3/16JBプレス 堀田佳男『トランプ圧勝は確実、しかし本選はヒラリーの理由 党内の結束力に大きな差、経済の安定も強い追い風に』、3/16ZAKZAK『日本は「トランプ大統領」に備えた方がいい 快進撃の構図と底流』、3/17日経ビジネスオンライン 篠原匡『主流派が党大会に仕込む“トランプ抹殺”の策略』、3/17日経ビジネスオンライン 高濱賛『「トランプ」よりも「共和党」を守る可能性も 党保守本流が推した若手ルビオはついに撤退』について

①トランプは共和党の大統領候補になれるのか②本選でトランプVSヒラリーになった場合、トランプは勝てるのか、が本4記事の解説です。

①について・・・日経ビジネスオンラインの両記事は、共和党保守派はトランプ追い落としをいろんな手を使って図ろうとしているという事です。高濱氏は、指名推薦人が党大会でトランプ以外の候補に投票、党大会の場で指名に関する党規約を修正、対抗馬をクルーズに一本化する方法等、篠原氏は「トランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる」という方法を考えているようです。でも民意から外れることをすれば、共和党から離脱する市民が増え、共和党自体の基盤が弱まると思いますので、そこまでしないのでは。

②について・・・堀田氏はヒラリーの勝利、ZAKZAKはトランプにも勝機があるとの立場です。ヒラリーとトランプではトランプの方がまだマシな気がします。ルトワックがWSJで言ったように選挙が終われば、普通の保守政治家に変わる可能性があるからです。ヒラリーは中国との裏の付き合いが見えて対峙できないでしょう。トランプであれば習近平に反対する中国人の人気も高く、かつプーチンともうまくやっていけそうで、中国包囲網を敷くには彼の方が向いています。しかし3/17日経で

<トランプ氏躍進、日本政府に危機感 パイプ乏しく

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が指名獲得へ前進したことを受け、日本政府は危機感を強めている。政府内には大統領選では民主党のヒラリー・クリントン前国務長官が有利との見方が多いが、トランプ氏が大統領になれば日米関係に大きな影響を与えるのは必至。トランプ氏とのパイプも乏しい中、情報収集と分析を急ぐ。

 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「米大統領選は日本をはじめ世界に大きな影響を与える選挙だ。結果は当然注視している」と述べた。政府が懸念するのは、トランプ氏が安倍政権の重視する政策に否定的な言動を繰り返していることだ。

 首相官邸は外務省に、トランプ氏に政策を助言するブレーンが誰かを探るよう指示しているが、現時点ではっきりした人物は見えない。実業家時代や最近の発言などを集めてトランプ氏の対日政策を分析しているのが実情だ。

 政府内のトランプ氏への評価は「実際に大統領になれば、実業家らしく現実路線にカジを切るだろう」「30年前から主張を変えない筋金入りの対日強硬派だ」などと定まっていない。>

とありました。外務省は不断から人脈作りしていないという事です。

JBプレス記事

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いまだに米大統領候補ドナルド・トランプの化けの皮は剥がれない。それどころか皮の厚さが増して、本物の皮膚に変化しつつあるほどだ。

 国内外でトランプが大統領になった場合の憂慮が真剣に語られ始めている。本当にトランプは大統領になるチャンスがあるのだろうか。

 筆者は昨年末から、活字・放送メディアを通して共和党ではトランプが代表候補になると述べてきた。大統領ではなく、あくまで共和党代表という立場である。

 3月15日に行われるミニ・スーパーチューズデー(5州)では、トランプが共和党候補マルコ・ルビオの地元フロリダ州で勝利すると思われる。と言うのも14日現在、トランプは各種世論調査でルビオに約20ポイントのリードを保っているからだ。「敵地」で圧勝する流れなのだ。

もはや勝ったも同然のトランプ

 さらにジョン・ケーシックが知事を務めるオハイオ州でも勝つ可能性がある。そうなるとルビオ、ケーシックの2人は早晩、選挙戦から撤退していくことになる。

 今後トランプが獲得する代議員数をシミュレーションすると、5月下旬からカリフォルニア州の予備選がある6月7日には、共和党の代表候補に決まるだろう。

 ここまでの予備選結果を眺めると、トランプは38%の得票率を得ており、今後この数字が大幅に下降するようには見えない。逆に2位につけているテッド・クルーズの得票率は約22%で、様々な観点から分析しても、トランプを逆転するのは極めて難しい状勢である。

 ましてや15日のミニ・スーパーチューズデーは、フロリダ州やイリノイ州、オハイオ州といった代議員の総取りとなる州が多く、「もう間に合わない」のだ。クルーズは15日の予備選では全州で、トランプの支持率に負けている。

 ヒラリー・クリントンも15日の予備選では圧勝してくるだろう。となると、11月8日の本選挙はトランプ対ヒラリーという戦いが見えてくる。

 ここからはトランプとクリントンが共和・民主両党の代表候補になったと仮定し、11月の本選挙でどちらが勝つ可能性がより高いかを記したい。

現時点での予想には多少の無理があるが、一言で述べると「クリントンに勝算あり」である。

 理由はいくつもある。過去数十年間の大統領選で勝敗を大きく左右する要因は経済と党内のまとまり、資金力、選対の組織力などで、ほとんどの要因でクリントンが優勢だからだ。

 今年は経済問題が大きな争点にならない珍しい選挙である。米国の失業率はいま5%を切り、インフレ率も1月に1%台に乗ったが依然として低率だ。

 失業率とインフレ率を合わせた数値を痛苦指数(ミゼリー・インデックス)と言い、数値が10%を超えると現職大統領であれば再選できないと言われている。現在は6%台で、バラク・オバマの再選はもうないが、政権党である民主党の候補が再びホワイトハウスに入る可能性はある。

党内が団結、経済も追い風

 2008年のように、米国経済が恐慌の一歩手前という状況であれば、クリントンにほとんどチャンスはなかっただろう。今年の討論会では財政再建策や経済刺激策が話し合われず、不法移民や安全保障問題に関心が注がれている。

 次の指標として、党内がどれほどまとまっているかも重要である。党が分裂状態にあると、11月の選挙で勝てる可能性は下がる。

 特に共和党はトランプが代表候補になった場合、党の首脳部をはじめとしてトランプの言動を容認しない党員たちが少なからずいる。しかも党内の亀裂はいま深くなっている。首脳部がトランプに代わる候補を推してくることさえ考えられる。

 実は1968年にそうした事態が起きた。民主党はリンドン・ジョンソン大統領が再選を求めず、上院議員のユージーン・マッカーシーとロバート・ケネディが代表争いをしていた。

 だがケネディが暗殺されてマッカーシーが有力視されると、民主党首脳部は予備選を全く戦わなかった副大統領のヒューバート・ハンフリーを党大会で代表にしてしまう。

 党大会は暴徒化した党員などで荒れに荒れる。結局、ハンフリーは本選挙で共和党ニクソンに敗れるのだ。

いまの共和党首脳部がトランプを阻止するためのウルトラCを考えているとしたら、1968年のシナリオが頭にあるかもしれない。そうなるとトランプは黙っていないだろうし、共和党は分裂してしまい、最終的には11月にクリントンに負けるという流れができてしまう。

 さらに選挙に勝つために必要なのが選挙対策本部の組織力だ。いくら候補に人間的な魅力があっても、全米レベルで効率的なキャンペーンが運営できないと勝ち目はない。

 この点で今年のトランプは例外中の例外だ。クリントンの選対には給料が支払われるスタッフだけで350人はいるが、トランプの選対はほぼ10分の1である。しかも専属の世論調査員やプロの献金担当者はおらず、政策立案者も最近まで採用していなかった。

 にもかかわらず、トランプは共和党の代表候補になりつつある。これまでの大統領選の常識を破りながら快進撃を続けている点で、例外的な候補だ。

トランプ30億にヒラリー211億円

 選挙資金にしてもそうである。過去30年間の大統領選を眺めるだけでも、ほぼ例外なくより多くの選挙資金を集めた候補が勝利を収めてきた。多額の選挙資金を集めることで、テレビやラジオの政治CMに多額の資金をつぎ込めるからだ。

 正比例ではないが、選挙資金と選挙結果には強い相関関係がある。クリントンは3月7日現在、約211億円(スーパーPAC*1を含む)を集金。バーニー・サンダース(約110億円)の集金額に100億円も差をつけている。

 しかしトランプは約30億円しか集金しておらず、自己資金を約50億円使っていたとしても大変効率よく戦っている。

 9月になると、勝者はかなり微細に見えてくる。考慮すべき指標はいくつもある。経済成長率、国民の実質所得、失業率、インフレ率、候補の支持率、選対の組織力、選挙資金額、党内の結束等を総合的に判断することで、勝者が浮かび上がる。

 米政治学者の中には当選予想モデルを考案している人たちが何人もおり、過去ほとんどハズレがないほど高い確率で当選者を言い当てている人もいる。

 しかし、今年の選挙はドナルド・トランプという「これまでの常識」が通用しない人物がいるため、本選挙でも波乱が起きる可能性がある。それでもトランプとクリントンであれば、現時点ではクリントン有利と記しておく。

*1=PACはpolitical action committee(政治行動委員会)の略。スーパーPACは特別行動委員会と呼ばれ、無制限に資金を集めることが許されている。

ZAKZAK記事

11月の米大統領選で共和党の不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)は民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)に勝てるのか? トランプ氏が「スーパーチューズデー」に勝利したことで、米国では早くも本選に目が向かっている。結論を先にいうと、選挙戦の構図からみて打ち負かすことは十分に可能だ。 ■実際には自国批判  暴言王、トランプ氏の発言で誤解されている点は、日本、中国、メキシコを名指ししていることが「他国批判」をしていると受け止められていることだ。  日本人として、米軍による日本防衛のためのカネを払わせろというトランプ氏の主張は非常に不愉快だが、そうした言動の一つ一つが「自国批判」であることに気づけなければ、トランプ現象を見誤る。単なるヘイトスピーチで大衆の心をつかむことはできない。  たとえとして安倍晋三首相(61)について語った昨年8月の南部アラバマ州での演説を挙げる。  「日本は復活した。日本にはアベがいる。彼は本当に賢い。一度会ったことがあるが、頭が切れる人物だった」  中国との貿易不均衡に関する話の流れで日本に触れたトランプ氏はまず安倍首相を持ち上げ、矛先をキャロライン・ケネディ駐日米大使(58)に向ける。  「ケネディ氏はアベたちによってワインに夕食、それから朝食、昼食で接待漬けにされ、彼ら(日本人)の望むことは何でもやるようになった」  もちろん日本企業が米国内に製造拠点を置き、多くの雇用を創出していることや、日本政府が米軍の駐留経費を負担していることなど自らの主張に都合の悪い事実には触れない。トランプ氏の「ビジネスの能力も仕事を成し遂げたこともない人物を使っている」との大使攻撃はオバマ政権のせいで国益を損なっているというメッセージを送ることに主眼が置かれている。

■熱いムーブメント

 トランプ氏が圧勝したネバダ州党員集会の前日、1万人近くを集めた大規模演説会がラスベガスで開かれた。トランプ陣営は外国メディアに取材許可を出さないことが多く、テーマパークのアトラクション待ちのような長蛇の列に並んで会場に入った。トランプ氏がいう「ムーブメント」を実感させられる。

 トランプ氏の支持者で、「Hillary Clinton For Prison」(クリントンを刑務所に)とプリントされたTシャツを着たゲイリー・ウィルソンさん(43)に話を聞いた。「For President」(大統領に)のもじりで、ネット通販で手に入れたのだという。

 「エスタブリッシュメント(主流派)を打ち破れるのはトランプ氏しかいない。不満は中央政府が大きくなり、個人の自由が脅かされていることで、クリントン氏にこの路線を続けさせてはならない。トランプ氏が日本を批判しているって? 米国は世界の警察官ではないのだから、日本も軍を強くして自らを守ったらどうだ」

■アウトサイダーの強み

 オバマ政権の7年間で、共和党支持層3分の2に当たる66%は暮らし向きが良くなっていないと感じている。民主党支持層の71%が良くなったと答えたのとは対照的だ。米ギャラップ社が1月に実施した調査による。

 医療保険制度改革(オバマケア)による中小企業の負担増、不法移民問題、同性婚や人工妊娠中絶などの社会問題…。保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)に後押しされた共和党の非主流派はオバマ政権を攻撃すると同時に主流派の「弱腰」をたたいてきた。共和、民主両党の二極化は「暮らし向き」をめぐる認識の差として表れている。

 同時に共和党内も主流派、非主流派に二分されたが、2014年中間選挙で上下両院ともに過半数を握りながら、公約したオバマケア廃止などをいまだに実現できていないことに対する支持者の怒りは非主流派のテッド・クルーズ氏(45)にも向けられている。

 ワシントン経験のない完全なアウトサイダーであるトランプ氏の「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大にする)というコピーに支持者が飛びつくのは自然な流れだった。

 米国政治は今、小泉構造改革をめぐって自民党が党内抗争を繰り広げた結果、09年衆院選で有権者に民主党の「政権交代」という主張ともいえない言葉が受け入れられた状況と似てきている。この流れは典型的なインサイダーのクリントン氏にはマイナスだ。

 日本として「トランプ大統領」に備えた方がいい。

 (ワシントン支局 加納宏幸)

篠原匡記事

今回の米大統領選において、「3・15」はスーパーチューズデーとして知られる「3・1」以上に重要な一日だった。

 米大統領選における共和党の指名候補として着々と代議員数を積み上げている億万長者の不動産王、ドナルド・トランプ氏。3月14日時点で獲得した代議員は全体の20%に満たないが、15日以降、得票率トップの候補がすべての代議員を得る「勝者総取り方式」の州やそれに準ずる州が相次ぐため、これまでのペースで勝利を重ねれば7月の党大会までに過半数を超えることは確実だ。

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共和党の指名レースでトップを走るドナルド・トランプ氏。オハイオ州は落としたが、フロリダ州はしっかりとキープした(写真:AP/アフロ)

 一方、トランプ氏の指名を是が非でも避けたい共和党主流派にしてみれば、勝者総取り方式の州で対抗馬が勝利しない限り、トランプ氏の過半数獲得を防ぐ手立てはない。それだけに、フロリダ州(代議員数99人)やオハイオ州(同66人)など代議員の数が多い州で勝者総取り方式の予備選が開かれる「3・15」は、共和党主流派にとって剣が峰の一戦に位置づけられた。

 結果はどうだったかと言えば、オハイオ州知事ジョン・ケーシック氏がオハイオ州でトランプ氏に勝利し66人の代議員を獲得した半面、マルコ・ルビオ上院議員は地元フロリダで敗北、トランプ氏に99人の総取りを許した。

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オハイオ州知事のジョン・ケーシック氏は地元での人気を生かして勝利を収めた(写真:AP/アフロ)

 ケーシック氏はこれまでの獲得代議員数では最下位だが、2014年に州知事に再選された際に88郡中86郡で勝利を収めたように地元では抜群の人気を誇る。加えて、保守穏健的な立ち位置や、州知事や下院議員、州議会議員を40年近く務めた経験は共和党主流派にとって理想的なキャリアだ。予備選では低空飛行を続けていたが、オハイオ州の勝利でトランプ氏に対する対抗馬として生き残った。

自身のホームグラウンドであえなく敗退

 一方、主流派の期待を集めたルビオ氏は地元フロリダ州での敗北で「終戦」を迎えた。

 上院議員に当選した2010年以降、大統領選を見据えて若きリーダーというブランドを築き上げたルビオ氏。特に、予備選が始まってからはトランプ氏の独走を止める唯一の存在として共和党主流派の期待を一身に集めた。だが、ディベートで経験不足を露呈した上に、自ら中傷合戦を仕掛けてトランプ氏に叩きのめされるなど最後は自滅した感が強い。全国での遊説を重視して地元フロリダ州を軽視したツケだが、自身のホームグラウンドで政治的に引導を渡された恥辱は想像するに余りある。

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一時は主流派の期待を集めたマルコ・ルビオ上院議員だが、地元での敗北で引導を渡された格好(写真:AP/アフロ)

 最終的に、トランプ氏はオハイオ州でこそ敗北したが、同日予備選が開催されたイリノイ州、ノースカロライナ州、米自治領北マリアナ諸島で勝利、代議員数を積み増した(3月16日午前4時時点)。それでもオハイオ州での勝利を阻止し、トランプ氏の過半数阻止に希望をつないだという意味では、主流派も首の皮一枚でつながっている。

 なぜ共和党主流派がそこまで過半数阻止に血道を上げるのか。それは過半数を阻止しなければ、予備選におけるトランプ氏の勝利を“無効”にする奥の手が使えないからだ。

トランプ氏が7月18日から開催される共和党の全国党大会までに過半数を獲得すれば、トランプ氏は自動的に共和党の大統領候補に指名される。「(誰がなっても支持するという)私の立場は変わっていない」とポール・ライアン下院議長(共和党主流派)が明言しているように、指名獲得や党大会のルールを変えない限り、過半数に達したトランプ氏の指名を阻止することはできない。

 ただ、過半数に満たなければ様々な“策略”が可能になる。

「トランプ氏の成功を骨抜きにする準備している」

 7月の党大会で、大半の代議員は予備選や党員集会の結果に応じて割り当てられた候補者に投票しなければならない。例えば、トランプ氏が1000人の代議員を獲得していたとすれば、その1000人は党大会でトランプ氏に投票する。ただ、この縛りがあるのは1回目の投票だけという州が多く、そういう州の代議員は2回目以降、自由に候補者を選ぶことができるようになる。

 また、誰が州の代議員を決めるのかというところもポイントだ。オハイオ州のように予備選の勝者が代議員のリストを作成する州がある一方で、トランプ氏が50人の代議員を総取りしたサウスカロライナ州は既に代議員が決まっており、名簿づくりにトランプ氏が関与する余地がない。

フロリダ州に反トランプのテレビCMを大量投下したが、トランプ氏を止めることはできなかった。上はいかにトランプ氏が大統領としての品位に欠けるかを表現したCM。放送禁止用語の連続でピー音しか聞こえない

 同様に、党の州組織は主流派が強く、代議員選出プロセスで影響力を行使することが可能だ。「事実、各州の共和党のリーダーは、代議員の選定を通して予備選におけるトランプ氏の成功を骨抜きにする準備を始めている」。最先端のIT(情報技術)やデータ解析、行動心理学などが活用されている選挙の裏側を描いた『The Victory Lab』の著者でコラムニストのサーシャ・イッセンバーグ氏はこう指摘する。

仮にトランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる。

 そうなった時に、指名候補者争いの先頭を走り続けたトランプ氏とその支持者がおとなしく引き下がるかどうかは現時点では分からない。ただ過半数に達していないとはいえ、それに近い数字を得ているであろう候補者をある種の謀議で抹消すれば、共和党も無傷では済まないだろう。ワシントンに対する国民の怒りが深いだけになおさらだ。

11月にトランプ、ヒラリーが消える恐れも

 鉄板と思われていたヒラリー・クリントン前国務長官は、格差解消と政治革命を掲げるバーニー・サンダース上院議員の粘り腰の前に苦戦している。しかも、国務長官時代に機密情報を私的メールサーバーで管理していた問題がいまだ尾を引いており、FBI(米連邦捜査局)に起訴される可能性も残る。現在、トップを走る2人が秋には姿を消しているという事態もジョークではない。

 混沌としている各党の候補者選び。まだまだ波乱が起きそうだ。

高濱賛記事

—大票田フロリダをはじめとする5州で同時に予備選が行われた「ミニ・スーパー・チューズデー」(3月15日)でもトランプ旋風は収まりませんでしたね。

高濱:共和党の候補は5州で367人の代議員数を争いました。これは指名に必要な1237人の約30%に当たります。

 ドナルド・トランプ氏は5戦で3勝1敗(ミズーリ州は16日東部時間午前3時現在で互角)。「勝者総取り方式」をとっているフロリダでは99人を一気に獲得しました。これでトランプ氏が予備選で獲得した代議員数は16日東部時間午前3時現在、621人となり、指名に必要な1237人にあと616人となりました。 (”live March 15 Election Results,” Lily Mihalik, Los Angeles Times, 3/16/2016)

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フロリダ州で勝利を手にし、記者会見に臨んだトランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

 共和党保守本流が推してきたマルコ・ルビオ上院議員は必勝を期した地元フロリダでも27%しか得票できず。ミズーリ、ノースカロライナ、オハイオ、イリノイでは、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事にも敗れてしまいました。ケーシック氏はもう一人の穏健派で共和党保守本流が推している人物です。ルビオ氏は開票と同時に、予備選から撤退することを表明しました。

 ケーシック氏は地元オハイオで初勝利しました。同州も「勝者総取り方式」を適用しているので代議員66人がすべて同氏の手に入りました。「これで選挙資金が入ってくる。次は(手ごたえを感じている)ペンシルベニア(4月28日)での勝利を目指す」とインタビューに答えています。

 超保守派のテッド・クルーズ上院議員は事前の調査ではミズーリ(代議員数52人)、ノースカロライナ(同72人)、イリノイ(69人)でトランプ氏に迫る勢いでしたが、16日東部時間午前3時現在、互角のミズーリを除いてはトランプ氏の軍門に下りました。しかしクルーズ氏が「ストップ・ザ・トランプ」を実現できる事実上唯一の対抗馬であることに変わりはありません。

トランプに不利に働く「指名推薦人」制度

 共和党保守本流は今後どのように対応するのか。それを占ううえで、重要なのが「Endorsement Primary」(指名推薦人)の動向です。

 これまで紹介した獲得代議員は、一般党員による投票で選ばれた代議員です。ところが、前回お話しした通り、共和党にも「特別代議員」がいます。共和党では「指名推薦人」と呼ばれます。彼らは予備選での投票結果とは関係なく、自分が推薦する候補者に党大会で一票を投ずることができるのです。指名推薦人になるのは党所属の上下両院議員、州知事たちです。

 ニューヨーク・タイムズの選挙予測・分析サイト、「FiveThirtyEight」は候補ごとの「指名推薦人」獲得状況をポイント制で評価して紹介しています。他の代議員に対する影響力か強い上院議員は1人5ポイント、下院議員は1人1ポイント、知事は1人10ポイントで計算します。

 ミニ・スーパー・チューズデー直前までの結果は以下のようでした。  ルビオ上院議員     168ポイント  クルーズ上院議員    50ポイント  ケーシック知事     32ポイント  トランプ氏       29ポイント

 予備選では快進撃を続けるトランプ氏も、獲得した指名推薦人は上院議員が1人、下院議員が4人、知事が2人に留まっています。

 この調査ではルビオ氏がダントツでした。2位はクルーズ氏、3位はケーシック氏。トランプ氏は最下位なのです。

 ところがルビオ氏が撤退して以後、以下のように変わりました。  クルーズ上院議員    52ポイント  ケーシック知事     32ポイント  トランプ氏       29ポイント

 ルビオ氏を推薦していた指名推薦人はなくなり、そのうちの2人がクルーズ氏に回ったようです。ケーシック、トランプ両氏を支持する推薦人の数はまだ変わっていません。 (”The Endorsment Primary,” Aaron Bycoffe, FiveThirtyEight, 3/15/2016)

依然として指名に影響力を持つ党エリートたち

—なぜ、「指名推薦人」のポイントを獲得することが重要なのでしょうか。

高濱:民主、共和の両党とも、大統領候補を指名するプロセスで上下両院議員や知事が強い影響力を持ってきました。一般党員による予備選や党員集会での投票が党外やメディアでも注目されるようになり、一定の力を持ち始めたのは60年代に入ってからのことです。80年以降、党エリートたちの影響力は弱まりましたが、それでも党エリートたちの指名権限は強く、今回も予備選が始まる前から非公開の会合などで特定の候補を推薦する動きがありました。

 党大会までに指名争いの決着がつかなかった場合、党大会が開かれている最中に、党エリートたちが舞台裏で密談して一人の候補に絞り込むわけです。ここでは一般党員はいかんともすることができません。メディアはこれを「Smoke-filled room machinations」(タバコの煙が立ち込める密室での謀議)などと呼んでいます。 (”The Party Decides.” Marty Cohen, David Karol, University of Chicago Press, 2008)

トランプよりも「共和党ブランド」を守る?

—党エリートたちは徹底的にトランプ氏を嫌っていますが、このままいくと、トランプ氏を指名することが一般党員の投票で決まってしまうのではないですか。共和党保守本流はどうしようとしているのですか。

高濱:二つのシナリオが考えられます。

 一つは、トランプ氏の動向にかかわらず、ケーシックとクルーズの両氏らに撤退させず、党大会が開かれる7月18日まで頑張ってもらうという手です。そして党大会の場で指名に関する党規約を修正してしまう。

—そんなことをしたら、「非民主的だ」との理由で一般の米国民の顰蹙を買って、本選挙で民主党候補に負けてしまうのではないでしょうか。

高濱:その公算は大です。しかし、今回は大統領選に負けても、共和党のブランドを守ることの方が長期的には大事と思っている党エリートがいるようです。

 もう一つのシナリオは、目下、第2位のクルーズ氏に一本化することです。ケーシック氏には途中で降りてもらう。そして、クルーズ氏には3月22日のアリゾナ(代議員数58人)、ユタ(同40人)の予備選で圧勝してもらう。

 党保守主流系の「スーパーPAC」は今回のフロリダ州予備選だけで1億5700万ドルを使って、テレビやラジオ、インターネットで「反トランプ」広告を流しました。しかし望む結果は得られませんでした。こうした反トランプ・キャンペーンは今後も続くようです。 (”Why this day changes everything for GOP,” Buck Sexron, CNN, 3/15/2016)

護衛にかかるコストは史上最高

—トランプ氏の発言に猛反対する非共和党員が演説会場に押し寄せて抗議する動きが出ていますね。こうした動きは今後の予備選に影響は与えるのでしょうか。

高濱:オバマ大統領は15日、トランプ氏が行く先々で抗議デモに遭い、抗議する市民と支持者とのいざこざが常態化していることを憂慮し、「トランプ氏のレトリックは下品であり、国を分裂させる以外のなにものでもない」と厳しく批判しています。こうした混乱を招いているのはトランプ氏にあるという見方です。

 米国土安全保障省は、トランプ氏をはじめとするすべての候補者の身辺を警護するため護衛官を派遣しています。今年の警護費用は米大統領選挙史上最高額と言われており、同省は米議会に追加予算を要求しています。予備選が進む中でこれから候補者に何が起こるかわかりません。ある新聞記者は「これもトランプという候補者が出現し、怒りと対立を増幅させているからだ」とコメントしています。

3/15日経 エコノミスト『全人代が描く未来、信用できるか』について

英国・エコノミスト紙も習近平の権力奪取は未完成と見ています。5ケ年計画も基礎となる数字が出鱈目なので画餅に帰すことは明らかです。昨年度のGDPがマイナス成長と言われる中、どうして本年6.5%の経済成長が可能なのか?中国社会はハリボテ社会です。政府・企業とも、大躍進や文革同様、スローガンだけで中味がありません。プロパガンダで敵を欺くやり方を好みます。

でも、キャメロンやオズボーンのように中国に膝を屈した感のある英国で厳しい意見を載せるのは大したものと思います。日本のメデイアも自民党政府の揚げ足取りばかりしているのでなく、たまにはエコノミストの記事でも読んで精神の立て直しを図ったらどうかと思われます。

中国は過重債務、過重投資と言われているのに、新たなインフラ投資をするのが分かりません。膨大な借金を抱え、誰が支払うのか?デフォルトを防ぐために増札するのでしょうけど、ハイパーインフレを引き起こすのでは。国民の怨嗟の的となります。うまく切り抜けられるか?切り抜ける方法がないため、外に敵を見出し、戦争を引き起こすかもしれません。日本の尖閣に上陸するかもしれません。そのときに日本国民は自衛隊の有難さと憲法9条では国を守れないことに気付くでしょう。憲法9条は、戦後すぐは米国の為、今は中国の為に存在しているのです。憲法改正を邪魔する人間は中国か朝鮮半島の手先と思って間違いありません。

記事

指導者というのは時折、すべてが順調だと主張しすぎる傾向にある。年に一度、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の代表者およそ3000人が北京に集い、共産党の指導部がすでに秘密裏に下した決断を形式的に承認する。李克強首相は3月5日の開幕に際し、中国は今年までに完了するよう定めた5年前の主な目標をすべて達成したと発表した。

■成長目標の実現、中央政府頼み

Xi in APRC

習国家主席が政治的支配を確立したかを判断するのは難しい(9日、北京)=ロイター

 国家計画を担う高官は全人代を取材する報道陣に、中国経済がハードランディングに見舞われることは「絶対にない」とも語った。全人代の常務委員会委員長は、政府は憲法(言論と集会の自由が明記されている)を完全に順守して行動すると述べ、習近平国家主席は代表団に向かって、有能で正直な官公吏が昇進すると語った。

 全人代のこのとことん明るい調子に納得する人はほとんどいないだろう。李氏は演説で、成長を下支えするために追加刺激策が近く打ち出されることを示唆し、商品市場はそれに反応して多少上向いた。だが、2010年代末までの中国の経済見通しに対する弱気心理は、依然、国内外に蔓延(まんえん)している。

 中国の指導者たち――かつて、長く、目覚ましい経済成長期を実現したことで広く称賛された人々――が今、景気が減速する中で四苦八苦しているとの認識が広がり、その弱気心理はいっそう悪化している。

 今年についていえば、李氏は国内総生産(GDP)成長率の具体的な目標を掲げる従来の慣行を巧みに避けた。代わりに6.5~7%という目標レンジを発表することで、自身に一定の弁解の余地を与えた。

 世界的な基準に照らすと、まずまずの成長率といえるだろう。中国にとっては、昨年と同程度になるはずだが、追加の刺激策なしで目標を達成するのは難しい。また、中国の近年の実績を見れば、景気刺激策は結局、無駄なプロジェクトと成り果て、一段と大きな不良債権の山をもたらし、経済の首を絞めかねない。

 李氏は、成長目標を達成するために、各地方政府が建設プロジェクトを行うより、むしろ中央政府の財政・金融政策により重点を置いていく意向をほのめかした。さらに、財政赤字がGDP比3%に達し、昨年の2.3%の目標より高くなること、通貨供給量(M2)の伸びの目標を13%増とし、昨年の12%を上回るとした。小幅な調整に聞こえるかもしれないが、少なくとも短期的には、成長率を押し上げる一助になるはずだ。金融政策はすでに緩和されている。今年1月、中国の銀行による新規融資額は2.51兆元(3850億ドル)にのぼり、単月としては過去最大を記録した。

■新5カ年計画、達成容易でなく

 長期展望はより気がかりだ。10日間の会期における全人代の責務の一つは、習氏が起草を指揮した中国の第13次5カ年計画を承認することだ。李氏は予想通り、今年から20年までの計画の対象期間に、6.5%の平均年間成長率を目指すと述べた。だが、「極めて複雑で困難な国際環境」や国際貿易の減少といった問題のせいで、目標の達成は容易ではないと認めた。党内の迷信深い人は不安になるだろう。13という数字が中国で不運を暗示するからではなく、5カ年計画の創始者であるソ連が第13次計画に乗り出すや否や崩壊したからだ。

 本誌(英エコノミスト)が印刷に回された時点で、新計画の全文は公表されていなかった。だが、これまでに公開された断片的な情報は、中国がなんとしても行わなければならない経済改革を表現上は行うとしている。李氏は、市場の力の「決定的な役割」と「供給サイドの改革」の必要性に対する政府の信念を改めて表明した(後者については、経済の最重要分野における非効率な国有企業の支配を弱めるなど、構造改革の必要性を暗に示している)。

 しかし、これまでの指導部の改革の試みはさほど思い切ったものではなかったし、李氏は今回、新たな対策を近く打ち出す気配も見せなかった。実際、手に負えなくなった投機を抑制する策として長年温められてきた不動産税導入の可能性にさえ触れなかった。新計画には、効果の疑わしい投資計画が含まれている。20年までに新たに50の空港を建設したり、辺境チベットにつながる2本目の鉄道路線を建設したりするといった計画だ。

 5カ年計画は、30年までに中国と台湾を結ぶ総延長126キロの高速鉄道を建設することまで提案している。万一、実現するようなことがあれば、これは世界で最も長い鉄道トンネルになるが、台湾に発言権があるのなら、実現する可能性は極めて低い。

■習氏の関心は経済より権力か

 習氏は経済改革に専念するより、自身の政治的支配力を高めることで頭が一杯であるように見える。全人代が開幕するわずか数日前、当局は元不動産デベロッパーで共産党員の任志強氏が運営するソーシャルメディアアカウントを閉鎖した。彼は3800万人のフォロワーを誇るこのアカウントを使い、メディアに対する党の統制強化を図る習氏を批判していた。

 全人代の会期中には、検閲官らが、北京の経済誌「財新」が掲載したオンライン記事を1本削除した。財新は「違法なコンテンツ」を投稿したとされたが、見た限り、全人代のアドバイザーが「自由にものを言う権利は守られなければならない」と語ったと報じたことがその理由だった。

 楽観論者は以前、政治的な支配を確立した習氏がいずれ、改革に二の足を踏む人々を攻撃するためにその権力を使うようになると考えた。その期待は完全に消滅したわけではない。だが、習氏が望んでいた政治的支配力を手に入れたのかどうか、また改革にはあまり興味がないのか、それともまだ政治的には安泰だと感じていないのかを見分けるのは難しい。党総書記の座を引き継いでから3年以上たったが、反対勢力をつぶそうとする習氏の精力的な努力からは、絶大な自信はうかがえない。いずれにせよ、共産党の5カ年計画によって改革を進めるだろうという期待と、習氏の個人的な思惑を一致させるのは難しいのかもしれない。

(c)2016 the economist newspaper limited. Mar 12th 2016 all rights reserved.

3/14日経ビジネスオンライン 鈴置高史『朴槿恵外交は「暴走」から「迷走」へ どうせ、我々は「米中の捨て駒」なのだ』について

韓国は愚かですから、自分が大国をいいように操っていると思っていましたが、逆に米国からTHHADで梯子を外され、北とは秘密交渉で韓国は梨の礫の状況に置かれました。事大主義の咎めが出た形です。

クリントン政権時の北爆を断った韓国が道を誤ったとしか思えません。覚悟のない国はダメです。北は失うものがないので自由度が高くなります。韓国は守るべきものが見えていません。ですから保守派と雖も、反日に血道をあげ、逆に日本人の韓国嫌いは進んでいっているように思えます。

http://www.sankei.com/politics/news/160312/plt1603120010-n1.html

韓国嫌いの数字について、まだまだ数字上は低く感じます。友人の話を聞くと嫌いになっている人が増えています。韓国は中国の手先になって、反日を世界中に広めていますし、日本にいる所謂在日も日本共産党と組んで日本弱体化を図っています。国民も真実を知らされればもっと下がるのでしょうが、偏向したメデイア(新聞・TV)からだけ情報を取っていますと、正しい判断ができなくなります。

米国が朝鮮半島から足抜けするかもしれないとのこと。いい加減「火病」に振り回されるのは御免と思ってきたのでしょう。朝鮮戦争時の韓国軍の戦いぶりを見ていたらそんなものは分かっていたでしょうに。米国は如何に日本を恐れていたかという事です。反日をやらせ放題にしてきましたから。

それに引き換え今の日本は足抜けならぬ腰抜けばかり。日本の中枢が保身の官僚に牛耳られているようでは。財務省・外務省・文科省が三馬鹿ならぬ三悪トリオです。彼らをコントロールできる政治家がいないのが問題。国民主権が泣きます。でも「国家は国民に見合った政府しか持てない」と言われますので止む無しなのかと。

日本も傍観者の立場でいられるはずがありません。韓国が中国側に付いたなら、中国の軍事膨張を防ぐ自由主義諸国の最前線は日本と台湾になります。それを頭に描きながら外交をして行きませんと。やはりATO(Asian Treaty Organization)の早期創設が望まれます。ASEAN諸国とも連携して中国封じ込めを図ることが肝要です。

今度の参院選では与党+αで議席の2/3を取り、憲法改正の議論を俎上に載せ、国民投票まで持って行きたい。先ずは96条の改正から。自衛隊の国軍化より、硬性憲法を修正しないと。クライン孝子の『敗戦国・日本とドイツ 戦後70年でなぜ差がついたのか』を読みますと、1949年基本法制定から1997年まで44回も改正してきたとありました。世界の動きに機動的に対処するにはすぐに憲法改正できる仕組みにしないと。左翼メデイアの報道と違い、国民レベルでは2度の大震災もあり、自衛隊が如何に頼りになるか分かっていますので、9条改正は後で良いと思います。

しかし、民主党と維新の党の合併後の名前が民進党とは。台湾の民進党は国民党独裁の中で戦って政党を立ち上げた訳で、彼らにそんな覚悟もないでしょう。中味は共産党と同じく反日売国政党です。騙されてはいけません。民主党にも保守派が居ると言っても、姿が見えません。間違っても投票することのないようにしたいです。

記事

前回から読む)

 米国を離れ、中国に向けて「暴走」していた韓国。北朝鮮の核問題を巡り米中が取引に動くと、今度は「迷走」し始めた。

「南シナ海」とも交換?

前回は、韓国が「自分はのけ者か」と疑心暗鬼に陥ったという話で終わりました。

鈴置:朝鮮半島の未来を自分とは関係なく、周辺国が話し合って決めるのではないか――との恐怖です。

 きっかけは、米中が北朝鮮に対する国連制裁案を固める際、在韓米軍に導入予定の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)を交渉カードに使ったことでした。

 仮に、米国が満足できるほどの対北制裁を中国が実行したら、THAAD配備はなかったことになるかもしれません。それに、米中の取引の場はもっと広いと見る向きもあります。

 在韓米軍へのTHAAD配備と、中国が現在進めている南シナ海での対空ミサイル配備とを交換条件に米中が交渉する――との観測まで韓国紙に載り始めました。

 韓国は梯子を外されかけています。米国の顔色をうかがい、中国の報復まで覚悟して配備を容認したというのに……。これでは朴槿恵(パク・クンヘ)大統領はピエロです。韓国人の米国に対する猜疑心は膨らむ一方です。

WSJが抜いた米朝秘密接触

—それに加え、米国と北朝鮮が2015年末に、国交正常化を念頭に置いた秘密交渉に入りかけていたことが明らかになりました。

鈴置:ウォールストリートジャーナル(WSJ)が2月21日「U.S. Agreed to North Korea Peace Talks before latest Nuclear Test」(英語版)ですっぱ抜いたのです。骨子は以下です。

  • 4回目の核実験の数日前、オバマ政権は朝鮮戦争に正式に終止符を打つべく対話を開始することで北朝鮮と秘密裏に合意していた。米国が長い間掲げていた、北朝鮮が先に核武装を削減するとの条件を取り下げてのことだ。
  • 代わりに米国は「北の核兵器」を対話の一部とするよう求めた。しかし、北はこの反対提案を拒絶した。以上は、この動きに詳しい関係者が明かした。

 この記事により、韓国はちょっとした騒ぎになりました。「朝鮮戦争に終止符を打つ」とは、米朝の間で国交を正常化したうえ、平和協定なり不可侵条約を結ぶという意味です。

南ベトナムの二の舞に

—「平和協定」のどこが問題なのでしょうか。

鈴置:交渉で北朝鮮が「休戦協定を結んだだけの状態から安定的な平和体制に移行するのだから、在韓米軍を撤収すべきだ」と言い出すのは確実です。そもそも、それこそが北が平和協定の締結を主張する目的なのですから。

 韓国人、特に保守派は在韓米軍の撤収により南北朝鮮の戦力、あるいは心理的なバランスが崩れたら、北朝鮮が攻撃してくる可能性が高いと信じています。だから安易に平和協定を結ぶなんて、彼らにとってはとんでもないことなのです。

 保守運動の指導者の1人、趙甲済(チョ・カプチェ)氏は北朝鮮の平和攻勢に強い危機感を抱き、このニュース以降しばしば、国民への警告記事を自分のサイトに載せています。

 「韓国が参加しない米朝の平和協定交渉はベトナムの再現だ!」(3月1日、韓国語)では以下のように主張しました。警告のポイントは、平和交渉が「北の核」容認につながる、という点です。

  • 韓国が参加しない米朝の平和協定交渉は、南ベトナムの敗亡を呼んだ「パリ平和交渉」の再現となる。受け入れることはできない。
  • 平和交渉は北の核放棄の後に限って行うべきだ。核の脅威が進行中に平和交渉すれば、北の核武装を事実上、認めることになる可能性が高い。
  • パリ平和協定が北緯17度線の南に進入した北ベトナム軍を認める一方、駐越米軍を撤収させたことにより、(南ベトナムの)共産化につながった。

米国の変節に不意打ち食らう

 今回の「米朝接触」のニュースに、保守派だけではなく普通の韓国人までがショックを受けました。成立しなかったとはいえ、米朝がいったんは平和協定を話し合う交渉に入りかけたからです。

 米韓はこれまで「平和協定」に関する話し合いについて、北朝鮮が先に核兵器を放棄するのなら応じてもよい、との姿勢で足並みをそろえてきました。

 でもWSJの記事によれば、米国は「北の核放棄」と「平和協定」を同時に話し合ってもよい、と姿勢を変えたのです。

 東亜日報は社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)で、そこに危機感を表明しました。

  • 当分は北朝鮮への制裁が続くだろうが、危機的状況がある程度落ち着けば、中国と北朝鮮が6カ国協議と平和協定交渉の並行を提起し、米国も前向きに検討する可能性が高い。
  • 最近、米国の専門家の間では、25年間維持してきた「『先』非核化、『後』平和協定」という対北交渉の枠組みを見直す兆しがある。
  • 制裁だけでは北朝鮮の核問題を解けない現実をあげて、平和協定交渉が必要だとする主張も少なくない。ロシアも平和協定の必要性に共感している。
  • しかし、平和協定は北朝鮮が主張する在韓米軍の撤収、米朝国交正常化などと連動している。北朝鮮が核を放棄するまで、韓国は受け入れられない。

中国も平和協定を推奨

 韓国人の悩みをさらにかき立てたのは「平和協定」締結に向け、中国も露骨に動き始めたことです。

 WSJが特ダネを報じる4日前の2月17日、王毅外相は北朝鮮に核放棄を求めるだけではなく、休戦協定を平和協定に転換する協議を並行して進めるべきだと語りました(「表・THAADを巡る米韓中の動き」参照)。

1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日  
朝鮮日報、社説で核武装を主張
与党セヌリ党幹部2人、核武装に言及
1月13日 朴大統領、国民向け談話で「THAAD配備は国益に基づき検討」
2月7日  
北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国国防部「THAAD配備に関し、米国と公式協議に入る」
中国外交部、北朝鮮と韓国の双方の大使に抗議
Global Times社説「配備すれば戦略・戦術の両面で軍事目標に」
2月16日  
環球時報・社説「配備すれば韓国は中・米の碁盤の石だ」
朴大統領、国会演説で「配備の協議開始も抑止力の一環」
2月17日 王毅外相、平和協定締結のための米朝協議を提唱
2月21日 WSJ「2015年末、米朝が平和協定に関し秘密交渉」
2月23日 米国、配備に関する合同実務団結成のための約定書交換を突然に延期
2月24日 ケリー国務長官「配備に汲々としない」
2月25日 ハリス米太平洋軍司令官「必ず配備するわけではない」
3月2日 国連安保理、対北朝鮮制裁を採択
3月4日 米韓、配備に関する合同実務団結成のための約定書を交換

 

 こうした動きを考え合わせ韓国人は、自分の知らないところで米・中・北が談合して、勝手に話を進めていくのではないかと疑いを持ったのです。

—疑り深いですね。

鈴置:韓国には、米国の対北朝鮮政策がぶれ続け、それにより自分たちは引きずり回されてきた――との根深い不信感があります。

空爆考えたクリントン

 朝鮮日報の社説「政府は米朝の平和協定論議をちゃんと知っていたのか」(2月23日、韓国語版)がその思いを吐露しています。

末期のオバマ(Barack Obama)政権が北朝鮮との交渉に乗り出す考えを少しでも持っているのなら、我々は見過ごすことができない。過去20年間、米国の対北政策は制裁と対話の間で揺れ動き、別段の成果を生めなかった。

北の核施設の空爆まで考えたクリントン(Bill Clinton)政権は1994年、カーター(Jimmy Carter)元大統領の訪朝を期に、北朝鮮と電撃的にジュネーブ合意を結んだ。

しかし、北がこの約束を破ったため、次のブッシュ(George W. Bush)政権は強硬策に転じた。もっともこの政権も、末期に方向を変えた。

オバマ政権も北との合意が破れると「戦略的忍耐」に転じた。持続性のない対症療法を繰り返しては、北の偽装平和戦略に利用されたということだ。

政権末期には北と妥協

—こうして見ると確かに、米国の歴代政権は腰が据わっていませんね。

鈴置:米国からすれば韓国だって、クリントン政権が北の核施設を空爆しようとしたら怖がって「やめてくれ」と頼んできた。その後も北が核実験した直後は大騒ぎするが、すぐに忘れてしまうではないか、と言いたくなるでしょうが……。

—政権末期になると米国が北に接近するのは?

鈴置:歴代政権は北朝鮮に対し初めは強硬に出る。しかし、強硬策に出ると戦争になりかねないと次第に認識する。政権末期になると「外交上の実績作り」を目的に、表面的な妥協をしてしまう――というパターンです。

イランの核合意が後押し

 もう1つ、韓国人が恐れる理由があります。2015年に米国や中国など6カ国と、イランの間で核合意という先例ができたことです。

 イランが核開発のスピードを落とす見返りに、米欧は経済制裁の相当部分を解除する――との内容です。注意すべきはイランが約束したのは、決して「核兵器の完全廃棄」ではないことです。

 このスキームを朝鮮半島に当てはめれば、北は核・ミサイル実験を中断することで核開発の速度を落とす。見返りに、国連加盟国は制裁を一部解除し、米国も米韓合同軍事演習の中断など融和姿勢を見せる――ことになります。

 中国と北朝鮮はまずこの取引を実現し、それを手掛かりに「平和協定の締結」と「在韓米軍撤収」の交換を目指すでしょう(「表・朝鮮半島を巡る米中のカード」参照)。

朝鮮半島を巡る米中のカード
米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

 すでに米中の間で「THAAD配備の中断」と「従来よりも強い制裁」が取引された模様です。今後は「THAAD配備」ではなく「米韓同盟」がカード化されていくわけです。

朝鮮半島から「足抜け」

—表の「平和協定」の項目は「米朝国交正常化」「在韓米地上軍撤収」「在韓米軍撤収」「米韓同盟廃棄」と4つに細分化されています。

鈴置:下に行くほど強力な――中国・北朝鮮に得なカードです。ただし、米国にとっても必ずしも悪い話ではありません。面倒な手間ばかりかかる朝鮮半島から「足抜け」できるのですから。韓国の保守にとっては悪夢となりますけれど。

 もし一番下の「半島の非核化・中立化の制度的保障」まで状況が進むと、彼らは「米国に見捨てられた」「やはり、自分たちは米・中の捨て駒だった」と意気消沈するでしょう。

 韓国を脱出する人も出るかと思います。なおこの際、日本が大陸に向き合う最前線になります。他人事ではありません。

どうしようもない韓国

—結局、韓国はどうするのでしょうか。

鈴置:どうしようもありません。半島の将来を巡り、米中が繰り広げるゲームを見守ることしかできないのです。

 先に引用した東亜日報の社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)の最後の部分を要約します。

  • 北朝鮮の核問題で今回、米中は(韓国の背の届かない)高い空で駆け引きを繰り拡げた。当事者である韓国が脇役に追いやられる可能性があるという冷徹な現実に気づく。
  • 米中の気流変化を感知できずに両国の言いなりになることがないよう、政府は気を引き締めなければならない。

巨人たちのバスケットボール

 保守論壇の本流中の本流とされる、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹も、コラム「THAAD問題はそんなに簡単ではない」(2月25日、韓国語版)で、似た例え話を使いました。以下をご覧下さい。

最近、米中という背の高い人たちがTHAAD問題に関し、我々の頭の上でバスケットボールを回し始めた。米中のやり取りの結果、韓国配備がなくなることもあれば、配備の後に我々が想像した以上の暴風が吹き荒れることもあろう。

我々が行く道の先に安全保障に関しどんな得失があるのか、可能な限り中長期的な視点で状況を見極めねばならない。たとえ背は低くとも、発想だけは背の高い人の上にいなければならない。そして、冷静に、冷静に、また冷静でなければならないのだ。

 ボス交渉が始まった。結論はまだ、分からない。軽挙妄動せず、その行方を見極めよう――との呼びかけです。楊相勲・論説主幹も「状況を見守ろう」と訴えるしかないのです。

「離米従中」に歯止めかからず

—韓国がTHAAD配備を認めたので、「離米従中」をやめて米国側に戻ったのかと考えていました。

鈴置:日本の外交関係者の間でもそう思い込んでいる人が多い。韓国人が「親中外交はやめた」などと言ってくることもあるのでしょう。でも、楊相勲・論説主幹の記事の見出しではありませんが「問題はそんなに簡単ではない」のです。

 今回、韓国は米国から強く命じられたので、THAAD配備を受け入れました。今後、米国が「配備はやめた」と言い出せば、恥ずかしい思いをしながらもそれに同意するしかない。

 反対にTHAADを配備したら中国からひどく苛められるでしょう。楊相勲・論説主幹の言う「暴風が吹き荒れる」はそれを指します。そのあげく韓国は海洋勢力側から引きはがされ、今まで以上に大陸側に引き込まれる可能性も高い。

 もう、韓国人は、自らの意思によって自分の国の針路を決められません。米中どちらかが大声で叱りつけるたびに、反射的に動いているだけなのです。

 これまで韓国は米国を離れ中国側に向かって暴走していた。暴走とはいえ、そこにはなにがしかの意思は働いていた。しかしここに至りついに、意志とは関係なく迷走し始めた――と見るべきでしょう。

日本の頭上のボール

—なぜ、韓国は自分の運命に関与できないのでしょうか。

鈴置:対立を深めた米中が、血相を変えて外交ゲームに取り組み始めたからです。横綱のような米中がガプリ四つに組めば、前頭級の国の出る幕はなくなります。

 北朝鮮の核問題も深刻になるほどに、解決には相当の軍事力と、国民の我が身を削る覚悟が必要になります。でも、韓国はいずれも持たないのです。

—日本はどう動けばいいのですか。

鈴置:「韓国外し」は人ごとではありません。東アジアの安全保障の構造変化に関与できないという意味では日本も、韓国と似た境遇にあるのです。

 日本人も、頭の上で飛び交うボールの行方から目を離してはなりません。ひょっとするとボールを瞬時でも、少しでもコントロールするチャンスが来るかもしれない。その時に備えるべきです。

(次回に続く)

3/9WSJ EDWARD N. LUTTWAK『Suffering From Trumphobia? Get Over It Before the 1980 election, Reagan’s opponents said he would ignite a nuclear holocaust. Didn’t happen.(トランプ恐怖症の苦悩?それは1980年の選挙の前に終わった話。レーガンの相手は、彼が核で虐殺を起こすと言ったが、そうはならなかった。)』について

エドワード・ルトワックのウオールストリートジャーナルへの寄稿記事です。誤訳があればご容赦ください。戦略論の大家もトランプ大統領の現実化に目を背けることはできないと考えているようです。レーガンの例を引いて今は過激発言で大衆の支持を受けていますが、本選が近づけば普通の保守政治家に戻るだろうと。そうしなければクリントンには勝てませんので。確かにSNSを利用した選挙は今までのTV広告を多用したお金のかかる選挙と区別されます。その意味ではイノベーターです。広告会社は真っ青でしょう。日本の政治にもネットの活用をもっと認め、米国と同じく戸別訪問も認めた方が良い。公職選挙法は厳しすぎて、政治家を知るチャンスを少なくしている気がします。

3/11日経電子版の記事にもトランプが豹変する可能性を示したものがありました。

<トランプ氏、暴言封印 討論会で主流派に支持呼びかけ

【ワシントン=吉野直也】米共和党は10日夜、大統領選の候補指名争いの大票田であるフロリダ州でテレビ討論会を開いた。15日の大票田決戦を控え、首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は自身のトレードマークである暴言を封印し、党主流派に支持を呼びかけた。指名争いから撤退したキリスト教保守派で元神経外科医ベン・カーソン氏は11日、トランプ氏への支持を表明した。

Trump & Cruz-2

フロリダ州の討論会の休憩時間に言葉を交わすトランプ氏(左)とクルーズ上院議員(10日)=ロイター

 「共和党主流派はこの現実を利用すべきだ」。トランプ氏は討論会で、無党派を含む幅広い層から支持を得ていると説明し「反トランプ」の立場を鮮明にする主流派に再考を促した。トランプ氏の指名を阻止したい主流派内には7月の党大会で決選投票に持ち込み、トランプ氏以外の候補を担ぐ構想もある。

 トランプ氏は予備選・党員集会を通じて共和党の新たな支持層を掘り起こしていると強調し、「(民主党の本命候補)ヒラリー・クリントン前国務長官(68)も倒せる」と語った。

 トランプ氏にとってキリスト教保守派に人気が高かったカーソン氏の支持が得られたことも追い風だ。カーソン氏と2位につける保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45)の支持基盤は重なっており、同氏に打撃を与えられると読む。

 クルーズ氏は討論会でホワイトハウスがある首都ワシントンでも「トランプ氏は(大統領ではなく)スミソニアン(博物館)のトップとしては歓迎されるだろう」と皮肉った。主流派の党大会での画策にも触れ「惨事だ。投票者の意志を尊重すべきだ」と主張した。

 主流派のマルコ・ルビオ上院議員(44)は「あらゆる選挙は重要だが、今回の大統領選は世代間闘争だ」と支持を求めた。伸び悩むルビオ氏は地元フロリダで敗北するような事態になると、撤退が現実味を帯びる。世論調査ではトランプ氏に先行を許しており、厳しい戦いを強いられている。

 15日の大票田決戦はフロリダ、オハイオなど各州で予備選・党員集会がある。フロリダやオハイオは首位候補が州の代議員を独占する「勝者総取り」方式で、ここでトランプ氏が勝利すれば、指名獲得への流れが一気に加速する。>と。

日本にも厳しい物言いをするトランプですが、大統領になれば変わるでしょう。中国に対してはクリントンのように中国から金を貰って来たわけでないので、米国の覇権に挑戦していることが分かれば対峙すると思います。そのためには日米同盟を基軸とした自由主義諸国の結束こそが大事と理解するでしょう。

記事

Trump in WSJ

The candidate meets the press in Jupiter, Fla., March 8. PHOTO: JOE RAEDLE/GETTY IMAGES

By EDWARD N. LUTTWAK

March 9, 2016 6:13 p.m. ET

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Unlike the fear of Islam, which is a rational response to Islamist violence across the world, the fear of Donald Trump really is a phobia. There is a precedent for this: the panicked Reaganphobia that preceded the 1980 election. We heard that Ronald Reaganwas a member of the John Birch Society—whose essential creed was “Better Dead Than Red.” He therefore rejected “mutual assured destruction,” the bedrock strategy of the liberal consensus to guarantee coexistence by nuclear deterrence. Reagan, it was said, believed in “counterforce,” that is in a disarming first strike to win a nuclear war.

Mr. Trump irritates many with his vulgarities but Reagan was insistently depicted as a threat to human survival, so that most of the columnists and editorial writers of the quality press reluctantly called for Jimmy Carter’s re-election, despite the clamorous failures of his hopelessly irresolute administration. In Europe there was no reluctance. In London, Paris and Bonn, then the capital of West Germany, the re-election of Jimmy Carter was seen as a necessity to keep the bomb-thrower Reagan out of the White House, and well away from the nuclear button.

So many eminent people, including W. Averell Harriman, adviser to five U.S. presidents and chief negotiator of the 1963 Limited Test Ban Treaty, asserted that Reagan wanted to start a nuclear war that the KGB went on maximum alert from inauguration day for more than two years, forcing its officers around the world to take shifts on 24-hour watches of all U.S. strategic air bases to detect the telltale simultaneous launchings of a nuclear first strike.

In 1983, two years into his first term, Reagan did send U.S. troops into action to fight a war . . . in tiny Grenada, whose 133 square miles was the only territory that Reagan invaded in eight years. As for nuclear weapons, Reagan horrified his advisers at the 1986 Reykjavik Summit with Mikhail Gorbachev with his eagerness for nuclear disarmament, thereby disclosing that he didn’t even believe in strike-back, let alone in attacking first. He wanted ballistic-missile defenses, not ballistic missiles.

Mr. Trump’s lack of good manners may be disconcerting, but as president his foreign policies are unlikely to deviate from standard conservative norms. He would only disappoint those who believe that the U.S. should send troops to Syria to somehow end a barbaric civil war, or send troops to Libya to miraculously disarm militias, or send troops back to Iraq to preserve its Iran-dominated government, or send more troops back to Afghanistan where the Taliban are winning because of the government’s incapacity and corruption.

President Trump would do none of the above. He will send troops home from Afghanistan and Iraq, while refusing to intervene in Libya or Syria, or anywhere else in the Muslim world, where U.S. troops are invariably attacked by those they are seeking to protect. Real conservatives want to conserve blood and treasure, not expend them lavishly to pursue ambitious political schemes.

As for trade, yes, Mr. Trump has called for tariffs against China and Mexico. Most economists now agree that wage stagnation in the U.S. and other advanced countries is caused by imports from China and other newly industrialized countries. Tariffs are unlikely, but one should expect vigorous antidumping measures, instead of allowing entire industries to be submerged.

What about the racism then? Born and raised in New York City, Mr. Trump has met one or two people during his life who are not white Anglo-Saxon Protestants. He is unlikely to be startled by an encounter with a person of “Hispanic” or “Latino” origin. He has worked successfully with any number of African-Americans, and he has certainly shared a meal or two with Jews, including his son-in-law, Jared Kushner.

True, Mr. Trump launched his campaign by denouncing the supposed crimes of illegal immigrants from Mexico. But given his personal history, one may seriously doubt the sincerity of his anti-Mexican sentiments. He must certainly find ways of undoing the damage—starting with a fulsome apology—but nobody should view Mr. Trump as a racist because of those remarks.

That said, Mr. Trump is unlikely to persist with the State Department’s “resettlement” programs that keep flying Iraqis, Somalis and assorted others to Maine and other states supposedly in need of diversity—although the locals think otherwise.

The hysteria in certain circles notwithstanding, a Trump presidency would offer only the prosaic changes of any conservative administration: less activism across the board, with a view to saving some money; less environmentalist extremism; fewer “programs” instead of more of them; and no special efforts to add to minority representation in new categories, such as the transgender Supreme Court nominee that some are calling for.

In practice, these are all changes at the margin—a matter of 5% less spending rather than 5% more. In this election, though, that in itself would offer a clear alternative to the huge increases in government spending advocated by Bernie Sanders and followed by Hillary Clinton. While Mrs. Clinton may not follow through, one should not count on her insincerity.

So those who are planning to emigrate if Mr. Trump is elected president—one heard lots of emigration vows when Reagan was winning—might wait a week or two after inauguration day before fleeing. They might discover that President Trump is as good an administrator of the public weal as he was in his presidential campaign—the cheapest by far, and successful too.

Mr. Luttwak’s books include “The Endangered American Dream” (Simon & Schuster, 1993) and “The Rise of China vs. the Logic of Strategy” (Harvard, 2012).

3月8日、候補者はフロリダ州のジュピターで記者会見した。写真: ジョーRAEDLE

エドワード・N.ルットワークの意見

2016年3月9日午前6時13分午後ET

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世界に広がるイスラム教徒の暴力に対し合理的な対応はイスラム教を恐れることではないように、ドナルド・トランプを恐れることは恐怖症としか言いようがありません。前例があります。1980年の選挙を前にレーガン恐怖症と言われてパニックに陥りました。ロナルド・レーガンはジョン・バーチ協会のメンバーであり、協会の根本的な信条だった「アカの支配であれば死んだ方がマシ」の信奉者と聞きました。 彼はそれゆえ核抑止による共存を保証する寛大な合意の基本戦略である相互確証破壊(MAD)を拒否しました。レーガンは、核戦争に勝つためには敵を無害化する一撃、つまり「反撃能力」を信じていたと言われています。

トランプ氏は、その下品さにより多くの人を苛立たせていますが、レーガンは人類の生存を脅かすものとしてずっと描かれ、故に高級紙のコラムニストや論説委員のほとんどはジミー・カーターの絶望的に決断できない管理能力のなさにも拘わらず、しぶしぶ彼の再選を求めました。ヨーロッパではカーターは全く抵抗がありませんでした。ロンドン、パリ、西独の首都ボンでは、ジミー・カーターの再選は、爆弾投下魔レーガンをホワイトハウスから遠ざけ、核のボタンから離すので良いことと看做されていました。

多くの優れた人物、中でもW. アヴェレルハリマンは5代に亘って米大統領の顧問として仕え、1963年の部分的核実験禁止条約の交渉責任者でもありましたが、KGBがレーガンの就任日から2年以上も最大の警告を続けて来た核戦争を開始したいとレーガンは考え、すべての米国の戦略空軍基地において、核の一撃の発射の証拠となるものをチエックするために、スタッフに24時間監視のためのシフトを取る、と主張しました。

1983年、彼の1期目の2年目ですが、レーガンは小国のグレナダに米軍を派兵しました。そこは133平方マイルの領土しかないのに、8年間ずっと侵略しました。 核兵器について、レーガンは1986年のレイキャビクサミットでミハイル・ゴルバチョフとの会談で核軍縮について熱心に話をして顧問を震え上がらせ、彼は報復攻撃を信じてもいないが、やられ放しにもしない。ほしいのは弾道ミサイルではなく、ミサイル防衛だと明らかにしました。

トランプ氏の行儀の悪さにまごつくかもしれませんが、大統領になれば、彼の外交政策は、標準的な保守の規範から逸脱しそうにありません。米国は何とか野蛮な内戦を終わらせるためにシリアに軍隊を送ったり、民兵を奇跡的に武装解除するためにリビアに軍隊を送ったり、イランに支配された政権を維持するためにイラクに戻って部隊を送ったり、政府の無能と腐敗のためタリバンが支配しているアフガニスタンに再度派兵すべきと信じる人々を彼はガッカリさせるかもしれません。

トランプ大統領となれば、上記のいずれもしないでしょう。米軍は保護を求める人々によって絶えず攻撃されるようなイスラム世界や、リビアやシリアに介入することを拒否しつつ、アフガニスタンとイラクから撤兵させるでしょう。本当の保守派は、政治的野心を追求するためにムダに生命・財産を費やすのでなく、それらを守るものです。

貿易に関して、トランプ氏は、中国とメキシコに対する関税を要求しています。多くの経済学者は、現在米国および他の先進国における賃金の停滞は、中国やその他の新興工業国からの輸入が齎したものということに同意します。関税の見込みがなければ、人々は業界全体が沈下する前に、強力な反ダンピング措置を期待します。

それから人種差別についてはどうでしょう?ニューヨーク市で生まれ育ったトランプ氏は、彼の人生の中で1人か2人出会ったWASPではありません。彼はルーツが「ヒスパニック」または「ラティーノ」の人と出会っても、びっくりしそうもありません。彼は多くの黒人とも働いて結果を出し、確かに彼の義理の息子ジャレッドクシュナーを含むユダヤ人との食事を共にしています。

実の所、トランプ氏は、メキシコからの不法移民の犯罪を非難することによって彼の選挙キャンペーンを開始しました。しかし、彼の個人的な歴史を考えると、人は彼の反メキシコ感情が本物かどうか疑うかもしれません。彼の発言のせいで人種差別主義者と看做されないように、充分な謝罪から始めて、ダメージを受けない方法を見つけなければなりません。

トランプ氏は多様性の必要からイラクや、ソマリア、他の組み合わせからメイン州や他の州に「移住」させる国務省の計画に固執していないよう見えます。現地の人の思いとは関係なく。

特定の集団のヒステリーにもかかわらず、トランプ大統領となれば、保守派の平凡な行政に変わるでしょう。お金を節約するため、部局を跨る活動を少なくし、過激派の環境保護活動も少なくします。「計画」を増やすのでなくより少なくします。例えば誰かが要求している性転換した最高裁判事候補のような新しい分野で少数者を代表するものを加えていくことに特別な努力は要しません。

実際、これらは全て許容範囲の変化です。5%より多く消費するより5%少なく消費するという問題です。この選挙では、政府支出の大幅な増加を提唱するバーニー・サンダースとそれに従うヒラリー・クリントンに対して明らかに代替案を提供するでしょう。クリントン氏がそれに従わないかもしれませんが、彼女の不誠実さを期待しないでください。

トランプ氏が大統領に当選したら移住を考えている人は、レーガンが勝った時にも移民の誓いをたくさん聞いたものですが、脱出する前に、就任日から一週間か二週間待った方が良いかもしれません。大統領選挙のときにはるかに安いコストで成功したように、トランプ大統領は公共の福祉の良い管理者であることを発見するかもしれません。

ルットワック氏の本は、「絶滅のおそれのあるアメリカン・ドリーム」(サイモン&シュスター、1993)と「戦略の論理対中国の台頭」(ハーバード、2012)が挙げられます。

3/11日経ビジネスオンライン 北村豊『習近平、3大国営メディアに「党の代弁」要請 全権掌握へ、「江沢民の牙城」に乗り込む』について

習近平VS劉雲山(上海派)の争いはどう決着が付くかです。でも敵陣に乗り込む勢いからすれば、習の方が有利と見ます。劉は薄熙来と同じ運命を辿るかも。上海派は追い込まれています。逆転できるネタがあればとっくに出しているでしょうから。上海派は法輪功の弾圧をしてきていますので、信者に憎まれています。もし、習と上海派の立場が逆であれば信者から有益な情報が取れたかも知れませんが。

でも本記事の新華社の上部の媚び諂い方は中国人の典型です。まあ、問題を起こせばすぐ首になるから致し方ない面はありますが。それでも、社員のレポートでやんわり批判できるようになっただけ、昔と比べれば進歩したと言えるでしょう。勿論すぐ削除の憂き目にあったとしても。昔なら有無を言わさず拘束、人知れず殺されたと思います。IT技術の進歩で発表する場ができたことは大きいでしょう。昔は壁新聞の時代ですから。

任志強のような人は今後も出て来るでしょうが、習は力で押さえつけようとするでしょう。「国民の為」という大義名分は「共産党の利権の為」に今でもすり替わっています。自由競争の結果で格差が広がったのなら仕方のない面もありますが、銭権交易で不当に富を収奪してきたのは弁解の余地はありません。打倒さるべき政体です。

やはり、中国経済を崩壊させるのが世界平和の近道と考えます。中国が民主化したとしても民族性は変わらないでしょうから距離を置いて付き合うことが肝要です。勿論、中国がそんなに簡単に民主化するとは思っていませんが。日米欧は民主化の助けになる事であれば未だしも共産党の延命に手を貸すのは止めてほしい。黒田日銀総裁のように資本規制を言って中国を助けるような言動は慎むべきです。財務省も国賊が多いです。自分は頭がいいと思いこんで驕るのでしょうけど。学力は緊急時には役に立ちません。平時の時に前例踏襲するには便利でしょうけど。

記事

Xi visited media

3月5日から始まる第12期“全国人民代表大会(略称:全人代)”第4回会議を目前に控えた2月19日、中国共産党総書記の“習近平”は、中国国営メディアである“人民日報”、“新華社”、“中央電視台(中央テレビ)”を順次視察し、“党和政府的媒体姓党(中国共産党と中国政府のメディアは中国共産党の代弁者である)”と強調した。

中央テレビを視察した際には、中央テレビの職員が「中央テレビは“姓党(党の代弁者であり)”、絶対に忠誠ですから、どうぞ検閲してください」というプラカードを掲げて、習近平に媚びを売った。また、その後に行われた“高層宣伝工作会議(首脳部宣伝業務会議)”の席上、習近平は「メディアは党と政府の宣伝の拠点であり、“必須姓党(党の代弁者でなければならない)”」と述べた。

新華社、最高指導者の査察を熱烈歓迎?

その2日後の21日、ある新華社の職員はインターネットの掲示板に匿名で、習近平視察に際しての新華社の対応振りについて書き込んだ。この書き込みは瞬くうちにネット上で伝播されたが、たちまち削除された。その書き込みの全容は以下の通り。

【1】“春節(旧正月)”明けの出社2日目の2月15日、1枚の表を受け取り、個人情報を書き込んだ。聞くところによれば、それは政治審査表で、新華社職員の中から500人の“歓送隊伍(見送り隊)”を選ぶためのものであり、私はその中に1人に選ばれたのだった。なお、見送り隊とは別に“歓迎隊伍(出迎え隊)”も組織された。私は一貫して歓送迎などという儀礼的な行事には興味を持っていなかったが、上司がこれは政治的任務であり、参加しなければならないと言うので、どうしようもなかった。“習大大(習近平おじさん)”<注1>は我が国の最高指導者であり、非凡な人であり、機会があれば彼を見たかったし、それは自分にとっても光栄と思えた。2月18日午後の退勤時に、上司は私たちに、習近平が明日視察に来るので、明日は鮮やかで美しい衣装を着てくるようにと命じた。

<注1>“習大大”は習近平の愛称として作り出された言葉。“大大”はパパあるいはおじさんを意味する。庶民に親しまれる習近平を演出するのが目的か。

【2】今日(19日)家を出る時、私はいつも通り紺色のダウンコート(年齢も高いので保温が一番)を着て、赤いスカーフ(多少は色鮮やか)を首に巻いた。新華社ビルに到着すると、周辺には“便衣(私服警官)”、“武警(武装警察)”、“特警(特殊警察)”がくまなく配備されていた。8時50分に私たち500人はそれぞれ勤務する階から1階へ降りて講堂へ集合するよう命じられた。但し、その時には携帯電話などの電子機器の携行は禁止された。執務区域はすでに警戒が厳しく、出るだけで、入ることは許されなかった。指揮者は私たちに今後の予定を次のように説明した。すなわち、このまま1時間座って待ち、その後順番に列を作って安全検査を受けてから、南門の内側に整列して、習近平が新華社ビルを出てくるのを待ち、見送りを行う。

【3】これと同時に、指揮者は私たちに次のように指示を出した。もし習近平が見送りの人たちと握手をしようとするなら、握手するのは1列目の人だけに限定し、2列目の人は手を伸ばしてはならない。習近平が通り過ぎる時にはただ拍手して「“総書記好!(総書記こんにちは)”とだけ言い、自分勝手に声を掛けてはならないし、“近平,您好(近平、今日は)”といった類のプラカードや横断幕を掲げてはならないし、1列目の人は手袋などの使用も禁止。

【4】講堂ではあてがわれた番号順に座ったので、左右に座った人と必ずしも顔見知りというわけではなく、誰もが顔を見合わせるだけで手持無沙汰で、たまたま知り合いがいると世間話に花を咲かせた。私は本を読んでいたので、時間つぶしはさほど苦にならなかったが、近くに知り合いがいて話しかけてきたので、読書に専念できなかった。講堂内にいる人々を見渡すと、非常に多数の人が色鮮やかな衣装を身に着けていた。顔見知りで、間もなく定年退職する爺さんはすごく目立った。彼はめでたい日に着る真っ赤な綿入れの上着を着て、真新しい青色の中折帽をかぶっていた。彼は、日頃は濃いグレーの衣装ばかりで帽子などかぶったことなどなく、まるで春節に母親によっておめかしさせられた赤ちゃんみたいだと、皆は陰で彼を笑っていた。

【5】数十分が過ぎた頃、指揮者が安全検査の後はトイレに行くことはできないから、急いでトイレを済ますようにと指示を出した。人々は一斉にトイレへ殺到し、トイレの前には長蛇の列ができた。その後、待つこと1時間、1時間半、2時間と過ぎても、一向に安全検査を受けるようにとの指示はなかった。座るのに飽きた人々は講堂の入り口に集まったが、警戒は依然として厳重で、ビルの入り口には武装警察官が乗ったマイクロバスが停まっていて、車の窓から武装警察官が見張っていたので、人々はただ待つしかなかった。新華社の敷地内にある高層の住宅ビルの窓からは、武装警察官の頭が見え隠れし、武装警察官は住民の家にまで入って警備を行っているようだった。朝出勤と同時に、執務室の窓はすだれを巻き上げるよう指示を受け、併せて狙撃手に撃たれるから窓際でうろうろするなと注意喚起もあった。一方、この間も指揮者は盛んに携帯電話で連絡を取っていたが、何も動きはなかった。

「肩すかし」の対価はコメディ映画とまんじゅう

【6】この日の天気は暖かくないばかりか、風もあった。講堂の入り口に立って、自分の執務室の窓を見上げると、小鳥のように飛んで執務室へ入り、自分の椅子に座ってゆっくりと熱いお茶を飲み、ネットにログインしたいとつくづく思ったものだった。11時15分頃、執務ビルから出て来た1人の保安係が講堂入り口にたむろしている人々に対して、「あんたたち解散だ。総書記はもう帰った」と呼びかけた。一瞬の沈黙があったのち、失望と怒りが入り混じった声が鳴り響いた。そして500人の見送り隊は解散となり、人々は三々五々執務室へ戻った。ある者は総書記に会えなかったことを悔しがり、ある者はようやく自由の身になったことを喜んだ。誰かが「今日は“愚人節(エープリルフール)”か」と言えば、またある者は「我々500人はきっと政治審査をパスしなかったので、臨時的に閉じ込められたんだ」と冗談を言った。

【7】その日の午後、見送り隊は通知を受け取ったが、その内容は次のようなものだった。

午前中の行事は都合により取り消しとなった。皆さんの理解と協力に感謝の意を表し、映画『“美人魚(マーメイド)”』<注2>を特別上演します。日時は2月23日午後12時20分から、今日の見送り隊の番号札が入場券となります。同時に“慶豊包子舗(慶豊包子店)”<注3>の優待券50元(約1000円)を発給します。

<注2>『美人魚』は2016年春節元旦(2月8日)に封切られた映画で、富豪と人魚のロマンチックコメディ。 <注3>“包子”は中華まんじゅうを意味する。“慶豊包子舗”は2013年12月28日の正午に習近平がお忍びで立ち寄り、列に並んで順番を待って“包子”を食べたことで有名になった。

さて、国営メディアは“中国共産党中央委員会宣伝部(略称:中宣部)”の管轄下にあり、中宣部を主管しているのは、中国共産党中央政治局常務委員の“劉雲山”(序列第5位)である。劉雲山は“江沢民”元総書記のグループに属し、1993年に中宣部に着任してから副部長に就任し、2002年10月から2012年11月まで中宣部長を務めた。劉雲山退任後の現職の中宣部長は“中国共産主義青年団(略称:共青団)”グループに属する“劉奇葆”だが、政治局常務委員として中宣部を主管する劉雲山の力は強く、劉奇葆は名目上の中宣部長と言える。

「暗殺」恐れ厳重警備、ネット上では猛批判も

中宣部は中国共産党のイデオロギーや宣伝活動を統括する部門で、新聞、出版、教育、テレビ、ラジオなど広範な部門を指導、監督しているが、劉雲山は頻繁に習近平の意向に逆らう姿勢を示しており、中宣部は最後に残された江沢民グループの牙城と化していると言われている。従って、劉雲山は、習近平にとって目の上のたんこぶと言うべき存在なのである。その敵の牙城に習近平自身が視察を名目に乗り込んだのが、2月19日の一台(中央電視台)、一報(人民日報)、一社(新華社)の視察であった。

だからこそ、国営メディアの視察であるのにかかわらず、万が一の暗殺を恐れる習近平は、警備を極力厳重にし、新華社の視察では当初予定していた500人編成の見送り隊の送迎を受けぬまま、密かに新華社を後にしたのだった。習近平は2012年11月の総書記就任の当初、“軽車簡従出行(地位のある人物が供回りを質素にして出かける)”ことを公言したが、今や大量の兵士による厳重な警戒がそれに取って代わっているのである。

ところで、冒頭で紹介したように、習近平は「メディアは党と政府の宣伝の拠点であり、“必須姓党(党を代弁しなければならない)”」と述べた。従来、党メディアは“党的喉舌(党の代弁者)”と言われてきたが、“党媒姓党(党メディアは党の代弁者)”はその度合をさらに強めることを意味している。この発言に敢然とかみついた人物がいた。

それは“任志強”である。任志強は1951年3月生まれの64歳。2007年に亡くなった父親の“任泉生”は中国政府“商業部”の元副部長だった。1981年まで12年間を軍人として過ごした任志強は、その後不動産開発に従事し、1993年に“北京市華遠集団”を設立して“総裁”となる。彼の事業は順調に発展し、不動産業界では名の知られた存在となった。

任志強は優秀な“中国共産党員”であり、以前には北京市“西城区”の人民代表に選出されたことがあり、現在は“中国人民政治協商会議北京市委員会委員(略称:北京市政治協商委員)”である。

任志強は折に触れてネット上の自身の“微博(マイクロブログ)”にコメントを書き込んでいたが、その直截で批判的な口調はネットユーザーたちの人気を集めた。任志強の“微博”はフォロワー数が3700万人いるとされ、ネット上の重要人物を意味する“網路大V”の1人として知られている。

「人民の政府はいつから共産党の政府になったのか」

その任志強が上述した中央電視台のプラカード「中央テレビは“姓党(党の代弁者であり)”、絶対に忠誠ですから、どうぞ検閲してください」と習近平の“党媒姓党”発言に反発したのだ。彼は2月19日夜に“微博”で発表した文章の中で次のように述べた。

(1)人民の政府はいつから中国共産党の政府に変わったのか。使っているのは共産党の活動資金なのか。これは好き勝手に変えることはできない。納税者のカネを使って納税者にサービスを提供しないようなことをするな。

(2)対立する2つの陣営を徹底的に分けることはできるのか。全てのメディアが共産党の代弁者で、国民の利益を代表しないなら、国民は打ち捨てられ片隅に忘れ去られるだろう。

これに対して、国営メディア「北京日報」傘下のニュースサイト「千龍網(ネット)」は2月22日付で『誰が任志強に反党の自信を与えたのか』と題する文章を掲載した。その内容は、任志強が“党媒姓党(党メディアは党の代弁者)”に反駁して攻撃したと指摘し、任志強は共産党員であるにもかかわらず、その党員としての自覚を喪失したと論じたのだった。千龍網の文章を皮切りに、中国メディアは相次いで任志強を次のように糾弾した。すなわち、任志強は長期にわたり、党規約や政治規則に違反した言論を発表してきた。その行為はその宣誓を行った入党宣言と相反し、党員としての原則を忘却したばかりか、党のイメージに損害を与えた。党員が反党の言論を発表すれば、その威力と損害は非党員が同様のことを行うのとは比べものにならない。このような党内の反党分子は党規約と規律処分条例に照らし除去しなければならない。

2月28日、“中国国家互聯網信息辨公室(中国国家インターネット情報弁公室)”は“新浪(sina.com)”、“騰訊(QQ.com)”などのポータルサイトに対して、任志強のアカウントを閉鎖するよう命じた。アカウントが閉鎖されたため、現在、任志強の“微博”は「ごめんなさい。このアカウントは異常が出たので、当面訪問できません」と表示されるのみ。翌29日には、北京市西城区党委員会が『任志強の重大規律違反を正確に認識することに関する通知」を発表し、党員が党の方針・政策と一致しない言論を公表することは、それがインターネット上であろうともメディア上であろうとも、全て党規則が許すものではないと表明した。西城区党委員会は「中国共産党規律処分条例」に厳格に照らして、任志強を厳粛に処罰するという。

それは「裸の王様」への道

2015年10月に公布された『中国共産党規律処分条例』は、党員に対する規律処分を5段階に分けている。その内訳は、警告、厳重警告、党内職務解任、党籍保留のまま謹慎処分、党籍解除となっている。情報筋によれば、上述した北京市西城区党委員会の通知には、任志強と呼び捨てにして、敬称の“同志”を付けていないことから、任志強は最も重い党籍解除の処分になると思われるという。

2月19日の国営メディア視察を通じて、メディアの忠誠を確認した習近平は、今後宿敵の劉雲山を排除する形で、全権力を一手に握り、皇帝としての地位を確実なものとしようとしている。習近平にとって、任志強のような歯に衣着せない論客は、害虫以外の何物でもなく、排除するに越したことはないのである。イエスマンだけを重用する裸の王様の運命は、どうなるのか。それは神のみぞ知るである。

3/10日経ビジネスオンライン 長尾賢『海洋安保をめぐって激化する本物のスターウォーズ 日印は宇宙空間でも連携するべき』について

中国の衛星破壊事件では、宇宙ゴミ(スペースデブリ)が沢山出て、他の衛星を脅かしました。人の迷惑を顧みない国です。

http://www.sankei.com/world/news/150325/wor1503250042-n1.html

中国は三戦(世論戦、法律戦、心理戦)の他に、戦闘領域を宇宙・深海・インターネットの世界に広げています。昨年7/1国家安全法により定められました。日本も今までの戦争の概念に閉じこもっていたのでは、敗れることになります。第二次大戦の敗戦はABCD包囲網を築かれた時点で決まったようなものです。中国の軍事暴発を防ぐためにはATO(Asian Treaty Organization)による同盟構築が重要です。条約締結よりは具体的行動の積み上げで信頼関係を重ね、然る後に条約締結の流れが自然かと。中国包囲網を作ることが重要です。3/8王毅外相は日本に「日中関係の改善について日本側の対応が妨げになっている」と注文を付けて来ましたが、それだけ日本の行動が中国の軍事行動の牽制(南シナ海での)になっているという事です。中国の嫌がることはドンドンした方が良い。

インドとの宇宙部門での提携もした方が良いでしょう。「はやぶさ」が地球に帰還できるだけの技術力を持っている日本だから、インドと日本が協力して宇宙空間から中国の行動を監視できるようにした方が良いと思います。勿論、日米豪印で情報も共有化すべきです。またインドと核技術でも協力しあい、いざと言うときはインドから核を有償譲渡して貰えるだけの関係が作れれば良いと思います。

記事

海洋安全保障をめぐって宇宙空間でも競争が起きている。映画のスターウォーズほど派手ではないが活発な動きだ。今月、東京で「安全保障分野における日米宇宙協議」が行われた。先月は米国とインドが宇宙利用に関する協議を行い、海洋安全保障についても話し合った。

 特にインドは具体的な動きを進めつつある。南シナ海を囲むベトナム、ブルネイや、インドネシアにも衛星追跡局(厳密には、データ受信追跡テレメタリー局)を設置する計画だ。すでに1月、ベトナムの施設は完成した(図1参照)。

 こうした動きは何を意味しているのだろうか。それは地域の安全保障情勢、そして日本の国益にとってどのような意味を持つのか。本稿は、海洋安全保障と宇宙空間のかかわりと、特にインドが進める宇宙利用に焦点をおき、日本の国益について考察する。

図1:インドが衛星追跡局を整備しつつある国々(オレンジ色)

Tracing satellite office

出所:筆者作成(インドは、インド洋のモーリシャス、アンダマン・ニコバル諸島=インド、東南アジアのベトナムのホーチミン市、ブルネイ、インドネシアのビアク島、南太平洋のフィジーに、衛星追跡局を設置する)

海洋安全保障と宇宙空間が交わる3つ交差点

 このトピックを考える際に、まず気になるのは、そもそも宇宙が海洋安全保障にどうかかわるのか、ということだ。一見すると明確ではないかもしれない。しかし、実は大きなかかわりが出始めている。それは大きく3つに分かれる。南シナ海を例に説明しよう。

 1つ目は、南シナ海で何が起きているかを知るために宇宙が活用されている。例えば、南シナ海で中国が進める人工島建設や対空ミサイルの配備動向を把握するため、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は人工衛星を使った画像を利用している。南シナ海のように、人があまり住んでおらず、周辺各国のレーダー網の整備も十分でない海で何が起きているのか把握するには、衛星の力に負うところが大きい。

 2つ目は、自分がどこにいるかを把握すること。中国が建設している人工島から12カイリの海域に米国が軍艦を航行させる場合、衛星を利用した位置測位(GPS)システムが有用だ。

 3つめは通信である。状況をいち早く届けるのに衛星通信を使用するのである。衛星通信は妨害されづらく、軍事用には最適だ。

このように現代の海洋安全保障のシステムは、平時から衛星に依存している。そして、もし戦争になった場合、衛星はより重要性を増す。特に、最先端の武器を保有している米国は衛星に依存する度合いが大きい。艦艇から巡航ミサイルを発射し敵の拠点を攻撃する場合、敵の拠点がどこにあるのかを衛星で把握し、発射したミサイルがどこを飛んでいるかを衛星で把握しながら誘導する。これらの情報を衛星を通じて通信し、命中したのかどうかまで衛星を使って確認する(図2参照)。

図2:巡航ミサイル発射と人工衛星のかかわり概念図

Artificial satellite & launching missile

出所:筆者作成

 結果、心配事が出てきたのである。2001年、米国議会が設置した宇宙委員会(正確には「米国国家安全保障宇宙管理・組織の評価委員会」)が報告書を発表した。この報告書が、米軍が衛星を使ったシステムに依存していること、衛星を攻撃される脆弱性があることを指摘したのである。

 実際、2007年、中国が衛星を破壊する実験を行った。地上から打ち上げたミサイルで、宇宙空間の衛星を破壊したのだ。衛星を破壊されれば、南シナ海で何が起きているのか把握できなくなる。把握できても攻撃できないかもしれない。これは海洋安全保障上、重要な問題である。米国も日本も、そしてインドも、宇宙の安全保障上の利用について認識を改めざるを得なくなった。結果、インドの宇宙利用が今、急速に進み始めている。

衛星追跡局防衛は軍事行動の理由になる

 インドの宇宙利用はどの点で急速に進んでいるのだろうか。最初にみるのは、何が起きているか把握するための衛星である。南シナ海沿岸国に衛星追跡局を配置したのはこの一環とみられる。これらの施設は、インドの衛星が撮影した画像情報を受信する役割を担う。同時に、沿岸国に情報を提供する。インドがベトナムに設置した施設は、南シナ海で何が起きているか、インドとベトナム双方が把握するための重要な情報源になる。

 この施設にはもう一つの役割がある。もし中国がこの施設を脅かす軍事行動を起こした場合、インドは自国の施設を守るために軍を派遣することができる。2012年12月、インド海軍の当時の参謀長がインドとベトナムが共同資源開発している施設の安全確保を理由に挙げて、インド海軍を派遣する用意があることを述べた。インド国防相が2015年12月に訪米した時には、南シナ海における米印共同パトロールについて話し合ったようだ。

 こうした動向から見て、インドが将来、南シナ海に海軍を派遣することは、まったくあり得ない話ではなくなりつつある。インドの衛星追跡局の誘致は、そのきっかけを作る役割を持ち、政治的に重要なものである。

2つ目はGPSをはじめとする位置測位衛星について。この分野でもインドの取り組みは積極的だ。インドは複数のシステムを複合的に構築している。GPSに加え、ロシア製のGLONASS、そしてインド国産のシステムIRNSSも構築している。こうすることで、特定の国に依存することのない外交的な自由が得られる。軍事的には、どれか1つの衛星が攻撃された場合でも、代替システムを確保することができる。

 3つ目の通信衛星についても同様だ。特にインドが2013年に打ち上げた衛星は、インド海軍が本国と通信する能力を飛躍的に向上させた。以後、インド海軍はインド洋北半分だけでなく、さらに遠方でも軍事作戦が可能になったといわれている。

衛星を攻撃する能力を、衛星を守る抑止力に

 そして、やはり衛星破壊兵器について動きが出始めた。インドは、日本と同じように、宇宙の軍事利用に反対する「宇宙の平和利用」を掲げてきた国だ。だから、この種の兵器の開発を長年にわたって忌避してきた。しかし、中国が2007年に衛星破壊実験を行って以降、インドが独自に開発しているミサイル防衛システムの開発計画(本来は弾道ミサイルを迎撃するためのもの)の中で、衛星破壊兵器も一緒に開発しているといわれている。インドの国防研究開発機構の長は2010年に、衛星破壊兵器を開発しているとはっきりと言及したことがある(注)。

 なぜインドに衛星破壊兵器が必要なのか。衛星破壊能力を保有することは、自国の衛星を守ることにつながるという論理があるからだ。例えば中国がインドの衛星を攻撃することを考えたとしよう、もしインドが中国の衛星を攻撃する能力を持っていれば、報復を恐れる中国は攻撃を躊躇するかもしれない。

 つまりインドは、衛星を利用して東南アジア各国との協力関係を構築するとともに、インド海軍の行動範囲を拡大しようとしている。その努力を、中国に衛星を破壊させないように、宇宙における抑止力を高めながら行っているのだ。非常に手堅い動きである。

(注)インドの衛星破壊兵器についてはGroup Captain RK Singh, “Indian Anti Satellite Weapon: Necessity, Urgency and the Way Ahead”, USI Journal, Jan-Mar 2013, Vol. CXLIII, No.591 (The United Service Institution of India, New Delhi), pp.85-92に詳しい。

衛星を守るべく、日米印で協力を

 こうしたインドの動きは、特にアジア地域で高まる海洋安全保障上の脅威と連結している。中国が東シナ海、南シナ海、そしてインド洋などで活動を活発化させる中で、海洋安全保障を支えるための宇宙空間での活動を活発にしているのだ。

 では、こうした環境における日本の国益は何か。日本の衛星も攻撃に対して脆弱ではないのか、考えなくてはならない。インドはすでに米国と、宇宙分野とミサイル防衛の両方で協力しつつある。日本も米国と宇宙分野、ミサイル防衛分野で協力しつつある。だとすれば、日本とインドは協力するべきではないのか。

 協力できる分野は少なくとも2つある。インドが他の東南アジア各国と宇宙分野で連携を深めるならば、日本、インド、東南アジアで衛星を介した情報共有や、東南アジア各国が衛星を活用するための日印協力が可能なはずだ。施設の重複を避けるなど、より効率的なシステムを作ることができるかもしれない。

 2つ目はミサイル防衛と衛星破壊兵器に関する協力だ。衛星破壊兵器について、日本は深刻にとらえる必要がある。衛星攻撃は相手国に効果的なダメージを与えるが、人を殺傷しない。だから、安易に使用される可能性がある。日本の衛星を破壊する動機をもつ国が現われたとき、その国の意思をくじいて抑止する力は何か。日本には手段が必要だ。

 日本はインドとミサイル防衛で協力できないか。米国を含めたミサイル防衛の中で、衛星破壊兵器の技術も共有できないか。検討してみる価値があるはずだ。

3/10日経ビジネスオンライン 鈴置高史『米国から「ピエロ役」を押し付けられた朴槿恵 北朝鮮への「最強の制裁」にも浮かぬ顔の韓国人』について

蝙蝠外交をすればどういう結末に陥るかは普通に考えれば分かりそうなもの。それができないのは民族性の為せる業では。「火病」という宿痾を持ち、情緒優先社会で合理的判断ができない、かつ反日以外に生きる目標を持たない民族です。中国の千年属国だったことを忘れ、文句の言い易い日本にストーカー行為をし続ける下劣な連中です。

韓国の国会議員が日本国旗を踏みつける写真や、日本の首相の顔に×を付けたり日本国旗を燃やしたりする韓国民の写真を見たことは沢山ありますが、昭和天皇の生首写真をネットに上げるとは何をか況やです。三島由紀夫は『サロメ』を愛しましたが、韓国民はサロメの結末を知らないのでしょう。やがて怒れる日本国民から鉄槌を下されるでしょう。その前に北から攻撃されて回復不能なダメージを受けるかもしれませんが。民度が低い民族と言うのは言を俟ちません。

the freshly served head of emperor

韓国は米中から馬鹿にされているというのにやっと気づいたようです。大国の間に入って振り回すだけの力があると思いこむことが如何に危険なことか身を持って経験するようになるでしょう。日本に統合される時だって、目立った反抗はなかったくらいと言うか、一進会は統合を進めていたくらいですから。被害妄想、誇大妄想で生きている国はツケを払わされることになります。それがチエスの”pawn”という表現に表れているのだと思います。あるときは中国に、あるときは米国に擦り寄り、而も都合の悪いことは全部日本のせいにして逃げるというのは成熟した国家のやる事ではありません。

北が攻撃を仕掛けても、日本は傍観すべきです。国家元首の生首写真をアップして平気でいられる精神異常の民族とは関わらない方が良い。何があっても助けることは避けるべきです。通貨スワップなぞは論外です。

記事

 

taiks about deploying THHAD between US & S.korea

3月4日、THAAD配備について米韓がようやく公式協議入りしたが、先行きは不透明(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

前回から読む)

 米国から梯子を外された――。北朝鮮に対する「最強の制裁」が発動されたというのに、韓国人は浮かぬ顔だ。

裏切り者の韓国

—北朝鮮に対する制裁がようやく決まりました。

鈴置:3月2日、国連安全保障理事会は全会一致で制裁決議を採択しました。今年に入って、北朝鮮が4回目の核実験と長距離弾道ミサイル実験を実施したからです。

 米国の国連大使によれば「ここ20年間の国連制裁のうち、最も強力なもの」です。しかし韓国紙は暗いムードの紙面を作っています。

—「どうせ中国は決めたことを守らない。制裁は尻抜けになって北朝鮮に核を放棄させるなんて無理」との諦めからですか?

鈴置:それが第1の理由です。もう1つは、制裁案を米中が固める過程で、韓国が「ピエロ」を演じる羽目に陥ったからです。

 北朝鮮の核・ミサイル実験を受けて2月7日、韓国は在韓米軍基地への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の導入を認めました。

 2014年以降、米国が韓国に圧力をかけ続けた結果です。韓国を防衛するために在韓米軍基地が存在します。それを守るためのTHAAD配備なのです。これに難色を示す韓国は、米国からすれば裏切り者そのものでした。

 「北の核」の実戦配備が現実化した今、米国は韓国に対し「それでも配備を拒否するというなら、在韓米軍を引き揚げる」くらいは言ったと思います。

米国のドタキャン

 韓国が逡巡したのは中国の、これまた強力な圧力からです。中国は「THAADが韓国に配備されれば、そのレーダーにより自国のミサイルの動きを米国に捕捉される」との理由を掲げ、認めないよう韓国を脅してきました。

 米中の間で板挟みとなった韓国は、最後は米国の要求を入れ配備容認に動いたわけです。当然、その後も「核攻撃の対象にする」と中国から威嚇されています(「『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」参照)。

 韓国人は中国に反発しながらも「どんなイジメに遭うのか」と首をすくめる毎日です(「 『中国大使に脅された』とうろたえる韓国人」参照)。

 さて韓国に配備をのませた米国は、具体策を詰めるため韓国と合同実務協議団を設置することにしました。

 米韓両国は2月23日に設置の約定書を交わすことになっていたのですが、この日になって突然、米国側が延期を申し入れ、セレモニーはキャンセルされました。

中国との駆け引きに転用

 結局、国連で対北制裁が決まった後の3月4日、米韓は約定書を交換しました。10日間も遅れたのは、米国が中国との駆け引きのカードとして「THAAD配備」を利用したためでした。

 東亜日報の社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)がその間の事情と、韓国で高まった米国への不信感を率直に書いています。以下がポイントです。

  • ワシントンで2月25日、ハリス(Harry Harris, Jr.)米太平洋軍司令官が記者会見し「(韓国と)THAAD配備を協議することで合意したからといって、必ず配備するわけではない」と述べた。
  • 2月24日、ケリー(John Kerry)国務長官の「THAAD配備に汲々としない」との発言と比べ、さらに一歩後退した表現だ。
  • 米国の北朝鮮制裁に中国が積極的に参加する代わりに、米国がTHAAD配備による中国の憂慮を減らす方向で、米中が戦略的取引をしたようだ。
  • 朴槿恵(パク・クンへ)大統領は「THAADの配備は安全保障と国益によって検討していく」と語っていた。
  • それだけに韓国は苦しい立場となった。米中の駆け引きの可能性を、政府が果たして分かっていたか疑問だ。

碁盤の石に転落

 米国の強い要求に屈し、中国に脅されながらもTHAADの配備を認めた。というのに裏で米国は中国に「対北制裁案で譲歩してくれるなら配備をやめてもいい」と言っているようだ――という展開に、韓国人は腰が抜けるほどショックを受けたのです。

 そこで東亜日報をはじめとするメディアは政府に「『THAADのカード化』を米国からちゃんと知らされていたのか」と食ってかかったわけです。

 確かに、約定書を交わすセレモニーのドタキャンを食った時の韓国国防部の慌てぶりを見ると「韓国政府は米国から手の内を一切、知らされていなかったのだな」と考えるのが自然です。

 興味深いのは、韓国が梯子を外されたと気づくだいぶ前から中国が「このままでは、あんたはピエロになるよ」と忠告というか、警告していたことです。

 約定書の交換が突然に延期されたのが2月23日。その1週間前、ケリー国務長官やハリー司令官が「後退発言」を繰り出す10日以上も前の2月16日、環球時報が社説で「THAADを配備すれば韓国は、中・米両大国が打つ碁盤の石に転落する」と書いていました(「表・THAADを巡る米韓中の動き」参照)。

THAADを巡る米韓中の動き(2016年)
1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日  
朝鮮日報、社説で核武装を主張
与党セヌリ党幹部2人、核武装に言及
1月13日 朴大統領、国民向け談話で「THAAD配備は国益に基づき検討」
2月7日  
北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国国防部「THAAD配備に関し、米国と公式協議に入る」
中国外交部、北朝鮮と韓国の双方の大使に抗議
Global Times社説「配備すれば戦略・戦術の両面で軍事目標に」
2月16日  
環球時報・社説「配備すれば韓国は中・米の碁盤の石だ」
朴大統領、国会演説で「配備の協議開始も抑止力の一環」
2月17日 王毅外相、平和協定締結のための米朝協議を提唱
2月21日 WSJ「2015年末、米朝が平和協定に関し秘密交渉」
2月23日 米国、配備に関する合同実務団結成のための約定書交換を突然に延期
2月24日 ケリー国務長官「配備に汲々としない」
2月25日 ハリス米太平洋軍司令官「必ず配備するわけではない」
3月2日 国連安保理、対北朝鮮制裁を採択
3月4日 米韓、配備に関する合同実務団結成のための約定書を交換

中国の忠告は親切心から?

 この新聞は中国共産党の対外威嚇用メディアで、社説は「中韓は互いに冷静になるべきだ」(中国語版)。英語版のGlobal Timesでは「China, Korea must keep clear mind」です。英語版こちらでは碁石ではなく、チェスのポーン(Pawn)に例えています。

  • It will make the Blue House further lose its national independence, and become a pawn in the game between major powers.

—「青瓦台(韓国大統領府)は国としての独立性を一層失い、大国間のゲームのポーンになる」とはなかなか厳しいですね。

鈴置:「独立性を一層失う」――。要は「すでに独立国ではないのだが、さらに……」ということですからね。日本語に翻訳すれば「お前は将棋の歩だ」あるいは「捨て駒に過ぎないのだ」と言い切ったわけです。

—なぜ、中国はわざわざ韓国に「あんたはピエロを演じているよ」と教えたのですか。

鈴置:中国のやることですから、親切心からとは思えません。「米国に騙されているぞ」と韓国人の心を揺さぶるのが目的でしょう。

 韓国が「米国の裏切り」に気づく前にそれを指摘しておけば、効果はより大きいのです。実際、韓国各紙は環球時報のこの社説を引用し「碁盤の石」という表現を使うようになりました。

小憎らしい元・属国

 左派系紙のハンギョレは「韓国は米国の『碁石』にすぎないのか」(2月23日、日本語版)という寄稿を載せました。書いたのは金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大学教授。ポイントは以下です。

  • ついに中国から「碁石」に過ぎないという屈辱的な言葉まで聞くことになった。
  • ウィキリークスが公開した資料によれば、米国が韓国に軍隊を維持している理由は北東アジアで自国の「利益」を守るためのものであり、特に「韓国が米国産兵器の主要顧客」であることを強調している。
  • 米国は北朝鮮の崩壊、あるいは朝鮮半島の統一には関心がない。 中国を屈服させ、米国の市場を拡大できるか否かが彼らの死活的利害だ。
  • 米中間に局地的衝突が起きても戦場は朝鮮半島であり、最大の犠牲者は韓国と北朝鮮の人民であろう。
  • 旧韓末、休戦協定期のように韓国は再び周辺国に自身の命運を任せなければならない存在に転落している。 政権にとって利益になるならば「超大国の防具」であっても構わないというのか?

—「碁石」という言葉を手がかりにして、ダイナミックに「反米論」を展開しましたね。

鈴置:古典的な左派の従属理論――韓国は米帝国主義に従属する存在だ、という主張です。久しぶりに見ました。

 中国は、米国が切ってきた「THAAD配備」というカードを上手に加工して「碁石」とし、反米用の素材として韓国に撃ち込んだのです。この寄稿はそれが功を奏したいい例です。

 もちろん中国が「碁石」と揶揄したのは、韓国が小憎らしかったこともあったでしょう。米国の軍事力を背景に「THAADを配備するぞ」と言い出した韓国――。中国人の目には、元・属国のくせに生意気な振る舞い、と映ったはずです。

THAADでのませた強い制裁

—「碁石」だろうが「ピエロ」だろうが、THAADのカード化によって中国に「極めて強い制裁」をのませたのではないのですか?

鈴置:その通りです。今後、中国が対北制裁の手を緩めた際にも、米国は再び「THAADカード」を発動して中国に圧力をかけることができます。

 THAAD配備を具体化するための米韓の実務協議は、これから始まります。実務協議は開かないか、あるいはゆっくりと進めておき、中国が本気で制裁に動かないと判断したら、協議のテンポを一気に速める――という手もあるのです。

 ハリス米太平洋軍司令官の「配備を協議することで合意したからといって、必ず配備するわけではない」との発言は、そうした作戦が念頭にあるのかもしれません。

 ただ韓国も、面白くはないにしろ「カード化」自体は我慢せざるを得ないでしょう。なにしろ今、一番大事なことは対北制裁の効果を上げることなのですから。

いつの間にか仲間外れ

—では、韓国メディアは何が不満なのでしょうか。

鈴置:「カード化」を米国から知らされていなかったことです。こんな調子なら韓国の運命に関わる、もっと重要なことまで自分の知らないうちにどんどん決められてしまう――と危機感を持ったのです。

 タイミング良くと言うか悪くと言うべきか、米国と北朝鮮が2015年末に、国交正常化や在韓米軍撤収につながる可能性の高い秘密交渉に入りかけていたことがこの頃、明らかになりました。

 この秘密交渉に関しても韓国政府は米政府から知らされていなかったのではないか、と韓国各紙は疑っています。

 米国と中国、果ては北朝鮮までが自分の知らないところでこっそり朝鮮半島の将来に関し話し合っている――と韓国人は疑心暗鬼に陥ったのです。「THAAD」だけならまだしも、「韓国」という国の運命までがカード化されたら大変です。

 韓国人は「米中を手玉に取り、両大国の力を生かして日本と北朝鮮を叩く」という“天才的な朴槿恵外交”に酔ってきました。

 そこに突然降ってわいた「周辺国に命運を任せる」予感。いくら楽観的な韓国人でも、これでは落ち込まざるを得ないのです。

そのあたりは次回に詳しく聞きます。

(次回に続く)=3月14日に掲載予定

3/9日経ビジネスオンライン 福島香織『拍手は?トイレは?「全人代」の意外な見どころ 「習近平の不満」と「習近平への不満」が醸す不安感』、3/9日経電子版『習近平氏と王岐山氏「衆人環視の密談」広がる臆測』について

要人の健康問題に関するタブーは世の東西を問わず、民間企業ででもあります。況してや秘密主義の共産党では。それでも記者が鵜の目鷹の目で何かを見つけようとしていますのは、本記事で分かりました。確かに李克強は下放中も勉強に勤しみ、農民と交わることもなかったとのこと、頭が良い分だけ肚が据わってない印象を受けます。やはり、下放されてもっと厳しい状況に置かれた、習近平や王岐山の方が度胸はあると思います。腹黒くなければあの時代は生き延びれなかったでしょうから。

福島氏記事にありますように、財政支出は債務を増やすだけで、根本解決でなく、デフォルトの先送り策です。これが持続可能とは思えません。貨幣増刷で乗り切ろうとするのでしょうけど、人民元のキャピタル・フライトを引き起こします。資本規制をすれば、中国の在米資産凍結を招く可能性もあります。

国有企業のリストラで600万人の解雇、軍人30万人のリストラは共産党打倒の革命を引き起こすかも知れません。地方や軍が簡単に言うことを聞くとは思えません。

南方都市報は昔から骨のある新聞でした。何清漣も深圳法制報の記者でしたから、南の方が度胸があるのかも知れません。結局彼女は米国亡命せざるを得なくなりますが。南方都市報は広州市で発行されています新聞で、同じ系列で発行している南方週末は社説差し替え命令を受け、共産党に抗議の意を示したことがありました。また、オバマのインタビュー記事の掲載ストップ指示に、抗議して二ページの下半分を白紙で発行したこともありました。葉剣英が牛耳っていた土地ですから一筋縄では行きません。小生が住んでいた感想としては無法地帯と言った印象でした。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%96%B9%E9%80%B1%E6%9C%AB%E7%A4%BE%E8%AA%AC%E5%B7%AE%E3%81%97%E6%9B%BF%E3%81%88%E4%BA%8B%E4%BB%B6

「●東京新聞(TOKYO Web)

■中国週刊紙記事 差し替え 記者スト 市民も抗議

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013010802000089.html

2013年1月8日 朝刊

7日、広東省広州市の「南方週末」が入るビルの前で、言論の自由を訴える市民ら=今村太郎撮影

 【広州(中国広東省)=今村太郎】広東省の週刊紙「南方週末」の記事が当局の指示で削除、差し替えられた問題で、同紙記者の一部が七日、抗議のストライキを始めた。共産党宣伝部によって厳しく管理される中国メディアが、当局側と激しく対立するのは極めて異例。広州市にある同紙本社ビル周辺には市民数百人が集まり、「言論の自由を」と書いた紙などを手に、同紙を支持している。 

 南方週末は六日夜、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」で、記事差し替えを否定する声明を発表。だが、記者らは「当局の圧力を受けて出された偽の声明」と反発し、ストライキを宣言。本社ビル前では七日朝から「われわれには言論の自由が必要だ」「南方週末を支持する」と書いたビラを持った市民が集まり、正門前にビラや花束を並べた。警戒に当たる警官隊約五十人に抗議する市民もいたが、排除はされなかった。

 同紙は三日発売の新年特別号で「中国の夢、憲政の夢」と題し、憲法に基づく民主政治の実現などを主張する記事を掲載する予定だった。だが、広東省の共産党・宣伝部の指示を受け、中国の発展を強調する内容に差し替えられた。同紙の元記者らは省宣伝部の〓震(たくしん)部長の辞任を求め、対決姿勢を強めている。

 南方週末は、独自の調査報道や踏み込んだ政治評論で知られ、たびたび当局の介入を受けてきた。二〇〇九年十一月には初訪中したオバマ米大統領に単独インタビューしたが、宣伝部の指示で掲載を中止。この際は、インタビュー記事のスペース(二ページの下半分)をほぼ白紙で発行し、抗議の意思を示した。 ※〓は度の又の部分が尺」

福島記事

bowing Li Keqiang

全人代でお辞儀をする李克強と、隣に座る習近平。誰が拍手をしたのか、しなかったのか、健康状態はどうか、読み取るべき情報がそこかしこに(写真:ロイター/アフロ)

 中国の全国人民代表大会(全人代)が5日開幕した。一足先の3日に開幕した全国政治協商委員会とあわせて両会と呼び、日本では国会のようなもの、と紹介される。だが、はっきり言って、政策や法案の中身は前年の秋までに決められており、その審議も採決も議員に相当する人民代表や政協委員が自由に議論したり反対票を投じられるようなものではないので、政策決定上はほとんど意味のない一種の政治儀式である。

 では、なぜ世界各国のメディアが、わざわざ現地に赴き、この無意味そうな儀式を懸命に取材するのかというと、一つには現場にいなければ分からない、政権の“空気感”を確認したいという思いがあるだろう。なにせ、中国の最高指導者たち政治局常務委員7人が人民大会堂の大ホールのひな壇に揃うのである。その表情やしぐさすべてが、外国人記者たちにとっては普段得られない情報である。今年の全人代の見どころを、いくつか拾っていきたい。

「健康」は?「関係」は?「核心」は?

 まず全人代では、中国の指導者たちの健康状態をチェックするのが記者たちにとっては結構重要な仕事である。今年の全人代の初日に行われる李克強首相の政府活動報告のときに話題になったのは、お辞儀したときに見えた李克強の頭頂部の髪がずいぶん薄くなったことだった。

 そして、李克強が政府活動報告を読み終えて席に戻るとき、出席者は全員拍手するのが慣例なのだが、隣に座っていた習近平は拍手をしなかった。それどころか視線を合わせたり会釈したりすることもなかった。胡錦濤政権時代、温家宝が首相として政府活動報告を読み上げたときは、席に戻ったときに胡錦濤と温家宝は握手をするのが常であった。

 この全人代開幕日の政府活動報告宣読は、拍手を入れるタイミングまで、事前に決められている。今年、拍手が起きたのは45回。去年は51回。2014年も50回以上だった。今年はかなり拍手が少なかった。こうしたことから、記者たちは習近平と李克強の関係がかなり冷え込んでいること、ストレス負けしているのはおそらく李克強の方であること、習近平自身はこの政府活動報告の内容(政府活動報告は李克強が起草)にかなり不満を持っていそうなことなどを推測するのである。

仮に習近平がこの政府活動報告に不満だとすると、いったいどこが気に入らないのだろうか。

 これも、推測の範囲でしかないのだが、習近平サイドは、この政府活動報告で「習近平同志を“核心”とした党中央の指導のもとに」といった文言を入れてほしかったのかもしれない。だが、政府活動報告は“習近平同志を総書記とした党中央”という表現にとどまっている。

 実は、今年に入ってから、習近平を“核心”と位置付ける発言が安徽や広西など地方の党委書記から出ている。“核心”というのは、唯一の権力の中心と位置付ける言葉であり、この言葉が使われるのは権力掌握の証ともされている。毛沢東、鄧小平は間違いなく党中央の核心に君臨。江沢民は鄧小平によって“核心”と位置づけられたが、胡錦濤政権ではついぞ使われなかった。つまり、胡錦濤は江沢民との権力闘争の中で最後まで核心になりえなかった。

 習近平は今年になって、“核心”という言葉を使わせようと、地方からじわじわ裏工作を謀っているようで、全人代では“核心”呼びを定着させるつもりではないか、という予測が事前にあった。それが、できなかったのはまだ、抵抗勢力が強いということだろう。

「定年でも残留」が長期独裁の布石に

 もう一つ、記者たちが驚いたのは、全人代開幕後1時間半を過ぎたころの政府活動報告中、党中央規律検査委書記の王岐山が突然、席を外したことである。汚職摘発の辣腕を振るってきた王岐山が突然、ひな壇から姿を消したので、ひょっとすると、何か突発事件が起きたのではないか、とざわめきが起きた。

 5分後に何事もなく戻って来たので、ひょっとしてトイレか?と記者たちは思った。だが続く第2回全体会議でも開始から1時間半後に8分ほど離席。この現象について、記者たちの間では王岐山は頻尿ではないか、という噂が駆け巡ったという。

 今後の権力闘争の行方を占う上で、王岐山の健康状態は鍵である。2017年秋の第19回党大会で本来なら内規上の定年年齢に達している王岐山が政治局常務委に残留することになれば、その前例をもって習近平がその5年後の第20回党大会で引退をせずに、長期独裁政権を樹立する根拠となりうる、と見られているからだ。だが、王岐山が頻尿だとすると、2015年11月に、王岐山が28日にわたって動静不明になったことが、健康問題ではないかという推測も成り立つ。当時は、王岐山が失脚したのではないか? あるいは新たな大物政治家の取り調べが始まっているのではないか? という噂が流れていた。

 次に、記者たちの仕事は、政府活動報告の中身の分析である。まず今年のGDP成長率目標として「6.5%から7%」という数字が挙げられたことの意味。政府活動報告ではその年のGDP成長率目標の具体的数字が盛り込まれるが、このように何%から何%という幅のある目標値が挙げられるのは初めてである。

 2015年の全人代同様、7%前後という目標値を挙げたいのだが、いくら何でも信憑性がなさすぎるので、表現をぼかしたのではないか、と見られる。実際のところ6.5%成長も無理目であり、昨年の成長率6.9%も、全人代で目標値を7%前後と言ってしまった故に、こじつけた数字だろう。実際は6%にも満たない、5%以下ではないか、というのが国内外のアナリストたちの見解である。

 いわゆる李克強指数(電力消費、鉄道貨物輸送量、銀行融資残高。GDPの数字があてにならないので、この3つの統計によって実際の経済状況を把握せよと李克強が言ったとされる)では、昨年の電力消費の伸びは0.5%増、鉄道貨物輸送量は昨年上半期だけで前年比10%減、銀行融資残高は2015年末で前年比14.3%増なので、正直これで6・9%成長がかなうのは不思議である。

一層の元安へ? 債務爆弾、今年こそ備えよ

 2016年の財政赤字は2.18兆元、GDP比3%に引き上げたのは、予想通りとはいえ、それなりの衝撃を与えた。これは1998年から2003年のアジア金融危機のときに当時の朱鎔基首相が財政出動をとった時以来の高さ(朱鎔基はこの時、数字公表を拒否)であり、2008年のリーマンショックで、胡錦濤政権が4兆元の財政出動を行ったときですら、財政赤字のGDP比は2.8%にとどまっていた。

 昨年のうちに当局者からGDP4%以上の財政赤字も大丈夫だ、という発言が出ていたので、今年は過去最大規模の積極財政方針をとるだろう。日本や米国の財政赤字比率からすれば、大したことないじゃないかと思う人も多いだろうが、マネーサプライ(M2)が対GDP比200%以上の中国の場合、これはかなり大胆な挑戦であり、生産過剰と不良債権化がむしろ進み、一層の元安に直面する、といった予測もある。

 ちなみに地方専項債権の4000億元はこの財政赤字には入っていない。中国の総債務(政府、企業、家計)は2014年半ばでGDPの282%(米マッキンゼー報告書)、すでにGDP比300%を超しているという報道もあるので、中国の債務爆弾爆発に対する衝撃に今年こそ備えが必要かもしれない。

 もう一つの注目点は、十三次五カ年計画(十三五計画、2016~2020年の経済計画)の中身だ。2021年は中国共産党建党100年目であり、習近平政権の二つの100年目標の一つである2021年に全面的小康社会(そこそこゆとりある社会)の建設を実現するための最後の経済計画である。インフラ建設の強化が打ち出され、中でも北京と台北間の高速鉄道計画が話題をさらった。もちろん、台湾サイドの意向などお構いなしの「言うだけ」計画で、中台統一を警戒する台湾は大反発している。

十三五計画の肝は「安楽死」、改革の分業は崩壊

 十三五計画で一番、キモとなっているのはインフラ建設資材を生産する鉄鋼、石炭、アルミ、ガラス、セメント分野のいわゆるキョンシー企業、ゾンビ企業とよばれる万年赤字国有企業の“安楽死”問題だ。過剰生産分の資材をインフラ建設強化で消化しつつ、ゾンビ企業を整理して、これに伴う失業者対策に1000億元を拠出して基金を創るという。今後2~3年で600万人前後をレイオフ(一時解雇、事実上の失業)するという予測が伝えられているが、90年代、自ら憎まれ役を買ってでた鬼宰相の朱鎔基ですら道半ばであった国有企業改革を、ストレスに弱そうな李克強に貫徹できるか。失業者問題は中国社会の不安化を一気に加速する可能性もある。

 今回の政府活動報告でも「改革」と言う言葉を70回前後連呼していたが、連呼されるほどに、今の中国に改革を断行できる力量は見えない。2013年の三中全会(第三回中央委員会全体会議)で打ち出された“リコノミクス(李克強経済学)”では法治化、市場化、政府介入の減少こそが改革の骨子であった。ところが現実には、株価も為替も政府介入、行政指導の連続であり法治化、市場化はむしろ遠のく印象だ。

 今やリコノミクスという言葉は忘れさられ、キンペノミクス、シーコノミクス(習近平経済学)という言葉を使うようになった。つまり、国家主席と首相の本来あった分業体制は完全に崩れている。江沢民と朱鎔基は相当仲が悪かったが、少なくともこの分業体制は機能しており、首相が全面的に指揮と責任を引き受けて改革に取り組むことができた。それと比べると、今回、90年代以上に困難な経済改革に、誰が責任をもって命がけで取り組むかというと、そういう人物が見当たらないのも、中国経済改革の先行きの暗さの一因だろう。

 肝心の習近平は、独裁志向と自らの個人崇拝志向をますます強めており、メディアに対する忠誠を恥ずかし気なく求め、これまでならば許されてきた程度の批判でさえ、処罰の対象とするようになった。表向き習近平礼賛を合唱するメディア関係者の腹の中の怨嗟の声は、外国人の私たちにも漏れ伝わるレベルである。習近平の独裁志向と、批判や提言を自らに対する反逆ととらえる性格は、結果的に国務院(内閣)、政府機関の職能を弱め、官僚の心理的サボタージュを引き起こしている面もあると指摘されている。

 国内の経済政策や外交政策の仕切りのほとんどは、習近平を中心とする党中央の小組が執り行っているが、習近平は経済から外交、軍制改革までの責任を一人で負えるほどのスーパーマンではない。結果として米中対立の先鋭化や中国株式市場への信用失墜、香港の核心的価値の決定的喪失といった事態が起きていて、これらは紛れもなく中国の国益を損なっている。

行き詰まり感とバランスの悪さと不満感と

 全人代開幕直前の4日夜、中国国内の比較的新しいネットニュースサイト「無界新聞」に、「習近平同志に党と国家の指導職を辞職することを要求する」と題した匿名の“忠誠の共産党員”による公開書簡が掲載され、一時はサイトがダウンする事態も起きた。

 「無界新聞」は「財経」誌を発行している財訊集団と新疆ウイグル自治区、アリババが出資して新疆地域に対する宣伝工作、世論誘導のために昨年4月に立ち上げた、いわば習近平政権肝いりサイトである。サイト関係者はハッキングされたと説明しているそうだが、習近平の政策の失敗を並べたて、国家と党のために引退してくれと訴える公開書簡が、中国のニュースサイトに掲載されたのだから、やはり党内部の習近平に対する不満の高まりを反映した“政治事件”と見る向きが強い。そうした国内党内の不満は、全人代のような場で多少なりとも話し合いで解消するのが、本来の役割なのだろうが、チベット自治区代表団が習近平バッチをつけてきたことからもわかるように、習近平への忠誠アピールを競うようなムードになっているのである。

 今年の全人代の空気が示すのは、中国の改革には期待できそうにないという行き詰まり感、党中央と国務院機能のバランスの悪さ、そしていつ何が起きても不思議ではないほどの党内人士の不満感、不安感ではないだろうか。

日経記事

中国の“絶対権力者”になりつつある国家主席、習近平に背後から手をかけて呼び止め、対等に話しながら退場する反腐敗の鬼、王岐山――。

 3月3日、極めて珍しい光景が出現した。北京で開幕した全国政治協商会議の全体会議が終わり、「チャイナ・セブン」といわれる習ら最高指導部メンバーがひな壇から順番に退場する際の一幕だ。

 衆人環視の下での密談である。2千人以上の全国政協の委員、1千人もの記者らが見守るなか、政治局常務委員の王岐山は、ボスである習に何を言ったのか。これが注目の的だ。次々と大物を捕まえた、泣く子も黙る共産党中央規律検査委員会の書記だけに、である。

 一考に値する推測がある。権力者への諫言(かんげん)のあり方、そして翌4日に発表される反腐敗の大物摘発が話題だったのでは、というのだ。幕の向こうに習と王岐山が消えてからも会話は続いただろうから、2つのテーマくらいは話題にできたかもしれない。

■トップへの諫言問題が話題か

Xi & Wang Qishan

政治協商会議の開幕式を終えて習近平(左)に話しかける王岐山・政治局常務委員(北京の人民大会堂)=写真 小高顕

 前者には根拠がある。王岐山が仕切る共産党の中央規律検査委員会などの機関紙。そして同委と中国監察省が合同でつくる公式サイトだ。全国政協の開幕直前、司馬遷による史記の記述などを引いて、諫言の重要性を指摘する文章をほぼ同時に発表していたのだ。

 「唯々諾々と従う1千人のイエスマンは、ただ一人の志ある人物による諫言に及ばない」

 意訳すると、こんな内容だった。中国の戦国時代、強国への道を歩む秦国の政治家だった商鞅と、その腹心の関係。名声の高い「貞観の治」で知られる唐王朝第2代皇帝、李世民と臣下の関係を例に挙げている。

 耳に痛い諫言をする人物を遠ざけてはいけない。それができれば、歴史に名を残す偉大な人物になれる。文章が説く趣旨だ。筆者は王岐山ではない。とはいえ、いまは言論統制が非常に厳しく、全国政協の委員や全国人民代表大会(全人代、国会に相当)代表らの口も重い。その時代に“危険な文章”を公式掲載するには、王岐山の許可が必須だ。

 「これだけ高度なテクニックを要する文は、王岐山自らがアイデアを考えたに違いない」。北京の知識人の見方だ。

その後の展開が興味をひく。中央規律検査委の“公式見解”はすぐに流布され、これを引用して言論の自由を説く文章がインターネット上に次々登場した。すると一部の文章が「問題あり」とされ、削除されたのだ。

 言論統制の元締めは党中央宣伝部や、新設された国家インターネット情報弁公室である。削除の基準は、中央宣伝部などが示す。そして宣伝部の担当は、党内序列5位の政治局常務委員、劉雲山である。

Liu Yunshan

政治協商会議に出席した劉雲山・政治局常務委員(北京の人民大会堂)

 読み解きはこうなる。「中央規律検査委の王岐山と、中央宣伝部の劉雲山の言論問題への見解は異なる。もしかしたら対立しているのでは……」。知識人らのひそひそ話である。ネット上に書くと削除されてしまうので、昔のように口コミ(中国の言葉で「小道消息」)で広がっている。

■「中国版トランプ」への集中砲火

 もう一つ、面白いエピソードがある。今、中国のネット上で熱い議論が交わされているのは、「不動産王」の言論だ。彼の名は任志強。歯に衣(きぬ)着せぬ舌鋒(ぜっぽう)の鋭さで、有名なネット言論人でもある。

 任志強のブログの内容が党内で批判を浴びている。「中国メディアの姓はすべて共産党で、党に忠誠を誓うべきだ」という党が打ち出したスローガンに敢然とかみついたのだ。

 「すべての(中国)メディアの姓が党で、人民の利益を代表しないなら、人民は見捨てられたということだ」

 任志強はブログで繰り返し反発した。メディアは一般大衆の利益を代弁すべきだ、と主張しているのだ。正論である。彼の反発は、習が2月19日に国営、中央テレビなど三大メディアを視察したのがきっかけだった。

 任志強は「太子党」に属する。旧商業省次官を務めた父を持つ。首都防衛の要、第38集団軍に所属した軍人の出身で、後に不動産大手、華遠集団を率いた。共産党員であり、労働模範として表彰を受けている。北京市の政協委員でもある。

 不動産王で舌鋒が鋭いといえば、米共和党の大統領候補を争っているドナルド・トランプと似ているが、中国の不動産王も負けてはいない。

 この任志強。実は王岐山と極めて親しい。弟子といってもよい。文化大革命の嵐が吹き荒れた1960年代、北京の中学校で先輩、後輩の仲だった。年上の王岐山が任志強の指導員まで務めた。

 その任志強が劉雲山の中央宣伝部の系統から集中砲火を浴びるなか、王岐山は習を呼び止めた。共産党のしきたりからして、指導部の一員でもない任志強の個別問題に、王岐山が直接言及するはずもない。とはいえ、もっと大きな「習の治世と諫言のあり方」を話題にすることはできる。例えば、「中央規律検査委の文章を読んでください」というように。「周辺にこう推測させるだけで十分効果は得られる」。関係者は指摘する。

王岐山は翌4日に発表した元遼寧省、吉林省トップの中央委員、王珉の摘発について報告した、という推測ももっともらしい。全国政協と全人代の期間中に格の高い中央委員の摘発を公表するには、トップである習の承認が不可欠だ。時間がないなか、王岐山は習を呼び止めて立ち話せざるを得なかったのかもしれない。

National politics & business conference

3日に開幕した全国政治協商会議(北京)=写真 小高顕

 とはいえ、王岐山と任志強の個人関係、中央規律検査委機関紙や公式サイトの文章を見れば「諫言問題説」にも十分な説得力がある。

 そもそも習と王岐山は親しい。文革の際、2人は陝西省の黄土高原に位置する延安近くに「下放」され、そこで知り合った。習は15歳、王は20歳の知識青年。王はまだ幼い習を自らの洞窟式の住居に泊め、読書も指南した。ちなみに同じころ、後の不動産王、任志強も延安付近に「下放」されていた。

 いまや習は、中国の権威あるトップだ。だが、旧交がある先輩、王岐山には、習を後ろから呼び止めるだけの度胸があった。それも公衆の面前で。他の誰もそんな恐ろしいことはできないが。これは指導部内での人間関係の機微でもある。

■南方都市報の編集者は解雇

 先週、このコラムで広東省の新聞、南方都市報が勇気をもって習政権のメディア統制を批判した経緯を紹介した。紙面づくりを担当した気骨ある女性編集者はその後、解雇された。編集責任者も処分を受けた。理由は「政治的な配慮を欠き、紙面に重大な欠陥をもたらした」というものだった。やはり党中央宣伝部などの怒りに触れたのだ。

 言論をどこまで統制するのか。この問題は、ネット上や巷(ちまた)の大きな話題であり、今後も尾を引きそうだ。そして習近平、王岐山、劉雲山らがどう動くのか。来年、2017年には5年に1度の党大会がある。最高指導部人事を前にした「力比べ」も絡むだけに非常に興味深い。(敬称略)

3/7JBプレス 森清勇『中国の南シナ海要塞化を見逃す米国の凋落と歴史観 このままでは日本、台湾、ASEANとの同盟関係維持も困難に』、3/8西村眞悟メルマガ『平和を望むならば戦いに備えよ』について

藤岡信勝氏のFacebookより引用。日教組打倒のために非常に良いことです。広島の中学生の自殺も日教組が強いく教育そっちのけで政治活動をしているせいで起きた事件ではと思っています。

「検定中の教科書を教員など採択関係者に見せ、金品を渡していた事案につき、新しい歴史教科書をつくる会は、3月7日、教科書発行10社を東京地検特捜部に刑事告発した。この日、文部科学大臣に告発の報告と申し入れを行い、文科省記者クラブにおいて記者会見を行った。以下、つくる会のFAX通信から転載する。

【新しい歴史教科書をつくる会は、3月7日、一連の検定中教科書「贈収賄」事案について、東京地検特捜部に該当する教科書会社10社の社長を「贈賄」の罪で刑事告発しました。続けて、文部科学省において文科大臣宛に刑事告発の報告と併せて下記の申し入れを行い、その後記者会見を行いました。

 申し入れ及び記者会見には、髙池勝彦会長、石原隆夫副会長、岡野俊昭副会長、藤岡信勝副会長、荒木田修理事が出席し、各々よりこの問題の重大性を説明しました。

平成28年3月7日

文部科学大臣 馳 浩 様

(一社)新しい歴史教科書をつくる会会長 高池 勝彦

          検定中教科書「贈収賄」事案についての要望

この度、教科書発行各社が検定中教科書を教員らに見せ、金品などを謝礼に渡していた事実が明らかになりました。文部科学省は各社からの報告を公表し、さらに実際の教科書選定・採択への影響の有無を、全国都道府県教育委員会に3月中旬までに報告するよう指示されました。このことに私どもは謝意と敬意を表します。

今回の事案は、教科書業界と公務員である教育委員会・教師との間で起きた、下記の法律に抵触した重大な「犯罪行為」です。

・「刑法第197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)及び198条(贈賄)」の違反

・「地方公務員法第29条(懲戒)」の違反

・「独占禁止法」の違反           (各法律については資料LinkIcon参照)

当会はまず上記の「刑法第198条」への違反について、本日3月7日、該当各教科書会社を東京地方検察庁に刑事告発したことをご報告いたします。

さらに本事案は独占禁止法に基づく規制(「教科書業における特定の不公正な取引方法」)にも逸脱しており、まさに教科書無償措置法の根幹を揺るがす未曾有の大不祥事です。本来、子供や生徒に対し、不正行為を否定する教育をすべき立場の教員や教科書業界の倫理感が疑われます。「子供たちに顔向けできるのか?羞恥心があるのか?」を問いたい思いです。

よって私どもは文部科学省に対し、教育行政の信用回復と再発防止のために、下記の6点について速やかな検討・実施を切に望みます。

(1)文部科学省は、今回指示した各都道府県教育委員会からの報告の結果を精査し、影響があったとされた教育委員会は「教育委員会名とその報告内容」を公表すること。また該当する教育委員会の採択地区については、採択の無効化とやり直しを検討すること。

(2)謝礼を受け取った当事者は全員氏名を公表し、処分を科すこと。

(3)教育現場で教育に関する不正行為を発見した者は、身分保障も含め安心して、文部科学省へ直接通報できるシステム(内部通報制度)を構築すること。

(4)1月20日の教科書発行各社からの報告にあたり、義家弘介文科副大臣は、「報告漏れが発覚した場合は指定の取り消しも含めて必要な措置を講じることも辞さない。徹底的な調査を行っていただきたい」との発言をされているが、各社より報告されたものは「氷山の一角」にすぎない可能性が極めて高い。これまでの膿を一切出し切るために、文部科学省主導で調査を続行すること。さらに、全国各教育委員会に対して、報告漏れの事案の有無について、既に退職している教育関係者への聞き取りなども含め徹底した調査を指示すること。

(5)その調査報告いかんでは、義家副大臣の発言通り、該当する発行会社を教科書発行停止などの厳罰に処すること。

(6)現行の制度では、無償措置法の趣旨により適った教科書採択が行われることを目的とした、現場教員などによる「調査研究制度」や「共同採択区制度」がある。しかしそれらの実態は、日教組等の教職員経験者による恣意的な運用などにより、本来の趣旨にそぐわないものとなっている。それが結果的に今回のような不祥事を生んでいる。

文部科学省はこれらの制度の問題点について早急に検討・見直しを行い、今後、国民にとってより透明性の高い公正な教科書採択が行われるよう改善をはかっていただきたい。

最後に、本事案発覚の経緯は、昨秋からの報道の追及と文科省からの指導によって隠しきれないと判断した各教科書会社が、言わば自首した形で行われたものです。2月24日には、該当教科書会社10社が文科大臣に謝罪をおこないました。

しかし、本件は大臣の厳重注意をもって一件落着として幕を引くような軽微な事案ではありません。当会は、文部科学省の本件の対応について、今後も引き続き注目して参る所存です。大臣に於かれましては、一層の指導力を発揮していただきたいと思います。(以上)】」

さて、本記事ですが台湾を含めたATO(Asian Treaty Organization)を早期に作って対応しなければ。米国の対応が遅いのはオバマのせいだけではなく、金に転んでいる要人が一杯いるためです。日本も米国とニュークリアシエアリングの交渉をして行かないと。その際、日米安保条約が破棄される場合、一部の核を日本に譲渡する内容で締結してはどうか。やがては破棄されなくても譲渡されるようになれば良い。オフショア・バランシングとか言うのなら日本にも核を持たせないと。

中国の全人代の李首相の発表で、後半ずっと汗をかいていたことがTVで話題になっていました。それはそうでしょう。自分の思い、考えと違うことを無理やり言わされたのですから。従来ですと、政治・外交は主席、経済は首相と分けていたのに、習が無理やり「財経小組」を作ってリーダーとなり、李克強から実権を奪いました。でも全人代で李に発表させたという事は、経済が立いかなくなったら(というかここまで債務が膨れ上がれば、誰がやっても回復できないでしょう)、李の首を斬ると言うのを中国全土にアピールしたのです。それで、李は汗をかいたというのが真相では。習の腹黒さが窺えます。こうでなければ中国のトップにはなれないのでしょう。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族なので。

やはり、中国の経済を崩壊させるのが軍事膨張の野心を止めるのに一番良いと思います。財務省の通貨スワップの議論や外務省のODAは止めるべきです。こいつらは学力が高いだけで、世の中が見えてない連中です。支援をすればどういう結末を迎えるか分かりそうなもの。まあ、老後の天下り先の心配ばかりしている官僚たちですから、矜持を持って仕事せよと言っても難しいのかも知れませんが。保身ばかりが目立ちます。自己中心な日本人の典型です。

記事

Philippino's protesting action in front of Chinese consulate

フィリピン・マニラの中国領事館前で抗議活動を行うベトナム人とフィリピン人たち(2016年2月25日撮影、資料写真)〔AFPBB News

 南シナ海における中国の傍若無人の行動を見るにつけ、アジア重視にピボットしてリバランスしたはずの米国に疑問が湧いてくる。

 カリブ海と南シナ海では米国にとっての意味が異なることは分かる。しかし、ソ連がキューバにミサイルを持ち込んだ時の対応に比して、中国の南シナ海における行動に対しては余りにも対応が鈍い。

 軍首脳たちは対応が遅れれば遅れるほど、大きな犠牲が伴うことを進言しているようであるが、2回ほど「航行の自由」作戦を行っただけである。「世界の警察官ではない」と宣言した大統領には別の思惑があるのかもしれない。そうした米国の対応を見越して、中国は急ピッチで南シナ海の軍事拠点化を進めている。

 内向きのバラク・オバマ政権で、果たして日本の安全は保障されるのか。日本はどういう立ち位置で行動すればいいか、今一度真剣な考察が必要であろう。

台湾の政権交代を追い風に

 台湾では先の総統選挙で親日的な蔡英文氏が大差で勝利し、5月に8年ぶりの政権交代が行われる。同時に行われた立法院選挙でも民進党が過半数を超す議席を確保し、与党による安定した議会運営が期待される。台湾の現状維持は日本のシーレーン維持のためにも不可欠である。

 しかし、中国が主張するように南シナ海が中国領となり、内海化して対空ミサイルや戦闘機・戦闘爆撃機を配備し、さらに防空識別圏を設定すると、海上自衛隊や米第7艦隊は通りにくくなる。それはとりもなおさず台湾の孤立化であり、その先にあるのは台湾の香港化であろう。

 その結果、台湾海峡とバシー海峡の自由航行が阻害されることになれば、南シナ海を通る日本のシーレーンは遮断され、ASEAN(東南アジア諸国連合)との通商は大きな打撃を受けることになる。

 もちろん、中東からの原油輸送も南シナ海の航行ができなくなれば迂回が必要で、長大な航路となり、経済的損失は計り知れない。また、台湾を拠点に東シナ海における中国の活動は一段と加速され、尖閣諸島が大きな影響を受けることは必定である。

 このように考えると、日本と価値観を同じくする台湾が健在することは、何よりも日本の安全保障にとって不可欠の要件である。

 いまは台湾が頑張ってくれているから海峡通過が可能であるが、中国の影響下に入ったならば、万事休すである。中国は尖閣を自国領にして、台湾に影響を及ぼしたいと思っている。そうした意味で、尖閣諸島の重要性も浮かび上がってくる。

 台湾の命運は日本の安全保障にもかかわる。リチャード・ニクソン政権(当時)の動きに慌てて、台湾をあっさり切り捨てた日本であるが、中国が国際社会の声を無視する形で南シナ海の内海化を図っていることに対応して、日本は対台湾関係で新たな施策を取るべき時ではなかろうか。

 先の国会での安保法案が理解されにくかったのは、緊迫している国際情勢についての議論を野党が避けて憲法論議に持ち込んだからである。

 南シナ海の現実に照らして、一段と法案の重要性が認識されなければならない現在である。破棄法案を提出する野党の無責任はいくら批判してもし過ぎることはないであろう。

日本の立ち位置

 中西輝政・京都大学名誉教授は「愚かにも、ここ20~30年、日本では政府も国民も鄧小平以後の中国は平和志向に変わった、と妄想した」(『正論』2015年3月)と悔しがる。

 日本が自国に都合がいいように妄想したこともあろう。しかし、日本が独自にとり得る中国に関する情報が少なく、米国がもたらす情報で行動せざるを得なかったということが大きい。

 その米国には前科がある。戦前の米国は「日本帝国主義に痛めつけられた中国」という認識が強く、南京攻略戦を中国が南京大虐殺に仕立てるのに多大の協力もした。中国の報道はおかしいと米国民に呼びかけたラルフ・タウンゼント元上海副領事などは戦争中、フランクリン・ルーズベルト大統領によって牢獄につながれたほどである。

 戦後の米国は「可哀そうな中国」ではないが、しっかり支援してやれば米国に応えてくれるといった認識から同盟国である日本と天秤にかけ、時には中国に肩入れして日本敵視政策をとる状況もあった。

 日本人の中国専門家、もっと広く国際問題専門家と言われる人たちの講演をいくつか聞いたが、米国は中国をこう見ているという話が主体で、日本も米国と同じ視線で中国を見ておれば大丈夫だろうと言った論評がほとんど。独自に10年後、20年後を語る話はあまり聞けなかったように思料する。

 中国の政治的状況や軍政関係など、内部からしか得られないような内容の話をすれば、自国民でさえ容赦なく逮捕する国への入出国が難しくなることもあり得よう。そうした配慮から話を控えているのかも知れないと惻隠の情で聞いていたが、根本的な情報が欠落しているというのが実態のようであった。

 そうしたところに、米国から次々に対中警戒の声が上がってくると、日本の報道機関はそうだったのか、それほどまでに中国の傍若無人ぶりが増大して危険な状況になりつつあるのかとびっくりし、慌てて報道し始める仕儀である。

日本は独自の核抑止力を欠いているので、米国に強く言えない。あるいは米国の対中政策と違った行動をとり得ない、あえて行動しようとすると圧力がかかるなどの目に見えない同盟の枷がかけられていることもあろう。

 先の北朝鮮のミサイル発射に関連して自衛隊が対処行動をとったことに関し、某氏はこの態勢をそのまま維持して、対中布陣としてはどうかという意見を出していた。対北朝鮮対処だけでなく、いや北朝鮮対処以上に中国対処が日本にとっては重要であることが忘れられているように思えるがいかがであろうか。

 いまは日本の立ち位置が定かでないように思える。

中国の詭弁に寛容すぎる

 南シナ海では「(中国の)軍事拠点化の進展を示す証拠が日々、浮上している。深刻な懸念対象だ」(「産経新聞」平成28年2月19日)とジョン・ケリー米国務長官が非難した。これは昨秋訪米した習近平主席がオバマ大統領と記者会見に臨んだ時、「南シナ海を軍事拠点化にしない」と語ったことを念頭に述べたものである。

 3000メートル級の滑走路が何本も完成し、戦闘機の配備が明らかになり、また対空ミサイルの配備も明らかになると、中国は意味不明な「防衛体制は昔から存在する」「主権国家の自衛権に合致する」などと反論するようになってきた。

 尖閣諸島の帰属や南シナ海について、以前は「古代から中国のものであった」などと国際法を無視して何の根拠にもならない発言を繰り返してきた。中国流の詭弁でしかないが、こうした詭弁は今に始まったことではない。

 中国と1969年以来かかわり、米政府への助言もしてきたマイケル・ピルズベリー氏が「騙されてきた」と近著『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』で告白している。

 正確には「騙されていた」と言うよりも、「信じようとしないままずるずるときた」ということであろう。

 なぜなら、彼はビル・クリントン政権時代の国防総省とCIA(米中央情報局)から「中国のアメリカを欺く能力と、それに該当する行動について調べよ」と命じられ、中国が隠していた秘密を調べており、「(中国の)タカ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得てきたシナリオ」を発見していたからである。

 そのシナリオこそ「100年マラソン」と呼ばれるもので、「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものだったと述べる。

ピルズベリーは中国がどうなるとみていたかを、「間違っていた前提」として5つにまとめている。

(1)つながりを持てば完全な協力がもたらされる。 (2)中国は民主化への道を歩んでいる。 (3)はかない花、中国(と思てきた)。 (4)中国はアメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる。 (5)中国のタカ派は弱い。

 いま分かったことは、すべての前提が間違っていたということである。

 どうしてこうなるのか、孫子の兵法に見るように、中国の戦略は「戦わずして勝つ」のを最上の策としており、そのために謀略をめぐらし、相手の謀略に打ち勝つことを奨めている。こうして力がつくまでは「平和的台頭」を信じ込ませてきたのだ。

 日本が防衛白書などで「中国の軍事力増強は不透明である」と警鐘を鳴らしても、中国は常に「平和的台頭」であり「覇権国になることはない」と繰り返すばかりであった。南シナ海での埋め立てや滑走路などの敷設に対して、「軍事化を意味しない」と言ってきたのと同類である。 

オンショア・バランシングの米国へ

 オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語ったのは、シリアで化学兵器が使われた疑惑が持ち上がり、米国の対応が問われた2013年9月10日である。

 これは「9.11」の12周年を迎える前日のことであった。それを発火点にしたかのように、シリア情勢は一段と混乱し、ロシアはクリミア半島を侵略した。

 「オバマ大統領のホワイトハウスが現在関心を持っている世界情勢は、ロシア・ウクライナ問題、そして中東とそれに関連した国際テロが依然として大きなウェートを占めている」(『正論』2015年3月)と田久保忠衛氏は述べ、「中国の台頭、ひいては危険で野心的な膨張主義は、アジアに局面を限れば目立ってきたと感じている程度だと言わざるを得ません」とみていた通りであった。

 第1期オバマ政権は中国閉じ込めの色彩が強かったが、第2期になると、アジアへ回帰してリバランスの宣言をしたにもかかわらず、「オフショア・バランシングに変わってきたのではないか。中国と直接対峙するのは日本など同盟国や友好国で、アメリカはそれらをオフショア(沖合)、つまり後方から支援し、対抗行動をとるという戦略」(同上)で、なかなか動こうとしなかった。

 米国は昨2015年7月、4年ぶりに「国家軍事戦略」を公表した。

中国の南シナ海における人工島造成が国際的な海上交通路にまたがり、中国軍の兵力配置を許すことや、ロシアはウクライナ軍事介入で武力行使も厭わないなどと分析しているが、「米国と同盟・友好国のネットワークは世界の安全と安定の礎となる類まれな強さがある」とし、「集団的な軍事力を高めることなどにより、侵略を阻止する」(「産経新聞」平成27年7月3日)と強調するだけで、米国が指導力を発揮するような文言はない。

 こうした米国の動きにリアリストたちが危機感を抱き声を上げ始めた。

 ピルズベリーの上記著書やジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇―米中は必ず衝突する』、さらにはアーロン・フリードバーグの『支配への競争―米中対立の構図とアジアの将来』などが相次いで出版される。

 これらの著書は『孫子』『春秋左氏伝』『三国志演義』などの古典、あるいは鄧小平が語っていた「韜光養晦、有所作為」(才能を隠して控えめに振る舞い、成すべき事は成すという意味)などの用語を多用して論述している。カギは中国の古典にあり、中国の計略にはまったという印象を強く醸し出そうとしていることが分かる。

 米国が今後も我関せずのような態度を続ければ、中国が地域覇権国になることは必定であろう。しかし、米国が地域覇権国となって以降、米国は他の国が地域覇権国となることを許したことはない。その流れからすると、米国は台頭する中国を抑えなければならない。

 そのことをミアシャイマーは自著で、「現地の国々(筆者注:日本やベトナム・フィリッピンなど)が潜在覇権国(注:中国)を自分たちの力で閉じ込められない場合には、沖合に位置しているオフショア・バランサー(注:米国)というのは、実質的にオンショア、つまり岸に上がらなければならなくなる」と述べている。

米国の日本理解

 他方で、米国の行動を見ると、世界の警察官でないどころか、同盟国の警察官でもないように見受けられるというのは言いすぎであろうか。

 米国には、もともとモンロー主義という考えがあり、最小限アメリカ大陸にだけは敵性国家を近づけないし、いざというときには引き籠ればいいという考え方である。キューバ危機はそうした意識の顕現であった。

 南シナ海については「航行の自由」を主張しながら、中国の軍事拠点化にさしたる異議申し立ても行動もとろうとしない。米国の力を期待していたASEANの国々は米国を見限りつつあるのではないだろうか。

 南シナ海では中国が数年前から人工島を築き作業していたことが分かっていた。昨年は飛行場の完成、そして民間機の飛来、その後は戦闘機の発着である。今年になると対空ミサイルの搬入が明らかになった。それにもかかわらず、米国は中国の行動を抑制させるまでには至っていない。キューバの時と大違いである。

 こうした米国の動きを見ていると、日米同盟で日本の安全はどこまで保証されるのか、理解が困難になる。米国務長官や国防長官は「尖閣は日米安保5条の適用を受ける」としばしば発言していたが、米国が本当に守ってくれるのか心配でならなかった。

 そこへ、国賓として迎えたオバマ大統領が同様の発言をしたことで、これ以上の保証はないと言わんばかりに日本はすっかり安心した。

過去の歴史や米軍占領後の尖閣を射爆場として使っていたことなどからして、「領有権」は明確であるように思えるが、あえて「領有権は日中両国の問題」と突き放す。

 こうしたことから、「安保条約の範囲内」の意味については、有識者の間でも意見が分かれている。ざっくり言って、米国が最大限の関与、すなわち戦争に訴えてでも日本の味方をしてくれるという意見から、リップサービスで中国を牽制するだけで、実際に中国が動き抑止が破綻すれば関わりを放棄するという意見まである。

 西尾幹二氏は「アメリカの対外政策をみていると、ことごとくまるで絵に描いたようなご都合主義で、私たちはアメリカを本当に信じることができるかどうかわからないという局面に、身を置いている。(中略)アメリカ人は余りにも他国を理解しようとしない。そしていまはオバマ政権の軽率かつ臆病な判断によって世界最大の軍事大国が外交的失敗を繰り返している」(『正論』2016年3月号)と書いている。

 中国発の情報の間違いと日本発の正しさを米国民に伝え続けたタウンゼントに対する米国の仕打ち、戦後の米国の行状を見ただけでも、米国の国益次第で日本は翻弄されかねない。

おわりに

 台湾は日本へのシーレーンを扼する戦略的要衝である。親中政権から親日政権に代わるのを好機と捉え、日台友好を深めると同時に、経済的深化を強める必要がある。

 日本単独の中国進出は危険が伴うことが多いが、台湾は中国での損失が少ないと聞く。このことは、日中の関係に台湾を噛ませることで損失の少ないルーチンを築く機会でもある。

 中国は法の支配を守らない、民主主義を否定する、IS(イスラム国)を批判しないなど、従来確立されていた国際秩序を破壊する行動を平然と行っている。

 また、中国や半島の国々の要人や広報官の声明などを聞いていると、あたかも詭弁術の講義のようである。これが国際政治の現実という理解も必要であろう。

 他方、米国はいま中国のこうした詐術に気づいたかのように主張するが、それも詭弁であるように思える。米国はとっくに中国の言行を知っていたはずである。ただ、自信過剰が災いしたとは言えよう。

 いま米国の地域覇権が脅かされそうになり、日本やASEANの結束を呼びかけているが、米国益絡みの思惑で一蓮托生にされてはかなわない。

 日本自身の立ち位置をしっかり確立することが求められているようである。

メルマガ記事

中共の首脳は、全人代で、「海洋強国」を建設すると宣言し、 東シナ海・南シナ海そして西太平洋に覇権を拡げて「中国の海」とするための「軍事闘争への備えを統一的に推進する」国防費を提示した。 その額、日本円で約十六兆七千億円であり我が国の国防費の三・三倍である。 しかし、この公表された国防費は総額の二分の一に過ぎないと指摘されている。これは経済の失速のなかでも断じて軍事拡張を止めない姿勢を示したものである。

  産経新聞社説は、この状況に関して 「自ら敵を増やすつもりか」 という強烈な題名を与えて異常性を強調した上で、 「習主席は異常な軍拡を思いとどまり、各国と手を携える道を探らなければならない。 経済の回復にも国際協調は不可欠だ」と結んでいる(二十八年三月六日)。この社説の終わり方に、じょ、じょ、冗談言うな、となった。さんざん相手の異常性を強調しておいて、 なんやこれは、異常な相手に、国際協調を勧めても聞き入れるはずがないではないか。そもそも、異常、なんやから。

 よって、産経新聞の社説の結論とは逆に、この相手に、国際協調を勧めるのはもう止めようと強く訴えたい。何故なら、軍拡を続ける独裁権力に対する「宥和」こそ、戦争の引き金になる「最も危険な錯誤!」であると歴史が教えているからである(チャーチルの第二次世界大戦回顧)。第二次世界大戦勃発の直前まで、つまりドイツのポーランド進撃直前まで、イギリスもフランスも、ヒトラーに国際協調を勧めていたことを忘れてはいけない。

 すなわち、我々は、頭から対中宥和思考を排除した上で、相手の「実態」を把握し、如何にして相手を抑止するか決断し実行に移さねばならないときがきている。その決断が、本稿の表題「平和を望むならば戦いに備えよ」である。

 この観点から眺めるならば、現在、韓国では、アメリカ軍と韓国軍が大規模軍事演習を展開し、 南シナ海には、アメリカの原子力空母ジョン・ステニスを中心とする空母打撃群が展開している。

 また、我が国においても、 昨日三月七日、秘匿性に優れた最新鋭潜水艦「じんりゅう」が三菱重工神戸造船所から就役して「そうりゅう型潜水艦」が次々と生まれており、フィリピン海域の海底に我が潜水艦が遊弋していると聞いている。いうまでもなく、秘匿性の高い潜水艦は、一発で空母を撃沈できる。

 これらを総合すれば、中共の全人代で喋っている連中と中共の軍隊は、海洋においてかなりの圧力を受けて抑止されており、八十年前の昔に、何の圧力も受けずにラインラントに進駐できて 舞い上がったヒトラーの状況とは違うと思われる。

 アメリカ国内は、現在、不動産王と上昇志向が化粧をして歩いているような二人による内向きの大統領選の最中だが、軍事行動に消極的でアメリカの威信と国際的信頼感を失墜させたオバマ政権末期を迎え、オバマに辟易した国防長官と軍が、歴史の教訓に忠実な、きっちりとした行動を始めたと評価する。

 さて、原子力空母ジョン・ステニスの空母打撃群の周りには、「見たこともないほどの中国人民の艦船が来ている」ということだ。 この情報に接して、思い出したのは、日中条約締結前の福田赳夫内閣の時、突如、尖閣周辺海域に百隻を超える中共の武装漁船が群れた情景である。之を見た福田内閣は驚き腰を抜かす。そして、そのタイミングを計っていた鄧小平の「尖閣棚上げ」提案に飛びつく。つまり、この時、我が内閣は、「自国の領土を他国に棚に上げてもらってホッとする」、 という馬鹿よりもひどい痴呆を演じるのである。そして、この武装漁船の「船員」達は、リストラにあった元人民解放軍の兵士であったというわけだ。

  そこで現在、中共では、「軍の近代化」のために大リストラが行われているのだが、アメリカ空母打撃群の周りにいる「見たこともないほどの中国人民の艦船」は、福田赳夫内閣を慌てさせて「尖閣棚上げ」効果を獲得した例に倣って、中共首脳が、ひょっとして「スプラットリー諸島棚上げ」が転がり込むかも知れないと思って、リストラ兵士を繰り出しているかも知れないと思う次第だ。何れにしても、アメリカ空母打撃群の周辺に出てきた「見たこともないほどの中国人民の艦船」は、アメリカ軍の行動が、中共に効いている証拠である。

 なるほど、中共(中国共産党)は、軍備を増強して海洋に進出している。しかし、そのカラダの内部は、ガン細胞が増殖を続けている。その内蔵が腐れば生体は維持できない。従って、脆弱である。いたずらに、中共の軍備増強を怖れる必要はない。対中軍事行動は、明らかに平和を確保する。対中宥和は、中共を増長させ危険な軍事的冒険を誘発させる。よって、我が国は、「平和のための戦略」を確立し、軍備の充実に邁進する時に至っている。

 その「平和のための戦略」の大きな柱は、台湾そしてフィリピンからインドネシアというアセアン諸国との連携である。この中共を取り巻く「海洋の輪」が機能すれば、中共の「海洋強国」は停止する。陸上から飛び立ってイギリスの太平洋艦隊の旗艦である戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを撃沈した戦訓を思い起こすべきである。この「海洋の輪」が機能すれば、東アジアの海を乗っ取ろうとする中共の野望は必ず破綻する。

 最後に、最も警戒すべきことを記す。それは、中共の「対日工作」を見くびってはならないということである。冒頭に示した産経新聞の社説でも、中身は中共の「異常性」を説きながら、締めくくりは「中共に国際協調を勧めよう」というまことにしおらしい結論で終わるではないか。血に飢えた猛獣が平和の鳩になると本当に思っているのか。

 昨年に延々と続けられた国会における安保法制の議論の中で、「中共による南シナ海の埋め立てと軍事基地化工事の脅威」については民主党からはもちろん、自民公明の与党からも質問は出なかった。南シナ海に関する質問は、「日本のこころ」からだけであった。この国会は、明らかに中共に「配慮」していた。これを「異常」だと思わねばならない。反対から言えば「異常」と思っていないことが「異常」なんだ。すなわち、中共の工作活動が国会すなわち政府与党と野党に及んでいる。 つまり、我が国国会は、中共に協力していたのである。一部は意識して、一部は無意識に。

 かつて、ソビエトのKGBのスパイであるレフチェンコは、「日本の世論をソビエトに有利になるように仕向ける」任務を受けて日本に来て、我が国の政界、官界、財界、マスコミ界等のエージェントと接触し工作活動を展開した。そして、アメリカに亡命して次の通り証言した(一九八二年)。「日本人はソビエトに協力しているという意識なく協力してくれた。日本はスパイ天国である。」ソビエト無き今、我が国において、この「スパイ天国」を満喫しているのは何処の誰か。中共の工作員ではないか。彼らは現在進行形で言うだろう。「日本人は中共に協力しているという意識なく協力している。 日本はスパイ天国である。」まさに、レフチェンコの証言通りのことが、昨年の国会で起こっていたのである。それどころか、昨年起こっていたことは、今も各所で起こり続けている!

 そこで、痛恨、無念の思いを以て言っておく。昨日、田母神俊雄元航空幕僚長の事務所等を東京地検特捜部が家宅捜索した。その容疑は、「勇気ある内部告発者」の告白に基づく政治資金の業務上横領であると発表され、マスコミはその通り官に「言われるままの疑惑」を流している。これによって、全国津々浦々の日本国民に、我が国を取り巻く中共の軍事的脅威を権威を以て伝達できる軍事専門家が沈黙させられるのだ。

 これを喜ぶのは、何処の誰だ。喜ぶのは国内と国外にいる。都知事選挙から二年以上も経過したこの時期に、突然為された検察特捜部による田母神俊雄事務所家宅捜索が、「スパイ天国」における中共の工作活動と無縁の公明正大なもの、すなわち、社会正義の実現、であると、言い切る材料はない。

 つまり、政界における中共の工作に影響された国策捜査ではないと言い切れないということだ

3/8JBプレス 横地光明『習近平がヒトラーに変貌する日への備えは万全か 「ミュンヘンの宥和」が大惨事に発展したことを忘れるな』について

横地氏の論理展開は至極当然と思いますが、一番問題なのは国民レベルで危機の認識が共有されていないことです。左翼・リベラルに偏ったメデイアと学会(含む日教組)、傍観を決め込む経済界と悪条件が重なっています。国民はこのままでは「奴隷の平和」という事態になることを想像できないのでしょう。左翼は共産党支配を受けたいと思っていますので、確信犯でしょうけど。

自民党の責任は大きいです。マスコミのバッシングを恐れるあまり、長期的戦略を持たず、その場を糊塗してきて、左翼・リベラルに譲歩してきたためです。でもネットの発達により少しずつ情勢は変わってきました。朝日新聞のリストラ(OBへの新聞無料配布取りやめ、賃金カット)は、その表れでしょう。朝日新聞社員・配達員の不祥事も相次いで起きています。駅や電車内で女性に暴行、救急車への唾吐き等。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160305/k10010432541000.html

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160305-00000554-san-soci

逮捕されても、傲慢としか言いようがない言いぐさです。こんな新聞がクオリテイペーパー扱いされてきたことが日本の不幸です。日教組が受験対策で勧めてきたのが大きいのでしょうけど。朝日は日本共産党・中国共産党・朝鮮労働党の「喉と舌」です。日本国民のことは全然考えていません。戦前も尾崎秀美(大阪朝日記者)のスパイ事件で日本を誤導してきました。不買でドンドン売り上げを下げる必要があります。また「押し紙」問題もありますので、こういう不正をしながら「社会の木鐸」を標榜するのはチャンチャラおかしいと思います。公取に糾弾した方が良い。

3/8には朝日新聞から電話で「新紙面になったので一定期間無料で配達できます」と言うので「即座に「要りません」と断りました。相当の焦りがあるものと見受けられます。でも何故自宅の電話番号を知ったのでしょう。大事な個人情報ではありませんか。言っていることとやっていることが違いすぎます。どうせなら思想調査をすれば、勧誘の電話はなかったでしょうけど。

自民党は自分でPRするTVチャンネルを持てば良いでしょう。既存のTV放送局には入札制を入れず、安くしか電波利用料を取っていないので、同じようにすれば良い。週1回限られた時間でも良いでしょう。憲法改正の必要性を党として国民にもっと説明しなければ、国民投票で支持は得られないでしょう。既存のメデイアは憲法改正反対なので。横地氏の仰っています「自分の国は自分で守る」ことも丁寧に説明していかなければ、メデイアの「戦争反対」のアピールに負けてしまいます。

記事

Steria Hacking Challenge

仏パリ(Paris)西部のムードン(Meudon)で行われたハッキングのコンテスト「ステリア・ハッキング・チャレンジ(Steria Hacking Challenge)」に参加する学生〔AFPBB News

米紙の衝撃的報道

 JBpressは最近立て続けに尖閣諸島をめぐる日中交戦に関し、「衝撃のシミュレーション『中国は5日で日本に勝利』」(1.27部谷直亮氏)、「オバマ政権最期の今年、中国は尖閣を攻撃する」(2.3古森義久氏)なる驚くべき記事を報じた。

 前者は米ランド研究所のデヴィッド・シラパク氏の尖閣事態シミュレ―ション公開リポートの紹介である。

 「日本の右翼が尖閣に上陸すると中国海警が逮捕し海警と海保が衝突、日中の艦艇・軍用機が展開し中国艦の空自機への発砲から日中交戦が始まり、米潜水艦が中国艦を撃沈すると中国は米国西部をサイバー攻撃、また対艦ミサイルで海自艦艇を撃沈、中距離ミサイルで日本本土を攻撃。米国は日本の空母参戦と中国本土基地攻撃要請を拒否し、中国は5日間で尖閣を占領」とその内容を伝えた。

 後者は28.1.25付ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された米ハドソン研究所のルイス・リビー氏らの論文『北京の次の先制行動は東シナ海だ』(Beijing’s Next Gambit, the East China Sea ;By Arthur Herman and Lewis Libby)に関するもの。

 「中国は日本と密接な関係を持ちながらも突然尖閣に軍事行動を開始し両国の軍事衝突になる。オバマ政権は日米安保発動の日本の強い要請を抑え日本は引き下がり外交的解決を求めるが、国際調停で中国の主張がより支持され尖閣領有権主張が日中対等に扱われることになる」との主張とそれへのコメント記事。

 これに対し、元航空自衛隊空将の織田邦男氏は、ランド研究所のリポートについて「あまりにも稚拙なシミュレーション」と批判(本誌2.4)する。

 「そんな前提はあり得ない。米が潜水艦を参戦さても中国が軍事行動を停止せず、米国がサイバー攻撃で大きな社会混乱を起こされても参戦しないはずがない。近代戦を支配する航空戦に少しの配慮もなく話にならない。これらは米政府にあまり深入りするなとの警告を促すものであり、あるいは中国の思惑を入れての仕業(コミットメント・パラドックス)である」と主張し大方の賛同を得ているようだ。

 確かにその可能性も高い。しかし、中国が米空母2隻の行動でミサイル発射を中止(1996年:台湾総統選挙)したのはまだ対艦ミサイルを十分保有しなかった時代のことで、現在の米中の相対的力関係とは著しく違っている。中国の軍事力を少しでも過小評価するようなことは危険である。

 前者が海自の撤退収容で終わるのは、あたかもベトナム戦争の最期を見るようだし、後者には、アドルフ・ヒトラーによるチェコスロバキアのズデーテン地方割譲要求を認めた「ミュヘン宥和」の歴史的愚挙を想起させられた。

 こうした歴史を振り返れば、中国が日本と通常の関係を保ちながらも突然短期局部的軍事行動を仕かけることは十分考えられる。

 米国はその尖閣攻撃事態発生に対し、大統領を含む政府高官が「尖閣は安保5条の適用範囲で米国は日本を必ず護る」としばしば公約している。しかし、実際にはミュンヘン宥和のような事態が発生する恐れはないだろうか。

 もし、尖閣諸島が中国から攻撃された場合、米国は自らの国際的信頼性が一気に地に落ちることを承知で、日本の要請を抑えて中立を守り、日本本土が中国の中距離ミサイルで大被害を受けても、空母を大西洋に逃がしたり、国際調停で中国の尖閣領有権の主張を認めたりする可能性は否定できない。

 現実問題として、中国が尖閣諸島に対して本格的侵攻を行う危険性はそれほど高くはないかもしれない。しかし、前者のシミュレーションは地位の確立した専門家のものであり、後者の論文はブッシュ政権の国防次官補らによる論文で「最善を期待し最悪に備える」べき安全保障の原則からして軽々しく扱ったり無視していいものではない。

米国は尖閣諸島防衛を公約していても軍事支援を発動しないことがある。国家防衛に強い意志と能力を欠くものは見捨てられるという国際政治の非情さを忘れてはならない。

 政府も国民も等しく短期的局部的な中国の軍事行動はいつでもあり得ることを覚悟し「自分の国は自分で守らなければならない」現実に目覚め、その指摘する日本の安全保障上の根本的欠陥是正の警鐘を真剣に受け止め、すみやかにこれらを改善しなければならない。

尖閣防衛には何が必要か、彼らの警告

 政府は尖閣事態に対する米国の公約履行の確証を高めるべく施策するとともに、防衛省・自衛隊は尖閣事態に対しこれを抑止・対処するため、南西方面を防衛努力の焦点としてその対応を急いでいる。

 例えば陸上自衛隊では、島嶼奪還部隊のための水陸両用部隊の整備、与那国島への沿岸監視隊、石垣島への対艦・対空ミサイル部隊と警備部隊の配置、奄美大島への対艦・対空部隊配置、「オスプレイ」の導入、作戦部隊の軽快な輸送展開のための師団・旅団の軽量化を進めている。

 海上自衛隊はイージス艦2隻の迎撃ミサイル「SM-3」の装備化と2隻の新造、潜水艦6隻の増加を図る計画である。また航空自衛隊は既に九州から1個飛行群を那覇に移し第82航空隊の部隊と合わせ第9航空団を新設し「F-15」を倍増し40機体制とした。

 海上保安庁も保安官・巡視船を増加し石垣島に尖閣海域監視専任部隊を設けた。

 しかし彼らが指摘しているのは、そのような戦術レベル次元を超えて戦略レベルあるいは国家安全保障レベルの欠陥なのである。

 すなわちこの論文とシミュレーションが指摘する最大の問題は、再言するが中国は予期しない時に突然軍事攻撃を仕かけることがあり、その場合米国は予ての国家公約(オバマ大統領や国防長官や軍高官の発言)にもかかわらず尖閣事態に軍事支援を避けることがありうるという深刻な問題だ。

 第2次世界大戦を誘発してしまった「ミュンヘン宥和」が尖閣諸島を舞台に再現されないと誰が断言できるだろうか。中国の習近平国家主席がヒトラーのような野望を抱いていないと確信できるのだろうか。

 日本がもっぱら米軍に期待している抑止力を欠き、我が国本土までが一方的に中国のミサイル攻撃に晒され、またそのサイバー攻撃によって社会インフラ、政官軍経のシステムが機能を失う危険性は常に念頭に置いておかなければならない。

 またこれらのリポートは、作戦部隊の作戦輸送展開と戦力発揮のためこれを支援さるための兵站的支援確保に信頼性が乏しく、加えて航空基地などに掩体(えんたい=敵の砲弾から身を守る土嚢などの装備)が全くなく甚だ脆弱であることも指摘している。

 中国が容易に兵を動かすのは、国境における短期的攻撃がインド(1959、62)、ソ連(69)とベトナム(79)の例でも知られる。インドとソ連の両国は敢然と戦いこれを阻止したが、ベトナムは海上戦力が弱く西沙諸島では固有領土の島嶼を軍事占領された。

 中国は核大国のソ連とさえダマンスキー島で戦い半分を領有化(1969)した。決して油断できる相手ではない。

 日本が尖閣諸島を絶対に守り抜く強い意志と現実的態勢を示し中国に乗ずる隙を与えず、またいかに日米安全保障条約の信憑性を確立するかが問題である。しかし今日までの施策ではその保証は薄弱で抜本的見直しが必要である。そして諸々の形骸的防衛政策を刷新することも不可避である。

日米安保条約信憑性の確立

 中国が尖閣に武力攻撃をすれば、米国は日本の救援に必ず必要な武力を行使する姿勢が確信されれば、核大国同志の米中の戦いは最終的には核戦にも繋がる恐れがあり、ともに国家の存非のリスクを懸ける決意しなければならないので、両者の武力対決は強く抑止されよう。

 したがって平素からいかに米国が日本に対する中国の武力使用に対して、不退転の決意で日本防衛に参戦する不動の意図をコミットするばかりでなく、日米の現実の関係と軍の態勢と活動を示すことによって中国に誤解を生じさせないかが肝要になる。

 しかし、この論文などが示すように日米は、いまだ真の運命共同体ではない。一般米国民の世論のみならず政権当事者も、無人の岩礁の日中の争いになぜ米国の青年の血を流さなければならないかと考えるのは当然だ。

 そして、仮に中国がアジア・西太平洋を支配しても、ハワイ以東を支配できれば米国の安全は保障され経済繁栄に支障はないとの意見もある。米国の国力の相対的衰退と現在進行中の大統領予備選挙からも米国政治の内向き傾向がさらに強まることが容易に観察できる。

 日米同盟信憑性の確立は容易でない。しかしやらなければならない。

 第1は尖閣諸島の持つ日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)・米国にとっての至高な戦略的価値と安全保障上の象徴性を米国政府と国民に一層認識させる努力だ。

 第2には日本自身が米国にとって失い得ない国際戦略上の大きな価値を持つことだ。強い経済力・外交力に加え強い防衛力を構築し、アジア・太平洋の安全保障にしぶしぶ関与するのではなく、覚悟を持って積極的に先導し、米国を巻き込みASEAN・豪・ニュージー-ランド・印と共に中国の国際法侵害対処に行動しなければならない。

 これはちょうどヒトラーの修正主義の領土拡大の野望を前にし、英国が米国を巻き込み現状維持派の諸国に訴え国際情勢を指導したのに似ている。

抑止目的達成のための政策の刷新

 我が国の防衛政策の第1はもちろん抑止である。しかしながらその実態は抑止のための能力を整備しないばかりか愚かにもそれを機能しないような政策ばかりを進めている。

 具体的に示そう。古くは鳩山一郎総理の時代から「我が国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。――(したがってその)誘導弾等の基地を叩くことは法理的に自衛の範囲に含まれる」(衆院内閣委S31.2.29)との一貫した立場を取りながら、「我が国防衛力は周辺諸国に脅威を与えてならない」とし「専守防衛」を政策の基本にしている。

 この「専守防衛」なる軍事用語は世界にないが、「侵攻を受けたら立ち上がり、防衛力の行使を発動し日本を防衛するとするものである」とされる。このため戦闘機の行動半径を抑えるため態々その空中給油装置を外したたり、対地攻撃能力の保有を禁止し、ミサイルの射程を厳しく制限してきた。

 このため、日本への侵略を考える周辺国は日本の持つ防衛力に脅威を感ずれば感ずるだけその企図が封ぜられ即ち抑止されるのに、その脅威をなくし、加えて不意急襲的第一撃で自衛隊の各基地の航空機、護衛艦が一挙に壊滅させられる公算を大きくし、かえって相手を侵攻の誘惑に駆り立てる危険性を高めている。

 したがって、抑止を政策の基本とするならば、敵に乗ぜられない隙のない強靭な防衛力を備え周辺に無言に厳然たる脅威を与え、特に強力なサイバー能力を整備するとともに、我が国を攻撃する基地を破壊できるよう航空機の對地攻撃能力を整備し、かつ中国や北朝鮮の中距離弾道弾攻撃基地を叩き得る誘導弾を整備しなければならない。

 こうした論議に対して、日本が中距離誘導弾(弾道あるいは巡航)を持っても、奥地からさらに長い射程のミサイルで国家中枢を狙われ、その攻撃の意図を封ずることはできない。したがって中国の中距離ミサイルに対抗せんとするのは誤りであるとする説がある。

 しかしその考え方は、戦争はいつどんな場合でも無限界に全面戦争に拡大するとして、戦争にあるラダ―(ladder:堺域)の存在を無視するものである。

 また中国はミサイルの射程を増大すればするだけ、ますます日・米・豪・インドなどが結束してその対抗施策を講ずることを危惧し、中国が最近、ミサイル開発を抑えようとしているとする主張がある。

 しかしそれは自説の合理性を裏づけようとする一方的理屈ではないのか?

 それが事実であれば、中国のアジア西太平洋から米国勢力を駆逐せんとする意図を放棄した明確な証左や、南シナ海における領有権争いのある岩礁を埋め立てて造成した軍事基地を放棄するなどの確たる事実でこれが証明されなければならない。

 しかもリスクが高い侵害ほど発生の蓋然性は少なく、その大きい蓋然性のあるリスクに備えることに合理性が有り、日本が中距離ミサイルを保有する大きなメリットを忘れてはならない。

 この中距離ミサイルを、我が国で独自に開発国産化するには、相当の期間と経費を投入しなければならない。しかるに幸にも、米海軍にはトマホーク巡航ミサイル(射程1250、1650、2500、3000キロの各種、価格1億円前後)があり、海自艦はその発射装置VLS(MK41)を既に装備しておりミサイルの購入と計画飛行制御装置の導入だけで済む。

 仮に対中国用に1000発、北朝鮮用に200発の計1200発を整備したとしても費用は1200億円程度であり、これはいずも級大型護衛艦の建造費に相当するが、何年間かに分けて整備すれば何隻かの耐用艦齢の延長によって、費用の捻出が可能でありその防衛効果は絶大である。

サイバーセキリティ能力の抜本的強化

 サイバー戦争は第5の戦いの空間として、平戦両時に、しかも瞬時に、国家・軍事機能が全面的に麻痺混乱喪失させ得る特殊な脅威を有する。サイバー攻撃は兵器開発の詳細な図面も容易に知らない間に盗み取られ、その危険性は往時の暗号文傍受解読の比ではない。

 ロシアは世界最強のサイバー戦能力を有すると言われるが、中国が絶えず米国日本に陰に陽にサイバー攻撃を仕掛けていることは公然たる事実だ。そのため中国が強力な該軍事組織(61398部隊等)を持ち、加えて民間に膨大(800万人とも)な専門家集団を養成していることはよく知られているところである。

 中国が開発中といわれる第5世代ステルス戦闘機「J-20」が米国などが開発し、空自が導入を図っている「F-35」と外形がそっくりであるが、これもサイバー戦の重大な一面として認識しなければならないであろう。

 このため、米軍は大将を長とする数千人規模の統合軍を設け、韓国もサイバーコマンドを保有(公表6800人)し国防費の3%を振り当てていると言われる。

 翻って、我が防衛省・自衛隊のそれを見ると地位と名は立派な統合部隊だが前者に比べれば真に貧弱な憐れな憂うべき存在でしかない。

 防衛省は速やかに民間のホワイトハッカーを急募し、少なくとも現情報本部位の態勢を整備しサイバー戦の攻防兼備の能力のある部隊に画期的に強化し、政府も特命大臣を置きサイバーセキリティに国を挙げて取り組まなくてはならない。

自衛隊を戦い得る体制への緊急措置

 自衛隊は形は何とか揃っているが、よく観察すれば実戦能力に乏しく瞬発力を発揮できても、人的物的に縦深性を欠いていることを認めざるを得ない。

 陸上自衛隊の部隊は米国が32万10個師団の整備を求めたのに18万で13個師団を編成したから、師団と称しても人員も装備も少なく、国内戦を理由に兵站機能を極端に絞り、戦闘員も多くの任を兼務するから少しの損害発生で全部隊の機能が大きく失われる宿命的脆弱性を持っている。

 しかも財務省は、定員に対してさらに充足率を課しているから初めから本来の能力を発揮できない。もとより自衛隊の装備・弾薬・燃料・部品の備蓄は甚だ乏しいうえ、これを必要方面に移動する十分な手段が準備されていない。

 陸上自衛隊は南西方面の事態に対応するため、1個機甲師団、3個機動師団、4個機動旅団を整備しようとしているが、これらの南西諸島への部隊・装備の緊急輸送も陸自および空自の航空輸送力は大きな限界があり、海上自衛隊も輸送艦は僅か3隻しか持たず、民間ヘリーなどの庸船を前提としている。

 だが、果たして業務に就いている船の緊急確保が可能なのか、何より危険な業務につく多くの船員の協力が得られるかの保証は全くなく、それには国家的な法的準備がなければ不可能である。

 参考に記しておくが、1個作戦師団の必要輸送所要は40万トンとされるのが常識である。陸自の師団は規模が小さく軽いからその4分の1、旅団は規模が師団の2分の1であるから8分の1、機甲師団を2分の1として計算しても所要合計は実に70万トンにも上る。

 この所要を容易に確保可能できるだろうか。最近北朝鮮のミサイル発射実験に備え、イージス艦(SM-3Aは射高300キロ・射程数100キロ位)とPAC-3部隊(射程20キロ程度)が展開したが、日本のBMD (弾道ミサイル防衛)は層が薄く、防護空域が限定され過ぎる。PAC―3は本来陸軍の野戦の拠点防空用のものだ。

 したがって速やかにSM-3B(射程、射高は1000キロが期待される)を開発装備化するとともに空自各高射隊はそれぞれPAC-3の半分をTHAAD(射高約150キロほど)に換装することが必要だ。

 陸・海自使用の対艦ミサイルの射程は短か過ぎるし、中国海警にはフリゲート艦の転用船があり更に軍艦仕様の超大型巡視船を建造中と報ぜられるが、そんな船に体当たりされては商船仕様の海保の巡視船はひとたまりもない。

 戦時所要の大きく拡大が予想される予備役自衛官は、我が国の社会制度と特殊な社会環境から質量ともに致命的な欠陥を持っている。

 新しい防衛計画では統合機動防衛力整備の名の下に、北海道以外の師団・旅団から戦闘力の骨幹である戦車と火砲を外すそうであるが、これでは作戦部隊でなく、警備師団(旧陸軍の後方警備にに任じた独立混成旅団)に過ぎなくなる。

 「国防力の相対的優劣は国際関係に影響を及ぼす」(「国際政治」モーゲンソー)と言われるが、最近力信奉のロシアが対日姿勢を強硬にしているのは、これが反映しているのかもしれない。

まとめ

 ある高名な国際政治学者は、国際情勢が不安定になったのは、「米国が弱くなり中露が強くなったのでもなく、中露が地域覇権を模索しながらもバラク・オバマ政権が軍事介入に消極的になったからだ。しかし次の政権が戦う姿勢になれば世界の不安定さは加速するだろう」と言っている。

 立派な国際政治学者の御託宣であればそういう公算が高いのであろう。しかし核大国の米ソが対立した冷戦時代は安定し、その終焉とともに世界は一挙に不安定不確実の情勢に陥り、世界の誰もが不安に悩ませられたのも否定し難いものがある。

 したがって、米国の次期政権がその第一流の国力と軍事力を背景に、国際秩序を侵すことは軍事力使用してもこれを許さないとの厳然たる政策を採用すれば、かえって世界情勢は安定するのではなかろうか。

 思うに、日本が世界最大の長期負債を抱え、少子化で人口問題が危機的状態に陥り、自国の防衛が形骸化の姿にあるのは「環境に適応できない種は生き残れない」(ダーウィン)のに世界の情勢変化に目をつぶる国民におもねり、政権がその維持にまた政治家が票を求めることを優先し、国家の長期的基本問題を放棄してきたからである。

 万一の場合に備え、国防の象徴尖閣防衛を事態的に確実にするためには早急に警察官僚が警察原理で作った国防政策と自衛隊を軍事原理で刷新することが現下日本の国家的緊急課題である。