『蕭建華失踪事件から読む「習近平vs曽慶紅」暗闘 「カネの流れを知る男」を巡る駆け引き、激化か』(3/1日経ビジネスオンライン 福島香織)について

蕭建華が正しいのか、肖建華(という中国語の記事がありましたので)が正しいのかwikiで調べましたら、戸籍登記は肖建華で、山東省の夏輝村の宗族の名前として蕭建華も依然として使っているとありました。

本記事で、蕭建華は神童だったと言われますが、天安門事件で中共側に立ったと言いますので、民主化に興味はなく、後に洗銭(マネロン)に手を染める程の拝金教信者だったわけです。典型的な中国人エリートと言う訳です。そもそも中国では政治の授業があり、中共のプロパガンダをしています。そこで良い成績を取らないと名門校には進学できません。

蕭建華逮捕の理由として①インサイダー取引防止②キャピタルフライト防止③習の面子を潰した報復④曽慶紅の力削ぎ⑤外貨国内還流促進といったところでしょうか。どれも当てはまる複合要因が絡み合っている気がします。秋の党大会人事がどうなるかでしょうけど。本記事中の①広東省党委書記の胡春華の進退、②党中央規律検査委員会の王岐山の進退、③国家副主席の李源潮の進退がポイントでしょう。

習近平の訪米がニュースになっています。3/4日経電子版には

<習主席4月にも訪米検討 G20前の関係安定狙う 

【ワシントン=永沢毅、北京=永井央紀】中国の習近平国家主席は4月にも訪米し、トランプ米大統領と会談する検討に入った。今秋に新たな最高指導部を選ぶ共産党大会を控えるなか、両首脳が顔をそろえる7月のドイツでの20カ国・地域(G20)首脳会議よりも前に会談し、対米関係を早く安定させたい考えだ。米側が期待する経済面の譲歩などへの対応が焦点になりそうだ。

中国共産党関係者は日本経済新聞社の取材に「G20で会談するのは当然だが、それでは遅い。その前に訪米して会えるかどうかが焦点だ」と語った。党内ではトランプ米大統領と習氏が早く関係を構築すべきだとの意見が強まっている。訪米が実現する場合、4~5月となる可能性が高い。

トランプ氏は大統領就任前、中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」政策の見直しを示唆し、台湾統一を悲願とする中国側は強く警戒した。ただ、トランプ氏は2月上旬の習氏との電話協議では一転して「一つの中国」を尊重すると表明。習氏もこれを評価し、早期に会談することで一致した。

中国側はここからドイツでの外相会談や、外交担当トップ楊潔篪国務委員(副首相級)の訪米など関係修復へ急ピッチで動いた。外交筋によると楊氏は訪米時に首脳会談の早期実現を打診。その前段階としてティラーソン国務長官に中国訪問を招請しており、「近い将来の訪中に関心を示す」との言質を引き出した。この訪中が首脳会談を本格的に調整する場となる見通しだ。

習氏は2015年に米国を公式訪問しており、外交儀礼上は次は米大統領が訪中する番だ。首脳会談するからには中国側が成果とできるような合意も必要となる。台湾問題で手打ちしたとはいえ、中国による南シナ海の軍事拠点化をめぐる問題は妥協点が見えないまま。トランプ氏は通商・為替政策での対中批判も緩めていない。

中国側には日本の安倍晋三首相がフロリダ州のトランプ氏の別荘で歓待されたことを踏まえ、首都ワシントン以外の場所で非公式にゆっくり話す形式を求める声もある。ただ、トランプ氏が受け入れるかどうかは不透明だ。北京の外交筋は「米中間の条件が整わなければG20まで待つ選択肢もある」と指摘したうえで、「それでも早期訪米する可能性の方が高い」との見通しを示した。

中国は今秋、5年に1度の共産党大会を開き、最高指導部を大幅に入れ替える。習氏は自らに近い人間をなるべく登用して2期目を盤石の体制としたい考え。人事で主導権をとるためには、外交面の懸案を顕在化させたくない。対米関係の安定という外交成果を示せるような訪米にできるか否かを水面下で探っているもようだ。>(以上)

トランプと楊潔篪の面談時間は5~7分だったわけで顔立ててやっただけです。そんな突っ込んだ話し合いが出来たとは思えません。楊潔篪は英語ができるので、英語で会話したでしょうけど。習近平訪米に持ち帰らせるお土産があるのかどうか?習は秋の党大会前に訪米してアピールしたいと思っているのが、ミエミエです。水面下で交渉しているでしょけど、トランプはWTOの決定にも従わないことを明言しました。選挙公約通り、中国製品に大幅な関税をかけて、戦場を経済の場面に持ち込もうとしています。お土産無しでは、本来米国が訪中する番なので、習が膝を屈することはないでしょう。本記事は両日経記者が中国人だけから取材したのかも知れません。誘導記事かもしれませんが米国人に与える影響はないでしょう。

また、3/4日経電子版にはイエレンが3月利上げを示唆した記事が載っていました。蕭建華を逮捕したとしてもキャピタルフライトは止まらないでしょう。

米、月内利上げ検討へ FRB議長が明言 

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は3日、シカゴ市での講演で「(14~15日の)次回会合で追加の政策金利の調節が適切か判断することになる」と述べ、月内の利上げを検討する方針を明言した。同氏は「経済指標が想定通りであれば、緩やかな利上げが適切だ」とも表明。10日に発表する2月の米雇用統計を見極めて、最終判断する考えだ。

イエレンFRB議長は月内の利上げを検討する方針を明言した(3日、シカゴ)=AP

イエレン氏は3日の講演で「労働市場は完全雇用に本質的には達した」と指摘し、米経済は緩やかな拡大が続くと自信を示した。1月の個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比1.9%上昇したことから「インフレ率も目標の2%に近づいている」と強調した。海外経済の下振れリスクも減退していると指摘した。

金融市場が注視する追加の金融引き締めについては「経済データが想定通りに推移すれば、我々は緩やかな利上げが適切だと現在判断している」と強調。そのうえで「今月の会合で、物価や雇用が想定通り改善したか、追加の政策金利の調節が適切かどうか、判断することになる」と明言した。

イエレン氏は2月中旬の議会証言で「今後数回の会合で、追加の利上げが適切か判断することになる」と述べ、3月、5月、6月のいずれかの会合で利上げに踏み切る考えを示唆していた。今回の講演では「次回会合で検討する」と明示し、14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げする可能性を強く示唆した。

月内の利上げに向けた最後の関門は、米労働省が10日に発表する2月の雇用統計だ。雇用情勢は底堅く推移してきたものの、新規就業者数の伸びが大幅に鈍化すれば利上げ判断の逆風になる。イエレン氏は3日の講演で「長期的な傾向でみれば、雇用の伸びは月7万5千~12万5千人で整合性がとれる」と指摘。2月の統計で10万人前後の就業者の伸びが確保できれば、利上げの障壁にはならないとの見方を示唆した。

今後の利上げペースについては「FRBが後手に回っているとの証拠は現時点でない」と指摘。昨年12月に公表した年3回の利上げペースを引き続き想定していることを示唆した。>(以上)

福島氏も主張するように共産党の問題は、白昼堂々拉致が可能な社会という事です。中国語の記事では3人の女性ボデイガードに守られていたが、5人の公安or国安部の人間に連れ去られたとのこと。銅鑼湾書店だけでなく、これが日常茶飯事に行われているということです。法輪功やモンゴル・ウイグル・チベット人も同じ目に遭っています。やはり共産主義の悪い所は三権分立していない所でしょう。為政者をチエックするシステムがないため好き放題できます。司法は行政の一部ですし、メデイアは党の「喉と舌」です。日本でも左翼は同じ事を考えています。左翼メデイアの新聞は取らず、左翼議員にも投票しないことです。

記事

大富豪・蕭建華氏は香港の五つ星ホテル、フォーシーズンズホテルから行方不明に。この失踪の意味することとは?(写真:ロイター/アフロ)

今年の秋はいわずもがな、第19回党大会が控え、権力闘争が激化しているのだが、その第一ラウンドは、習近平VS曽慶紅ではないかという見方が出ている。一般に、第19回党大会前の権力闘争のみどころは三つあるといわれている。すなわち、①広東省党委書記の胡春華の進退、②党中央規律検査委員会の王岐山の進退、③国家副主席の李源潮の進退、がどうなるか、である。いずれも、権力闘争の軸は習近平VS共青団派の文脈で観察されている。

胡春華は共青団のホープで、ポスト習近平と目されている。李源潮は太子党かつ共青団(共産主義青年団)の実力派であり、このまま次の党大会で政治局常務委員会入りするとすれば、習近平に大いにプレッシャーを与える存在だ。習近平は党大会前に、彼らを失脚させて共青団の影響力を削ぎ、本来引退年齢となる王岐山を続投させ、習近平3期目に向けた布石を打って、習近平独裁体制確立に向けた道を開きたい、であろうと見られている。

香港から垣間見える中央の対立再燃

だが、その前に、太子党の影のラスボスと言われている曽慶紅らと習近平の対立が再燃してきた、というのである。春節イブ(除夕)に起きた、香港の大富豪にして、中国金融の裏ボス、ホワイトグローブス(白手袋、汚れた手を隠すために白手袋をする人、金融の裏仕事請負人)と呼ばれる蕭建華の失踪事件(おそらくは中国当局による拉致)の背景に、習近平vs曽慶紅の闘争があるらしい、というのだ。

蕭建華は、90年代から00年代にかけて曽慶紅ファミリーはじめ太子党子ファミリーの天文学的蓄財に貢献した人物であるだけでなく、2015年夏の上海株暴落をリモートコントロールしていたとささやかれている。また、2012年に、ブルームバーグが習近平ファミリーの不正蓄財疑惑を報じたあと、習近平の姉の持ち株を、習近平ファミリーを救済するという建前で購入するも、その件をニューヨークタイムズ紙にすっぱ抜かれたという因縁もある。さらに、今の習近平政権にとって最大の悩みの種であるキャピタルフライトに歯止めをかけるキーマンという指摘もあった。

果たして蕭建華失踪事件の背後にはどのような事情があるのか、それが秋の党大会にどのような影響力を与えるのか。久しぶりに香港ゴシップをネタにしてみたい。

蕭建華失踪事件について、軽く説明しておく。香港メディアがすでに詳しく報じているが、これは第二の銅鑼湾書店事件として、香港の司法の独立が完全に失われていることを示す事件でもあった。銅鑼湾書店事件については、過去のこのコラム欄を参照してほしい。

<参考> 香港銅鑼湾書店「失踪事件」の暗澹 銅鑼湾書店事件、「ノーと言える香港人」の告発

五つ星ホテルから白昼堂々

今年1月27日、香港セントラルの五つ星ホテル・フォーシーズンズホテルから、カナダ国籍ほかバルバドスの外交パスポートなど少なくとも三つのパスポートを保持している蕭建華が白昼堂々、拉致された。目撃者証言がいくつかあり、頭に布をかぶせられ、車いすに乗せられて午前10時頃、車二台で連れ去られとか。妻が翌日に、香港警察に捜索願いを出したが、その後、捜索願いが取り下げられた。有名ホテルから大富豪が失踪したというのに、ホテルサイドは何のコメントも出さず、蕭建華が創始者の投資企業集団・明天系の公式微博アカウントは「外国で病気療養中」とうそぶいた。消息筋によれば、すでに北京にいるらしい、という。つまり、中国当局によって拉致されたという見方が今のところ濃厚だ。ただし、中国当局は目下、沈黙を守っている。

この事件が銅鑼湾書店事件以上に恐ろしいのは、今回拉致された人物が、しがない書店関係者や民主化活動家といった庶民ではなく、太子党の大物をバックにつけ、中国金融界の裏ボスといわれている金と権力の両方を操る大物であったということだ。

香港のフォーシーズンズホテルは、反腐敗キャンペーンのターゲットになるやもしれないと不安に思う太子党や官僚の子弟や大企業幹部たちが、避風塘(漁船が台風をしのぐ湾岸)よろしく、一時身を寄せて、情報交換を行いながら、北京情勢をうかがう拠点として知られている。令計画が失脚する直前には、令計画の兄の利権の温床であった山西官僚らがみなこのホテルに逃げ込んだので、ホテル内の公用語は山西方言であったという冗談が流れたほどだった。

今回の事件は、党中央に強いコネを持っていても、金を持っていても香港は守ってくれない、という厳然とした事実を明らかにした。香港はもう誰も守れない。世界に名だたる高級ホテルで人が拉致されたとしても、香港警察は事件にすることすらできない。金融都市として必須条件の安全と信用はとことん地に落ちた。

1972年生まれの蕭建華は、15歳で北京大学法律系に入学した神童で、天安門事件のときは大学側の学生会主席として、民主化要求の学生たちと対峙した経験もあるらしい。卒業後は大学の党委員会の仕事をしながら起業、1999年に正式に「明天ホールディングス」を創設し、金融、証券、保険企業などに次々に買収。その中には長財証券、新時代証券などの大手もあった。現在、少なくとも明天系と呼ばれる企業集団は、9社以上の上場企業を傘下におき、30社以上の筆頭株主で、総資産1兆元以上とか。その市場に対するコントロール力は言わずもがなで、「明天金融帝国」との呼び名もある。

面子を傷つけた株購入事件

彼は2000年代に、自らの市場操作力を駆使し、曽慶紅や江沢民ら国家指導者ファミリーらの不正な蓄財に手を貸し、また蓄えた資金の洗浄も担ったといわれている。その額は、少なくとも2兆元を超えるとか。例えば、2007年に、曽慶紅の息子の曽偉が山東省最大のエネルギー国有企業で資産価値738億元相当の魯能集団を30億元あまりの格安で買収した“魯能事件”の黒幕も蕭だったという。太平洋証券の上場にからむ不正事件で、国家開発銀行副行長の王益が失脚し、やはり90年代に起業し飛ぶ鳥を落とす勢いであった投資企業・涌金集団のトップ、魏東が飛び降り自殺に追い込まれた2008年、この事件に関与したと噂される蕭建華も自分の身の安全を図るために出国。以降は、少しずつ持ち株をシャドーカンパニーに移し、できるだけ目立たないように動くが、それでも中国市場に対する影響力は厳然としていた。

香港に拠点をおくようになったのは5年ほど前からで、フォーシーズンズに幾部屋もアパートメントルームを借りていたとか。蕭には愛人が30人ほどいるといわれているが、最近は娘を生んだばかりの安徽省出身の愛人と生活を共にしていたという。

彼が中国当局に拉致された(と仮定して)その理由については、いくつか説があり、ニューヨークタイムズ(NYT 2月3日付)は、2013年に240万ドルで、習近平の姉夫婦の持つ投資会社の株を購入した件が関係あるとみている。蕭建華にすれば、習近平ファミリーのためを思ってという建前だったかもしれないが、この件は、NYTが2014年6月3日にすっぱ抜き、しかも蕭建華周辺筋がその事実を暗に認めるような発言をしたので、習近平のメンツをおおいに傷つける結果となった。ちなみに、NYT記事によれば、蕭建華が利益誘導した党中央幹部には、胡錦濤政権時代の序列4位の政治局常務委員の賈慶林の女婿・李伯潭や、元中国人民銀行行長の戴相龍の女婿・車峰の名前も出てきている。

蕭建華は多くの太子党、官二代、紅二代、つまり共産党の“紅色貴族”たちの不正蓄財を手助けし、その手法を熟知しており、よりによって現役党中央総書記ファミリーの蓄財の裏まで知っている。つまり習近平にとっても、スキャンダルを握る危険な人物と言える。このスキャンダル漏れを防ぐために、蕭建華の身柄を北京に取り戻す必要があったのではないか、という見立てだ。

市場操作説、キャピタルフライト抑止説も

もう一つの理由は、2015年の上海株大暴落、俗に言う「株災」に蕭建華がかかわっていたという見方である。蕭建華の資金力、影響力をもってすれば、市場をリモートコントロールすることはたやすい。習近平は2015年の株災がらみで、悪意ある市場操作を行ったとしてプライベートファンドの星、徐翔が逮捕され5年半の実刑を受けている。徐翔以上の市場操作能力を持つ蕭建華だけが逃げ切ることはできないのではないか、という見方だ。

さらに言えば、蕭建華の拉致は、習近平政権の金融政策立て直しと連動するものではないか、という説もある。目下の習近平政権の最大の悩みの一つは、外貨準備高が3兆ドルを割り込み、キャピタルフライトの歯止めが効かないという点だ。

この外貨準備高減少を食い止めるために、2017年の金融改革の柱の一つとして、国家外為管理局関係者が、外国市場で上場した国内企業に対して、そこで集めた外貨資金の一部を人民元にして国内に還流させるという方針を打ち出している。国内企業の香港上場を後押ししているのは、蕭建華のような巨大民営ファンド集団だ。さらに言えば、そうしてできた外貨資金を洗浄して、各地に分散させて、国内企業やあるいはその中核にいる紅色貴族たちの不正蓄財、キャピタルフライトを幇助してきたのも蕭建華のような巨大ファンド集団だ。

蕭建華を拘束したのは、こうしたキャピタルフライトをたくらむ紅色貴族や国内企業家の恐怖心をあおり、おとなしく外貨を国内に還流させることが目的ではないか。つまり、党中央の指導を聞かずに、キャピタルフライトに走れば、汚職容疑で拘束(たとえ身柄が香港にあっても逃げられない)、おとなしく外貨を国内に還流させれば、党中央が国内企業の香港および国外での上場を後押ししよう、ということだ、と。

ちなみに、この説を主張しているのは、元経済紙記者で、在米亡命学者でもある何清漣だが、香港、深圳金融の裏事情を知るだけあってその推測にはかなりの説得力がある。

だが、やはり国内外の中国政治ウォッチャーが興味深々なのは、蕭建華の取り調べによって、曽慶紅の失脚、あるいは失脚に至らなくても、党大会前に曽慶紅の影響力をけん制するだけの情報を習近平が得るためではないか、という説だ。

習近平と曽慶紅の関係も因縁が深い。曽慶紅は、老獪な政治手腕をもって、ダークホースであった習近平をまんまと総書記および国家主席の座につけた最大の功労者である。習近平にとっては恩人だ。だが、自分がコントロールされることを嫌う習近平は、権力トップの座についてからは曽慶紅を政敵とみなすようになった。そうして曽慶紅を追い落とすために仕掛けた権力闘争の象徴が、国家安全部副部長だった馬建の失脚(2015年1月)だった。

馬建は曽慶紅の懐刀として、その諜報能力を習近平はじめ党中央指導者に向けても発揮し、“習近平がらみのスキャンダル”を含む情報を、やはり曽慶紅のコマとして動いていた実業家・郭文貴に流したという噂もある。その郭文貴は、そうしたスキャンダル情報を持って米国に出国したまま、その行方が分からなくなっている。

ちなみに、すでに失脚していた周永康や令計画の汚職事件とも馬建はかかわっており、失脚は周永康、令計画事件に連座した格好となるのだが、馬建の最大の政治的庇護者が曽慶紅であることは公然の事実であったので、多くのジャーナリストたちが馬建失脚を習近平と曽慶紅の権力闘争の文脈で解釈していた。この権力闘争は、いちおう曽慶紅が逃げ切った形で収束していた。

「法秩序無視が当然」の恐ろしさ

もし蕭建華が北京で取り調べを受けているとすれば、魯能事件など曽慶紅ファミリーの過去の経済犯罪疑惑などについても蒸し返される可能性はある。習近平にしてみれば、かつて自分を政権トップの座を押し上げたあの鮮やかな政治手腕を、再び自分を引きずり下ろすために振るう可能性を恐れていて当然だろう。馬建事件で一度、その政治生命が危機に瀕したとはいえ、曽慶紅が政局を動かすだけの資金力と人脈と頭脳を維持している可能性は強く、秋の党大会を前に、少なくとも曽慶紅の動きは牽制しておきたいのではないか。

どの説も、あり得る話で、おそらくはいくつもの思惑が働いていることだろう。こうして想像力を膨らませて中国の権力闘争や政治の雲行きを眺めるのは、外国人にとっては知的好奇心をそそられるのだが、冷静に考えてみれば、こうした政治的思惑のためだけに、法秩序を無視していきなり香港から民間人を力づくで拉致するやり方を普通に行える共産党体制というのは、実に恐ろしい。中国が国際社会において覇権を拡大するということは、こういう行動基準が周辺国家にも広がっていくということなのだ。

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