1/13日経ビジネスオンライン 鈴置高史『やはり、韓国は核武装を言い出した 北の核実験で始まる「ドミノ倒し」』について

中国は北朝鮮への厳しい制裁は、ここにありますようにしないでしょう。西側世界との貴重なバッファゾーンです。厳しくすれば生活できなくなった北朝鮮人が確実に国境を超えて東北三省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)に入ってくるでしょう。朴槿恵は「統一大当たり」論を昨年主張しましたが、現実国際政治がまるで見えていません。流石妄想逞しい国民だけの国です。中国が簡単に統一を認める訳ありません。北朝鮮は政治体制では少なくとも一党独裁の中国共産党と同じく軍事政権(政権は銃口から生まれる)です。まあ、韓国も軍事独裁政権が長く続き似たようなものですが。でも米国も朝鮮戦争で5万人の米国人の血を流しましたから、そんなに簡単に逆に北朝鮮主導で統一はさせないでしょう。米中の思惑は現状維持がお互いに居心地が良い状態です。中国は金王朝が崩壊しても別の人間に据え変えようとするでしょう。韓国は「統一の邪魔をしているのは日本」とかすぐ日本のせいにするというか、何でも悪いことは日本のせいにする未熟な国です。日本は韓国を「敬して遠ざける」のが正しいスタンスです。

米国としては6ケ国協議で北朝鮮をコントロールするのは中国の責任にして丸投げしてきました。日本はイザと言うときのキャッシュデイスペンサーにするつもりでしょう。国民が厳しく監視しなければ、米中の思惑で日本が金を出す羽目になりかねません。日韓基本条約の対象範囲は朝鮮半島全体に及びますので、それこそ「蒸し返し」の議論になります。

核について米国の傘について当てにならないと感じているのは韓国人だけではありません。日本人も同じく感じています。二度と核を落とされないためには核抑止力が必要です。モーゲンソーの言う「核を持たない国は核を持つ国に降伏するしかない」はそのとおりです。P5は特権を持っている訳で、持たない国を隷従させ得ます。プーチンはウクライナ問題で核使用について言明したではありませんか。それに対し米国は何もしませんでした。やはり、他国を全面的に当てにして国防を考えるのは間違っていると思います。同盟は大切ですが、単独でもそれなりの装備を持たないと。日本も少なくとも核議論を深めるようにならねば。

記事

1月6日、北朝鮮が4回目の核実験を実施した。韓国はどう出るのか。

解決の意思がないオバマ

—前回の「韓国も核武装か、中国に走るか」の予想通り、北朝鮮が4回目の核実験をするやいなや、韓国で核武装論が語られ始めましたね。

  • 北朝鮮の核実験
回数 実施日 規模
1回目 2006年10月9日 M4.2
2回目 2009年5月25日 M4.7
3回目 2013年2月12日 M5.1
4回目 2016年1月6日 M5.1

(注)数字は実験によって起きた地震の規模。米地質研究所の発表による

鈴置:ええ、実験翌日の1月7日、朝鮮日報が社説「米中にも解決が難しい北の核、国と国民を守る非常措置をとらねばならない」(韓国語版)で「核武装を議論しよう」と主張しました。要約します。

  • 北朝鮮の核は大韓民国の存亡をかける最上級の懸案だ。だが、オバマ政権は解決の意思を失った状態だ。中国も北朝鮮の存在が自らにとって戦略的価値があるとのこれまでの立場を変えていない。
  • 政府は「国際社会と協力し、国連で追加の制裁措置を講じる」と言うが、それは20年間も繰り返してきた空しい話だ。
  • 高高度防衛ミサイル(THAAD)などの導入も進めるべきだが、いずれも核の前では限界がある。
  • 1991年の朝鮮半島非核化宣言の前後に撤収した、米国の戦術核兵器の再配置を積極的に議論することも可能だ。
  • 最近、米国の一部専門家の間では「中国とロシア、北朝鮮が核を保有している状況で、韓国など同盟国が核兵器を持つのがいいのか、米国が核の傘を提供するのがいいのか、検討せねばならない」との意見まで出ている。
  • 韓国の核武装は現実的には容易ではない。が、だからといって北の水爆実験まで見ながら「米国と協議さえできない」では、話にならない。

国民を守るには不可欠な核

—「米中も国連も頼りにならない」との韓国人の悲愴感が伝わってきますね。

鈴置:北朝鮮の核ミサイルは日本にも向けられるのですから、日本人ももっと悲愴な覚悟を固めるべきなのですが……。

 この社説が載った1月7日には、与党セヌリ党の幹部も相次いで核武装に言及しました。

 元裕哲(ウォン・ユチョル)院内代表が「自衛権の次元で平和的な核兵器を保有すべき時だ」と述べ、米国の戦術核の再配置を提案しました。金乙東(キム・ウルドン)最高委員は「核兵器の独自開発」に言及しました。

 これを受け、朝鮮日報は翌1月8日にも「独自の核開発を米国と議論すべきだ」との社説を載せました。「北の核への対応カード、全てを準備し、原点から検討する時」(韓国語版)です。2人の与党の大物議員の発言を引用したうえ、以下のように主張しました。

  • 与党セヌリ党から提議された「核保有論」について公論に付さねばならない。
  • 国際社会が容認しない状況で、韓国が独自に核開発するのは現実的には難しい。しかし、国の安寧と国民の生命を守るには不可欠であることに関し、米国とも論議を始める必要がある。

政府の言いにくいことは与党が

 なお、この社説の日本語版の見出しは「核保有、韓国政府は米国と真摯に意見交換を」です。「核保有」という言葉も入れ、より鮮明です。

 韓国政府は、本音を語りにくい時は与党首脳部に語らせます。今回もそのケースではないかと思います。

 韓国政府は自分の置かれた際どい状況と、必死さを訴えることで国際社会の強力な対北制裁を引き出したい。しかし、あまり露骨に核武装を語れば、世界からの共感を得にくくなります。

 一方、朝鮮日報はもともと、シニア記者のコラムで核武装を主張してきました(「一歩踏み出した韓国の核武装論」参照)。

 それがついに、与党執行部の発言を引用することにより、核武装を議論しようと、社説ではっきり呼び掛けるに至ったのです。

核のない日本は降伏した

—ほかの新聞の社説は?

鈴置:中堅紙の文化日報も、1月7日の社説で明確に核武装を検討すべきだと書きました。「対北政策のパラダイムを『全方位核封鎖』に変えよ」(韓国語)です。

 同紙は事実上、対北援助の窓口になっている開城工業団地の見直しや、THAADの導入、対北拡声器放送などの心理戦の強化とともに「自衛的核武装」を唱えました。ポイントを引用します。

現実主義的国際政治学の父、ハンス・モーゲンソー(Hans J. Morgenthau)は「非保有国が核保有国に刃向かっても滅ぼされるか、降伏するか、どちらかを選ぶしかなくなる」と予測した。

核の抑止は核に頼るしかないというのが核政治学の基本だ。核を持たなければ、相手の慈悲心に生命と運命をさらすしかない。

国際政治の力学上、独自の核武装が難しい場合は米国の戦術核を再導入する問題を議論すべきだ。(北の核放棄に向けて)中国を圧迫する手段にもなる。

大韓民国は今「まさか」との安易な考えと「米国など国際社会が解決してくれるだろう」といった依存心を捨てなければならない。

 なお、モーゲンソーは「核を持たない国は核を持つ国に降伏するしかない」具体的な例として、広島と長崎に原爆を落とされた後の日本を挙げています。日本語では岩波文庫の『国際政治(上)――権力と平和』(292ページ)で読めます。

中国への説得材料にも

 東亜日報は1月7日の社説「北の4回目の核実験、朴大統領は米中から『最終的な制裁』を引き出せ」で「核なしで大丈夫なのか」との間接的な表現ながら核保有を検討すべきと主張しました。

  • 朴大統領は増強された北の核の脅威に対し、核なしで対処できるのか、検討する必要がある。米国の核の傘の公約が確固としたものだとしても、有事の際に即座に効果があるとは壮語できない。

 中央日報はやや遅れて1月10日の社説「核実験の対北朝鮮制裁、中国は答えよ」(中央SUNDAY第461号、日本語版)で「核武装」に触れました。

 ただ、同紙の意見というよりも「北朝鮮に対する影響力が最も大きい中国がその核を抑え込むべきだ」と主張する中で「北の核を放っておくと韓国が核武装し、周辺国(日本)も追従するよ」と、中国への説得材料として言及するに留めています。以下です。

  • 習慣のように繰り返される北朝鮮の「核挑発」にブレーキをかけるためには中国が断固とした姿勢を見せなくてはならない。今回も口頭での警告程度にとどめてやり過ごしてしまうなら、中国が期待する韓半島非核化は遠ざかるだろう。
  • そうでなくても今回の北朝鮮の核実験により韓国では保守層を中心に「韓国も自衛次元の核開発に乗り出さざるを得ないのではないか」との主張が出ている状況だ。周辺国の「核ドミノ」が現実化するならば、北東アジアの平和を脅かす災いになる可能性が大きい。

 濃淡はありますが、保守系紙はほぼ「核武装論」を社説で訴えるか、言及したのです。半面、左派系紙は一切それに触れていません。

国民投票で決めよう

—保守系紙は本気なのでしょうか。

鈴置:米国や中国に対し「我が国は必死なのだ。核放棄に向け北への圧力を全力でかけてくれないと、核武装しちゃうよ」と脅す部分も相当にあると思います。例えば、中央日報の社説はブラフとして核武装を使う臭いが濃い。

 ただ、国際社会が実効性ある対北朝鮮制裁に乗り出さないと、韓国の国論は次第に「本気の核武装論」に傾いていくと思います。

 韓国各紙が指摘する通り、米国の核の傘がどれだけ有効か韓国人は確信が持てないからです。北朝鮮が米国まで届くミサイルを持ったと思われる今、米国人が核ミサイルを撃たれるリスクを冒してまで韓国を守ってくれるのか、韓国人の疑いが増しているのです。

—核武装論をいち早く唱えていた親米保守の趙甲済(チョ・カプチェ)氏は4回目の実験後、どう主張していますか?

鈴置:ご本人の記事はもちろん、保守派の核武装論など対北強硬論で「趙甲済ドットコム」(韓国語)は溢れ返っています。

 さらに趙甲済氏らが率いる保守団体、国民運動本部は1月10日に「自衛的核武装をすべきか、国民投票で決めよう」との声明を発表しました。

 この声明は「2016年4月の総選挙の際に、自衛的な核武装に乗り出すかを問う国民投票を実施しよう」と呼びかけるなど、具体的な行動指針を打ち出しました。

3分の2が核武装に賛成した

 2013年2月の北朝鮮の3回目の核実験の後の世論調査では、約3分の2の韓国人が核武装に賛成しています(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

 今回聞けば、それ以上の割合の韓国人が賛成すると思われます。3回目の核実験の直後、韓国メディアはほとんど核武装に触れませんでした。一方、先ほど見たように、今回は保守メディアがはっきりと主張しています。

 これから見ても、趙甲済氏らは本気でしょう。核武装するだけではなく、この際、一気に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制を潰してしまおう、とも主張しています。

—今はブラフの部分があるにしろ、本気になりかねない韓国の核武装論。米国や中国はこれにどう対応するのでしょうか。

鈴置:米国は韓国や日本に対し、改めて「核の傘」を保障しました。「(1月6日に)カーター米国防長官は韓国に対する米国の堅固な防衛公約を再確認した。米国の公約には米国の拡大抑止力のあらゆる手段が含まれる」と、韓民求(ハン・ミング)国防相が1月7日に表明しました。

 聯合ニュースの「米国が韓国防衛の公約を再確認 共同報道文発表」(1月7日、日本語版)が報じています。

 同日にはオバマ大統領も朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に電話し「韓国への防衛公約は揺るぎない」と述べたうえ、北朝鮮への「包括的制裁」も約束しました。

 ただ、米国がいくら「包括的制裁」を約束しても、それに中国が参加しない限り効果は薄いのです。米国も軍事的な制裁までするつもりはなく結局、経済制裁が軸になります。

 が、過去の度重なる経済制裁により、北朝鮮経済は日本を初めとする西側諸国への依存度を急激に下げ――つまり、中国に全面的に依存するようになってしまったからです。

本気で制裁しない中国

—中国は北に核を放棄させることができるほどに強力な経済制裁を実施しますか?

鈴置:しないと思います。そんなに強力な制裁をかければ、北朝鮮の体制が崩壊しかねないからです。中国にとって北朝鮮は米国との緩衝地帯なのです。そんな貴重な地帯を容易に手放すわけがありません。

 中国が「北朝鮮消滅」のリスクを冒すのは、米韓同盟が破棄されるか最低限、在韓米軍が完全に撤収されることが保障された時と思います。

 逆に言えば、中国は「北朝鮮の核武装」を「米韓同盟破棄」へのテコに利用する可能性があります。

 北の核廃棄を要求する米国や韓国、あるいは日本に対し中国は「韓国が米国の核の傘によって守られているから北朝鮮も核を持とうとするのだ」と反論するのです。

 これまで「北朝鮮の非核化」を求める韓国に対し、中国の答えは常に「朝鮮半島の非核化」でした。韓国にさしかけられた米国の核の傘に対し、拒否権を発動するための布石を敷いてきたのです。

韓国の国論は分裂へ

—ではもし、中国が「米韓同盟をやめるのなら北朝鮮の核を廃棄させる」と言い出したら、韓国はどうするのでしょうか。

鈴置:国論が分裂するでしょう。まず、趙甲済氏ら一部の親米保守は――反中保守と呼んでもいいと思いますが、彼らは核武装しつつも米韓同盟を維持する方策を模索すると思います(「『核武装中立』を覚悟する韓国」参照)。

 それが不可能なら「核武装中立」もやむを得ない、とは考えているでしょうが。ともかくも、中国の属国に戻るのはごめんだと思う人がいます。米国との同盟を打ち切って中立化すれば、中国化してしまうとの懸念があるのです。

 一方、保守の中にも中国側に接近することで、北の核を解決してもらおうと考える人がいます。彼らは米韓同盟破棄を認める可能性があります。当然、反米色の濃い左派の中からも、それに賛同する人が出るでしょう。

朝鮮半島全体が中立化

—まさに、北の核実験を引き金に南北朝鮮がともに中立化すると予測した近未来小説『朝鮮半島201Z年』ですね。

鈴置:各国の利害を考えて“国際政治のチェス”をやると、そうなってしまうのです。この小説では中国が「朝鮮半島の非核化と中立化」を言い出し、米国がそれをのみます。北朝鮮の核の脅威が深刻になってくると現実世界の米国も、それをのみかねません。

 北朝鮮の4回目の核実験は、もちろんそれだけで東北アジアを揺るがす大ニュースです。新たな核武装国が登場するのですから。

 でも、その影響が韓国から米国や日本へと、広がっていくことを見落としてはなりません。

(次回に続く)

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