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『有色人種化する米国、“弱者”となった白人 トランプが手を貸した白人至上主義者たち最後のあがき』(8/29JBプレス 高濱賛)、『白人至上主義とトランプ氏の資質』(日経ビジネス2017年8月28日号The Economist)について

8/30増田俊男氏記事<軍産の罠とトランプ(のバック)の罠>. この記事を読みますと何が真実か分からなくなります。またナショナリストVSユダヤ・グローバリズムとの戦いの話も加わりますと。

http://www.chokugen.com/opinion/backnumber/h29/jiji170830_1188.html

米国の二極分化がどんどん進んでいっているように思われます。別にトランプ時代から始まった訳でなく、クリントン時代に企業利益の還元が株主に大きくなってからのことと思います。貧富の格差は大きくなるにも拘わらず、アファーマテイブ・アクションで黒人層が優遇を受け、白人中流層の没落が続いてきたせいと考えています。このように動かしているのがグローバリストかどうか分かりませんが。

でも、黒人奴隷も善悪の判断は別にして、歴史の一コマでしょう。それをなかったことにはできません。歴史を顧みて、今は正しく生きられるようにしないと。像を壊せば、過去の歴史が消えてなくなる訳ではありません。況してやリー将軍は敗軍の将です。日本で言えば西郷さんの像を壊すようなものでしょう。日本人の感性から言えば、判官贔屓もあり、敗軍の将にも温かく声援を送るのが普通です。過去を現在の価値基準で断罪するのは間違っています。高山正之・福島香織両氏の対談集『アメリカと中国が世界をぶっ壊す』の中(P.32~33)に、高山氏が「戦後もこのメディアによる支配は続いた。ただ、支配者がホワイトハウスだけでなくウオ—ルストリートとかグローバリズムの賛同者とか余計な勢力が登場してきたが、基本的に支配層と密着したメディアが世論を操作する仕組みは変わっていなかった。

それが今回大きく変わった理由の一つはアレクシ•ド・トクヴイルの語った「アメリ力の民主主義」の形が変容したことが挙げられる。

それは彼の本の中にはっきり書いてある。彼は米国人が使う黒人奴隸や米国人があらたに資源を求めていく過程で次々殺していくインディアンなど有色人種について「彼らは家畜と同じだ。白人に労働力を提供し働く。しかし彼らが働かなくなったりすれば、それはもう用がない。殺してしまえばよい」。トクヴイルに限らずモンテスキユ―(三権分立を説いたフランスの哲学者) ですら「黒人が同じ人間とは考えられない。なぜなら彼らは貨幣よりガラス玉を喜ぶ」と語っている。つまりトクヴイルのご託宣も白人国家アメリカについて語られていて、その限りで民主主義は機能し、欧州のいい手本になると言っている。 しかし現実は違う。結局、黒人奴隷も黄色い奴隸苦力もヒスパニックも殺しつくせなかった。トクヴイルの描いた将来にはいないはずの有色人種が、いまや大きな投票権を持つ存在になってきた。

民主党政権はそれを薄々ながら知っていた。それでたぶらかしてきた。白人種優位を言葉の上だけでも否定して見せるポリティカル・コレクトネスとかマイノリティと称する本来なら淘汰すべき輩に一定枠の大学入学枠とか、就職枠を提供するアファーマティブ・アクシヨンとかを考え出しては、彼らを騙してきた。もちろんその先鋒として常にメディアがあった。

黒人大統領を選び出したのも、その騙しのテクニックの一つだったのだろうが、それもそろそろ限界にきていた。

その時期にマーク.レヴィンソンの言う1973年の亡霊が重なった。有色人種が能力以上に優遇され、社会保障が充実され、この国を支えてきたと思っていた働くアメリカ人がもはや何の夢も持てなくなった。これが今回の大統領選の過去とは大きく違う環境だった。しかし肝心のメディアだけはその環境変化を読めず、もっと言えば大統領選の結果もいまだに信じられない状況にある。我々が国を動かしてきたのに。世論をつくってきたのに。なぜ世論が背を向けたのか。」とありました。

モンテスキユ―は1700年前半、トクヴイルは1800年代前半の人間ですから、リー将軍の像を倒すデモに参加している白人は彼らの罪を償うべきとなるのでは。

中国や朝鮮半島が日本を歴史戦において糾弾するのにも同じ匂いを感じます。勿論彼らの言うことは歴史の事実ではなく、でっち上げですが。いつまでも過去に拘るべきではなく、そこから何を学ぶかでしょう。

高濱記事

米バージニア州シャーロッツビルで、車が人混みに突っ込んだ現場で、応急手当を受ける人たち(2017年8月12日撮影)。(c)AFP/PAUL J. RICHARDS〔AFPBB News

「シャーロッツビルの騒乱」で脚光を浴びた極右集団

ドナルド・トランプ氏が米大統領になって大きく変わったことがいくつかある。

その1つは、これまで社会の片隅で息をひそめていた白人極右集団が白昼堂々と集会やデモを始めたことだ。なぜか――。カリフォルニア大学バークレイ校の白人社会学者はこう一刀両断にする。

「黒人大統領オバマの8年間の政治下で不公平感・被害妄想を増幅させた白人極右のバックラッシュ(反動)だ。彼らはトランプに自分たちと同じ『体臭』を嗅ぎ取った。それで安心して隠れていた穴からぞろぞろ出てきたのだ」

米メディアが「White Supremacist」(白人至上主義者)と呼ぶ、「肌の白いことこそが唯一至高の存在だ」と主張する白人優越主義集団。

一般的には低学歴、低所得のプア・ホワイトが多いとされている。十代から高齢者まで年齢制限はない。ネット上で連帯感を培っている。かなりの会員を擁するものから個々人のものまでざっと500団体。ツイッターのフォロワーは約5万人。

主だったグループとしては、ネオ・ナチス、人種差別秘密結社のキュークラックスクラン(KKK)、そして今メディアから脚光を浴びている「オルト・ライト」がある。

このグループの旗艦的存在とされる超保守メディア「ブライトバート・ニュース」の会長兼編集主幹だったスティーブ・バノン氏は8月18日、事実上解任されるまでトランプ大統領の首席戦略官兼上級顧問を務めていた。

今回の「シャーロッツビルの騒乱」を巡るホワイトハウスの対応のまずさの責任を取ったとの見方も出ている。

大統領の側近中の側近が「オルト・ライト」となれば、白人至上主義者たちが「トランプ大統領に自分たちと同じ『体臭』を感じた」としても不自然ではない。

「白人至上主義者」に理路整然とした政策目標などない。何かトラブルがないかをネット上で探し回わって、面白いと思えば動員をかける。

その意味で、バージニア州シャーロッツビルのリー将軍の銅像撤去問題は「白人至上主義者」たちにとっては格好の「獲物」だったわけだ。

喧嘩両成敗を批判されたトランプが猛反発

トラブルはトラブルを呼ぶ。「白人至上主義者」を極右とすれば、今米国では極左も台頭している。代表格は「Antifa」(Anti-Fascism、反ナチス)と自称する無政府主義者たちだ。

極右が姿を見せる場に現れては武力衝突も辞さない構えなのだ。まさにヤクザ同士の抗争に似ている。

シャーロッツビルは、名門バージニア大学がある静かなカレッジタウン。南部とはいえ、リベラルな知識人が多く住んでいる。そこに極右や極左は住んでいない。

騒乱は、外から集まった極右と極左の武闘に端を発し、ネオ・ナチスに傾倒した20歳の白人男が何を思ったのか、群衆めがけて車を暴走させ、普通の中年女性が轢き殺された。負傷者も多数出た。

事件直後、トランプ大統領は「暴力沙汰は双方に非がある」とこうコメントした。

「集まった白人の大半はリー将軍像撤去への抗議が目的だった。(撤去の理由が同将軍が奴隷制度を支持したから像を撤去するのであれば)今週(撤去するの)がリー将軍なら来週は(奴隷を所有していた)ジョージ・ワシントン初代大統領で、次はトーマス・ジェファーソン第3代大統領か」

間違ってはいないが、バノン氏を超側近として侍らせている大統領の発言ともなれば、「白人至上主義者」に理解を示していると忖度できる含みのあるコメントだった。

この発言に主要メディアは「大統領は極右集団の言動に同情的だ」と一斉に集中砲火を浴びせた。大統領は、その後1週間経っても怒りが収まらないのか、発言を正当化し、主要メディアの偏向報道を激しく罵った。

銅像撤去を提案したのは黒人市議会議員

リー将軍銅像は1924年、シャーロッツビル出身でシカゴで財を成した篤志家、ポール・マッキンタイヤ―氏が全額負担して作ったリー公園内に建てた。当時反対する人はいなかった。ちょうど排日移民法が成立した年だ。今から93年前のことだ。

それがなぜ今頃、銅像の撤去となったのか。

撤去を言い出したのは5人いる市議会議員の1人、ウエス・ベラミーという教育学博士だった。市議会初の黒人議員だった。昨年3月のことだ。

これまで90年以上、誰も関心を示していなかったリー将軍像。撤去の理由は、「リー将軍の像は奴隷制度のシンボルだ」という黒人市民からの陳情だった。

リー将軍は南部に住む白人にとっては英雄だった。日本で言えば、「国賊」のレッテルを貼られた西郷隆盛のような人だった。

市議会はその後6か月にわたる公聴会を開いて撤去の是非について市民の声を聞き、最後に第三者委員会に是非を委ねた。最終決定は市議会だが、2月6日の採決では賛成3、反対2で辛くも承認された。

ユダヤ系市長は最後まで反対した。撤去した後どうするか、博物館内に移すか、私有地に設置するか、まだ決まっていない。

(参照=Charlottesville City Council votes to remove statue from Lee Park,” Chris Suarez, www.dailyprogress.com., 2/6/2017)http://www.dailyprogress.com/news/local/charlottesville-city-council-votes-to-remove-statue-from-lee-park/article_2c4844ca-ece3-11e6-a7bc-b7d28027df28.html

「異人種間結婚禁止法は白人至上主義を守るための盾」

今回紹介する新著、「Loving: Interracial Intimacy in America and the Threat to White Supremacy」。「白人至上主義」が本来どういう意味を持っているかを理解するうえでタイムリーな本である。

Loving: Interracial Intimacy in America and the Threat to White Supremacy By Sheyll Cashin Beacon Press, 2017

本書の内容を忖度してタイトルを意訳すればこうなる。

「黒人女性に恋をし、非合法な結婚をしたラビングという名の白人男性の物語」

副題は「米国内での異人種間の親密な関係と白人至上主義を脅かすもの」となる。

著者シェリル・キャッシン氏は白人の父親と黒人の母親との間に生まれた。ジョージタウン大学法科大学院教授。人種問題、公民権法の権威である。バンダービルド大学を経て、ハーバード、オックスフォード大学院で博士号を取得している。

本書の舞台は、今まさに全米が注視しているシャーロッツビルから170キロ南方のセントラル・ポイントという田舎町だ(今なら車で2時間かかる程度の距離だ)。

そこで生まれ、育ったリチャード・ラビング氏は子供の頃から隣接する黒人居住地に住む黒人の子供たちと遊び、人種的偏見など全くない子供だった。

地元の高校を出て大学では歯学部に進み、歯科医になる。幼馴染みのミルドレッドという黒人女性と恋に落ち、結婚しようとした。

当時バージニア州をはじめ南部17州には白人と黒人とが結婚することを禁じた「異人種間結婚禁止法」(Racial Integrity Act of 1924)があった。

そこでラビング氏はミルドレッドさんと175キロ離れたワシントン特別区で結婚。その後地元に戻ったが、戻って数日後、保安官が突然やって来て、「白人の男を夫にした」としてミルドレッドさんを逮捕、刑務所にぶち込んでしまった。

その後2人は事実上の「州外退去命令」を出され、ワシントンに居を移した。だが田舎育ちの2人にはワシントンは合わなかった。

同情する人権団体の支援を得て、2人は「異人種間結婚禁止」の州法が米国憲法に違反するとしてバージニア州政府を訴えたのだ。米史上に残る「ラビング対バージニア州」訴訟である。

そして最高裁は1967年、同法を違憲とする歴史的判決を下す。

著者によれば、「White Supremacy」(白人至上主義)という言葉が司法で最初に使われたのは、「異人種間結婚禁止法」判決だったという。

当時最高裁長官だったアール・ウォーレン氏がこのバージニア州法がなぜ制定されていたのかについて判決文で初めて明言化する。

「この州法は、厳格な人種分離政策を取ることで白人至上主義(体制)を守るために制定された法律である。これは明らかに違憲である」

つまり、もし白人と黒人とが結婚すれば白人は優越だと考え実施してきた体制を脅かしかねない。そのため法律で禁じたのが南部における奴隷制度や人種分離政策だったのだ。

奴隷制度はまさに白人至上主義思想を普及させるのに役立った。それは米憲法とは相いれない法律であり、違憲だ、というのがウォーレン長官の解釈だった。

「欧州から米国に移住してきた白人とその子孫だけが地球で至上な人種なのだ」とする「白人至上主義」。

それを支えてきたはずの「盾」は、時の流れとともに消滅していった。南北戦争で北軍が勝ったことで奴隷制度が廃止され、公民権法によってすべての国民は法の下に平等となった。

急ピッチで非白人化する多民族国家

「シャーロッツビルの騒乱」でにわかに脚光を浴びた「白人至上主義」だが、全米がそれに恐れおののいているわけではない。

ただ、オバマ政権の時と異なるのは、「トランプ大統領が『白人至上主義』に対しある種の親近感を持ち、共鳴はしないまでも理解しようとしていることが国民には薄々分かってしまっている」(前掲のバークレイの社会学者)という現実だ。

そのことが「白人至上主義者」を勢いづかせてしまっているわけだ。

少なくとも筆者の住んでいるカリフォルニア州など西海岸や東部では「白人至上主義者」の影はどこにもない。

特にカリフォルニア州の場合、人口構成は着実に白色から黄色、茶褐色へと塗り替えられ、異人種間結婚が加速することで「白人至上主義」の住み家はなくなりつつある。

自らのアイデンティティの拠り所を「白人至上主義」に求めた白人にとって、おそらくカリフォルニア州は住みずらいに違いない。

著者のキャッシン博士はこう述べている。

「私の両親の結婚が認められた1960年代後半の世論調査では、異人種間結婚を認める米国市民は4%にすぎなかった。しかし判決から50年経った現在、87%にまでなっている。『白人至上主義』を堅持するための道具だった異人種間結婚を禁じた法律も習慣も過去のものになってしまった」

「黒人だけでなく、アジア系、ラティーノの移民が集中豪雨のように入り込み、米国の人口構成を激変させている。『白人至上主義』などは大波に流される木くずのようなものだ」

「今後異人種間結婚は、異人種間の養子縁組や恋愛、新たな移民による人口構成の変化などと相まって増えるに違いない。新たな傾向に敏感な白人と肌の浅黒い人たちとの提携は深まることはあっても弱まることはない」

「白人至上主義者」たちのいら立ちなどどこ吹く風と言わんばかりに、多民族国家は急ピッチで非白人化していくことだけは間違いなさそうだ。

Economist記事

白人至上主義者と市民との衝突事件をめぐって、トランプ米大統領の発言は二転三転した。同氏には政治的な能力も道徳的な感性もなく、大統領にふさわしい資質を欠くことが明らかになった。今後、議会共和党は同氏に期待をかけるのをやめ、言動を厳しく抑え込んでいくべきだ。

米ボストンで8月19日、極右団体に反対する市民らがデモを行った。4万人が参加したとみられる(写真=Spencer Platt/Getty Images)

ドナルド・トランプ米大統領を擁護する人々は、2つの理由を挙げる。一つは、同氏はビジネスマンで、政府の行き過ぎを抑えることができるというもの。もう一つは、左傾化した既存のエリート層が作った「ポリティカリー・コレクト(編集部注:差別に基づく表現などをなくそうとする運動)」のタブーを打破し、米国を再び偉大な国へと高める力になる、というものだ。

これらの主張は、当初から希望的観測にすぎないとみられていた。そして、8月15日に行われた記者会見で、この希望は砕け散った。

白人主義への姿勢を二転三転

トランプ氏はこの日、米バージニア州シャーロッツビルで起きた衝突事件について、3度目の記者会見に臨んだ。同地では12日、白人至上主義者らが、南北戦争で南軍を率いたロバート・リー将軍の銅像を撤去する計画に抗議してデモ行進を実施。これに反対する人々(左翼を含む)と衝突した。

トランプ氏は14日に開いた2度目の会見で、白人至上主義者を非難する原稿を準備して読み上げたが、15日の会見ではその発言を後退させた。原稿のない発言の中で「双方に」非があったと荒々しい調子で強調したのだ。新任のジョン・ケリー大統領首席補佐官は、この会見を落胆した様子で見守っていた。トランプ氏の本心がどちらの側に近いか、疑いの余地はなかった。

同氏自身は白人至上主義者ではない。繰り返しネオナチを批判しているし、シャーロッツビルの衝突で、ヘザー・ハイヤーさんの命が奪われたことを非難する発言もしている。しかし、二転三転する発言から米国人が受け取ったメッセージは、恐ろしいものだった。「我々の大統領は、この国を救うどころか、政治的に無能で、道徳的に鈍感で、その職務にふさわしい気質を持ち合わせていない」

まず、無能さから見ていこう。トランプ氏は昨年の大統領選で、既存の政治家を攻撃する運動を展開し、大成功を収めた。しかし今回、「ナチスを非難する方法を見つける」という最も簡単な政治テストでしくじった。12日に行った最初の記者会見で曖昧な言葉を発した後、14日の会見では大統領に求められる発言をしたが、その成果を、翌日には台無しにした。

この結果、右派メディアの米FOXニュースと左派メディアの米マザー・ジョーンズが同じ批判を大統領に投げかける前代未聞の事態となった。米国の経済界を引っ張る経営者らも、トランプ氏の助言機関からそろって離反し、政府は助言機関の解散を発表した。

一方、白人至上主義組織クー・クラックス・クラン(KKK)の元最高指導者であるデービッド・デューク氏はトランプ氏への支持を表明した。今後、極右団体は活動を全米に広げるだろう。トランプ氏は、彼らの街頭活動を封じ込め、治安を維持するという課題を難しくしてしまった。これがもたらす悪影響はほかの政治課題にも及ぶ。

そもそも15日の記者会見は、米国のインフラ整備計画がテーマだった。インフラの整備には民主党の協力が不可欠だ。トランプ氏はこのための努力に無用の後退を強いた。

同様のことがこれまでも繰り返されてきた。6月の「インフラ週間」は、大統領選にロシアが介入した疑惑をめぐる捜査のため立ち消えになった。この捜査も、トランプ氏が腹立ち紛れに米連邦捜査局(FBI)長官を解任したことがきっかけで始まった。

公約だったオバマケア(医療保険制度改革法)の撤廃がかなわなかったのも、反対する共和党議員を説得するだけの知識とカリスマ性をトランプ氏が欠いていたことに一因がある。この敗北について同氏は、法案を可決するのに必要な協力を上院の共和党指導者がしなかったと非難した。トランプ氏がしてきたのは、この程度のことだ。

トランプ氏の政治的な無能さの根は、道徳面での鈍感さにある。極右団体の活動に抗議した人々の一部は、確かに暴力的だった。同氏が発言の中で、その暴力に対する厳しい言葉を差し挟んでもおかしくはなかった。だが、極右団体の活動と、それに反対する市民の活動を同列に論じたことは、同氏の考えの浅さを表している。

動画を見る限り、行進する者たちはファシズム的な文言が書かれた横断幕を掲げ、たいまつをかざし、杖や楯を振り回し、「ユダヤ人に追い出されはしない」と声をそろえて繰り返していた。一方、反対派の大半は一般市民で相手方に対して叫び返すのみだった。

市民がこうした行動に出たのは正しい。白人至上主義者やネオナチが実現を熱望するのは、人種差別に基づく社会だからだ。米国はまさにこれを阻止するために世界大戦を戦った。

トランプ氏は、南軍の将軍の銅像を守るために行進する人々を心から擁護しているように見える。このことは、同氏が持つ世界観の大きな部分を、白人の腹立ちや古くさい懐古趣味が占めていることを表している。

これらすべての問題の根本は、トランプ氏の気質にある。国が困難に直面している時、大統領がなすべき仕事は国民を一つにすることだ。トランプ氏は14日の記者会見でその努力をうかがわせたが、それを24時間続けることさえできなかった。

一国の大統領は、自分の点数稼ぎにとどまることなく、国益のために行動しなければならない。しかしトランプ氏は、つい最近自分に投げかけられたささいな非難にしか目を向けることができない。自分が受け継いだ大統領の職責を大切に守る必要があることを理解せず、自分の栄誉と、自らが成し遂げたと思ったことを手柄にすることだけを気にかけている。

歴代の米国大統領には様々な人物がいたが、みな大統領府を掌握していた。ロナルド・レーガン氏には道徳的な指針があった。自分の能力をわきまえ、個々の政策の詳細は部下に委任した。リンドン・ジョンソン氏は難しい人物だったが、多くの功績を残すだけのスキルを持ち合わせていた。しかしトランプ氏にはこのどちらもない。性格を変えられないことも明らかになった。

共和党はトランプ氏を抑えよ

これは危険な状態だ。米国は2つに割れている。トランプ氏が北朝鮮との核戦争の危険性に言及し、ベネズエラへの軍事介入を検討し、シャーロッツビルでの衝突について曖昧な言動を繰り返してもなお、共和党支持者の8割は同氏を支持している。この人気の高さが米国の統一を一層困難にしている。

ここで浮上するのは、公職にある共和党員はトランプ氏をどう扱うべきかという問題だ。政権内にいる者は難しい選択に直面している。辞任に傾く者もいるだろう。しかし、大統領に助言する立場にある人々、特に3人の将軍(ジェームズ・マティス国防長官、国家安全保障会議を率いるH.R.マクマスター大統領補佐官、ケリー首席補佐官)は、最高司令官(編集部注:米大統領を指す)が本能のままに取る行動を誰よりもうまく抑え込める立場にいる。

議会共和党が取るべき選択肢は明らかだ。多くの議員は、トランプ氏が共和党の政策を進めてくれるだろうと考え、同氏をしぶしぶ支持してきた。しかし、そのかいはなかった。トランプ氏は共和党員ではない。自分を主人公に据えたドラマのただ一人のスター俳優なのだ。共和党議員は、同氏に運命を託すことで、米国と共和党を傷つけている。

トランプ氏は、平易な言葉遣いをすべく粗野な努力を続けている。これは、国民生活を害することにしか役立っていない。経済改革から何か成果が得られたとしても、その代償は容認しがたいほど大きなものになるはずだ。確かに現在、米国の株式市場は好調で失業率は低い。だが、これはトランプ氏が取り組む政策が上げた成果というより、世界経済と米国のテクノロジー企業、ドル安のおかげである面が大きい。

共和党は、その気になればトランプ氏を抑え込むことができる。同氏が傍若無人な振る舞いに出た時は、何か望ましい成果が得られると期待して甘やかすのではなく、その行動をとがめなければならない。今回、共和党の中でも最も優れた者たちはそうした姿勢を見せた。ほかの者も見習うべきだ。

©2017 The Economist Newspaper Limited Aug. 19-25, 2017 All rights reserved.

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『大物・王岐山の進退、決めるのは習近平か米国か 指導部リスト漏れの特報、米国による海航の謎暴き…思惑は?』(8/30日経ビジネスオンライン 福島香織)について

8/29看中国<港媒:十九大重新斷代 頂層人數有變(圖)=香港メデイア:19回共産党大会では古き時代とは変わってトップ層の人数も変更>。これによれば習近平への権力集中と政治局常務委員の数を5人にすると。人大委員長、政協主席は常務委員にならず、総ての人事は習が決めるとも。

https://www.secretchina.com/news/b5/2017/08/29/833703.html

8/28ZAKZAK 河添恵子氏記事<習政権、朝日新聞見捨てたか 「新チャイナセブン」読売スクープ報道の深層 河添恵子氏が緊急リポート>。記事にありますように朝日は中国からも見限られたとすれば、読者が減って利用価値がなくなったと思われているからでしょう。今後も押紙訴訟でダメージを受け、潰れた方が良いと思っています。ただ、代わりに読売と言うのも。ナベツネの方が使いやすいとの判断でしょうか?でもそんなに長くは生きてはいられないでしょうけど。新聞よりTVの影響力のほうが大きいですが、外国政府の人事に関心を持っている人は少ないので、文字媒体を使うことになります。

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170828/soc1708280007-n1.html

8/31ロイター<アングル:中国の外資系企業、共産党の「内部介入」を懸念>。何時も言っていますように、中国の合弁企業には「董事(取締役)全員一致の原則」があり、少なくとも一人は中国人を董事にしないといけませんので、重大決議事項は中国人の意向を無視しては経営できません。ただ、今までは合弁企業内にも党書記がいても、目立った動きはしていなかったと思います。これも習の強権政治、監視強化の流れの一環でしょう。やがて習は国内の抑圧政治の目をそらすため戦争に打って出るかもしれません。そのためには兵站部隊となる企業が指揮に随う必要があります。国防動員法だけでは実際運用する場合、機敏に動けず、不断から企業を飼いならしておくつもりでしょう。

http://jp.reuters.com/article/china-congress-companies-idJPKCN1BA07R?il=0

共産党の19回大会後の人事がどうなるかは分かりません。常務委員も5人になるのか7人のままか、はたまた習が党主席になり絶対権力を保持し、常務委員会も人代と同じく追認機関になるだけかどうか。10月18日に大会は開かれますので、それまで待つしかありません。福島氏の言うように王岐山がどうなるかは楽しみです。米国も郭文貴や令完成をもっと利用すれば良いのに。ドンドン令完成から得た情報をリークして共産党の統治の問題を明らかにした方が良いでしょう。

記事

大物政治家・王岐山の進退は習近平政権の今後に大きな影響を与える(写真:ロイター/アフロ)

王岐山が久々に公の場に姿を現した。8月24日午前、北京の八宝山で行われた党中央高官の安志文(98歳)の葬儀に参列したのだ。6月22日以降、王岐山の動静は絶えていた。王岐山はこれまで神隠しのように姿を消すことが六度ほどあったが、その直後は必ず大物政治家が失脚した。7月14日に孫政才失脚、その後も姿を消していたので、もう一人くらい失脚するかもしれないとささやかれていた。その一方で、ちょうど読売新聞が世界に先駆けて、次期政治局常務委員リストなるものを入手して、それに王岐山が入っていなかった、という特ダネを報じた。はっきりいって今の時期に、人事がすべて確定しているとは到底思えないのだが、王岐山をめぐる権力闘争が最終段階に入っているもようなので、一度整理しておこうと思う。

習近平は欠席、江沢民は不明

王岐山が久々に姿を現したという安志文の葬式で、もう一つ興味深いことは、習近平が出席していなかったということである。花輪は送っているので、単に忙しかったからかもしれないが、安志文と習仲勲(習近平の父親とは抗日戦争時、西北局綏徳地区での部下と上司、戦友関係)の関係を思えば、当然出席してもおかしくはなかった。王岐山と顔を合わせたくなかったから?などという憶測も飛んだ。

葬儀に出席したのは政治局常務委員会の中では王岐山と兪声正、張徳江、その他の政治局常務委員および胡錦涛、温家宝は花輪を送った。宋平夫妻、李鵬夫妻は「挽聯」(哀悼の聯)を送った。江沢民についての報道はなかった。革命英雄の大告別式であり、参列者は千人以上であったようだ。

8月13日に行われた水稲研究で知られる農学者の朱英国の葬式には王岐山はちょうど“神隠し中”で政治局常務委員七人の中で唯一花輪すら送らず、葬儀報道に名前が出なかった。ちなみにこのとき、江沢民も動静が途絶えていた。江沢民がこうした党中央の高官や学者に花輪すら送らなくなったのは今に始まったことではないが、13日はまだ北戴河会議が行われていたと思われるので、もし江沢民がこの会議に出席しているのなら、当然、他の長老らともに花輪を送るか哀悼の聯ぐらいは送ってもよかっただろう。

王岐山の“神隠し”と江沢民の動静不明が重なって、王岐山がいよいよ、江沢民の政治生命にトドメをさす準備に入っているのではないか、などともささやかれた。

そういうタイミングで日本の読売新聞(8月24日付)が特ダネとして、「中国次期指導部リスト判明、王岐山の名前なし」と報じたので、一部外国メディアも驚いて転電した。読売新聞は複数の関係筋の話として、北戴河会議で作成された次期指導部リストには定年通りに引退するかあるいは残留するかが注目されていた王岐山の名前はなく、習近平、李克強、汪洋、胡春華、韓正、栗戦書、陳敏爾の七人の名前があった、と報じた。いくつかの海外メディア関係者は、この情報について、「薄熙来失脚を最初に報じたのも日本メディア(産経新聞)だったから、日本の報道は無視できない」と注目している。

どこの筋から流れたのか

このリストが信頼できるかどうかは別として、いったいどこの筋から流れた話かは興味深い。習近平は、総書記三期目を実現するために、王岐山という誰もがその優秀さを認めるスーパー実務家を、定年を超えて留任させ、定年制度を打破する先例にしようとしている、というのが一般的な見方だ。これは王岐山が習近平と盟友関係、あるいは政治的に同盟関係にあるという前提がある。これが共青団筋や上海閥筋から流れてきた情報ならば、共青団派は習近平との人事駆け引きに勝利して、実力不足の陳敏爾を政治局常務委員会に入れることを認めるかわりに有能な王岐山を引退させ、定年制の壁を崩そうとする習近平の目論見を防いだ、というふうな解釈になる。

一方、親習近平筋から出てきた話なら、共青団エースの胡春華の対抗馬になりうる陳敏爾を政治局常務委員会入りさせた習近平派の勝利人事だ、という見方になる。陳敏爾が宣伝イデオロギー担当として指導部(政治局常務委員会)入りするというのは、これは従来のルールではありえなかった。陳敏爾のように地方行政トップ経験が三年にも満たない者が、政治局委員も経ず、いきなり政治局常務委員会入りが許されたとするならば、政治局常務委員会の権威が相対的に軽くなる。それを強引に習近平ができたというならば、すでに習近平の独裁基盤は固められつつある、ということになるやもしれない。そして、二度の金融危機を乗り越え、反腐敗キャンペーンでも次々と大物政治家を倒していった実務能力の高い王岐山に対しては、コンプレックスの強い習近平は実は疎んでいた、という説に信憑性が出てくるわけである。

読売新聞は記事中で、リストが固まったものではなく、人事駆け引きの途中経過にすぎないということわりを入れている。が、その数日後に、毎日新聞は陳敏爾の政治局常務委員会入りは「固まった」と断定的に報じた。他のメディア関係者も、確定で打つ、打たないは別にして、陳敏爾については「ほぼ内定」との見方を示すところが多い。話はそれるが、陳敏爾は胡海峰(胡錦涛の息子)が浙江省清華大学長江デルタ研究院党支部書記に就任するとき、かなり便宜を図ったので、胡錦涛は恩義を感じているらしい。陳敏爾が実力に見合わないまま貴州省書記に昇進できたのは、貴州省に依然影響力を持つ胡錦涛の後押しもあったから、とか。とすると、王岐山の進退はともかく、胡春華と陳敏爾ふたりともを政治局常務委員会に入れるのであれば、共青団派にとってはぎりぎり譲歩可能ということになる。

ちなみに今ゴシップメディアに飛び交っている次期指導部リストには、政治局常務委員席が7人から5人に減らされ、王岐山、李克強とも引退するという説から、王岐山が政治局常務委員会に残留し、全人代常務委員長のポストにつきながら首相の李克強を補佐するという説、7人中、習近平、李克強、陳敏爾、胡春華、汪洋、栗戦書を含めた6人までの内定が固まっており、最後の一席を王岐山、韓正、趙楽際が争っている、という説などがある。

いずれにしろ、王岐山の進退が今、山場に入っていることは間違いない。しかも、王岐山が引退すれば、王岐山失脚につながる可能性が全くないとは言えないかもしれない。以前、このコラムでも紹介した闇の政商・郭文貴は、今なお王岐山の腐敗ネタを次から次へとインターネットメディアを通じて拡散中だ。特に海南航空集団(海航、HNA)の株主に王岐山の甥がいて王岐山ファミリーに巨額の富を移転し、王岐山自身が海航からプライベートジェットはじめ多額の賄賂を受け取っているという疑惑は、新華社が完全否定しているにもかかわらずまだくすぶっており、それに加えて王岐山の私生児が海航の大株主だ、という新しいネタも飛び出している。王岐山自身はノーコメントだが、郭文貴の言い分を積極的に流す米国に拠点を置く華字メディア・明鏡ニュースに対して、郭文貴自身のスキャンダルやうさんくささを報道して、その影響力を打ち消そうとしている親王岐山メディアの財新が、代理闘争を請け負っている。

米メディアが「海航の謎暴き」に本腰

ここで、気になるのは米国の動きだ。最近の3年間だけでも450億ドルを海外資産購入に投じた海航に関しては所有権や株主構成、債務水準や資金調達ルートに対する疑惑を米大手メディアが盛んに報じるようになってきた。

8月25日付けニューヨーク・タイムズ(NYT)は、海航集団とパシフィックアメリカンコーポレーション(ボーイングなどにも航空機部品などを提供するサプライヤー企業、PAC在ニューヨーク)の謎めいた関係について、新たな証拠を入手したと報じている。海航は中国最大級の非上場コングロマリットの一つで海外資産の積極買収で知られ、現在、ドイツ銀行の最大株主でもある。その在米本部が置かれているPACとの親密な関係については、いろいろと謎が多かった。海航側は、もともと別の独立した会社で、海航集団参加の海南航空に必要なエンジン部品などを購入するなどの取り引き関係しかなく、PACの株などももっていないとしていた。だがNYTが入手した資料によれば、PACの経営者は海航のCEO陳峰の実の息子と弟であり、香港とケイマン諸島のオフショア企業を通じて、海航とPCAのオーナーシップ関係を隠蔽していたという。これは中国の証券法に違反している可能性がある、という。

PACは陳峰の弟が90年代初頭に米国に移住してきた後に、ほぼ同時期に中国で設立された海南航空のサプライヤー企業として設立。このとき契約書類には、PACは独立採算企業として海南航空から1.5%の手数料を受け取って部品などを代理購入することになっている。やがてPACはボーイングやハネウェルとも契約を結び、海航を物流、不動産、ホテルサービスなどを包括する大航空コングロマリット企業に成長させる一方で、自社も米軍事部門へと食い込もうとしていた。

海航の追及と王岐山の進退はリンク

海航集団が最近明らかにした自社株の所有構造では、52%をニューヨークと海南省に設立された慈善団体が保有し、47.5%を陳峰ら役員個人が所有、残りを海南航空が所有という。慈善団体が株主というのもいかにも怪しげで、この辺を丁寧にあらっていけば、王岐山かどうかは別として、大物政治家ファミリーの名前ぐらいは出てきそうな気配だ。

海航集団の所有構造についてはずっと謎であったが、海航が、ホワイトハウスのスカラムッチ元広報部長が創業したヘッジファンド運営会社の買収を目指していることなどから、その所有構造や資金ルートを明らかにするよう圧力がかけられていた。バンクオブアメリカ・メリルリンチは自社の関連投資部門に海航との取引を全面停止するよう通達を出している。

また、ブルームバーグも25日、海航が銀行以外からも非上場株を担保に指標金利を上回る高利で巨額の融資を受けていることを指摘、投資採算性に疑問の声も、と報じた。

この米国の海航の謎暴きと王岐山の進退は、おそらくリンクしている。今年に入って、飛ぶ鳥を落とす勢いであった海航集団の背後を米国が真剣に洗いはじめたのは、私は郭文貴あたりから提供された情報が元になっているのではないかと疑っている。郭文貴の告発は、王岐山が有名女優とどんな破廉恥なことをしているとか、私生児疑惑だとか、まるで昼のワイドショーネタで、単なる放言と日本のメディアもほとんどとりあっていない。だが、米国にしてみれば、ドイツ銀行やヒルトンホテルを傘下に収め、ボーイングやハネウェルを通じて軍事産業に近づきつつある謎の多い海航の正体をこの際、徹底的に暴きたいところだろう。万が一、その過程で王岐山の政治生命にかかわるようなネタが出てくれば、習近平政権の屋台骨も揺らぐような事態になるかもしれない。

郭文貴の放言の中で、すこしひっかかるのは、一貫して主張している王岐山と習近平の対立説である。盟友あるいは政治的同盟関係とずっと信じられてきた二人の関係が、かなり当初から対立関係にあったとすれば、王岐山を追い落とそうとしているのは、実は習近平という可能性も出てくるわけだ。もちろん習近平と王岐山の間に疑心暗鬼を起こし、二人を分断しようという郭文貴の作戦説もあるのだが、スーパー実務家として高い能力が実証済みの王岐山をずっと傍らに立たせておくことが、コンプレックスの強いらしい習近平に耐えられるか、という気もする。あるいは米国側が海航の背後を洗い出していく過程で、王岐山の腐敗の証拠が出てくる前に王岐山に消えてもらった方が習近平政権にとって安全と考え今、王岐山を切ろうとしているのかもしれない。

「反汚職の反動」に耐えられるか

もっとも王岐山にすれば、権力の座から降りた後の方が危険であろう。なにせ、もう元政治局常務委員が刑事責任を問われないという不文律「刑不上常委」は、周永康の起訴で消失している。権力の座から降りたとたん、王岐山の腐敗が、次の中央規律検査委員会書記によって暴かれる可能性がないとはいえないのだ。ちなみに次の中央規律検査委員会書記の筆頭候補と目されているのは習近平の大番頭こと栗戦書である。

なので、孫政才失脚直後、サウスチャイナ・モーニングポスト(7月19日)に栗戦書の不正蓄財疑惑を報じさせたのは王岐山だ、という噂が流れてしまうのかもしれない。サウスチャイナ・モーニングポストは結局、栗戦書疑惑の記事を事実確認ができないのに報じたと謝罪し取り消し、しかもその一か月後にそれを報じた記者を辞職させた。サウスチャイナ・モーニングポストは、習近平の政商と呼ばれている馬雲(ジャック・マー)率いるアリババが所有するメディアで、そのようなメディアが栗戦書スキャンダル記事を掲載した背景がいろいろと取りざたされた。馬雲の裏切り説もあるが、王岐山黒幕説もまことしやかにささやかれた。

郭文貴の暴露も、習近平と王岐山の権力闘争説もゴシップレベルの話であるが、「海航の謎」については、米国サイドが本気で暴くかもしれない。もし、その過程で、その汚職の確実な証拠が出てきて、王岐山が失脚したら、習近平政権はどうなるだろうか。王岐山によって汚職の罪で失脚させられた官僚政治家たちは一斉に名誉復活を求め、裁判のやり直し騒動が起きるかもしれない。習近平政権が旗印に掲げてきた反汚職キャンペーンの説得力が一気に失われることだろう。そうなったとき、習近平政権の権威は維持できるのか。いや共産党の執政党としての権威自体が維持できるのか。

王岐山の進退は、単なる一官僚政治家の進退以上に大きな影響力を持ち得る可能性がある。

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『韓国の無神経な「中立宣言」に米軍が怒った 弾道弾が飛ぶ中、「墓穴」を掘る文在寅』(8/31日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

8/31ダイヤモンドオンライン 窪田順正氏記事<呑気にJアラート批判の日本人は日米開戦前夜にそっくりだ>。左翼が跋扈していて、それに乗せられる人がまだいるという事です。自分が攻撃を受けて死ぬ自由はありますが、他人の行動を制約する自由はありません。ノイジー・マイノリテイ、声が大きいだけのイカレポンチです。大衆はメデイアの言っていることに反対の行動を取ると周りから白眼視されると言う思いがありますので、すぐ付和雷同します。覚悟が足りないといえば足りないのですが。「それでも地球は回っている」という勇気が必要です。況してや自分の命にかかわることですから。室井佑月は「北のミサイルを日本がミサイル防衛で撃ち落とすと破片が日本に落ちて来て危ない」とか言っているそうです。この人の頭の中を見てみたい。直撃した場合の人的・物的損害がいかほどのものになるかを計算すれば分かるでしょう。室井は小沢シンパですからさもありなん。そもそも他国をミサイルで威嚇する方が悪いに決まっています。対抗措置を自国が取るのは当然。北は何度も国連決議違反を繰り返しています。その国の行動に対して、自衛権を行使するだけです。

http://diamond.jp/articles/-/140441?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

杉浦正章氏ブログ8/31<米有力紙WSJが日本の核武装に言及>、8/30<敵基地攻撃能力が不可欠となった>WSJは「日本に核は持たせたくないが、北に核保有を認めれば、日本国内でそういう声が大きくなっていく。核拡散への道だ」と主張しているように見えます。それなら米国は自国への脅威でもあり、北のミサイル・核を根絶しなければなりません。

http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/

8/28ブログ「ぼやきくっくり」<8/28放送 DHCシアター「真相深入り!虎ノ門ニュース」>によれば、青山繁晴氏は「朝鮮戦争は、年内はない」と言っています。8/29に北がミサイルを発射したので変わることがあるかどうかですが。また、米軍情報が韓国軍からダダモレとも。これでは、在韓米軍を使って攻撃は出来ないでしょう。また、青山氏は「米国が北の核保有を認めれば日本も核保有する」とハリス長官に伝えたそうです。日本人が似非平和主義者(共産党シンパ)に騙されて、命を落とすことより、核自衛した方が良いと合理的判断ができれば、そうなるでしょう。

http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2096.html

鈴置氏の記事で、米軍の北朝鮮攻撃の際の日本の参加は、拉致被害者救出の場面に限ってでしょう。憲法上の制約と敵基地攻撃能力の保有についてまだ議論が進んでいませんので。日本も早く目覚めないと、多くの人が死ぬことになります。北の問題の次は本命の中国が控えますので。いい加減、左翼のプロパガンダに騙されないようにしてほしい。民主主義と言うのは自分の頭で判断できる人間を前提とした制度です。

記事

サーマン元司令官はVOAのインタビューで「米国は自分を守るのに、いかなる承認も必要としない」と答えた(写真:ロイター/アフロ 撮影は2013年、板門店で開かれた朝鮮戦争休戦60周年記念式典)

前回から読む)

文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「中立発言」が波紋を呼ぶ。その無神経さには米国も怒った。

韓国には拒否権がある

鈴置:8月26、29日、北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射しました。そんな中、文在寅大統領の不用意な発言が注目を集めています。「なぜ、墓穴を自ら掘るのか」と、韓国ウォッチャーは首を傾げています。

—「中立宣言」のことですね(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。

鈴置:その通りです。日本からの独立を祝う光復節の祝辞で、以下のように語りました。青瓦台(韓国大統領府)の「第72周年光復節祝辞」(8月15日)から引用します。

朝鮮半島で再び戦争を繰り返してはなりません。朝鮮半島での軍事活動は大韓民国だけが決めることができ、誰も大韓民国の同意なくして軍事活動はできません。

政府は何があっても戦争だけは止めることでしょう。

北朝鮮の核武装を阻止するため米国がいつ先制攻撃するか、と緊張感が高まっています。そんな時に文在寅大統領が事実上「米国の北朝鮮攻撃に関しては韓国に拒否権がある」と主張したのです。

そのうえで「米国の攻撃は体を張っても止める」とも語りました。それは「有事の際の中立宣言」でもあります。

米国務省の定例ブリーフで、この発言に質問が集中しました。報道官は「拒否権」に関し答えを避けましたが、北朝鮮の人権状況を非難したため「異様な国の側に立つ韓国」とのイメージが世界に向け発信されました(「『世界の敵』とスクラムを組む韓国」参照)。

完全なミスリード

—「中立宣言」は国民に対し「戦争は起きない」と安心させる狙いだった、と説明する韓国人もいます。

鈴置:韓国の左派系紙も「平和への意思を明らかにした」と賞賛しました(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。確かに、先ほど引用した演説では以下が続きます。

どんな紆余曲折があろうと、北の核問題は平和的に解決せねばなりません。この点で我々と米国政府の立場に違いはありません。

「米国も韓国と同様、戦争するつもりはない」と強調することで国民により大きな安心感を与えるつもりだったのでしょう。

でも、米政府は「戦争も辞さない」構えです。文在寅大統領の発言は完全なミスリードです。

8月13日、マティス(Jim Mattis)国防長官とティラーソン(Rex Tillerson)国務長官は連名でWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)に「We’re Holding Pyongyang to Account」を寄稿しました。もちろん米政府の公式見解で、ホワイトハウスのサイトに一部が転載されています。

両長官は「平和的な圧力をかけている」と言いつつも「外交は北朝鮮の行いの方向を変える望ましい方法だが、それは軍事的な選択肢に支えられている」と威嚇しています。この部分の原文は以下です。

While diplomacy is our preferred means of changing North Korea’s course of action, it is backed by military options.

「北に教える」と文在寅

—そもそも、韓国に「拒否権」はあるのですか?

鈴置:「ホラ」です。米国が北朝鮮を攻撃する際、少なくとも初めの第1撃は洋上の空母やグアムの基地から攻撃機が発進し、ミサイルが放たれると見込まれています。韓国外からの攻撃ですから、韓国の許可を得る必要はない、というのが常識です。

なお、多くの専門家は在韓米軍基地から第1撃をかける可能性はまずないと言います。攻撃前に韓国政府にばれてしまい、北朝鮮に通報される危険があるからです。

文在寅氏は大統領選挙の期間中「米国から攻撃を通告されたら北朝鮮に知らせ、その挑発をやめさせる」と語っています(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。

米国がそんな指導者に戦争を事前通告するわけがありません。「仮に通告しても開戦数分前。形式的なものになるだろう」と専門家は口を揃えます。

朴槿恵政権にも通報せず

—「反米親北」政権でなければ、状況は異なりますか?

鈴置:朴槿恵(パク・クネ)政権も米国は信用しておらず、当時から「韓国には事前に教えない」というのが一般的な見方でした。朴槿恵政権は北朝鮮には通報しないだろうが「離米従中」だけに、中国には確実にたれ込むと見られていました。

このあたりは米国や日本の安全保障専門家の間では常識なのですが、文在寅大統領はそれを認めません。「自分が米国から信用されていない」と思われたくないのでしょう。

韓国の「中立宣言」にはWSJがすかさず反応しました。「Seoul Warns U.S. Against Unilateral Military Action Against North Korea」(8月15日)で以下のように書いたのです。

Experts disagree on whether the U.S. would be legally obliged to seek Seoul’s approval before launching a military strike, particularly if the U.S. believed that its national security was at stake.

「軍事攻撃の前に韓国に許諾を得る法的な義務があるかに関し、専門家の間で定説はない」です。在韓米軍基地からの攻撃か、それ以外からの攻撃かは区分していませんが、いずれにせよ「韓国に相談するとは限らない」ということです。

疑う韓国の記者たち

—韓国メディアはどう反応しましたか。

鈴置:「中立宣言」の2日後の8月17日に、文在寅大統領の記者会見がありました。ここでWSJの指摘した「拒否権」の有無に関する質問が出ました。

中央日報系のテレビ局、JTBCの「文在寅大統領就任100日記者会見」(8月17日、韓国語)で質疑を視聴できます。

初めに質問に立った聯合ニュースの記者は「何があっても戦争は止める」との大統領の発言に関し「米国との協調はできているのか」と聞きました(開始14分36秒から)。

これに対し大統領は「トランプ大統領はどんな選択をするにしろ、韓国と事前に十分に協議し、同意を得ると約束した」と答えました。

しかしその答えは素直に受け止められませんでした。会見が終わりかけた頃、韓国のMBCのプロデューサーが再度、この点を突っ込みました。

「北朝鮮のICBM(大陸間弾道弾)が米本土に届く可能性が出てきた。米国は韓国との協議なしで攻撃する権利がある。これをどう考えるか?」と聞いたのです(開始53分30秒から)。文在寅大統領は考えつつ、次のように答えました。

北朝鮮の挑発に対し、米国が適切な措置をとることもあり得る。しかし、朝鮮半島での軍事活動に関しては韓国が決めることであり、韓国の同意が必要だ。

米国が朝鮮半島の外から軍事活動する時も、南北関係を緊張させる憂慮がある時は、事前に韓国と協議すると確信している。それが韓米同盟の精神である。

「米兵の命が大事」と言うなら

—「拒否権」を主張したうえ「韓国以外から攻撃する時も韓国の承認が要る」と言い出したのですね。

鈴置:ええ、主張をさらに強化しました。文在寅大統領の強気は止まりません。8月21日に訪韓した米上下両院の議員団には「米国の制限的な軍事行動でさえも、南北の衝突につながる。これは韓国人だけでなく韓国内の多くの外国人と在韓米軍人の生命も危険にさらす」と語りました。

ハンギョレの「文大統領、『軍事衝突時は、在韓米軍人の生命も危険に』」(8月22日、日本語版)は以下のように解説しました。

文大統領のこの発言は「大韓民国の同意なしで朝鮮半島での軍事行動を決めることは誰にもできない」という既存の立場を繰り返し確認し、米政界に北朝鮮に対する平和的・外交的解決法を強調したものと見られる。

いずれにせよ、実に恩着せがましい発言です。在韓米軍の将兵がこれを聞いたら「そんなに我々の命を心配してくれるのなら、THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の増強を一刻も早く許可してくれ」と怒り出すと思います。

「裏切りは許さない」

—米国は黙っているのですか?

鈴置:即座に反撃しました。米政府が運営するVOA(アメリカの声)の韓国語版は翌8月23日「<深層取材>『米軍、北朝鮮から攻撃された場合は韓国の承認なしで武力対応可能』」を載せました。

VOAは歴代の在韓米軍司令官3人を含む専門家に意見を聞きました。ベル(Burwell Bell)元司令官の答えは以下でした。韓国語版ですが、将軍たちの発言の一部は英語でも引用されています。

米本土が北朝鮮の攻撃の脅威にさらされ、北朝鮮に軍事的に対応する場合、在韓米軍の運用は米国と韓国双方の承認を得なければならない。そんな状況で韓国がこれに同意することを確信している。

文在寅大統領と同じ「確信している」という言葉を使い「法的にはともかく、在韓米軍による攻撃を拒否したら承知しないぞ」と言っているわけです。法的な問題に関しては、次のようにも述べています。

北朝鮮が米本土への核攻撃の能力を持った状況は、これを直接的に明示していない米韓相互防衛条約の枠外で扱うしかない。こうした仮定の状況下で、文在寅大統領の支援と米韓同盟の確実性は揺れないと確信している。

—「肝心な時だ。裏切りは許さない」ということですね。

鈴置:その通りです。なお、この記事の見出しには「北朝鮮から攻撃された場合」とありますが、ベル元司令官は「反撃」だけではなく「先制攻撃」も念頭に置いていると思われます。

「攻撃された場合」ではなく「攻撃の脅威にさらされた場合」と言っているからです。北朝鮮が「グアムを攻撃するぞ」と言っただけで「脅威」となるわけですから。ベル司令官は言葉を続けます。

韓国がこれ(在韓米軍基地からの攻撃)を拒否する場合、米国は国際法に従い、在韓米軍以外の米軍の資産により北朝鮮を攻撃し得る。これに対する韓国の承認や協力の必要はない。

日豪も作戦に参加可能

—きっぱりと言い切りましたね。

鈴置:当然の話だからです。ベル元司令官は、日本も韓国の許可なくして北朝鮮を攻撃できると述べました。これまた当たり前の話ですが。

韓国の領土外の日本、豪州などその他の米国の同盟国も、韓国の承認を受けずに米国の軍事作戦に参加できる。

サーマン(James D. Thurman)元司令官もVOAの質問に対し、次のように答えました。

すべての主権国家は自分を守る権利がある。韓国と同様に米国は北朝鮮の脅威から自分の国を防衛する権利がある。

米国は自分を守るのに、いかなる承認も必要としない。戦争に巻き込まれた際、我々が自衛するのは固有の権利である。それは韓国と同様だ。

ベル元司令官と異なり、場合分けはせずに「自分の国を守るのは当たり前だ」と本質論で答えました。「韓国には拒否権がある」と主張する文在寅大統領に対し「寝ぼけたことを言うな」とたしなめたのです。

ティレリー(John H.Tilelli jr.)元司令官の答えは短いもので「北朝鮮の核問題の最善の解決策は平和的な方法によるものだが、大統領にとって最優先すべきは自国民の安全だ」でした。交渉は重要だが、軍事的な手段を放棄するつもりはない、という意味です。

我が国の大統領が恥ずかしい

—米政府はVOAを通じ韓国に対し「対北朝鮮攻撃に口を出すな」と通告したのですね。

鈴置:その通りです。文在寅大統領の勝手な言い草には耳を貸さないと宣言したのです。3人の元司令官の発言からは「韓国の裏切り」への怒りも感じ取れます。

保守系紙の朝鮮日報がさっそくVOAのこの記事を長々と引用しました。「ベル元駐韓米軍司令官『米国は韓国の承認なくして北朝鮮を攻撃できる』」(8月23日、韓国語版)です。

朝鮮日報は最大手紙。多くの韓国人がこれを読んで「韓国の大統領が何と言おうと、米国は戦争が必要な時はさっさと始めるのだな」と考えたことでしょう。

掲載後1週間で、287人もの読者がこの記事にコメントを書き込みました。ほとんどが「元・在韓米軍司令官の言う通りだ。自分の国の安全保障を他国の判断にゆだねるなんてあり得ない」「我々の同意なしに戦争はないだって? そんな純粋無垢な主張をするなんて恥ずかしい」など、文在寅大統領への批判でした。

石器時代に戻すぞ

—大統領の演説は逆効果になりましたね。

鈴置:完全な藪蛇です。国民を安心させるどころか不安にさせました。記事への書き込みには「米国に向け飛んでいくミサイルは韓国が落として当然なのに。5年後には韓国という国はなくなっているかもしれない」と米韓同盟消滅を憂慮する声もありました。

韓国の外交専門家からも大統領の「不用意な発言」を懸念する声があがりました。外交官出身の魏聖洛(ウィ・ソンラク)ソウル大学客員教授が中央日報に「類を見ない危機の中で対米外交を考える」(8月23日、日本語版)を寄稿しました。要点をまとめます。

米国が(北朝鮮の威嚇に)激怒する今、米国が受ける脅威に無神経だったり(「米朝双方が悪い」という)両非論を取れば、同盟の信頼性の問題は思った以上に深刻になる。

歴史的に米国は自ら危機が差し迫っていると認識すれば、行き過ぎた反応を見せた。米国優先を前面に出すトランプ(Donald Trump)政権下で、その可能性はさらに大きくなった。

「行き過ぎた反応」で思い出すのは「9・11」(米同時テロ)の直後「米国に逆らって(対テロ戦争に協力しなければ)空爆で石器時代に戻すぞ」とパキスタンを脅したアーミテージ(Richard L. Armitage)米国務副長官(当時)の言葉です。

HUFF POSTの「Exclusive: CIA phone tap of Armitage’s “Stone Age” threat to Pakistan!」で読めます。

同盟国らしい対応を

—「石器時代」ですか。

鈴置:「9・11」の時ほどではありませんが、米国はいらだちを強めています。北朝鮮は「米国が核と制裁を振り回せば、本土が想像もつかぬ火海になる」(8月6日)、「グアムを包囲射撃する作戦計画を慎重に検討」(8月9日)などと威嚇しました。

「その直後に韓国が中立を宣言すれば、米国はどう思うか」と魏聖洛教授は国民に問いかけたのです。韓国はTHAADの追加配備も渋りました。そんな無神経さが米国の「韓国切り捨て」につながりかねないと魏聖洛教授は警告したうえ、とるべき道を説きます。

相互防衛条約に従って韓国の対米支援の義務が発動される可能性がある。米国内で対韓防衛の見直しや、半島をめぐる新たな安保構図の議論をあおる可能性もある。

米国が直面した脅威に積極的に共感し、同盟らしい対応を取る準備を継続する必要がある。

これは決定的な瞬間に米国を説得する資産になる。その後、静かな外交で米国に節制された対応を呼びかけるのが現実的だ。

—説得力がありますね。

鈴置:そう思います。今、韓国が何と言おうと米国の強腰を制止するのは難しい。それどころか「中立宣言」は戦争を呼びかねません。

それにより北朝鮮に対する外交的な圧力が弱まれば、米国が軍事的な手段を選ぶ可能性が増すからです(「『世界の敵』とスクラムを組む韓国」参照)。

米韓関係も悪化し、同盟打ち切りもあり得ます。文在寅大統領の中立宣言は韓国の国益を大きく損ないかねません。

北朝鮮の顔色を見た?

—なぜ、そんな演説をしたのでしょう。

鈴置:この謎を解くカギがあります。北朝鮮の顔色を見ながら「中立」を宣言したとすると、すべてつじつまが合うのです。

(次回に続く)

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『トランプ大統領に沁みついたバノン色は消えず 3将軍による「ラスプーチン退治」は成功したように見えるが…』(8/29日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『トランプの「鈍感力」は米国社会を分断し世界を混乱させる』(8/29ダイヤモンドオンライン 真壁昭夫)について

8/25ZAKZAK高橋洋一氏記事<やはり娘に逆らえなかったトランプ氏、政権“辞任ドミノ”の日本への影響は?>

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170825/soc1708250002-n1.html

8/27宮崎正弘氏メルマガ<トランプ政権、高官人事が進まないのは何故か?行政に支障がでても、構わないという態度の根本的理由>

http://melma.com/backnumber_45206_6574644/#calendar

8/24NHKニュースクリントン氏 来月出版の回顧録 トランプ大統領を「不快」

アメリカのクリントン元国務長官は、来月出版される大統領選挙の回顧録で、討論会でのトランプ大統領について「不快で身の毛がよだった」と振り返りました。

去年のアメリカ大統領選挙をめぐっては、共和党の候補者だったトランプ大統領に敗れた、民主党のクリントン元国務長官が書いた回顧録が、来月12日に出版されます。

アメリカのメディアが23日に伝えた回顧録の抜粋によりますと、クリントン氏は去年10月、トランプ氏がかつて「有名人になれば、女性は何でもしてくれる」などと、女性を見下すような発言をしていたことが報じられ、批判が高まっていた中で開催された討論会について、「小さなステージで私がどこに行ってもトランプ氏がぴったりとつきまとい、凝視してきて不快だった。首に息がかかり身の毛がよだった」と振り返りました。

そしてトランプ氏に対し、その場で「気味が悪い。私から離れなさい」と言うべきだったかどうか自問しているとして、後悔の念ものぞかせました。また、クリントン氏は、選挙で敗北したことについて「屈辱的だった。多くの人が私に期待してくれたががっかりさせてしまった。そのことを背負って残りの人生を生きなければならない」と記しています。

このほか、回顧録ではロシアが選挙に干渉したとされる疑惑などについても、言及していると見られています。>

トランプも敵が多くて大変です。偏向メデイアを相手する訳ですから、強力な力で撥ね返さないとやられてしまいます。米国は行き過ぎたPC(ポリテイカル・コレクトネス)のせいで社会がおかしくなってきています。それに歯止めをかけ、強いアメリカを取り戻そうというのがトランプです。

北との関係がきな臭くなっている今、ヒラリーでなくて本当に良かったと思っています。ヒラリー民主党であれば、裏で中国と手を握り、北を核保有国と認めた上で、平和条約を結んだかもしれません。日本にとっては近隣国にもう一つ核保有国ができるという悪夢が実現することになります。勿論、トランプも交渉の行方次第でどういう展開になっていくかは読めませんが。ただトランプの支持層は軍人と警察です。軍事行動を起こす時には、3将軍が上に居てスムースに動かせるのでは。ハリス太平洋軍司令官も中国に嫌われているくらいですから、非常に頼りになる軍人という事です。

バノンの辞任は仕方のないことでしょう。政権内部に余りに敵を作りすぎました。ただ、彼が考えている「北朝鮮は前座、本命は中国」の見方は正しいです。これが、政権内部で共有されてほしい。クシュナーが9月に訪中するときに、合法的な金の絡むプレゼントを貰わないようにしないと。ロシア問題で、上院にて非公開証言させられたりしているので、慎重に行動するとは思いますが。ただ、相手は中国ですから。いろいろと仕掛けて来るでしょう。

日経ビジネスオンライン記事

トランプ大統領を支えていた2人は袂を分かった。ホワイトハウスを去ったスティーブン・バノン氏(左)とトランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏(右) (写真:AP/アフロ)

—「ホワイトハウスのラスプーチン」と呼ばれていた保守強硬派のスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問がついにホワイトハウスを去りました。あれから2週間、ウエストウィング(大統領行政府)の空気は変わりましたか。

高濱:トランプ政権が発足して以降ずっと続いていたホワイトハウスの内紛は、バノン氏が去ったことで一応収まりました。しかしこれでトランプ大統領とバノン氏との絆が完全切れたかというと、そうとは言えません。

トランプ大統領にとってバノン氏は「アルタエゴ」(分身)であり、トランピズムの振付師でした。大統領補佐官(国家安全保障担当)を代えても、大統領首席補佐官を代えても、相手代われど、バノン氏との確執がつねに続いてきました。トランプ大統領としては、バノン氏を傍に置いておきたいのはやまやまでしたが、内紛を解消するため「泣いて馬謖を切る」といった感じです。

—バノン氏自身は「1年間の契約が切れたので辞めた」と発言しています。強がりにも聞こえますが、実のところはどうなのですか。

高濱:辞めたバノン氏は「われわれ(つまりトランプと自分)の闘いは終わった。勝ち取ったトランプ政権は終わった」と言っています。なんとなく意味深な発言ですね。

そのココロを、大統領選挙中からトランプ氏をフォローしてきた米テレビ局の記者が筆者にこう解説しています。「バノンが言いたかったのは、こういうことですよ。『俺とトランプとは、反エスタブリッシュメントを錦の御旗に苦しい選挙戦を勝ち抜き、政権を打ち建てた。ところが外様が次々に入ってきて、当時目指した理想の政権は様変わりしてしまった』」

トランプ大統領自身、バノン氏にこう感謝の辞を述べています。「バノン君は、不正直なヒラリー・クリントン(民主党大統領候補)と私が闘っている真っただ中でわが陣営に参加してくれた。有難かった」

ヒラリー優勢の状況において、戦略を立て、実施に移し、形勢を逆転させたのは軍師であるバノン氏でした。バノン氏はいわば、豊臣秀吉の軍師・黒田官兵衛です。

トランプ氏が大統領に就任した後、バノン氏は首席戦略官・上級顧問としてトランプ大統領がやりたかった環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、地球温暖化防止の「パリ協定」脱退などを実現させました。しかし、その強烈な個性と妥協を許さぬ「野蛮人バノン」(Barbarian Bannonとホワイトハウス内では呼ばれた)は他の側近と衝突し続けました。

バノン氏を「解任」するようトランプ大統領に助言したのはジョン・ケリー大統領首席補佐官です。ケリー首席補佐官がホワイトハウス入りしたことでバノン氏も少しはおとなしくなるかと思いきや、内紛は収まらず。

側近の間のいがみ合い、対立を解消するには、どうしてもバノン氏に辞めてもらうしかないというケリー補佐官に加勢したのは、ジャレッド・クシュナー氏とH・R・マクマスター氏でした。クシュナー氏はトランプ大統領の娘婿。マクマスター氏は大統領補佐官(国家安全保障担当)です。いずれも、以前からバノン氏と対立していました。

特に、穏健派とされるクシュナー氏とバノン氏は、イスラム圏6カ国からの渡航者の米入国一時禁止やメキシコ国境への壁建設で激しく対立してきました。一方、マクマスター氏とバノン氏はアフガニスタン増派をめぐって真っ向から対立しました。政策上の対立以上にどちらがトランプ大統領に影響力を与えるか、その確執の方が大きかったかもしれません。

バノン氏は辞めた直後、クシュナー氏らを「ホワイトハウスに住み着く民主党系グローバリスト」とまで言って悪意をむき出しにしました。

アフガンへの関与継続では将軍たちの主張が通る

—バノン氏が去ったあと、実際の政策に変化が出てきましたか。

高濱:顕著な変化は外交面で出始めています。

一つはジョージ・W・ブッシュ政権時代から続く「米史上最長の戦争」――アフガニスタン――への関与継続を認めたことです。具体的には4000人規模の部隊を増員します。これで、駐留する部隊の規模は8400人に引き上げられました。

トランプ大統領は選挙中から、オバマ政権がアフガニスタンに関与し続けるのを激しく批判してきました。そして即時完全撤収を公約に掲げた。その基本にあるのは「米国第一主義」です。「外国のために米兵を送り、血を流すのはもうまっぴらだ」。バノン氏の助言でした。

トランプ大統領がこれを覆して増派を決めたのは、3人の将軍から強い進言があったからでした。アフガニスタンを管轄する中央軍司令官を務めたジェームズ・マティス国防長官、H・R・マクマスター補佐官、それにジョン・ケリー首席補佐官はこう大統領に訴えました。「今、撤退すれば、テロリストに再び安住の地を与える。撤退する前提としてテロリストを徹底的に根絶する必要がある

ケリー補佐官の長男は海兵隊に志願入隊し、アフガニスタンで戦死しています。愛する息子を失った補佐官の発言には重みがありました。 (”With Steve Bannon out of the White House the military is now firmly in charge of Afghan policy,” Kim Sengupta, The Independent, 8/22/2017)

金正恩に「オリーブの枝」を振って見せたトランプ

今一つは北朝鮮に対する対応です。北朝鮮の核・ミサイル問題でトランプ政権は経済制裁を通じた締め付けを強化する一方で、北朝鮮の対応をある程度評価する姿勢を見せました。

トランプ大統領は8月22日、金正恩朝鮮労働党委員長が弾道ミサイルの新たな発射計画について「米国の行動をもう少し見守る」と言い出したことを受けて、「金正恩はわれわれに敬意を払い始めた」とコメントしたのです。今まで「目には目を、歯には歯を」的発言を繰り返してきたトランプ大統領の変身だけにみな「なにか水面下で動いているのか」と勘繰りました。

北朝鮮に対話を促すような発言をするようトランプ大統領を説得したのも前述の3将軍とレックス・ティラーソン国務長官だったとされています。ティラーソン国務長官はおそらく、「強硬発言ばかりではなく、たまにはオリーブの枝でも振ってみたらいかがでしょうか、大統領閣下」とトランプ大統領に助言したのでしょう。

北朝鮮は「先軍節」の翌日の8月25日、短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射しました。グアム沖に発射すると言っていた計画は現時点では控えています。「通常の軍事演習」(韓国政府高官)と米韓は見ているようです。北朝鮮に対しても強硬なバノン氏がホワイトハウスを去って4日後のことでした。バノン氏は「それ見たことか」をうそぶいているかどうか。

バノン氏はもともと中国嫌いです。中国の海洋進出を阻止するには軍事衝突も辞さぬと公言してきました。ですから、北朝鮮に自制をうながすべく中国に「おもねる」ことに猛反発していました。

ホワイトハウス中枢にまだ「バノンのブレーン」

—トランプ大統領に対するバノン氏の影響力は完全に消滅したのでしょうか。

高濱:米英メディアは総じて、「バノン氏の影響力は何らかの形で続くだろう」といったニュアンスで報じています。

その理由について、英高級誌「エコノミスト」が極めて明快に指摘しています。米政治の節目で、米メディアよりも岡目八目的、冷静沈着に報道するのは英メディアです。中でもエコノミストは米インテリ層に一定の影響力を持っています。

バノン氏が、辞めた直後に単独インタビューに応じたのは、保守系知識層向けの「イブニング・スタンダード」とエコノミストだけでした。特にバノン氏はエコノミストの記者を私邸に招いて長時間のインタビューに応じています。 (”The future of Bannonism,” The Economist, 8/25/2017)

エコノミストは「バノンは去っても『バノニズム』(Bannonism=バノン思想)はトランプ・ホワイトハウスに付着したままになるだろう」と指摘し、その理由を3つ挙げています。

一つは、バノン氏が首席戦略官としてホワイトハウス入りした時に連れてきた同僚がその後もホワイトハウスの中枢に残っているからです。

もっともその一人、英国生まれのハンガリー系アメリカ人のセバスチャン・ゴルカ大統領副補佐官は8月25日に辞任しました 。でも、もう一人のステファン・ミラー大統領補佐官兼上級顧問(政策担当)は依然として残っています。

ミラー氏大統領補佐官兼上級顧問は、トランプ大統領の首席スピーチライターでもあります。トランプ大統領の就任演説の草稿を書いたのは同氏でした。バノン氏が最も買っている保守派の若手イデオローグ(あるイデオロギーの創始者・唱導者)です。ホワイトハウス入りする前にはジェフ・セッションズ上院議員(現司法長官)の広報担当補佐官でした。イスラム圏諸国からの渡航者の一時入国禁止案をトランプ大統領に強く進言したのはミラー氏と言われています。

バノン、ゴルカ両氏が辞めても、政策担当上級顧問・補佐官と首席スピーチライターという重要な仕事を、バノン氏の「ブレーン」であるミラー氏に引き続き任せているわけです。バノン氏の考えはミラー氏を通じて逐一、トランプ大統領の耳に入ることになりそうです。

「シャーロッツビル騒乱後の「喧嘩両成敗」発言

第2の理由は、バノン氏が掲げてきた「反エリート主義、反イスラム主義、白人至上主義」の思想・信念はトランプ大統領の体内に浸透しきっているというもの。「分身」は、物理的にはいなくなっても精神的にはトランプ大統領の中で生き続けているというのですね。

米バージニア州シャーロッツビルで8月12日に騒乱が起こった直後、トランプ大統領は「喧嘩両成敗」的な発言をしました。そこに「バノンの体臭を感じる」というわけです。

トランプ大統領は8月25日、米アリゾナ州マリコパ郡の元保安官を恩赦にしました。人種差別主義者として批判されている人物です。主要メディアは白人至上主義を擁護するトランプ大統領のスタンスが一段と浮かび上がったと批判しています。

第3は、バノン氏が超保守派アルト・ライトの機関誌的存在「ブライトバート・ニュース」に戻ったことです。

バノン氏は前述のインタビューでこう語っています。「私はホワイハウスでは影響力(influence)を持っていた。ブライトバートでは権力(power)を持つ」

「私はイデオローグだ。だからホワイトハウスを追い出された。だが私は(トランプ大統領のための)支持母体を結集できる。私はトランプ大統領の後ろ盾だ。トランプ大統領が激しく攻撃されればされるほど、私と私の同僚たちはトランプ大統領をより強固に守る」

バノンが目論む「米メディア大革命」構想

—バノン氏は古巣「ブライトバート・ニュース」(*注)で何をしようとしているのですか。

*注:「オルト・ライト」のアンドリュー・ブライトバート氏(2012年逝去)が2007年に設立したオンラインメディア。ブライトバート氏の死後、バノン氏が会長兼務主筆を務めていた。16年の米大統領選では、トランプ陣営の別動隊の役割を演じた。

高濱:短期的には、バノン氏を追い出して主導権を握った「将軍トリオ」とこれを支持した穏健派ビジネスエリートに対する「報復」でしょう。穏健派ビジネスエリートにはクシュナー氏やティラーソン国務長官などが含まれています。

報復と言っても無論、物理的な行為ではありません。トランプ政権のよって立つ保守主義路線を彼らが修正するようなことがあれば、メディアを通じて徹底的に叩くことを意味します。返す刀で、医療保険制度改革(オバマケア)見直しや税制改革をめぐって党内をまとめきれずにいる共和党議会指導部も批判するでしょう。来年の中間選挙を見据えて、トランプ政権に批判的な議員の再選を阻むために個人攻撃も辞さないでしょう。

バノン氏は中期的目標として、ブライトバートをさらに拡大強化して世界規模のメディアにしようと考えているようです。バノン氏には、ボブ・マーサー氏というヘッジファンドで財を成した億万長者の支援者がおり、これまでもブライトバートに1000万ドル単位の資金を提供しています。バノン氏は辞める2日前にマーサー氏と数時間会談しています。バノン氏がこれから手を染めるプロジェクトへの資金面での支援について要請したことは間違いないでしょう。

その一方で、主要メディアに対抗する保守メディアの結集ももくろんでいるといわれています。ブライトバートが保守系テレビ局FOXニュースを吸収合併し、巨大な保守系テレビ媒体を形成する構想があるようです。FOXニュースのロジャー・エイルズ前会長(今年5月に逝去)と合併話をしていたといわれています。 (”Bannon plots Fox competitor, global expansion,” Jonathan Swan, www.axios.com., 8/19/2017)

リベラル派から「もっとも危険な政治仕掛け人」と恐れられたバノン氏がこれから何をし始めるのか、目が離せません。

ダイヤモンドオンライン記事

米国内政治の不透明感は一段と高まった

トランプ大統領は、バージニア州シャーロッツビルにおける白人至上主義団体と反対派の衝突について、「反対派にも責任がある」との見解を示した。その発言を受けて、政権内部をはじめ、さまざまな分野からの反発が出ている。

元々、米国は“人種のるつぼ”と言われ、多民族が共存する国家だ。その社会環境を考えると、人種差別は一種のタブーと言ってもよいだろう。今回、トランプ大統領は、そうした米国社会が持つ微妙な部分に抵触したともいえる。

それでなくてもトランプ大統領は、ロシアとの癒着疑惑や共和党との関係悪化などの問題を抱えている。米国内政治の先行きに関する不透明感は一段と高まったといえる。賭け屋のオッズ(掛け率)によると、2018年末までトランプ氏が大統領職に居続ける確率は60%程度まで低下しているという。

大手ヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオ氏などの市場関係者からも、米国社会の亀裂が深まり政治は一段と混乱しやすくなったとの見方が示されている。ここへ来て、トランプ大統領を巡る風向きが微妙に変化しているのかもしれない。

トランプ政権への求心力低下につながる恐れ

米国の社会は多様な価値観を受け入れ、人々のアメリカンドリームを追い求めるアニマルスピリットを掻き立てることで成長を遂げてきた。

その意味では、多様性は米国社会のエネルギーの源泉の一つと言えるだろう。ITをはじめ、企業の経営者の顔ぶれを見てもその属性はさまざまだ。それゆえ、もともと米国では政治家などが差別を容認する姿勢を示すことは、社会的な禁忌(タブー)とされてきた。

今回のトランプ氏の発言の背景には、白人労働者など支持層への意識があったのだろう。しかし、差別を容認するようなスタンスは、米国社会の分裂につながる恐れがある。

ブッシュ(息子)政権以降、米国では一つの考え方に固執する一種の原理的な傾向が見られるように思う。前オバマ政権においては、かなり保守的な考え方を持つティーパーティー派の共和党議員の存在が鮮明化していた。

ティーパーティー派は当時の予算成立に反対し、米国の政府機関の一時閉鎖につながった。こうした動きを受けて、今回のトランプ大統領の差別容認姿勢は、米国社会の分断に拍車をかけることも懸念される。

今回、トランプ大統領の発言を受けて、複数の大手企業の経営者が大統領の助言組織の委員を辞任した。米国の経済界が、トランプ大統領への不信感を募らせていることは明らかだ。

政策の先行きに関する不透明感も高まる中、企業の採用や設備投資への意欲低下の懸念もある。金融市場がそうした変化を感じ取ると、株式市場を中心にリスク回避的な雰囲気が広がり、ドルが軟調に推移する展開は排除できない。

今回の件を受けて、トランプ陣営に残ったのは、事実上、家族と軍関係者、大手投資銀行ゴールドマン・サックスOBが主流になった。その中でも大統領が頼れる存在は娘のイバンカとその夫クシュナーの両氏であり、ますますインサイダー=内部者への依存が強まったとの揶揄もある。

トランプ政権の政権運営能力と今後の政権動向

トランプ大統領の政権運営能力を評価すると、歴代政権の中でも政策立案の遅れと利害対立が浮き彫りになってきた。今後もトランプ政権の政策運営は厳しい状況に直面することが予想される。ポイントは4つに分けられるだろう。

まず、政治任命=ポリティカルアポインティーが遅れている。トランプ政権下、上院の承認が必要な各省庁の幹部数は500を超える。8月上旬の時点で、承認されたポストは120程度だ。

歴代の政権の政治任命は、政権発足後の100日を過ぎたあたりから加速してきたが、現政権の任命は遅れに遅れているのが現状だ。この背景にはトランプ政権への不信感があるために、適切な候補者が見つからないことなどが影響している。

2点目は政権内部の対立の深刻化だ。問題は、それが今後も続くと考えられることだ。最終的にトランプ氏が信用できるのは家族だけと指摘する専門家は多い。軍関係者等との関係悪化や白人至上主義への傾倒が懸念されたバノン氏の更迭が、政権安定につながるとは考えづらい。トランプ大統領が”聞く耳”を持つとも考えづらい。側近同士だけでなく、大統領と側近の関係悪化も懸念され、ホワイトハウスの混乱が続く恐れがある。

3点目は、議会と大統領の関係悪化だ。現在、上下院では共和党が過半数を超える議席を確保している。にもかかわらず、トランプ大統領が改革の最優先課題として進めたオバマケアの代替法案は上院で否決された。

その上、トランプ大統領が南北戦争時代の南軍指導者の像を撤去することに反対したことを受けて、共和党内部からの非難は追加的に高まっている。トランプ氏は孤立し、議会との関係は一段とこじれることが懸念される。

4点目は、トランプ政権が掲げる経済対策の成立がより困難になったことだ。政権内部の混乱や議会との関係悪化から、税制改革が早期に成立し減税が行われる可能性は遠のいた。現在、米国経済の回復のモメンタム=勢いは徐々に弱まりつつあるとの見方も増えている。ポリティカルアポインティーが遅れ、政府の実務対応力が十分ではない中、景気減速のリスクは高まりやすくなる。それは、米国のみならず、わが国を始め世界経済にも-の影響を及ぼす可能性がある。

今後の米政権を巡るシナリオ注目すべきはトランプ大統領の鈍感力

北朝鮮問題に関する緊張感の高まりなどを受けて、多くの同盟国のトランプ大統領への信頼・信用はかなり低下したはずだ。それだけでなく、各国の産業界の中にも「トランプ氏には早い段階で辞めてほしい」との本音があるだろう。

もともとユダヤ系が多いウォールストリートでもゴールドマン・サックスを筆頭にトランプ批判が熾烈化している。トランプ氏がビジネスと国家間の交渉を明確に区別できていないことを考えると、そうした批判の声が高まるのはむしろ当然かもしれない。

ただ、トランプ氏が大統領の職を失うシナリオはそう簡単ではない。支持率の低さが指摘されて久しいが、同氏は低支持率をさほど気にしてはいないようだ。言い換えれば、鈍感だ。自らの発言が正しいと信じで疑わずに米国第一を主張し続け、大衆迎合的な政治の色合いが強くなる可能性がある。

そうなった時、共和党員がトランプ離れを起こすか否かが注目される。2018年11月には中間選挙がある。トランプ政権への危機感が共和党全体で共有されれば、トランプ離れが進むだろう。その結果、同氏は一段と“裸の王様”になるはずだ。米国民がこの状況を本当の意味で嫌い避けようとするなら、支持率低下から政権運営が困難となり、辞任に追い込まれる可能性は全くないわけではない。

最悪のシナリオは、支持率が低下する中で現在の政権が続くことだ。トランプ氏の当選は、米国第一の政治への期待が強いことを確認する機会となった。それゆえ、共和党の議員にとって、トランプ氏への批判を強めることは有権者からの反感につながる恐れがある。今のところ、共和党全体が大統領に“NO”を示す展開は考えづらい。

最も注目すべきはトランプ氏が持つ一種の鈍感力だ。同氏は、これまで何があっても、自分の責任というスタンスを取ったことがない。ということは、今後も同氏は、これまでと同じ行動を取り続ける可能性が高い。

トランプ政権が続く場合、米国に対抗して各国が自国中心の政策を重視し、世界的にポピュリズム的な政治が進む恐れもある。それは、国際社会の秩序を大きく混乱させる懸念がある。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

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『ロシアから見た北朝鮮の核』(日経ビジネス2017年8月28日号 FT)、『朝鮮半島危機は台湾海峡に連動するか?微妙なバランスを保つ米中の政策、役割を問われる日本』(8/28JBプレス 阿部純一)、『強すぎる米国が作り出してしまった“ウイルス” 厄介な「怯える北朝鮮の核ミサイル開発」退治:日本の責任重大に』(8/28JBプレス 樋口譲次)について

8/29早朝に北はまたミサイルを飛ばしました。下記のワシントンポストの記事によれば、「Hwasong-12=火星12」(朝鮮語は中国語に似ています。中国語で火星はhuoxingですから)タイプのミサイルであれば3000マイル=4827Kmは飛ぶとのこと。ミサイルの方向を変えればグアムにまで届くとも。グアムまでの距離は3400キロと言われていますので。ただ、ロイターによれば今回のミサイルの飛行距離は2700Kmとありました。北朝鮮は米国を怒らせない程度に逆らっているというところでしょう。

<North Korean missile flies over Japan, escalating tensions and prompting an angry response from Tokyo >

https://www.washingtonpost.com/world/north-korean-missile-flies-over-japan-escalating-tensions-and-prompting-an-angry-response-from-tokyo/2017/08/28/e1975804-8c37-11e7-9c53-6a169beb0953_story.html?tid=ss_fb&utm_term=.7416f1948be0

https://jp.reuters.com/article/nk-missile-idJPKCN1B82EZ

FT記事にありますように、北の核保有を認めることが最善の策か疑問です。特に日本にとっては。小生は米軍がB61-11や”mother of all bombs”を使い、北の兵力を無力化してほしいと願っています。北の核保有を認めると、

①日本は中露北と核保有国に挟まれ、彼らの属国とされる可能性が高くなる。

②北に核保有を認めるのであれば、日本の核保有も認めさせるようにしなければ。樋口氏の言う「非核三原則」は当然撤廃。少なくとも米国とニュークリアシエアリングしながら「核保有」への道を探る。

③北と米国との交渉を中国はじっと見ている。北のような弱小国を武力行使して潰せないのであれば、中国相手に潰せる訳はないと彼らは思う。バノンの言ったように「北は前座」であり、「本命は中国」である。もしそうなれば、太平洋二分割で日本は中国の属国になりかねない。勿論、中国の野望は太平洋の二分割で収まる訳はなくて、世界制覇にある。

④樋口氏の言う「日本列島電子戦バリアー構想」、イージス・アショア(イージス艦MDシステムの地上配備型)や電子戦・サイバー攻撃、電磁砲・電磁波弾、さらにはレーザやレールガンの配備も早急に進めねば。予算措置が大事。早くGDPの2%の10兆円にしなければ。

⑤阿部氏の言う台湾放棄論は地政学上あり得ないのでは。米国と中国の経済的・軍事的な力が逆転すれば分からないが。それ故、中国へも早く経済制裁を課すべき。南シナ海で明らかな国際法違反を犯しているので。ロシア同様の扱いとすべき。

日経ビジネス記事

北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って、米国と中国が駆け引きを激化させている。こうした中、もう一つの大国であるロシアの行動が重要性を増す。ロシア人研究者らは、北朝鮮の核開発に理解を示す。「核保有国として認めることが現実解」との見解も浮上する。

北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員長は8月、イランのハッサン・ロウハニ大統領の2期目の就任式に出席した。注目されるのは、はるかに便利な北京経由便ではなく、モスクワ経由便を利用してイラン入りしたことだ。

極東ロシア・ウラジオストクに入港する万景峰号。ロシアは北朝鮮への融和姿勢を取っている。今春から初めて、客船の定期便を運航させ始めた(写真=ロイター/アフロ)

観測筋によれば、金氏がモスクワ経由便を選んだのは、以下の2つのことを象徴している。一つは、同盟関係にある中国との関係が核開発を巡って冷え込んでいること。もう一つは、北朝鮮が、長く友好関係にあるロシアとの関係を一層強化しつつあることだ。

北朝鮮が意識をロシアに向け始めた変化は、急速に進む北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制する策を探る米国の外交官にとって突破口となる可能性がある。

ロシアの力を測る米国

「北朝鮮は中国に怒りを感じている。中国との間にある政治的パイプの多くが凍結されたり極端に狭められたりしている」。在北朝鮮ロシア大使を務めた経験を持つワレリー・スヒニン氏はこう指摘する。同氏はロシア関係者の中でも北朝鮮問題に最も詳しい人物の一人だ。

北朝鮮政府関係者は過去1年の間にロシアをたびたび訪問し、モスクワで開かれた式典にも何度か出席した。西側諸国の観測筋によれば、北朝鮮内で同国の政府関係者がロシア人外交官と接触した回数は、中国人外交官と接触した回数より多いという。

トランプ政権は中国の姿勢にいら立ちを感じている。8月5日に国際連合が採択した新たな北朝鮮制裁を支持したものの、その経済的な影響力──北朝鮮の総貿易高の9割を対中貿易が占める──を駆使して金正恩委員長に圧力をかけようとしないからだ。

ロシアとの関係が悪化しているにもかかわらず米国は、ロシアが北朝鮮に揺さぶりをかけることに期待を寄せ始めている。

西側のある外交官は「米国は、ロシアが北朝鮮と接触し影響力を行使するかどうかを見極めようとしている」と語る。同外交官によれば「3月から4月にかけて(レックス)ティラーソン米国務長官は、中国が北朝鮮と接触し、影響力を発揮するかどうかを確かめようとしていた。今は同じことをロシアに対してしている」

ティラーソン氏は8月、中国とロシアについて同時に言及し、どちらも北朝鮮と「極めて太い対話のチャンネルを持っている」と述べた。

同氏は「両国は北朝鮮に対する影響力を行使できる」との考えを示したうえで、「その影響力をもって、北朝鮮を対話の場に引き出すことができると期待している」と語った。

2017年4月の軍事パレードに登場した「火星12号」とみられるミサイル。北朝鮮はこの型のミサイルを米グアム近海に撃つ準備をしていると警告した(写真=AP/アフロ)

数カ月にわたって米朝の緊張が高まる中、ロシアは、中立の立場にあることを示そうとしてきた。米朝が非難の応酬をエスカレートさせることの危険性を双方に対して警告している。加えて、北朝鮮が核とミサイルの実験を、米国が米韓合同軍事演習を同時に停止し、対話による解決の道を探るよう、中国とともに働きかけている。

前出の西側外交官は「米国は2つのことを見守っている。まずは北朝鮮がポジティブな反応を示すかどうか。そして、北朝鮮が強硬姿勢を崩さない場合に、同国を交渉のテーブルに着かせる上でロシアがどの程度の影響力を有しているかだ」との認識を示した。

制裁決議支持で影響力が低下

対北朝鮮制裁決議を議論する安保理を前に話をする、ロシアのウラジーミル・サフロンコフ国連次席大使(左)と米国のニッキー・ヘイリー国連大使(写真=Pacific Press/Getty Images)

危機を回避するためにロシアは重要な役割を果たすことができる──との米国の期待を、ロシアは冷ややかに受け止めている。

ロシアの専門家らは慎重だ。先の国連安全保障理事会で、北朝鮮を対象とする新たな制裁決議を支持したため、北朝鮮に対してロシアが辛うじて保持していた影響力も弱まってしまったと考えている。この決議には中国も賛成した。

かつて、ロシアと北朝鮮は同盟関係にあった。しかし2000年、両国はソ朝友好協力相互援助条約に代えて、ロ朝友好善隣協力条約に調印した。ソ朝友好協力相互援助条約には、北朝鮮が第三国から武力攻撃を受けた場合にロシアが支援するという条項が含まれていた。ロ朝友好善隣協力条約はそうした条項を盛り込んでいない。

スヒニン氏は「このため、北朝鮮はもうとっくにロシアに期待などしなくなっている。とはいえ、北朝鮮は少なくとも我々(編集部注:ロシア)を非難したり、我々を怒りの応酬に巻き込んだりはしないだろう。だが北朝鮮は直近の声明で、米国に屈し米国を支持したとしてロシアを初めて名指しで非難した」と指摘する。

スヒニン氏はこう続ける。国連の制裁決議を支持したことに対し、ドナルド・トランプ米大統領が中国とロシアに公式に謝意を表明したことが、とりわけ事態を悪化させた。「こうした状態が続けば、北朝鮮はロシアとも距離を置くだろう。そして孤立感を深め、揚げ句の果てに核開発計画を一層推進することになる」

恐らく最も重要なことは、北朝鮮の核開発計画を巡る行き詰まりについて、ロシアは米国と全く異なる評価を下していることだ。「ロシア政府は、こうした危機の責任は依然として米国にあると見なしている」。カーネギー・モスクワ・センターでアジア問題を研究するアレクサンドル・ガブエフ氏はこう捉える。

ロシア政府の担当者らは、北朝鮮が核兵器の開発に執念を燃やすのは、孤立した弱小国がより強力な敵から自国を守るための試みとして理解できると見ているのだ。

ロシアは北朝鮮が核保有国であると公式には認めていない。したがって国連による対北朝鮮制裁を支持している。しかしながらロシアの外交関係者やアナリストのほとんどは、この危機を緩和する唯一の現実的な選択肢は、北朝鮮をインドやパキスタンと同様に位置づけたうえで交渉に臨むことだと主張する。公式には認めないものの、事実上の核保有国として扱うわけだ。この際、北朝鮮に武装解除を求めないことも条件となる。

ソウルにある韓国国民大学のアンドレイ・ランコフ教授は危機解決に向けた選択肢を探る論評の中で、こう論じた。「米国をはじめとする関係国は、北朝鮮に核を放棄させるという実現不能で達成し得ない目標を追い求めるよりも、不快ではあっても現実に達成可能な目標に静かに転換すべきだ。すなわち、北朝鮮に小規模の安定した核兵器の保有を認めるという目標だ」

スヒニン氏は「北朝鮮の目標は、インドやパキスタン、イスラエルと同様に今や核兵器を保有している事実を、たとえ非公式であっても、すべての人々に受け入れさせることにある。彼らはそうした状態を達成したいと思っている」と分析する。

「北朝鮮がロシアや中国に脅しをかけるとは思えないが、このプロセスがさらに広がらないようにすることが重要だ。核がこれ以上拡散しないよう保証する必要がある」(同氏)

Kathrin Hille and Katrina Manson ©Financial Times, Ltd. 2017 Aug.17

阿部記事

パナマは台湾との外交関係を断絶し、「一つの中国」原則を受け入れて中国と外交関係を樹立した。共同記者会見で握手するパナマのイサベル・サインマロ副大統領兼外相(左)と中国の王毅外相(2017年6月13日撮影)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News

北朝鮮によるICBM開発の進展で緊張が高まる朝鮮半島をめぐって、米朝の駆け引きに関心が集まっている。はたして、北朝鮮によるグアム島近海へのミサイル発射があるのか、そうした場合、トランプ米政権は何らかの軍事的対抗手段を採りうるのか。事と次第では日本にも北朝鮮からミサイルが飛んでくる可能性さえある中で、予断を許さない状況が続いている。

しかし、それが東アジアのもう1つのフラッシュポイント(引火点)である台湾海峡に与える影響についてはあまり議論されていないようだ。

今も変わらない米中の構造的な対立要因

1950年6月25日に朝鮮戦争が勃発すると、トルーマン政権下の米国は即座に参戦を決定するとともに、台湾海峡に第7艦隊の艦船を差し向けて海峡の「中立化」を図った。建国間もない中国が朝鮮戦争勃発をチャンスと見て台湾に武力侵攻し「中国革命」を完遂すること、また、逆に台湾に逃れた国民党政府が大陸反攻に打って出ることを抑制するための措置である。それは、東アジアで同時に2つの武力紛争に関わりたくない米国にとって合理的な措置でもあった。

言うまでもなく現在の状況は当時とは大きく異なる。最も大きく異なる点は、米国と中国とが経済的に深い関係にあり、おいそれと対立を先鋭化させるわけにはいかないことである。

朝鮮半島における米中の利害が対立したにせよ、朝鮮半島危機がそのまま台湾海峡危機に連動する要素は直接的にはないと言っていいだろう。

しかしながら、当時も今も変わらない構造的な対立要因を抱えていることは指摘しておかなくてはならない。すなわち、まず共通項として、南北朝鮮、中台という「分断国家」の「統一」問題が絡むことと、そして、そこにおいて米中関係が決定的役割を担っていることである。朝鮮戦争が事実上の米中戦争であったように、台湾海峡危機も事実上の米中対峙の構図で理解できる。

朝鮮半島においては、中国側にとって米軍の撤退による「中立化」の下での統一が望ましい。韓国に米軍が配置されている現状が続く限り、バッファー(緩衝)としての北朝鮮の存続が必要となる。たとえ北朝鮮が中国のコントロールの効かない核とミサイルを開発・保有しても、その状況は変わらない。

台湾について言えば、中国は常に台湾を併呑し「統一中国」を完成させたいというモチベーションがある。その統一スキームは香港返還で適用された「一国二制度」である。だが、民主主義体制下にあり住民が指導者を選出できる台湾で、それが受け入れられる余地はないと言ってもよいだろう。中国の平和的手段による「統一」政策が奏功せず 台湾が将来的な「統一」を拒絶した場合には、中国は武力行使も辞さないとしている。

その一方で米国にとっては、朝鮮半島ではいまだ朝鮮戦争は終結しておらず、「休戦協定」によって現状が維持されている状況である。米国は韓国との相互防衛条約によって北朝鮮の軍事的脅威に対抗するための兵力を配置してきた。北朝鮮の核保有と米国本土に届くICBMの配備は、北東アジアの緊張を高めるばかりか、米国本土の安全をも脅かすことになるため容認できない。米国の目標は、北朝鮮の核・ミサイル開発の「凍結」、さらには「放棄」による朝鮮半島の非核化である。だが、それを北朝鮮に受け入れさせるのはもはや見込めない状況となっている。

また、米国の台湾に対する立場は、1979年の「台湾関係法」によって規定されている。つまり、正式な国交はないものの、台湾の安全が脅かされる事態を米国は座視せず、台湾の防衛に必要な武器を供与するとしている。米国はいわゆる「一つの中国」政策を採っているが、中国が言う「台湾は中国の不可分の領土である」という主張を受け入れているわけではなく、中国(中華人民共和国)の主権が台湾には及んでいないという認識から、上記の「台湾関係法」を維持してきた。

微妙なバランスを保つ米中の政策

こうした米中の朝鮮半島と台湾に関する政策の違いは、微妙なバランスによって安定が保たれていると言ってよいだろう。

皮肉なことに、南北朝鮮も中台も、「和解」によって「統一」が実現するような事態になれば、在韓米軍は撤退することになり、「台湾関係法」は無効化する。米国の韓国、台湾への安全保障コミットメントは、南北朝鮮の軍事的対立の継続、台湾における一貫した「中国との一体化への忌避」によって支えられているのである。

この微妙なバランスを朝鮮半島に当てはめてみよう。もし米国が、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を除去することについて外交的にも軍事的にも有効な手を打てないままでいた場合、北朝鮮を「核保有国」として認めたうえで「米朝平和協定」を結んで「敵対関係」を解消し、国交を樹立することによって「北朝鮮の脅威」を解決するべきだという議論が出てくるだろう。北朝鮮が脅威でなくなれば、在韓米軍を維持する必要もなくなるから撤退が現実のものとなる。期せずして中国が望む「米軍がいない朝鮮半島」が実現することになる。

台湾の場合はどうか。2008年から2016年まで8年間続いた馬英九政権のもとで、中台関係は大きく改善を見せた。中台がともに「一つの中国」を共通認識として共有する(「92共識」)合意がその背景にあった。中台FTAであるECFA(「経済協力枠組み協定」)が締結されて中台の経済関係が進展する中で台湾の中国への依存度が拡大し、また中台直航便の開設とその拡大が両岸の人的往来を飛躍的に高めることになった。

その結果、米国内で台頭してきた議論が「台湾放棄論」であった。中台の事実上の「一体化」が進み、中台間での武力衝突の可能性が低下するなかで、もはや米国による台湾への防衛コミットメントは必要なくなったという認識がその背景にあった。

しかし、台湾内部では、逆に台湾人としての自己認識、すなわち「台湾人アイデンティティー」が高まっていった。中台が「経済的には接近したが、心理的には遠ざかる」状況下で、「92共識」を認めない蔡英文政権が成立したことで、中台関係は政治的に冷却化していった。その結果、米国で「台湾放棄論」は影を潜めたものの、中台間では公式の対話ルートが途絶えたまま、中国からの観光客の減少による台湾観光業へのダメージが継続している。パナマの台湾との断交に見られるように、中国による台湾への外交的締め付けも強まっているのが現状である。

朝鮮半島危機と台湾問題を連動させるトランプ政権

そうした中で、トランプ米政権には、むしろ朝鮮半島危機と台湾問題を積極的にリンケージさせるような行動が見られる。

例えば今年4月、トランプ大統領は習近平主席をフロリダの別荘に招き、中国に北朝鮮への圧力強化を求めたが、それが期待外れと分かると、6月末に台湾向けの14億ドルの武器売却を決めた。

また、ほぼ同時期に、台湾への米海軍艦船の定期寄港を認める内容を盛り込んだ2018年国防授権法案が米上院軍事委員会で承認された。朝鮮半島危機が米中の齟齬を拡大していけば、おのずと台湾海峡に影響が及ぶことになる。

朝鮮半島と台湾海峡の両方に安全保障上深くかかわるわが国としても、主体的に何ができるか、何をするべきか、が問われることになる。陸上配置のイージス・システム(イージス・アショア)導入はその一環であり、防衛力強化は必然の選択であろうが、外交的に何らかの役割を見出せなければ、日本は東アジア国際政治の場でますます「縁辺化」されてしまいかねない。

樋口記事

北朝鮮の国防科学院化学材料研究所を視察した金正恩朝鮮労働党委員長(撮影日不明、2017年8月23日配信)。(c)AFP/KCNA VIA KNS〔AFPBB News

朝鮮戦争を引き起こしたのは誰か?

忘れてはいけない。朝鮮戦争を引き起こした張本人は、北朝鮮の金日成である。

朝鮮半島は、第2次大戦末期に、対日参戦の目的で満州から朝鮮半島に入ったソ連赤軍によって北半分を占領された。その急進撃に触発された米軍は、沖縄から軍を進め仁川に上陸して朝鮮半島の南半分を占領した。

その後、1948年8月に米国の影響下で大韓民国(韓国)が建国されたのに対抗して、同年9月、占領中のソ連赤軍の強い指導により、「傀儡国家」として朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がつくられた。

北朝鮮の憲法、立法・行政・司法制度、朝鮮労働党による一党独裁の政治制度、軍事機構、治安機関などの国家機構は、すべてソ連体制の複製であり、朝鮮民主主義人民共和国という国名もロシア語からの直訳であった。

そしてソ連は、満州で抗日ゲリラ活動に従事していたソ連赤軍大尉・金日成を北朝鮮の初代指導者に指名した。

全朝鮮に施行されるべきとされた北朝鮮の1948年憲法(朝鮮民主主義人民共和国憲法)は、南北朝鮮の統一を積極的に促進するという政治目標を掲げ、北朝鮮体制を南朝鮮に拡大させる、いわゆる「赤化革命」を正当化するものであった。

それが、「北朝鮮の野心的な指導者」と見られていた金日成の企てによって、ソ連のスターリンと中国の毛沢東を動かし、ソ中ともに冒険的な南進武力統一を承認したことから、1950年6月に始まり、1953年7月に休戦となった朝鮮戦争へと突入したのであった。

北朝鮮軍が38度線を越えて仕かけた戦争に対して、国連安保理は北朝鮮の行為を国連憲章違反と非難し即時停戦を求めたが、事態が深刻化したため、米軍を主体とした国連軍の創設が決議された。

国連軍後方司令部(キャンプ座間、2007年に横田飛行場へ移転)が置かれた日本は、その活動を後方から支援した。

なお、国連軍創設決議は、当時、国連の中国代表権(安保理の議席)は中華民国政府(台湾)が有し、そのことに抗議してソ連が安保理の採決をボイコットしたことによって成立したものであった。

一方、戦後の復興期にあったソ連のスターリンは、米国との衝突が第3次大戦へと拡大するのを極度に恐れ、武器の提供などの兵站支援と航空機の派遣にとどめた。

スターリンによってアジアの個別的問題に対する主導的役割を認められた中国は、そのまま放置すれば米国が隣人となりかねない朝鮮半島の地政学的重要性を深刻に受け止め、中国人民義勇(志願)軍として約500万人とも言われる大兵団を参戦させた。

北朝鮮をソ連と中国が支援し、韓国を米国と日本が支援した朝鮮戦争の対立構造は、今日に至ってもそのまま続いており、周辺各国の戦略的利害が交錯する朝鮮半島の地政学的宿命を反映しているとの見方が成り立とう。

北朝鮮の最高目標は金王朝の存続と南北統一

北朝鮮は、思想、政治、軍事、経済などすべての分野における社会主義的強国の建設を基本政策として標榜している。

また、金日成、金正日、金正恩と3代にわたって金一族の世襲による権力移行体制が固定化されてきたことから、世襲制の専制君主国家、すなわち金王朝の存続が最高の国家目標となっていることは疑う余地がない。

一方、南北(祖国)統一は、北朝鮮にとっても、また韓国にとっても至上の政治目標となっており、民族共通の歴史的悲願と言えよう。

しかし、北朝鮮が武力統一を目指した朝鮮戦争は、半世紀以上にわたって同じ民族を分断する悲劇を生み出した。

そして、休戦状態とはいえ、現在も非武装地帯(DMZ)を挟んで、両軍併せて150万人ほどの地上軍が対峙する厳しい現実を突きつけており、南進武力統一(暴力革命)や赤化革命を標榜し、力によってその実現を目指してきた北朝鮮の統一戦略には、特段の注意を払わざるを得ない。

北朝鮮の1998年憲法では、南北(祖国)統一について、以下のように記述されている。まず、その「序文」では、

 偉大な領袖金日成同志は、民族の太陽であり、祖国統一の救いの星である。金日成同志は、国の統一を民族至上の課題としてかかげ、その実現のためにあらゆる労苦と心血をすべて捧げた。

 金日成同志は、共和国を祖国統一の強力な堡塁として固める一方、祖国統一の根本原則と方途を提示し、祖国統一運動を全民族的な運動に発展させて、全民族の団結した力で祖国統一偉業を成就するための道を開いた。

また、「第1章政治」の第9条では、

 朝鮮民主主義人民共和国は、北半部において人民政権を強化し、思想、技術、文化の3大革命を力強く繰り広げ、社会主義の完全な勝利を成し遂げ、自主、平和統一、民族大団結の原則から祖国統一を実現するために戦う。

このように、序文では、朝鮮戦争を引き起こした金日成を「祖国統一の救いの星」と奉り、「祖国統一偉業を成就するための道を開いた」偉大な領袖として神格化している。

また、第9条では、「北半部において人民政権を強化し、・・・社会主義の完全な勝利を成し遂げ、自主、平和統一、民族大団結の原則から祖国統一を実現するために戦う」として、北朝鮮を革命基地と位置づけ、韓国を吸収統一する方針を堅持しており、現在でも北朝鮮の南北統一戦略は、基本的に建国当初と何ら変わるところはない。

つまり、北朝鮮の南北統一戦略の目標は、朝鮮半島全体に金王朝を拡大し、その支配を永久化して絶対安定を実現するものと見ることができるのである。

北朝鮮は、長年にわたって韓国に対して侵入、殺傷、破壊、瓦解工作を繰り広げてきた。そして、陸海からのルートを使ってスパイを送り込み、韓国内に地下党組織を構築し、韓国内の民衆革命の機運を醸成しつつ「決定的な時期」を待って蜂起の機会を窺ってきた。

その中で、特に学生、労働者、宗教界などサークル形態の小組織をターゲットに宣伝・煽動活動を着実に拡大してきた。

最近では、韓国海軍哨戒艦「天安」号撃沈事件(2010年3月)や延坪島(ヨン・ピョンド)砲撃事件(2010年11月)など、北朝鮮は北方限界線(NLL)を紛争地化し、韓国を軍事的に圧迫するとともに、韓国内の思想対立を拡大させ、また、戦争の恐怖を呼び起こして対南交渉を優位に導こうと画策してきた。

また、金大中政権以降、「太陽政策」を利用した「わが民族同士」という戦略が提起され、「南北和解」を演出することで米韓の対立を煽り、米軍撤退と有事における米軍介入の阻止を狙った工作が展開された。

顧みれば、北朝鮮は、韓国大統領官邸である青瓦台襲撃事件(1968年)、米国情報収集艦プエブロ号拿捕事件(1968年)、朴正煕大統領襲撃事件(1974年)、アウンサン廟爆破事件(1983年)、KAL爆破事件(1987年)など、対南工作のために重大事件をたびたび引き起こし、国際社会に大きな衝撃を与え、世界を震撼させた。

日本関連では、対南工作の「側面部隊」と位置づけられる朝鮮総連を活用し、日本を経由した工作戦術が駆使されてきた。

特に、1970年代から1980年代にかけて北朝鮮の工作員や「よど号グループ」などによって、多数の日本人が、日本から極秘裏に北朝鮮に拉致され、いまだに拉致被害者の救出は果たされていない。

本当に危うい韓国の政治社会状況

2012年の韓国大統領選挙では、右派・セリヌ党の朴槿恵(パク・クネ)氏の得票率は51.6%、金大中大統領による太陽政策(包容政策)を継承した盧武鉉前大統領の秘書室長を務め、北朝鮮に対する融和政策を支持する左派・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)氏は48.0%であった。

朴槿恵大統領の当選は僅差で、北勢力の浸透の深刻さを物語る選挙結果であった。

その朴槿恵大統領も、弾劾裁判の結果、2019年3月に失職した。その後の大統領選挙では、前述の文在寅(「共に民主党」)氏が得票率41.08%を獲得し、旧与党「自由韓国党」の洪準杓候補(同24.3%)、中道野党「国民の党」の安哲秀候補(同21.41%)を破って大統領選に勝利した。

ロウソク・デモによって朴槿恵大統領を弾劾裁判に追い込んだ左派勢力は、その手法の成功体験に味をしめて、盛んにデモを繰り返している。

一方、右派勢力は、朴槿恵大統領の罷免が妥当だとした憲法裁判所の判断を合憲だとは認めず、大韓民国憲法精神で保障した「国民抵抗権」を根拠に、弾劾反対団体が集まった「国民抵抗本部」を発足し、大統領弾劾棄却のための国民総決起運動として、同じく街頭に出て気勢を上げている。(中央日報日本語版(2017年2月19日11時59分)から要約加筆)

前2回の大統領選挙の結果などから見ても、韓国の世論は左右に分かれて大きく対立し、一種の内乱状態に陥っていると言っても過言ではなく、北朝鮮の対南工作から見て、韓国の政治社会状況は極めて危うい局面に立たされている。

北朝鮮最大の障害は米国:核ミサイルは「最後の切札」

韓国に親北・左派の政権が誕生した現在、北朝鮮の最高目標である金王朝の存続と南北統一の最大の障害となるのは、米韓相互防衛条約に基づいて陸空軍を中心に約1.7万人の在韓米軍を維持する米国の存在である。

米国は、湾岸戦争(1991年)やコソボ紛争(1999年)において、通常戦力の優越を存分に見せつけ、ロシアや中国などはその実力に驚嘆し、あるいは恐れ慄いたと伝えられている。

なかでも北朝鮮は、依然として大規模な軍事力を維持しているものの、旧ソ連圏からの軍事援助の減少、経済の不調による国防支出の限界、韓国の防衛力の急速な近代化といった要因によって、在韓米軍や韓国軍に対して通常戦力において著しく劣勢に陥っているため、「従来の通常兵器を使った“戦場”で米国に直接対抗するのは不可能だ」との教訓を得ていることは間違いないところであろう。

このため、北朝鮮は、核兵器などの大量破壊兵器や弾道ミサイルの増強に集中的に取り組むことにより劣勢を補おうとしている。

逆に、通常戦力において圧倒的な優越性を保持している米国の立場から見れば、その優越性が核の拡散を助長するジレンマを引き起こす要因となっている。

すなわち、現状において、米国の圧倒的な通常戦力の優越に対抗できる国はなく、その反動で、米国の通常戦力に対抗し、それを相殺する「最後の切札」としての核兵器の価値と有用性を高めてしまった。

そして、比較的安価かつ容易に開発でき、決定的な破壊(損害付与)力を持ち、政治的恫喝手段としての役割も果たす核兵器の開発が促進され、米国の核戦力削減の方向に逆らうかのように、さらなる核の拡散を引き起こすという負のスパイラルに陥っている。

金正恩は、2013年の党中央委員会総会で父・金正日の「先軍政治」から転換して、核武力建設と経済建設の「併進路線」を提案し、2016年5月はじめ、35年ぶりの朝鮮労働党大会(第7回)でも同路線の堅持を確認した。

金正恩は、「わが民族の自主権と生存権を守るための唯一の方途は今後も、核戦力を質量共により強化して力の均衡をとることである」と述べたが、これは、金王朝の存続には核兵器が不可欠である、と宣言したことに等しい。

同時に、北朝鮮のGDP(国内総生産、約400億ドル=約3兆9000億円、韓国銀行等推計)は日本の茨城県内総生産規模と見られ、その行き詰まった国家経済を立て直し、破綻国家や中国の属国に陥らないためには、軍事予算の削減は避けて通れない。

このため、その矛先は自ずと大規模で、老朽化が著しい通常戦力の削減に向けられることになり、併せて国家運営に及ぼす軍の影響力を極力低下させようというのが「併進路線」の狙いであろう。

つまり、北朝鮮は、国際社会からの非核化の要求を尻目に、今後一段と核兵器の地位と役割を押し上げ、その建設と運用に大きく依存することは間違いない。

北朝鮮は、核の力を背景に、ぎりぎりまで緊張を高めて相手に譲歩を迫る瀬戸際外交を常套手段としている。

また、米国の圧倒的な通常戦力の優越に対しては、核による恫喝・使用(エスカレーション)によって脅威を相殺するものと見られ、わが国の安全保障にとっても「眼前の差し迫った脅威」、また中長期的な脅威として重大な影響を及ぼすことになる。

北朝鮮による核ミサイル危機をいかに乗り越えるか?

北朝鮮は、2017年3月6日、4発の弾道ミサイルを同時に日本海に向けて発射し、そのうちの3発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。

翌7日の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、発射を行った部隊について「有事の際には在日米軍基地を攻撃する任務を持つ部隊」と説明し、日米同盟下の日本攻撃の可能性について初めて言及した。

北朝鮮が、日本を攻撃する「能力」のある弾道ミサイルを多数保有し、日本をターゲットとして使用する「意思」を明示したことは、わが国安全保障上の死活的課題として再認識させ、核抑止の強化のための国を挙げた総合的な対策の必要性と緊急性をいやが上にも高めることとなった。

北朝鮮は、スカッドER(射程約1000キロ)、ノドン(同約1300キロ)、テポドン1(同約1500キロ)に新型ミサイル・ムスダン(約2500~4000キロ)を加えた多種の中距離弾道ミサイルを開発し、日本から西太平洋・グアムまでの攻撃能力を強化している。

米国防情報局(DIA)は、2017年7月、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の生産に成功したとの機密分析をまとめた、と報じられている。

弾道ミサイルの実戦配備に必要な弾頭部の大気圏再突入技術を保有しているかどうかは不透明だが、多くの専門家は来年末までにこの技術を獲得する可能性があるとみている。日本政府も北朝鮮の核兵器について、17年版防衛白書で「小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が考えられる」と分析している。

そこで、本論のまとめとして、米国、日米共同および日本独自の政策を「懲罰的抑止」と「拒否的抑止」の観点から考察し、わが国の核抑止のあり方について述べることにする。

(1)米国および日米共同の政策

わが国にとって最大の問題は、北朝鮮の核ミサイル開発によって、東アジアにおける米国の「地域的核抑止」が無効化しているのではないか、との深刻な懸念が生じていることである。

では、それを打ち消し、米国の核抑止の実効性を高めるにはどうしたらいいのか?

わが国は、「非核3原則」によって米国が保有する抑止機能をいたずらに縛っており、安全保障上の大きな損失となっている。

わが国および周辺地域における核抑止を確保するには、米空母や潜水艦、あるいは戦略爆撃機の運用上の要求による核の持ち込みを認めなければならない。また、情勢緊迫時には、目に見える形で、戦域レベルのパーシング・ミサイルシステムの日本配備を求めることによって抑止効果も格段に高まろう。

つまり、「非核三原則」のうち「持ち込ませず」を廃止して「非核二原則」にするか、その見直しが不可能ならば、有事(情勢緊迫時)を例外として、核の持ち込みを可能にする政策の柔軟な運用が欠かせない。

日米両政府は、2015年4月に新「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を了承した。その中で、平時から緊急事態までのあらゆる段階における自衛隊・米軍の活動に関連した協議・調整のための「同盟調整メカニズム」の設置などに合意し、11月初めから運用を始めた。

今後、同メカニズムにおいて「核抑止の強化」を協議の主要テーマとして取り上げ、共同核抑止戦略を構築するとともに、統合幕僚監部と太平洋軍司令部の間で組織される「共同運用調整所」などを常設して、共同の情報収集、警戒監視および偵察(ISR)活動を継続し、弾道ミサイル発射などの情勢変化に即応できる態勢を確立することが必要である。

米国は、航空自衛隊車力分屯基地(青森県)および米軍経ヶ岬通信所(京都府)に最新型ミサイル防衛用「Xバンド・レーダー」を配備している。また、米軍の「ペトリオットPAC-3」が嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区に配備されている。

わが国にこの種の弾道ミサイル防衛(BMD)施設やシステムを配備することは、日本のみならず周辺地域の核抑止・対処体制の強化に資するものである。併せて、いわゆる「トリップ・ワイヤー」として米国の拡大抑止の信頼性・信憑性を高めるうえでも有効であり、今後、このような施策の積極的な拡大が望まれる。

(2)日本独自の政策

現在、わが国の拒否的抑止力としては、イージス艦とペトリオットPAC-3があるが、その能力は質量ともに限られている。また、国家機能や重要インフラ、国民や産業基盤を防護・維持する「損害限定戦略」の一環としての国土強靭化が進んでいない。

一方で、報復的抑止力は、米国の力に全面的に依存しており、わが国の核抑止は極めてバランスを欠いた不十分な態勢にあると言わざるを得ない。

核の脅威を抑止するには、基本的に核に頼るしかない。その厳しい現実の中で、わが国が自ら報復的抑止力としての核開発に踏み出せば、米国や周辺諸国をはじめとする国際社会の複雑な反応を引き起こすとともに、国論の分裂を見るのは火を見るよりも明らかである。

わが国の核政策は、軍事戦略上の合理性・妥当性を超えて、政治外交上の実現の困難さが重く圧しかかかり、結論の見えない論争に巻き込まれること必定である。

他方、限定的ながら、通常戦力である自衛隊の統合力をもって報復的抑止力を創出することが可能である。

つまり、国際法上認められた主権国家の当然の権利としての「自衛権」の範囲で、自衛隊に北朝鮮や中国のミサイル基地を叩く敵基地攻撃の任務権限と地中貫通型ミサイル、ステルス・無人対地攻撃機、特殊作戦部隊などの能力を政治決断によって付与すればよいのである。

さらに、地域的抑止の限界を認識する米国が同盟国・友好国に求めているように、拒否的抑止力を可能な限り自力で賄う努力が不可欠である。

昭和50年代に「日本防衛ハリネズミ論」が提唱されたことがあるが、その現代版は、さしずめ「日本列島電子戦バリアー構想」であろう。

喫緊の課題は、北朝鮮(そして中国)の弾道ミサイルによる飽和攻撃なので、日本の全領域を覆うように電子戦バリアーを張り巡らせて、北朝鮮の核ミサイルの能力を可能な限り無効化あるいは盲目化することである。

わが国には優れた電子戦の技術・能力があり、その装備化を可能とする小型高出力電源の技術も保有している。

つまり、拒否的抑止力の実効性を高めるためには、「日本列島電子戦バリアー」の展開を基盤として、既存のMDに加え、イージス・アショア(イージス艦MDシステムの地上配備型)や電子戦・サイバー攻撃、電磁砲・電磁波弾、さらにはレーザやレールガンなどによる新たなBMDシステムを導入し、多重多層のBMDシステムを構築して質量両面からわが国のBMD能力を強化しなければならない。

併せて、核弾頭の運搬手段には、弾道ミサイルのみならず、巡航ミサイルや有人・無人の航空機などが使用されるため、航空を対象とする防空と巡航・弾道ミサイル防衛を一体化した統合防空・ミサイル防衛(IAMD)システムの開発が待たれる。

また、核攻撃に対する自衛隊の施設、装備、C4ISRおよび部隊行動時の強靭性・抗堪性の強化には、格別の対策を施さなければならない。

同時に、わが国の国家機能、重要インフラや産業基盤の維持ならびに国民生活保護のための民間防衛(国民保護)の強化は不可欠であり、そのため、地下シェルターなどの避難用施設・場所、食料・水・医薬品等の生活必需品、輸送交通の確保などの対策を講じることも大きな課題である。

国土強靭化は、災害対策のみならず、安全保障・防衛上の「損害限定戦略」と一体化した総合的な国家施策として強力に推進することが重要である。

わが国は、世界で唯一の被爆国であり、そのために、他のどの国よりも自国の核抑止に真剣に取り組むことを当然の責務として、何としても北朝鮮による核ミサイルの危機を乗り越えなければならない。

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