『F22戦闘機24機とB2爆撃機10機で北朝鮮の核粉砕 真剣に「軍事的対応」を検討し始めたトランプ政権』(3/27日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『トランプの米国で起こっている真に恐ろしいこと ニューレフトから超保守に転向した論客の指南書が示す米国の今』(3/27JBプレス 高濱賛)、『監視は事実?オバマによるトランプ盗聴疑惑に新資料 下院委員長が「通話は傍受されていた」と言明』(3/26JBプレス 古森義久)について

「金三胖」と呼ばれる金正恩が米軍襲撃を恐れ、ヤク漬けになっているかもしれないとの記事がありました。そんなに怖いのなら、自分の北への統治を諦めて、米国か中国の軍門に下ればよいのにと思いますが、朝鮮人民軍のクーデターが起こり、処刑されることは充分考慮していると思います。何せ無慈悲に粛清してきたトップですから、幸福な死に方はしないと思います。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170328/plt1703281130001-n1.htm

北と言い、南と言い、朝鮮民族は合理性を基にした判断ができません。情緒優先なので、科学的思考ができません。韓国のノーベル賞などこういうスタンスが続く限り無理でしょう。

米国の北への「斬首作戦」ですが、トランプはやると決めたらやるでしょう。トランプケアの議会工作失敗や入国制限の大統領令への司法の却下など、失政が続いていることもあり、リカバリーをどこかでと考えるかも知れません。ただそうは言っても、米国民の犠牲が大きくなれば、大統領弾劾にもなりかねません。記事にある通り、最初は、北と取引のある金融機関の取引停止を目論むでしょう。北と取引があるのは、3/28宮崎正弘氏のメルマガによれば、中国以外にも、ナミビア、南ア、モザンビーク、アンゴラ、ウガンダ、タンザニア、コンゴ等アフリカ大陸です。中国の銀行を取引停止にすれば経済的困難の状況にあり、中国の経済崩壊を早めて良いと思われます。AIIBの参加加盟国が70国に増えたと嬉しそうに中国は報道していますが、銀行業務の本筋は金を集めて、必要な所に貸付することです。いくら支店を増やしても預貸業務で実績を示さない限り、評価されないのと同じです。況してや無格付けでスタートして、今も取れていません。高い金利を払って預金集めせねばならず、必然的に高い金利で融資することになります。北との取引は人民元でやるようになるのかも。でも、人民元は暴落の噂もあり、大損こくようになるのでは。

http://melma.com/backnumber_45206_6506616/

http://melma.com/backnumber_45206_6506280/

http://melma.com/backnumber_45206_6506943/

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170118/frn1701181130003-n1.htm

「斬首作戦」を実行するとなると、在韓米軍の家族の安全を第一に考え、訓練に名を借りた、沖縄基地への移動が先にあるでしょう。B61-11が使われるかどうかです。小型水爆とのことで米国は核を2度もアジアで使うことになります。国際世論の非難に耐えられるかどうか。でも、これを使わなければ確実に北の反撃を許します。自走砲による、固体燃料のミサイルではミサイル防衛で全部撃ち落せるかどうか。日本は森友問題に現を抜かしている状況ではないのに。

CIAやFBIが盗聴しているのはアサンジやスノーデン、フーバー元FBI長官の例を挙げれば納得するでしょう。ただ、トランプ側の傍受をオバマが命じたかどうかは藪の中でしたが、連邦議会下院情報委員会のデビン・ヌネス委員長が「トランプ陣営の通話はオバマ政権の情報機関に傍受されていた」と公式の場で発言したとのこと。ウオーターゲートならぬオバマゲートになる可能性も出てきました。パシフィストのオバマがノーベル平和賞を貰い、世界の平和が混迷してきたのは皮肉です。彼は無能を絵に描いた人間です。民主党のカーター、ビル・クリントン、オバマが北と中国を増長させた主犯です。日本の安全にとって物凄い脅威を育ててきたという事です。

高濱日経ビジネスオンライン記事

米軍のF22戦術戦闘機(写真:ロイター/アフロ)

—米国では、レックス・ティラーソン米国務長官の日中韓歴訪をどう評価していますか。同長官が歴訪中に「北朝鮮次第で、軍事的対応も辞さず」と発言したことに対し北朝鮮は「いかなる戦争にも対応できる意志と能力がある」(3月20日北朝鮮外務省報道官)と反発しています。

高濱:ティラーソン長官は、就任して以来1回も記者会見をしていません。外交面では、ドナルド・トランプ大統領の過激なツィッター発言*ばかりが目立っていました。

*:トランプ大統領は3月17日にもツイッターで「北朝鮮は悪事を働いている。中国は(北朝鮮問題で)ほとんど協力していない」と中国を批判している。

米国民は、ティラーソン長官について、エクソンモービルの元会長でロシアのウラジミール・プーチン大統領と個人的に親しいことぐらいしか知りません。

同長官は、軍人出身のジェームズ・マティス国防長官にすっかり水をあけられています。マティス国防長官はすでに日韓を訪問して一定のインパクトを与えました。口の悪い外交関係筋の中には、「影の薄い国務長官」(米主要シンクタンク上級研究員)などティラーソン国務長官の陰口を叩く者もいます。

今回のティラーソン国務長官の東アジア歴訪は、汚名を返上する絶好のチャンスでした。

「オバマ前政権の対北朝鮮政策は完全な失敗」

ティラーソン国務長官が日中韓を歴訪した狙いの一つは、「オバマ前政権の対北朝鮮政策は失敗だった」と内外に公言し、「新たなアプローチで臨む」と宣言することでした。そのこころは、「北朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返すなら軍事行動も辞さず粉砕する」という決意表明です。

マティス国防長官の後塵を拝した「米外交の司令塔」、ティラーソン国務長官の初めての東アジア歴訪の最大の懸案は何だったか。ギクシャクしている米中関係を正常化することと、瀬戸際外交を続ける北朝鮮への対応を日米ですり合わせることでした。

韓国は朴槿恵大統領(当時)の弾劾で政局は流動的。米国としては、最新鋭ミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍への配備を急ぐ必要がありますが、韓国の暫定政権と交渉しても進みません。

ティラーソン国務長官は韓国滞在中、韓国政府高官と昼食も夕食も共にしませんでした。夕食は一人で食べたと言っています。「現実」を反映したビジネスライクな対応でした。

ティラーソン訪中の評価は二分

—中国の習近平国家主席ら最高指導者との会談の成果について、米国ではどう受け止められていますか。

高濱:トランプ大統領は、「一つの中国」という米中合意の基本原則に疑義を唱えたり、安全保障や経済の面から中国を批判したりしてきました。トランプ大統領と習国家主席との電話対談で関係改善に一応一致したものの、双方ともに疑心暗鬼。それを解消するのがティラーソン国務長官のミッション(任務)でした。そのうえで、対北朝鮮問題について習国家主席からポジティブな反応を引き出しかったわけです。

その結果はどうだったか。米国内での評価は二分しています。

米ロサンゼルス・タイムズのジェシカ・マイヤーズ北京特派員は極めて辛い点数をつけています。

「中国は、『北朝鮮の挑発行為に対して米国は軍事行動も排除しない』としたティラーソン長官の主張を一蹴。トランプ政権の対中関係改善の真意を試そうとした。中国メディアは会談後、『中国外交の勝利』だと宣伝している」 (“China pushed back on tougher U.S. approach to North Korea.” Jessica Meyers, Los Angeles Times, 3/18/2017

マイヤーズ記者はさらにこう解説しています。  「ティラーソン国務長官と習国家主席以下の中国指導部は、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止すべく米中が協力することで一致したものの、米国の強硬姿勢には猛反発、従来通りの対話重視を求めた。そのうえで北朝鮮には一定の影響力を持つ中国が北朝鮮にさらなるプレッシャーをかけることに関しては明言を避けた」

中国は「相互尊重」「ウィン・ウィン」発言を高く評価

一方、ティラーソン訪中を評価するメディアもあります。米ワシントン・ポストのサイモン・デニヤー北京特派員はこう分析しています。

「ティラーソン国務長官の訪中は中国最高指導部との建設的かつ結果重視志向の関係を築くのが狙いだった。これに対して中国は、トランプ政権が対北朝鮮に対し軍事行動の可能性を示唆しているにもかかわらず、ティラーソン長官を歓迎した。習国家主席は、ティラーソン国務長官に『あなたは、米国の政権交代をスムーズにするために積極的な努力をされてきた。米中関係は協力と友好によってのみ定義づけられるというあなたのコメントを評価したい』と述べた」

「ティラーソン国務長官は、公の場では中国最高指導部が好んで使う『相互尊重』『ウィン・ウィン協力関係』(持ちつ持たれつの共存関係)というフレーズを使った。これは中国にとって驚きだった。ティラーソン国務長官はその一方で、非公開の席上では、対北朝鮮問題や米中貿易不均衡問題に対する中国の対応を厳しく批判したはずだ」 (“In China debut, Tillerson appears to hand Beijing a diplomatic victory,” Simon Denyer, Washington Post, 3/18/2017

ティラーソン国務長官は、トランプ大統領の就任でギクシャクした米中関係を正常化し、切迫する北朝鮮情勢での連携を強化するための下地作りには成功。それを受けて4月の米中首脳会談に向けた調整に漕ぎつけたと、デニヤー記者はみるわけです。

国務省を担当する米主要紙のベテラン記者はデニヤー記者の見解に同意して、筆者にこう指摘しました。「ティラーソン国務長官は対中交渉では百戦錬磨のビジネスマンらしいアプローチを見せたように思う。前例を重んじる職業外交官にはできない交渉術だ。相手のメンツを立てつつ、こちらの言いたいことはばしっと言ったようだ。王毅外相や楊潔篪国務委員とは、中国が対北朝鮮石炭輸入禁止などでもっと圧力をかけるべきだと釘を刺したに違いない」

直ちには実施できない「軍事的選択」

—ティラーソン国務長官は歴訪中に対北朝鮮問題で「軍事的選択」をちらつかせました。北朝鮮が瀬戸際外交を続ける場合、米国は本当に対北朝鮮で軍事行動に出る可能性があるのでしょうか。

高濱:「軍事的選択」発言の狙いは、北朝鮮の金正恩委員長に揺さぶりをかけることにあります。

金委員長は最高指導者になって5年の間に、核実験3回、ミサイル発射実験は30回以上も実施しています。なぜ、経済難が続く中で、核開発やミサイル開発にそこまでこだわるのか。

米専門家の中には、「若輩で何ら実績のない金委員長にとって、偉大な指導者としての地位を確立する手段はこれしかない」(元米国務省高官)といった指摘があります。また「北朝鮮が金正男氏を暗殺したのは、正男氏の後ろ盾になっていた中国が正男氏を担ぎ出すのではなかろうか、という疑心暗鬼があった」(米シンクタンクの北朝鮮問題専門家)と分析する向きもあります。

北朝鮮の瀬戸際外交は、同国の内政に大きく関わり合いを持っているという認識です。ということは、米国が「軍事的選択」に踏み切る時には、北朝鮮の核・ミサイル施設を攻撃してそれで「終わり」というわけにはいきません。核施設を粉砕し、ミサイル施設を全滅させたあとの北朝鮮がどうなるのか。当然、金正恩体制が崩壊する事態も視野に入れる必要があります。

北朝鮮は在日米軍基地を核の標的にしていると公言しています、したがって米国は当然、日本や韓国の出方も見極めなければならない。日本政府は日米軍事同盟の深化を強調していますが、万一、北朝鮮が報復措置として日本の原発や自衛隊基地を標的にする事態になったらどうなるでしょう。

韓国は5月には革新派が大統領になりそうです。米軍による北朝鮮攻撃に猛反対するでしょう。

ティラーソン国務長官が「軍事的選択」発言をした直後に、北朝鮮は新型ロケットエンジンの燃焼実験に成功したと発表しています。このエンジンを使った長距離弾道ミサイルの発射実験を近く行うことも示唆しています。

金委員長はまったく空気が読めないのか。それとも突っ走るほか選択肢がないのか。

核・ミサイル基地攻撃機は在韓、在日米軍基地から発進

—米国は「軍事的選択肢」としてどういった軍事作戦を検討しているのでしょう。

高濱:「ストラティジック・フォーキャスティング社」(Stratfor)*は、米軍が北朝鮮を攻撃する際の具体的な軍事作戦について分析しています。

それによると、北朝鮮の防空網は旧式で、米軍のB2ステルス爆撃機やF22戦術戦闘機の侵入を探知するのは極めて困難だとしています。

*:国際軍事・経済・政治の動向を予測分析する有力民間調査機関として定評がある。

具体的には、米軍が北朝鮮の核施設を攻撃し破壊するには大型貫通爆弾*(Massive Ordnance Penetrator=MOP)や誘導爆弾GBU-32**(Joint Direct Attack Munition=JDAM)を搭載したF22戦術戦闘機24機とB2戦略爆撃機10機もあれば十分だと分析しています。

F22戦術戦闘機は在韓米軍基地や在日米軍基地から発進することになります。

北朝鮮攻撃となれば、在日米軍基地が重要な役割を演ずることになります。北朝鮮が在日米軍基地を標的にすると宣言しているのも頷けるというものです。

*:MOPは1万3600キログラムの「バンカーバスター」精密誘導爆弾(制式名称はGBU-28)。貫通力は30メートル、強固な地下要塞、地下に配備された弾道ミサイル、地下指令所の精密機器破壊用として開発された。 **:JDAMは、無誘導爆弾に精密誘導能力を付加する装置で、無誘導の自由落下爆弾を全天候型の精密誘導爆弾(スマート爆弾)に変身させることができる。イラクやアフガニスタンで使用された。 (“What the U.S. Would Use to Strike North Korea,” Analysis, Stratfor, 1/4/2017

トランプが攻撃決定を決める時

—トランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するのは、どんな状況になった時でしょうか。

高濱:ティラーソン国務長官は今回の歴訪時に二つのケースを上げています。一つは、北朝鮮が韓国軍あるいは米軍に脅威を与える行動に出た時。二つ目は、「米国が行動しなければならない」という段階にまで北朝鮮が兵器装備計画をレベルアップさせた時です。

北朝鮮に対して米国が軍事行動を取る狙いは、あくまでも核開発阻止です。第二次朝鮮戦争に陥る事態は絶対に回避するのが大前提です。しかし核とミサイルを失った北朝鮮はどうなるのか。北朝鮮を攻撃する時にはそれによって生じるコンセクエンス(必然的な結果)についても考えなければなりません。

確かに、米国内にも軍事行動に出ることを疑問視する向きがあります。事態が悪化した場合は、とりあえず、対北朝鮮経済制裁の強化に踏み切るでしょう。トランプ政権内部は北朝鮮を国際金融から排除する広範囲な制裁措置を検討しています。北朝鮮と取引がある第三国で活動する中国企業などを制裁対象にする案が有力視されています。イランに対して実施した制裁と同じようなものです。

忘れてならないのは、トランプ大統領はオバマ前大統領ではないことです。何をやりだすか、予想不可能なのがトランプ大統領です。本当に怒り出したら何をやりだすか分かりません。大統領を取り巻くスティーブ・バノン首席戦略官ら超側近はタカ派ばかりです。

「そのへんを甘く見て、金委員長が火遊びを続けていると、何が起こるか、わからんぞ」。ホワイトハウス中枢を良く知るワシントンのジャーナリストの一人は、筆者にこう囁きました。 (“Adult Supervision: Secretary Tillerson in Asia,” Stephan Haggard, PIIE, 3/20/2017

■変更履歴 掲載当初、「F22戦術戦闘機は在韓米軍基地や在日米軍基地、空母から発進することになります」としていました。「F22戦術戦闘機は在韓米軍基地や在日米軍基地から発進することになります」の誤りです。お詫びして訂正します。[2017/03/28 14:30]

高濱JBプレス記事

米大統領の娘イヴァンカさん、ホワイトハウス入りへ オフィス確保(ホワイトハウスで開かれた記者会見に出席した時の写真、右は夫のジャレッド・クシュナー氏、2017年3月17日撮影)〔AFPBB News

反対する共和党下院議員を脅迫する大統領

「I’m gonna come after you」(お前らを追いかけ回すぞ)

次の選挙で「お前らを追いかけ回して、落っことしてやるからな。そう思え」という意味だった。

発言の主はドナルド・トランプ米第40代大統領。場所は立法の府、米連邦議会議事堂、上院と下院とを分けるドーム下のロタンダ(円形広間)。数人の下院議員に向かって言ってのけた。

選挙公約の最重要課題であるオバマケア(国民健康保険改革)廃止に伴う共和党提案に異議を申し立ててた一部下院議員に放った暴言だ。与党内から出ている反論に怒り心頭に発したのだろうが、行政府のトップが立法府の議員に向かっていうべき言葉ではない。

大統領選の時から言いたい放題を言ってきたトランプ氏が「思ったことを腹にしまっておけない」性格なことはすでに米国民は分かっている。が、それでもこの暴言はいただけない。

FBIの否定もなんのその、「オバマは俺を盗聴していた」

それだけではない。

トランプ大統領が「オバマ前大統領は選挙中にトランプ選挙本部を盗聴していた」とツィートしたのは3月4日。

米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官自らが議会での証言で「それを裏づける証拠は見つかっていない」と全面否定しているにもかかわらず、2週間以上その発言を取り消そうとはしていない。

大企業目線で保守的な論調を旨とするウォール・ストリート・ジャーナルですら3月22日付け紙面で「A President’s Credibility」と題する社説を掲げ、「トランプの欺瞞は国内外での大衆の信頼を失っている。事実を軽視すれば、国民はトランプを偽大統領と見なすようになる」と警告している。

なぜ、そうまでして言いたいことをTPOをわきまえずに言い、自分の思い込んでいる「間違った事実」を頑なに堅持しようとするのか。

その謎を解く1つのカギを提供してくれている本が出ている。今回紹介する本書、「A Big Agenda: President Trump’s Plan to Save America」(重要なアジェンダ:トランプ大統領のアメリカ救済計画)だ。

一言で示せば、「トランプ大統領の勝利は保守主義の復権であり、革命なのだ。目指すは個々の政策ではなく、保守イデオロギーの復権にある」ということ。

その意味では事実関係がどうのこうの、ごちゃごちゃした枝葉末節などうっちゃっておけというのだ。

トランプ大統領をはじめトランプ陣営の面々にとっては「バイブル」とまで言われている本だ。この本の書評を書いているのは保守系メディアだけ。トランプ大統領が対決するニューヨーク・タイムズほか主流メディアは完全に無視している。

かって黒人過激派を支援した論客はなぜ「転向」したのか

Big Agenda: President Trump’s Plan to Save America by David Horwitz Humanix, 2017

筆者は「米国でも屈指の保守主義扇動者」と評されているディビッド・ホロウィッツ(78)。

両親は生粋の共産主義者。その影響を受けて1956年から75年までニューレフトの旗手と言われてきた。70年初頭には黒人過激派組織「ブラックパンサー」に共鳴し、運動資金集めに奔走した。

当初は、ソ連のヨシフ・スターリン(ソ連共産党書記長)に傾倒するが、厳しい粛清・殺戮を繰り返すスタリーンに失望して共産党を脱党する。

長い沈黙ののち、1994年の大統領選には保守派のロナルド・レーガン共和党候補に1票を入れたのを機会に左翼から右翼へ転向した。

「ウィキーリーク」編集長ジュリアン・アサンジ氏のインターネット番組に出演したホロウィッツ氏は転向の動機についてこう述べている。

「共産主義者の言うユートピアは理想に過ぎない。人間というものはそれほど崇高なものではない。自己中心的であり、嘘つきであり、欺瞞だらけだ。スターリンがそのいい例だ。共産主義者というものは他の人間を裏切り、貶める」

「人間は宗教心がなければ、ユートピアを求めてナチスか共産主義に走る。しかし権力の座についたとき、独裁者に化ける」

「私はその恐ろしさを知っている。私は最初からオバマは隠れ左翼だと思っている。その証拠にオバマ政権内部には左翼の危険人物が張り込み、アメリカを骨抜きにしようとしている」(リンク

レーガンの時より「保守革命」実現のチャンス

本のタイトルを見る限り、トランプ大統領が目指す個々のプランを伝授しているかのような印象を与える。しかし、中身はむしろトランプ政権の政権たるゆえん、つまり「トランプ革命」の本質を論じている。

「トランプ氏の2016年大統領選挙での勝利は歴史的番狂わせ以上の意味合いがある。この勝利は、大規模な政治的、経済的、社会的革命の始まりを意味しているからだ。それは米国を変え、世界を変えるだろう」

「トランプ政権は、就任100日のうちに大統領令を次々と発布する。その第1弾は、グエンタナモ捕虜収容所の再開、キーストンXL*、恩赦拒否。そして連邦最高裁判事や地方裁判事の指名。さらにはオバマケア破棄、環境保護局の規模縮小、黒人向けの『ニューディール』政策だ」

*カナダから米国に原油を輸送する「キーストン・XLパイプライン」と米ノースダコタ州に敷設予定の原油パイプライン「ダコタ・アクセス」の建設を推進する大統領令。

「与党共和党が上院の過半数を占めたことでトランプ大統領は、米国の政治的風景を作り直し、海外における米国の死活的な国益を確実なものにしたロナルド・レーガン(第40代大統領)よりもより大きなチャンスを手中に収めた」

「トランプ大統領と共和党は今や、個々の政策を実現するために戦っているのではなく、保守主義のイデオロギーを復権させるために戦っていることを忘れてはならない。その反対勢力とは、米国のパワーと偉大さを弱体化させ、トランプ革命を阻止するためにラディカルなアジェンダを掲げて抵抗しようとする左翼どもだ」

「大統領選という1つの戦いに我々は勝利した。しかし戦いはまだまだ続く。この本は、保守主義の復位を阻止しようとする左翼勢力とどう戦うかを書き留めたガイドブックだ」

米主流メディアが完全に無視してきた「もう1つの米国」

日本のメディアが好んで引用する米メディアの主流の主張や論調とは、全く異なる「もう1つの米国」がある。その「もう1つの米国」の復権を目指す勢力が2016年の大統領選挙で勝利した。

言い換えると、これまで馴染んできた「オバマの米国」が名実ともに「トランプの米国」に取って代わったのだ。

その「トランプの米国」が「オバマ前政権によって大きく左に動いた時計の針を強引に右へ動かそうとしている」(カリフォルニア大学バークレイ校政治学教授)。

その「トランプの米国」の本質は何か――。

ともすれば、我々日本人には馴染みが薄い「もう1つの米国」。本書は、今、「分裂国家・米国」で何が起こっているのか、を知るための必読の書と言える。

 

古森記事

米下院情報特別委員会の公聴会で証言する連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官(2017年3月20日撮影)。(c)AFP/Nicholas Kamm 〔AFPBB News

3月初頭、ドナルド・トランプ氏が、大統領に就任する前にオバマ政権の情報機関によって盗聴されていたとツイートし、大きな波紋を広げた。

これについてFBI(連邦捜査局)長官は「盗聴」には証拠がないと反論している。ところが3月22日、連邦議会下院情報委員会のデビン・ヌネス委員長が「トランプ陣営の通話はオバマ政権の情報機関に傍受されていた」と公式の場で発言し、その証拠をホワイトハウスに送ると述べた。

トランプ陣営、オバマ政権、FBI、そして共和党と民主党・・・さまざまな組織や機関が政治的な利害を絡ませてせめぎ合うなかで、「盗聴」事件はますます混迷と対立をエスカレートさせてきた。

トランプ大統領のツイート

トランプ陣営内部の会話が記録されていた

3月22日、下院情報委員長のヌネス議員(共和党・カリフォルニア州選出)は、米議会で臨時の記者会見を開き、情報機関関係者から新たに入手したという資料の内容を公表した。

その突然の暴露は、「オバマ政権によるトランプ陣営の盗聴」をめぐる論議に新たな爆弾を投下する内容であり、衝撃が広がった。

ヌネス議員の証言の骨子は以下の通りである。

・トランプ氏が大統領に当選した2016年11月7日ごろから、大統領に就任する2017年1月20日までの間に、オバマ政権の情報機関がトランプ陣営の多くの人間の言動を傍受していた。その結果を詳しく記述した数十通の報告書を入手した。報告書は、情報機関の関係者たちから下院の情報委員長である自分のもとに、参考書類として合法的な形で届けられた。

・報告書にはトランプ陣営内部の人物たちの言動が実名とともに記され、各政府機関に流されていた。

・記録された内容は、トランプ氏の住宅兼オフィスであるトランプタワーを「オバマ政権が『盗聴』した」ことの直接的な裏づけにはならない。しかし、トランプ陣営のメンバーと他の人たちとの内部のコミュニケーションが数多く記録されていた。政府情報機関が、電話やその他の通信手段の盗聴や傍受によって情報を収集した結果だと思われる。トランプ氏本人の交信が傍受された可能性もある。

・情報機関は、最初からトランプ陣営の人たちを標的として監視を始めたというよりも、他の情報収集のための監視や傍受の活動をしているうちに、偶然、その対象がトランプ陣営にまで広がった可能性が高い。

・報告書の内容を詳しく確認して、トランプ大統領に提出する。議会でも公表して、立法府として対応する際の資料にする。CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、FBIにもさらなる協力を求める。

FBI長官は今も民主党寄り?

米国議会下院では、「オバマ政権のトランプ陣営盗聴」に関する公聴会を3月20日に開き、FBIのジェームズ・コミ―長官らが証言した。コミー長官は「政府機関がトランプタワーを盗聴したと証明する情報はない」と答え、トランプ大統領の発言を否定していた。

コミ―氏は2013年にオバマ大統領によってFBI長官に任命された。政治スタンスは民主党寄りの人物だとされる。FBI長官は、政治的立場にかかわらず10年の任期を務めることができる。そのためトランプ政権側には、コミ―長官は今も民主党側についており共和党政権に不利になる言動が多いという批判もある。

こうした両党の思惑がからみ合うなかで、ヌネス議員の暴露的な発言が突然出てきたわけだ。

ヌネス議員の発言は、トランプ政権や共和党側からは歓迎される一方、民主党議員たちからは「議会で追及すべき案件を突然大統領のところへ持ち込むのはおかしい」(下院情報委員会の民主党側筆頭メンバーのアダム・シフ議員)などと反発されている(その件についてヌネス議員は委員会メンバーに謝罪した)。

今後、さらにどんな情報や証拠が出てくるのか。最終的な決着まではまだかなりの期間を要しそうである。

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