『金正恩か金与正、訪中?北朝鮮の「ミャンマー化」を恐れる中国』、『中朝首脳会談、「米韓同盟揺さぶり」で一致 金正恩ともトランプとも組める習近平』(3/27・28 日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

3/28看中国<北京居民區排查僑眷 海外華人恐慌:又要搞運動?(圖)=北京の住民は華僑の一族を調べる 海外の華人は恐れ慌てる また運動が始まるのではと>北京朝暘区の一部で、帰国華僑とその一族・帰国留学生・台湾に親族がいる者について調査し、期限までに登録しろとの上からのお達し。調査項目は、姓名、出生年月、どこへ留學したか、どこの国に行ったか等。ネット民は「文革を思い出させる。海外にいた者は文革時と同じように帽子をかぶされ、自己批判しても、生きるか死ぬか分からない心配がある。今の敏感な時期には警戒を強めなくては」、「50年代に帰国した中国人は、海外での学習歴が明らかになり、10年後の文革を経て、中共より米国・英国・日本・あまつさえソ連にもスパイとして送り込まれた。労働改造所、離婚、自己批判等悲惨なることこの上ない」、「また、殺人運動が始まるのか?」「中共主席閣下は外国籍なので、大衆を調べる必要はないのでは」と。

https://www.secretchina.com/news/b5/2018/03/28/853952.html

3/29看中国<搶先召見金正恩 學者:北京曝一大隱憂(圖)=先手を打って金正恩と会見 学者は北京が心配していたことを晒したと>習が金と会談したのは、米朝会談時に中国が関与できないことを避けるため。FTは金の訪中は中国のリーダーの心配を軽減するためと報道。国際関係専門家の時殷弘はロシアメデイアに「最近になって朝鮮半島は劇的な変化が起きた。実際北京は蹴とばされてきたと言える。金正恩はこのところ朝鮮と韓国・米国の関係を改善しようと努力し、戦争の可能性はあるが、大幅に減った。北京は目の前の核危機事務以外は除外されている」と語った。韓国の金宰春大学教授は「朝鮮は米国と近づくことができたとしても、金正恩は北京との関係修復は必要である」と。自由時報は「金は中国が制裁に加わったのが不満で中朝関係は冷たくなっていたが、食糧や経済援助の問題と米朝会談の後ろ盾になってほしいのがあって、会った」と。米国シンクタンクのステインソンの孫韻は「トランプ・金会談が始まる前に、朝鮮半島の命運を決める交渉時に中国が関係を持つために金を呼んだ。もし交渉結果が朝鮮半島統一となれば、米国の朝鮮半島への影響力は拡大し、北京の戦略的利益に反することとなる」と。外界は米朝で対話が進めば、中国は北のカードを失ったと思う。米学者の章家敦は「依然として中国は朝鮮をコントロールできる能力を持つ。ただ以前にはその能力を使おうとは思わなかった。北京が米朝対話の行方が中国に不利になるのではと心配して、金の説明を聞くために北京に呼んだ、北京は文在寅とトランプとの会談前に北京に来て説明せよと警告した」と。韓国の朝鮮大学院大学の楊武仁教授は「習金会談の主目的はこのところの中朝関係の緊張緩和であり、中国は朝鮮半島に影響力を行使したいと思っている。朝鮮は経済的支持と孤立化を避けるため中国との関係を修復したいと思っていた」と。政治評論家の夏小強は「米国の強力な制裁に朝鮮は遭い、5月のトランプ・金会談は退路が断たれた。もし会談が決裂したら、金は致命的な打撃を受ける。それで北京を政権維持の為の支援者であり、米国との交渉の道具・切り札として使おうとしている」と。

https://www.secretchina.com/news/b5/2018/03/29/854046.html

3/29日経朝刊<中朝和解 圧力路線に試練 北朝鮮「段階的に非核化」 米、軍事行動は難しく

【北京=永井央紀、ソウル=峯岸博】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長による25~28日の電撃的な訪中は、冷え込んでいた中朝両国の和解を印象づけた。中国が後ろ盾として存在感を強めれば、米国は軍事行動を取りにくくなる。北朝鮮は「段階的な非核化」の意思を示したが、時間稼ぎに終わる懸念もくすぶる。中朝関係の改善で、日米が主導する圧力路線も後退しかねず、北朝鮮の非核化への道筋は一段と複雑になった。(関連記事総合1、国際1面に)

北京の人民大会堂で記念撮影に臨む金夫妻(左側)と習夫妻=新華社・共同

「両国の歴代指導者が築き上げた貴重な財産だ」。習近平(シー・ジンピン)国家主席は会談の場で中朝関係をこう持ち上げた。金正恩氏を厚遇で出迎え、帰路に就く27日には、習氏自ら、妻の彭麗媛氏とともに見送った。中国国営メディアが流した中朝首脳会談(総合2面きょうのことば)の映像は、中朝の蜜月復活を演出した。

中朝の突然の和解は、なぜもたらされたのか。トランプ政権誕生後、朝鮮半島情勢を動かしてきたのは、米国の「軍事オプション」の存在だった。最大限の圧力をかけつつ、北朝鮮が非核化に応じなければ攻撃も辞さない――と威嚇してきた。

実際、金正恩氏を訪中に駆り立てたのは、米国の軍事的手段の行使が現実味を帯びてきたからだ。中朝関係筋によると、首脳会談に向けた調整が始まったのは2017年末。再三の訪中提案に見向きもしなかった北朝鮮が唐突に前向き姿勢に転じた。トランプ米大統領が対話重視派のティラーソン国務長官を更迭すると噂され始めた時期だ。

年明け以降、北朝鮮は韓国の仲介で5月の米朝首脳会談に道筋をつけたが、会談が失敗に終われば「米国は軍事行動に移る」との見方は強かった。3月にはポンペオ米中央情報局(CIA)長官がティラーソン氏の後任に、ボルトン元国連大使が安全保障担当の大統領補佐官に決定。幹部に対北強硬派が並んだ。

金正恩氏も危機感を強めたようだ。3月下旬、中国共産党で対北外交を担う中央対外連絡部の実務者が秘密裏に訪朝。金正恩氏の訪中の最終調整だったという。

中朝会談が示したのは中国の北朝鮮寄りの姿勢だ。仮に米朝首脳会談が不首尾に終わっても中国が米国の軍事行動に反対するのは必至だ。中朝和解で米国の先制攻撃の可能性は以前より低くなり、圧力路線の効力が弱まる恐れもある。

会談では非核化を段階的に進めるべきだとの北朝鮮の考えが改めて示された。核放棄に向けて一歩進むごとに支援を取りつける「行動対行動」という主張について、中朝関係筋は「米国と韓国は次の首脳会談で適切な見返りを提示する必要がある」と解説。見返りに制裁緩和や敵視政策を求める構えだ。中国が今後、6カ国協議などの枠組みでの対話を働きかければ、北朝鮮が協議を核・ミサイル開発の「時間稼ぎ」に使う懸念も強い。

北朝鮮が中国に続き、ロシアと首脳会談をする可能性も取り沙汰される。実現すれば、日本が孤立する印象は否めず、日本人拉致問題などを巡る日本の北朝鮮への交渉力も弱まりかねない。北朝鮮包囲網づくりの動きを弱めないためにも日本は米韓と密に連携することがますます重要となる。>(以上)

3/28宮崎正弘氏メルマガ<金正恩の特別列車、次は必ずモスクワへ向かう 中韓米のバランスをとるため、一方のプーチンも状況の攪乱が大好き>

http://melma.com/backnumber_45206_6663179/

看中国の記事は、習が米朝で朝鮮半島の行く末を決められるのを恐れて金を呼んだと睨んでいます。勿論、金にもメリットがあるから言ったわけですが。でも金は習に北の存在を高く売りつけることができたという事です。若造にしては「やるな」と言う感じです。やはり、命が懸っているだけあって切迫感が違います。

中朝首脳会談が実現して益々金は核を手放すことはないのでは。ここは鈴置氏がいろんな見方をしていますが諦めないと思います。朝鮮の核ミサイルが 中国全土に届いたとしても、中国は来るべき米中戦争を睨んで北のカードを利用するのではないかと思います。先行き北と韓国を中国に組み入れれば、核は手に入りますので。

宮崎氏や日経の言うように、金がロシアも巻き込むとしたら、米国が中露の反対を押し切ってまで、北に戦争を仕掛けられるかどうかです。ただ、ロシアも理由はあったにせよウクライナ侵攻をしましたから、戦争の可能性がゼロとは言えません。ポンペオ、ボルトンですから。中国も米軍が本格的に攻撃すれば手は出せないと思います。「斬首作戦」は無いでしょうが。核施設を狙い、小型核のバンカーバスターで攻撃、日本にミサイルが飛んでくることも覚悟すべきです。それより在日のテロの方が怖いと言われていますが。

また中国がこの隙に尖閣を取りに来るかもしれません。防備をしっかりしませんと。今回の天皇・皇后両陛下の与那国島訪問は台湾(島から台湾が見える)への思いの表れと言う人もいますが、それだけでなく「国境防備に力を入れよ」の思いがあったのではと推測します。与那国から尖閣は150Kmでジェット機で6分で着くそうです。 石垣が170Kmですから。「海ゆかば」は万葉集にある大伴家持が作った詩です。日本を守る防人の一員としての気持ちを謳ったものと思われます。

日本の採るべき現実的な対策は核武装しかありません。鈴置氏記事にあるように、米朝首脳会談で「朝鮮半島」の非核化」=在韓米軍の撤退をトランプは約束するかもしれません。韓国切り捨てです。まあ、金三胖が約束を守ることはないでしょう。朝鮮半島人の宿痾ですから。中国人の「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」の上を行く「息をするように嘘を言う民族」です。北の核を認めるということになればNPT体制は崩壊します。日本が持って悪いという論理にはならないでしょう。ただ左翼に洗脳された国民が多いので、米国と密約を交わし、核の秘密基地(中国と朝鮮半島に届くだけの)を米軍基地内において日本が自由に使える契約とすれば良いでしょう。日本の保有米国債で核ミサイル代を払えば良いと考えます。中・朝が核で日本に降伏を迫った時に明らかにすれば良いと思います。

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北朝鮮の要人が訪中か。北京は厳戒態勢(写真:AFP/アフロ)

前回から読む)

3月26日、金正恩(キム・ジョンウン)委員長か、その妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が訪中した模様だ。

お召列車に乗れるのは一家だけ

鈴置:北朝鮮の特別列車が同日午後、中国遼寧省・丹東を経由し、北京に到着しました。人民大会堂周辺は「元首級を迎える」特別な警戒態勢が敷かれました(日経・電子版「北朝鮮要人が訪中か」参照)

3月27日午前までに中国、北朝鮮のいずれの政府もこうした動きについて何の説明もしていません。しかしこの特別列車は北朝鮮の歴代の最高指導者が訪中あるいは訪露する際に使うものです。「お召列車」なのです。乗っているのは金正恩委員長か金与正・第1副部長の可能性が極めて大きい。

金与正氏は平昌(ピョンチャン)冬季五輪の参観を名目に訪韓しています(「北より先に韓国に『鼻血作戦』を発動する米国」参照)。兄、金正恩委員長からの信頼は相当に篤いと思われます。

蚊帳の外の中国

—兄か妹か分からないにせよ、金ファミリーの訪中の目的は何でしょう?

鈴置:4月末に予定される南北首脳会談と、5月末に開催とされる米朝首脳会談を控え、中国に意図を説明するためでしょう。

中国は北朝鮮が一気に米国側に寝返るのではないか、と恐れています。「ミャンマー化」です。中国共産党の英文対外宣伝紙「Global Times」が米朝首脳会談に露骨な警戒感を表明していました。

3月18日の「Nothing should come between China and North Korea」です。

この記事は冒頭で「北朝鮮の核問題を巡り韓国と米国、日本のメディアが国際世論の流れを作るようになった」と主張。

さらに「中朝両国にとって重要なのは、核問題に関して意見の違いはあっても良好な関係を維持することであり、韓米日のメディアの影響力を断ち切ることである」と訴えました。

The North Korean nuclear crisis has placed Pyongyang under the spotlight of global public opinion, which is basically dominated by information from South Korean, Japanese and Western media.

For China and North Korea, the major tests are how to keep the right balance between their divergences over the nuclear issue, how to maintain friendly ties between Beijing and Pyongyang and how to avoid the influence of South Korean, Japanese or Western media.

要は「南北」「米朝」の両首脳会談の開催が決まるなど、朝鮮半島が激変し始めた。しかるに中国は完全に蚊帳の外にいる。中国にとってこれはまずい、との主張です。

ただ「我が国は外交的にのけ者にされている」と露骨に書けば、中国共産党批判になってしまう。そこで「中国以外の国のメディアの影響力が増した」とオブラートに包んだと思われます。

クリントンを招待した金正日

—「中朝の結束」が大事、という主張ですね。

鈴置:最後の部分で再びそれを強調しました。ただ、それだけでは説得力が薄いと考えたのでしょう。北朝鮮に対し「中国なしで韓米日に対抗できないぞ」と脅しました。

For North Korea, it would be difficult and dangerous to cope with Seoul, Washington and Tokyo all alone. China’s support can defuse many risks.

北朝鮮の対話攻勢に関し、日本や米国では核武装を完成するための時間稼ぎ、といった見方が多い。さらに韓国の保守は「時間稼ぎを幇助する韓国は米国から目の敵にされる」と危機感を増しています(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。

しかし中国では「米朝首脳会談を期に北朝鮮が一気に米国側に鞍替えする」との警戒感が高まっているのです。

2000年10月、当時の指導者、金正日(キム・ジョンイル)総書記がクリントン(Bill Clinton)米大統領を平壌(ピョンヤン)に招待したことがありました(日経・電子版「北朝鮮と米国の対話、20年前の既視感」参照)。

1994年、米朝は核問題で対立し戦争の瀬戸際まで行きました。が、1999年9月にミサイル発射の中断と引き換えに対北制裁を解除するという妥協が成立。その後は米国が食糧援助に乗り出す一方、北朝鮮は米国の大統領を招待するに至ったのです。

米朝蜜月を日中で阻止

—クリントン大統領は訪朝しませんでした。

鈴置:さすがに米国内で、大統領の北朝鮮訪問には反対の声があがったからです。クリントン政権はオルブライト(Madeleine Albright)国務長官を訪朝させるに留めました。

この時の中国の態度が面白いものでした。現在と同様に、公式には米朝対話を大歓迎しました。でも、日本の朝鮮半島専門家に対し「米朝が手を握ることは中国と日本にとって望ましいことではない。中・日が協力して阻止すべきではないか」と持ちかけてきたのです。

中国にとって米国の影響力が韓国だけではなく、朝鮮半島全体に及ぶのは何としても避けたかったのです。親米国家が中国と国境を接することになりますからね。

中国は外交巧者と言われます。しかし、周辺の小国に対してはしばしば見くびって失敗します。完全に手なずけていたはずのミャンマーにも逃げられ、米国側に走られました。

2010年11月、ミャンマー政府が民主化運動の指導者、アウンサン・スーチー(Aung San Suu Kyi)氏の軟禁を解いたのがきっかけでした。

もちろん、米国と水面下で交渉した結果でした。これを期にミャンマーは米国や日本との関係を正常化したうえ、外国からの投資も本格化しました。

中国は国境を接するミャンマーを「失った」のです。このころ、米国の次のターゲットは北朝鮮だ、との見方も浮かびました(「次は北朝鮮に触手? 米国、中国包囲網づくりへ全力」参照)

米中が勢力圏を巡り争い始めた、との認識が定着したからでもあります。中国指導部としては「ミャンマーの悪夢」を繰り返すわけにはいかないのです。

先制攻撃を主張する大統領補佐官

—では北朝鮮側に、中国の希望に応じて最高指導部を訪中させる必要があるのでしょうか。

鈴置:あります。北朝鮮も米国に騙されるのではないかと疑心暗鬼に陥っているはずです(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。

米朝首脳会談でトランプ(Donald Trump)大統領が「核・ミサイルを直ちに廃棄せよ」と迫る。拒否したり、しなくとも時間稼ぎに出れば、それを名分に米国が北朝鮮を先制攻撃するかもしれないのです。

ことに3月22日、トランプ大統領は国家安全保障問題担当の大統領補佐官にボルトン(John Bolton)元国連大使を指名しました。同氏は北朝鮮の核が「差し迫った脅威」であると主張し、先制攻撃を主張しています。

2月28日にWSJに寄稿した「The Legal Case for Striking North Korea First」でも先制攻撃の正当性を説いています。最後の1文が以下です。

It is perfectly legitimate for the United States to respond to the current “necessity” posed by North Korea’s nuclear weapons by striking first.

米国は「何をするか分からない国」になりました。そんな米国に向き合う北朝鮮は「中国の後ろ盾」が欲しくなるのです。

(次回に続く)

3/28記事

金正恩委員長は3月25―28日、中国を訪問し、習近平国家主席と会談した(写真:新華社/アフロ)

前回から読む)

金正恩(キム・ジョンウン)委員長が3月25―28日に中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。

「朝鮮半島の非核化」で一致

—特別列車に乗っていた北朝鮮の要人は金正恩氏であったことが判明しました。

鈴置:3月28日朝、新華社が報じました。最高指導者に就任して初の外遊です。習近平主席と会談したとも伝えました(日経・電子版「訪中の要人は金正恩氏 習主席と会談 新華社報道」参照)。

人民網(中国語版)の「習近平同金正恩挙行会談」(3月28日)によると会談で、習近平主席は「朝鮮半島の非核化」を強調。これに対し金正恩委員長も「朝鮮半島の非核化は金日成主席と金正日総書記の遺訓であり、我々の常に変わらぬ立場である」と答えました。

「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」で一致して見せたのがポイントです。後者は北朝鮮だけではなく韓国の非核化も意味します。

まずは在韓米軍撤収

—韓国に核兵器は存在するのですか?

鈴置:しません。韓国は核兵器を持たず、米国も1988年前後に戦術核を韓国から撤収済みです。しかし韓国は米国の戦略核で守られている。米国の核の傘に入っているのです。

北朝鮮はここを突いて「不公平だ。米国の核の傘もやめよ」――つまり「米韓同盟も廃棄せよ」と主張してきました。米朝首脳会談でもそう要求するでしょう(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。

なお、中朝間にも軍事同盟は結ばれてはいますが形骸化しており、北朝鮮は中国の核の傘に期待できません。

話をまとめますと、中朝首脳会談で朝鮮半島の非核化に一致した――つまり、中朝がスクラムを組んで米国に対し、韓国との同盟を破棄するよう要求することを決めたのです。

—米韓同盟の廃棄は簡単に実現するのですか?

鈴置:容易ではありません。とりあえずは在韓米軍の縮小、次は撤収、最後に同盟破棄といったシナリオを中朝は描いているでしょう。

在韓米軍が撤収するだけでも中朝にとっては大きな福音です。戦争が始まれば1時間以内に北京や平壌を攻撃可能な米国の空軍基地が韓国から消えてなくなるのですから。

中国軍が北朝鮮に侵攻

—米国や韓国が飲むのでしょうか。

鈴置:北朝鮮が本当に核を放棄するなら、在韓米軍の撤収くらいは受け入れるかもしれません。米国では、経済力の伸長が著しい韓国に米国の陸空軍を配備しておく必要があるのかとの疑問が高まっています。

ことにトランプ(Donald Trump)大統領は選挙戦の最中から「駐留経費をちゃんと支払わないのなら、韓国や日本から軍を撤収する」と主張しています(「トランプとオバマの間で惑う朴槿恵」参照)。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も米軍撤収に反対しないと思われます。この政権は「米韓同盟こそが民族の内部対立の元凶だ」と考える左派の集団です(「『米帝と戦え』と文在寅を焚きつけた習近平」参照)。

米国との同盟を破棄すべきだ、と堂々と主張する青瓦台(韓国大統領府)の高官も登場しました(「『米韓同盟破棄』を青瓦台高官が語り始めた」参照)。

大状況から言えば、朝鮮半島の非核化――つまり、北朝鮮の核武装放棄と在韓米軍撤収の交換は十分に起こり得るのです。

—近未来小説『朝鮮半島201Z年』の展開ですね。

鈴置:朝鮮半島を巡る各国の思惑と実力を組み合わせると、そういう予想になります。

ただ現実には、本当に北朝鮮が核を放棄するか、信用できないから話が進まないのです。『朝鮮半島201Z年』でも人民解放軍が北朝鮮に侵攻し、実力で核を取り上げるという筋立てにしました。

ワラにもすがる金正恩

—北朝鮮が核の放棄を約束しても誰も信じない……。

鈴置:これまで何度も騙してきましたからね。そこで今度は中国の保証を取り付けて米朝首脳会談に臨む作戦でしょう。

トランプ大統領に「核武装を放棄しろ」と言われれば「そうする」と金正恩委員長は答える。横からボルトン(John Bolton)大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が「証拠を見せろ」と迫れば「核関連施設に中国の査察を受け入れる。中国なら信用できるだろう」と言い返す。

—トランプ政権はそれで納得するでしょうか。

鈴置:納得しないでしょうが、時間稼ぎにはなる。

—「時間稼ぎ」を許すでしょうか、米国は。

鈴置:新たに大統領補佐官に就任したボルトン氏も、国務長官に指名されたポンペオ(Mike Pompeo)氏も北朝鮮の手口は知りつくしています。容易には騙されないでしょう。

そもそも北朝鮮が時間稼ぎに利用してきた6カ国協議も、中国が主導しました。中国も「時間稼ぎ」の共犯者なのです。

中国を巻き込んだ「朝鮮半島の非核化」で米国を騙せるとの自信は北朝鮮にもないでしょう。軍事的な圧迫と経済制裁が強化される中で、最後のカードを切ったということと思います。ワラにもすがる気持ちで。

メンツを保った習近平

—中国は米国が「時間稼ぎするな」と怒り出してもいいのでしょうか。

鈴置:別段、中国は困らないでしょう。北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」で共闘してくれ、と頼んできたからそれを受け入れた。金正恩が頭を下げてきたのですから、まずは自分のメンツも保てた。

前回紹介した「Global Times」の記事が指摘したように、中国は外交ゲームで外されたと見なされていた。それが突然、すべての動きの黒幕であるかのように振る舞えるようになったのです。

米国が「時間稼ぎ」に怒り出しても中国に損はない。米国は北朝鮮を先制攻撃するか、あるいは金正恩暗殺を実行するでしょう。ただ、北朝鮮に地上軍を本格的に派遣するつもりはない。

中国は米国の攻撃・暗殺後に人民解放軍を北朝鮮に派遣し、核施設を破壊すればよいのです。米国に協力するわけです。ついでに北朝鮮に傀儡政権を押し立てる。

さらには韓国をも手に入れることが可能です。韓国の左派政権は「北朝鮮の核の脅威がなくなったのだから米国との同盟はもう不要だ」と言い出すでしょう。

米国もそれを期に半島から兵を引く可能性が高い。米軍を失った韓国は、今以上に中国の言いなりになるのは確実です。

トランプも「韓国は中国の一部」

トランプ大統領は、中国が韓国を自らの勢力圏に組み込むことを暗に認めています(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。

2017年4月の習近平主席との会談後、WSJに「彼(習近平主席)は中韓の歴史に話を進めた。北朝鮮だけではなく朝鮮半島全体についてだ。数千年の間……多くの戦争があった。そして韓国は事実上、中国の一部であったのだ」と語っています。原文は以下です。

He then went into the history of China and Korea. Not North Korea, Korea. And you know, you’re talking about thousands of years …and many wars. And Korea actually used to be a part of China.

「中国が北朝鮮の非核化に協力するなら、引き換えに韓国を渡す」という習近平主席との約束を、メディアを通じて担保したと受け止められました。

中国はどちらに転んでもいいのです。米朝が野合しない限りは。北朝鮮と組んで米国を騙せるなら、在韓米軍の撤収を実現できる。騙すことに失敗したら、今度は実力で北朝鮮の非核化に協力すればいい。やはり在韓米軍の撤収を実現できる。

どう転ぼうが北も南も――朝鮮半島全体が中国の傘下に入ることを期待できるのです。

(次回に続く)

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