3/4日経ビジネスオンライン 北村豊『元最高指導者「華国鋒」の銅像に取り壊し命令 サッカー場14個分の陵墓、銅像完工から21日目に』について

3/5池内紀氏の『カント 永遠平和のために ~私が歩んだ戦後70年~』講演会に参加しました。予想通り、岩波・朝日文化人の反権力を標榜するリベラル(自由人)です。戦争は儲かるからやるとの話、それはそうで赤字になるなら誰もしないでしょう。領土奪取・賠償金というメリットがなければ。米国のイラク侵攻も石油と$の基軸通貨維持のためと言われています。日本の戦前のアジア進出も資源確保のためです。物事が起きるのには動機が必要です。それが経済or名誉or倫理なのか千差万別です。石川明人氏の『戦争は人間的な営みである』の中では、確か総力戦となる近代戦では、利益のためだけでは戦えなく、友のためにと言う大義が必要とあったと思います。本の紹介には「戦争は「純然たる悪意」のみの産物ではない。むしろ、愛や、希望や、真心や、正義感があるからこそ、人は命をかけて戦うことができ、戦争を正当化できてしまう」とあります。物の見方は一様でないという事です。自由な国に生まれて良かったという事。中韓のような国でなくて本当に良かったと思います。

プラハの春の時に池内氏はチエコにいて、20年後民主化が実現したことで言論の力を感じたとのこと。言論で共産党支配の状況が変わった訳ではなく、レーガンのSDI計画でソ連の国防費が肥大化して、衛星国の面倒が見られなくなったためです。歴史解釈が現実を見てなく、都合の良い解釈=脳内お花畑になっています。理想で解釈するのではなく、現実(経済的利益面をも考慮)で判断しないと、間違うのでは。マルクス経済学だって「下部構造が上部構造を規定する」と言っているではないですか。そもそもチエコはZB26軽機関銃を開発したことで有名な国です。日本の九六式軽機関銃はそれを模倣して作られました。それだけ東欧諸国の中では技術先進国です。軍事技術が民生技術をリードしてきたのは、インターネットや飛行機を上げるまでもなく、便利な社会を築いてきました。戦争が人類の進歩にも貢献してきた部分もあります。でなければ戦争は国際法違反として禁止されるべきでは。自衛戦争は許容されると言いますが、線引きできないでしょう。中国に言わせれば、南シナ海も東シナ海も自衛だと言い張るでしょう。

ワイツゼッカーの話もドイツは国として謝罪したわけでなく、全部ヒットラーのせいにして言い逃れしている事実についても触れませんでした。ワイマール憲法下で独国民にヒットラーは選ばれたことを今の独国民はどう思っているのか。

難民の受け入れでメルケルの決断を褒めていますが、100万人も受け入れして大きな問題を抱えたため、支持率は極端に下がったことには触れていません。「独メルケル連立政権の支持率が13年以来最低に=ビルト紙

[ベルリン1月19日 ロイター] – 日刊紙ビルト紙が世論調査会社INSAに委託した調査で、ドイツのメルケル首相(キリスト教民主同盟)率いる、保守大連立政権の支持率が2.5%下がり、2013年9月の総選挙以来最低水準の32.5%になった。同紙が19日伝えた。(ロイター)」とあります。

全般的に理念先行型の発想で、その理想を現実のものにするプロセス構築が弱いと感じました。現実把握が正しくできていないせいと思います。また反権力を貫くためには反共でなければならないことを分かっているかどうかです。でないと銅鑼湾書店メンバーのように拉致されますよと言いたい。民主主義と自由は表裏一体で、自由の中には精神の自由だけでなく、経済的自由も含まれるという事です。

本記事のように為政者の一存で物事が簡単にひっくり返る国でなくて良かったと本当に思います。この自由な国を守るためには、ありとあらゆる手段を使う必要があります。世論戦にも負けないような国際広報も考えて行かないと。ATO(Asian Treaty organization)も発足させたい。なお、周も鄧も、後世墓を暴かれるのを恐れて散骨したと言われています。

記事

Mao & Hua Guofeng

華国鋒(右)と毛沢東(写真:AFLO)

 2月18日、山西省“交城県”では3万人以上の県民たちが“県城(県政府所在地)”から北へ約3kmに位置する“呂梁人民英雄広場”に建てられた“華国鋒(かこくほう)”の銅像を取り囲むように集まり、当該銅像の取り壊し反対を唱えて気勢を上げた。高さ約10mの銅像は、2月16日が華国鋒の生誕95周年記念日であることから、交城県の県民たちが資金を出し合って建設したもので、1月27日に完成した。しかし、記念日翌日の2月17日に、地元の“交城県政府”は銅像が建設に必要な申請・承認の手続きを経ていないとして取り壊しを命じた。このため、関係当局は銅像を赤い布で覆い、その周囲には取り壊し作業用の足場を組んで、取り壊し作業を今にも開始しようとした。

遺言を残した毛沢東の座像と同じ理由で

 河南省の“通許県”では、地元の人々の資金で建設された高さ36.6mの巨大な“毛沢東”座像が、同様に必要な申請・承認の手続きを経ていないことを理由に、竣工を間近に控えた1月7日に取り壊された<注1>。メディアの報道を通じてこの毛沢東座像の取り壊し事件を知る交城県の県民たちは、銅像の取り壊し作業が開始されようとしていることに焦りの色を隠せず、交城県は緊迫した空気に包まれた。県民たちは居ても立ってもいられぬ気持ちで、何としても銅像の取り壊しを阻止しようと、大挙して呂梁人民英雄広場へ集まったのだった。

<注1>毛沢東座像の取り壊し事件については、1月29日付の本リポート「なぜ完成直前の毛沢東座像は壊されたのか」参照。

 交城県は、山西省中西部に位置する“呂梁市”の管轄下にあり、黄河を挟んで陝西省と隣接する。交城県の面積は1821km2で日本の香川県(1877km2)とほぼ同じ、人口は約23万人で香川県(98万人)の4分の1に過ぎない。また、同県はこれといった特産品のない平凡な農村地帯だが、中国の重要仏教寺院の一つである“中玄寺”が存在していることで知られる。中玄寺は中国に伝来した浄土宗がその教えを広める起点となったところで、日本の浄土宗や浄土真宗とも関係が深く、日本の仏教界でもその名は広く知られている。

 さて、その交城県が誇りとするもう一つの事柄がある。それは交城県がかつて中国の最高指導者であった華国鋒の出身地であるということである。華国鋒は1976年9月9日に逝去した“毛沢東”の後継者として、1949年の中華人民共和国成立以来で唯一、“中国共産党中央委員会”主席、“国務院”総理、“中国共産党中央軍事委員会”主席を兼任して「党」・「政」・「軍」の最高指導者となった人物である。華国鋒は死に瀕した毛沢東が彼に残したとされる「“你辦事,我放心(貴方がやれば、私は安心だ)”」と書かれた遺言を根拠に毛沢東が定めた後継者であると名乗り出て最高指導者の地位を得た。彼は“葉剣英”(当時は国防部長)などの古参軍人の支援を受け、当時権勢を誇っていた「四人組」<注2>を逮捕して、毛沢東が主導した“文化大革命”を終結させた。

<注2>「四人組」とは、文化大革命の中で実権を握った中国共産党中央政治局委員4人(王洪文、張春橋、江青<毛沢東夫人>、姚文元)を指す。

華国鋒は1976年10月7日から約5年にわたり中国共産党中央委員会主席として最高指導者の地位にあったが、「毛沢東が決めた政策を絶対に擁護し、毛沢東の指示に従う」という通称“両個凡是”と呼ばれる方針に固執し、毛沢東に対する個人崇拝を継続し、鄧小平を始めとする“老幹部”の復活を妨害し、経済政策を急ぎ過ぎたなどと批判され、1981年6月28日に党中央委員会主席の職を辞した。その後は党中央委員会委員の職に形式的に留まったが、ほとんど表面に出ることはなく、趣味の書道に没頭する日々を続け、2008年8月20日に北京市で死去した、享年87歳。

 但し、伝えられるところによれば、華国鋒は2000年頃に中国共産党を脱退しており、その脱退声明には、「現在の共産党は過去の国民党と区別がない。当時の中国共産党は腐敗反対、専制反対のスローガンを唱えて国民党政府を打倒したが、中国共産党が政権を執ってから50年以上にわたる、一党独裁の堅持、人権の抑圧、国民の自由のはく奪、汚職腐敗、司法の濫用などは当時の国民党政府の比ではない」と述べられていたとされる。

孫文をしのぐ陵墓に非難轟々

 それはさておき、華国鋒の葬儀は2008年8月31日に北京市“八宝山革命公墓”<注3>で元国家指導者としての体面を保つ形でしめやかに行われた。華国鋒の遺体は荼毘に付された後、その遺骨は八宝山革命公墓に預けられた。一方、華国鋒は生まれ故郷の山西省交城県に埋葬されることを望んでいたことから、華国鋒の遺族は交城県当局と交渉を重ね、中国政府当局の承認を得て、交城県の景勝地である“卦山(かいざん)”に“陵園(陵墓を中心とした林園)”を作ることを決定した。

<注3>“司局級(局長クラス)”以上の幹部が埋葬される資格を持ち、一般大衆用の“八宝山人民公墓”とは区別される。

 2009年に工事を開始した“陵園”は完工を間近に控えた2011年4月に、メディアの記者に公開されたが、その規模は度肝を抜くものだった。華国鋒の陵墓は卦山の南側半分を占め、敷地面積は10ha(=10万m2:標準のサッカー場14個分)と広く、江蘇省“南京市”の“紫金山”にある“孫文(別名:孫中山)”の陵墓“中山陵(敷地面積8万m2以上)”に匹敵する規模だったのである。孫文は台湾では“国父”と呼ばれるが、中国では“中国偉大的民主革命開拓者(中国の偉大な民主革命の開拓者)”と定義付けられ、革命の先駆者として尊敬されている。華国鋒の陵墓はその孫文の陵墓をしのぐ規模であるばかりか、その総投資額は1億元(約18億円)を上回ると、中国メディアは一斉に批判的な記事を報じた。

後に、交城県当局の関係者は、華国鋒墓陵、華国鋒記念館および華国鋒広場の総工事費は2500万元(約4億5000万円)前後であったと述べたが、当時一般大衆の華国鋒陵墓に対する反発は激しいものがあった。このため、交城県政府は華国鋒墓陵を一時的に閉鎖し、当初予定していた“華国鋒広場”の名称を呂梁市に因んで“呂梁人民英雄広場”に、“華国鋒記念館”を“晋綏革命歴史記念館”<注4>に各々変更すると同時に、華国鋒墓陵は呂梁人民英雄広場の一部分とすることを決めた。交城県政府はこれら変更によって華国鋒墓陵に対する世論の反発を躱し、墓陵の一時閉鎖によって嵐の過ぎ行くのを待つ作戦に出たのだった。

<注4>“晋綏”とは「晋(山西省)」+「綏(綏遠省;現内モンゴル自治区の一部)」を指す。

郷土の誇りを、新たな台座に

 それから半年後の2011年11月初旬、北京市の八宝山革命公墓から移送された華国鋒の遺骨は、華国鋒墓陵内の石室に収められた。本来は逝去3周年当日に当たる8月20日に納骨式を挙行する予定であったが、庶民の反発により2か月延期されたものだった。こうして華国鋒は、1921年2月16日に出生し、少年時代を過ごし、青年時代は日本軍に対するゲリラ戦を展開した故郷の交城県へ戻ったのだった。彼の墓陵の前に置かれた石碑を兼ねた台座は、彼の名前“華国鋒(Hua Guofeng)”の頭文字であるアルファベットの大文字「H」の形状で、彼が国家の最高指導者となった時の年齢である55歳に因んで5.5mの高さだった。本来、台座の上には高さ10mの華国鋒の銅像が据え付けられる計画だったが、庶民の反発を恐れた交城県政府は銅像の据付を取り止め、すでに完成していた銅像は倉庫内に放置された。

 このような状況に心痛めた交城県の県民たちは、郷土の誇りである華国鋒の銅像を本来なら「華国鋒広場」と呼ばれるべき「呂梁人民英雄広場」に建てたいという思いを募らせた。そこで、県民たちは、墓陵前の台座に銅像を据え付けることがいけないなら、呂梁人民英雄広場に新たに台座を作り、その上に放置されたままになっている華国鋒の銅像を据え付ければよいという結論に至った。華国鋒の生誕95周年に当たる2月16日以前に銅像の据付を完成させることを目標に、華国鋒の親友たちが中心となって地元に商人たちの支援を受けて資金集めを行い、呂梁人民英雄広場の中心に台座を建設した。こうして1月27日、呂梁人民英雄広場に新たに建設された台座の上に華国鋒の銅像が据え付けられた。県民たちはその威風堂々たる華国鋒の銅像を目にして、郷土の偉人に対する尊敬の念をより深いものとしたのだった。

 ところが、上述したように、交城県政府は建設に必要な申請・承認の手続きを踏んでいないという理由で、2月17日に華国鋒の銅像の取り壊しを命じたのだった。

取り壊し反対の声は「削除」

 これを知った県民たち1万人以上が「華国鋒の銅像を守れ」の合言葉の下、交城県の県城内のデモ行進を行った上で、呂梁人民英雄広場に集まって「取り壊し反対」の集会を開いた。翌18日には早朝から3万人もの県民たちが呂梁人民英雄広場に集まって「反対」の気勢を上げた。県民たちの一部は当局によって派遣された警察部隊と衝突し、双方に負傷者を出すに至った。同日午後、“交城県党委員会”副書記の“李義祥”は県民の安全を考えて、18日中の取り壊しは行わないと表明した。また、その後、交城県政府は文書を公布して、県民に対して銅像は必要な手続きを経ていないため取り壊さざるを得ない旨の説明を行った。李義祥は、「銅像取り壊しの命令は上部からの指令であり、交城県党委員会ならびに交城県政府は何も言えない立場にある。上部の説明は銅像の建設には手続きが必要であると述べただけだった」とメディアに語ったという。

 2月19日を境に、華国鋒の銅像の取り壊しに関する報道もネット上の書き込みも一切見当たらず、その後の銅像の状況については何も分かっていない。恐らく報道管制が敷かれ、ネットも規制されて、書き込みは削除されているものと思われる。銅像取り壊しが上部からの指令である以上は、たとえどんなに交城県の県民たちが取り壊しに反対を唱えようとも、最終的には銅像は力ずくで取り壊されたと考えざるを得ない。当初、華国鋒の遺族が交城県に陵墓の建設を相談した際に出した条件は、「農地を占用せず、古跡を破壊せず、環境を破壊せず、住民と土地を争わず」の原則で、荒地に埋葬すれば良いというものだったにもかかわらず、交城県が墓陵の規模を必要以上に巨大化したことが、その後に発生した全ての問題の出発点となったのだった。

それなら、華国鋒の銅像が取り壊された真の理由として考えられるのは何か。

習近平以外には考えられない

【1】華国鋒銅像の取り壊しを命じたのは、河南省通許県の毛沢東座像と同様に「上部」であった。華国鋒は毛沢東と同様にかつての国家最高指導者であり、その銅像の撤去を命じることができるのは、現在の最高指導者である中国共産党総書記の“習近平”以外には考えられない。しかも、華国鋒銅像は毛沢東の様に全国各地に多数の像が建てられているのと違い、恐らく交城県の銅像が唯一の物と思われるのに、その像すらも建てることを認めないのはどうしてなのか。

【2】上述したように、生前の華国鋒が中国共産党を脱退していたという事も、一つの要因と言えるのかもしれない。中国共産党を脱退し、その際に中国共産党を批判する声明を発表したことが事実ならば、華国鋒を賛美する象徴となるような銅像を建てることを認めるわけには行かない。

【3】華国鋒には隠された秘密があると言われている。それは彼が毛沢東の隠し子であったという噂である。毛沢東が女癖の悪い人物であったことはすでに周知の事実となっているが、1920年に毛沢東が湖南省“長沙市”に滞在中に知り合った“姚”姓の女性もそのうちの1人であった。この女性は山西省交城県から長沙市へ来ていた「たばこ商人」の娘で、1921年に故郷の交城県で毛沢東の子供を出産した。それが華国鋒であったという。華国鋒は、中華人民共和国成立直後の1951年には毛沢東の故郷である湖南省“湘潭県”の党委員会書記に任命されたのを皮切りに出世階段を駆け上ることとなる。なお、華国鋒の湘潭県党委員会書記在任中に、毛沢東は都合9回湖南省を訪れたが、その度に華国鋒との面会を手配させたという。

【4】これなら、毛沢東が上述した遺言を華国鋒に残した理由が説明できる。また、2002年12月26日、華国鋒が毛沢東の娘たちと共に北京の天安門広場にある“毛沢東記念館”を訪れて、毛沢東の冥福を祈った際に、彼が持参した花輪には「忠実な息子国鋒哀悼」と書かれていたという。花輪はその後すぐに撤去された。

【5】華国鋒が毛沢東の私生児だったとすれば、毛沢東が華国鋒に残した遺言は父から子への政権の世襲を意味することになり、北朝鮮の世襲統治に異を唱える立場の中国にとっては極めて都合が悪い話である。さらに、中国にとって毛沢東は革命の指導者であり、国家の偉人であり、神に等しい存在である。そんな人物なのに、女癖が悪いばかりか、非嫡出子までいたとなっては、国家の体面にも関わる問題となる。それなら、華国鋒には静かに交城県の墓陵で眠ってもらい、人々の目に触れる銅像などは建てないに越したことはないという結論に達するのである。

 なお、話のついでに、中国の国家指導者の死後について述べると以下の通り。

【毛沢東】中国の指導者の中で最初に火葬を推奨したのは毛沢東だったが、その本人の遺体は永久保存処理を施されて毛沢東記念館の中に安置されている。皮肉以外の何物でもない。

【周恩来】生前の遺言「遺骨は保存せず、まき散らせ」に従い、遺骨は4分割され、北京市や天津市など4地点の上空からまかれた。

【鄧小平】生前の遺言「角膜は寄贈、遺体は解剖、遺骨は保管せず、海へまく」に従い、遺骨はその希望である“回帰大海(海に帰る)”を実現して海にまかれた

3/3日経ビジネスオンライン 山田泰司『中国経済異変!昼の町に立ち始めた夜の女たち 城壁廃止議論の中、路地裏文化の勃興か不景気の顕在化か』について

上海では街並みを見るときに「弄」という文字を良く見かけました。「中国上海市长宁区古北路60弄2号501室 200051」=” 2-501, 60 Gubei Road Changning 200051 SHANGHAI P.R. CHINA”と表記されます。200051は邮政编码(郵便番号)です。「弄」はさしずめ日本で言う「丁目」に相当すると思います。上海には「魯迅公園」もあり、「内山完造」も住んでいました。日本と中国が仲が良かった古き良き時代です。

Lu Xun’s home

 

 

 

 

 

 

 

 

魯迅旧居 

Uchiyama Bookstore

                

 

 

 

 

 

内山書店跡

また「社区」というのもあり、本記事にあるようにそこで生活が完結できるような仕組みもありました。監視社会を徹底させるためだと思いますが。

街娼は中国では床屋が多く、近くを通ると女性が呼び込みしていました。当時は10元くらいだったような気がします。汚いので近づかないようにした方が良いでしょう。またホテル(外資系でも)のロビーにそれらしき人が屯しておりました。この人たち以外を外から持ち込むと、通報され、公安による逮捕、パスポートに破廉恥を意味する「恥」のスタンプが押されるという話を聞いたことがありますが、見たことはありませんので真偽のほどは分かりません。

中韓とも今現在売春婦がこれだけたくさんいるのに70年以上の日本の慰安婦を非難します。キチンと反論しなければ汚名を雪ぐことはできません。米軍の7年に亘る調査結果や朝日新聞の誤報で強制性を裏付けるものはない=強制性はなかったことをもっと強烈に主張すべき。従軍慰安婦の概念で言えば、解放軍施設の中に一杯慰安婦はいます。

記事

Street in Shanghai-1

上海の一般的な住宅。通りに面してごく小さな入り口があり、その奥に住居が広がっている。通りからは奥にこれほどの広がりのあるスペースがあるとは想像できない(上海市内)

 日本文学史に残るそうそうたる作家たちが書き残した日本以外の国の町、という点で、上海は他の町を圧倒しているのではないだろうか。

 ロンドンに船で留学に向かう途中に寄航した夏目漱石が、新聞社の視察員として訪れた芥川龍之介が、父の赴任先を訪れた当時17歳の永井荷風が、杭州に駐留する火野葦平に芥川賞を授ける使命を帯びてやってきた小林秀雄が、愛人に傾く妻の気持ちを再び自分に向かせるために夫婦で旅立った金子光晴が、日記、エッセー、小説とスタイルはさまざまだが、当時の上海を記録している。金子光晴が、じっと何かを考え込んで1時間も動かない魯迅を見かけた横浜という名前の橋や、永井荷風が庭園の壮麗さに打たれた豫園など、当時の面影を今も残す場所は少なくない。

 これら作品の収録された文庫本や電子書籍の入ったスマホをガイドブック代わりに散歩するのに、上海は格好の町である。残念なことに最近は、PM2.5等の大気汚染がひどすぎない日ならば、という条件付きだが。

中国には路地裏が存在しない

 ただ、上海、そして中国の町歩きでもの足らないなと思うこともある。それは、裏通りや路地裏、横町を歩く楽しみがないことだ。中国には表通りしかなく、裏通りや路地裏が存在しないのである。

 こう言うと、上海や北京を知っている人の中には、「何を寝ぼけたことを。裏通りや路地裏ならそこらじゅうにあるじゃないか」「北京の胡同こそ裏通りではないのか」と指摘する向きもあろう。しかし、中国の都会にある道路は、道幅が広いか狭いかの違いだけですべてが表通り。上海や北京にも裏通りや路地裏があるという人が頭の中に思い浮かべているのは、ただ道幅が狭いというだけで、表通りに過ぎない。

 中国の町に路地裏や裏通りが存在しない理由は、住宅の構造にある。

 中国は古来、囲う文化である。町全体を城壁で囲い、一族や共同体の住む複数の住居を壁で囲う。町を城壁で囲うことで外の世界と遮断し、住宅の四周を壁で囲むことで、一族以外の人間や、通りがかりの見知らぬ人物の侵入を防いできた。住宅の中に入るにはいったん、通りに面した門をくぐって囲いの中に入り、中庭などを通ってようやく自分の家の玄関にたどり着くというスタイルである。

Street in Shanghai-2

高層の集合住宅の入り口と、中庭の様子。四方を囲む形にして外部と遮断し通り抜けできないようなスタイルにしている(上海市内)

町造りや住居造りにおけるこのような精神やスタイルは、現代に至るまで脈々と受け継がれてきた。こうした住宅群の中には数百戸、数千戸が入居する大規模なものもあるため、囲いの中に学校、スーパー、病院、銭湯、美容院、レストランなど生活に必要なものがそろっていて、壁の外に出なくても最低限の用が足りるようになっている所もある。

 こうした居住区の中にある小さな路地が、壁で囲う文化のない都市における路地裏、裏通り、横丁に相当するものなのだろう。ただ、囲いの中の路地には、閉鎖された他人の空間に入っていくような居心地の悪さと、あくまで壁で守られた生活の空間という予定調和の空気が流れている。無防備に外界にさらされている場所に自然発生的に形成された路地や裏通り、横丁で感じる危うさやスリル、ドキドキ感やワクワク観が、囲いの中には欠如しているのだ。

城壁文化廃止の論争

 さて、住居群を壁で囲って住人以外の出入りを制限する居住区を形成することで困るのは、誰でもが通行でき利用できる一般道の数が少なくなることである。壁や壁代わりの商店で四周を囲った四角い積み木のような居住区をすき間無く敷き詰めた結果、行けども行けども次の道との交差点にたどり着かない町が出来上がってしまったというわけだ。

 その中国で今、壁で四周を取り囲むスタイルの居住区――中国語では「封閉式小区」と呼ぶ――を禁止しようという動きが持ち上がっている。

 提案しているのは中国共産党中央と中国政府だ。今年の2月下旬、これから新たに開発する住宅については壁を設けず、居住区の敷地内を通る道路も、クルマと人の往来を自由にさせようというのがその内容。さらに、既にある居住区についても、段階的に壁を取り払って誰でも自由に通り抜けできるようにしていくことを目指すという。

 当局が理由として挙げているのは、誰でも通れる一般道を増やすことによる交通渋滞の緩和。なかなか解決の糸口がつかめないPM2.5をはじめとする深刻な大気汚染も、交通渋滞が元凶の1つだから、理由としてはごくまっとうなものだと言える。

Street in Shanghai-3

上海市内の住宅。中央の通りを挟んで右側と左側は別の団地。だが、塀と門で遮り、中央の道を一般車両や住民以外の通り抜けをできないようにしている(上海市内)

 ただ、中国の庶民は当局の説明を額面通りに受け止めてはいない。当局の真の目的は土地に課税することにこそあるというのである。それはこういうことだ。現在、壁で囲っているがために公共の場所扱いになっている花壇などの公共スペースを、壁を取り払うことで個人に分け与える。そこを私有財産と見なして課税し税収を増やすことにこそ真の目的がある、というわけである。

 また、人やクルマの通り抜けを認めることで事故の確率が増すなど安全が確保されなくなると反対する声も上がっている。

 壁撤廃の議論は始まったばかりであり、当面見送りとされたり、強い反発に遭って廃案になったりする可能性だってある。ただ、町ごとすっぽり取り囲む城壁は取り壊しても、住居を囲うことだけは頑なに守ってきた中国で、これが撤廃されることになれば、それはやはりエポックメイキングなことだと言えるだろう。自分の周囲を囲うことで培い積み上げてきた文化や思想、習慣にも変化が生じるかもしれない。なにより、壁の撤廃により、路地裏や裏通りの文化が中国に出現するかもしれないのだ。

昼日中の都心に大量出現した街娼の衝撃

 これはなかなか面白いことになってきたと1人興奮した私は最近、壁で取り囲む居住空間を改めて観察してみようと、時間を見つけては地下鉄に乗り、いくつかの住宅を見て回っている。

 そうした最中である。さる都心部の居住区で目を疑う光景を目の当たりにしたのは。日曜日の昼下がり、上海の中心部の住宅街に、街娼が立っているのを見つけたのである。それが1人や2人だったなら恐らく気付かなかっただろうし、その程度の人数なら、高級ホテルの入り口付近で見かけたこともあった。ところがその居住区では、この通りに4~5人、隣の通りに7~8人、その隣りにまた4~5人と、一目でそれと分かるほどの人数が立っていたのだった。

Street in Shanghai-4

街頭で客引きする女性ら(上海市内)

 その後、彼女らの立つ通りを歩いてみたところ、何人かが「遊んでいかない?」と声をかけてきた。料金は最低50元(約850円)から、とのことだった。あまりの安さに衝撃を受けた。年齢は20代と思しき人もいたが、40代前後が最も多いように見えた。

 そこは、再開発が決まって住民の立ち退きが始まり、一部では取り壊しが既に始まっている集合住宅の集まる居住区だった。元々はそこも四周が壁で囲まれていたようだが、囲いの中に出入りするための門が取り払われていた。建物と建物の間の道が人が2人すれ違うのがやっとというほど狭いのでクルマは進入できないが、人は自由に往来し通り抜けているようだった。私はここに2日通ったのだが、2日目には立ち退きを渋る住民を追い出しに来たと思しき目つきの鋭い若者たちが20人ほどたむろしていた。

 それらの光景を見て私はまず、取り壊しのどさくさでこの居住区に不法組織が入り込み、彼らの仕切りで女性たちを立たせて商売させているのではないかと考えた。

地上げ屋の仕切りではない

 ただ、待てよ、である。

 住宅の解体業者で働く友人がいることもあり、私はこれまで、取り壊しが決まって住民が立ち退きを始めた居住区をいくつも見てきた。しかし、そこに街娼が白昼堂々、1人や2人でなく10数人、しかも都心部と言っていいエリアに出現するなど、少なくとも私は初めて見たし、そのような現象が起きたということも寡聞にして知らない。そして、地上げの若者たちが滞在していた2時間ほどの間、街娼たちはどこかに姿を消し、彼らが立ち去ると再び町角に立った。これを見ても、地上げの若者らの組織が街娼たちを仕切っているのではなさそうだ。

 さらに、取り壊しの居住区からワンブロックほど離れた通りで、建物の影に隠れるようにして立ち客を引く何人かの街娼の姿も認められた。そこは、路線バスが通るような大きな通りに面した場所だ。

共産党が厳しく統制している国という印象のある中国、そして上海にも、もちろん(と言うのが適当なのかどうかはさておき)、風俗店はある。日本のように公然と風俗店を名乗ってはいないが、ナイトクラブやカラオケ、サウナ、足裏マッサージ店の看板を掲げている店の中には性風俗のサービスを提供する店がごまんとある。また、中国語圏では一部の床屋が風俗店の役割を果たしていて、町中に点在している。店の外に漏れる照明が薄暗かったり紫色など怪しい色だったり、店の中の様子をのぞけるように入り口のドアの磨りガラスが一部だけ素通しになっていたりするので、風俗床屋だということは一目で分かる。

アフリカ出稼ぎと街娼の共通点

 調べてみたところ、街娼が立っていた居住区からさほど離れていない場所に、風俗店が比較的多いことで知られるスラム街があることが分かった。ただそれらが営業するのは店の中、建物の中でのこと。繰り返すが、上海の都心で昼日中、何十人もの街娼が立つなどということはこれまでに無かった。性風俗に携わる彼女らが、表に出てきたのはなぜか。そうした現象を発生させる何らかの変化が起きているのではないか。

 すると、アフリカで働く中国人のことを調べている研究者からこんな話を聞いた。アフリカで働く中国人の出稼ぎ男性を相手に性のサービスを提供するためにアフリカに渡る中国の女性たちが存在するのだが、半年ほど前から渡航する数が、男性、女性とも増え始めているようだと。そして、その中心がアラフォー世代だということ。そして、増加している背景には、不景気があるようだということだった。

 中国では、高卒や専門卒、あるいはそれ以下の学歴の人たちは、35歳を過ぎると途端に仕事が見つからなくなる。アパレルや飲食店の店員にも採用されない。男性であれば50歳を過ぎると警備員でもなかなかなれない。そうした女性たちの選択肢の1つに家政婦があるのだが、不景気の影響でここ2~3カ月、家政婦の口が減り始めているということは、前々回のこのコラムで書いた。

 囲いが取り払われた居住区の路地に突如として出現した大勢の街娼たち。その姿はまるで、中国経済の軋みでできた城壁のひび割れから押し出されたかのようだが、家政婦の仕事を見つけるのも困難になった女性たちが、ある人は上海の町角に立ち、ある人はアフリカに渡る決断をしているということの現れであり、景気が確実に悪くなり始めていることを示すものなのだろう。さらに、囲いがなくなり往来が自由になると、このような光景の路地裏が中国の他の居住区にも誕生するだろうということを予見させるものでもある。

3/2JBプレス 高濱賛『反日のトランプとヒラリーより世界はルビオに期待 民主党が最も嫌がる男に、共和党主流派が一致団結へ』、3/4日経ビジネスオンライン 高濱賛『スーパーチューズデーの隠れたカギ「特別代議員」 規則変更がトランプの追い風に』について

 

Hiroshi Yamada3/3アミュゼ柏で行われた山田宏氏講演会。京大時代、会田雄次教授から「戦後教育の欠落したものとして①宗教心(何かを畏れる心)②道徳(人の道)③歴史への誇り(先人への感謝)が挙げられる。君達はそれがないから指導者になってもダメになるだろう」と言われたと。また民主党且つ京大の後輩(多分前原)と話した時に、彼が保守と言うので何を守りたいのか尋ねたら、「渡辺京二の『逝きし世の面影』のような社会を作りたい」と答えたので、「それは花であって、幹や根ではない」と言った。でも、自分もその時は分からなかったが、ずっと考えて守るべきものの結論が出た。①皇室②神社③日本語の3つである。以上が簡単に内容を紹介したものです。

3/4日経朝刊には「クリントン氏、はや本選に向け動く 米大統領選

【ワシントン=川合智之】1日の米大統領選候補者選びのヤマ場「スーパーチューズデー」を終え、米メディアでは躍進したヒラリー・クリントン前米国務長官(68)が一段と優勢になったとの見方が強まっている。クリントン氏陣営は、早くも指名獲得後の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)との本選に照準を合わせて動き出している。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は2日、スーパーチューズデーはクリントン氏にとって「最善の日になった」と評価。米紙ワシントン・ポスト(電子版)も1日、「サンダース氏が今後、連勝するとは考えにくい」として民主党の指名争いは「終わりに近づいている」と報じた。

 米メディアによると、クリントン陣営のロビー・ムック選対本部長は2日、クリントン氏がサンダース氏より600人以上多い代議員を得たことを踏まえ「2008年大統領選でのオバマ氏のリードよりも大きい」と指摘。指名獲得圏内に入ったと示唆した。

 仮にサンダース氏が5日のカンザス州やネブラスカ州の党員集会で勝っても、黒人に人気があるクリントン氏は南部ルイジアナ州などで優位を保ち、差は縮まらないという読みだ。クリントン氏は2日、ニューヨークでの集会で「昨日は歴史の一ページになった」と述べるなど、トランプ氏との本選対決を見越した発言を繰り広げた。

 一方のサンダース氏は2日、8日投票の大票田ミシガン州で1万人規模の集会を開催。「ますます差は縮まっている」と逆転に望みをつないだ。

 共和党ではトランプ氏が通算15州で10勝と圧倒的リードを保つ。原動力は、暴言を含む過激な発言を武器に、これまで投票したことのない共和支持者を掘り起こしたことだ。トランプ氏は2日、「私のおかげで共和党は数百万人の新たな有権者を得た。注意しないと皆離れていくぞ!」とツイッターに投稿した。

 米公共ラジオNPRによると、1日は11州の共和党予備選・党員集会に850万人が参加。前回の12年大統領選の470万人に比べ8割増え、過去最大となった。特にバージニア州では3.8倍と記録を大幅に塗り替えた。逆に民主は08年に比べ3割減だった。

 一時はトップを走った元神経外科医ベン・カーソン氏(64)は2日、1日の惨敗を受けて撤退を示唆。通算4勝のテッド・クルーズ上院議員(45)、1勝のマルコ・ルビオ上院議員(44)らは選挙戦を続ける方針だ。

 共和指導部はトランプ氏への対抗馬を一本化する構えをみせてきたが実現は遠い。米政治専門サイト、リアル・クリア・ポリティクスが集計した主要世論調査の平均によると、トランプ氏とクリントン氏が本選に出た場合、クリントン氏の支持率が3.4ポイント上回る。一方でクルーズ氏やルビオ氏が共和候補なら、どちらもクリントン氏に勝てるという。一本化の遅れが共和の誤算となる恐れが強まっている。」とありました。JBプレスの高濱氏の記事に詳しい数字が載っています。

共和党はトランプ下ろしが功を奏するかですが、「ここまで来たらもう遅い」との声もあり、WSJもトランプ支持に回るとの観測もあります。コッチ兄弟の「スーパーPAC」によるルビオ支援が間に合うかどうか。ルビオの地盤のフロリダでも世論調査ではトランプに抜かれている状況です。やはり、同じ地元のジェブ・ブッシュが味方にならないことが尾を引いているのでは。ブルームバーグが本選に名乗りを上げ、民主党支持を分裂させないと、共和党は勝てないかも。

JBプレス記事

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米テキサス州ダラスで開いた選挙集会で演説する米大統領選の共和党候補指名を争っているマルコ・ルビオ上院議員(2016年1月6日撮影)〔AFPBB News〕

民主ヒラリー、共和トランプ独走で中盤戦に突入

 「スーパー・チューズディ」を終えて、米大統領選予備選の輪郭がより鮮明になってきた。

 民主党大統領指名レースではヒラリー・クリントン前国務長官が独走態勢に入った。一方の共和党は不動産王ドナルド・トランプ氏が「保守草の根一揆」の波に乗って快走。キューバ系のマルコ・ルビオ上院議員が共和党保守本流の期待を一身に背負ってトランプ氏を追いかけるといった構図になってきた。

 これまでの論争では、外交問題は内政に追いやられて取り上げられてこなかった。が、クリントン氏は、ミネソタ州党員集会を前に地元紙に寄稿し、TPP(環太平洋経済連携協定)に「ノー」を打ち上げた。

 日本が為替操作しているといった難癖までつけている。

 予備選段階での発言は多分に票目当て。民主党の強力な支援団体の労組の顔色を窺うポーズだが、「ヒラリーが大統領になると、せっかく日米で合意したTPPはひっくり返される可能性が出てきた」(外務省筋)と早くも心配する声も出ている。

 では、トランプ氏が大統領になったらTPPはどうなるのか。

 同氏は、日米安保をめぐっては日本の「タダ乗り論」をぶち上げてはいるが、TPPについてはいまだ発言したことがない。

 「まだそこまで勉強していないんだろう」(米主要シンクタンク上級研究員)が、議会共和党はTPP賛成派が多いわけだし、「大統領になればTPPに賛成する可能性が大」(同)というのが大方の見方だ。

 いずれにしてもどちらが大統領になっても反日スタンスになることは不可避。「いろいろ批判されたが知日・親日のオバマが懐かしくなる時が必ずやってくる」(在米日本人商社幹部)のかもしれない。

共和党主流がトランプを嫌がる理由は3つ

 ヒラリー指名はどうやら確実になってきた。だが、共和党サイドはまだ分からない。共和党主流、政財界、主流メディアこぞっての「ストップ・ザ・トランプ」総動員が「発令」されているからだ。

 なぜか。

 共和党保守本流はもとより共和党支持の財界勢力がトランプ氏に嫌悪感を感ずる理由は3つある。今や危機感にまでなり始めている。

 1つは、暴言と無差別的差別発言を繰り返すトランプ氏が指名されれば、民主、共和どちらの党にも属さない「無党派」層が強く影響する本選挙では、共和党はクリントン氏にはまず勝てない、という選挙戦略的な理由。

 2つ目は、万一、トランプ氏が大統領になったとしても、これだけ共和党既成体制を罵倒し、反発してきたトランプ氏の下、秋の上下両院選挙後も両院過半数を維持しそうな議会共和党とうまくいくわけがないと見る政治的理由。

 それよりも何よりも、「政策立案能力ゼロのトランプ氏がいくら共和党系のブレーンを集めたとしても大統領として政治をつかさどることなどまず無理」(共和党系シンクタンクの上級研究員)との判断がある。

 そして3番目には、オバマ大統領が指摘しているように「トランプ氏には大統領としても資格がない」点だ。能力ばかりではない。品位がなさすぎるのだ。

 「アメリカ合衆国の大統領に不可欠なのは思いやりと優しさ。ケネディにもレーガンにもイデオロギーを超えてそれがあった」(前述の上級研究員)

 となれば、共和党保守本流としては、予備選中盤戦に突入する3月中旬から4月にかけて「ストップ・ザ・トランプ」を全開にしなければならない。

保守本流の「切り札」ジェブ・ブッシュは「兄貴の負の遺産」で撤退

 共和党保守本流はこれまでジョージ・W・ブッシュ元大統領の実弟、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を「ストップ・ザ・トランプ」の急先鋒に使おうとしてきた。トランプ氏に対抗させる強力指名候補として物心両面から支援してきた。

 ところが支持率はてんで上がらず5%前後を低迷。2月下旬には大統領選から早くも撤退してしまった。

 ネオコン(新保守主義派)にそそのかされて国民を裏切り、無謀なイラク戦争突入した兄貴ジョージの「負の遺産」に最後まで足を引っ張られたのだ。

 保守本流はそこで用意していた「2枚目のカード」としてルビオ氏を切らざるを得なくなった。弁護士出身でフロリダ州議会議長を経て、上院選挙に出馬し見事当選したマルコ・ルビオ氏(44)。保守本流から内政、外交、軍事のブレーンが集まっている。

 だが、そのルビオ氏も「スーパー・チューズディ」では、バージニアで唯一首位となったが、トランプ氏を阻止するだけの弾みをつけるところまではいっていない。

トランプには勝てるヒラリーが最も恐れる男

 共和党保守本流がルビオ氏に熱い視線を向けている最大の理由は、まだ中央政界での経験は浅いものの、万一、本選挙でクリントン氏と一騎打ちになった場合、ルビオ氏が勝つチャンスがあるという点にある。

 「若さ、カリスマ性、端正な顔立ちと三拍子そろった保守本流の星。高齢、かつ好感度の低いクリントン氏を相手に絶対勝てる」(共和党選挙対策関係者)と共和党主流は見ている。

 2月2日から17日までに各種世論調査機関が行った支持率平均値によれば、以下の通りだ。

クリントン42.8%:ルビオ47.5%  クリントン44.5%:クルーズ45.3% クリントン45.3%:トランプ42.8%

 事実、クリントン陣営もルビオ氏を警戒している。選挙通で知られるビル・クリントン元大統領は、ヒラリー候補の超側近グループとの数か月前の会合で「ルビオに注意せよ」と警鐘を鳴らしているという。

日本にとっては最適の「日米安保現状維持派・TPP推進派」

 さて、そのルビオ氏とはいかなる人物か。

 同氏はキューバ系移民の3世。フロリダ州マイアミで生まれ、フロリダ大学、マイアミ大学法科大学院を卒業して、弁護士を開業。2000年から2009年までフロリダ州下院議員を務め、一時は下院議長にもなっている。

 2010年には上院議員選に出馬し、見事当選している。その強みは先輩議員、特に長老議員に可愛がられていること。「爺キラー」なのだ。とんとん拍子に出世街道をばく進するルビオ氏を「フロリダのケネディ」と呼ぶものもいるほどだ。

 2012年の大統領選挙の際にはミット・ロムニー共和党大統領候補の副大統領候補の1人に名を連ねたことからも党内ではそのカリスマ性と政治力が評価されてきた。

 上院では1年生議員にもかかわらず、皆が望む商業委員会と外交委員会に属し、後者では東アジア太平洋小委員会のメンバーとして日本にもたびたび訪問している。日米安保の現状については熟知しているし、TPP推進派の1人でもある。

 中国の南シナ海、東シナ海での海洋権益拡大には猛反発している。日本の「安保タダ乗り」論を展開するトランプ氏を一喝しているのも共和党候補の中ではルビオ氏だけだ。

「民主党リベラリズムがアメリカン・ドリームをぶち壊す」

 そのルビオ氏自身が書き上げたのが本書だ。昨年4月に立候補する前に出た自叙伝だ。予備選の推移とともにルビオ氏への注目度が高まるなか、目下ベストセラーになっている。

 タイトルは、「American Dreams: Restoring Economic Opportunity for Everyone”のDreamsは「ドリーム」というだけでなく、「Development, Relief, and Education for Alien Minors」(つまり「外国生まれの未成年者たちへの発育と救済と教育」)の頭文字だ、とご本人は説明している。

 いかにも、1950年代、カストロによるキューバ革命直前にキューバを逃れて、米国に移住した祖父の孫マルコ・ルビオらしいタイトルのつけ方だ。

 祖父が常に言っていたことは、「卑賎で恵まれない出であろうとも誰でもアメリカ合衆国に来れるのだ。そして自らの大きな望みをかなえることができるんだ」。

ルビオ氏によれば、1950年代、祖父が求めた「アメリカン・ドリーム」はその後、達成が難しくなってきた。その理由は、「連邦政府を軸に米国市民を指揮統制するリベラリズム」にあった、というのだ。

 「アメリカン・ドリームを堅持できるか否かは、我々米国民が我が国が他国とは異なる例外的国家(An exceptional nation)であり続けられるかどうかにかかっている。これを明確に定義づけることこそが保守主義運動の根幹であり、真の保守主義なのである」

 ルビオ氏の祖父や父親が享受したアメリカン・ドリームは今怪しげになっている要因は何か。

 ルビオ氏は、第1の原因は公的な教育をごり押しし、伝統的な家族制度を無視したオバマ政権のリベラルな政策であり、第2にはハイテク優先主義を突っ走り、付随的に生じる仕事喪失を生み出しているグローバリゼーションにある、と言い切る。

 「しかしながら私は楽観的だ。アメリカ人は、1950年代に謳歌したアメリカン・ドリームを再び復活させるためにいかにしたら今の新しい現実に対応するかのすべを知っているからだ」

トランプ潰しに「スーパーPAC」がネガティブ・キャンペーン活発化

 共和党主流派は、何とかトランプ氏の勢いを止め、7月の全国党大会前の早い段階でルビオ氏の指名への確実な道筋をつけるべく動き出している。

 ルビオ氏を支援する「スーパーPAC」の「アメリカン・フューチャー・ファンド」(AFF)は、全米ネットでトランプ氏に対するネガティブ・キャンペーンをすでに開始、同氏が2005年に不動産投資術を教えると称して始めた「トランプ大学」が詐欺まがいだったことやトランプ・グループが大量の不法移民を雇っていることと大々的に批判し始めている。

 資金はルビオ指名実現を目指す共和党主流派に近いコッチ兄弟ら億万長者たちとされている。

日経ビジネスオンライン記事

—民主党11州、共和党12州の予備選・党員集会が同時に行われた「スーパーチューズデー」。この結果をどうみたらいいのでしょう。

高濱:どの候補が得票率で勝ったかということばかり取り上げられますが、指名を獲得するのに重要なのは代議員をどれだけ確保したかです。

Trump & Hillary

スーパーチューズデーを制した共和党のトランプ氏(左)とクリントン氏(写真:ロイター/アフロ)

 3月1日深夜(米東部時間)時点での集計では、共和党サイドでは、不動産王のドナルド・トランプ氏が12戦7勝。代議員237人を獲得しました。緒戦4州の予備選・党大会以降2月29日までに獲得した代議員数319人と合わせると、556人となります。

 共和東の代議員総数は2472人。指名を獲得するには、この過半数である1237人が必要です。トランプ氏はこれでその45%を手中に収めたわけです。 (”Election 2016 – Republican Delegate Count,” Real Clear Politics, 3/1/2016) (”Super Tuesday state results,” The Washington Post, 3/1/2016) (”The Green Papers: Presidential Election USA 2016.” 3/1/2016)

共和党保守本流の「ストップ・ザ・トランプ」作戦は失敗

 「反主流派」の一匹狼であるトランプ氏を嫌う共和党主流派は政治資金団体「スーパーPAC」(スーパー政治行動委員会)などが中心となり、「穏健派」のマルコ・ルビオ上院議員を物心両面から応援しました。

 しかし、そのルビオ氏は振るわず。ミネソタ州で一矢を報いましたが、必勝を期していたバージニア、バーモント両州でも、接戦の末、トランプ氏に敗れてしまいました。

 それに比べ、共和党保守本流とは距離を置く「保守強硬派」のテッド・クルーズ上院議員は地元テキサス州とオクラホマ州で勝者となったばかりか、ルビオ氏との2位争いも5勝2敗としルビオ氏を突き放しました。

 スーパーチューズデーの前からトランプ氏が圧勝することは予想されていました。ですから米主要紙のベテラン政治記者は筆者にこう解説しました。「共和党主流派の面々もいよいよ『トランプの現実』(Trump Reality、トランプが本当に指名されるという現実)を考えざるをえなくなってきたようだ」。

 気の早いコラムニストの中には、トランプ氏の副大統領候補は誰それだ、と予測記事を書く者も現われ始めました。 (”Trump is No.1, but who’s his No.2?” Roger Simon, www.politico.com., 2/24/2016)

アメリカ独特の複雑怪奇な代議員制度

—予備選挙が採用している代議員制度というのは日本人にはわかりづらい制度です。代議員が2種類あったり。とくに民主党の場合は候補者が実際に獲得した代議員のほかに別の代議員が加算されたりしていますね。

高濱:確かに、複雑な制度です。まず、代議員には「一般代議員」(Delegate)と「特別代議員」(Super Delegate)とがあります。とくに民主党では代議員の15%が「特別代議員」なのです。共和党のほうは割合少なく4%です。

 一般代議員は、その州に住む18歳以上の党員であれば誰でもなれます。一方、特別代議員はその州選出の連邦上下両院議員、州知事、歴代の正副大統領、党の幹部などいわゆる党内エリートしかなれません。無投票で事前に決まっています。

 クリントン氏が緒戦の4州予備選・党大会後に着実に代議員数を増やしているのは、態度を留保していた特別代議員の中からクリントン支持誓約をする者が続々と現れているからです。

 民主党主流派によるある種の「操作」が働いているわけです。これについてはこれまでにも一般党員から批判がありまし。現にサンダース陣営は今回激しく抗議しています。しかし、党主流派は「伝統的な党是を守るためだ」と突っぱねています。

 一方、共和党の特別代議員の数は民主党に比べると少なく、「党内エリートがトランプ氏の快進撃に歯止めがかけられない要因の一つだ」と、筆者に解説してくれる選挙専門家もいます。

—一般代議員と特別代議員との大きな違いはなんですか。

高濱:一般代議員は、登録する際に自分が支持する候補の名前を明記し、自腹を切って全国党大会に出席し、予備選の際に自分が支持してきた候補者に必ず投票しなければなりません。

 一方の特別代議員は、自分が誰に投票するかを党大会までに決めても決めなくてもいいのです。通常は「スーパー代議員」と呼ばれますが、メディアあるいは選挙専門サイトは「Bonus Delegates」(ボーナス代議員)とか「Unpledged Delegate」(誓約に縛られない代議員)とも呼んでいます。

比例配分の州でも総取りできる

 さらに話を複雑にしているのは、勝敗を決める選挙の方式です。「勝者総取り」(Winner-takes-all)と比例配分方式とがあります。どちらを採用するか、州ごとに異なります。

 共和党は2012年に大統領指名規約の一部を改正しました。比例配分方式を採用する各州に例外条項を設けさせたのです。これを「Rule 40B」(ルール40B項)と呼んでいます。

 その内容は以下の通りです。 1)候補者が50%以上の票を得れば、州全体の代議員を総取りできる。 2)得票率が50%未満でも、他の候補者たちの得票率が20%(あるいは15%)を下回った場合、第1位の候補者が州全体の代議員を総取りできる。 3)連邦下院議員選挙区で50%以上の得票を得る候補者がいない場合は、1位の候補者が2人、2位の候補者が1人の代議員を獲得できる(各州の連邦下院議員選挙区ごとに3人ずつ割り当てられている)。  おおざっぱに言うと、得票率の高い候補に重点的に代議員が割り振られる仕組みになりました。

 12年まで、各州に割り当てられた代議員数は、各候補者の得票に応じて配分されました。つまり実際の投票結果を反映した生の数字でした。

トランプに有利に働いた「例外条項」

—「スーパーチューズデー」が行われた各州はすべて比例分配方式でした。その例外条項はどういった影響を与えましたか。

 スーパーチューズデーでは、アラバマ、ジョージア、ルイジアナ、テキサス、テネシーなど南部州がこの「ルール40B」を適用しています。従ってトランプ氏はアラバマ、テネシーの両州ですべての代議員を手中に収めました。勝者総取りと同じ結果になったわけです。 (”The Real Import of Rule 40 in 2016,” frontloading.blogspot.com, 12/13/2015) (”Dramatic, Little Known GOP Rule Change Takes Choice Of Presidential Candidate Away From Rank And File Republicans And Hands It to Party Elite,” Rich Ungar, Forbes, 4/7/2014)

トランプの「禁じ手作戦」功を奏す

—トランプ氏は同じ共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領を名指しで批判しましたね。それなのになぜこれほどの票を集めているのですか。予備選は党の中での指名争いですから、自分が所属する党出身の歴代大統領は批判しないのが慣例なのでは。

高濱:トランプ氏はサウスカロライナ州予備選前になってブッシュ元大統領のイラク政策を真正面から批判しました。トランプ氏はライバル候補であるジェブ・ブッシュ氏を批判する手段として、ブッシュ元大統領のイラク戦争突入を厳しく批判しました。それだけでなく、01年の東部中枢同時多発テロですら、「大統領がブッシュでなければあのテロは防げた」とその責任を追及したのです。

 民主党でも共和党でも、大統領候補が自分の党出身の歴代大統領を名指しで批判することはしません。その意味では、トランプ氏はまさに「禁じ手」を使ったのです。ところがそれが見事成功しました。

 声を大にしては言いませんが、共和党員の多くもトランプ氏と同じことを思っているはずです。そこをトランプ氏は代弁し、ブッシュ元大統領を批判、返す刀で兄ジョージ氏を弁護するジェブ氏を叩いたのです。結局トランプ対ブッシュの論戦はトランプ氏に軍配が上がりました。

 CNNテレビが行った出口調査でも明らかになったように、共和党員の半数は既成の共和党が自分たちを裏切ったと答えています。その意味で、ブッシュ元大統領およびブッシュ・ファミリーはその格好の標的になってしまったようです。

 自らが所属する党の元指導者や既成政治家を批判して選挙で勝つ手法は、日本でもありましたね。01年、小泉純一郎氏が党総裁選で「自民党をぶっ潰す」と言い放って、党主流派が推す橋本龍太郎氏を破ったことを思い出します。

反既成体制、反権力機運は民主、共和両党に

—民主党のサンダース氏も、クリントン氏に政治資金を提供し続ける民主党系富裕層を批判しています。トランプ氏は右、サンダース氏は左と分かれていますが、ともに既成の権力に対抗している点では共通項がありそうですね。

高濱:興味深い世論調査結果があります。15年9月24日に公表されたウォール・ストリート・ジャーナルとNBCが行った世論調査結果です。

 これによると、回答権者の44%がこう答えています。「今の既成政治システムはウォール・ストリート(金融・経済界)やワシントン(行政府、立法府)の富裕層や権力者たちのためだけに機能しており、一般市民の日常生活のためには全く機能していない。そのことに憤りを感じる」

—一般市民の憤りは、民主、共和両党をクロスオーバーして広がっているわけですね。

高濱:米政治学者の中には、「今回の大統領選の特徴は米国民が4つに分かれていること」と指摘する者もいます。つまり民主党主流、民主党草の根、共和党主流、共和党草の根の4つです。

 こう見てくると、民主、共和どちらのどの候補が大統領になったとしても、次期大統領はこうした一般市民の声を無視するわけにはいかなくなることが予想されます。 (”The establishment’s swan song,” Fortune CEO Daily, 2/20/2016)

ローマ法王の「クリスチャン否定」発言に猛反発

—トランプ氏による批判は共和党既成体制だけではなく、カトリックの最高位、フランシスコ・ローマ法王にも向けられましたね。

高濱:スーパーチューズデーの直前、フランシスコ・ローマ法王のコメントにトランプ氏は激しく反論しました。

 トランプ氏は、予備選の緒戦から「不法移民を入れさせないよう、メキシコとの国境に巨大な壁を作る」と主張していました。これに対し、法王は「あなたはクリスチャンではない」と批判しました。

 トランプ氏は食って掛かりました。「宗教指導者が他の人間に疑問を挟むとは不名誉で、けしからん(disgraceful)話だ」。米総人口の20.8%を占めるカトリック信者が敬愛するローマ法王に口答えしたわけです。

 筆者は当初、カトリックとプロテスタントとの違いはあれ、南部、中西部を中心に米総人口の25.4%もいるエバンジェリカルズの票田に影響は出ないのか、と考えました。ところが、その後に行われた予備選、党員集会でトランプ氏のコメントに対するネガティブな反応は全くなく、投票にはほとんど影響なかったようです。 (”Donald Trump calls Pope Francis ‘disgraceful” for questioning his faith,” Ben Jacobs, The Guardian, 2/18/2016)

 エバンジェリカルズ系の牧師は筆者にこう説明しています。「同じキリスト教とはいえ、プロテスタントの原理主義者にとってカトリック法王は特別な存在ではない。むしろ、南米出身のフランシスコ・ローマ法王が米国の不法移民対策に口を挟んだのを不快に思っている。だからトランプの反発をそれなりに評価している」 (”Right-Wing Media Lash Out At Pope Francis For Suggesting Donald Trump’s Immigration Plans Do Not Reflect Christian Values,” Alex Kaplan, Mediamatters.org., 2/18/2016)

 党の既成勢力だけでなく、どんな権力者や権威をも恐れぬ「一言居士的なトランプ」が共和党員・支持者の間で喝采を浴びていることがよくわかります。

 これが今後の予備選でも持続できるかどうか、その結果がトランプ氏にとって吉と出るか、凶と出るか。

 3月5日にはカンザス、ケンタッキー、ルイジアナ。次いで15日には、勝者総取りを採用しているフロリダ、ミズーリと続きます。代議員数ではフロリダが99人、ミズーリが52人。1位になれば大口の代議員が一気に転がり込みます。

 ルビオ氏などは地元フロリダでトランプ氏を迎え討ち、なんとか雪辱を果たしたいところでしょう。

本命クリントン、指名に必要な代議員数獲得にまっしぐら

—民主党の選挙結果をどう見ていますか。

高濱:いよいよヒラリー・クリントン前国務長官が独走態勢に入りましたね。スーパーチューズデーが行われた11州での勝敗は7勝4敗。バーニー・サンダース上院議員を完全に突き放しました。とくに南部では夫君ビル・クリントン元大統領が黒人層に圧倒的な人気を誇っていることも手伝って、黒人票の大多数を獲得したことが勝因の一つなったといえましょう。

 クリントン氏が今回獲得した代議員数は504人。クリントン氏が3月1日以前の予備選・党集会で確保した代議員数は548人。これを合計すると、3月2日午後現在で1052人になります。指名に必要な代議員数は2383人(特別代議員を含む)ですからクリントン氏は現時点ですでにその44%を手にしていることになります。 “Delegate tracker – Associated Press Interactives,

 一方、サンダース氏は地元のバーモンドのほか、コロラド、ミネソタ、オクラホマの4州でクリントン氏を破りました。善戦したと思います。中西部の民主党員、とくに学生や若い世代が、オバマ政権をはじめとする民主党既成勢力に反発し、クリントン氏への投票をためらったものと思われます。

3/2日経ビジネスオンライン 福島香織『「過去20年で最も厳しい北朝鮮制裁」の意味 真の争点は、米中「アジア争奪」の駆け引き』について

米中主導で北への制裁がまとまりかけましたが、土壇場でロシアのクレームがつき、安保理採択は日本時間3時未明となりました。米中だけで決めさせはしないというロシアの思惑でしょう。中国が本気になって制裁すれば、金王朝はすぐにでも倒れるでしょう。やはり中国にとって、バッファーゾーンは必要だし、金正男に首を挿げ替えても北の人民が従うかどうか不明で、リスクは冒せないと思っているのでは。

韓国の二股外交を逆手に取って、米中が北のみならず、韓国をも懲らしめている構図にも見えます。蝙蝠国民は相応の報いを受けるべしと。韓国は米中を手玉に取った気でいましたがTHHADで手痛いしっぺ返しを受けた形です。その内、戦時作戦統制権も韓国に返還するかもしれません。一気に駐韓米軍撤退はないでしょうけど。朴大統領は益々苦しくなりました。昨年末の日本との慰安婦合意に続いて、THHAD配備検討に米国が梯子を外そうとしているのですから。桂・タフト協定、アチソン声明に続く朝鮮半島切り捨てに繋がるかも知れません。米中で宗主国の言うことを聞かない北と南の扱いを裏で決めている可能性もあります。

北の6者協議復帰は、核とミサイル開発の時間の利益を北に与えるだけです。米国も中国も北の封じ込めはできないと思っているはずです。拉致被害者の帰国については今度の制裁でも難しいでしょう。日本が北と交渉して、単独で制裁緩和は出来ないでしょうから。軍事作戦でしか救出は出来ないでしょう。ただどこにいるか分からないのでは作戦は展開できません。拉致被害者は戦後憲法の犠牲者です。左翼・在日が憲法擁護をして政府の改憲の動きを制約してきました。自分の子供たちが拉致され、取り戻せない現状について想像できないアホな似非学者・似非ジャーナリストが多すぎます。国民も拉致を自分のこととして考えてほしい。問題解決について根本的な部分で考えないと。

中国が一番恐れているのは本記事にありますように、アジア版NATOを作られることです。中国の嫌がることをすることが世界平和のためには必要です。中国の軍事膨張を防ぐためには、封じ込めが必要です。合従連衡策として、日米豪印比越でまずATO(Asian Treaty Organization)を作り、後にその他のASEAN諸国を巻き込むようにすれば良いと思います。

記事

Wang Yi VS Kerry

ワシントンで開催された米中外相会談。「北朝鮮制裁」の裏側で「アジア争奪戦」の駆け引きが続く。(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮の核実験に対する国連制裁決議をあれほど渋っていた中国が一転、同意した。王毅外相が2月23日から25日に訪米し、ケリー国務長官らと会談、制裁案について合意に至った。報道によれば、50日に及ぶ長期交渉の結果という。ロシアは「検討に時間が必要」と言っているので、採決にはまだ時間がかかるかもしれないが、中国はすでに金融機関が対北朝鮮業務をストップしているという報道もあり、すでに独自制裁に踏み切っているもようだ。中国はなぜ、態度をここにきて変えてきたのだろう。

本気でやれば体制維持に影響も…

 米国が国連安保理に提出した北朝鮮決議草案は、過去20年の中で最も厳しい制裁だと言われている。禁輸措置は石炭、鉄鉱石、金、レアアースなど鉱物資源全般に及び、これらは北朝鮮の対外輸出総額の40%を占める。また、北朝鮮への航空燃料、小型兵器、軽武器などの輸出も全面禁止。同時に制裁参加国国内の銀行における金融資産の凍結を行い、北朝鮮への出国も禁止。北朝鮮を行き来する船舶はすべて厳格な審査を受け、制裁措置の履行を保証する。高麗航空機の国連加盟国領空の飛行も禁止する。また、北朝鮮の非合法活動を行う外交人員の退去も行う。例えば北朝鮮国家宇宙開発局など約30の組織および個人が制裁対象としてブラックリスト入りしている。

 北朝鮮を除く国連加盟国192か国にこれを履行する義務が課され、もし本気でやれば、北朝鮮の核兵器開発を阻止するどころか、その体制維持にすら影響するのではないか、というレベルだ。

 中国は当初、国連の対北朝鮮決議に対してなかなか賛同を示さなかった。核実験直後、米国などが国連による制裁の声を上げた時は、中国は「当面の急務は関係国が共同の努力でもって、北朝鮮を対話のテーブルに再びつかせることだ」と、制裁についての直接の言及を避けた。1月15日の段階で、「安保理が北朝鮮にそれなりの代償を求めることは支持するが、北朝鮮を崖っぷちに追い込むことには賛成しない。対話のテーブルに引き戻さねばならない」との立場だった。ミサイル実験が行われる前の2月初めまでは、強すぎる制裁は北朝鮮の不安定化を招く、として慎重に制裁内容を調整するように働きかけていた。

 その理由は、建前上は正常な中朝関係を損なう、あるいは民生を損なう制裁は人道的にも望まない、というものだったが、本音のところは、中国で報道されている専門家の見解を総合すると、

①国連の枠組みの中で制裁に参加するよりも、中国が独自のハンドリングで北朝鮮をコントロールしたいという思惑があった。 ②北朝鮮の核実験への対応よりも、国内の軍制改革や南シナ海の軍事拠点化を優先させたかった。 ③内心は北朝鮮に対し腹を据えかねていたが、北朝鮮のロシアへの急接近を警戒しており、いそいそと制裁に参加する態度を北朝鮮に見せたくなかった。 ④韓国との緩衝地帯でもある北朝鮮の体制維持は中国にとって必要不可欠であり、体制を弱体化あるいは崩壊させるレベルの制裁には参加したくなかった。 ⑤北朝鮮が不安定化して大量の難民が押し寄せてくることなどを警戒している。 …といったところだろう。

 それが、なぜ急に、このような厳しい制裁に同意するよう、態度を変えることになったのだろうか。これは中国の妥協なのだろうか。

THAAD延期と制裁同意の“取り引き”

 独立系華字ネットメディア・多維は、その理由を次のように報じている。多維はもともと米国に本部のあった反共産党的な報道が特徴であったが、近年はかなり北京の立場に近い報道を行うようになっている。

①制裁決議草案は、対外情報工作を担う朝鮮人民軍偵察総局、核・ミサイル開発を担う原子力工業省、国家宇宙開発局を対象に絞ったものである。中国の「民生を損なうことは人道主義にもとる」という建前の理由は必要なくなった。

②米国と韓国が韓国にTHAADミサイルシステムを配備しようとしたことが、中国の妥協を促した。中国はこれに一貫して反対しており、米韓のTHAAD配備規約締結の延期が発表されたのは、中国が対北朝鮮制裁に合意したことへの米国からの見返りだった。

③中国側は、安保理決議では、半島の核問題は解決しないとしている。最終的には対話のテーブルに戻って北朝鮮と米国の和平協議にもっていくしかない。制裁によって北朝鮮の現体制を崩壊させないこと、また米国側も、先に核放棄しなければ対話もしないという姿勢を軟化する、という感触を得たので妥協した。

 一方、中央ラジオの報道では、これは中国の妥協ではなく、高明なる策略であり、妥協しているのは米国の方だ、と報じている。

 「韓国は、北朝鮮の核実験を口実に、THAADミサイルシステムの配備を画策していた。…これは米国がアジア版NATOをつくろうとしているということではないか?」  「中米の北朝鮮に対する姿勢はもともと明らかな違いがあった。米国は『極めて厳しい制裁』を行おうとし、それを口実に『中国は北朝鮮をかばっている』というロジックでもって、中国を米国の原則に従わせようとしていた。米国は、北朝鮮を崩壊させるまでの制裁に中国を参加させようとしていた。これは中国の国家利益には全く合致しない。中国にとって、制裁は北朝鮮を崩壊させることが目的ではなく、話し合いのテーブルに回帰させることが目的である。中国は最後までこの国家利益のボトムラインを守り抜いた」  「北朝鮮の両弾(原爆と水爆)の軽挙が脅威か、それとも米韓の北朝鮮体制崩壊戦略やTHAAD配備が脅威か」  「王毅は半島の非核化と和平協議の推進を並行して行う考えを提示している。(今回の合意は)その具体的ステップ、プロセスを含めた話し合いである」

Xバンドレーダーによる封じ込めに危機感

 こうした報道を見てみると、中国にとっての脅威は、北朝鮮が核兵器を持つこと以上に、北朝鮮の崩壊であり、米国によるTHAADミサイル配備に象徴される“アジア版NATO作り”である。THAADは最大射程200キロ、ミサイルの探知、追跡、迎撃誘導を行うXバンドレーダーの探知距離は1000キロ以上という、イージス艦もびっくりの性能であり、これが韓国に導入されれば、北京もばっちりレーダー探知範囲に収まってしまう。

 北朝鮮の一発や二発の核兵器は1000発の核弾頭を保有する中国にとってさほど脅威ではないが、THAADのXバンドレーダーで中国のミサイルが封じ込められるのは、明らかに脅威であろう。さらに言えば、中国当局は日本が核兵器を持つと言い出すことを非常に警戒している。世界から孤立する極貧小国が持つ核兵器と、米国の同盟国、世界第三の経済大国の日本が持つ核兵器とは意味が違う。中国に対して、朝鮮戦争の血で固めた友誼を忘れ、嫌がらせのように核実験やミサイル発射を行う北朝鮮は、腹立たしい存在だが、喫緊の脅威ではないのだ。

 そして、中国は核保有の大国論理で、米国も北朝鮮の核兵器など本気で脅威とは思っていないはずだと考えている。米国がかくも北朝鮮の核の脅威を強く言うのは、それを口実に、アジアにTHAADを持ち込み、アジアのNATO作りを進めようとしているからだと警戒している。

 中国が目下、南シナ海の軍事化を急ピッチで進めていることからもわかるように、今、アジアにおいては、米中の軍事的陣取り合戦の真っ最中なのである。中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、米国は極東で日米韓軍事同盟の強化を進めている。中国の立場からいえば、南シナ海を軍事問題化しているのは米国の方で、韓国のTHAAD配備問題以前から、米国が中国の南シナ海での脅威を煽るのは、アジアにおけるTHAAD配備の口実にするつもりだという警戒論もある。

本質は「北朝鮮の核問題」にあらず

 中国の立場から今回の件を見ると、問題の本質は「北朝鮮の核問題」ではなく、米中のアジアの軍事化競争における駆け引きであり、今後の展開も、アジアにおける米中対立のシナリオから見た方が分かりやすい。中国側がこれは妥協ではなく、策略だと言っているのが本音であれば、この合意によって中国の方が、アジアの軍事化のコマをより多く進めることができるだろう。実際、王毅とケリーの会談では、南シナ海における中国のミサイル紅旗9配備問題もテーマになったはずだが、こちらの話し合いは平行線に終わったようだ。このまま、南シナ海のミサイル配備やレーダー配備を恒常化し、最終的には防空識別圏の宣言まで行っても、米国は文句を盛大に言うぐらいで、具体的に対中関係を先鋭化させるようなアクションは起こさないかもしれない。

 さらに言えば、北朝鮮の“極めて厳しい制裁”によって北朝鮮が核開発を断念する、という結果を本気で期待しているのは、実際のところ日本ぐらいではないだろうか。繰り返すが、中国にとっては、制裁に効果があるかないかよりも、北朝鮮の核問題を口実とした米国のアジア軍事進出をいかに抑え、そして自らの南シナ海での軍事進出を有利に進めるかの駆け引きの方が重要なのだ。少々、北朝鮮に苦しい思いをさせて、今までの中国に対する舐めた真似を反省させれば、十分であり、北朝鮮の体制崩壊など望んでいない。国連の制裁により、北朝鮮の体制が崩壊すれば、その核兵器の安全を確保するために米軍などが北朝鮮内に派遣される可能性があるが、それは中国としては絶対避けたいシナリオだ。

 とすると、今回の極めて厳しい制裁も、中国として、北朝鮮の体制維持に影響するようなレベルにいかないように、かなり短期間で終わらせたい目算があるのではないか。

 中国は、北朝鮮が対話のテーブルに着くことに同意した時点で制裁をやめるだろうが、その対話のテーブルに着く条件は、米国がもともと主張していた、先に北朝鮮が核開発放棄してからというものではなく、王毅外相の主張する核廃棄と和平協議の同時進行となる可能性が高い。これでは、かつての六か国協議と同じで、北朝鮮に核開発を断念させるどころか、むしろ北朝鮮の核保有準備に時間的猶予を与える結果になろう。

 ちなみに制裁は北朝鮮の党大会が開かれる5月の前に解除されるのではないか、というのが中朝国境で貿易に携わる関係者らの感触である。正式に解除が発表されなくとも、「上に政策あれば下に対策あり」の中国で、中朝国境貿易の現場にはいくらでも抜け道は作れるだろう。もともと密貿易の多い地域である。国境守備の辺境の解放軍幹部がレアアース密貿易に加担していることも多く、北朝鮮の鉱山利権を中国側が握っている例も少なくない。軍制改革はそういった北朝鮮利権と癒着している将校を一掃する目的もあるとは思われるが、朝鮮族の解放軍将校らが遠い北京への忠誠よりも近くの北朝鮮利権の方を重視する傾向はそう簡単には是正されまい。

アジアのNATO化と南シナ海軍事拠点化の間で

 そもそも、中国も「ズボンをはかなくても核兵器を作って見せる」と言って、大躍進と右派運動と大飢饉で人民が飢えている最中に核実験を成功させた国である。そして核兵器を持ったからこそ、国際社会で承認され、今、米国とほぼ互角に渡り合える大国になった歴史がある。少々の経済制裁で開発を断念するはずがないと中国も自分たちの経験に照らしてみればわかっているだろう。

 こうした背景を考えれば、過去20年で一番厳しい制裁というのも、中国が本気で北朝鮮の制裁に参加するというのも、建前の新聞見出しであり、日本は制裁の効果に余り期待しすぎると、がっかりする結果になるかもしれない。それよりも、北朝鮮が核兵器を保有し、米国よる“アジアのNATO化”vs 中国による“南シナ海の軍事拠点化”という陣取り合戦が今後激化するという過程で、日本は自国の領土の主権と安全を守る具体的方策を練り直す必要があるだろう。

3/1日経ビジネスオンライン 堀田佳男『大統領選とカネ:最も集金力のある候補は誰?』について

スーパーチューズデーが終わりました。共和党はトランプ、民主党はヒラリーが予想通り制しました。トランプが大統領候補ではヒラリーに勝てず、民主党からまた大統領が出ることになります。ベンガジ事件等平気で嘘をつき、中国やサウジからの金塗れの人物で、夫と一緒にホワイトウオーター疑惑に関与していたのではと思われる人物です。

http://www.eis-world.com/template/eiscolum/seiron/071204.html

http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/62684177.html

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150422/frn1504221532006-n1.htm

日本人にとって民主党はFDR(日本と開戦)、トルーマン(原爆投下)、クリントン(ジャパン・パッシング)とイメージが良くありません。無能のカーターやオバマもですが。

トランプがなるにしろ、ヒラリーがなるにしろ「衆愚の極み」というイメージしか持ち得ません。多数の圧制ならぬ多数の横暴のように見えます。

『トクヴィル アメリカにおけるデモクラシーについて』(岩永健吉郎訳)を読みました。訳者が東大名誉教授で文章が硬く、非常に読みにくかったですが。トクヴィルの米国訪問・観察は1831年(『アメリカにおけるデモクラシーについて』は1835年出版、続編を1840年に刊行)、アンドリュー・ジャクソン第7代大統領の時代ですので、200年程前近くなります。ですから述べていることも当然時代の制約を受けます。①trail of tears(インデイアンの強制移住、1838年)②黒人奴隷についてこの本では触れていません。まあ、あの当時白人にとって有色人種は獣以下だったのかもしれませんが。彼が強調していたのは

Ⓐ自由であるが「多数の圧制」を恐れること。米国人は議論の末に多数意見に従うようになる。そうしないと村八分となり、命までは取られないものの精神生活・経済生活面で苦しむことになる。

P.57~59

「全能は、それ自体、悪であり、危険なものと思われる。その行使は、行使者が誰であろうと人力を超えるもののように見える。神のみが全能であって危険がない。その英知と正しさとが、常にその力に等しいからである。しかし地上では、いかなる権威も、それを何らの抑制なく行動させ何の障碍もなく支配させてよい、と私が思うほど、それ自体が尊敬に値する神聖な権利を身に帯びてはいない。万能の権力が何らかの勢力に与えられた場合、その勢力が人民と呼ばれようと、王と呼ばれようと、またデモクラシーであれ、アリストクラシーであれ、さらにそれが君主政で行使されようと共和政で行使されようと、そこに圧制の萌芽があると私は宣言し、他の法制の下に生きる場所を求める。

合衆国に組織された民主政において私が最も強く非難する点は、ヨーロッパで多くの人が主張するその弱体さではなく、反対に、それが抗いがたい力をもつからである。アメリカにおいて私に最も厭わしいのは、そこに支配する極端な自由ではなく、圧制に対する保障が少ない点である。合衆国において個人や一党派が不正をこうむったら、誰に訴えよというのか。世論にか。世論は多数(派)の形成者である。立法の府にか。これは多数を代表し、それに盲従するものである。執行権にか。これも多数によって任命され、それに奉仕する用具にすぎぬ。警察にか。警察は武器をもった多数以外の何ものでもない。陪審にか。陪審とは判決の権利をまとった多数である。いくつかの州では、判事さえ多数によって選ばれる。うけた処分が、いかに不正または不当であろうと、それに従わなければならぬのである。

反対に、多数を代表してはいるが、必ずしもその激情の奴隸にはならないよう構成されている立法部があり、固有の機能をもつ執行権、他の権力から独立した司法権があるとする。これも民主的な政府であろうが、もはや圧制に向かう機会はほとんどなかろう。

現在アメリカにおいて、しばしば圧制が行なわれている、というのではない。圧制に対する保障が全く見られず、法制によりも環境と習俗とに権力の発動が緩和される要因が求められなければ ならぬ、というのである。

Ⓑ「陪審制度」を高く評価していること。

P.93~96

「陪審は各人に、自分の行為の責任にひるむな、と教える。男らしい態度、それがなくては、政治的に立派ではありえない。それは各市民を一種の司法官の職につける。社会に対して果たすベ き義務があるとすべての人に感じさせ、また政治に参与するのだとも感じさせる。陪審は人々を その私事以外のことにかかわらせて、個人の利己主義と闘う。利己主義は社会の錆である。

陪審は、人民の判断力を形成し、知能を拡充するのに信じがたいほど貢献する。私の見解によ れば、この点にこそ最大の長所がある。無料で常時開設の学校、そこで陪審員は、おのおの自己 の権利についてみずから学び、上層階級の中でも最高の教育をうけ最も見識のある人々と日々接し、法を実際的な方法で教わり、弁護士の努力、判事の意見、当事者の熱情さえもが、法を自分に理解のできるものにしてくれる。そのように陪審を考えるべきである。アメリカ人の実学的な知性と政治的良識とは、主として、民事陪審によって長らく培われたものとしなければならない、と私は考える。

陪審は訴訟するものに役立つかどうかわからないが、その裁定にあずかるものには、たしかにきわめて有用である。私は、これを人民の教育に役立つ最も有効な方法の一つと見なす。

以上に述べたところはすべての国民に妥当する。しかし、ここにアメリカの人々に独特のもの、そしてデモクラシーの人民一般に通ずる事情がある。デモクラシーにおいては、法曹、なかでも司法官が、人民の動きを穏健にしうる唯一のアリストクラティックな集団を形成すると前(節)に述べた。この貴族(というべきもの)は何ら物的な権力をまとわず、その影響は人の精神に及ぶのみである。そして、この力の主要な源泉を民事陪審に見出している。刑事訴訟では社会が個人に対して争うが、そのさいに陪審員団は、判事とは社会のカを受け身に示すものと見るようになり、その意見を無視する。さらに、刑事訴訟は全面的に、良識があれば容易に評価されるような簡単な事実にもとづいている。この領域では、判事も陪審員も同等である。民事訴訟においては状況が異なる。判事は、当事者の激情の間に立つ公平な仲裁者として現われる。陪審員は彼の言動に信頼し、その意見を傾聴する。この場合には、判事の知見が全く、陪審員にまさっているからである。彼らの前に、記憶するのに骨の折れる多様な議論を展開するのは判事であり、また、訴訟の迂路を乗り越えていくのに手をかすのも彼である、事実の点で範囲を区切り、権利の問題で出すべき解答を教えるのも、そうである。その影響たるや、ほとんど無限といえよう。

最後に、陪審員は民事においては無能という議論、これに私があまり動かされない理由をいわなければなるまいか(そうしよう)。民事訴訟においては、事実問題に関しない場合は少なくともすベて、 陪審員団は司法機関の外見をもつにすぎない。陪審員は判事が下した判決を発表する。 彼らが代表する社会の権威を判決に付与するのであり、それは理性と法との権威である。

イギリスとアメリカとにおいて、判事が刑事訴訟の運命に及ぼす影響には、フランスの判事のかつて知らぬものがある。この差異の生ずる理由は容易に理解できる。イギリスまたはアメリカの裁判官は民事において権威を確立し、次いでそれを他の場面で行使するにすぎぬ。刑事において何かを獲得するのではない。アメリカの判事は、単独で判決できる場合がいくつかあり、それは、しばしば最も重要なものである。そのさいには、たまたまフランスの判事が通例おかれる (のと同じ)立場にある。しかし、彼の道徳的権能ははるかに大きい。陪審の思い出が彼に付随し、 陪審は社会の一機関であるから、彼の声には社会の力とほとんど等しい力がある。彼の影響は法廷の外にまでひろがる。多忙な政治活動においても、私生活の憩いにも、立法の府においても市の広場でも、アメリカの判事は絶えず人々に取り巻かれている。そして、この人々は、判事の知性には自分たちよりすぐれたものがあると見ることになれている。訴訟で影響力を行使したあとでも、その権威を事件の裁定に協力した人々の心のすべての習性、そして魂にまで感じさせるのである。

陪審は司法職の権能を縮小するかに思われるが、実は、その権威を基礎づけるのである。人民 が司法官の特権を分かちもつところほど、裁判官が強力な国はない。アメリカの司法が私のいう法曹的精神を社会の底辺にまで浸透させるのは、何よりも民事陪審によってである。また、陪審 は人民の支配を確立する最も強力な方法であるが、同時に人民に支配する術を教える最も有効な方法でもある。」

この本の最後にロシア人とイギリス系アメリカ人が台頭してくると予言していました。一方は剣で、一方は鍬で、前者は総ての権力を一人に集中し、後者は個人利益に基づき、個人の力と理性を自由に活動させ東征しないとありました。確かに冷戦まではロシアとアメリカが争いましたが、米国の勝利で終わり、今は米中の熱戦になるかもしれない所です。

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米大統領の職はカネで買える―

 米政界で昔から語られているフレーズである。もちろん数百億円を出せば大統領の職を手に入れられるほど簡単なわけではない。ただ、多額の選挙資金なくして大統領選を戦い抜くことはできないことも確かである。

 筆者は米大統領選を「ライフワーク」と位置づけ、長年取材を続けている。最初に大統領選に接したのはロナルド・レーガン大統領が再選された1984年だ。まだ読売新聞ワシントン支局のインターンだった。実際にジャーナリストとして取材を始めたのは92年で、今回で7回目となる。

 これまで大統領選をさまざまな視点から取材してきた。候補の人物像、政策、選挙対策本部、スタッフ、有権者、選挙戦略、選挙の仕組みや歴史、さらに選挙資金などだ。特に最後の選挙資金は、集めた額によって候補の命運が決まると言えるほど重要である。

 実は戦後71年間、集金力に乏しい候補が大統領に当選したことはない。少なくも筆者が取材をしている過去25年間は、より多くの選挙資金を集めた候補が勝ってきた。正比例ではないが、当選と集金力には強い相関関係がある。

集金額トップはヒラリー氏

 連邦選挙管理員会が2月20日に発表した報告書によると、今年の大統領選の主要候補で最も集金額が多いのは民主党ヒラリー・クリントン氏だ。選挙対策本部に献金された金額と外部の政治団体(スーパーPAC)に献金された総額は1億8800万ドル(約215億円)。2位に約100億円の差をつけている。

 2位は共和党テッド・クルーズ氏(テキサス州選出の上院議員)の1億400万ドル(約118億円)。3位が民主党バーニー・サンダース氏(バーモント州選出の上院議員)で9600万ドル(約110億円)。4位が共和党マルコ・ルビオ氏(フロリダ州選出の上院議員)の8400万ドル(約96億円)である。この額は現在の数字で、11月まで勝ち残る候補は1000億円超のカネを集めることになる。

 上記の候補はいずれも選挙戦で上位に残っている人たちだ。ちなみに、報告書には20人以上の候補がリストされている。すでに選挙戦から退いた人もいるが、上位4人よりも多額の選挙資金を集めたまま撤退した候補はいない。つまり、選挙を戦い抜くためには資金が必要であり、資金があるからこそまた上位に残れると言える。

トランプ氏は自己資金で賄う

 例外は不動産王ドナルド・トランプ氏である。利益団体やロビイストなどから多額の献金を受け取っていない。それにもかかわらず、共和党では昨夏から支持率でトップを維持する。スーパーチューズデーでも圧勝する見込みだ。トランプ氏の強さの要因は1月の当欄に記したのでお読み頂ければ幸いである(関連記事:「民主党支持者の票をも奪い始めたトランプ候補」)。

 トランプ氏は選挙を「自己資金でまかなう」と宣言しているが、実は一般有権者からの資金も受け取っている。利益団体やロビイストからの「ひも付き」のカネを受け取らないだけだ。この点はサンダース氏も同じである。

 トランプ氏の選挙対策本部には一般有権者からの献金(2月20日発表)が、2730万ドル(約31億円)集まっている。自己資金をどれほど使っているかは報告義務がないため闇に包まれたままだ。本人は「たぶん3000万から4000万ドル」と述べており、献金額と合わせると少ない額ではない。

論功行賞狙いの献金も

 それではトランプ氏以外の候補は、億円単位の選挙資金をいったい誰から受け取るのか。 昨年から今年2月まで、大統領候補に最も多額の献金した人物の名はすでに明かされている。ロバート・マーサー氏。ニューヨークにあるヘッジファンド企業ルネッサンス・テクノロジーズの経営者だ。

 コンピューター・サイエンスで博士号を持つ同氏はIBMの元社員で、初期の頃の音声認識プログラムを開発した人物だ。93年に同社を起ち上げた。

 資産約1億2000万ドル(約136億円)。死刑復活や経済システムの金本位制を説く保守派の大物だ。マーサー氏は昨年、クルーズ氏に1000万ドル(約11億円)を献金した。

 献金は簡単なことだが、自己資産の約10%を政治献金として捧げることは億万長者でも簡単にできることではない。政治信条が重なる保守派のクルーズ氏が大統領になることを見込んでの献金である。

 マーサー氏はクルーズ氏が大統領になった後、なにがしかの見返りを期待していると考えるのが普通だろう。いわゆる論功行賞だ。たとえば、ジョージ・ブッシュ前大統領が大統領に当選した2000年、同氏に対して最も多額の政治献金をしたのはマーサー・レイノルズ氏だった。レイノルズ氏は石油採掘会社の経営者であり、大リーグ・テキサス・レンジャーズのオーナーだった人物。

 当時は、今のように無制限の政治献金をすることはできなかったため、多数の富裕層に働きかけて、個人献金を集める方法をとる。レイノルズ氏は計約6500万円をブッシュ氏のために集金してきたのだ。当選後、同氏はスイス大使に任命された。スイスとは何の関係もないにもかかわらずだ。ワシントンではよく見られる人事である。

クリントン氏のバックにジョージ・ソロス氏

 現在、民主党のクリントン氏に最も多額の献金をしているのは投資家のジョージ・ソロス氏だ。700万ドル(約8億円)を出している。資産約3兆1500億円を保有する伝説的な投資家である。ハンガリー生まれのユダヤ系米国人で、クリントン家と知己で、オバマ政権につづいて民主党政権が継続することを望んでいる。

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ヒラリー氏に最も多額の献金をしているのは、この人物だ(写真:Imaginechina/アフロ)

 さらにクリントン氏のところには、エンターテインメント業界のチェリル・セイバン氏、金融業界のハーバート・サンドラー氏、IT企業パロマ・パートナーズ社のドナルド・サスマン氏がそれぞれ250万ドル(約2億8500万円)を献金している。

 前述したように、サンダース氏はスーパーPACからの献金を一切受け取っていない。それでも110億円もの選挙資金を集めているのは、1人平均27ドル(約3000円)と言われる小口献金を多数の有権者から集めている証拠だ。

莫大なカネが非難広告に流れる

 それでは、候補たちは何に多額のカネを使うのか。

 米国には「選挙業界」と言われる産業が存在する。大統領選だけでなく、連邦上下両院議員選挙、州知事選、さらには州議会や市議会の選挙など機会が多いため、選挙請負人が職業としてなりたつのだ。

 その業務は多岐にわたる。政策立案、立法サービス、データベース管理、DM発送、選挙区対策、献金コンサルティング、広告、演説訓練、世論調査、オンライン情報サービス、ウェブサイト構築、メディア対策、対抗馬のリサーチ、人工衛星サービス、ビデオ制作などだ。

 さらに全米50州に置かれる選挙事務所の運営費も必要だ。プロのスタッフを何人も雇う必要がある。電話勧誘のための通信費や郵便料金などもかさむ。

 それ以上にもっとも予算を割くのが、テレビとラジオに流す政治CMである。連邦選挙管理委員会はCMの本数や予算、さらに内容に制限を加えていないため、ライバル候補への非難広告を1つのテレビ局で1日100本流しても構わない。

 多数のネガティブ広告がテレビやラジオから流れると、サブリミナル効果によって相手候補のイメージが落ちる。非難された候補はCMを打ち返さないと、支持率が確実に下がる。打たれたら必ず非難広告を打ち返さなくてはいけない。

 例えばサンダース氏がニューハンプシャー州でクリントン氏に圧勝した理由の1つに、クリントン陣営の約3倍に上る金額をテレビCMに費やしたことが挙げられる。インターネット時代でありながら、テレビは依然としてメディア戦略の主軸なのだ。

 トランプ氏が実際にポケットマネーをどれほど使用しているかはわからない。けれども、昨年から勢いが継続していることと支持率の高さを考慮すると、驚くほどの金額を自己資金でまなかっていても不思議ではない。

 たぶん、大統領というポジションが手に入るのであれば、トランプ氏は数百億円の金額でも何の迷いもなく捻出するだろう。

3/1日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「中国大使に脅された」とうろたえる韓国人 「THAADへの報復」に戦々恐々』について

何を今更と言う感じがします。二股外交すれば、それぞれから信頼を失うのは必定です。米中それぞれから脅され右往左往をこれからも続けるでしょう。日清戦争前に3ケ国に擦り寄ったのと同じ構図です。愚かな民族です。周りは「蝙蝠」としか見てないのに、自分は強国を手玉に取れる力があると思いこむのですから。妄想の世界の住人です。こんな民族と付き合うと碌なことにはなりません。「非韓三原則」を貫くべきです。

ハリス米太平洋軍司令官もTHAADの韓国配備について「韓米はTHAADを配備することに合意しておらず、我々が合意したのは(THAAD配備を)協議すること。協議がどう進行するか見なければいけない」と答えています。韓国を揺さぶるカードとして使っている面もあるのでは。軍事は米国、経済は中国なんて都合の良い色分けは出来ません。米軍撤退or戦時作戦統制権返還をしただけで韓国は北の冒険主義の脅威に晒されます。ソウルは火の海になるでしょう。本記事の最後にありますように米国も韓国を見限る可能性もありますので。何せ反米でありながら、韓国を脱出して、米国に行きたがる国民性ですから。2/2サーチナ記事「韓国は生き地獄だ・・・若い世代から「将来などない」と悲観の声」より。http://biz.searchina.net/id/1601497?page=1

忘恩の徒に相応しい発想です。日本にいる韓国人も同じ発想をしていると思った方が良い。

日本は韓国から通貨スワップ要請があっても応じないことです。最低「慰安婦は朝日新聞に騙されて主張してきたもの。事実と違い謝罪するとともに世界の慰安婦像は政府の力で完全撤去します」と約束・公言させてからです。また平昌オリンピックも開催できるかどうか怪しい雲行きです。この期に及んで韓国を助けようとする政治家は金かハニーで転んでいると見た方が良い。勿論衆参同時選の時には投票しないことです。関わらないことが日本にとって正しい道です。

記事

2016年3月1日(火)

Qiu Guohong

「関係悪化」発言で韓国人から一斉に反発された中国の邱国洪・駐韓大使(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

前回から読む)

 イジメの舞台は経済か、軍事か――。韓国が「中国の報復」に身をすくめる。米軍の迎撃ミサイル基地建設を認めたことで、中国から激しく脅されるからだ。

中国大使に反発した韓国人

—駐韓中国大使の発言に韓国人が強く反発した、と聞きました。

鈴置:2月23日、中国の邱国洪・駐韓大使が地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍への配備に関連、以下のように述べました。

 最大野党である「共に民主党」の金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員会代表と会談した際の発言です。

 聯合ニュースの「 中国がTHAAD反対に続き、関係棄損も『警告』……韓中関係に破裂音」(2月23日、韓国語版)を翻訳します。

  • 中国の安全保障上の利益が毀損されれば、両国(中韓)関係は避けようもなく被害を受けるだろう。
  • 両国関係を今日にように発展させるには多くの努力があったが、こうした努力も1つの問題により、一瞬にして破壊されかねない。(関係の)修復は容易ではなく、長い時間がかかるだろう。

また、中国から属国扱い

—韓国人はこの発言のどこが不満なのですか?

鈴置:モノ言いが気に入らなかったのでしょう。属国扱いされたと韓国人は考えたのです。

 東亜日報の社説「米中に朝鮮半島の運命を任せながら、政界は対北戦争か」(2月24日、韓国語版)が明確に書いています。

  • THAAD配備の決定は韓国の主権によるにもかかわらず、中国が明白な内政干渉に出たということは、韓国を過去の朝貢国のように見なす傲慢さの表れである。

—何と、「朝貢国」ですか……。

鈴置:露骨な「属国扱い」は数年前から始まっていました。韓国人は大いにフラストレーションを溜めていたのです(「ついに『属国に戻れ』と韓国に命じた中国」参照)。

ベトナム人なら……

—中国人が「韓中関係を破壊する」と言うのなら「どうぞ、ご自由に」と言い返せばいいのでは?

鈴置:ベトナム人――中国に立ち向かう覚悟を固めたベトナム人なら、そうするでしょう。あるいは中国大使の発言を完全に無視するかもしれません。

 でも、韓国人には「関係が悪化しても、こちらは一向に困らない」などとやり返すなんて、絶対にできません。中国を極度に恐れているからです。少し脅されたぐらいでうろたえたら、足元を見られてしまうのですがね。

 朝鮮日報の社説「韓国の安保主権を無視し、大使まで『THAADへの脅迫』に出た中国」(2月24日、韓国語版)をお読み下さい。

  • 大使が外交・安保の懸案に関し自国の立場を明らかにすることはできる。しかし、邱大使の発言は政府の包括的な憂慮の水準を超えて、韓中関係が破綻し得るとの直接的な脅迫をしたということだ。
  • 自分の主張が貫徹できなければ、軍事・経済的な報復に出るかのごとくの態度をとったのだ。

 ご覧の通り、中国に反発はするものの「中国と関係を断つ勇気」は韓国人にはないのです。

—『嫌われる勇気』みたいな話ですね。

鈴置:ええ、韓国人の心の奥底には「中国から可愛がってほしいから、拗ねて見せる」部分もあるのです。

 「私はあなたといい関係を作りたいと願っている。それなのに脅してくるなんて、ひどい!」といった感じです。

 対等にやり合う相手に対し、そんな泣き言は言わないものです。韓国側に「属国意識」が残っているからこその甘えた反発です。ベトナムが中国に対する時の緊張感からはほど遠い。

元カノは要求を聞くべきだ

—この中韓の微妙な関係に、北朝鮮や米国はどう絡むのでしょうか。

鈴置:THAADは国の安全を増すための雨戸のようなものです。最近、街を北朝鮮という怪しい人が徘徊するので、米国は雨戸を韓国――婚約中の女の子の家に取り付けようとした。

 すると韓国のもう1人のボーイフレンドである中国が「雨戸は俺に対する嫌がらせだ。もう会ってやらない」と言い出した。

 それにショックを受けた女の子が「あなたこそ、一番大事にしてきたじゃないの。だから、そんな怖いこと言わないで」と泣き出した――というのが今の構図です。

—米国という婚約者がいるのに韓国という国は……。

鈴置:朴槿恵(パク・クンヘ)政権は米国と同盟を結びながら、米中対立案件ではほぼ、中国の言うことを聞くようになっていました。奇妙な三角関係が生まれていたのです(「米中星取表」参照)。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2016年2月29日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 韓国は米国からの要請を拒否していたが、2016年2月7日に「協議を開始」と受け入れた
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の 南シナ海埋め立て 米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝 70周年記念式典 米国の反対にも関わらず韓国は参加

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 ただ、それも分からないでもない。韓国からすれば、中国は米国とは比べものにならないほど長い間付き合ってきた元カレなのです。

 朝鮮半島の歴代王朝は、千年以上も中国大陸の王朝に朝貢してきたのですから。もちろん中国も「元カノだった韓国は、自分の要求を聞くのが当然だ」と考えています。

怪しげな「大使には抗議」

 いずれにせよ今回、韓国は中国の仕掛けたワナにきれいにはまってしまいました。大使発言に感情的に反発することで、中国の力に怯えている――つまり、中国に全力で抗する覚悟がないことを、問わず語りに告白してしまったのです。

 中国は「脅しの効果は大きかった」とほくそ笑んで、必要になればまた、この手を使うでしょう。

 メディアが大騒ぎしたものですから、韓国政府も対応せざるを得なくなりました。青瓦台(大統領府)のスポークスマンは2月24日「THAAD配備は自衛権の措置」と邱国洪大使に反駁しました。

 同じ日に「外交部も中国大使に抗議した」と韓国メディアが一斉に書きました。例えば、聯合ニュースの「中国大使呼び抗議『THAAD配備なら関係破壊』発言で=韓国」(2月24日、日本語版)は見出しと前文でそう報じています。もっともこの記事の本文を読むと、本当に抗議したかは怪しい。以下です。

  • 外交部は「キム・ホンギュン次官補が邱大使を呼び、関連報道内容について議論した」、「邱大使は(金鍾仁非常対策委員会代表との会談の)経緯や実際の発言内容、報道内容の正確性などについて誠意を持って説明した」と伝えた。
  • ただ、邱大使に「抗議した」との表現は使わなかった。邱大使が遺憾の意を表明したかどうかについても明らかにしなかった。

電池で報復?

—なぜ、抗議したことにしてしまったのでしょうか。

鈴置:そうでもしておかないと国民の腹の虫がおさまらなかったからでしょう。韓国社会でメディアは事実を伝えることよりも、人々の情緒を――喜怒哀楽をかき立てる役割を担っています。

—それにしてもこの、国を挙げての反発ぶりは異様です。

鈴置:「中国が報復してくる」と韓国人が疑心暗鬼に陥っていたこともあります。そこに大使の「関係破壊」発言。「やっぱり、報復されるのだ!」との恐怖が広がったのです。自縄自縛です。

 韓国紙が初めて「THAADの報復」と具体例を挙げて書いたのは「電池」分野でした。韓国経済新聞が1月31日に以下のように報じました。

  • 中国政府が、リン酸鉄リチウム(LFP)方式のバッテリーを採用したバスにだけ補助金を出すことを決めた。
  • これにより、別方式のバッテリーを生産する工場を中国に建設したばかりのLG化学とサムスンSDIは大損害を受ける。
  • 解決は容易ではなさそうだ。一部では中国側の行動が韓国のTHAADの配備の動きが影響した可能性を憂慮している。

 中央日報の日本語版サイトに「<韓国の牽制に出た中国>中国、WTO・FTA規定を無視」(2月1日)の見出しで翻訳されています。

「朴槿恵の失態」暴く左派系紙

 1月6日の北朝鮮の4回目の核実験を受けて、朴槿恵大統領は1月13日に国民向け談話を発表しました。その中で、THAAD配備に関し「安保・国益に基づき検討する」と語りました。

 中国から「配備を絶対に認めるな」と命じられていたのに、韓国はここで配備容認の方向に転じたのです。

 「電池事件」はその直後に起きたので、韓国政府はTHAADとくっつけて記者に説明したのでしょう。ただ、本当に関係するのかは分かりません。韓国側の思い過ごしの可能性もあります。

 2月7日午前、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射しました。その5時間後に韓国国防部が記者会見して「THAADの在韓米軍への配備に関し、韓米両国は公式協議に入る」と発表しました。大統領の「検討」からさらに一歩、踏み込んだのです。

 すると、中国外交部は直ちに駐中韓国大使を呼び「THAAD配備容認」に抗議しました(「 『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」参照)。

 これ以降「中国がこうして報復して来るはずだ」との予測記事が韓国紙に載るようになりました。左派系紙の記事からは「朴槿恵政権の外交上の失態」を強調する意図も感じられます。

中国系資金が逃げ出す

 ハンギョレは「中国が貿易と金融の両面で報復して来るだろう」と書きました。「高まるコリアリスク……安保危機が経済にまで波及か」(2月18日、日本語版)です。

  • 専門家たちはTHAAD配備が現実となった場合、中国が貿易報復に出る可能性が高いと予想している。実際に中国は、2010年に中国が反体制派に分類した劉暁波氏にノーベル平和賞を与えたノルウェーからのサーモンの輸入を、2012年に尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日本との領土紛争が起きた際には希土類の輸出を、それぞれ中断した。
  • 昨年末から国内株式市場に投資された中国系資金の離脱が急激に進んでいる。金融監督院の資料によると、中国系資金の国内株式市場からの離脱量(売り越しベース)は昨年11月に172億ウォン(約15億9500万円)から12月には5885億ウォン(約546億5500万円)に増え、今年1月にも4762億ウォン(約441億8500万円)に達した。
  • 中国の経済不安による資金移動の性格が強い。このような状況で、最近の韓中の対立と地政学的リスク要因まで反映されると、中国系資金の離脱が加速する可能性もあるというのが大方の分析だ。
  • 株式に比べて比較的に安全な資産とされる債券市場で、中国系資金の離脱が本格化した場合、影響ははるかに大きくなる。国債など主要債権の金利が上がり、債務水準が高い家計と企業の財務健全性が脆弱になる恐れがあるからだ。中国系資金の国内債券保有額は17兆4000億ウォン(約1兆6145億円)で、米国(18兆ウォン=1兆6717億7000万円)に続いて2番目に多い。

軍事報復もお忘れなく

—前回の「『通貨危機のデジャヴ』にうなされる韓国」の最後のくだりは韓国が通貨危機に陥った際、中国は嫌がらせできるという話でした。

鈴置:いざという時に、中韓通貨スワップの発動に応じないという手です。でも中国には、それより前に資本を引き上げてしまい危機を誘発する手もある、というのがハンギョレの指摘です。

 なお、中韓関係が悪化する前から、中国が韓国にスワップを発動できるかに疑問が出ていました。今や、中国自身が人民元の防衛に手いっぱいだからです(「『中国の尻馬』にしがみつく韓国」参照)。

 通貨危機に陥った韓国が中国にスワップを発動してもらい、人民元を借りるとします。仮に総枠の半分としても、韓国は中国から借りた280億ドル相当の人民元を、一挙にドルに換えることになるわけです。これを引き金に人民元が暴落する可能性があります。

—韓国紙は「軍事的報復もあり得る」と書いていますね。

鈴置:当初、韓国人はなぜか「経済的報復」ばかりに目を向けていました。すると中国から「軍事面で報復する手もあるのだぞ」と、“注意喚起”が来ました。

 朝鮮日報のインタビュー記事「サードが配備されれば……中国も対応武器を東北地域に配備する」(2月18日、韓国語版)で成曉河・中国人民大学国際関係学院教授はこう語っています。

1時間で日韓のTHAADを破壊

  • (「中国が韓国企業などを対象に報復的な制裁をする可能性は?」との質問に対し)極めて低い。THAAD配備は軍事・安保問題であるだけに、軍事・安保的に対応すべきだ、というのが私の考えだ。
  • (「THAADが配備されたらどうするか?」との質問に)中国・東北地域にTHAADに対応する武器システムを配備するであろう。弾道ミサイルに関連した中国の軍事技術は過去と比べ相当に進歩した。

 環球時報も2月16、17日の連日にわたって、東北地方に韓国を狙った弾道ミサイルを大量に配備する、と書いています。この新聞は人民日報の姉妹紙で、中国共産党の対外威嚇用メディアです。

 英語版のGlobal Timesでも読めます。記事はそれぞれ「Beijing, Seoul must keep clear mind」(2月16日)と「China must prepare for worst in Korean peninsula」(2月17日)です。

 さらに2月21日、中国のネットメディアは一斉に「韓国と日本のTHAADは中国軍の空爆により1時間もあれば破壊できる、と解放軍報が報じた」と流しました。「中国瞭望」(中国語)の記事などで読めます。

「反中」できる国力なし

—「空爆」ですか! ここまで言われたら、韓国は中国にそっぽを向きませんか?

鈴置:韓国人が中国への反感を高めたのは確かです。SNS(交流サイト)や新聞のネット版への読者の書き込み欄は、中国に対する罵倒で満ち溢れています。

 ただ、反中感情が反中的行動につながるとは限りません。反中感情の根には恐中感情があります。中国を恐れるがゆえに、中国にすり寄っていく可能性も大いにあるのです。

 韓国人は好き嫌いで国の針路を決められません。それを可能にするだけの国力と、地政学的位置を持たないからです。中国が大嫌いだろうと、中国には従わなければならぬことが多いのです。

 日本人に「我々は中国が嫌いだ。だから離米従中なんてあり得ない」と言ってくる韓国人が多い。だが、それを鵜呑みにしてはなりません。彼らは、希望を語っているに過ぎないのです。

深まった恐中感情

—邱国洪大使は外交官として、韓国人をあれだけ怒らせていいのかな、と思いながら見ていました。

鈴置:同じ質問を多くの日本人から受けました。私は「大使は外交官として実にうまくやった」と答えています。狙い通りに、韓国人が「恐中感情」を深めたからです。

 もちろん、それで韓国人が直ちにTHAAD配備反対に回るとは限りません。しかしこの機会に韓国人により深く植え付けた「恐中感情」が今後、折に触れ効果を発揮するでしょう。

 紳士的に話し合うよりも、理不尽にどやし付けた方が言うことをよく聞く――。韓国人というものを、中国人は見抜いています。隣国として、千年以上も付き合ってきた賜物でしょう。

 それと比べると、日本人の対韓認識など底の浅いものです。譲歩すれば仲良くなれると勝手に思い込んでいるのですから。

 米国人も分かっているとは言えません。韓国人の心の奥底をしばしば見落として失敗します。米国や日本の外交関係者は、邱国洪大使の爪の垢を貰った方がよいかもしれません。

朴槿恵がピエロになる日

—韓国人が中国のマインドコントロールにはまったとしても、北の核の脅威を目前にした今現在は、米国を頼りにせざるを得ないのでは?

鈴置:それはそうです。ただ、対北朝鮮制裁案を米中が水面下で煮詰める過程で、韓国人は米国に対する不信感を抱き始めました。

 米国の要求通りにTHAAD配備を受け入れた。その結果、中国から激しく脅され、関係も急速に悪化した。というのに、米国はTHAADを中国との交渉カードとして使っているようだ。強硬な制裁案を中国にのませるために、THAAD配備計画を引っ込めるかもしれない――と韓国人は疑い始めたのです。

 もしそうなれば、突然に姿勢を転じ「THAAD配備は防衛に必須」と国民に訴えた朴槿恵政権は、梯子を外されてしまいます。ピエロになってしまうのです。

—朴槿恵政権は露骨な「離米従中」路線を進めてきました。これはどうなるのでしょうか。

鈴置:確かに、米国の強力な圧力と北朝鮮の核・ミサイル実験により「離米従中」を続けるのは難しくなっています。でも、まだ分からない。韓国が米国側の国に戻ると判断するのは早いのです。

 韓国でまた、反米感情が燃え上がるかもしれない。一方、米国もTHAADのみならず韓国という国自体をカード化し、中国との取引に使う――中国に売り飛ばすかもしれないのです。米国にも、韓国を見限ったフシが見られますしね。

(次回に続く)

2/29日経電子版 Financial Times『中国不動産市場、「摩天楼の呪い」にかかる恐れ』について

中国ではビル建設で資金繰りに窮すると、そのまま工事中断し、また金ができると工事再開というプロセスが普通です。小生が1997年~2005年にいたときも手付かずのビルは沢山あり、かつ完成したビルでも灯りがついていないマンションが多くありました。これは投資用で買って住んでない部分もあったでしょうけど、買われてなかったのではと言う感じでした。物件が高過ぎて賄賂を取らない限りは買えませんでしたから。

工事中断して、再開するには資金の手当てをしなければなりません。銀行が融資するかと言うと、理財商品に手を出したり、不動産融資が焦げ付いたりして新たに融資できる体力があるとは思えません。また既存の物件を売却してとなると投げ売りに近くなり、益々不動産市況を悪化させます。デフォルトによる倒産しかないのでは。

中国の建設ブームは役人、取引業者等に賄賂が入るため煽った方がトクになるからです。需要については無視します。生産過剰も同じ構図。造れば造るほど納入業者から賄賂が入るためです。誰も買えなければ叩き売らないといけなくなります。当面資金繰りは出来るでしょうが、赤字で売れば損失が累積していき、やがて倒産となるでしょう。

周小川人民銀行総裁はG20で次のように発言したとのこと。2/29宮崎正弘メルマガより。

「第一に「通貨安戦争を中国は意図していない」と発言した。

人民元の若干の切り下げは輸出好調の筈だが、貿易は減少傾向にある。16年一月の貿易は前年比マイナス14%だったが、とくに言及はなかった。

 第二に「人民元は中国が恣意的にレートを決められるものではなく、重層的にドルにペッグしている」とし、依然として世界市場はドルがリードしているとした。

 第三に債務危機を指摘されて「一部には対GDP比250%(FTは290%と推定しているが)と言われているが、それなら債務リスクをはかる基準はなになのか」と周小川は開き直る。

 第四は個人ローンの危機だが、全体の25%であり、深甚なリスクとは思えない。全住宅関連の債務は全体の40-5%であると数字を挙げるのみに終始した。

 第五に資金流失のリスクを批判されたが、周は「問題は国内景気浮揚である。銀行間の調整を日夜行っており、資金の海外流失は些細な問題だ」と問題をすり替えた。

 第六に金融システムの改善、改変だが、これは調整中であり、2015年に中国が遭遇した通貨下落、株暴落などの経験から「今後も調整が必要という認識はあり、現在研究中だ」とした。裏を返せば調整は進んでいないということである。

 第七にサプライサイド政策を続行し、市場に観測されるボラタリティ(乱高下)は「心配におよばない」と裏付けのない、強硬発言しかなかった。

楼継偉財務相も、記者会見では「競争力のために為替レートを目標にはしない」「中国版プラザ合意の成立説はファンタジー」などと事前にも発言していたが、「中国はなお、財政出動の余地がある」としたことに注目しておきたい。」と。

中国人ですから韓国人と同じく「息を吐くように嘘をつく」のが得意というか、これが当たり前の民族です。鉄面皮としか言いようがない。困ると論理のすり替えをするのは世界的に見て左翼の得意とするところ。慰安婦だって当初強制性を強調していたのが、旗色が悪くなると女性の人権にすり替えました。左翼の代表、朝日新聞の得意な所です。こんなイエローペーパーorプロパガンダ新聞(人民日報日本版)をクオリテイペーパーと勘違いして金を払ってまで読む人の気が知れません。

記事

中国中央部にある毛沢東の生地に向かう高速道路の両側には完成しても入居者のいない高層マンション群が林立する。湖南省長沙市では、世界一高い838メートルの高層ビルとして計画されたスカイシティの建設予定地が見られる。ほんの3年足らず前、起工式を行ったが、今、そこは即席の魚の養殖場となっている。

Building in Nanjing

江蘇省南京に立ち並ぶ新築の住居用高層ビル=ロイター

 経済学者はかねて「摩天楼の呪い」と呼ばれる学説について議論してきた。世界最高の高層ビル建設と、ほぼ同時期の金融危機との間には不思議な相関関係があるとする説だ。

 今日、世界経済で最も重要でかつ最大のリスク要因は、中国の不動産市場だと指摘するアナリストがいる。2011~12年の2年間で中国が生産したセメントの量は米国の20世紀全体の生産量を上回ると聞けば納得できるだろう。

 近年の中国の建設ブームは、地方の役人が過熱させてきた。土地の販売額のかなりの部分が彼らの懐に入るからだ。中国経済は投資への依存率が異常に高い。国内総生産(GDP)の半分近くが投資支出だ。

 15年には中国経済が減速し、国内上位70都市の平均住宅価格が下落したというのに、不動産投資は1%増加した。中国の成長率は低下し、世界の商品価格が下落している中で、中国の不動産部門はいまだ本気で調整に着手すらしていないということだ。不動産投資は遠からず確実に減少に転じる。そうなれば、中国の金融システムにも重大な影響が及ぶ。

 中国の複数の都市の役人の話を聞く限り、彼らが考える解決策とは、新しい地区で開発を始め、「質の高い」不動産開発業者に格安で土地を提供するというやり方だ。土地の購入費が安ければ、その物件は格安で販売できる。

 これにより新たな資金の流れが生じ、土地からの収入が復活し、GDPが増大すると地方の役人はまだ思っている。しかしこうした発想が今もまかり通っているとすれば、冒頭のスカイシティの起工式の時点で中国には「摩天楼の呪い」が訪れていたのかもしれない。

By Jamil Anderlini

(2016年2月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

2/26ZAKZAK 『米軍 ステルス駆逐艦急派 中国封じ 攻撃型原潜も 東アジアで空母2隻展開へ』『対中包囲網を推進 日豪印の3カ国次官が協議』について

米国の対応は余りに遅すぎです。米国民が2008年にオバマを選んだ時からこういう展開になることは運命づけられていたのでしょう。オバマは第二のチエンバレンとして名を残すことになるかもしれません。チエンバレンがヒットラーへの宥和政策を止めていれば第二次大戦は起こらず、英国の覇権国からの転落もなかったかも知れません。それを考え合わせますと、米国の覇権国としての地位は安泰かどうか。中東ではサウジVSイラン、トルコVSロシアが睨みあっています。第三次世界大戦が起きないようにしなければいけないと思います。やはり、経済制裁、禁輸政策の発動が一番ダメージを与えられるのでは。それでも日本はABCD包囲網で戦争に突入しましたが。中国に原油輸出を禁止すれば良いのですが、そうすれば兵器を動かせなくなりますので。でも産油国は財政状況が苦しいのでそう呼びかけても乗って来ないでしょう。

G20で世界が協調して問題解決に臨むことはできませんでした。口先だけです。「政策総動員」なんてスローガンだけです。そもそも主催国の中国が一番大きな問題(3経済主体での25兆$の債務、過剰投資、過剰在庫)を抱えていますし、何より隠蔽体質、数字の改竄・捏造は当り前の国ですので。日本は中・韓から離れておくことが一番です。通貨スワップなどもっての他。

ASEAN外相会議では「南シナ海「深刻な懸念」で一致」しました。一歩前進です。でも、中国は金の力を使って分断してこようとするでしょう。早く中国企業を連鎖デフォルトさせないと。

1/28日経「南シナ海「深刻な懸念」で一致 ASEAN外相会議閉幕

【ビエンチャン=京塚環】ラオスの首都ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議は27日、中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題に対して全会一致で「深刻な懸念」を表明して閉幕した。従来より踏み込んだ表現で中国をけん制した。法的拘束力を持つ南シナ海での「行動規範」づくりに向け、中国と早期に協議する方針でも一致した。

 同日会見したASEAN議長国ラオスのトンルン副首相兼外相は「我々は協力して南シナ海を平和な場所に戻す努力をしたい」と述べ、南シナ海問題の解決を積極的に進める方針を示した。さらに「(南シナ海で武力を行使しないとした米ASEAN首脳会議の)サニーランド宣言を尊重する」として米国との関係を重視する姿勢もみせた。

 採択した議長声明では南シナ海での「航行と航空の自由の重要性」を明記したほか「一部の国が埋め立てや行き過ぎた行動など緊張を高める行動に懸念を表明した」として、中国へのけん制を強める内容となった。

 昨年11月にマレーシアのクアラルンプールで開いたASEAN首脳会議の共同声明では「一部の国による南シナ海問題の深刻な懸念の表明」との表現にとどめていた。

 会議ではベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相が「ミサイル配備や軍用機の展開は地域の安全と安定の脅威だ」と強い調子で主張しフィリピンが同調。マレーシアのアニファ外相も「早期の行動規範策定を進めるべきだ」と表明した。

 ASEANが中国への懸念で一致した背景には、南シナ海の海洋進出で先鋭化する中国の動きがある。西沙(英語名パラセル)諸島への地対空ミサイル配備などが今月に入って相次ぎ明らかになった。一方で米太平洋軍のハリス司令官が南シナ海に艦船を派遣する「航行の自由」作戦の強化を示唆するなど米中の応酬は激しさを増している。

 ただ、今後もASEANが結束して強い対中姿勢を打ち出せるかは不透明だ。ラオスやカンボジアは中国から多額の経済援助を受け、中国に配慮してきた。今後中国がこれら親中派に再び圧力をかける可能性もある。

 今回の外相会議では15年末に発足したASEAN経済共同体(AEC)の統合深化に向けた工程表についても話し合った。今後、中国との関係をめぐって再びASEAN内に綻びが生じれば、域内の統合を深める作業にも影響が出かねない。」とありました。

少し考えれば中国がタダで支援することがないことが分かるはずなのに目先の利益を追うからです。やがては中国の属国になるのが見えているのに。日豪印の外務次官会談は中国の封じ込めには良いでしょう。豪は裏切らないように。ターンブルは親中派と言われていますので。

記事

stealth destroyer

米国が、中国への不信感を強めている。国際社会の批判を無視して、南シナ海での軍事的覇権を着々と進めているからだ。任期1年を切ったオバマ米大統領を軽く見ているのか、人工島に地対空ミサイルやレーダーだけでなく、戦闘機や爆撃機まで配備した。米軍中枢や軍関係者の間では、中国を封じ込めるため、攻撃型原子力潜水艦やステルス駆逐艦の前方展開や、原子力空母を常時2隻、東アジアで展開する案が浮上している。また、南シナ海に「対中軍事要塞」を構築すべきだという声もある。  「(中国は)東アジアの覇権を求めている」「(南シナ海の人工島を)前方展開基地に変容させようとしている」「緊張を飛躍的に高めている」  ハリス米太平洋軍司令官は23日、上院軍事委員会の公聴会で、中国の南シナ海における軍事的膨張について、このように証言した。世界の最重要シーレーン(海上交通路)を脅かす行為への怒りをあらわにした。  中国の暴走が加速している。今月に入り、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島にあるウッディー(永興)島に、地対空ミサイル8基を配備した。同海のスプラトリー(同・南沙)諸島にあるクアテロン(華陽)礁などには、レーダー施設が建設されたことが確認された。  さらに、ウッディー島に、旧ソ連のスホイ(Su)27を国産化したJ(殲)11戦闘機と、JH(殲轟)7戦闘爆撃機が配備されたことを、米情報機関が確認した。Su27は圧倒的な機動性に加え、攻撃力や航続距離でも高い能力を誇る、最強戦闘機である。  前出のハリス氏は24日、下院軍事委員会の公聴会で、突出する中国を抑止するため、攻撃型原子力潜水艦やステルス駆逐艦「ズムワルト」の前方展開を視野に入れていると表明した。

 ズムワルトは、全長180メートル、全幅24・6メートル、排水量1万4798トン。最大速度30・3ノット。乗員106人。「タンブルホーム型」という、喫水線から上が内側に大きく傾き、平面で構成された形状が特徴だ。ステルス性が高いだけでなく、ESSM対空ミサイルや、トマホーク巡航ミサイルも装備し、攻撃力も高い。

 だが、習近平国家主席率いる中国はひるむ様子はない。

 軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「中国は『オバマ政権は弱腰で、大したことはできない』と見透かしている。どんどん増長している」といい、続けた。

 「岩礁の埋め立てを始めた瞬間から、中国は南シナ海を自国の海にするために、人工島の軍事基地化を狙っていた。世界最強の軍事力を持つ米国は早くから予想していたはずだが、オバマ政権は適切な対応ができなかった。『航行の自由』作戦も、中国へのけん制というよりは、東南アジア諸国向けのアピールの色彩が強かった」

 これを裏付けるのか、ワシントンで23日に行われた米中外相会談では、中国の強硬姿勢が目立った。

 ケリー米国務長官が、南シナ海の人工島の軍事基地化を厳しく非難したところ、中国の王毅外相は「最も重要なことは(中国の)レーダーなどではなく、(米軍の)戦略爆撃機や駆逐艦を含む最新兵器が日々、南シナ海に出現していることだ」と、自国の暴挙は棚に上げて、平然と詭弁(きべん)を弄したのだ。

 こうしたなか、米軍関係者の間では、空母機動部隊を常時2つ、東アジアで展開させることが議論の対象になっている。

現在、核実験や弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対応するため、米原子力空母「ジョン・C・ステニス」と、横須賀基地を母港とする同空母「ロナルド・レーガン」が西太平洋地域に展開している。これを中国の軍事的膨張を阻止するため、常時展開させるというプランだ。

 ただ、米空母機動部隊といえども、中国が南シナ海の人工島に構築した軍事基地を撤去させることは簡単ではない。どうすればいいのか。

 航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将(軍事評論家)は「米ソ冷戦時代にヒントがある。1962年のキューバ危機や、72年と79年の戦略兵器制限交渉(SALT-I、SALT-II)では、ソ連の恫喝に、米国は『核戦争も辞さず』という断固たる姿勢で対応し、ソ連を譲歩させた。今回も、中国の軍事基地近くに、米国とフィリピンなどが軍事基地や軍事要塞を建設して、中国を慌てさせ、追い込めばいい。米国にも同様の知恵はあるはずだ。オバマ大統領には無理だろうから、次期大統領が腹を据えて取り組むべきだ」と語った。

 南シナ海は、日本の輸入原油の8割が通るシーレーンであり、ここを中国に支配されることは、日本の国益に直結する。日本の役割はないのか。

 前出の井上氏は「安倍晋三首相は、中国に南シナ海やインド洋を支配される危険性を理解している。だからこそ、第2次政権発足直後に、日本とハワイ(米国)、オーストラリア、インドの4カ所をひし形に結ぶ『安全保障ダイヤモンド構想』を提唱し、各国との関係強化に動いた。昨年、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を改定し、安全保障法制も成立させた。日本は当事者意識を持って、南シナ海の『航行の自由』に取り組むべきだ。民主党などの野党5党は先日、安保法廃止法案を衆院に提出したが、中国を喜ばせるだけ。まったく安全保障を理解していない。彼らには外交も安保も任せられない」と語っている。

記事

日本とオーストラリア、インド3カ国の外務次官協議が26日午前、東京都内の飯倉公館で開催。アジア太平洋やインド洋での強引な軍事的覇権を強める中国に対し、日豪印と米国の4カ国が結束して対峙する、安倍晋三首相提唱の「安全保障ダイヤモンド構想」の一環といえる。

 協議は昨年6月のインド開催以来で2回目。斎木昭隆外務事務次官、オーストラリアのバーギーズ外務・貿易次官、インドのジャイシャンカル外務次官が出席する。

 こうしたなか、オーストラリア政府は25日、「台頭する中国は地域でさらなる影響力拡大を模索する」という国防白書を発表し、次期潜水艦を現在の2倍となる12隻調達する方針を表明した。建造をめぐっては、日本、ドイツ、フランスが受注を競っており、豪政府は今年中に共同開発相手を選ぶ方針だ。

2/23日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「通貨危機のデジャヴ」にうなされる韓国 新たな火種は「北朝鮮リスク」』について

中国がP5と一緒になって北への制裁を強化しようとしていますが、南シナ海への目くらましでしょう。ハリス米太平洋軍司令長官が、「中国がADIZ(防空識別圏)を南シナ海に設定することに懸念」と言っていますが、中国がそんなことで譲るとは思えません。相手はハリスではなくてオバマですから。アメリカは勇気のない国になり下がりました。日本を第二次大戦に誘導してまでアジアを機会均等の名のもとに自分のものにしようとした歴史を忘れているようです。

中国国内の瀋陽軍(北朝鮮の支援者)と北京軍の習派との争いがあると予想されますので、習はこれ幸いに瀋陽軍を叩き潰す良い機会と思っている可能性はあります。兎に角利用できるものは何でも利用するのが彼らの特質ですので、今回の米が国連安保理に北の制裁を提案したのは渡りに舟かも。

それより、韓国の変わり身の早いこと。やはり信用ならない民族です。都合が悪くなれば平気で裏切る国です。こんな国を信じて外交すれば亡国となります。明治の英傑たちは皆皮膚感覚で分かっていたはずです。昔と比べて情報の入手が簡単になったのに、今は判断力が鈍らになっています。それも金の為せる業かも。昔はハニーなんて気にしていなかったのに、今やアカ新聞が騒ぎ立て国政と関係ないレベルの所で騒ぎ立て、内閣支持率を下げようとし、国政に影響を与えようとしています。下種の極みであります。でも騙される方が悪い。国民主権を標榜するなら情報強者にならないと。いろんなメデイアから情報を取り、いわゆる権威者の発言ではなく自分の頭で考えないと。小生は8年に及ぶ中国勤務で日本のメデイア、権威のいい加減さについて実感しましたし、中国との訴訟等も4回経験して彼らの阿漕なことは良く身に沁みました。けど、勝てなかったわけではありません。やはり、ロジックと熱意の差でしょう。金で解決するのは最悪です。

韓国の通貨スワップで、中国がTHHADの件で人民元を融通するかどうか分かりませんし、そもそも人民元何て$と違い信用がありませんから、元の支払いでは嫌がる国や企業が多いと思います。日本は「非韓3原則」を貫き、関わらないことです。与党+その他で衆参同日選挙をして2/3を確保しようと考えているのであれば①中韓に妥協せず②消費税凍結は必須です。

記事

前回から読む)

 韓国が通貨危機の再来に怯える。北朝鮮の核実験の後、資本がどんどん海外に流れ出しているからだ。

「欧州危機」以来のウォン安

鈴置:韓国の通貨当局が慌てています。ウォンが売られ、2010年の欧州債務危機当時の水準まで安くなったからです。

won VS $

 ウォン安に転じたのは2015年10月でした。まず、米国の利上げ観測により、資本流出が始まったのです。

 今年に入り中国経済への懸念や原油安がそれに追いうちをかけ、2月以降は「北朝鮮リスク」も加わってウォンは一気に下げ足を速めました。

 2月下旬には、欧州債務危機当時の最安値である1ドル=1258.95ウォン(2010年5月26日)の水準に迫りました。年初と比べても、対ドルで6%ほどの下げです。

 通貨当局は急激なウォン売りを牽制するため、口先介入に乗り出しました。2月10日には韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が「市場の変動性が過度に拡大した場合、政府と協力して安定化措置を積極的にとる」と述べました。

 いざという時は市場介入するよ、と宣言したのです。韓国は米国から通貨を低めに誘導し、輸出を伸ばす為替操作国と疑われてきました。それだけに、疑惑を増す「口先介入」は自制してきたのですが、堪えきれなくなって解禁したのです。

外貨準備は十分か

 同総裁は2月16日にも「マクロ経済リスク以外に、金融安定リスクも考慮しなければならない時期だ」と語り、ウォン相場に配慮する姿勢を見せました。政策金利を年率1.5%に据え置くことを決めた金融通貨委員会の後の記者懇談会での発言です。

 そして「対外条件の不確実性が高い状況では政策金利の調整を慎重にする必要がある」と述べました。景気てこ入れのために利下げはしたい。だが、それはウォン売り――資本逃避を引き起こす可能性があるので軽々しくすべきではない、と主張したのです。

 2月18日には柳一鎬(ユ・イルホ)経済副首相兼企画財政部長官が「外国為替市場の状況を注視している。非常に急激な変動があればスムージング・オペレーション(微調整)を行うのが原則だ」と述べました。この発言も市場介入を示唆したものです。

 聯合ニュースの「当局、為替下落に4年5カ月ぶりの『口先介入』……歯止めをかけられるか」(2月19日、韓国語版)が、こうした当局の必死の防戦ぶりを伝えています。

 柳一鎬・経済副首相は2月19日には国会で「現在の外貨準備高は予測可能な国際金融市場の不安に備えられる」と答弁しました。聯合ニュース「韓国経済副首相、外貨準備高は『不足していない』」(2月19日、日本語版)が伝えています。

 通貨危機を引き起こす資本逃避を防げるのか。それをカバーする外貨準備が十分にあるのか――との趣旨の質問が、ついに国会でも出たのです。

株式市場も外国人売り

—韓国は1997年に通貨危機に陥りましたね。

鈴置:そのトラウマが深く韓国人の心に残っています。あの危機で多くの人が職と希望を失いました。その後、2008年と2011年にも資本逃避が起きて韓国人は肝を冷やしました。外貨準備に神経質になるのは当然なのです。

—前回の「『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」の最後のくだりによると、株式市場でも外国人の売りが続いているとのことですが。

鈴置:2015年12月初めから外国人が売って機関投資家が買う、という展開が続いています。外国人の売りは決まって1日に2000億ウォン前後――ざっくり言って2億ドル弱。相場を崩さないよう、少しずつ売り抜けている感じです。

KOSPI

 外国人売りは東京市場でも見られる現象です。ただ「安全への逃避」を目指す投資家は、日本株を売っても円は買います。

 一方、韓国の場合は株もウォンも売ります。世界経済が不安定になると、ウォンは危険な資産に区分されるからです。だから外国人の韓国株売りは、資本逃避の先行指標として注目すべきなのです。

地政学リスクが決定打

—現在のウォン売りの主因は「北朝鮮」なのですか?

鈴置:先ほど引用した「当局、為替下落に4年5カ月ぶりの『口先介入』……歯止めをかけられるか」(2月19日、韓国語版)も「北朝鮮リスクが決定打」と書いています。以下です。

  • 北朝鮮の長距離ミサイル発射と開城工業団地閉鎖などによる地政学リスクの高まりは、不安定なソウル外為市場を一層揺らす決定打となったのだ。

 2015年10月からのウォン売りの主因は米金利上げでした。しかし年明け以降、市場は米連邦準備理事会(FRB)の心を読んで「利上げは当分の間、見送られる」と見なしました。

 原油価格も底入れの気配が出てきました。中国経済への懸念は続くでしょうが、人民元の対ドルレートを見る限り小康状態にあります。結局、2月以降のウォン売りの主犯は「北朝鮮」なのです。

北に年間1億ドル渡してきた

—4回目の核実験は1月6日のことでした。なぜ、今ごろになって市場に影響するのでしょうか。

鈴置:4回目の核実験や2月7日の長距離弾道ミサイル実験そのものは、さほど市場を揺らしませんでした。北朝鮮の挑発に韓国市場は慣れっこになっているからです。

 市場心理を大きく悪化させたのは開城工業団地の稼働中断でした。韓国政府が2月10日に宣言したものです。

 この工業団地は2004年に開設されました。南北を分かつ軍事境界線の北側にあって、韓国企業124社が進出し、約5万4000人の北の労働者が働いています。

 中断の理由は「労賃として支払われる年間約1億ドルが北朝鮮の核開発の資金になっているから」です。韓国政府がこう発表した以上、工業団地の再開はまず無理と見なされました。

顔色変えた韓国記者

—それがなぜ、ウォン売りにつながるのでしょうか。

鈴置:「外貨と対話の窓口を断たれた北朝鮮が暴れ出す」と市場が考えたからです。実は2013年4月から5カ月にわたって、北朝鮮側がこの工業団地の稼働を止めたことがあります。

 私がこのニュースを聞いたのは韓国紙の記者と昼食をとっていた時でした。ニュースに接した瞬間、韓国の記者の顔が異様にこわばったのを、今でもありありと覚えています。

 「下手すると戦争になる」とこの人は考えたのです(「韓国株まで揺さぶり始めた金正恩の核恫喝」参照)。

—ではなぜ、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は返り血を浴びる稼働中断に踏み切ったのでしょうか。

鈴置:韓国は全世界に向かって、北朝鮮の核・ミサイル実験に対する徹底的な制裁を求めています。そんな中、肝心の韓国が北にドルを渡していた、では誰からも相手にされません。

 多くの韓国紙が、米国と日本が韓国に中断を求めたと報じています。厳しい対北制裁を避けようとする中国だって、韓国から批判されれば「開城工業団地経由で北にドルを送っている国に文句を言われる筋合いはない」と言い返すに決まっています。たぶん、そう言っていたでしょう。

3年ぶりの「韓国売り」

—2013年にこの団地が一時閉鎖された時、韓国市場はどうなったのですか?

鈴置:株も為替も大きく下げました(「韓国株まで揺さぶり始めた金正恩の核恫喝」参照)。

 北朝鮮が韓国を威嚇し始めた2013年3月14日以降の3週間で、株式市場での外国人の売り越しは4兆ウォンを超しました。政府の意向を受けたと見られる機関投資家が防戦買いに入りましたが、同年4月5日には年初来安値を付けました。

 為替もウォンレートのグラフを見れば一目瞭然です。2013年3月中旬からウォンは下げに転じています。4月5日は1ドル=1131.80ウォンと7カ月ぶりのウォン安・ドル高で引けました。

 当時、韓国メディアは「韓国売り」を恐れる政府が、世界の格付け会社に代表団を送り「正確な事実」を伝える計画だ、とも報じました。

 核実験などで緊張が高まって市場が荒れても、それは一過性で終わることが多い。ただ、軍事的な緊張が長引くと、さすがにボディーブローのように効く――ことがこの時に判明しました。

 今、市場参加者たちはデジャヴ――既視感に苛まれています。「2013年春」を思い出して「韓国売り」に走っているのです。

左派系紙が叫ぶ「コリアリスク」

—北朝鮮も「敵の市場を荒らす」作戦が有効だと知っているのでしょうね。

鈴置:もちろん分かっています。2013年当時の韓国紙は「市場攻撃」に悲鳴をあげ、なかでも左派系紙は「北との対話」を訴えたのです。

 今回も2月17日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記がミサイルに関し「もっと多く、もっと速く、もっと痛快に撃ち上げろ」と命じたと2月19日、朝鮮中央通信が報じています。

 一義的には北朝鮮の国民の士気を上げるために「もっと多く」と煽ったと思います。が、少なくとも結果的には「韓国売り」要因になります。軍事的な緊張が長引く中、ウォンや韓国株を買おうという人は、あまりいないからです。

 2月19日、韓国の国家情報院が「北が金正恩第1書記の指示で韓国に対するテロを計画中」と発表しました。

 左派系紙のハンギョレは2月20日の社説「コリアリスクの為替影響を警戒すべし」(日本語版)で、この発表も為替相場に悪影響を与えたと韓国政府に警告を発しました。

 「北朝鮮リスク」ではなく「コリアリスク」と呼んで、南北双方に責任があるかのように書いたのが左派系紙らしいのですが。

「体制崩壊」に言及した大統領

—3年前と同じように、韓国の市場は当分荒れるということでしょうか?

鈴置:市場予測は難しいし、安易にすべきでもないと思います。でも、2013年当時以上に「荒れる」要因がそろっているのは事実です。まず、南北の対決が異次元の厳しさを見せていることです。

 朴槿恵大統領は2月16日の国会演説で「工業団地閉鎖」に触れた際、以下のように述べました。聯合ニュースの「朴大統領、対北政策大転換……『北政権変化』体制崩壊まで言及」(2月16日、韓国語版)に添付された動画で発言を視聴できます。

北の政権が核では生存できず、むしろ体制崩壊を早めるだけだということを痛切に悟り、自ら変化するしかない環境を作るために、より強力で実効的な措置をとっていきます。

 北に関し「体制崩壊」という言葉を朴槿恵大統領が使ったのは初めてです。北朝鮮との対決姿勢を明快に打ち出したのです。

 だから、対話と安定の象徴である開城工業団地の再開の可能性も極めて低い。北の体制打倒を目指す一環ですから、北朝鮮が核を放棄しない限り、韓国は再開には踏み切らないでしょう。

 一方、3年前の「工業団地閉鎖」は北朝鮮側によるものでした。発足間もない朴槿恵政権を揺さぶるのが目的です。しかし韓国側が放っておいたので、ドルが欲しい北側が結局は折れて再開しました。

 金正恩第1書記も、朴槿恵大統領に「体制崩壊」とまで言われれば黙ってはいられないでしょう。最低限、次なるミサイル発射や韓国に対するテロ、局地攻撃をするフリでもしなければ格好がつきません。それだけでも十分に韓国市場を揺さぶれますしね。

日本とのスワップは消滅

—ハンギョレ風に言えば、韓国市場を揺らすのには南の政権も協力してくれている、ということになりますね。

鈴置:韓国政府としては国民にテロへの警戒を呼び掛けないわけにもいかない。痛し痒しです。ハンギョレは、政府がテロ説を流すのも陰謀だ、と言いたそうですが。

 2013年当時よりも韓国市場が荒れるであろう理由が、もう1つあります。冒頭で説明したように「北朝鮮リスク」が発生する前から世界経済には「リスク」が山積し、韓国からの資本流出が起き始めていたのです。これが韓国政府にとってつらいところです。

—2013年当時は、韓国は日本との通貨スワップも維持していましたが、今回はありません。

鈴置:その差も大きい。日本とのスワップは2013年春の段階で2本、残っていました。ただ、いずれの期限が来ても韓国は更新しようとしませんでした。結局、2015年2月をもって日韓の2国間スワップは完全に消滅しています。

韓国の通貨スワップ(2016年2月22日現在)

   
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年 10月11日 2017年 10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年 10月13日 2016年 10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年 10月20日 2016年 10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年 2月23日 2017年 2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年 3月6日 2017年 3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年 7月17日  

 

<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)は多国間スワップ。IMF融資とリンクしない場合は30%まで。

資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

 金融面でも中国を頼めるようになったから日本とのスワップは不要、との判断でした。2013年6月に訪中した朴槿恵大統領は中国とのスワップを3年間、延長することで合意しています。

 なお、日本とのスワップ終了により、韓国はドルを借りられる2国間スワップは全て失いました。相手先の通貨で借りるスワップだけが残っています。

 中国から借りられるのは人民元です。韓国の債券はドル建てがほとんどですから、いざという時にこのスワップで直ちに対応できるかは分かりません。

中国とも喧嘩、市場は底なし沼?

—地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備の問題で、韓国は中国を怒らせてしまった。前回の「『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」によれば、人民元建てスワップでさえ、中国が発動してくれるか分からない、とのことでしたね。

鈴置:そこがポイントです。市場も「中韓スワップは機能しないのではないか」と見なし始めました。投資家はそれを織り込んで動きますから、韓国の株も為替も底なし沼に陥る可能性が出てきたのです。

(次回に続く)

2/19日経ビジネスオンライン 長尾賢『100隻の艦艇集め国際観艦式をしたモディの意図』について

日米豪印で中国の軍事膨張を封じ込めなければなりません。中国は西沙諸島に地対空ミサイルを配備しました。米軍の南沙・西沙諸島での「航行の自由」作戦は、国際法上の「無害通航」に当たり、領海12海里内でも軍事や経済活動などをしない場合には通航が認められる権利を行使したものです。腰が引けている話です。公海であれば軍事演習も可能でしょうに、それをせず、領海とかの説明では恰も人工島が中国の領土と認めているようなもの。オバマの宥和政策が中国を増長させ、好き勝手にさせています。来年1月20日の新大統領就任までに、中国は取れるものは取って置こうと思っています。豪印には「そうりゅう」型潜水艦をブラックボックス化して、供与して中国潜水艦に対抗できるようにした方が良いです。また台・比・越にも軍事協力していくべきです。

中国は直接武力に訴えるのではなく、三戦(心理戦・世論戦・法律戦)で勝利することを考えています。敵国の国民に中国の武力の凄さをアピール(空母遼寧を見ればどの程度かは想像できますが、一般国民は朝日新聞に代表されるアカ新聞のプロパガンダに騙されます)したり、国際的に日本の非道徳性(慰安婦・南京虐殺・今「正定事件」をバチカンに訴えている、総て捏造したもの)を訴えたり、中国の国内法で勝手に領土・領海にしたり、国家安全法や反スパイ法を制定して、外国人・外国企業にも適用したりしています。日本もやられ放しでなく、国際司法裁判所に提訴するようなことも考えて対抗していかないと。

記事

 インドが2月4~8日、インド海軍だけでなく50カ国の艦艇や代表が参加する国際観艦式を実施した。2隻の空母を含む約100隻の艦艇と45機の航空機が参加する大パレードだ(公式サイトには写真やビデオがある)。もちろん、日本も招待され、海上幕僚長と護衛艦の両方が参加した。

international fleet review in India

インドが15年ぶりに国際観艦式を主催した(写真:AP/アフロ)

 100隻を集める国際観艦式の挙行は多額の予算と労力を要する。世界最大の海軍である米海軍でも、約300隻の艦艇しか保有していない。比較的大きい海上自衛隊やインド海軍でも約140隻程度だ。そこから100隻を集める。このため、インドが国際観艦式を行うのは2001年以来15年ぶりのことである。

 なぜ今年、再び行ったのか。それは日本の安全保障にどのような影響を与えるのか、本稿で分析する。

海軍の活動を活発化

 昨今、インドは海洋を目指している。それは海軍に対する予算配分の変化を見れば明らかだ。インドの国防費における海軍予算のシェアは、1990年の12%から2015年の16%へと増加している。それも、インドの国防費全体を増やしている上でのことだから、大きな変化だ(図1)。

expenditure of defense in India

図1:インドの国防費推移 出所:Ministry of Defence, Government of India, Annual Reportより作成

海洋に対するインドの考え方の変化は、ナレンドラ・モディ政権下でさらに加速している。モディ首相の下で、インド海軍は世界の40カ国以上を訪問しているのだ(注1)。以前にはない活発な動きだ。訪問先は西から順に欧州、アフリカ、中東、インド洋の島嶼諸国、東南アジア、オーストラリア、日本そして米国と、インドから遠く離れた地域にまで及ぶ(図2)。

 

 

the countries India navy visitted図2:モディ政権になってからインド海軍艦艇が訪問した国々(橙色)

 さらに、2016年に入ってから、インドは空母を外国に派遣するようになった。インドの新しい空母ヴィクラマディティアは、1月にスリランカを、2月にはモルディブを訪問している(関連記事:インドの新しい空母が持つ戦略的意味)。

 インド洋沿岸各国に対して、哨戒艦艇、航空機、レーダーを供与するとともに、要員の訓練も行っている。

 そして、昨年12月にインドの国防相が訪米した際には、中国が飛行場建設を進める南シナ海において、米印両海軍が共同パトロールを行うことについて話し合ったようだ(注2)。実施される可能性は現時点では低い。だが、検討している以上、選択肢の一つになっている。

 インドの国際観艦式は、このような情勢の中で開かれた。海洋の大国であることを世界に示そうという、インドの強い意志が込められているとみてよい。

(注1)長尾賢「活動範囲を拡大するインド海軍:日本にとっての意味」『勃興するインド-日印協力のアジェンダ-』(東京財団)2015年10月7日

(注2)Sanjeev Miglani , “Exclusive: U.S. and India consider joint patrols in South China Sea – U.S. official” (Reutor, 10 Feb 2016)

中国の影に危機感を募らせるインド

 インドがこうした動きを進める背景には何があるのか。やはり中国のインド洋進出が関係しているとみられる。インド海軍の艦艇が訪問した40カ国以上の国々を詳細に見てみると、日本、米国、オーストラリア、東南アジア諸国の大半を訪問しているにもかかわらず、中国を訪問していない。

 実は、モディ政権より前の政権は、インド海軍の艦艇に日本を訪問させる時には中国も訪問させていた。しかし、昨年10月に訪日したインド海軍の艦艇は日本、韓国、フィリピン、ベトナムは訪問したが、それだけでインドに帰ってしまった。

 今回の国際観艦式には中国も招待しているから、ある程度の配慮はしている。だが、前の政権に比べれば、モディ政権は明らかに中国を警戒しており、それがインド海軍の動きに反映されているとみられる。

中国がインド洋で進める3つの展開策

 実際、中国海軍によるインド洋進出は非常に活発化している。中国の活動は大きく3つに分けられる。第1は、インド周辺の国々で進める港湾建設だ。これらの港湾を地図上に描いて結ぶと、インド亜大陸に真珠の首飾りをかけているように見えることから「真珠の首飾り戦略」と呼ばれる。インドは、これらの民生用の港が中国海軍の拠点として使用されることを懸念している。

 2つ目は中国海軍そのもののインド洋展開だ。中国はインドが懸念している通り、インドの周辺国に艦艇を寄港させ始めている。2014年にはスリランカに2度、中国の潜水艦が寄港。2015年にはパキスタンにも中国の潜水艦が寄港した。今年1月末には中国の3隻の軍艦がスリランカを訪問し、そのままバングラデシュも訪問した。中国艦隊がバングラデシュを訪問するのは初めてのことだ。

 こうした動きは、インドの周辺だけでなく、インド洋全域でみられるようになっている。特にソマリア沖の海賊対策に派遣された中国艦隊には、海賊対策のほかに別の目的があるようだ。2014年、中国は海賊対策のために潜水艦を派遣した。潜水艦は海賊対策には不向きだ。海賊対策を口実にして、インド洋に海軍力を展開し、情報収集や訓練にあたっているものとみられる。

 海賊対策に従事する中国の艦隊は当初、補給のためにセイシェルに寄港していた。それが今度は、ジブチに基地を設置する。中国にとって、インド洋沿岸で初めての海軍拠点になりそうだ。

中国がバングラデシュやスリランカにも武器を輸出

 3つ目は武器輸出である。中国はインド周辺国に向けた武器輸出を熱心に進めている。パキスタンに4隻のフリゲート艦を輸出し、さらに8隻の潜水艦を輸出することを決めた。バングラデシュにも、2隻のフリゲート艦を輸出済み。さらに2隻の潜水艦を輸出しようと積極的に動いている。中国とパキスタンが共同開発した戦闘機をスリランカに売却することも決めた。

 インドは、バングラデシュとスリランカに圧力をかけ、これらの計画を撤回させようと試みている。実際スリランカは、中パが共同開発した戦闘機の購入計画を撤回し、代わりに、インドの国産戦闘機の購入を検討中だ(図3)。

China's activity in Indian ocean

図3:インド洋における中国の海洋関連活動

 このようにインド洋における中国の海洋進出は、かなり活発になっている。インドが何もしなければ、その存在感は弱まっていくだろう。インドは、海洋においても大国であるとの強い意志を示し、中国の影響力を抑えたい。そのために国際観艦式を行い、空母を派遣して力を示すと同時に、武器や訓練を供与し、寛容なリーダーとして認められるよう努力している。そして、特に南シナ海における活動は、中国のインド洋進出に対するインド式の「返礼」、駆け引きのための重要なカードとなっているのだ。

インドは海洋国家になれるか

 だが、問題はインドの実力だ。インドは本当に強力な海洋国家になることができるだろうか。この疑問を解くカギは、シーパワーの研究者であるアルフレッド・テイアー・マハンの研究の中にあるかもしれない。マハンは、シーパワーに影響を与える要素として、地政学的位置、海岸線の長さと港湾、それを守る海軍力、海で働く人の人口、国民性、政府の政策などを挙げている(注3)。これらの要素をみると、インドにはシーパワーとしての高い潜在性が認められる。

(注3)アルフレッド・T・マハン著、北村謙一訳『マハン 海上権力史』(原書房、2008年)47~126ページ。

 まず地政学的位置だ。インドはそもそも大陸国家なのかというと、若干の違和感を覚える。高い山脈によってユーラシア大陸から切り離された地域だからだ。それを示すのは、かつてインドを治めた王朝の影響圏の範囲である。

 現在のインドとその周辺を統一した王朝はマウリヤ朝、ムガル帝国、英領インドの3つだけだ。この3つが影響を及ぼした範囲は似通っていて、南アジアからほとんど出ていない。

 原因の一つは地理である。インドは、ヒマラヤ山脈をはじめとする高い山脈に周囲を囲まれている。標高の低い地域から高い地域へと攻め上がっていくのは、戦闘面でも補給面でも難しいため、南アジアを超えた遠方に領土を広げることは困難だった。つまり、インドはユーラシア大陸とほぼ切り離された「島国」なのである(図4)。

Indian dynasty図4:インドの王朝の影響範囲 出所:長尾賢「インドは脅威か?」『政治学論集』第25号、2012年(学習院大学大学院政治学研究科)1~15ページ

 ただし、インドには別の歴史がある。チョーラ朝だ。欧州諸国が十字軍を派遣していた中世のころ、インド南部のチョーラ朝は強力な海軍力を保有し、インド洋沿岸から東南アジアまでを影響下に収めていた。チョーラ朝の歴史は、インドに海洋国家としての素地があることを示している。インド洋を通じて、東南アジア、中東、アフリカへと遠征することが可能だ。

海岸線は7500km、船員は5万5000人

 ほかの要素も、インドが海洋国家となる素地があることを裏付けている。その海岸線は7500kmに及び、多くの港湾を有している。インド洋の沿岸国の中で圧倒的に巨大な海軍も保有している。

 船員の数も多い。世界に散らばって働いているインド人船員を集めれば5万5000人規模となり、これは世界6位の人数である。しかも、インドでは、エネルギー需要が増大するのに伴って、海洋の重要性について理解を深めつつある。インド政府が海軍重視に政策の舵を切っているのは、前述の通りだ。つまり、インドは、マハンの言うシーパワーとしての潜在性があり、その能力を徐々に開花させ始めているのだ。

 公文書『インド海洋軍事戦略』には次のような文言がある。「インドは発展を続けている国だ。つまり『明日』は『今日』よりも良いだろう」(注4)。インドの海洋国家としての潜在性を見る限り、大きく外れた言葉ではない。

(注4)この翻訳は、長尾賢『検証インドの軍事戦略-緊張する周辺国とのパワーバランス―』(ミネルヴァ書房、2015年)312ページによる。

日米印連携は日本の国益になる

 インドが海軍力を強化すべく積極的に動いている現状は、日本にとってどのような意味を持つのだろうか。中国が海洋進出を進めるインド洋には、日本のシーレーンが通っている。中東から日本へ石油を運び、また、貿易するルートだ。中国との安全保障上の懸念を抱える日本にとって、インド洋におけるシーレーン防衛は気になるところだ。だから、2001年以来14年以上、海上自衛隊の艦艇や航空機を派遣し続けてきたのである。

 しかし、日本がインド洋でできることには限界がある。米海軍に期待するところもあるが、この25年の間に艦艇数を半減させており、あまり余裕がない。

 だから、毎年海軍予算を増やし続けているインド海軍との協力に期待が集まる。インド洋で日米が果たすべき役割を、少しでも多くインドが肩代わりしてくれれば、日米はそれだけ東シナ海、南シナ海に戦力を集中できるからだ。

 このような事情を背景に、米国はインドに最新型の対潜水艦用哨戒機を輸出。さらに、インドが進める原子力空母ヴィシャルの建造も支援し始めた。米国は、インドが進める原子力潜水艦の建造計画に対する支援も検討し始めている。日本もUS-2救難飛行艇の輸出交渉を進めるとともに、インドが求めているそうりゅう型潜水艦などの輸出についても真剣に検討するべき時期が近付いているといえよう。