ランド研究所と言えば保守派(wikiには「1946年にアメリカ陸軍航空軍が、軍の戦略立案と研究を目的とした ランド計画Project RANDとして設立したのが始まり」とあります)のシンクタンクで有名ですが、この程度の論文を出すと言うのは、本文中にあるようにランド研究所にも中国の金かハニーが絡んでいるのかも。澁谷司拓大教授は「英国MI6曰く、ISよりも中国の「ハニー・トラップ」の方が恐ろしい」と仰っています。小生思うにこれはオズボーン(英国のAIIB参加に熱心だった)のことを言っているのではと思った次第。
確かに織田氏の言うように、現代の戦闘では政治要素を別にすれば、小生は制空権>制海権>陸上占領(制空権がなければ制海権も手に入らず、ましてや陸の占領はできないという意味で)と考えます。日本の航空自衛隊の存在を無視した戦闘を考えて予想するのは為にする議論としか思えません。やはり中国の三戦の内、米国への世論戦に挑戦しているのでしょう。孫子の戦わずして勝つことを実践しているのでしょう。日本は情報戦が弱いから「南京」や「慰安婦」でも負け続けです。外務省が無能ですから。やはり官邸に海外発信を移すと言うことをやっていかないと外務省は何もしないでしょう。
日経の記事もこのランド研究所の論文を米軍関係者にインタビューして否定的に報道しています。ただ問題は米国大統領が戦争と言う重い決断ができるかどうかと。オバマであれば望み薄でしょう。でもこの記事にありますように、小さい芽の内に叩いていれば損害が少なかったのも事実でしょう。チエンバレンの宥和政策がヒットラーの野心を膨らませたのと同じことが起こります。別に戦争をするのでなく、経済制裁から始めればよい。南シナ海の新南群島は日本の領土だったですが、サンフランシスコ講和条約で領有権は未定のままです。台湾と同じ構図です。米国の曖昧戦略の咎めが出て来ています。米国には台湾、新南群島の問題解決をする義務があります。国益からと言って、逃げることは許されません。世界の覇権を握っていた国がそれを放棄した瞬間に地域覇権国に転落するでしょう。今の米国であれば、中国を簡単にねじ伏せられます。衛星から指示を受けない魚雷入り自動浮上するタイプの機雷を中国沿岸に敷設するだけで中国は経済的に干上がるでしょう。後は大統領の決断だけです。
織田記事
中国東北部・遼寧省大連港に係留された同国初の空母「遼寧」〔AFPBB News〕
1月15日、米国の外交専門誌「Foreign policy」は、ランド研究所が実施した尖閣諸島を巡る日中衝突のシミュレーション結果を公表した。その結果は「日本は5日で敗北」という衝撃的な結末だった。
冷戦時、筆者は現役自衛官だったが、「日本は極東ソ連軍に1週間で完敗する」とか、「航空自衛隊は開戦後15分で消滅する」とかよく言われたせいかデジャブ感を覚えた。
シミュレーションの詳細が不明なため(「Foreign Policy」はシナリオと結果のみ報道)、この評価は難しい。
「5日」の正否はともかく、日中が直接ガチンコ勝負になれば、結果は同じようになるかもしれない。さりとて、複雑な要因が入り乱れる国際社会の中で、こんなに単純にはいかないというのが率直な感想だ。
それより、ランド研究所は今、なぜこういう衝撃的な結果を発表したのだろう。筆者はその思惑の方に興味をそそられる。
次々発表される「コミットメント・パラドクス」
最近、米国では中国系シンクタンクが「コミットメント・パラドクス」を相次いで発表しているという。「コミットメント・パラドクス」を簡単に言うとこうだ。
米国は同盟国へのコミットメントとして、ジュニアパートナーにあまり肩入れし過ぎない方がいい。さもなければ軍事大国との全面戦争に巻き込まれることになる。それは決して人類にとって幸せなことではない。
つまり尖閣諸島と言った無人島の領有権を巡り、米国はあまりコミットすべきではない。米国にとって何の価値もない無人島にコミットし過ぎると、中国との紛争に巻き込まれる可能性がある。
日中間の紛争に巻き込まれたら、米中核戦争にエスカレートする蓋然性もゼロではない。それは米国の国益にとって決してプラスにはならないという助言を装った一種の警告である。
中国は台湾、南シナ海のみならず、尖閣諸島も「核心的利益」として位置づけ、領有権に関しては一歩も引く気配はない。だが、米国のバラク・オバマ大統領が「尖閣は安保条約5条の対象」と明言したことにより、身動きが取れないでいる。
27年間で41倍という驚異的な軍拡を図ってきた中国も、いまだ米軍だけには歯が立たない。だから中国は決して米国とは事を構えたくないと思っている。もし日中間で小競り合いが起こっても、何とか米軍が動かない方策を探し求めている。
人民解放軍の高官が語っている。「我々にとって最良の日米同盟は、ここぞという絶妙の瞬間に機能しないことだ」と。この言葉に中国の本音が透けて見える。中国にとっては、米国の宿痾とも言える「引きこもり症候群」を再発するのが一番好都合に違いない。
今回のランド研究所の公表内容は「コミットメント・パラドクス」そのものである。近年、米国の有名大学やシンクタンクに莫大な額のチャイナマネーが流れているのは公然たる事実である。
あるシンクタンク関係者が語っていた。公正中立を標榜する有力シンクタンクでも、莫大なファンドを寄付する顧客の意に沿わない報告書はなかなか出せないと。「ランドよ、お前もか」ともよぎるが、「天下のランドだから、そんな」との思いもある。
オバマ大統領は2013年9月、「米国はもはや世界の警察官ではない」と明言した。その後も同発言を繰り返している。これが今後の米国外交方針の潮流ならば、この流れに迎合する「時流迎合型」報告書なのかと考えたりもする。
ランド研究所の思惑とは
ランド研究所がこれを公表した12日後、ハリス(ハリー・ビンクリー・ハリス・ジュニア)米太平洋軍司令官は、沖縄県尖閣諸島について「中国からの攻撃があれば、我々は必ず(日米安保条約に基づき)防衛する」と公開の席上で述べ、米軍の軍事介入を言明した。この発言を見る限り、潮流の方向性が定まっているとも思えない。
では、冷戦時によくあった、日本の防衛力増強を強要するための警鐘なのだろうか。
だが、オバマ政権はこれまで、日本に対し際立った防衛力増強の要求はしてこなかった。これを考えると、首をひねらざるを得ない。正直に言って今回のランドの思惑は筆者には分からない。
なぜ、思惑について興味を引いたかというと、シミュレーション内容がランド研究所にしては、あまりにも稚拙で、一方的だったからだ。(シミュレーションの詳細が不明なため、「Foreign policy」の記事からのみ判断していることをお断りしておく)
シナリオは日本の右翼活動家が魚釣島に上陸したことから始まる。中国は直ちに海警を派遣し、これを逮捕、拘束する。2日目、日本政府は周辺海域に護衛艦や戦闘機を展開。米国も日本の要請に応じ、駆逐艦や攻撃型潜水艦を派遣する。中国側も海軍艦艇を展開したため、周辺海域は一触即発の緊張状態となる。
3日目、中国の海警が日本の漁船と衝突、沈没させたことにより事態はエスカレート。中国フリゲート艦が30ミリ対空機関砲で空自機に発砲したことで、日本側も応戦し、一気にテンションは高まり、交戦状態となって海自艦艇2隻が沈められる。
ここまでが交戦に至るまでのシナリオであるが、どうも素人っぽい。勉強不足の学生が書いた未熟な卒論の感が否めない。実態と乖離し過ぎると、シミュレーション自体の信頼性が失われる。
2日目に海自艦艇や空自戦闘機を展開したとあるが、根拠は何だろう。海警による上陸日本人の逮捕、拘束は、武力攻撃事態とは言えない。当然、防衛出動は下令されていないはずだ。
治安出動、海上警備行動がその根拠かもしれない。2日目だったら、時間的余裕なく、ひょっとしたら、海自、空自部隊の展開は「行動」ではなく、防衛省設置法の「調査研究」を根拠にしているかもしれない。
あり得ない前提条件
いずれにしろ、防衛出動が下令されない限り、展開した海自、空自は武力の行使はできない。仮に攻撃を受けた場合でも警察権に制約された武器の使用しかできない。だとしたら、海自指揮官は中国艦艇からは距離を置き、防護体制を整えて被攻撃を避け、行動の監視を命ずるだけだろう。
まして中国フリゲート艦の30ミリ対空機関砲の威力圏内に空自戦闘機を飛ばすことなど、まずあり得ない。また海上保安庁の巡視艇が中国海警に「放水」して対抗とあるが、日本の海上保安庁は法律上、他国の公船に対して放水はできないし、するはずもない。以上だけでも、シナリオの未熟さが分かる。
現実的には、米国が駆逐艦、攻撃型潜水艦を派遣した時点で、中国は矛を収めざるを得ないだろう。人民解放軍は近代化されたとはいえ、いまだ米軍には歯が立たないことは、人民解放軍自身が一番よく知っている。
1996年、初の台湾総統選挙を妨害するため、中国は台湾近海に4発のミサイルを撃ち込んだ。だが、ビル・クリントン大統領が即座に2隻の空母を派遣した途端、矛を収めざるを得なかった。
人民解放軍はこの屈辱をいまだに忘れてはいない。だが、中国軍にこの屈辱を覆せるだけの実力は今なお備わっていないのが現実だ。同じ屈辱を味わうようなバカなことはするはずはない。
中国の軍事行動の蓋然性は、国際政治の観点も考慮しなければならない。現在の中国の最優先課題、つまりコアな国益は、
(1)共産党一党独裁体制の存続 (2)国内社会秩序の維持(分離独立の排除、治安維持) (3)経済成長の持続
である。特に(3)は(1)と(2)支える必要条件であり、至上命題となっている。
グローバル経済に依存する中国にとって、(3)のためには、国際社会から糾弾されるような行動、つまり経済成長に悪影響を及ぼすような行動は慎まねばならない。
2014年、中国が西沙諸島で石油掘削作業を一方的に実施した時の対応が象徴的である。ベトナムは漁船にNHK、CNN、ABC各記者を乗船させ、警備にあたる中国船が、ベトナム漁船に衝突を繰り返す動画を全世界に配信させた。
中国の暴虐無道ぶりに対し国際社会で一斉に非難の声が上がった。途端、中国は掘削作業を取りやめた。ベトナムは中国が国際社会の非難には敏感だという弱みをうまく利用したわけだ。
だからこそ、中国は「核心的利益」であっても、国際社会から糾弾されるような通常戦や熱核戦は回避し、「不戦屈敵」を最善とする。これが「三戦」つまり「心理戦、世論戦、法律戦」を重視するゆえんであり、目立たないで実利をとる「サラミ・スライス戦略」を遂行するわけだ。
米本土が攻撃されても怒らない米国人?
こういう中国が、先に空自戦闘機に攻撃を仕かけ、海自艦艇を沈めて、500人の犠牲者を出すようなシナリオにはかなり無理がある。 シナリオに戻ろう。3日目、海自艦艇撃沈を機に事態はエスカレートし、米海軍も中国艦艇2隻を撃沈する。
4日目、中国は米国に対しては、本格戦争へのエスカレーションを避けるため、サイバー戦に限定し、ロサンゼルス、サンフランシスコなど大都市を停電に追い込む。証券取引所にもシステム妨害を実施して莫大な損害を与える。大被害を受けた米国は日本に対するコミットを下げていくという。
このシナリオにも相当無理がある。
米本土の国民に被害が及んだ時点で、第2の「真珠湾攻撃」となり、米国民の怒りは頂点に達するだろう。さらにサイバー攻撃なら軍事的反撃は制約されるという前提そのものに誤謬がある。
サイバー攻撃については、米国は「サイバー空間国際戦略」( International Strategy for Cyberspace 2011)を公表し、方針を明確にしている。
「合衆国は、他の国々と共に、責任ある行動を促進し、ネットワークとシステムを破壊しようとする者に対し、悪意のある行為者を抑止・抑制すると同時に、国家の重大な財産を必要かつ適切な範囲で防衛する権利を留保する」とし、国家の固有の権利である自衛権はサイバー空間においても適用され、自衛のための軍事力を展開する権利を有すると明言している。
米国防総省が公表した「サイバー空間作戦戦略」(Department of Defense Strategy for Operating in Cyberspace 2011)でも、サイバー空間における敵対行為に対する自衛権及び軍事力行使の可能性を明示している。
米国民が激昂すれば、コミットを下げるどころか、本格的な対中戦争にエスカレートする確率が高いことは、中国が一番知っているはずだ。本格的な米中戦争で勝てる確信がないまま、米中戦争の誘因になる作戦を遂行するほど中国は愚かではあるまい。
同盟国に対する米国のコミットメントにより、米国が多大な損害を受けるという結論が先にあるために、荒唐無稽なシナリオを重ねているような感じがする。これで最終日を迎えるが、無理の上に無理を重ねているため、軍事的に見ても非常に奇妙なところが出てくる。
航空機優勢獲得の戦いはどこへ
5日目、尖閣周辺海域の海自艦艇は弾道ミサイルと巡航ミサイルの攻撃を受け、海自戦力の5分の1を喪失。中国はさらに日本への経済中枢へも攻撃を開始する。
日本政府は米国政府に策源地攻撃を要求するが、米国はこれを拒否。その代わり、潜水艦と戦闘機を増派して海自の撤退を支援する。これでゲームは終わり、中国が尖閣諸島を確保するというシナリオだ。
日本の軍事基地や政経中枢へのミサイル攻撃などというが、これでは明らかな日中全面戦争である。国連を含め国際社会の中国非難は高まり、中国のリスクは相当なものになる。
もしこのリスクを冒すとしたら、先述のコアな国益、つまり(1)共産党一党独裁体制の存続、または(2)国内社会秩序の維持が本当に危うくなった時だけであろう。
百歩譲って、こんなこともあり得ると仮定して軍事的に見てみよう。これは組織的、計画的な武力攻撃であり、当然防衛出動は下令されるだろう。であれば空自戦闘機も戦闘に参加しているはずだ。このシミュレーションでは航空優勢獲得の戦いが見えない。
シナリオは海上戦闘が主とはいえ、航空優勢の帰趨に大きく勝敗が左右される。周辺海域の制空権を握らずして、1~2日で海自艦艇の20%を喪失させることは難しい。
日経記事
囲碁では、2人が白と黒の碁石を交互に盤上に置き、囲い込んだ「領土」の広さを競う。大国の行動も、これに似ている。経済力や軍事力を使い、自分の縄張りを少しずつ広げたがる本能があるからだ。
南シナ海でせめぎ合う米中も同じだ。中国は7つの人工島をつくり、空港やレーダーをしつらえた。
米軍内では「一度に2隻の軍艦を人工島に送ったり、爆撃機を接近させたりして、圧力を強める案が出ている」(関係者)という。オバマ大統領が承認するかはともかく、緊張は高まりそうだ。
この対立は一見すると、「航行の自由」をどこまで中国に尊重させるかという国際法問題のようにみえる。だが、本質は、アジア太平洋の覇権をめぐり、米中が熱い縄張り争いに入ったということだ。
なぜなら南シナ海はただの海ではなく、世界の勢力図を左右する「へそ」だからである。地政学に精通した米戦略家の解説に耳を傾けてみよう。
米国が南北アメリカ大陸を支配できたのは、19~20世紀初めにかけて欧州の勢力を退け、中心点にあるカリブ海を抑えたからだ。南シナ海もそんな要所にある。中国に支配されたら、アジア太平洋の覇権を奪われかねない――。
2つの地図を見ていただきたい。いずれの海もちょうど、真ん中に位置している。つまり、南シナ海はアジア太平洋の覇権を決する「カリブ海」なのだ。当然、米中の首脳もそのことは分かっているはずだ。
こうしたなか、気になる警告が米側から飛び出した。「南シナ海は2030年までに事実上、中国の『湖』になってしまう」。米戦略国際問題研究所(CSIS)は1月下旬、こんな報告書をまとめた。
根拠のひとつは、中国が数隻の空母機動部隊をもち、南シナ海にいつでも展開できるようになること。米ランド研究所も昨年10月、アジアの米軍優位が崩れていることを示す、詳しい分析を発表した。
ところが、米政府や米軍関係者にたずねても、返ってくるのは正反対に近い反応だ。「中国軍は増強されているが、米軍の優位は決して崩れない」「中国の成長は鈍っており、軍拡の勢いもいまがピークだ」
いったい、どちらが本当なのか。米太平洋軍司令官を経て、米中央情報局(CIA)などインテリジェンス機関を統括する国家情報長官も務めたデニス・ブレア氏(元海軍大将)に、疑問をぶつけてみた。
「そこまで悲観的な状況だとは、まったく思わない。台湾や南シナ海で中国軍が勝つには数週間、制空海権を保つ必要がある。それにより侵略後に拠点を築き、米軍の反撃もはね返さなければならない。中国軍は近年、そうした軍事作戦の経験がないが、米軍にはたくさんある」
中国軍は新兵器をいっぱい買い込んでいるものの、長年の実戦で鍛えられた米軍の能力には到底、かなわないというわけだ。
むろん、彼は現実を甘く見ているわけではない。印象に残ったのは、最後に語ったことばだ。自身が太平洋軍司令官だった約15年前なら、米軍はわずかな損害で中国軍に勝てた。だが、そんな時代はすぎたという。「(戦争になれば)こっちにも損害や死傷者が出る。しかし、最後には米国が勝つ」
アジアで紛争が起きたとき、多くの米兵の命を危険にさらしてでも、介入するか。米大統領はそんな決断を、より切実に迫られる時代になった。この現実は米国だけでなく、アジアにも重くのしかかる。(編集委員 秋田浩之)