2/13日経「米民主党テレビ討論会、非白人票の確保焦点 差別解消訴え
【ワシントン=川合智之】米大統領選の民主党候補の指名を争うヒラリー・クリントン前米国務長官(68)とバーニー・サンダース上院議員(74)は11日、米ウィスコンシン州で開いたテレビ討論会に出席した。9日のニューハンプシャー州予備選で約20ポイント以上の差で完敗したクリントン氏は、次戦に向けて黒人ら非白人有権者の票の取り込みに動いた。
「(黒人は)労働市場や教育、住宅、司法制度で人種差別に直面している」。討論会でクリントン氏は「米国人に立ちはだかる障害に取り組みたい」と述べ、移民も含め差別撤廃に向けた意気込みを協調した。
サンダース氏も「若い黒人の失業率は50%を超える」と指摘。「黒人の男の子に生まれると、4人に1人が将来刑務所行きだ」と人種差別問題を取り上げ、司法制度改革の必要性を訴えた。
次の両氏の対決は20日のネバダ州党員集会だ。ラスベガスを抱える同州はヒスパニック(中南米系)や黒人など非白人が多い。続く27日の南部サウスカロライナ州予備選も黒人票が焦点となる。
ユダヤ系で支持者が白人中心のサンダース氏に比べ、クリントン氏は夫のビル・クリントン元大統領と同じく非白人層に強みを持つ。両州ともにクリントン氏優位とみられていたが、サンダース氏は序盤の勢いを次につなげたい考えだ。
サンダース氏は黒人票の獲得を狙い、黒人運動指導者のシャープトン師と10日にニューヨークのレストランで会談した。司法制度改革など人種差別解消への意気込みを訴えたという。
クリントン氏も票固めを急ぐ。11日には米議会の黒人議員連盟から支持を取り付けた。公民権運動の指導者だったジョン・ルイス下院議員(民主)は「サンダース氏には会ったことがない」と述べ、差別問題に長年取り組んできたクリントン氏を称賛した。
米政治専門サイト、リアル・クリア・ポリティクスが集計した主要世論調査の平均(1月17~23日)によると、サウスカロライナ州ではクリントン氏が30ポイント近く上回る。ただ2月1日のアイオワ州での接戦、9日のニューハンプシャー州でのサンダース氏の圧勝後にはまだ調査がない。サンダース氏がどこまで勢いを持続しているのかが焦点となる。」とありました。
20日のネバダ、27日の南部サウスカロライナ、3/1スーパーチューズデイと選挙も盛り上がっていきます。選挙についてのやり方についてのブログがありましたので紹介します。
これを見ると、民主党はスーパー代議員の数が多いクリントンが有利に思えます。
共和党はまだまだ混戦模様。ただ本文中にある「ティーパーティー支持者やエバンジェリカルズが共和党大統領候補の口から聞きたがっているキーワード。それは、偉大で強いアメリカの再生と、ピューリタン的価値観の堅持(同性結婚の合法化を改める、人工中絶の禁止、不法移民の禁止、銃規制の撤廃)の二つだ。トランプはこの2つだけを繰り返している。それが高い支持率と、投票結果につながっている」というのが、トランプ旋風が一時的な人気でないという理由を表しているのでは。一般大衆はオバマの優柔不断、米国の地位低下に苛立ちを覚えているのが分かります。レーガン同様強い米国の再生を願っています。それと民主党のサンダース人気は如何に米国が格差社会になったかという事です。1950~60年代の米国の黄金時代を知る人からすれば今のアメリカは自由が行き過ぎて、エスタブリッシュメントや経営者の強欲、放肆に任せすぎているように見えます。その当時は人種差別もひどかったですが、公民権運動も盛り上がった時代です。
記事
—ドナルド・トランプ氏がニューハンプシャー州予備選で雪辱を果たしましたね。アイオワ州でトップだった、「草の根保守派」が推すテッド・クルーズ上院議員は振るわず、3位に終わりました。トランプ対クルーズの「草の根」同士の対決は、今回はトランプ氏に軍配が上がりました。 民主党サイドも伏兵バーニー・サンダース上院議員が本命ヒラリー・クリントン前国務長官に圧勝しました。
ニューハンプシャー州で遊説中のトランプ氏(写真:UPI/アフロ)
高濱:「トランプ旋風」「サンダース革命」ともに、いまだ収まらず、ですね。両候補ともにこれで勢いをつけてサウスカロライナ州とネバダ州に駒を進めることになります。
「ストップ・ザ・トランプ」成功せず
まず、注目の共和党サイドから見ます。
いわゆる共和党エスタブリッシュメント(保守本流体制派)はトランプ氏やクルーズ氏を早い段階で排除し、自分たちにとって好ましい候補を指名しようと狙っています。「ストップ・ザ・トランプ」「ストップ・ザ・アウトサイダー」作戦です。
エスタブリッシュメントが推しているのは、アイオワ州で3位につけたマルコ・ルビオ上院議員、さらに「保守穏健派トリオ」のうちの誰かです。トリオとは、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事、ジェブ・ブッシュ元テキサス州知事、クリス・クリスティ・ニュージャージー州知事らです。
ニューハンプシャー州予備選はこの4人によるサバイバル・ゲームでした。2位につけたケーシック氏が一歩先んじた感じですが、決着がついたわけではありません。ブッシュ氏がルビオ氏を抜いて4位に入ったのを「本命ブッシュいよいよ浮上」と見るべきかどうか。選挙専門家の間では意見が分かれています。
「ストップ・ザ・トランプ」「保守穏健派トリオのつば競り合い」の場は南部へ、そして西部へと続きます。
トランプの勝因は草の根「一揆」
—トランプ氏が圧勝した要因は何ですか。
高濱:勝因は3つあります。
一つは、共和党エスタブリッシュメントに対する一般党員・支持者の「草の根一揆」です。アイオワ州、ニューハンプシャー州といった予備選緒戦で、この「一揆」は成果を上げました。アイオワ州ではクルーズ氏が勝ち、ニューハンプシャー州ではトランプ氏が勝ったからです。
そもそも共和党エスタブリッシュメントというのは何でしょう。一口で言うと、上下両院共和党首脳部をはじめとする連邦議会議員や州知事、地方議会議員、財界、経済界、メディアを牛耳っている人たちを指します。今まで共和党を動かしてきた人たちです。
これに対して、「今まで共和党がやってきたことはうまくいかなかったじゃないか」と言い出しているのが、草の根保守派の人たちです。急先鋒は、「ティーパーティー」(茶会)や「エバンジェリカルズ」(キリスト教原理主義者)です。こうしたグループの主張に共鳴した「ソーシャル・コンサーバティブ」(社会的保守主義者)や「モラル・コンサーバティブ」(倫理的保守主義者)が今「一揆」に加わっているといえます。大半は白人不満分子です。彼らがアイオワ州でもニューハンプシャー州でもトランプ氏に票を投ずることでエスタブリッシュメントに反旗を翻したのです。
クルーズの敗因はエバンジェリカルズ依存
高濱:2つ目の勝因は、州の事情です。アイオワ州とニューハンプシャー州の大きな違いは、共和党員・支持者に占めるエバンジェリカルズの割合でした。
クルーズ氏、ビル・カーソン元外科医などはエバンジェリカルズ票を頼りにしてきました。
エバンジェリカルズが占める割合はアイオワ州は36%ですが、ニューハンプシャー州は22%です。この票田だけを頼りにクルーズ氏が連勝するのは元々無理でした。
「どぶ板選挙」が通用しない混成プライマリー
高濱:トランプ氏の勝因の3つ目は、ニューハンプシャー州は予備選、それも「ミックスド・プライマリー」(混成予備選)だったからです。これは、共和党員・支持者だけでなく、「インディペンデント」(無党派)も投票できるシステムです。アイオワ州は党員集会でした。
このシステムがトランプ氏に有利に働きました。党員集会では、決められた時間に決められた場所で開かれる集会に出席しなければなりません。投票するまで、数時間は拘束されます。従って各陣営は、選挙対策組織を作り、時間をかけて「グラウンド・ゲーム」(地上戦)を展開します。個別訪問して、投票してくれる人を掘り起こすのです。
ところがトランプ氏の選挙運動は、言うならば「落下傘作戦」です。組織を整備することもなく、大規模な集会を突然やって人を集め、そこでエスタブリッシュメントを激しく糾弾する――いわゆる「Trumpertantrums」(トランプ流癇癪玉)を破裂させる作戦です。大衆を喜ばせてそれを票につなげる戦術でした。ですから、「どぶ板運動」が必要なアイオワ州ではクルーズ氏に破れました。
米主要シンクタンクのメディア研究者の一人は筆者にこう指摘しています。 「ニューハンプシャー州の南部はボストン大都市圏に属する東部圏だ。日露戦争終結のポーツマス条約は同州ポーツマスで調印された歴史がある。それくらい国際性が豊かな風土を持つ。州民はワシントン、ニューヨーク、ボストンで流れている情報を時差なくキャッチできる。全米的な出来事に敏感なのだ。トランプ旋風についても熟知している。流行に後れまい、ここはトランプに票を入れようという一般州民が大勢現れても不思議ではない」
クルーズ氏について言えば、同州で予備選が行われる直前に、「カーソン氏が予備選から撤退する」かのような“誤報”を流したことが高くつきました。それをトランプ氏が激しく批判したことも、クルーズ氏の得票に悪影響を与えたという見方があります。
トランプを南部、西部で迎え討つエスタブリッシュメント
—共和党エスタブリッシュメントはトランプ氏がニューハンプシャー州でトップに立ったのを快く思っていないのでしょうね。
高濱:その通りです。ルビオ氏や保守穏健派トリオにもう少し奮闘してほしかったと思っているのは間違いありません。
共和党はこの後、20日に南部・サウスカロライナ州、23日に西部・ネバダ州でそれぞれ予備選、党員集会を行います。
サウスカロライナ州の支持率争いではトランプ氏が36%で独走。それをクルーズ氏(20%)とルビオ氏(13%)が追いかけています。保守穏健派トリオではブッシュ氏が9%で、トリオを構成する他の2候補に大きく差をつけています。 (”2016 Primary Forecasts: S.C. Republican Primary,” FiveThirtyEight, 2/8/2016)
ネバダ州でもトランプ氏が31%でリード、これをクルーズ氏(19%)が追走しています。 (”2016 Primary Forecasts: Nevada Republican Caucauses,” FiveThirtyEight, 2/8/2016)
共和党の選挙対策専門家たちは、保守穏健派トリオが本領を発揮するのはスーパー・チューズデーになると見ています。この日には、テキサス、バージニア、ジョージア、マサチューセッツなど13州で予備選・党員集会が同時に行われます。
これら13州は、アイオワ州やニューハンプシャー州に比べて人種構成が多様化しており、エバンジェリカルズやティーパーティーの影響力が比較的弱い州が多いからです。
共和党エスタブリッシュメントがトランプを嫌う理由
—共和党エスタブリッシュメントはどうしてそれほどまでにトランプ氏を嫌っているのでしょう。
高濱:共和党保守本流の人たちは「トランプではヒラリー・クリントンには勝てない」と思っています。その理由は、第一に反エスタブリッシュメントであること。さらにあまりにも毒舌が過ぎることです。本選挙では、白人だけでなく、黒人もラティーノも投票します。人種的差別発言や政策なき暴言が多すぎるために、勝つのは困難と見ているからです。世論調査結果もそれを裏付けています。 (”Poll: General Election: Trump vs Clinton,” Real Clear Politics, 2/9/2016)
逆にルビオ氏やブッシュ氏ならクリントン氏と互角に戦えるというわけです。 (”Poll: General Election: Bush vs Clinton,” Real Clear Politics, 2/9/2016)
共和党エスタブリッシュメントが巨額の選挙資金を出す仕組みにスーパーPAC(政治行動委員会)があります。
ブッシュ陣営はアイオワ州だけで1億4900万ドルをテレビとラジオのCMに使いました。このカネはすべて、このスーパーPACから出ています。ちなみにルビオ氏が使った金額は1180万ドル、クルーズ氏は600万ドル、トランプ氏は330万ドルです。ブッシュ氏以外にスーパーPACからカネをもらったのはルビオ氏だけでした。 (”How much did the candidates spend per vote in Iowa?” Joe McCarthy, Global Citizen, 2/2/2016)
「既成」保守に裏切られた「大衆」保守
—いっぽう、一部の共和党員・支持者はどうしてこれほど熱狂的にトランプ氏を支持しているのでしょう。
高濱:当初はメディアも選挙専門家たちも、「トランプ氏を支持しているのは、教育程度がそれほど高くない白人ブルーカラー層だ」と決めつけていました。ところが予備選が始まり、トランプ氏がアイオワ州で24%の得票したことで、こうした見方が変わり始めています。実際の得票が、事前に行われた世論調査に表れた支持率に極めて近いからです。
ジョージ・メイソン大学のマーク・ロゼル教授(内政・国際関係専門)は、こう述べています。「共和党内は、宗教保守でも体制派でもないトランプに賭けてみるかといった雰囲気になっている。これまで、牧師のマイク・ハッカビー元アーカンソー知事のような宗教保守を選ぼうとしたが、予備選でジョン・マケイン氏に勝てなかった。共和党体制派のジョージ・W・ブッシュ氏を大統領に当選させたが、自分たちが期待していたことは何一つ実現してくれなかった。宗教保守も駄目、共和党主流も駄目と思っている」。 (”Why Do Evangelical Christians Love Donald Trump? Ousider Candidate Fires Up Voters Who Are Tired of Losing,” Ismat Sarah Mangla, Ibtimes, 1/28/2016)
信仰心がなくてもトランプを選ぶエバンジェリカルズ
世論調査機関、ピュー・リサーチ・センターが今年1月に行った世論調査では、共和党員・支持者のうち「トランプ氏は信仰心が篤い」と答えた回答者は44%しかいなかった。ところが、たとえそうであっても「トランプ氏は素晴らしい大統領になる」と答えたエバンジェリカルズは52%もいるのです。トランプ支持はどうやら宗教心を超えて、草の根保守の間に広がっていることがわかります。 (”Compared with Carson, Cruz and Rubio, fewer Republicans see Trump as religious person,” Pew Research Center, 1/7/2016~1/14/2016) (”Half of evangelical voters think Carson, Trump and Cruz would be good presidents,” 1/7/2016~1/14/2016, Pew Resarch Center)
その理由は何か。前述のロゼル教授は、こう述べています。「ティーパーティー支持者やエバンジェリカルズが共和党大統領候補の口から聞きたがっているキーワード。それは、偉大で強いアメリカの再生と、ピューリタン的価値観の堅持(同性結婚の合法化を改める、人工中絶の禁止、不法移民の禁止、銃規制の撤廃)の二つだ。トランプはこの2つだけを繰り返している。それが高い支持率と、投票結果につながっている」。
民主党でも「エスタブリッシュメントVS草の根」
—民主党サイドの結果をどう見るべきでしょうか。
高濱:予備選を箱根駅伝に見立てればよくわかると思います。ニューハンプシャー州予備選は言ってみれば一つの区間です。区間ごとに見れば、それぞれの陣営が勝ったり負けたりします。しかし、最終的な勝利は往復路のトータルで決まります。
ニューハンプシャー州には伝統的に近隣州から立候補した候補者を支持し、当選させようとする風土があります。サンダース氏はお隣のバーモント州選出の上院議員です。
また、サンダース氏は終始一貫して民主党リベラル急進派としての立場を貫き通してきました。極めてリベラルな立場をとってきたニューハンプシャー州の民主党員・支持者たちは、その点を評価したのでしょう。サンダース氏はイラク戦争に反対。大企業や大労組からのカネは一切受け取りません。その一方で大学授業料の無償化、若年層の労働状況の改善を打ち出して、若者たちからやんやの喝采を浴びています。
ニューハンプシャー州の民主党員・支持者たちにとって、かってはリベラル派の騎士的存在だったヒラリー氏も<ファーストレディ、上院議員、大統領候補、国務長官>を経験する中で、そのリベラリズムが色あせてしまったと見えるのかもしれません。「エスタブリッシュメントの一員」とみなしている可能性もあります。
筆者が電話取材した同州民主党員の一人、アレックス・ストラトフォード氏(元高校教師)はこう述べています。「アメリカ人は世襲政治家を嫌います。共和党でブッシュが伸び悩んでいるのは『ノー・モア・ブッシュ』という声があるから。民主党内にも『ノー・モア・クリントン』の空気があります。ブッシュ王朝もクリントン王朝も嫌だ、というわけです。『サンダースが指名されることはないだろう、せめて予備選段階ではサンダース、サンダースと叫んで、民主党の本来の政治理念を確かめよう』というのが、サンダース旋風の正体かもしれません」。
ちなみに20日に党員集会が開かれるネバダ州は、人口比で白人76%、黒人9%、ラティーノ28%。28日予備選が行われるサウスカロライナ州は白人68%、黒人28%、ラティーノ5%。白人が90%を超えるアイオワ州やのニューハンプシャー州とは人種構成が大きく異なっています。 (”States & County: QuickFacts,” United States Census Bureau)
特に「民主党員・支持者の非白人はクリントンびいき」(米主要紙政治記者)であるだけにサンダース氏にとっては厳しい戦いになりそうです。
現に世論調査における支持率を見ると、ネバダ州、サウスカロライナ州ともにクリントン氏がサンダース氏を大きくリードしています。