1/13日経ビジネスオンライン 福島香織『香港銅鑼湾書店「失踪事件」の暗澹 香港の一国二制度を見殺しにするな』について

昨日は「台湾総統選」、「AIIB開業」の日でした。中国の世界に於ける存在感は2000年と比べて大きくなりました。大きくしたのは西側世界、特に日米です。「飼い犬に手を噛まれる」との思いでしょうが、「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族ですから、日米は馬鹿だったのでしょう。軍事拡張を続ける中国をオバマは制止できません。多国間の枠組みを使って何とか抑止しないと戦争になります。やはり、中国の経済を崩壊させるしかありません。日本の株価も下げるでしょうけど、一時的なものです。他に投資先がなければ必ず還ってきます。1/14日経に日本の中韓への通貨スワップの記事がありましたが、折角「AIIB」に参加しなかったのに、その効果を減殺します。尖閣や沖縄、或は日本全体への領土的野心を持つ国を助けるのは信じがたい愚行です。財務省は本当に愚かな人間の集団です。戦前だって西原借款を供与して返して貰っていないでしょう。単に学力レベルだけの人間では良い行政は出来ません。

銅鑼湾書店の5人失踪事件は、世界に中国は異質というのをまざまざと見せつけました。サッチャーは鄧小平に騙されたという事でしょう。中国人が約束を守るはずがありません。法の概念が欠落している民族ですので。台湾国民も選択を間違えれば、「明日は我が身」と思ったでしょう。その結果が、昨日の総統選と立法委選です。

中国に日本を慰安婦や南京で非難する資格はありません。今甚だしい人権侵害を平気で行っているではありませんか?日本の左翼、人権派弁護士はどうして中国非難の声を上げないのでしょう?彼らは慰安婦問題で国連人権理事会(ジュネーブ)までわざわざ出かけて行って、日本を貶める行動をしてくるのに。ダブルスタンダードです。中国か韓国から金を貰ってやっているのか、スパイ活動としてやっているのでしょう。

中国では逮捕状なしで拘引、拘留するのが当たり前です。何せ法治国家ではありませんので。「法輪功」の信者もそれで犠牲になっています。台湾の蒋介石も2・28事件で同じように都合の悪い人間を隠密裏に拘束しては処刑しました。中国人のやることは一緒です。しかも、人類の叡智の結晶である「三権分立」を共産主義は否定します。中国人+共産主義となれば悪も底なし沼でしょう。

1/16日経に「中国は令計画(元中央弁公庁主任)の弟(令完成)の身柄移送を米国と協議」とありました。令完成は2700件の機密文書と中国要人のセックススキャンダルを持ち出したと言われています。米国も令完成をもう用済と引き渡ししたら、死刑になるのは目に見えています。人権を声高に言うのであれば、引き渡さないで、スノーデンのように生かしておいた方が後々役に立つかもしれません。

記事

年明け早々の私にとって一番衝撃的なニュースは銅鑼湾書店の関係者が次々と失踪したことだ。香港の出版界にひしひしと圧力が迫っていることは承知していたが、まさか香港内に住んでいる人間、しかも外国パスポートを持っている人間が突然消えるほど、香港が物騒なことになっているとは。

 銅鑼湾書店関係者の失踪は5人。まず昨年10月17日に店筆頭株主・桂民海の行方が分からなくなり、10月24日に同書店の創始人で店長の林栄基が消え、10月26日に株主の呂波、書店経理の張志平、そして最後に12月30日に店主の李波がいなくなった。いったい何が起きたのか。私にとっても大事な書店であり、関係者の無事と書店の存続を切に願うものとして、今わかる情報を整理しておきたい。

禁書、絶版本が充実した「二楼書店」

 銅鑼湾書店とは、香港の書店文化の一つである「二階書店(二楼書店)」(個人がテナント料の安い雑居ビルの二階の一室で開く趣味に走った書店)の代表的な店の一つで、1994年に開業した。いわゆる中国政府や共産党の権力闘争の内幕を“関係者が匿名で暴露した”というスタイルの怪しげな“禁書”を専門に売るということで有名なようだが、実は絶版で手に入りにくい文学書や台湾関係史、中国近代史本も充実している。

 銅鑼湾地下鉄駅D4口から出てすぐ、駱克道に面する雑居ビルの急な階段を上がったわずか30平米の小さな店だが、天井まで続く本棚にぎっしりと貴重な本が並び、真剣に発掘すれば何時間あってもたりない。台湾書籍の卸売業に従事していた林栄基が20万香港ドルの自前資金で開いた書店で、当初の品揃えは完全に林栄基の趣味に走ったものだった。

 私が香港駐在であった2001年ごろはまだ、本に立ち読み防止のビニールがかかっていなかったので、立ち読みの大陸からの客でいつも狭い店内がいっぱいであった記憶がある。2014年、テナント料の高騰にともない経営難に陥った同書店は、スウェーデン籍を持つ実業家・桂民海が投資して創った巨流伝媒集団に身売りされ、林栄基は雇われ店長となっていた。だが、それでも店に行けば、たいてい林栄基が相手してくれた。

 私がこの書店に最後に立ち寄ったのは2015年5月、林栄基はいつもの店長席におり、私は彼に最近の売れ筋の本や、数あるゴシップ本の中で読む価値がある本の指南をうけながら、十数冊の本を買った。「そんなに買うなら、電話一本くれれば郵送してやるよ。日本には郵送で本を買う顧客がたくさんいる」というのが、林栄基と交わした最後の会話である。その後、彼を含む書店関係者ら次々と姿を消した。彼から勧められた選りすぐりのゴシップ本をもとに書いたのが拙著『権力闘争がわかれば中国がわかる』(さくら舎)である。

彼らはなぜ突如、行方が分からなくなったのか。ほとんどの人が、中国当局が拉致監禁していると信じて疑わない。私もそう思っている。

 まず、銅羅湾書店には中国が不愉快になる本がたくさん売っていた。権力闘争の背景から党中央政治家の下半身スキャンダルの暴露本、文化大革命や天安門事件の詳細な記録、そして雨傘革命の記録。さらに、これは噂でしかないのだが、桂民海には共産党の“双規”に対する批判本を出す計画があって、それが中国共産党にとっては非常に警戒されたため、今回の銅鑼湾書店弾圧が起きたのではないか、と言われている。

「双規批判」「下半身醜聞」に激怒か

 双規は、共産党中央規律委員会による党員の取り調べ制度、司法制度外の党規に基づく制度で、逮捕状も拘留期限も決められておらず、拷問による死者まで出す前近代的制度と知識人の間で非難されている。人権派弁護士・浦志強が微博などのつぶやきをもって「民族の仇恨を扇動した罪」というわけの分からない容疑で逮捕、起訴され執行猶予付き判決が出たことは記憶に新しいが、浦志強が本当に冤罪逮捕された原因は、彼が双規の違憲性を世論に問おうとしたことではないか、と見られている。

 というのも、習近平政権の反腐敗キャンペーンは、もっぱら司法ではなく「双規」に基づいて行われている。習近平の汚職退治は司法手続きにのっとった正当なものではない。そのことを真っ向から批判されては、習近平政権が語る「憲政主義」がいかに胡乱なものか大衆の目にも明白になってしまう。

 もう一つの噂は、習近平下半身スキャンダル本の出版が計画されており、これに習近平が本気で怒ったという話だ。確かに習近平の香港出版界弾圧事件として一番最初に知られるようになったのは、亡命華人作家・余傑が書いた「中国教父習近平(中国のゴッドファーザー習近平)」の出版人となった姚文田が2013年10月に深圳に出張にいった際に、密輸容疑などで逮捕され、翌年5月に懲役10年という異例の重い判決を受けた例である。以降、習近平のスキャンダル本は何にもまして敏感なテーマの一つとなった。

 なぜ今、というタイミングだが、2016年が文化大革命開始から50年、終了から40年という節目と関係がある気がしてならない。もともと香港の「二楼書店」文化は、文化大革命で多くの書籍が禁書焚書となったとき、そういった書籍を秘密裡に香港に持ち出した本の虫たちが開いたところから始まっている。政治動乱を生き延びた貴重な書籍・文字資料たちが、ひっそりと売られている店でもあった。

 文革終了40周年目にして、文革をルーツとする香港二楼書店文化をこの際、徹底的に叩き潰すというのが中国側の意図かもしれない。今の習近平政権のイデオロギー統制は文革の再来ともささやかれる激しさで、文革再評価本にもかなり、神経をとがらせていると聞いている。文革批判が習近平批判につながる可能性を言う人もいた。かつて首相だった温家宝が、薄熙来の「打黒唱紅」キャンペーンを暗に「文革の残滓」と批判したことがあるが、薄熙来以上の毛沢東式イデオロギー統制ぶりに、習近平こそが「文革の残滓」とする声も出てくる中、文革再評価論も敏感なテーマとなっていた。

 こうしたタイミングで、香港“内幕暴露本”出版関係者に弾圧をかけることは、香港出版界を牽制するだけでなく、香港出版界にネタを提供してきた党中央内部の改革派知識人や官僚たちを震え上がらせる効果も狙っていることはいうまでもないだろう。

「無事の連絡」は身柄拘束の証左

 事件の経過を振り返える。

 最初に行方がわからなくなった桂民海はスウェーデン籍でドイツ在住。1964年寧波生まれの満族で、1985年に北京大学歴史系を卒業した秀才。本人も詩作などを楽しむ文人という。タイ・パタヤにリゾートマンションをもっており、そこに滞在中、何者かに拉致されたもようだ。マンションの監視カメラに不審な男性が映っているという。BBCの取材によれば、行方不明になった後、友人を名乗る4人の中国人がマンションの管理部門を訪れ、桂民海の自宅に入れるよう許可を求め、自宅のパソコンを持ち去ったという。このとき4人は「桂民海はカンボジアで友人とギャンブルをしている」と説明したという。これとほぼ平行して、本人から管理部門に電話連絡があり、「心配する必要はない」「友人と一緒にパソコンをいじっている」と話していたとか。これは明らかに、桂民海が何者かに身柄を拘束されているということの証左といえる。

 2番目に失踪した林栄基はすでに還暦を迎えた香港人。10月23日に最後にパソコンにアクセスしたのち、行方不明になった。香港にいるのか、深圳にいるのか分からないまま、林栄基の妻は11月5日に警察に夫の行方不明を届けたところ、その数時間後に本人から妻に電話があり「失踪ではないから、警察への失踪人捜査を取り下げるように」と言ったという。出入境当局は最後まで、彼の出入記録の照会に応じなかった。

 11月6日に一部海外メディアで銅鑼湾書店関係者4人の失踪が報じられてのち、やはり林栄基本人からそのメディアに対して「私は無事だ。しばらくしたら帰るから、心配しないでほしい」という電話がかかってきたという。同じ頃、ドイツの桂民海の妻に桂民海から同じ内容の電話がかかって来た。

 一方、銅鑼湾書店の書店員の張志平は妻が東莞に暮らす中国人で、ちょうど東莞の妻の家にいるとき、十数人の男が突然現れて連行したという。その後、本人から家族に電話があり「大丈夫だ」と連絡があった。呂波は銅鑼湾書店の株主の一人だが、やはり妻が深圳住まいの中国人で、妻の家にいるところを連行されたという。この連行状況から考えても、林栄基も桂民海も中国当局に身柄を押さえられ、いま中国国内にいることはほぼ間違いないと思われている。

英国籍の李波を香港内から“内地”へ

 最後に失踪した李波は11月の段階で、林栄基ら関係者4人の失踪にずいぶん怯えていた。だが、彼も12月30日を境にふっつりと消息を絶った。31日に銅鑼湾書店の株主でもある妻が、香港警察に失踪届を出したが、年明けに李波直筆のファクスが会社に届き、「急いで処理せねばならない問題があり、世間に知られないように内地に戻って、調査に協力している。しばらく時間がかかる。…失踪捜査届を取り下げるように妻に伝えてほしい」という伝言があった。

 李波は英国籍保持者だ。大陸に行くためのビザ替わりでもある「回郷証」は自宅に置いたままの失踪だった。となると、彼はどうやって大陸に入境できたのか。本人の同意あるなしにかかわらず、香港という一国二制度の建前がある地域で、堂々と外国人を中国の都合で大陸に移送したとしたら、これは中国がいまや北朝鮮並みの無法国家になりさがったということではないか。

 2013年から香港の出版界弾圧は始まっていたが、それでも、出版関係者が深圳に入ったタイミングで逮捕するという最低限のルールは守られていた。タイのような外国で、外国籍華人を拉致するのもひどい話だが、香港という一国二制度による自治を中国自身が約束している地域で、香港の司法を完全無視して外国籍を持つ人間が拉致、連行されてしまうなど、許されていいわけがない。

2014年秋、香港の若者が雨傘革命で公道を占拠しながら真の普通選挙要求運動を行っていたとき、日本の少年漫画「進撃の巨人」に香港の状況をなぞって語っていたことを思い出した。

香港の「最後の壁」が壊されかけている

 香港人は3つの壁からなる一国二制度に守られて“香港の繁栄”を享受していた。一番外側にあるのが自由主義経済の壁。真ん中にあるのが民主・言論の自由の壁。最後の砦が司法の独立の壁。一番外側の壁はすでに破られていた。雨傘革命は真ん中の壁が破られそうになって、あるいは破られ始めて、それを必死に食い止めようと戦っているのだ、と言っていた。あれから1年あまり、今、司法の壁が巨人に壊されかけている。

 さすが英国政府も英国籍保持者の李波の安全確認を香港政府と中国政府に求め、訪中していた英ハモンド外相が王毅外相との会談で持ち出したようだが、王毅外相は李波について「この男は中国公民であり、根拠のない推測をすべきではない」と反論している。この5人の失踪が中国当局による拉致であるというのが、本当に根拠のない推測であったならどれほどよいか。

 香港では10日、この事件に対し、5人の即時釈放を訴えて数千人規模の抗議デモが起きている。だが、李波の妻は、夫の安全を懸念して、個人的理由で内地にいったので、抗議デモに参加しないでくれと懇願していた。もはや香港人だけでは香港を守りきれなくなってきている。ここで、国際社会が何もアクションを起こさなければ、香港の一国二制度は完全に失われてしまうだろう。

 このまま、香港が食われてしまうのを、私たちは黙ってみていていいのだろうか。

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