9/21阿波羅新聞網<重磅 川普强硬出手制裁中共 李尚福中将和总装备部上榜=重大 トランプは中共への制裁を強硬に 李尚福中将と総装備部がリスト入り >WHは20日、中共中央軍事委員会の装備発展部と李尚福部長に制裁を課すと発表した。李尚福の制裁は米国の金融システムと外貨取引を禁じるものであり、米国が管理する如何なる財産、利益をも凍結する。また米国ビザは使えなくする。
CAATSA(The Countering America’s Adversaries Through Sanctions Act)はロシアに適用されているが今回は中共にも。ロシアの兵器輸出を妨げる狙い。ポンペオとムニューチンが相談して、トランプが実施する。
http://www.aboluowang.com/2018/0921/1177506.html
香田氏の議論で、盾と矛の役割分担で良いのかどうか?憲法上の問題があるのかもしれませんが。尖閣を中国が取りに来た時に、前大戦の例を挙げて奪回は難しいと本文で述べています。そうであるなら、少なくとも公務員の常駐が必要になるのでは。また、本当に米軍は来援してくれるのかどうか?普段から共同訓練をして、尖閣以外にもですが、連携行動が取れるようにしておきませんと。
サイバー空間の問題は役所だけでなく、民間企業も注意が必要です。野村総研が持っているデータの管理をコストの安い中国に移管しそうという話を小耳に挟みました。米中が世界覇権で争っている時に、敵を利する行為になります。また悪辣な中国人がそのデータを利用して何かを仕掛けないとも限りません。法律を作って規制しないと。安倍首相は9/12習近平と会いましたが、その時米議会は中国のウイグル人の教育キャンプの問題で沸騰していたそうです。中国に近づく印象を与えると日米同盟も機能しなくなります。安倍首相は自覚しておいででしょうか?10月訪中も通貨スワップの話を持ち出ししたりしたら、上述のCAATSAを米国が中国に課している時に、「何だ」となるでしょう。外務省は無能の為に、首相に進言もできないでいるのかも。まあ、訪中を、尖閣を狙っている中国に利用させないためにはキャンセルするのが一番理想です。三選を果たしたので、後は周りを気にせず思い切って懸案事項を解決して行ってほしいです。売国奴の集まる経済界の意向は気にしなくとも良いでしょう。
人員の問題は少子化の問題にもつながります。男の給料だけでは暮らしていけないというのであれば、女性も働きに出ざるを得ません。やはり保育所を増やし、保育士の資格が無くても保育の仕事ができるようにすれば良いのでは。保育士は「名称独占」の資格なのですから、保育所の国の配置基準を見直し、保育士ゼロでも認めれば良いと思います。子供を育てて来た、老人女性だったら、良く面倒を見てくれると思いますが。
9/18記事
政府は今年末をめどに「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を改訂する。前回の改訂から5年。この間に北朝鮮は核・ミサイルの開発を大幅に前進させた。トランプ政権が誕生し、米国の安全保障政策は内向きの度合いを強める。
改訂に当たって我々は何を考えるべきなのか。海上自衛隊で自衛艦隊司令官を務めた香田洋二氏に聞いた。同氏は、北朝鮮の核・ミサイルという目の前の危機だけに流されない中長期の防衛計画を考えるべき、と訴える。
(聞き手 森 永輔)
中国の爆撃機H-6K。有事に米軍の来援を阻む役割を果たすことが想定される(提供:新華社/アフロ)
—今回、「防衛計画の大綱」*1と「中期防衛力整備計画」*2を改訂するに当たって、香田さんが重視するのはどんな点ですか。
*1:防衛力のあり方と保有すべき防衛力の水準を規定(おおむね10年程度の期間を念頭)(防衛白書 平成29年版)
*2:5年間の経費の総額と主要装備の整備数量を明示
香田:懸念するのは、尖閣諸島をはじめとする南西諸島防衛や、北朝鮮の核・ミサイルへの対応といった「目の前」の問題にとらわれるあまり、本質を見失ってしまうことです。これら目前の問題に合わせて防衛戦略を作ったり、防衛力を整備したりするのではなく、全体的な防衛戦略・防衛力の一部でこれらの問題に対処できるようにするのがあるべき姿です。
香田洋二(こうだ・ようじ)
海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた。1949年生まれ。72年に防衛大学校を卒業し、海自に入隊。92年に米海軍大学指揮課程を修了。統合幕僚会議事務局長や佐世保地方総監などを歴任。著書に『賛成・反対を言う前の集団的自衛権入門』など(写真:大槻純一 以下同)
確かに尖閣案件などは、日本が戦後初めて直面する大きな国家主権の危機です。焦点を当てることは、政治的には心地よいことなのですが……。
防衛大綱で名前を挙げるかどうかはともかく、中国とロシアの存在を考えなければなりません。今日の米国の脅威認識は「4プラス1」から「2プラス3」に舵を切って、両国をより重視しています。「4プラス1」の4は、ロシア、中国、イラン、北朝鮮。1はテロを実行する過激派組織です。「2プラス3」の場合、2はロシアと中国で、ほかの脅威とは別格としてとらえています。
日本の場合は、まず中国。副次的にロシアを考えるべきでしょう。
敵基地攻撃能力を備えるべきとの議論が高まっています。議論することは悪いことではありません。独立国として、これを持つ権利も持っています。しかし、論議が近視眼的なものになることを懸念しています。
まずは日米同盟をきちんと機能させることを考えるべきです。日米同盟では、日本が盾(日本の防衛)、米国が矛(相手国への反撃)という役割分担があります。その大原則に従うならば、自衛隊は敵の侵攻排除に徹し、敵の侵略を終わらせるために必要な敵国や基地(策源地)への戦略打撃は米国の任務とすることを再確認すべきです。それにより、日米同盟がきちんと機能するようにすることを考えることが重要です。
自民党が5月に発表した防衛大綱の見直しに向けた提言は、この点において我が国の事情についての論議のみが優先され、日米同盟をどのようにして最適に機能させるかという議論が十分でない印象を持ちました。提言では、一項目を割いて「米軍の来援を確実なものにする」としてはいますが。
また北朝鮮による弾道ミサイル攻撃への対応を想定して日本が整える敵基地攻撃能力が、本質的な潜在脅威国であるロシアや中国の弾道ミサイルに対する矛としても本当に有効なのでしょうか。この点もよく考える必要があります。
まずは盾の力を引き上げる
日本は矛の機能を論じる前に、いまだ十分でない盾の機能を高める必要があると考えます。まずは、日本の防衛作戦(盾)に米軍を巻き込まないですむようにすることです。巻き込めば、その分、米軍の打撃力を削ぐことになります。そうならないようにして、米軍には得意の打撃作戦(矛)で力を発揮してもらうようにするのです。その前提が、米軍の安全な来援を確実ならしめることであり、自衛隊は我が国の直截的な防衛に加え米軍来援を支援する力を養う必要もあります。
日本は「防衛の基本政策」において「専守防衛」を掲げています。このため、米軍が来援しなければ、外国から複数波の侵攻を受けるうち、いずれかの時点で我が国の命脈が尽きてしまいます。仮に、各侵攻排除作戦における自衛隊の損耗率を4割として計算してみましょう。第1波の攻撃を受けた後は、100%だった防衛力が侵攻撃退の代償として当初兵力の60%に減ります。第2波を受けた後は100×60%×60%で36%に。第3波を受けた後は22%しか残りません。これは、国際標準では全滅ということであり「かくして我が国の命脈は尽きたり」という、最悪の結果につながるのです。
日米同盟の基本は、自衛隊が敵の第1波の侵攻を食い止めている間に、米軍が侵攻国に対して反撃することで、敵国の物理的な侵攻能力や戦争継続活動に必要な工業施設などの戦略ターゲットを破壊して、敵の侵略の意図をくじくことです。それにより敵の侵略戦争を停戦・終戦にもっていくということです。要するに、米軍の来援、すなわち来援米軍による侵略国の策源地に対する戦略打撃がなければ戦争を終わらせることができないのです。
しかし、その基本となる、敵国の策源地を攻撃するために必須となる米軍の来援部隊を自衛隊がどのように支援するかについては、今日の我が国で深く議論されていません。そして、そのための十分な予算も装備も自衛隊には与えられていません。
—日本が手を広げようとしている矛の役割とは例えば何でしょう。ミサイル防衛システムは盾ですね。
香田:そうですね。100%盾です。
ヘリ搭載空母「いずも」にF-35Bを載せ、米空母の来援を支援
—ヘリ搭載型護衛艦(DDH)「いずも」などにF-35B*3を搭載する案が検討されています。これはどうでしょう。
*3:自衛隊がF4の後継として配備を進めるF35の垂直離着陸が可能なタイプ
香田:航空優勢は全ての軍事作戦において必須要件です。その観点から、「いずも」などにF35Bを搭載して航空優勢を獲得する発想は妥当といえますが、鍵となる点は、その用途及び他の代替案との関係です。それをよく考えてから取り組むべきだと思います。
今日の国際環境下の我が国防衛作戦において航空優勢を獲得することが求められる典型的な場面、すなわちヘリ搭載型護衛艦搭載のF-35Bの用途として、米軍来援支援機能確保と島嶼防衛の2つが考えられます。米軍来援支援機能確保に必要な機能として整備を進めることは、ほかに代替案がないので、進めるべきだと考えます。
つまり、次のようなケースが考えられるのです。米軍来援部隊の中核となる空母部隊が日本に向かっており、これを支援すべく、海上自衛隊の対潜水艦部隊が太平洋に向かうとします。これを阻止すべく、中国が爆撃機H-6Kを派遣して大量のクルーズミサイルで日本の対潜部隊を攻撃する場合を考えてみましょう。日本の対潜部隊がミサイル攻撃を受けた結果、その能力が低下するとすれば、米空母部隊を迎え撃つ中国の潜水艦部隊は、日本の対潜部隊の網をすり抜けて、主目標である米国の空母を攻撃して撃破することが可能となります。
こうしたケースでは海上自衛隊のイージス艦は飛来する大多数のクルーズミサイルは撃墜できますが、その母機であるH-6Kの対処はできません。このため、H-6Kは繰り返し出撃して海上自衛隊の対潜部隊を攻撃することができるため、対潜部隊側は、どうしても発生する少数の撃ち漏らしミサイル攻撃により生ずる累積被害により、最後は作戦の継続が不可能となります。
この「ドカ貧」状態を回避するためには、母機であるH-6Kを撃ち落とす(母機対処)ための装備が必要になります。太平洋に航空自衛隊の基地はありませんので、ヘリ搭載型護衛艦とF-35Bを組み合わせることにより、母機対処が可能となり、海上自衛隊の対潜部隊の生存率が向上することとなります。
そのことにより来援する米軍部隊の安全が確保される結果、米軍全体としての敵国策源地に対する戦略打撃機能の能力は向上し、より充実した盾と矛の関係が構築されるのです。
一方、島嶼防衛という場面を想定しますと、例えば、現在調達が進んでいるF35Aと空中給油機の増加による、島嶼地域の防空能力の強化という別のオプションもあります。それ以外にもいくつかの選択肢はあると思いますが、それらのうちの有力なものとヘリ搭載型護衛艦とF-35Bの組み合わせ案との精緻な比較検討が必要だと考えます。その結果を反映した防衛力整備を進めるやり方が求められるのではないでしょうか。
この件に関して防衛当局は、少なくとも国会できちんと説明できる論拠をそろえることが最低限必要でしょう。ただし、自衛隊の現状は、盾のための装備が慢性的に不十分な状態が続いています。なによりも、その前提となる防衛予算が足りないのですから。
今後の防衛力整備においてまず必要なことは、自衛隊本来の任務を果たす「盾」の能力不足分の早急な回復であり、それが満足された後の課題として、ヘリ搭載型護衛艦とF-35Bの組み合わせや敵基地攻撃能力保有の検討を始めることが筋であると考えます。まして、「中国が空母『遼寧』の整備をすすめているから日本も空母を……」といった考えは論外です。
—盾の機能の不足を補うために必要なのはどのような装備ですか。
香田:まずは、島を取られないようにしなければなりません。昨今の我が国の防衛論議では、防衛省の公刊資料も含め島嶼奪還作戦が注目を集めていますが、歴史、特に前大戦における我が国の苦い経験を振り返れば、一度取られた島を取り返せた例はありません。
島を取られない体制構築の第一要件が、敵が侵攻する兆候を早期に察知するための早期警戒能力の向上です。また、南西諸島の島嶼防衛に限らず、我が国防衛全体の立場からも、敵侵攻の際に最初に狙われるのは固定レーダーサイトです。その際の早期警戒能力損失を局限して補完する早期警戒機E-2Dなどの数を増やすことが重要です。
航空優勢を保つための縦深性を高めるために、滞空能力に優れる早期警戒管制機E-767の増強も必須です。同様に戦闘機、現状ではF-35Aでしょうか、空中給油機の数を増やすことも当然です。
陸上装備では、戦車や最近導入された戦闘車などの重車両は侵攻目標と考えられる島嶼に事前に配備しておくべきでしょう。中軽車両を迅速に航空輸送するための大型輸送ヘリもさらにそろえる必要があります。
空港を守れ!
—米軍の来援を支援する役割のための装備はいかがですか。
香田:十分とは言えません。先に述べましたように、我が国に来援する米海軍部隊の脅威となるのは中国の潜水艦、爆撃機H-6K、対艦弾道ミサイルです。
これらの脅威のうち、少なくともハワイから西については日本が確実に対処できるようにすべきでしょう。潜水艦脅威をあるレベルまで減殺する。H-6Kは沖縄に至るまでに航空自衛隊の力で半分程度を撃墜できることが必要です。南西列島線をすり抜けた半分については、当面は、発射された巡航ミサイルを太平洋上で作戦するイージス艦で対応します*4。
新たな脅威である洋上における対艦弾道ミサイル防衛については、日米で整合させた対艦弾道弾開発と配備・運用両面での新たな取り組みが必要になると考えます。もし、虎の子の空母に被害が出るようなことがあれば、米国民の参戦意図は崩れ、日米同盟そのものが危機に陥ります。
*4:沖縄県の宮古島と石垣島に地対空・地対艦ミサイル部隊を配備することが決まっている。ただしこれは対侵攻兵力用の装備であり、高空を通過するH-6K級の大型爆撃機を対象としたものではない。
—そうした想定を考えると、イージス艦は何隻あっても足りないですね。現在は2021年までに8隻が就役する予定ですが……。地上配備型の迎撃システム「イージスアショア」を2023年に配備する予定ですが、それまでイージス艦は日本海に張り付きになる可能性があります。
香田:8隻というのは、米軍来援支援と我が国生存のための海上物流確保のための作戦所要の最低限の数です。イージスアショアが配備された後でも、弾道ミサイル防衛システム(BMD)への加勢が必要な場合もありますので、頑張って増やしてほしいところです。
今後の海上自衛隊の護衛艦の建造は、沿岸での作戦を念頭に置いたFFM型を柱に据える方針が決まっているようです。FFMでは、今まで述べてきた、米軍来援を支援する西太平洋での対潜作戦、すなわち米国の空母の前程で中国の潜水艦脅威を低減する「太平洋の戦い」(バトル・オブ・パシフィック)」を戦うことはできない恐れが大です。
もちろん、「米軍の来援を支援する」という役割を我が国が担わないという方針の下でFFMを重点整備するのであれば、それはそれで構わないと思います。しかし、それはまさに日米同盟の骨幹にかかわる案件であることから、米軍来援確保に関する議論なく進めるのは順番が逆だと思います。
—米軍の来援を支援するため、装備以外で整えるべきものはありますか。
香田:新たに整えることに加え、今持っている資産を守ることも必要です。例えば、我が国の官民の空港です。
—空港が機能しないと、空からの米軍来援ができません。東日本大震災時のトモダチ作戦で米軍は、支援拠点として仙台空港の復旧を非常に重視していました。
香田:日本は80年代に「1県1空港」をスローガンに整備を進めた結果、ジェット機の離発着が可能な2000メートル以上の滑走路を有する飛行場(民間・自衛隊・米軍:滑走路数約90本)が全国に70近くあります。どのような軍事大国でも、通常兵器のみで広大な飛行場を一気に無力化することはできません。その数が70個90本もあれば、なおさらの話です。これをしっかり守ることは、米軍の空路による来援基盤の維持そのものなのです。仮に、敵の第一撃の後で約半分の40空港が使用できれば米軍の空からの来援は何とか確保できます。
ただし、これは空輸できる人、装備の話で、重量ベースでみれば、来援米軍の全体の1~2%にとどまるでしょう。燃料や弾薬など重たい、あるいは体積の大きい装備は海上輸送しかありません。
米国によるFMS(有償対外軍事援助)は必ずしも悪くない
—装備に関してはF-X(次期戦闘機)が注目されています。現行の支援戦闘機「F-2」の後継として、2030年をめどに導入する予定です。日本による独自開発、外国との共同開発、外国からの輸入の3つの選択肢が想定されています。
香田:これについては、戦闘機単体の飛行性能ではなく、任務達成のための武器や通信システム及び数十年にわたる運用期間を通じた部品調達・整備性などの後方支援、さらには米軍とのインターオペラビリティ(相互運用性)を含めた総合的な「戦闘システム」として考える必要があります。
例えば、航空自衛隊が導入を進めているF-35Aは、これまで使用していた国産ミサイルが搭載できません。これは、現有の空対空ミサイル開発段階においは、F-15Jの改修搭載を前提としており、F-35Aへの搭載は全く視野の外であったということで、今日の事態は避けられなかったといえます。
ただし、今次の空対空ミサイルを例にとれば、その開発時に搭載対象とした戦闘機が代変わりする場合、将来も同じ問題は起こり得るということです。もちろん、開発段階で我が国が参画していないF-35の運用要求に国産対空ミサイルとその火器管制システムの搭載を盛り込むことは、そもそも不可能であったことも現実です。
一方で、国産ミサイルの開発と採用は、我が国の国情に合ったシステムの導入という面の意義はありますが、全ての面で外国製品に優れるかというと必ずしもそうではありません。私が現役のころ、米軍は自国と同盟国を含め、SM1*5を年間500発程度撃っていました。初期段階では、このうち約100発が命中しないこともあったそうです。しかし、100発という多数の失敗原因を徹底的に追求して不具合を改善し、問題を解決することにより、改善型バージョン「マーク2」へと進化改善できたのです。そして、同様の改善を約30年間にわたり続けた結果、当時の脅威に対して想定し得るほぼすべての戦闘環境において、極めて高い成功率を有するSM1の究極の発展型の開発成功へとつながったのです。
*5:ミサイル防衛システムで利用する現行の迎撃ミサイルSM3の先行モデル
国産ミサイルの場合、航空自衛隊の現状は正確にはわかりませんが、実射できる数はせいぜい年間10~20発でしょう。また、国内開発ミサイルの改善型の開発や導入といったニュースも聞いたことはありません。これで実戦に耐え得る軍事装備になるでしょうか。航空自衛隊が採用する国産の中距離空対空ミサイルAAM-4(99式空対空誘導弾)やAAM-5(04式空対空誘導弾)は、その性能は優れたものといわれています。同時に、外国から引き合いがかからない背景には実戦経験、日本の場合は実射弾数の少なさ、特に失敗を通じて得られる実データの少なさからくる武器としての完成度、すなわち実戦に耐えうる空対空ミサイルとしての評価が各国空軍の間で定着していない面もあると思います。
赤外線誘導型の空対空ミサイルでは米国製サイドワインダーの究極発展型であるAIM9X、レーダー誘導型では同じくAIM7シリーズの世代交代型である米国製のAMRAAM(AIM120)が人気です。これはやはり潤沢な発射試験によるデータの蓄積を基にした高い完成度と、限られてはいますが実戦での使用実績により、「強い」とみられているからです。
ひょっとしたら日本製のAAM-4の方が性能で優れているかもしれません。しかし、相手が電子妨害をしている環境、あるいは雲や雨の中でも正確な誘導ができ、敵を撃墜できるのかという点での性能証明で、国産品は米国製に一歩譲るということでしょう。こうした点は実戦、あるいは実戦に近い環境下での数多い試験発射を経験しないと磨くことができません。
こうした事情を考えると、F-Xも日本だけでやる選択肢は適切ではないと考えます。日米同盟を前提として、装備武器や、C4ISR*6の相互運用性を考えれば米国から購入する、もしくは米国と共同開発するのが現実解でしょう。
共同開発するには、米国から評価される高い技術を日本が持っていることが前提になります。はたして、この点はどうでしょうか。日本が優れる独自技術を生かしながら、米国から学ぶことを重視して、共同開発するのが良いのではないでしょうか。これが日本にギリギリできることだと思います。
*6:C4は指揮(Command)、統制(Control)、通信(Communication)、コンピューター(Computer)。ISRはそれぞれ情報(Intelligence)、監視(Surveillance)、偵察(Reconnaissance)のこと
—これまでにうかがった現状を考えると、今後もFMS(有償対外軍事援助)*7を受け入れざるを得ないケースが多くなりそうです。
*7:Foreign Military Salesの略。米国が採用する武器輸出管理制度の1つで、武器輸出管理法に基づく。購入する国の政府と米国政府が直接契約を結ぶ。米国が主導権を取るのが特徴。価格や納期は米政府が決める、米国の都合で納期が遅れることも多い。最新の装備品などは、FMSによる取引しか認めない場合がほとんどだ。
香田:多くの方がFMSを悪く言いますが、必ずしも悪いことばかりではありません。まず、米軍の制式装備の多くは実戦での使用実績のある装備であり、その面では他の追従を許しません。単純に我が国の防衛という自衛隊の任務から観れば、極端な言い方ですが米軍装備に勝るものはないはずです。これは感情的にならずに冷静に受け入れるべき強点です。
次に、米軍の後方支援システムが提供する利点があります。例えば自衛隊がFMSで購入した装備が故障し、部品の交換が必要になったとします。しかし自衛隊には在庫がない場合もあります。予算の制約で、自衛隊のストックが米軍より少ないことは時々ありますが、こんな時でも米軍に緊急請求すれば、短時間で入手できます。私が現役の時に経験したケースだと、スペインのロタという基地から2日で届きました。多数の同じ装備を全世界で使う強みがあるわけですね。これが、本当に戦う軍のロジスティクスと実感させられたものです。
逆のケースもあります。国産の装備を導入しても、コア部品が外国製というケースです。私が経験したケースでは、重要な任務の中核となる国産電子機器の重要部品が壊れ、システムダウンとなりました。ところが、その国産装備の要であった壊れた部品は外国製で、しかもFMSではない通常調達だったことから、緊急発注を行いましたが補充に1年以上待たされたのです。
米軍は世界中に展開しています。しかも、いつ実戦に突入するか分からないことから、常に稼働率を最高に保つことをロジスティクスの目標としています。その米軍の後方支援システムに乗ることの意義は大きいのです。特に、任務達成という観点からは、FMSが持つロジスティクス分野の意義や価値も、正当に評価する必要があると体験的には考えています。
—F-35のような多国間共同開発に乗るのはいかがでしょうか。
香田:スキームによります。例えば、多国共同開発品を我が国の作戦環境に合うように独自の改良をする時に、参加国すべての了承を取る必要があるスキームの場合、手続きが面倒になります。海上自衛隊が使用している艦対空誘導弾シースパロー短SAMはNATO(北大西洋条約機構)が共同で開発したのを導入しました。いろいろな面で、NATO加盟国の了解を取る手続きがけっこう複雑でした。
防衛装備の海外移転はサプライチェーンが肝
—政府は防衛装備移転三原則を2014年4月に閣議決定し、防衛装備を輸出する道を開きました。日本に実戦経験がないことを踏まえると、輸出の対象は海難救助艇US2など、武器ではないものが中心になりそうですね。
香田:そうですね。US-2は世界水準の性能を持っていると思います。
—海上自衛隊が使用する国産哨戒機のP-1*8も注目され始めました。
*8:開発は防衛省技術研究本部と川崎重工業
香田:P-1は米ボーイングのサプライチェーンに乗らない点がハンデとなります。ライバルである米国のP-8はボーイング737をベースに開発されました。そのために、世界規模で広がった同社の部品供給網などを利用できます。P-1とはこの点が異なります。P-1の各国での運用を考慮した場合、我が国、特に航空宇宙産業界を挙げた世界規模のロジスティクス体制を組めるかどうかが、海上自衛隊P-1の海外展開あるいは各国への販売ビジネス成功の鍵となります。
ただし、日米でP-1とP-8Aを併用しているのは悪いことではありません。ロシアや中国の潜水艦は戦術思想の異なる2種類の哨戒機に対応しなければならないからです。その分、彼らの運用上の負担が大きく増加します。
9/19記事
政府は今年末をめどに「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を改訂する。前回の改訂から5年。この間に北朝鮮は核・ミサイルの開発を大幅に前進させた。トランプ政権が誕生し、米国の安全保障政策は内向きの度合いを強める。
改訂に当たって我々は何を考えるべきなのか。海上自衛隊で自衛艦隊司令官を務めた香田洋二氏に聞いた。同氏は、安全保障に費やす予算とヒトが足りない現状を懸念する。今回は後編だ。
(聞き手 森 永輔)
前回はこちら
(写真=ZUMA Press/アフロ)
—重視している2つ目は何ですか。
香田:予算と人員の問題です。これは自衛隊が抱える慢性病のようなものです。予算と人員には相場観があります。安全保障と防衛はあまり票になることはないので、政治家は発言しない、といわれています。また、自衛隊も長年の予算などの固定された相場観と一部を除く政治家の消極的な姿勢のため、現状変更をあきらめ、自らの立場を強く主張しなくなっています。
香田洋二(こうだ・ようじ)
海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた。1949年生まれ。72年に防衛大学校を卒業し、海自に入隊。92年に米海軍大学指揮課程を修了。統合幕僚会議事務局長や佐世保地方総監などを歴任。著書に『賛成・反対を言う前の集団的自衛権入門』など(写真:大槻純一 以下同)
防衛費は1998年を起点に、安倍政権が成立する2012年まで毎年0.5~1%ずつ減少してきました。これを防衛力整備の氷河期と呼ぶ人もいます。ボクシングでいえば、これがボディーブローのように効いています。安倍政権になって毎年200億円程度増えています。それはそれでありがたいことですが、今の状況はボティブローで消耗しきった選手が、一時的にコーナーで休んでいるようなものです。
この間にも装備は劣化します。防衛力整備が最盛期に達した冷戦時代後期にそろえた“遺産”で食べているのが自衛隊の現状です。例えば陸上自衛隊が保有する戦闘ヘリですが、かつては当時の最新機種であるAH-1を80機保有していましたが、それらの除籍は進むものの、その穴を埋める新型装備はアパッチ(AH-64D)が13機のみです。戦車の数も600両を300両に減らす計画が進んでいます。
航空自衛隊の戦闘機F-15は1981年の運用開始以後35年超が経過しています。親子でF-15のパイロットを務めた隊員もいるほどです。80年代は毎年10機以上のペースで増やしていましたが、計画数213機の整備を終わった途端に新規生産はピタっと止っています。もちろん200機を擁する規模は米空軍に次ぐと共にアジアでは第一級です。この間、各種の改修をして能力の維持も図っています。けれども十分とは言えない。戦闘機はF-4に代えて今年からF -35が入りますが、当面の計画はわずか42機です*1。
*1:米ロッキード・マーチンが開発したステルス戦闘機。自衛隊は42機を導入する計画。最初の4機を除く、38機が日本の工場で組み立てられる
海上自衛隊の護衛艦も同様です。80~90年代は10年間に20隻のペースで建造することができました。最近は20年間で18隻です。1年あたり1隻にもなりません。固定翼哨戒機(P-3)は70~80年代は毎年10機程度生産しましたが、今のP-1は7年かけて23機で、毎年、約3機です。
各自衛隊の防衛力整備は90年代の初頭で止まってしまったようなものです。日本が防衛費を14年間にわたって減らす中、中国は年2けた増で増やし続けてきたのです。相対的に見れば、日本の防衛力は著しく落ちていると言わざるを得ません。
ドナルド・トランプ米大統領がNATO加盟国に対して、防衛費をGDP(国内総生産)比2%に増やすよう求めています。日本にとっても他人事ではありません。しかし、未だにGNP(国民総生産)1%枠という亡霊に縛られて真剣な議論がなされていないように思われます。今日では何の意味もないその殻を破る論議こそ、今必要なことと考えます。
これでよいのでしょうか。安倍政権になって以降、防衛予算は増加に転じていますが、防衛力整備氷河期に失ったものはあまりにも大きいといえます。抜本的な防衛予算の増加がない限り、自衛隊の態勢はジリ貧にならざるを得ないのです。我が国を守り、米軍の来援を支援するという使命を果たすに当たって、今のままでは確実に自衛隊の能力に欠損が生じます。精神論でいえば、予算は1円でも増やす必要があることは当然ですが、かつて10年間にわたり海上自衛隊の防衛力整備にかかわった経験から言えば、精神論ではない現実論で言えば数千億円規模の増額が必要でしょう。
—GNP比1%の枠は現実的ではないわけですね。
香田:国防費の額をGDPとの比率で決めるのは、そもそも健全な考え方とは言えないかもしれません。
—経済が成長しなければ、外国の脅威が増しても、対処できないことになりますね。
香田:その通りです。この先、大胆な予算投入が必要になるでしょう。そうでないと、米国と米軍からの信頼が崩れることになります。日米安全保障体制が危機に直面する。自衛隊と米軍は日米同盟の両輪です。自衛隊が小さくなれば、このクルマは半径の小さくなった自衛隊という内側車輪を軸にして、その場で回転するだけで、前に進めなくなってしまうのです。
お金でヒトは集まらない
—予算とともに、人員を懸念されています。
香田:はい。自衛隊の充足率とは別の、実際の新隊員の募集状況は陸上自衛隊と航空自衛隊が約90%、海上自衛隊が60%程度という状態と聞いています。これはまさに危機的状態であり、防衛省と自衛隊だけで解決できる問題ではありません。国を挙げて取り組む必要があります。
任務は増えているのに、人は増えていません。海上自衛隊は潜水艦を16隻から22隻に増やす計画です。しかし、この増える分の要員増は手配されていません。陸上自衛隊もぎりぎりの人数しかいないにもかかわらず、災害対応がのべつまくなしの状態にあります。本業である戦闘部隊としての錬成訓練をしている時間さえ取れないのが実情でしょう。任務が増えた分に対応して定員を増やそうとすると、まず、防衛省の内局、次いで総務省や財務省との厳しい折衝が必要で、結果として認められることは「まず」ありません。
—定員を増やしても、それを満たす募集が難しい。
香田:そうなのです。
—募集を増やすには、給料を上げるのが効果的でしょうか。
香田:今の時代は、お金ではだめです。
若者は皆が休んでいるときに一緒に休みたい。海上自衛隊の場合、1カ月の海上勤務があると、土曜・日曜が8日間つぶれます。これが嫌なのです。海上では携帯電話も通じず、インターネットもつながりません。
もちろん代休制度はあります。しかし、そうすると、艦が港にいるあいだは代休だらけになりかねません。港にいる間もメンテナンスや訓練が必要です。これらの作業のスケジュールが極めて窮屈な状態になり、結果的に海上自衛隊の任務達成能力(練度)が低下するのです。
また、女性自衛官を増やすという施策があります。これは重要なことであり、必要なことでもあります。しかし現実にはいろいろ問題が生じます。例えば、規模の小さな駐屯地で、厚生労働省が求める基準を満たす託児所を作るのは容易ではない。これも、防衛省と自衛隊だけの自己完結型の努力による解決には限界があり、関係省庁横断的な政府を挙げた対策が必要です。
募集も、自衛隊だけでやるのは限界に達しています。経団連の中西宏明会長が9月3日、大卒者の採用に関する指針を廃止すべきとの考えを示しました。自衛隊にも大卒の人が入隊します。また、高校生の就職活動も同様で、何らかの措置が必要です。このような自衛官の募集環境改善についての議論はなかなかしてもらえないのです。ここを何とかしないと、防衛大綱でいくら「きれいなこと」を言っても、自衛隊の能力向上は人の面で実効が上がりません。
別の例ですが、自衛隊は、テレビに広告を出して隊員を募集することもできません。米国に行って見てみてください。テレビでこんな映像の広告が流れています。「輸送機C130から空挺団がパラシュートで降りていく。しばらくすると、隊員がコーヒーを飲んでくつろいでいる」。日が昇る前に訓練を済ませ、朝のうまいコーヒーを飲んでいるのです。--そこで米軍コマーシャルの「We are ready. We are proud of my service. We serve for the United States of America.」(我々は何時、いかなる時にも任務に就けます。我々は軍務に誇りを持っています。我々はアメリカ合衆国に奉仕するのです)というテロップが出るという具合です。
加えて、若い男子が必要なのが実情です。いま、自衛官候補生の年齢上限を27歳から32歳に引き上げる予定になっています。女性自衛官の登用も進んでいます。
—しかし、大砲を担いで山道を登る若い男性隊員が集まらない。
香田:そういうことです。人員の問題への取り組みが、中央の辻褄合わせで終わってしまっているのです。実効性のあるアイデアは自衛隊が出すとしても、政府としての自衛官募集への取り組みが必要です。
米軍では託児学修士が部隊の託児所長
—女性自衛官の登用はどんな状況ですか。
香田:戦闘職種を含めて、女性の登用を進めている、というか、それはやらなければいけないことです。この時に大事なのは、やはり子育てができる環境を整えることです。そうでないと、せっかく教育と訓練を施し磨き上げた女性自衛官が職種転換を求めるようになってしまいます。その時に自衛隊は「家庭を犠牲にしろ」とは決して言えませんし、言ってはなりません。不十分な勤務環境による家庭や育児の負担増を理由に仕事を忌避する人を出してはいけないのです。
—女性が働き続けるのは一般企業でも必ずしも容易ではありません。何か良い手はありますか。
香田:例えば、母親が急な任務で長期間自宅を空けるような場合に、専属のベビーシッターを長期で利用できる補助制度など、知恵を出す必要があります。子供が成長したら、全寮制の高校に入学できるよう奨学金制度を創設する――などでしょうか。
米海軍では、制服*2の現役が30万人なのに対して非制服*3が20万人います。非制服組の中には、部隊に併設している託児所の所長などがいます。私の息子が通った、ある基地の保育所の園長先生は託児学の修士号を持っている女性でした。
*2:戦闘員のこと *3:非戦闘員のこと
—人員の層の厚さが日米でこれほど異なるのですね。
特効薬はありません。しかし、議論し、その結果を現実の施策として実現していかなければなりません。
日本の「盾」と米軍の「矛」をきちんとかみ合わせる
香田:考えるべき3つめの問題は、自衛隊と米軍の間で戦略を整合させることです。中国が米軍の来援を阻止すべくA2AD戦略*4を進めています。これに対して、日米でどのように対応するのか、に関する戦略の整合です。
*4:Anti Access, Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国にとって「聖域」である第2列島線内の海域に空母を中心とする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す
これは「言うは易く行うは難し」の取り組みです。日本は盾を考え、米国は「たたくこと」を考えている。これは、軍事作戦上はまるで別物です。現状は、盾と矛を組み合わせて真に機能する日米同盟の軍事力運用体制になっているでしょうか。
2015年4月にまとめられた「日米防衛協力のための指針」(いわゆるガイドライン)で同盟調整メカニズム(ACM)を設置することになりました。これは本当に機能しているでしょうか。担当者に聞けば「やっています」「できています」と答えるでしょう。しかし、米軍の友人の話では実態のほどはあやしい。
例えば、「盾と矛」の関係において日本は敵基地攻撃を米国に委ねています。「いつ、どこを攻撃してほしい」と誰が誰に伝えるのでしょう。安倍首相がトランプ大統領にいうのでしょうか。それとも、河野太郎外相がマイク・ポンペオ国務長官に伝えるのか。あるいは、河野克俊・統合幕僚長がジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長に、でしょうか。
—NATOはそういった調整が十分にできているのでしょうか。
香田:できています。日米の関係とは異なり、一人の総司令の下で、集団的自衛権を行使する、多国籍ではあるものの単一のNATO部隊として切りあいに臨むのです。日本は、憲法のしばりがあり、今次の平和安保法制の下でも集団的自衛権は限定的にしか行使ができないので、同一司令官の下で米軍とともに一体化した戦闘を行うことはありません。
—東日本大震災の時に設置した統合任務部隊(JTF)*5を常設にすると、少なくとも自衛隊と米軍の間で有効な調整・協力ができるようになりますか(関連記事「『日本は北東アジア防衛の最前線に立たされる』」)。
*5:陸上自衛隊(以下、陸自)の君塚栄治・東北方面総監(当時)がJTF東北の司令官となり、その下に海上自衛隊の横須賀地方総監と航空自衛隊の航空総隊司令官が加わる形をとった
香田:あったほうがよいでしょう。しかし、「統合」とはいかなるものかをよく考える必要があります。国軍司令官を設置して、陸・海・空の自衛隊を束ねる常設の統合部隊を作っても、常に、それぞれが同じ場所にいて、同じ任務を協力して進めるわけでありません。
例えば、我が国の有事において陸上自衛隊は、航空自衛隊のエアーカバーの下で、島嶼の防衛・奪還に取り組む。先ほどお話ししたように、これに米軍を巻き込むようなことがあってはなりません。この間、海上自衛隊は太平洋の海上優勢を保つよう働き、米軍の来援を支援する。そして、到着した米軍の打撃力をみせつけることで戦争を終結に導く。航空自衛隊は、我が国周辺の航空優勢を維持すると共に主として島嶼防衛にかかわる航空作戦をいろいろな形で実施するケースが多いでしょう。
統合部隊についていうと、任務を島嶼防衛にしぼった統合任務部隊の核(司令部と主要部隊)を常設しておき、必要に応じて兵力を増強できるようにしておく、ことも考えられます。部隊は日ごろの訓練が重要だからです。要するに、日ごろやっていないことは、突然の有事には、当然やれないということです。現在、任務を限定した統合任務部隊として、ミサイル防衛を担当するBMD統合任務部隊が設置されています。常設ではないものの、北朝鮮の脅威に長期間連続して備えたという観点からは準常設であり一つの事例にはなるでしょう。
—日本列島と東シナ海をくくり出した小さな地図ではなく、太平洋はもちろん、ハワイやその先にある米本土までを含めた大きな地図を見る必要があるのですね。
香田:そういうことです。
サイバー空間で生じる新たなグレーゾーン
—サイバー空間や宇宙での防衛をどうするかが、注目を集めています。
香田:これもやっていかなければならないことですね。サイバー空間の防衛に関していうと、自衛隊と警察との協力が必要になってくると考えます。
サイバー攻撃による被害が国内で生じた場合、まず疑うべきは犯罪でしょう。犯罪への対応は法執行機関である警察の役割です。しかし、サイバー攻撃が、外国が外地から組織的に行った国家行為あるいは軍事作戦であった場合は、日本の法が及ばず警察が対応できる範囲を超えることになります。
こうした全体像を考えると、警察と自衛隊が協力する国家規模のマルチドメイン対応が求められるのではないでしょうか。
要員の確保・教育の観点からも、国家規模の対応が求められます。今は、ただでさえ少ないサイバー要員が自衛隊や警察、さらには民間に分散しています。これは効率が悪い。自衛隊がサイバー攻撃に備えて配備している200人ほどの要員は自衛隊の資産・施設に対するサイバー攻撃への対応に役割が限られています。少なくとも、自衛隊と警察で情報共有できる仕組みを作る必要があることは明白です。
またサイバー空間における攻撃力について議論し、整理する必要があります。相手の設備を物理的にたたかないと、いつまでもサイバー攻撃を受け続けることになります。ならば、自衛隊が反撃することは、憲法9条が禁止する戦争や武力行使に当たるのかどうかという論議も必要です。物理的な破壊を伴わない反撃も武力行使なのかどうかという点に関する整理も求められます。
ちなみに米国は、オバマ政権の時に「サイバー攻撃は戦争と見做し得る」と整理しています。具体的には「オバマ政権は、海外からサイバー攻撃が行われるとの確証を得た場合には、大統領が(軍事力による)先制攻撃を命令できる」という方針を定めたことで、2013年2月3日のThe New York Timesで報道されました。
良ければ下にあります
を応援クリックよろしくお願いします。