4/29日経<米中「新冷戦」揺れる台湾 論説委員長 原田 亮介 ハイテク分断に現実味
米中の「新冷戦」で、台湾が揺れている。最大の投資先である中国とのハイテクを巡る「分断」が現実化する恐れがあるからだ。米国は本気で先端技術の流出を止めにかかっている。台湾の行方は日本にも他人事ではない。
中国の習近平国家主席は「中国製造2025」を掲げ、先端産業育成を目指す。特に半導体は輸入依存度が高く、総額15兆円とされる巨額の基金を設けて国産化プロジェクトを進めている。頼みは台湾企業の技術力。中国に大量の技術者を招き、川上から川下までの一貫生産体制を構築する計画だ。
米政府は18年秋、そこに先制パンチを食らわせた。
まず商務省が福建省晋華集成電路(JHICC)向けの半導体製造装置の輸出を規制すると発表。同社は中国の半導体メモリー国産化プロジェクトの一角だ。さらに米連邦大陪審が「台湾の受託生産大手である聯華電子(UMC)が米マイクロン・テクノロジーの技術を盗み出し、JHICCに渡していた」として両社を起訴したのである。UMCはJHICCの提携先で、技術侵害でマイクロンと米中で訴訟合戦となっていた。
18年秋からUMCの株価は低迷。JHICCのプロジェクトもUMCが技術協力を大幅に縮小したことなどから量産開始を目前に頓挫した。
台湾に2度の駐在経験があるアジア経済研究所の川上桃子氏は「台湾では当初、米中対立について、米国が中国製品に関税をかければ、中国などに進出した台湾企業の地元回帰が進むという楽観論が多かった。だが、今はハイテク摩擦と技術漏洩で緊迫感が高まっている」と話す。
台湾にも技術などの漏洩を防ぐ営業秘密法がある。台湾企業が半導体関連の技術を窃取された事件は17年に17件起き、多くが中国企業への漏洩だった。1990年代から盛んになった人と経済の交流は水面下の動きも活発にしてきた。
台湾当局は、半導体工場の対中投資は旧世代半導体のラインに限って認めている。しかし地元経済誌は、台湾北部で半導体企業が集積する新竹科学工業園区の近くでは中国企業が営業拠点の看板をかけ、その実は技術者を招き、設置を禁じられている研究開発拠点にしていると伝える。
技術者の流出も今に始まったことではない。中国の主な半導体メモリー国産化プロジェクトはJHICC以外に2つあり、その1つは清華紫光集団が進めている。同社は15年に米マイクロンを買収しようとして米政府から待ったをかけられ、東芝メモリの買収にも意欲をみせていた。
清華紫光集団を支える人材は高額の報酬で引き抜かれた台湾の経営者や技術者だ。15年秋には台湾を代表するDRAMメーカー、南亜科技の総経理だった高啓全氏が移籍した。高氏はこの世界で「台湾のゴッドファーザー」と呼ばれる人物。韓国サムスン電子に対抗できるDRAM勢力を中国に築こうという願望が移籍の動機だったといわれる。
今後の焦点は、半導体の受託生産で世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)の対応だ。5Gの技術で先行しているとされる中国・華為技術(ファーウェイ)の最先端の半導体もTSMCが製造している。技術の保秘やコンプライアンスに定評があり、米企業も有力な顧客だ。ただ、売上高の「中国比率」はどんどん高まっている。
米政府は半導体そのものを対中輸出規制の対象にしているわけではない。日本企業の部品もファーウェイのスマートフォンに使われている。
だが、中国包囲網は狭まっている。19年4月になって発光ダイオード(LED)世界大手の中国企業が「輸出注意先」に指定され、米メーカーが半導体製造装置の取引を停止した。少なくとも半導体製造の関連技術は、米政府の厳しいチェックは避けられないだろう。台湾だけでなく日本企業についてもだ。
拓殖大総長で元防衛相の森本敏氏は「米国の中国に対する厳しい要求は、選挙後の政権が共和党だろうが民主党だろうが当面のところ変わらないだろう。まず貿易不均衡の是正、次いで海洋覇権の断念、3つ目が投資・貿易と安全保障にまたがる知的財産の窃取をやめること」と話す。
台湾では20年1月に総統選がある。民進党の蔡英文総統は米国との関係強化を進め、中国の統一への圧力をかわそうとしている。19年4月には中国製の情報機器の調達規制を公的機関から公営企業に拡大し、技術流出に一段と厳しい姿勢をみせた。
これに対し、国民党から突然、出馬する意向を示したのが、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長だ。同社は中国で100万人ともいわれる雇用を生み、アップルのスマホ「iPhone」などを製造する。中国企業と組み、大陸で半導体をつくるためにシャープの技術も活用する構えだ。
出馬の真意は不明だが、習国家主席との近さや、事業成功のカギが大陸との関係にあったことを考えれば、経済も技術も「大陸との間の壁をもっと低く」という主張に傾いても不思議ではない。
総統選の行方を占うのは時期尚早だが、民進党が政権を維持するのは簡単ではないというのが大方の見方だ。
複雑に絡み合う「ハイテク生態系」。半導体と台湾を巡る米中攻防で生態系にひびが入りつつあるが、終着点はまったくみえていない。>(以上)
TSMCの張忠謀会長は本省人乍ら米国で教育を受けたせいもあって、自由の有難さを知っていますので米国側に付くと思っています。鴻海の郭台銘は本省人で政商だから、米国に隠れて中共に機密を流すつもりなのでは。それで総統選に出て通れば米国の言う通りに從うこともなくなるし、最悪台湾ごと中共にプレゼントする気でいるのでは。こんな輩に台湾国民が投票すれば、後で痛い目に遭うのが見えている筈です。
日本企業もやがて米国から踏み絵を踏まされるでしょう。中国進出企業は資産を中国に置いてくることになります。日本の経営者は見えているか?
4/29阿波羅新聞網<民阵称13万港人大游行 港府不撤案将再围议会=4/28民主陣営は13万の香港人の大規模デモ 香港政府は中国への犯罪人引渡法案を撤回しないので再び議会を囲むことになるだろう>警察調べではピークでわずか2.3万人とのこと。どちらが正しいのか分かりませんが。一国二制度はドンドン切り崩されています。まあ、銅鑼湾事件が起きるくらいですから、香港政府に施政権は無いも同然ですが。
バチカンと中国の合作を厳しく批判している名誉司教・陳日君も参加
https://www.aboluowang.com/2019/0429/1281800.html
4/28希望之声<访俄行程意外“缩水” 金正恩提早返国因遭普京羞辱?=訪ロの行程は意外にも短縮 金正恩の早期帰国はプーチンの辱めに遭ったから>近日、ロシアのプーチン大統領と会談した北朝鮮の指導者金正恩は26日、突然前倒しでロシアから去った。 ある情報では、金正恩は24日ロシアに到着して以来、ずっと「屈辱的な」扱いを受けて来たので、早く帰国することを選んだとのこと。
ロシアが接待を任せたのは高官ではなく、プーチンは「別の約束がある」との理由で当日になって夜に開催される宴会もキャンセルした。そのため、北朝鮮の代表団は宿舎の1階のビュッフェで食事するしかできなかった。2日目、プーチンは会談にわざと30分遅刻し、当初予定されていた歓迎式典もキャンセルされた。 会談終了後、プーチン大統領は直接ロシアから中国へと飛び、金正恩を置き去りにした。
また、宿舎の面では、金正恩一行は高級ホテルには入れず、極東連邦大学の宿舎に手配された。 ロシアはキャンパスと宿舎の周りに5台のパトカーと数十名の警察官を配置したが、それでも車は自由にキャンパス内を通過でき、学生も宿舎の周りを自由に移動できた。
プーチンにとって金正恩なんて利用価値もないという事なのでしょう。米中露の順で後回しされたことも手伝って冷遇されたのでは。
https://www.soundofhope.org/gb/2019/04/28/n2841708.html
4/29阿波羅新聞網<金正恩提前回国 遭普京羞辱内幕流出 狂喘90秒张嘴猛吸气 两大失落 还针对习近平=金正恩は早めに帰国 プーチンに屈辱を与えられた内幕が流出 狂ったように喘ぎ90秒間も口を大きく開けて息をした>北朝鮮の指導者金正恩は26日突然ロシアでの行程を変え、早めに特別列車で北朝鮮に戻った。 これは世論の憶測を呼んでいる。あるロシアメデイアは「金正恩の今回の訪ロは得る所が何もなく、プーチンに辱められただけだ」と。プーチンと会った時に、金正恩は狂ったように喘ぎ90秒間も口を大きく開けて息をした。 金正恩は一帯一路サミット時にロシアに行くことを選び、中共と習近平に不満の信号を送っていると指摘された。
CNNの記者、Josh Berlingerは会談のビデオをTwitterにアップロードし、「金正恩とプーチンは初めて会ってから、談話を発表した。金正恩は喘いで空気がうまく取り込めていないようだ」と書いた。しかし彼は車から降りて会議場までわずか4分歩いただけである。金正恩とプーチン二人ともゆっくりと歩いた。 外国メディアの写真によると、2人はエスカレーターを利用しているが、なぜそれで息を切らすのか、各界の興味を引いている。
2018年1月1日に金正恩は新年の挨拶をした時、韓国のメディアは彼の顔が急速に老化していることに気づいた。 2016年7月、韓国国家情報院は「金が北朝鮮政権を引き継いだ4年間で、大食い、大酒のみの不摂生をし、約40Kgも体重を増やし、130Kgになった」と指摘した。さらに、英国メディアは、「症状を見れば、彼は痛風、糖尿病、心臓病、そして高血圧に苦しみ、足もうまく動かない」と指摘。
陳破空は、「北朝鮮とロシア、金正恩とプーチンが中国のBRIサミット後に列車内で会うことも選択できたはず。でも彼らは待つことができず、早めのこの日を選んだ。これは中国に対する北朝鮮とロシアの不満の合図である。 露朝会談は、トランプへの合図と言うより習近平への合図だろう。中共は国民に真実を言わずに宣伝しているだけ。事実、ロシアでは現在、至るところで中共に対する抗議に満ちている。 中共に「No」と言うのはロシアの与野党のコンセンサスであり、プーチンはそれを最後に言っただけにすぎない」と述べた。
陳破空の言うように本当にロシアが中共を敵と認識し、行動してくれればこんなに嬉しいことは無い。
https://www.aboluowang.com/2019/0427/1281310.html
これで、金正恩はトランプとプーチンとにケッチョンを食らわされたことになります。頼るは習近平か頼りにならない文在寅か?追い詰められているのが分かります。まあ、習も文も米国を敵に回してまで金正恩を助けようと思わないか、できないでしょう。一番いいのは右田氏の記事にあるように金正恩の亡命でしょうけど、プーチンがあの態度では亡命しても好待遇にならないのでは。中国では金正男のように暗殺団が迫って来るような形が考えられますし。金漢率が北を統治すれば実行するかも。親の仇ですから。血筋で言えば、在日の母親を持つ金正恩より金漢率の方が遙かに良いでしょう。
でも、朝鮮人民軍を残せば核廃棄はできません。日本の安全の為には申し訳ありませんが、米軍に朝鮮人民軍を壊滅してほしい。3つの空母打撃群を朝鮮半島に派遣して、武装解除を迫るのはどうでしょうか。北は米露中で統治するようにしたら。日本は朝鮮半島人と付き合うと碌なことがないので行かない方が良い。
黒井記事
ロシア・ウラジオストクの市街地(資料写真)
4月25日、金正恩委員長とプーチン大統領の初顔合わせとなる露朝首脳会談が、ロシア東部ウラジオストクで行われた。プーチン大統領はその夜、中国・北京に向かって発った。同地で開催されている一帯一路フォーラムの会合に出席するためだ。
他方、残された金正恩委員長は、そのままさらにウラジオストクで2泊し、27日に帰国の途につく予定だった。しかし、異変が起きた。首脳会談の翌26日午後、予定を前倒しして帰国してしまったのだ。
まず、金正恩委員長はその日の朝、午前10時に予定されていた戦没者慰霊碑での献花式に、時間になっても姿を見せなかった。ロシア側は受け入れ態勢を整えて待機していたが、いったん撤去した。ロシア側には事前に通知されていないことだった。
結局、金正恩委員長は予定から2時間遅れて到着し、献花の儀式は行った。しかし、その後に予定されていたバレエ鑑賞などのスケジュールはすべてキャンセルし、帰国を1日前倒しして帰国してしまったのだった。
早く帰りたい・・・金正恩委員長はおそらく、今回の首脳会談に失望していたのだろう。
もっとも、首脳会談の冒頭は、そんな雰囲気でもなかった。遅刻常習者のプーチン大統領にしては珍しく先に会談会場に到着し、笑顔で金正恩委員長を迎えた。両首脳は、友好的な雰囲気で会談に臨んだ。
現地時間の午後2時過ぎから始まった会談は当初、両首脳だけで行われた。当初の予定は50分間だったが、約2時間に及んだ。その後、閣僚を含めた拡大会合が約1時間半行われ、さらに約1時間半の夕食会に臨んだ。
ロシアのウラジオストクにある極東連邦大学を訪れ、ウラジーミル・プーチン大統領に迎えられる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2019年4月25日撮影)。(c)Alexander Zemlianichenko / POOL / AFP〔AFPBB News〕
金正恩はプーチンに支援を懇願
では、その会談で、どんなことが話し合われたのか?
まず、会談の冒頭、プーチン大統領は以下のように語った。
(この会談は)「朝鮮半島情勢をどのように解決し、ともに何ができるか、ロシアに何ができるかを理解するうえで有効だと確信する」
「北朝鮮と米国の関係を正常化するための努力を歓迎する」
「貿易、経済、人道問題の分野で協力する」
他方、金正恩委員長側は以下のとおり。
「全世界の視線が朝鮮半島問題に集中しているが、互いの見解を共有し、共同で調整、研究していくうえで意味のある対話になるだろう」
また、会談後の金正恩委員長の言葉は以下のとおり。
「戦略的にこの地域の安定を図り、共同で情勢を管理していく問題などで意見交換する目的がある」
「共同」という言葉を多用しているが、要するにロシアが自分たちと同じ陣営にいるのだということを強調しているわけだ。金正恩委員長側からはロシアに対して、自分たちを支援してくれるよう懇願しているに等しい。
なお、プーチン大統領はさらに、会談後に記者会見に応じた。主な発言は以下のとおり。
「我々の利益は米国と一致している。完全な非核化だ」
「非核化は北朝鮮にとっては軍縮。そのために北朝鮮は安全と主権の保証を必要としている。それは国際法によるべき」
「その保証を実現するには、これは時期尚早だが、米朝合意があった2005年に遡り、互いの利益を尊重して慎重に進むべき」
「6カ国協議を今すぐ再開すべきかどうかは分からないが、北朝鮮には安全の保証が必要であり、6者協議の形式も重要だ」
「(金正恩委員長が)北朝鮮の立場を米国に伝えてほしいと依頼してきた」
このように、両首脳は友好的な雰囲気のなか、今後も朝鮮半島の緊張緩和に向けて協力していくことで合意した。
「やる気」がなかったプーチン
しかし、これだけをもって「ロシアと北朝鮮の協力関係が一気に進んだ」かのような見方は間違いだ。
両首脳が語った言葉をみると、具体的な措置の提案がない。
特にプーチン大統領の言葉は、例えば「貿易、経済、人道問題の分野で協力する」と言いながら、「我々の利益は米国と一致している。完全な非核化だ」として、北朝鮮側が期待しただろう制裁解除への具体的協力案は示していない。力による圧力ではなく、国際法的に北朝鮮の安全を保証する必要性を説いていながら、6カ国協議の再開などの具体的動きには「時期尚早」と逃げを打っている。
いわば、言葉だけの社交辞令のようなものに終始している。通常はこうした首脳会談後に発表されることの多い共同声明の類も一切、発表されなかった。
会談前には「非核化に向けた何らかの声明が出るのではないか」とか「ロシアが経済制裁に苦しむ北朝鮮を助けるために、何らかの経済協力の提案を行うのではないか」といった“期待”が、メディア各社などでも報じられていたが、特に注目されるような進展はなかった。
また、会談翌日、北朝鮮の朝鮮中央通信は、会談で金正恩委員長がプーチン大統領に対して、「米国が一方的で悪意的な態度をとったため、朝鮮半島情勢が膠着状態に陥り、原点に戻りかねない危険な状態に至った」と語り、責任は米国にあることを伝えたと報じた。しかし、前述したとおり、プーチン大統領は一切、米国への批判を控えた。これは要するに、プーチン大統領の「やる気のなさ」を表している。
今回のプーチン=金正恩会談で明らかだったのは、両者の期待値の温度差だ。
そもそも今回の首脳会談は、プーチン大統領が北京に行くついでにセッティングされた。プーチン大統領はその日、まずは東シベリア南部のチタへ飛び、大火災の対策会議に出席、午後にウラジオストクに入って首脳会談をこなし、夜には北京に発った。
対して金正恩委員長は、前々日に平壌を鉄道で出発し、前日にウラジオストクに到着。会談後も同地で2泊するはずだった。プーチン大統領がわずか半日の滞在だったのに対し、金正恩委員長はウラジオストクに3泊もする予定だったのである。
もともと両国の首脳会談は、ロシア側が約1年前に、金正恩委員長を招待するかたちで提案していた。しかし、米国との関係改善を望外に順調に進めてきた金正恩委員長は、ロシアを後回しにしてきた。つまり北朝鮮側が前向きではなかったのだが、それが今回の会談ではむしろ態度が逆になっている。
北朝鮮がロシアにすがりつく理由
では、なぜ北朝鮮は今、ロシアとの接近を切望したのか? それは、北朝鮮が追い詰められているからだ。
金正恩は今年(2019年)2月末、ベトナムで2回目の米朝首脳会談に出席した。金正恩としては、すでに老朽化した寧辺の核施設を放棄する見返りに、大幅な制裁解除を狙っていたのだが、周知のとおり、トランプ大統領はそれを受け入れず、交渉は決裂した。
現状でトランプ政権は、まだ北朝鮮敵視政策には回帰しておらず、あくまで非核化進展を前提に交渉継続の構えだが、金正恩としては、非核化をこのまま拒んだ場合に米国との関係がさらに悪化する事態に備えなくてはならない。
そこでどうしても必要になるのが、米国を牽制できる大国の後ろ盾だ。具体的には、中国とロシアである。
しかし、中国は現在、経済問題で米国と綱引きの状態であり、不必要にトランプ政権と揉めたくはない。米朝首脳会談決裂後、金正恩委員長はおそらく習近平主席との中朝首脳会談を切望したはずだが、米朝交渉の行方が不透明な状況では、習近平主席としても安易に応じるわけにもいかない。
中国はもちろんこれまでも北朝鮮の第一の庇護者だが、やはり米国と対決するわけにはいかないので、米朝が厳しく対立している時には一歩引いており、米朝が和解に向かうと北朝鮮サイドから仲介役として振舞う傾向がある。現在の中国は、北朝鮮の崩壊を避けるために制裁破りを非公式に黙認することはあっても、外交の舞台で堂々と北朝鮮側の肩を持つことはできないのだ。
そうなると、金正恩委員長としては、そんな中国だけが後ろ盾というのは心もとない。その点、ウクライナやシリア、ベネズエラなどの紛争、化学兵器を使った英国での暗殺未遂工作、米国大統領選への不当な介入やINF全廃条約破棄などの軍拡競争などで、もはや米国との対立を辞さない強気の姿勢が一貫しているプーチン政権は、北朝鮮としても味方につけられれば、これほど心強いものはない。
したがって、今回の首脳会談でも、本来ならば金正恩委員長は、プーチン大統領から社交辞令以上の力強い支持の言葉を引き出したかったはずだ。具体的には、米朝交渉の決裂は米国側の責任だと明言し、米国側に妥協を促す言葉であったり、あるいは経済制裁の大幅解除を支持するような発言だったりだ。
しかし、プーチン大統領はそこまでは踏み込まず、冒頭に示したような社交辞令の範囲に留まった。ベネズエラ問題などで声高に米国を非難しているのに比べて、米国を非難することはなく、非核化という目標でロシアは米国と完全に一致しているとまで断言した。ロシアはもとより北朝鮮の安保理決議違反の核・ミサイル開発に対する制裁には参加していく方針を堅持している。自らが先頭に立ってそれを覆すほどは、北朝鮮を「使えるカード」とは評価していないのだ。
プーチンにとって北朝鮮問題の優先度は?
両者の初の会談は、おそらく北朝鮮サイドの強い希望で行われた。プーチン大統領としては、金正恩委員長と会談してやることで北朝鮮を自らの手駒に加え、対米牽制カードの1枚にする思惑はあっただろうが、それ以上は特に大きな政治的もしくは経済的な利益が見込まれるわけではなく、実際にはさほど熱意はなかったということだろう。そこは北朝鮮と深い経済的な関係があり、さらにその動向が自国の安全保障にも大きな影響がある中国とは、ロシアは異なる立場にある。
もちろん米朝交渉の進展次第では、朝鮮半島における米軍のプレゼンスを弱められる可能性があり、それが実現すればロシアにとっては大きな安全保障上の利益になる。だが、その切り札にするには、北朝鮮は「それほど使えるカードでもない」というのが、おそらくプーチン大統領サイドの評価だろう。
現在、プーチン政権は前述したように、米国や西欧主要国などと激しく対立している。しかし、その対立の主戦場は欧州正面であり、中東であり、米露核戦力であり、サイバー空間だ。東アジアの優先順位は低い。
しかも、これはロシア政府だけの意識ではない。今回、会談後のプーチン大統領の記者会見でも、質問の後半はウクライナ問題に集中した。ロシアでも欧米でも、露朝首脳会談は大ニュース扱いというわけでもない。北朝鮮の問題は、結局は米朝の問題なのだ。
今後、米朝の主張が対立する局面では、ロシアは北朝鮮側をなにかと擁護することもあるだろうが、それほど深入りすることもないだろう。
右田記事
ロシア極東地方のウラジオストクにある極東連邦大学で、会見するウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働委員長(2019年4月25日撮影)。(c)Alexey NIKOLSKY / SPUTNIK / AFP〔AFPBB News〕
4月25日に、ロシア極東のウラジオストクで行われた、金正恩委員長とウラジーミル・プーチン大統領の露朝首脳会談。会談は3時間余りに及び、その後のディナーまで含めると、5時間にもなった。
中でも、最初のテタテ会談(両首脳と秘書だけの非公式会談)は、1時間の予定が、約2時間に延びた。初顔合わせだった2人は、ここでいったい何を「密談」したのか?
考えられる話題としては、トランプ政権との今後の核交渉、ロシアから北朝鮮への食糧・エネルギー支援、ロシアに派遣している北朝鮮労働者、ロシアから朝鮮半島へのパイプライン設置・・・と幅広い。
だが私は、まったく報じられることはないが、もう1つ、2人は重要なイシューを話し合ったと推定している。それは、北朝鮮有事の際の「金正恩ファミリーの亡命ルートの確認」である。
中国への「南浦ー威海ルート」だけでは不安に
朝鮮戦争が休戦したのは1953年だが、金日成主席は、再度、アメリカから空爆を受けた際の対策を考えた。平壌から中国に逃げるには、海岸沿いの陸路で新義州へ抜けて、そこから鴨緑江を渡って中国側の丹東に入るというのが「最短ルート」である。距離にして、約200kmだ。
だがこの陸路は、海沿いのため、空爆が容易で危険である。そこで密かに、平壌の「金日成官邸」(金日成主席の執務室)からトンネルを掘って、黄海に面した港湾都市・南浦(ナムポ)まで通じるようにしたのである。約60kmの地下トンネルだ。
南浦には、密かに非常用の高速艇と小型機を用意した。それに乗って、海路もしくは空路で、黄海の対岸に位置する中国山東省威海の中国北海艦隊基地まで向かう。距離は300km弱だ。
中国と北朝鮮は、国連軍(アメリカ軍、韓国軍)を相手に、朝鮮戦争をともに戦った「血盟関係」にある。1961年には、金日成主席が訪中して、中朝友好協力相互援助条約という軍事同盟も結んでいる。
だが、金日成主席は、1994年に急死。用心深い性格だった2代目の金正日総書記は、21世紀に入って、この「南浦-威海ルート」だけでは不安に思うようになった。中国は1992年に、朝鮮戦争以来の仇敵である韓国と電撃的に国交を結んでおり、信用できなかったからだ。
埠頭の租借と引き換えに・・・
一方、ロシアも、2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟し、2008年に北京でオリンピックが開かれたことなどで、100年続く「ロシアが兄で中国が弟」という両大国の関係が逆転することを恐れた。そこで、「中国の裏庭」である北朝鮮に接近を図ったのである。
2008年、ロシアと北朝鮮は大胆な「合意」に達する。それは、北朝鮮はロシアに、日本海側の羅先港の第3埠頭の権益を49年間租借させる、ロシアは港湾の整備と、羅先-ハサン間54kmの鉄路の復興を担当する、というものだ。この鉄路はもともと、日本植民地時代に整備したもので、すでに廃線になっていた。
金正日総書記は、このロシアへ向かう鉄路に、「保険」をかけたのである。すなわち、鉄路の地下に、「亡命用道路」の整備も、密かにロシアに対して依頼したのだ。
そのため、この国際鉄道建設は、鉄道建設を専門とするロシア鉄道(本社モスクワ)と、トンネル建設を専門とするロシア極東山岳建設(本社ウラジオストク)とが、共同して請け負った。そして、わずか全長54kmの「鉄路の整備」に、丸5年もかかり、2013年9月22日に、完成式典がハサンで行われたのだった。ロシア鉄道のウラジーミル・ヤクーニン社長(当時)と、北朝鮮の全吉洙鉄道相(当時)が式典に参加し、国際的な輸送網が完成した意義を強調した。
この時、北朝鮮は、金正日時代から金正恩時代へと変わっていた。「不動のナンバー2」と言われ、この鉄道建設の最高責任者でもあった張成沢党行政部長が処刑されるのは、この式典から2カ月余り後のことだ。
北朝鮮で金正恩委員長が、完全に推戴儀式を済ませてから半年ほど経った2012年11月、中国では習近平が、中国共産党総書記に就任した。その後、2017年まで、丸5年にわたって、中朝はいがみ合っていた。両者とも「お山の大将」のような似た者同士だったため、互いに反発していたのである。
2017年、アメリカにトランプ政権が誕生し、北朝鮮空爆の可能性がかつてなく高まっていった。たが、金正恩委員長は、習近平政権とも「反目」していたため、北朝鮮有事の際に中国へ亡命するという選択肢はなかった。そのため、この「ロシア亡命ルート」が、極めて重要になってきたのである。
「亡命ルート」確認のため空路ではなく鉄路で訪露
金正恩委員長は、北朝鮮側の羅先は、何度か視察したことがあったが、ロシア側へ行くのは、今回が初めてだった。露朝首脳会談前の一部報道では、金委員長がロシア製の専用機でウラジオストク入りするとの憶測が伝えられたが、それでは「亡命ルート」を確かめられないので、鉄路で行くに決まっていた。
金委員長は国境を越えると、まずはハサンで「1号列車」(スターリン大元帥が金日成主席に贈ったお召列車)を降りた。表向きは、かつて金正日総書記も見学した「露朝友好の家」を見学するためだった。だが、まったく報道されないものの、有事の際にハサンで避難する場所を確認した可能性がある。
ロシア国境の町ハサンに到着した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2019年4月24日撮影)。(c)AFP PHOTO / Press Service of Administration of Primorsky Krai / Alexander SAFRONOV〔AFPBB News〕
そして、金正恩委員長とプーチン大統領の首脳会談が行われたウラジオストクである。テタテ会談に続いて行われた、側近を交えた首脳会談には、ロシア側に、ロシア鉄道のオレグ・ベロゼロフ社長が着席しているのが確認できた。
4月25日、ウラジオストクで金正恩氏との会談に臨むロシア代表団のメンバー(写真:ロイター/アフロ)
極東山岳建設の幹部は確認できなかったが、首脳会談の終了後に行われた晩餐会には、当然、招待されていただろう。もしかしたら金正恩委員長はお忍びで、極東山岳建設の本社を訪問していたかもしれない。
ともあれ、米朝は「振出し」に戻りつつあり、今後の朝鮮半島情勢は、2年前のように、刻一刻と深刻化していくリスクを孕んでいる。そうなると、やはりポイントは、「ロシア亡命ルート」になってくる。今回の露朝首脳会談の成果は少なそうだが、金正恩委員長にとってのせめてもの「成果」は、亡命ルートの確認だったのではなかろうか。
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