲しい日本人」)。

 どんなことから、彼女は日本人は異常だというのか。たとえば彼女は、「日本人の割り勘は、その場限りで人間関係を清算しようとする冷たい心の現れだ」と書いている。

 ことごとくが、2年目、3年目でぶつかった、異文化ゆえの習慣の違いや価値観の違いに関わることなのである。それが反日意識と結びつくため、すべて日本人の「悪意の現れ」としてしまうのだ。私も2、3年で韓国へ戻っていたら、彼女と同じ考えのままだったと思う。

 そこには、自民族の文化を価値規準にして、他民族の文化、生活習慣、思考様式、行動形態などを、みっともない、不合理だ、間違っている、劣っているなどと否定する傲慢な態度がある。自文化の価値体系こそがどこよりも正当なものであり立派ものだと頭から信じられている。

 その弊害は、自分に都合のよい空想をもって現実を見ようとはしないさまざまな面に現れてくる。

「反日」という「バカの壁」

 韓国の「反日」は「反日心情・侮日観」と「唯一の正しい歴史認識・反日民族主義」の混合体である。そのように完成された一つの固定した考え、揺るぎのない考えである。

 一つの固定した考え、完成された考えにはその先がない、未来がない、そこが終局の地点となっている。だから相手の考えを耳に入れる余地がない。多角的な視点から物事を見て判断することができない。自分のいやな事、知りたくない事、興味のない事を無視しようとする。そういう相手には、いくら誠意をつくして話しても、わかってもらえることがない。なんとしても「話せばわかる」ことにはならないのである。

 ようするに「反日」は一つの硬直した固定観念であり、それが養老孟司氏がいうところの、自分の思考を限界づける「バカの壁」となっているのだ。そのため話が通じないのである。来日2年目、3年目にぶつかる壁が「バカの壁」だとは、誰も容易に気づくことができない。そこで私のように落ち込んだり、「日本人は人間ではない」とまで思うことになってしまうのだ。

bereaved family

大邱地下鉄放火事件で政府高官に食って掛かろうとして取り押さえられる遺族。韓国では事故や事件などで激しく取り乱す遺族が少なくない

 「反日」を脱するとは、この「バカの壁」を超えることにほかならない。簡単にいえば、柔軟に、多角的に、相対的に物事を見て判断する、といったことになるだろうが、これが韓国人には実に苦手なのである。

 たとえば、人は現実社会のなかで、家族関係、友人関係、先輩・後輩関係、集団関係など、さまざまの実際的な人間関係の体験を通して、自分なりの物事への対処の仕方を身につけていく、という考えがある。

 それに対して、人には本来的な人間のあるべき姿があって、これを目標に社会のなかでさまざまな物事を体験することによって、正しい物事への対処の仕方が自分のものになっていく、という考えがある。

 日本人の多くは前者のように考え、韓国人の多くは後者のように考えている。仮に前者を実際主義、後者を理念主義と呼べば、実際主義では「現実的な人間関係」が先にあり、理念主義では「理想的な人間像」が先にある。この「理想的な人間像」が「バカの壁」となっているのが韓国人である。

 また、多くの日本人は、善悪・正邪は相対的なものだという。しかし多くの韓国人にはどんな場合も変わることのない絶対的なものである。だから、善悪・正邪は時々で異なるものだといった日本人は「人間ではない」とまで思えてしまうのだ。

 倫理・道徳も韓国人にとっては相対的なものではない。人間ならば絶対に守らなくてはならない真理である。しかし多くの日本人は、倫理・道徳は大切ではあるけれど、それは「時・場所・場合」によるもので、普遍的にあてはめて説くべきものではない、倫理・道徳を説く理念は立派なものだが、それは第一に優先されるべきものではない、と考えている。韓国人の場合は、「倫理・道徳」は完璧で揺るぎのない「バカの壁」となり、自分自身の心を縛ってしまうのである。

 多数の韓国人が、来日2、3年でぶつかる壁を越えられない。だが、そこをなんとか乗り越えて、5年ぐらい居座っていると、異文化としての日本が見えてくる。だいたいは日本のよさが理解でき、日本が好きになっていく。私もそうだが、そういう韓国人が多いのは確かである。

 それでも「反日」だけは抱え続ける人もいる。そこでは反日意識と親日感が同居する。「公的(理念的・外面的)には反日、私的(実際的・内面的)には親日」というようになっていく。現在のように情報が自由に飛び交い、日韓交流が盛んな時代では、韓国に居ながらにして「公的には反日、私的には親日」という人が大部分といってよい。

 「反日」をひとたび棚上げにしさえすれば、韓国人の誰でも日本人と親密に付き合える。国交という面でいっても、かつての日韓関係でも日中関係でも、できる限りそう処して付き合おうとしていた時代があった。しかし、そのままではやがては限界がくる。現在の最悪ともいえる日韓関係が如実に物語っている。

物事への相対的な視線の大切さ

 知識人であればあるほど、「反日」から抜け出ることが難しいようだが、人それぞれの脱し方があると思う。私の場合を振り返ると、そこには大きく三つの契機があった。

 一つには、来日3年目で最も落ち込んでいた頃、「郷に入れば郷に従え」を徹底的に実践してみようと思い立ったことである。たとえば、日本人好みの渋みある茶碗。「あんなもののどこがそんなにいいのか」と蔑む気持ちがあった。そこで「韓国人好み」をひとまずカッコに入れて、そうした茶碗を次々に買い求めていくことにした。

 そのうち収集が趣味ともなって、大きな楽しみになっていった。習慣・価値観・美意識などを含めて、そうしたことをやっていった。直接「反日」とは関係ないが、先に述べた「日本人は人間としておかしい」という感じ方が崩れていく大きなきっかけとなった。

 二つには、日本人ビジネスマンに韓国語を教え、韓国人ホステスやビジネスマンに日本語を教える語学教師を数年間やったことである。そこでは、否(いや)が応でも日本人からは韓国人との行き違いの悩み、韓国人からは日本人との行き違いの悩みを、さんざんに聞かされるのである。

  韓国人ホステスたちの悩みは、日本人の彼氏との悩みが多く、また結婚している人もいて、彼女たちは日本人家庭での嫁姑の問題で悩んでいる。日本人ビジネスマンの悩みは、会社を背負って韓国に仕事に行ったが、どうにも勝手が違うので交渉事がはかどらない、仕事の手順が合わない、といったものが中心だった。

  聞けば聞くほど、私が悩んでいたことそのままである。嫁姑の問題やビジネスの問題を超えて、そこには共通の日韓の「行き違い問題」が伏在していることを知った。

  韓国人は、自分の行動や思考をよしとする一方で、日本人をおかしな人たちと見ている。それにまったく匹敵する程度で、日本人も同じように韓国人をおかしな人たちと見ている。日本人と韓国人は、実に合わせ鏡のような相互関係にある。いや、あるというよりは、そこへと無意識のうちに落ち込むのである。

  私が美しいと思えないものを、なぜ日本人は美しいと思うのか―。それは私のテーマであり、また私の語学教室の韓国人生徒たちの切実なテーマでもあった。

 韓国人ホステスたちと日本人ビジネスマンたちの時間の都合から、私は主に、昼は韓国人に日本語を、夕方からは日本人に韓国語を教えた。この行ったり来たりが、おそらくは日韓をめぐる物事への相対的な視線を養わせたのではないかと思う。

「反日」からの脱出

  三つには、日韓ビジネスコンサルタント会社でアルバイトをしていた関係で、仕事で韓国とつながりをもつ人たちが行なっていた勉強会に参加したことだった。メンバーは、大企業の幹部社員、弁護士、弁理士など、そうそうたる第一線のビジネスマンたちだった。

  勉強会では、まずはみなでそれぞれ自分の韓国での体験を話す。最初は一様に韓国のよさをほめている。しばらくすると、しだいに韓国の悪口が出はじめ、会のなかごろからはいっせいに韓国と韓国人への猛烈な批判が展開されるようになる。彼らの舌鋒は私の存在にまったく頓着することのない、実に厳しいものだった。もちろん歴史認識の問題についても、領土問題についても、靖國問題についてもである。

  私はしだいに腹が立ってくる。しかし「感情むき出し」といわれる韓国人の弱点はみせまいと、必死にがまんをして、できるだけ冷静に反論するようにしていた。それでも時折、大声を張り上げて反撃することは少なくなかったと思う。

 現在からすればとても信じられないかも知れないが、私が日本にやって来た1980年代当時は、韓国に厳しいことをいう日本人はきわめて少なく、総督府の朝鮮統治についても、韓国の主張と真っ向からぶつかるような議論はそうそう見られなかった。日本の有力紙が、北朝鮮へのシンパシーを記事の中で示すのも珍しいことではなかった。朝鮮半島をめぐる言論環境は、当時と今とでは大きく違っていたのである。

  そうした状況で、知韓派日本人から遠慮会釈もない徹底的な「韓国批判」を突きつけられることなど、あり得ない希有な体験だったと思う。よくあるように、彼らが「日本人は韓国人にひどいことをしたね」とばかりいう人たちだったなら、間違いなく今の私はなかったと思う。

 勉強会を通して、韓国では日本の朝鮮統治を、自民族に固有にふりかかった災難という観点だけでとらえ、人類史的なテーマとして植民地化の問題を追究する姿勢がまったく欠落していることを思い知らされた。欧米の研究者でも、日本の統治をおおむね「善政」とみなしている論者が大部分であることを知った。

Houbun Yamashita

マレー作戦成功でシンガポールの英軍に降伏を促す山下奉文中将(左から3人目)ら。大東亜戦争で多くのアジア諸国が欧米の植民地支配を脱した

 欧米人のなかにすら、日本の戦争を、アジア諸国の植民地からの解放と独立に一定の役割を果たしたと評価する考えがあることを知った。韓国にいた時分の私は、世界にこれほど多様な観点があることなど、思っても見なかったのである。

 この勉強会で私は、「これは真剣勝負なんだ」と自分自身にいい聞かせ、彼らと正面から向き合っていったと思う。その体験を通して、それまでの自分の歴史認識を見直していく方向への道が、しだいに開かれていったのは確かなことだった。

 私の体験はかなり特異かもしれない。しかも三十年を遡る時代のなかでの体験である。それでも「来日2、3年でぶつかる壁」は現在のものでもあり、この壁との激突の内に、反日からの脱出可能性が秘められていることは、示すことができたのではないかと思う。現在の日韓関係がぶつかっているのも、まさしくこれと同じ性質の壁なのである。  お・そんふぁ 1956年韓国済州島生れ。志願して4年間の軍隊生活を送る。昭和58年大東文化大学に留学。平成6年東京外国語大学大学院で修士課程修了。同年から執筆活動を始め、日本で働く韓国人ホステスを取材した『スカートの風』がベストセラーに。新潟産業大学非常勤講師、拓殖大学客員教授を経て同大国際学部教授。『攘夷の韓国 開国の日本』で8年に第5回山本七平賞。日韓関係や韓国の民族性などについて客観的な論評を続ける。現在は日本国籍。客観的な論評が「反韓的だ」と19年以降、韓国から度々入国を拒否されている。『韓国併合への道 完全版』『「見かけ」がすべての韓流』『日本浪漫紀行 風景、歴史、人情に魅せられて』『漢字廃止で韓国に何が起きたか』など著書多数。近著に『「反日韓国」の自壊が始まった』(悟空出版)。  ※別冊正論23号「総復習『日韓併合』」 (日工ムック) より転載

2/17日経ビジネスオンライン 福島香織『「貨幣戦争」中国の本当の敵は誰か 欧米の投機筋? 日本のマイナス金利? それよりも…』について

2/16国連欧州本部(ジュネーブ)で杉山外務審議官が慰安婦問題を説明したことに対し、火病持ちの韓国の反応としては、おとなしかったです。朝日新聞と吉田清治だけを責めたというのがあったのかもしれませんが(米国の圧力があるのかも)。彼らだって馬鹿でないから、事実は何かというのはとっくに知っているはずです。でなければ、韓国の男性は皆、臆病者の烙印を押されます。目の前で家族が銃で脅され拉致されたなら、黙って見ているだけのことはありません。奪回するため抵抗するでしょう。こんな見え透いた嘘を信じるのは阿呆だけです。中韓が事実と違っても、声高に主張するのは日本が簡単に謝り、簡単に金を払うからです。日本人の名誉を置き去りにした戦後の日本人とはいかなる存在か。日教組、左翼メデイアがやってきたことは悪すぎますが、もういくら何でも気が付かないと。

本記事にある「日本の経済の衰退のツケを我が国(中国)の庶民に支払わせる」と言うのは、余りに経済を知らない言葉です。日本がマイナス金利にしたのは、銀行に国債を買わせず融資を促す(投資・消費増)日本国内のインフレ助長策の意味だけです。中国とは関係ありません。また実体経済は良いので、安全資産として円が買われています。中国としては日本へキャピタルフライトされては困るとの思いでしょうが、何でもすぐ人のせいにしたがる民族です。もし、日本のマイナス金利が困ると言うなら、中国もすれば良い。通貨安戦争に入れば良いでしょう。元が暴落し、25兆$もある国全体の債務が益々重くなるだけです。逆に今中国は元の暴落前に、海外企業の買収を進めています。ただ、デフォルトを起こせばその資産もハゲタカに買い叩かれるのでは。

本記事を読みますと、中国は岩井克人教授の話(1/3日経)にあったように、基軸通貨(key currency)と強い通貨(hard currency)の違いが分かっていないようです。岩井教授は「国際通貨の議論が混乱しているのは、基軸通貨と強い通貨とが混同されてきたからだ。円も人民元もユーロも強い通貨である。強い通貨とは、一国の経済力を背景として、その国との貿易や資本取引で使われる通貨のことだ」 「全くカテゴリーが異なるのが基軸通貨だ。ドルが基軸通貨であるとは、韓国がチリと貿易するときにドルを使い、チリがインドと資本取引をするときにドルを使うように、米国以外の国同士の決済にドルが使われるということだ」「2008年のリーマン・ショックの時、中国はドルの覇権に異議を唱え、人民元の基軸通貨化を目指してきた。だが、強い通貨と基軸通貨とを混同している。いくら一国の経済規模が大きくなっても、その通貨がそのまま基軸通貨になるわけではない」「基軸通貨は何らかのビッグバンがなければ生まれない。米経済は19世紀後半から最強だったが、基軸通貨国は長らく英国だった。第2次大戦という大きなショックが、ようやくドルを基軸通貨に押し上げたのだ。その後、米経済のシェアは落ち、ベトナム戦争のとき、米政府は基軸通貨の座から降りようとしたこともある。ところが貨幣の自己循環論法が働き、米以外の国はドルを基軸通貨として使い続けた。ドル危機が繰り返し叫ばれても、いまだに基軸通貨のままだ」と言っています。

中国人は「白髪三千丈」の世界に住み、大言壮語、スローガンを打ち立てるのは得意ですが、儒教の影響かどうか、実務には疎いです。人民元による「一帯一路」政策が世界を救うことはなく、中国の過剰在庫、過剰労働力解消のためだけでしょう。よくもまあ、恥を知らずこんなことが言えるものだと。面の皮が厚すぎます。そうでなければ中国社会では殺されかねないのでしょうが。

米国の利上げも人民元の暴落の誘因になるため嫌がっているのが見え見えです。オバマが軍事力行使忌避の姿勢であるのなら、経済で中国を崩壊させるようイエレンは整斉と利上げをすべきです。

記事

 中国で最近の経済系ホットワードは「貨幣戦争」ではないだろうか。中国人民銀行総裁の周小川が外貨準備高を“弾薬”にして、人民元の空売り攻勢を仕掛けようとする外国投機筋を迎え撃つ姿勢を示したため、2月15日には人民元はここ10年余りで最大の上昇幅を記録したとか。2月以降の中国メディアの記事も「貨幣戦争」というワードが散見され、金融政策の“軍事化”というか、妙に勇ましい論調が多い。確かに軍事と金融こそが、国家の具体的“力”であり、その力を外国と争うという意味で、これは戦いだ。では、中国の敵は誰なのか、勝者は誰になるのだろうか。

欧米主要金融勢力集団の陰謀?

 中国で「貨幣戦争」と言えば、2006年からベストセラーになった宋鴻浜の著書シリーズを思い出す。日本でも翻訳されているので、ご存知の方も多いだろう。彼は、米国のリーマンショックなどの予想を的中させ、米ビジネスウィーク誌が選ぶ中国で最も影響力のある40人(2009年)の一人にも選ばれた。

 彼の描く「貨幣戦争」とは、有り体に言ってしまえば、欧米国際金融陰謀論だ。中国にとっての敵は欧米主要金融勢力集団となる。彼の著書『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』(武田ランダムハウスジャパン)では、彼らが将来的に中国に攻撃を仕掛ける手法についても予測していた。

 国家の辺境は陸の境、海の境、空(宇宙)の境のほかに金融の境があり、いずれの境の防衛も大事だが、中でも金融の境を攻撃され崩されれば、政権は必ず倒れる。清の滅亡は、英国金融資本の攻撃によって、中国の銀本位制が崩されたからだ、という。領土領空を守るように、金融の国境を守れなければ、いかに富国強兵をやろうとも工業が盛んになろうとも、国家は亡びるのだ。

 そして、宋鴻浜の予言通り、いよいよ今年、通貨戦争の狼煙が上がった、ということになる。

 中国メディアの報道ぶりをみれば、その先陣を切ったのが、安倍政権による「マイナス金利」ということになる。財経誌は「日本のマイナス金利ブラックスワンが中国を狙い撃ち 北京はきらめく剣でもって貨幣戦を迎え撃つ」という見出しの記事で、次のように報じている。

日銀「マイナス金利」政策が先陣?

 「日銀のマイナス金利政策はFBRの利上げを受けた国内経済刺激策である。…欧州中央銀行もおそらく、刺激策を強化してくるだろう。米国の金利政策と日本、欧州の本道に外れた行動は、報酬率が比較的高い米国資産に投資家を殺到させ、ドルのさらなる利上げ圧となっている。

 このため、米国のインフレを抑えようとする圧力がさらに進み2012年以来、米インフレ率はFRBの目標の2%に到達していない。

 我が国は実業資本の豊富な国家である。世紀の金融大決戦はすでに幕が切って落とされた。金融投機資金はすでに飢餓に耐えがたく、必ずや最後の賭けに出て、我が国に対して最大の努力をもって攻撃を発動するだろう。そして我が国を貨幣投機の天国、実業資本の地獄にするつもりなのだ」

 「(マイナス金利によって)日本経済が良くなれば、グローバル経済にとっても、中国経済にとっても当然、促進作用がある。しかし、中国商品が日本商品と競争するとき、その競争力は下降する。円のマイナス金利は短期的には我が国の株式市場を刺激するかもしれないが、長期的には我が国の経済にとって不利な一面があり、日本の経済の衰退のツケを我が国の庶民に支払わせることと同じである。

 我が国としては、日本の貨幣政策の過剰な緩和がもたらす影響を無視できない。これは“近隣窮乏化政策”であり、日銀のこの“大放水”政策の最大の影響を受けるのは隣国である。…

 華林証券策略アナリストの胡宇は、円のマイナス金利時代は、貨幣戦争の開始を意味する、という。…グローバル経済とっては、通貨切り下げ競争という負のスパイラルが激化し、株式市場にとって表面上よいニュースであっても、実際上の意味は経済の展望に対する不安を一層深めるものであり、短期的に反発があっても今後さらに下がっていくだろう、と分析する。

 我が国はどうすればよいのか。もし金融緩和政策と人民元切り下げによって、グローバル実業資本争奪戦に参戦していけば、米国資本の乗っ取り計画は無に帰し、金融投機資本は十分な栄養を見いだせず、再度金融危機が起きるだろう。現在のグローバル金融の反応はこのような心配を反映している。

 我が国はあえて“きらめく剣”をもって、“手段を選ばずに潰しにくる攻撃者”を迎え打つと同時に、伝統産業の併合を加速して生産過剰が金融リスクをもたらす原因を解消せねばならないのである。将来、我が国の為替政策は国内経済の需要に応じてスタートするべきで、人民元が順調にSDR貨幣バスケットに加入することはもとより重要だが、もし、本当に最後の手段が必要になれば、放棄すべきは放棄し、先延ばしすべきことは先延ばしすべきだろう」。

日本のマイナス金利の中国経済に対する影響はそんなに大きくない、という見立てもあるのだが、最近の中国はどうも安倍政権のやることなすこと中国に敵意があるとみなしがちである。だが、中国としては、外国投機筋から人民元を守るべく為替介入していくつもりであり、そのために、SDR加入の延期も辞さない覚悟も見せている。

ソロスの空売り攻勢か?

 チャイナデイリー(2月1日付)の「貨幣戦争?人民元が勝つ!」というタイトルの商務部国際貿易経済合作研究院研究員・梅新育の論文も話題を呼んだ。

 「2016年、ソロスは“貨幣戦争”発動を宣言し、人民元を含むアジア貨幣に空売りを仕掛けた。…ソロスの人民元に対する挑戦は成功不可能だ。2015年から人民元は対米ドル貨幣価値が下落し、中国経済の成長率は減速、株式市場は不安定だ。だが、グローバル経済総体があまりよくない状況で、中国は依然良好なファンダメンタルズを維持している。…確かに2015年中から、人民元の小幅な下落は続いているが、20年来、米ドル為替率は安定を維持し、むしろ上昇の趨勢にあった。

 大幅な人民元上昇の後、(現状のように)適度に切り下がるのは自然なことだ。中国は世界第二の経済体であり、人民元は永遠にドルにペッグされることは不可能でもある。

 国際社会での資本の流動性は非常に高く、この状況下で、中国が貨幣政策の独立性を維持したいと考えれば、人民元は正常な変動が望まれる。投資家たちは早晩、状況の趨勢が分かるようになり、この数か月前からの人民元の不安定さを再演することはないだろう。これは投資家たちの過剰な反応なのだ。…

 長期的に見れば、ドルは新興国通貨に対する強硬姿勢を維持していくだろうが、人民元は別である。目下、中国の貿易黒字は続いており、これからも継続していく。米国経済はすでに深みにはまっている。経済成長と異なる産業の盛衰には因果関係があり、同時に実体経済の基礎計画の一部である再工業化戦略を地固めするのは、かなり難しい。

 米国経済が回復したとしても、その貨物貿易状況は悪化しているだろう。…60年代以来、何度かドル危機は起きたが、悪化し続ける貿易状況と経常収支状況と財政赤字がドルの自信を打ち砕いてきた。最近のドルの人民元に対する強気の姿勢は、最終的には“トリフィンのジレンマ”に陥るだろう。

 ソロスのアジア貨幣戦争勃発を別の角度から見れば、中国にとっては一つのチャンスだ。つまり、中国とその他アジア各国の金融・財政領域および、中国が発起した“一帯一路”戦略の協力を進化させる契機となる。…中国とその他アジア新興経済体との金融領域の協力、協調はさらに強化されることだろう」

 「トリフィンのジレンマ」とはエール大学のロバート・トリフィン教授が1961年に唱えた説で、「米ドルが国際的な準備通貨であるためには、諸外国がドルの外貨準備を保有できるよう、米国は余剰流動性を供給しなければならない。このため、米国は経常赤字を容認しなければならないが、これは米ドルの信認を揺らがせかねない。だが、米国が米ドルの信認を保つために経常収支を均衡させてしまうと、国際市場へのドルの流動性供給が滞り、結果的に米ドルが準備通貨の役割を果たせなくなってしまう」というブレトンウッズ体制の抱える矛盾を指摘している。

 梅新育の論はドルの国際通貨時代の終焉に代わり、人民元が「一帯一路」戦略を通じて国際通貨にのし上がるという、中国の野望を表現したものだといえる。

最後に新浪財経の「人民元が最後に世界を救う責任を担う!」という記事。

人民元には「世界を救う重責」?

 「中国人民銀行金融研究所長の姚余棟は、米ドル利上げ後、グローバル経済の流動性が緊縮し人民元が世界を救う重責を担う情勢となった、と指摘する。…

 歴史上、我が国の北宋時代は経済が繁栄していた。それは白銀と銅の交換率が上昇するとの予測があったからだ。このため多くの白銀を備蓄したが、結果、流動性が不足し、デフレとなった。同じことが、白銀が米ドルとなって現在起こっている。姚余棟はこの例をひいて、ドルの利上げはドル不足をもたらし、グローバル経済の流動性不足を激化させる、と警告。

 ドル利上げによる資本流出は中国において非常に巨大で、12月の外貨準備は3.33兆ドル、前月比1079億ドルも減少する。これは史上最大の単月下げ幅を記録。2015年通年で、中国は累計5126.6億ドルも外貨準備を減らした。さらに3000億ドルの貿易黒字を考慮すると、2015年の中国の資本流出は8000億ドルを超える。これは全体的に言って憂慮すべき数字だ。

 マクロ的データの表層での情緒はすでに一般の個人投資家に伝播し、上海、深圳の銀行では大勢の人が群がり、かつての中国版ミセスワタナベたちはドルへの兌換に詰めかける新勢力となって、人民元為替レートの将来を不安がる人心は、すでに一種のパニック的ムードを形成している。…

 姚余棟によれば、中国が単なる製造業国家であり、貨幣が国際通貨でなければ、人民元は長期的に下げ圧力にさらされる。しかし、去年、人民元はすでにSDR入りを認められ、局面はすでに変化している。もはや中国は単なる製造業国家ではない。グローバル経済の流動性を強化するため、人民元は世界を救う重責を担わねばならないのだ。人民元が流動性を補えば、来るべき冬はさほど寒くはないだろう。…

 人民元が世界を救うには二つの前提がある。一つは、実際に人民元が国際化すること。二つに、人民元が兌換できる通貨バスケット通貨の相対的な安定だ。中央銀行はすでに同様の思考を明らかにしている。中央銀行研究局首席エコノミストの家馬駿は、『人民元レートの形成メカニズムはすでにドルにペッグされていない。完全な自由変動制ではないが、バスケット通貨の影響力は増しており、バスケットレートの安定を保持するようになっている。これが、将来的な人民元レート形成メカニズムの基調となる。この種のメカニズムを実施すれば、人民元のバスケット通貨レートに対する安定性が増し、人民元の米ドルに対する双方向の変動は一層大きくなるだろう』。…

 李稲葵(清華大学世界経済研究センター主任)によれば、ドルが回流し、人民元が国際通貨となれば、長期的にはむしろ人民元価値は上昇するという。いわく、人民元の下落は長期的には続かない。国外のマーケットは中国への空売りを唱え、また中国政府が通貨切り下げの方法で経済を救済しようとしているとも言うが、これはマーケットが煽る人民元下落予測に過ぎない。国内マーケットの場合、これは大衆のパニックが元の下落を引き起こしているのであって、目下の経済調整に非常に有害である。

 だが、フリーのエコノミスト、呉裕彬は李稲葵らに反対の観点から次のように語る。『目下の外貨準備資産の流出は5500億ドル。おそらく今年の8月ごろ、外貨準備資産は底をつく。この時、為替市場の伏兵が四方から立ち上がり、中央銀行は“兵”を調達することができず、人民元レートはただ自由落下運動の状態になるだろう』。…」

このほか、論評はいろいろあるのだが、総体的にまとめれば、中国政府の目下の貨幣戦争における戦術は、とりあえず3.3兆もの“弾薬”を使って、宋鴻浜の言うところの欧米国際金融勢力を撃退することから始まるようだ。然る後に中国経済の都合に合わせて事実上の対ドルペッグから変動為替制に移行していく。中国の国際収支状況は良好で、国際競争力も依然強いのだから、長期的に見ればむしろ上昇するはず、そうしたらドルに代わって世界金融の救世主になるのは人民元だ、という極めて希望的シナリオを描いている。

改革を断行する勇気は?

 しかしながら呉裕彬の予測のように“弾薬”が8月に尽きるという予測もある。そもそも、外貨準備を使っての人民元防衛は戦術的に誤りだという指摘もある、と仄聞している。人民元が国際通貨入りを目指すならば、早々に変動為替制に移行すべきで、それによって習近平政権が強引に2割も上げた人民元が2、3割下がるのは必要な洗礼だろう。それよりも遅々として進まぬ国有企業改革や生産調整の大ナタを振るう方が先ではないか、と。どうも、戦術的に戦略的にも、中国内部で方針が絞り切れていないような話もある。

 「通貨戦争」の狼煙は確かに上がっているようだが、中国の真の敵は、外国投機筋でも、日本のマイナス金利でもなく、痛みに耐え抜いて改革を断行する自らの勇気のなさの中にあるのかもしれない。

2/16JBプレス 裴敏欣『中国の恐怖政治の復活 共産党の聖域から、大学の講堂、会社の重役室に至るまで』、2/17ZAKZAK『吉田清治氏と朝日新聞を国連委で名指し 日本政府、慰安婦の強制連行“否定”』について

中国は伝統的に腐敗社会です。上から下に至るまで賄賂を取るのが当たり前の国です。それが、「反腐敗運動」ですって。片腹痛いとしか言えません。このような運動は一に政敵打倒のためだけです。或は下っ端が賄賂の分配を誤った場合に逮捕されるくらいのものです。

習は毛沢東の恐怖政治を真似ているのかも知れませんが、流石に文革のような紅衛兵を扇動して政敵を打倒するようなことはしません。陰険さは変わらないでしょうけど。習や王歧山だって取っているのは間違いありません。温家宝の家族の蓄財もニューヨークタイムズにスッパ抜かれました。

中国経済が二進にも三進にも行かなくなっているので、不平や異論を許すと反逆が起こると習は思っているのでしょう。だから反対派予備軍を弾圧するのです。経済的に力のあるもの、知識人等発言力のある人間を封じ込めておかないと安心できないのでしょう。しかし毛流に言えば「農村が都市を包囲する」です。膨大な数の農民工、盲流、流氓が中国には、います。いくら上の方を押えても数で優る下層階級は抑えられません。解放軍による虐殺が起きるかも知れませんが。経済崩壊後の分配について考えて見ますに、貧しきは益々貧しく、富める者は夜逃げでしょう。早く崩壊させた方が世界平和のために良い。

ZAKZAK記事は中国記事とは違いますが、早くお知らせした方が良いと思い掲載します。(既に御存知かもしれませんが)。小生詳しくはFacebookで知った次第。2/17日経朝刊にベタ記事で載っただけ。マスメデイアはグルとしか思えない。外務省にしては上出来。やればできるのでは。藤岡氏の仰るように米軍調査やマイケル・ヨン氏の論文も提出すれば(北野幸伯氏の提案でしたが)もっと良かったでしょう。嘘をずっと言ってきた中韓はどう反撃するか。朝日はいつも通り卑怯の極みです。日本政府の反撃が始まりましたのでこの事実をもっとアピールして朝日を廃刊に追い込みましょう。

記事

Fence of China

(クレアモントより)中国は毛沢東の時代以来再び、恐怖に支配される時代に入った。共産党の聖域から、大学の講堂、会社の重役室に至るまで、厳しい告発とさらにいっそう厳しい懲罰が、亡霊のように中国の政治界・インテリ界・ビジネス界のエリートたちを追い詰めている。

 恐怖は蔓延し、その跡は各所に見える。2012年12月に習近平による冷酷な反汚職の動きが始まってからというもの、同僚たちの背筋をぞっとさせるような官僚の逮捕は日常儀式になった。

 高官であっても守られることはほとんどない。腐敗した146人の「タイガー」たち(省大臣や地方長官のランクを持つ官僚)が告発されているように、高官たちもまた、しばしば警告なしに逮捕されていく。中国語の辞書には、彼らの突然の失脚を表現して、「秒杀」つまり「秒殺」という言葉が追加されたくらいだ。

 下級役人はさらにひどい打撃を食らっている。自殺報告が増加しているのはその現れだ。メディアは去年だけで28件の報告があると認めているが、実際の件数が28件よりも大幅に上回っていることは確実だろう。この動向を憂慮した共産党の指導者たちは、党支部に対して、反汚職運動が始まってからの役人の自殺データを集めよという任務を課した。

 今や、絶え間ない恐怖の中で生きているのは犯罪者たちだけではないのだ。普段どおりの計画や依頼を習慣的に承認することですら、潜在的な疑惑を生むかもしれないとして、中国の官僚組織全体が恐怖に身をすくめている。

 恐怖のうちにあるのは官僚組織だけではない。学者、人権派弁護士、ブロガー、財界のリーダーたちもまた恐怖を経験している。

 まず大学では、政府がリベラル派の教授たちを告発する通報屋を雇ったおかげで、声高にリベラル派と主張していた学者たちが次々に職を失った。次に弁護士業界では、何百もの人権派弁護士が脅迫を受けたり逮捕されたりした。

 財界のリーダーの中にも一時的に姿を消す者がいた。おそらく反汚職調査官の指図で拘留されていたのだろう。中でも、郭广昌の件は注目を浴びた。郭广昌は70億ドルの純資産を持つ中国で17番目の金持ちで財界の重鎮だ。彼は「司法調査を手伝った」として昨年12月に拘留された。そして数日後に、何の説明もなく、会社の年次会議に現れた。

*  *  *  *

 しかしおそらく、恐怖政治の復活の最も気がかりな衝撃は、外国人に対する影響だろう。恐怖の内にあるのは、西洋のジャーナリストやNGOの代表、外国人会社役員だけではない。一国二制度によって中国の司法管轄外にあるはずの香港の会社役員、出版・編集者たちもそうだ。

 2013年に、巨大製薬会社(SGK=GSKの誤り?)のイギリス人会社員が、彼の調査会社(ChinaWhys)に関する曖昧な容疑で、2年半の服役を宣告された。翌年には、彼の妻とビジネスパートナーであるアメリカ人(出生は中国)が、同じ容疑で2年の服役を宣告された。2015年の12月には、フランス人のジャーナリストが、ウイグルの少数民族に対する中国当局の扱いに関する記事を書いたかどで、国外退去処分を受けた。翌月には、NGOで働くスウェーデン人に国外退去処分が下った。今回は国家の安全保障を脅かした容疑で拘留された後のことだった。

 西洋の巨大企業は、かつては熱心に中国政府に求められていたものだが、今や警察の手入れと反汚職調査におびえている。GSKは2014円(年?)に汚職の責めで5億ドルの罰金を命じられた。これは企業に対する罰金額では最大級の額だ。アメリカの半導体メーカー、クアルコム(Qualcomm)は去年「寡占的ビジネス」だと責められ、10億ドルに近い罰金額を中国に対して支払わなければならなかった。

もっと不穏な話は、中国の指導者たちのゴシップ記事を書く香港の出版社「巨流(Mighty Current)」で働く出版・編集者が、ここ数カ月で5人も失踪したという話だ。2人に関してはどうも、意思に反して中国へ拉致されたようである。1人はスウェーデン国籍なのだが、中国のテレビ局に出るように強制された。そして、到底真実とは思えないが「自分の意思でタイから中国へ戻ってきた」と主張し、「誰も助けてくれるな」と頼んだ。

*  *  *  *

 恐怖政治が1976年の文化大革命の終焉によって終わったわけではないということは明らかだ。そう思っている人は多いし、驚くことではない。中国経済が急成長し近代化したとしても、政治制度は全体主義的特徴を保ち続けている。

 (中国)は法の支配を適用せず、保安機構の諜報員たちは実質上どこにでもいる。検閲が蔓延し、人権の保護は薄い。毛沢東思想の組織的名残はいたるところにあり、今までも決して否定されたことはないし、最高指導者が適切だと思ったときにはいつでも使われるのだ。こんにち、中国で使われているように。

 この事態に西洋は警鐘を鳴らすべきだ。西洋の指導者は、中国の恐怖政治の復活を「中国との国交を構想するための要素である」などと単に分析するだけでなく、中国にこういったやり方を考え直させるための戦略を立てなければならない。

 日ごとに高まる中国の国際的影響力を鑑みても、中国における全体主義的な恐怖政治の復活は、アジアのみならず世界に対して、広範な(かつ、ひどく不穏な)意味合いを持つことになるからである。

ZAKZAK記事

日本政府が国連で、慰安婦の強制連行を完全否定した。「政府発見の資料には軍や官憲による強制連行を確認するものはなかった」「性奴隷は事実に反する」などと説明し、国際社会に誤解が広がった背景として、吉田清治氏と朝日新聞を名指しした。事実上の“断罪”といえそうだ。  これは、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で16日午後(日本時間同日夜)に開かれた、女子差別撤廃委員会の対日審査会合で披露された。  政府代表である、外務省の杉山晋輔外務審議官はまず、昨年末の日韓外相会談で、慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」することで合意したことを説明した。  そのうえで、強制連行説は「韓国・済州(チェジュ)島で女性狩りをした」とする吉田氏による「捏造」で、朝日が吉田氏の本を大きく報じたことが「国際社会にも大きな影響を与えた」と指摘した。内容は「複数の研究者により『完全に想像の産物』であったことがすでに証明されている」とも明言した。  また、「慰安婦20万人」についても、朝日が(戦時中の勤労奉仕団体の1つである)女子挺身隊を「混同した」と説明した。「慰安婦=性奴隷」との表現についても「事実に反する」と強調した。  日本政府が国連の場でこうした事実関係を説明するのは初めて。遅きに失した感もあるが、中韓主導で日本を貶める“歴史戦”で反転攻勢に出たといえそうだ。

朝日(東京本社版)は17日朝刊4面で、今回の対日審査について「慰安婦問題 国連委で日本強調」「不可逆的に解決」の見出しを付けて45行報じたが、自社の大誤報が国連で名指しされたことには一切触れていない。  慰安婦問題に精通する拓殖大の藤岡信勝客員教授は「杉山審議官の説明は及第点だ。慰安婦が性奴隷ではないことを記した米軍の客観的な資料も示して説明すれば、もっと良かった。朝日は肝心なポイントを無視して、自社の責任をほおかむりしている。世界のメディアで、日本に対する誹謗中傷が行われている責任を重く受け止めるべきだ。今回の記事は朝日の体質が表れている。まったく反省していない。報道機関として失格だ」と語っている。

石平著『暴走を始めた中国2億6000万人の現代流民』について

中国経済の不振はチャイル・ショックとも表現され、世界的に認知されて来ました。ゴールドマン・サックスがBRICSと持て囃し、投資を煽りましたが、中国の米国覇権(国際金融資本かもしれませんが)に挑戦する姿勢を見て宗旨替えしたのかも知れません。戦争するよりは経済で相手を痛めつける方が高等戦術です。でも以前のブログで書いた通り、ランド研究所の尖閣の論文を見るとチャイナマネーが跋扈しています。経済を崩壊させれば賄賂もどきの金も使えなくなります。同時に韓国経済も崩壊して、ハニーしか使えなくなります。

宮崎正弘・石平著(二人とも中国経済の崩壊を早くから予見)『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』(P105~106)の中で石平氏は「胡錦濤が共青団を使って人の恨みを買う事を全部習近平にやらせてそれで党を掃除して、次の党大会で自分達が実質的に政権を取ると言う策略です」と述べています。それに対し、宮崎氏は「習は毛を見習うと言ってもそれだと胡がやっていることになる。国共内戦から共産党勝利の道と同じ(漁夫の利を得る)」と応じています。共産党の奥の院の権力闘争は何が真実か分かりません。団派が勝っても、習派が勝っても、共産党の統治システムが残る限り、中国人民にとっては不幸であることは間違いないです。

下は大学にも共産党の魔の手が伸びるという記事です。北京大学も査察と言うのは、日本でも東大に政府が介入するようなものです。ただ、大学の教職員は左翼が圧倒的に多い。これを見て彼らは何も感じないのかと言いたい。

2/16日経には「中国と世界 「反腐敗」で頭脳流出

「末端の腐敗を厳しく処分し、成果を民衆に実感させないといけない」。中国の習近平国家主席は1月、共産党内の会議でこう強調し、汚職摘発をすみずみまで広めるよう指示した。新たに矛先が向かう一つが、大学などの教育機関だ。

Beijing University

 

 

 

 

 

最高学府・北京大学にも春から査察が入る

The number of  Haiguizu's returns

 

 

 

 

 

■研究許可厳しく

 共産党中央規律検査委員会の「巡視組」と呼ばれる査察チームは今春から、最高学府・北京大を調査する。規律委の幹部は1月、大学で教師が不適切な言論を広めていないか監督を強化する方針も打ち出した。

 大学関係者によると、摘発を恐れるあまり研究プロジェクトの許可が各大学でおりにくくなっている。研究ができず余った予算を政府に返納する動きもあるという。ある大学教授は「自由な研究や授業をやりにくい雰囲気がある」と困惑する。

 「自由がほしかった。大学生になっても管理されるのは御免だ」

 広東省出身の周朝陽さん(21)は北京大など国内トップクラスの大学を選べる成績だったが、香港大学を選んだ。「学生補導員」と呼ばれるチューターが学業から日常生活まで管理して党に報告するシステムに耐えられなかった。卒業後も香港で働きたいという。

■150万人の差

 2000~14年に中国から海外に向かった留学生数と帰国者数を比べると約150万人が戻らずに海外にとどまっている。帰国者への優遇制度を始めた2008年以降は帰国する割合が以前よりも改善していたが、14年は出国者が前年比11%増と高い伸びを記録したのに対し、帰国者数は同3%増にとどまった。14年は習指導部が反腐敗運動を強めた時期だ。

 香港大のアナトリー・オレシエンコ准教授は「頭脳流出が起きるかどうかは中国政府が内外の人材を引きつけるために国内の自由度や開放性を高めるか、それともシステムをより厳しくするかで決まる」と指摘する。

 教育機関への統制強化は、不満が民主化などに誘導されないように抑え込もうとする習指導部の意思の表れだ。ただ、自由な研究なしにイノベーションは起きにくい。人材流出が続けば将来の成長基盤も損なわれる。北京のある知識人は「習指導部は成長よりも統制を優先している」と批判する。

(1面参照)

 新居耕治、山田周平、粟井康夫、大越匡洋、小高航、中村裕、阿部哲也、土居倫之、永井央紀、原島大介、森下寛繁が担当しました。」とありました。優秀になればなるほど、自由のない世界に帰ろうとは思いません。況してや、逮捕状もなく拘引される可能性のある国においては。

石平氏は暴動の中には就職できなかった大卒も入るのではと書いていますが、海亀族までは無理のようです。また本当に解放軍が大衆に発砲しないかどうか分かりません。どうなるにせよ、中国は軍事的にも経済的にも追い込まれています。暴動→難民(飛行機での避難民も出て来るかも。金を持っている悪い奴かもしれません)の発生に政府は対策をキチンと考えていてほしい。

内容

P.32~34

不動産バブルの崩壊は、別の側面においても中国の消費拡大に大きな打撃を与えることになるだろう。不動産価格が大幅に落ちていくなかで、不動産を主な財産として持っている富裕層や中産階級が、その財産の多くを失うことになると予想されるからだ。財産が失われた後には、多額のローンだけが残る。

中国政府が内需拡大の主力として期待している人々が、苦境に立たされることになるのだ。結果、中国の内需拡大はますます絶望的なものとなってしまう。 中国では、経済成長の失速はすでに鮮明になっている。それに加えて、不動産バブルの崩壊と、それにともなう一連のマイナス効果……中国経済の先行きは、さらに深刻な状況 とならざるをえない。

財政事情が悪化し続ける理由

不動産バブルの崩壊は、深刻な問題をも引き起こすことになる。二〇一五年三月一七日、中国財政部がこの年一月〜二月の全国財政収入の伸び率が前年同期比で三.ニ%増であったと発表した。

日本の感覚からすれば、財政収入三.ニ %増は悪くない数字だ。しかし、中国の場合は事情がまったく違う。

たとえば、ニ〇〇六年からニ〇一〇年までの五年間、中国の財政収入は毎年平均してニ一.三%の伸び率を記録してきた。とりわけ、ニ〇一一年のそれはニ四.•八%増という驚異的な数字であった。

しかし、その三年後のニ〇一四年、全国財政収入の伸び率は八.六%に……ピーク時の約三分の一に急激に落ちたことになる。そして先述の通り、二〇一五年一月〜二月の伸び率はさらに落ちて三.ニ%増にまで落ち込んでしまった。中国政府にとっては、衝撃的な数字であったに違いない。

その数年前までは、毎年の財政収入が急速に伸びていたから、中国政府は二桁の国防費増加を図り、思う存分、軍備の拡大ができた。また、国防費以上の「治安維持費」を捻出することによって国内の反乱を抑え付け、なんとか政権を死守してきたという面もある。そして、潤沢な財政収入があるからこそ、中国政府はいつも莫大な財政出動を行うことで景気にテコ入れし、経済成長を維持できたのである。

いってみれば、共産党政権の安泰と中国政府の政治•外交および経済の各面における統治能力の増強を根底から支えてきたのは、高度成長に伴う急速な財政拡大だたのでる。しかし現在の中国では、これまでのような「お金はいくらでもある」というハッピーな時代は終わろうとしている。

もちろん、財政収入が伸び悩みの状況になっていても、習近平政権は軍備拡大のテンポを緩めるようなことは絶対しないだろう。政権を死守するためには「国防費」や「治安維持費」を増やすことはあっても、削ることはまずない。ということは、中国政府の財政事情はますます悪化していくこととなるはずだ——。

P.156~157

世界史上最大の金融バブルの規模

中国国内では一時、M2 (中央銀行から発行され、国内で流通している通貨の総量)が一〇三兆元にものぼった。ドルに換算すれば、アメリカ国内で流通している貨幣総量の一•五倍である。中国の経済規模はアメリカの半分程度だから、その過剰流動性は深刻な事態といわざるを得なかった。

まさに「札の氾濫」である。

ニ〇〇ニ年初頭には、中国国内で流通する人民元の量は一六兆元程度だった。それがニ〇一三年には一○三兆元にまで膨らんだのである。十一年間で増えた流動性は、実に六• 四倍……これは世界経済史上最大の金融バブルだ。

すると中国は、二〇〇九年末から深刻なインフレに襲われることになった。これまでにも説明してきたように、食品などの物価の高騰は、貧困層をさらなる生活苦に追いやることになり、それは社会不安の拡大、さらには共産党政権の屋台骨を揺るがす事態にもつながりかねない。そのため、中国政府は「札の氾濫」で生まれたバブルから一転金融引き締めに走ることになった。

こうした流れのなか、不動産市場の生死を決める重大な措置が採られた——。

ニ〇一三年九月のことだ。北京、上海、広州などにおいて、複数の商業銀行が住宅ローン業務の停止を一斉に発表したのである。この動きは、その後も成都、重慶、南京といった地方都市の銀行でも、住宅ローン業務の停止、あるいは貸し出し制限という形で続いた。

金融不安が拡人しているなか、リスクの高い不動産関係の融資から手を引こうということだ。それは銀行の保身のためだったのだが、そのことが何をもたらしたかを説明していこう。

不動産の売れ残りが六〇〇〇万件

銀行で住宅購入のローンが組めなくなったわけだから、中国の人々は家を買うことができなくなる。大半の人は、銀行のローンで家を買うからだ。結果、全国で不動産が売れなくなり、在庫が大幅に増える。

P.214~216

中国における流動人口とは、安定した生活基盤を持たず、職場と住居を転々としている人々を指している。そんな人たちが、日本の総人口より一億人も多く存在しているのが中国という国の実情なのだ。

不安定な生活を強いられている流動人口、その大半が農村部から流れてきた農民工である。先述したデー夕の「八割が農村戸籍」とは、そういう意味だ。

ということは、現在の中国には、いつでも何かのきっかけで暴動を起こすかもしれない人々が、ニ億人以上も存在するわけである。

ニ億人以上の「暴動者予備群」—-そう考えると驚くべき数字だし、政府にとっては恐怖以外の何物でもないだろう。

それだけの数がいる以上、彼ら全体がまとまって集団的に爆発すれば、共産党政権は跡形もなく吹き飛ばされてしまうかもしれない。

ニ億人を超える現代流民、すなわち暴動者予備群に対して、中国軍は数百万人程度でしかない。本格的な暴動が、地方ではなく中央で、もしくは中国全土で一斉に起きてしまったら、それを鎮圧することは軍隊をもってしても不可能だろう。 現代流民たちが持つ潜在的な力は制御できないほどのものにまで、強まっているのだ。

高度成長に必要だった二億六〇〇〇万人

ではなぜ、これほどまでに多くの農民エたちが生まれることになってしまったのか„ 彼らはなぜ、生活基盤のあった故郷の農村から離れて、都会で不安定な「流動生活」を送らなければならなくなったのか。

実は、そこには中国の経済成長が大きく関係している。中国の経済成長とは、彼らの犠牲の上に成り立つものだったのだ。

これまで何度も書いてきたように、ここまで中国経済を引っ張ってきたのは対外輸出の継続的拡大だ。二〇一〇年までの二○年間には、中国経済全体の成長率が一〇%ほどだったのに対し、対外輪出の伸び率は毎年ニ五%以上。世界中で中国製の「安物」がシエアを拡大し続け、外貨を稼いできた。

なぜ安く商品を作ることができたのかといえば、人件費が安いからだ。そして、安い賃金で働いてきたのは誰かといえば、結局は農村部出身の労働者なのである。

若き出稼ぎ労働者たちは、内陸部の農村から沿岸地域に流れ、そこで働くことになった。働く場所はといえば、主に輸出向けの加工産業といった、低質金のエ場である。

彼らが安い賃金で働くことで、中国の対外輸出の継続的拡大、つまり安い商品を大量に売ることが可能になった。そしてそれが、中国の経済成長を支えてきた。

逆にいえば、中国が高度成長を果たすためには、ニ億六〇〇〇万人もの流動人口を必要としたということでもある。

P.254~263

流民ネットワークの誕生

農民工、すなわち現代流民たちの苦しい生活がこのまま続けば、彼らの怒りや不満は溜まる一方だ。

これまでは職場ごと、地域ごとにグループを作ったり、連帯したりしてきたが、これからはインターネットを使った連携も盛んになってくるのではないか。 「こんな生活にはもう耐えられない」「今日は仲間がこんな酷い目にあった」そんなことを報告し合う。つまり全国単位で、不当な差別や社会への絶望といった思いを共有するのである。

こうした「流民ネットワーク」を禁止しようとしても、おそらく無理だろう。「流民サイト」を一つ潰したところで、新しいサイトが出てくるだけ。その一切を漬すには、中国全体でインターネットを使えなくするしかない。

しかし、そんなことをしたら、一般市民が黙ってはいないはずだ。政府への怒りを、別の形で高めてしまうことになる。

流民たちが不満をいい合っているだけなら良いのだが、彼らは何かのきっかけで暴走する。警官の暴力などから、デモや車を燃やすといった事態に発展してきた例は、本書で見てきた通りだ。

流民たちがネットワーク化すれば、その規模はいままでよりも大きなものになるだろう。一つの街のなかだけの話ではなく、ネットで状況を知った近隣の街からも「応援」が来る可能性が高い。

ただそれでも、警察、あるいは軍の出動によって、街単位の騒乱は鎮圧されてしまうはずだ。といって、それで終わりというわけではない。

鎮圧された者たちは国への、そして社会への怒りをさらに強めて、地下に潜ることになる。そうしてでき上がるのが、より過激な反体制グループだ。

暴動、鎮圧、流民グループの先鋭化—そうした流れを繰り返していくうちに、反体制グループはどんどん巨大化していくことになる。「筋金入り」の、いい換えるなら「プロ」として反政府活動に生きる人問たちが大量に存在するようになるのだ。

新種の流民とは誰か

そうしたなかで、知識人たちもこの動きに加わることになるだろう。 経済の崩壊は誰にとっても深刻な問題だし、知識人たちは頭脳明晰だからこそ、流民たちの苦境を放っておくことができない。これまで見てきたように、そのことは「歴史の必然」だといえる。

知識人たちが反体制側に加わることで、グループはより組織化され、効率的に活動するようになるだろう。また知識人たちは流民たちのリーダー、そして代弁者となり、アピールカも強めていく。

そうなれば、彼らに共鳴する人間はさらに増える。このことは、先述の通り、中国の歴史が証明している。

そこに新たに加わることが考えられるのが、新種の「流民」だ。それは、大学を卒業しても就職できなかった若者たちである。

中国では大卒者が年々増えているが、全員が一流企業に就職したり、官僚になったりするわけではない。経済が落ち込むなかで、約〇%が就職できないといわれている。その数は、五年でおよそ五〇万人だ。

二○一四年までに、大卒の若者ニ○○万人が失業した。これに二○一五年の一五〇万人を合わせれば、大卒の求職者は三五〇万人に達することになる。彼らもまた、行き先も未来への希望も失い、現代流民になる可能性が高い。

彼らがデモや暴動を起こすことは充分にありうるし、特に農村部にある大学は就職できない卒業生が多いから、農民エたちと心情を同じくする者も多いだろう。彼らがデモや暴動を起こせば、中国にとっては新たな火種、さらに農民エから流民、そして反体制派になった組織と合体すれば、その火種はさらに大きなものとなる。 ここで重要なのは、知識人や大卒者と貧しい農民エたちが合体することだ。かつて、中国では天安門事件が起きた。このとき、天安門広場に集まった学生は一〇万人といわれている。

しかし、これから作られるであろう反政府組織は、知識人と元大学生だけで数百万という潜在的な数がいる。農民エにいたっては約ニ億人である。

まして、天安門事件には、一般市民の多くは関心を持たなかった。額に汗して働く人々にとって、あれは学生たちの「遊び」にしか見えなかったのだ。いわば「金持ちの子どもたちの革命ごっこ」だったのである。日本における学生運動も、似たようなところがあったのではないだろうか。

しかし、これから起きるであろう反体制運動は違う。知識人や元学生、労働者が一体となった運動だ。一部の富裕層を除けば、誰もが関心を持つだろうし、その勢力は凄まじいものになる。

共産党vs.農民党

仮に、この反政府組織を「農民党」としよう。

知識人、元学生、そして農民エたちの半分が参加したとして、その数たるや一億人。しかも各地でバラバラに動くのではなく、インターネットを通じてつながり、知識人のリーダーによって強固に組織化されている。

こうなれば、もう反体制勢力というより、巨大な政治組織といっていい。共産党もその存在を無視できなくなるし、弾圧や鎮圧をするのも不可能になってくるはずだ。

たとえば、である。リーダーの呼びかけによって、農民党のメンバーとその賛同者五〇〇万人が、一斉に大都会、北京に集結したとしよう。

東京ドームなどのスタジアムを想像してほしい。そこでコンサートが行われると約五万人の観客が集まる。その客たちが一斉に会場を出ると、最寄りの駅までの道は大混雑。まともに歩けないような伏態になる。

もし、その一〇〇倍もの人々が北京の主要な道路を埋め尽くし、座り込みを始めたらどうなるか。北京の都市機能は、確実に麻痺してしまう。

もちろん、いかに大量の「軍勢」がいても、現代において武力で革命を起こすことは不可能だ。しかし軍隊のほうも、彼らを排除するために大量の死傷者を出すようなことはできない。

農民党全体を逮捕することも不可能だ。警察と軍隊にはそれだけの人員がいないし中国全土の刑務所を使ったとしても、一億人を収容できるわけがない。

結局、共産党は農民党と向き合い、交渉するしかなくなるだろう。その結果はどうなるか。農民党を一方的に押さえつけることはできないから、ある程度以上、彼らの要求を認めていかざるを得ない。その形が固まるとしたら・・・・。

つまり、中国で二大政党制が実現することになる。いずれ普通選挙も実現することになるはずだ。ということは、共産党一党独裁体制が崩壊するということである。

共産党内部からの離反者たちの名前

ことは「共産党VS農民党」だけではなくなるかもしれない。

共産党のなかにいる反主流派の人間たちが、反体制勢力を利用して政治闘争を展開していく可能性もある。出世しそこなったり、抑圧されてきたりした人間たちが主流派の突き崩しを狙うのだ。

習近平指導部は、その発足以来、「トラもハエも叩く」というスローガンを掲げて党内の腐敗摘発に手を尽くしてきた。そのことで民衆の支持を得て、政府への信頼を高める効果もあった。

習近平体制にとっては、腐敗を摘発することが、権力基盤を固める有力な武器となってきたのである。

共産党の幹部たちにとって、腐敗は何かしら身に覚えがあるもの。習近平の姿勢には、 誰も逆らうことができない状態だった。しかし、腐敗の摘発は、習近平体制にとって諸刃の剣でもある。

これまで、周永康や徐才厚といった大物幹部が次々と「血祭り」に上げられてきたが、そのことは民衆の期待をますます煽ることになった。

そうなると指導部としては、腐敗の摘発の手を緩めるどころか、ますますヒートアップさせていく必要がある。それが民衆の期待に応え、習近平体制を維持することにつながるからだ。

しかし、摘発が進めば、党幹部の大半が身の危険を感じることになる。反発を招くのは自然な流れだ。ニ〇一五年七月の上海株暴落も、弾圧を受けた江沢民グループが画策したものとする報道もある。

『人民日報』の習近平への「警告」

そんななか、ニ〇一五年一月一三日付の『人民日報』が興味深いコラムを掲載している。習近平指導部による腐敗摘発に対して「三つの誤った議論」が広がっていると指摘したのだ。

その一つが「やり過ぎ論」である。これは文字通り「いまの腐敗摘発はやり過ぎである」というもの。

もう一つの「泥塗り論」は、摘発運動によって共産党の大幹部たちの腐敗の実態を暴露したことが、逆に政権の顔に泥を塗ることになるのではないかという議論だ。

三つ目は「無意味論」。政権内では腐敗が広く浸透しているのだから、どれだけ摘発しても撲滅するのは不可能。「やっても無意味」というわけだ。

「やり過ぎ論」と「泥塗り論」は、政権を守るという立場からの内部批判だろう。一方、 「無意味論」は、共産党の腐敗摘発を外部、すなわち民間の立場から冷ややかに見ているもの。いずれにしても、共産党中央委員会の機関紙である『人民日報』が、腐敗摘発運動に対する枇判の声があることを公に認めたのである。

特に党内から反発や批判の声が出ていることは、習近平体制にとって由々しき事態というほかない。

同じ一月一三日には、新華社通信も「腐敗摘発はいいところで収束すべきだ」という党内の意見を紹介した。それだけ、反発が強まっているということだ ——そこで、習近平主席はどのような手を打つか。

一つは、新華社通信が紹介した意見のように、「いいところ」で腐敗摘発の手を緩めること。そうすれば、党内の融和と安定を図ることができる。ただ、それをやることで、民衆が「裏切られた」と感じ、政権への信頼が失墜してしまう危険性がある。

もう一つの手は、民衆の期待が高まるままに、それに応えて腐敗摘発を続けること。し かしそれでは、党内からの反発がさらに強まり、やがては権力基盤を揺るがしかねない。

党内の別の派閥が反•習近平の権力闘争を引き起こす可能性もある。もし農民党が力をつけ、共産党と張り合うようになれば、そちらに味方する共産党幹部も現れるだろう つまり、現在の習近平体制は「進むも地獄、退くも地獄」という状態にあるといっていい。

そうしたなか、習近平は中央規律検査委員会の全体会議で、「反腐敗闘争は持久戦だ」と演説している。反腐敗運動を継続させていく方針を明確に打ち出したのだ。共産党内部からの離反を招く可能性があるにもかかわらず、である。

2/12日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「THAADは核攻撃の対象」と韓国を脅す中国 朴槿恵が二股外交のツケを払うのはこれからだ』について

蝙蝠外交、二股外交をすればこういう展開になることが想像できない哀れな事大主義の民族です。かつ告げ口外交までしましたから日本人の自虐史観を薄める役目も果たしました。朝日新聞を始めとした偏向左翼メデイアのおかしさに国民も遅まきながら気づき始めました。通貨スワップについても反対する国民が多いと思います。困ったからと言って今更擦り寄って来られたって相手できません。「裏切り者は地獄だぜ」という片岡千恵蔵の映画がありましたが(大分古い話です)、地獄まで飛んでいけという気持ちです。

韓国が嘘を言って米中に取り繕っているのは、米中とも分かっているはずです。信用はしないが、利用価値があるうちは利用すると言うのが大国というのが韓国は分かっていない。だから小沢一郎のような米中二等辺三角形のような話をするのです。自分にそんな力もないのに。思い上がるのも程があります。

中韓とも民族的に平気で嘘が付けます。騙す方が賢いと言う民族ですから、黒を白と言いくるめることができる人間が評価されます。慰安婦問題も事実が何であれ、このまま日本に悪を認めさせることが彼らの社会では評価されるという事です。誠実、謙虚を旨とする日本人とは民族が違います。だからと言って事実と違う事を黙って見ているだけでは臆病者の謗りを免れません。外国相手の理不尽さには徹底的に戦うべきです。

Xバンドレーダーは青森・車力と京都・経が岬に、既に配備されているようです。沖縄には残念乍ら未だのようです。翁長県知事のように北のミサイルについて他人事しか言えない人を選んだ責任は沖縄県民にあります。県民の生命の安全を願うなら、基地問題は別にして直ぐに配備すべきです。

Xband radar

(安保廃棄実行委員会HPより:http://homepage3.nifty.com/anpohaiki/beigun_kichi.html )

 

 

 

 

 

 

 

Xband Shariki & Kyougamisaki

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Xband Okinawa

車載移動式Xバンドレーダー「AN/TPY-2」を3基セットすれば全域カバーできます。

(大日本赤誠会愛知県本部HPより抜粋)

http://blog.goo.ne.jp/sekiseikai_2007/e/97c1322e3124974f4ec787ec9ef2b642

 

 

 

 

 

記事

THAAD

地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD) 写真=U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ

前回から読む)

 韓国が地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備受け入れに動く。「中国の言いなりになるな」と米国に怒られたからだ。だが今度は、面子を失った中国から苛められることになる。

習近平が直接に命令

—韓国が米軍のTHAAD配備を認めるようですが。

鈴置:韓国国防部は2月7日、在韓米軍基地へのTHAAD配備に関し「米国との公式協議に入る」と発表しました。

 今後、北朝鮮の核問題で解決に向けてよほどの進展がない限り、配備を容認すると思われます。中国から極度の脅迫を受けたら、韓国は受け入れを中止するでしょうけれど。

 北朝鮮の核・ミサイル開発が進むに連れ、米国はグアムなどにTHAADを置いて迎撃体制を整えてきました。当然、有事となれば真っ先に攻撃を受ける在韓米軍基地にも配備する方針を打ち出しました。

 すると中国は韓国に対し「配備を絶対に認めるな」と圧力をかけました。2014年7月の中韓首脳会談では、習近平主席が「主権国家なら反対すべきだ」と朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に直接、要求したようです。

 中央日報が「習近平『大韓民国は主権国家……朴槿恵大統領にTHAAD拒否要請』」(2015年2月6日、日本語版)で、韓国国防関係者の話として報じています。

板挟みで「おとぼけ作戦」

—米中間で板挟みになったわけですね。

鈴置:韓国は「THAAD配備について米国から打診は一切ない」と言い張って、誤魔化そうとしました。

 2015年3月には青瓦台(大統領府)が「3NO」という言葉まで作りました。「米国から配備の要請もなく、従って協議したこともなく、だから何も決めていない」――と言うのです。しかし、ついに「3NO」という、苦肉のおとぼけ作戦も持たなくなったのです。

—突然の配備容認は、北朝鮮が核と長距離弾道ミサイルの実験をたて続けに実施したからですか?

鈴置:ええ、1月6日の4回目の核実験と、2月7日の長距離弾道ミサイル実験が引き金です。厳密に言うと「ここに至っても拒否するのか」と怒る米国に対し、抵抗できなくなったのです。

 在韓米軍が韓国を守っているのです。韓国の国民に加え、その基地を防御するためのTHAADを、守られている韓国政府が拒否する――。同盟国とは思えないやり口です。

 これ以上拒むのなら、米韓同盟には取り返しのつかない亀裂が入るところでした。米国の安全保障関係者からは「韓国との同盟はいつまで持つか分からない」との声さえ上がっていたのです。

オバマから叱られた

—日韓の「慰安婦合意」といい、米国がこのところ対韓圧力を強めていますね。

鈴置:韓国の裏切りが目に余るようになったからです。「米中星取表」で明らかなように、米中対立案件で韓国はほぼ、中国の言うことを聞くようになりました。そして2015年9月、中国が開いた抗日戦勝70周年記念式典に朴槿恵大統領が参加したのが画期となりました。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2016年2月11日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導のMDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍へのTHAAD配備 韓国は米国からの要請を拒否していたが、2016年2月7日に「協議を開始」と受け入れた
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の南シナ海埋め立て 米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝70周年記念式典 米国の反対にも関わらず韓国は参加

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 この式典は中国の軍事力を見せつけるのが狙いでした。メーンイベントである軍事パレードでは、米国を射程に収めるミサイルも行進しました。

 参観した首脳は権威主義的国家のトップが多く、米国の同盟国からは朴槿恵大統領ぐらいだったのです(「韓国は『帰らざる橋』を渡る」参照)。

 天安門の壇上で習近平主席、プーチン大統領らに囲まれた朴槿恵大統領の写真は世界に配信されました。この実に分かりやすいメッセージにより、韓国の「離米従中」は米国の外交関係者の共通認識となりました(「ルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いた韓国」参照)。

 10月に訪米した朴槿恵大統領は記者団の前でオバマ大統領から、中国の言いなりになるな、と叱られました(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

朴槿恵の世界観が崩壊

 12月末の「慰安婦合意」でも、朴槿恵大統領は妥協の絶対条件に掲げていた「国民が納得する日本の謝罪」を勝ち取れませんでした。

 「慰安婦を言い訳にして米日韓の3国軍事協力から逃げるな」との米国の圧力に屈したのです(「掌返しで『朴槿恵の親中』を批判する韓国紙」参照)。

 「合意」には「問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認」との文言が盛り込まれました。韓国は「慰安婦カード」を捨てさせられたのです。これも米国の差し金だったと言われています。

 米軍関係者の最近の言説から判断して、THAADの問題でも米政府高官は韓国高官に「中国の言うことばかり聞くのなら、在韓米軍を撤収する」くらいは言ったと思います。

 そんな米国の「最後通牒」に直面した朴槿恵政権は、折れざるをえなかったと思われます。米中を競わせて操ろうとした韓国ですが、米韓同盟廃棄につながる在韓米軍撤収に踏み切る覚悟はありません。

 韓国が頼りにしていた「中国の台頭」にも疑問が付くようになりました。中国発の世界恐慌が懸念されるほどになったのです。「米国は沈む太陽、中国は昇る太陽」との、朴槿恵外交の前提となった世界観が崩壊してしまったのです。

丸腰だった韓国

—THAADは効果があるのですか?

鈴置:専門家によると、常に100%の敵のミサイルを撃ち落とせるとは限らないそうです。しかし韓国はこれまでミサイルに対する防衛能力をほとんど持っていませんでした。それから考えると大きな前進でしょう。

 韓国軍が保有する唯一のミサイルを迎撃するミサイルは旧式のPAC2。射程が短いので対応可能な時間が少なく、北朝鮮から発射されたミサイルを撃ち落とすのは難しいとされています。

 韓国は米国や日本が装備する海上発射型のSM3のような、大気圏外で迎撃するミサイルも持っていません。はっきり言えば、丸腰だったのです。

 THAADはSM3ほどではありませんが、PAC2やその発展形のPAC3よりも高空で敵のミサイルを落とせます。配備すれば丸腰状態から脱することができます。

—在韓米軍基地へのTHAAD配備は、軍事的にかなり大きな意味があるのですね。

鈴置:政治的にも極めて大きな意味があります。韓国は米国の核の傘に不信感を持ち始めました。

 仮に北朝鮮が米国に対し「南北の軍事衝突に介入したら、ロサンゼルスを核攻撃する」と宣言した時に、米国が韓国を助けてくれるのか、との疑問です。この疑いは、北が核ミサイルを持つ可能性が高まるほどに――時間とともに、深まります。

米国の傘の綻び

—だから韓国で核武装論が叫ばれているのですね。

鈴置:その通りです。米国の核の傘が信じられない以上、自分で核を持つしかない――との発想です(「やはり、韓国は『核武装』を言い出した」参照)。

 韓国にとってもう1つの解決法は、米国の核ではなく中国の核の傘の下に入る手です。北は中国に経済的に完全に依存しています。中韓同盟により、中国が韓国を助けようとした際「それなら瀋陽を核攻撃する」と北は言えないのです。

—つまり、在韓米軍に配備されるTHAADとは……。

鈴置:米国の核の傘を補強するという、心理的、政治的な意味も持つのです。米国は北朝鮮に対し核兵器で報復してくれないかもしれない。でも、北の核や通常弾頭のミサイルをそれなりに撃墜できることになれば、北の核の脅しの威力も半減するのです。

 この安心感により、米韓同盟の信頼性がかなり増す計算になるのです。そもそも、米国がTHAADを開発したのは、核を持たない同盟国を安心させるのが目的だったとの解説もあります。

 逆から言えば、中国が韓国に「THAADを配備させるな」と命じたのも、韓国人に米国の核の傘の綻びに目を向けさせ、米韓同盟を消滅に追い込むのも目的だったのです。

日本にすでにXバンドレーダー

—中国はTHAAD反対の理由に「自国の脅威になる」ことを掲げていましたが。

鈴置:THAADの一部である高性能のXバンドレーダーが中国の上空を奥地まで見通してしまうから、との理屈です。確かに中国は海岸から遠く離れた山奥に、ICBM(大陸間弾道弾)の発射基地を構えています。

 しかし日本の専門家によると、中国の主張はへ理屈だそうです。なぜなら米軍は日本の2カ所にXバンドレーダーを配備済み。新たに韓国に配備しても、さほど偵察能力は増さないからです。

 要は、中国は色々と理屈を挙げて韓国を脅し、韓国を米国から引きはがそうとしてきたのです。

—THAAD配備には自分たちの命がかかっています。それを中国の圧力くらいで拒否してきたとは……。ここが分からないのです。

鈴置:THAADが必須の武器とは思っていないからです。北朝鮮は同族である自分たちに核は使わないだろう、と韓国人は心のどこかで思っています。

中国のイジメに戦々恐々

—平和ボケは日本人だけではないのですね。

鈴置:もちろん、そんな「平和ボケ」を批判する識者もいるのですが、左傾化した韓国社会で彼らは「戦争好き」などと見なされがちです。

 それに「中国の命令には逆らえない」のが韓国の空気です。千年以上も中華帝国の一部だった後遺症です。ここが日本人には分かりづらい。米国人も「なぜ韓国人はこれほどに中国の言いなりになるのか」と首を傾げます。

—結局、THAAD配備の容認を期に、韓国は米国側に戻るのですか?

鈴置:それはまだ、判断できません。「米中星取表」の「在韓米軍へのTHAAD配備」の項目は、正式な協議が始まったことを考え、米国の「▼」を「△」と変えました。

 ただ「○」にはしませんでした。中国の横やりにより、韓国が配備に「NO」と言い出す可能性が若干ですが残っているからです。

 「THAAD」以外の対立案件は、いまだ中国優勢です。朴槿恵政権が「離米従中」外交をやめると結論を下すのは早計だと思います。

「私は悪くないからね」

 韓国は今、中国からどんなイジメに遭うか、戦々恐々としています。象徴的だったのが「THAAD配備を公式に協議する」と発表した2月7日の国防部の会見です。

 聯合ニュースの「韓米、在韓米軍THAAD配備を公式協議……北の核・ミサイルに対応」(2月7日、韓国語版)の記事に添付された動画によると、柳済昇(リュ・ジェスン)国防部政策室長の発言には以下のくだりがあります。

  • 協議開始の決定は、韓米連合司令部司令官兼在韓米軍司令官であるカーチス・スカパロッティ(Cartis Scaparrotti)大将の建議により行われた。
  • 今後、THAADが配備されても、それは北朝鮮に向けてだけ運用される。

 中国への言い訳です。「配備は米国から言われてやったこと。韓国から言い出したのではないからね」「中国向けには運用しないよう、米国には私から念を押しましたからね」と、韓国は叫んだのです。

—北朝鮮にだけ向けて運用するなんてことができるのでしょうか。

鈴置:韓国国防部は「Xバンドレーダーの探知距離を短くして運用する」とレクチャーしています。ただ、ある日本の専門家は「米軍が兵器の性能をわざわざ落として使うことは考えられない」と語っています。

北より南の大使に厳しい中国

—配備容認に中国はどう出ましたか?

鈴置:激怒しました。公式には7日、外交部が駐中韓国大使を呼び「THAAD配備のための公式の議論を始めたことに抗議し、中国の厳正な立場を表明」しました。

 なお、中国外交部は同じ2月7日に北朝鮮の駐中大使も呼んでミサイル実験に対し抗議したのですが「厳正な立場」ではなく「原則的な立場」の表明に留めました。

 中央日報は「中国、南北大使それぞれ呼んで抗議…南には『厳正な立場』、北には『原則』表明」(2月8日、韓国語版)で、国連安全保障理事会の決議に違反した北朝鮮よりも、自衛の武器導入を図る韓国に対し、中国がより厳しい姿勢をとったと指摘しました。

THAADを信じるのか

—韓国も舐められたものですね。

鈴置:中国共産党の本音を報じる環球時報の英文版、Global Timesの社説はもっと露骨でした。「Discussion of THAAD deployment is shortsighted move of Seoul and Washington」(2月7日)は威嚇そのものです。要点は以下です。

  • もし、THAADが韓国に配備されるなら、戦略と戦術の両面で中国の軍事的な調査目標に公式に選ばれるだろう。
  • 韓国や米国の言うままに、THAADの目的が北朝鮮抑止だけにあると我々は信じたりはしない。我々は韓国の戦略を現実的な視点から観察せねばならない。

 「戦略的な軍事目標に選ぶ」とは核攻撃の対象にする、との意味です。中国は核で脅し始めたのです。続いてGlobal TimesはTHAADの弱点も突きました。

  • ミサイル防衛システムは大国間の戦争で実際に使われたことはない。それゆえに効果は理論上のものに留まる。THAADの韓国配備は軍事的というよりも、政治的に重要だと見る専門家もいる。

 THAADは敵のミサイルをすべて撃ち落とせるとは限りません。敵が一度に大量のミサイルで攻撃してくれば、防ぎきれなくなるからです。

 Global Timesは韓国に対し「そんなあやふやなものを信じ、米国にすがりつくのか」と嘲笑ったのです。そして最後に、韓国を脅し「二股外交はもう、無理だぞ」「米国にいい顔をするということは、中国の顔に泥を塗ることだ」と諭したのです。

  • 朝鮮半島の緊張が高まり、ついには対決に及ぶかもしれない。こうなった際、いかなる国の利益も害さない全方位外交などというものはあり得ない。であるから関係国は中国の立場に挑戦する決定を下す前に、慎重に考えるべきである。

スワップを打ち切るぞ

—韓国はどうするのでしょう?

鈴置:展開が読めません。もう、自分の意思では動けなくなっているのです。今の時点は米国に従っています。でも、中国に本格的に凄まれたら、後戻りするかもしれません。

—中国が軍事的な脅しをかける、ということですか。

鈴置:それもあります。もっと手っ取り早い手もあるのです。経済面で脅せばいいのです。今、人民元安と原油安の2つから世界は前例のない不況に直面する、との懸念が高まっています。一部の国では金融危機が起きるかもしれません。

 中国からの資本逃避が起きて人民元が暴落すれば、真っ先に韓国が連座すると韓国紙は警戒しています。貿易でも金融でも、韓国は中国にオールインしているからです。

 というのに通貨の同盟は中国と結んだまま。米国側に戻ってはいないのです。資本逃避に見舞われた際、命綱となるのが通貨スワップです。でも韓国は日本や欧米とは結ばず、何と70%が中国頼りです(「韓国の通貨スワップ」参照)。

韓国の通貨スワップ(2016年2月11日現在)

   
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年 10月11日 2017年 10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年 10月13日 2016年 10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年 10月20日 2016年 10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年 2月23日 2017年 2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年 3月6日 2017年 3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年 7月17日  

<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)はIMF融資とリンクしない場合は30%まで。

資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

 もし中国が「THAAD配備を認めれば、通貨スワップを破棄するぞ」と言い出したら、韓国は手も足も出ないのです。

 旧正月の連休明けの2月11日、KOSPI(韓国総合株価指数)は前営業日比2.93%安い1861.54で引けました。この日もそうでしたが、2015年12月初め以降ほぼ連日、外国人が売って機関投資家が買い支えるという展開が続いています。

(次回続く)

2/10JBプレス 部谷直亮『日本外交の大転換、台湾の位置づけが一気に上昇 中台有事に日本が駆けつけることに?』について

本記事を読んで、昨年8月の首相談話を思い起こしました。「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました」にありますように、台湾を国と認め、なおかつ韓国・中国より先に言及したことにより、台湾をその両国より大事にしたいという思いが伝わってきます。蔡英文次期総統が昨年訪日した時に日本との「産業同盟」について触れていましたが、日本側から実質的に准「軍事同盟」にまで発展させる気があると言うのが本記事です。米国の考えor圧力があって岸田外相発言に繋がったのかもしれませんが、親日国台湾との付き合い方は、日本の安全存立に非常に大切な存在と認識・交流していくことであるというのは言を俟ちません。第一列島線を突破されたら簡単に日本海と太平洋で挟み撃ちになります。また台湾が自由民主主義陣営である限り、南シナ海・東シナ海に睨みがきくと言うもの。ただ中国人の子孫の外省人が支持する国民党(今は外省人でも民進党を支持する人が増えているとのことです)が消えていくこと、それに軍が中国同様、台湾軍でなく国民党軍(郝柏村がまだニュースで出てきますので)になっているように見えるのも問題です。蔡英文次期総統が時間をかけて変えていく必要があると思います。でないと情報が国民党軍を通じて中国にリークされかねません。

台南地震被害のお見舞いとして「李登輝友の会」に寄付しました。当初は日本赤十字にと思ったのですが、中華民国赤十字は中国人にありがちな横領等やっているという記事をネットで見ましたので。「李登輝友の会」は直接台南市長に渡すそうです。

また思い出したのが野田聖子です。南シナ海で起きていることを「日本とは関係ない」と明言しました。彼女が総理大臣になれば(まあなることは100%近くないと思いますが)、南シナ海はおろか台湾も「日本に関係ない」と言って見捨てるのでは。福島瑞穂と同じ日本の安全を脅かす存在です。選挙民はこんな女性を選ばないようにしてほしい。

記事

1月16日の台湾総統選挙は、民進党の蔡英文氏の圧勝によって終わりました。この件について、日本外務省は世界でも早い段階で祝意を表しましたが、その内容は驚くべきものでした。

 端的に言えば、「台湾は日本が解禁した限定的な集団的自衛権の対象である」と婉曲ながらも直載に表明したのです。

岸田外相、台湾を中国や韓国以上の存在と言明

 まずは岸田外相の台湾総統選挙の結果についての談話を見てみましょう。

(前略)

2. 台湾は日本にとって、基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人です。政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえ、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていく考えです。

(後略、太字は筆者)

 ここから読み取れる特徴は、日本における台湾の政治的地位が米国に次ぐものであり、中国や韓国よりも格上であると表明したことです。

 岸田外相は、「基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人です」と台湾を位置づけました。この発言と、以下に並べた他国に対する外務省の表現と比べればそのことがよく分かるのではないでしょうか。

・米国:基本的価値及び戦略的利益を共有する同盟国

・中国:緊密な経済関係や人的・文化的交流を有し、切っても切れない関係。同時に、政治・社会的側面において多くの相違点を抱えており、時に両国間で摩擦や対立が生じることは不可避

・韓国:日本にとって最も重要な隣国であり、良好な日韓関係はアジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠(注:2015年3月までは「価値観の共有」も盛り込まれていたが削除された)

・インド:世界最大の民主主義国として、普遍的価値観を共有

・ロシア:安全保障、経済、人的交流など様々な分野において協力関係。しかし、領土問題あり

・豪州:基本的価値と戦略的利益を共有するアジア太平洋地域における戦略的パートナー

・EU:基本的価値及び原則を共有。国際社会の多くの諸問題で日本と共通の立場

・NATO:基本的価値とグローバルな安全保障上の課題に対する責任を共有するパートナー

・英国:幅広く価値を共有していることを背景に、様々なレベル・分野において緊密な協力関係

 これらをよく見ると、「大切な友人」「価値を共有」「緊密な経済・人的関係」の3要件を満たしている国家は台湾以外にありません。それを超える表現は「同盟国」「価値と戦略的利益を共有」の米国しかないのです。

 つい最近までの外務省の表現では、台湾は「台湾は緊密な経済関係を有する重要なパートナー」とされており、「大切な友人」「価値の共有」「緊密な人的関係」という言葉は含まれていませんでした。この表現は、外相は2015年3月から、外務省は同4月以降の「外交青書」から、総理は同7月以降に使い始めたものです。

 しかも外相は、2008年、2012年における馬英九氏の総統選挙勝利に際しての談話では、「祝意」を表していません。今回の談話からは、かつてないほど台湾に接近している様子が見てとれるのです。

台湾有事は存立危機事態の対象である

 では、こうした表現には日本政府のどのような思惑が込められているのでしょうか。

 それは、台湾が存立危機事態の対象である「密接な関係にある国」だと言明していることにほかなりません。すなわち、日本が「集団的自衛権を(制限付きながらも)台湾に対して発動できる」という中台への戦略的メッセージだということです。

 具体的に言えば、台湾が中国から攻撃を受けた際に、台湾軍艦艇の防護、対潜哨戒と中国軍潜水艦の撃沈、台湾本土を含むミサイル防衛、台湾軍への後方支援、機雷掃海、停船検査等を自衛隊が公海上及び日本の領域において実施できるということになります。

 日本が限定的な集団的自衛権を発動できる「存立危機事態」とは、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とされています。これまで、台湾有事は存立危機事態に該当しませんでした。

 中国による台湾攻撃は、軍事的には南西諸島や沖縄、果ては本土の在日米軍基地にも波及しかねない危機であり、経済的には商業・軍事シーレーンに多大な影響を与えます。日本の対外貿易の23%を占める両国の戦争は、まさに「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」に他なりません。

 ところが、これまでは「台湾は緊密な経済関係を有する重要なパートナー」という表現にとどまっており、「密接な関係」とは言えませんでした。今回の台湾への祝電など最近の表現によって、初めて台湾は日本と「密接な関係」にある国と言えるようになったのです。

 台湾有事が存立危機事態か否かについて問われた岸田外相の国会答弁も注目すべきものでした。

 岸田外相は答弁の中で、「密接な関係にある国」とは、(1)パレスチナのような未承認国家も含む、(2)国交がない国も含む、(3)条約等の存在は必須ではない、(4)分裂国も含む、と述べました。これは、「国交がなく、未承認でもあり、解釈によっては分裂しており、条約等もない」国、つまり台湾も含むと示唆しているわけです。

 このことからも、岸田外相が、日中関係の悪化を回避しつつ、婉曲に「台湾は存立危機事態の対象である『密接な関係の国』であり、日本の自衛権の対象である」と訴えようとしていることが伝わるのではないでしょうか。

日中関係の緊張は高まるが・・・

 こうした日本政府の姿勢は、中台情勢にどのような影響を及ぼすのでしょうか。3つのポイントを挙げてみます。

 第1に、蔡英文政権の政治的安定に大きく貢献するということです。台湾が中国との距離の微修正を試みる上で、背後に日本の影が見えるということは、国内政治、そして対中外交上の有効なカードを与えるからです。

 第2は、一定の抑止力を台湾に提供するということです。自衛隊にそのような能力が備わっているかは別として、少なくともそういう可能性と今後の方向性を示したことは、中国の対台湾侵攻計画に少なからずブレーキをかけることになるでしょう。

 第3は、これにより尖閣諸島を含む南西諸島の相対的な防衛力が高まるということです。中台の緊張が高まれば、中国は対日戦が起きても、短距離型を除く弾道・巡航ミサイル戦力を対台湾戦用に温存しなければならなくなるからです。艦艇や航空機も同様でしょう。南シナ海問題にも同様の影響を長期的に与えるでしょう。

 これらは、台湾の安定化に強く寄与するものであり、長期的には日本の戦略的安定性の強化につながるものと大いに評価すべきでしょう。

 他方で、若干のリスクも最後に指摘しておく必要があります。まず、日本が「一つの中国」の否定へと舵を切り始めたことにより、今後、日中関係の緊張は確実に高まることでしょう。また、台湾を存立危機事態の対象とすることは、「周辺事態としての台湾有事」を前提としてきた自衛隊の現在の能力を超えている面があるのも事実です。

 その意味で、対中積極外交の展開、防衛予算内における大胆な配分の見直し(少なくとも対弾道・巡航ミサイル戦力への抵抗力強化、サイバーを含むA2/AD戦力の拡充)も同時に実施されるべきでしょう。

2/12日経ビジネスオンライン 高濱賛 『「トランプ支持は低所得層の白人だけではない」 勢いをつけてサウスカロライナへ』について

2/13日経「米民主党テレビ討論会、非白人票の確保焦点 差別解消訴え

【ワシントン=川合智之】米大統領選の民主党候補の指名を争うヒラリー・クリントン前米国務長官(68)とバーニー・サンダース上院議員(74)は11日、米ウィスコンシン州で開いたテレビ討論会に出席した。9日のニューハンプシャー州予備選で約20ポイント以上の差で完敗したクリントン氏は、次戦に向けて黒人ら非白人有権者の票の取り込みに動いた。

 「(黒人は)労働市場や教育、住宅、司法制度で人種差別に直面している」。討論会でクリントン氏は「米国人に立ちはだかる障害に取り組みたい」と述べ、移民も含め差別撤廃に向けた意気込みを協調した。

 サンダース氏も「若い黒人の失業率は50%を超える」と指摘。「黒人の男の子に生まれると、4人に1人が将来刑務所行きだ」と人種差別問題を取り上げ、司法制度改革の必要性を訴えた。

 次の両氏の対決は20日のネバダ州党員集会だ。ラスベガスを抱える同州はヒスパニック(中南米系)や黒人など非白人が多い。続く27日の南部サウスカロライナ州予備選も黒人票が焦点となる。

 ユダヤ系で支持者が白人中心のサンダース氏に比べ、クリントン氏は夫のビル・クリントン元大統領と同じく非白人層に強みを持つ。両州ともにクリントン氏優位とみられていたが、サンダース氏は序盤の勢いを次につなげたい考えだ。

 サンダース氏は黒人票の獲得を狙い、黒人運動指導者のシャープトン師と10日にニューヨークのレストランで会談した。司法制度改革など人種差別解消への意気込みを訴えたという。

 クリントン氏も票固めを急ぐ。11日には米議会の黒人議員連盟から支持を取り付けた。公民権運動の指導者だったジョン・ルイス下院議員(民主)は「サンダース氏には会ったことがない」と述べ、差別問題に長年取り組んできたクリントン氏を称賛した。

 米政治専門サイト、リアル・クリア・ポリティクスが集計した主要世論調査の平均(1月17~23日)によると、サウスカロライナ州ではクリントン氏が30ポイント近く上回る。ただ2月1日のアイオワ州での接戦、9日のニューハンプシャー州でのサンダース氏の圧勝後にはまだ調査がない。サンダース氏がどこまで勢いを持続しているのかが焦点となる。」とありました。

20日のネバダ、27日の南部サウスカロライナ、3/1スーパーチューズデイと選挙も盛り上がっていきます。選挙についてのやり方についてのブログがありましたので紹介します。

https://cakes.mu/posts/12226

これを見ると、民主党はスーパー代議員の数が多いクリントンが有利に思えます。

共和党はまだまだ混戦模様。ただ本文中にある「ティーパーティー支持者やエバンジェリカルズが共和党大統領候補の口から聞きたがっているキーワード。それは、偉大で強いアメリカの再生と、ピューリタン的価値観の堅持(同性結婚の合法化を改める、人工中絶の禁止、不法移民の禁止、銃規制の撤廃)の二つだ。トランプはこの2つだけを繰り返している。それが高い支持率と、投票結果につながっている」というのが、トランプ旋風が一時的な人気でないという理由を表しているのでは。一般大衆はオバマの優柔不断、米国の地位低下に苛立ちを覚えているのが分かります。レーガン同様強い米国の再生を願っています。それと民主党のサンダース人気は如何に米国が格差社会になったかという事です。1950~60年代の米国の黄金時代を知る人からすれば今のアメリカは自由が行き過ぎて、エスタブリッシュメントや経営者の強欲、放肆に任せすぎているように見えます。その当時は人種差別もひどかったですが、公民権運動も盛り上がった時代です。

記事

—ドナルド・トランプ氏がニューハンプシャー州予備選で雪辱を果たしましたね。アイオワ州でトップだった、「草の根保守派」が推すテッド・クルーズ上院議員は振るわず、3位に終わりました。トランプ対クルーズの「草の根」同士の対決は、今回はトランプ氏に軍配が上がりました。  民主党サイドも伏兵バーニー・サンダース上院議員が本命ヒラリー・クリントン前国務長官に圧勝しました。

gesture of Trump's pointing his index finger on his head

ニューハンプシャー州で遊説中のトランプ氏(写真:UPI/アフロ)

高濱:「トランプ旋風」「サンダース革命」ともに、いまだ収まらず、ですね。両候補ともにこれで勢いをつけてサウスカロライナ州とネバダ州に駒を進めることになります。

「ストップ・ザ・トランプ」成功せず

 まず、注目の共和党サイドから見ます。

 いわゆる共和党エスタブリッシュメント(保守本流体制派)はトランプ氏やクルーズ氏を早い段階で排除し、自分たちにとって好ましい候補を指名しようと狙っています。「ストップ・ザ・トランプ」「ストップ・ザ・アウトサイダー」作戦です。

 エスタブリッシュメントが推しているのは、アイオワ州で3位につけたマルコ・ルビオ上院議員、さらに「保守穏健派トリオ」のうちの誰かです。トリオとは、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事、ジェブ・ブッシュ元テキサス州知事、クリス・クリスティ・ニュージャージー州知事らです。

 ニューハンプシャー州予備選はこの4人によるサバイバル・ゲームでした。2位につけたケーシック氏が一歩先んじた感じですが、決着がついたわけではありません。ブッシュ氏がルビオ氏を抜いて4位に入ったのを「本命ブッシュいよいよ浮上」と見るべきかどうか。選挙専門家の間では意見が分かれています。

 「ストップ・ザ・トランプ」「保守穏健派トリオのつば競り合い」の場は南部へ、そして西部へと続きます。

トランプの勝因は草の根「一揆」

—トランプ氏が圧勝した要因は何ですか。

高濱:勝因は3つあります。

 一つは、共和党エスタブリッシュメントに対する一般党員・支持者の「草の根一揆」です。アイオワ州、ニューハンプシャー州といった予備選緒戦で、この「一揆」は成果を上げました。アイオワ州ではクルーズ氏が勝ち、ニューハンプシャー州ではトランプ氏が勝ったからです。

 そもそも共和党エスタブリッシュメントというのは何でしょう。一口で言うと、上下両院共和党首脳部をはじめとする連邦議会議員や州知事、地方議会議員、財界、経済界、メディアを牛耳っている人たちを指します。今まで共和党を動かしてきた人たちです。

 これに対して、「今まで共和党がやってきたことはうまくいかなかったじゃないか」と言い出しているのが、草の根保守派の人たちです。急先鋒は、「ティーパーティー」(茶会)や「エバンジェリカルズ」(キリスト教原理主義者)です。こうしたグループの主張に共鳴した「ソーシャル・コンサーバティブ」(社会的保守主義者)や「モラル・コンサーバティブ」(倫理的保守主義者)が今「一揆」に加わっているといえます。大半は白人不満分子です。彼らがアイオワ州でもニューハンプシャー州でもトランプ氏に票を投ずることでエスタブリッシュメントに反旗を翻したのです。

クルーズの敗因はエバンジェリカルズ依存

高濱:2つ目の勝因は、州の事情です。アイオワ州とニューハンプシャー州の大きな違いは、共和党員・支持者に占めるエバンジェリカルズの割合でした。

 クルーズ氏、ビル・カーソン元外科医などはエバンジェリカルズ票を頼りにしてきました。

 エバンジェリカルズが占める割合はアイオワ州は36%ですが、ニューハンプシャー州は22%です。この票田だけを頼りにクルーズ氏が連勝するのは元々無理でした。

「どぶ板選挙」が通用しない混成プライマリー

高濱:トランプ氏の勝因の3つ目は、ニューハンプシャー州は予備選、それも「ミックスド・プライマリー」(混成予備選)だったからです。これは、共和党員・支持者だけでなく、「インディペンデント」(無党派)も投票できるシステムです。アイオワ州は党員集会でした。

 このシステムがトランプ氏に有利に働きました。党員集会では、決められた時間に決められた場所で開かれる集会に出席しなければなりません。投票するまで、数時間は拘束されます。従って各陣営は、選挙対策組織を作り、時間をかけて「グラウンド・ゲーム」(地上戦)を展開します。個別訪問して、投票してくれる人を掘り起こすのです。

 ところがトランプ氏の選挙運動は、言うならば「落下傘作戦」です。組織を整備することもなく、大規模な集会を突然やって人を集め、そこでエスタブリッシュメントを激しく糾弾する――いわゆる「Trumpertantrums」(トランプ流癇癪玉)を破裂させる作戦です。大衆を喜ばせてそれを票につなげる戦術でした。ですから、「どぶ板運動」が必要なアイオワ州ではクルーズ氏に破れました。

 米主要シンクタンクのメディア研究者の一人は筆者にこう指摘しています。  「ニューハンプシャー州の南部はボストン大都市圏に属する東部圏だ。日露戦争終結のポーツマス条約は同州ポーツマスで調印された歴史がある。それくらい国際性が豊かな風土を持つ。州民はワシントン、ニューヨーク、ボストンで流れている情報を時差なくキャッチできる。全米的な出来事に敏感なのだ。トランプ旋風についても熟知している。流行に後れまい、ここはトランプに票を入れようという一般州民が大勢現れても不思議ではない」

 クルーズ氏について言えば、同州で予備選が行われる直前に、「カーソン氏が予備選から撤退する」かのような“誤報”を流したことが高くつきました。それをトランプ氏が激しく批判したことも、クルーズ氏の得票に悪影響を与えたという見方があります。

トランプを南部、西部で迎え討つエスタブリッシュメント

—共和党エスタブリッシュメントはトランプ氏がニューハンプシャー州でトップに立ったのを快く思っていないのでしょうね。

高濱:その通りです。ルビオ氏や保守穏健派トリオにもう少し奮闘してほしかったと思っているのは間違いありません。

 共和党はこの後、20日に南部・サウスカロライナ州、23日に西部・ネバダ州でそれぞれ予備選、党員集会を行います。

 サウスカロライナ州の支持率争いではトランプ氏が36%で独走。それをクルーズ氏(20%)とルビオ氏(13%)が追いかけています。保守穏健派トリオではブッシュ氏が9%で、トリオを構成する他の2候補に大きく差をつけています。 (”2016 Primary Forecasts: S.C. Republican Primary,” FiveThirtyEight, 2/8/2016)

 ネバダ州でもトランプ氏が31%でリード、これをクルーズ氏(19%)が追走しています。 (”2016 Primary Forecasts: Nevada Republican Caucauses,” FiveThirtyEight, 2/8/2016)

 共和党の選挙対策専門家たちは、保守穏健派トリオが本領を発揮するのはスーパー・チューズデーになると見ています。この日には、テキサス、バージニア、ジョージア、マサチューセッツなど13州で予備選・党員集会が同時に行われます。

 これら13州は、アイオワ州やニューハンプシャー州に比べて人種構成が多様化しており、エバンジェリカルズやティーパーティーの影響力が比較的弱い州が多いからです。

共和党エスタブリッシュメントがトランプを嫌う理由

—共和党エスタブリッシュメントはどうしてそれほどまでにトランプ氏を嫌っているのでしょう。

高濱:共和党保守本流の人たちは「トランプではヒラリー・クリントンには勝てない」と思っています。その理由は、第一に反エスタブリッシュメントであること。さらにあまりにも毒舌が過ぎることです。本選挙では、白人だけでなく、黒人もラティーノも投票します。人種的差別発言や政策なき暴言が多すぎるために、勝つのは困難と見ているからです。世論調査結果もそれを裏付けています。 (”Poll: General Election: Trump vs Clinton,” Real Clear Politics, 2/9/2016)

 逆にルビオ氏やブッシュ氏ならクリントン氏と互角に戦えるというわけです。 (”Poll: General Election: Bush vs Clinton,” Real Clear Politics, 2/9/2016)

 共和党エスタブリッシュメントが巨額の選挙資金を出す仕組みにスーパーPAC(政治行動委員会)があります。

 ブッシュ陣営はアイオワ州だけで1億4900万ドルをテレビとラジオのCMに使いました。このカネはすべて、このスーパーPACから出ています。ちなみにルビオ氏が使った金額は1180万ドル、クルーズ氏は600万ドル、トランプ氏は330万ドルです。ブッシュ氏以外にスーパーPACからカネをもらったのはルビオ氏だけでした。 (”How much did the candidates spend per vote in Iowa?” Joe McCarthy, Global Citizen, 2/2/2016)

「既成」保守に裏切られた「大衆」保守

—いっぽう、一部の共和党員・支持者はどうしてこれほど熱狂的にトランプ氏を支持しているのでしょう。

高濱:当初はメディアも選挙専門家たちも、「トランプ氏を支持しているのは、教育程度がそれほど高くない白人ブルーカラー層だ」と決めつけていました。ところが予備選が始まり、トランプ氏がアイオワ州で24%の得票したことで、こうした見方が変わり始めています。実際の得票が、事前に行われた世論調査に表れた支持率に極めて近いからです。

 ジョージ・メイソン大学のマーク・ロゼル教授(内政・国際関係専門)は、こう述べています。「共和党内は、宗教保守でも体制派でもないトランプに賭けてみるかといった雰囲気になっている。これまで、牧師のマイク・ハッカビー元アーカンソー知事のような宗教保守を選ぼうとしたが、予備選でジョン・マケイン氏に勝てなかった。共和党体制派のジョージ・W・ブッシュ氏を大統領に当選させたが、自分たちが期待していたことは何一つ実現してくれなかった。宗教保守も駄目、共和党主流も駄目と思っている」。 (”Why Do Evangelical Christians Love Donald Trump? Ousider Candidate Fires Up Voters Who Are Tired of Losing,” Ismat Sarah Mangla, Ibtimes, 1/28/2016)

信仰心がなくてもトランプを選ぶエバンジェリカルズ

 世論調査機関、ピュー・リサーチ・センターが今年1月に行った世論調査では、共和党員・支持者のうち「トランプ氏は信仰心が篤い」と答えた回答者は44%しかいなかった。ところが、たとえそうであっても「トランプ氏は素晴らしい大統領になる」と答えたエバンジェリカルズは52%もいるのです。トランプ支持はどうやら宗教心を超えて、草の根保守の間に広がっていることがわかります。 (”Compared with Carson, Cruz and Rubio, fewer Republicans see Trump as religious person,” Pew Research Center, 1/7/2016~1/14/2016) (”Half of evangelical voters think Carson, Trump and Cruz would be good presidents,” 1/7/2016~1/14/2016, Pew Resarch Center)

 その理由は何か。前述のロゼル教授は、こう述べています。「ティーパーティー支持者やエバンジェリカルズが共和党大統領候補の口から聞きたがっているキーワード。それは、偉大で強いアメリカの再生と、ピューリタン的価値観の堅持(同性結婚の合法化を改める、人工中絶の禁止、不法移民の禁止、銃規制の撤廃)の二つだ。トランプはこの2つだけを繰り返している。それが高い支持率と、投票結果につながっている」。

民主党でも「エスタブリッシュメントVS草の根」

—民主党サイドの結果をどう見るべきでしょうか。

高濱:予備選を箱根駅伝に見立てればよくわかると思います。ニューハンプシャー州予備選は言ってみれば一つの区間です。区間ごとに見れば、それぞれの陣営が勝ったり負けたりします。しかし、最終的な勝利は往復路のトータルで決まります。

 ニューハンプシャー州には伝統的に近隣州から立候補した候補者を支持し、当選させようとする風土があります。サンダース氏はお隣のバーモント州選出の上院議員です。

 また、サンダース氏は終始一貫して民主党リベラル急進派としての立場を貫き通してきました。極めてリベラルな立場をとってきたニューハンプシャー州の民主党員・支持者たちは、その点を評価したのでしょう。サンダース氏はイラク戦争に反対。大企業や大労組からのカネは一切受け取りません。その一方で大学授業料の無償化、若年層の労働状況の改善を打ち出して、若者たちからやんやの喝采を浴びています。

 ニューハンプシャー州の民主党員・支持者たちにとって、かってはリベラル派の騎士的存在だったヒラリー氏も<ファーストレディ、上院議員、大統領候補、国務長官>を経験する中で、そのリベラリズムが色あせてしまったと見えるのかもしれません。「エスタブリッシュメントの一員」とみなしている可能性もあります。

 筆者が電話取材した同州民主党員の一人、アレックス・ストラトフォード氏(元高校教師)はこう述べています。「アメリカ人は世襲政治家を嫌います。共和党でブッシュが伸び悩んでいるのは『ノー・モア・ブッシュ』という声があるから。民主党内にも『ノー・モア・クリントン』の空気があります。ブッシュ王朝もクリントン王朝も嫌だ、というわけです。『サンダースが指名されることはないだろう、せめて予備選段階ではサンダース、サンダースと叫んで、民主党の本来の政治理念を確かめよう』というのが、サンダース旋風の正体かもしれません」。

 ちなみに20日に党員集会が開かれるネバダ州は、人口比で白人76%、黒人9%、ラティーノ28%。28日予備選が行われるサウスカロライナ州は白人68%、黒人28%、ラティーノ5%。白人が90%を超えるアイオワ州やのニューハンプシャー州とは人種構成が大きく異なっています。 (”States & County: QuickFacts,” United States Census Bureau)

 特に「民主党員・支持者の非白人はクリントンびいき」(米主要紙政治記者)であるだけにサンダース氏にとっては厳しい戦いになりそうです。

 現に世論調査における支持率を見ると、ネバダ州、サウスカロライナ州ともにクリントン氏がサンダース氏を大きくリードしています。

2/10日経ビジネスオンライン 福島香織『中国は、なぜ北朝鮮の暴走にキレないのか?「単独制裁」で牽制しつつ軍制改革邁進の習近平』について

北のミサイルについて追跡できなかった韓国軍。相変わらずの失態。キチンと対応する精神に民族的に欠けるのでは。小生も最初TVを見ていて、韓国の発表では「打ち上げ失敗」と思っていましたが、違いました。韓国米軍もこれではおちおち夜も眠れないと思います。米海軍も中国軍と対抗するため二隻目の空母を横須賀に配備する話が持ち上がっているとのこと。それは韓国より日本の方が、安全かつ安心できるでしょう。思いやり予算までついいていますし。ただ中国の言うA2/ADが米国に本当の意味で脅威を与えているのかは疑問ですが。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46013

「【北ミサイル】発射6分後には見失っていた韓国軍のレーダー

北のミサイル発射をめぐる騒動 北のミサイル発射をめぐる騒動 発射6分後に姿を消し、一時は「失敗」騒ぎも 韓国軍「4年前は2段目まで捕捉、今回は弾頭部分も一部追跡」 今月7日に北朝鮮が平安北道鉄山郡東倉里から発射した長距離ミサイルを、韓国軍は済州島付近の上空まで約6分ほど探知・追跡しただけで、その後は見失っていたことが分かり、探知能力が不足しているのではないかと物議を醸している。  韓国国防部(省に相当)の関係者は7日午前「北朝鮮の長距離ミサイルが、発射6分後の午前9時36分ごろ、韓国海軍のイージス艦のレーダーから消えた」「2012年12月に発射された銀河3号の場合、沖縄上空で韓国側のレーダーから消えた。(今回)消えるのが早かった原因を分析している」と語った。  韓国海軍は今回、北朝鮮のミサイルを追跡するため、西海(黄海)と済州島西方にイージス艦をそれぞれ1隻ずつ派遣したという。  イージス艦のレーダーの探知距離は1000キロほどで、済州島から沖縄上空まで追跡できる。にもかかわらず、韓国軍当局が「発射から6分後にレーダーから消えた」と発表したため、一時は「北朝鮮のミサイルが空中で爆発したのではないか」という推測も出た。  しかし国防部は7日正午ごろ「韓米共同評価の結果、北朝鮮のロケットは正常に宇宙に到達したと推定される」と発表した。  また韓国軍の合同参謀本部(合参)の関係者は「12年12月に銀河3号が発射された当時、韓国軍はロケット1段目切り離しとフェアリング(衛星の覆い)切り離しを探知することには成功したが、2段目切り離し以降、3段目の軌道捕捉には失敗していた」と語った。  北朝鮮の長距離ミサイルは3段式で、発射後は1段目→フェアリング→2段目→3段目の順で切り離し、重量を減らして推進力を高める。ところが当時、韓国軍が沖縄上空まで捕捉していたのは3段目の軌道ではなく、切り離されて自由落下する2段目だったという。弾頭を積んだ3段目の追跡が重要なのに、当時は肝心のその部分を見逃し、捨てられた部分しか捉えていなかったという。  このため韓国軍は最近、3段目の軌道を追跡するため、レーダーをアップグレードしたという。合参の関係者は「今回の光明星号の場合、2段目切り離しを捕捉し、3段目の軌道も一部追跡した。12年12月よりもよくなった」と語った。とはいえ、今回も結局、最後まで追跡することはできなかったわけだ。  ▽写真 回収されたフェアリング-韓国軍当局は9日、北朝鮮の長距離ミサイル(ロケット)から落下したフェアリング(衛星の覆い)を公開した。発射当日の7日、韓国軍のリンクス・ヘリが済州島南西の海域で発見し、イージス駆逐艦「西ガイ柳成竜」(ガイはがんだれに圭)が揚収したもの。フェアリングは、ロケットが大気圏外に出るまで、衛星を保護する役目を担う。フェアリングの直径は1メートル25センチ、高さは1メートル95センチ。 [朝鮮日報 2016.2.10] 

North Korea's missile

 

 

 

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/02/10/2016021000559.html   」

本記事にある山東大学元教授の孫文広氏の発言、「朝鮮が飛び跳ねれば飛び跳ねるほど、中国の影響力は突出してくる。中米関係においては、中国にとって朝鮮は重要なカードであり、目下、朝鮮に対して制裁を行うつもりもないのである」が正鵠を射ているのでは。単に地政学上のバッファーゾンとしての北朝鮮の地位だけではないという気がしていました。北が暴れれば暴れるほど中国の存在が国際的に高まる事があるからでしょう。面子を重視する中国が面子を潰されても我慢しているのはそれを上回る実利があるからです。6ケ国協議も北の核開発の時間稼ぎと米国への責任転嫁が狙いだと思います。中国の最終的な目的は米国の世界覇権に対する挑戦ですから。北を利用して世界の目をそちらに釘付にして自ら為す悪(南シナ海、東シナ海での暴挙)を覆い隠そうとしていると思います。

記事

 日本はあまりなじみはないが、アジアの多くの国々では2月8日は旧暦の正月、つまり春節を祝った。旧暦の大晦日には、爆竹を鳴らしたり花火を打ち上げるのが普通だが、北朝鮮は「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルを発射。中国遼寧省の東港付近では、そのミサイルが天高く昇っていく様子が目視できたようである。ミサイルは沖縄上空を通過したそうだが、国内に被害はなかった。

 平安な一年の到来を願う大晦日に、弾道ミサイルをぶち上げるセンスは、まさに国際社会の神経を逆なでする行為。1月6日に行われた「水爆実験」に続くこうした挑発行為に、一番怒り心頭なのは、普通に考えれば中国ではないだろうか。あたかも、北朝鮮はモランボン楽団のドタキャンから今回のミサイル発射に至るまで、中国を怒らせることが目的、と言わんばかりである。だが、中国の対北朝鮮への怒りの表現は、以前のことを思えば低調だ。どうしてだろう?

遺憾を表明しながら理解者の立場を崩さず

 中国外交部報道官は7日の記者会見で、この北朝鮮「衛星」発射に対する記者からの質問に対してこう答えた。

 「中国側は、朝鮮が宣言した衛星発射について、各方面の反応に注意している。中国側は、朝鮮が宇宙を平和利用する権利を持つと考えているが、しかし目下、北朝鮮のこの権利については、国連安保理決議の制限を受けている。中国側は北朝鮮が幅広い国際社会の反対を顧みず、意地を張って弾道ミサイル技術をもって発射を実施したことに対し遺憾を表明する。

 中国としては、各方面関係者に冷静に対応し、慎重に事を行い、半島情勢の緊張をエスカレートさせるかもしれない行動を取らないよう、共同でこの地域の平和安定を維持するよう望むものである。

 中国側は一貫して、対話と協調を通じてのみ半島の平和安定、長期的な安全が実現できると考えている。各方面は急いで対話を再開し、この局面のさらなるエスカレートを避けるべきである」

 日本メディアは、中国がこれまで使ってこなかった「弾道ミサイル技術」と言う言葉をわざわざ使い遺憾を表明したことで、そうとう中国が頭に来ているのだと解説しているが、一方で、中国は北朝鮮の宇宙平和利用の権利を認めているのだが、国連が反対している、というニュアンスを漂わせ、あくまで北朝鮮の理解者である立場は崩していない。

外相の王毅は2月5日に、北朝鮮の「人工衛星」発射予告を受けてこうコメントしていた。

「漁夫の利」は許さず。問題は「米朝の政治決断」

 「目下の半島情勢は徐々に負のスパイラルに突入している。この情勢はどの方面の利益にも決してならない。(北)朝鮮は国際社会の反対を顧みず核実験をし、国連安保理がさらなる措置を取らざるを得ず、目下各国がこの件について協議しており、このままでは新たな決議を行うことになる」

 「もし北朝鮮が弾道ミサイル技術による衛星を発射し、同様に国際社会の認可を得なければ、情勢はさらに複雑化するだろう。しかし、一方で、制裁は決して目的ではない。我々の目標は、各国を再び協議のテーブルの前に回帰させることである。協議のみが、問題の唯一の解決の道筋となるからだ」

 「ある論評では、協議を通じて核問題を解決する考えはすでに難しい、という。だがこれは誤りである。六者会合(六カ国協議)が8年にわたり中断し、半島情勢がたえず緊張し、北朝鮮はこの間に3回の核実験を行った。明らかに、協議の拒絶と中断が、目下の情勢の真なる原因だ。また、別の論評では、中国側が影響力を発揮できなかった、というのがあるがこれは事実とは違う。中国側は六者会合で議長国を務め、ずっと協議を促してきた。私自身が(初代議長として)六者会合を経験してきた。当時、我々のほとんどが、米朝双方を縁組みするためにもてる精力を注いできた。彼らを協議につかせ、対話を通して問題解決を図ろうとしてきた。今後、情勢の鍵は、米朝がどのような政治的決断をとるかだ」

 「中国側は戦略を保持して、建設的影響力を引き続き発揮していくだろう。目下重要なことは、各国が状況を緊張させるような刺激的行動を取らないことであり、情勢の悪化を防止しコントロールを失うことを避けることである。各国がいかに協議の建設的影響力を回復させるかを考えるべきであり、誰かに責任を押し付けることではない。ましてや、このどさくさに漁夫の利を得ることではない」

 王毅の発言を見るに、中国側が一番懸念しているのは、実は、北朝鮮の挑発行為自体ではなく、それを口実にどこかの国が「漁夫の利」を得ることであることがうかがえる。協議が無意味であることは、六か国協議の議長国を経験してきた中国が一番わかっているのだが、あくまで建前は崩さず、国際社会と北朝鮮との調整役としての努力不足を責められると、「米朝の政治決断」こそがキモであると反論するわけだ。

だが、北朝鮮のやり方を見れば、その挑発の一番の矛先はむしろ米国ではなく、中国であるとも見てとれる。昨年10月に中国共産党序列5位の劉雲山が訪朝した結果を受けて、12月12日に北京で初の海外公演をする予定だった金正恩の美女楽団「モランボン楽団」がドタキャンし、いきなり平壌に帰国したことは、中国のメンツを大いに潰した。

本気を出せば、ひとたまりもないはずだが…

 この公演は2000人の中国高官らが招待され、2013年12月に親中派で当時ナンバー2とされていた張成沢が残酷な方法で粛正されたのち、冷え込んでいた中朝関係の回復を印象づけるはずの重要な政治イベントになるはずだった。だが、モランボン楽団訪中初日に、北朝鮮の水爆保有が報道され、楽団の公演演目に人工衛星やロケットを讃える歌や、ミサイル発射実験ムービーを映し出す演出が含まれていることがリハーサルで明らかになると、中国指導部も黙っておれなくなり、公演参加の高官のランクを下げると、これに反発した金正恩はモランボン楽団の即刻帰国を命じたのだった。

 そして、そのあと、年明けて1月9日、中国をあざ笑うかのように“水爆”実験を行い、中国は「事前に知らされていなかった」と発表。だが中国が激怒して重油供給など対北朝鮮援助を止めるかと思えば、どうも歯切れが悪く、国連の対北朝鮮制裁決議案には難色を示し、1カ月たっても制裁に踏み切れない始末。

 しかも、北朝鮮の対話を通じての問題解決を主張する中国が2月2日から4日にかけて平壌に派遣した朝鮮半島問題特別代表(六か国協議議長)武大偉が帰国するやいなや、金正恩政権はミサイル発射予告を発表。国連の制裁決議案に抵抗し、北朝鮮側と落としどころを探る努力をアピールしていた中国側の立場を完全に無視した。そして、中国人・中華圏が春節大晦日(除夕)という平安を祈る日にミサイル発射実験を行ったのだ。

 普通なら、中国は怒り心頭に発してもよいはずだ。だが、この期に及んで、中国側報道官の発言は慎重きわまりない。

 中国は2003年2月、北朝鮮に通じる重油パイプラインを閉じるなどして、北朝鮮に揺さぶりをかけた過去がある。この時、北朝鮮は猛烈に抗議するも、結局六か国協議のテーブルに着くことになった。中国が本気を出せば、やはり北朝鮮はひとたまりもないはずなのだ。

 この背景については、海外だけでなく、中国国内の学者や知識人たちの間でも「なぜ?」の声が上がり、それぞれに分析している。

中国の独立系外交政策シンクタンク・察哈尔協会の高級研究員・呉非が香港のラジオ・フリーアジアの取材にこうコメントしていた。

 「中国と朝鮮の関係において、実際のところ、核兵器問題については一切の共通認識がないのだ。金正日時代に中国から大量の援助を受けて、また金正恩もこの援助を受けているが、それでもはばかることなく核実験を行い、長距離弾道ミサイル実験も行っている。しかも我々はいまだこれを“人工衛星”と言っている。彼らがこうした実験を一層集中して行うのは、彼らの政権が危機に瀕しているということでもある。相当焦っているのでなければ、中国の除夜に長距離弾道ミサイル実験など行うわけがない。もし中国がこれによって援助をやめ、さらに国際社会も強烈な圧力を持ち続けていれば、金正恩はすぐさま訪中団を差し向けて泣きついてくるに違いない」

 山東大学元教授の孫文広もやはりラジオ・フリーアジアに対し、「中国は朝鮮のミサイル発射に反対はしているが、同時に朝鮮の行動が中国の国際的地位や影響力を体現するものであることを望んでいる」とコメント。「朝鮮が飛び跳ねれば飛び跳ねるほど、中国の影響力は突出してくる。中米関係においては、中国にとって朝鮮は重要なカードであり、目下、朝鮮に対して制裁を行うつもりもないのである」

北を隠れ蓑に「南シナ海」着々、本命は軍制改革

 彼らの意見は、中国にはまだ北朝鮮に“好き勝手させる”余裕があり、むしろ、いまの北朝鮮の余裕のなさなど内実をわかっているだけに焦りがなく、むしろ対米外交的に利用できると踏んでいる、というものである。実際、北朝鮮が年末から米国を思いっきり挑発してくれる前は、米中の南シナ海をめぐる対立が先鋭化していたのである。北朝鮮が米国の批判の矛先を代わって受けてくれる間に、中国は着々と南シナ海の人工島の滑走路で離着陸試験を行っていた。

 一方、現段階では北朝鮮問題を顧みる余裕がないのはむしろ中国ではないか、という見方もある。既報されているように、習近平政権は現在、軍制改革の真っ最中である。この改革案のキモは七大軍区制を五大戦区(戦略区)に編成し直すという劇的なもので、2月1日に五大戦区の設立が宣言されたものの、正直うまくいくかどうかはまだ見極めがついていない。

 この軍制改革の目的は、一つは時代遅れの軍区制を米国のような戦略区制に改編することで軍の近現代化を大幅に進めるというものだが、もう一つの目的は、いわずもがな、習近平が政敵として失脚させた徐才厚一派の巣窟である瀋陽軍区の解体でもある。瀋陽軍区をそのままにしていては、いつクーデターがあるかと習近平もおちおち枕を高くして寝られない。実際クーデター未遂らしき事件も起きていると伝えられ、また北朝鮮の核実験、ミサイル実験に使われている部品も瀋陽軍区から横流しされているとの噂も絶えない。遠い北京への忠誠よりも、近くの北朝鮮との利権関係を重視してきたのが瀋陽軍区であった、とも指摘されている。

 そこで習近平の軍制改革では瀋陽軍区と北京軍区を一つにし、従来の徐才厚派将校や北朝鮮利権を持つ将校を一掃し、自分の肝いりの部下を配置し、北部戦区として、対北朝鮮、ロシア、日本の一部からの攻撃に備えたい考えなのだ。

北朝鮮側はこのことをよく承知しており、核兵器の完成を急いでいる。習近平の軍制改革が完了し、金正恩と非常に相性の悪い習近平政権が北部戦区を掌握すれば、北朝鮮としては、かなり厄介なことになるわけだ。

「単独制裁」で支配強化、「漁夫の利」は渡さない

 一方、習近平としては、困難を極めるとみられている軍制改革を無事終わらせるまでは、北朝鮮の挑発にいちいち乗って、注意力を分散しているわけにはいかない。とりあえずは北朝鮮を孤立させ、各国に北朝鮮の悪辣ぶりを印象づけ、国際社会の中国に頼る気持ちを掻き立てるだけでいい。こうした見方は、たとえば、華字ネットニュース多維新聞などの報道にも垣間見えている。

 著名国際政治学者の時殷弘は、中国が国連の制裁決議案に同調しないのは、「単独制裁」の柔軟性を保つためだと見ている。国連の号令に合わせて制裁を始めたり止めたりするのは、中国としては独自の北朝鮮に対する支配力を損なうことになる。あくまで中国が願うのは、中国の北朝鮮に対する支配力強化なのだ。だから時殷弘は、中国が北朝鮮に対する制裁を急激にエスカレートさせる可能性はあると見ている。

 中国は「協議のみが問題解決の唯一の道筋」「このどさくさに紛れて漁夫の利を得るな」などと神妙な発言を繰り返しているが、だいたい口で言うのと腹で思うのが逆であるのが外交的発言である。その本音では、一番「漁夫の利」を得る計算をしているのは中国かもしれない。

2/9日経『政府、ミサイル防衛強化 3段階の迎撃検討』、『「衛星」 周回軌道に投入成功か』について

守備だけでは激しい攻撃には耐えられません。数百発の核ミサイルが日本に飛んで来たら防衛ミサイルだけでは間に合いません。その意味で本当の脅威は北朝鮮ではなく中国です。日本の主要都市に向けて核ミサイルの照準を合わせていることは公知の事実です。(2009年5月の、読売新聞の報道では、中距離ミサイルを、沖縄の米軍基地や日本の主要都市に照準を合わせて配備していると報じています)。

特に中国が内乱状態に陥った時に、狂った人間が日本に向けて発射しないとも限りません。反日教育をずっとしてきたのですから、そういう人間が出ないとも限りません。日本政府がずっとクレームを付けずに見返り(中国への経済支援)を与えて来た咎めです。照準を一時的に外させ得たとしても、いざと言うときには簡単にロックオンできると思いますので、報復できる力を持たないと安心はできません。やはり、抑止力としての核は必要かと。ただMAD(mutual assured destruction)の考えを中国の為政者が理解できるかですが。何せ毛沢東はポンピドーとの話し合いで、

ポンピドー「ソ連からICBMを大量に輸入しているようだがアメリカと戦争する気ですか?」

毛沢東「戦争になったら私たちは水爆の使用も辞さない」

ポンピドー「そんなことしたら中国人もたくさん死にますよ」

毛沢東「人口が多いので二~三千万人ぐらい死んでも構わない」と言ったと。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110203/chn11020312410001-n1.htmというのもあります。

中国人の手前勝手な考えが推し量れます。ほぼキチガイと言ってよい。いかに中国人の生命が軽んじられているか。実際毛は大躍進、文革で2000万人~1億人の中国人の命を奪ったと言われています。こういう民族の国が隣にあるのですから。とても仲良く付き合うことはできません。

米国だってイザと言うときに日本を守るかどうか分かりませんので、①日本も核を持つ②ミサイルを撃ち落とすレーザー技術の確保③ミサイルの誤爆誘導できる技術の確保(発射した地点での爆発誘導)辺りが軍事技術について素人ですが小生の考えです。

勿論、記事にあるように守備の層を厚くすることにも賛成です。

記事

撃ち漏らし防ぐ 

 北朝鮮による事実上の弾道ミサイル発射を踏まえ、政府はミサイル防衛システムの強化に乗り出す。より高高度の迎撃が可能な海上配備の次世代型ミサイルを米国と共同開発し、2017年度の生産開始をめざす。同時に現在は2段階となっているミサイル防衛システムの迎撃のタイミングを3段階に増やすことを検討する。ミサイルの脅威が増しているとみて、撃ち漏らすリスクを減らす。

 日米が共同開発している新たな海上配備型の次世代迎撃ミサイルは、イージス艦に搭載する「SM3ブロック2A」。今秋に米ハワイ沖で海上実験を行い、命中精度を初めて測定する。19年度の配備を目指す。

missile defence

SM3による迎撃の最高高度は地上300キロメートル程度とされる。新型SM3は現行型より推進力が大きく、最高高度1千キロメートル以上での迎撃が可能となる見通し。防衛省は「迎撃の高度が高ければ高いほど落下予想地点の守備範囲の面積は広がる」(幹部)と説明する。

 新型を搭載したイージス艦の防空範囲は1千キロメートル程度と現在の数百キロメートルよりも大きく広がる。従来は日本の領域全体を守るのにイージス艦3隻が必要だったが「新型SM3を搭載すれば2隻で十分」(同)という。

 一方、政府はミサイルの迎撃精度を高めるため、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の導入も検討する。菅義偉官房長官は8日の記者会見でTHAADについて「現段階で自衛隊への導入計画はない」とする一方、「国民を守るため米国の装備品を研究しつつ、検討を加速する」と語った。

 THAADは大気圏内に再突入した最終段階のミサイルを迎撃するもので、最高高度は地上から約150キロメートル。航空自衛隊に現在配備されている地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の最高高度は地上から約20キロメートルのため、迎撃のタイミングとしてはSM3とPAC3の間に位置する。ただ、防衛省幹部は「導入経費が極めて高額」と指摘しており、慎重に判断する。

 THAADをめぐっては在韓米軍への配備計画が進むなか、中国が反発を強めている。背景には中国内陸部のミサイル基地の情報が米軍レーダーに捕捉されるとの懸念が中国側にあるとみられる。このため、日本がTHAADの導入に踏み切れば、配備する地域によっては中国側が反発する可能性もある。

ミサイル防衛システム 弾道ミサイルの発射を探知し、着弾前に迎撃・破壊するシステム。日本の場合、米国の早期警戒衛星などがミサイル発射を捉えると直ちに防衛省などが連絡を受ける。この情報をもとに海上自衛隊のイージス艦や国内レーダーなどでミサイルを追跡し、イージス艦に搭載しているスタンダードミサイル(SM3)が大気圏外でミサイルを撃ち落とす。現在は撃ち漏らした場合、地上配備のパトリオットミサイル(PAC3)が迎撃する2段構え。

aegis cruiser

 

 

 

 

 

 

米軍が確認 

【ワシントン=川合智之】米戦略軍は7日、北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイルの発射後、2個の物体が高度約500キロメートルで地球を回る軌道に乗っているのを確認したと明らかにした。北朝鮮が打ち上げたとする人工衛星と、多段式ミサイルの3段目とみられる。周回軌道への投入成功は、北朝鮮のミサイル技術の精度が高まったことを示す。

 朝鮮中央テレビは「地球観測衛星『光明星4号』の軌道投入に完全に成功した」と報じている。米軍が観測した軌道は北朝鮮の発表と近く、想定通りの軌道に精密に投入できた可能性が高い。

 大同大学の沢岡昭学長は「衛星は地球を南北に回る極軌道に投入されたようだ。ロケットとミサイルは表裏一体なので、衛星を軌道に投入できる技術はミサイルを目標地点に精密に飛ばす技術につながる」と話す。

 米メディアなどによるとミサイルの射程は最大1万3千キロメートル、積載重量は500キログラム。南米を除く全世界が射程圏内だ。米ランド研究所のブルース・ベネット防衛上級研究員は「核兵器をほぼ搭載可能な打ち上げ能力となった」とみる。

orbit of artificial satellite

 ただ実際に弾道ミサイルとして使う場合は宇宙空間から大気圏に戻ってくる。ベネット氏は「大気圏再突入の際に高温に耐えるという別の課題がある」と指摘。核ミサイルとして使用できる段階には至っていないとみる。

2/8ダイヤモンドオンライン 嶋矢志郎『中国が発表する経済成長率は本当に“偽り”なのか?』、2/9日経ビジネスオンライン 上野泰也『「リーマンショック2」は来るのか 中国「不信」・原油「底なし」、2つのビッグリスク』2/8日経『中国外貨準備、減少続く 元買い介入で1月末378兆円』、2/9ZAKZK 大前研一『中国発の大恐慌は不可避 行き先は超元安とハイパーインフレ』について

やっとメデイアもまともに中国の経済リスクを取り上げるようになったかと言う気がします。日本の報道は欧米の後追いで中国進出を煽るだけという気がずっとしていました。特にヒドかったのが日経。その日経ですら中国の経済危機を報道せざるを得なくなりました。嶋谷氏は日経記者OBです。小生の中国8年間の駐在経験から言って、中国は「何でもあり」「数字の誤魔化しは当り前(財務諸表は少なくとも3通り)」「賄賂は上から下に至るまで受け取る文化」「平気で嘘をつく」「偽物文化(卒業証書、発票=公的領収書)」「破廉恥・反人道主義」なのを目の当たりに見てきましたので、この国はいつか、どこかで頓挫するだろうと思っていました。ただ、こんなに早く経済発展するとは思っていませんでしたが。1997年8月末に北京空港に降り立った時に夜の余りの暗さと道路の大きさにビックリした覚えがあります。車は少なく、自転車が多かったです。帰国時の2005年の時も豊かになったとは言ってもまだまだでした。ただ、2002、3年頃、上海では渋滞で浦西と浦東とのトンネルをナンバープレートの奇数・偶数で通れる、通れないの交通整理をしていましたから、やはり2001年のWTO加盟が効いていたのかとも思います。上海は江沢民の地元でしたので。でも、無理な背伸びをしすぎてコントロール不能まで来ました。何の裏付けもなく借金を重ね、過剰な設備投資して、需給を無視した過剰在庫を抱えるようになりました。世界の産業を潰すまでになりました。崩壊するしかありません。世界平和のためには良いことです。

本4記事は、田村秀男氏や高橋洋一氏がずっと言ってきたことと同じ見方になってきたなあと感じました。上野氏はみずほ証券勤務だからリーマンみたいにはならないと言っていますが。しかし、心の中は違うのでは。あの中国進出を煽り、薄熙来の経済顧問までした大前研一氏までが小生が前から言ってきましたように「打つ手なし」です。如何に中国から遠ざかるかが痛手を少なくする道です。中国と関係の深い企業の株価は激しく下落するでしょう。間違っても中韓を助けることをしないように。特に通貨スワップをすれば大ヤケドくらいでは済まず地獄まで道連れになります。

中国のデフォルト・ショックが起きたときにどうなるのか予想できません。澁谷司拓大教授は「中国には1日600円以下で暮らす貧困層が10億人いる」と仰っていました。この層が革命を起こすかもしれません。天安門事件のようなことが起きるかですが、衛星が発達した現在、かつ解放軍兵士が貧乏人に銃を発砲できるかです。日本人のように組織に帰属意識を持たない民族ですので。反共産党クーデターが起きるかもしれません。中国大陸の歴史は動乱の歴史=易姓革命の歴史ですので、大量の難民が発生するかもしれません。欧州を対岸の火事とせず、対応策は考えておかないと。在中邦人救出とスパイの可能性のある中国人の日本上陸を阻止しないと。

嶋矢記事

中国の常識は世界の非常識?王国家統計局長はなぜ失脚したか

Dong fang ming zhu ta

王保安事件の真相は何か。中国の統計に対する信頼が揺らげば、世界に与える影響も大きい。

 中国共産党の中央規律検査委員会は、国家統計局の王保安局長を「重大な規律違反」で調査していると発表した。王局長は1月19日には世界が注目していた昨年2015年の中国のGDP(国内総生産)を発表し、同26日には中国の経済情勢に関する記者会見に臨み、終了後も取り囲む記者団の質問に気さくに受け答えしていた。その直後の連行、失脚である。

 習近平指導部としては、電撃的な摘発により、「重大な規律違反」への厳しい姿勢を国内外に強く印象づける狙いがあったに違いない。

 その「重大な規律違反」とは何か。肝心の内容が何も明らかにされていないが、一部海外メディアによると、統計データを取り扱う国家統計局のトップである同局長が、事前に外部に情報を漏らしてその見返りに金品を受け取っていたのではないか、という疑惑が浮上しているという。

 さらに今回の事件については、中国の国内外の消息筋から、「本当のデータを公表したら処罰され、捏造のデータを発表したら規律違反では、立つ瀬がない」などと揶揄する声も、筆者の耳に届いた。何らかの目的により、王局長が統計データを改竄していたのではないか、という見方もあるわけだ。

 様々な憶測が飛び交っており真相は不明だが、いずれにせよ、今や世界第2位の経済大国となった中国の統計データを取り扱うトップの汚職がもし真実だとすれば、世界の金融市場に波紋を呼びかねない。今回の報道は、かねてより指摘されていた中国の統計データに関する課題を、筆者に思い起こさせた。それは、統計データの信憑性に関する課題だ。これを機に、それを検証してみたいと思う。

 中国政府が国内外へ向けて正式に発表する統計データの多くは、偽装された「真っ赤な嘘」ではないか――。今回の事件とは直接関係なく、そんな疑惑は以前からずっとあった。今や「知る人ぞ知る常識」として語られている雰囲気もある。真偽のほどは別として、問題はそうした疑惑があるという事実を、いつの頃からか当事者の中国だけでなく、国際社会も暗に認めてきたということだ。

 上海株の大暴落をはじめ、人民元の対ドル為替相場の切り下げ、全国各地で廃墟と化している工業団地や商業施設、主要業種に広がる深刻な過剰設備、さらにはおよそ2億人分に及ぶとされる不動産の余剰在庫など、中国経済の憂々しき実態が次々と顕在化している。中国経済は今、どこまで失速しているのか。全世界が注目する中で、2015年の実質GDP(国内総生産)の成長率が発表されたが、データの信憑性が怪しいことを知る者の中には、公表された数値を信じない人もいたのではないか。

 公表されたGDPの数値は、想定内の前年同期比6.9%増であった。ちなみに、中国政府の目標値は7%である。これに対し、国内外の消息筋の事前予測では、おおむね数字の操作を織り込んで6.8%前後と見られていたが、案の定、その中間に落とし込んできたと思える苦肉の策であった印象は拭えない。

 発表した時点も、昨年末からわずか3週間以内の1月19日である。これ自体が信じ難い早さで、不自然ではある。自由経済圏の場合、最も早い米国でも締め切り1ヵ月後であり、EUや日本では大体、同50日後である。

 GDP統計は、一般に各種統計を加工した、いわば二次統計なので、その算出には一定の手間暇がかかる。先進国の場合は、関係各省庁が英知の粋を集めた複雑な計算式の下で算出し、産業連関表などを駆使して、算入が重複しないよう、縦横斜めの試算を繰り返してから公表するため、これ以上は短縮できないという日時を要してから公表する。中国の場合はこの精査工程を省略して、「算入の重複を削除しないまま公表しているのではないか」と疑われてもやむを得まい。仮にそうだとすれば、GDPは水増しされ、成長率は上振れすることになる。

信じられないGDP統計発表の早さ 「李克強指数」が信頼される理由

 中国の経済政策の司令塔である李克強首相は、前職の遼寧省共産党委員会書記であった2007年当時、すでに「中国のGDP統計は人為的であるため、信頼できない」と喝破して憚らず、「経済指標として信頼できるのは貨物輸送量、電力消費量、銀行融資残高の3指標だけである」と公言した。それ以来、中国ではGDP統計よりもこれら3指標による「李克強指数」の方が信頼され、跋扈しているのが実態である。こうした状況に鑑み、統計作業を透明化、改善しようという声も聞こえてこない。GDP統計による公表データの同6.9%増を、この李克強指数で試算し直した修正値もある。それによると、実際は半分以下の同2.8%増だという。

 前述の3指標よりも誤魔化せないという点で、実態により近い指標が貿易統計である。中国側の輸入は相手国の輸出であり、輸出は相手国の輸入になるため、偽装が不可能だからである。とりわけ、輸入の伸び率とGDPの成長率は正の相関関係にあるため、一方が増えるときは共に増え、一方が減るときは共に減って、同じ方向へ連動するため、少なくとも大きな誤魔化しは不可能に近い。

発表によると、輸入は同14.1%減となっており、これは尋常な減り方ではない。輸入が前年比14.1%も減っていながら、GDPだけ6.9%も伸びることは、まずあり得ないだろう。逆に、GDPが6.9%も伸びていながら、輸入だけが前年比14.1%減ることも、まずあり得ない。どちらに疑問があるかと問われれば、明らかにGDPの方である。

輸入が二桁マイナスなのに GDP6.9%成長はあり得るのか?

 ちなみに、李克強指数と同じく、輸入が同14.1%減であった場合、GDPの成長率はどうなるか。単純な回帰分析で試算すると、成長率はなんと、おおよそ▲3%近くになる。中国政府が「GDPの成長率が同6.9%増、輸入同14.1%減であっても、共に真実の数値であり、両者の相関関係には矛盾はない」と言い切れるならば、「輸入とGDPは必ずしも正の相関関係にあるとは限らず、負の相関関係になることもあり得る」ことを立証する義務があるだろう。

 中国のGDP統計を「信頼できない」と思っていたのは、李首相だけではない。元来、中国の経済統計の信頼性には、国内外から疑問視する声が広がっていた。中国全土の各地、各省で集計した総和が、中国統計局が発表する全中国のGDP統計の数値を大きく上回る珍現象が毎年のように繰り返され、常態化していたからである。全国の各地、各省の末端から中央へと数値を集めてくる集計過程でも、申告者が常に正しく申告するとは限らない。収穫や生産の自己申告が業績や昇進などの評価、採点に直結していれば、なおさらである。

 人間の心理上、評価、採点にとってマイナスとわかる結果を自ら奨んで報告する人は少ない。結果として、常に過大な申告になりがちである。とりわけ社会主義経済圏の下では、これが避け難い仕組みであることは、旧ソ連や毛沢東による大躍進時代の中国の名残といえ、その悪弊は歴史が証明している。李克強指数が誕生し、信頼され、跋扈してきた背景でもある。

 ただし国際社会も、中国の経済統計の捏造疑惑を決して看過してきたわけではない。IMF(国際通貨基金)は昨秋、中国に対し、経済統計に関する「質」的な向上の必要性を呼びかけている。中国が経済構造の質的転換を進めていることに対し、その構造転換の成果が経済統計にも正しく反映されるよう、経済統計を「質」的に飛躍させる必要がある、と指摘している。

世界銀行も、「中国の政策決定者は市場への介入を自制できないでいる。これが市場に混乱をもたらし、市場に対する信頼感の低下を招いている。中国が2015年に史上最大の資本流出を経験したのは、政府の介入が要因の1つである公算が大きい。市場は予測可能性と透明性を必要としている」(マデリン・アントンシック前副総裁)として、経済政策の透明性の確保に厳しく注文を付けている。

実際はマイナス成長もあり得る? チャイナショック回避への期待

 習近平主席とその指導部が、二桁台の高度成長から一桁台の安定成長へと経済成長ペースを軌道修正しながら、いわば経済成長よりも構造改革を優先し、7%成長を死守する「新常態」化路線を宣言して走り出してから、まだ間もない。それが早くも7%割れを余儀なくされたため、金融緩和を急いででも経済成長を優先すべきか、経済成長は後回しにして構造改革を優先すべきか、という二者択一を迫られ、大いに迷っているに違いない。

 しかし、データ偽装が真実ならば、実態は7%割れどころか、3%割れやマイナス成長であることも考えられる。世界第二の経済大国である中国経済の実態が、実は想像以上に失速しているとなれば、それだけでも2008年のリーマンショックならぬ「チャイナショック」を引き起こしかねない。影響が国際社会の隅々へ及ぶことは必至である。

 そうなれば、隣国の日本も想定外の経済的な激震に見舞われないとは言い切れない。景気減速や外貨準備高の減少を不安視する習近平が、人民元の流出を食い止めるため、3月開催の全人代において、富裕層に対する「爆買い禁止令」を通すのではないかという見通しも浮上している。それが最悪シナリオへと通じるアリの一穴になるかもしれない。

 これから世界は、中国発の世界同時不況を引き起こしかねない可能性とその誘因因子を、徹底的に洗い出す必要があるのではなかろうか。とりわけ中国と経済上のつながりが深い日本は、中国やアジア諸国と協力しながら、チャイナショック防止を議論するための戦略プロジェクトチームを発足させるなどして、中国の体制整備に力を注ぐべきであると、筆者は提案したい。

上野記事

昨年から今年に持ち越した「3つのリスク」(①中国経済不安、②下げ止まらない原油価格、③米利上げ後の新興国を含むマネーフロー変調)のうち、③は、米国の利上げに打ち止め感が出れば、とりあえず歯止めがかかるリスクと言える。

 だが、残りの2つはかなりの難物だと筆者はみている。年明け以降の市場で大きな不安材料になり続けている①と②をスピーディーに消し去ることができ、しかも現実味のある解決策は、筆者には思い当たらない。

 まず、①中国経済不安は、昨年夏~秋の局面よりもはるかに事態は深刻であり、中央政府が財政政策を用いて景気を刺激すれば市場の不安心理が沈静化する、というような生易しいものではなくなっている。

「不安」から「不信」へ

 市場のセンチメントは、「不安」と形容されるレベルから、中国当局による経済政策運営や人民元という通貨そのものに対する「不信」「信頼感の喪失」へと、悪い方向に一段シフトした。最近出てきた中国問題関連の要人発言などをいくつか挙げた上で、筆者のコメントを加えてみたい。

◆マルコ・ルビオ米上院議員(共和党の大統領候補指名争いで3位につけている有望株) 「中国が国内で深刻な危機に面している。バブル経済には、別のバブルで埋め合わせをしてきたが、ついに危機がやってきた」(2016年1月7日)

~ この見方に筆者も賛同する。「リーマンショック」後の危機局面で大規模な景気刺激策を実施したことが、不動産バブルを膨らませた。これが崩壊したものの、抜本的な政策対応を怠り続けた結果、政策面で手詰まり感が強くなり、市場の不安感のみならず不信感をも招いている。

◆中国の銀行不良債権、2015年の増加幅は前年の倍以上(2016年1月12日 ロイター)

「中国の銀行が抱える不良債権の2015年の増加幅は前年の倍以上となった。匿名の関係者2人がロイターに明らかにした」 「関係者によると、2015年の不良債権の総額は1兆9500億元(2968億ドル)」 「2014年の不良債権は2574億元(391億9000万ドル)増の1兆4300億元であったため、15年の増加幅は5000億元以上とみられる」 「銀行業監督管理委員会はロイターのコメントの求めに応じていない」

~ 日本の経験からすると、不良債権問題を解消するための切り札は、「徹底したディスクロージャー(情報開示)」と「公的資金の大規模な投入」の2つである。だが、中国の当局はいずれにもまだ取り組んでいない。そうした実情をあらためて確認できる報道である。

◆中国の中央財経指導グループ弁公室の韓俊・副主任(2016年1月11日 ニューヨークの中国領事館で)

「(人民元が対ドルで一段と大幅に下落すると想定するのは)ばかげている」「人民元に対する経済ファンダメンタルズに大きな変動はみられない」「人民元を空売りする試みは成功しないと思う。投資家は人民元を信頼すべきだ」

~ 人民元の対ドル相場下落(=人民元からドルへの資金流出)の問題で、事態の全体像を人民銀行など中国の政策当局がどこまで把握してコントロールできているのかに、市場は疑念を抱きつつある。

 IMF(国際通貨基金)がSDR(特別引出権)の構成通貨に人民元を新たに採用することを決定した後で、無理に通貨価値を支える必要性はもはや薄れたという考えから人民銀行が元安ドル高に誘導し始めたというような、単純な話ではなさそうである。

 人民元の下落を当局が容認していることへの不信感から、「草の根」レベルで中国から海外への資本逃避(キャピタルフライト)が起こっており、人民銀行は外貨準備を大量に使ってドル売り人民元買い介入などをしてなんとか食い止めようとしているのではないかという見方が浮上している。

 中国の外貨準備高(金やSDRなどを含まないベース)は、昨年12月末時点で3兆3304億ドル(前月比▲1079億ドル)。12月の月間減少幅は過去最大で、このペースが続くと3年もたない計算である<図1>。そして、中国の外貨準備高は1月も995億ドルという巨額の減少になったことが、直近データから明らかになっている。

■図1:中国の外貨準備高

2015China's foreign currency reserves

(出所)中国国家外為管理局(SAFE)

 仮に、中国の外貨準備高の急ピッチの減少が今後も続くようだと、中国は自国通貨の防衛を継続できなくなって人民元はフリーフォール状況に陥るのではないかといった見方が市場で広がりかねない。

日本の20年前に似た雰囲気

 また、最近の中国の政府当局者の市場に関する言動を見ていると、「上から目線」を感じることが多い。日本でも少なくとも20年ほど前まではそうした雰囲気が漂っていたと記憶している。だが、内外経済におけるマーケットの影響力の大きさが政治の世界でもよく知られるようになる中で、日本の当局者の姿勢は大きく変わり、マーケットの動向を重視して、参加者の意向を尊重するようになっていった。

中国でも金融市場は自由化されていく流れにある。当局者の姿勢もまた、いずれ変わらざるを得なくなるだろう。また、市場はいわゆる「大本営発表」を安易に信用しない。情報発信の手法などにおいても、中国でいずれ大きな変化が出てくるのではないか。

 だが、これらはいずれも長いタイムスパンの話である。中国当局による「市場との対話」は今のところ、それが存在しているのかどうかさえ定かではなく、世界の金融市場を不安定化させる原因の1つになっている。

 もう一つの大きなリスク、②原油価格はどうか。原油の価格は崖から落ちるように下落してきており<図2>、この問題は「出口が見えない袋小路」に入った感が強い。サウジアラビアとイランの関係が悪化して外交関係断絶にまで至ったことで、石油輸出国機構(OPEC)が減産に動く可能性はかなり小さくなったというのが、筆者の見方である。

■図2:OPEC原油バスケット価格

the price of crude oil

 原油の減産に動くための前提条件として、サウジアラビアは以前から、ロシアなど非OPEC(OPECに加盟していない)産油国との協調減産の必要性を強調している。だが、OPECと非OPECの協調減産が実現するかどうかのカギを握るとみられるロシアのノバク・エネルギー相は、その実現に否定的なコメントをたびたび発している。

 1月15日にテレビ出演したノバク氏は、「OPECの全加盟国が(減産で)合意することさえ見込めない。いわんや非OPECとの協調減産もあり得ない」と指摘。「石油輸入国が世界市場からの輸入を減らしており、現段階では輸入国の影響力が大きい」と述べた。また、同エネルギー相はロシアの石油企業にとって「カギとなる原油価格の水準は、生産コストの水準、すなわち1バレル=5~15ドルだ」と話した。

 仮に、最近報道されているように、経済がかなり苦しくなったベネズエラなど一部加盟国の要請をうけてOPECが2月に緊急会合を開催し、ロシアも参加して協調減産を協議する場合でも、合意までこぎつけるのは至難の業だろう。

 欧米などから経済制裁の解除をうけて原油の増産・輸出増加に動き出しているイランは、このタイミングでは減産合意には乗りにくい。イランの増産を認めつつOPEC全体で減産しようとする場合は、主にサウジアラビアが自国の生産枠について、イランの増産分を上回る規模で引き下げを受け入れるという話にならざるを得ない。

 だが、両国の関係が悪化している中では、サウジアラビアが一方的に損をかぶる形になる生産枠調整は、実現する可能性がきわめて小さい。イスラム教スンニ派の盟主であるサウジアラビアが、シーア派の盟主である国であるイランに対し、いわば敵に塩を送るような形になるからである。

 また、サウジアラビアは市場におけるシェアを重視し続けており、原油価格下落を容認して米国のシェール会社(総じて原油生産のコストが高いとされる)の市場からの退場を促す「持久戦」を、このままさらに続ける意向を示唆している。同国のヌアイミ石油相は1月17日、国際石油市場で供給過剰が続く中、市場安定には「ある程度の時間」がかかると述べた上で、今後について楽観的な見方を示した。

リーマンショック2にはつながらない

 株価に話を転じよう。「グローバルな金あまり」状況の継続に鑑みた場合、リスク要因が多い中であっても、内外で株価が一方的に下げ続けることまではないと予想するのが順当だろう。

 米国の利上げが続きにくいこと(当コラム1月26日配信「昨年末の米利上げは2000年の日本そっくり」参照)、各国の規制監督当局が金融システムの安定維持に注力していることも考え合わせると、「バブル崩壊でサヨウナラ」的な一方的な株価暴落や、先進国の金融システムへの甚大なダメージは発生しにくいと、筆者は考えている。その意味で、年初からの市場の大きな混乱が「リーマンショック2」につながるとは予想されない。

 とはいえ、「中国」と「原油」という2つのビッグリスクが早期に払しょくされそうにない状況下、内外の金融市場の動きは今後も不安定なものにならざるを得ない。したがって、株式の押し目買いなど「逆張り」で投資家が動く際には柔軟性が必要で、無理は禁物である。

日経記事

ピークから2割減 【北京=大越匡洋】中国の外貨準備高が過去最大規模の減少を続けている。中国人民銀行(中央銀行)は7日、1月末の外貨準備高が3兆2309億ドル(約378兆円)で、前月に比べ995億ドル減ったと発表した。減少幅は過去最大だった2015年12月の1079億ドルに次ぐ大きさだ。中国の通貨、人民元への下落圧力が強まり、人民銀がドルを売って元を買う為替介入を繰り返していることが大きな要因だ。

 中国の外貨準備高はなお世界最大で、2位の日本の約2.6倍の規模がある。ただ、15年は23年ぶりに通年で減り、減少幅は5千億ドル以上に達した。4兆ドル近くにのぼったピーク時の14年6月からみると、足元ではすでに約2割減った。

2014・15China's foreign currency reserves

ユーロ安などで評価額が目減りしたり、中国企業の海外進出の支援に活用したりした減少分はあるものの、中国の外貨準備が大幅に減っている大きな要因は為替介入だ。

 中国の景気減速に加え、米国の利上げで海外への資本流出が加速し、市場では人民元の下落圧力が増している。人民銀は急激な元安を食い止めるため、為替介入で元を買い支えている。その分、外貨準備で持つドル資産を売却し、外貨準備の減少につながっている。

 元買い介入は、国内の金融政策にも影を落とす。元買い介入で市中に出回る元を吸い上げることになるため、流動性が目減りし、景気下支えのための金融緩和の効果をそぐことになるためだ。一方で、追加の金融緩和に動けば、利上げに動いた米国など海外へのマネーの流出に拍車をかけ、元安圧力が一段と強まるというジレンマを抱える。

 人民銀は6日発表した四半期に1度の金融政策執行報告に載せたコラムで、主な金融政策手段である預金準備率について「引き下げれば緩和期待が強まり、人民元安の圧力や資本流出の増加、外貨準備の減少を招く」として、一段の引き下げに慎重な姿勢を示した。

 実際、7日に始まった春節(旧正月)の大型連休を控え、人民銀は市場が期待していた預金準備率の引き下げは見送り、公開市場操作(オペ)や特定の金融機関に資金を供給する「中期貸出制度(MLF)」などの手法で大量に流動性を増やした。

 人民元の先安観は依然として強く、景気の先行きも不透明だ。景気のてこ入れには金融緩和が避けられないが、「通貨安競争」と受け止められかねない過度の元安を回避したい思惑も働き、人民銀は金融政策の難しいかじ取りを迫られている。

大前記事

中国経済はもはや破綻が起きるか否かが問題ではなく、いつ起きてもおかしくない状況なので、もはや経済政策の打ち手はないと経営コンサルタントの大前研一氏はいう。それでも危機を回避するにはどうしたらよいのか、大前氏が解説する。 かつてアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が世界恐慌(1929年~)を克服するために行なったニューディール並みの政策で有効需要を創出しようと思っても、すでに中国では高速鉄道、高速道路、空港、港湾、ダムなどの大型インフラはあらかた整備済みで、乗数効果のあるインフラ投資の領域は見当たらない。  しかも、一人っ子政策を続けてきたせいで今後は高齢化が急速に進展するが、介護や年金などの社会保障を支える人材・予算が大幅に不足している。  さらに「理財商品」という隠れた爆弾もある。これは短期で高利回りをうたった資産運用商品で株式ブームの前に人気となり、集まった資金が主に地方政府の不動産開発やインフラ整備などの投資プロジェクトに流れたとされる。今後はそれらの投資プロジェクトが行き詰まり、理財商品を発行した「影の銀行」が損失を受けてデフォルト(債務不履行)を起こす可能性があるのだ。日本のバブル崩壊でノンバンクが次々に倒れたのと同じ現象だ。  そして、中国国内で投資先を失ったお金のエクソダス(大脱走)が加速している。人民元は個人は年間約120万円しか海外に持ち出せないが、中国本土から人民元を香港などに違法に送金する「地下銀行」を運営していた300人余り、総額8兆円近くが摘発された例もある。資金の海外流出は必然的に人民元安と株安につながる。

鳴り物入りでスタートした中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、中国にはプロジェクトを審査して遂行していく能力があるマネジメント経験者がいないから、ことごとく失敗するだろう。

 以上が中国トラブルの一覧だが、まるで先進国がこの100年間に経験してきたことを10年間に凝縮したかのようだ。しかも、その規模は10倍に膨れ上がり、対する政府の能力は100分の1ぐらいしかないといった状態である。

 もはや中国は習近平政権に限らず、誰をもってしてもコントロールできなくなった。コントロール・フリークが、コントロールしてはいけないものをコントロールしたから、そうなったのである。行き着く先は、超元安&ハイパーインフレしかないだろう。

 いずれにしても、もう中国は「詰んで」しまった。中国発の大恐慌は不可避であり、導火線に火がついてじりじりと燃えている状態だ。これまで中国は世界の景気を支えてきたが、それが全部ひっくり返って日本もその他世界も大混乱に陥る。その余波はサブプライム・ショックやリーマン・ショックよりはるかに大きく、アメリカ発の世界恐慌と同じぐらいか、もしかするとそれ以上かもしれない。

 その危機に備えよと言っても、何が起きるか予想がつかないので、備えようがない。世界恐慌が軍需景気を待望して第2次世界大戦につながった歴史の教訓に学び、中国の動向を注視しながら諸外国に対する攻撃の口実を与えないよう柔軟に対応するしかないだろう。

 ※週刊ポスト2016年2月12日号