2/3日経ビジネスオンライン 福島香織『弾圧と低賃金と闘う「中国新聞労働者」の受難 不安の中、ネットで地方ネタ探し、週100本執筆…』について

米大統領選・党員集会で、アイオワ州ではサンダースが僅差で敗れました。ヒラリーが勝ったのは残念。共和党はトランプがクルーズに敗れました。TVCM等の空中戦だけではだめで、戸別訪問という地上戦を地道にこなさないといけないという事です。マルコルビオが三位に入ったのは良かった。

さて、本記事ですが80后(一人っ子政策以降に生まれた人たち)の記者が多いとのこと。当たり前で、老齢の記者は引退していきますので。でも週100本も記事を書かないといけないというのは辛いですね。出来高制と言うのは如何にも中国らしいです。剽窃は当り前の世界です。まあ、元々中国・韓国はパクリの文化ですから、何とも思っていないでしょうけど。

以前中国勤務時代に新華社の記者との付き合いがあり、工場建設でのトラブルを解決して貰いました。競合相手が役人を味方につけ、金が行き詰まる工作をしていました。「それを書く」と役人を脅したらすんなり資金の入金が認められました。その記者は当然見返りを要求してきましたが。新華社系は力を持っており、公安や国家安全部との繋がりもあり、外国特派員はスパイと思っていますが。ただ、一般の記者でも、昔は開業式のイベント等に招待するときは、お車代を払わないと記事にしてくれませんでした。

最後の「日本の記者のような恵まれた環境で、簡単に報道圧力に屈したり、報道モラルを見失ったり、捏造したりしては、一分の言い訳もできないと思う。」と言う部分に強く共感します。朝日新聞の慰安婦捏造報道や左翼系メデイア(毎日、東京、共同、北海道、琉球新報、沖縄タイムス等)は日本を貶めることに精力を傾け、中国の人権弾圧や軍事拡張については知らんふりするという二重基準の報道を続けています。TVでも、国谷、岸井、古舘が降板とのこと慶賀の至りです。でも購読したり、視聴する人がいるから経営が成り立つわけで、見ないことが肝要です。不買こそが相手に一番ダメージを与えることができます。そもそも左翼メデイアを見続ければ脳内に刷り込まれ、お花畑になり、リアルポリテックスが理解できなくなります。記事を見るときは我がことのように置き換えてみないと。そうすれば解説者の言っていることに違和感を覚えるでしょう。

記事

 中国の記者たちが日本やその他西側諸国の記者たちよりも、給料も少なく、権力からの圧力も強く、報道の自由もほとんどない厳しい環境に置かれ、”新聞民工”(ニュース労働者)と呼ばれる状況の中で奮闘していることは、拙著『中国のマスゴミ』(扶桑社BOOKS新書)でも紹介しているが、先月に米PRニュースワイヤー社が出した「2016年中国記者工作者の生存状況と業務習慣」というリポートが、なかなか考えさせられるので紹介したい。

 これは2015年11月から2016年1月にかけて、PRNがオンラインで中国の2万人の記者にアンケートをとって1477人から得た回答をもとにまとめたもの。この回答の少なさが、中国の記者の発言の不自由さを物語っているような気もするのだが、それでも西南大学新聞メディア学院など研究機関の協力や、数十人の大手メディアの著名記者らの聞き取りなども加えて、少なくとも労働環境の様子は垣間見える。

辞める理由は、収入の低さと未来の暗さと

 それによると、現在の中国の記者たちの主力は1985年以降に生まれた若者である。67.9%の記者が北京、上海、深圳、広州の4大都市出身で、うち北京出身の記者は41%を占めている。また男性が62.7%を占め、男性を中心とした業界である。

 80.6%が月収1万元(18万5000円)以下で、うち3割が月収5000元以下だという。このほか、6~10年のキャリアの記者と11~20年のキャリアの記者の間には、明らかな年齢やキャリアによる収入差がなく、31歳から50歳の記者で月収が2万元以上となるのは5%以下という。入社2年目の駆け出し記者の月収は2000~5000元で、社会部(総合)記者、教育・リクルート部門の記者収入は相対的に低い。

 記者を辞めたいとすれば、一番の理由は収入の低さであるという回答が58.8%に及ぶ。次に業界の未来に期待できない(43.6%)、報道の理想を実現できない(26.7%)と続く。多くの記者が給与に満足していない一方で、将来5年は記者稼業を続けたいとする回答は68.7%に上った。

 どのような取材技能を磨きたいかという質問では、深く掘り下げたストーリー報道のテクニックと答えたのは52.5%、数字データなどを使った可視化報道のテクニックと答えたのは43.1%、カメラの撮影テクニックと答えたのは38.3%だった。

13.9%の記者は週100本の記事を執筆

 また記者が情報を取得する方法としては、QQ、微信などのネットの通信ツール、業界サイト、微博、ブログなどのネットメディアがいずれも50%を超えており、次に電子メール(47.2%)、オフライン活動・記者発表会(43.5%)と続く。39.1%の記者がスマートフォン・携帯電話のニュース配信などで情報や報道のきっかけをつかんでいるという。

 また報道記事を書く際に、87.1%の記者がオフィシャルな報道通稿(新華社などが配信する記事)を信頼できるソースとする、と答えており、次に企業・機関の高官、報道官からの情報(51.7%)、オフィシャルなSNSメディアのアカウントが配信する情報(41.6%)、企業・機関のオフィシャルサイト(39.7%)が続いている。

 また74.2%の一線級記者らは毎週5本以下の独自記事を書き、うち65.7%の記者が記事を1本書くには、平均2~5時間、資料を収集し精査するという。

 66.5%の記者は毎週少なくとも30本以上の企業ニュース記事を書いており、うち13.9%の記者は週に100本以上の記事を書いている。

 31%の記者が毎日、6社以上の企業の広報担当と自主的に連絡をとっているとも。

 この調査リポートを私の経験などと照らし合わせて解説してみると、確かに中国の記者は全体的に若い。20代後半でデスク、30代で編集長は当たり前だ。若年化しやすいのは、中国において記者の仕事が大変な割には収入が低いことも大きい。昔、友人の中国人記者からこう言われたことがある。「年をとって新聞記者を続けているのはばかですよ。普通は取材中にできたコネを使って、株でもうけたり、起業したり、ジョブホップするんです。いつまでも記者をやっているのは、中央宣伝部入りを目指す官僚志向か、記者しかできない人だけですよ」。確かに、記者からコンサルタントや宣伝・広告、貿易、不動産などの企業家になっているケースは少なくない。

 中国のネットメディアTMTPOSTが、中国記者の状況と日本の記者などと比べているが、日本の記者は厚生労働省の職業別平均収入ランキングでいえば第6位に入り、弁護士、歯科医、建築士などの伝統的高収入職業と匹敵する。正直いえば、大手テレビ局や大手新聞に所属する記者を基準にしているために平均収入が跳ね上がっているだけであり、私が昔所属していた新聞社などは、この平均収入のよくて6がけぐらいでなかったかと思う。だが朝日新聞記者は、終身雇用で20代で年収1000万円を超えるのが当たり前、30代で1200万円、40代で1300万円から1400万円…、と紹介されている。

給料は歩合制、ネットや広報資料からネタを

 ちなみに週に100本記事を書く日本人記者に私はお目にかかったことがない。比較的出稿量が多いと言われた私もまともに取材すれば、1日3本が体力的気力的に限界だった。年収1500万以上の大新聞記者様になると週1本、たいしてうまくもないコラムや解説を書いているだけ、といった人もけっこういる。もっとも日本が特殊なのであって、英国も米国も記者の給料というのはそう高くないようである。2015年の英国の新人記者の平均年収は1万2000~1万5000ポンドぐらいで、タクシー運転手や配管工とほぼ同じ水準だという。2015年のミドルクラスの米国記者の平均年収は3万7813ドルという。

 中国人記者が週100本記事を書く、というのは多少の誇張はあるかもしれないが、仕事量はざっとみても日本の記者の5、6倍はありそうである。特にネットメディア記者の仕事量は半端ではない。中国の記者は固定給ではなく、書いた原稿の本数に応じて給与が出る歩合制が多いため、とにかく記事の出稿量が多い。CCTVや新華社など潤沢な取材費が用意されている国営メディアは別として、普通の地方紙は取材費も限られており、しかも常に政治的に問題がないかを考えなければならないので、なんでも手あたり次第取材できるというわけではない。週100本記事を書く場合は、結局、ネットのSNSでネタを拾ってそのまま書いたり、企業の広報資料の書き写し程度のものが多い。また、政治ニュース、大きな事故・事件ニュースは原則として独自取材は禁止なので、新華社配信や公式発表を縦のものを横にする程度で出稿するしかないという事情もある。

だが、そういう発表もの書き直し記事は原稿料が低いし、なにより読者がついてこない。こうして、非常に限られた環境の中で、読者受けをする企画ネタも書かなければならないのだから苦労する。

 そこで原稿料が比較的高く、また政治的にも当局から圧力を受けにくい経済記事が多くなる。読者受けするのは、消費者の立場に立った企業のスキャンダル、不祥事記事。こうした不祥事記事は、主に”タレこみ”と呼ばれる関係者やライバル企業からのリークを基に取材を進めていくので、日ごろから企業回りが重要となっていく。毎日、6社以上の企業関係者と連絡を自主的に取っているというのはあながち誇張ではなかろう。

 だが、企業不祥事ニュースも、ものによっては政治が絡み、報道した記者が逮捕されることもある。以前、「中国・新快報記者はなぜ逮捕されたのか」で紹介したとおりである。習近平政権では、企業不祥事もタブー入りしかけている。

狙い目は、ネットにあふれる地方の小さな事件

 アンケートからも分かるように、インターネットのSNSが発達した昨今は、ネットからネタを拾う取材法が増えている。ネット上では、地方の都市や農村で起きた小さな事件のネタがあふれている。これは記者の筆力次第で、多くの読者の共感を呼ぶカバーストーリーとなる。たとえば、甘粛省永昌県の女子中学生がチョコレートを万引きしたのを責められて自殺した事件。

 昨年12月28日、甘粛省の田舎町で、13歳の女子中学生が、ひもじさからスーパーでチョコレートを万引きした。店主がこれを見つけて、他の客の前で罵りだした。ついには母親を呼び出し、罰金150元を払えという。だが貧しい母親はそのような大金は持っておらず、金をかき集めているうちに、その娘はショッピングセンタービルの17階から飛び降り自殺をした。

 この事件について、両親はスーパーの無慈悲な対応が自殺の原因となったと主張、これに同調した数千人の群衆が28日、29日とスーパーを取り囲んだため、武装警察が出動した。ネットに流れた動画には、暴徒化した群衆に武装警察の車両がひっくり返された様子などが映っていた。こういう事件は、背後に、13歳の少女の境遇を書き込むことで社会の共感を大いに呼び、また貧困問題という背景について掘り下げることもできる。しかも、批判の矛先は地方政府なので、中央政府を批判するよりは政治リスクが少ない。30日には、中国各紙がこの記事を社会ニュースとして報じた。

 だが、この事件を1月に入っても追跡取材していた蘭州晨報の張永生記者ら地元紙3社3記者が、突然失踪。やがて地元公安当局に逮捕されていることが明らかになった。容疑は当初、「買春」と発表されていたが、途中で「政府に対する恐喝」に変わった。張永生は地元市中心部で行われた防災訓練中に周辺の建物に火が燃え移り火事となった事件を取材するために、市当局の「取材するな」という警告を無視して現場に行ったところを拘束されたという。これは記者の不祥事事件ではなく、明らかな報道弾圧だと見られている。

地方でも報道弾圧、問われるモラル

 甘粛の3記者逮捕については、記者ら所属の新聞社が公開書簡を発表し、地元政府の対応を批判している。矛先が中央政府に向いていないので、世論の盛り上がりによっては、中央政府は新聞社側を擁護するかもしれない。この事件はまだ先が見えていない。

 習近平政権になってから、もともと厳しい記者稼業の環境はますます悪化していると言えそうだ。少ない給料に長時間労働、そして厳しい弾圧、冤罪逮捕の恐怖と隣り合わせ。そういう環境の中で失われてしまうモラルの問題。「新聞民工」と呼ばれる中国記者の境遇を少しでも知れば、日本の記者のような恵まれた環境で、簡単に報道圧力に屈したり、報道モラルを見失ったり、捏造したりしては、一分の言い訳もできないと思う。