韓国は桂・タフト協定、アチソン声明を覚えてないようです。アメリカもこのような蝙蝠外交にいつまで耐えるのでしょうか。結局、裏で動いて恫喝し続けた中国の勝利になった訳です。ましてや次期大統領候補の潘基文まで9/3抗日行事に参加します。無能、ネポテイズムで史上最低の事務局長と言われる所以です。でもこんな男をアメリカと共に事務局長に推薦したのですから、日本の政治家は間抜けとしか言いようがありません。慰安婦で世界に嘘を吐きまくってきた彼らは得た権力を利用することは充分読めたでしょうに。
アメリカも舐められたものです。韓国ごとき小国にゆさぶられてしまうのですから。オバマになってからです。同盟国を同盟国と扱ってこなかったから、アメリカ離れが起きてしまったのです。AIIBに参加表明した英国、イスラエル、サウデイ、韓国はアメリカの(準)同盟国です。
韓国は戦勝国になりたいがために中国へ行くとしたら、歴史の改竄・捏造がまた行われるという事です。北朝鮮はどう出るか。朝鮮半島で正統性を持つ政権は北と自負を持っているので。まあ、ソ連に逃げていた金日成が亡命政権(これも怪しいが)というのですから。それで朴槿恵は李承晩が一時いた上海へ行くのでしょうけど。イタリアもムッソリーニを逆さ吊りしたことから戦勝国と主張する人もいますが認められていません。フランスのドゴールだけがその政治力で戦勝国と認められましたが、実質はドイツの第二次大戦始まってからの占領国で連合国によって解放されました。台湾・韓国は第二次大戦開始前から日本国でした。その事実を鑑みれば戦勝国扱いは無理でしょう。中国共産党も日本と殆ど戦ったことがないのに、こういう行事を平気でできるのですから、中華・小中華は似た者同士です。
韓国は中国の属国になった方が良い。そのとき初めて日本統治時代が良かったと気付くでしょう。アメリカも甘やかしせず、同盟解消した方が良いのでは。彼らは「アメリカはどうせそこまではできない」と高をくくっている訳ですから。「桂・タフト協定、アチソン声明を思い出せ」と言ってやれば良い。昔ですら朝鮮半島を見限れたのですから、ミサイル、ICBMの時代に朝鮮半島の価値はないと思います。レーザーやロボット(無人機等も含む)、衛星等で監視、後の先で相手を攻撃できるようにしておかないと。これが抑止力になります。
記事
「行かないで」と頼む米国を振り切って、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は北京に行く。韓国の二股外交はこれで大きく中国に傾く。
韓国は「忘恩の徒」だ
鈴置:匿名で外交を論じる韓国のヴァンダービルド氏が、烈火のごとく怒りました。「我が国は米国から忘恩の徒と見なされるぞ」と警告したのです。
親米保守派のサイト、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに載せた「自らの評価と他人の評価」(8月22日、韓国語)の全文を以下に翻訳します。
- 非常事態(北朝鮮の挑発)が勃発したら、韓国人が叫ぶのは……「韓米連合作戦を発動し対処する必要がある」「米空母の投入が至急だ」「韓米同盟をさらに固めるべきだ」
- 平常に戻ると……「米国にだけ頼ってはいけない」「中国が経済で世界1位になる。中国が重要だ」「日本と親しくする米国はひどい目にあわせよう」
- 韓国人自身の評価は「これを我々は『等距離外交』と呼ぶ」
- 他人の評価は「二股外交」「恩知らず」「中国への事大主義のDNA」……
「米空母を呼ぶぞ」
—8月20日には軍事境界線で砲撃し合うなど、南北は8月下旬に緊張を高めました。
鈴置:何をするか分からない北朝鮮に対峙する韓国は、米国の軍事力を全面的に頼りにしています。というのに米国から「行かないでくれ」と言われた、北京での「抗日戦勝70周年記念式典」に朴槿恵大統領は出席します。
ヴァンダービルド氏ならずとも「なんと不義理な国だ」「米国はいつまで韓国を助けるのだろうか」と考えるでしょう。
韓国は今回も緊張が高まると、北朝鮮に対し「米国の空母やB52、B2爆撃機を呼ぶぞ」と脅しました。
聯合ニュースの「米国と原子力空母などの配備時期を検討中=韓国政府」(8月24日、日本語版)によると同日、国防部報道官は会見で「韓米は現在の危機的状況を持続的に注視し、米軍の戦略資産の展開時期を検討している」と語りました。報道官は「B52」「B2」など米国の戦略資産――装備の具体的な名称にもちゃんと言及しました。
異様な朴槿恵の参加
—「俺の後ろには、強力な兵器を持った米国がいるぞ」との威嚇ですね。
鈴置:韓国は北を脅す時には必ず「世界最強の米国」を持ち出すのです。ところが、これほどに世話になりながら、朴槿恵大統領は「抗日式典」に参加します。
「抗日戦勝70周年記念式典」とは、中国が北京で9月3日に開くイベントです。ロシアやベトナム、南アフリカなどの国家首脳が参加します。
一方、米国やNATO加盟国――いわゆる西側諸国の首脳は参加しません。交戦国だった日本の安倍晋三首相も非公式の経路で招かれましたが、断りました。
「抗日式典」の名をつけていますが、要は中国が世界に軍事力を誇示するためのイベントです。ことに今、中国は軍事力の増強を背景に東シナ海や南シナ海で領土・領海の拡張に動いています。
この式典に参加すれば、中国の膨張主義を認めることになりかねない。西側の首脳が参加しないのは当然です。そんな中、米軍に最も助けてもらっている韓国の大統領が参加するという、異様な事態が起きかけているのです。
—ではなぜ、朴槿恵大統領が出席するのでしょうか。
鈴置:理由は2つ挙げられています。「経済的に中国とのつながりが深い」と「北朝鮮への牽制や、統一問題で中国の助けがいる」――です。
米韓間の問題になるぞ
—まっとうな理由ですか。
鈴置:いずれも言い訳にすぎません。経済的に中国とのつながりが深いと言い出せば、どの国も同じことなのです。
確かに韓国は、輸出額をGDPで割った数字が50%に迫るなど輸出依存度が高いこともあって、貿易大国たる中国に気を使いたくなるのは事実です。なお、日本のその数字は10%台です。
でも、先ほども指摘したように韓国は「おカネ」より大事な「命」を米国に託しているのです。その米国が参加するな、と言ったのです。
もちろん米国が大声でそう叫んだわけではありません。様々の外交チャネルを通じて静かに韓国に警告を発し、それが効かなかったので日本や韓国のメディアを使ったようです(表「南北の緊張激化と朴大統領の訪中」参照)。
表●南北の緊張激化と朴大統領の訪中 | |
8月4日 | 非武装地帯(DMZ)の韓国側で韓国軍兵士2人が地雷で負傷 |
8月9日 | 共同通信「米国が韓国に対し、朴大統領の抗日式典参加への懸念を伝達」と報道 |
8月10日 | 韓国国防部「8月4日に非武装地帯で起きた爆発は北朝鮮が仕掛けた地雷」 |
8月10日 | 韓国軍、地雷への報復措置として軍事境界線付近で拡声器による対北宣伝放送再開 |
8月11日 | 中央日報「抗日式典へは朴大統領ではなく駐中大使の参加を、と米国が要望」と報道 |
8月13日 | 「10月16日にワシントンで米韓首脳会談を開催」と両国政府が発表 |
8月15日 | 米サンフランシスコのチャイナタウンに抗日戦争記念館設立 |
8月17日 | 米韓両軍、指揮所演習「乙支フリーダムガーデン」を韓国内で開始 |
8月20日 | 韓国政府「北京での抗日式典に朴大統領が参加。軍事パレード参観は未定」と発表 |
8月20日 | 北朝鮮「48時間以内に宣伝放送を中止しなければ軍事的行動をとる」 |
8月21日 | 朝鮮中央通信「金正恩第1書記が軍事境界線付近を準戦時状態にと命令」と報道 |
8月22日 | 南北、板門店で午後6時半から高官会談を開催。23日午前4時15分まで10時間弱続く |
8月23日 | 午後3時半に南北高官会議が続開 |
8月24日 | 終日、南北高官会談が継続 |
8月25日 | 未明に南北高官会談が妥結。北は「地雷事故に遺憾」を表明し「準戦時状態」を解除。南は宣伝放送を中止 |
8月25日 | 中国外交部「朴大統領含む30カ国首脳が抗日式典に加え軍事パレードに参加」と発表 |
注)赤字は南北の緊張激化に関する項目、黒字は朴大統領の訪中に関する項目を示す
マイケル・グリーン(Michael Green)米戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長も中央日報の取材に答え、以下のように語っています。
「<戦後70年談話>『米国が歓迎する内容…韓国の部分は3、4点』」(8月17日、日本語版)という記事の最後のくだりです。
- (「朴大統領が戦勝節行事出席のために訪中する可能性が残されているが、米国の立場は何か」との質問に答え)中国軍の閲兵式(軍事パレード)に出席すれば、韓米間の問題になるだろう。米国の他の同盟国のうちどこが行くだろうか。英国も豪州も日本も行かないはずだ。焦点は朴大統領が閲兵式に出席するかどうか、中国に利用されないかどうかという点だ。
北を制御できない中国
—もう1つの「対北朝鮮政策で中国の助けがいる」という理由は?
鈴置:一見それらしいのですが、よく考えるとおかしな理屈です。そもそも中国は北朝鮮をコントロールできないからです。
今回の緊張激化を思い出して下さい。発端は北が韓国側に地雷を仕掛けたことです。中国が北朝鮮を制御できるなら、こんなことは起きません。
北朝鮮が渋々ながら「地雷事件に遺憾の意」を表明したのも、中国の圧力によるものではありません。軍事境界線付近で、北が最も嫌がる拡声器による宣伝放送を韓国が再開したからです。その背景には米国の軍事力がありました。
統一問題だってそうです。朝鮮半島には中国の死活的利益がかかります。今、韓国が少々ゴマをすっておいても、中国はいざという時に韓国の願う方向で動いてくれるとは限りません。
むしろ韓国の、恩を忘れた「離米従中」の結果、米国との関係を悪化させる方が統一にはマイナスになるでしょう。怒った米国が韓国を見捨てたら、韓国はますます中国の言う通りに動くしかなくなります。
朝鮮戦争は中国の義戦
東亜日報が8月11日に載せた社説「朴大統領は南北統一を阻止した中国の人民解放軍に拍手を送れない」(韓国語版)も対米配慮を訴えています。
8月9日に共同通信が「米、韓国に不参加要請 中国の抗日記念行事」と報じました。翌8月10日、この記事にコメントを求められた青瓦台(大統領府)が参加を匂わせました。
東亜日報の社説はそれを批判したのです。行くべきでない理由は2つで、それを述べた部分は以下です。
- 人民解放軍は朝鮮戦争に突如参戦し、我々の統一を妨げた敵軍である。習近平主席は2010年10月25日に「(米国に抗し北朝鮮を助けた)抗美援朝戦争は偉大で、侵略に対抗した正義の戦争」と述べた。この軍のパレードに朴大統領は拍手できない。
- 習近平主席は今回の行事を中国の国際影響力と軍事力を誇示する機会と考えている。中国の覇権拡大の意図があると考える米国は参加しない方針だ。韓国が参加した場合、米国、日本との関係を損なう恐れがある。
賛否は5対2
—南北の緊張が激化する前から「参加するな」との社説が書かれていたのですね。
ただそれは少数意見でした。朝鮮日報の「朴大統領の訪中必要、軍事パレードには異論」(8月18日、韓国語版)によると、同紙が意見を聞いた米韓関係、中韓関係の専門家7人のうち6人が「参加すべきだ」と答え、はっきりと「参加すべきでない」としたのは1人に留まったのです。
ただ、抗日式典の中核行事である軍事パレードに関しては、この6人の中、1人だけが積極的な参加を唱えました。残り5人は「避けるべきだ」と答えました。
—普通の人の意見は?
鈴置:韓国の世論調査会社、リアルメーターが8月10日に「朴大統領は抗日式典に参加すべきか」(韓国語)を聞いています(グラフ1参照)。
グラフ1●中国の「抗日式典」に参加すべきか
(8月10日、リアルメーター調査)
それによると、51.8%が「参加すべきだ」、20.6%が「参加すべきでない」と答え、「よく分からない」が27.6%でした。
興味深いのは「保守が反対、左派が賛成」ではなかったことです。自らを「保守」と考える人の賛否の比率は64.0対23.1。これに対し「進歩層」は40.8対24.3。「中道層」は52.1対18.4でした。「右」になるほど、抗日式典に参加すべきだと考える人の比率が増すのです。
奇妙な日本の“リベラル”
—なぜでしょうか。
鈴置:保守の中の、ヴァンダービルド氏のような親米派は「反対」を唱えます。でも保守の中にも親中派がいます。彼らの中には「賛成」と答えた人が多いと思います。
一方「進歩層」――韓国のリベラルの中には独裁政権である中国に警戒感を持つ人もいます。彼らは反対に回りがちです。
—変な感じがします。
鈴置:日本人が見ると奇妙かもしれませんね。でも、それは日本の感覚がおかしいのです。日本のリベラルを自認する人の相当数が、独裁国家で膨張主義の中国を一切批判しません。
安保法制に関する議論でも「戦争ができる国、日本」を非難しても「中国の脅威」には触れません。日本の“リベラル”の方が異常なのです。
なお、リアルメーターは8月18日には「朴大統領は軍事パレードを参観すべきか」(韓国語)も聞いています(グラフ2参照)。
グラフ2●軍事パレードにも参加すべきか
(8月18日、リアルメーター調査)
朝鮮日報の記事が示すように「式典に参加しても、パレードは参観すべきでない」という人が多いため、敢えてこれだけ聞いたのでしょう。
結論は「軍事パレードを参観すべき」が39.5%、「参観すべきではない」が32.7%でした。この調査でも、保守の方が参観に肯定的な傾向がありました。
世論はますます参加に傾く
—いずれにせよ、式典参加への賛否は5対2、という世論構成なのですね。
鈴置:少し後に実施した韓国ギャラップの調査では、賛否の比率が69対18と、さらに差が大きくなりました。ざっくり言って、7対2です(グラフ3参照)。
グラフ3●抗日式典に朴大統領は参加すべきか
(8月18―20日、ギャラップ調査)
この「デイリーオピニオン176号 2015年8月第3週」の調査期間は8月18日から20日。8月20日に韓国政府が「式典へは参加、軍事パレードは検討中」と発表したので、現状追認的に賛成した人の分がかさ上げしたのかもしれません。
なお、その後の8月25日には中国外交部が「朴槿恵大統領を含む30カ国の首脳が、抗日式典に加え軍事パレードにも参加する」と発表しました。
朝鮮日報は速報で「中国の抗日式典に崔竜海参加、朴大統領は真っ先に紹介」(8月25日、韓国語版)と、韓国がいかに中国から大事にされているかを強調しました。
—だんだん中国に取り込まれて行きますね、韓国は。
鈴置:その通りです。韓国政府の参加の発表を受けた東亜日報の社説「抗日戦記念行事に出席する朴大統領、外交後遺症を相殺する実利を得よ」(8月21日、日本語版)も「結局、大統領は軍事パレードも参観する可能性が高い」と指摘しつつ、反対を撤回しました。
決まったことを反対しても仕方ない、ということもあるのでしょうが、世論が「参加」に流れたことが大きいと思います。
韓国人はすっかり「中立気分」
—「米国から恩知らずと思われるぞ」とのヴァンダービルド氏の警告も不発に終わりそうですね。
鈴置:神戸大学大学院の木村幹教授は8月20日、ツイッターで以下のようにつぶやいています。
- 大統領訪中についてKBSは、「米中間の均衡模索」と明確に説明。改めて米中間で韓国が中立的な立場であることが、韓国内で常識化している事を実感。
KBSとは韓国の公共放送のことです。それだけに報道に癖は少なく、韓国人の意見の最大公約数を映します。
木村幹先生が指摘するように、韓国人は「自分たちは米中間で中立であることが当然だ」と考えるようになったのです。
そして、この大統領訪中によって――中国の狙い通り今後、韓国が一気に中国に傾く可能性が大きいのです。米国がますます韓国を中国側の国と見なし、冷たくなると思われるからです。
戦勝国の地位与える中国
それに加え、中国も一気に韓国取り込みに動くでしょう。例えば、韓国が望んでも米国からは与えられなかった「戦勝国の地位」です。「抗日式典」は、ある意味でその授与式でもあります。
大統領の抗日式典参加に一時は強力に反対した東亜日報も、8月21日の社説では「訪中する以上は外交的な成果を挙げよ」と主張しました。そして結論は以下でした。
- 訪中の成果は、韓国が米国と中国の間で新しいバランス外交を模索する試金石になるだろう。
「新しいバランス外交」――つまり、中国側にグンと傾く、ということでしょう。
(次回に続く)
(前回から読む)
韓国は「中国への恐怖」と、米国への「甘え」の間で生きる。
異例の抗日式典参加
—前回の「“恩知らず”の韓国」は、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の「抗日戦勝70周年記念式典」参加を機に、韓国はますます中国に引き込まれるだろう、というところで終わりました。
鈴置:読んだ人から「なぜ韓国は中国の言うままになるのか」との質問が寄せられました。
「抗日式典」に、西側の国の首脳で参加するのは朴槿恵大統領だけです。中国の覇権主義をほう助することになりかねないからです。同盟国の米国も「抗日式典には行かない方がいい」と止めたのです。
それでも朴槿恵大統領は北京に行く。そこまで中国の顔色を見ることもないだろうに……と多くの人が首を傾げました。「経済や外交面で中国の協力が重要だ」という韓国の説明は言い訳に過ぎませんし。
「高句麗も中国のものだ」
—日本人は、そこがよく分からないのです。
鈴置:一言で答えれば、韓国人独特の中国観からです。彼らの心の奥底には「中国は韓国の上に君臨する国であり、逆らってはいけない」との抜きがたい観念があります。これが韓国を「従中一直線」にと突き動かしているのです。
2006年秋のことです。韓国の指導層の4人と夕食をとりながら歓談しました。彼らが韓国語で会話し、私は黙って聞いている。少しお酒が入って舌は滑らかになっているけれど皆、酔うほどではない。
1人が中国の悪口を言い出すと、座が一気に盛り上がりました。当時、中国と韓国は「歴史認識」で対立を深めていました。中国の学界が高句麗や渤海は中国の少数民族が建てた国だったと主張したからです。
21世紀の韓国では「高句麗も渤海も韓民族の国家」と教えていますから「中国人に歴史を盗まれる!」と大騒ぎになったのです。
高句麗などの領域は現在の北朝鮮の領土と重なります。韓国人は「北が崩壊した後に、中国がその領土を我がものとする布石ではないか」とも疑いました。
学界の論争は両国民の間の感情問題に発展しました。最後は両国政府が「政治問題化しないこと」で決着したのですが、対立は今も燻り続けています。
韓国人はこれを単に歴史や領土の対立ではなく「力を付けた中国が韓国を見下し、再び宗主国のように振る舞い始めた」象徴と受け止めたのです。
中国には逆らってはいけない
—歴代、朝鮮半島の王朝は中華帝国に属しましたね。
鈴置:そこがポイントです。話を韓国人4人との歓談に戻します。ひとしきり中国の悪口になった後、1人が「でも、どうせ我が国は属国だったからなあ」とポツリと漏らすと、皆が黙ってしまったのです。
私が驚いたのは「属国」という言葉がスルリと出てきたことです。日本の属国だったことさえ認めたがらない韓国人が、中国に対してはごく自然に使う。それも「中国には逆らえない」という意味で。
私がソウルに住んだのは1980年代後半から1990年代初めにかけて――まだ、中国が貧しかったころです。当時の韓国人は中国を完全に下に見ていて「中国の属国だった」などという言い方は聞いたことがありませんでした。
しかし2006年のこの体験以降、しばしば「属国だったのだから、しょうがない」という言説を聞くようになりました。韓国人がかなりリラックスした時に限りますけれど。
日本でも昭和40年代まで「まあ、アメリカさんの言うことだから」なんて言い方がありました。米国から少々無理を言われても、戦争に負けたのだからしょうがない、との意味です。
でも、それとは比べものにならないほど韓国人の「属国だったのだから」は強烈です。なにせ、この一言でどんな議論も終わってしまうのです。
貢女も常態化
—何が異なるのでしょうか。
鈴置:太平洋戦争で負けた日本は、初めて国土を外敵に占領されました。その体験は日本人に強烈な影響を与えました。ただ、米国は日本人が想像していたほどには厳しい統治は行いませんでした。
一方、朝鮮半島の歴代国家の手痛い敗戦は1度ではなく、度重なるものでした。さらに朝鮮半島に対し苛酷な支配体制を敷いた中国大陸の王朝もありました。
冊封体制の下で、朝鮮半島から中国大陸へと貢女――若い女性を大量に貢ぐことも常態化していたのです。
「属国だった」という言い方には「中国にはかなわない」との心情だけではなく、中国に対する恐怖感も混じっているのです。
2009年、韓国の指導層の1人に以下のように質問したことがあります。「膨張する中国に対し、日本人は立ち向かう決意を固め始めました。インド人やベトナム人も同様です。でも韓国人はそうは見えない。なぜでしょうか」――。
中国には勝ったことがない
その人は、こう答えたのです。「歴史の差です。日本人と異なって我々は中国に勝ったことがない」。
そこで私は「高句麗は隋に勝ちました。統一新羅も唐を朝鮮半島から追い出したではないですか」と問うたのです。
すると彼はふっと寂しそうに笑って「そんな大昔のことは関係ないのです。我々は中国と仲良くやっていくしか道はありません」と言い切ったのです。
要は「韓国人は中国に対抗する覚悟を固めることはない。勝ったことがないからだ。これからは中国の言うことを聞いて生きていく」との告白でした。
この人の言うように確かに「大昔」を除いて、韓国人が中国人に戦争で勝ったことはありません。それどころか、常に隣の超大国の恐ろしい力を見せつけられてきたのです。直近では朝鮮戦争です。
韓国を侵略した北朝鮮軍を米軍が朝鮮半島から駆逐しました。その世界最強の米軍を、突然に介入した中国の人民解放軍が敗走させたのです。
米軍は北緯38度線付近まで押し戻しましたが、人民解放軍の力を目の当たりにした韓国人の、中国への恐怖感は今も相当なものです。
その前は17世紀の明清交代期の経験です。のちに清となる後金の軍勢に朝鮮の領土は蹂躙され、多くの国民が拉致されました。
ヘビににらまれたカエル
—400年も前の話ですよね。
鈴置:400年前の話ですが、いつでも繰り返され得る話なのです、大陸に住んでいる限りは。そして「北方の強大な異民族への恐怖」は今も小説や映画で再生産されています(「『異様な反日』生む『絶望的な恐中』」参照)。
中国と向き合う韓国人には、ヘビににらまれたカエルのようなところがあります。私の観察するところ、2010年を過ぎる頃には「中国には従うしかない」との空気が、韓国社会の密かなコンセンサスになっていたと思います。
2013年2月までは親米路線の李明博(イ・ミョンバク)大統領の時代でしたから、外交的な動きとしては「離米従中」は表に出ませんでしたが。
—今回の朴槿恵大統領の「抗日式典」参加も中国への恐怖感が主因、ということですね。
鈴置:その通りです。
国家意思などない
—でも、米国との関係は、どうするつもりなのでしょうか。
鈴置:韓国の行動からは「どうするつもり」などといった、国家の大方針や国家意思は読み取れません。とにもかくにも恐ろしい隣の超大国の怒りを買わないよう、びくびくと動いているだけです。
韓国はヘビににらまれないようにするので精一杯なのです。その結果「ヘビほどには恐ろしくない米国」の意向は無視するようになっています。
匿名の外交評論家、ヴァンダービルド氏がそのあたりの「感じ」を説明しています。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの「最近の韓米間の重要な動き」(8月22日、韓国語)から引用します。
米国には甘えても大丈夫
まずヴァンダービルド氏は、韓国が米国の要請は聞かず、中国の言う通りに動く国になったと指摘します。
具体的には、日本の集団的自衛権の行使容認、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)、「抗日式典」などの米中対立案件で、です。
私が「米中星取表」でしばしば指摘するのと同じです。
米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年8月27日現在) | |||
案件 | 米国 | 中国 | 状況 |
日本の集団的自衛権 の行使容認 | ● | ○ | 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致 |
米国主導の MDへの参加 | ● | ○ | 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ |
在韓米軍への THAAD配備 | ▼ | △ | 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否 |
日韓軍事情報保護協定 | ▼ | △ | 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ |
米韓合同軍事演習 の中断 | ○ | ● | 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施 |
CICAへの 正式参加(注1) | ● | ○ | 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」 |
CICAでの 反米宣言支持 | ○ | ● | 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か |
AIIBへの 加盟 (注2) | ● | ○ | 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明 |
FTAAP (注3) | ● | ○ | 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」 |
中国の 南シナ海埋め立て | ● | ○ | 米国の対中批判要請を韓国は無視 |
抗日戦勝 70周年記念式典 | ● | ○ | 米国の反対にも関わらず韓国は参加を決定 |
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
そしてヴァンダービルド氏は最後に「韓国人の習性」を指摘しました。以下です。
- 時に露見する韓国人の特徴:好意的に接してくれる側(米国)に対しては礼儀を守らないどころか、むしろ組みしやすしと見て、ぞんざいに扱う習性がある。
- 同じ陣営である米国や日本を軽く見る傾向
- 中国に対しては口一つ聞けぬ傾向
「好意的に接してくれる側はぞんざいに扱う」と直訳しましたが、この部分を「米国には甘えてばかり」と意訳すると、ニュアンスがより、はっきりするかと思います。「中国ほど怖くない米国には甘えても大丈夫」という感じなのでしょう。
反中デモは起きない韓国
—「中国には口一つ聞けない」とは厳しいですね。
鈴置:韓国では毎週、反日集会や反日デモが開かれます。それほどの頻度ではないにしろ、反米デモも行われます。ただ、反中デモはほとんど起こりません。
この現象について、韓国の記者から「我が国にとって、中国は特別な国なのです。何をして来るか分からない国だから」と解説されたことがあります。
日本にも「中国の要求を受け入れることが平和を維持する方法」と思い込んでいる政治家や経済人がいます。ただそれは、韓国のように国民的「コンセンサス」にはなっていない。そこで中国から属国扱いされずに済んでいるのです。
—中国経済の不調が明らかになってきました。それでも韓国は中国側に行くのですね。
鈴置:まさにそこです。韓国人は「抗日式典に参加するのは中国に経済的に依存しているからだ」と言います。でも今、中国への輸出が減る中、経済面でも再び米国頼りになり始めているわけで、この理屈は相当に怪しい。
実際、多くの韓国人が「経済も中国頼みではダメだ」と考え始めました。でも「中国への恐怖」から、もう米国側に後戻りできなくなっているのです。
57%が「米中等距離」
—普通の韓国人はどう考えていますか?
鈴置:韓国の世論調査会社、リアルメーターが7月29日に「米中、どちらが重要か」を聞き、翌30日に公表しています(グラフ参照)。これによると、「米国が重要」と答えた人が50.6%、「中国」が37.9%です。
グラフ●米中どちらが重要か
「中国派」の比率が「米国派」に迫っていることが分かります。なお、この結果はネット上に記事スタイルで提供されていますが、主見出しは「まだ、米国?」です。少しの差だけどいまだ米国派が中国派よりも多いことがニュース、という感覚です。
もう1本の見出しは「中・米の中でより重要な国は」と「中国」を先に表記しています。米国より中国を先にする書き方は初めて見ました。
また、朝鮮日報とソウル大学アジア研究所が実施した世論調査の結果が、同紙に載っています。「2030女性たち『韓米同盟を強化』の声、増える」(8月10日、韓国語版)です。
それによると「韓中関係を強化し、米中間で等距離外交をすべきだ」と答えた人が57.1%で、「米韓同盟を強化すべきだ」の42.9%を上回りました。
調査日は記事中に示されていませんが、独立記念日特集なので、今夏に実施したと思われます。なお見出しは、調査結果のうち「20歳代と30歳代の女性に限れば、10年前と比べ米韓同盟支持者が増えた」という部分からとっています。
日本のメディアの編集者なら「米中等距離派が米国派を超えた」と付けるところです。もう韓国では「等距離外交」が当たり前になったということでしょう。
米国は韓国を捨てないはずだ……
—韓国では「等距離外交」が当たり前、ですか!
鈴置:ええ、韓国人の平均的な意見は「米中間では等距離に位置すべきだ」との方向に傾いています。ただ、「米韓同盟は維持しておきたい」という人も多いと読むべきでしょう。米国には、北朝鮮からの攻撃を防いでもらわねばなりませんからね。
—米中等距離をやりながら米国に守ってもらう――そんな虫のいいことが可能ですか?
鈴置:韓国人の多くが可能と考えています。日本人から見れば、あるいは韓国では珍しい外交感覚のヴァンダービルド氏から見れば、それは「米国に対する甘え」なのですが。
韓国人と話せばすぐに分かりますが「こんなことをしていたら、米国が怒り出すだろうな」と考える人は予想外に少ないのです。「確かに韓国は米国に世話になっている。でも、米国は韓国との同盟をやめるわけにはいかない」との認識からです。
覇権交代期には「二股」可能
—なぜ「米国が韓国との同盟をやめられない」のでしょうか。
鈴置:平均的な韓国人は現在の国際社会を冊封体制的な視点で見ています。そこでは朝貢国は、冊封体制に属しているということだけで、宗主国に恩を売っているのです。
なぜなら宗主国の皇帝は、より多くの朝貢国を抱えることで内外に権威を示せるからです。だから、朝貢物よりもはるかに価値がある品物が宗主国から下賜されるのです。
現在の韓国人も「私は中国側に行ってもいいのだけれどまだ、米国と同盟を結んであげているのだ」と、心のどこかで思っています。
明清交代期に朝鮮は明と清の双方に朝貢しました。二股外交です。当然、明清双方から「敵方に行くなよ」と言われました。しかし清の力が決定的になるまで、いずれからも白黒を付けるよう厳しく迫られることはありませんでした。
明も清もその覇権が不安定な時期は、朝鮮を相手方に押しやるような厳しい姿勢はとれなかったのです。そこで数十年間ですが、朝鮮の二股外交が成立したのです。
米国は口を出すな
—現在の指導層も「二股外交は十分可能だ」と考えているのでしょうか。
鈴置:中央日報で国際問題を担当する金永煕(キム・ヨンヒ)大記者が「韓国の外交的決定は『韓国のもの』であるべき」(8月21日、日本語版)を書いています。
国際情勢を色々と説いていますが、結論部分は以下です。なお日本語版では、金永煕大記者の肩書は「論説委員」と訳されています。
- 韓米同盟が韓国安保の根幹だが、米国の顔色をうかがい過ぎだ。9月3日に中国戦勝節(抗日式典)に行くのに米国の暗黙的な了解を求めるのは時代錯誤的な屈従外交だ。
- 北朝鮮牽制に中国の役割は必須だ。いつかあるだろう統一外交にしても同じだ。朴大統領は戦勝節に出席して軍事パレードまで参観することに対して躊躇する必要はない。
- 韓国は堅実な中堅国家として周辺強大国パワーゲームのバランスウエイトだ。今後は広い北東アジアを視野に置いて、この地域唯一の中堅国家として「バランスウエイトの力」を使って北東アジアの平和を牽引しながら南北問題に接近することができる。
- 米国は韓国を中国包囲網に編入させようと、韓米日の3角安保体制に入れ、THAADを受けろ、ミサイル防衛(MD)網に参加しろとしきりに圧迫するが、判断は徹頭徹尾「韓国のもの」でなければならない。
気分は明清交代期
—強気ですね。
鈴置:「米国は、韓国のやることにいちいち口を出すな」との主張です。韓国の「自主外交宣言」です。
「『バランスウエイトの力』を使えば二股外交も可能だ」との主張でもあります。米国に対し「朝貢をやめるぞ」と言えば、中国側に行かれては困る米国が逆に大事にしてくれるだろう――との読みが見え隠れします。
中央日報は保守系紙の中でも最も現政権に近いと見られています。朴槿恵政権の本音もこんなところかと思われます。
韓国の気分は明清交代期なのです。そうそう、言い忘れていました。今の韓国では「米中の間で覇権が交代し始めた」――米中交代期との認識が一般的なのです。
トランプのただ乗り論
—米国はどう動くでしょうか。
鈴置:韓国が同盟国の義務を果たさないどころか、敵方陣営に堂々と出入りし続けるなら、いずれ捨てるかもしれません。ことに今、米国では「帝国の規模」を現実の力に合わせて縮めるべきだ、との声が高まっています。
米共和党の大統領候補者の1人で実業家のトランプ(Donald Trump)氏が「米国との同盟にただ乗りしている」と韓国を批判しました。安倍晋三政権になって必死で米国に忠義を尽くす日本との同盟さえも「片務的だ」とやり玉にあげました。
トランプ氏の意見は極端かもしれません。が、共和党候補の中で一番の人気を誇っているところを見ると、米国の気分を反映しているのは間違いありません。
そもそも米国人の同盟観が、韓国が長い間属していた冊封体制の感覚と同じである保証はありません。米国人は自分の理念を世界に広げる方を好むように見えます、朝貢国の数を増やすことよりも。中国人のような下品な恫喝はしませんが、米国人は裏切り者には厳しいですしね。